(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】二次電池及びモジュール電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/103 20210101AFI20240708BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20240708BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240708BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/28 Z
H01M50/209
H01M50/262 Z
(21)【出願番号】P 2020055697
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】八木 毅
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06572999(US,B1)
【文献】特表2002-503021(JP,A)
【文献】特開平05-290830(JP,A)
【文献】特開2013-089369(JP,A)
【文献】特開2009-266690(JP,A)
【文献】特開2006-040684(JP,A)
【文献】特開2001-210293(JP,A)
【文献】特開平10-255727(JP,A)
【文献】特開2018-077971(JP,A)
【文献】特開平09-115490(JP,A)
【文献】特開2019-169270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/103
H01M 10/28
H01M 50/209
H01M 50/262
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、前記正極板に重ねられる負極板と、を備える積層体と、
開口を有し、前記積層体を収容するケースと、
前記開口を塞ぐフタと、
を備え、
前記ケースは、
第1の主面と、
前記積層体を挟んで前記第1の主面から離れている第2の主面と、
前記第1の主面の端部から前記第2の主面の端部に至り、ハニカムリブ構造が形成された側面と、
を有
し、
前記正極板及び前記負極板は、前記第1の主面及び前記第2の主面と垂直をなす方向に積層される、
二次電池。
【請求項2】
前記二次電池は、亜鉛二次電池である
請求項
1の二次電池。
【請求項3】
前記第1の主面及び前記第2の主面と垂直をなす配列方向に配列される複数の単電池と、
前記複数の単電池を前記配列方向に加圧する加圧部材と、
前記複
数の単電池を載せる底部材と、
を備え、
前記複数の単電池の各々は、請求項1
または2の二次電池であり、
前記ケースは、前記第1の主面の端部から前記第2の主面の端部に至り前記積層体を挟んで前記開口から離れている底面を有し、
前記底部材は、前記複数の単電池の底面を支持する
モジュール電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及びモジュール電池に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛二次電池においては、正極板及び負極板が重ねられて積層体を構成する。積層体は、ケースに収容される。ケースは、積層体を挟んで互いに離れているふたつの主面を有する。また、ケースは、一方の主面の端部から他方の主面の端部に至る側面を有する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された亜鉛二次電池においては、正極板及び負極板が交互に積層される(段落0012)。また、電池要素がケースに収容される(段落0031)。ケースは、電池要素を挟んで互いに離れているふたつの主面を有する(
図3)。また、ケースは、一方の主面の端部から他方の主面の端部に至る側面を有する(
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
亜鉛二次次電池においては、時間が経過した場合に及び/又は充放電が繰り返された場合に、ケースの内部の内圧が高くなることがあり、ケースが膨張して破損することがある。
【0006】
ケースが膨張して破損することを防止するためには、ケースの壁を厚くしてケースの強度を高くすることが有効である。しかし、ケースの壁を厚くした場合は、ケースの重量及び体積が増加し、亜鉛2次電池の重量及び体積が増加し、亜鉛2次電池のエネルギー密度が低下する。
【0007】
この問題は、亜鉛二次電池以外の二次電池においても生じる。
【0008】
本発明は、この問題に鑑みてなされた。本発明は、二次電池の重量及び体積を著しく増加させることなく二次電池に備えられるケースの強度を高くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、二次電池及び当該二次電池を備えるモジュール電池に関する。
【0010】
二次電池は、積層体、ケース及びフタを備える。
【0011】
積層体は、正極板及び負極板を備える。負極板は、正極板に重ねられる。
【0012】
ケースは、開口を有する。ケースは、積層体を収容する。
【0013】
フタは、開口を塞ぐ。
【0014】
ケースの第1の主面及び第2の主面は、積層体を挟んで互いに離れている。ケースの側面は、ケースの第1の主面の端部からケースの第2の主面の端部に至る。ケースの側面には、ハニカムリブ構造が形成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケースの側面に形成されたハニカムリブ構造によりケースの強度が向上する。これにより、二次電池の重量及び体積を著しく増加させることなく二次電池に備えられるケースの強度を高くすることができる。
【0016】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の二次電池を模式的に図示する斜視図である。
【
図2】第1実施形態の二次電池を模式的に図示する断面図である。
【
図3】第1実施形態の二次電池を模式的に図示する断面図である。
【
図4】第1実施形態の二次電池を模式的に図示する正面図である。
【
図5】第1実施形態の二次電池を模式的に図示する側面図である。
【
図6】第1実施形態の第1変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
【
図7】第1実施形態の第2変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
【
図8】第1実施形態の第3変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
【
図9】第1実施形態の二次電池に備えられる積層電池の主要部を模式的に図示する断面図である。
【
図10】第1実施形態のモジュール電池を模式的に図示する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1 第1実施形態
1.1 二次電池
図1は、第1実施形態の二次電池を模式的に図示する斜視図である。
図2及び
図3は、第1実施形態の二次電池を模式的に図示する断面図である。
図2は、
図3に描かれる切断線B-Bの位置における断面を図示する。
図3は、
図2に描かれる切断線A-Aの位置における断面を図示する。
【0019】
図1、
図2及び
図3に図示される二次電池1は、亜鉛二次電池であり、望ましくはニッケル亜鉛二次電池である。二次電池1が、亜鉛二次電池以外の二次電池であってもよい。
【0020】
二次電池1は、
図1、
図2及び
図3に図示されるように、ケース11及びフタ12を備える。また、二次電池1は、
図2及び
図3に図示されるように、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を備える。
【0021】
ケース11は、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を収容する。ケース11は、開口11aを有する。フタ12は、開口11aを塞ぐ。これにより、ケース11及びフタ12が、密閉空間を有する密閉容器を構成する。また、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15が、密閉空間に配置される。
【0022】
積層電池13は、
図2に図示されるように、積層体101、複数の正極集電タブ102及び複数の負極集電タブ103を備える。このため、二次電池1は、積層体101を備える。また、二次電池1は、複数の正極集電タブ102及び複数の負極集電タブ103を備える。
【0023】
複数の正極集電タブ102は、積層体101から第1の方向DXPに突出する。また、複数の負極集電タブ103は、積層体101から第2の方向DXNに突出する。第2の方向DXNは、第1の方向DXPと反対の方向である。複数の正極集電タブ102の先端は、集約される。また、複数の負極集電タブ103の先端は、集約される。
【0024】
上述したように、ケース11は、積層電池13を収容する。このため、ケース11は、積層体101を収容する。また、ケース11は、複数の正極集電タブ102及び複数の負極集電タブ103を収容する。
【0025】
フタ12は、
図1、
図2及び
図3に図示されるように、フタ本体111、正極端子112及び負極端子113を備える。
【0026】
正極端子112及び負極端子113は、フタ本体111を貫通する。
【0027】
正極端子112は、正極集電板14の一端に接続される。正極集電板14は、集約された複数の正極集電タブ102の先端に接続される。また、負極端子113は、負極集電板15の一端に接続される。負極集電板15は、集約された複数の負極集電タブ103の先端に接続される。これにより、正極端子112は、正極集電板14を介して複数の正極集電タブ102に電気的に接続される。また、負極端子113は、負極集電板15を介して複数の負極集電タブ103に電気的に接続される。これらにより、正極端子112から正極集電板14、複数の正極集電タブ102、積層体101、複数の負極集電タブ103及び負極集電板15を経由して負極端子113まで充電電流を流すことができる。また、負極端子113から負極集電板15、複数の負極集電タブ103、積層体101、複数の正極集電タブ102及び正極集電板14を経由して正極端子112まで放電電流を流すことができる。
【0028】
積層体101は、板状の形状を有する。ケース11は、直方体箱状の形状を有する。ケース11は、側壁121、側壁122、側壁123、側壁124及び底壁125を備える。側壁121及び側壁122は、積層体101と平行をなす。側壁123、側壁124及び底壁125は、積層体101と垂直をなす。側壁121及び側壁122は、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに対向する。側壁123及び側壁124は、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに対向する。開口11a及び底壁125は、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに対向する。側壁123、側壁124及び底壁125は、側壁121の端部及び側壁122の端部を結ぶ。開口11aは、側壁121の端部及び側壁122の端部の間に形成される。
【0029】
ケース11及びフタ本体111は、電解液に対する耐性を有する絶縁体からなる。絶縁体は、望ましくは樹脂であり、さらに望ましくはポリオレフィン樹脂、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂又は変性ポリフェニレンエーテル樹脂であり、特に望ましくはABS樹脂又は変性ポリフェニレンエーテル樹脂である。
【0030】
正極端子112及び負極端子113は、導電体からなる。
【0031】
1.2 リブ構造
図4は、第1実施形態の二次電池を模式的に図示する正面図である。
【0032】
ケース11は、
図1、
図3及び
図4に図示されるように、第1の主面11p及び第2の主面11qを有する。第1の主面11p及び第2の主面11qは、それぞれ側壁121及び側壁122の外面である。第1の主面11p及び第2の主面11qは、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに離れている。このため、第1の主面11p及び第2の主面11qは、積層体101を挟んで互いに離れている。
【0033】
第1の主面11pには、
図1及び
図4に図示されるように、リブ構造131が形成される。第1実施形態においては、リブ構造131は、スリットリブ構造である。リブ構造131がスリットリブ構造である場合は、リブ構造131は、複数のスリット状リブ132を備える。複数のスリット状リブ132は、第1の方向DXP及び第2の方向DXNと平行をなす方向DXに配列される。複数のスリット状リブ132の各々は、第1の方向DXP及び第2の方向DXNと垂直をなす方向DYに直線的に延びる。リブ構造131が、スリットリブ構造以外のリブ構造であってもよい。例えば、リブ構造131が、ドットリブ構造であってもよいし、スリットリブ構造及びドットリブ構造が混在するリブ構造であってもよい。ドットリブ構造は、複数のドット状リブを備える。複数のドット状リブは、2次元的に配列される。第2の主面11qにも、リブ構造131と同様のリブ構造が形成される。
【0034】
図5は、第1実施形態の二次電池を模式的に図示する側面図である。
図6は、第1実施形態の第1変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
図7は、第1実施形態の第2変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
図8は、第1実施形態の第3変形例の二次電池を模式的に図示する側面図である。
【0035】
ケース11は、
図1、
図2及び
図5に図示されるように、第1の側面11r及び第2の側面11sを有する。第1の側面11r及び第2の側面11sは、それぞれ側壁123及び側壁124の外面である。第1の側面11r及び第2の側面11sは、第1の主面11pの端部から第2の主面11qの端部に至る。第1の側面11r及び第2の側面11sは、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに離れている。このため、第1の側面11r及び第2の側面11sは、積層体101を挟んで互いに離れている。
【0036】
第1の側面11rには、
図1及び
図5に図示されるように、リブ構造135が形成される。第1実施形態においては、リブ構造135は、方向DX及び方向DYと垂直をなす方向DZに1個又は2個の単位格子が配列される1-2配列のハニカムリブ構造である。リブ構造135が、1-2配列以外の配列のハニカムリブ構造であってもよい。例えば、リブ構造135が、
図6に図示されるように、方向DZに2個又は3個の単位格子が配列される2-3配列のハニカムリブ構造であってもよい。リブ構造135が、ハニカムリブ構造以外のリブ構造であってもよい。例えば、リブ構造135が、
図7に図示されるように、方向DZに1個の単位格子が配列される一列格子の格子リブ構造であってもよい。また、リブ構造135が、
図7に図示されるように、方向DZに2個の単位格子が配列される二列格子の格子リブ構造であってもよい。
【0037】
ケース11は、
図2、
図3及び
図5に図示されるように、底面11tを有する。底面11tは、底壁125の外面である。底面11tは、第1の主面11pの端部から第2の主面11qの端部に至る。底面11t及び開口11aは、積層電池13、正極集電板14及び負極集電板15を挟んで互いに離れている。このため、底面11t及び開口11aは、積層体101を挟んで互いに離れている。
【0038】
底面11tに、リブ構造135と同様のリブ構造が形成されてもよい。
【0039】
1.3 積層電池
図9は、第1実施形態の亜鉛二次電池に備えられる積層電池の主要部を模式的に図示する断面図である。
【0040】
積層電池13は、
図9に図示されるように、複数の被覆付き正極141及び複数の被覆付き負極142を備える。複数の被覆付き正極141の数、及び複数の被覆付き負極142の数は、二次電池1の仕様に応じて増減される。
【0041】
被覆付き正極141は、
図9に図示されるように、正極151及び正極被覆152を備える。正極151は、
図9に図示されるように、正極板161及び正極集電タブ102を備える。また、被覆付き負極142は、
図9に図示されるように、負極153及び負極被覆154を備える。負極153は、
図9に図示されるように、負極板163及び負極集電タブ103を備える。このため、積層体101は、複数の正極板161及び複数の負極板163を備える。複数の正極板161及び複数の負極板163は、第1の主面11p及び第2の主面11qと垂直をなす方向DZに積層される。
【0042】
複数の被覆付き正極141及び複数の被覆付き負極142は、互いに重ねられる。このため、複数の正極板161及び複数の負極板163は、互いに重ねられる。被覆付き正極141及び被覆付き負極142は、交互に配置される。このため、正極板161及び負極板163は、交互に配置される。互いに隣接する被覆付き正極141及び被覆付き負極142は、積層電池13を構成するひとつの電池を構成する。
【0043】
複数の正極集電タブ102は、積層体101から第1の方向DXPに突出する。複数の正極集電タブ102は、積層方向DZから平面視された場合に、積層体101の同じ位置から突出する。このため、複数の正極集電タブ102は、積層方向DZから平面視された場合に、同じ位置に配置される。これにより、複数の正極集電タブ102の先端を集約して複数の正極集電タブ102を互いに電気的に接続することができる。また、複数の負極集電タブ103は、積層体101から第2の方向DXNに突出する。複数の負極集電タブ103は、積層方向DZから平面視された場合に、積層体101の同じ位置から突出する。このため、複数の負極集電タブ103は、積層方向DZから平面視された場合に、同じ位置に配置される。これにより、複数の負極集電タブ103の先端を集約して複数の負極集電タブ103を互いに電気的に接続することができる。
【0044】
正極被覆152は、正極151を被覆する。また、負極被覆154は、負極153を被覆する。
【0045】
正極板161は、
図9に図示されるように、正極集電体171及び正極活物質層172を備える。また、負極板163は、
図9に図示されるように、負極集電体174及び負極活物質層175を備える。このため、複数の正極板161は、複数の正極集電体171をそれぞれ備える。また、複数の正極板161は、複数の正極活物質層172をそれぞれ備える。また、複数の負極板163は、複数の負極集電体174をそれぞれ備える。また、複数の負極板163は、複数の負極活物質層175をそれぞれ備える。
【0046】
正極活物質層172は、正極集電体171の上に配置される。また、負極活物質層175は、負極集電体174の上に配置される。このため、複数の正極活物質層172は、複数の正極集電体171の上にそれぞれ配置される。また、複数の負極活物質層175は、複数の負極集電体174の上にそれぞれ配置される。
【0047】
正極集電タブ102は、正極集電体171に接続される。また、負極集電タブ103は、負極集電体174に接続される。このため、複数の正極集電タブ102は、複数の正極集電体171にそれぞれ接続される。また、複数の負極集電タブ103は、複数の負極集電体174にそれぞれ接続される。これにより、複数の正極集電タブ102は、複数の正極集電体171にそれぞれ電気的に接続される。また、複数の負極集電タブ103は、複数の負極集電体174にそれぞれ電気的に接続される。
【0048】
正極集電タブ102は、正極集電体171に重ねられ正極集電体171に接続される根元部と正極集電体171に重ねられない先端部とを備えるタブリードであってもよいし、正極集電体171を構成する材質と同じ材質により構成され正極集電体171から連続するタブであってもよい。また、負極集電タブ103は、負極集電体174に重ねられ負極集電体174に接続される根元部と負極集電体174に重ねられない先端部とを備えるタブリードであってもよいし、負極集電体174を構成する材質と同じ材質により構成され負極集電体174から連続するタブであってもよい。
【0049】
正極被覆152は、正極側保液部材191を備える。負極被覆154は、負極側保液部材192及びセパレータ193を備える。
【0050】
正極集電体171は、板状又は箔状の形状を有する。正極集電体171は、導電体からなる。導電体は、望ましくはニッケル又はニッケル合金からなる。正極集電体171は、望ましくは多孔質体からなり、さらに望ましくは発泡体からなる。これにより、正極集電体171と正極活物質層172とが互いに接触する界面の面積を広くすることができ、集電の効率を高くすることができる。
【0051】
図9において正極集電体171が破線で描かれているのは、正極集電体171が多孔質体からなる場合は正極集電体171の空孔に正極活物質層172に含まれる正極活物質等が侵入するため、正極集電体171及び正極活物質層172を互いに分離して描くことが困難であるためである。
【0052】
正極活物質層172は、正極活物質を含む。正極活物質は、望ましくは水酸化ニッケル及びオキシ水酸化ニッケルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。正極活物質層172は、例えば、正極活物質及び分散媒を含むペーストを正極集電体171の上に均一に塗布して塗布膜を形成し、形成した塗布膜から分散媒を蒸発させることにより、形成される。正極活物質層172及びペーストがバインダを含んでもよい。正極集電体171及び正極活物質層172を備える複合体に対してプレス処理が行われてもよい。これにより、正極活物質層172が脱落することを抑制することができ、正極151の電極密度を向上することができる。
【0053】
二次電池1は、正極側保液部材191を備える。正極側保液部材191は、シート状の形状を有する。正極側保液部材191は、正極活物質層172の全体を被覆する。正極側保液部材191が、正極活物質層172の全体を包み込んでもよい。正極側保液部材191は、電解液を保持する。これにより、正極活物質層172の全体に電解液を行き渡らせることができる。正極側保液部材191は、望ましくは不織布、吸水性樹脂、保液樹脂、多孔シート又はスペーサからなり、さらに望ましくは不織布からなる。正極側保液部材191が不織布からなることにより、正極151における電極反応を促進することができ、被覆付き正極141を低コストで製造することができる。正極側保液部材191は、望ましくは0.01mm以上0.20mm以下の厚さを有する。これにより、被覆付き正極141のサイズが大きくなることを抑制しながら正極側保液部材191に十分な量を有する電解液を保持させることができる。
【0054】
負極集電体174は、板状、箔状又は網状の形状を有する。負極集電体174は、導電体からなる。導電体は、望ましくは銅からなる。負極集電体174は、望ましくは箔、エキスパンドメタル又はパンチングメタルからなり、さらに望ましくはエキスパンドメタルからなる。負極集電体174がエキスパンドメタルからなることにより、負極集電体174に十分な量を有する負極活物質層175を保持させることができる。
【0055】
負極活物質層175は、負極活物質を含む。負極活物質は、望ましくは亜鉛、酸化亜鉛、亜鉛合金及び亜鉛化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含み、さらに望ましくは亜鉛、酸化亜鉛及び亜鉛酸カルシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含み、特に望ましくは亜鉛及び酸化亜鉛を含む。負極活物質は、望ましくは粉末状の性状を有する。これにより、負極活物質が露出する表面の面積を広くすることができる。これにより、負極153に流すことができる電流を大きくすることができる。負極活物質層175は、例えば、負極活物質の粉末を含む被塗布物を負極集電体174の上に塗布することにより、形成される。負極活物質層175及び被塗布物がバインダを含んでもよい。バインダは、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子を含む。負極集電体174及び負極活物質層175を備える複合体に対してプレス処理が行われてもよい。これにより、負極活物質層175が脱落することを抑制することができ、負極153の電極密度を向上することができる。負極活物質層175がゲル状の性状を有してもよい。負極活物質層175がゲル状の性状を有する場合は、負極活物質層175に、負極活物質に加えて電解液及び増粘剤が含められる。増粘剤は、望ましくはポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はアルギン酸を含み、さらに望ましくはポリアクリル酸塩を含む。増粘剤がポリアクリル酸塩を含む場合は、強アルカリ性を有する電解液に対する増粘剤の耐薬品性を高くすることができる。
【0056】
負極活物質が亜鉛合金を含む場合は、強アルカリ性を有する電解液への亜鉛の自己溶解速度を遅くすることができる。このため、負極153における水素ガスの発生を抑制することができる。これにより、二次電池1の安全性を高くすることができる。亜鉛合金は、望ましくは水銀及び鉛を含まない無汞化亜鉛合金である。亜鉛合金は、望ましくは、0.01質量%以上0.1質量%以下のインジウム、0.005質量%以上0.02質量%以下のビスマス及び0.0035質量%以上0.015質量%以下のアルミニウムを含む。亜鉛合金がインジウム及びビスマスを含む場合は、負極153の放電性能を高くすることができる。
【0057】
負極活物質が亜鉛合金を含み粉末状の性状を有する場合は、負極活物質は、望ましくは短径で3μm以上100μm以下の平均粒径を有する。これにより、負極活物質が露出する表面の面積を広くすることができるとともに、負極活物質、電解液及びゲル化剤を均一に混合することが容易になり、二次電池1を製造する際の負極活物質の取り扱いが容易になる。
【0058】
二次電池1は、負極側保液部材192を備える。負極側保液部材192は、シート状の形状を有する。負極側保液部材192は、負極活物質層175の全体を被覆する。負極側保液部材192が、負極活物質層175の全体を包み込んでもよい。負極側保液部材192は、電解液を保持する。これにより、負極活物質層175の全体に電解液を行き渡らせることができる。負極側保液部材192は、望ましくは不織布、吸水性樹脂、保液樹脂、多孔シート又はスペーサからなり、さらに望ましくは不織布からなる。負極側保液部材192が不織布からなることにより、負極153における電極反応を促進することができ、被覆付き負極142の製造を低コストで行うことができる。負極側保液部材192は、望ましくは0.01mm以上0.20mm以下の厚さを有し、さらに望ましくは0.02mm以上0.20mm以下の厚さを有し、特に望ましくは0.02mm以上0.15mm以下の厚さを有し、より望ましくは0.02mm以上0.10mm以下の厚さを有し、最も望ましくは0.02mm以上0.06mm以下の厚さを有する。負極側保液部材192がこれらの範囲の厚さを有することにより、被覆付き負極142の全体のサイズを無駄なくコンパクトに抑制しながら負極側保液部材192に十分な量の電解液を保持させることができる。
【0059】
セパレータ193は、シート状の形状を有する。セパレータ193は、望ましくは、負極側保液部材192を挟んで負極活物質層175を覆うか、又は包み込む。セパレータ193の外縁の1辺又は2辺は、負極集電タブ103を突出させるために、開放される。セパレータ193は、多孔質基材と、多孔質基材の孔を塞ぐ水酸化物イオン伝導層状化合物とを含む。水酸化物イオン伝導層状化合物は、層状複水酸化物(LDH)及び/又は層状複水酸化物(LDH)様化合物である。本明細書においてセパレータ193は、LDH及び/又はLDH様化合物を含むセパレータであって、専らLDH及び/又はLDH様化合物の水酸化物イオン伝導性を利用して水酸化物イオンを選択的に通すものとして定義される。本明細書において「LDH様化合物」は、LDHとは呼べないかもしれないがLDHに類する層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物であり、LDHの均等物といえるものである。もっとも、広義の定義として、「LDH」はLDHのみならずLDH様化合物を包含するものとして解釈することも可能である。セパレータ193は、水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するセパレータ193として機能するように)LDH及び/又はLDH様化合物が多孔質基材の孔を塞いでいる。
【0060】
上述のセパレータの緻密性は、He透過度により評価することができる。すなわち、セパレータは、単位面積あたりのHe透過度が10cm/min・atm以下であるのが好ましく、より好ましくは5.0cm/min・atm以下、さらに好ましくは1.0cm/min・atm以下である。このような範囲内のHe透過度を有するセパレータは緻密性が極めて高いといえる。したがって、He透過度が10cm/min・atm以下であるセパレータは、水酸化物イオン以外の物質の通過を高いレベルで阻止することができる。例えば、亜鉛二次電池の場合、電解液中においてZnの透過(典型的には亜鉛イオン又は亜鉛酸イオンの透過)を極めて効果的に抑制することができる。He透過度は、セパレータの一方の面にHeガスを供給してセパレータにHeガスを透過させる工程と、He透過度を算出して水酸化物イオン伝導セパレータの緻密性を評価する工程とを経て測定される。He透過度は、単位時間あたりのHeガスの透過量F、Heガス透過時にセパレータに加わる差圧P、及びHeガスが透過する膜面積Sを用いて、F/(P×S)の式により算出する。このようにHeガスを用いてガス透過性の評価を行うことにより、極めて高いレベルでの緻密性の有無を評価することができ、その結果、水酸化物イオン以外の物質(特に亜鉛デンドライト成長を引き起こすZn)を極力透過させない(極微量しか透過させない)といった高度な緻密性を効果的に評価することができる。これは、Heガスが、ガスを構成しうる多種多様な原子ないし分子の中でも最も小さい構成単位を有しており、しかも反応性が極めて低いためである。すなわち、Heは、分子を形成することなく、He原子単体でHeガスを構成する。この点、水素ガスはH2分子により構成されるため、ガス構成単位としてはHe原子単体の方がより小さい。そもそもH2ガスは可燃性ガスのため危険である。そして、上述した式により定義されるHeガス透過度という指標を採用することで、様々な試料サイズや測定条件の相違を問わず、緻密性に関する客観的な評価を簡便に行うことができる。こうして、セパレータが亜鉛二次電池用セパレータに適した十分に高い緻密性を有するのか否かを簡便、安全かつ効果的に評価することができる。
【0061】
前述のとおり、セパレータは、多孔質基材と、LDH及び/又はLDH様化合物(以下、水酸化物イオン伝導層状化合物と総称する)とを含む。セパレータの上面と下面の間で水酸化物イオン伝導層状化合物が繋がっており、それによりセパレータの水酸化物イオン伝導性が確保されている。セパレータにおいて、多孔質基材の孔を水酸化物イオン伝導層状化合物が塞いでいるが、多孔質基材の孔は完全に塞がれている必要はなく、残留気孔が僅かに存在していてもよい。
【0062】
LDHは、複数の水酸化物基本層と、これら複数の水酸化物基本層間に介在する中間層とから構成される。水酸化物基本層は主として金属元素(典型的には金属イオン)とOH基で構成される。LDHの中間層は、陰イオン及びH2Oで構成される。陰イオンは1価以上の陰イオン、好ましくは1価又は2価のイオンである。好ましくは、LDH中の陰イオンはOH-及び/又はCO3
2-を含む。また、LDHはその固有の性質に起因して優れたイオン伝導性を有する。一般的に、LDHは、M2+
1-xM3+
x(OH)2An-
x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオンであり、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオンであり、nは1以上の整数であり、xは0.1~0.4であり、mは0以上である)の基本組成式で代表されるものとして知られている。上記基本組成式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An-は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH-及びCO3
2-が挙げられる。したがって、上記基本組成式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An-がOH-及び/又はCO3
2-を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1~0.4であるが、好ましくは0.2~0.35である。mは水のモル数を意味する任意の数であり、0以上、典型的には0を超える又は1以上の実数である。もっとも、上記基本組成式は、一般にLDHに関して代表的に例示される「基本組成」の式にすぎず、構成イオンを適宜置き換え可能なものである。例えば、上記基本組成式においてM3+の一部または全部を4価またはそれ以上の価数の陽イオン(例えばTi4+)で置き換えてもよく、その場合は、上記一般式における陰イオンAn-の係数x/nは適宜変更されてよい。
【0063】
例えば、LDHの水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti及びOH基を含むのが優れた耐アルカリ性を呈する点で特に好ましい。この場合、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。例えば、LDHないし水酸化物基本層には、Y及び/又はZnが含まれていてもよい。また、LDHないし水酸化物基本層にY及び/又はZnが含まれている場合、LDHないし水酸化物基本層にはAl又はTiが含まれていなくてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてMg、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Mg、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/Alの原子比が0.5~12であるのが好ましく、より好ましくは1.0~12である。上記範囲内であると、イオン伝導性を損なうことなく、亜鉛デンドライトに起因する短絡の抑制効果(すなわちデンドライト耐性)をより効果的に実現することができる。同様の理由から、エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/(Mg+Ti+Al)の原子比は0.1~0.7であるのが好ましく、より好ましくは0.2~0.7である。また、LDHにおけるAl/(Mg+Ti+Al)の原子比は0.05~0.4であるのが好ましく、より好ましくは0.05~0.25である。さらに、LDHにおけるMg/(Mg+Ti+Al)の原子比は0.2~0.7であるのが好ましく、より好ましくは0.2~0.6である。なお、EDS分析は、EDS分析装置(例えばX-act、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いて、1)加速電圧20kV、倍率5,000倍で像を取り込み、2)点分析モードで5μm程度間隔を空け、3点分析を行い、3)上記1)及び2)をさらに1回繰り返し行い、4)合計6点の平均値を算出することにより行うのが好ましい。
【0064】
あるいは、LDHの水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含むものであってもよい。この場合、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を含んでいさえすれば、他の元素ないしイオンを含んでいてもよい。もっとも、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti及びOH基を主要構成要素として含むのが好ましい。すなわち、水酸化物基本層は、主としてNi、Al、Ti及びOH基からなるのが好ましい。したがって、水酸化物基本層は、Ni、Al、Ti、OH基及び場合により不可避不純物で構成されるのが典型的である。エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDHにおけるTi/(Ni+Ti+Al)の原子比が、0.10~0.90であるのが好ましく、より好ましくは0.20~0.80、さらに好ましくは0.25~0.70、特に好ましくは0.30~0.61である。上記範囲内であると、耐アルカリ性とイオン伝導性の両方を向上することができる。したがって、水酸化物イオン伝導層状化合物は、LDHのみならずチタニアを副生させるほど多くのTiを含んでいてもよい。すなわち、水酸化物イオン伝導層状化合物はチタニアをさらに含むものであってもよい。チタニアの含有により、親水性が上がり、電解液との濡れ性が向上する(すなわち伝導度が向上する)ことが期待できる。
【0065】
LDH様化合物は、LDHとは呼べないかもしれないがそれに類する層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物であり、好ましくは、Mgと、Ti、Y及びAlからなる群から選択される少なくともTiを含む1以上の元素とを含む。このように、従来のLDHの代わりに、水酸化物イオン伝導物質として、少なくともMg及びTiを含む層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物であるLDH様化合物を用いることにより、耐アルカリ性に優れ、かつ、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制可能な水酸化物イオン伝導セパレータを提供することができる。したがって、好ましいLDH様化合物は、Mgと、Ti、Y及びAlからなる群から選択される少なくともTiを含む1以上の元素とを含む層状結晶構造の水酸化物及び/又は酸化物である。したがって、典型的なLDH様化合物は、Mg、Ti、所望によりY及び所望によりAlの複合水酸化物及び/又は複合酸化物であり、特に好ましくはMg、Ti、Y及びAlの複合水酸化物及び/又は複合酸化物である。LDH様化合物の基本的特性を損なわない程度に上記元素は他の元素又はイオンで置き換えられてもよいが、LDH様化合物はNiを含まないのが好ましい。
【0066】
LDH様化合物はX線回折により同定することができる。具体的には、セパレータは、その表面に対してX線回折を行った場合、典型的には5°≦2θ≦10°の範囲に、より典型的には7°≦2θ≦10°の範囲にLDH様化合物に由来するピークが検出される。前述のとおり、LDHは積み重なった水酸化物基本層の間に、中間層として交換可能な陰イオン及びH2Oが存在する交互積層構造を有する物質である。この点、LDHをX線回折法により測定した場合、本来的には2θ=11~12°の位置にLDHの結晶構造に起因したピーク(すなわちLDHの(003)ピーク)が検出される。これに対して、LDH様化合物をX線回折法により測定した場合、典型的にはLDHの上記ピーク位置よりも低角側にシフトした上述の範囲でピークが検出される。また、X線回折におけるLDH様化合物に由来するピークに対応する2θを用いてBraggの式により、層状結晶構造の層間距離を決定することができる。こうして決定されるLDH様化合物を構成する層状結晶構造の層間距離は0.883~1.8nmであるのが典型的であり、より典型的には0.883~1.3nmである。
【0067】
エネルギー分散型X線分析(EDS)により決定される、LDH様化合物におけるMg/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比が0.03~0.25であるのが好ましく、より好ましくは0.05~0.2である。また、LDH様化合物におけるTi/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0.40~0.97であるのが好ましく、より好ましくは0.47~0.94である。さらに、LDH様化合物におけるY/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0~0.45であるのが好ましく、より好ましくは0~0.37である。そして、LDH様化合物におけるAl/(Mg+Ti+Y+Al)の原子比は0~0.05であるのが好ましく、より好ましくは0~0.03である。上記範囲内であると、耐アルカリ性により一層優れ、かつ、亜鉛デンドライトに起因する短絡の抑制効果(すなわちデンドライト耐性)をより効果的に実現することができる。ところで、LDHセパレータに関して従来から知られるLDHは一般式:M2+
1-xM3+
x(OH)2An-
x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An-はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1~0.4であり、mは0以上である)なる基本組成で表しうる。これに対して、LDH様化合物における上記原子比は、LDHの上記一般式から概して逸脱している。このため、LDH様化合物は、概して、従来のLDHとは異なる組成比(原子比)を有するといえる。なお、EDS分析は、EDS分析装置(例えばX-act、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いて、1)加速電圧20kV、倍率5,000倍で像を取り込み、2)点分析モードで5μm程度間隔を空け、3点分析を行い、3)上記1)及び2)をさらに1回繰り返し行い、4)合計6点の平均値を算出することにより行うのが好ましい。
【0068】
セパレータは、亜鉛二次電池に組み込まれた場合に、正極板と負極板とを水酸化物イオン伝導可能に隔離するものである。好ましいセパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有する。換言すれば、セパレータはガス不透過性及び/又は水不透過性を有するほどに緻密化されているのが好ましい。なお、本明細書において「ガス不透過性を有する」とは、国際公開第2016/076047号及び国際公開第2016/067884号に記載されるように、水中で測定対象物の一面側にヘリウムガスを0.5atmの差圧で接触させても他面側からヘリウムガスに起因する泡の発生がみられないことを意味する。また、本明細書において「水不透過性を有する」とは、国際公開第2016/076047号及び国際公開第2016/067884号に記載されるように、測定対象物の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。すなわち、セパレータがガス不透過性及び/又は水不透過性を有するということは、セパレータが気体又は水を通さない程の高度な緻密性を有することを意味し、透水性又はガス透過性を有する多孔性フィルムやその他の多孔質材料ではないことを意味する。こうすることで、セパレータは、その水酸化物イオン伝導性に起因して水酸化物イオンのみを選択的に通すものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。このため、充電時に生成する亜鉛デンドライトによるセパレータの貫通を物理的に阻止して正負極間の短絡を防止するのに極めて効果的な構成となっている。セパレータは水酸化物イオン伝導性を有するため、正極板と負極板との間で必要な水酸化物イオンの効率的な移動を可能として正極板及び負極板における充放電反応を実現することができる。
【0069】
前述したとおり、セパレータは水酸化物イオン伝導層状化合物と多孔質基材とを含み(典型的には多孔質基材及び水酸化物イオン伝導層状化合物からなり)、セパレータは水酸化物イオン伝導性及びガス不透過性を呈するように(それ故水酸化物イオン伝導性を呈するセパレータとして機能するように)水酸化物イオン伝導層状化合物が多孔質基材の孔を塞いでいる。水酸化物イオン伝導層状化合物は多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているのが特に好ましい。セパレータの厚さは、好ましくは3~80μmであり、より好ましくは3~60μm、さらに好ましくは3~40μmである。
【0070】
多孔質基材は高分子材料で構成されるのが好ましい。高分子多孔質基材には、1)可撓性を有する(それ故薄くしても割れにくい)、2)気孔率を高くしやすい、3)伝導率を高くしやすい(気孔率を高めながら厚さを薄くできるため)、4)製造及びハンドリングしやすいといった利点がある。また、上記1)の可撓性に由来する利点を活かして、5)高分子材料製の多孔質基材を含む水酸化物イオン伝導セパレータを簡単に折り曲げる又は封止接合することができるとの利点もある。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、セルロース、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せが挙げられる。より好ましくは、加熱プレスに適した熱可塑性樹脂という観点から、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂(四フッ素化樹脂:PTFE等)、ナイロン、ポリエチレン及びそれらの任意の組合せ等が挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。特に好ましい高分子材料は、耐熱水性、耐酸性及び耐アルカリ性に優れ、しかも低コストである点から、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンであり、最も好ましくはポリプロピレン又はポリエチレンである。水酸化物イオン伝導層状化合物は高分子多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれている(例えば高分子多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔が水酸化物イオン伝導層状化合物で埋まっている)のが特に好ましい。このような高分子多孔質基材として、市販の高分子微多孔膜を好ましく用いることができる。
【0071】
LDHセパレータの製造方法は特に限定されず、既に知られるLDHセパレータ(あるいはLDH含有機能層及び複合材料)の製造方法(例えば国際公開第2013/118561号、国際公開第2016/076047号、国際公開第2016/067884号、国際公開第2019/124270号及び国際公開第2019/124212号を参照)の諸条件(特にLDH原料組成)をそのまま又は適宜変更することにより作製することができる。例えば、(1)多孔質基材を用意し、(2)多孔質基材に、i)アルミナ及びチタニアの混合ゾル(LDHを形成する場合)、又はii)チタニアゾル(あるいはさらにイットリウムゾル及び/又はアルミナゾル)を含む溶液(LDH様化合物を形成する場合)を塗布して乾燥することでチタニア含有層を形成させ、(3)マグネシウムイオン(Mg2+)及び尿素(あるいはさらにイットリウムイオン(Y3+))を含む原料水溶液に多孔質基材を浸漬させ、(4)原料水溶液中で多孔質基材を水熱処理して、水酸化物イオン伝導層状化合物を多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成させることにより、LDHセパレータを製造することができる。また、上記工程(3)において尿素が存在することで、尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物及び/又は酸化物を形成することにより水酸化物イオン伝導層状化合物(すなわちLDH及び/又はLDH様化合物)を得ることができるものと考えられる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、LDHを形成する場合には、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。
【0072】
特に、水酸化物イオン伝導層状化合物が高分子多孔質基材の厚さ方向の全域にわたって組み込まれているセパレータを作製する場合、上記(2)における混合ゾル溶液の基材への塗布を、混合ゾル溶液を基材内部の全体又は大部分に浸透させるような手法で行うのが好ましい。こうすることで最終的に多孔質基材内部の大半又はほぼ全部の孔を水酸化物イオン伝導層状化合物で埋めることができる。好ましい塗布手法の例としては、ディップコート、ろ過コート等が挙げられ、特に好ましくはディップコートである。ディップコート等の塗布回数を調整することで、混合ゾル溶液の付着量を調整することができる。ディップコート等により混合ゾル溶液が塗布された基材は、乾燥させた後、上記(3)及び(4)の工程を実施すればよい。
【0073】
上記方法等によって得られたセパレータに対してプレス処理を施すのが好ましい。こうすることで、緻密性により一層優れたセパレータを得ることができる。プレス手法は、例えばロールプレス、一軸加圧プレス、CIP(冷間等方圧加圧)等であってよく、特に限定されないが、好ましくはロールプレスである。このプレスは加熱しながら行うのが高分子多孔質基材を軟化させることで、高分子多孔質基材の孔を水酸化物イオン伝導層状化合物で十分に塞ぐことができる点で好ましい。十分に軟化する温度として、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンの場合は60~200℃で加熱するのが好ましい。このような温度域でロールプレス等のプレスを行うことで、セパレータの残留気孔を大幅に低減することができる。その結果、セパレータを極めて高度に緻密化することができ、それ故、亜鉛デンドライトに起因する短絡をより一層効果的に抑制することができる。ロールプレスを行う際、ロールギャップ及びロール温度を適宜調整することで残留気孔の形態を制御することができ、それにより所望の緻密性のセパレータを得ることができる。
【0074】
二次電池1は、電解液を備える。電解液は、望ましくは水酸化物の水溶液からなる。水酸化物は、望ましくはアルカリ金属の水酸化物又は水酸化アンモニウムであり、さらに望ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、特に望ましくは水酸化カリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化リチウムであり、最も望ましくは水酸化カリウムである。電解液に亜鉛化合物が溶解させられてもよい。亜鉛化合物は、望ましくは酸化亜鉛又は水酸化亜鉛である。電解液に亜鉛化合物が溶解させられた場合は、負極活物質層175を構成する亜鉛及び/又は酸化亜鉛が電解液に自己溶解することを抑制することができる。電解液にゲル化剤が添加されてもよい。ゲル化剤は、望ましくは電解液に含まれる溶媒を吸収して膨潤するポリマーからなり、さらに望ましくはポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド又はでんぷんからなる。電解液にゲル化剤が添加された場合は、電解液がゲル化して電解液がケース11から漏洩することを抑制することができる。電解液及び正極活物質が混合されて正極合材が形成されていてもよい。電解液及び負極活物質が混合されて負極合材が形成されていてもよい。
【0075】
1.4 リブ構造の効果
第1の側面11r及び第2の側面11sにリブ構造135が形成されない場合、第1の側面11r及び第2の側面11sに一列格子の格子リブ構造が形成された場合、第1の側面11r及び第2の側面11sに二列格子の格子リブ構造が形成された場合、第1の側面11r及び第2の側面11sに1-2配列のハニカムリブ構造が形成された場合、及び第1の側面11r及び第2の側面11sに2-3配列のハニカムリブ構造が形成された場合、の各々について、ケース11の内部の内圧が特定の内圧まで上昇した際の第1の側面11r及び第2の側面11sの方向DXの変位の分布をシミュレーションにより調べた。最大変位箇所Pにおける変位量の相対値を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に示されるように、最大変位箇所Pにおける変位量は、リブ構造135が形成される場合に小さくなり、リブ構造135がハニカムリブ構造である場合に著しく小さくなる。したがって、リブ構造135によれば、二次電池1の重量及び体積を著しく増加させることなく二次電池1に備えられるケース11の強度を高くすることができ、リブ構造135がハニカムリブ構造であることにより、二次電池1の重量及び体積を著しく増加させることなく二次電池1に備えられるケース11の強度を高くすることができる。
【0078】
1.5 モジュール電池
図10は、第1実施形態のモジュール電池を模式的に図示する側面図である。
【0079】
図10に図示されるモジュール電池2は、複数の単電池21、加圧部材22及び底部材23を備える。
【0080】
複数の単電池21の各々は、上述した二次電池1である。
【0081】
複数の単電池21は、第1の主面11p及び第2の主面11qと垂直をなす配列方向DZに配列される。
【0082】
加圧部材22は、複数の単電池21を配列方向DZに加圧する。
【0083】
これにより、第1の主面11p及び第2の主面11qの変位が規制され、第1の主面11p及び第2の主面11qの変位によるケース11の破損を抑制することができる。
【0084】
底部材23は、複数の単電池21を載せる。底部材23は、複数の単電池21の底面11tを支持する。
【0085】
これにより、底面11tの変位が規制され、底面11tの変位によるケース11の破損を抑制することができる。
【0086】
開放されている第1の側面11r及び第2の側面11sの変位は、リブ構造135により抑制される。これにより、第1の側面11r及び第2の側面11sの変位によるケース11の破損を抑制することができる。
【0087】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0088】
1 二次電池
11 ケース
12 フタ
13 積層電池
14 正極集電板
15 負極集電板
101 積層体
102 正極集電タブ
103 負極集電タブ
131 リブ構造
135 リブ構造
161 正極板
163 負極板
171 正極集電体
2 モジュール電池
21 単電池
22 加圧部材
23 底部材