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特許7516183マルチエージェントシステム、およびノード装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】マルチエージェントシステム、およびノード装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20240708BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20240708BHJP
【FI】
H04W84/18
H04W88/02 131
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020158745
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052381
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井奈波 拓也
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-260967(JP,A)
【文献】特開2020-39028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノード装置が参加することの可能な分散協調型プラットフォーム上に構築されるマルチエージェントシステムであって、
前記ノード装置の各々は、
他のノード装置と無線ネットワークを構成する無線ネットワーク構成手段と、
送信対象のデータを含むパケットを生成するパケット生成手段と、
前記無線ネットワークに適応するための複数の送信条件を設定する設定制御手段と、
前記送信条件に基づいて、他のノード装置に対して前記パケットをブロードキャスト送信する送信手段と、
プログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムに含まれる命令を実行するプロセッサと、
当該ノード装置を移動させる移動部と、
当該ノード装置の位置情報および方位情報を取得する計測部とを具備し、
前記プロセッサは、
前記分散協調型プラットフォームのリソースを利用して他のノード装置と情報共有するミドルウェアと、
当該ミドルウェアの上位層で機能するアプリケーションソフトウェアとを実行し、
前記アプリケーションソフトウェアは、
前記位置情報および前記方位情報を前記ノード装置間で共有する共有プロセスと、
前記共有された前記位置情報および前記方位情報に基づいて、前記移動部を制御する移動制御プロセスとを含む、マルチエージェントシステム。
【請求項2】
複数のノード装置が参加することの可能な分散協調型プラットフォーム上に構築されるマルチエージェントシステムであって、
前記ノード装置の各々は、
他のノード装置と無線ネットワークを構成する無線ネットワーク構成手段と、
送信対象のデータを含むパケットを生成するパケット生成手段と、
前記無線ネットワークに適応するための複数の送信条件を設定する設定制御手段と、
前記送信条件に基づいて、他のノード装置に対して前記パケットをブロードキャスト送信する送信手段と、
プログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムに含まれる命令を実行するプロセッサと、
当該ノード装置を移動させる移動部と、
当該ノード装置の他のノード装置に対する相対的な位置情報を計測する計測部とを具備し、
前記プロセッサは、
前記分散協調型プラットフォームのリソースを利用して他のノード装置と情報共有するミドルウェアと、
当該ミドルウェアの上位層で機能するアプリケーションソフトウェアとを実行し、
前記アプリケーションソフトウェアは、
前記位置情報を前記ノード装置間で共有する共有プロセスと、
前記共有された前記位置情報に基づいて、前記移動部を制御する移動制御プロセスとを含む、マルチエージェントシステム。
【請求項3】
前記計測部は、前記他のノード装置から放射される電波の受信強度を測定し、その値に基づいて前記位置情報を計算する、請求項2に記載のマルチエージェントシステム。
【請求項4】
前記ノード装置の各々は、指向方向における観測対象を観測する観測部をさらに具備し、
前記移動制御プロセスは、前記分散協調型プラットフォームに参加する複数のノード装置の前記観測部の指向方向を、予め設定された方向に揃えるべく前記移動部を制御する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のマルチエージェントシステム。
【請求項5】
分散協調型プラットフォームに参加することの可能なノード装置であって、
他のノード装置と無線ネットワークを構成する無線ネットワーク構成手段と、
送信対象のデータを含むパケットを生成するパケット生成手段と、
前記無線ネットワークに適応するための複数の送信条件を設定する設定制御手段と、
前記送信条件に基づいて、他のノード装置に対して前記パケットをブロードキャスト送信する送信手段と、
プログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムに含まれる命令を実行するプロセッサと、
移動部と、
位置情報および方位情報を取得する計測部とを具備し、
前記プロセッサは、
前記分散協調型プラットフォームのリソースを利用して他のノード装置と情報共有するミドルウェアと、
当該ミドルウェアの上位層で機能するアプリケーションソフトウェアとを実行し、
前記アプリケーションソフトウェアは、
前記位置情報および前記方位情報を他のノード装置間で共有する共有プロセスと、
前記共有された前記位置情報および前記方位情報に基づいて、前記移動部を制御する移動制御プロセスとを含む、ノード装置。
【請求項6】
分散協調型プラットフォームに参加することの可能なノード装置であって、
他のノード装置と無線ネットワークを構成する無線ネットワーク構成手段と、
送信対象のデータを含むパケットを生成するパケット生成手段と、
前記無線ネットワークに適応するための複数の送信条件を設定する設定制御手段と、 前記送信条件に基づいて、他のノード装置に対して前記パケットをブロードキャスト送信する送信手段と、
プログラムを記憶する記憶部と、
前記プログラムに含まれる命令を実行するプロセッサと、
移動部と、
他のノード装置に対する自装置の相対的な位置情報を計測する計測部とを具備し、
前記プロセッサは、
前記分散協調型プラットフォームのリソースを利用して他のノード装置と情報共有するミドルウェアと、
当該ミドルウェアの上位層で機能するアプリケーションソフトウェアとを実行し、
前記アプリケーションソフトウェアは、
前記位置情報を他のノード装置間で共有する共有プロセスと、
前記共有された前記位置情報に基づいて、前記移動部を制御する移動制御プロセスとを含む、ノード装置。
【請求項7】
前記計測部は、前記他のノード装置から放射される電波の受信強度を測定し、その値に基づいて前記位置情報を計算する、請求項6に記載のノード装置。
【請求項8】
指向方向における観測対象を観測する観測部をさらに具備し、
前記移動制御プロセスは、前記分散協調型プラットフォームに参加する他のノード装置との間で、前記観測部の指向方向を予め設定された方向に揃えるべく前記移動部を制御する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のノード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、分散協調型プラットフォーム、マルチエージェントシステム、およびノード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中央集権的な制御構造をとるシステムに対して、マルチエージェントシステムが知られている。マルチエージェントシステムは、それぞれのノードが周囲の情報を取得して自律的に解決を図る行動をすることで、全体での最適化を実現するという考え方に基づいている。
【0003】
野外環境などでは、ノードが移動する場合もあるので、アドホックなネットワークインフラによりノード間に通信路を形成するのが有利である。このような環境での運用にも耐えうる無線通信技術が既に特許出願されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特願2019-050363号(本願出願時点で未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチエージェントシステムの実現に際して、各ノードが完全に自律している方式に比べ、各ノード間での情報交換が可能であるほうが、システムの能力は高まると考えられる。システムの目的が明確であり、そのためのアプリケーションソフトウェアが開発されているのならばなおさらである。
そこで、目的は、ノード間に安定した通信環境を形成することの可能なマルチエージェントシステム、およびノード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、分散協調型プラットフォームには、複数のノード装置が参加することが可能である。この分散協調型プラットフォームにおいて、ノード装置の各々は、無線ネットワーク構成手段と、パケット生成手段と、設定制御手段と、送信手段とを備える。無線ネットワーク構成手段は、他のノード装置と無線ネットワークを構成する。パケット生成手段は、送信対象のデータを含むパケットを生成する。設定制御手段は、無線ネットワークに適応するための複数の送信条件を設定する。送信手段は、送信条件に基づいて、他のノード装置に対してパケットをブロードキャスト送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に関するノード装置の構成を示すブロック図。
図2】実施形態に関する設定制御部の構成を示すブロック図。
図3】実施形態に関する無線ネットワークの仕様の一例を説明するための図。
図4】実施形態に関するパケットの仕様の一例を説明するための図。
図5】実施形態に関するノード間の通信動作の一例を説明するための図。
図6】実施形態に関する送信ノードの動作を説明するためのフローチャート。
図7】実施形態に関する設定制御部の動作を説明するためのフローチャート。
図8】実施形態に関する送信ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図9】実施形態に関する送信ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図10】実施形態に関する送信条件を説明するための図。
図11】実施形態に関する送信ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図12】実施形態に関する送信条件を説明するための図。
図13】実施形態に関する中継ノードの動作を説明するためのフローチャート。
図14】実施形態に関する中継ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図15】実施形態に関する中継ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図16】実施形態に関する受信ノードの通信動作の一例を説明するための図。
図17】ノード1の一例としての移動体(ドローン)を示す機能ブロック図。
図18】実施形態のマルチエージェントシステムの初期状態の一例を示す図。
図19図18の状態から移動体の指向方向が揃ってゆく状態を示す図。
図20図19の状態から新たなノードが参加しようとする状態を示す図。
図21図20の状態から移動体の指向方向が揃ってゆく状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照して、実施形態を説明する。
【0009】
[構成]
図1は、本実施形態のノード装置1の構成を示すブロック図である。ノード装置1は、例えば特定仕様の無線機や移動通信端末(スマートフォン等)である。本実施形態では、いわゆるドローンと称される移動体を、ノード装置の一例として説明する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態のノード装置1は、無線アドホックネットワークとして構築された無線ネットワーク2を経由して、他の複数のノード装置と無線通信を実行する。ノード装置1は、本体10と端末16とを含む。本体10と端末16は、一体化又は分離されていてもよい。本体10と端末16は、分離されている場合には、有線又は近距離無線により接続されている。
【0011】
本体10は、データ送信部11、データ受信部12、設定制御部13、データ蓄積部14、及び符号化/復号部15を含む。データ送信部11は、後述するように、送信対象のデータを含むパケットを無線で送信(ブロードキャスト)する。データ受信部12は、無線ネットワーク2を経由してブロードキャストされたパケットを受信する。
【0012】
設定制御部13は、本実施形態の要部であり、後述するように、無線通信環境に適応するための複数の送信条件に基づいて、データ送信部11による送信動作を制御する。データ蓄積部14は、送信対象のパケットまたはデータ受信部12により受信したパケットを格納して蓄積する記憶装置である。符号化/復号部15は、送信対象のパケットのデータを符号化し、後述するように、補償パケットを生成する。さらに、符号化/復号部15は、受信したパケット(後述する補償パケットを含む)から受信対象のデータを復号する。なお、ノード装置1はプロセッサを含み、当該プロセッサが特定のソフトウェアを実行することで、設定制御部13及び符号化/復号部15の機能を実現する構成でもよい。
【0013】
端末16は、データ生成部17及びデータ表示部18を有する。データ生成部17は、データを作成するための入力部を含み、作成されたデータ(ペイロード)から送信対象のパケットを生成する。データ表示部18は、データ生成部17により作成されたデータや、復号された受信対象のデータをディスプレイ上に表示する。
【0014】
図2は、設定制御部13の構成を示す図である。図2に示すように、設定制御部13は、送信条件を設定し、当該送信条件に基づいてデータ送信部11による送信動作を制御するために、符号制御部20、送信時刻制御部21、及びチャネル制御部22を含む。
【0015】
図3は、本実施形態の無線ネットワークの仕様の一例を示す図である。図3に示すように、仕様のパラメータとして、例えば、「ノード数」、「他のノード数」、「ペイロードパケット数」、「補償パケット送信倍率」、「チャネル数」、及び「ランダム時間幅」が設定される。本実施形態では、ノード数は、ノードA~Fの「6」とする(図5を参照)。通信はブロードキャストのため、ノード数のうち隣接ノード数分だけ受信確率が向上する。他のノード数は、本実施形態の無線ネットワーク外と別の通信をしている、他ノード1,2の「2」とする(図5を参照)。
【0016】
さらに、有効な送信パケット数は「2」とする。なお、1パケットのサイズは任意である。補償パケット送信倍率は「1」とし、状況に応じて動的に変動可能な符号制御部パラメータである。具体的には、符号化/復号部15は、データ生成部17により生成されたペイロード(送信対象データ)のパケット(ペイロードパケット)の数値倍(ここでは2倍)の補償パケットを生成する。チャネル数は「8」とし、チャネル制御部用パラメータである。ランダム時間幅は「100msec」とし、隣接ノード数に応じて動的に変動可能な送信時刻制御部用パラメータである。
【0017】
図4は、本実施形態の符号制御部用パラメータに関するパケットの仕様の一例を示す図である。即ち、データ生成部17により生成された2個のペイロードパケットP1,P2に対して、符号化/復号部15は4個の補償パケットP3~P6を生成する。符号制御部20はP1~P6のうち何個のパケットを送信するか決定する。受信ノードは、これらのパケットP1~P6から全体として2個のパケットを受信できれば、符号化/復号部15により受信対象のデータを復号して、送信対象データを復元できる。
【0018】
[作用]
次に、実施形態のノード装置1及び無線ネットワーク2による通信動作を説明する。複数のノード装置1が参加し、互いに協調的に動作することで実施形態に係わる分散協調型プラットフォームが形成される。すなわち、無線アドホックネットワークとしての無線ネットワーク2を介して、分散協調型プラットフォームに複数のノード装置が参加することが可能である。
【0019】
図5に示すように、本実施形態は、例えば6個のノードA~Fにより、送信ノードAから送信したパケットを、受信ノードFが受信するまでの通信動作である。ノードB~Eは、それぞれ中継ノードとして機能する。また、各ノードA~Fはそれぞれ、図1に示すノード装置1により構成される。
【0020】
図6は、送信ノードAの動作を説明するためのフローチャートである。図6に示すように、送信ノードAは、データ生成部17により、送信対象のデータであるペイロードを含むパケットを生成する(S1)。本実施形態では、データ生成部17は、図4に示すように、2個のペイロードパケットP1,P2を生成する。
【0021】
次に、送信ノードAは、符号化/復号部15により、2個のペイロードパケットP1,P2に含まれるデータを符号し、4個の補償パケットP3~P6を生成する(S2)。本実施形態では、受信ノードは、パケットP1~P6から全体として2個のパケットを受信できれば、符号化/復号部15により送信対象のデータを復元できる。送信ノードAは、生成されたパケットP1~P6をデータ蓄積部14に格納して蓄積する(S3)。
【0022】
送信ノードAは、データ蓄積部14に格納しているパケットP1~P6に対して、設定制御部13により送信条件を設定する(S4)。設定制御部13は、設定した送信条件に基づいてデータ送信部11による送信動作を制御する。送信ノードAは、データ送信部11から送信対象のパケットをブロードキャストで送信する(S5)。
【0023】
図7は、設定制御部13の動作を説明するためのフローチャートである。図7に示すように、設定制御部13において、符号制御部20は、送信条件として、データ蓄積部14から2個の送信パケットを選択する(S10)。送信パケットの選択は、通信環境等により任意に変更可能である。ここでは、図8に示すように、符号制御部20は、パケットP1~P6から、例えばパケットP3及びP4を選択する。
【0024】
次に、設定制御部13において、送信時刻制御部21は、送信条件として、送信タイミングを選択する(S11)。具体的には、送信時刻制御部21は、任意の時間幅内でランダムに送信タイミングを選択する。
【0025】
ここで、図9に示すように、例えば、ノードBが他ノード1との通信時、及びノードCが他ノード2との通信時には、送信ノードAからのブロードキャストで送信されるパケットを受信できない状態である。そこで、送信時刻制御部21は、送信条件として、図10に示すように、ランダムに待ち時間を確保して送信ノードAの送信タイミング(時刻)を設定する。
【0026】
さらに、設定制御部13において、チャネル制御部22は、送信条件として、送信(通信)チャネルを選択する(S12)。チャネル制御部22は、任意の複数の送信チャネルの選択が可能である。
【0027】
ここで、図11に示すように、例えば、ノードBが、通信チャネルとして、4チャネル(4ch)を使用して他ノード1との通信を実行している状態とする。また、ノードCが、通信チャネルとして、6チャネル(6ch)を使用して他ノード2との通信を実行している状態とする。そこで、チャネル制御部22は、図12に示すように、送信ノードAの送信チャネルとして、例えば2チャネル(2ch)を設定する。チャネルの分割方法は、周波数やスペクトラム拡散の拡散コード等の通信リソースをチャネルに分割できるものであれば適用可能である。この場合、ノードB,Cは、通信チャネル(4ch,6ch)が送信ノードAの送信チャネル(2ch)と重複していないため、送信ノードAから送信されるパケットを受信できる。
【0028】
図7に戻って、送信ノードAは、設定制御部13の符号制御部20、送信時刻制御部21及びチャネル制御部22により設定された送信条件に基づいて、データ送信部11から送信対象のパケット(ここではP3,P4)を、送信チャネル(2ch)を使用してブロードキャストで送信する(S13)。
【0029】
図13は、送信ノードAから送信されたパケットを中継する中継ノードの動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、ノードB,Cが中継ノードとして動作する場合を説明する。
【0030】
図13に示すように、中継ノードB,Cはそれぞれ、データ受信部12において、送信ノードAから送信されたパケットを受信する(S20)。中継ノードB,Cは、受信したパケットをデータ蓄積部14に格納して蓄積する(S21)。
【0031】
中継ノードB,Cは、データ蓄積部14から受信したパケットを取り出して、符号化/復号部15によりデータの復号を実行する準備に入る(S22)。ここで、中継ノードB,Cは、受信したパケットに基づいて、復号に必要なパケット数(ここでは2個のパケット)が不足しているか否かを判定する(S23)。
【0032】
中継ノードB,Cは、復号に必要なパケット数が不足している場合には(S23のYES)、当該受信したパケットをそのまま(復号せずに)転送する(S24)。中継ノードB,Cは、当該受信したパケットを破棄せずにデータ蓄積部14に保存する。
【0033】
中継ノードB,Cは、前述したように、設定制御部13の送信時刻制御部21及びチャネル制御部22により、再度の送信条件を設定して、データ送信部11から当該パケットをブロードキャストで送信する。この場合、送信ノードAとは、符号制御部20による送信条件が異なる。即ち、送信ノードAの場合には、当該送信条件として、データ蓄積部14から2個の送信パケットが選択される。また、送信ノードAの場合には、当該送信条件として、送信チャネルとして、2チャネル(2ch)が選択されている。
【0034】
一方、図14に示すように、中継ノードB,Cは、復号に必要なパケット数を満たして、2個のパケット(ここではP3,P4)を受信している場合には(S23のNO)、データ蓄積部14から符号化/復号部15に当該データを送出する。
【0035】
図13に戻って、符号化/復号部15は復号処理を実行して、復号されたデータのパケット(ここではP1、P2,P5,P6)をデータ蓄積部14に蓄積する(S26)。次に、中継ノードB,Cはそれぞれ、データ蓄積部14からランダムに転送対象のパケットを選択して、次のノード(ここではノードD,E)に転送する(S27)。
【0036】
図15に示すように、例えば、中継ノードBはパケットP5を転送する。また、例えば、中継ノードCはパケットP4を転送する。中継ノードB,Cが別のパケットを送信することにより、中継ノードB,Cがそれぞれ2個のパケットP4,P5を送信するよりも、送信速度は2倍となる。
【0037】
なお、中継ノードB,Cは、前述したように、設定制御部13の符号制御部20、送信時刻制御部21及びチャネル制御部により設定した送信条件に基づいて、データ送信部11から当該パケットをブロードキャストで送信する。この場合、前述したように、送信ノードAの場合とは、符号制御部20による送信条件が異なる。
【0038】
さらに、図16に示すように、ノードD,Eが中継ノードとして動作することで、受信ノードFは、中継ノードD,Eから転送されたパケット(ここではP1、P6)を受信する。即ち、中継ノードD,Eはそれぞれ、中継ノードB,Cと同様の動作により、パケット(P1、P6)を受信ノードFに転送する。
【0039】
受信ノードFは、中継ノードD,Eから、復号に必要な2個のパケット(P1,P6)を受信すると、符号化/復号部15により復号処理を実行する。即ち、受信ノードFは、復号されたデータのパケット(P2~P5)をデータ蓄積部14に蓄積する。受信ノードFは、復号されたパケット(P2~P5)から2個のパケットを使用して、送信ノードAからの送信対象である元データを復元する。受信ノードFは、復元した元データを、データ表示部18によりディスプレイ上に表示できる。
【0040】
上記構成により、各ノード装置が移動することによりネットワーク系、あるいはネットワーク構成が頻繁に切り替わる環境において、代表ノードや事前のネゴシエーション無しでの通信環境を実現することができる。次に、上記のようなネットワークインフラ上で機能するマルチエージェントシステムを構築可能な、分散協調型プラットフォームについて説明する。
【0041】
図17は、ノード1の一例としての移動体(ドローン)を示す機能ブロック図である。ノード1は、分散協調型プラットフォームを介して他のノード1と通信可能である。ノード1は、分散協調型プラットフォームに自由に参加し、また、離脱することが可能である。ノード1の参加/離脱のたびにネットワーク構成(トポロジ)は変化するが、中央集権的な役割を持つノードは発生せず、いわゆるアドホック型の通信ネットワークが常時、形成される。
【0042】
ノード1は、図1および図2に示される機能ブロックに加え、移動体としての機能を実現するための移動部32、プロセッサ30、およびメモリ31を備える。さらにノード1は、観測部33と、計測部としてのジャイロセンサ34およびGPS(Global Positioning System)装置35を備える。観測部33は、例えば撮像カメラや電波レーダ、レーザレーダなどの、指向性を持つ観測機器であり、指向方向における観測対象を観測する。ジャイロセンサ34およびGPS装置35は、ノード1の位置情報、方位情報、あるいは姿勢情報等を取得する。
【0043】
プロセッサ30は、メモリ31に記憶されたプログラム31aに含まれる命令を実行する、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の処理ユニットである。
【0044】
プロセッサ30は、ミドルウェア50と、このミドルウェアの上位層で機能するアプリケーション40とを実行する。ミドルウェア50は、分散協調型プラットフォームのリソースを利用して、他のノード装置と情報共有する。共有される情報は、例えば各ノードの位置情報、方位情報、姿勢情報等の物理的な情報や、観測部33で取得された画像データなどである。
【0045】
アプリケーション40は、共有プロセス40a、および移動制御プロセス40bを含む。共有プロセス40aは、分散協調型プラットフォームを経由して、他のノードと位置情報および方位情報を互いに共有する。移動制御プロセス40bは、共有された位置情報および方位情報に基づいて移動部32を制御する。実施形態では、移動制御プロセス40bは、分散協調型プラットフォームに参加するノード1の観測部33の指向方向を、予め設定された方向に揃えるべく移動部32を制御する。
【0046】
図18は、実施形態に係わるマルチエージェントシステムの初期状態の一例を示す図である。初期状態では、移動体としてのノード1の観測部33の指向方向が、ばらばらな方向を向いている。このような状態から各ノード1が情報を共有し、アプリケーション40の作用により、図19に示されるように次第に観測方向へと向きを揃えてゆく。このようにノード1間で相互に通信しあい、お互いの観測範囲が重複しないようにすることで、全体の観測範囲の最大化を実現することができる。
【0047】
図20に示されるように、新たなノード1がマルチエージェントシステムに参加した場合でも、分散協調型プラットフォームを介した情報伝達によりマルチエージェントシステムが維持され、図21に示されるように、全てのノード1の観測方向が次第に揃ってゆく。逆に、移動体の電池切れ等でグループが入れ替わた場合にも、容易にマルチエージェントシステムを維持することが可能である。
【0048】
[効果]
以上のようにして本実施形態によれば、無線アドホックネットワークとして構築された無線ネットワーク2により、複数のノード間でパケットを通信することが可能となる。具体的には、複数のノードが送信ノード、中継ノード、受信ノードとして動作し、送信ノードから送信(ブロードキャスト)されたパケットを、中継ノードにより中継して受信ノードまで転送できる。
【0049】
本実施形態によれば、送信ノード及び中継ノードは、パケットを送信する場合に、設定制御部13により設定した複数の送信条件に基づいて、送信動作を制御する。従って、無線ネットワーク2での通信環境に応じて、確実にパケットを送信または転送することが可能となる。具体的には、複数の送信条件として、送信タイミング及び送信チャネルの選択により、通信環境に適応したパケットの送信または転送を制御できる。
【0050】
さらに、設定制御部13の符号制御部20による送信条件として、送信ノードは、補償パケットを含む複数のパケットから元データの復元が必要な個数以上のパケットを任意に選択して送信する。これにより、送信ノードから復元が必要な個数以上のパケットを受信したノード(中継ノード又は受信ノード)は、当該パケットから確実に元データの復元を実現できる。
【0051】
一方、復元が必要な個数のパケットを受信できないノードは、符号制御部20による送信条件として、受信したパケットをそのまま他のノードに転送する。この場合、当該ノードは、当該受信したパケットを破棄せずにデータ蓄積部14に保存する。
【0052】
従って、本実施形態によれば、ノードが離脱・故障・移動などにより、ネットワーク構成が頻繁に変化する場合でも、複数の送信条件に基づいてパケットの送信や中継を制御できるため、ノード間の通信継続の安定化を実現できる。これにより、本実施形態を適用する無線ネットワークであれば、災害発生時に警察や消防等の通信網や、P2P通信を構築する場合に有用である。
【0053】
また、実施形態によれば、ネットワークインフラの存在しない場所においても、マルチエージェントシステムを構築できる。具体的には、ドローンやセンサ等の組み合わせによる観測システムを、大規模かつ固定的に構築されたネットワークインフラが使えない野外環境においても容易に構築することができる。これらのことから実施形態によれば、ノード間に安定した通信環境を形成することの可能なマルチエージェントシステム、およびノード装置を提供することができる。
【0054】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えばノード1の一例としていわゆるドローンを挙げたが、これに限らず、車両、飛行体、船舶等の移動体をノードとして運用することが可能である。さらに、移動体に限られることもなく、移動しない物体であっても実施形態の分散協調型プラットフォームに参加して、マルチエージェントシステムを構築することが可能である。
【0055】
また実施形態では、ジャイロセンサ34、GPS装置35によりノード1の位置情報、方位情報、あるいは姿勢情報等を取得した。これに限らず、他のノード装置に対する自装置の相対的な位置情報を計測部により計測し、この位置情報を共有プロセス40aにより他のノード装置間で共有し、共有された位置情報に基づいて移動制御プロセス40bにより移動部32を制御して、各ノード1を適切な位置に移動させることもできる。上記相対的な位置情報は、例えば、他のノード装置から放射される電波の受信強度を測定し、その値に基づいて計算することができる。
【0056】
上記の新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…ノード装置、2…無線ネットワーク、10…本体、11…データ送信部、12…データ受信部、13…設定制御部、14…データ蓄積部、15…符号化/復号部、16…端末、17…データ生成部、18…データ表示部、20…符号制御部、21…送信時刻制御部、22…チャネル制御部、30…プロセッサ、31…メモリ、31a…プログラム、32…移動部、33…観測部、34…ジャイロセンサ、35…GPS装置、40…アプリケーション、40a…共有プロセス、40b…移動制御プロセス、50…ミドルウェア。
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