(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システム
(51)【国際特許分類】
B62M 6/50 20100101AFI20240708BHJP
【FI】
B62M6/50
(21)【出願番号】P 2020043136
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0318583(US,A1)
【文献】特開2016-203813(JP,A)
【文献】特開平04-358988(JP,A)
【文献】特開2018-070000(JP,A)
【文献】特開平11-059557(JP,A)
【文献】特開2019-123476(JP,A)
【文献】特開2020-029147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40-6/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、
前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、
前記第1制御状態において、所定条件を満たすと前記第2制御状態で前記モータを制御し、
前記所定条件は、前記人力駆動車が停車している停車状態が第1所定期間継続した場合を含
み、
前記制御部は、前記第2制御状態において前記操作部が操作されていない期間、前記モータを駆動させず、前記第2制御状態において前記操作部が継続して操作される期間、前記モータを駆動させる、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、
前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、
前記第1制御状態において、所定条件を満たすと前記第2制御状態で前記モータを制御し、
前記所定条件は、前記人力駆動車が所定速度以下の走行状態において所定値以上の人力駆動力を検知した時点から第2所定期間が経過した場合を含む、人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、
前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、
前記第1制御状態において、所定条件を満たすと前記第2制御状態で前記モータを制御し、
前記所定条件は、前記人力駆動車のピッチ角が所定ピッチ角以上の場合を含
み、
前記制御部は、前記第2制御状態において前記操作部が操作されていない期間、前記モータを駆動させず、前記第2制御状態において前記操作部が継続して操作される期間、前記モータを駆動させる、人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、
前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、
前記第1制御状態において、所定条件を満たすと前記第2制御状態で前記モータを制御し、
前記所定条件は、前記人力駆動車が所定速度以下の走行状態において、前記人力駆動車のピッチ角が所定ピッチ角以上の場合を含
み、
前記制御部は、前記第2制御状態において前記操作部が操作されていない期間、前記モータを駆動させず、前記第2制御状態において前記操作部が継続して操作される期間、前記モータを駆動させる、人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
前記所定条件は、
前記人力駆動車の走行速度が所定速度以下の場合、
前記人力駆動車の前記入力回転体に入力される人力駆動力が所定値以上の場合、
前記人力駆動車が所定速度以下の走行状態において、前記人力駆動車の前記入力回転体に入力される人力駆動力が所定値以下の場合、の少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載
の制御装置。
【請求項6】
前記所定条件は、前記入力回転体の回転速度が不連続である場合をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記人力駆動車は、前記人力駆動車の車輪の回転速度に関する情報を検出するように構成される車速センサ、および、クランクの回転速度に関する情報を検出するように構成されるクランク回転センサの少なくとも一方を含み、
前記制御部は、前記車速センサの出力に応じて走行速度を取得し、前記クランク回転センサの出力に応じて前記クランクの回転速度を取得する、請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2制御状態において前記操作部が操作されていない期間、前記モータを駆動させず、前記第2制御状態において前記操作部が継続して操作される期間、前記モータを駆動させる、請求項
2に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1制御状態は、前記入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、かつ、前記操作部により切り替え可能な複数のアシスト状態を含み、
前記制御部は、
前記第2制御状態において、前記入力回転体に人力駆動力が入力されると、前記第1制御状態で前記モータを制御する、請求項1から8のいずれか一項に記載
の制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動車の走行速度が予め決められた所定走行速度以上になると、前記第2制御状態から前記第1制御状態に切り替える、請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記入力回転体が回転すると、前記第2制御状態から前記第1制御状態に切り替える、請求項9または10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記操作部の操作に応じて、前記第1制御状態における、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、および、第3モータ制御モードの切り替えを行う、請求項9から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記操作部の操作に応じて、前記第1制御状態と、前記第2制御状態と、の切り替えを行う、請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
前記第1制御状態は、前記モータを停止する第4モータ制御モードを含み、
前記制御部は、前記第4モータ制御モードにおいて前記操作部の操作に応じて前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える、請求項12または13に記載の制御装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第2制御状態において、前記人力駆動車の走行速度が所定走行速度以上になると、前記第1制御状態で前記モータを制御する、請求項1から8のいずれか一項に記載
の制御装置。
【請求項16】
前記人力駆動車は、前記人力駆動車の走行状態に関する情報を検出するように構成されるセンサを含み、
前記制御部は、前記センサの検出結果に応じて前記モータを制御する、請求項15に記載の制御装置。
【請求項17】
前記センサは、前記人力駆動車の車輪の回転速度に関する情報を検出するように構成される車速センサ、前記人力駆動車の位置に関する情報を検出するように構成される位置情報検出センサ、および、前記人力駆動車の加速度に関する情報を検出するように構成される加速度センサの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の制御装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の制御装置と、
前記操作部と、を含む、人力駆動車用操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車の制御装置は、踏力が付与されるクランクアーム、および、人力駆動車に推進力を付与可能に構成されるモータを備え、クランクアームに入力される踏力に応じてモータを制御し、または、操作部への操作に応じてモータを制御するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、入力回転体に入力される踏力に応じてモータを制御する制御状態と、操作部への操作に応じてモータを制御する制御状態とが、操作部に操作に応じて切り替えられる。
【0005】
本発明の目的の1つは、搭乗者の操作手順を減らすことができる人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、かつ、前記入力回転体とは異なる操作部により切り替え可能な複数のアシスト状態を含む第1制御状態と、前記操作部への操作に応じて前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、前記第2制御状態において、前記入力回転体に人力駆動力が入力されると、前記第1制御状態で前記モータを制御する。
上記第1側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、入力回転体に人力駆動力が入力されると、第1制御状態に移行するため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0007】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記第2制御状態は、前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず、前記モータが前記人力駆動車に推進力を付与する制御状態を含む。
上記第2側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず、モータが人力駆動車に推進力を付与できる。
【0008】
前記第1または第2側面に従う第3側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車の走行速度が予め決められた所定走行速度以上になると、前記第2制御状態から前記第1制御状態に切り替える。
上記第3側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動車の走行速度が予め決められた所定走行速度以上になると第2制御状態から第1制御状態に切り替えるため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0009】
前記第1から第3側面のいずれか1つに従う第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記入力回転体が回転すると、前記第2制御状態から前記第1制御状態に切り替える。
上記第4側面の人力駆動車用制御装置によれば、入力回転体が回転すると、第2制御状態から第1制御状態に切り替えるため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0010】
前記第1から第4側面のいずれか1つに従う第5側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記操作部の操作に応じて、前記第1制御状態における、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、および、第3モータ制御モードの切り替えを行う。
上記第5側面の人力駆動車用制御装置によれば、操作部の操作に応じて、第1制御状態における、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、および、第3モータ制御モードの切り替えが任意にできる。
【0011】
前記第5側面に従う第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記操作部の操作に応じて、前記第1制御状態と、前記第2制御状態と、の切り替えを行う。
上記第6側面の人力駆動車用制御装置によれば、操作部の操作に応じて、第1制御状態と第2制御状態との切り替えが任意にできる。
【0012】
前記第5または第6側面に従う第7側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1制御状態は、前記モータを停止する第4モータ制御モードを含み、前記制御部は、前記第4モータ制御モードにおいて前記操作部の操作に応じて前記第1制御状態から前記第2制御状態に切り替える。
上記第7側面の人力駆動車用制御装置によれば、モータを停止する第4モータ制御モードを介して、操作部の操作に応じて第1制御状態から第2制御状態に切り替えるため、人力駆動車のバッテリの消費を抑えることができる。
【0013】
本発明の第8側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、前記第2制御状態において、前記人力駆動車の走行速度が所定走行速度以上になると、前記第1制御状態で前記モータを制御する。
上記第8側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、人力駆動車の走行速度が所定走行速度以上になると、第1制御状態に移行するため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0014】
前記第8側面に従う第9側面の人力駆動車用制御装置において、前記人力駆動車は、前記人力駆動車の走行状態に関する情報を検出するように構成されるセンサを含み、前記制御部は、前記センサの検出結果に応じて前記モータを制御する。
上記第9側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、人力駆動車の走行速度が所定走行速度以上になると、第1制御状態に移行するため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0015】
前記第9側面に従う第10側面の人力駆動車用制御装置において、前記センサは、前記人力駆動車の車輪の回転速度に関する情報を検出するように構成される車速センサ、前記人力駆動車の位置に関する情報を検出するように構成される位置情報検出センサ、および、前記人力駆動車の加速度に関する情報を検出するように構成される加速度センサの少なくとも1つを含む。
上記第10側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、人力駆動車の走行速度が所定走行速度以上になると、第1制御状態に移行するため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0016】
本発明の第11側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車に推進力を付与するようモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車に設けられる入力回転体に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御する第1制御状態と、前記入力回転体とは異なる操作部への操作に応じて前記入力回転体に入力される人力駆動力にかかわらず前記モータを制御する第2制御状態と、の少なくとも一方で前記モータを制御し、前記第1制御状態において、所定条件を満たすと前記第2制御状態で前記モータを制御し、前記所定条件は、前記人力駆動車が停車している停車状態が第1所定期間継続した場合、前記人力駆動車の走行速度が所定速度以下の場合、前記人力駆動車が所定速度以下の走行状態において所定値以上の人力駆動力を検知した時点から第2所定期間が経過した場合、前記人力駆動車のピッチ角が所定ピッチ角以上の場合、前記人力駆動車の前記入力回転体に入力される人力駆動力が所定値以上の場合、前記人力駆動車が所定速度以下の走行状態において、前記人力駆動車のピッチ角が所定ピッチ角以上、および、前記人力駆動車の前記入力回転体に入力される人力駆動力が所定値以下、の少なくとも1つが満たされる場合、の少なくとも1つを含む。
上記第11側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1制御状態において、所定条件を満たすと、第2制御状態でモータを制御できる。このため、モータの使い勝手がよい。上記第11側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1制御状態において、人力駆動車が所定条件を満たすと、第2制御状態に移行するため、搭乗者の操作手順を減らすことができる。
【0017】
前記第11側面に従う第12側面の人力駆動車用制御装置において、前記所定条件は、前記入力回転体の回転速度が不連続である場合をさらに含む。
上記第12側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1制御状態において、入力回転体の回転速度が不連続である場合に、第2制御状態に移行することができる。
【0018】
前記第11または第12側面に従う第13側面の人力駆動車用制御装置において、前記人力駆動車は、前記人力駆動車の車輪の回転速度に関する情報を検出するように構成される車速センサ、および、クランクの回転速度に関する情報を検出するように構成されるクランク回転センサの少なくとも一方を含み、前記制御部は、前記車速センサの出力に応じて前記走行速度を取得し、前記クランク回転センサの出力に応じて前記クランクの回転速度を取得する。
上記第13側面の人力駆動車用制御装置によれば、車速センサの出力に応じた走行速度、および、クランク回転センサの出力に応じたクランクの回転速度、の少なくとも一方を取得することによって、第1制御状態から第2制御状態に移行できる。
【0019】
前記第1から第13側面のいずれか1つに従う第14側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第2制御状態において前記操作部が操作されていない期間、前記モータを駆動させず、前記第2制御状態において前記操作部が継続して操作される期間、前記モータを駆動させる。
上記第14側面の人力駆動車用制御装置によれば、第2制御状態において、搭乗者が任意にモータを駆動させることができる。
【0020】
本発明の第15側面に従う人力駆動車用操作システムは、第1から第14側面のいずれか1つの制御装置と、前記操作部と、を含む。
上記第15側面の人力駆動車用操作システムによれば、人力駆動車が所定条件を満たすと、第1制御状態と第2制御状態との間の移行を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本開示の人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムは、モータの使い勝手をよくできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムを含む人力駆動車の側面図。
【
図2】第1実施形態の人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムの電気的な構成を示すブロック図。
【
図3】
図2の人力駆動車用制御装置によって実行される第1制御状態と第2制御状態とを切り替える処理のフローチャート。
【
図4】第2実施形態の人力駆動車用制御装置によって実行される第1制御状態と第2制御状態とを切り替える処理のフローチャート。
【
図5】第2実施形態の変形例の人力駆動車用制御装置によって実行される第1制御状態と第2制御状態とを切り替える処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
図1から
図3を参照して、第1実施形態の人力駆動車用制御装置70および人力駆動車用操作システム60について説明する。人力駆動車10は、少なくとも1つの車輪を有し、少なくとも人力駆動力Hによって駆動できる乗り物である。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、ハンドバイク、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。人力駆動車10が有する車輪の数は限定されない。人力駆動車10は、例えば、ボート等の車輪を有しないものであってもよい。人力駆動車10は、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する乗り物も含む。人力駆動車10は、人力駆動力Hのみによって駆動できる乗り物に限定されない。人力駆動車10は、人力駆動力Hだけではなく、電気モータの駆動力を推進に利用するイーバイク(E-bike)を含む。イーバイクは、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0024】
人力駆動車10は、人力駆動力Hが入力されるクランク12を備える。人力駆動車10は、車輪14と、車体16と、を、さらに備える。車輪14は、後輪14Aと、前輪14Bと、を含む。車体16は、フレーム18を含む。クランク12は、フレーム18に対して回転可能な入力回転体12Aと、入力回転体12Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられる一対のクランクアーム12Bとを含む。入力回転体12Aは、クランク軸である。各クランクアーム12Bには、一対のペダル20がそれぞれ連結される。後輪14Aは、クランク12が回転することによって駆動される。後輪14Aは、フレーム18に支持される。クランク12と後輪14Aとは、駆動機構22によって連結される。駆動機構22は、入力回転体12Aに連結される第1回転体24を含む。入力回転体12Aと第1回転体24とは、一体回転するように連結されてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して連結されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体24を前転させ、クランク12が後転した場合に、クランク12と第1回転体24との相対回転を許容するように構成される。第1回転体24は、プーリ、または、ベベルギアであってもよい。駆動機構22は、第2回転体26と、連結部材28とをさらに含む。連結部材28は、第1回転体24の回転力を第2回転体26に伝達する。連結部材28は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0025】
第2回転体26は、後輪14Aに連結される。第2回転体26は、プーリ、または、ベベルギアであってもよい。第2回転体26と後輪14Aとの間には、好ましくは、第2ワンウェイクラッチが設けられている。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体26が前転した場合に、後輪14Aを前転させ、第2回転体26が後転した場合に、第2回転体26と後輪14Aとの相対回転を許容するように構成される。
【0026】
フレーム18には、フロントフォーク30を介して前輪14Bが取り付けられている。フロントフォーク30には、ハンドルバー34がステム32を介して連結されている。本実施形態では、後輪14Aが駆動機構22によってクランク12に連結されるが、後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つが、駆動機構22によってクランク12に連結されてもよい。
【0027】
好ましくは、人力駆動車10は、バッテリ36をさらに含む。バッテリ36は、1または複数のバッテリ素子を含む。バッテリ素子は、充電池を含む。バッテリ36は、制御装置70に電力を供給するように構成される。バッテリ36は、好ましくは、制御装置70の制御部72と電気ケーブルまたは無線通信装置を介して通信可能に接続される。バッテリ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)、CAN(Controller Area Network)、または、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)によって制御部72と通信可能である。
【0028】
人力駆動車10は、モータ38を含む。モータ38は、人力駆動車10に推進力を付与する。モータ38は、1または複数の電気モータを含む。電気モータは、例えば、ブラシレスモータである。モータ38は、ペダル20から後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路、および、前輪14Bの少なくとも1つに回転力を伝達するように構成される。ペダル20から後輪14Aまでの人力駆動力Hの動力伝達経路には、後輪14Aも含まれる。本実施形態では、モータ38は、人力駆動車10のフレーム18に設けられ、第1回転体24に回転を伝達するように構成される。モータ38は、ハウジングに設けられる。ハウジングは、フレーム18に設けられる。ハウジングは、例えばフレーム18に着脱可能に取り付けられる。モータ38およびモータ38が設けられるハウジングを含んで、ドライブユニットが構成される。モータ38と入力回転体12Aとの間の動力伝達経路には、好ましくは、入力回転体12Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力のモータ38への伝達を抑制する第3ワンウェイクラッチが設けられる。後輪14Aおよび前輪14Bの少なくとも1つにモータ38を設ける場合、モータ38は、ハブに設けられて、ハブと共にハブモータを構成してもよい。
【0029】
好ましくは、制御部72は、車速センサ42、クランク回転センサ48、および、人力駆動力検出部50の少なくとも1つの出力に応じてモータ38を制御する。
【0030】
人力駆動車用操作システム60は、制御装置70と、操作部62と、を含む。操作部62は、例えば、ハンドルバー34に設けられる。好ましくは、操作部62は、第1操作部62Aおよび第2操作部62Bを含む。
【0031】
人力駆動車用制御装置70は、人力駆動車10に推進力を付与するようモータ38を制御する制御部72を含む。制御部72は、人力駆動車10に設けられる入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hに応じてモータ38を制御し、かつ、第1制御状態と、第2制御状態と、の少なくとも一方でモータ38を制御する。第1制御状態は、入力回転体12Aとは異なる操作部62により切り替え可能な複数のアシスト状態を含む。第2制御状態では、操作部62への操作に応じてモータ38を制御する。制御部72は、第2制御状態において、入力回転体12Aに人力駆動力Hが入力されると、第1制御状態でモータ38を制御する。第1制御状態は、例えば、搭乗者が人力駆動車10の入力回転体12Aを回転させて人力駆動車10が走行している場合に、人力駆動車10の推進をアシストするためにモータ38を駆動可能な制御状態である。第2制御状態は、例えば、搭乗者が人力駆動車10を押し歩きしている場合に、入力回転体12Aに付与される踏力に関わらず、人力駆動車10の推進をアシストするためにモータ38を駆動可能な制御状態である。
【0032】
制御装置70は、制御部72を含む。制御部72は、予め定める制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。演算処理装置は、相互に離れた複数の場所に設けられてもよい。制御部72は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。好ましくは、制御装置70は、記憶部74をさらに含む。記憶部74には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部74は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、ROM(Read-Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、および、フラッシュメモリの少なくとも1つを含む。揮発性メモリは、例えば、RAM(Random access memory)を含む。
【0033】
制御装置70は、好ましくは、モータ38の駆動回路76さらに備える。駆動回路76と、制御部72とは、好ましくは、ドライブユニットのハウジングに設けられる。駆動回路76と、制御部72とは、例えば同一の回路基板に設けられてもよい。駆動回路76は、インバータ回路を含む。駆動回路76は、バッテリ36からモータ38に供給される電力を制御する。駆動回路76は、制御部72と、導電線、電気ケーブルまたは無線通信装置などを介して接続されている。駆動回路76は、制御部72からの制御信号に応じてモータ38を駆動させる。
【0034】
人力駆動車10は、人力駆動車10の走行状態に関する情報を検出するように構成されるセンサ40を含む。制御部72は、センサ40の検出結果に応じてモータ38を制御する。好ましくは、センサ40は、車速センサ42、位置情報検出センサ44、および、加速度センサ46の少なくとも1つを含む。車速センサ42は、人力駆動車10の車輪14の回転速度に関する情報を検出するように構成される。位置情報検出センサ44は、人力駆動車10の位置に関する情報を検出するように構成される。加速度センサ46は、人力駆動車10の加速度に関する情報を検出するように構成される。好ましくは、人力駆動車10は、車速センサ42およびクランク回転センサ48の少なくとも一方を含む。車速センサ42は、人力駆動車10の車輪14の回転速度に関する情報を検出するように構成される。クランク回転センサ48は、クランク12の回転速度に関する情報を検出するように構成される。制御部72は、車速センサ42の出力に応じて走行速度Vを取得し、クランク回転センサ48の出力に応じてクランク12の回転速度を取得する。
【0035】
車速センサ42は、人力駆動車10の走行速度Vに関する情報を検出するように構成される。本実施形態では、車速センサ42は、人力駆動車10の車輪14の回転速度Wに関する情報を検出するように構成される。車速センサ42は、例えば、人力駆動車10の車輪14に設けられる磁石を検出するように構成される。車速センサ42は、例えば、車輪14が1回転する間に、予め定める回数の検出信号を出力するように構成される。予め定める回数は、例えば、1である。車速センサ42は、車輪14の回転速度Wに応じた信号を出力する。制御部72は、車輪14の回転速度Wと、車輪14の周長に関する情報とに基づいて人力駆動車10の走行速度Vを算出できる。記憶部74には車輪14の周長に関する情報が記憶される。車速センサ42は、例えばリードスイッチを構成する磁性リード、または、ホール素子を含む。車速センサ42は、人力駆動車10のフレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪14Aに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク30に設けられ、前輪14Bに取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。本実施形態において、車速センサ42は、車輪14が一回転した場合に、リードスイッチが磁石を1回検出するように構成される。車速センサ42は、人力駆動車10の走行速度Vに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、車輪14に設けられる磁石を検出する構成に限らず、例えば、ディスクブレーキに設けられるスリットを検出するように構成されてもよく、光学センサなどを含んで構成されてもよく、GPS受信機を含んで構成されてもよい。車速センサ42は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0036】
位置情報検出センサ44は、例えば、GPS(Global positioning system)受信機を含む。制御部72は、GPS受信機によって取得したGPS情報と、記憶部74に予め記録されている地図情報とに応じて人力駆動車10の位置情報を取得する。
【0037】
加速度センサ46は、人力駆動車10の加速度を検出する。加速度センサ46は、人力駆動車10が前進する方向における加速度に応じた信号を検出するように構成される。加速度センサ46は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。加速度センサ46は、車速センサ42を含んでいてもよい。加速度センサ46が車速センサ42を含む場合、走行速度Vを微分することによって人力駆動車10が前進する方向における加速度が得られる。
【0038】
クランク回転センサ48は、クランク12の回転速度NCに関する情報を検出するように構成される。クランク回転センサ48は、例えば、人力駆動車10のフレーム18またはドライブユニットのハウジングに設けられる。クランク回転センサ48は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、入力回転体12A、入力回転体12Aに連動して回転する部材、または、入力回転体12Aから第1回転体24までの間の動力伝達経路に設けられる。入力回転体12Aに連動して回転する部材は、モータ38の出力軸を含んでもよい。クランク回転センサ48は、クランク12の回転速度NCに応じた信号を出力する。磁石は、入力回転体12Aから第1回転体24までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、入力回転体12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、磁石は、入力回転体12Aと第1回転体24との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体24に設けられてもよい。クランク回転センサ48は、クランク12の回転速度NCに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、磁気センサに代えて光学センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ、またはトルクセンサなどを含んでいてもよい。クランク回転センサ48は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0039】
好ましくは、人力駆動車10は、人力駆動力検出部50を含む。
人力駆動力検出部50は、人力駆動力Hに関する情報を検出するように構成される。人力駆動力検出部50は、例えば、トルクセンサを含む。トルクセンサは、人力駆動力Hによってクランク12に与えられるトルクに応じた信号を出力するように構成される。トルクセンサは、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、好ましくは、第1ワンウェイクラッチよりも動力伝達経路の上流側に設けられる。トルクセンサは、歪センサ、磁歪センサ、または、圧力センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサは、動力伝達経路、または、動力伝達経路に含まれる部材の近傍に含まれる部材に設けられる。動力伝達経路に含まれる部材は、例えば、入力回転体12A、入力回転体12Aと第1回転体24との間において人力駆動力Hを伝達する部材、クランクアーム12B、または、ペダル20である。トルクセンサは、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。人力駆動力検出部50は、人力駆動力Hに関する情報を取得できればどのような構成であってもよく、例えば、ペダル20に与えられる圧力を検出するセンサ、または、チェーンの張力を検出するセンサなどを含んでいてもよい。
【0040】
制御部72は、第1制御状態において、複数の制御モードにおいてモータ38を制御する。複数の制御モードは、例えば、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、第3モータ制御モード、および、第4モータ制御モードにおいてモータ38を含む。第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、および、第3モータ制御モードは、それぞれアシスト比率および上限トルクの少なくとも1つが異なる。アシスト比率は、例えば、人力駆動力Hに対するモータ38の出力の比率である。第4モータ制御モードは、モータ38の出力を停止するモードである。複数のモータ制御モードから、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、第3モータ制御モード、および、第4モータ制御モードの少なくとも1つを省略してもよい。複数の制御モードは、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、第3モータ制御モード、および、第4モータ制御モード、とは異なる追加のモータ制御モードをさらに含んでもよい。
【0041】
制御部72は、第1制御状態において、人力駆動力Hに加えて、クランク12の回転速度に応じて、モータ38を制御するように構成されてもよい。例えば、制御部72は、クランク12の回転速度が予め定める回転速度未満の場合、クランク12の回転速度NCおよび人力駆動力Hの少なくとも1つに応じたモータ38の駆動を停止する。予め定める回転速度は、例えば、0以上、かつ、5rpmの範囲の速度である。例えば、制御部72は、クランク12の回転速度NCが予め定める回転速度NCY以上になると、モータ38を停止する、または、アシスト力が小さくなるようにモータ38を制御してもよい。例えば、制御部72は、走行速度Vが第1走行速度VX以上になると、モータ38を停止する。第1走行速度VXは、例えば、時速25Kmである。第1走行速度VXは、時速25Km未満であってもよく、例えば、時速24Kmであってもよい。第1走行速度VXは、時速25Kmよりも大きくてもよく、例えば、時速45Kmであってもよい。
【0042】
制御部72は、操作部62の操作に応じて、第1制御状態における、第1モータ制御モード、第2モータ制御モード、および、第3モータ制御モードの切り替えを行う。例えば、制御部72は、第1操作部62Aが操作されると、選択されている制御モードのアシスト比率または上限トルクよりも、1段階大きいアシスト比率または上限トルクが設定される制御モードに切り替える。制御部72は、第4モータ制御モードが選択されている状態において、第1操作部62Aが操作されると、アシスト比率または上限トルクが最も小さい制御モードに切り替える。例えば、制御部72は、第2操作部62Bが操作されると、選択されている制御モードのアシスト比率または上限トルクよりも、1段階小さいアシスト比率または上限トルクが設定される制御モードに切り替える。例えば、制御部72は、アシスト比率または上限トルクが最も小さい制御モードが選択されている状態において、第2操作部62Bが操作されると、第4制御モードに切り替える。
【0043】
第2制御状態は、入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hにかかわらず、モータ38が人力駆動車10に推進力を付与する制御状態を含む。好ましくは、制御部72は、第2制御状態において操作部62が操作されていない期間、モータ38を駆動させず、第2制御状態において操作部62が継続して操作される期間、モータ38を駆動させる。好ましくは、制御部72は、第2制御状態において第2操作部62Bが操作されていない期間、モータ38を駆動させず、第2制御状態において第2操作部62Bが継続して操作される期間、モータ38を駆動させる。
【0044】
好ましくは、制御部72は、操作部62の操作に応じて、第1制御状態と、第2制御状態と、の切り替えを行う。好ましくは、第1制御状態は、モータ38を停止する第4モータ制御モードを含み、制御部72は、第4モータ制御モードにおいて操作部62の操作に応じて第1制御状態から第2制御状態に切り替える。
【0045】
好ましくは、制御部72は、第2制御状態において、人力駆動車10の走行速度Vが予め決められた所定走行速度V1以上になり、かつ、入力回転体12Aが回転すると、入力回転体12Aに人力駆動力Hが入力されていると判定する。例えば、制御部72は、人力駆動車10の走行速度Vが予め決められた所定走行速度V1以上になると、第2制御状態から第1制御状態に切り替える。例えば、制御部72は、入力回転体12Aが回転すると、第2制御状態から第1制御状態に切り替える。制御部72は、第2制御状態において、人力駆動車10の走行速度Vが所定走行速度V1以上になると、第1制御状態でモータ38を制御する。制御部72は、第2制御状態から第1制御状態に切り替える場合、アシスト比率または上限トルクが最も小さい制御モードに切り替えてもよく、第4モータ制御モードに切り替えてもよい。制御部72は、第2制御状態から第1制御状態に切り替える場合、予め定める制御モードに切り替えてもよい。予め定める制御モードは、人力駆動車用制御装置70の出荷時に記憶部74に記憶されていてもよく、ユーザが変更可能に構成されていてもよい。
【0046】
図3を参照して、モータ38の制御状態を切り替える処理について説明する。制御部72は、制御部72に電力が供給されると、処理を開始して
図3に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部72は、
図3のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、予め定める周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0047】
制御部72は、ステップS11において、第1制御状態か否かを判定する。制御部72は、第1制御状態ではない場合、処理を終了する。制御部72は、第1制御状態の場合、ステップS12に移行する。
【0048】
制御部72は、ステップS12において、第4モータ制御モードか否かを判定する。制御部72は、第4モータ制御モードではない場合、処理を終了する。制御部72は、第4モータ制御モードの場合、ステップS13に移行する。
【0049】
制御部72は、ステップS13において、操作部62が操作されたか否かを判定する。例えば、制御部72は、第2操作部62Bが操作された場合、操作部62が操作されたと判定する。制御部72は、操作部62が操作されていない場合、処理を終了する。制御部72は、操作部62が操作された場合、ステップS14に移行する。
【0050】
制御部72は、ステップS14において、第2制御状態に切り替え、ステップS15に移行する。制御部72は、ステップS15において、操作部62が操作されたか否かを判定する。例えば、制御部72は、第2操作部62Bが操作された場合、操作部62が操作されたと判定する。制御部72は、操作部62が操作された場合、ステップS16に移行する。制御部72は、ステップS15において、操作部62が操作されていない場合、ステップS20に移行する。
【0051】
制御部72は、ステップS16においてモータ38を駆動させ、ステップS17に移行する。制御部72は、ステップS20において、モータ38の駆動を停止し、ステップS17に移行する。
【0052】
制御部72は、ステップS17において、走行速度Vが所定速度V1以上か否かを判定する。制御部72は、走行速度Vが所定速度V1以上の場合、ステップS19に移行する。制御部72は、走行速度Vが所定速度V1以上ではない場合、ステップS18に移行する。
【0053】
制御部72は、ステップS18において、入力回転体12Aが回転しているか否かを判定する。制御部72は、入力回転体12Aが回転していない場合、ステップS15に移行する。制御部72は、入力回転体12Aが回転している場合、ステップS19に移行する。このため、制御部72は、第2制御状態において、走行速度Vが所定速度V1未満であり、かつ、入力回転体12Aが回転していない場合、操作部62が操作されている限り、モータ38の駆動を継続する。
【0054】
制御部72は、ステップS19において、第1制御状態に切り替え、処理を終了する。好ましくは、制御部72は、第1制御状態に切り替えられる場合、第4モータ制御モードを選択する。好ましくは、制御部72は、第1制御状態に切り替えられる場合、モータ38の駆動を停止する。
【0055】
制御部72は、第2制御状態において、搭乗者が操作部62を操作しなくても、入力回転体12Aに人力駆動力Hが入力されると、第1制御状態でモータ38を制御できるため、ユーザビリティに貢献できる。
【0056】
<第2実施形態>
図2および
図4を参照して、第2実施形態の人力駆動車用制御装置70について説明する。第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0057】
人力駆動車用制御装置70は、人力駆動車10に推進力を付与するようモータ38を制御する制御部72を含む。制御部72は、人力駆動車10に設けられる入力回転体12Aに入力される人力駆動力に応じてモータ38を制御する第1制御状態と、入力回転体12Aとは異なる操作部62への操作に応じて入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hにかかわらずモータ38を制御する第2制御状態と、の少なくとも一方でモータ38を制御する。制御部72は、第1制御状態において、所定条件を満たすと第2制御状態でモータ38を制御する。所定条件は、人力駆動車10が停車している停車状態が第1所定期間T1継続した場合、人力駆動車10の走行速度Vが所定速度V1以下の場合、人力駆動車10が所定速度V1以下の走行状態において所定値H1以上の人力駆動力Hを検知した時点から第2所定期間T2が経過した場合、人力駆動車10のピッチ角Dが所定ピッチ角D1以上の場合、人力駆動車10の入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hが所定値H1以上の場合、人力駆動車10が所定速度V1以下の走行状態において、人力駆動車10のピッチ角Dが所定ピッチ角D1以上、および、人力駆動車10の入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hが所定値H1以下、の少なくとも1つが満たされる場合、の少なくとも1つを含む。
【0058】
制御部72は、第1制御状態において、所定条件が成立した場合、第1制御状態から第2制御状態に切り替える。制御部72は、後述する第1例から第7例の1つのみを実行してもよく、複数の制御を組み合わせて実行してもよい。第1例から第7例のうちの複数の制御を組み合わせて実行する場合、制御部72は、第1制御状態において、組み合わせる各例と対応する所定条件の1のみが満たされると、第1制御状態から第2制御状態に切り替えてもよい。さらに、第1例から第7例のうちの複数の制御を組み合わせて実行する場合、制御部72は、組み合わせる各例と対応する所定条件の全てが満たされると、第1制御状態から第2制御状態に切り替えてもよい。
【0059】
第1例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10が停車している停車状態が第1所定期間T1継続した場合、第2制御状態でモータ38を制御する。第1所定期間T1は、例えば、3秒以上60秒以下である。第1所定期間T1は、好ましくは、5秒以上45秒以下である。第1所定期間T1は、さらに好ましくは、5秒以上30秒以下である。
【0060】
第2例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10の走行速度Vが所定速度V1以下の場合、第2制御状態でモータ38を制御する。所定速度V1は、例えば、2km/h以上かつ6km/h以下である。所定速度V1は、好ましくは、2km/h以上かつ5km/h以下である。
【0061】
第3例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10が所定速度V1以下の走行状態において所定値H1以上の人力駆動力Hを検知した時点から第2所定期間T2が経過した場合、第2制御状態でモータ38を制御する。所定値H1は、人力駆動力Hがトルクの場合、例えば、1Nm以上3Nm以下である。所定値H1は、人力駆動力Hが仕事率の場合、例えば、5ワット以上24ワット以下である。第2所定期間T2は、例えば、3秒以上60秒以下である。第2所定期間T2は、好ましくは、5秒以上45秒以下である。第2所定期間T2は、さらに好ましくは、5秒以上30秒以下である。
【0062】
第4例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10のピッチ角Dが所定ピッチ角D1以上の場合、第2制御状態でモータ38を制御する。所定ピッチ角D1は、例えば、道路勾配の10%以上と対応するピッチ角Dである。所定ピッチ角D1は、好ましくは、道路勾配の20%以上と対応するピッチ角Dである。所定ピッチ角D1は、さらに好ましくは30%以上と対応するピッチ角Dである。所定ピッチ角D1は、さらに好ましくは道路勾配の40%以上と対応するピッチ角Dである。所定ピッチ角D1は、さらに好ましくは道路勾配の50%以上と対応するピッチ角Dである。
【0063】
第5例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10の入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hが所定値H1以上の場合、第2制御状態でモータ38を制御する。
【0064】
第6例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10が所定速度V1以下の走行状態において、人力駆動車10のピッチ角Dが所定ピッチ角D1以上の場合、第2制御状態でモータ38を制御する。
【0065】
第7例では、制御部72は、第1制御状態において、人力駆動車10が所定速度V1以下の走行状態において、人力駆動車10の入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hが所定値H1以下の場合、第2制御状態でモータ38を制御する。
【0066】
制御部72が、第4例および第6例を実行する場合、好ましくは、人力駆動車10は、傾斜検出部52を備える。
傾斜検出部52は、人力駆動車10のピッチ角Dを検出するように構成される。傾斜検出部52は、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサは、ジャイロセンサおよび加速度センサの少なくとも1つを含む。別の例では、傾斜検出部52は、GPS受信機を含む。制御部72は、GPS受信機によって取得したGPS情報と、記憶部74に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて、人力駆動車10のピッチ角Dを演算してもよい。傾斜検出部52は、無線通信装置または電気ケーブルを介して、制御部72に接続される。
【0067】
好ましくは、所定条件は、入力回転体12Aの回転速度NCが不連続である場合をさらに含む。例えば、制御部72は、第1制御状態において、第1例から第7例までの少なくとも1つが成立し、かつ、入力回転体12Aの回転速度NCが不連続である場合、第2制御状態でモータ38を制御する。制御部72は、例えば、入力回転体12Aの回転速度NCが0よりも大きい速度と、0とを繰り返す場合、または、入力回転体12Aの回転速度NCが0が正と負とを繰り返す場合、入力回転体12Aの回転速度NCが不連続であると判定する。
【0068】
図4を参照して、モータ38の制御状態を切り替える処理について説明する。
図4では、
図3のステップS13をステップS21に代える以外の点については
図3と同様の処理が実行される。
図4では、制御部72は、ステップS12において肯定判定の場合、ステップS21に移行する。
【0069】
制御部72は、ステップS21において、所定条件を満たすか否かを判定する。制御部72は、所定条件を満たさない場合、処理を終了する。制御部72は、所定条件を満たす場合、ステップS14に移行する。
【0070】
所定条件を満たす状態において、搭乗者が人力駆動車10の押し歩きを行う可能性が高い。例えば、搭乗者の負荷が大きい上り坂を人力駆動車10によって走行する場合、および、人力駆動車10によって障害物を連続で乗り越える場合等に所定条件が満たされやすい。制御部72は、所定条件を満たすと、第2制御状態に切り替えるため、搭乗者の人力駆動車10の押し歩きのアシストをスムーズに行うことができる。
【0071】
<変形例>
実施形態に関する説明は、本開示に従う人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示に従う人力駆動車用制御装置および人力駆動車用操作システムは、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0072】
・制御部72は、第2制御状態において、搭乗者が操作部62を操作する場合、第1制御状態でモータ38を制御するようにしてもよい。
【0073】
・人力駆動車用制御装置70は、人力駆動車10に推進力を付与するようモータ38を制御する制御部72を含み、制御部72は、人力駆動車10に設けられる入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hに応じてモータ38を制御する第1制御状態と、入力回転体12Aとは異なる操作部62への操作に応じて入力回転体12Aに入力される人力駆動力Hにかかわらずモータ38を制御する第2制御状態と、の少なくとも一方でモータ38を制御し、第2制御状態において、人力駆動車10の走行速度Vが所定走行速度V1以上になると、第1制御状態でモータ38を制御するようにしてもよい。この場合、例えば、第1実施形態の
図3のステップS18を省略してもよい。
【0074】
・第2実施形態において、制御部72は、第2制御状態において、搭乗者が操作部62を操作する場合、第1制御状態でモータ38を制御するようにしてもよい。この場合、例えば、
図4のステップS17およびステップS18に代えて、制御部72は、
図5に示されるステップS30の処理を実行する。
図5の処理において、制御部72は、ステップS16の処理を実行すると、ステップS30に移行する。
図5の処理において、制御部72は、ステップS20の処理を実行すると、ステップS30に移行する。制御部72は、ステップS30において、操作部62が操作されるか否かの判定を行う。制御部72は、操作部62が操作されるとステップS19に移行する。制御部72は、操作部62が操作されない場合、ステップS15に移行する。
図4のステップS17およびステップS18に代えて、制御部72は、操作部62が操作されるか否かの判定を行う場合、好ましくは、制御部72は、第1操作部62Aが操作された場合に、操作部62が操作されたと判定する。
【0075】
・各実施形態において、操作部62は、第1制御状態における制御モードを切り替える第3操作部と、第1制御状態から第2制御状態に切り替える第4操作部とを備えるようにしてもよい。この場合、例えば、
図3のステップS13において、第4操作部が操作された場合、操作部62が操作されたと判定する。
【0076】
・制御部72は、第1制御状態において第4モータ制御モード以外の制御モードが選択されている場合に第2制御状態に切り替えるようにしてもよい。例えば、操作部62は、第1制御状態から第2制御状態に切り替える第5操作部を備える。第5操作部を備える構成において、制御部72は、第2制御状態から第1制御状態に切り替える場合、第2制御モードに切り替えられる前に選択されていたモータ制御モードに切り替えるようにしてもよい。
【0077】
本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、所望の選択肢の「1つ以上」を意味する。一例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が2つであれば「1つの選択肢のみ」または「2つの選択肢の双方」を意味する。他の例として、本明細書において使用される「少なくとも1つ」という表現は、選択肢の数が3つ以上であれば「1つの選択肢のみ」または「2つ以上の任意の選択肢の組み合わせ」を意味する。
【符号の説明】
【0078】
10…人力駆動車、12…クランク、12A…入力回転体、14…車輪、38…モータ、40…センサ、42…車速センサ、44…位置情報検出センサ、46…加速度センサ、48…クランク回転センサ、60…人力駆動車用操作システム、62…操作部、70…人力駆動車用制御装置、72…制御部。