(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】車両用フード
(51)【国際特許分類】
B62D 25/10 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B62D25/10 D
(21)【出願番号】P 2020075322
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-163259(JP,A)
【文献】特開2017-105427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジを介して車両本体に取り付けられる車両用フードであって、
アウタパネルと、
前記車両用フードの厚み方向であるフード厚み方向において前記アウタパネルと対向して前記アウタパネルに接合されるとともに前記ヒンジに固定されるヒンジ固定部を有するインナパネルと、
前記フード厚み方向において、前記ヒンジ固定部に対して前記ヒンジと反対側に配置されて前記ヒンジ固定部と重なり、前記ヒンジ固定部を補強する補強部材と、を備え、
前記インナパネルは、当該インナパネルの外周を構成し、前記アウタパネルに接合された環状の外周接合部と、前記外周接合部の内側に配置されて前記アウタパネルに接合された内側接合部と、前記外周接合部と前記内側接合部との間に介在して前記内側接合部を囲むとともに前記フード厚み方向において前記アウタパネルから離れる方向に窪む中間環状部と、を有し、
前記中間環状部は、前記フード厚み方向において前記外周接合部及び前記内側接合部よりも前記アウタパネルから離間する底部を有し、
前記底部は、前記ヒンジ固定部を含む凹凸部を含み、前記凹凸部は、前記フード厚み方向において前記アウタパネルへ向かって突出する凸部と前記車両用フードの前後方向に直交する幅方向において前記凸部と連続する凹部とを有し、
前記凹凸部は、
前記ヒンジ固定部を含みかつ前記フード厚み方向において前記補強部材と重なる重複部と、前記前後方向において前記重複部の前端から前記補強部材の前方へ延出する延出部と、を有
し、前記凹部及び前記凸部が前記幅方向に互いに連続しながら前記凹部及び前記凸部のそれぞれが前記重複部から前記延出部に至るまで前記前後方向に延びることで、前記インナパネルのうち前記ヒンジ固定部から前側の撓みに対する剛性を高める、車両用フード。
【請求項2】
前記底部は、前記補強部材が接合される少なくとも1つの補強部材接合点を有し、
前記重複部は、前記少なくとも1つの補強部材接合点のうち最も前寄りに位置するものである補強部材前側接合点よりも後側に位置する後端を有する、請求項1に記載の車両用フード。
【請求項3】
前記補強部材前側接合点は、前記重複部に含まれている、請求項2に記載の車両用フード。
【請求項4】
前記重複部は、前記ヒンジ固定部の前端の少なくとも一部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の車両用フード。
【請求項5】
前記ヒンジ固定部は、前記ヒンジに対して接合される少なくとも1つのヒンジ接合点を有し、
前記重複部は、前記少なくとも1つのヒンジ接合点のうち最も前寄りに位置するものであるヒンジ前側接合点よりも後側に位置する後端を有する、請求項4に記載の車両用フード。
【請求項6】
前記ヒンジ前側接合点は、前記重複部に含まれている、請求項5に記載の車両用フード。
【請求項7】
前記凸部のうち前記重複部に含まれる部分である凸部重複部は、当該凸部重複部のうちで最も前記アウタパネルの近くに位置する部分である重複部天壁部と、前記幅方向における前記重複部天壁部の端部から前記アウタパネルと反対側へ延びて前記凹部に繋がる重複部側壁部と、を有し、
前記補強部材は、前記重複部天壁部と前記重複部側壁部とに跨ってそれらの重複部天壁部及び重複部側壁部と重なっている、請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用フード。
【請求項8】
前記底部は、前記内側接合部の後方に位置する後側底部を有し、
前記中間環状部は、前記後側底部の前端から前記アウタパネルへ向かって立ち上がって前記内側接合部の後端に繋がる後側起立壁部を有し、
前記凹凸部の後端は、前記後側底部の前端と前記後側起立壁部との間の境界よりも後側に位置し、
前記凹凸部の前端は、前記境界よりも前側に位置する、請求項1~7のいずれか1項に記載の車両用フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両を構成するとともに当該車両の前部に配置される車両用フードが知られている。車両本体の前部にはエンジン等の内蔵物が収められたエンジンルームが設けられ、車両用フードは、このエンジンルームを開閉するように車両本体に取り付けられ、エンジンルームを閉じた状態で車両の前部の上面を構成し且つエンジンルーム内の内蔵物の上方を覆う。車両用フードは、エンジンルームを閉じた状態で車両の前部の上面を構成するアウタパネルと、車両上下方向においてアウタパネルの下方に配置されて当該アウタパネルに接合されたインナパネルと、を有する。インナパネルは、その後端部において左右に分かれて設けられた一対のヒンジ固定部を有する。車両用フードは、前記一対のヒンジ固定部にそれぞれ固定された左右一対のヒンジを介して車両本体に取り付けられる。これにより、車両用フードは、エンジンルームを閉じる略水平な姿勢とエンジンルームを開放する前上がりの姿勢との間で回動可能となっている。
【0003】
従来から、車両用フードには、いわゆるねじり剛性を高めることが求められている。このねじり剛性は、車両用フードの前端部の左右両端の一方が当該車両用フードの厚み方向に沿う方向に変位するような当該車両用フードの撓みに対する剛性である。このねじり剛性の向上が求められるのは、例えば、車両走行時の車両用フードの振動の抑制や、車両用フードが前記前上がりの姿勢で保持されたときの当該車両用フードの前端部の左右方向の端部の垂れ下がりの抑制のためである。
【0004】
具体的には、車両の走行時には、車両用フードにかかる風圧等の要因により当該車両用フードの厚み方向に沿う方向に前端部の左右両端が振れる振動が生じやすいため、このような振動を抑制するために前記ねじり剛性を高めることが求められる。また、車両用フードが前記前上がりの姿勢で保持されるときには、その車両用フードの左右両側部のいずれか一方が車両本体に対してステーによって支えられるのが一般的であり、この場合、車両用フードの左右両側部のうちステーによって支えられていない方の側部の前端部が自重により垂れ下がる虞があるが、このような垂れ下がりを抑制するために前記ねじり剛性を高めることが求められる。
【0005】
車両用フードのねじり剛性を高めるための手法として、アウタパネルとインナパネルとの間に補強材を介装する手法が知られているが、この場合には、車両用フードの製造コスト及び重量が増大する。一方、補強材によらずに例えばインナパネルの剛性を高めれば、車両用フードの製造コスト及び重量の増大を避けつつ、車両用フードのねじり剛性を高めることができる。下記特許文献1には、そのようなインナパネルの剛性を高めるための構造の一例が開示されている。
【0006】
下記特許文献1に開示されている車両用フードでは、インナパネルの内側接合部と外側接合部との間の底部に前後方向に延びる外側ビード部が設けられている。この外側ビード部が設けられた範囲では、車両用フードの厚み方向への撓みに対するインナパネルの剛性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示された車両用フードでは、外側ビード部の後方に設けられたヒンジ固定部と外側ビード部との間にインナパネルが補強されない領域が存在する。このため、車両用フードのねじり剛性を高める効果が低くなる。
【0009】
本発明の目的は、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、車両用フードのねじり剛性をより高めることが可能な車両用フードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により提供されるのは、ヒンジを介して車両本体に取り付けられる車両用フードである。この車両用フードは、アウタパネルと、前記車両用フードの厚み方向であるフード厚み方向において前記アウタパネルと対向して前記アウタパネルに接合されるとともに前記ヒンジに固定されるヒンジ固定部を有するインナパネルと、前記フード厚み方向において、前記ヒンジ固定部に対して前記ヒンジと反対側に配置されて前記ヒンジ固定部と重なり、前記ヒンジ固定部を補強する補強部材と、を備える。前記インナパネルは、当該インナパネルの外周を構成し、前記アウタパネルに接合された環状の外周接合部と、前記外周接合部の内側に配置されて前記アウタパネルに接合された内側接合部と、前記外周接合部と前記内側接合部との間に介在して前記内側接合部を囲むとともに前記フード厚み方向において前記アウタパネルから離れる方向に窪む中間環状部と、を有する。前記中間環状部は、前記フード厚み方向において前記外周接合部及び前記内側接合部よりも前記アウタパネルから離間する底部を有する。前記底部は、前記ヒンジ固定部を含むとともに、前記フード厚み方向において前記アウタパネルへ向かって突出する凸部と前記車両用フードの前後方向に直交する幅方向において前記凸部と連続する凹部とを有する凹凸部を含む。前記凹凸部は、前記フード厚み方向において前記補強部材と重なる重複部と、前記前後方向において前記重複部の前端から前記補強部材の前方へ延出する延出部と、を有する。
【0011】
この車両用フードでは、インナパネルの底部の前後方向に延びる凹凸部がインナパネルのヒンジ固定部を補強する補強部材と一体となってインナパネルのうちヒンジ固定部から前側の領域の撓みに対する剛性を高めるため、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、車両用フードのねじり剛性を従来の車両用フードに比べてより高めることができる。
【0012】
具体的に、この車両用フードでは、インナパネルの中間環状部の底部の凹凸部がヒンジ固定部を含んでいるとともに前後方向に延び、この凹凸部が補強部材とフード厚み方向において重なる重複部と、その重複部の前端から補強部材の前方へ延出する延出部とを有するため、補強部材とインナパネルの凹凸部とが一体となってインナパネルのうちヒンジ固定部から前側の領域のフード厚み方向に沿う方向における撓みに対する剛性を高める。このため、車両用フードのねじり剛性を従来の車両用フードに比べてより高めることができる。また、本発明による車両用フードでは、ヒンジ固定部を補強する補強部材とは別に前記撓みに対する剛性を高めるための補強部材を設けることなく、前記のようにねじり剛性を高めることができる。従って、本発明による車両用フードでは、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、当該車両用フードのねじり剛性をより高めることができる。
【0013】
前記底部は、前記補強部材が接合される少なくとも1つの補強部材接合点を有し、前記重複部は、前記少なくとも1つの補強部材接合点のうち最も前寄りに位置するものである補強部材前側接合点よりも後側に位置する後端を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、底部のうち凹凸部により剛性が高められる前後方向の範囲内に底部の補強部材前側接合点が含まれることになるため、インナパネルのうち補強部材前側接合点よりも前側の領域がアウタパネルから離れるようにインナパネルが補強部材前側接合点を支点として撓むのを抑制できる。
【0015】
前記補強部材前側接合点は、前記重複部に含まれていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、補強部材と重なる重複部内に補強部材前側接合点が設けられることになるため、底部の補強部材前側接合点付近の剛性をより高めることができる。このため、インナパネルのうち補強部材前側接合点よりも前側の領域がアウタパネルから離れるようにインナパネルが撓むのをより抑制できる。
【0017】
前記重複部は、前記ヒンジ固定部の前端の少なくとも一部を含むことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、ヒンジ固定部の前端付近がアウタパネルへ接近するように変位するのを補強部材によりアウタパネル側から抑えることができる。このため、インナパネルのうちヒンジ固定部から前側の領域がアウタパネルへ接近するようにインナパネルが撓むのを抑制できる。
【0019】
前記ヒンジ固定部は、前記ヒンジに対して接合される少なくとも1つのヒンジ接合点を有し、前記重複部は、前記少なくとも1つのヒンジ接合点のうち最も前寄りに位置するものであるヒンジ前側接合点よりも後側に位置する後端を有することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、補強部材によりアウタパネルへ接近する方向への変位が抑えられる重複部内にヒンジ前側接合点が含まれることになるため、インナパネルのうちヒンジ前側接合点よりも前側の領域がアウタパネルへ接近するようにインナパネルがヒンジ前側接合点を支点として撓むのを抑制できる。
【0021】
前記ヒンジ前側接合点は、前記重複部に含まれていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、補強部材と重なる重複部内にヒンジ前側接合点が設けられることになるため、底部のヒンジ前側接合点付近の剛性をより高めることができる。このため、インナパネルのうちヒンジ前側接合点よりも前側の領域がアウタパネルへ接近するようにインナパネルが撓むのをより抑制できる。
【0023】
前記凸部のうち前記重複部に含まれる部分である凸部重複部は、当該凸部重複部のうちで最も前記アウタパネルの近くに位置する部分である重複部天壁部と、前記幅方向における前記重複部天壁部の端部から前記アウタパネルと反対側へ延びて前記凹部に繋がる重複部側壁部と、を有し、前記補強部材は、前記重複部天壁部と前記重複部側壁部とに跨ってそれらの重複部天壁部及び重複部側壁部と重なっていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、補強部材によりインナパネルの凸部重複部をより補強できる。このため、インナパネルの撓みをより抑制できる。
【0025】
前記底部は、前記内側接合部の後方に位置する後側底部を有し、前記中間環状部は、前記後側底部の前端から前記アウタパネルへ向かって立ち上がって前記内側接合部の後端に繋がる後側起立壁を有し、前記凹凸部の後端は、前記後側底部の前端と前記後側起立壁との間の境界よりも後側に位置し、前記凹凸部の前端は、前記境界よりも前側に位置することが好ましい。
【0026】
この構成によれば、凹凸部が後側底部の前端と後側起立壁との間の境界の位置の前後に亘る範囲に設けられることになり、その範囲の剛性を凹凸部によって高めることができる。その結果、前記境界が折れ線となるようにインナパネルが変形するのを防止できる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明によれば、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、ねじり剛性をより高めることが可能な車両用フードが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による車両用フードの分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による車両用フードのインナパネルの概略的な平面図である。
【
図3】
図1中のIII-III位置における車両用フードの断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による車両用フードのインナパネルの左後端部付近を拡大して部分的に示す平面図である。
【
図5】
図4中のV-V位置における車両用フードの断面図である。
【
図6】
図4中のVI-VI位置における車両用フード、ヒンジ及び車両本体の被取付部の断面図である。
【
図7】インナパネルのねじり剛性試験の際の負荷の掛け方を説明するための図である。
【
図8】インナパネルの曲げ剛性試験の際の負荷の掛け方を説明するための図である。
【
図9】左側凸部の設定方法を説明するための図である。
【
図10】本発明の第1変形例による車両用フードの
図3相当図である。
【
図11】本発明の第2変形例による車両用フードの
図3相当図である。
【
図12】本発明の第3変形例による車両用フードの
図3相当図である。
【
図13】本発明の第4変形例による車両用フードの
図3相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、
図1~
図9を参照して、本発明の一実施形態による車両用フード1について説明する。
【0030】
本実施形態による車両用フード1は、自動車等の車両を構成する部材であり、車両の前部に設けられたエンジンルームを開閉可能に左右一対のヒンジ80(
図6参照)を介して車両本体100に連結される。当該車両用フード1は、エンジンルームを閉じた状態でエンジンルーム上を覆う。以下の車両用フード1の構成の説明において、前後左右は、車両用フード1が設置された車両において当該車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態での車両の前後左右を意味する。左右方向は、車両の幅方向(車幅方向)に相当する。また、車両用フード1についての上下は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態での上下を言うものとする。各図面には、前後、左右及び上下の各方向が示されている。
【0031】
車両用フード1は、
図1に示すように、アウタパネル2と、インナパネル4と、左右一対の補強部材6と、を有する。
【0032】
アウタパネル2は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の上面(外面)を構成するものである。アウタパネル2は、例えばアルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。アウタパネル2は、
図3に示すように、ヘム加工(折り返し加工)されることによってインナパネル4の後述の外周接合部12に強固に固着される外周部2aを有する。また、アウタパネル2は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の上面(外面)を構成する表面2bと、その表面2bと反対の裏面2cと、を有する。なお、アウタパネル2の表側は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態でのアウタパネル2の上側に相当する。また、アウタパネル2の裏側は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態でのアウタパネル2の下側に相当する。
【0033】
インナパネル4は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の下面を構成するものである。車両用フード1のうち当該インナパネル4が前記左右一対のヒンジ80を介して車両本体100に連結される。インナパネル4は、例えばアルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。インナパネル4は、車両用フード1の厚み方向であるフード厚み方向T(
図3参照)においてアウタパネル2と対向するように配置されてアウタパネル2に接合されている。換言すれば、インナパネル4は、アウタパネル2の裏側に配置されてアウタパネル2の裏面2cに接合されている。
【0034】
インナパネル4は、
図2に示すように、外周接合部12と、内側接合部16と、中間環状部18と、を有する。
【0035】
外周接合部12は、平面視で環状をなしてインナパネル4の外周(外縁)を構成する部分であり、前記のようにアウタパネル2の外周部2aに接合されている。外周接合部12は、前側外周接合部12aと、後側外周接合部12bと、左側外周接合部12cと、右側外周接合部12dと、を有する。
【0036】
前側外周接合部12aは、インナパネル4の前端縁を構成しており、概ね左右方向に延びている。後側外周接合部12bは、インナパネル4の後端縁を構成しており、概ね左右方向に延びている。左側外周接合部12cは、インナパネル4の左端縁を構成しており、前後方向に延びている。右側外周接合部12dは、インナパネル4の右端縁を構成しており、前後方向に延びている。
【0037】
内側接合部16は、環状の外周接合部12の内側に配置されてアウタパネル2の裏面2cに対して接続されている。この内側接合部16は、平面視で略矩形状をなしている。内側接合部16は、複数の窪み部16aを有する。この複数の窪み部16aは、それぞれ左右方向に延びるとともに、前後方向に間隔をあけて並んでいる。内側接合部16のうちアウタパネル2の裏面2cに対向する面に複数のマスチック接着剤16b(
図1参照)が点在するように付され、それらのマスチック接着剤16bを介して内側接合部16がアウタパネル2の裏面2cに対して接合されている。
【0038】
中間環状部18は、外周接合部12と内側接合部16との間に介在し、平面視で内側接合部16を囲む環状をなしている。この中間環状部18は、フード厚み方向Tにおいてアウタパネル2から離れる方向に窪んでいる。中間環状部18は、底部20と、外側起立壁22と、内側起立壁24と、を有する。
【0039】
底部20は、インナパネル4の底面を構成する部分である。底部20は、フード厚み方向Tにおいて外周接合部12及び内側接合部16よりもアウタパネル2から離間している。底部20は、平面視で内側接合部16を囲む環状をなしている。底部20は、
図2に示すように、前側底部26と、後側底部28と、左側底部30と、右側底部32と、を有する。
【0040】
前側底部26は、平面視で内側接合部16の前方に配置されるとともに前側外周接合部12aの後方に配置された部分である。
【0041】
後側底部28は、平面視で内側接合部16の後方に配置されるとともに後側外周接合部12bの前方に配置された部分である。
【0042】
左側底部30は、平面視で内側接合部16の左方に配置されるとともに左側外周接合部12cの右方に配置された部分である。左側底部30は、左側ヒンジ固定部33(
図5及び
図6参照)を有する。左側ヒンジ固定部33は、本発明におけるヒンジ固定部の一例である。
【0043】
左側ヒンジ固定部33は、左側底部30の後端部にあり、前記左右一対のヒンジ80のうち左側のヒンジ80に固定される部分である。左側のヒンジ80は、
図6に示すように、この左側ヒンジ固定部33に対してアウタパネル2と反対側に配置されている。左側のヒンジ80は、左側ヒンジ固定部33に対して結合されるヒンジ結合部82を有している。このヒンジ結合部82は、前後方向に延びる直方体状の部材である。左側ヒンジ固定部33は、このヒンジ結合部82をアウタパネル2側から覆い、そのヒンジ結合部82に対して固定される部分である。
【0044】
また、左側底部30は、左側凹凸部34を有する。この左側凹凸部34は、本発明における凹凸部の一例である。左側凹凸部34は、前記左側ヒンジ固定部33を含んでおり、前後方向に延びている。この左側凹凸部34は、フード厚み方向Tにおいてアウタパネル2へ向かって突出する左側凸部36と、車両用フード1の前後方向に直交する幅方向(左右方向)において左側凸部36と連続する2つの左側凹部38と、を有する。左側凸部36は、本発明における凸部の一例であり、左側凹部38は、本発明における凹部の一例である。
【0045】
また、左側凹凸部34は、左右一対の補強部材6のうちの左側の補強部材6である左側補強部材6aとフード厚み方向Tにおいて重なる左側重複部40と、左側重複部40の前端40aから左側補強部材6aの前方へ延出する左側延出部42と、を有する。左側重複部40は、本発明における重複部の一例であり、左側延出部42は、本発明における延出部の一例である。
【0046】
また、左側底部30は、左側補強部材6aが接合される2つの補強部材接合点44(
図6参照)を有する。この2つの補強部材接合点44は、左側重複部40に設けられ、前後に間隔をあけて並んで配置されている。この2つの補強部材接合点44のそれぞれには、左側重複部40を厚み方向に貫通する孔が設けられ、それらの孔にそれぞれ挿通された2つのボルト50により各補強部材接合点44に左側補強部材6aが締結されている。この2つの補強部材接合点44のうち最も前寄りに位置するものを補強部材前側接合点44aと称し、その補強部材前側接合点44aよりも後寄りに位置する補強部材接合点44を補強部材後側接合点44bと称する。
【0047】
前記左側重複部40は、補強部材前側接合点44aよりも後側、より具体的には補強部材後側接合点44bよりも後側に位置する後端40b(
図6参照)を有する。また、左側重複部40は、前記左側ヒンジ固定部33の前端33aを含む。
【0048】
また、左側ヒンジ固定部33は、ヒンジ80のヒンジ結合部82に対して接合される2つのヒンジ接合点46を有する。本実施形態では、この2つのヒンジ接合点46は、前記2つの補強部材接合点44を兼ねている。この2つのヒンジ接合点46は、前記2つのボルト50によりヒンジ結合部82に締結されている。すなわち、前記2つのボルト50により、ヒンジ結合部82と左側ヒンジ固定部33(左側重複部40)と左側補強部材6aとが締結されている。2つのヒンジ接合点46のうち最も前寄りに位置するものをヒンジ前側接合点46aと称し、そのヒンジ前側接合点46aよりも後寄りに位置するヒンジ接合点46をヒンジ後側接合点46bと称する。ヒンジ前側接合点46aは補強部材前側接合点44aに相当し、ヒンジ後側接合点46bは補強部材後側接合点44bに相当する。よって、左側重複部40の後端40aは、ヒンジ前側接合点46aよりも後側、より具体的にはヒンジ後側接合点46bよりも後側に位置する。ヒンジ前側接合点46a及びヒンジ後側接合点46bは、左側重複部40に含まれている。
【0049】
左側凸部36は、左側重複部40に含まれる左側凸部重複部48を有する。この左側凸部重複部48は、本発明における凸部重複部の一例である。左側凸部重複部48は、重複部天壁部48aと、重複部左側壁部48bと、重複部右側壁部48cと、を有する。重複部左側壁部48b及び重複部右側壁部48cは、本発明における重複部側壁部の一例である。
【0050】
重複部天壁部48aは、左側凸部重複部48のうちで最もアウタパネル2の近くに位置する部分であり、左側凸部重複部48の突出方向の頂部に相当する。この重複部天壁部48aは、平板状をなし、フード厚み方向Tに対して直交するように配置されている。前記2つの補強部材接合点44(ヒンジ接合点46)は、この重複部天壁部48a内にある。すなわち、左側凸部重複部48のうち重複部天壁部48aが前記2つのボルト50により左側補強部材6a及びヒンジ結合部82と締結されている。重複部天壁部48aの左右方向における幅は、30mm以上に設定されていることが望ましい。これは、ボルト50の直径が10mm程度であり、重複部天壁部48aをボルト50によって安定的に締結するためには当該ボルト50の直径の約3倍の幅が必要になるためである。
【0051】
重複部左側壁部48bは、重複部天壁部48aの左端部からアウタパネル2と反対側へ延び、左側凸部重複部48の左側に位置する一方の左側凹部38に繋がっている。また、重複部右側壁部48cは、重複部天壁部48aの右端部からアウタパネル2と反対側へ延び、左側凸部重複部48の右側に位置する他方の左側凹部38に繋がっている。重複部左側壁部48b及び重複部右側壁部48cは、アウタパネル2から遠ざかるにつれて左右両外側へ向かうように傾斜している。
【0052】
左側補強部材6aは、重複部天壁部48aと重複部左側壁部48bと重複部右側壁部48cとに跨ってそれらの重複部天壁部48a、重複部左側壁部48b及び重複部右側壁部48cと重なっており、さらに重複部左側壁部48bの左外側及び重複部右側壁部48cの右外側に広がっている。
【0053】
左側凹凸部34の後端は、後側底部28の前端と後述の後内側起立壁部70との間の境界71よりも後側に位置するとともに、左側凹凸部34の前端は、前記境界71よりも前側に位置する。すなわち、左側凹凸部34は、前記境界71の位置の前後に亘って設けられている。
【0054】
また、フード厚み方向Tにおける左側凸部36の高さは、仮に歩行者の頭部が車両用フード1に対して内側接合部16の左端と左側外周接合部12cの右端との間の範囲内でアウタパネル2の表側から衝突した場合であっても左側凸部36に突き当たるのを回避できる高さに設定されている。具体的には、フード厚み方向Tにおける左側凸部36の高さhは、次式(1)によって求められる値よりも小さい値に設定される。
【0055】
h=H-[r-{r2-(L/2)2}1/2]・・・(1)
この式(1)において、Hは、フード厚み方向Tにおけるインナパネル4の底面から内側接合部16のうちアウタパネル2に対向する面までの距離であり、Lは、内側接合部16の左端と左側外周接合部12cの右端との間の間隔である。また、rは、歩行者保護性能の評価時に用いられる頭部を模擬したインパクタ120の半径であり、82.5mmである。左側凸部36の高さが以上のように設定されることによって、左側凸部36の存在が歩行者保護性能に悪影響を及ぼさないようになっている。
【0056】
右側底部32は、平面視で内側接合部16の右方に配置されるとともに右側外周接合部12dの左方に配置された部分である。右側底部32は、左側底部30と左右対称に構成されている。
【0057】
具体的に、右側底部32は、左右一対のヒンジ80のうち右側のヒンジ80に固定される図略の右側ヒンジ固定部を有する。この右側ヒンジ固定部は、本発明におけるヒンジ固定部の一例である。また、右側底部32は、右側凹凸部54を有する。この右側凹凸部54は、本発明における凹凸部の一例である。右側凹凸部54は、前記図略の右側ヒンジ固定部を含んでおり、前後方向に延びている。この右側凹凸部54は、フード厚み方向Tにおいてアウタパネル2へ向かって突出する右側凸部56と、車両用フード1の前後方向に直交する幅方向(左右方向)において右側凸部56と連続する2つの右側凹部58と、を有する。右側凸部56は、本発明における凸部の一例であり、右側凹部58は、本発明における凹部の一例である。右側凹凸部54は、左側凹凸部34と左右対称となるように構成されている。
【0058】
右側凹凸部54は、左右一対の補強部材6のうちの右側の補強部材6である右側補強部材6bとフード厚み方向Tにおいて重なる右側重複部(図略)と、右側重複部の前端から右側補強部材6bの前方へ延出する右側延出部59と、を有する。右側重複部は、本発明における重複部の一例であり、右側延出部59は、本発明における延出部の一例である。右側重複部は、左側重複部40と同様の構成を有し、右側延出部59は、左側延出部42と同様の構成を有する。
【0059】
外側起立壁22は、平面視で底部20を囲む環状をなしている。この外側起立壁22は、底部20の外縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がり、外周接合部12の内縁に繋がっている。外側起立壁22は、前外側起立壁部60と、後外側起立壁部62と、左外側起立壁部64と、右外側起立壁部66と、を有する。
【0060】
前外側起立壁部60は、前側底部26の前端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって前側外周接合部12aの後端縁に繋がっている。後外側起立壁部62は、後側底部28の後端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって後側外周接合部12bの前端縁に繋がっている。左外側起立壁部64は、左側底部30の左端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって左側外周接合部12cの右端縁に繋がっている。右外側起立壁部66は、右側底部32の右端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって右側外周接合部12dの左端縁に繋がっている。
【0061】
内側起立壁24は、平面視で内側接合部16を囲む環状をなしている。内側起立壁24は、底部20の内縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がり、内側接合部16の外縁に繋がっている。内側起立壁24は、前内側起立壁部68と、後内側起立壁部70と、左内側起立壁部72と、右内側起立壁部74と、を有する。
【0062】
前内側起立壁部68は、前側底部26の後端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって内側接合部16の前端縁に繋がっている。後内側起立壁部70は、後側底部28の前端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって内側接合部16の後端縁に繋がっている。この後内側起立壁部70は、本発明における後側起立壁部の一例である。左内側起立壁部72は、左側底部30の右端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって内側接合部16の左端縁に繋がっている。右内側起立壁部74は、右側底部32の左端縁からアウタパネル2へ向かって立ち上がって内側接合部16の右端縁に繋がっている。
【0063】
(本実施形態による効果)
本実施形態では、インナパネル4の左側凹凸部34が左側ヒンジ固定部33を補強する左側補強部材6aと一体となってインナパネル4のうち左側ヒンジ固定部33から前側の領域のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性を高めるとともに、インナパネル4の右側凹凸部54が右側ヒンジ固定部(図略)を補強する右側補強部材6bと一体となってインナパネル4のうち右側ヒンジ固定部から前側の領域のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性を高めるため、車両用フード1の製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性をより高めることができる。
【0064】
車両用フード1のねじり剛性に寄与するインナパネル4のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性としては、
図7に示されるように負荷を掛けた場合のインナパネル4のねじり剛性があり、車両用フード1の曲げ剛性に寄与するインナパネル4のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性としては、
図8に示されるように負荷を掛けた場合のインナパネル4の曲げ剛性がある。具体的に、インナパネル4のねじり剛性は、
図7に示すように、インナパネル4の後部の左右両側のヒンジ固定部の位置P1,P2と、インナパネル4の前端部の左右方向の片側の端部付近の位置P3とを固定し、インナパネル4の前記位置P3と左右反対側の端部付近の位置P4に上から負荷を掛けたときの剛性である。インナパネル4の曲げ剛性は、
図8に示すように、インナパネル4の後部の左右両側のヒンジ固定部の位置P1,P2と、インナパネル4の前端の左右方向の中央の位置P5とを固定し、インナパネル4の前端部の左右両側の端部付近の位置P6,P7にそれぞれ上から負荷を掛けたときの剛性である。
【0065】
以上のような負荷をインナパネル4に掛けた場合には、それらの負荷を掛けた部位が下方へ変位するような撓み変形が生じる。具体的には、
図7に示す負荷を掛けた場合には、左側底部30が下方へ撓むような変形がインナパネル4に生じ、
図8に示す負荷を掛けた場合には、左側底部30及び右側底部32が下方へ撓むような変形がインナパネル4に生じる。これに対し、本実施形態では、前記のように、インナパネル4のうち左側ヒンジ固定部33から前側の領域のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性を高めることができるとともに、インナパネル4のうち右側ヒンジ固定部から前側の領域のフード厚み方向Tの撓みに対する剛性を高めることができるため、左側底部30及び右側底部32の前記のような撓みに対する剛性、すなわちインナパネル4のねじり剛性及び曲げ剛性を高めることができる。その結果、車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性を高めることができる。
【0066】
そして、以上のように車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性を高めることができることにより、車両走行時の車両用フード1の振動を抑制できる。具体的には、車両走行時、特に高速走行時には、車両用フード1の前端部の左右両端が前方から受ける風圧等によりフード厚み方向Tに沿う方向において振動を生じる場合があるが、本実施形態では、前記のように車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性を高めることができるので、このような車両走行時の車両用フード1の前端部の左右両端のフード厚み方向Tにおける振動を抑制できる。
【0067】
また、前記のように車両用フード1のねじり剛性を高めることができることにより、車両用フード1がエンジンルームを開放する前上がりの姿勢で保持されたときの当該車両用フード1の前端部の左右方向の端部の垂れ下がりを抑制できる。具体的には、車両用フード1が前記前上がりの姿勢で保持されるときには、その車両用フード1の左右両側部のいずれか一方が車両本体100に対してステーによって支えられるのが一般的であり、この場合、車両用フード1の左右両側部のうちステーによって支えられていない方の側部の前端部が自重により垂れ下がる虞があるが、本実施形態では前記のように車両用フード1のねじり剛性を高めることができることにより、このような垂れ下がりを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態による車両用フード1では、左側ヒンジ固定部33を補強する左側補強部材6a及び図略の右側ヒンジ固定部を補強する右側補強部材6bとは別に車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性を高めるための補強部材を設けることなく、前記のようにねじり剛性及び曲げ剛性の向上を達成できる。従って、本実施形態による車両用フード1では、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、車両用フード1のねじり剛性及び曲げ剛性を高めることができる。
【0069】
また、本実施形態では、左側重複部40は左側の補強部材前側接合点44aよりも後側に位置する後端40aを有し、同様に、図略の右側重複部は右側の補強部材前側接合点よりも後側に位置する後端を有する。このため、インナパネル4の底部20のうち左側凹凸部34により剛性が高められる前後方向の範囲内に左側の補強部材前側接合点44aが含まれることになるとともに、インナパネル4の底部20のうち右側凹凸部54により剛性が高められる前後方向の範囲内に右側の補強部材前側接合点が含まれることになる。このため、インナパネル4の底部20のうち左側の補強部材前側接合点44aの前方の領域がアウタパネル2から離れるようにインナパネル4が左側の補強部材前側接合点44aを支点として撓むのを抑制できるとともに、インナパネル4の底部20のうち右側の補強部材前側接合点の前方の領域がアウタパネル2から離れるようにインナパネル4が右側の補強部材前側接合点を支点として撓むのを抑制できる。
【0070】
また、本実施形態では、補強部材前側接合点44aは左側重複部40に含まれている。すなわち、左側補強部材6aと重なる左側重複部40内に補強部材前側接合点44aが設けられている。また、同様に、右側補強部材6bと重なる図略の右側重複部内に、右側補強部材6bと接合される補強部材前側接合点が設けられている。従って、インナパネル4の底部20の各補強部材前側接合点44a付近の剛性をより高めることができる。このため、インナパネル4の底部20の左側の補強部材前側接合点44aの前方の領域及び右側の補強部材前側接合点の前方の領域がアウタパネル2から離れるようにインナパネル4が撓むのをより抑制できる。
【0071】
(変形例)
本発明による車両用フードは、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による車両用フードに以下のような構成を採用可能である。
【0072】
インナパネルの底部の凸部の突出方向における頂部は、必ずしも平坦になっていなくてもよい。
【0073】
例えば、
図10に示す第1変形例のように、左側凸部36の突出方向における頂部は尖っていてもよい。同様に、右側凸部の突出方向における頂部も尖っていてもよい。また、
図11に示す第2変形例のように、左側凸部36の突出方向における頂部が左右に分かれて2箇所に設けられ、その2箇所の頂部の間が窪んでいてもよい。右側凸部も、同様に、頂部が左右に分かれて2箇所に設けられ、その2箇所の頂部の間が窪んでいてもよい。
【0074】
また、インナパネルの底部の凹凸部の凹部は、必ずしも凸部の左右両側に設けられていなくてもよく、凸部の左側と右側のいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0075】
例えば、
図12に示す第3変形例のように左側凸部36の左側のみに左側凹部38が設けられていてもよい。この場合、図示していないが、右側凸部と右側凹部が
図12に示されている左側凸部36及び左側凹部38と左右対称となるように、右側凸部の右側のみに右側凹部が設けられていてもよい。
【0076】
また、
図13に示す第4変形例のように左側凸部36の右側のみに左側凹部38が設けられていてもよい。この場合、図示していないが、右側凸部と右側凹部が
図13に示されている左側凸部36及び左側凹部38と左右対称となるように、右側凸部の左側のみに右側凹部が設けられていてもよい。
【0077】
また、本発明における補強部材は、インナパネルのヒンジ固定部の必ずしも全体に重なっていなくてもよく、ヒンジ固定部の少なくとも一部に重なっていればよい。
【0078】
また、本発明における重複部の後端は、複数の補強部材接合点のうち少なくとも最も前寄りに位置する補強部材前側接合点よりも後側に位置していればよく、必ずしも補強部材後側接合点よりも後側に位置していなくてもよい。
【0079】
また、本発明における重複部の後端は、複数のヒンジ接合点のうち少なくとも最も前よりに位置するヒンジ前側接合点よりも後側に位置していればよく、必ずしもヒンジ後側接合点よりも後側に位置していなくてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 車両用フード
2 アウタパネル
4 インナパネル
6 補強部材
12 外周接合部
16 内側接合部
18 中間環状部
20 底部
28 後側底部
33 左側ヒンジ固定部(ヒンジ固定部)
34 左側凹凸部(凹凸部)
36 左側凸部(凸部)
38 左側凹部(凹部)
40 左側重複部(重複部)
44 補強部材接合点
44a 補強部材前側接合点
46 ヒンジ接合点
46a ヒンジ前側接合点
48 左側凸部重複部(凸部重複部)
48a 重複部天壁部
48b 重複部左側壁部(重複部側壁部)
48c 重複部右側壁部(重複部側壁部)
70 後内側起立壁部(後側起立壁部)
71 境界
80 ヒンジ
100 車両本体
T フード厚み方向