IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図1
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図2
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図3
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図4
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図5
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図6
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図7
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図8
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図9
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図10
  • 特許-空調制御装置及び空調機の制御方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】空調制御装置及び空調機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20240708BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240708BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020099544
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193324
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋人
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-336887(JP,A)
【文献】特開2000-304329(JP,A)
【文献】特開2002-071192(JP,A)
【文献】特開2019-101847(JP,A)
【文献】特開平08-100959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0353384(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御する空調制御装置において、
前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出し、
前記指標値の移動平均値を算出し、
移動平均値制御ゲイン補正量変換関数を用いて前記指標値の前記移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換し、
前記制御ゲイン補正量により前記フィードバック制御の制御ゲインを補正すること、
を特徴とする空調制御装置。
【請求項2】
空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御する空調制御装置において、
前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出し、
前記指標値の移動平均値を算出し、
移動平均値室温目標値補正量変換関数を用いて前記指標値の移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の室温目標値補正量に変換し、
前記室温目標値補正量により前記フィードバック制御の室温目標値を補正すること、
を特徴とする空調制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空調制御装置であって、
前記空調機は、外気ダンパと、ファンと、前記ファンを駆動するインバータ装置と、加湿器とを含み、
前記外乱事象は、
前記外気ダンパの開度の変動、前記インバータ装置の出力の変動、前記加湿器の動作状態の変動、外気温の変動、前記空調空間に出入りするドアの開閉、前記空調空間の在室人数の変動のいずれか1つ又は複数であること、
を特徴とする空調制御装置。
【請求項4】
空調空間の室温を調整する空調機の制御方法であって、
前記空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御している際に、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、
前記外乱事象の指標値を算出する第1ステップと、
前記指標値の移動平均値を算出する第2ステップと、
移動平均値制御ゲイン補正量変換関数を用いて前記指標値の前記移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換する第3ステップと、
前記制御ゲイン補正量により前記フィードバック制御の制御ゲインを補正する第4ステップと、
を含むことを特徴とする空調機の制御方法。
【請求項5】
空調空間の室温を調整する空調機の制御方法であって、
前記空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御している際に、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、
前記外乱事象の指標値を算出する第1ステップと、
前記指標値の移動平均値を算出する第2ステップと、
移動平均値室温目標値補正量変換関数を用いて前記指標値の移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の室温目標値補正量に変換する第5ステップと、
前記室温目標値補正量により前記フィードバック制御の室温目標値を補正する第6ステップと、
を含むことを特徴とする空調機の制御方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の空調機の制御方法であって、
前記空調機は、外気ダンパと、ファンと、前記ファンを駆動するインバータ装置と、加湿器とを含み、
前記外乱事象は、
前記外気ダンパの開度の変動、前記インバータ装置の出力の変動、前記加湿器の動作状態の変動、外気温の変動、前記空調空間に出入りするドアの開閉、前記空調空間の在室人数の変動のいずれか1つ又は複数であること、
を特徴とする空調機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機を制御する空調制御装置並びに空調機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機では、室温と目標温度との偏差に基づくフィードバック制御によりコンプレッサの回転数を調整すると共に、外気温の変動が発生した場合に外気温の変化に基づくフィードフォワード制御を行い外気温の変化に対して室温の変化を抑制する制御方法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、加湿器を備える空調機において、加湿器のオン/オフによる室温の変動を抑制するために、加湿器が起動した際にフィードフォワード制御によって温水供給量を増加させて室温の変動を抑制する制御方法が用いられている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-304329号公報
【文献】特開2003-336887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術のフィードフォワード制御では、外気温の変化等の外乱が大きい場合には、フィードフォワード制御がフィードバック制御の外乱となってしまい、室温の変化が大きくなってしまう場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、空調機の制御に対する外乱事象が発生した場合の室温の変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の空調制御装置は、空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御する空調制御装置において、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出し、前記指標値の移動平均値を算出し、移動平均値制御ゲイン補正量変換関数を用いて前記指標値の前記移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換し、前記制御ゲイン補正量により前記フィードバック制御の制御ゲインを補正すること、を特徴とする。
【0008】
本発明の空調制御装置は、空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御する空調制御装置において、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出し、前記指標値の移動平均値を算出し、移動平均値室温目標値補正量変換関数を用いて前記指標値の移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の室温目標値補正量に変換し、前記室温目標値補正量により前記フィードバック制御の室温目標値を補正すること、を特徴とする。
【0009】
これにより、大きな外乱事象が発生した場合でも室温の変動を抑制することができる。
【0010】
本発明の空調制御装置において、前記空調機は、外気ダンパと、ファンと、前記ファンを駆動するインバータ装置と、前記加湿器とを含み、前記外乱事象は、前記外気ダンパの開度の変動、前記インバータ装置の出力の変動、加湿器の動作状態の変動、外気温の変動、前記空調空間に出入りするドアの開閉、前記空調空間の在室人数の変動のいずれか1つ又は複数でもよい。
【0011】
これにより、様々な外乱事象が発生した場合でも室温の変動を抑制することができる。
【0012】
本発明の空調機の制御方法は、空調空間の室温を調整する空調機の制御方法であって、前記空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御している際に、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出する第1ステップと、前記指標値の移動平均値を算出する第2ステップと、移動平均値制御ゲイン補正量変換関数を用いて前記指標値の前記移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換する第3ステップと、前記制御ゲイン補正量により前記フィードバック制御の制御ゲインを補正する第4ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の空調機の制御方法は、空調空間の室温を調整する空調機の制御方法であって、前記空調空間の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機をフィードバック制御している際に、前記フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、前記外乱事象の指標値を算出する第1ステップと、前記指標値の移動平均値を算出する第2ステップと、移動平均値室温目標値補正量変換関数を用いて前記指標値の移動平均値を前記外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺する前記フィードバック制御の室温目標値補正量に変換する第5ステップと、前記室温目標値補正量により前記フィードバック制御の室温目標値を補正する第6ステップと、を含むことを特徴とする。

【0014】
これにより、大きな外乱事象が発生した場合でも室温の変動を抑制することができる。
【0015】
本発明の空調機の制御方法において、前記空調機は、外気ダンパと、ファンと、前記ファンを駆動するインバータ装置と、加湿器とを含み、前記外乱事象は、前記外気ダンパの開度の変動、前記インバータ装置の出力の変動、前記加湿器の動作状態の変動、外気温の変動、前記空調空間に出入りするドアの開閉、前記空調空間の在室人数の変動のいずれか1つ又は複数でもよい。
【0016】
これにより、様々な外乱事象が発生した場合でも室温の変動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、空調機の制御に対する外乱事象が発生した場合の室温の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の空調制御装置を用いた空調システムの構成を示す系統図である。
図2】実施形態の空調制御装置の制御ブロック図である。
図3図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に加湿器が停止状態から動作状態となった場合の加湿器動作値と、加湿器動作値の移動平均値と、重み付き制御ゲイン補正量との時間変化を示すグラフである。
図4図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に加湿器が停止状態から動作状態となった場合の制御に用いる変換関数と、ウェイト関数とを示す図である。
図5図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に加湿器が停止状態から動作状態となった場合のヒータコア出口空気温度と、室温と、室温PIDブロックの制御ゲインと、重み付き制御ゲイン補正量と、温水流量調節弁の開度との変化を示すタイムチャートである。
図6図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に外気ダンパの開度が変化した場合の外気ダンパ開度と、外気ダンパ開度の移動平均値と、重み付き制御ゲイン補正量との時間変化を示すグラフである。
図7図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に外気ダンパの開度が変化した場合の制御に用いる変換関数と、ウェイト関数とを示す図である。
図8図1に示す空調システムにおいて、冷房運転中に外気温が上昇した場合の単位時間当たりの外気温の差と、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値と、重み付き制御ゲイン補正量との時間変化を示すグラフである。
図9図1に示す空調システムにおいて、冷房運転中に外気温が変動した場合の制御に用いる変換関数と、ウェイト関数とを示す図である。
図10図1に示す空調システムにおいて、暖房運転中に外気温が変動した場合の制御に用いる変換関数を示す図である。
図11】他の実施形態の空調制御装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら実施形態の空調制御装置60について説明する。最初に図1を参照しながら実施形態の空調制御装置60を用いた空調システム100について説明する。空調システム100は、空調空間であるビルの部屋50の室温が室温目標値となるように調整するものである。図1に示すように、空調システム100は、空調機10と、空調制御装置60とを備えている。
【0020】
空調機10は、ファン11と、クーラコア12と、ヒータコア13と、加湿器14と、外気導入ダクト31と、空調機給気ダクト32と、部屋給気ダクト33と、還気ダクト34と、循環ダクト35と、排気ダクト36と、外気ダンパ37と、還気ダンパ39と、排気ダンパ41と、を備えている。
【0021】
ファン11はインバータ装置16によって回転数が制御されるモータ15で駆動される。クーラコア12は、チラー17で生成した冷水が流れる熱交換器であり、冷水によって部屋50に流入する空気を冷却する。チラー17とクーラコア12との間の冷水配管には、クーラコア12に流入する冷水の流量を調節する冷水流量調節弁18が設けられている。ヒータコア13は、ボイラ20で生成した温水によって部屋50に流入する空気を加温する熱交換器である。ボイラ20とヒータコア13との間の温水配管には、ヒータコア13に流入する温水の流量を調節する温水流量調節弁21が設けられている。加湿器14は、部屋50に流入する空気に水を噴霧して空気の湿度を上げる水の噴霧器である。加湿器14に噴霧用の水を供給する給水配管には、噴霧水の流量を調節する噴霧水流量調節弁23が設けられている。
【0022】
外気導入ダクト31は一端が大気に開放されており、外気を導入するダクトである。空調機給気ダクト32は、外気導入ダクト31の下流側と空調機10とを接続するダクトであり、空調機10に空気を導入するダクトである。部屋給気ダクト33は、空調機10で冷却、加温、或いは加湿された空気を部屋50に導入するダクトである。還気ダクト34は、部屋50から空気を流出させるダクトである。循環ダクト35は、還気ダクト34の下流端と空調機給気ダクト32の上流端とを接続し、部屋50から還気ダクト34に流出した空気を空調機10に循環させるダクトである。排気ダクト36は、還気ダクト34に接続されて一端が大気に開放されたダクトであり、部屋50から流出した空気の一部又は全部を大気に排気するダクトである。
【0023】
循環ダクト35には、空調機10と部屋50との間を循環する空気の流量を調整する還気ダンパ39が取付けられている。外気導入ダクト31には、空調機10を通して部屋50に導入する外気の流量を調整する外気ダンパ37が取付けられている。また、排気ダクト36には、外気ダンパ37を通して導入した空気量と同一量の空気を外気に排出する排気ダンパ41が取付けられている。
【0024】
部屋給気ダクト33には、空調機10から部屋50に給気される空気の給気温度を検出する給気温度センサ43が取付けられている。また、部屋50には部屋50の室温を検出する室温センサ54と、部屋50の二酸化炭素濃度を検出するCO2センサ55と、部屋50の湿度を測定する湿度センサ56とが取付けられている。部屋50には部屋50に出入りするドア51が取付けられている。ドア51には、ドア51の開閉状態を検出するドア開閉センサ52が取付けられている。また、ドア51の近くの部屋50の外側には、入退出システムのカードリーダ53が取付けられている。
【0025】
空調制御装置60は、コントローラ61と、コントローラ61に制御条件等を入力する入力装置62とで構成されている。コントローラ61は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU63と制御プログラムや制御用データが格納されているメモリ64とを含むコンピュータである。入力装置62は、例えば、キーボードやマウスでもよい。メモリ64の中には、後で説明する変換関数ブロック83,93,98とウェイト関数ブロック84,94,99に用いる関数が格納されている。
【0026】
給気温度センサ43と、室温センサ54と、CO2センサ55と、湿度センサ56と、ドア開閉センサ52と、カードリーダ53とはコントローラ61に接続されており、給気温度センサ43で測定した給気温度測定値と、室温センサ54で測定した室温測定値と、CO2センサ55で検出したCO2濃度測定値と、湿度センサ56とで測定した湿度測定値とはコントローラ61に入力される。また、ドア開閉センサ52で検出したドア51の開閉状態信号もコントローラ61に入力される。また、カードリーダ53もコントローラ61に接続されており、コントローラ61は、カードリーダ53からの入力に基づいて、部屋50の中の在籍人数を算出する。
【0027】
空調機10のファン11のモータ15を駆動するインバータ装置16と、冷水流量調節弁18、温水流量調節弁21、噴霧水流量調節弁23の各開度を調整するモータ19,22,24はコントローラ61に接続されてコントローラ61からの指令によって動作する。同様に、外気ダンパ37、還気ダンパ39、排気ダンパ41の開度を調整する各モータ38,40,42もコントローラ61に接続されており、コントローラ61の指令によって動作する。
【0028】
空調システム100は、部屋50から還気ダクト34、循環ダクト35、空調機給気ダクト32を通して空調機10に流入した空気をクーラコア12で冷却、或いは、ヒータコア13で加温し、部屋給気ダクト33から部屋50に循環させる。コントローラ61は、室温センサ54で測定した室温測定値と室温目標値とが一致するようにフィードバック制御で冷水流量調節弁18又は温水流量調節弁21の開度を調節し、クーラコア12に供給する冷水の流量又はヒータコア13に供給する温水の流量を調節する。
【0029】
また、空調システム100は、部屋50のCO2濃度が高くなった場合には外気ダンパ37と排気ダンパ41の開度を大きくし、還気ダンパ39の開度を小さくして、外気を循環空気の中に取り入れると共に、取り入れた空気と同量の空気を排気ダクト36から大気に排気する。
【0030】
また、暖房運転の際に部屋50の湿度センサ56測定した部屋50の湿度測定値が低下した場合には、噴霧水流量調節弁23を開として水を加湿器14に導入し、加湿器14から部屋50への給気の中に水を噴霧して湿度を上昇させる。
【0031】
次に図2を参照しながら、空調制御装置60の室温制御の制御ブロックについて説明する。各制御ブロックは、コントローラ61のCPU63がメモリ64に格納されている動作プログラムを実行することにより実現できる。図2に示すように、空調制御装置60は、室温PIDブロック71と、加算器72,87と、外乱指標値ブロック81,91と、平均化処理ブロック82,92と、変換関数ブロック83,93と、ウェイト関数ブロック84,94と、制御許可状態判別ブロック85,95と、空調機状態判別ブロック86,96とを含んでいる。
【0032】
室温PIDブロック71は、室温センサ54で測定した室温測定値が入力され、室温測定値と室温目標値とが一致するようにフィードバック制御によって冷水流量調節弁18又は温水流量調節弁21の開度を調整する制御ゲインを生成する。
【0033】
外乱指標値ブロック81,91は、外気ダンパ37の開度の変動、ファン11の駆動用のインバータ装置16出力の変動、加湿器14状態の変動、外気温の変動、ドア51の開閉、部屋50在室人数の変動等の外乱事象にそれぞれ対応する各指標値を算出する。
【0034】
平均化処理ブロック82は、外乱指標値ブロック81,91が算出した指標値の移動平均値を計算する。
【0035】
変換関数ブロック83,93は、平均化処理ブロック82,92が算出した移動平均値を変換関数によって外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺するフィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換する。変換関数は、コントローラ61のメモリ64の中に格納されている。
【0036】
ウェイト関数ブロック84,94は、変換関数ブロック83,93によって変換された制御ゲイン補正量に時間変化するウェイトを掛けて重み付き制御ゲイン補正量を算出する。ウェイト関数ブロック84,94の関数はコントローラ61のメモリ64に格納されている。
【0037】
入力装置62からの入力に基づいて、制御許可状態判別ブロック85,95は、その外乱に対応するフィードフォワード制御の追加を許可するかどうかを判別する。また、空調機状態判別ブロック86,96は、入力装置62からの入力に基づいて空調機10が運転されているかどうかを判別する。フィードフォワード制御が許可されており、空調機10が運転状態の場合には、制御許可状態判別ブロック85,95、空調機状態判別ブロック86,96はオンになっている。
【0038】
加算器87は、ウェイト関数ブロック84,94によって算出された重み付き制御ゲイン補正量を加算して合計制御ゲイン補正量とする。
【0039】
加算器72は、合計制御ゲイン補正量を室温PIDが出力するフィードバック制御の制御ゲインに合計制御ゲイン補正量を加算する。
【0040】
次に図3~5を参照しながら外乱事象の例として暖房中に加湿器14の運転が停止状態から動作状態に変更された場合の空調制御装置60の動作について説明する。図3に示すように、時刻t0までの間、加湿器14は停止状態で空調機10は暖房運転している。部屋50に取付けた湿度センサ56で測定した湿度が低くなると、時刻t0に加湿器14が運転状態となる。加湿器14が運転されると、部屋50への給気の中に水が噴霧されるので、フィードバック制御のみでは室温が一旦低下する。空調制御装置60は、以下のようなフィードフォワード制御によって室温の低下を抑制する。
【0041】
加湿器14の運転が停止状態から動作状態に変更された場合には、図2に示す外乱指標値ブロック81、平均化処理ブロック82、変換関数ブロック83、ウェイト関数ブロック84、制御許可状態判別ブロック85、空調機状態判別ブロック86によって重み付き制御ゲイン補正量を算出してフィードバック制御の制御ゲインに加算する。
【0042】
外乱指標値ブロック81は、加湿器状態の変更という外乱事象に対する指標値として加湿器動作値を出力する。図3(a)の線a1に示すように、加湿器動作値は、加湿器14が停止している場合には0、加湿器14が動作している場合には1となる。従って、時刻t0に加湿器14が停止状態から動作状態となると、外乱指標値ブロック81の出力する加湿器動作値は0から1になる。
【0043】
平均化処理ブロック82は、外乱指標値ブロック81から入力された加湿器動作値の移動平均値を算出する。移動平均値は、例えば、30秒から1分程度の移動時間平均値でもよい。図3の(b)の線b1に示すように、加湿器動作値の移動平均値は、時刻t0の0から次第に大きくなり、時刻t1には1になる。
【0044】
変換関数ブロック83には、平均化処理ブロック82が算出した加湿器動作値の移動平均値を室温測定値の変動を相殺するフィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換する関数が格納されている。図4に示すように、関数は、加湿器動作値の移動平均値が0の場合は0で、0を超えると、一定の定数となっている。従って、変換関数ブロック83が出力する制御ゲイン補正量は、加湿器動作値の移動平均値に比例した数値となる。
【0045】
ウェイト関数ブロック84は、図4に示すように時刻t0から時刻t11までの所定時間の間は、1.0のウェイトを制御ゲイン補正量に掛け、時刻t11以降は、次第にウェイトを小さくし、時刻t12には0となる関数である。図4に示す時刻t0からt11までの期間は、図3の(c)に示す時刻t0からt2までの期間に相当し、図4に示す時刻t11からt12までの期間は、図3の(c)に示す時刻t2からt3の期間に相当する。従って、ウェイト関数ブロック84は、図3の(c)の線g1に示すように、時刻t0から時刻t2までは、変換関数ブロック83の出力した制御ゲイン補正量を重み付き制御ゲイン補正量として出力し、図3の(c)に示す時刻t2以降は、変換関数ブロック83の出力した制御ゲイン補正量を低減して重み付き制御ゲイン補正量として出力する。そして、図3の(c)に示す時刻t3以降は重み付き制御ゲイン補正量の出力は0となる。
【0046】
フィードフォワード制御が許可されており、空調機10が運転状態なので制御許可状態判別ブロック85、空調機状態判別ブロック86はオンとなっている。従って図3の(c)に示す重み付き制御ゲイン補正量は加算器72で室温PIDから出力されたフィードバック制御の制御ゲインに加算される。そして、加算された制御ゲインを用いて温水流量調節弁21のモータ22を調整して温水流量調節弁21の開度が調整される。
【0047】
図5の線f1に示すように、時刻t0に加湿器14が停止状態から動作状態となると、噴霧水が部屋50に流入する給気に噴射される。すると、図5の線f5に示すように、時刻t0から時刻t1の間、重み付き制御ゲイン補正量が増加する。この重み付き制御ゲイン補正量は、室温PIDブロック71から出力されるフィードバック制御の制御ゲインに加算されて温水流量調節弁21のモータ22を調整する。これにより、図5の線f6に示すように、時刻t0から時刻t1までの間、温水流量調節弁21の開度が大きくなる。すると、ヒータコア13に流入する温水の流量が増加し、図5の線f2に示すように時刻t0から時刻t1の間、ヒータコア13の出口の空気温度は次第に高くなる。ヒータコア13を出た空気には加湿器14で噴霧水が噴霧されて少し温度が下がってから部屋50に流入する。このため、図5の線f3に示すように加湿器14が停止状態から動作状態となった場合でも、部屋50の温度が低下することを抑制できる。
【0048】
図5の線f3に示すように時刻t1以降、室温が少しずつ上昇してくる。これにより、図5の線f4に示すように、室温PIDブロック71が出力するフィードバック制御の制御ゲインが小さくなってくる。一方、図5の線f5に示すように重み付き制御ゲイン補正量は一定なので、フィードバック制御の制御ゲインと重み付き制御ゲイン補正量の合計は小さくなり、図5の線f6に示すように、温水流量調節弁21の開度は小さくなるが、時刻t0よりも開度が大きくなっている状態を維持しており、室温の低下を抑制している。
【0049】
そして、図5の線f5に示すように、時刻t2からt3にかけて重み付き制御ゲイン補正量は小さくなって時刻t3には0となりフィードフォワード制御が終了する。その後、室温PIDブロック71によるフィードバック制御によって温水流量調節弁21の開度が調整され、室温の制御が行われる。
【0050】
以上説明したように、実施形態の空調制御装置60は、暖房運転中に加湿器14が停止状態から動作状態となった場合でも室温低下を抑制することができる。
【0051】
次に図6図7を参照して暖房運転中に外気ダンパ37の開度が大きくなった場合の動作について説明する。空調システム100は、暖房運転中には、通常、外気ダンパ37と排気ダンパ41の開度を20%、還気ダンパ39の開度を80%としている。部屋50に取付けたCO2センサ55によって部屋50のCO2濃度が高くなると、コントローラ61は、図6の(a)に示す時刻t0に外気ダンパ37の開度と排気ダンパ41の開度を20%から40%に大きくし、還気ダンパ39の開度を80%から60%に小さくする。これにより、流入する外気流量が多くなるのでフィードバック制御のみでは室温が一旦低下する。空調制御装置60は、以下のようなフィードフォワード制御によって室温の低下を抑制する。
【0052】
外気ダンパ37の開度が変更された場合には、図2に示す外乱指標値ブロック91、平均化処理ブロック92、変換関数ブロック93、ウェイト関数ブロック94、制御許可状態判別ブロック95、空調機状態判別ブロック96によって重み付き制御ゲイン補正量を算出してフィードバック制御の制御ゲインに加算する。
【0053】
外乱指標値ブロック91は、外気ダンパ37の開度の変更という外乱事象に対する指標値として外気ダンパ37の開度を出力する。図6の(a)の線a2に示すように、外気ダンパ37の開度は、時刻t0までは、基本設定値の20%、時刻t0以降は、40%となる。
【0054】
平均化処理ブロック92は、平均化処理ブロック82と同様、図6の(b)の線b2に示すように外乱指標値ブロック91から入力された外気ダンパ37の開度の移動平均値を計算する。
【0055】
変換関数ブロック93には、図7に示すような外気ダンパ37の開度の移動平均値に対する制御ゲイン補正量の変換関数が格納されている。図7に示す変換関数は、基本設定の20%の場合が0で開度が大きくなるに従って直線的に大きくなる。
【0056】
ウェイト関数ブロック94は、ウェイト関数ブロック84と同様、時刻t0から時刻t13までの所定時間の間は、1.0のウェイトを制御ゲイン補正量に掛け、時刻t13以降は、次第にウェイトを小さくし、時刻t14にはゼロとなる関数である。ここで、図7に示す時刻t0からt13までの期間は、図6の(c)に示す時刻t0からt4までの期間に相当し、図7に示す時刻t13からt14までの期間は、図6の(c)に示す時刻t5からt6の期間に相当する。
【0057】
また、制御許可状態判別ブロック95、空調機状態判別ブロック96はオンとなっている。
【0058】
先に図5を参照して説明した加湿器14の動作開始の場合と同様、時刻t0に外気ダンパ37の開度が変更されて外気の流入量が多くなると、時刻t4までの間、図6の(c)の線g2に示すように、重み付き制御ゲイン補正量が増加し、温水流量調節弁21のモータ22を調整する制御ゲインが大きくなる。これにより、時刻t0から時刻t4までの間、温水流量調節弁21の開度が大きくなる。その後、時刻t4から時刻t5までの間、重み付き制御ゲイン補正量は一定で温水流量調節弁21の開度が大きくなった状態が維持される。これにより、外気ダンパ37の開度が変更されて外気の流入量が多くなった場合でも、部屋50の室温が低下することを抑制できる。
【0059】
そして、時刻t6に重み付き制御ゲイン補正量が0となるとフィードフォワード制御を終了する。
【0060】
以上説明したように、実施形態の空調制御装置60は、暖房運転中に外気ダンパ37の開度が変更されて外気の流入量が多くなった場合でも室温低下を抑制することができる。
【0061】
以上の説明では、加湿器14が停止状態から動作状態となった場合と、外気ダンパ37の開度が変更された場合について別々に説明したが、これら2つの外乱事象が同時に発生した場合には、それぞれに対応する重み付き制御ゲイン補正量は図2に示す加算器87で加算されて合計制御ゲイン補正量が室温PIDブロック71から出力されるフィードバック制御の制御ゲインに加算される。このため、複数の外乱事象が発生した場合でも室温の変動を効果的に抑制することができる。
【0062】
次に図8図9を参照しながら冷房運転中に外気温が急に上昇した場合の空調制御装置60のフィードフォワード制御について説明する。
【0063】
図8の(a)の線a3に示すように、外乱指標値ブロック(図示せず)は外気温の変動があった場合には、単位時間当たりの外気温の差を指標値として出力する。例えば、所定の時間間隔Δtごとに外気温を測定し、その差分を指標値として出力する。そして平均化処理ブロック(図示せず)は、図8の(b)の線b3に示すように単位時間当たりの外気温の差の移動平均値を出力する。
【0064】
図9に示すように、変換関数ブロック98には、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値に対する制御ゲイン補正量の変換関数が格納されている。図9に示すように、変換関数は、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値がプラス方向に増加するとプラス側に大きくなり、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値がマイナス側に増加するとマイナス側に大きくなる直線となっている。ウェイト関数ブロック99は、先に説明したウェイト関数ブロック84と同様、時刻t0から時刻t15までの所定時間の間は、1.0のウェイトを制御ゲイン補正量に掛け、時刻t15以降は、次第にウェイトを小さくし、時刻t16にはゼロとなる関数である。ここで、図9に示す時刻t0からt15までの期間は、図8の(c)に示す時刻t0からt7までの期間に相当し、図9に示す時刻t15からt16までの期間は、図8の(c)に示す時刻t7からt8の期間に相当する。
【0065】
図8の(a)に示すように、外気温が上昇する変動が発生し、時刻t0に単位時間当たりの外気温の差がプラス方向に大きくなると、時刻t7までの間、図8の(c)の線g3に示すように、重み付き制御ゲイン補正量が増加し、冷水流量調節弁18のモータ19を調整する制御ゲインが大きくなる。これにより、時刻t0から時刻t7までの間、冷水流量調節弁18の開度が大きくなる。その後、時刻t7から時刻t8までの間、重み付き制御ゲイン補正量が低下し、時刻t8には重み付き制御ゲインはゼロとなり、フィードフォワード制御は終了する。
【0066】
また、冷房運転中に外気温が低下する変動があった場合には、上記と逆に重み付き制御ゲイン補正量がマイナスとなり、冷水流量調節弁18のモータ19を調整する制御ゲインが低下して室温の上昇を抑制する。
【0067】
これにより、実施形態の空調制御装置60は、冷房運転中に外気温の変動があった場合でも室温の上昇を抑制することができる。
【0068】
以上の説明では、冷房運転中に外気温が上昇した場合にフィードフォワード制御により冷水流量調節弁18の開度を大きくして室温の上昇を抑制する場合について説明したが、暖房運転の場合は、図10に示すような関数を用いて、外気温が上昇した場合に温水流量調節弁21の開度を小さくし、外気温が低下した場合には、温水流量調節弁21の開度を大きくするようにする。
【0069】
図10に示す関数は、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値がプラス方向に増加するとマイナス側に大きくなり、単位時間当たりの外気温の差の移動平均値がマイナス側に増加するとプラス側に大きくなる直線となっている。これにより、暖房運転中に外気温が低下する変動が発生した場合には、重み付き制御ゲイン補正量が大きくなり、温水流量調節弁21の開度が大きくなって室温の低下を抑制する。また、暖房運転中に温度が上昇する変動があった場合には、温水流量調節弁21の開度を小さくして室温の上昇を抑制することができる。
【0070】
以上、外乱事象として加湿器14が停止状態から動作状態となった場合と、外気ダンパ37の開度が変更された場合と、外気温が変動する場合とを例として説明したが、これに限らず、ファン11の駆動用のインバータ装置16の出力の変動、部屋50のドア51の開閉、部屋50の在室人数、日射量の変動などについても適用することができる。
【0071】
インバータ装置16の出力変動に対するフィードフォワード制御では、外気温の変動の場合と同様、単位時間当たりのインバータ装置16の出力の差を指標値とし、変換関数として図10と同様、単位時間当たりのインバータ装置16の出力差の移動平均値がプラス方向に増加するとマイナス側に大きくなり、マイナス側に増加するとプラス側に大きくなる直線を用いる。これにより、インバータ装置16の出力が増加して風量が増えた場合に冷水流量調節弁18又は温水流量調節弁21の開度を小さくし、インバータ装置16の出力が低下して風量が減少した場合に冷水流量調節弁18又は温水流量調節弁21の開度を大きくして部屋50の室温の変化を抑制することができる。
【0072】
また、部屋50の在室人数の変動に対するフィードフォワード制御では、外気温の変動の場合と同様、単位時間当たりの在室人数の差を指標値とし、冷房運転時には、変換関数として図9と同様、単位時間当たりの在室人数の差の移動平均値がプラス方向に増加するとプラス側に大きくなり、マイナス側に増加するとマイナス側に大きくなる直線を用いる。これにより、冷房運転中に在室人数が増加した場合には、冷水流量調節弁18の開度を大きくして室温の上昇を抑制できる。また、暖房運転の場合は、変換関数として図10と同様、単位時間当たりの在室人数の差の移動平均値がプラス方向に増加するとマイナス側に大きくなり、マイナス側に増加するとプラス側に大きくなる直線を用いる。これにより、暖房運転中に在室人数が増加した場合には、温水流量調節弁21の開度を小さくして室温の上昇を抑制できる。
【0073】
また、部屋50のドア51の開閉に対するフィードフォワード制御では、ドア開閉センサ52によりドア51の開閉状態を取得し、加湿器14の運転状態の変動の場合と同様、指標値としドア51が閉の場合には0、開の場合には1となるドア開閉動作値を用いる。また、変換関数として図4と同様、ドア開閉動作値の移動平均値が0の場合は0で、0を超えると、一定の定数となる関数を用いる。これによって、ドア51が開放された場合には、冷水流量調節弁18又は温水流量調節弁21の開度が大きくなり、ドア51の開閉による室温の変動を抑制することができる。
【0074】
また、日射量の変動に対するフィードフォワード制御では、外気温の変動の場合と同様、単位時間当たりの日射の差を指標値とし、冷房運転の際には、図9と同様の直線の単位時間当たりの日射量の差の移動平均値に対する制御ゲイン補正量の関数を用い、暖房運転の際には、図10と同様の直線の時間当たりの日射の差の移動平均値に対する制御ゲイン補正量の関数を用いる。これにより、日射量の変化による室温の変動を抑制することができる。
【0075】
次に図11を参照しながら他の実施形態の空調制御装置160について説明する。先に図1から図10を参照して説明した部位には同様の符号を付して説明は省略する。
【0076】
図11に示す様に、空調制御装置160は、図2を参照して説明した空調制御装置60の変換関数ブロック83,93を外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺するフィードバック制御の室温目標値補正量に変換する変換関数ブロック183,193としたものである。変換関数ブロック183,193は、平均化処理ブロック82,92が算出した移動平均値を室温目標値補正量に変換する。そして、ウェイト関数ブロック84,94は変換関数ブロック183,193から入力された室温目標値補正量を重み付き室温目標値補正量として出力する。そして、重み付き室温目標値補正量をフィードバック制御の室温目標値に加算して室温PIDブロック71に入力する。
【0077】
これ以外の制御ブロックは図2を参照して説明した空調制御装置60の制御ブロックと同様である。図11に示す空調制御装置160は、先に図2を参照して説明した空調制御装置60と同様の動作を行い、同様の効果を奏する。
【0078】
以上の説明では、コントローラ61は、CPU63とメモリ64とを含むコンピュータであり、各制御ブロックは、CPU63がメモリ64に格納された動作プログラムを実行することで実現できるとして説明した。この場合、プロセッサであるCPU63は、部屋50の室温測定値と室温目標値とが一致するように空調機10をフィードバック制御している際に、フィードバック制御に対する外乱事象が発生した場合に、外乱事象の指標値を算出する第1ステップと、指標値の移動平均値を算出する第2ステップと、変換関数を用いて指標値の移動平均値を外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺するフィードバック制御の制御ゲイン補正量に変換する第3ステップと、制御ゲイン補正量によりフィードバック制御の制御ゲインを補正する第4ステップと、を実行する。また、図11に示す制御ブロックの場合には、CPU63は、第3ステップと第4ステップとに代えて他の変換関数を用いて指標値の移動平均値を外乱事象によって発生する室温測定値の変動を相殺するフィードバック制御の室温目標値補正量に変換する第5ステップと、室温目標値補正量によりフィードバック制御の室温目標値を補正する第6ステップと、を実行する。
【0079】
なお、各制御ブロックをコンピュータによって構成せず、電気回路を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 空調機、11 ファン、12 クーラコア、13 ヒータコア、14 加湿器、15 モータ、16 インバータ装置、17 チラー、18 冷水流量調節弁、19,22,24,38,40,42 モータ、20 ボイラ、21 温水流量調節弁、23 噴霧水流量調節弁、31 外気導入ダクト、32 空調機給気ダクト、33 部屋給気ダクト、34 還気ダクト、35 循環ダクト、36 排気ダクト、37 外気ダンパ、39 還気ダンパ、41 排気ダンパ、43 給気温度センサ、50 部屋、51 ドア、52 ドア開閉センサ、53 カードリーダ、54 室温センサ、55 CO2センサ、56 湿度センサ、60,160 空調制御装置、61 コントローラ、62 入力装置、63 CPU、64 メモリ、71 室温PIDブロック、72,87 加算器、81,91 外乱指標値ブロック、82,92 平均化処理ブロック、83,93,98,183,193 変換関数ブロック、84,94,99 ウェイト関数ブロック、85,95 制御許可状態判別ブロック、86,96 空調機状態判別ブロック、100 空調システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11