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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ロボットの監視システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020121079
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2021102261
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019234094
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】野口 直之
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 正吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 和博
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/103091(WO,A1)
【文献】特開2015-89576(JP,A)
【文献】特開2012-152843(JP,A)
【文献】特開2008-126328(JP,A)
【文献】特開平5-52712(JP,A)
【文献】特開2019-118993(JP,A)
【文献】特開昭62-242203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、前記基体に直接または間接的に装着され駆動部によって駆動されるアームと、を具備するロボットに固定されたセンサからの出力によって前記ロボットの状況を監視する、ロボットの監視システムであって、
前記駆動部に対応して前記ロボットにおいて固定され、前記駆動部における加速度、温度、音、臭気のいずれかを検知してアナログ信号を出力する複数の前記センサと、
前記ロボットにおいて固定され、前記センサから出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、
前記基体に設置され、複数の前記センサに対応する前記デジタル信号をシリアルデータとした監視用信号を出力する監視用信号生成部と、
前記センサから出力された前記アナログ信号を前記監視用信号より前記センサ毎に再生して出力するDA変換部と、
前記ロボットと別体とされ、前記監視用信号を前記ロボット側から受信して前記ロボットの状況を監視する監視装置を具備することを特徴とする、ロボットの監視システム。
【請求項2】
前記ロボットは複数の前記駆動部を具備し、
前記センサ及び前記AD変換部は前記駆動部毎に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項3】
前記駆動部毎に、複数の前記センサと単一の前記AD変換部を具備し、
前記AD変換部は、対応する複数の前記センサが出力した複数の前記アナログ信号をデジタル化し、かつシリアル出力した前記デジタル信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項4】
前記AD変換部は、前記アームにおける、対応する前記センサよりも前記ロボットの駆動経路において前記基体に近い側に固定されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項5】
前記基体に前記駆動部、前記センサ及び前記AD変換部が設けられたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項6】
複数の前記AD変換部がデイジーチェーン接続され、複数の前記AD変換部のうちの一つが前記監視用信号生成部に接続されたことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項7】
前記DA変換部は前記基体の外部に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の、ロボットの監視システム。
【請求項8】
前記DA変換部は、複数の前記センサのうちの選択されたものに対応する前記アナログ信号を再生して出力することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の、ロボットの監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動部分を有するロボットを監視するための、ロボットの監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のロボットにおいては、多数の関節(可動部分)と、これによって駆動される複数のアームが設けられることによって、様々な動きが実現される。このようなロボットの構成については、例えば特許文献1に記載されている。このロボットにおいては、アームの内部に設けられモータによって駆動されるベルトがプーリに架け渡されてプーリが回転駆動されることによって、アームが駆動される。このようなアームを多段階に組み合わせることによって、複雑な動作を実現することができる。
【0003】
一般的に、可動部分には使用寿命が存在するため、その状態や使用状況を認識することによって、例えば使用寿命が近いことをユーザに警告することができるが、このように多数の可動部分を有するロボットにおいては、このような認識を可動部分毎に行うことが必要となる。このようにロボットを監視するためのシステムは、例えば特許文献2に記載されている。
【0004】
特許文献2に記載の技術においては、移動部位の振動がセンサによって認識され、この振動パターン(振動波形)を認識することによって、この移動部位を駆動させる駆動部の故障が予知される。振動を検知するセンサとしては、例えば加速度センサを用いることができる。多数の可動部分、アームを有するロボットにおいては、小型の加速度センサを可動部分毎に設け、可動部分毎にこのように故障予知をすることもできる。センサはロボット自身に固定されるが、その出力は外部に取り出され、外部のオシロスコープやコンピュータ等によって故障予知診断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-15839号公報
【文献】特開平5-52712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、このように使用される加速度センサからの電気的出力はアナログ信号であり、その信号強度は高くない。また、ロボットの動作時にはノイズも多く発生するため、センサからの出力信号におけるS/N比が悪くなり、特に大型で複雑な動作をするロボットにおいては、この信号の伝搬経路が長くなるために、特にS/N比が劣化した。このため、実際には、上記のような診断を外部で高精度で行うことは容易ではなかった。この点については、他の物理量を検知するセンサについても同様である。
【0007】
一般的にこのように強度の低いアナログ信号をS/N比を劣化させずに伝達させるには例えば同軸ケーブルが有効であるが、前記のように大型で複雑な動きをするロボットにおいてこのように同軸ケーブルを多数用いる場合にはコストが増大した。あるいは、太い同軸ケーブルを用いることによって、ロボット(アーム)の動きが制限されるため、同軸ケーブルをこの目的で用いることは実質的に困難であった。
【0008】
このため、ロボットに固定された複数のセンサからの出力を高精度で外部で認識することによって、ロボットを監視することができるシステムが望まれた。
【0009】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、ロボットに固定された複数のセンサからの出力を高精度で外部で認識することによって、ロボットを監視することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るロボットの監視システムは、
基体と、前記基体に直接または間接的に装着され駆動部によって駆動されるアームと、を具備するロボットに固定されたセンサからの出力によって前記ロボットの状況を監視する、ロボットの監視システムであって、前記駆動部に対応して前記ロボットにおいて固定され、前記駆動部における加速度、温度、音、臭気のいずれかを検知してアナログ信号を出力する複数の前記センサと、前記ロボットにおいて固定され、前記センサから出力された前記アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、前記基体に設置され、複数の前記センサに対応する前記デジタル信号をシリアルデータとした監視用信号を出力する監視用信号生成部と、前記センサから出力された前記アナログ信号を前記監視用信号より前記センサ毎に再生して出力するDA変換部と、前記ロボットと別体とされ、前記監視用信号を前記ロボット側から受信して前記ロボットの状況を監視する監視装置を具備する。
【0011】
この構成においては、ロボットに固定された複数のセンサによって、特に駆動部の状況(振動、発熱、異音、異臭の発生)を検知することができる。センサの出力は、AD変換部によってロボットの内部でデジタル信号とされてからロボットの内部を長距離にわたり伝わる。その後に、複数のセンサに対応した複数のデジタル信号がシリアルデータとされた監視号用信号として出力される。このため、ノイズの混入等が抑制された状態でセンサの出力を監視用信号としてロボットの外部の監視装置が読み出すことができる。
また、この構成によって、使用されたセンサの出力をそのままの形態で監視システムの外部から読み出すことが可能となる。これによって、ロボットの動作の監視を特に正確に行うことができる。
【0012】
また、前記ロボットは複数の前記駆動部を具備し、前記センサ及び前記AD変換部は前記駆動部毎に設けられていてもよい。
この構成によれば、センサによってロボットにおける駆動部毎の状況を外部の監視装置が認識することができる。
【0013】
また、前記駆動部毎に、複数の前記センサと単一の前記AD変換部を具備し、前記AD変換部は、対応する複数の前記センサが出力した複数の前記アナログ信号をデジタル化し、かつシリアル出力した前記デジタル信号を出力してもよい。
この構成によれば、単一の駆動部における各種の状況を複数のセンサによって認識することができる。この際、AD変換部は駆動部毎に単一のものを用いることができる。
【0014】
また、前記AD変換部は、前記アームにおける、対応する前記センサよりも前記ロボットの駆動経路において前記基体に近い側に固定されていてもよい。
この構成によれば、ロボット内におけるAD変換部から基体に設けられた監視信号生成部までのデジタル信号の伝達経路を短くすることができる。
【0015】
また、前記基体に前記駆動部、前記センサ及び前記AD変換部が設けられていてもよい。
この構成においては、駆動部、これに対応したセンサ、AD変換部が基体に設けられる。基体側に設けられる駆動部の負荷は大きくなるが、これによって、この駆動部の状況を外部の監視装置が認識することができる。
【0016】
また、複数の前記AD変換部がデイジーチェーン接続され、複数の前記AD変換部のうちの一つが前記監視用信号生成部に接続されていてもよい。
この構成においては、複数のAD変換部がデイジーチェーン接続されることによって、ロボットの中におけるデジタル信号の信号経路の全長を特に短くすることができる。これによって、ノイズの混入が抑制され、かつ信号経路がロボットの動作の障害になることが抑制される。
【0017】
また、前記DA変換部は前記基体の外部に設けられていてもよい。
このDA変換部に対する入力はデジタル信号である監視用信号であるため、その動作に対するノイズの混入等の影響は小さい。このため、監視システム中の様々な箇所、例えば基体の外部にDA変換部を設けることができる。
また、前記DA変換部は、複数の前記センサのうちの選択されたものに対応する前記アナログ信号を再生して出力してもよい。
この場合、ロボットにおいて使用されるセンサの数が多い場合において、DA変換部の動作や出力を効率的に行わせることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロボットに固定された複数のセンサからの出力を高精度で外部で認識することによって、ロボットを監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る監視システムが用いられたロボットの構成を示す図である。
図2】実施形態に係る監視システムの構成を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る監視システムの第1の変形例の構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る監視システムの第2の変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本実施形態に係るロボットの監視システムが用いられるロボット1の構成を示す図である。このロボット1の構成は特許文献1に記載のものと同様であり、図1においては、これが簡略化、模式化されて示されている。このロボット1においては、本体部(基体)10に対して複数のアームが組み合わされて装着され、各アームの動きが制御されることによって所望の動作が行われる。まず、本体部20の上に共通アーム(アーム)11が装着され、共通アーム11に対して連結部(アーム)12、13を介してそれぞれアーム14、15が装着される。共通アーム11は本体部10に対して回動軸A1の周りで、アーム14は連結部12(共通アーム11)に対して回動軸A2の周りで、アーム15は連結部13(本体部10)に対して回動軸A3の周りで、それぞれ回転駆動される。
【0021】
このため、本体部10には、共通アーム11を駆動するための機械的機構が設けられる。ここで、回動軸A1はこのロボット1における全体の軸となり、これによってアーム14、15を含む共通アーム11に接続される全ての構成要素が駆動されるため、特に共通アーム11の駆動に際しての負荷は大きくなる。このため、この駆動においては第1駆動部21、第2駆動部22が同時に設けられており、回動軸A1周りの駆動は、第1駆動部21による回動軸A11、第2駆動部22による回動軸A12によって行われる。また、このため、回動軸A11、回動軸A12の動作を回動軸A1の動作に変換するための第3駆動部23が設けられ、回動軸A1周りの動作は直接的には第3駆動部23によって行われる。
【0022】
また、連結部12にはアーム14を駆動するための機械的機構を具備する第4駆動部24が、連結部13にはアーム15を駆動するための機械的機構を具備する第5駆動部25が、それぞれ設けられている。第4駆動部24、第5駆動部25は、それぞれモータ、ギヤ、軸受等を具備し、その詳細は特許文献1に記載されたとおりである。第1駆動部21、第2駆動部22においても、同様にモータ、ギヤ、軸受等が設けられる。第3駆動部23は、回動軸A11、回動軸A12の運動を回動軸A1の運動に変換するためのギヤ、軸受等を具備する。
【0023】
また、このロボット1においては、第1駆動部21~第5駆動部25をユーザ等による操作に従って駆動することによって共通アーム11、アーム14、15の動きを制御するためのCPU等を具備するロボット制御部(ロボット制御装置)50が設けられる。図1においては、ロボット制御部50は本体部(基体)10内に設けられているが、ロボット制御部50がロボット1とは別体で、例えばロボット1から離間した箇所にロボット制御部50が設けられていてもよい。
【0024】
上記において、使用に際しての摩耗や経年劣化等が発生するのは、主に第1駆動部21~第5駆動部25であるため、特許文献2に記載の技術と同様に、故障予知等の観点から、これらの状態をそれぞれ個別に監視することが有効となる。このため、第1駆動部21~第2駆動部25のそれぞれに対してセンサ30が設置されている。センサ30は、特許文献2に記載のものと同様であり、例えば各駆動部に発生した振動を検知するための加速度センサ等が用いられる。センサ30は、各駆動部において振動を検知する部分に対して固定され、自身の大きさ、重量はこの部分と比べて無視できる程度であるため、自身が検知した振動(加速度)が、この部分に加わった加速度であると認識することができる。センサ30の出力は例えば直流電圧の変動として認識され、この出力はアナログ信号となる。
【0025】
図2は、図1におけるロボット1自身の構成を除き、ここで用いられる監視システム2のみの構成を示すブロック図であり、破線の領域内が前記のロボット1の内部に相当する。ここで、センサ30には、各々に対応してAD変換部31が接続される。前記のようにセンサ30は駆動部毎に設けられるため、AD変換部31も駆動部毎にセンサ30の近傍に設けられる。AD変換部31は、センサ30から出力されたアナログ信号G1~G5をそれぞれアナログ-デジタル変換し、この出力をデジタル信号として出力する。センサ30とAD変換部31との間の接続は、例えばノイズの混入を抑制しやすい同軸ケーブルを用いることができるが、AD変換部31を対応するセンサ30の近傍に設置すれば、同軸ケーブルの長さはロボット1の全長と比べると無視できる程度の長さとなる。各AD変換部31からは対応するセンサ30の出力G1~G5に対応するデジタル信号S1~S5が発せられる。
【0026】
前記のようにセンサ30は例えば振動を検知すべき部分に対して直接固定されるが、AD変換部31は、センサ30の近傍でありかつセンサ30からのアナログ出力を同軸ケーブル等で入手可能な位置に設置されればよい。例えば、図1において、第4駆動部24に固定されたセンサ30と接続されたAD変換部31は連結部12の内部に、第5駆動部25に固定されたセンサ30と接続されたAD変換部31は連結部13の内部に、それぞれ固定することができる。
【0027】
図1において、各AD変換部31から出力された各デジタル信号S1~S5は、信号経路L1~L5を介して、本体部10内に設けられパラレル-シリアル変換を行う監視用信号生成部40に並列に入力する。ここで、信号経路L1~L5は実際にはケーブル線で構成されるが、伝搬するデジタル信号S1~S5はデジタル信号であるため、各センサ30から出力されたアナログ信号と比べて、伝搬距離が長い場合でもノイズの混入に対する悪影響が小さい。このため、このケーブル線として、同軸ケーブルを用いる必要はない。この際、第4駆動部24、第5駆動部25に対応したAD変換部31を、連結部(アーム)12、13において、駆動経路における本体部10に近い側(連結部12における図中右側、連結部13における図中左側)に設置すれば、信号経路L4、L5を短くすることができる。この場合においても、センサ30とAD変換部31との間の同軸ケーブルは連結部12、13の全長よりも短くなる。また、この場合には同軸ケーブルも連結部12、13の内部に設けることができ、同軸ケーブルや信号経路がロボット1における動作の障害となることを抑制することができる。
【0028】
また、監視用信号生成部40は、本体部10内の任意の箇所に設けることができる。監視用信号生成部40は、このように並列に入力した各デジタル信号を時系列的に分割してシリアルデータとした監視用信号S0としてロボット1の外部に出力する。
【0029】
図1において、ロボット1とは別体とされたコンピュータである監視装置100は、ロボット1側との間がコネクタCN1(CN11、CN12)、監視装置100側がコネクタCN2(CN21、CN22)で接続された単一の外部ケーブル線Cを介して、監視用信号S0を入手する。これによって、監視装置100は、各センサ30の出力を認識することができ、これを適宜記憶することもできる。監視用信号S0より得たデータ、記憶されたデータを用いることによって、特許文献2に記載の技術と同様に、各センサ30と対応した駆動部の振動の状況に応じた故障の予知を行うことができる。また、監視装置100をネットワークを介して顧客のもつ上位システムに接続し、この上位システムで複数のロボットの管理を行うこともできる。
【0030】
この構成によれば、センサ30からの出力の信号強度が弱い場合でも、外部の監視装置100がこれを容易に認識することができる。この際、ロボット1内における信号の経路の大部分は信号経路L1~L5となり、ここでは高価かつ太い同軸ケーブルを用いる必要がない。このため、この監視システム2を安価とすることができ、かつこの監視システム2を設けたことによって、ロボット1の動作が制限されることもない。
【0031】
一方、図1、2において、本体10には、監視用信号生成部40から出力された監視用信号S0より、各センサ30からの出力信号(アナログ信号G1~G5)を再生したアナログ信号H1~H5を出力するDA変換部60も設けられる。DA変換部60は、監視用信号S0においてデジタル信号S1~S5がシリアル出力される際のフォーマットに応じてこの動作を行うことができ、理想的な場合にはアナログ信号H1~H5はそれぞれアナログ信号G1~G5とそれぞれ同一となる。アナログ信号H1~H5はそれぞれ本体部10から外部に出力される。
【0032】
前記のように、ロボット1と離間した監視装置100において、監視用信号S0を用いて各種の診断、故障の予知等を行うことができる。一方、例えば各センサ30の実際の出力を計測用の機器(例えばオシロスコープ等)に接続して直接見ることが必要となる場合もある。こうした場合においては、上記のような監視用信号S0を直接用いることはできず、各センサ30が発したアナログ信号G1~G5がロボット1の外部に取り出されることが好ましい。しかしながら、前記のように、アナログ信号G1~G5を各センサ30から直接取り出す場合には、ノイズの混入の影響等が大きくなる。
【0033】
これに対して、上記のように監視用信号S0においてはノイズの混入等の影響は小さいため、これより生成(再生)したアナログ信号H1~H5は、元のアナログ信号G1~G5を忠実に再現した信号となる。このため、DA変換部60から出力されたアナログ信号H1~H5を用いて、各センサ30の出力をロボット1の外部で容易に用いることができる。一方、前記のように監視用信号S0は監視装置100においてロボット1の監視を行うためには有効であるため、デジタル信号である監視用信号S0とアナログ信号H1~H5がロボット1から共に出力されることが好ましい。この際、DA変換部60は監視用信号S0からアナログ信号H1~H5を生成するために用いられる。
【0034】
なお、図2においては、DA変換部60は監視用信号S0から全てのセンサ30のアナログ出力H1~H5を再生して同時に並列に出力するが、例えば、ユーザにより指定されたセンサ30のみからのアナログ出力を再生、出力させてもよい。また、上記のようにアナログ信号H1~H5のいずれもロボット1の外部で用いない場合には、DA変換部60は不要である。
【0035】
図1の構成において、アナログ信号G1~G5に対するノイズの混入等の影響を抑制するためには、特に、各センサ30と、対応するAD変換部31との間の距離は近いことが好ましい。一方、各AD変換部31、監視用信号生成部40、DA変換部60、監視装置100の間にはデジタル信号しか伝送されないため、これらの間の距離が近いことは要求されず、これらの設置箇所は適宜設定が可能である。このため、図1においては、監視用信号生成部40、DA変換部60は本体部10(ロボット1)に設けられているが、これらが本体部10の外側に設けられていてもよい。
【0036】
例えば、前記のようにロボット制御部50が本体部10(ロボット1)の外部に設けられている場合、DA変換部60をロボット制御部(ロボット制御装置)50の内部に設け、アナログ信号H1~H5をロボット制御部50から出力させてもよい。この際、監視用信号生成部40もロボット制御部50の内部に設けてもよく、この場合には、監視用信号S0もロボット制御部50から発せられる。
【0037】
また、DA変換部60を監視装置100に設け、アナログ信号H1~H5を監視装置100から出力させてもよい。すなわち、DA変換部60は、上記のようなロボットの監視システム2において、任意の箇所に設けることができる。このため、このアナログ信号H1~H5を利用する他の装置に応じて、最適な位置にDA変換部60を設けることができる。
【0038】
また、上記の例では、監視装置100(コンピュータ)は監視用信号S0を用いてロボット1の監視、故障の予知を行うコンピュータであるものとしたが、例えば図1において、ケーブル線Cとコンピュータとを直接接続せず、ケーブル線CにはPLC(プログラマブルロジックロジックコントローラ)を接続し、このPLCとコンピュータをネットワーク(イーサネット等)で接続し、このコンピュータが故障の予知等を行ってもよい。
【0039】
上記の監視システム2においては、各駆動部に対して単一のセンサ30が固定された。しかしながら、単一の駆動部に対して複数のセンサを設けることもできる。この場合、各センサは異なる物理量を検知し、目的に応じて各駆動部あるいはその近傍における異なる箇所(目的に応じて適した箇所)に設置することができる。図3は、この構成を具備する第1の変形例となる監視システム3の構成を示すブロック図である。
【0040】
ここでは、各駆動部に対してN個のセンサ30-1~30-Nが設置される。センサ30-1~30-Nは各駆動部における様々な物理量を検知する。具体的には、前記のように各駆動部における一部の振動を検知するための加速度センサ、温度を検知するための温度センサ、部材の温度上昇等に伴う匂い(異臭:臭気)を検知する匂いセンサ、音(異音)を検知するマイクロフォン等を用いることができる。また、同一種類のセンサを単一の駆動部において複数用いてもよく、例えば、温度センサを各駆動部における異なる2箇所に設置することによって、特定の部分間の温度差が計測される設定とすることもできる。
【0041】
また、駆動部毎に異なるセンサを用い、監視装置100側で認識する物理量を駆動部毎に変えてもよい。例えば、図1において、回動軸A1を駆動するために負荷が大きくモータの消費電力が大きな第1駆動部21、第2駆動部22に対しては温度センサや匂いセンサを用いるが、末端側にあるために負荷が小さな第4駆動部24、第5駆動部25に対しては温度センサや匂いセンサを設けずに、重量を軽くするような構成とすることもできる。
【0042】
図2の構成においては、各AD変換部31には対応する単一のセンサ30の出力のみが入力したのに対して、この監視システム3においては、単一のAD変換部32に対して、センサ30-1~30-Nの出力が並列に入力する。このため、このAD変換部32は、センサ30-1~30-Nの各出力をAD変換すると共に、デジタル化された各出力をシリアル化したデジタル信号S11、S12等を出力する。デジタル信号S11、S12等は前記の場合と同様に、並列に監視用信号生成部41に入力し、これによって更にこれらは監視用信号S10として、前記と同様に外部の監視装置100側に出力され、監視装置100は、これによって各駆動部におけるセンサ30-1~30-N等の出力を認識し、各駆動部毎の故障予知等を行うことができる。
【0043】
ここで用いられるAD変換部32としては、駆動部毎に異なる仕様のものを用いることができるが、同一仕様のものを用いることもできる。この際、接続されるセンサに応じて使用される同軸ケーブルやその接続端子が異なる場合には、複数種類の入力端子が選択可能とされれば、共通のユニットをAD変換部32として用いることができる。
【0044】
前記の通り、このように監視装置100が監視用信号S10を受信することは故障予知等のために行われる。このため、監視装置100が監視用信号S10を受信する、あるいは監視用信号生成部41が監視用信号S10を生成・出力する動作は、例えばロボット1において制御部が各駆動部を制御する動作の時間分解能(例えばmsec程度)等と比べて、十分に長い時間スケール(例えば1日程度)でのみ行われる。このため、このように多くのデータ(センサの出力)を用いたシリアルデータで構成される監視用信号S10を生成することができる。
【0045】
また、前記の監視システム2と同様に、この監視システム3においても、監視用信号S10から各駆動部におけるセンサ30-1~30-N等の出力を再生したアナログ信号を出力するDA変換部61が設けられる。DA変換部61は指定されたセンサのみに対応したアナログ信号を出力してもよいこと、このアナログ信号が監視システム3の外部で用いられない場合にはDA変換部61を設ける必要がないこと、についても同様である。
【0046】
また、監視用信号生成部、各AD変換部の間においては、センサ30と、対応するAD変換部との間の距離を小さくし、上記のように監視用信号生成部40がシリアル信号である監視用信号を出力できる限りにおいて、他の接続方法も適用可能である。図4は、この例(第2の変形例)となる監視システム4の構成を示すブロック図である。ここでは、単純化のために、前記の監視システム2と同様に、各駆動部毎に単一のセンサ30(301~305)が用いられているものとしている。ここでは、AD変換部331~335は、デイジーチェーン接続される。
【0047】
前記の監視システム2においては、各AD変換部31は対応するセンサ30からの入力と、これに対応するデジタル出力をするのみであったのに対し、図4においては、AD変換部331~334については、それぞれにおいてセンサ301~304からの出力が入力すると共に、隣接するAD変換部からの出力も入力する。また、AD変換部331~334の出力は前記のようにセンサ301~304の各々の出力をデジタル信号としたものと、隣接するAD変換部から得られた信号とがシリアルに出力されたデジタル信号となる。最も末端にあるAD変換部335には、センサ305の出力(アナログ信号)のみが入力し、AD変換部335は、これに対応したデジタル信号のみを出力する。
【0048】
このため、AD変換部335の出力となるデジタル信号S25は、AD変換部334、333、332、331を介して、AD変換部334の出力となるデジタル信号S24は、AD変換部333、332、331を介して、AD変換部333の出力となるデジタル信号S23は、AD変換部332、331を介して、AD変換部332の出力となるデジタル信号S22は、AD変換部331を介して、監視用信号生成部42が入手する。AD変換部331の出力は監視用信号生成部42が直接入手する。これによって、監視用信号生成部42は、AD変換部331~335の出力(センサ301~305のデジタル出力)をシリアル信号とした監視用信号S20を出力することができ、これによって監視装置100は前記と同様の動作をすることができる。
【0049】
ここで、前記の監視システム2における信号経路L1~L5と同様に、信号経路L10~L14は、ロボット1の内部に設けられる。ただし、図1、2における信号経路L1~L5の全てが監視用信号生成部40に接続されたのに対し、図4においては監視用信号生成部42と接続されるのは信号経路L10のみとなる。また、例えば図1において第1駆動部21、第2駆動部22、第3駆動部23、監視用信号生成部40(42)は近接して設けられているため、図4の構成においては、特に信号経路L10、L11、L12を短くすることができる。一方、信号経路の数(対応するケーブル線の本数)は図1、2の場合と比べて変わりがない。これによって、更にノイズの影響を低減することができると共に、各信号経路の取り回しがロボット1の動作に影響を及ぼすことも低減される。
【0050】
このようなデイジーチェーン接続において、接続されるAD変換部(図4において隣接するように設定されるAD変換部)は、対応する駆動部のロボット中の位置に応じて、信号経路が短くなるように適宜設定することができる。すなわち、このようなAD変換部(あるいは対応する駆動部)の接続の組み合わせは、ロボットの構成に応じて適宜設定が可能である。これによる信号経路の短縮化の効果は、駆動部の数が多い、すなわち複雑な動きをするロボットの場合において、特に顕著となる。
【0051】
また、図4の監視システム4においては、AD変換部331と監視用信号生成部42とを共通化することもできる。これによって、構成を単純化することもできる。なお、図4においては駆動部毎に単一のセンサが設けられたが、前記の監視システム3と同様に、単一の駆動部に複数のセンサを設けても同様の構成とすることができる。
【0052】
また、前記の監視システム2、3と同様に、この監視システム4においても、監視用信号S20から各駆動部におけるセンサ301~305の出力を再生したアナログ信号H1~H5を出力するDA変換部62が設けられる。DA変換部62は指定されたセンサのみに対応したアナログ信号を出力してもよいこと、このアナログ信号が監視システム4の外部で用いられない場合にはDA変換部62を設ける必要がないこと、についても同様である。
【0053】
(本形態の主な特徴)
本実施形態の特徴を簡単に纏めると次の通りである。
(1)このロボットの監視システム2は、基体10と、基体10に直接または間接的に装着され駆動部21~25によって駆動されるアーム11~15と、を具備するロボット1に固定されたセンサ30からの出力によってロボット1の状況を監視し、駆動部21~25に対応してロボット1において固定され、駆動部21~25における加速度、温度、音、臭気のいずれかを検知してアナログ信号を出力する複数のセンサ30と、ロボット1において固定され、センサ30から出力されたアナログ信号をデジタル信号S1~S5に変換するAD変換部31と、基体10に設置され、デジタル信号S1~S5をシリアルデータとした監視用信号S0を出力する監視用信号生成部40と、ロボット1と別体とされ、監視用信号S0をロボット1側から受信してロボット1の状況を監視する監視装置100を具備する。
【0054】
この構成においては、ロボット1に固定された複数のセンサ30によって、特に駆動部21~25の状況(振動、発熱、異音、異臭の発生)を検知することができる。センサ30の出力G1~G5は、AD変換部31によってロボット1の内部でデジタル信号S1~S5とされてからロボット1の内部を長距離にわたり伝わる。その後に、デジタル信号S1~S5がシリアルデータとされた監視号用信号S0として出力される。このため、ノイズの混入等が抑制された状態でセンサ30の出力を監視用信号S0としてロボット1の外部の監視装置100が読み出すことができる。
【0055】
(2)ロボット1は駆動部21~25を具備し、センサ30及びAD変換部31は駆動部21~25毎に設けられている。
この構成によれば、センサ30によってロボット1における駆動部21~25毎の状況を外部の監視装置100が認識することができる。
【0056】
(3)ロボットの監視システム3は、駆動部21~25毎に、複数のセンサ30と単一のAD変換部31を具備し、AD変換部32は、対応する複数のセンサ30が出力した複数のアナログ信号をデジタル化し、かつシリアル出力したデジタル信号S11~S15を出力する。
この構成によれば、単一の駆動部における各種の状況を複数のセンサ30によって認識することができる。この際、AD変換部32は駆動部毎に単一のものを用いることができる。
【0057】
(4)AD変換部31は、アーム12,13における、対応するセンサ30よりもロボット1の駆動経路において基体10に近い側に固定されている。
この構成によれば、ロボット1内におけるAD変換部31から基体10に設けられた監視信号生成部40までのデジタル信号S4、S5の伝達経路(信号経路L4、L5)を短くすることができる。
【0058】
(5)基体10に駆動部21~23、センサ30及びAD変換部31が設けられている。
この構成においては、駆動部21~23、これに対応したセンサ30、AD変換部31が基体10に設けられる。基体10側に設けられる駆動部21~23の負荷は大きくなるが、これによって、この駆動部21~23の状況を外部の監視装置100が認識することができる。
【0059】
(6)ロボットの監視システム4において、AD変換部331~335がデイジーチェーン接続され、そのうちの一つであるAD変換部331が監視用信号生成部42に接続されている。
この構成においては、AD変換部331~335がデイジーチェーン接続されることによって、ロボット1の中におけるデジタル信号S21~S25の伝達経路(信号経路L10~L15)の全長を特に短くすることができる。これによって、ノイズの混入が抑制され、かつ信号経路L10~L15がロボット1の動作の障害になることが抑制される。
【0060】
(7)センサ30から出力されたアナログ信号G1等を監視用信号S0よりセンサ30毎に再生して出力するDA変換部60が設けられている。
この構成によって、使用されたセンサ30の出力をそのままの形態で監視システム2の外部からアナログ信号H1等として読み出すことが可能となる。これによって、ロボット1の動作の監視を特に正確に行うことができる。
(8)DA変換部60は基体10の外部に設けられている。
このDA変換部60に対する入力はデジタル信号である監視用信号S0であるため、その動作に対するノイズの混入等の影響は小さい。このため、監視システム2中の様々な箇所、例えば基体10の外部の監視装置100等にDA変換部60を設けることができる。
(9)DA変換部60は、複数のセンサ30のうちの選択されたものに対応するアナログ信号を再生して出力する。
この場合、ロボット1において使用されるセンサ30の数が多い場合において、DA変換部60の動作や出力を効率的に行わせることができる。
【0061】
本発明を、実施形態及びその変形例をもとに説明したが、この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0062】
1 ロボット
2~4 監視システム
10 本体部(基体)
11 共通アーム(アーム)
12、13 連結部(アーム)
14、15 アーム
21 第1駆動部(駆動部)
22 第2駆動部(駆動部)
23 第3駆動部(駆動部)
24 第4駆動部(駆動部)
25 第5駆動部(駆動部)
30、30-1~30-N、301~305 センサ
31、32、331~335 AD変換部
40、41、42 監視用信号生成部
50 ロボット制御部(ロボット制御装置)
60、61、62 DA変換部
100 監視装置
A1~A3、A11、A12 回動軸
C ケーブル線
CN1、CN11、CN12、CN2、CN21、CN22 コネクタ
G1~G5、H1~H5 アナログ信号
L1~L5、L10~L14 信号経路
S0、S10、S20 監視用信号
S1~S5、S11~S15、S21~S25 デジタル信号
図1
図2
図3
図4