(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240708BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240708BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240708BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240708BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240708BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/00 A
H01M8/249
H01M8/04302
H02J3/38 170
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2020132665
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2022-09-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、環境省地球環境局 CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-146258(JP,A)
【文献】特開2017-60316(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135180(WO,A1)
【文献】特開2017-126441(JP,A)
【文献】特開2016-152659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
H02J 3/32,3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動電力が商用系統から供給される複数の燃料電池発電モジュールを備える燃料電池システムと、
前記燃料電池システムに前記起動電力を供給する前記商用系統に接続されて、前記燃料電池システムが運転不能である場合に、蓄えられた電力を非常用電力として前記商用系統から需要家に供給する非常用蓄電装置と、
を備える電力供給システムであって、
前記燃料電池システムは、
前記複数の燃料電池発電モジュールのそれぞれは、供給された燃料を用いて発電を行う燃料電池を備えており、
前記複数の燃料電池発電モジュールは、第1のモジュールグループと第2のモジュールグループとに区分され、前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールは、前記商用系統が停電した場合に、蓄えられた電力を起動電力として供給する蓄電装置を備えているが、前記第2のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールは、前記蓄電装置を備えて
おらず、
前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールにおける前記蓄電装置は、前記燃料電池発電モジュールの商用系統が接続されるラインに接続された第1の蓄電装置ユニットと、前記燃料電池発電モジュールの前記燃料電池の出力ラインに接続された第2の蓄電装置ユニットとを備える、
電力供給システム。
【請求項2】
前記複数の燃料電池発電モジュールの起動を制御する制御装置をさらに備えており、
前記制御装置は、前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールが起動されて発電状態となった場合に、この燃料電池発電モジュールが発電した電力を起動電力として用いて、前記第2のモジュールグループに含まれる少なくとも1つの燃料電池発電モジュールを起動する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュールは、1つであり、
前記制御装置は、前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールが発電した電力を起動電力として用いて、前記第2のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールのうちの1つ又は複数を起動する、請求項
2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュールは、複数であり、
前記制御装置は、前記第1のモジュールグループに含まれる複数の燃料電池発電モジュールが起動されて発電状態となった場合に、
前記第1のモジュールグループに含まれる複数の燃料電池発電モジュールが発電した電力を起動電力として用いて、前記第2のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールのうちの1つ又は複数の燃料電池発電モジュールを起動する、
請求項
2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記複数の燃料電池発電モジュールのそれぞれは、前記燃料電池に燃料を供給する補機をさらに備えており、
前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールにおける前記蓄電装置は、起動電力を少なくとも前記補機に供給して前記補機を起動し、前記補機から燃料を前記燃料電池に供給する、請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記蓄電装置は、1つ分の燃料電池発電モジュールの起動電力を賄うために必要な容量の蓄電池を備える、請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記非常用蓄電装置は、前記燃料電池発電モジュールに起動電力を供給して、前記燃料電池発電モジュールを起動させることができる、請求項1乃至請求項
4のいずれかに記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記蓄電装置を、前記複数の燃料電池発電モジュールのいずれかに択一的に接続するスイッチをさらに備えており、
前記制御装置は、前記複数の燃料電池発電モジュールの運転可否情報に基づいて、前記スイッチを制御して、前記蓄電装置を接続する燃料電池発電モジュールを選択する、
請求項
2乃至請求項
4のいずれかに記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池システム及び電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは、商用系統や需要家の負荷に系統連系されており、燃料電池、パワーコンディショナ(以下、「PCS:Power Conditioning System」という。)を備えている。PCSは燃料電池で発電された電力を直流電流から、商用系統及び需要家の負荷に用いられる交流電流に変換する。燃料電池が発電するには、燃料や冷却水をその燃料電池に供給する必要があり、燃料電池システムはそのための補機をさらに備える必要がある。
【0003】
燃料電池システムは、発電を開始するまで起動電力、すなわち補機動力を燃料電池システム外部から供給される必要がある。このため、蓄電装置をその燃料電池システム内部に備えることにより、商用系統が停電した場合においても補機動力を確保し、補機を起動させることで燃料電池を起動させることができる。その一方で、燃料電池が発電を開始した後は、自らが発電した電力の一部を自己消費することで、外部の商用系統からの電力供給は必須ではなくなる。
【0004】
しかし、燃料電池システムは、発電容量が大きいほど、そのための起動電力も大きくなり、起動電力を供給する蓄電装置の容量についても同様に大きくなる。そのため、蓄電装置の体積や重量が増加し、高コストとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本実施形態は、蓄電装置の容量を削減し、その体積やコストの増大を抑制した燃料電池システム、及び、そのような燃料電池システムを備える電力供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る燃料電池システムは、起動電力が商用系統から供給される複数の燃料電池発電モジュールを備える燃料電池システムであって、前記複数の燃料電池発電モジュールのそれぞれは、供給された燃料を用いて発電を行う燃料電池を備えており、前記複数の燃料電池発電モジュールは、第1のモジュールグループと第2のモジュールグループとに区分され、前記第1のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールは、前記商用系統が停電した場合に、蓄えられた電力を起動電力として供給する蓄電装置を備えているが、前記第2のモジュールグループに含まれる前記燃料電池発電モジュールは、前記蓄電装置を備えていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット交流系統設置型)。
【
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの起動処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統設置型)。
【
図4】第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型)。
【
図5】第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット交流系統設置型)。
【
図6】第2実施形態に係る燃料電池システムの起動処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。
【
図7】第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統設置型)。
【
図8】第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型)。
【
図9】第3実施形態に係る電力供給システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図10】第3実施形態に係る電力供給システムの起動処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。
【
図11】第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット交流系統設置型)。
【
図12】第4実施形態に係る燃料電池システムの起動処理の処理内容を説明するフローチャートを示す図である。
【
図13】第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統設置型)。
【
図14】第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置ユニット直流系統及び交流形態両設置型)。
【
図15】第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である(蓄電装置設置型)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、燃料電池システムの実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る燃料電池システム1の全体構成を示すブロック図である。この
図1に示すように、本実施形態における燃料電池システム1は、制御装置10と、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12と、第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14を備えている。すなわち、本実施形態においては、燃料電池システム1は、複数の燃料電池発電モジュール12及び14に分割したモジュール構成となっており、分割した燃料電池発電モジュール12及び14は、それぞれがひとつの燃料電池システムとして機能する。例えば、定格容量が1MWの燃料電池システム1である場合、燃料電池発電モジュール12及び14のうちの1つのモジュールが100kWの定格容量を備えており、このモジュール10台で、燃料電池システム1が構成される。
【0011】
制御装置10は、燃料電池発電モジュール12及び14に必要な制御を行う。例えば、制御装置10は、燃料電池発電モジュール12及び14へ指令を送信するコンピュータ、及び、それぞれの燃料電池発電モジュール12及び14と通信し得る通信部等によって実現される。制御装置10のコンピュータは、例えば、さらにそれぞれの燃料電池発電モジュール12及び14の発電状況を管理し、発電状況を記憶する処理記憶ユニット等を備えており、得られた発電状況に基づき、適切な指令を、燃料電池発電モジュール12及び14に対して送信する。また、制御装置10は、通信部を介して、有線や無線通信により、制御装置10と燃料電池発電モジュール12及び14を結合させ、両者の間の通信機能を実現する。その結合の方法は、電気的、機械的、又はこれらを結合した手段などである。
【0012】
燃料電池発電モジュール12及び14は、商用系統に接続されており、燃料電池発電モジュール12及び14が発電した電力は、商用系統を介して、需要家の負荷に供給される。また、燃料電池発電モジュール12及び14が停止している状態から起動させる場合には、起動電力が商用系統から燃料電池発電モジュール12及び14に供給される。このため、この燃料電池システム1が備える燃料電池発電モジュール12及び14に起動電力を供給して、一斉に起動させることが可能である。
【0013】
第1のモジュールグループである、燃料電池発電モジュール12は、モジュール制御装置20と、補機22と、蓄電装置ユニット24と、PCS26と、燃料電池28とを備えている。一方、第2のモジュールグループである、燃料電池発電モジュール14は、モジュール制御装置20と、補機22と、PCS26と、燃料電池28とを備えている。言い換えると、第1のモジュールグループの燃料電池発電モジュール12は、蓄電装置ユニット24を備え、第2のモジュールグループの燃料電池発電モジュール14は、蓄電装置ユニット24を備えていない。そして、燃料電池発電モジュール12及び14を構成する各部は、商用系統からの電力供給が可能な形態にて互いに接続されている。
【0014】
図1に示す燃料電池システム1においては、第1のモジュールグループの燃料電池発電モジュール12は1つであり、第2のモジュールグループの燃料電池発電モジュール14は1つ又は複数である。
【0015】
第1のモジュールグループの燃料電池発電モジュール12においては、モジュール制御装置20は、補機22と、蓄電装置ユニット24と、PCS26と、燃料電池28に対して、必要な制御を行う。第2のモジュールグループの燃料電池発電モジュール14においては、モジュール制御装置20は、自らの燃料電池発電モジュール14における、補機22と、PCS26と、燃料電池28に対して、必要な制御を行う。例えば、モジュール制御装置20は、補機22、蓄電装置ユニット24、PCS26及び燃料電池28へ指令を送信するコンピュータ、及び、制御装置10と通信し得る通信部等によって実現される。モジュール制御装置20のコンピュータは、例えば、さらに、補機22の起動状況、蓄電装置ユニット24の蓄電又は電力供給状況、PCS26の電流変換状況及び燃料電池28の発電状況を管理し、それら各種状況を記憶する処理記憶ユニット等を備えており、得られた状況を適時に制御装置10に送信したり、制御装置10から必要な指令について通信部等を介して受信したりする。モジュール制御装置20は、通信部を介して、有線や無線通信により、燃料電池発電モジュール12及び14と制御装置10をそれぞれ結合させ、その結合の方法は、電気的、機械的、又はこれらを結合した手段などである。
【0016】
補機22は、燃料電池28が発電するために必要な燃料、例えば水素や空気、及び冷却水等などを燃料電池28へ供給する。補機22は、例えば、ブロアやポンプ等によって実現される。この燃料電池発電モジュール12及び14が発電動作をしている場合には、補機22には、その動作電源が商用系統から供給されてもよいし、或いは、燃料電池28が発電した電力が供給されてもよい。
【0017】
この燃料電池発電モジュール12及び14が停止している状態から起動する場合には、商用系統から起動電力を供給する。このため、商用系統が停電している場合には、燃料電池発電モジュール14の補機22には起動電力を供給することができない。一方、燃料電池発電モジュール12の補機22には、商用系統が停電している場合でも、蓄電装置ユニット24から起動電力を供給することができる。
【0018】
燃料電池発電モジュール12に設けられている蓄電装置24ユニットは、燃料電池発電モジュール12の交流系統に設置され、商用系統が停電した場合などに、補機22へ起動電力を供給する。蓄電装置ユニット24は、例えば、蓄電池によって実現される。この蓄電池は、例えば、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン蓄電池などで構成することができ、放電後においては再び蓄電することによって再利用が可能である。また、この蓄電装置ユニット24は、少なくとも補機22に起動電力を供給するが、モジュール制御装置20やPCS26にも、必要に応じて、起動電力を供給するようにしてもよい。
【0019】
例えば、蓄電装置ユニット24は、商用系統から電力の供給を受けて、蓄電することが可能である。また、蓄電装置ユニット24は、燃料電池28が発電した電力の供給を受けて、蓄電することが可能である。本実施形態においては、この蓄電装置ユニット24は、燃料電池発電モジュール12を停止状態から起動するための起動電力を賄うために必要な容量を有している。好ましくは、この蓄電装置ユニット24の容量は、燃料電池発電モジュール12を起動するために必要となる起動電力の容量と同等か、或いは、わずかに大きい程度の容量であることが望ましい。これは、必要以上の容量を蓄電装置ユニット24が備えることは、この蓄電装置ユニット24の重量や製造コストが必要以上に増大してしまうからである。
【0020】
PCS26は、燃料電池28が発電した電力を直流電流から交流電流に変換する。需要家の負荷、例えば、家庭用電源や機械設備などが挙げられるが、それらは通常、交流電流が用いられる。一方で、燃料電池28から発電された電力は直流電流であることが通常である。そのため、燃料電池発電モジュール12及び14で発電された電力を、商用系統を介して需要家の負荷へ供給する場合、PCS26を介して供給する。本明細書において、商用系統及び燃料電池システム1を含めた電力系統において、PCS26よりも商用系統側の系統を「交流系統」、PCS26よりも燃料電池側を「直流系統」とよぶ。
【0021】
したがって、
図1に記載の実施形態においては、蓄電装置ユニット24はPCSよりも商用系統側に設置されているので、蓄電装置ユニット24は交流系統に存在するということができ、本実施形態に係る燃料電池システム1は、「蓄電装置ユニット交流系統設置型」であるということができる。
【0022】
燃料電池28は、補機22から、水素や空気等の燃料や、冷却水の等供給を受けて発電し、商用系統を介して、需要家の負荷に電力を供給する。本実施形態においては、例えば、燃料電池28は、定常的に発電を行い電力の供給をするようにしてもよいし、或いは、商用系統の停電時において、商用系統とは独立した供給ラインにて需要家の特定負荷へ電力を供給するようにしてもよい。燃料電池28は、例えば水素などと、酸化剤、例えば酸素などとを電気化学的に反応させて、電気エネルギーを生成する装置であり、例えば水素酸素燃料電池などで実現することができる。
【0023】
次に、本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される各種の処理について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理を説明するフローチャートを示す図である。この燃料電池システム起動処理は、商用系統から電力の供給を受けられない状況において、制御装置10が停止している燃料電池システム1を起動させる際に実行される処理である。すなわち、商用系統から起動電力の供給を受けることなく、停止している燃料電池発電モジュール12及び14を順次起動し、燃料電池システム1で発電が行えるようにするために実行される処理である。
【0024】
この
図2に示すように、この燃料電池システム起動処理においては、燃料電池システム1は、蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力を起動電力として用いて、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12を起動する(ステップS10)。本実施形態においては、例えば、商用系統から起動電力の供給が受けられない状況下で、燃料電池システムを起動させる必要が生じた場合に、制御装置10が燃料電池発電モジュール12に起動すべき指令を送信することにより、燃料電池発電モジュール12を起動させる。
【0025】
燃料電池発電モジュール12が起動するには、制御装置10から、燃料電池発電モジュール12のモジュール制御装置20が、燃料電池発電モジュール12を起動すべき旨の指令を受信したのちに、蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力を活用して、補機22を起動させる。補機22が起動したのちに、補機22が燃料電池28に燃料及び冷却水等を供給し、燃料電池28を起動させる。燃料電池28が起動し、電力を商用系統や燃料電池発電モジュール14自体に電力供給が可能な状態になったならば、燃料電池発電モジュール12は起動したことになる。
【0026】
次に、制御装置10は、第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14の中から、起動する燃料電池発電モジュール14を決定する(ステップS12)。本実施形態においては、制御装置10が、第2のモジュールグループに含まれる複数の燃料電池発電モジュール14の中から、いずれか1つの燃料電池発電モジュール14を選択することになる。
【0027】
第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14は、蓄電装置ユニット24を備えていないため、起動するためには外部から起動電力の供給を受ける必要がある。そのため、商用系統などから起動電力の供給を受ける必要があるところ、例えば、停電時などにおいては、商用系統から起動電力の供給を受けられないため、既に発電状態になっている、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12から起動電力の供給を受けることで、商用系統から起動電力の供給を受けることなく、燃料電池発電モジュール14は起動することができる。
【0028】
次に、制御装置10は、ステップS12において決定された燃料電池発電モジュール14について、起動電力を供給して起動する(ステップS14)。起動電力の供給を受けたのちの燃料電池発電モジュール14が起動する流れは、燃料電池発電モジュール12が起動する流れと同様であるため、ここでは詳述しない。
【0029】
なお、これらステップS12及びステップS14で起動する第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14の数は、1つに限られるものではなく、一度に複数の燃料電池発電モジュール14を起動するようにしてもよい。すなわち、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12が発電した電力で、第2のモジュールグループに含まれる2つ以上の燃料電池発電モジュール14における補機22の起動電力を賄える場合には、その賄える電力に応じて、複数の燃料電池発電モジュール14を起動するようにしてもよい。
【0030】
次に、制御装置10は、第1及び第2のモジュールグループに含まれるすべての燃料電池発電モジュール12及び14が起動したか否かを判断する(ステップS16)。すなわち、この燃料電池システム1が備えるすべての燃料電池発電モジュール12及び14を起動したか否かを判断する。
【0031】
すべての燃料電池発電モジュールが起動している場合(ステップS16:Yes)、本実施形態に係る燃料電池システム起動処理は終了する。一方、すべての燃料電池発電モジュールを起動していない場合(ステップS16:No)、制御装置10は、ステップS12に戻り、上述した処理を全ての燃料電池発電モジュールが起動するまで繰り返す。
【0032】
なお、燃料電池発電モジュール12が起動して発電状態となった場合、その発電された電力の容量に応じて、ステップS14で起動する燃料電池発電モジュール14の台数を調整することが可能である。例えば、起動された1つの燃料電池発電モジュール12が供給する電力で、2つの燃料電池発電モジュール14が起動できる場合には、ステップS12で2つの燃料電池発電モジュール14を起動すると決定し、ステップS14で2つの燃料電池発電モジュール14を起動するようにしてもよい。
【0033】
また、例えば、1つの燃料電池発電モジュール12と1つの燃料電池発電モジュール14とが発電状態となっている場合には、その供給電力を起動電力として用いて、2つの燃料電池発電モジュール14を起動することも可能である。
【0034】
一方、例えば、1つの燃料電池発電モジュール12と2つの燃料電池発電モジュール14とが発電状態となっている場合には、その供給電力を起動電力として用いて、3つの燃料電池発電モジュール14を起動することも可能であり、4つの燃料電池発電モジュール14を起動することも可能である。すなわち、起動されて発電状態となった燃料電池発電モジュール12及び14が発電する電力容量に基づいて、ステップS14で起動する燃料電池発電モジュール14の台数は、任意に設定可能であり、少なくとも1つの燃料電池発電モジュール14を起動すると捉えることができる。
【0035】
次に、
図3に基づいて、第1実施形態に係る燃料電池システム1の変形例を説明する。
図3は、第1実施形態に係る燃料電池システム1の全体構成を示すブロック図であり、「蓄電装置ユニット直流系統設置型」の例を示している。すなわち、燃料電池発電モジュール12において、蓄電装置ユニット24がPCS26よりも燃料電池側に設置されている実施形態である。
【0036】
本実施形態に関しては、蓄電装置ユニット24から補機22へ供給される電力は、PCS26を介するため、蓄電装置ユニット24が供給する電力は直流電流であるが、PCS26において交流電流に変換されて、補機22には交流電流が供給される。
【0037】
図3に示す燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理に関しては、
図2と同様であることから、ここでは詳述しない。
【0038】
次に、
図4に基づいて、第1実施形態に係る燃料電池システム1の別の変形例を説明する。
図4は、第1実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図であり、「蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型」の例を示している。すなわち、燃料電池発電モジュール12において、蓄電装置ユニット24がPCS26の燃料電池側及び商用系統の両方に設置されている実施形態である。
【0039】
本実施形態に関しては、上述した
図1の燃料電池システム1と
図3の燃料電池システム1とが組み合わさった変形例であり、2つの蓄電装置ユニット24から起動電力が補機22に供給される。また、これに加えて、2つの蓄電装置ユニット24を燃料電池発電モジュール12が備えることになるので、例えば、どちらかの蓄電装置ユニット24が補機22へ電力供給が不可能である場合にも、もう一方の蓄電装置ユニット24から補機22へ電力供給が可能であるため、燃料電池発電モジュール12の起動に関して冗長性を持たせることができる。
【0040】
換言すれば、上述した
図1、
図3及び
図4の燃料電池システム1の構成から明らかなように、本実施形態に係る第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12は、商用系統が接続されるラインに接続された蓄電装置ユニット24と、燃料電池28の出力ラインに接続された蓄電装置ユニット24とのうちの少なくとも一方を備えていればよい。
【0041】
本実施形態に係る本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理に関しては、
図2と同様であることから、ここでは詳述しない。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る燃料電池システム1によれば、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12に蓄電装置ユニット24を設け、商用系統から電力の供給を受けられない状況で、停止している燃料電池システム1を起動しなければならない場合には、この蓄電装置ユニット24に蓄えられている電力を用いて、まず燃料電池発電モジュール12を起動することとした。このため、燃料電池システム1全体を起動するよりも、小さい蓄電容量で燃料電池発電モジュール12を起動させることができる。そして、起動された燃料電池発電モジュール12の発電した電力を、起動電力として用いて、順次、第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14を起動させ、最終的にはすべての燃料電池発電モジュール14も起動させることができるようにした。このため、従来のように大きな蓄電容量の蓄電装置を設ける必要がなくなり、設置する蓄電装置の体積、重量、及びコストを抑えることができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る燃料電池システム1は、上述した第1実施形態に係る燃料電池システム1に、第1のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール12の数を新たなに1つ追加し、合計2つの燃料電池発電モジュール12を備えることにより、燃料電池システム1の起動に要する時間を短縮するとともに、より燃料電池システム1の冗長性や信頼性を向上させ、安定的に燃料電池システム1が起動するようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0044】
図5は、第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。この
図5に示すように、本実施形態における燃料電池システム1は、制御装置10と、第1のモジュールグループに属する2つの燃料電池発電モジュール12と、第2のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール14を備えている。
【0045】
本実施形態における第1のモジュールグループに属する2つの燃料電池発電モジュール12は、各々の蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力を起動電力として用いることで、それぞれが独立して自ら起動することができる。本実施形態では、第1のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール12の数が2つになるため、第1のモジュールグループが備える起動電力の総容量は第1実施形態に比べて約2倍となる。
【0046】
図5に記載の実施形態においては、蓄電装置ユニット24はPCSよりも商用系統側に設置されているので、蓄電装置ユニット24は交流系統に存在するということができ、本実施形態は、「蓄電装置ユニット交流系統設置型」の燃料電池システム1ということができる。
【0047】
次に、
図6に基づいて、本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理を説明する。
図6に示す燃料電池システム起動処理は、上述した
図2に示す燃料電池システム起動処理に対応する処理であるが、ここでは、最初に2つの燃料電池発電モジュール12を起動させる点で相違している。
【0048】
この
図6に示すように、この燃料電池システム起動処理においては、蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力を起動電力として用いて、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12を起動する(ステップS20)。本実施形態においては、上述の通り、燃料電池発電モジュール12が2つあるため、制御装置10は、2つの燃料電池発電モジュール12の起動に関する指令を送信する。
【0049】
上述の制御装置10が送信する指令であるが、例えば、2つの燃料電池発電モジュール12を同時に起動させてもよく、時間差を設けて順番に起動させてもよく、一方の燃料電池発電モジュール12が故障している場合などにおいては片方の燃料電池発電モジュール12だけを起動させてもよい。
【0050】
次に、制御装置10は、第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14の中から、起動する燃料電池発電モジュール14を決定する(ステップS22)。本実施形態においては、制御装置10が、第2のモジュールグループに含まれる複数の燃料電池発電モジュール14の中から、いずれか2つの燃料電池発電モジュール14を選択する。
【0051】
次に、制御装置10は、ステップS22において決定された燃料電池発電モジュール14について、起動電力を供給して起動する(ステップS24)。そして、制御装置10は、第1及び第2のモジュールグループに含まれるすべての燃料電池発電モジュール12及び14が起動したか否かを判断する(ステップS26)。これらステップS24及びステップS26の処理は、上述した第1実施形態におけるステップS14及びステップS16の処理と同様である。
【0052】
なお、2つの燃料電池発電モジュール12が起動して発電状態となった場合、その発電された電力の容量に応じて、ステップS24で起動する燃料電池発電モジュール14の台数を調整することが可能である。例えば、起動された2つの燃料電池発電モジュール12が供給する電力で、3つの燃料電池発電モジュール14が起動できる場合には、ステップS22で3つの燃料電池発電モジュール14を起動すると決定し、ステップS24で3つの燃料電池発電モジュール14を起動するようにしてもよい。一方で、起動された2つの燃料電池発電モジュール12が供給する電力で、1つの燃料電池発電モジュール14しか起動できない場合には、ステップS22で1つの燃料電池発電モジュール14を起動すると決定し、ステップS24で1つの燃料電池発電モジュール14を起動するようにしてもよい。
【0053】
上述の通り、本実施形態に係る燃料電池システム1の第1のモジュールグループは、合計2つの燃料電池発電モジュール12を備えているため約2倍の電力を第2のモジュールグループに供給できることから、第2のモジュールグループに属する全ての燃料電池発電モジュール14を起動させる時間が第1実施形態よりも短縮されることが期待され、より早期に燃料電池システム1が起動できる。
【0054】
次に、
図7に基づいて、第2実施形態に係る燃料電池システム1の変形例を説明する。
図7は、第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図であり、「蓄電装置ユニット直流系統設置型」の例を示している。すなわち、蓄電装置ユニット24がPCS26よりも燃料電池側に設置されている実施形態であり、上述した第1実施形態における
図3に対応している。
【0055】
第1実施形態と同様に、蓄電装置ユニット24から補機22へ供給される電力は、PCS26を介するため、蓄電装置ユニット24が供給する電力は直流電流であるが、PCS26において交流電流に変換されて、補機22には交流電流が供給される。
【0056】
図7に示す燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理に関しては、
図6と同様であることから、ここでは詳述しない。
【0057】
次に、
図8に基づいて、第2実施形態に係る燃料電池システム1の別の変形例を説明する。
図8は、第2実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図であり、「蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型」の例を示している。すなわち、各々の燃料電池発電モジュール12において、蓄電装置ユニット24がPCS26の燃料電池側及び商用系統の両方に設置されている実施形態であり、上述した第1実施形態における
図4に対応している。
【0058】
上述した第1実施形態と同様に、例えば、同一の燃料電池発電モジュール12内における、どちらかの蓄電装置ユニット24が補機22へ電力供給が不可能である場合にも、もう一方の蓄電装置ユニット24から補機22へ電力供給が可能であるため、燃料電池発電モジュール12の起動に関して冗長性を持たせることができる。
【0059】
本実施形態に係る本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理に関しては、
図6と同様であることから、ここでは詳述しない。
【0060】
なお、第2実施形態においては、3つ類型について説明した。すなわち、「蓄電装置ユニット交流系統設置型」、「蓄電装置ユニット直流系統設置型」、及び「蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型」の3類型である。その他にも、例えば、一方の燃料電池発電モジュール12においては、蓄電装置ユニット24が直流系統に配置されているが、もう一方の燃料電池発電モジュール12においては交流系統に配置されてもよく、又はその逆の配置でもよい。さらに、一方の燃料電池発電モジュール12は1つのみの蓄電装置ユニット24を備えているが、もう一方の燃料電池発電モジュール12は2つの蓄電装置ユニット24を備えていてもよい。そのため、本実施形態においては、蓄電装置ユニット24の配置する場所に特段の制限はなく、任意の態様で変形することが可能である。
【0061】
また、第2実施形態においては、2つの燃料電池発電モジュール12で第1のモジュールグループを構成したが、3つ、4つ等の複数の燃料電池発電モジュール12で第1のモジュールグループを構成してもよい。このようにすることにより、商用系統から起動電力が供給できない状況で燃料電池システム1を起動する際の冗長性をより高めることができる。
【0062】
〔第3実施形態〕
第3実施形態においては、上述した第1実施形態及び第2実施形態に係る燃料電池システム1に、
図9に示すような非常用蓄電装置16を追加的に設けることにより電力供給システム2を構成して、燃料電池システム1が運転不能である場合にも、商用系統を介して、需要家の負荷に電力を供給できるようにしている。以下においては、第1実施形態の変形例として第3実施形態に係る電力供給システム2を説明するが、第2実施形態を変形して第3実施形態に係る電力供給システム2を実現することも可能である。
【0063】
図9は、第3実施形態に係る電力供給システム2の全体構成を説明するブロック図である。この
図9に示すように、第3実施形態に係る電力供給システム2は、燃料電池システム1の外部に非常用蓄電装置16を備えている。本実施形態においては、この非常用蓄電装置16は、需要家の負荷に電力を供給したり燃料電池発電モジュール12及び14に起動電力を供給したりする、商用系統に接続されている。
【0064】
非常用蓄電装置16は、例えば、蓄電装置ユニット24が故障などの原因により、補機22に電力を供給できない場合において、商用系統側から、需要家の負荷に非常用の電力を供給する。非常用蓄電装置16は、蓄電装置ユニット24と同様に、例えば、蓄電池によって実現され、鉛蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウムイオン蓄電池などでよく、放電後においては再び蓄電することによって再利用できてもよい。非常用蓄電装置16の蓄電容量は、複数の需要家の負荷に非常用の電力を供給することを想定して、蓄電装置ユニット24の蓄電容量よりも、大きくてもよい。
【0065】
次に、本実施形態に係る電力供給システム2で実行される各種の処理について詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係る電力供給システム2で実行される電力供給システム起動処理を説明するフローチャートを示す図である。この電力供給システム起動処理は、制御装置10が電力供給システム2を起動させる際に実行される処理である。本実施形態においては、例えば、電力供給システム2を起動させる際に、制御装置10が燃料電池発電モジュール12を起動させることにより実行される処理である。
【0066】
この
図10に示すように、この燃料電池システム起動処理においては、制御装置10が、燃料電池システム1が運転可能かどうかを判断する(ステップS30)。燃料電池システム1が運転可能な場合(ステップS30:Yes)は、上述した燃料電池システム起動処理を開始する(ステップS32)。燃料電池システム起動処理は、第1実施形態における
図2のステップS10乃至ステップS16、又は、第2実施形態における
図6のステップS20乃至ステップS26の通りである。
【0067】
一方で、燃料電池システム1の故障などの原因により、燃料電池システム1が運転可能でない場合(ステップ30:No)、非常用蓄電装置16から商用系統へ電力供給して(ステップS34)、需要家の負荷の電力を確保する。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る電力供給システム2によれば、何らかの理由により燃料電池システム1が運転不能であっても、非常用蓄電装置16に蓄えられている電力を、商用系統側から、需要家の負荷に供給することができる。このため、燃料電池システム1が運転不能であっても、需要家に電力供給を行うための電力供給システム2としての役割を果たすことができ、第1実施形態及び第2実施形態に記載の燃料電池システム1よりも冗長性を向上させることができる。
【0069】
なお、非常用蓄電装置16は、商用系統を介して、燃料電池発電モジュール12の補機22に起動電力を供給して補機22を起動させることができるようにしてもよい。これにより、燃料電池発電モジュール12の起動及び燃料電池システム1の起動について、より高い冗長性を持たすことができ、燃料電池システム1の起動の安定性を担保することができる。
【0070】
また、例えば、燃料電池システム1における燃料電池発電モジュール12のみが起動不可能であって、燃料電池発電モジュール14は外部から補機への起動電力が供給されれば、起動が可能である場合については、非常用蓄電装置16から商用系統を通じて燃料電池発電モジュール14に起動電力の供給を行い起動させることで、燃料電池システム1を起動させてもよく、非常用蓄電装置16の電力は需要家の負荷のみに用いることに制限されない。
【0071】
図9においては、燃料電池システム1は「蓄電装置ユニット交流系統設置型」が図示されている。しかし、非常用蓄電装置16を備える電力供給システム2の燃料電池システム1は、「蓄電装置ユニット直流系統設置型」、又は「蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型」の燃料電池システム1を備えるようにしてもよい。すなわち、第3実施形態に係る電力供給システム2は、上述した全ての第1実施形態の変形例及び第2実施形態の変形例にも適用が可能である。
【0072】
また、
図9においては、非常用蓄電装置16は、燃料電池システム1の外部に図示されているが、実際には、非常用蓄電装置16は燃料電池システム1に物理的に分離されていても、物理的に分離されていなくてもよく、その設置の位置については制限されない。
【0073】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る燃料電池システム1は、上述した第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態に係る燃料電池システム1において、第1のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール12と、第2のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール14とをスイッチを介して接続し、商用系統を介さずとも各燃料電池発電モジュール12及び14に起動電力の供給を可能としている。以下においては、第1実施形態の変形例として第4実施形態に係る燃料電池システム1を説明するが、第2実施形態又は第3実施形態を変形して第4実施形態に係る燃料電池システム1を実現することも可能である。
【0074】
図11は、第4実施形態に係る燃料電池システムの全体構成を示すブロック図である。この
図11に示すように、本実施形態における燃料電池システム1は、制御装置10と、第1のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール12と、第2のモジュールグループに属する燃料電池発電モジュール14とを備え、全ての燃料電池発電モジュール12及び14がスイッチ30を介して互いに接続されている。換言すれば、スイッチ30は、蓄電装置ユニット24を、複数の燃料電池発電モジュール12及び14のいずれかに択一的に接続する。
【0075】
図11で示すように、本実施形態においては、全ての燃料電池発電モジュール12及び14が互いに接続されているため、燃料電池発電モジュール12における蓄電装置ユニット24の電力が、いずれの燃料電池発電モジュール14にもスイッチ30の接続を選択することで供給が可能となる。したがって、本実施形態においては、蓄電装置ユニット24を備える第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12だけでなく、蓄電装置ユニット24を備えていない第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14も、起動電力を供給して、最初に起動される燃料電池発電モジュールとすることができる。
【0076】
そのため、燃料電池発電モジュール12において蓄電装置ユニット24以外の構成要素(例えば、補機22など)に故障がありつつも、蓄電装置ユニット24には不備はなく、電力の供給が可能な場合には、当該蓄電装置ユニット24が存在する燃料電池発電モジュール12以外の燃料電池発電モジュール14に起動電力を供給することで、その起動電力の供給を受けた燃料電池発電モジュール14が起動し、さらに他の燃料電池発電モジュール14を起動させることにより、燃料電池システム1の起動を担保することができる。
【0077】
このため、本実施形態においては、制御装置10は、燃料電池発電モジュール12及び14のそれぞれから、故障があるか、或いは、運転が可能であるか否かを示す運転可否情報を取得し、起動電力を供給すべき燃料電池発電モジュール12及び14を決定できるようにしている。すなわち、制御装置10は、運転可否情報に基づいて、実際に起動が可能であるか否かを含めて、起動する燃料電池発電モジュール12及び14を決定する。
【0078】
次に、本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される各種の処理について詳細に説明する。
図12は、本実施形態に係る燃料電池システム1で実行される燃料電池システム起動処理を説明するフローチャートを示す図である。この燃料電池システム起動処理は、制御装置10が燃料電池システム1を起動させる際に実行される処理である。
【0079】
この
図12に示すように、この燃料電池システム起動処理においては、蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力を起動電力として供給される、燃料電池発電モジュール12及び14を決定する(ステップS40)。本実施形態においては、第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12を最初に起動する燃料電池発電モジュールとして決定することもできるし、第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール14を最初に起動する燃料電池発電モジュールとして決定することもできる。
【0080】
次に、制御装置10は、スイッチ30を制御して、決定された燃料電池発電モジュール12又は14に蓄電装置ユニット24を接続する(ステップS42)。そして、スイッチ30を介して蓄電装置ユニット24に蓄えられた電力が、接続された燃料電池発電モジュール12又は14に起動電力として供給され、当該燃料電池発電モジュール12又は14が起動する(ステップS44)。
【0081】
次に、制御装置10は、第1又は第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール12又は燃料電池発電モジュール14の中から、起動する燃料電池発電モジュールを決定する(ステップS46)。そして、発電状態となっている燃料電池発電モジュール12又は14が発電する電力を、決定された燃料電池発電モジュール14へ起動電力として供給する(ステップS48)。起動電力を供給する場合、商用系統側がら供給してもよく、スイッチ30を介してもよく、その方法は限定されない。
【0082】
次に、制御装置10は、第1及び第2のモジュールグループに含まれるすべての燃料電池発電モジュール12及び14が起動したか否かを判断する(ステップS50)。ここでは、故障等で起動できないとされた燃料電池発電モジュール12及び14は、すべて起動したか否かの判断からは除外される。
【0083】
本実施形態の燃料電池システム1においても、上述した第1実施形態と同様に、
図13に示すような、蓄電装置ユニット24が直流系統側に存在する「蓄電装置ユニット直流系統設置型」の燃料電池システム1としても、
図14に示すような、蓄電装置ユニット24が交流系統及び直流系統の両方に存在する「蓄電装置ユニット直流系統及び交流系統両設置型」の燃料電池システム1としても実現可能である。また、その燃料電池システム起動処理は
図12と同様である。
【0084】
なお、本実施形態においては、蓄電装置ユニット24は、必ずしも燃料電池発電モジュール12の装置内に設置されている必要は無い。すなわち、蓄電装置ユニット24を、燃料電池発電モジュール12の外部に設置することも可能である。
【0085】
図15は、蓄電装置ユニット24を燃料電池発電モジュール12の内部に設置する代わりに、燃料電池発電モジュール12の外部に蓄電装置18を設置した燃料電池システム1の内部構成を示している。この
図15に示す変形例においては、燃料電池発電モジュール12に設置された蓄電装置ユニット24を燃料電池発電モジュール12の外部へ取り出し、蓄電装置18として設置されている。この場合は、制御装置10は燃料電池発電モジュール12及び14に関して運転可能か否かを示す運転可否情報を取得し、この運転可否情報に基づいて、運転可能な燃料電池発電モジュール12及び14を選択する。そして、選択された燃料電池発電モジュール12及び14に、起動電力が蓄電装置18から供給されるように、スイッチ30を制御する。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る燃料電池システム1によれば、燃料電池発電モジュール12の規模に見合った蓄電装置ユニット24により、燃料電池発電モジュール12が起動でき、燃料電池システム1全体の起動をすることができ、燃料電池システム1の規模に比して、蓄電装置ユニット24の体積や重量の抑えることができ、コスト削減などを図ることができる。
【0087】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0088】
1…燃料電池システム、2…電力供給システム、10…制御装置、12…第1のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール、14…第2のモジュールグループに含まれる燃料電池発電モジュール、16…非常用蓄電装置、18…蓄電装置、20…モジュール制御装置、22…補機、24…蓄電装置ユニット、26…PCS(パワーコンディショナ)、28…燃料電池、30…スイッチ