IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 蛇の目ミシン工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-プレス装置 図1
  • 特許-プレス装置 図2
  • 特許-プレス装置 図3
  • 特許-プレス装置 図4
  • 特許-プレス装置 図5
  • 特許-プレス装置 図6
  • 特許-プレス装置 図7
  • 特許-プレス装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】プレス装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/00 20060101AFI20240708BHJP
   B30B 15/28 20060101ALI20240708BHJP
   B30B 1/18 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
B30B15/00 B
B30B15/28 A
B30B1/18 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020110688
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022022559
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】株式会社ジャノメ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】野口 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】真船 潤
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-121464(JP,A)
【文献】特開2018-094567(JP,A)
【文献】特開2006-184153(JP,A)
【文献】特開平05-285555(JP,A)
【文献】特開2002-333374(JP,A)
【文献】特開2016-209886(JP,A)
【文献】特開平11-160228(JP,A)
【文献】実開平01-080300(JP,U)
【文献】特開2019-171393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B30B 15/00
B30B 15/28
B30B 1/18
G01L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部によって下方向へ移動してワークに加圧作業するラムと、
前記ラムの下端部に設けられ、前記ワークにプレス加工を施すツールを固定するためのツール固定部と、
前記ツール固定部の上側において前記ラムに設けられ、プレス加工時に前記ツール固定部から上側への反力が入力されることで圧縮変形する第1荷重検出器と、
記ツール固定部を下側から支持すると共に、前記ツール固定部を支持するための支持荷重によって圧縮変形する第2荷重検出器と、
を備えたプレス装置。
【請求項2】
前記第2荷重検出器の定格荷重が前記第1荷重検出器よりも小さく設定されている請求項1に記載のプレス装置。
【請求項3】
前記ラムの下端部には、ツール固定部材が設けられており、
前記ツール固定部材は、
前記ツール固定部材の上端部を構成する被支持部と、
前記被支持部の下側に設けられた前記第1荷重検出器と、
前記第1荷重検出器の下側に設けられた前記ツール固定部と、
を含んで構成されており、
前記第2荷重検出器が前記被支持部を下側から支持すると共に、前記被支持部が、前記第2荷重検出器と前記ラムとによって上下方向に挟まれている請求項1に記載のプレス装置。
【請求項4】
前記ツール固定部の上側には、被支持部が設けられ、前記被支持部は、前記第2荷重検出器によって下側から支持されており、
前記第1荷重検出器が、前記被支持部の上側に配置されると共に、前記被支持部と前記ラムとによって上下に挟まれている請求項1に記載のプレス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレス作業時にワークに負荷される荷重を測定するためロードセル(荷重検出器)を備えるプレス装置が知られている。一般的にロードセルはひずみゲージを用いて荷重を検出するため、定格(最大検出)荷重の10%以下の荷重に対する出力が非線形となってしまい、非線形領域では荷重検出精度が低下してしまうという性質を持っていた。そこで、下記特許文献1に記載の電動プレスでは、高荷重用ロードセルと低荷重用ロードセルを備え、プレス作業に応じて切り替えることで高い荷重から低い荷重まで精度よく測定が可能な電動プレスが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-199139公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電動プレスは、駆動機構によって低荷重用ロードセルを高荷重用ロードセルに対して上下方向に相対移動させることでワークに接触するロードセルを切り替える。したがって、この切替機構はプレス加工中には作動させることができないか、仮に作動させた場合は、ワークに接触するロードセルの切替え動作に起因するプレス荷重の変動や、不要な衝撃力の発生のおそれがある。このため、例えば、プレス加工中に、ロードセルの切替えを行う場合には、プレス作業を一時中断して、切替機構を作動させる必要がある。これにより、プレス作業が煩雑になる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、プレス作業の煩雑さを抑制しつつ複数の荷重検出器を用いることができるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、駆動部によって下方向へ移動してワークに加圧作業するラムと、前記ラムの下端部に設けられ、前記ワークにプレス加工を施すツールを固定するためのツール固定部と、前記ツール固定部の上側において前記ラムに設けられ、プレス加工時に前記ツール固定部から上側への反力が入力されることで圧縮変形する第1荷重検出器と、記ツール固定部を下側から支持すると共に、前記ツール固定部を支持するための支持荷重によって圧縮変形する第2荷重検出器と、を備えたプレス装置である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記第2荷重検出器の定格荷重が前記第1荷重検出器よりも小さく設定されているプレス装置である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ラムの下端部には、ツール固定部材が設けられており、前記ツール固定部材は、前記ツール固定部材の上端部を構成する被支持部と、前記被支持部の下側に設けられた前記第1荷重検出器と、前記第1荷重検出器の下側に設けられた前記ツール固定部と、を含んで構成されており、前記第2荷重検出器が前記被支持部を下側から支持すると共に、前記被支持部が、前記第2荷重検出器と前記ラムとによって上下方向に挟まれているプレス装置である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ツール固定部の上側には、被支持部が設けられ、前記被支持部は、前記第2荷重検出器によって下側から支持されており、前記第1荷重検出器が、前記被支持部の上側に配置されると共に、前記被支持部と前記ラムとによって上下に挟まれているプレス装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、プレス作業の煩雑さを抑制しつつ複数の荷重検出器を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る電動プレス装置を示す縦断面図である。
図2図1に示されるラムの下端部を拡大して示す縦断面図(図1のa部拡大図)である。
図3】(A)は、図2に示される低荷重ロードセルの斜視図であり、(B)は、図2に示されるツール固定部材の斜視図である。
図4図3(A)に示される第1~第4歪ゲージによって構成されるホイートストンブリッジ回路の回路図である。
図5】第1の実施の形態の電動プレス装置においてワークに付与される荷重を説明するためのグラフである。
図6】第1の実施の形態に係る電動プレス装置の変形例を示す縦断面図である。
図7】第2の実施の形態に係る電動プレス装置を示す縦断面図である。
図8】第2の実施の形態の電動プレス装置においてワークに付与される荷重を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、図1図5を用いて、第1の実施の形態に係る「プレス装置」としての電動プレス装置10について説明する。図1及び図2に示されるように、電動プレス装置10は、全体として略円柱状に形成されている。そして、以下の説明では、電動プレス装置10の軸方向一方側(図1及び図2の矢印A方向側)を電動プレス装置10の下側としており、電動プレス装置10の軸方向他方側(図1及び図2の矢印B方向側)を電動プレス装置10の上側としている。また、以下の説明において、上下の方向と用いて説明するときには、特に断りのない限り、電動プレス装置10の上下方向を示すものとする。
【0013】
電動プレス装置10は、ワークWにプレス加工を施す装置として構成されている。ワークWは、一例として図1に示すように円筒部材とピン部材とから構成され、円筒部材にピン部材を圧入するプレス加工を想定したサンプルワークである。電動プレス装置10は、外筒12と、「駆動部」としてのサーボモータ18と、ボールねじ20と、伝達機構22と、ラム30と、を含んで構成されている。また、電動プレス装置10は、「第2荷重検出器」としての低荷重ロードセル34と、ツール固定部材36と、制御部44と、を有している。以下、電動プレス装置10の各構成について説明する。
【0014】
(外筒12について)
外筒12は、上下方向に延在された外筒本体部12Aと、外筒本体部12Aの上端部において径方向外側へ張出された張出部12Bと、を有しており、外筒12の内部空間が、縦断面視で略逆J字形状に形成され、その内部において、後述するボールねじ20及びラム30を収容するラム収容部12Cと、後述する伝達機構22を収容する伝達機構収容部12Dと、後述するサーボモータ18を収容するモータ収容部12Eと、を有している。
【0015】
外筒本体部12Aの下端部には、径方向外側へ突出したフランジ12Fが形成されており、フランジ12Fは、外筒本体部12Aの軸方向を板厚方向とした略円環板状に形成されている。このフランジ12Fには、複数の取付孔12Gが貫通形成されており、取付孔12Gは、外筒本体部12Aの周方向に所定間隔を空けて配置されている。そして、この取付孔12G内にボルトBT1が挿入されて、ボルトBT1によって、外筒本体部12A(すなわち、電動プレス装置10)が、架台50に締結固定されている。
【0016】
外筒本体部12Aにおけるラム収容部12Cの上端部の内周面には、段差部12Hが形成されている。この段差部12Hには、上下一対のベアリング14が、嵌入されている。また、ベアリング14の上側には、ベアリング固定部材16が設けられている。ベアリング固定部材16は、略円筒状に形成され、段差部12Hに嵌入されると共に、ボルトBT2によって外筒12に締結固定されている。これにより、ベアリング14が外筒12に固定されている。
【0017】
(サーボモータ18について)
サーボモータ18は、外筒12のモータ収容部12E内において、上下方向を軸方向として配置されて、外筒12に固定されている。そして、サーボモータ18の出力軸18Aが、サーボモータ18のモータ本体18Bから上側へ延出されて、伝達機構収容部12D内に配置されている。また、サーボモータ18は、後述する制御部44(中央演算処理装置:CPU)に電気的に接続されており、制御部44には、教示・操作装置46が電気的に接続されている。そして、作業者が、教示・操作装置46を操作することで、制御部44によってサーボモータ18が駆動する。
【0018】
(ボールねじ20について)
ボールねじ20は、ラム収容部12C内に配置されると共に、上下方向に沿って延在されている。そして、ボールねじ20を構成するねじ軸20Aの上端側の部分が、ベアリング14に回転可能に支持されており、ねじ軸20Aの上端部が、ベアリング14から上側へ突出して、伝達機構収容部12D内に配置されている。また、ねじ軸20Aの上端側を除く部分に、ボールねじ20を構成するナット20Bが、ねじ軸20Aの軸方向にねじ軸20Aに対して相対移動可能に設けられている。
【0019】
(伝達機構22について)
伝達機構22は、サーボモータ18(の出力軸18A)の回転をボールねじ20に伝達する機構として構成され、外筒12の伝達機構収容部12Dに配置されている。具体的には、伝達機構22は、平歯車として構成された第1ギヤ24及び第2ギヤ26を有しており、第1ギヤ24は、第2ギヤ26よりも小径に設定されている。そして、第1ギヤ24の軸心部が、サーボモータ18の出力軸18Aに一体回転可能に固定されており、第2ギヤ26の軸心部が、ボールねじ20のねじ軸20Aの上端部に固定されている。また、第1ギヤ24及び第2ギヤ26の外周部にそれぞれ形成されたギヤ歯が、互いに噛合されている。これにより、伝達機構22によって減速されたサーボモータ18の回転がボールねじ20のねじ軸20Aに伝達され、ねじ軸20Aが自身の軸回りに回転することで、ナット20Bがねじ軸20Aの軸方向に沿って上下方向に直線運動(移動)する。
【0020】
(ラム30について)
ラム30は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。ラム30は、内部にボールねじ20のねじ軸20Aを収容した状態でラム収容部12Cに収容されると共に、ねじ軸20Aと同軸上に配置されている。また、ラム30の上端部がボールねじ20のナット20Bに固定されており、ラム30がナット20Bから下側へ延出されている。
【0021】
ラム30の下端側部分の内部には、区画壁30Aが設けられており、区画壁30Aは上下方向を板厚方向とした略円板状に形成されて、ラム30に接続されている。これにより、ラム30の下端部には、下側へ開放された収容部30Bが形成されており、後述する低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40が収容部30Bに収容されるようになっている。
【0022】
また、ラム30の下端面には、蓋部材32が設けられている。蓋部材32は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、ラム30と同軸上に配置されている。そして、蓋部材32が、ボルトBT3によってラム30に締結固定されている。これにより、蓋部材32は、ラム30の一部を構成している。蓋部材32の内径は、収容部30Bの内径よりも小さく設定されている。このため、収容部30Bの開口部における外周部が、蓋部材32によって閉塞されている。
【0023】
(低荷重ロードセル34について)
低荷重ロードセル34は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。具体的には、低荷重ロードセル34の外径は、収容部30Bの内径よりも僅かに小さく設定されており、低荷重ロードセル34の内径が、蓋部材32の内径と一致している。そして、低荷重ロードセル34が、収容部30B内に収容されると共に、蓋部材32の上側に載置されている。そして、低荷重ロードセル34の上側に、後述するツール固定部材36の被支持部38が載置されている。つまり、低荷重ロードセル34は、ラム30の一部を構成しているツール固定部材36を下側から支持している。
【0024】
図3(A)に示されるように、低荷重ロードセル34は、第1歪ゲージ34A、第2歪ゲージ34B、第3歪ゲージ34C、及び第4歪ゲージ34Dを有している。第1歪ゲージ34A及び第3歪ゲージ34Cは、上下方向(低荷重ロードセル34の軸方向)の歪を感知するための歪ゲージとして構成されて、低荷重ロードセル34の外周部に貼着されている。具体的には、第1歪ゲージ34A及び第3歪ゲージ34Cが低荷重ロードセル34の周方向に180度離間して配置されている。第2歪ゲージ34B及び第4歪ゲージ34Dは、低荷重ロードセル34の周方向の歪を感知するための歪ゲージとして構成されて、低荷重ロードセル34の外周部に貼着されている。具体的には、第2歪ゲージ34Bが第1歪ゲージ34Aの上側に配置され、第4歪ゲージ34Dが第3歪ゲージ34Cの上側に配置されている。
【0025】
図4に示されるように、第1歪ゲージ34A、第2歪ゲージ34B、第3歪ゲージ34C、及び第4歪ゲージ34Dによって、ホイートストンブリッジ回路を形成しており、当該ホイートストンブリッジ回路は、後述する制御部44に電気的に接続されている。そして、制御部44によって、ホイートストンブリッジ回路に印加電圧Vbをかけることで、印加電圧Vbに比例し、且つ第1歪ゲージ34A、第2歪ゲージ34B、第3歪ゲージ34C、及び第4歪ゲージ34Dの電気抵抗変化に比例した出力電圧V0が、制御部44に出力される。
【0026】
これにより、低荷重ロードセル34に圧縮荷重が作用すると、制御部44がプラスの荷重値を検出し、低荷重ロードセル34に引張荷重が作用すると、制御部44がマイナスの荷重値を検出する。一方、前述したように低荷重ロードセル34は収容部30B内に収容されているため、低荷重ロードセル34に引張荷重が作用することはなく、ラム30に負荷される力の方向に関わらず、引張荷重は負荷されない。
【0027】
(ツール固定部材36について)
図1図2、及び図3(B)に示されるように、ツール固定部材36は、ラム30に設けられて、ツールTを固定する部材として構成されている。すなわち、ツール固定部材36は、ラム30の一部を構成している。ツール固定部材36は、全体として上下方向を軸方向とする略段付き円柱状に形成されている。具体的には、ツール固定部材36は、ツール固定部材36の上端部を構成する被支持部38と、ツール固定部材36の上下方向中間部を構成する「第1荷重検出器」としての高荷重ロードセル40と、ツール固定部材36の下端部を構成するツール固定部42と、を含んで構成されている。すなわち、ツール固定部材36は、ロードセルとツールを取付ける取付部とが一体になった部材として構成されている。
【0028】
被支持部38は、上下方向を厚み方向とする略円板状に形成されて、ラム30の収容部30B内に収容されると共に、低荷重ロードセル34と区画壁30Aとの間に配置されている。すなわち、低荷重ロードセル34及び被支持部38が、区画壁30A及び蓋部材32によって上下方向に挟まれている。被支持部38の外径は、収容部30Bの内径よりも僅かに小さく設定されている。また、低荷重ロードセル34及び被支持部38の上下方向の寸法の合計が、収容部30Bの上下方向の深さ寸法(区画壁30Aと蓋部材32との間の上下距離)よりも僅かに小さく設定されている。したがって、低荷重ロードセル34及び被支持部38は、ねじ等によって固定されることなく収容部30Bに収容されることでラム30と一体化している。
【0029】
高荷重ロードセル40は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。高荷重ロードセル40の直径は、被支持部38の直径よりも小さく設定されており、高荷重ロードセル40は、被支持部38から下側へ延出されると共に、低荷重ロードセル34の径方向内側に配置されている。
【0030】
高荷重ロードセル40は、低荷重ロードセル34と同様に、第1歪ゲージ40A、第2歪ゲージ40B、第3歪ゲージ40C、及び第4歪ゲージ40Dを有している。第1歪ゲージ40A及び第3歪ゲージ40Cは、上下方向(高荷重ロードセル40の軸方向)の歪を感知するための歪ゲージとして構成されて、高荷重ロードセル40の外周部に貼着されている。具体的には、第1歪ゲージ40A及び第3歪ゲージ40Cが高荷重ロードセル40の周方向に180度離間して配置されている。第2歪ゲージ40B及び第4歪ゲージ40Dは、高荷重ロードセル40の周方向の歪を感知するための歪ゲージとして構成されて、高荷重ロードセル40の外周部に貼着されている。具体的には、第2歪ゲージ40Bが第1歪ゲージ40Aの上側に配置され、第4歪ゲージ40Dが第3歪ゲージ40Cの上側に配置されている。
【0031】
また、図示は省略するが、低荷重ロードセル34と同様に、第1歪ゲージ40A、第2歪ゲージ40B、第3歪ゲージ40C、及び第4歪ゲージ40Dによって、ホイートストンブリッジ回路を形成しており、当該ホイートストンブリッジ回路が、後述する制御部44に電気的に接続されている。これにより、制御部44によって、ホイートストンブリッジ回路に印加電圧Vbをかけることで、印加電圧Vbに比例し、且つ第1歪ゲージ34A、第2歪ゲージ34B、第3歪ゲージ34C、及び第4歪ゲージ34Dの電気抵抗変化に比例した出力電圧V0が、制御部44に出力される。
【0032】
すなわち、高荷重ロードセル40に圧縮荷重が作用すると、制御部44がプラスの荷重値を検出し、高荷重ロードセル40に引張荷重が作用すると、制御部44がマイナスの荷重値を検出する。また、前述した低荷重ロードセル34の定格荷重が、高荷重ロードセル40の定格荷重の略10%に設定されている。
【0033】
ツール固定部42は、上下方向を軸方向とする略円柱状に形成されている。ツール固定部42の直径は、高荷重ロードセル40の直径よりも大きく、被支持部38の直径よりも小さく設定されている。そして、ツール固定部42は、高荷重ロードセル40から下側へ延出されると共に、蓋部材32の径方向内側に配置されている。これにより、ツール固定部42がツール固定部42に吊り下げられている。換言すると、高荷重ロードセル40がツール固定部42を上側から支持している。ツール固定部42の下面には、中央部において、下側へ開放されたネジ部42Aが形成されている。
【0034】
そして、カウンタウエイトCWがネジ部42Aに螺合されてツール固定部42に取付けられると共に、カウンタウエイトCWを介してツールTが取付けられている。また、ツール固定部材36、カウンタウエイトCW、及びツールTの合計重量が、前述した低荷重ロードセル34の定格荷重の略10%となるように、カウンタウエイトCWの重量が設定されている。
【0035】
(制御部44について)
制御部44には、前述したサーボモータ18、低荷重ロードセル34、及び高荷重ロードセル40が電気的に接続されている。また、制御部44には、制御部44に対するプログラムの他、作業時におけるラム30の駆動位置や駆動速度、ワークWに対する加圧時間等の作業データ(ティーチングデータ)等の作業情報が記憶されている。また、制御部44には、電動プレス装置10に対する操作するための教示・操作装置46が電気的に接続されている。したがって、作業者によって教示・操作装置46が操作されることで、制御部44は、ティーチングデータに基づきサーボモータ18を駆動させ、プレス作業を行う。また、詳細については後述するが、制御部44は、低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40からの検出値に基づいて、ワークWに付与された荷重(加圧力)を算出する。
【0036】
(作用効果)
次に、図5に示されるグラフ(1)~(3)を用いて、電動プレス装置10のプレス加工時におけるワークWに付与される荷重(加圧力)の算出を説明しつつ、本実施の形態の作用及び効果について説明する。
【0037】
図5のグラフ(1)は、制御部44において検出した高荷重ロードセル40の荷重P1を示すグラフであり、図5のグラフ(2)は、制御部44において検出した低荷重ロードセル34の荷重P2を示すグラフであり、図5のグラフ(3)は、制御部44において算出したワークWに付与された荷重Pmixを示すグラフである。また、グラフ(1)~(3)の横軸は、上下方向におけるラム30の位置を示しており、下方側をプラスとしている。また、グラフ(1)~(3)の縦軸は、荷重を示しており、圧縮荷重をプラスとしている。
【0038】
図1に示されるように、電動プレス装置10の非作動状態では、ラム30が初期位置Z0に配置されている。ラム30の初期位置Z0では、ツールTが、ワークWの上側に離間して配置されている。
【0039】
そして、ツール固定部材36では、高荷重ロードセル40の上端部が被支持部38に支持されており、高荷重ロードセル40からツール固定部42が下側へ延出されている。そして、ツールTが、カウンタウエイトCWを介してツール固定部42に固定されている。すなわち、ツール固定部42、カウンタウエイトCW、及びツールTが、高荷重ロードセル40から吊り下げられている。このため、ラム30の初期位置Z0では、ツール固定部42、カウンタウエイトCW、及びツールTの合計重量によって、高荷重ロードセル40の下端部に下方向の荷重が作用している。これにより、高荷重ロードセル40には、当該合計重量による引張荷重PSが作用している。したがって、グラフ(1)に示されるように、制御部44は、初期位置Z0における高荷重ロードセル40の荷重P1を、「-PS」として検出する。
【0040】
また、低荷重ロードセル34は、ツール固定部材36の被支持部38を下側から支持しており、蓋部材32が低荷重ロードセル34を下側から支持している。このため、ラム30の初期位置では、ツール固定部材36、カウンタウエイトCW、及びツールTの合計重量によって、下側への荷重が低荷重ロードセル34に上側から作用している。これにより、低荷重ロードセル34には、当該合計重量による圧縮荷重PTが作用している。その結果、グラフ(2)に示されるように、制御部44は、ラム30の初期位置Z0における低荷重ロードセル34の荷重P2を、「+PT」として検出する。
【0041】
ここで、制御部44は、低荷重ロードセル34の荷重P2に基づいて、ワークWに付与された荷重Pmixを算出する。具体的には、制御部44は、荷重P2>0であるか否かを判別する。そして、荷重P2>0である場合には、制御部44は、圧縮荷重PTから荷重P2を減算した値を、荷重Pmixとして算出する。一方、荷重P2>0でない場合には、制御部44は、荷重P1から引張荷重PSを減算した値を、荷重Pmixとして算出する。なお、引張荷重PSは、マイナスの値であるため、荷重P2>0でない場合には、荷重Pmixは、荷重P1に引張荷重PSの絶対値を加算した値になる。
【0042】
そして、ラム30の初期位置Z0では、荷重P2が「+PT」であり、荷重P2>0である。このため、ラム30の初期位置Z0での荷重Pmix=PT-PT=0となる。したがって、制御部44は、荷重Pmixをゼロとして算出する。
【0043】
この状態で、作業者が教示・操作装置46を操作して、制御部44によってサーボモータ18が駆動すると、ラム30が初期位置Z0から下降する。そして、ツールTの先端(下端)がワークWの上端に到達する位置(以下、このラム30の位置を当接位置Z1という)までは、高荷重ロードセル40に作用する荷重P1及び低荷重ロードセル34に作用する荷重P2は、ラム30の初期位置Z0における値から変化しない。このため、制御部44は、荷重Pmixをゼロとして算出する。
【0044】
ラム30が、当接位置Z1からさらに下降すると、ツールTがワークWを下側へ加圧する。これにより、ツール固定部材36(の被支持部38)に上側への反力が作用する。このため、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持荷重が、圧縮荷重PTから反力分だけ低くなる。そして、ラム30の当接位置Z1からの下降に従い、ツール固定部材36に作用する反力が大きくなる。すなわち、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持荷重が、徐々に小さくなる。そして、ツール固定部材36に作用する反力が、圧縮荷重PTと一致した場合(以下、このラム30の位置を、切替位置Z2という)には、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持荷重が、ゼロとなる。換言すると、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持状態が解除される。このため、ラム30の当接位置Z1から切替位置Z2までは、制御部44は、荷重Pmixを、荷重PTから荷重P2を減算した値として算出する。
【0045】
また、ラム30が切替位置Z2からさらに下降しても、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除状態が維持される。すなわち、低荷重ロードセル34の荷重P2がゼロに維持される。
【0046】
一方、ラム30の当接位置Z1からの下降時には、ツール固定部材36のツール固定部42に上側への反力が作用するため、高荷重ロードセル40に作用する引張荷重が徐々に低くなる。すなわち、高荷重ロードセル40に作用する荷重P1が、「-PS」から徐々に上昇する。そして、ツール固定部42に作用する反力が、ツール固定部42、カウンタウエイトCW、及びツールTの合計重量と一致すると、荷重P1がゼロとなる。また、ツール固定部42に作用する反力が、当該合計重量よりも大きくなると、当該反力によって高荷重ロードセル40に圧縮荷重が作用する。すなわち、荷重P1がプラスの値になる。
【0047】
そして、ラム30の切替位置Z2以降の下降では、低荷重ロードセル34の荷重P2がゼロである。このため、制御部44は、ラム30の切替位置Z2以降における荷重Pmixを、荷重P1から「-PS」を減算した値に算出する。以上により、グラフ(3)に示されるように、プレス加工時におけるワークWに付与される荷重Pmixが、制御部44によって算出される。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態の電動プレス装置10では、ラム30の一部を構成するツール固定部材36を、低荷重ロードセル34が下側から支持しており、低荷重ロードセル34が、ツール固定部材36を支持する荷重によって圧縮変形している。そして、プレス加工時には、ツール固定部材36に作用する上側への反力により、低荷重ロードセル34の支持荷重が徐々に低くなる。このため、当該反力が支持荷重と一致するときに、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持状態が解除される。したがって、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除前までは、ワークWに作用する荷重Pmixを、低荷重ロードセル34による検出値に基づいて算出することができる。
【0049】
また、ツール固定部材36は、低荷重ロードセル34によって支持される被支持部38と、ツールTを固定するツール固定部42と、ツール固定部42と被支持部38との間に配置された高荷重ロードセル40と、を含んで構成されている。つまり、ツールTを固定するためのツール固定部42が、高荷重ロードセル40によって吊り下げられている。このため、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、ツール固定部42に作用する上側への反力によって高荷重ロードセル40を圧縮変形させることができる。これにより、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、ワークWに作用する荷重Pmixを、高荷重ロードセル40による検出値に基づいて算出することができる。以上により、低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40を切替えるための切替機構を設けることなく、複数の低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40を用いて、ワークWに付与される荷重Pmixを算出することができる。したがって、プレス作業の煩雑さを抑制しつつ、複数のロードセルを用いることができる。
【0050】
また、低荷重ロードセル34の定格荷重が、高荷重ロードセル40の定格荷重よりも小さく設定されている。すなわち、低荷重ロードセル34の分解能が、高荷重ロードセル40の分解能より高くなっている。このため、ワークWに付与される低荷重の荷重Pmixを、低荷重ロードセル34によって検出することができ、高荷重の荷重Pmixを、高荷重ロードセル40によって検出することができる。したがって、電動プレス装置10において、ワークWに付与される荷重Pmixを、低荷重から高荷重に亘って精度良く検出することができる。
【0051】
また、ツール固定部材36の被支持部38が低荷重ロードセル34に載置されている。そして、被支持部38と低荷重ロードセル34とがラム30の区画壁30A及び蓋部材32により構成される収容部30B内に上下方向に隙間なく収納されている。これにより、ワークWに対するプレス加工前では、低荷重ロードセル34によってツール固定部材36を下側から支持する構成にすることができると共に、低荷重ロードセル34を圧縮変形させることができる。また、プレス加工中における低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、低荷重ロードセル34の支持解除状態を維持しつつ、ツール固定部材36をラム30と一体化することができる。これにより、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後において、高荷重の圧縮力が低荷重ロードセル34に作用することを防止できる。したがって、低荷重ロードセル34の破損を抑制できる。
【0052】
また、ツール固定部材36は、被支持部38と、高荷重ロードセル40と、ツール固定部42と、を含んで構成されている。そして、被支持部38が、ラム30の区画壁30Aと低荷重ロードセル34とによって上下に挟まれている。また、高荷重ロードセル40は、被支持部38とツール固定部42との間に配置されて、ツール固定部42を上側から支持している。これにより、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、ツール固定部材36に作用する上側への反力によって、高荷重ロードセル40を圧縮変形させることができる。
【0053】
(第1の実施の形態の変形例)
次に、図6を用いて、第1の実施の形態の電動プレス装置10の変形例を説明する。変形例の電動プレス装置10では、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態の電動プレス装置10と同様に構成されている。
【0054】
すなわち、低荷重ロードセル34が、ベアリング14の下側において、ラム30の段差部12H内に挿入されている。また、ベアリング14及び低荷重ロードセル34の外径が、段差部12Hの内径よりも僅かに小さく設定されている。さらに、段差部12Hの下面とベアリング固定部材16の下面との間の上下方向の距離が、一対のベアリング14及び低荷重ロードセル34の上下方向の寸法の合計よりも僅かに大きく設定されている。すなわち、段差部12H及びベアリング固定部材16の上下方向の挟持力が、ベアリング14及び低荷重ロードセル34に作用しないように、ベアリング14及び低荷重ロードセル34が外筒12に一体化されている。これにより、低荷重ロードセル34が、ボールねじ20を含むラム30の全体を下側から支持する構成になっている。
【0055】
また、ツール固定部材36は、ラム30の収容部30B内に収容されており、ツール固定部材36の被支持部38が、ラム30の区画壁30Aに締結固定されている。すなわち、この変形例では、ツール固定部材36がラム30に固定されると共に、高荷重ロードセル40が、ツール固定部42を上側から支持している。
【0056】
そして、変形例では、上述のように、低荷重ロードセル34が、ボールねじ20を含むラム30の全体を下側から支持している。このため、電動プレス装置10の非作動状態では、ベアリング14、ボールねじ20、ラム30、ツール固定部材36、カウンタウエイトCW、及びツールTの合計重量によって、低荷重ロードセル34が圧縮変形する。そして、プレス加工時において、ラム30に作用する上側への反力によって、低荷重ロードセル34の支持状態が解除されると、低荷重ロードセル34の荷重P2がゼロになる。このため、第1の実施の形態と同様に、低荷重ロードセル34による支持状態の解除前までは、低荷重ロードセル34の検出値に基づいて、ワークWに付与された荷重Pmixを算出することができる。
【0057】
また、変形例では、上述のように、ツール固定部材36がラム30に下端部に固定されており、高荷重ロードセル40が、ツール固定部42を上側から支持している。したがって、低荷重ロードセル34による支持状態の解除後では、高荷重ロードセル40の検出値に基づいて、荷重Pmixを算出することができる。したがって、本変形例においても、プレス作業の煩雑さを抑制しつつ、複数のロードセルを用いることができる。
【0058】
(第2の実施の形態)
次に、図7及び図8を用いて、第2の実施の形態に係る「プレス装置」としての電動プレス装置100について説明する。電動プレス装置100は、以下に示す点を除いて、第1の実施の形態の電動プレス装置10と同様に構成されている。なお、図7では、第1の実施の形態の電動プレス装置10と同様に構成されている部品には、同一の符号を付している。
【0059】
すなわち、第2の実施の形態では、ツール固定部材36において、高荷重ロードセル40が省略されており、高荷重ロードセル40とツール固定部材36とが別部材として構成されている。具体的には、ツール固定部材36が、被支持部38とツール固定部42とを含んで構成されており、ツール固定部42が被支持部38から下側へ延出している。そして、被支持部38が、第1の実施の形態と同様に、低荷重ロードセル34の上側に載置されている。したがって、第2の実施の形態においても低荷重ロードセル34が、ラム30の一部を構成するツール固定部材36を下側から支持している。
【0060】
高荷重ロードセル40は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されている。そして、高荷重ロードセル40が、ラム30の収容部30B内に収容されると共に、被支持部38と区画壁30Aとの間に配置されている。高荷重ロードセル40の外径は、収容部30Bの内径よりも僅かに小さく設定されている。また、高荷重ロードセル40、被支持部38、及び低荷重ロードセル34の上下寸法の合計が、収容部30Bの上下寸法よりも僅かに小さく設定されている。すなわち、第2の実施の形態では、区画壁30A及び蓋部材32による挟持力が、高荷重ロードセル40、被支持部38、及び低荷重ロードセル34に作用しないように、高荷重ロードセル40、被支持部38、及び低荷重ロードセル34がラム30に一体化されている。より詳しくは、挟持力が作用しない状態で、低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40が、ツール固定部材36を上下方向に挟むように配置されると共に、これらの部材がラム30と一体化されている。
【0061】
次に、図8に示されるグラフ(1)~(3)を用いて、第2の実施の形態に係る作用及び効果について説明する。
【0062】
図5のグラフと同様に、図8のグラフ(1)は、制御部44において検出した高荷重ロードセル40の荷重P1を示すグラフであり、図8のグラフ(2)は、制御部44において検出した低荷重ロードセル34の荷重P2を示すグラフであり、図8のグラフ(3)は、制御部44において算出したワークWに付与された荷重Pmixを示すグラフである。
【0063】
そして、第2の実施の形態では、上述のように、挟持力が作用しない状態で、低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40が、ツール固定部材36を上下方向に挟むように配置されると共に、これらの部材がラム30と一体化されている。また、高荷重ロードセル40が、ツール固定部材36の上側に配置されている。このため、ラム30の初期位置Z0では、高荷重ロードセル40に圧縮荷重も引張荷重も作用していない。これにより、グラフ(1)に示されるように、ラム30の初期位置Z0における高荷重ロードセル40の荷重P1がゼロとなる。
【0064】
また、低荷重ロードセル34は、ツール固定部材36の被支持部38を下側から支持している。このため、第1の実施の形態と同様に、ラム30の初期位置Z0では、ツール固定部材36、カウンタウエイトCW及びツールTの合計重量によって、下側の荷重が低荷重ロードセル34に上側から作用している。このため、低荷重ロードセル34には、当該合計重量による圧縮荷重PTが作用している。これにより、グラフ(2)に示されるように、制御部44は、初期位置Z0における低荷重ロードセル34の荷重P2を、「+PT」として検出する。
【0065】
そして、制御部44は、第1の実施の形態と同様に、低荷重ロードセル34の荷重P2に基づいて、ワークWに付与された荷重Pmixを算出する。具体的には、制御部44は、荷重P2>0であるか否かを判別する。そして、荷重P2>0である場合には、制御部44は、圧縮荷重PTから荷重P2を減算した値を、荷重Pmixとして算出する。一方、荷重P2>0でない場合には、制御部44は、荷重P1に圧縮荷重PTを加算した値を、荷重Pmixとして算出する。
【0066】
そして、ラム30の初期位置Z0の荷重P2は、「+PT」であり、荷重P2>0である。このため、制御部44は、第1の実施の形態と同様に、荷重Pmixをゼロとして算出する。
【0067】
作業者が、教示・操作装置46を操作して、制御部44によってサーボモータ18が駆動されると、ラム30が初期位置から下降する。そして、ラム30の当接位置Z1までは、荷重P1及び荷重P2は、ラム30の初期位置における値と変化しない。このため、制御部44は、荷重Pmixをゼロとして算出する。
【0068】
ラム30が、当接位置Z1からさらに下降すると、ツールTがワークWを下側へ加圧する。これにより、ツール固定部材36(の被支持部38)に上側への反力が作用する。このため、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持荷重が、徐々に小さくなる。そして、ラム30の切替位置Z2において、ツール固定部材36に作用する反力が、圧縮荷重PTと一致する。これにより、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持状態が解除される。すなわち、ラム30の当接位置Z1と切替位置Z2との間では、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持状態が解除されない。このため、ラム30の当接位置Z1から切替位置Z2までは、制御部44は、荷重Pmixを、荷重PTから荷重P2を減算した値として算出する。
【0069】
また、ラム30が切替位置Z2からさらに下降しても、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除状態が維持される。すなわち、低荷重ロードセル34の荷重P2がゼロに維持される。
【0070】
また、上述のように、ラム30の当接位置Z1と切替位置Z2との間では、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持状態が解除されない。このため、ラム30の当接位置Z1と切替位置Z2との間の下降時には、ツール固定部材36に作用する反力が、高荷重ロードセル40に作用しない。これにより、高荷重ロードセル40の荷重P1がゼロに維持される。
【0071】
そして、ラム30の切替位置Z2からの下降時には、低荷重ロードセル34によるツール固定部材36の支持状態が解除されるため、ツール固定部材36に作用する反力が、高荷重ロードセル40に作用する。これにより、圧縮荷重が高荷重ロードセル40に作用して、高荷重ロードセル40の荷重P1が、ゼロから徐々に上昇する。
【0072】
さらに、ラム30の切替位置Z2以降の下降では、低荷重ロードセル34の荷重P2がゼロであるため、制御部44は、ラム30の切替位置Z2以降における荷重Pmixを、荷重P1に「+PT」を加算した値に算出する。以上により、グラフ(3)に示されるように、プレス加工時における、ワークWに付与される荷重Pmixが、制御部44によって算出される。
【0073】
以上により、第2の実施の形態においても、ラム30の一部を構成するツール固定部材36を、低荷重ロードセル34が下側から支持しており、低荷重ロードセル34が、支持荷重によって圧縮変形している。このため、プレス加工時には、ツール固定部材36に作用する上側への反力により、低荷重ロードセル34の支持荷重が徐々に低くなる。そして、この反力が支持荷重と一致するときに、低荷重ロードセル34の支持状態が解除される。したがって、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除前までは、低荷重ロードセル34による検出値に基づいて、ワークWに作用する荷重Pmixを算出することができる。
【0074】
一方、高荷重ロードセル40は、ツール固定部材36の被支持部38とラム30の区画壁30Aとの間に配置されている。そして、プレス加工時に、ツール固定部材36から上側への反力が入力されることで、高荷重ロードセル40が圧縮変形する。このため、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、高荷重ロードセル40による検出値に基づいて、ワークWに作用する荷重Pmixを算出することができる。以上により、第2の実施の形態においても、低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40を切替えるための切替機構を設けることなく、複数の低荷重ロードセル34及び高荷重ロードセル40を用いて、ワークWに付与される荷重Pmixを算出することができる。したがって、第1の実施の形態と同様に、プレス作業の煩雑さを抑制しつつ、複数のロードセルを用いることができる。
【0075】
また、第2の実施の形態では、区画壁30A及び蓋部材32による挟持力が、高荷重ロードセル40、被支持部38、及び低荷重ロードセル34に作用しないように、高荷重ロードセル40、被支持部38、及び低荷重ロードセル34がラム30に一体化されている。そして、低荷重ロードセル34が被支持部38の下側に配置されている。これにより、第1の実施の形態と同様に、ワークWに対するプレス加工前では、低荷重ロードセル34によってツール固定部材36を下側から支持する構成にすることができると共に、低荷重ロードセル34を圧縮変形させることができる。また、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、低荷重ロードセル34の支持解除状態を維持しつつ、ツール固定部材36をラム30と一体化することができる。これにより、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後において、高荷重の圧縮力が低荷重ロードセル34に作用することを防止できる。したがって、低荷重ロードセル34の破損を抑制できる。
【0076】
また、高荷重ロードセル40が被支持部38の上側に配置されている。このため、第1の実施の形態と同様に、低荷重ロードセル34のツール固定部材36に対する支持解除後では、ツール固定部材36に作用する上側への反力によって、高荷重ロードセル40を圧縮変形させることができる。
【0077】
なお、第1及び第2の実施の形態では、荷重P2がゼロになるとき、制御部44が荷重Pmixの算出方法を切り替える構成になっている。これに代えて、荷重P1の値が変化し且つ荷重P2の値が変化しなくなったときに、制御部44が荷重Pmixの算出方法を切り替えてもよい。
【0078】
また、第1及び第2の実施の形態では、低荷重ロードセル34を挟み込むことで固定していたが、それに加え例えば低荷重ロードセル34の上面及び下面、区画壁30Aの下面、蓋部材32の上面に、回転止めのため凹凸加工やキー溝加工等を設けても良い。
また例えば、低荷重ロードセル34の上面と該上面を支持している部材(例えば区画壁30A)、もしくは、低荷重ロードセル34と該下面を支持している部材(例えば蓋部材32)のように、低荷重ロードセル34の上面か下面のどちらか一面のみがそれぞれを支持している部材とねじ等により固定されていても良い。
また、加圧作業によりツール固定部材36に作用する当該反力がPTを超えることによる被支持部38の支持部の切り替わりをスムースにするため、ラム30の区画壁30Aの下面もしくは蓋部材32の上面もしくは低荷重ロードセル34とツール固定部材36との間のいずれかにゴム板材等の弾性体部材を設けても良い。
また例えば、第1の実施の形態では、ラム30の区画壁30A及び蓋部材32による挟持力が、ツール固定部材36の被支持部38及び低荷重ロードセル34に作用しないように、被支持部38及び低荷重ロードセル34が、ラム30及び蓋部材32によって上下方向に挟まれている、としたが、厳密に挟持力がゼロである必要性は無い。したがって例えば、第1の実施の形態において、低荷重ロードセル34を収容部30B内に上下方向において隙間無く収容することを目的にガタ詰めのための微小な挟持力が負荷されていても良い。
【0079】
また、第1及び第2の実施の形態では、低荷重から高荷重まで切れ目なく検出可能なように、低荷重ロードセル34の定格荷重が、高荷重ロードセル40の定格荷重の略10%に設定していたが、他の構成であっても構わない。プレス作業の種類や検出を必要とする荷重範囲の条件により荷重の連続性よりも検出可能な荷重範囲が優先される場合には、例えば低荷重ロードセル34の定格荷重を、高荷重ロードセル40の定格荷重の10%以下に設定しても良い。
【符号の説明】
【0080】
10 電動プレス装置(プレス装置)
12 外筒
12A 外筒本体部
12B 張出部
12C ラム収容部
12D 伝達機構収容部
12E モータ収容部
12F フランジ
12G 取付孔
12H 段差部
14 ベアリング
16 ベアリング固定部材
18 サーボモータ(駆動部)
18A 出力軸
18B モータ本体
20 ボールねじ
20A ねじ軸
20B ナット
22 伝達機構
24 第1ギヤ
26 第2ギヤ
30 ラム
30A 区画壁
30B 収容部
32 蓋部材
34 低荷重ロードセル(第2荷重検出器)
36 ツール固定部材
38 被支持部
40 高荷重ロードセル
42 ツール固定部
42A ネジ部
44 制御部
46 教示・操作装置
50 架台
100 電動プレス装置(プレス装置)
BT1 ボルト
BT2 ボルト
BT3 ボルト
CW カウンタウエイト
T ツール
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8