(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/06 20060101AFI20240708BHJP
B29C 33/20 20060101ALI20240708BHJP
B29C 33/36 20060101ALI20240708BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240708BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240708BHJP
B29C 45/83 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B29C45/06
B29C33/20
B29C33/36
B29C45/64
B29C45/76
B29C45/83
(21)【出願番号】P 2020089010
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖丈
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-030278(JP,A)
【文献】特開平11-188765(JP,A)
【文献】特開2011-189511(JP,A)
【文献】特開2008-194926(JP,A)
【文献】特開平02-015861(JP,A)
【文献】特開2005-014366(JP,A)
【文献】特開2006-248218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 17/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金型及び第2金型を含む金型の開閉及び型締を行う型締装置と、型締された前記金型のキャビティ内に成形材料を射出する射出装置と、前記型締装置及び前記射出装置を制御する制御装置とを備えた成形機において、
前記型締装置は、
前記第1金型を固定する第1プレートと、
複数の前記第2金型を固定する第2プレートと、
前記制御装置から出力される指令値に基づいて、前記複数の第2金型のうちの1つが前記第1金型に対面する成形位置に位置し、他の前記第2金型が前記成形位置と異なる待機位置に位置するように、前記第2プレートを移動させる移動手段と、
前記第1金型及び前記成形位置の前記第2金型を開閉する開閉手段と、
前記第2金型の位置を検知する位置センサとを備え、
前記制御装置は、
前記待機位置の前記第2金型を前記成形位置に移動させるための前記指令値を、前記移動手段に出力する移動処理と、
前記移動処理で前記成形位置に向けて移動させた前記第2金型の停止位置を、前記位置センサによって検知する検知処理と、
前記検知処理で検知した前記停止位置と前記成形位置との誤差を演算する演算処理と、
前記移動処理で互いに対面した前記第1金型及び前記第2金型を、前記開閉手段によって型閉及び型締する型締処理と、
前記型締処理で型締された前記金型のキャビティに、前記射出装置によって成形材料を射出する射出処理と、
前記射出処理で成形材料が射出された前記第1金型及び前記第2金型を、前記開閉手段によって型開する型開処理と、
前記演算処理で演算した誤差に基づいて前記指令値を補正することによって、次の前記移動処理で出力する新たな指令値を決定する指令値決定処理とを繰り返し実行
し、
前記制御装置は、
(N-1)回目及びN回目の前記移動処理それぞれで出力した前記指令値の第1差が、(N-1)回目及びN回目の前記検知処理それぞれで検知した前記停止位置の第2差より小さい場合に係数αを1より小さくし、前記第1差が前記第2差より大きい場合に前記係数αを1より大きくする係数決定処理を実行し、
N回目の前記指令値決定処理において、N回目の前記演算処理で演算した誤差に前記係数αを乗じた結果に基づいて、N回目の前記移動処理で出力した前記指令値を補正して、(N+1)回目の前記移動処理で出力する前記新たな指令値を決定することを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第2金型の重量に応じて、前記係数αを決定する係数決定処理を実行することを特徴とする請求項
1に記載の成形機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記移動処理における前記第2プレートの移動速度に応じて、前記係数αを決定する係数決定処理を実行することを特徴とする請求項
1または2に記載の成形機。
【請求項4】
前記型締装置にグリースを給脂したことを示す給脂操作が入力される入力装置を備え、
前記制御装置は、前記給脂操作が入力されてからの前記移動処理の実行回数に応じて、前記係数αを決定する係数決定処理を実行することを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記移動処理、前記検知処理、前記演算処理、前記型締処理、前記射出処理、前記型開処理、及び前記指令値決定処理の繰り返し回数に応じて、前記係数αを決定する係数決定処理を実行することを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の成形機。
【請求項6】
前記成形機の周囲の温度を検知する温度センサを備え、
前記制御装置は、前記温度センサによって検知された温度に応じて、前記係数αを決定する係数決定処理を実行することを特徴とする請求項
1~5のいずれか1項に記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を金型内に射出して成形品を成形する成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の下側金型を搭載したロータリーテーブルを間欠回転させることで、複数の下側金型を交番的に上側金型と対向する位置に停止させるように構成された成形機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような成形機では、金型の重量が変動することによって、ロータリーテーブルの回転が不安定になる。そこで、特許文献1に記載の成形機は、ロータリーテーブルに載置された下側金型の重量に応じて、ロータリーテーブルの制御条件を変更している。また、このような課題は、特許文献1に記載の竪型成形機のみならず、特許文献1に記載の横型成形機にも同様に生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-55625号公報
【文献】特開2008-132731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロータリーテーブルの挙動は、金型の重量のみならず、ロータリーテーブルの回転速度、グリースの粘度、グリースの劣化、摺動抵抗の度合いなど、様々の要因によって変動する。そのため、特許文献1、2のように予め用意された複数のパターンのうちの1つを選択するだけでは、ロータリーテーブルを目標位置に正確に停止させるのは難しい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、複数の第2金型を交番的に第1金型に対面させる成形機において、第2金型を固定するプレートを目標位置(成形位置)に正確に停止させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、第1金型及び第2金型を含む金型の開閉及び型締を行う型締装置と、型締された前記金型のキャビティ内に成形材料を射出する射出装置と、前記型締装置及び前記射出装置を制御する制御装置とを備えた成形機において、前記型締装置は、前記第1金型を固定する第1プレートと、複数の前記第2金型を固定する第2プレートと、前記制御装置から出力される指令値に基づいて、前記複数の第2金型のうちの1つが前記第1金型に対面する成形位置に位置し、他の前記第2金型が前記成形位置と異なる待機位置に位置するように、前記第2プレートを移動させる移動手段と、前記第1金型及び前記成形位置の前記第2金型を開閉する開閉手段と、前記第2金型の位置を検知する位置センサとを備え、前記制御装置は、前記待機位置の前記第2金型を前記成形位置に移動させるための前記指令値を、前記移動手段に出力する移動処理と、前記移動処理で前記成形位置に向けて移動させた前記第2金型の停止位置を、前記位置センサによって検知する検知処理と、前記検知処理で検知した前記停止位置と前記成形位置との誤差を演算する演算処理と、前記移動処理で互いに対面した前記第1金型及び前記第2金型を、前記開閉手段によって型閉及び型締する型締処理と、前記型締処理で型締された前記金型のキャビティに、前記射出装置によって成形材料を射出する射出処理と、前記射出処理で成形材料が射出された前記第1金型及び前記第2金型を、前記開閉手段によって型開する型開処理と、前記演算処理で演算した誤差に基づいて前記指令値を補正することによって、次の前記移動処理で出力する新たな指令値を決定する指令値決定処理とを繰り返し実行し、前記制御装置は、(N-1)回目及びN回目の前記移動処理それぞれで出力した前記指令値の第1差が、(N-1)回目及びN回目の前記検知処理それぞれで検知した前記停止位置の第2差より小さい場合に係数αを1より小さくし、前記第1差が前記第2差より大きい場合に前記係数αを1より大きくする係数決定処理を実行し、N回目の前記指令値決定処理において、N回目の前記演算処理で演算した誤差に前記係数αを乗じた結果に基づいて、N回目の前記移動処理で出力した前記指令値を補正して、(N+1)回目の前記移動処理で出力する前記新たな指令値を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、複数の第2金型を交番的に第1金型に対面させる成形機において、第2金型を固定するプレートを目標位置(成形位置)に正確に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る射出成形機の側面図である。
【
図3】上側金型及び下側金型の断面図であって、(A)は型開された状態を、(B)は型閉された状態を示す。
【
図6】第1実施形態に係る自動成形処理中の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差Dの推移を示す図である。
【
図7】誤差Dが発散する場合の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差Dの推移を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る自動成形処理中の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差D、係数αの推移を示す図である。
【
図9】射出成形機10の動作パラメータと係数αとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る射出成形機10を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載する本発明の実施形態は、本発明を具体化する際の一例を示すものであって、本発明の範囲を実施形態の記載の範囲に限定するものではない。従って、本発明は、実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る射出成形機10の側面図である。
図2は、型締装置20の概略平面図である。
図3は、上側金型12及び下側金型13の断面図であって、(A)は型開された状態を、(B)は型閉された状態を示す。
図4は、射出成形機10のハードウェア構成図である。
【0012】
射出成形機10は、金型11内に可塑化樹脂(成形材料)を射出して、射出成形品(成形品)を成形する成形機である。
図1~
図4に示すように、射出成形機10は、型締装置20と、射出装置30と、制御装置50とを主に備える。
【0013】
図1に示すように、射出成形機10に搭載される金型11は、上側金型12と、複数の下側金型13a、13b(以下、これらを総称して、「下側金型13」と表記する。)とで構成される。
図3(B)に示すように、上側金型12と、複数の下側金型13a、13bのうちの1つとが組み合わされることによって、金型11の内部にキャビティ14が形成される。そして、キャビティ14内に可塑化樹脂が射出されることによって、射出成形品が成形される。
【0014】
型締装置20は、金型11の開閉及び型締を行う。
図1~
図4に示すように、型締装置20は、上側金型12(第1金型)を固定する可動ダイプレート21(第1プレート)と、複数の下側金型13a、13b(第2金型)を固定するロータリーテーブル22(第2プレート)と、テーブル回転モータ23(移動手段)と、開閉モータ24(開閉手段)とを主に備える。
【0015】
可動ダイプレート21は、ロータリーテーブル22の上方において、昇降可能に構成されている。可動ダイプレート21は、上側金型12を固定するマグクランプ21aを備える。マグクランプ21aは、例えば、電圧が印加されたときに上側金型12をクランプする電磁石である。すなわち、後述する制御装置50がマグクランプ21aに電圧を印加すると、上側金型12が可動ダイプレート21の下面に固定される。一方、制御装置50がマグクランプ21aに対する電圧の印加を停止すると、可動ダイプレート21に対する上側金型12の固定が解除される。なお、上側金型12を固定する方法は、マグクランプ21aに限定されず、上側金型12を固定金型押さえ具等で固定してもよい。
【0016】
ロータリーテーブル22は、可動ダイプレート21(換言すれば、上側金型12)の下方に配置されている。ロータリーテーブル22は、周方向に離間した位置において、複数の下側金型13a、13bを固定する。より詳細には、複数の下側金型13a、13bは、ロータリーテーブル22の上面に等間隔(すなわち、180°間隔)に配置される。
【0017】
また、ロータリーテーブル22は、下側金型13を固定するマグクランプ22a、22bを備える。マグクランプ22a、22bは、例えば、電圧が印加されたときに下側金型13をクランプする電磁石である。すなわち、後述する制御装置50がマグクランプ22a、22bに電圧を印加すると、下側金型13がロータリーテーブル22上の所定位置に固定される。一方、制御装置50がマグクランプ22a、22bに対する電圧の印加を停止すると、ロータリーテーブル22に対する下側金型13の固定が解除される。
【0018】
さらに、
図2に示すように、ロータリーテーブル22は、テーブル回転モータ23の駆動力が伝達されて、上側金型12に対面する成形位置と、射出成形品を取り出す成形品取出位置(待機位置)との間で、下側金型13を移動させる。ロータリーテーブル22は、上下方向(すなわち、上側金型12及び下側金型13の対面方向)に延びる回転軸線回りに、一方向(例えば、
図2の反時計回り)のみに回転する。但し、ロータリーテーブル22は、一方向(正転)及び逆方向(逆転)に回転可能に構成されていてもよい。
【0019】
成形位置と成形品取出位置とは、180°の間隔を隔てた位置である。すなわち、下側金型13a、13bの一方が成形位置に配置されているとき、他方が成形品取出位置に配置される。但し、成形位置及び待機位置の具体的な位置関係は、前述の例に限定されない。さらに、ロータリーテーブル22に固定される下側金型13の数は2個に限定されず、例えば、90°間隔で最大4つの下側金型13を固定していてもよい。
【0020】
また、可動ダイプレート21は、トグルリンク機構(図示省略)を介して開閉モータ24の駆動力が伝達されることによって、上位置及び下位置の間を昇降する。可動ダイプレート21の位置は、例えば、エンコーダセンサ(図示省略)によって特定される。
【0021】
図3(A)に示すように、可動ダイプレート21が上位置のとき、上側金型12と成形位置の下側金型13とが型開されている。一方、
図3(B)に示すように、可動ダイプレート21が下位置まで下降すると、上側金型12と成形位置の下側金型13とが型閉される。そして、可動ダイプレート21がさらに下降すると、上側金型12と下側金型13とが型締される。これにより、上側金型12と成形位置の下側金型13との間に、キャビティ14が形成される。
【0022】
なお、
図3(A)に示すように、下側金型13の現実の停止位置は、予め定められた成形位置からずれている場合がある。そこで、停止位置と成形位置との微小なズレを吸収するために、上側金型12から下方に突出する位置決め突起15a、15bと、下側金型13の上面に形成された位置決め凹部16a、16bとが設けられている。また、位置決め突起15a、15bは、先細り形状になっている。
【0023】
これにより、
図3(A)の状態から可動ダイプレート21を下位置まで下降させると、位置決め突起15a、15bが対応する位置決め凹部16a、16bに進入する。そして、位置決め突起15a、15bが位置決め凹部16a、16bの側壁に当接することによって、下側金型13が停止位置から成形位置に位置調整される。
【0024】
射出装置30は、ホッパ(図示省略)から供給された樹脂を、可塑化し、計量し、キャビティ14内に射出する。第1実施形態に係る射出装置30は、型締装置20の上方に配置されている。より詳細には、射出装置30は、先端にノズル32が形成された加熱シリンダ31と、射出装置30を上下方向に移動させるノズルタッチモータ33とを主に備える。
【0025】
射出装置30が下降すると、型締された金型11に加熱シリンダ31の先端のノズル32が接続される。この状態で加熱シリンダ31から射出された可塑化樹脂は、金型11のキャビティ14に充填される。一方、射出装置30が上昇すると、ノズル32が金型11から離間する。すなわち、第1実施形態に係る射出成形機10は、射出装置30が上下方向に移動する、所謂「竪型」である。
【0026】
制御装置50は、例えば、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)51、各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)52、及び演算手段の作業領域となるRAM(Random Access Memory)53を備える。そして、ROM52に記憶されたプログラムをCPU51が読み出して実行することによって、後述する各処理を実現してもよい。
【0027】
但し、制御装置50の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0028】
制御装置50は、射出成形機10全体の動作を制御する。制御装置50は、表示入力装置(入力装置)54から出力される操作信号と、温度センサ55から出力される検知信号とに基づいて、テーブル回転モータ23と、開閉モータ24と、ノズルタッチモータ33とを駆動させる。
【0029】
表示入力装置54は、オペレータに報知すべき各種情報を表示するディスプレイ、及びオペレータによる操作を受け付けるボタン、スイッチ、ダイヤルなどを備えるユーザインタフェースである。また、表示入力装置54は、ディスプレイに重畳されたタッチパネルを備えてもよい。オペレータの操作を受け付けて、受け付けた操作に対応する操作信号を制御装置50に出力する。
【0030】
温度センサ55は、射出成形機10の周囲の温度を検知し、検知結果を示す検知信号を制御装置50に出力する。温度センサ55の設置位置(温度の検知位置)は、例えば、型締装置20のケーシングの内部であってもよい。
【0031】
制御装置50は、サーボアンプ56を通じて、テーブル回転モータ23の回転を制御する。より詳細には、制御装置50は、テーブル回転モータ23の回転特性(例えば、回転量、最高速度など)を示す指令値を、サーボアンプ56に出力する。サーボアンプ56は、制御装置50から取得した指令値に従って、テーブル回転モータ23を回転させる。また、図示は省略するが、制御装置50は、開閉モータ24及びノズルタッチモータ33を、それぞれに対応するサーボアンプを通じて制御する。
【0032】
ロータリエンコーダ57(位置センサ)は、テーブル回転モータ23の回転に応じたパルス信号を制御装置50及びサーボアンプ56に出力する。そして、制御装置50及びサーボアンプ56は、ロータリエンコーダ57から出力されるパルス信号の数(以下、「パルス数」と表記する。)によって、テーブル回転モータ23の回転量(換言すれば、下側金型13の位置)を認識することができる。
【0033】
図5及び
図6を参照して、射出成形機10の動作を説明する。
図5は、自動成形処理のフロチャートである。
図6は、第1実施形態に係る自動成形処理中の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差Dの推移を示す図である。自動成形処理は、所定数の射出成形品を自動的に連続成形する処理である。制御装置50は、表示入力装置54に自動成形指示が入力されたタイミングで、
図5に示す自動成形処理を開始する。
【0034】
自動成形処理の開始時点において、下側金型13aが成形位置に位置し、下側金型13bが製品取出位置に位置し、上側金型12及び下側金型13aは型開されているものとする。また、自動成形処理の開始時点では、RAM53に記憶された
図6の表には、成形位置A及びN=1に対応する指令値Bのみが格納されている。N=1に対応する指令値Bは、成形位置Aと同一値(=1000)である。
【0035】
成形位置Aは、
図2の成形位置を特定する値である。第1実施形態に係る成形位置Aは、成形品取出位置の下側金型13を成形位置に到達させるためのテーブル回転モータ23の回転量を示す。指令値Bは、成形品取出位置の下側金型13を成形位置に到達させるために、制御装置50からサーボアンプ56に出力される指令値(回転量、回転速度など)である。
【0036】
停止位置Cは、ステップS13で検知された下側金型13の現実の停止位置を特定する値である。第1実施形態に係る停止位置Cは、ステップS12におけるテーブル回転モータ23の回転量を示す。誤差Dは、停止位置Cと成形位置Aとの差である。
【0037】
第1実施形態では、自動成形処理の説明を単純化するために、成形位置A、指令値B、停止位置C、及び誤差Dをロータリエンコーダ57のパルス数で示す。すなわち、ロータリーテーブル22が180°回転したときのパルス数を1000とする。但し、成形位置A、指令値B、停止位置C、及び誤差Dの具体例は、パルス数に限定されず、ロータリーテーブル22の回転角などであってもよい。
【0038】
まず、制御装置50は、RAM53に保存された変数Nに初期値(=1)を代入する(S11)。変数Nは、自動成形処理で成形する射出成形品の数(以下、「ショット数」と表記する。)を示す。換言すれば、変数Nは、ステップS12~S17の実行回数を示す。すなわち、変数Nは、1以上の整数である。
【0039】
次に、制御装置50は、N=1に対応する指令値B1(=1000)をRAM53から読み出して、サーボアンプ56に出力する(S12)。サーボアンプ56は、制御装置50から出力された指令値B1に従って、テーブル回転モータ23を180°回転させる。ステップS12の処理は、移動処理の一例である。
【0040】
サーボアンプ56は、指令値B1で示される回転速度までテーブル回転モータ23を増速し、指令値B1で示されるパルス数でテーブル回転モータ23が停止するように減速する。但し、ステップS12において、テーブル回転モータ23が回転を開始してから停止するまでの現実のパルス数は、指令値B1(=1000)に一致するとは限らず、指令値B1に対して誤差を含む可能性がある。
【0041】
制御装置50は、ステップS12において、テーブル回転モータ23が回転を開始してから停止するまでのパルス数をカウントして、
図6のN=1に対応する停止位置C
1としてRAM53に記憶させる(S13)。すなわち、停止位置C
1が1000を超えている場合、下側金型13bが成形位置を通過したことを示す。一方、停止位置C
1が1000を下回った場合、下側金型13bが成形位置に到達していないことを示す。ステップS13の処理は、ステップS12で成形位置に向けて移動させた下側金型13bの停止位置を検知する検知処理の一例である。
【0042】
次に、制御装置50は、
図6のN=1に対応する誤差D
1を演算し、RAM53に記憶させる(S14)。より詳細には、制御装置50は、停止位置C
1(=1005)から成形位置A(=1000)を減じて、誤差D
1(=+5)を演算する。ステップS14の処理は、演算処理の一例である。
【0043】
次に、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、上側金型12と、ステップS12で上側金型12に対面した下側金型13bとを型閉及び型締する(S15)。このとき、位置決め突起15a、15bが位置決め凹部16a、16bに進入することによって、下側金型13bが成形位置からズレていても適切に型締される。ステップS15の処理は、型締処理の一例である。ただし、ズレ量が所定値以上の状態で型閉すると、金型11が破損するおそれもあるので、制御装置50は、型閉動作を行わずにロータリーテーブルを回転させる。
【0044】
次に、制御装置50は、射出装置30を駆動することによって、型締された金型11のキャビティ14に成形材料を射出する(S16)。これにより、キャビティ14内に射出成形品が成形される。ステップS16の処理は、射出処理の一例である。次に、制御装置50は、開閉モータ24を駆動することによって、成形材料が射出された上側金型12及び下側金型13bを型開する(S17)。これにより、成形された射出成形品が下側金型13b側に残る。ステップS17の処理は、型開処理の一例である。
【0045】
また、ステップS15で下側金型13bが成形位置に到達したとき、もう一方の下側金型13aが成形品取出位置に到達する。そこで、制御装置50は、ステップS16~S17の処理と並行して、ロボットアーム(図示省略)などを用いて成形品取出位置の下側金型13aから射出成形品を取り出す。ただし、N=1の場合には、成形動作が行われていないために、射出成形品を取り出す動作は、省略する。
【0046】
次に、制御装置50は、予め定められた数の射出成形品を既に成形したか否か(すなわち、成形完了したか否か)を判断する(S18)。そして、制御装置50は、成形完了していないと判断した場合に(S18:No)、次のステップS12~S17の準備をする(S19~S21)。但し、第1実施形態では、ステップS19の処理が省略される。一方、制御装置50は、成形完了したと判断した場合に(S18:Yes)、自動成形処理を終了する。
【0047】
制御装置50は、ステップS20において、N=1に対応する指令値B1を補正して、次(N=2)のステップS12で出力する新たな指令値B2を決定し、RAM53に記憶させる。より詳細には、制御装置50は、指令値B1(=1000)から誤差D1(=+5)を減じることによって、N=2に対応する新たな指令値B2(=995)を決定する。ステップS20の処理は、指令値決定処理の一例である。
【0048】
さらに、制御装置50は、変数Nを1だけインクリメントして(S21)、ステップS12以降の処理を再び実行する。すなわち、制御装置50は、成形完了と判断するまでの間(S18:No)、ステップS12~S17、S19~S21の処理を繰り返し実行する。これにより、ステップS12における下側金型13の停止位置を補正しながら、射出成形品を連続して成形する。
【0049】
そして、制御装置50は、2回目のステップS12において、直前のステップS20で決定した指令値B2をサーボアンプ56に出力する。すなわち、制御装置50は、N回目のステップS14で演算した誤差DNを用いて、N回目のステップS12で出力した指令値BNを補正し、(N+1)回目のステップS12で出力する指令値BN+1を決定する。
【0050】
N回目のステップS12で下側金型13が成形位置を超えた場合、指令値BN+1で示される回転量が指令値BNで示される回転量より小さくなる。また、N回目のステップS12で下側金型13が成形位置に届かない場合、指令値BN+1で示される回転量が指令値BNで示される回転量より大きくなる。さらに、N回目のステップS12で下側金型13が成形位置に停止した場合、指令値BN+1及び指令値BNで示される回転量が一致する。
【0051】
その結果、
図6に示すように、ショット数Nの増加に伴って停止位置C
Nが成形位置Aに収束する。より詳細には、下側金型13の停止位置C
Nが、成形位置Aを超えたり(N=1、3)、成形位置Aに届かなかったり(N=2)しながら、ステップS12を実行する度に誤差D
Nの絶対値が小さくなる。その後ショット数Nが増加しても、誤差D
Nの絶対値が0もしくは小さい状態が持続される。
【0052】
第1実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0053】
第1実施形態によれば、自動成形処理を実行する過程において、現実の停止位置CNと成形位置Aとの誤差DNに基づいて、次の指令値BN+1を補正するので、ショット数Nの増加に伴って成形位置への下側金型13の停止精度が向上する。特に、この制御によれば、金型11の重量のように自動成形処理中に変動しない要因だけでなく、グリースの粘度や劣化の度合いなど、自動成形処理中に経時的に変動する要因をも適切に吸収することができる。
【0054】
[第2実施形態]
図7は、誤差Dが発散する場合の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差Dの推移を示す図である。金型11の重量が重い(すなわち、重量が重いと大きな慣性が働く)場合などにおいて、第1実施形態の制御を実行すると、例えば
図7に示すように、ショット数Nの増加に伴って誤差D
Nの絶対値が徐々に大きくなる場合がある(以下、このような現象を「発散」と表記する)。
【0055】
そこで
図8を参照して、第2実施形態に係る自動成形処理を説明する。
図8は、第2実施形態に係る自動成形処理中の成形位置A、指令値B、停止位置C、誤差D、係数αの推移を示す図である。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。第2実施形態に係る射出成形機10の構成は、第1実施形態と共通する。また、第2実施形態に係る自動成形処理は、ステップS19をさらに実行する点と、ステップS20における指令値B
N+1の決定方法とが、第1実施形態と異なる。
【0056】
第2実施形態に係る制御装置50は、1回目のステップS19において、係数α1=1にする。また、制御装置50は、2回目以降のステップS19において、下記式(1)を用いて係数αNを決定する。ステップS19の処理は、ステップS20で用いる係数αを決定する係数決定処理の一例である。
【0057】
αN=(BN-1-BN) / (CN-1-CN) ・・・(1)
【0058】
すなわち、制御装置50は、(N-1)回目及びN回目のステップS12それぞれで出力した指令値BN-1、BNの差と、(N-1)回目及びN回目のステップS13それぞれで検知した停止位置CN-1、CNの差の比率が大きいほど、N回目のステップS20で用いる係数αNを大きくする。但し、αNの算出式は式(1)に限定されない。
【0059】
また、第2実施形態に係る制御装置50は、N回目のステップS20において、N回目のステップS14で演算した誤差DNに、N回目のステップS19で算出した係数αNを乗じた結果に基づいて、N回目のステップS12で出力した指令値BNを補正して、(N+1)回目のステップS12で出力する新たな指令値BN+1を決定する。
【0060】
より詳細には、制御装置50は、ステップS20において、下記式(2)を用いて指令値BN+1を決定する。なお、制御装置50は、式(2)による算出結果を四捨五入して、整数の指令値BN+1を決定すればよい。
【0061】
BN+1 = BN - DN × αN ・・・(2)
【0062】
第2実施形態によれば、指令値BN-1、BNの差が停止位置CN-1、CNの差より小さい場合に、係数αNが1未満になるので、ステップS20における指令値BN+1の変動を緩やかにすることができる。その結果、金型11の重量が大きい(すなわち、大きな慣性が働く)場合などであっても、誤差DNの発散を防止することができる。
【0063】
一方、第2実施形態によれば、指令値BN-1、BNの差が停止位置CN-1、CNの差より大きい場合に、係数αNが1より大きくなるので、ステップS20における指令値BN+1の変動を急峻にすることができる。その結果、指令値Bを最適化する処理の応答性の低下を防止することができる。
【0064】
なお、第2実施形態の制御は、金型11の重量が軽くて、ロータリーテーブル22の回転抵抗が小さい場合などにも適用できる。また、指令値BN-1、BNの差及び停止位置CN-1、CNの差と係数αNとの関係は、前述の例に限定されない。すなわち、制御装置50は、指令値BN-1、BNの差と、停止位置CN-1、CNの差との比率に応じて、係数αNを決定すればよい。また、停止位置Cは、テーブル回転モータ23の駆動力をロータリーテーブル22に伝達するベルトの伸び等を加味した係数によって補正された値を用いてもよい。
【0065】
[第3実施形態]
次に、
図9を参照して、第3実施形態に係る係数αの決定方法を説明する。
図9は、射出成形機10の動作パラメータと係数αとの関係を示す図である。なお、第2実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0066】
第3実施形態に係る自動成形処理は、ステップS19における係数α
Nの決定方法が、第2実施形態と異なる。より詳細には、第3実施形態に係る制御装置50は、ステップS19において、
図9(A)~(E)の少なくとも1つに基づいて、係数αを動作パラメータに対応する値に決定する。
【0067】
図9(A)は、下側金型13の重量M[kg]と係数αとの関係を示す。下側金型13の重量は、重量センサ(図示省略)によって検知してもよいし、表示入力装置54を通じてオペレータによって設定されてもよい。例えば、制御装置50は、
図9(A)の関係に従って、重量Mが小さいほど係数α
Nを大きくし、重量Mが大きいほど係数α
Nを小さくすればよい。
【0068】
図9(B)は、ロータリーテーブル22の回転速度(移動速度)[%]と係数αとの関係を示す。回転速度[%]は、例えば、スペック上の最高速度を100[%]としたときの割合で表される。また、回転速度は、例えば、表示入力装置54を通じてオペレータによって設定される。例えば、制御装置50は、
図9(B)の関係に従って、回転速度Vが遅いほど係数α
Nを大きくし、回転速度Vが速いほど係数α
Nを小さくすればよい。
【0069】
図9(C)は、ロータリーテーブル22にグリースを給脂してからのショット数Nと係数αとの関係を示す。制御装置50は、例えば、表示入力装置54に対するオペレータの給脂操作が入力されたことによって、型締装置20にグリースが給脂されたことを認識する。例えば、制御装置50は、
図9(C)の関係に従って、給脂後のショット数Nが少ないほど係数α
Nを小さくし、給脂後のショット数Nが多いほど係数α
Nを大きくすればよい。
【0070】
図9(D)は、自動成形処理中のショット数N(すなわち、ステップS12~S17の繰り返し回数)と係数αとの関係を示す。例えば、制御装置50は、
図9(D)の関係に従って、
図5の変数Nの値が小さいほど係数α
Nを大きくし、
図5の変数Nの値が大きいほど係数α
Nを小さくすればよい。
【0071】
図9(E)は、射出成形機10の周囲の温度T[℃]と係数αとの関係を示す。制御装置50は、例えば、温度センサ55から出力される検知信号に基づいて、温度Tを特定する。例えば、制御装置50は、
図9(E)の関係に従って、温度Tが低いほど係数α
Nを大きくし、温度Tが高いほど係数α
Nを小さくすればよい。
【0072】
第3実施形態によれば、射出成形機10の動作パラメータに応じて係数αを調整することができるので、誤差Dの発散を防止すると共に、指令値Bを最適化する処理の応答性の低下を防止することができる。
【0073】
より詳細には、
図9(A)及び(B)によれば、ロータリーテーブル22の慣性が大きいほど指令値B
N+1の変動を緩やかにすることができ、ロータリーテーブル22の慣性が小さいほど指令値B
N+1の変動を急峻にすることができる。
【0074】
また、ロータリーテーブル22に給脂したグリースは、ステップS12の実行回数Nが多くなるほど劣化して、ロータリーテーブル22の回転抵抗を大きくする。そこで、
図9(C)によれば、回転抵抗の増加に伴って係数αを大きくすることによって、指令値Bを最適化する処理の応答性の低下を防止することができる。
【0075】
さらに、自動処理中のショット数Nが大きくなるほど(すなわち、温度が高くなるほど)、グリースの粘度が低くなって、ロータリーテーブル22の回転抵抗が小さくなる。そこで、
図9(D)及び(E)によれば、回転抵抗の減少に伴って係数αを小さくすることによって、誤差Dの発散を防止することができる。
【0076】
なお、パラメータに対する係数αの変動は、三段階に限定されない。また、
図9(A)~(E)それぞれの横軸に記載した数値の絶対値は、これに限定されない。また、
図9(A)~(E)の1つを用いて係数αを決定することに限定されず、2以上を組み合わせて係数αを決定してもよい。また、係数αは、階段状に上下するだけでなく、上下に変動してもよい。さらに、第2実施形態に係る係数αの決定方法と、第3実施形態に係る係数αの決定方法とを組み合わせてもよい。
【0077】
また、重量M、回転速度V、グリースを給脂してからのステップS12の実行回数N、ショット数N、温度Tと、係数αNとの関係は、前述の例に限定されない。すなわち、制御装置50は、重量M、回転速度V、グリースを給脂してからのステップS12の実行回数N、ショット数N、温度Tに応じて、係数αNを決定すればよい。さらに、制御装置50は、前述した複数のパラメータのうちから選択された2以上のパラメータに基づいて、係数αNを決定してもよい。
【0078】
なお、本発明は、竪型の射出成形機10に限定されず、横型の射出成形機にも適用することができる。また、本発明は、回転する第2プレートの停止制御のみならず、平行移動(往復動)する第2プレートの停止制御にも適用することができる。また、移動手段及び開閉手段は、電動モータに限定されず、油圧モータ、油圧シリンダ、エアシリンダ等であってもよい。さらに、成形機の具体例は射出成形機に限定されず、溶湯金属(成形材料)を金型に射出して、成形品を成形するダイカストマシンにも本発明を適用することができる。
【0079】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
10…射出成形機(成形機)、11…金型、12…上側金型(第1金型)、13…下側金型(第2金型)、14…キャビティ、15a,15b…位置決め突起、16a,16b…位置決め凹部、20…型締装置、21…可動ダイプレート(第1プレート)、21a,22a,22b…マグクランプ、22…ロータリーテーブル(第2プレート)、23…テーブル回転モータ(移動手段)、24…開閉モータ(開閉手段)、30…射出装置、31…加熱シリンダ、32…ノズル、33…ノズルタッチモータ、50…制御装置、51…CPU、52…ROM、53…RAM、54…表示入力装置、55…温度センサ、56…サーボアンプ、57…ロータリエンコーダ(位置センサ)