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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】透明アンテナ及びRFタグ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20240708BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H01Q1/38
G06K19/077 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020022883
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021129220
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 布士人
(72)【発明者】
【氏名】小松 和磨
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091556(JP,A)
【文献】特表2014-501465(JP,A)
【文献】特開2019-061697(JP,A)
【文献】特開2017-175540(JP,A)
【文献】特開2011-205635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、
前記接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、
前記アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、
下記A~C条件を1つ以上満たす、透明アンテナ。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W1は、前記第2導電性細線の線幅W2よりも広く、前記線幅W 1 が、0.5μm以上200μm以下であり、前記線幅W 2 が、0.25μm以上5.0μm以下である
条件B:前記第1導電性細線の高さT1は、前記第2導電性細線の高さT2よりも高い
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S1は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S2よりも大きい
【請求項2】
透明基材と、
前記透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、
前記接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、
前記アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、
下記A~C条件を1つ以上満たす、透明アンテナ。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W 1 は、前記第2導電性細線の線幅W 2 よりも広い
条件B:前記第1導電性細線の高さT 1 は、前記第2導電性細線の高さT 2 よりも高く、前記高さT1が、0.06μm以上、1.0μm以下であり前記高さT2が、0.05μm以上、0.95μm以下である
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S 1 は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S 2 よりも大きい
【請求項3】
透明基材と、
前記透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、
前記接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、
前記アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、
前記第1導電性細線のピッチP1は、前記第2導電性細線のピッチP2よりも小さく、
前記ピッチP1が、1.0μm以上10μm以下であり、
前記ピッチP2が、60μm以上300μm以下であり、
下記A~C条件を1つ以上満たす、透明アンテナ。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W 1 は、前記第2導電性細線の線幅W 2 よりも広い
条件B:前記第1導電性細線の高さT 1 は、前記第2導電性細線の高さT 2 よりも高い
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S 1 は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S 2 よりも大きい
【請求項4】
透明基材と、
前記透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、
前記接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、
前記アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、
下記A~C条件を1つ以上満たす、透明アンテナ。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W 1 は、前記第2導電性細線の線幅W 2 よりも広い
条件B:前記第1導電性細線の高さT 1 は、前記第2導電性細線の高さT 2 よりも高い
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S 1 は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S 2 よりも大きく、前記占有面積率S1は、30%以上80%以下であり前記占有面積率S2は、0.1%以上7.0%以下であ
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の透明アンテナと、
該透明アンテナの接合部と電気的に接合された半導体素子と、を備える、
RFタグ。
【請求項6】
前記半導体素子が、異方性導電性接着剤により、前記接合部と電気的に接合されたものである、
請求項に記載のRFタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明アンテナ及びRFタグに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車において、テレビ電波やFM電波等の各種電波、カーナビゲーションシステムに用いられるGPS(global positioning system)衛星からの位置座標情報に関する電波等を受信するためのアンテナとして、フロントガラス等に設置されるフィルムアンテナが知られている。
【0003】
また、フィルムアンテナは、輸送、搬送、製造、廃棄物管理、郵便物の追跡、航空機での手荷物照合、及び有料道路の通行料金管理を含む、多くの産業において幅広く使用される無線周波数識別(RFID)としても使用される。RFIDタグ及びラベルは、供給元から顧客に、及び顧客のサプライチェーンを通じて、配送を追跡するために有用である。
【0004】
このようなフィルムアンテナとして、アンテナを導電性パターンにより形成することで、導電性パターンの不可視性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-66610号公報
【文献】特開2011-91788号公報
【文献】特開2017-175540号公報
【文献】特開2003-209421号公報
【文献】特開2016-105624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術に記載のように、導電性パターンの微細化により、その不可視性が向上する。しかしながら、導電性パターンを微細化すると、アンテナを構成する導電性パターンとこれに電気的に接続されるICチップとの接合が困難になる場合があった。
【0007】
ここで、特許文献4には、ICチップのボンディングに際し、事前にICチップの周囲に子アンテナパターンを形成し、ICチップラベルを生成し、その後、ICチップラベルの子アンテナパターンが、基材上に形成された親アンテナパターンと導通するようにボンディングを行うことが開示されている。また、特許文献5には、異方性導電性ペースト(ACP)を用いて、ICチップとアンテナを構成する導電性パターンとを接合することが開示されている。
【0008】
しかしながら、特に、パターンの不可視性を向上させるために、アンテナを形成するパターンとして線幅5μm以下の導電性細線を採用すると、アンテナを構成する導電性パターンとこれに電気的に接続されるICチップとの接合が困難になる場合があった。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、半導体素子の接合性に優れた透明アンテナ及び該透明アンテナを備えるRFタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した。その結果、異方性導電性接着剤が接触する部分の導電性パターンの形状を調整することにより、上記課題を解決し得ることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
透明基材と、
前記透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、
前記接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、
前記アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、
下記A~C条件を1つ以上満たす、透明アンテナ。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W1は、前記第2導電性細線の線幅W2よりも広い
条件B:前記第1導電性細線の高さT1は、前記第2導電性細線の高さT2よりも高い
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S1は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S2よりも大きい
〔2〕
前記線幅W1が、0.5μm以上200μm以下であり、
前記線幅W2が、0.25μm以上5.0μm以下である、
〔1〕に記載の透明アンテナ。
〔3〕
前記高さT1が、0.06μm以上、1.0μm以下であり、
前記高さT2が、0.05μm以上、0.95μm以下である、
〔1〕又は〔2〕に記載の透明アンテナ。
〔4〕
前記第1導電性細線のピッチP1は、前記第2導電性細線のピッチP2よりも小さく、
前記ピッチP1が、1.0μm以上10μm以下であり、
前記ピッチP2が、60μm以上300μm以下である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の透明アンテナ。
〔5〕
前記占有面積率S1は、30%以上80%以下であり、
前記占有面積率S2は、0.1%以上7.0%以下である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の透明アンテナ。
〔6〕
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の透明アンテナと、
該透明アンテナの接合部と電気的に接合された半導体素子と、を備える、
RFタグ。
〔7〕
前記半導体素子が、異方性導電性接着剤により、前記接合部と電気的に接合されたものである、
〔6〕に記載のRFタグ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半導体素子の接合性に優れた透明アンテナ及び該透明アンテナを備えるRFタグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のRFタグのストレイトタイプの態様を示す平面図である。
図2図1のS1aの拡大図である。
図3】本実施形態のRFタグのループタイプの態様を示す平面図である。
図4図3のS1bの拡大図である。
図5図2及び図4のS2の拡大図(a)である。
図6図2及び図4のS3の拡大図(a)である。
図7】主に条件Aを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を表す概略断面図である。
図8】主に条件Bを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を表す概略断面図である。
図9】主に条件Cを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を表す概略断面図である。
図10】本実施形態のRFタグの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
〔透明アンテナ〕
本実施形態の透明アンテナは、透明基材と、透明基材上に配設された、接合部と、該接合部と電気的に接合されたアンテナ部と、を有し、接合部が、第1導電性細線を有する第1導電性パターンを有し、アンテナ部が、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有し、下記A~C条件を1つ以上満たす。
条件A:前記第1導電性細線の線幅W1は、前記第2導電性細線の線幅W2よりも広い
条件B:前記第1導電性細線の高さT1は、前記第2導電性細線の高さT2よりも高い
条件C:単位面積当たりの前記第1導電性パターンの占有面積率S1は、単位面積当たりの前記第2導電性パターンの占有面積率S2よりも大きい
【0016】
図1に、本実施形態の透明アンテナ10を備えるRFタグ100の一態様を示す平面図を示す。本実施形態の透明アンテナ10は、透明基材11と、透明基材11上に形成された集電部12とアンテナ部13とを有する。集電部12は、アンテナ13部と電気的に接続されるものであり、アンテナ部13が所定の周波数に応答して発生した電気を、半導体素子14に向かって集電する部分をいう。また、接合部121は、集電部12のうち、半導体素子14と接合する部分をいう。以下、集電部12とその接合部121を区別する必要がなく、両方に関するものに関しては、「集電部12(接合部121)」と表記することがある。また、単に「集電部12」と記載する場合であっても、集電部12における接合部121以外の部分を意味するものではない。
【0017】
図2に、図1のS1aの拡大図を示す。図2において、集電部12は2以上の先端が対向した接合部121を有する。この接合部121には、異方性導電性接着剤などにより、半導体素子14が電気的に接合される。また、アンテナ部13は、その接合部121と電気的に接続され、所定の周波数の電波を受信して半導体素子14に電気信号を伝えたり、半導体素子14の出力に応じて所定の周波数の電波を送信したりすることができる。なお、図2では、台形状の集電部12を示すが、集電部12の形状はこれに制限されない。一例として、図2における集電部12は、平面視において半導体素子の投影面積と同等~数倍の面積を有し、接合部121に半導体素子14が接合された際に、集電部12がほぼおおわれるものが好ましい。この場合、集電部12は実質的に接合部121のみで構成されているともいえる。
【0018】
図1には、2つのアンテナ部13を有し、その間に接合部121を有する集電部13が設けられたストレイトタイプの透明アンテナ10及びRFタグ100を示すが、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13の態様はこれに制限されるものではない。例えば、本実施形態の透明アンテナ10やRFタグ100は、図3のように、集電部12がループ形状になっており、ループ形状の集電部12の周囲にアンテナ部13が設置されたループタイプの透明アンテナ10及びRFタグ100であっていてもよい。
【0019】
図4に、図3のS1bの拡大図を示す。図4に示すように、ループタイプの集電部12は、ループの先端が対向した接合部121を有する。接合部121は、集電部12の先端であって、半導体素子14と接合する場所である。
【0020】
また、本実施形態の透明アンテナは、λ/2ダイポールアンテナの構成に制限されず、接地型λ/4モノポールアンテナなど、他のアンテナ構成を有してもよく、それに応じて、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13は種々の態様をとることができる。
【0021】
次いで、半導体素子の接合性ついて説明する。上記のとおり、接合部121には、異方性導電性接着剤などにより、半導体素子14が電気的に接合される。異方性導電性接着剤は、主に、樹脂バインダーと該樹脂バインダー中に分散した導電性微粒子を含むものであり、電極間にこれらを介在させて加熱しつつ圧力を加えることで、樹脂バインダーが押し広げられ、導電性微粒子が電極を電気的に接合するものである。この接合の工程の違いにより、異方性導電性接着剤は、フィルムタイプ、ペーストタイプ、または液体タイプなどが知られている。
【0022】
このような接合では、導電性微粒子が電極を電気的に接合できるような厚さまで異方性導電性接着剤を押し広げる必要がある。そのため、接合する領域に対しては、異方性導電性接着剤が十分に濡れ広がることが望ましい。しかしながら、半導体素子の周辺領域に異方性導電性接着剤がにじみ出て濡れ広がりすぎると、RFタグの外観不良を生じるほか、意図しない電気的接合も生じる可能性がある。特に、透明アンテナを用いた場合、半導体素子の周辺領域に異方性導電性接着剤に由来する金属質の部分が生じると、その金属質部分が特に目立ち、透明という商品価値を損なう結果となる。また、半導体素子の小型化によって、異方性導電性接着剤の使用量の調整はより困難となり、滲出による歩留まりの低下が生じやすい傾向にある。
【0023】
これに対して、本実施形態においては、接合部121を構成する第1導電性パターン300の線幅、高さ、または占有面積率を調整することで、接合部に異方性導電性接着剤の拡散防止機能を持たせる。より具体的には、第1導電性パターン300の線幅を広くするか(条件A)、高さを高くするか(条件B)、または占有面積率を高くする(条件C)。なお、集電部12において、接合部121とその他の部分における、第1導電性パターン300の線幅、高さ、または占有面積率は、一致していても異なっていてもよい。
【0024】
これにより、第1導電性パターン300の第1導電性細線を超えて、異方性導電性接着剤が滲出することを抑制することが可能となり、パターン間での異方性導電性接着剤の広がりの停止位置を精度よく制御することができる。また、導電性微粒子21が第1導電性パターン300と半導体素子14とを接合しやすくなる。そのため、接合不良が低減し、配線接合の安定性がより向上する。
【0025】
なお、本実施形態において接合性の向上とは、上記接合信頼性の向上と外観不良の抑制をいうものとする。以下、各構成について詳説する。
【0026】
〔透明基材〕
本実施形態では透明基材11を用いる。ここで、「透明」とは、可視光透過率が、好ましくは80%以上であることをいい、より好ましくは90%以上であることをいい、さらに好ましくは95%以上であることをいう。ここで、可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定することができる。
【0027】
透明基材11は、1種の材料からなるものであっても、2種以上の材料が積層されたものであってもよい。また、基材が、2種以上の材料が積層された多層体である場合、基材は、有機基材又は無機基材同士が積層されたものであっても、有機基材及び無機基材が積層されたものであってもよい。
【0028】
透明基材11の態様としては、コア層の単層シート、コア層と第1最外層とを有する積層シート、コア層と第2最外層とを有する積層シート、第1最外層と第2最外層とを有する積層シート、コア層と第1最外層と第2最外層とを有する積層シートが挙げられる。また、上記積層シートにおいて、コア層と第1最外層の間、コア層と第2最外層の間、または、第1最外層と第2最外層の間には、さらに他の層を有していてもよい。
【0029】
なお、透明基材11がコア層の単層シートである場合、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13はコア層の表面に形成される。また、透明基材11が積層シートである場合、第1最外層は、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13が形成される面を構成する層を意味し、第2最外層は第1最外層の裏面を意味する。以下、各層の構成について詳説する。
【0030】
(コア層)
コア層を構成する材料は、特に制限されないが、基材の機械的強度の向上に寄与するものが好ましい。そのようなコア層の材料としては、特に限定されないが、例えば、ガラス等の透明無機基材;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の透明有機基材が挙げられる。このなかでも、ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、透明アンテナを製造するための生産性(コスト削減効果)がより優れる。また、ポリイミドを用いることにより、透明アンテナの耐熱性がより優れる。ポリイミドを用いる場合は、可視光の光透過性が優れる、いわゆる透明ポリイミドを用いることとより好ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリエチレンナフタレートを用いることにより、透明基材と導電性細線との密着性がより優れる。
【0031】
コア層は、1種の材料からなるものであっても、2種以上の材料が積層されたものであってもよい。また、コア層が、2種以上の材料が積層された多層体である場合、基材は、有機基材又は無機基材同士が積層されたものであっても、有機基材及び無機基材が積層されたものであってもよい。
【0032】
コア層の厚さは、好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0033】
(第1最外層)
透明基材11が積層体である場合、第1最外層は、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13が形成される面を構成する層となる。第1最外層を構成する材料は、特に制限されないが、コア層と、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13それぞれとの密着性向上に寄与するものが好ましい。また、透明基材11が、第1最外層と第2最外層とを有し、コア層を有しない態様の場合には、第1最外層は第2最外層と、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13それぞれとの密着性向上に寄与するものが好ましい。
【0034】
このような第1最外層に含まれる成分としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素化合物(例えば、(ポリ)シラン類、(ポリ)シラザン類、(ポリ)シルチアン類、(ポリ)シロキサン類、ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、塩化ケイ素、ケイ素酸塩、ゼオライト、シリサイド等)、アルミニウム化合物(例えば、酸化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えばフッ化マグネシウム)等が挙げられる。
【0035】
この中でも、ケイ素化合物が好ましく、シロキサン類がより好ましい。このような成分を用いることにより、透明アンテナの透明性及び耐久性がより向上する傾向にある。
【0036】
ケイ素化合物としては、特に制限されないが、例えば、多官能性オルガノシランの縮合物、多官能性オルガノシラン又はそのオリゴマーとポリ酢酸ビニルとを加水分解反応させて得られた重縮合物などが挙げられる。
【0037】
多官能性オルガノシランとしては、特に制限されないが、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性オルガノシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどの3官能性オルガノシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性オルガノシランなどが挙げられる。
【0038】
第1最外層は、上記第1最外層に含まれる成分を含む組成物をコア層に塗布、乾燥する方法により成膜することができる。また、第1最外層は、PVD、CVDなどの気相成膜法によって製膜してもよい。第1最外層を形成するための組成物は、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、結着剤等を含有してもよい。
【0039】
第1最外層の厚さは、好ましくは0.01μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上1μm以下である。第1最外層の厚さが上記範囲内であることにより、上記密着性がより向上するほか、透明アンテナの透明性及び耐久性がより向上する傾向にある。
【0040】
第1最外層をコア層上に積層することで、例えば、集電部12(接合部121)及びアンテナ部13をプラズマ等の焼成手段でインク中の金属成分を焼結させて形成する際に、プラズマ等によって集電部12(接合部121)及びアンテナ部13で被覆されていない箇所のコア層のエッチングを防ぐことができる。
【0041】
さらにこの第1最外層は静電気による集電部12(接合部121)及びアンテナ部13の断線を防ぐために、帯電防止機能を持っていることが好ましい。第1最外層が帯電防止機能を有するために、第1最外層は導電性無機酸化物及び導電性有機化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
【0042】
(第2最外層)
透明基材11が積層体である場合、第2最外層は、第1最外層の裏面を意味する。第2最外層に含まれる成分としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系化合物、アルキド系化合物、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、ポリエチレンワックス、脂肪酸、脂肪酸エステルが挙げられる。このなかでも、メラミン系化合物、アルキド系化合物、フッ素系化合物、シリコーン系化合物が好ましく、メラミン系化合物、アルキド系化合物がより好ましい。このような成分を用いることにより、透明アンテナの透明性及び耐久性がより向上する傾向にある。
【0043】
第2最外層の厚さは、好ましくは0.01μm以上100μm以下であり、より好ましくは0.01μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以上1μm以下である。第2最外層の厚さが上記範囲内であることにより、透明アンテナ10の透明性及び耐久性がより向上する傾向にある。
【0044】
(その他の層)
コア層と第1最外層の間、コア層と第2最外層の間、または、第1最外層と第2最外層の間に配される他の層としては、特に制限されないが、例えば、易接着層が挙げられる。易接着層は、コア層と第1最外層、コア層と第2最外層、または、第1最外層と第2最外層の接着性を向上する目的で用いられる。
【0045】
〔接合部〕
接合部121は、集電部12の先端であって、半導体素子14と接合する場所である。接合部121(集電部12)は、アンテナ部13と電気的に接合されており、第1導電性パターン300を有する。ここで、第1導電性パターン300とは、連続したパターンであり、パターン中の任意の点から他の任意の点までの導電性を有するものである。なお、集電部12は、電気的に独立した一又は複数の第1導電性パターン300を有していてもよい。また、集電部12において第1導電性パターン300が形成されていない部分は、第1開口部301と称する。
【0046】
図2及び4に、図1のS1a部分及び図3のS1bの拡大図を示す。図2及び4では、太い導電性細線からなる第1導電性パターン300で形成された集電部12(接合部121)と、より細い導電性細線からなる第2導電性パターン400で形成されたアンテナ部13とが、電気的に接合されている例を示す。
【0047】
図5に、接合部121の一態様として、図2及び4のS2部分の拡大図を表す。図5において、第1導電性パターン300は、複数の第1導電性細線が網目状に交差して形成されるグリッドパターンとして示すが、第1導電性パターン300はこれに限定されず第1導電性細線が交差し導電性が維持される他のパターンであってもよい。また、第1導電性パターン300は規則的なパターンであっても不規則なパターンであってもよい。さらに、第1導電性細線は、直線であっても、曲線であってもよい。
【0048】
第1開口部301の形状としては、特に制限されないが、例えば、三角形;正方形、長方形、ひし形等の四角形;五角形;六角形;あるいは複数種の多角形を組み合わせたものが挙げられる。
【0049】
集電部12の構成は、特に制限されないが、例えば、複数のアンテナ部13を接続するように、半導体素子14でほぼ隠れる大きさの集電部12が設けられる構成や(図1参照)、ループ形状の集電部12の一部に半導体素子14が接合され、ループ形状の集電部12の外周にアンテナ部13が設けられる構成(図3参照)、1つのアンテナ部13の任意の箇所に集電部12が設けられる構成が挙げられる。また、集電部12における半導体素子14の接合位置(接合部121)は特に制限されるものではないが、集電部12の先端が対向する位置が好ましい。
【0050】
〔アンテナ部13〕
アンテナ部13は、集電部12(接合部121)と電気的に接合されており、第2導電性パターン400を有する。ここで、第2導電性パターン400とは、連続したパターンであり、パターン中の任意の点から他の任意の点までの導電性を有するものである。なお、アンテナ部13は、電気的に独立した複数の第2導電性パターン400を有していてもよい。また、アンテナ部13において第2導電性パターン400が形成されていない部分は、第2開口部401と称する。
【0051】
アンテナ部13は、その種類に応じて種々の形状を有する。アンテナ部13の種類としては、特に制限されないが、例えば、電界の変化により電流を生じさせるダイポールアンテナやパッチアンテナ等の電界アンテナや、磁界の変化により電流を生じさせるループアンテナなどの磁界アンテナが挙げられる。
【0052】
また、アンテナ部13の外形としては、公知形状を利用することができる。例えば、線状のダイポールアンテナとしては、直線型に限られず、折り返し型、メアンダ型、ヘリカル型、スパイラル型など各種公知の形状が挙げられる。また、パッチアンテナについても、多角形、円形などの任意の外形のほか、それらに切込みを有する形状が挙げられる。さらに、アンテナ部13は、これら形状を複数組み合わせたものであってもよい。
【0053】
また、アンテナ部13についても、第2導電性細線を有する第2導電性パターンを有するものが好ましい。図6に、アンテナ部13の一態様として、図2及び4のS3部分の拡大図を表す。図6において、第2導電性パターン400は、複数の第2導電性細線が網目状に交差して形成されるグリッドパターンとして示すが、第2導電性パターン400はこれに限定されず第2導電性細線が交差し導電性が維持される他のパターンであってもよい。また、第2導電性パターン400は規則的なパターンであっても不規則なパターンであってもよい。さらに、第2導電性細線は、直線であっても、曲線であってもよい。
【0054】
第2導電性パターン400が形成されていない部分、すなわち第2開口部401の形状としては、特に制限されないが、例えば、三角形;正方形、長方形、ひし形等の四角形;五角形;六角形;あるいは複数種の多角形を組み合わせたものが挙げられる。
【0055】
図1及び図3は、アンテナ部13が電界アンテナである場合のRFタグの構成を示す例である。図1では、半導体素子14でほぼ隠れる大きさの比較的小さい集電部12の周りに2つのアンテナ部13が形成されており、図3においては、ループ形状の集電部12の周りを囲うようにアンテナ部13が形成されている。図1及び3ともに、アンテナ部13は長方形のような外形を有する。図1及び3において、アンテナ部13は、導電層が平面にベタ塗された態様ではなく、第2開口部401と第2導電性パターン400により構成されるグリッドパターンにより構成される。これにより、アンテナ部13の電界アンテナとしての機能を確保しつつ、アンテナ部が形成された領域の透明性を確保することができる。
【0056】
(第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400)
第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400は、導電性成分を含む。導電性成分としては、特に制限されないが、例えば、導電性金属、導電性高分子などが挙げられる。また、第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400は、非導電性成分を含んでもよい。導電性金属としては、特に制限されないが、例えば、金、銀、銅、及びアルミニウムが挙げられる。このなかでも、銀又は銅が好ましく、比較的安価な銅であることがより好ましい。このような導電性金属を用いることにより、透明アンテナの導電性が一層優れる傾向にある。また、導電性高分子としては、公知のものを用いることができ、ポリアセチレンやポリチオフェンなどが挙げられる。
【0057】
また、非導電性成分としては、特に制限されないが、例えば、金属酸化物や金属化合物、及び有機化合物が挙げられる。より具体的には、これら非導電性成分としては、後述するインクに含まれる成分に由来する成分であって、インクに含まれる成分のうち焼成を経た後の導電性細線に残留する金属酸化物、金属化合物、及び有機化合物が挙げられる。
【0058】
第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400における導電性成分の含有割合は、各々独立して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。導電性成分の含有割合の上限は、特に制限されないが、100質量%である。また、第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400における非導電性成分の含有割合は、各々独立して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。非導電性成分の含有割合の下限は、特に制限されないが、0質量%である。
【0059】
(線幅W)
第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400における第1導電性細線及び第2導電性細線の線幅Wは、透明基材11の導電性パターンが配された面側から、導電性細線を透明基材11の表面上に投影したときの線幅Wをいう。台形の断面を有する導電性細線においては、透明基材11と接している導電性細線の面の幅が線幅Wとなる。
【0060】
第1導電性細線の線幅W1は、好ましくは0.5~200μmであり、より好ましくは1~150μm、さらに好ましくは2~100μmである。第1導電性細線の線幅W1が上記範囲内であることにより、接合性がより向上するとともに、利得等のアンテナ特性がより向上する傾向にある。また、第1導電性細線の線幅W1が200μm以下であることにより、第1導電性パターン300の視認性がより低下し、集電部12(接合部121)の透明性がより向上する傾向にある。
【0061】
第2導電性細線の線幅W2は、好ましくは0.25~7.5μmであり、より好ましくは0.25~5.0μm、さらに好ましくは0.25~4.0μm、特に好ましくは0.50~3.0μmである。第2導電性細線の線幅W2が0.25μm以上であることにより、アンテナ部13の導電性がより向上する傾向にある。また、導電性細線表面の酸化や腐食等による導電性の低下を十分に抑制できる。他方、第2導電性細線の線幅W2が10.0μm以下であることにより、第2導電性パターン400の視認性がより低下し、アンテナ部13の透明性がより向上する傾向にある。
【0062】
条件Aとして、本実施形態の第1導電性細線の線幅W1は、第2導電性細線の線幅W2よりも広いことが好ましい。図7に、主に条件Aを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を示す概略断面図を示す。線幅W1を広くすることにより、異方性導電性接着剤は線幅の広い第1導電性細線を超えにくくなり、滲出がより抑制される。その差(W1-W2)は、好ましくは4~200μmであり、より好ましくは10~150μmであり、さらに好ましくは20~100μmである。差(W1-W2)が上記範囲内であることにより、接合性がより向上する傾向にある。
【0063】
なお、第1導電性パターン300及び/又は第2導電性パターン400において、線幅W1及び/又は線幅W2が、一定の値ではなく、複数の値となるような場合には、すべての線幅W1及び/又は線幅W2が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0064】
(高さT)
第1導電性細線の高さT1は、好ましくは0.06以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.08以上0.9μm以下あり、さらに好ましくは0.11以上~0.8μm以下である。高さT1が0.06μm以上であることにより、導電性がより向上する傾向にある。また、導電性細線表面の酸化や腐食等による導電性の低下を十分に抑制できる傾向にある。他方、高さT1が1.0μm以下であることにより、広い視野角において高い透明性が発現される傾向にある。
【0065】
第2導電性細線の高さT2は、好ましくは0.05以上0.95μm以下であり、より好ましくは0.07以上0.8μm以下あり、さらに好ましくは0.1以上0.5μm以下である。高さT2が0.05μm以上であることにより、導電性がより向上する傾向にある。また、導電性細線表面の酸化や腐食等による導電性の低下を十分に抑制できる傾向にある。他方、高さT2が0.95μm以下であることにより、広い視野角において高い透明性が発現される傾向にある。
【0066】
条件Bとして、本実施形態の第1導電性細線の高さT1は、第2導電性細線の高さT2よりも高いことが好ましい。図8に、主に条件Bを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を表す概略断面図を示す。高さT1を高くすることにより、異方性導電性接着剤は線幅の高い第1導電性細線を超えにくくなり、滲出がより抑制される。さらに、導電性微粒子21が第1開口部301に収まりやすくなるため、第1導電性パターン300と半導体素子14との配線接合の安定性がより向上する傾向にある。その差(T1-T2)は、好ましくは0.01~0.9μmであり、より好ましくは0.05~0.8μmであり、さらに好ましくは0.1~0.7μmである。差(T1-T2)が上記範囲内であることにより、接合性がより向上する傾向にある。
【0067】
なお、第1導電性パターン300及び/又は第2導電性パターン400において、高さT1及び/又は高さT2が、一定の値ではなく、複数の値となるような場合には、すべての高さT1及び/又は高さT2が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0068】
(ピッチP)
第1導電性細線のピッチP1は、好ましくは0.5~25μmであり、より好ましくは1.0~10μmであり、さらに好ましくは2.0~7.0μmである。ピッチP1が上記範囲内であることにより、接合性がより向上するとともに、利得等のアンテナ特性がより向上する傾向にある。なお、ピッチPは、導電性細線間の距離である。
【0069】
第2導電性細線のピッチP2は、好ましくは20~1000μmであり、より好ましくは40~750μmであり、さらに好ましくは60~300μmである。ピッチP2が20μm以上であることにより、アンテナ部13の透明性がより向上する傾向にある。また、ピッチP2が1000μm以下であることにより、導電性がより向上する傾向にある。
【0070】
条件A~C以外の条件Dとして、本実施形態の第1導電性細線のピッチP1は、第2導電性細線のピッチP2よりも小さいことが好ましい。これにより、第1導電性パターンが密に配置されることになる。そのため、異方性導電性接着剤は密に配置された第1導電性パターンを超えにくくなり、滲出がより抑制される。さらに、導電性微粒子21が収まる第1開口部301の密度も高くなるため、第1導電性パターン300と半導体素子14との配線接合の安定性がより向上する傾向にある。その差(P2-P1)は、好ましくは30~1000μm以下であり、より好ましくは50~500μm以下であり、さらに好ましくは100~300μmである。差(P2-P1)が上記範囲内であることにより、接合部の視認性が低下し、意匠性が向上する傾向にある。
【0071】
なお、第1導電性パターン300及び/又は第2導電性パターン400において、ピッチP1及び/又はピッチP2が、一定の値ではなく、複数の値となるような場合には、すべてのピッチP1及び/又はピッチP2が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0072】
(占有面積率S)
第1導電性パターン300の占有面積率S1は、好ましくは30~90%であり、より好ましくは30~80%であり、さらに好ましくは40~80%であり、特に好ましくは50~80%である。占有面積率S1が上記範囲内であることにより、接合性がより向上するとともに、利得等のアンテナ特性がより向上する傾向にある。
【0073】
第2導電性パターン400の占有面積率S2は、好ましくは0.1~7.0%であり、より好ましくは0.5~5.0%であり、さらに好ましくは1.0~3.0%である。占有面積率S2が0.1%以上であることにより、アンテナ部13の特性がより向上する傾向にある。また、占有面積率S2が7.0%以下であることにより、アンテナ部13の透明性がより向上する傾向にある。
【0074】
条件Cとして、本実施形態の第1導電性パターンの占有面積率S1は、第2導電性パターンの占有面積率S2よりも大きいことが好ましい。図9に、主に条件Cを充足する本実施形態のRFタグの接合部上に、異方性導電性接着剤を介して半導体素子が接合された状態を表す概略断面図を示す。占有面積率S1を大きくすることにより、第1導電性パターンが密に配置されることになる。そのため、異方性導電性接着剤は密に配置された第1導電性パターンを超えにくくなり、滲出がより抑制される。さらに、導電性微粒子21が収まる第1開口部301の密度も高くなるため、第1導電性パターン300と半導体素子14との配線接合の安定性がより向上する傾向にある。また、図9では、線幅W1を細くして占有面積率S1を高くする例を示しているが、これに代えて又は加えて、ピッチP1を狭くすることで占有面積率S1を高くしてもよい。その差(S1-S2)は、好ましくは3~50%であり、より好ましくは9~50%であり、さらに好ましくは15~50%である。差(S1-S2)が上記範囲内であることにより、接合部の視認性が低下し、意匠性が向上する傾向にある。
【0075】
なお、「導電性パターンの占有面積率S」とは、透明基材上の導電性パターンが形成されている領域について以下の式で算出することができる。透明基材上の導電性パターンが形成されている領域とは、図6のS2やS3で示されるような範囲であり、導電性パターンが形成されていない縁部等は除かれる。
導電性パターンの占有面積率S
=(導電性パターンの占める面積/透明基材11の面積)×100
【0076】
導電性パターンの線幅、高さ、ピッチ、及び占有面積率等は、透明アンテナの表面又は断面を電子顕微鏡、レーザー顕微鏡や光学顕微鏡等により確認することができる。導電性パターンの線幅、及びピッチを所望の範囲に調整する方法としては、後述する透明アンテナの製造方法において用いる版の溝を調整する方法、インク中の金属粒子の平均粒子径を調整する方法等が挙げられる。
【0077】
(形状)
第1導電性細線及び第2導電性細線の断面形状は、導電性細線の線幅W及び高さTで規定することができる。導電性細線の高さTを基準に、透明基材11と導電性細線の界面からの高さを0.50T及び0.90Tと規定する。また、高さ0.50Tにおける導電性細線の幅をW0.50とし、高さ0.90Tにおける導電性細線の幅をW0.90とする。このとき、W0.50/W0は、好ましくは0.70~0.99であり、より好ましくは0.75~0.99以下であり、さらに好ましくは0.80~0.95である。また。W0.90/W0.50は、好ましくは0.50~0.95であり、より好ましくは0.55~0.90であり、さらに好ましくは0.60~0.85である。本実施形態の透明アンテナにおいて、W0.50/W0がW0.90/W0.50よりも大きいことが好ましい。すなわち透明基材11側の導電性細線の界面から0.50Tの厚さにおける高さ位置から0.90Tの厚さにおける高さ位置に向かって導電性細線の幅が漸減することが好ましい。
【0078】
後述するように本実施形態の透明アンテナは、インクを用いて印刷法により形成することができ、当該方法により形成された導電性細線は上記のような特徴的な形状を有する。その他の導電性細線の形成方法としては、ナノインプリント法やリソグラフィー法を用いる方法、その他なのワイヤーを用いる方法なども考えられるが、これら方法で作成された導電性細線と、印刷法により形成した導電性細線とは、上記形状において相違する。
【0079】
(シート抵抗)
第1導電性パターン300及び第2導電性パターン400のシート抵抗は、好ましくは0.1Ω/sq以上1,000Ω/sq以下であり、より好ましくは0.1Ω/sq以上500Ω/sq以下であり、さらに好ましくは0.1Ω/sq以上100Ω/sq以下であり、よりさらに好ましくは0.1Ω/sq以上20Ω/sq以下であり、さらにより好ましくは0.1Ω/sq以上10Ω/sq以下である。
【0080】
透明アンテナのシート抵抗は、以下の方法により測定できる。先ず、透明アンテナから導電性パターンが全面に配された部分を矩形状に切り出し測定サンプルを得る。得られた測定サンプルの両端部に導電性パターンと電気的に接続されたシート抵抗測定用の集電部を形成し、両端部に設けられた集電部間の電気抵抗R(Ω)を測定する。上述した電気抵抗R(Ω)、及び測定サンプルの集電部間の距離に相当する幅方向の長さL(mm)、奥行方向の長さD(mm)を用いて、次式によりシート抵抗Rs(Ω/sq)を算出できる。
s=R/L×D
【0081】
透明アンテナ10のシート抵抗は、導電性細線の高さを向上させることにより、低下する傾向にある。また、導電性細線を構成する金属材料種の選択によっても調整することが可能である。
【0082】
(可視光透過率)
第1導電性パターン300の可視光透過率VT1は、好ましくは30~80%であり、より好ましくは40~75%であり、さらに好ましくは45~70%である。ここで、可視光透過率は、JIS K 7361-1:1997の全光線透過率に準拠して、その可視光(360~830nm)の範囲の透過率を算出することで測定することができる。
【0083】
第2導電性パターン400の可視光透過率VT2は、好ましくは80%以上100%以下であり、より好ましくは90%以上100%以下である。
【0084】
透明アンテナ10の可視光透過率は、導電性パターンの線幅を小さくしたり、占有面積率を向上させたりすることにより、向上する傾向にある。
【0085】
〔透明アンテナの製造方法〕
透明アンテナの製造方法としては、透明基材11上に、金属成分を含むインクを用いてパターンを形成するパターン形成工程と、インクを焼成して集電部12(接合部121)とアンテナ部13とを形成する焼成工程とを有する方法が挙げられる。また、透明基材11の表面を処理する表面処理工程を有していてもよい。
【0086】
〔表面処理工程〕
表面処理工程では、コア層の一方の面に第1最外層を設けたり、透明基材11の表面粗さ調整したりすることができる。
【0087】
第1最外層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、PVD、CVD等の気相成膜法を用いてコア層の一方の面に第1最外層を構成する成分を成膜する方法が挙げられる。また、別の方法としては、第1最外層を形成する成分を含む組成物をコア層の一方の面に塗布し、乾燥させることにより第1最外層を形成する方法が挙げられる。
【0088】
一般に平滑である透明基材11の表面粗さを増加させる方法としては、特に制限されないが、例えば、コア層と第1最外層との間に、表面粗さの大きい易接着層を設け、その易接着層上に第1最外層を形成する方法が挙げられる。これにより、第1最外層は易接着層の表面粗さが反映されたものとなる。
【0089】
〔パターン形成工程〕
パターン形成工程は、金属成分を含むインクを用いてパターンを形成する工程である。パターン形成工程は、所望の導電性パターンの溝を有する版を用いる有版印刷方法であれば特に限定されないが、例えば、転写媒体表面にインクをコーティングする工程と、インクをコーティングした転写媒体表面と、凸版の凸部表面とを対向させて、押圧、接触して、凸版の凸部表面に転写媒体表面上のインクを転移させる工程と、インクが残存した転写媒体表面と透明基材11の面とを対向させて、押圧、接触して、転写媒体表面に残ったインクを透明基材11の面に転写する工程とを有する。なお、透明基材11に第1最外層が形成されている場合には、第1最外層表面にインクが転写される。
【0090】
(インク)
上記パターン形成工程に用いられるインクは、導電性成分と溶剤を含み、必要に応じて、界面活性剤、分散剤、還元剤等を含んでもよい。導電性成分が金属成分である場合、金属成分は金属粒子としてインクに含まれていてもよいし、金属錯体としてインクに含まれていてもよい。
【0091】
金属粒子の平均一次粒径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、さらに好ましくは30nm以下である。また、金属粒子の平均一次粒径の下限は特に制限されないが、1nm以上が挙げられる。金属粒子の平均一次粒径が100nm以下であることにより、得られる導電性細線の線幅Wをより細くすることができる。なお、「平均一次粒径」とは、金属粒子1つ1つ(所謂一次粒子)の粒径をいい、金属粒子が複数個集まって形成される凝集体(所謂二次粒子)の粒径である平均二次粒径とは区別される。
【0092】
金属粒子としては、特に制限されないが、例えば、酸化銅等の金属酸化物や金属化合物、コア部が銅でありシェル部が酸化銅であるようなコア/シェル粒子が挙げられる。金属粒子の態様は、分散性や焼結性の観点から、適宜決めることができる。
【0093】
界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤を用いることにより、転写媒体(ブランケット)へのインクのコーティング性、コーティングされたインクの平滑性が向上し、より均一な塗膜が得られる傾向にある。なお、界面活性剤は、金属成分を分散可能であり、かつ焼成の際に残留しにくいよう構成されていることが好ましい。
【0094】
また、分散剤としては、特に制限されないが、例えば、金属成分表面に非共有結合又は相互作用をする分散剤、金属成分表面に共有結合をする分散剤が挙げられる。非共有結合又は相互作用をする官能基としてはリン酸基を有する分散剤が挙げられる。このような分散剤を用いることにより、金属成分の分散性がより向上する傾向にある。
【0095】
さらに、溶剤としては、モノアルコール及び多価アルコール等のアルコール系溶剤;アルキルエーテル系溶剤;炭化水素系溶剤;ケトン系溶剤;エステル系溶剤などが挙げられる。これらは単独で使用されてもよく、1種以上で併用されても良い。たとえば、炭素数10以下のモノアルコールと炭素数10以下の多価アルコールとの併用などが挙げられる。このような、溶剤を用いることにより、転写媒体(ブランケット)へのインクのコーティング性、転写媒体から凸版へのインクの転写性、転写媒体から透明基材へのインクの転写性、及び金属成分の分散性がより向上する傾向にある。なお、溶剤は、金属成分を分散可能であり、かつ焼成の際に残留しにくいよう構成されていることが好ましい。
【0096】
〔焼成工程〕
焼成工程では、例えば、透明基材11の面に転写されたインク中の金属成分を焼結し、集電部12(接合部121)とアンテナ部13を形成する。焼成は、金属成分が融着して、金属成分焼結膜を形成することができる方法であれば特に制限されない。焼成は、例えば、焼成炉で行ってもよいし、プラズマ、加熱触媒、紫外線、真空紫外線、電子線、赤外線ランプアニール、フラッシュランプアニール、レーザーなどを用いて行ってもよい。得られる焼結膜が酸化されやすい場合には、非酸化性雰囲気中において焼成することが好ましい。また、インクに含まれ得る還元剤のみで金属酸化物等が還元されにくい場合には、還元性雰囲気で焼成することが好ましい。
【0097】
非酸化性雰囲気とは酸素等の酸化性ガスを含まない雰囲気であり、不活性雰囲気と還元性雰囲気がある。不活性雰囲気とは、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオンや窒素等の不活性ガスで満たされた雰囲気である。また、還元性雰囲気とは、水素、一酸化炭素等の還元性ガスが存在する雰囲気を指す。これらのガスを焼成炉中に充填して密閉系としてインクの塗布膜(分散体塗布膜)を焼成してもよい。また、焼成炉を流通系にしてこれらのガスを流しながら分散体塗布膜を焼成してもよい。分散体塗布膜を非酸化性雰囲気で焼成する場合には、焼成炉中を一旦真空に引いて焼成炉中の酸素を除去し、非酸化性ガスで置換することが好ましい。また、焼成は、加圧雰囲気で行なってもよいし、減圧雰囲気で行なってもよい。
【0098】
焼成温度は、特に制限はないが、好ましくは20℃以上400℃以下であり、より好ましくは50℃以上300℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上200℃以下である。焼成温度が400℃以下であることにより、耐熱性の低い基板を使用することができるので好ましい。また、焼成温度が20℃以上であることにより、焼結膜の形成が十分に進行し、導電性が良好となる傾向にあるため好ましい。なお、得られる焼結膜は、金属成分に由来する導電性成分を含み、そのほか、インクに用いた成分や焼成温度に応じて、非導電性成分を含みうる。
【0099】
〔RFタグ〕
本実施形態のRFタグ100は、上記透明アンテナ10と、該透明アンテナ10の接合部121と電気的に接合された半導体素子14と、を備える。図9に、本実施形態のRFタグ100の断面図を示す。図9に示すように、半導体素子14は、異方性導電性ペースト又は異方性導電性フィルムなどの異方性導電性接着剤15により、接合部121と電気的に接合されたものであることが好ましい。
【0100】
図1及び2には、電池を内蔵しておらず、リーダー・ライターから受信した電波をエネルギー源として動作するパッシブタグであるRFタグ100を示すが、本実施形態のRFタグ100は、さらに電池(不図示)を内蔵し、その電力を送受信や内部回路用電源として使用するアクティブタグや、その他センサやセンサの電源としての電池を内蔵するセミパッシブタグであってもよい。なお、本実施形態においてRFタグとは、上記透明アンテナ10を有することにより特定の周波数の送受信が可能であるものをいう。従って、ICタグと呼ばれるものであっても上記構成を満たすものであれば、本実施形態におけるRFタグに含まれる。
【0101】
半導体素子14は、RFタグ100の用途に応じて公知のものを用いることができる。半導体素子14の構成は、特に制限されないが、例えば、記憶部、電源整流部、受信部、制御部、及び送信部などの機能部を有する。
【0102】
各機能部と本実施形態のRFタグ100がパッシブ型である場合の動作の一例について説明する。まず、RFタグ100のアンテナ部13が、リーダー・ライターからの電波を受信し、電磁誘導などにより起電力が発生する。そして、この起電力によりRFタグ100の半導体素子14が起動する。その際、電源整流部は、アンテナ部13に入力された交流を直流に変換し、半導体素子14の回路に電源を供給する。また、これと並行して、受信部は、リーダー・ライターから受信した搬送波を信号列に復調し、信号列を制御部に送る。制御部は、受信部から受け取った信号列に従って、記憶部への情報のリード/ライトや、情報処理結果を信号列として送信部へ受け渡す。ここで、記憶部は、商品情報など、RFタグの用途に応じて様々な情報を記憶する。最後に、送信部は、制御部から受け取った信号列を搬送波に変調し、アンテナ部13から送信する。そして、リーダー・ライターのアンテナがその搬送波を受信し、情報処理を行う。なお、本実施形態においてRFIDとは、RFタグとリーダー・ライターからなるシステムをいう。
【0103】
本実施形態のRFタグ100が利用可能な周波数帯は、特に制限されないが、例えば、LF帯(中波帯):120~130kHz、HF帯(短波帯):13.56MHz、UHF帯(極超短波):900MHz帯、マイクロ波:2.45GHz帯が挙げられる。アンテナ部13のタイプは、利用する周波数帯に応じて適宜調整することができる。例えば、HF帯を利用する場合には、ループタイプのアンテナを使用し、UHF帯を利用する場合には、ダイポールタイプのアンテナを使用することができる。
【0104】
本実施形態のRFタグ100が利用可能な送受信方式としては、上記電波方式に限定されず、送信側・受信側それぞれが持つコイルに高周波を印加し、生じる相互誘導に情報を載せる電磁結合方式や、アンテナ近傍に発生する磁界に情報を載せ、情報のやりとりを行う電磁誘導方式を用いてもよい。
【0105】
異方性導電性接着剤に含まれる導電性微粒子の直径dは、好ましくは3.0~10μmであり、より好ましくは4.0~9.0μmである。導電性微粒子の直径dが上記範囲内であることにより、接合性がより向上する傾向にある。
【0106】
また、集電部12(接合部121)に形成される第1導電性パターンのピッチP1と、その厚みT1と、導電性微粒子の直径dとは、下式(1)を満たすことが好ましい。
(P1/2)2<(d/2)2-(d/2-T12 式(5)
【実施例
【0107】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〕
ポリエチレンテレフタレート(PET)をコア層として用いて、一方の面上に酸化ケイ素ナノ粒子と導電性の有機シラン化合物を含む組成物を塗布し、乾燥して、酸化ケイ素を含有した厚さ50nmの第1最外層を形成して、基材Aを得た。
【0109】
次いで、粒子径21nmの酸化第一銅ナノ粒子20質量部と、分散剤(ビッグケミー社製、製品名:Disperbyk-145)4質量部と、界面活性剤(セイミケミカル社製、製品名:S-611)1質量部と、エタノール75質量部とを混合・分散し、酸化第一銅ナノ粒子の含有割合が20質量%のインクを調製した。
【0110】
そして、転写媒体表面にインクを塗布し、インクが塗布された転写媒体表面と導電性パターンの溝を有する版を対向させて、押圧、接触して、版の凸部表面に転写媒体表面上の一部のインクを転移させた。その後、残ったインクがコーティングされた転写媒体表面と基材Aとを対向させて、押圧、接触させ、基材Aの上に所望の導電性パターン状のインクを転写させた。次いで、NovaCentrix社製Pulseforge1300を用いて室温環境下で導電性パターン状のインク(分散体塗布膜)をフラッシュランプアニールにより焼成した。
【0111】
これにより、アンテナ部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W2:2.0μm、高さT2:0.5μm、開口ピッチP2:60μmとし、占有面積率S2は6%であった。また、接合部における導電性パターンは、正方形グリッド状とし、線幅W1:3.0μm、高さT1:0.5μm、開口ピッチP1:6.0μmとし、占有面積率S1は、75%であった。また、アンテナ部は、図1に示すような、長辺方向の縦寸法が49mm、短辺方向の横寸法が10mmの長方形状の2つの導電性パターンが、短辺が対向するように2mm間隔で設けられ、また、2つの導電性パターンの間に形成される接合部間のギャップを150μmとしたダイポールアンテナである。なお、接合部もアンテナ部も、導電性細線は、W0.50/W0がW0.90/W0.50よりも大きいものであった。
【0112】
〔実施例2〕
位置合わせマークを設けた基材A上に、第1の版、転写媒体を用いて、アンテナ部の導電性パターン状に、インクを転写させた。次に、位置合わせマークを用いて位置合わせを行ったのち、第2の版、転写媒体を用いて、接合部の導電性パターン状に、インクを転写させた。これにより、アンテナ部として、線幅W2:3.0μm、高さT2:0.5μm、開口ピッチP2:60μm、占有面積率S2が10%の導電性パターンを形成した。また、接合部として、線幅W1:3.0μm、高さT1:1.0μm、開口ピッチP1:6.0μm、占有面積率S1が75%の導電性パターンを形成した。このように、上記線幅と開口ピッチを有し、導電性細線の高さをアンテナ部と接合部とで異ならせた以外は、実施例1と同様のアンテナ部及び接合部を形成した。接合部、及びアンテナ部の導電性細線の寸法を表1に示す。
【0113】
〔実施例3〕
アンテナ部における導電性パターンが、線幅W2:3.0μmである以外は、実施例1と同様なアンテナ部および接合部を形成した。接合部、及びアンテナ部の導電性細線の寸法を表1に示す。
【0114】
〔比較例1〕
アンテナ部として、線幅W2:3.0μm、高さT2:0.5μm、開口ピッチP2:60μm、占有面積率S2が6%の導電性パターンを形成した。また、接合部として、アンテナ部と同様に、線幅W1:3.0μm、高さT1:0.5μm、開口ピッチP1:6.0μm、占有面積率S1が6%の導電性パターンを形成した。
接合部、及びアンテナ部の導電性細線の寸法を表1に示す。
【0115】
〔線幅、ピッチ、及び占有面積率〕
上記線幅、ピッチ、及び占有面積率は、光学顕微鏡による平面写真により算出した。
【0116】
〔RFタグ〕
上記のようにして得られた透明アンテナの接合部に、導電粒子の平均粒径10μmの異方性導電性ペーストを用いて半導体素子を接合して、RFタグを得た。
【0117】
〔接合信頼性〕
実施例1から3のRFタグの放射特性を測定した結果、920MHzにおいて、通信距離1.3mが得られ、同一の外形寸法の銅箔からなる金属ダイポールアンテナと同等のアンテナ特性が得られた(表1中の接続信頼性の〇評価)。一方、比較例1のRFタグは、920MHzにおいて、通信応答せず、アンテナ特性は得られなかった(表1中の接続信頼性の×評価)。このような比較例1のRFタグは、アンテナ部とICチップとの導通不足が推定された。
【0118】
〔外観不良〕
実施例1、2、3および比較例1の接合部を、透明基材裏面からデジタルマイクロスコープ(KEYENCE製VHX-100)で観察した。実施例1の基材開口部には、気泡の巻き込みはなく、接着安定性が担保されていた。さらに、接合部からアンテナ部への異方性導電性ペーストのはみ出しがなく、外観上優れていた(表1中の〇評価)。
一方、比較例1の接合部には、導電性パターンと接触しない導電性粒子が多数認められ、さらに、接合部からアンテナ部への異方性導電性ペーストのはみ出しが観察され、透明性を有するRFタグとしての外観性が損なわれていた(表1中の×評価)。
【0119】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、RFIDに使用可能なRFタグ、特に、透明性を活かした意匠性が要求される用途に使用されるRFタグとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0121】
10…透明アンテナ、11…透明基材、12…集電部、123…接合部、13…アンテナ部、14…半導体素子、15…異方性導電性接着剤、21…導電性微粒子、22…樹脂バインダ、100…RFタグ、300…第1導電性パターン、301…第1開口部、400…第2導電性パターン、401…第2開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10