(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】RTG遠隔操作システム、及びRTG遠隔操作方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B66C13/40 D
(21)【出願番号】P 2020053078
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】503002732
【氏名又は名称】住友重機械搬送システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】宮田 紀明
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 伸郎
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-142789(JP,A)
【文献】特開2017-047977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のRTGクレーンと、
前記複数のRTGクレーンのそれぞれを操作可能な複数の操作卓を備える遠隔操作室と、
前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとを通信可能とするローカル高速無線通信回線と、
前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとの間のローカル高速無線通信回線による通信が異常となったときに、前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信を前記ローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替える切り替え部と、
を備えるRTG遠隔操作システム。
【請求項2】
前記ローカル高速無線通信回線の通信状態をモニタする通信モニタ部を備え、
前記切り替え部は、前記通信モニタ部が前記ローカル高速無線通信回線の通信状態の異常を検知したときに、前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信を前記ローカル高速無線通信回線から前記公衆回線に自動で切り替える、
請求項1に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項3】
前記切り替え部は、前記ローカル高速無線通信回線から前記公衆回線に切り替えたとき、前記公衆回線における通信容量を小さくする、
請求項1又は2に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項4】
前記切り替え部は、前記ローカル高速無線通信回線から前記公衆回線に切り替えたときに、各前記RTGクレーンを操作可能な前記操作卓の数を低減させる、
請求項1
~3のいずれか一項に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項5】
前記複数の操作卓のそれぞれは、各前記RTGクレーンを視認可能なディスプレイを有し、
前記切り替え部は、前記ローカル高速無線通信回線から前記公衆回線に切り替えたときに、前記ディスプレイに表示される画像の画質を低下させる、
請求項1
~4のいずれか一項に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項6】
前記複数の操作卓のそれぞれは、各前記RTGクレーンを視認可能なディスプレイを有し、
前記切り替え部は、前記ローカル高速無線通信回線から前記公衆回線に切り替えたときに、前記ディスプレイに表示される画像のフレーム数を減少させる、
請求項1~
5のいずれか一項に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項7】
前記ローカル高速無線通信回線は、5G通信回線である、
請求項1~
6のいずれか一項に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項8】
前記公衆回線は、5G通信回線である、
請求項1~
7のいずれか一項に記載のRTG遠隔操作システム。
【請求項9】
複数のRTGクレーンのそれぞれを操作するRTG遠隔操作方法であって、
前記複数のRTGクレーンのそれぞれを操作可能な複数の操作卓を備える遠隔操作室が、前記複数のRTGクレーンのそれぞれと、ローカル高速無線通信回線を介して通信を行う工程と、
前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとの間のローカル高速無線通信回線による通信が異常となったときに、前記遠隔操作室と前記複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信を前記ローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替える工程と、を備えるRTG遠隔操作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RTG遠隔操作システム、及びRTG遠隔操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RTG(Rubber Tyred Gantry Crane)を遠隔操作する遠隔操作システムとしては種々のものが知られている。特許文献1には、RTG等のコンテナ荷役搬送機器の遠隔操作システムが記載されている。遠隔操作システムは、基地局と、RTGの各々の走行レーンに走行方向に沿って敷設されてRTGを誘導する機器誘導部とを備える。
【0003】
機器誘導部は、RTGとの間で制御信号及び状態現示信号の送受信を行う通信手段と、RTGからの映像信号を受信する映像信号受信手段とを備える。通信手段は、光ファイバケーブル又は同軸ケーブルからなる伝送線と、地上側アンテナとを備える。映像信号受信手段は、伝送線と、漏洩同軸ケーブルとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の遠隔操作システムでは、複数のRTGクレーンのそれぞれと遠隔操作室との間で通信がなされる。ところで、複数のRTGクレーンのそれぞれによる荷役を無線通信で行う場合には、通信回線の異常に備えて通信回線を2重化することが求められる。しかしながら、前述した漏洩同軸ケーブルを2重化すると設備にかかるコストが増大することが懸念される。
【0006】
本開示は、通信設備にかかるコストの増大を抑制することができるRTG遠隔操作システム、及びRTG遠隔操作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るRTG遠隔操作システムは、複数のRTGクレーンと、複数のRTGクレーンのそれぞれを操作可能な複数の操作卓を備える遠隔操作室と、遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとを通信可能とするローカル高速無線通信回線と、遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間のローカル高速無線通信回線による通信が異常となったときに、遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信をローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替える切り替え部と、を備える。
【0008】
このRTG遠隔操作システムでは、複数の操作卓を備える遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信回線として、ローカル高速無線通信回線が設けられる。通信回線としてローカル高速無線通信回線を備えることにより、複数の操作卓と複数のRTGクレーンとの間で高速無線通信を行うことができる。従って、RTGクレーンによって撮影された画像を大量且つ高精度に操作卓に送信することができるので、高速化を実現させることができる。また、このRTG遠隔操作システムは、ローカル高速無線通信回線による通信異常時に、通信回線をローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替える切り替え部を備える。従って、通信異常時であっても複数のRTGクレーンによる荷役を継続させることができる。また、公衆回線は、ローカル高速無線通信回線と比較して設置にかかるコストが小さい。従って、通信設備にかかるコストの増大を抑制することができる。
【0009】
切り替え部は、ローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替えたときに、各RTGクレーンを操作可能な操作卓の数を低減させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線における通信異常時に操作可能な操作卓の数を減らすことにより、ローカル高速無線通信回線よりも低速な公衆回線を使う場合であっても、限られた操作卓で確実にRTGクレーンによる荷役を継続させることができる。
【0010】
複数の操作卓のそれぞれは、各RTGクレーンを視認可能なディスプレイを有し、切り替え部は、ローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替えたときに、ディスプレイに表示される画像の画質を低下させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線による通信異常時に、操作卓のディスプレイに表示させる画像の画質を低下させることにより、公衆回線における通信容量を小さくしてRTGクレーンによる荷役を確実に継続させることができる。
【0011】
複数の操作卓のそれぞれは、各RTGクレーンを視認可能なディスプレイを有し、切り替え部は、ローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替えたときに、ディスプレイに表示される画像のフレーム数を減少させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線による通信異常時に、操作卓のディスプレイに表示される画像のフレーム数を減少させることにより、公衆回線を使ってRTGクレーンとの通信を無理なく継続させることができる。
【0012】
ローカル高速無線通信回線は、5G通信回線であってもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線として5G通信回線を用いることができる。
【0013】
公衆回線は、5G通信回線であってもよい。この場合、切り替え部が通信回線を公衆回線に切り替えた場合でも、複数の操作卓と複数のRTGクレーンとの高速通信を実現させることができる。
【0014】
本開示に係るRTG遠隔操作方法は、複数のRTGクレーンのそれぞれを操作するRTG遠隔操作方法であって、複数のRTGクレーンのそれぞれを操作可能な複数の操作卓を備える遠隔操作室が、複数のRTGクレーンのそれぞれと、ローカル高速無線通信回線を介して通信を行う工程と、遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間のローカル高速無線通信回線による通信が異常となったときに、遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信をローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替える工程と、を備える。
【0015】
このRTG遠隔操作方法では、複数の操作卓を備える遠隔操作室と複数のRTGクレーンのそれぞれとの間の通信回線として、ローカル高速無線通信回線を用いる。従って、前述したRTG遠隔操作システムと同様、複数の操作卓と複数のRTGクレーンとの間で高速無線通信を行うことができるので、RTGクレーンによって撮影された画像を大量且つ高精度に操作卓に送信することができる。そして、RTG遠隔操作方法では、ローカル高速無線通信回線による通信異常時に、通信回線をローカル高速無線通信回線から公衆回線に切り替えるので、通信異常時であっても複数のRTGクレーンによる荷役を継続させることができる。また、公衆回線は、ローカル高速無線通信回線と比較して設置にかかるコストが小さいので、通信設備にかかるコストの増大を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、通信設備にかかるコストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係るRTG遠隔操作システム及びRTG遠隔操作方法が適用される例示的なコンテナターミナルを示す平面図である。
【
図2】複数のRTGクレーン及びコンテナヤードを示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るRTG遠隔操作システムの機能を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係るRTG遠隔操作方法の各工程の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照しながら本開示に係るRTG遠隔操作システム及びRTG遠隔操作方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、本実施形態に係るRTG遠隔操作システムが適用される例示的なコンテナターミナル1を示す平面図である。
図1に示されるように、コンテナターミナル1には、コンテナ3が配置されるコンテナヤード2と、接岸したコンテナ船に対してコンテナ3の移載を行う複数のガントリクレーン4と、コンテナヤード2に配置されてコンテナ3の荷役を行う複数のRTGクレーン10と、複数のRTGクレーン10の遠隔操作が可能な遠隔操作室5とが設けられる。
【0020】
一例として、コンテナ3は、ISO規格のコンテナである。コンテナ3は、長尺の直方体状を呈し、例えば、コンテナ3の長手方向の長さは20フィート~40フィートである。コンテナ3の高さは、例えば、8.5フィート~9.5フィートである。コンテナ3は、コンテナヤード2に一段又は複数段積み上げられる。
【0021】
例えば、コンテナヤード2には、貨車、トレーラ又はAGV(Automated Guide Vehicle:自動搬送台車)等の搬送台車の走行路が敷設されている。RTGクレーン10は、当該搬送台車によって搬送されるコンテナ3を取得してコンテナ3をコンテナヤード2の所定の番地で示される位置に載置する。例えば、複数のRTGクレーン10のそれぞれがコンテナヤード2ごとに配置されている。RTGクレーン10は、コンテナヤード2に載置されているコンテナ3を取得して、コンテナ3を当該搬送台車に移載し、当該搬送台車によってコンテナ3を外部に搬出させる。
【0022】
図2は、コンテナヤード2に配置されたRTGクレーン10を模式的に示す斜視図である。
図2に示されるように、RTGクレーン10は、コンテナ3を荷役するコンテナ取り扱いクレーンであって、タイヤ式ガントリークレーン(RTG:Rubber Tired Gantry Crane)である。RTGクレーン10は、コンテナターミナル1において、コンテナヤード2に配置されたコンテナ3の荷役を自動で行う。
【0023】
RTGクレーン10は、例えば、クレーンガーダ上を横行可能なトロリー11と、コンテナ3を荷役するスプレッダ12と、車輪を有する走行装置13とを備える。RTGクレーン10は、一対の走行装置13に立設された一対の脚部と、一対の脚部の上端同士を繋ぐクレーンガーダとを備える門形を呈する。トロリー11は、例えば、横行モータの駆動によって横行する。一例として、トロリー11は、ドラム駆動モータにより正逆回転するドラムを備え、ワイヤを介してスプレッダ12を吊り下げている。
【0024】
スプレッダ12は、コンテナ3を吊り下げる吊具である。スプレッダ12は、コンテナ3を上方から係止可能であり、コンテナ3を係止して吊り上げることによってコンテナ3の荷役を行う。例えば、スプレッダ12の動作及び位置は、本実施形態に係るRTG遠隔操作システム又はRTG遠隔操作方法によって制御される。
【0025】
図3は、本実施形態に係る例示的なRTG遠隔操作システム100の機能を示すブロック図である。
図2及び
図3に示されるように、RTG遠隔操作システム100は、遠隔操作者Mの手動による操作を可能な限り低減しつつ、RTGクレーン10による荷役を可能とする。RTG遠隔操作システム100は、複数のRTGクレーン10と、各RTGクレーン10を操作可能な複数の操作卓6を備える遠隔操作室5と、制御装置20と、ローカル高速無線通信回線L1と、公衆回線L2とを備える。各RTGクレーン10は、ローカル高速無線通信回線L1を介して通信を行う第1通信手段15と、公衆回線L2を介して通信を行う第2通信手段16とを備える。第1通信手段15はローカル高速無線通信回線L1を用いたデータの送受信を可能とするプライマリ通信手段に相当し、第2通信手段16は公衆回線L2を用いたデータの送受信を可能とするバックアップ通信手段に相当する。ローカル高速無線通信回線L1は、例えば、コンテナターミナル1専用に設けられる無線通信回線であり、携帯電話等の通信事業者により提供される無線通信回線とは異なる周波数帯が用いられる。
【0026】
公衆回線L2は、例えば、携帯電話等の通信事業者により提供される無線通信回線であり、ローカル高速無線通信回線L1のバックアップ通信回線として機能する。ローカル高速無線通信回線L1は、例えば、5G通信回線(第5世代移動通信システム)であり、公衆回線L2よりも高速な通信回線である。なお、公衆回線L2の通信規格は、特に制限は無く、5G通信回線であってもよいし、5G通信回線以外の回線であってもよい。
【0027】
遠隔操作室5(複数の操作卓6のそれぞれ)と複数のRTGクレーン10のそれぞれとは、制御装置20により、ローカル高速無線通信回線L1を介して互いに通信可能とされている。制御装置20は、遠隔操作室5と複数のRTGクレーン10のそれぞれとの間の通信を制御する通信制御装置に相当する。
【0028】
制御装置20は、例えば、通信インタフェースを備え、遠隔操作室5の各操作卓6と各RTGクレーン10との間のデータ通信を実現する通信機器を備える。通常、RTGクレーン10はコンテナ3の自動荷役を行うが、例えば、RTGクレーン10が操作卓6に割り当てられることがある。このように、操作卓6にRTGクレーン10が割り当てられたときに、当該操作卓6から当該RTGクレーン10の操作を手動で行うことが可能となる。RTGクレーン10の操作を手動で行う場合として、例えば、安全性の観点から、前述した搬送台車にコンテナ3を移載するタイミングが挙げられる。このように、操作卓6にRTGクレーン10が割り当てられたときには、当該操作卓6から割り当てられたRTGクレーン10を操作可能となる。
【0029】
操作卓6へのRTGクレーン10の割り当ては、例えば、ランダムに行われる。遠隔操作室5には、複数の操作卓6が設けられており、複数の操作卓6のそれぞれはRTGクレーン10の周囲を視認可能とするディスプレイ7を備える。ディスプレイ7には、例えば、RTGクレーン10に取り付けられたカメラが撮影した画像(例えば、RTGクレーン10の周囲のコンテナ3の画像、又は他のRTGクレーン10の画像等)が表示される。
【0030】
操作卓6は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信インタフェース及びユーザインタフェースを備え、一般的なコンピュータとして構成されていてもよい。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)等の演算器である。メモリは、ROM(ReadOnly Memory)又はRAM(Random Access Memory)等の記憶部である。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶部(記憶媒体)である。通信インタフェースは、データ通信を実現する通信機器である。ユーザインタフェースは、表示出力を行うディスプレイ7、及び音声出力を行うスピーカ等の出力器、並びに、操縦レバー、ボタン、キーボード、タッチパネル及びマイク等の入力器を含む。プロセッサは、メモリ、ストレージ、通信インタフェース及びユーザインタフェースを制御する。操作卓6では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種機能を実現する。
【0031】
制御装置20は、ローカル高速無線通信回線L1と公衆回線L2との切り替えを行う切り替え部21と、ローカル高速無線通信回線L1の通信状態をモニタする通信モニタ部22とを備える。例えば、RTG遠隔操作システム100では、通信が正常である場合には、各RTGクレーン10と遠隔操作室5との間の通信回線としてローカル高速無線通信回線L1が用いられる。
【0032】
通信モニタ部22は、例えば、各RTGクレーン10と各操作卓6との間におけるローカル高速無線通信回線L1における通信状態をリアルタイムでモニタする。通信モニタ部22は、ローカル高速無線通信回線L1における通信の自己診断機能であってもよいし、ローカル高速無線通信回線L1におけるダミー信号を基にローカル高速無線通信回線L1の通信状態をモニタしてもよい。このように、通信モニタ部22によるローカル高速無線通信回線L1のモニタの方法としては種々の例が挙げられる。
【0033】
切り替え部21は、通信モニタ部22がローカル高速無線通信回線L1の通信状態の異常を検知したときに、RTGクレーン10と操作卓6との間の通信回線をローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替える。通信モニタ部22は、例えば、切り替え部21が通信回線を切り替えた後にもローカル高速無線通信回線L1のモニタを継続する。
【0034】
そして、切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1の通信状態の正常を検知したときに、RTGクレーン10と操作卓6との間の通信回線をローカル高速無線通信回線L1に戻してもよい。切り替え部21による通信回線の切り替えは、例えば、自動で行われる。
【0035】
例えば、切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に通信回線を切り替えたときに、RTGクレーン10を操作可能な操作卓6の数を低減させる。このとき、切り替え部21は、操作卓6のディスプレイ7に表示される画像の画質を低下させてもよい。これにより、切り替え部21によってディスプレイ7に表示される画像が粗くなる。また、切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に通信回線を切り替えたときに、操作卓6のディスプレイ7に表示される画像のフレーム数を減少させてもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係るRTG遠隔操作方法の制御内容の例について説明する。
図4は、本実施形態に係るRTG遠隔操作方法の例示的な各工程を示すフローチャートである。一例として、本実施形態に係るRTG遠隔操作方法は、RTG遠隔操作システム100を用いて行われる。
【0037】
図3及び
図4に示されるように、まず、遠隔操作室5は複数のRTGクレーン10のそれぞれとローカル高速無線通信回線L1を用いて通信を行う(ローカル高速無線通信回線を介して通信を行う工程、ステップS1)。このとき、複数のRTGクレーン10のそれぞれがコンテナ3の自動荷役を行うと共に、各RTGクレーン10の周囲の画像がローカル高速無線通信回線L1を介して遠隔操作室5に送信されて複数の操作卓6のディスプレイ7に表示される。例えば、搬送台車に対するコンテナ3の移載のとき等、操作卓6によってRTGクレーン10を遠隔操作するときには、操作卓6からの操作信号がローカル高速無線通信回線L1及び第1通信手段15を介してRTGクレーン10に送信される。また、通信モニタ部22によってローカル高速無線通信回線L1のモニタを行う(ステップS2)。
【0038】
通信モニタ部22がローカル高速無線通信回線L1のモニタを行って、ローカル高速無線通信回線L1の正常を検知した場合(ステップS3においてYES)には、一連の工程が完了する。一方、ローカル高速無線通信回線L1における通信の異常を通信モニタ部22が検知した場合には(ステップS3においてNO)、切り替え部21が各RTGクレーン10と遠隔操作室5との間の通信回線をローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替える(公衆回線に切り替える工程、ステップS4)。
【0039】
このとき、切り替え部21は、例えば、RTGクレーン10を操作可能な操作卓6の数を低減し、ディスプレイ7に表示される画像の画質を低下させ、更に、ディスプレイ7に表示される画像のフレーム数を減少させる。なお、切り替え部21は、操作可能な操作卓6の数の低減、画質の低下、及び画像のフレーム数の減少、の全てを行わなくてもよく、これらのいずれか1つ又は2つのみを行ってもよい。
【0040】
通信モニタ部22は、切り替え部21が通信回線を公衆回線L2に切り替えた後にローカル高速無線通信回線L1のモニタを行う。通信モニタ部22がローカル高速無線通信回線L1のモニタを行ってローカル高速無線通信回線L1の異常を検知した場合には(ステップS5においてNO)、引き続きローカル高速無線通信回線L1のモニタを行う。
【0041】
一方、通信モニタ部22がローカル高速無線通信回線L1の正常を検知した場合には(ステップS5においてYES)、切り替え部21が各RTGクレーン10と遠隔操作室5との間の通信回線を公衆回線L2からローカル高速無線通信回線L1に切り替える(ステップS6)。
【0042】
例えば、ローカル高速無線通信回線L1の復旧が完了して通信モニタ部22がローカル高速無線通信回線L1の正常を検知したときに切り替え部21がローカル高速無線通信回線L1への切り替えを行う。以上のように、公衆回線L2からローカル高速無線通信回線L1の切り替えを切り替え部21が行った後に一連の工程が完了する。
【0043】
次に、本実施形態に係るRTG遠隔操作システム100及びRTG遠隔操作方法の作用効果について説明する。
【0044】
本実施形態に係るRTG遠隔操作システム100及びRTG遠隔操作方法では、複数の操作卓6を備える遠隔操作室5と複数のRTGクレーン10のそれぞれとの間の通信回線として、ローカル高速無線通信回線L1を備えることにより、複数の操作卓6と複数のRTGクレーン10との間で高速無線通信を行うことができる。従って、RTGクレーン10によって撮影された画像を大量且つ高精度に操作卓6に送信することができるので、高速化を実現させることができる。また、本実施形態に係るRTG遠隔操作システム100及びRTG遠隔操作方法では、ローカル高速無線通信回線L1による通信異常時に、通信回線をローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替える切り替え部21を備える。また、公衆回線L2は、ローカル高速無線通信回線L1と比較して設置にかかるコストが小さい。従って、通信設備にかかるコストの増大を抑制することができる。
【0045】
切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替えたときに、各RTGクレーン10を操作可能な操作卓6の数を低減させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線L1における通信異常時に操作可能な操作卓6の数を減らすことにより、ローカル高速無線通信回線L1よりも低速な公衆回線L2を使う場合であっても、限られた操作卓6で確実にRTGクレーン10による荷役を継続させることができる。
【0046】
複数の操作卓6のそれぞれは、各RTGクレーン10を視認可能なディスプレイ7を有し、切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替えたときに、ディスプレイ7に表示される画像の画質を低下させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線L1における通信異常時に、操作卓6のディスプレイ7に表示させる画像の画質を低下させることにより、公衆回線L2における通信容量を小さくしてRTGクレーン10による荷役を確実に継続させることができる。
【0047】
複数の操作卓6のそれぞれは、各RTGクレーン10を視認可能なディスプレイ7を有し、切り替え部21は、ローカル高速無線通信回線L1から公衆回線L2に切り替えたときに、ディスプレイ7に表示される画像のフレーム数を減少させてもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線L1による通信異常時に、操作卓6のディスプレイ7に表示される画像のフレーム数を減少させることにより、公衆回線L2を使ってRTGクレーン10との通信を無理なく継続させることができる。
【0048】
ローカル高速無線通信回線L1は、5G通信回線であってもよい。この場合、ローカル高速無線通信回線L1として5G通信回線を用いることができる。
【0049】
公衆回線L2は、5G通信回線であってもよい。この場合、切り替え部21が通信回線を公衆回線L2に切り替えた場合でも、複数の操作卓6と複数のRTGクレーン10との高速通信を実現させることができる。
【0050】
以上、本開示に係るRTG遠隔操作システム及びRTG遠隔操作方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形してもよい。すなわち、本開示に係るRTG遠隔操作システムの各部の構成及び機能、並びに、RTG遠隔操作方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、切り替え部21による通信回線の切り替えが自動で行われる例について説明した。しかしながら、切り替え部による通信回線の切り替えは、手動で行われてもよく、通信回線の切り替えの態様は適宜変更可能である。また、通信回線のモニタの態様も前述した実施形態に限られず適宜変更可能である。RTGクレーンの各部の形状、大きさ及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0052】
前述の実施形態では、5G通信回線(第5世代移動通信システム)であるローカル高速無線通信回線L1について例示した。しかしながら、ローカル高速無線通信回線の通信規格は、5G以外の規格であってもよい。例えば、ローカル高速無線通信回線の規格は、5Gよりも更に高速な通信規格であってもよく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…コンテナターミナル、2…コンテナヤード、3…コンテナ、4…ガントリクレーン、5…遠隔操作室、6…操作卓、7…ディスプレイ、10…RTGクレーン、11…トロリー、12…スプレッダ、13…走行装置、15…第1通信手段、16…第2通信手段、20…制御装置、21…切り替え部、22…通信モニタ部、100…RTG遠隔操作システム、L1…ローカル高速無線通信回線、L2…公衆回線、M…遠隔操作者。