(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】OLEDマイクロディスプレイ用のピクセルを製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
H10K 71/00 20230101AFI20240708BHJP
H10K 50/852 20230101ALI20240708BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240708BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H10K71/00
H10K50/852
G09F9/00 338
G09F9/30 365
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228045
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-12-02
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】モラール ローレント
(72)【発明者】
【氏名】マンドロン トーニー
(72)【発明者】
【氏名】トゥルネル ミリアム
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197010(JP,A)
【文献】特開2005-093401(JP,A)
【文献】特開2005-093399(JP,A)
【文献】特開2007-026852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0243928(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106784401(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00
G09F 9/00
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオードマイクロディスプレイ用のピクセルを製造するプロセスであって、以下の連続するステップを含む:
ステップa)構造化された第1の電極(E1)を含む基板(1)を提供する;
ステップb)前記構造化された第1の電極(E1)上に、第1及び第2の二層スタック(2、3)を連続して形成する、ここでそれぞれの二層スタック(2、3)は、選択的にエッチング可能な透明導電性酸化物である第1及び第2の材料でそれぞれ形成された第1及び第2の層(20、21;30、31)を連続して含み;
ステップc)青のサブピクセル(PB)を収容するための領域、及び緑のサブピクセル(PV)を収容するための領域において前記第2の二層スタック(3)をエッチングする、ここで赤のサブピクセル(PR)を収容するための領域において前記第2の二層スタック(3)はそのまま残り;
ステップd)青のサブピクセル(PB)を収容するための領域において前記第1の二層スタック(2)をエッチングする、ここで緑のサブピクセル(PV)を収容するための領域において前記第1の二層スタック(2)はそのまま残り;
ステップe)有機発光層のスタック(5)を形成する、ここで前記スタックは白色光を出射するように構成され、赤、緑、及び青のサブピクセル(PR、PV、PB)を収容するための領域に広がり;
ステップf)前記第1の電極(E1)との光共振器を得るため、前記有機発光層のスタック(5)上に第2の電極(E2)を形成する;
前記ステップb)は、
-前記第1の二層スタック(2)は前記光共振器が緑色光を透過させるように選択された厚さを有し、
-前記第1及び第2の二層スタック(2、3)は、前記光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する、ように実行される
有機発光ダイオードマイクロディスプレイ用のピクセルを製造するプロセス。
【請求項2】
ステップa)は、前記構造化された第1の電極(E1)を前記第2の材料で形成された中間層(10)で覆うステップを含む、ここで前記中間層(10)は前記光共振器が青色光を透過させるように選択された厚さを有し、
ステップb)は、
-前記第1の二層スタック(2)及び前記中間層(10)は前記光共振器が緑色光を透過させるように選択された総厚さを有し、
-前記第1及び第2の二層スタック(2、3)並びに前記中間層(10)は前記光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する、ように実行される
請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の材料は、酸化亜鉛ZnOであり、前記第2の材料は酸化錫SnO
2
である、請求項1または2のいずれかに記載のプロセス。
【請求項4】
ステップc)は、以下の連続するステップを含む:
c
1
)前記第2の二層スタック(3)の酸化錫SnO
2
を、ドライ又はウエットエッチングを用いてエッチングする、
c
2
)前記第2の二層スタック(3)の酸化亜鉛ZnOを、ウエットエッチングを用いてエッチングする、
請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップd)は、以下の連続するステップを含む:
d
1
)前記第1の二層スタック(2)の酸化錫SnO
2
を、ドライ又はウエットエッチングを用いてエッチングする、
d
2
)前記第1の二層スタック(2)の酸化亜鉛ZnOを、ウエットエッチングを用いてエッチングする、
請求項3又は4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
ステップc)は、赤のサブピクセル(PR)を収容するための領域をフォトレジスト(6)で覆うステップc
0
)を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップd)は、緑のサブピクセル(PV)を収容するための領域をフォトレジスト(6)で覆うステップd
0
)を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップe)は、赤、緑、及び青のサブピクセル(PR、PV、PB)の間に位置するための領域において前記第1及び第2の二層スタック(2、3)をエッチングするステップe
0
)に先行される、請求項1から7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップb)は、
-それぞれの二層スタック(2、3)の前記第1の層(20、30)は、10nmと100nmの間の厚さを有し、
-それぞれの二層スタック(2、3)の前記第2の層(21、31)は、10nm以下の厚さを有する、
ように実行される請求項1から8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1及び第2の電極(E1、E2)は、金属で形成され、かつ/又は透明導電性酸化物で形成される
請求項1から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
-ステップa)で提供される前記基板(1)は、可視領域で透明であり、
-ステップa)で提供される前記構造化された第1の電極(E1)は、可視領域で半透明であり、
-ステップf)で形成される前記第2の電極は、可視領域で反射する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
-ステップa)で提供される前記基板(1)は、半導体で形成され、又はガラスで形成され、
-ステップa)で提供される前記構造化された第1の電極(E1)は、可視領域で反射し、
-ステップf)で提供される前記第2の電極(E2)は可視領域で半透明である、
請求項1から10のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLEDマイクロディスプレイ(OLEDは、organic light-emitting diodeの頭文字)の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、拡張又は仮想現実のヘッドセット及び眼鏡、カメラのファインダー、ヘッドアップディスプレイ、ピコプロジェクター等の製造に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
従来技術、特に、欧州特許出願公開第1672962号に開示されているトップエミッション型OLEDマイクロディスプレイ用のピクセルは、
-基板;
-可視領域で反射し、基板上に形成される第1の電極;
-第1の電極上に形成されたスペーサ層;
-有機発光層のスタック、ここで前記スタックは白色光を出射するように構成され、スペーサ層上に形成され;
-可視領域で半透明であり、スタック上に形成される第2の電極;ここで、前記第1及び第2の電極は光共振器を形成する、
を連続して含む。
【0004】
スペーサ層は、それぞれ赤、緑、及び青のサブピクセルを定義するように、光共振器がそれぞれ(スタックにより出射される白色光から得られる)赤色光、緑色光、及び青色光を透過させるように厚さが調整された、第1、第2、及び第3の部分を有する。
【0005】
従来技術のこのようなピクセルは、干渉フィルターを形成するファブリ・ペロー光共振器により、カラーフィルターを省略することを可能にする。フィルターされる波長の範囲は、スペーサ層の第1、第2、及び第3の部分の厚さによって決定され、光共振器がそれぞれ(有機発光層のスタックによって出射された白色光から得られる)赤色光、緑色光、及び青色光を透過させるように、光共振器の厚さ(第1及び第2の電極によって囲まれる)を調整することが可能になる。
【0006】
同様に、ボトムエミッション型マイクロディスプレイについて、このタイプのフィルターを得ることができる。ボトムエミッションの場合の干渉効果はより小さいが、用語の単純化のため、引き続き共振器について申し述べる。
【0007】
しかしながら、スペーサ層の第1、第2及び第3の部分が第1の電極上に連続した堆積により形成され、このことが厚みを制御し得る正確さの問題につながる可能性がある限りにおいて、従来技術のこのようなピクセルは完全に満足できるものではない。
【0008】
さらに、米国特許出願公開2005/0142976号に、
-スペーサ層の第3の部分(青のサブピクセル)のための多結晶ITO層
-スペーサ層の第2の部分(緑のサブピクセル)のための2つの多結晶ITO層のスタック
-スペーサ層の第1の部分(赤のサブピクセル)のための3つの多結晶ITO層のスタック、を使うことが記載されている。
【0009】
製造プロセスにおいて、第1の多結晶ITO層は第1の電極上に形成され、その後、第1のアモルファスITO層が第1の多結晶ITO層に堆積(ウェハスケールの堆積)される。その後、第1のアモルファスITO層は、青のサブピクセルを収容するための領域において、適切なエッチング剤を用いて、選択的にエッチングされ、ここで第1の多結晶ITO層はストップ層を形成する。次に、第2の多結晶ITO層を形成するために、第1のアモルファスITO層に熱アニール処理が施される。
【0010】
同様に、第2のアモルファスITO層が堆積され(ウェハスケールの堆積)、その後選択的にエッチングされる:
-青のサブピクセルを収容するための領域において、第1の多結晶ITO層はストップ層を形成し、そして
-緑のサブピクセルを収容するための領域において、第2の多結晶ITO層はストップ層を形成する。
【0011】
最後に、第3の多結晶ITO層を形成するため、第2のアモルファスITO層に熱アニール処理が施される。
【0012】
従来技術のこのようなプロセスによって、赤、緑、及び青のサブピクセルのスペーサ層の厚さは良好に制御される。しかしながら、このような従来技術は、製造時間と実行の容易さの点で完全に満足できるものではない。特に、堆積とエッチングの過程は、アモルファスITOに施されなければならない熱アニール処理のため、連続して迅速に実行することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】欧州特許出願公開第1672962号
【文献】米国特許出願公開第2005/0142976A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前述の欠点を完全に又は部分的に克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明の主題は、有機発光ダイオードマイクロディスプレイ用のピクセルを製造するプロセスであって、以下の連続したステップを含む:
ステップa)構造化された第1の電極を含む基板を提供する;
ステップb)構造化された第1の電極上に第1及び第2の二層スタックを連続して形成する、ここでそれぞれの二層スタックは、選択エッチング可能な透明導電性酸化物である第1及び第2の材料でそれぞれ形成された第1及び第2の層を連続して含み;
ステップc)青のサブピクセルを収容するための領域、及び緑のサブピクセルを収容するための領域において第2の二層スタックをエッチングする、ここで赤のサブピクセルを収容するための領域において第2の二層スタックはそのまま残り;
ステップd)青のサブピクセルを収容するための領域において第1の二層スタックをエッチングする、ここで緑のサブピクセルを収容するための領域において第1の二層スタックはそのまま残り;
ステップe)有機発光層のスタックを形成する、ここで前記スタックは白色光を出射するように構成され、赤、緑、及び青のサブピクセルを収容するための領域に広がり;
ステップf)第1の電極との光共振器を得るために第2の電極を有機発光層のスタック上に形成する;
ステップb)は、
-第1の二層スタックは光共振器が緑色光を透過させるように選択された厚さを有し;
-第1及び第2の二層スタックは、光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する;
ように実行される。
【0016】
したがって、ウェハスケールの堆積の実行を可能とするステップb)により、そしてエッチングのステップc)及びステップd)により、本発明に係るこのようなプロセスは、二層スタックの厚さを良好に制御することを可能にする。さらに、本発明にかかるこのようなプロセスは、堆積過程-ステップb)-及び、二層スタックのエッチング過程-ステップc)及びd)を次々に実行することを可能とし(従来技術における熱アニール処理に求められる中断は不要)、厚さの制御に関するさらなる自由を生み出す。本発明に係るこのような製造プロセスは、したがって、製造時間を減少させ、処理の容易さを増大させる。
【0017】
(定義)
-「マイクロディスプレイ」は、各ピクセルの面積が30μm×30μm以下であるディスプレイを意味する。
-「基板」は、好ましくは電子デバイス又は電子コンポーネントの組み込みを可能にする、ベース材料で形成された自立型の物理的キャリアを意味する。例えば、基板は、従来、半導体材料の単結晶インゴットから切断されたウェハである。
-「二層スタック」は、第1及び第2の層を連続して含む単一の二層構造、又は第1及び第2の層を連続して含むそれぞれが積み重ねられた二層構造の一組(2~4等)である。
-「構造化された電極」は、一連のパターンを描く、不連続面を有する電極を意味する。
-「透明導電性酸化物」は、可視領域で平均して、70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上の強度透過係数を有し、300Kにおいて102S/cm以上の導電率を有する酸化物を意味する。
-「可視領域」は、380nmと780nmの間の電磁スペクトルを意味する。
-「選択的にエッチングされた」は、第1の材料をエッチングすることなしに第2の材料がエッチングされ得ること、またはその逆を意味する。実際には、エッチング剤は、第2の材料(第1の材料)のエッチング率が第1の材料(第2の材料)のそれよりも少なくとも10倍以上高くなるように選択される。
-「厚さ」は、ピクセル又はサブピクセルの表面の法線に沿った寸法を意味する。
【0018】
本発明に係る方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の1つの特徴によれば、ステップa)は構造化された第1の電極を第2の材料で形成された中間層で覆うステップを含む、ここで中間層の厚さは光共振器が青色光を透過させるように選択され;
ステップb)は
-第1の二層スタック及び中間層は、光共振器が緑色光を透過させるように選択された総厚さを有し、
-第1及び第2の二層スタック、並びに中間層は、光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する、ように実行される。
【0020】
したがって、そのような中間層の利点の1つは、構造化された第1の電極がステップb)の前に保護されることを可能とする、つまり、カプセル化の役割を果たすことである。この目的のため、構造化された第1の電極を大気及び水分から保護することを可能とする第2の材料が、好ましくは選択されることとなる。
【0021】
本発明の1つの特徴によれば、第1の材料は好ましくはアルミニウムでドープされた酸化亜鉛ZnOであり、第2の材料は酸化錫SnO2である。
【0022】
したがって、そのような第1及び第2の材料は好適なエッチング剤を選択することにより選択的にエッチングすることが可能である。ここで好適なエッチング剤は、例えば0.1%の塩酸であり、SnO2に対してZnOを選択的にエッチングすることを可能とする。さらに、そのような第1及び第2の材料は、非常に類似した反射係数を有し、二層スタックの第1及び第2の層の間の界面における反射を避けることを可能にする。
【0023】
本発明の1つの特徴によれば、ステップc)は以下の連続したステップを含む:
c1)第2の二層スタックの酸化錫SnO2をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングする、
c2)第2の二層スタックの酸化亜鉛ZnOをウエットエッチングによりエッチングする。
【0024】
本発明の1つの特徴によれば、ステップd)は以下の連続したステップを含む:
d1)第1の二層スタックの酸化錫SnO2をドライエッチング又はウエットエッチングによりエッチングする
d2)第1の二層スタックの酸化亜鉛ZnOをウエットエッチングによりエッチングする。
【0025】
本発明の1つの特徴によれば、ステップc)は、赤のサブピクセルを収容するための領域をフォトレジストで覆うステップc0)を含む。
【0026】
したがって、得られる利点の1つは、赤のサブピクセルを収容するための領域において第2の二層スタックをそのまま残すことが可能となることである。
【0027】
本発明の1つの特徴によれば、ステップd)は、緑のサブピクセルを収容するための領域をフォトレジストで覆うステップd0)を含む。
【0028】
したがって、得られる利点の1つは、緑のサブピクセルを収容するための領域において第1の二層スタックをそのまま残すことが可能となることである。
【0029】
本発明の1つの特徴によれば、ステップe)は、赤、緑、及び青のサブピクセルの間に位置するための領域において第1及び第2の二層スタックをエッチングするステップe0)に先行される。
【0030】
したがって、得られる利点の1つは、赤、緑、及び青のサブピクセルを互いに電気的に絶縁することが可能となることである。
【0031】
本発明の1つの特徴によれば、ステップb)は
-それぞれの二層スタックの第1の層は、10nmと100nmの間の厚さを有し、
-それぞれの二層スタックの第2の層は、10nm以下の厚さを有する、ように実行される。
【0032】
本発明の1つの特徴によれば、第1及び第2の電極は好ましくはAl、Ag、Pt、Cr、Ni、及びWから選択される金属で形成され、かつ/又は透明導電性酸化物から形成される。
【0033】
そのような金属は、可視領域で高い強度反射係数を有し、かつ高い導電率を有する。電極が透明又は半透明でなければならないとき、導電性を有し、可視領域で透明な酸化物が望ましいといえる。
【0034】
本発明の1つの特徴によれば、ステップa)で提供される基板は可視領域で透明であり、ステップa)で提供される構造化された第1の電極は可視領域で半透明であり、そしてステップf)で形成される第2の電極は可視領域で反射する。
【0035】
「透明」は、基板の強度透過係数が、可視領域全体で平均して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上であることを意味する。
【0036】
「半透明」は、構造化された第1の電極の強度透過係数が、可視領域全体で平均して、30%と70%の間に含まれることを意味する。
【0037】
「反射」は、第2の電極の強度反射係数が、可視領域全体で平均して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上であることを意味する。
【0038】
したがって、得られる利点の1つは、いわゆるボトムエミッション型構造、すなわち基板に向かって出射する構造、が得られることである。
【0039】
本発明の1つの特徴によれば、ステップa)で提供される基板は、半導体、好ましくはシリコンで形成され、又はガラスから形成され、ステップa)で提供される構造化された第1の電極は可視領域で反射し、ステップf)で形成される第2の電極は可視領域で半透明である。
【0040】
「半導体」は、300ケルビンにおける導電率が10-8S.cm-1と102S.cm-1の間に含まれる材料を意味する。
【0041】
「反射」は、構造化された第1の電極の強度反射係数が、可視領域全体で平均して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上であることを意味する。
【0042】
「半透明」は、第2の電極の強度透過係数が、可視領域全体で平均して、30%と70%の間に含まれることを意味する。
【0043】
したがって、得られる利点の1つは、いわゆるトップエミッション型構造、つまり第2の電極を介して出射する構造、を得られることである。基板は、マイクロディスプレイの発光効率に影響を及ぼすことなく、赤、緑、及び青のサブピクセルを制御するための回路を含むことができる。基板がガラスで形成されるときTFT(thin-film transistorの頭文字)回路が選択されることとなり、基板が半導体、特にSiから形成されるときCMOS(complementary metal-oxide-semiconductorの頭文字)回路が選択されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
他の特徴及び利点は、本発明の様々な実施形態の、実施例及び添付の図面を参照する詳細な説明において明らかになる。
図1から
図15は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造プロセスのステップを示す。
【
図1】
図1は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造プロセスの1つのステップを示している。
【
図2】
図2は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図3】
図3は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図4】
図4は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図5】
図5は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図6】
図6は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図7】
図7は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図8】
図8は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図9】
図9は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図10】
図10は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図11】
図11は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図12】
図12は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図13】
図13は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図14】
図14は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図15】
図15は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図16】
図16は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【
図17】
図17は、基板の法線に沿った概略断面図であり、本発明にかかる製造方法の1つのステップを示している。
【0045】
読みやすく理解しやすいように、上記の図面は概略的なものであり、縮尺通りではないことに留意されたい。
【発明を実施するための形態】
【0046】
同一、又は同じ機能を提供する要素に対しては、簡略化のため、異なる実施形態において同一の符号を付す。
【0047】
図1から
図15に示すように、本発明の主題は、有機発光ダイオードマイクロディスプレイ用ピクセルを製造するプロセスであって、以下の連続するステップを含む:
ステップa)構造化された第1の電極E1を含む基板1を提供する;
ステップb)構造化された第1の電極E1上に第1及び第2の二層スタック2、3を連続して形成する、ここでそれぞれの二層スタック2、3は、選択エッチング可能な透明導電性酸化物である第1及び第2の材料でそれぞれ形成された第1及び第2の層20、21;30、31を連続して含み;
ステップc)青のサブピクセルPBを収容するための領域、及び緑のサブピクセルPVを収容するための領域において第2の二層スタック3をエッチングする、ここで赤のサブピクセルPRを収容するための領域において第2の二層スタック3はそのまま残り;
ステップd)青のサブピクセルPBを収容するための領域において第1の二層スタック2をエッチングする、ここで緑のサブピクセルPVを収容するための領域において第1の二層スタック2はそのまま残り;
ステップe)有機発光層のスタック5を形成する、ここで前記スタックは白色光を出射するように構成され、赤、緑、及び青のサブピクセルPR、PV、PBを収容するための領域に広がり;
ステップf)第1の電極E1との光共振器を得るため、有機発光層のスタック5上に第2の電極E2を形成する;
ここでステップb)は
-第1の二層スタック2は光共振器が緑色光を透過させるように選択された厚さを有し、
-第1及び第2の二層スタック2、3は、光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する、ように実行される。
【0048】
ステップa)は、
図1に示される。ステップb)は、
図3に示される。ステップc)は、
図4から6に示される。ステップd)は、
図7から9に示される。ステップe)は、
図14に示される。ステップf)は、
図15に示される。
【0049】
(基板と構成の型)
いわゆるボトムエミッションを行う第1の構成は:
-ステップa)で提供される基板1は可視領域で透明であり、ガラスで形成されてもよい、
-ステップa)で提供される構造化された第1の電極E1は可視領域で半透明であり、例えば透明導電性酸化物で形成され、
-ステップf)で形成される第2の電極E2は可視領域で反射し、例えば金属で形成されてもよい。
【0050】
いわゆるトップエミッションを行う第2の構成は:
-ステップa)で提供される基板1は、半導体、好ましくはシリコンから形成され、又はガラスから形成され、
-ステップa)で提供される構造化された第1の電極E1は、可視領域で反射し、例えば金属で形成されてもよく、
-ステップf)で形成される第2の電極E2は、可視領域で半透明であり、そして例えば透明導電性酸化物で形成される。
【0051】
(構造化された第1の電極)
構造化された第1の電極E1は、好ましくは金属、より好ましくはAl、Ag、Pt、Cr、Ni、W、Mo、Ti、Ru及びPdから選択された金属で形成され、又は透明導電性酸化物で形成される。金属は、例えばアルミニウムの場合銅によって、ドープされてもよい。構造化された第1の電極E1は、100nmと300nmの間の厚さを有してもよい。構造化された第1の電極E1は、パッシベーション層で覆われてもよい。非限定的例として、パッシベーション層は、TiNで形成されてもよく、好ましくは10nm以下の厚さを有する。
【0052】
構造化された第1の電極E1は、好ましくはアノードである。しかしながら、第1の電極E1は有機発光層のスタック5の構造が逆の場合、カソードであってもよい。
【0053】
ステップa)は以下のステップを含んでもよい:
a1)基板1を提供する;
a2)当業者に知られた堆積技術を用いて、ウェハスケール堆積により基板1上に第1の電極E1を堆積する;
a3)マスク転写により第1の電極E1を構造化する。
【0054】
構造化された第1の電極E1のパターンは、好ましくは0.6μmと1μmの間の幅で分離される。この幅によって、マイクロディスプレイ用サブピクセルのマトリックスアレイについて、好ましくは4μmと5μmの間の、ピッチが得られる。
【0055】
構成がボトムエミッションを行う構成のとき、構造化された第1の電極E1は、可視領域で半透明となる様に選択された厚さを有する。そのとき、第1の電極E1は、例えば、透明導電性酸化物(ITO等)で形成されてもよい。構成がトップエミッションを行う構成のとき、構造化された第1の電極E1は、可視領域で反射するように選択された厚さを有する。そのとき、第1の電極E1は、例えば、金属で形成されてもよい。
【0056】
(二層スタックの形成)
第1の材料は、好ましくは亜鉛酸化物ZnO、より好ましくはアルミニウムでドープされる。第2の材料は、好ましくは酸化錫SnO2である。第1及び第2の材料は、好ましくは、二層スタック2、3の第1及び第2の層20、21;30、31の界面での反射を防ぐ程度に十分近い反射係数を有するものが選択される。例として、第1及び第2の材料の反射係数の差異は、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下である。
【0057】
ステップb)は、当業者に知られた堆積技術、例えばALD(atomic layer depositionの頭文字)を用いて実行される。
【0058】
ステップb)は、好ましくは以下のように実行される:
-それぞれの二層スタック2、3の第1の層20、30は、10nmと100nmの間の厚さを有し、
-それぞれの二層スタック2、3の第2の層21、31は10nm以下の厚さを有する。
【0059】
(二層スタックのエッチング)
ステップc)は、好ましくは以下のステップを含む:
c1)第2の二層スタック3の酸化錫SnO2をドライ又はウエットエッチングによりエッチングする、
c2)第2の二層スタック3の酸化亜鉛ZnOをウエットエッチングによりエッチングする。
【0060】
ステップc
1)は、
図5に示される。ステップc
2)は、
図6に示される。
【0061】
ステップc)は、好ましくは、赤のサブピクセルPRを収容するための領域をフォトレジスト6で覆うステップc
0)を含む。ステップc
0)は、
図4に示される。
図10に示されるように、フォトレジスト6は、当業者に知られた剥離技術を用いてステップe)の前に除去される。
【0062】
ステップc1)は、酸化亜鉛ZnOに対して酸化錫SnO2を選択的にエッチングすることを可能とするエッチング剤を用いて実行される。ステップc1)において、第2の二層スタック3の第1の層30は、第2の二層スタック3の第2の層31のエッチングのストップ層として動作する。あるいは、ZnO(つまり、第2の二層スタック3の第1の層30)の厚さをSnO2(つまり、第2の二層スタック3の第2の層31)の過剰エッチングを補償するほど十分大きくしてもよい。
【0063】
ステップc2)は、酸化錫SnO2に対して酸化亜鉛ZnOを選択的にエッチングすることを可能とするエッチング剤(例えば、フッ化水素酸(HF)0.1%)を用いて実行される。ステップc2)において、第1の二層スタック2の第2の層21は、第2の二層スタック3の第1の層30のエッチングのストップ層として動作する。
【0064】
ステップd)は、好ましくは以下の連続するステップを含む:
d
1)第1の二層スタック2の酸化錫SnO
2を、ドライ又はウェットエッチングによりエッチングする、
d
2)第1の二層スタック2の酸化亜鉛ZnOを、ウェットエッチングによりエッチングする、
ステップd
1)は、
図8に示される。ステップd
2)は、
図9に示される。
【0065】
ステップd)は、好ましくは緑のサブピクセルPVを収容するための領域をフォトレジスト6で覆うステップd
0)を含む。ステップd
0)は、
図7に示される。
図10に示されるように、フォトレジスト6は、ステップe)の前に当業者に知られた剥離技術を用いて除去される。
【0066】
ステップd1)は、酸化亜鉛ZnOに対して酸化錫SnO2を選択的にエッチングすることを可能にするエッチング剤を用いて実行される。ステップd1)において、第1の二層スタック2の第1の層20は、第1の二層スタック2の第2の層21のエッチングのストップ層として動作する。
【0067】
ステップd2)は、酸化錫SnO2に対して酸化亜鉛ZnOを選択的にエッチングすることを可能とするエッチング剤を用いて実行される。ステップd2)において、中間層10は、第1の二層スタック2の第1の層20のエッチングのストップ層として動作する。
【0068】
(中間層)
図2に示されるように、ステップa)は、好ましくは、構造化された第1の電極E1を第2の材料で形成された中間層10で覆うステップa
4)を含む。ステップa
4)は、当業者に知られた堆積技術、例えばALD、を用いて実行される。中間層10は、したがって構造化された第1の電極E1と第1の二層スタック2との中間に位置する。中間層10は、光共振器が青色光を透過させるように選択された厚さを有する。
【0069】
その後、ステップb)は、以下のように実行される:
-第1の二層スタック2及び中間層10は、光共振器が緑色光を透過させるように選択された総厚さを有し、
-第1及び第2の二層スタック2、3並びに中間層10は、光共振器が赤色光を透過させるように選択された総厚さを有する。
【0070】
酸化錫SnO2で形成された、そのような中間層10は、構造化された第1の電極E1を大気及び水分から保護することを可能とする。さらに、そのような中間層10は、光共振器のスペーサ層を形成することに部分的に貢献する。
【0071】
(サブピクセルの電気的絶縁)
図11及び12に示されるように、ステップe)は、好ましくは赤、緑及び青のサブピクセルPR、PV、PBの間に位置するための領域において第1及び第2の二層スタック2、3をエッチングするステップe
0)に先行される。ステップe
0)は、好ましくはドライエッチングのステップである。ステップe
0)は、
図12に示される。
【0072】
赤、緑、及び青のサブピクセルPR、PV、PBの間に位置するための領域において第1及び第2の二層スタック2、3を同時に(そして、非選択的に)エッチングすることを可能とするエッチング剤が、プロセス時間を減少させるため、好ましくは選択されることとなる。非限定的な例として、エッチング剤は、ヨウ化水素酸であってもよい。これに代えて、ステップe0)は、好ましくは塩素系の化学物質(Cl2/AR等)を用いた、反応性イオンエッチング(RIE)のステップであってもよい。
【0073】
図11に示されるように、ステップe
0)は、予め赤、緑及び青のサブピクセルPR、PV、PBの間に位置するための領域をフォトレジスト6で覆うステップを含む。
図13に示すように、フォトレジスト6は、ステップe)の前に当業者に知られた剥離技術を用いて除去される。
【0074】
赤、緑、及び青のサブピクセルPR、PV、PBの間に位置するための領域を、例えばレジストの形をとる誘電体7で埋めるステップが(
図16及び
図17に示されるように)、ステップe
0)に続いてもよい。非限定的な例として、誘電体7は、スピンコータで堆積された絶縁性レジストであり、2つの隣接するサブピクセルの間のみにレジストパッドを残すためにフォトリソグラフィを施されてもよい。これにより、赤、緑、及び青のサブピクセルPR、PV、PBの間の良好な電気的な絶縁を達成することができる。
【0075】
(有機発光層のスタック)
ステップc)で形成される有機発光層のスタック5の厚さは、赤、緑、及び青の各サブピクセルPR、PV、PBに対して一定である。
【0076】
非限定的な例として、有機発光層のスタック5は縦方向に並ぶ3つの発光層を含んでいてもよい。より具体的には、構造化された第1の電極E1がアノードであり、第2の電極E2がカソードである場合、スタック5は以下を含んでいてもよい。
-構造化された第1の電極E1上に形成された第1の正孔輸送層;
-第1の正孔輸送層上に形成された、青色光を出射する第1の発光層;
-第1の発光層上に形成された第1の電子輸送層;
-第1の電子輸送層上に形成される電荷発生層(相互接続層とも呼ばれる);
-電荷発生層上に形成される第2の正孔輸送層;
-第2の正孔輸送層上に形成される、緑色光を出射する第2の発光層;
-第2の発光層上に形成される、赤色光を出射する第3の発光層;
-第3の発光層上に形成され、第2の電極E2で被覆される第2の電子輸送層。
【0077】
変形例として、有機発光層のスタック5は以下を含んでいてもよい。
-縦方向に並んで配置されることなく、それぞれ青色光、緑色光、赤色光を出射する3つの発光層(従来の構造);
-従来の構造に配置された黄色光と青色光とをそれぞれ発する2つの発光層;
-縦方向に並んで配置された黄色光と青色光とをそれぞれ発する2つの発光層。
【0078】
ステップe)は、当業者に知られた堆積技術を用いて実行される。
【0079】
(第2の電極)
第2の電極E2は、好ましくは金属、より好ましくはAl、Ag、Pt、Cr、Ni及びWから選択された金属で形成され、又は透明導電性酸化物で形成される。
【0080】
第2の電極E2は、好ましくはカソードである。しかしながら、有機発光層のスタック5の構造が逆の場合、第2の電極E2はアノードであってもよい。
【0081】
ステップf)は、当業者に知られた堆積技術を用いて実行される。
【0082】
第2の電極E2は、好ましくは、第2の電極E2と有機発光層のスタック5とを空気及び水分から保護するのに適した(図示しない)封止層(encapsulation layer)で覆われる。
【0083】
構成がボトムエミッションを行う構成のとき、第2の電極E2は、可視領域で反射するように選択された厚さを有する。そして、第2の電極E2は、例えば金属で形成されてもよい。構成がトップエミッションを行う構成のとき、第2の電極E2は、可視領域で半透明となるように選択された厚さを有する。第2の電極E2は、例えば、透明導電性酸化物(ITO等)で形成されてもよい。
【0084】
本発明は、記載された実施形態に限定されない。当業者は、これらの技術的に実行可能な組み合わせを検討し、これらを等価物で置き換えることができる。