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特許7516065製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/243 20060101AFI20240708BHJP
   C22B 1/16 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 2/12 20060101ALI20240708BHJP
   B01J 2/10 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C22B1/243
C22B1/16 H
B01J2/12
B01J2/10 Z
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020027334
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130851
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】岩本 亮司
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 渉
(72)【発明者】
【氏名】仲 正洋
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-191748(JP,A)
【文献】特開2011-208256(JP,A)
【文献】特開2012-097295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/243
C22B 1/16
B01J 2/12
B01J 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダスト(以下、主原料という)と、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを含有する、造粒物であって、
水硬性粉体用分散剤が、ナフタレン系分散剤、及びポリカルボン酸系分散剤から選ばれる1種以上の水硬性粉体用分散剤であり、
焼結させずに製鉄原料として用いられる、
造粒物
【請求項2】
主原料の固形分中の鉄の割合が0.1質量%以上60質量%以下である、請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
主原料の固形分中のシリカとアルミナの合計の割合が50質量%以下であり、カルシウムの割合が50質量%以下である、請求項1又は2に記載の造粒物。
【請求項4】
主原料の固形分中の炭素成分の割合が50質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項5】
造粒物中の主原料の含有量が、固形分換算で、30質量%以上90質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項6】
造粒物中の水硬性粉体用分散剤の含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項7】
水を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項8】
製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダスト(以下、主原料という)と、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを混合して造粒する、造粒物の製造方法であって、
水硬性粉体用分散剤が、ナフタレン系分散剤、及びポリカルボン酸系分散剤から選ばれる1種以上の水硬性粉体用分散剤であり、
前記造粒物が、焼結させずに製鉄原料として用いられる造粒物である、
造粒物の製造方法
【請求項9】
主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを混合して得た混合物を造粒する請求項8に記載の造粒物の製造方法。
【請求項10】
主原料の固形分中の鉄の含有量が0.1質量%以上60質量%以下である、請求項8又は9に記載の造粒物の製造方法。
【請求項11】
主原料の固形分中のシリカとアルミナの合計の割合が5質量%以上50質量%以下であり、カルシウムの割合が2質量%以上50質量%以下である、請求項8~10のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項12】
主原料の固形分中の炭素成分の割合が50質量%以下である、請求項8~11のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項13】
造粒物中の主原料の含有量が、固形分換算で、30質量%以上85質量%以下である、請求項8~12のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項14】
造粒物中の水硬性粉体用分散剤の含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、請求項8~13のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項15】
造粒物が水を含有する、請求項8~14のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項16】
主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤の混合をドラムペレタイザーで行う請求項8~15のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項17】
ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、撹拌ロータとを備える請求項16に記載の造粒物の製造方法。
【請求項18】
ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備える請求項16又は17に記載の造粒物の製造方法。
【請求項19】
下記処理(A)、(B)を順次行う請求項8~18のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを解砕処理する。
(B):処理(A)で解砕された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを加え、混合処理する。
【請求項20】
下記処理(A)、(B)、(C)を順次行う請求項8~19のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを解砕処理する。
(B):処理(A)で解砕された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを加え、混合処理する。
(C):処理(B)で混合された原料の予備的な造粒処理を行う。
【請求項21】
ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備え、
前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度が可変であり、
前記撹拌翼が、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をし、
前記撹拌翼が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、前記撹拌ロータが前記撹拌翼の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度を選択することにより、下記処理(A)、(B1)、(B2)を順次行う、請求項16又は請求項17~20のうち請求項16を引用するいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジを解砕処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理と、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理を、交互に1回以上行う。
(B1):処理(A)で解砕された製鉄スラッジに製鉄ダストを加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で低速回転させる混合処理を行う。
(B2):処理(B1)で混合処理された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤を加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる混合処理を行う。
【請求項22】
ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備え、
前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度が可変であり、
前記撹拌翼が、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をし、
前記撹拌翼が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、前記撹拌ロータが前記撹拌翼の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度を選択することにより、下記処理(A)、(B1)、(B2)、(C)を順次行う、請求項16又は請求項17~20のうち請求項16を引用するいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジを解砕処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理と、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理を、交互に1回以上行う。
(B1):処理(A)で解砕された製鉄スラッジに製鉄ダストを加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で低速回転させる混合処理を行う。
(B2):処理(B1)で混合処理された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤を加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる混合処理を行う。
(C):処理(B2)で混合された原料の予備的な造粒処理を行う。この際、前記撹拌ロータを正回転で中速回転させながら、前記撹拌翼を正回転で中速回転させることで予備的な造粒処理を行う。
【請求項23】
主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを混合して得た混合物を転動造粒機に投入し、原料の造粒処理と造粒物の表面を平滑化する整粒処理を行う請求項8~22のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項24】
水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを含有する、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを用いた造粒物用の造粒処理剤であって、
水硬性粉体用分散剤が、ナフタレン系分散剤、及びポリカルボン酸系分散剤から選ばれる1種以上の水硬性粉体用分散剤であり、
前記造粒物が、焼結させずに製鉄原料として用いられる造粒物である、
造粒物用の造粒処理剤
【請求項25】
造粒物が水を含有する、請求項24に記載の造粒処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物、その製造方法、並びに前記造粒物用の造粒処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、鋼材表面の酸洗処理において金属分が溶出した廃液が発生し、この廃液中の金属成分が、酸洗スラッジや中和スラッジ等の製鉄スラッジとして回収される。また、製鉄プロセスの種々の工程では、湿式集塵されたダストを脱水することにより高含水の製鉄ダストが生じる。こうした製鉄ダストや製鉄スラッジは、鉄や他の有用な金属(例えば、Ni、Crなど)を含有するものが多く、製鉄ダストや製鉄スラッジを炉の原料などとして再利用することは非常に有用である。
【0003】
製鉄スラッジや製鉄ダストを炉(例えば、シャフト炉、転炉、電気炉、溶融還元炉など)の原料として再利用するためには、それらをブリケットやペレットなどに塊成化することが望ましい。
【0004】
特許文献1には、特定の原料処理装置を用い、ケーキ状の製鉄スラッジを解砕処理し、解砕された製鉄スラッジに製鉄ダストと固化剤を加え、混合処理する工程と、当該工程を経た原料を転動造粒機に投入し、原料の造粒処理と造粒物の表面を平滑化する整粒処理を行う工程とを有する、製鉄スラッジ等を主原料とする造粒物の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、微粉の鉄鉱石を含む製鉄用原料を造粒処理するのに用いる処理剤であって、酸基およびポリアルキレングリコール鎖を有する高分子化合物、β-ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、芳香族アミノスルホン酸ポリマー、リグニンスルホン酸変性物からなる群より選ばれる少なくとも一種の高分子化合物を含む製鉄用造粒処理剤が開示されている。
【0006】
特許文献3には、反応容器内に金属酸化物および炭素を含む製鉄ダスト並びに製鉄スラッジの少なくとも1つを充填し、前記金属酸化物を還元および塊成化する製鉄ダスト処理方法において、前記反応容器に充填する際の前記金属酸化物の空間中鉄濃度を800kg/m以上とする製鉄ダストの処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-97294号公報
【文献】特開2002-322514号公報
【文献】特開2017-179560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、強度に優れた製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストと、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを含有する、造粒物に関する。
【0010】
また、本発明は、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダスト(以下、主原料という)と、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを混合して造粒する、造粒物の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを含有する、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを用いた造粒物用の造粒処理剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強度に優れた製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<造粒物>
主原料の製鉄スラッジとしては、例えば、圧延スラッジ、メッキスラッジ、酸洗スラッジなどが挙げられる。一般に、製鉄スラッジの水分量は40質量%以上70質量%以下程度である。
主原料の製鉄ダストとしては、例えば、高炉ダスト、焼結ダスト、転炉ダスト、予備処理ダストなどが挙げられる。湿式集塵された製鉄ダストは相当量の水分を含み、一般に水分量は5質量%以上35質量%以下程度である。なお、このような相当量の水分を含む製鉄ダストに対して、水分調整などの目的で乾燥粉である製鉄ダスト(乾式集塵されたもの)を配合してもよい。
【0014】
主原料の固形分中の鉄の割合は、製鉄原料としての適性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。ここで、主原料の固形分とは、主原料中の水以外の成分であってよい。
【0015】
主原料は、Ni、Cr等の有用な金属の含有量の観点から、好ましくは鉄鋼製造プロセスから回収されたスラッジ及び/又は鉄鋼製造プロセスから回収されたダストである。
【0016】
主原料の固形分中のシリカとアルミナの合計の割合は、スラグ抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、主原料の固形分中のカルシウムの割合は、スラグ抑制の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
主原料は、シリカとアルミナの合計含有量が前記範囲にあり、且つカルシウムの含有量が前記範囲にあることが好ましい。
【0017】
また、主原料の固形分中のクロムとニッケルと合計の割合は、有用な金属を効率的に活用できる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0018】
主原料の固形分中の炭素成分の割合は、造粒物形成の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
また、主原料の固形物中に炭素成分が含まれていなくとも生成する造粒物の有効利用の観点からは何ら問題はないが、造粒物を金属分の回収に使用することを考慮すれば炭素成分は熱源として利用できることから、主原料の固形分中の炭素成分の割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。
ここで、主原料の固形分中の炭素成分の割合は、JIS R 1603 に規定する「炭素の定量方法」に準じた方法で測定することができる。
【0019】
水硬性粉体としては、水和反応により硬化する物性を有する粉体が挙げられる。具体的には、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポソラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。水硬性粉体は、強度発現と入手性の観点から、より好ましくは普通ポルトランドセメント、早強セメント、高炉スラグセメントであり、環境負荷低減の観点から、更に好ましくは高炉スラグセメントである。
【0020】
水硬性粉体がセメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する質量部や質量比などにおいても同様である。
【0021】
水硬性粉体用分散剤としては、ナフタレン系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミン系分散剤、リグニン系分散剤、フェノール系分散剤から選ばれる1種以上の水硬性粉体用分散剤が挙げられる。
【0022】
水硬性粉体用分散剤は、分散性向上の観点から、ナフタレン系分散剤、及びポリカルボン酸系分散剤から選ばれる1種以上の水硬性粉体用分散剤が好ましい。
【0023】
ナフタレン系分散剤としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのようなナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させても良い。
【0024】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、スコアロールPD-315M、マイテイ150、デモール N、デモールRN、デモール MS、デモールSN-B、デモール SS-L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD-40、ラベリン FM-45(いずれも第一工業製薬株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
【0025】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、低粘性の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、分散性の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0026】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー株式会社)
溶離液:30mM CHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
【0027】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行ってもよい。また、中和で副生する水不溶解物を除去してもよい。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2~1.4モルを用い、150~165℃で2~5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95~0.99モルとなるようにホルマリンを85~95℃で、3~6時間かけて滴下し、滴下後95~105℃で縮合反応を行う。更に、得られる縮合物の水溶液は酸性度が高いので貯槽等の金属腐食を抑制する観点から、得られた縮合物に、水と中和剤を加え、80~95℃で中和工程を行うことができる。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0~1.1モル倍添加することが好ましい。また、中和により生じる水不溶解物を除去することができ、その方法として好ましくは濾過による分離が挙げられる。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液は、そのままナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩として使用することができる。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を得ることができ、これを粉末状の分散剤として使用することができる。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
【0028】
ポリカルボン酸系分散剤としては、分散性の観点から、下記一般式(1)で示される単量体(1)を構成単量体として含む共重合体が好ましい。
ポリカルボン酸系分散剤としては、下記一般式(1)で示される単量体(1)と下記一般式(2)で示される単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体がより好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
〔式中、
、R:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
:水素原子又は-COO(AO)
:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
q:0以上2以下の数
p:0又は1の数
を示す。〕
【0031】
【化2】
【0032】
〔式中、
、R、R:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CHCOOMであり、(CHCOOMは、COOM又は他の(CHCOOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
、M:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0033】
一般式(1)中、Rは、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、Rは、保存安定性の観点から、メチル基が好ましい。
一般式(1)中、Rは、重合性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(1)中、Xは、親水性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1)中、AOは、親水性の観点から、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(1)中、nは、AOの平均付加モル数であり、分散性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上、より更に好ましくは20以上、そして、好ましくは300以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下、より更に好ましくは130以下である。
一般式(1)中、保存安定性の観点から、pは、1が好ましい。
一般式(1)中、qは、0が好ましい。
【0034】
一般式(2)中、重合性の観点から、Rは、水素原子が好ましい。
一般式(2)中、保存安定性の観点から、Rは、メチル基が好ましい。
一般式(2)中、重合性の観点から、Rは、水素原子が好ましい。
(CHCOOMについては、COOM又は他の(CHCOOMと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM、Mは存在しない。
とMは同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
、Mのアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
とMは、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
入手性の観点から、一般式(2)中の(CHCOOMのrは、1が好ましい。
【0035】
単量体(1)を構成単量体として含む共重合体は、分散性の観点から、構成単量体中の単量体(1)の合計量が、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、分散性と吸着性の観点から、構成単量体中の単量体(1)と単量体(2)の合計量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0036】
単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体は、単量体(1)と単量体(2)の合計中の単量体(2)の割合が、分散性の観点から、好ましくは40モル%以上、そして、好ましくは99モル%以下、より好ましくは97モル%以下、更に好ましくは95モル%以下である。
【0037】
ポリカルボン酸系分散剤、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは20,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは40,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは100,000未満、更に好ましくは80,000以下である。
【0038】
ポリカルボン酸系分散剤、更に単量体(1)を構成単量体として含む共重合体、更に単量体(1)と単量体(2)とを構成単量体として含む共重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれ、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0039】
ポリカルボン酸系分散剤は、AOの平均付加モル数や単量体(1)単量体(2)の割合などが異なる分散剤を2種以上用いることもできる。
【0040】
本発明の造粒物は、製鉄原料としての適性の観点から、造粒物中の主原料の含有量が、固形分換算で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0041】
本発明の造粒物は、造粒物の圧壊強度の観点から、造粒物中の水硬性粉体の含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、そして、スラグ抑制の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0042】
本発明の造粒物は、原料の分散性向上の観点から、造粒物中の水硬性粉体用分散剤の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下である。
【0043】
本発明の造粒物は、堆積防止と作業性の観点から、平均粒子径が、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは1mm以上、そして、熔解性の観点から、好ましくは100mm以下、より好ましくは50mm以下、更に好ましくは10mm以下である。この平均粒子径は、ふるい分け試験(JIS 8815-1994)より測定されたものである。
【0044】
本発明の造粒物は、製鉄原料用造粒物、更に製鋼の転炉原料用造粒物として好適である。
【0045】
<造粒物の製造方法>
本発明は、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダスト(主原料)と、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを混合して造粒する、造粒物の製造方法を提供する。本発明の造粒物は、本発明の製造方法で製造することができる。
製鉄スラッジ、製鉄ダスト、水硬性粉体、及び水硬性粉体用分散剤の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の造粒物と同じである。本発明の造粒物で述べた事項は、適宜、本発明の製造方法に適用することができる。また、例えば、造粒物中の主原料、水硬性粉体、水硬性粉体用分散剤の含有量は、それぞれ、混合量と読み替えて適用することができる。
【0046】
本発明の造粒物の製造方法では、主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを混合して得た混合物を造粒することが好ましい。
【0047】
主原料は、例えば、鉄鋼製造プロセスで回収されたスラッジ又はダストである。主原料は表面の凹凸が少ないものが好ましい。
【0048】
本発明の造粒物の製造方法では、主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤の混合をドラムペレタイザーで行うことが好ましい。
ドラムペレタイザーとしては、処理すべき原料が入れられるドラムと、撹拌ロータとを備えるものが挙げられる。
ドラムペレタイザーとしては、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備えるものが挙げられる。
これらのドラムペレタイザーと、当該ドラムペレタイザーで処理された原料が投入され、原料の造粒処理と造粒物の表面を平滑化する整粒処理を行う転動造粒機とを組み合わせることもできる。
【0049】
本発明の造粒物の製造方法では、下記処理(A)、(B)を順次行うことができる。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを解砕処理する。
(B):処理(A)で解砕された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを加え、混合処理する。
【0050】
本発明の造粒物の製造方法では、下記処理(A)、(B)、(C)を順次行うことができる。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを解砕処理する。
(B):処理(A)で解砕された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを加え、混合処理する。
(C):処理(B)で混合された原料の予備的な造粒処理を行う。
【0051】
本発明の造粒物の製造方法では、ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備え、
前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度が可変であり、
前記撹拌翼が、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をし、
前記撹拌翼が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、前記撹拌ロータが前記撹拌翼の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度を選択することにより、下記処理(A)、(B1)、(B2)を順次行うことができる。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジを解砕処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理と、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理を、交互に1回以上行う。
(B1):処理(A)で解砕された製鉄スラッジに製鉄ダストを加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で低速回転させる混合処理を行う。
(B2):処理(B1)で混合処理された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤を加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる混合処理を行う。
【0052】
本発明の造粒物の製造方法では、ドラムペレタイザーが、処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備え、
前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度が可変であり、
前記撹拌翼が、一方の公転方向での公転時には、上面側で原料を掻き上げる作用をし、他方の公転方向での公転時には、下面側で原料を圧縮する作用をし、
前記撹拌翼が、上面側で原料を掻き上げる作用をする公転方向に公転する場合を「正回転」、下面側で原料を圧縮する作用をする公転方向に公転する場合を「逆回転」とし、前記撹拌ロータが前記撹拌翼の「正回転」の公転と同じ回転方向に自転する場合を「正回転」とした場合に、前記撹拌翼の公転方向及び公転速度と前記撹拌ロータの自転速度を選択することにより、下記処理(A)、(B1)、(B2)、(C)を順次行うことができる。
(A):ケーキ状の製鉄スラッジを解砕処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理と、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる解砕処理を、交互に1回以上行う。
(B1):処理(A)で解砕された製鉄スラッジに製鉄ダストを加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を正回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で低速回転させる混合処理を行う。
(B2):処理(B1)で混合処理された原料に水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤を加え、混合処理する。この際、前記撹拌翼を逆回転で低速回転させながら前記撹拌ロータを正回転で高速回転させる混合処理を行う。
(C):処理(B2)で混合された原料の予備的な造粒処理を行う。この際、前記撹拌ロータを正回転で中速回転させながら、前記撹拌翼を正回転で中速回転させることで予備的な造粒処理を行う。
【0053】
本発明の造粒物の製造方法では、主原料と水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを混合して得た混合物を転動造粒機に投入し、原料の造粒処理と造粒物の表面を平滑化する整粒処理を行うことができる。
【0054】
前記ドラムペレタイザーは、特開2012-97294号公報の原料処理装置を参照することができる。また、前記転動造粒機も、特開2012-97294号公報を参照することができる。
【0055】
本発明の造粒物の製造方法では、造粒物の焼結を行わなくてもよい。すなわち、本発明の製造方法として、主原料と、水硬性粉体と、水硬性粉体用分散剤とを混合して造粒し造粒物を製造し、その後、前記造粒物の焼結を行わない、造粒物の製造方法が挙げられる。
【0056】
<造粒処理剤>
本発明は、水硬性粉体と水硬性粉体用分散剤とを含有する、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストを用いた造粒物用の造粒処理剤を提供する。製鉄スラッジ、製鉄ダスト、水硬性粉体、及び水硬性粉体用分散剤の具体例及び好ましい態様はそれぞれ本発明の造粒物と同じである。本発明の造粒物で述べた事項は、適宜、本発明の造粒処理剤に適用することができる。本発明の造粒処理剤は、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストの造粒物を製造する際に、製鉄スラッジ及び/又は製鉄ダストと混合して用いられる。
【実施例
【0057】
<造粒物用原料>
*主原料
・製鉄スラッジ:水分量36質量%、固形分中、鉄の割合が30質量%、シリカとアルミナの合計の割合が15質量%以下、カルシウムの割合が8質量%、炭素成分の割合が10質量%
・製鉄ダスト:水分量8質量%、固形分中、鉄の割合が50質量%、シリカとアルミナの合計の割合が3質量%以下、カルシウムの割合が2質量%、高温下で熱崩壊して粉状化した石炭のダストを主に含む炭素成分の割合が10質量%
*水硬性粉体
・高炉セメント:シリカとアルミナの合計の割合が35質量%、カルシウム60質量%、その他元素が5質量%
*水硬性粉体用分散剤
・分散剤(1):メタクリル酸と、メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル(ポリエチレングリコール部分の重量平均分子量5300)との、共重合物(共重合比率:メタクリル酸/メタクリル酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルのエステル=90/10(mol%))のナトリウム中和塩
・分散剤(2):スコアロールPD-315M、花王株式会社、ナフタレンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩
【0058】
<造粒物の製造>
処理すべき原料が入れられるドラムと、該ドラム内を公転する撹拌翼と、前記ドラム内を前記撹拌翼とともに公転しつつ自転する撹拌ロータとを備えたドラムペレタイザーと、当該ドラムペレタイザーで処理された原料が投入され、原料の造粒処理と造粒物の表面を平滑化する整粒処理を行う転動造粒機とを用いて、造粒物を製造した。具体的には、前記ドラムペレタイザーは、特開2012-97294号公報の図1~3の原料処理装置を、また、前記転動造粒機は、特開2012-97294号公報の図5、6の転動造粒機を使用した。
【0059】
前記ドラムペレタイザーで、表1の混合量で主原料と水硬性粉体とを混合した。この混合粉体に、表1の混合量で水硬性粉体用分散剤、水を、この順で加えた。混合処理30秒(攪拌翼と攪拌ロータの回転方向が逆)、予備造粒攪拌40秒(攪拌翼と攪拌ロータの回転方向が同じ)の後、混合物を前記転動造粒機に投入し、整粒処理60秒を行い、造粒物を得た。
【0060】
<造粒物の圧壊強度>
造粒物の圧壊強度を、JIS Z 8841-1993の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
*1 主原料の混合量のかっこ内の数字は、固形分換算の量である。表1の混合量は、造粒物中の各成分の含有量とほぼ同じとなる。