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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】抽出液の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/02 20060101AFI20240708BHJP
   B01F 23/20 20220101ALI20240708BHJP
   B01F 25/20 20220101ALI20240708BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20240708BHJP
   B08B 9/032 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B01D11/02 103
B01F23/20
B01F25/20
B08B3/10 Z
B08B9/032 328
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020048892
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021146283
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・ガスプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 正之
(72)【発明者】
【氏名】森 亮太
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0069480(KR,A)
【文献】特表2020-507433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 11/00-12/00
B01F 21/00-25/90
B08B 5/00-13/00
B08B 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の微細気泡発生装置に溶媒を供給する溶媒供給ラインと、前記第1の微細気泡発生装置に酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給する第1のガス供給ラインと、前記溶媒に前記ガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有溶媒を生成する前記第1の微細気泡発生装置と、前記第1の微細気泡発生装置に接続され、前記微細気泡含有溶媒を抽出釜に供給する微細気泡含有溶媒供給ラインと、被抽出物を収納可能な前記抽出釜と、前記抽出釜に接続され、前記被抽出物から成分を抽出した抽出液を供給する抽出液供給ラインと、第2の微細気泡発生装置に洗浄液を供給する洗浄液供給ラインと、前記第2の微細気泡発生装置に任意のガスを供給する第2のガス供給ラインと、前記洗浄液に前記第2のガス供給ラインから供給されるガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有洗浄液を生成する前記第2の微細気泡発生装置と、前記第2の微細気泡発生装置に接続され、被洗浄物に微細気泡含有洗浄液を供給する微細気泡含有洗浄液供給ラインとで構成される抽出液の製造装置。
【請求項2】
前記抽出液供給ラインには、溶存酸素除去装置が更に設けられ、
前記溶存酸素除去装置は、前記抽出液に窒素ガスを微細気泡の状態で含有させ、微細気泡含有抽出液を生成する前記第3の微細気泡発生装置と、前記第3の微細気泡発生装置に接続され、前記微細気泡含有抽出液から溶存酸素を除去する分離容器とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の抽出液の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルを用いて被抽出物から成分を抽出し、抽出液を製造する抽出液の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被抽出物から所望の成分を抽出するため、所望の成分に応じた温度に加温した水系溶媒、もしくは有機系溶媒等を用いて、各溶媒に可溶な成分を抽出し、抽出液を得ることが一般的である。
【0003】
しかしながら、既存の抽出方法では加熱が必要である場合に、得られた成分が変質してしまうことが多く、また、低温で抽出を行うと、抽出効率が低く、被抽出物の使用量が増え、採算が合わないといった事態が発生してしまう。
【0004】
微細気泡を含む水での抽出方法は既に知られており、例えば特許文献1にあるように、最頻粒子径が500nm以下の超微細気泡を含む水を用いる抽出方法がある。
また、特許文献2にあるように、炭酸ガスを加圧、加温し超臨界状態にして行う超臨界抽出によって比較的低温で抽出を行う技術もある。
【0005】
これら方法により、既存の抽出方法に比べ効率よく抽出を行うことができるが、これら方法は、ナノバブルや超臨界状態の二酸化炭素を製造する必要があるため、装置が大型、高コストになる等の問題があった。
【0006】
また、これらの装置を洗浄するための設備も別途必要となり、設備がより大型化する、高コストになる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5821839号公報
【文献】特開2006-223239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、装置が大型かつ高コストになることなく、より簡便かつ低コストで抽出効率に優れた抽出液の製造装置及び抽出液の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
請求項1に記載の抽出液の製造装置は、第1の微細気泡発生装置に溶媒を供給する溶媒供給ラインと、前記第1の微細気泡発生装置に酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給する第1のガス供給ラインと、前記溶媒に前記ガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有溶媒を生成する前記第1の微細気泡発生装置と、前記第1の微細気泡発生装置に接続され、前記微細気泡含有溶媒を抽出釜に供給する微細気泡含有溶媒供給ラインと、被抽出物を収納可能な前記抽出釜と、前記抽出釜に接続され、前記被抽出物から成分を抽出した抽出液を供給する抽出液供給ラインと、第2の微細気泡発生装置に洗浄液を供給する洗浄液供給ラインと、前記第2の微細気泡発生装置に任意のガスを供給する第2のガス供給ラインと、前記洗浄液に前記第2のガス供給ラインから供給されるガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有洗浄液を生成する前記第2の微細気泡発生装置と、前記第2の微細気泡発生装置に接続され、被洗浄物に微細気泡含有洗浄液を供給する微細気泡含有洗浄液供給ラインとで構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の抽出液の製造装置の前記抽出液供給ラインには、溶存酸素除去装置が更に設けられ、前記溶存酸素除去装置は、前記抽出液に窒素ガスを微細気泡の状態で含有させ、微細気泡含有抽出液を生成する前記第3の微細気泡発生装置と、前記第3の微細気泡発生装置に接続され、前記微細気泡含有抽出液から溶存酸素を除去する分離容器とで構成されることを特徴とする。
【0014】
【0015】
【0016】
【発明の効果】
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡状態で液体中に含有させることにより、溶存酸素濃度の低い抽出液を製造することができる。
(2)溶存酸素の除去を行うことにより、溶存酸素の濃度をさらに低下させることができる。
(3)1つの装置で抽出、溶存酸素の除去、洗浄等を行うことができるので、装置の省スペース化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1乃至図7は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図8及び図9は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
図10及び図11は本発明の第3の実施形態を示す説明図である。
図1】第1の実施形態の抽出液の製造装置の概略説明図。
図2】微細気泡発生装置の説明図。
図3】ノズル部の傾きを示す参考説明図。(a)対向するノズル部のいずれも傾きが0°の場合の説明図。(b)対向するノズル部の一方のノズル部の傾きが40°の場合の説明図。(c)対向するノズル部が異なる向きに20°傾き、対向するノズル部から噴射される流体が40°の傾きで衝突する場合の説明図。
図4】ノズル部の配置状態を示す参考説明図。(a)対向するノズル部の中心軸が同軸となるように配置された場合(0mm離間)の説明図。(b)対向するノズル部の中心軸が100mm離間するように配置された場合(100mm離間)の説明図。
図5】微細気泡濃度と溶存酸素濃度の関係を示す表。
図6】濡れ性に関する試験結果を示す表。
図7】第1の実施形態の抽出液の製造方法の工程図。
図8】第2の実施形態の抽出液の製造装置の概略説明図。
図9】第2の実施形態の抽出液の製造方法の工程図。
図10】第3の実施形態の抽出液の製造装置の概略説明図。
図11】第3の実施形態の抽出液の製造方法の工程図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は本発明の微細気泡、いわゆるマイクロバブルやウルトラファインバブル(UFB、直径1μm以下の大きさの気泡)を用いて主に被抽出物から成分を抽出するとともに、抽出に用いた装置を洗浄できる抽出液の製造装置である。
【0020】
この抽出液の製造装置1は、図1に示すように、微細気泡発生装置2に液体を供給する液体供給ライン3と、前記微細気泡発生装置2にガスを供給するガス供給ライン4と、前記液体に前記ガスを微細気泡状態で微細気泡を含有させ、微細気泡含有液体を生成する微細気泡発生装置2と、前記微細気泡発生装置2に接続され、前記微細気泡含有液体を抽出釜5に供給する微細気泡含有液体供給ライン6と、被抽出物を収納可能な前記抽出釜5と、前記抽出釜5に接続され、前記被抽出物から成分を抽出した抽出液を供給する抽出液供給ライン7と、前記微細気泡発生装置2に接続され、前記微細気泡含有液体を被洗浄物に供給する微細気泡含有洗浄液供給ライン8とで構成されている。
【0021】
本実施形態においては、溶媒供給源9から溶媒供給ライン10を介して微細気泡発生装置2及び抽出釜5に供給され被抽出物から成分を抽出する溶媒と、洗浄液供給源11から洗浄液供給ライン12を介して微細気泡発生装置2に供給され抽出液供給ライン7等を洗浄する洗浄液を液体として用いている。
【0022】
液体供給ライン3は、図1に示すように、前記溶媒供給ライン10と洗浄液供給ライン12を含むもので、溶媒供給源9から供給される溶媒と洗浄液供給源11から供給される洗浄液を微細気泡発生装置2へ送るラインである。
【0023】
この溶媒供給源9は、ガスを微細気泡状で含有させる液体を供給するもので、この溶媒は、水やヘキサンやエタノール等の有機溶剤等が考えられる。本実施形態においては、水を溶媒として用いている。
【0024】
この溶媒供給源9は、液体が収納されたタンク等でもよいし、水の場合には水道管や貯水タンクを溶媒供給源9としてもよい。
【0025】
洗浄液供給源11は、ガスを微細気泡状で含有させる洗浄液を供給するもので、この洗浄液は、水や界面活性剤を含有するアルカリ性洗浄液、酸性洗浄液及び中性洗浄液等が考えられる。本実施形態においては、アルカリ性洗浄液を洗浄液として用いている。
【0026】
この洗浄液供給源11は、洗浄液が収納されたタンク等が想定されるが、例えば洗浄液として水を用いる場合には水道管等を洗浄液供給源11としてもよく、水を洗浄液として用いる場合には、溶媒供給源9と洗浄液供給源11を同一のものとしてもよい。この場合、溶媒供給ライン10と洗浄液供給ライン12も同一の1つの管路(液体供給ライン3)となる。
【0027】
ガス供給ライン4は、ガス供給源13から供給される空気、窒素、炭酸ガス、酸素、水素、オゾン、亜酸化窒素、アルゴン又は希ガス等のガスの内少なくとも1つ以上のガスを微細気泡発生装置2へ送るラインである。
【0028】
ガス供給源13としては、タンク、ボンベ等や、空気の場合にはコンプレッサー等が考えられる。
【0029】
微細気泡のもととなるガスは、前述のように空気、窒素、炭酸ガス、酸素、水素、オゾン、亜酸化窒素や、希ガス等の不活性ガスから1種類単体、もしくは2種類以上を選択して混合し用いることもできる。溶媒に微細気泡状態で含有させるガスは、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスが望ましく、本実施形態においては、窒素ガスを用いているが、希ガスやPSA等でガス組成比を酸素の含有率が10vol%以下に変化させた空気等のガスも使用することができる。
【0030】
一方、洗浄液に微細気泡として含有させるガスは溶媒とは異なるガスにすることができ、具体的には前述のように空気、窒素、炭酸ガス、酸素、水素、オゾン、亜酸化窒素や、希ガス等の不活性ガスから1種類単体、もしくは2種類以上を選択して混合し用いることができる。
【0031】
微細気泡発生装置2は、液体供給ライン3及びガス供給ライン4に接続されており、供給されたガスを前記液体に微細気泡で含有するように混合して微細気泡含有溶媒を生成し、二次側へ送る装置である。
【0032】
この微細気泡発生装置2は、図2に示すように本実施形態では、前記液体供給ライン3から供給された液体と前記ガス供給ライン4から供給された前記ガスを混合する混合器14と、前記混合器14で混合された混合流体を複数個のノズル部15に供給する混合流体供給ライン16と、少なくとも前記液体供給ライン3から供給された液体又は前記混合器14で混合された前記混合流体のいずれかを昇圧する昇圧ポンプ17と、前記混合流体供給ライン16に接続されるとともに、バッファー部18の前記液体内に併設状態で設けられ、昇圧された前記混合流体を噴射し、せん断することで微細気泡を発生させる前記複数個のノズル部15とで構成されている。
【0033】
混合器14は、液体供給ライン3及びガス供給ライン4に接続されており、供給されたガスと液体を混合器14で混合して二次側へ送る。
【0034】
混合器14で混合された混合流体は、前記液体供給ライン3から供給された液体に取り込んだガスの気泡を含有する状態となっている。
【0035】
混合流体供給ライン16は、混合器14の二次側と複数個のノズル部15を接続するラインであり、本実施形態では、この混合流体供給ライン16に昇圧ポンプ17が設けられている。
【0036】
昇圧ポンプ17は、本実施形態においては混合器14の二次側、すなわち、混合流体供給ライン16の混合器14とバッファー部18との間に設けられており、前記混合流体を少なくとも0.3MPa以上に昇圧するものである。
【0037】
使用される昇圧ポンプ17は、液体を昇圧し、圧送できるものであればどのようなものでもよく、公知の液体用昇圧ポンプを用いることができる。
なお、昇圧ポンプ17を用いて昇圧した後の液体又は混合流体の圧力としては、前述したように0.3MPa以上となることが望ましいが、0.3MPa未満であってもウルトラファインバブルを発生させることはできる。
【0038】
バッファー部18は、本実施形態では容器状の部材で、内部に液体等の液体を保持できるものである。このバッファー部18では、微細気泡含有溶媒内に溶存する酸素を分離する分離容器としての機能も備えており、バッファー部18にはその上方側に例えば管状の排出部19が接続されている。バッファー部18の内部で微細気泡含有溶媒が生成された後、この微細気泡含有溶媒から脱気された酸素が前記排出部19から外部へ排出される。この排出部19には、仕切弁(図示せず)等を設けてもよい。
【0039】
このように溶存酸素が分離された微細気泡含有溶媒を用いて抽出を行うことにより、抽出液内の溶存酸素も微量にすることができる。
【0040】
ノズル部15は、図3及び図4に示すようにノズル部15から噴射された混合流体がせん断されるような併設状態で設けられており、好ましくは略対向状態に配設されている。
ここで、併設状態とは、略対向状態を含むものであり、略対向状態とは、ノズル部15の中心軸が同一線上に位置する状態で向かい合った状態や中心軸が離間した状態で向かい合って配置される状態を含むものである。
【0041】
本実施形態では、略対向状態で設けられており、混合流体供給ライン16より供給された所定の圧力に昇圧された混合流体をこのノズル部15から噴射することにより、混合流体がせん断状態となり、バッファー部18内の液体中にウルトラファインバブルが発生する。
【0042】
具体的には、ノズル部15は一直線上を含んで略向かい合って配置されており、図3に示すように噴射方向が0°乃至40°の角度に傾斜させることができる。ここで、0°とは、一方のノズル部15の中心軸と、このノズル部15に対向する他方のノズル部15の中心軸が同軸又は平行になる角度で、この0°に対してプラス・マイナス方向(図面上では上下方向)に最大40°傾斜可能に設けられている。
【0043】
この角度は、対向するノズル部15同士のなす角度が最大40°になるように調整することが望ましく、例えば、一方のノズル部15の傾きが0°の場合には、他方のノズル部15の角度を最大で40°(上下方向に40°)となるように調整し、一方のノズル部15の傾きが20°の場合には、他方のノズル部15の角度を一方のノズル部15と逆方向の傾きで最大で20°となるように調整することが望ましい。
【0044】
すなわち、対向するノズル部15から噴射される混合流体が最大で40°の傾きで衝突するように対向するノズル部15の角度を設定する。
【0045】
また、対向する複数個のノズル部15は、図4に示すように、それぞれその中心軸に対して0mm乃至100mmに離間させて設置することができる。すなわち、ノズル部15はその中心軸の一直線上から0mm以上で100mm以下の範囲ずれて向かい合って配置されている。
【0046】
このように配置することにより、ノズル部15から噴射された混合流体同士が衝突又は近接し、効率よくせん断されることにより、ウルトラファインバブルを効率よく発生させることができる。
【0047】
ところで、このときの混合流体が前記ノズル部15を通過する際の最大流速は10m/sec乃至200m/secであることが望ましく、より好ましくは50m/sec乃至150m/secであることが望ましい。
【0048】
この微細気泡含有溶媒に含有される微細気泡は、その粒子径が十分に小さい方が気泡の表面積の総和が増加し、効率的に液中の溶存酸素を脱気できる。
【0049】
また、気泡径の大きい泡によるバブリングによるガス置換では、ガス供給源13から供給されるガス(本実施形態においては窒素ガス)と液体との接触時間が短いことから、ガス供給源13から供給されるガスによる酸素の吸収が十分行われないうちに気泡が液面にて破裂するため、ガス供給源13から供給されるガスの使用量が多くなってしまう。気泡径をウルトラファインバブルの領域まで小さくすることにより、気泡が水面へ浮上するスピードが非常に遅くなるため、使用するガス供給源13から供給されるガスの量を少なくすることができる。
【0050】
このような作用効果を得られるため、微細気泡の個数を基準とした粒子度分布における最頻粒子径は、1000nmより小さいことが好ましく、500nmより小さいことがより好ましい。
【0051】
また、図5に示すように、微細気泡含有溶媒中の微細気泡一定体積当たりの気体の体積比率が高い(濃度が高い)方が、液中の溶存酸素の脱気効率が高くなる。
【0052】
溶媒を用いて成分を抽出する抽出液が飲料である場合には、抽出液中の溶存酸素が1ppm以下であることが好ましく、微細気泡発生装置2で生成した微細気泡含有液体に含有される微細気泡の含有量は、微細気泡が前記液体1mL当たり1.5億個以上あることが好ましい。本実施形態においては、窒素ガスを用いているため、安全性も高めることができる。
【0053】
この微細気泡発生装置2のバッファー部18では微細気泡含有溶媒を静置して微細気泡含有溶媒内の溶存酸素を除去する作業が行われる。微細気泡含有溶媒内に溶存する酸素は、微細気泡状となった窒素ガス等の酸素の含有率が10vol%以下のガスに吸着され、液体の上方へ浮上してバッファー部18に設けられた排出部19から外部へ排出される。
【0054】
このように溶存酸素を除去した状態の微細気泡含有溶媒は微細気泡含有液体供給ライン6を介して抽出釜5へ供給され、被抽出物から成分の抽出を行う。抽出釜5に収納される被抽出物としては、例えば紅茶や緑茶等のお茶類、コーヒー豆等が考えられる。この成分の抽出を行う際に、微細気泡含有溶媒中の微細気泡濃度が所定濃度以上になるように、微細気泡発生装置2と液体供給ライン3を接続し、溶媒が循環する循環ライン(図示せず)を設けてもよい。また、この循環ラインは洗浄液も循環できるように設けてもよい。前記循環ラインは、バッファー部18又は微細気泡含有液体供給ライン6と液体供給ライン3を接続する循環管路と、前記循環管路の中途に設けられた循環ポンプと、循環管路内の流量を調整する絞り部とで構成されるもの等が想定される。
【0055】
抽出釜5へ供給される微細気泡含有溶媒の微細気泡の含有量としては、一定体積当たりの気体の体積比率が高いほうが接触角は低くなり、濡れ性は高くなることから、微細気泡が前記液体1mL当たり100万個以上存在することが好ましく、1000万個以上あることがより好ましく、5000万個以上あることがさらに好ましい。
【0056】
抽出において重要な指標となる被抽出物に対する液体の濡れ性および接触角について考慮すると、微細気泡を含む液体中の一定体積当たりの気体の体積比率が高いほうが接触角は低くなり、濡れ性は高くなる。
【0057】
例えば図6に示すように、500nmを超える気泡を含んだ微細気泡含有溶媒が最も接触角が低くなり、その次にマイクロバブルを除去した微細気泡含有溶媒の接触角が低くなり、微細気泡を含まない水が最も接触角が大きくなる。
【0058】
接触角が最も低くなる500nmを超える微細気泡を含む水が、最も濡れ性が高くなり、最も抽出処理に適していると推察される。
【0059】
よって、微細気泡は、体積を基準とした粒子径分布における最頻粒子径が500nmより大きいことが好ましく、500nm~100μmであることがより好ましく、500nm~1μmであることがさらに好ましい。
【0060】
ところで、このような微細気泡を含有した微細気泡含有溶媒を抽出釜5へ送る場合、寿命の短い粒子径の大きい気泡を抽出釜5へ供給するため、微細気泡発生装置2から抽出釜5までの配管距離(微細気泡含有液体供給ライン6の長さ)が100m以内であることが望ましく、50m以内であることがさらに望ましい。
なお、微細気泡含有溶媒の温度は被抽出物に応じて最適な温度に調節する。最適な温度としては水に窒素の微細気泡を含有させる場合には、40℃~60℃程度が望ましく、更に好適には50℃~60℃程度が望ましい。
【0061】
このような微細気泡含有溶媒を用いて被抽出物から成分を抽出した抽出液は、抽出釜5に接続された抽出液供給ライン7を介して外部へ提供される。
【0062】
一方、微細気泡含有洗浄液は洗浄液供給ライン12を介して微細気泡発生装置2へ供給された洗浄液に空気、窒素、炭酸ガス、水素、オゾン、亜酸化窒素、アルゴン又は希ガスの少なくとも1つ以上のガスを微細気泡状態で含有させて生成する。
【0063】
微細気泡含有洗浄液は、本実施形態においては、微細気泡含有洗浄液供給ライン8を介して被洗浄物としての抽出釜5の上部から、抽出釜5の内部に微細気泡含有洗浄液をスプレーして供給される。更に上流の溶媒供給ライン10等も被洗浄物とし、微細気泡含有洗浄液で洗浄する場合には、液体供給ライン3(溶媒供給ライン10)に微細気泡含有洗浄液供給ライン8を接続する、又は洗浄液供給ライン8の仕切弁20を閉じ、微細気泡含有液体供給ライン6を微細気泡含有洗浄液供給ライン8として用いることにより微細気泡含有洗浄液が液体供給ライン3等から下流へ流れ、抽出釜5や溶媒供給ライン10等の被洗浄物が洗浄される。なお、下流の抽出液供給ライン7のみを被洗浄物とし、抽出液供給ライン7のみに微細気泡含有洗浄液を供給できるようにしてもよい。
【0064】
ところで、この微細気泡含有洗浄液供給ライン8には、公知のCIP洗浄装置、すなわち、公知の洗浄液タンクや洗浄液用ポンプ等を更に設けてもよい。
【0065】
洗浄後に微細気泡含有洗浄液が通過した部分に、水や炭酸水等のすすぎ液を供給し、洗浄部分のすすぎを行ってもよい。すすぎ液は、溶媒供給源9や洗浄液供給源11等から供給された液体をそのまま用いてもよいし、微細気泡発生装置2を介して微細気泡含有すすぎ液を生成し、この微細気泡含有すすぎ液を供給してすすぎをしてもよい。また、溶媒供給源9等とは別にすすぎ液供給源を有するすすぎ液供給ラインを設けてもよい。
【0066】
この微細気泡含有洗浄液は、汚れ面と汚れの間に微細気泡が入り込み、微細気泡同士が結合することで大きな泡となり、その時の物理的な刺激によって汚れが汚れ面から剥離する。そのため微細気泡含有洗浄液一定体積当たりの気体の体積比率が高い(濃度が高い)方が汚れが剥離するまでの時間を短くすることができ、微細気泡発生装置2で生成した微細気泡含有洗浄液に含有される微細気泡の含有量は、微細気泡が前記洗浄液1mL当たり1000万個以上存在することが好ましく、1億個以上あることがさらに好ましい。
【0067】
また、微細気泡表面に洗剤の界面活性剤が局在化するため、微細気泡の粒子径が十分に小さい方が凹凸ある汚れ面に効率よく界面活性剤が局在化した微細気泡を浸透させることができる。すなわち、界面活性剤を効率よく汚れへと運ぶためには微細気泡の粒子径が小さい方が好ましく、個数を基準とした粒子度分布における最頻粒子径が1000nmより小さいことが好ましく、500nmより小さいことがより好ましい。
【0068】
さらに、本実施形態における微細気泡は、負電荷を帯びている。微細気泡に負電荷を帯びさせることにより、通常プラスに帯電している油汚れ等の汚れに対して電気的な要因で洗浄液をより効率よく供給することができ、洗浄性を向上させることができる。
ところで、液体供給ライン3や微細気泡含有液体供給ライン6、抽出液供給ライン7等には適宜仕切弁20が設けられている。
【0069】
本発明の抽出液の製造方法21は、図7に示すように、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを微細気泡として含有する微細気泡含有溶媒を生成する微細気泡含有溶媒生成工程22と、この微細気泡含有溶媒生成工程22で生成した微細気泡含有溶媒を用いて被抽出物から所定の成分を抽出する抽出工程23と、前記抽出工程23で所定の成分を抽出した抽出液を外部に供給する抽出液供給工程24と、微細気泡を含有する洗浄液を生成する微細気泡含有洗浄液生成工程25と、少なくとも前記微細気泡含有溶媒又は前記抽出液が通過した部位を、前記微細気泡含有洗浄液生成工程25で生成した微細気泡含有洗浄液でCIP洗浄する洗浄工程26と、前記洗浄工程26後、前記微細気泡含有洗浄液で洗浄した部位にすすぎ液を供給し、前記洗浄した部位をすすぐすすぎ工程27を含むものである。
【0070】
微細気泡含有溶媒生成工程22では、酸素の含有率が10vol%以下の任意のガス、例えば、PSA等でガス組成比を変化させた空気、窒素、炭酸ガス、水素、オゾン、亜酸化窒素や、希ガス等の不活性ガスから1種類単体、もしくは2種類以上を選択して混合し用いることもでき、本実施形態においては、窒素ガスを用いている。
【0071】
抽出工程23は、被抽出物を抽出釜5に収納し、この被抽出物に対して適温(例えば55℃)に温調した微細気泡含有溶媒を抽出釜5に加えて、所定時間静置して抽出処理を行い、抽出液を得る工程である。
【0072】
抽出液供給工程24は、抽出工程23で生成した抽出液を外部へ提供する工程で、例えば抽出液が飲料の場合には、飲料用容器等に抽出液が抽出液供給ライン7を介して提供されて充填される。
【0073】
微細気泡含有洗浄液生成工程25は微細気泡発生装置2を用いて洗浄液にガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有洗浄液を生成する。
なお、この微細気泡含有洗浄液生成工程25において、微細気泡発生装置2内の液体を循環ライン(図示せず)により循環させ、前記微細気泡含有洗浄液の濃度を向上させる循環工程を行ってもよい。
【0074】
洗浄工程26では、被洗浄物、具体的には、本実施形態においては少なくとも抽出液が通過した部位(抽出液供給ライン7)を微細気泡含有洗浄液を用いてCIP洗浄する工程で、より好適には微細気泡含有液体供給ライン6、抽出釜5及び抽出液供給ライン7をCIP洗浄することが望ましい。
【0075】
すすぎ工程27は、前記微細気泡含有洗浄液で洗浄した部位にすすぎ液を供給し、前記洗浄した部位をすすぐ工程で、すすぎ液としては、水等が用いられるが、例えばアルカリ性洗浄液を用いて洗浄工程を行った場合には、炭酸水又は炭酸ガスを微細気泡発生装置2によりすすぎ液に微細気泡状態で含有させた微細気泡含有すすぎ液を用いて、中和させながらすすぎを行うとよい。
【0076】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図8乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態について説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0077】
図8及び図9に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、溶媒に微細気泡を含有させる第1の微細気泡発生装置2Aと、洗浄液に微細気泡を含有させる第2の微細気泡発生装置2Bをそれぞれ別個に設けた抽出液の製造装置1Aにするとともに、これらの微細気泡発生装置2A、2Bを用いて微細気泡含有溶媒生成工程22A及び微細気泡含有洗浄液生成工程25Aを行う抽出液の製造方法21Aにした点で、このような抽出液の製造装置1Aや抽出液の製造方法21Aにしても前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0078】
溶媒供給源9を有し、第1の微細気泡発生装置に溶媒を供給する溶媒供給ライン10Aと、第1のガス供給源13Aを有し、前記第1の微細気泡発生装置2Aに酸素の含有率が10vol%以下の任意のガスを供給する第1のガス供給ライン4Aと、前記溶媒に前記ガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有溶媒を生成する前記第1の微細気泡発生装置2Aと、前記第1の微細気泡発生装置2Aに接続され、前記微細気泡含有溶媒を抽出釜5に供給する微細気泡含有溶媒供給ライン28と、被抽出物を収納可能な前記抽出釜5と、前記抽出釜5に接続され、前記被抽出物から成分を抽出した抽出液を供給する抽出液供給ライン7と、洗浄液供給源11を有し、第2の微細気泡発生装置2Bに洗浄液を供給する洗浄液供給ライン12と、第2のガス供給源13Bを有し、前記第2の微細気泡発生装置2Bに任意のガスを供給する第2のガス供給ライン4Bと、前記洗浄液に前記第2のガス供給ライン4Bから供給されるガスを微細気泡状態で含有させ、微細気泡含有洗浄液を生成する前記第2の微細気泡発生装置2Bと、前記第2の微細気泡発生装置2Bに接続され、被洗浄物(少なくとも前記抽出液供給ライン7)に微細気泡含有洗浄液を供給する微細気泡含有洗浄液供給ライン12とで構成されている。
【0079】
ところで、この微細気泡発生装置2A、2Bは第1の実施形態における微細気泡発生装置2と同様の構成のものを用いているが、公知の微細気泡発生装置を用いてもよい。
【0080】
図10及び図11に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第2の形態と主に異なる点は、抽出液供給ラインに、溶存酸素除去装置29を更に設けた抽出液の製造装置1Aにするとともに、抽出工程23のあとに溶存酸素除去工程30を行い、その後に抽出液供給工程24を行う抽出液の製造方法21Bにした点で、このような抽出液の製造装置1Bや抽出液の製造方法21Bにしても前記本発明を実施するための第2の形態と同様な作用効果が得られる。
【0081】
この溶存酸素除去装置29は、第3のガス供給源13Cを有し、第3の微細気泡発生装置2Cに任意のガス、本実施形態においては窒素ガスを供給する第3のガス供給ライン4Cと、前記抽出釜5に接続され、抽出液に窒素ガスを微細気泡の状態で含有させ、微細気泡含有抽出液を生成する前記第3微細気泡発生装置と、前記第3微細気泡発生装置に接続され、前記微細気泡含有抽出液から溶存酸素を除去する分離容器31とで構成されている。
【0082】
なお、付言すると、本実施形態の分離容器31は、微細気泡発生装置2Aで微細気泡を含有させた微細気泡含有液体を収納可能で、微細気泡に溶存酸素を吸着させて脱酸素処理を行うもので、この分離容器31の内部にはノズル部15等は設けられていない。
【0083】
この分離容器31には、排出部19が形成されており、第1の微細気泡発生装置2Aのバッファー部18には排出部19を必ずしも設けなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は微細気泡を用いて抽出液を製造する産業に利用される。
【符号の説明】
【0085】
1、1A、1B:抽出液の製造装置、
2、2A、2B、2C:微細気泡発生装置、
3:液体供給ライン、 4:ガス供給ライン、
5:抽出釜、 6:微細気泡含有液体供給ライン、
7:抽出液供給ライン、 8:微細気泡含有洗浄液供給ライン、
9:溶媒供給源、 10:溶媒供給ライン、
11:洗浄液供給源、 12:洗浄液供給ライン、
13、13A、13B13C:ガス供給源、
14:混合器、 15:ノズル部、
16:混合流体供給ライン、 17:昇圧ポンプ、
18:バッファー部、 19:排出部、
20:仕切弁、
21、21A、21B:抽出液の製造方法、
22、22A:微細気泡含有溶媒生成工程、
23:抽出工程、 24:抽出液供給工程、
25、25A:微細気泡含有洗浄液生成工程、
26:洗浄工程、 27:すすぎ工程、
28:微細気泡含有溶媒供給ライン、29:溶存酸素除去装置、
30:溶存酸素除去工程、 31:分離容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11