(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】サンプリング装置及びサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20240708BHJP
E02D 1/08 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
E02D1/04
E02D1/08
(21)【出願番号】P 2020152040
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-135361(JP,A)
【文献】特開2010-048029(JP,A)
【文献】特開2009-197540(JP,A)
【文献】特開2020-051094(JP,A)
【文献】特開2017-048508(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1227915(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
E02D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に貫入される地盤改良装置によって改良した地盤のサンプルを採取するためのサンプリング装置であって、
両端が開口した筒状をなす本体部と、
地上から操作可能な動力供給系統からの制御により、前記本体部の一端側及び他端側を開閉するための2つの開閉手段と、
前記本体部を前記地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、前記地盤改良装置の貫入方向と平行に取り付けるための取付手段と、を含
み、
前記2つの開閉手段は、前記動力供給系統から供給される空気圧によって開閉動作するエアバルブ、或いは、前記動力供給系統から供給される水圧によって開閉動作する水圧バルブであることを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
地盤に貫入される地盤改良装置によって改良した地盤のサンプルを採取するためのサンプリング方法であって、
地上から操作可能な動力供給系統からの制御により一端側及び他端側が開閉可能な、筒状をなす本体部を有するサンプリング装置を、前記地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、前記地盤改良装置の貫入方向と平行に取り付け、
前記本体部の一端側及び他端側を開いた状態で前記地盤改良装置を地盤に貫入し、前記本体部が所望の深度にあるときに前記本体部の一端側及び他端側を閉じ、
前記本体部の一端側及び他端側を閉じたまま前記地盤改良装置を地盤から引き上げた後、前記本体部の内部からサンプルを回収
し、
前記本体部の一端側及び他端側の開閉を、前記動力供給系統から供給する空気圧によって開閉動作するエアバルブ、或いは、前記動力供給系統から供給する水圧によって開閉動作する水圧バルブを利用して行うことを特徴とするサンプリング方法。
【請求項3】
前記サンプリング装置を、前記地盤改良装置の複数箇所に取り付けることを特徴とする請求項
2記載のサンプリング方法。
【請求項4】
改良対象の地盤の地質に応じて、前記地盤改良装置へ取り付ける前記サンプリング装置の前記本体部の大きさを決定することを特徴とする請求項
2又は3記載のサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良した地盤のサンプルを採取するためのサンプリング装置及びサンプリング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、改良した地盤のサンプリングでは、地盤改良に使用した地盤改良装置を地盤から引き抜いた後、長尺の採取器を地盤に挿入して、改良材などで固化する前のサンプルを採取していた。そのような採取器には、サンプルを収容する筒状の収容部の開口部分に、採取器の挿入及び引き抜きの動作に応じて開閉する蓋を設けたものや、挿入方向と平行な回転軸で採取器を回転させることで開閉する蓋を設けたものの他、挿入方向と平行な回転軸での回転により収容部全体が閉じるもの(例えば特許文献1参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の採取器は、何れも、採取器自体を動かすことによって収容部を開閉する構成であるため、開閉が確実に行われない場合がある。このため、サンプルが収容部から落ちてしまって採取できない虞や、回収中に別の深度のサンプルが混ざってしまう虞があった。又、地盤に挿入した採取器の収容部が位置している深度が不明確であるため、所望の深度のサンプルを採取することが困難であった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、改良地盤の所望の深度のサンプルを確実に採取することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)地盤に貫入される地盤改良装置によって改良した地盤のサンプルを採取するためのサンプリング装置であって、両端が開口した筒状をなす本体部と、地上から操作可能な動力供給系統からの制御により、前記本体部の一端側及び他端側を開閉するための2つの開閉手段と、前記本体部を前記地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、前記地盤改良装置の貫入方向と平行に取り付けるための取付手段と、を含むサンプリング装置。
【0007】
本項に記載のサンプリング装置は、本体部、2つの開閉手段、及び取付手段を含み、本体部は、両端が開口した筒状をなし、実質的にその内部にサンプルを収容する部位である。そして2つの開閉手段は、そのような筒状の本体部の一端側及び他端側を例えば同時に開閉するものであって、地上から操作可能な動力供給系統からの制御を受けて開閉動作を行う。このため、2つの開閉手段は、作業者からの動力供給系統の操作により、任意のタイミングで容易かつ確実に開閉されるものとなる。又、取付手段は、地盤改良に使用する地盤改良装置に対して本体部を取り付けるものであり、このとき、地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、地盤改良装置の貫入方向と平行に本体部を取り付ける。従って、筒状の本体部は、その一端側及び他端側が、地盤改良装置の貫入方向の前方及び後方に向けられる態様で、地盤改良装置に取り付けられることになる。
【0008】
上記のような構成により、本項に記載のサンプリング装置は、2つの開閉手段が開いた状態で地盤改良装置と共に改良直後の地盤に貫入されると、固化前の改良土が本体部の一端側から入り込んで他端側へと抜けていき、それとは反対の引き抜き方向に移動されても、固化前の改良土が本体部の他端側から入り込んで一端側へと抜けていく。これにより、本体部が現在位置している深度の改良土が常に本体部の内部に存在するため、本体部が所望の深度にあるときに2つの開閉手段が例えば同時に閉じられることで、本体部の内部に所望の深度の改良土のサンプルが収容されることになる。しかも、地盤改良に使用される地盤改良装置に取り付けられていることで、本体部の現在の深度が明確に把握される上に、動力供給系統からの制御によって2つの開閉手段が確実に閉じられるため、改良地盤の所望の深度のサンプルが確実に採取されるものである。更に、取付手段を介して既存の地盤改良装置へ容易に取り付けられるものであり、又、地盤改良装置の貫入動作と連動してサンプルが採取されるため、別途の準備を必要とせず、地盤改良からの施工の一連の流れとしてサンプルが採取されるものとなる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記2つの開閉手段は、前記動力供給系統から供給される空気圧によって開閉動作するエアバルブ、或いは、前記動力供給系統から供給される水圧によって開閉動作する水圧バルブであるサンプリング装置(請求項1)。
本項に記載のサンプリング装置は、本体部の一端側及び他端側を開閉する2つの開閉手段がエアバルブ或いは水圧バルブであり、エアバルブの場合は、動力供給系統から供給される空気圧によって開閉動作を行い、水圧バルブの場合は、動力供給系統から供給される水圧によって開閉動作を行う。これにより、本体部の一端側及び他端側が、エアバルブ或いは水圧バルブによって応答性よく開閉されるものとなり、改良地盤のサンプルがより確実に採取されるものとなる。
【0010】
(3)地盤に貫入される地盤改良装置によって改良した地盤のサンプルを採取するためのサンプリング方法であって、地上から操作可能な動力供給系統からの制御により一端側及び他端側が開閉可能な、筒状をなす本体部を有するサンプリング装置を、前記地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、前記地盤改良装置の貫入方向と平行に取り付け、前記本体部の一端側及び他端側を開いた状態で前記地盤改良装置を地盤に貫入し、前記本体部が所望の深度にあるときに前記本体部の一端側及び他端側を閉じ、前記本体部の一端側及び他端側を閉じたまま前記地盤改良装置を地盤から引き上げた後、前記本体部の内部からサンプルを回収するサンプリング方法。
【0011】
本項に記載のサンプリング方法は、まず、筒状をなす本体部を有するサンプリング装置を、地盤改良に使用する地盤改良装置の地盤に貫入される部位へ、地盤改良装置の貫入方向と平行に取り付ける。すなわち、筒状の本体部の一端側及び他端側が、地盤改良装置の貫入方向の前方及び後方を向くようにして、サンプリング装置を地盤改良装置へ取り付ける。ここで取り付けるサンプリング装置は、地上から操作可能な動力供給系統からの制御により、本体部の一端側及び他端側が開閉可能であるため、動力供給系統を操作する作業者によって、任意のタイミングで容易かつ確実に開閉されるものである。続いて、サンプリング装置の本体部の一端側及び他端側を開いた状態で、地盤改良装置を改良直後の地盤に貫入することで、本体部の一端側から固化前の改良土を受け入れつつ、本体部の他端側から改良土を逃がしていくものである。このとき、サンプリング装置を引き抜く方向に移動させても、本体部の他端側から入り込んだ改良土が一端側から抜けていくため、本体部の内部には、常に本体部が位置する深度の改良土が存在することになる。
【0012】
そこで、サンプリング装置の本体部が所望の深度にあるときに本体部の一端側及び他端側を例えば同時に閉じ、そのままの状態でサンプリング装置と共に地盤改良装置を地盤から引き上げ、サンプリング装置の本体部の内部からサンプルを回収する。この際、サンプリング装置が地盤改良に使用される地盤改良装置に取り付けられていることで、サンプリング装置の本体部が位置している深度が明確に把握され、しかも、動力供給系統からの制御によって本体部の両端側が確実に閉じられる。このため、改良地盤の所望の深度のサンプルが確実に採取されるものとなる。更に、サンプリング装置の取り付け先は既存の地盤改良装置でよく、そのような地盤改良装置の貫入動作と連動して採取することとなるため、別途の準備を要することなく、地盤改良に続く施工の一連の流れとしてサンプルが採取されるものである。
【0013】
(4)上記(3)項において、前記本体部の一端側及び他端側の開閉を、前記動力供給系統から供給する空気圧によって開閉動作するエアバルブ、或いは、前記動力供給系統から供給する水圧によって開閉動作する水圧バルブを利用して行うサンプリング方法(請求項2)。
本項に記載のサンプリング方法は、地盤改良装置に取り付けるサンプリング装置の本体部の一端側及び他端側の開閉を、動力供給系統から供給する空気圧によって開閉動作するエアバルブ、或いは、動力供給系統から供給する水圧によって開閉動作する水圧バルブを利用して行うことで、本体部の両端側の開閉を応答性よく行い、改良地盤のサンプルをより確実に採取するものである。
【0014】
(5)上記(4)項において、前記サンプリング装置を、前記地盤改良装置の複数箇所に取り付けるサンプリング方法(請求項3)。
本項に記載のサンプリング方法は、地盤改良装置の、地盤への貫入方向について互いに位置が異なる複数箇所の各々に、サンプリング装置を取り付けるものである。これにより、地盤改良装置を地盤に貫入させたときに、複数のサンプリング装置が互いに異なる深度に位置することになるため、複数の深度における改良土のサンプルが効率よく確実に採取されるものとなる。
【0015】
(6)上記(4)(5)項において、改良対象の地盤の地質に応じて、前記地盤改良装置へ取り付ける前記サンプリング装置の前記本体部の大きさを決定するサンプリング方法(請求項4)。
本項に記載のサンプリング方法は、事前調査などから把握される改良対象の地盤の地質に応じて、地盤改良装置へ取り付けるサンプリング装置の本体部の大きさを決定するものである。これにより、例えば改良対象の地盤に比較的大きめの礫などが存在する場合でも、それを考慮した大きさの本体部を使用することで、礫などが本体部の開口部分などに詰まる或いは開口部分を塞ぐなどといった問題が発生することなく、改良地盤のサンプルが採取されるものである。更に、本体部の大きさに応じて、採取するサンプルの量が調整されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記のような構成であるため、改良地盤の所望の深度のサンプルを確実に採取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るサンプリング装置の構成を概略的に示す正面図及び側面図である。
【
図2】
図1のサンプリング装置により地盤のサンプルを採取する方法を説明するための、サンプリング装置の内部の様子を示すイメージ側面図である。
【
図3】
図1のサンプリング装置により地盤のサンプルを採取する方法を説明するための、地盤改良装置の様子を示す側面図である。
【
図4】
図3に引き続き、地盤改良装置の様子を示す側面図である。
【
図5】複数のサンプリング装置が取り付けられた地盤改良装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、改良地盤のサンプルを採取するための、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10の構成を概略的に示している。なお、
図1~
図5に示されているサンプリング装置10は、説明の便宜上、内部構造の一部が透過して図示されている。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10は、本体部12、2つの開閉手段16、18、及び取付手段24で大略構成されている。
【0019】
本体部12は、その一端12a及び他端12bの双方が開口した筒状、本実施形態では円筒状をなしており、その内部12cに改良土60(
図2参照)のサンプルが収容される。本実施形態の本体部12は、2つの継手22を介して一端12a側及び他端12b側が接続された、3分割可能な構成になっている。本体部12の大きさは、採取したいサンプルの量やサンプル回収先の地盤の地質などに応じて、任意に設定してよく、大きさが異なる複数の本体部12を用意しておいてもよい。なお、
図1~
図5では、継手22の一部を破断して図示している。
【0020】
2つの開閉手段16、18は、本体部12の一端12a側と他端12b側とを開閉するためのものであり、一方の開閉手段16が本体部12の一端12aと一方の継手22との間に設置され、もう一方の開閉手段18が本体部12の他端12bと他方の継手22との間に設置されている。本実施形態の開閉手段16、18は、空気が供給されると空気圧によって閉じると共に、空気供給が遮断されると開くように動作する、ゴム製などのエアバルブによって構成されており、カバー部材26によって覆われている。開閉手段16、18を構成するエアバルブは、カバー部材26を貫通する加圧口20を有し、
図1(b)にのみ簡略的に図示されている動力供給系統30から供給される空気を、加圧口20から取り込むようになっている。ここで、2つの開閉手段16、18は、水圧によって開閉動作する水圧バルブであってもよく、この場合は、動力供給系統30から水圧が供給されることになる。なお、
図1(b)の開閉手段16、18は、空気が供給されて閉じた状態であり、又、
図1~
図5では、カバー部材26を透過して開閉手段16、18を実線で図示している。
【0021】
取付手段24は、本体部12及びそれに付随する2つの開閉手段16、18を、地盤改良を行う地盤改良装置40に取り付けるためのものであり、本実施形態では断面L字型の2つのプレートを含んでいる。具体的に取付手段24は、例えば
図3に示すように、地盤改良装置40の地盤G内に貫入される部位に、地盤Gへの貫入方向と平行に、本体部12を取り付けるように構成されている。このため、地盤改良装置40に取り付けられた本体部12は、地盤改良装置40が地盤Gに貫入されると、その一端12aが貫入方向の前方(
図3における下方)へ向き、その他端12bが貫入方向の後方(
図3における上方)へ向いた状態になる。又、本実施形態の地盤改良装置40は、重機50の作業機54に取り付けられて使用される攪拌装置40Aであり、その先端に回転駆動される攪拌羽根42を備えている。更に、重機50は、運転室52及び作業機54を備えた本実施形態では油圧ショベル50Aである。なお、
図3~
図5では、回転している攪拌羽根42を仮想線で示している。
【0022】
図1及び
図3を参照して、2つの開閉手段16、18へ動力を供給する動力供給系統30は、サンプリング装置10が地盤G内にある状態でも、地上から操作可能なものであり、本実施形態では空気の供給及び遮断によって開閉手段16、18の開閉動作を制御する。動力供給系統30は、圧縮空気を供給するコンプレッサなどを含み、例えば重機50の運転室52や、地上のそれとは別の位置などから、オペレータや作業員により操作される。このため、動力供給系統30は、その操作部分が地上側に設置されると共に、供給経路が地盤改良装置40や作業機54に沿って引き回され、地盤改良装置40の内部を通る供給経路から開閉手段16、18へ動力を供給するようになっていてもよい。
上述した本体部12、開閉手段16、18を覆うカバー部材26、及び取付手段24は、それらに要求される機能を満たすことができる任意の適切な材料で形成され、例えば金属により形成されてもよい。
【0023】
続いて、上記のサンプリング装置10を利用して改良地盤のサンプルを採取する、本発明の実施の形態に係るサンプリング方法について説明する。ここでは、
図3及び
図4に示すような、油圧ショベル50Aに取り付けられた攪拌装置40Aを使用し、セメントスラリーなどの改良材を供給しながら地盤形成土を攪拌して、地盤Gを改良したサンプルを採取する場合を例にして説明する。なお、サンプリング装置10の構成については、適宜、
図1を参照されたい。
【0024】
まず、
図3(a)に示すように、攪拌装置40A(地盤改良装置40)に対して、取付手段24を介してサンプリング装置10を取り付ける。取り付けるサンプリング装置10の本体部12の大きさは、地盤Gの地質や採取したいサンプル量などに応じて決定してよい。この取り付け作業は、攪拌装置40Aによる地盤改良工程の前に行うことが好ましく、この場合はサンプリング装置10を取り付けた状態で、攪拌装置40Aにより地盤改良工程を実行する。このとき、サンプリング装置10は、地盤改良工程のために攪拌装置40Aと共に地盤Gへ貫入される前に、
図2(a)に示すように2つの開閉手段16、18を閉じた状態にしておき、
図3(b)のように地盤Gへ貫入されても、固化前のスラリー状の改良土60が、本体部12の一端12aや他端12bから内部12cへ浸入しないようにする。なお、
図2では、固化前のスラリー状の改良土60をハッチングで図示している。
【0025】
攪拌装置40Aによる地盤改良工程が終了したら、攪拌装置40Aを地盤Gから引き抜いた状態で、
図2(b)に示すように、動力供給系統30の操作によって2つの開閉手段16、18の双方を開く。そして、この状態で、攪拌羽根42を回転させながら或いは回転させずに、攪拌装置40Aと共にサンプリング装置10を地盤Gへ貫入する。すると、
図2(b)や
図4(c)に示すように、本体部12の内部12cに固化前のスラリー状の改良土60が入り込むため、本体部12が地盤Gのサンプル採取対象の所望深度に位置するタイミングで、動力供給系統30の操作により2つの開閉手段16、18の双方を閉じる。このとき、2つの開閉手段16、18を同時に閉じることが好ましく、又、本体部12が位置する深度は、地盤改良工程中の攪拌装置40Aの深度を把握する方法と同様の方法で把握すればよい。
【0026】
上記のように開閉手段16、18を閉じると、
図2(c)に示すように、本体部12の内部12cに固化前の改良土60が閉じ込められた状態になるため、
図4(d)に示すように、そのまま攪拌装置40Aと共にサンプリング装置10を地盤Gから引き抜く。そして、本体部12の内部12cから任意の方法で、改良土60をサンプルとして回収する。
なお、例えば
図5に示すように、攪拌装置40A(地盤改良装置40)の上下方向に異なる位置に、複数のサンプリング装置10を取り付け、これら複数のサンプリング装置10で複数の深度のサンプルを採取してもよい。
【0027】
ここで、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10は、上述したような構成に限定されるものではない。例えば、2つの開閉手段16、18は、本体部12の一端12a側と他端12b側とを開閉できるものであれば、エアバルブや水圧バルブに限定されず、油圧、電気などによって開閉動作を行うものであってもよく、動力供給系統30もそれに応じた構成であってよい。油圧を利用する構成の場合は、重機50の油圧系統を動力供給系統30の一部として利用してもよい。又、2つの開閉手段16、18は、動力供給系統30によって同時に制御されてもよく、別個に制御されてもよい。更に、サンプリング装置10の取り付け先である地盤改良装置40は、攪拌装置40Aに限定されるものではなく、地盤改良に用いられるものであれば任意の装置であってよい。
【0028】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10は、
図1に示すように、本体部12、2つの開閉手段16、18、及び取付手段24を含み、本体部12は、両端12a、12bが開口した筒状をなし、実質的にその内部12cにサンプルを収容する部位である。そして2つの開閉手段16、18は、そのような筒状の本体部12の一端12a側及び他端12b側を例えば同時に開閉するものであって、地上から操作可能な動力供給系統30からの制御を受けて開閉動作を行う。このため、2つの開閉手段16、18は、作業者からの動力供給系統30の操作により、任意のタイミングで容易かつ確実に開閉することができる。
【0029】
又、取付手段24は、
図3に示すように、地盤改良に使用する地盤改良装置40に対して本体部12を取り付けるものであり、このとき、地盤改良装置40の地盤Gに貫入される部位へ、地盤改良装置40の貫入方向と平行に本体部12を取り付ける。従って、筒状の本体部12は、その一端12a側及び他端12b側が、地盤改良装置40の貫入方向の前方及び後方に向けられる態様で、地盤改良装置40に取り付けられることになる。このような構成により、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10は、2つの開閉手段16、18が開いた状態で地盤改良装置40と共に改良直後の地盤Gに貫入されると、
図2(b)に示すように、固化前の改良土60が本体部12の一端12a側から入り込んで他端12b側へと抜けていき、それとは反対の引き抜き方向に移動されても、固化前の改良土60が本体部12の他端12b側から入り込んで一端12a側へと抜けていく。
【0030】
これにより、本体部12が現在位置している深度の改良土60が常に本体部12の内部12cに存在するため、
図2(c)に示すように、本体部12が所望の深度にあるときに2つの開閉手段16、18が例えば同時に閉じられることで、本体部12の内部12cに所望の深度の改良土60のサンプルを収容することができる。しかも、地盤改良に使用される地盤改良装置40に取り付けられていることで、本体部12の現在の深度を明確に把握することができる上に、動力供給系統30からの制御によって2つの開閉手段16、18を確実に閉じることができるため、所望の深度の改良土60のサンプルを確実に採取することが可能となる。更に、取付手段24を介して既存の地盤改良装置40へ容易に取り付けることができ、又、地盤改良装置40の貫入動作と連動してサンプルが採取されるため、別途の準備を必要とせず、地盤改良からの施工の一連の流れとしてサンプルを採取することが可能となる。
【0031】
又、本発明の実施の形態に係るサンプリング装置10は、
図1及び
図2に示すように、本体部12の一端12a側及び他端12b側を開閉する2つの開閉手段16、18がエアバルブであり、このエアバルブは、動力供給系統30から供給される空気圧によって開閉動作を行う。これにより、本体部12の一端12a側及び他端12b側を、エアバルブによって応答性よく開閉することができ、改良土60のサンプルをより確実に採取することが可能となる。なお、2つの開閉手段16、18が、動力供給系統30から供給される水圧によって開閉動作を行う水圧バルブであっても、本体部12の一端12a側及び他端12b側を応答性よく開閉することができる。
【0032】
一方、本発明の実施の形態に係るサンプリング方法は、
図3(a)に示すように、まず、筒状をなす本体部12を有するサンプリング装置10を、地盤改良に使用する地盤改良装置40の地盤Gに貫入される部位へ、地盤改良装置40の貫入方向と平行に取り付ける。すなわち、筒状の本体部12の一端12a側及び他端12b側が、地盤改良装置40の貫入方向の前方及び後方を向くようにして、サンプリング装置10を地盤改良装置40へ取り付ける。ここで取り付けるサンプリング装置10は、地上から操作可能な動力供給系統30からの制御により、本体部12の一端12a側及び他端12b側が開閉可能であるため、動力供給系統30を操作する作業者によって、任意のタイミングで容易かつ確実に開閉することができる。
【0033】
続いて、
図2(b)に示すように、サンプリング装置10の本体部12の一端12a側及び他端12b側を開いた状態で、
図4(c)に示すように、地盤改良装置40を改良直後の地盤Gに貫入することで、本体部12の一端12a側から固化前の改良土60を受け入れつつ、本体部12の他端12b側から改良土60を逃がしていくものである。このとき、サンプリング装置10を引き抜く方向に移動させても、本体部12の他端12b側から入り込んだ改良土60が一端12a側から抜けていくため、本体部12の内部12cには、常に本体部12が位置する深度の改良土60が存在することになる。
【0034】
そこで、サンプリング装置10の本体部12が所望の深度にあるときに、
図2(c)に示すように、本体部12の一端12a側及び他端12b側を例えば同時に閉じ、
図4(d)に示すように、そのままの状態でサンプリング装置10と共に地盤改良装置40を地盤Gから引き上げ、サンプリング装置10の本体部12の内部12cからサンプルを回収する。この際、サンプリング装置10が地盤改良に使用される地盤改良装置40に取り付けられていることで、サンプリング装置10の本体部12が位置している深度を明確に把握することができ、しかも、動力供給系統30からの制御によって本体部12の両端12a、12b側を確実に閉じることができる。このため、所望の深度の改良土60のサンプルを確実に採取することができる。更に、サンプリング装置10の取り付け先は既存の地盤改良装置40でよく、そのような地盤改良装置40の貫入動作と連動して採取することができるため、別途の準備を要することなく、地盤改良に続く施工の一連の流れとしてサンプルを採取することが可能となる。
【0035】
又、本発明の実施の形態に係るサンプリング方法は、地盤改良装置40に取り付けるサンプリング装置10の本体部12の一端12a側及び他端12b側の開閉を、
図1及び
図2に示すように、動力供給系統30から供給する空気圧によって開閉動作するエアバルブを利用して行うことで、本体部12の両端12a、12b側の開閉を応答性よく行うことができ、改良土60のサンプルをより確実に採取することができる。なお、動力供給系統30から供給する水圧によって開閉動作する水圧バルブを利用して、本体部12の一端12a側及び他端12b側の開閉を行うこととしても、応答性よく開閉することができる。
更に、本発明の実施の形態に係るサンプリング方法は、
図5に示すように、地盤改良装置40の、地盤Gへの貫入方向について互いに位置が異なる複数箇所の各々に、サンプリング装置10を取り付けてもよい。これにより、地盤改良装置40を地盤Gに貫入させたときに、複数のサンプリング装置10が互いに異なる深度に位置することになるため、複数の深度における改良土60のサンプルを効率よく確実に採取することができる。
【0036】
又、本発明の実施の形態に係るサンプリング方法は、事前調査などから把握される改良対象の地盤Gの地質に応じて、地盤改良装置40へ取り付けるサンプリング装置10の本体部12の大きさを決定してもよい。これにより、例えば改良対象の地盤Gに比較的大きめの礫などが存在する場合でも、それを考慮した大きさの本体部12を使用することで、礫などが本体部12の開口部分などに詰まる或いは開口部分を塞ぐなどといった問題が発生することなく、改良土60のサンプルを採取することができる。更に、本体部12の大きさに応じて、採取するサンプルの量を調整することもできる。
【符号の説明】
【0037】
10:サンプリング装置、12:本体部、12a:一端、12b:他端、12c:内部、16、18:開閉手段、24:取付手段、30:動力供給系統、40:地盤改良装置、G:地盤