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特許7516186一方向に調節可能なループ縫合構造体並びにその形成方法及び使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】一方向に調節可能なループ縫合構造体並びにその形成方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/68 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A61B17/68
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020160672
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2021053385
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】16/583,998
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アダム・シー・ガスタフソン
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0256677(US,A1)
【文献】特開2005-237966(JP,A)
【文献】特表2018-509255(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0309689(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0254713(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫合糸フィラメントから形成された縫合糸構造体であって、
第1の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第1の結び目から延在する第1のループを形成しており、前記第1のループが第1のループ開口を画定する、第1の結び目と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第1の尾部と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントのブリッジ部分と、
第2の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第2の結び目から延在する第2のループを形成しており、前記第2のループが第2のループ開口を画定し、前記第2のループの一部分が前記第1のループ開口を通って、前記縫合糸構造体の調節可能なループを画定し、前記調節可能なループが調節可能なループ開口を画定する、第2の結び目と、
前記第2の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第2の尾部と、を含み、
前記第1の尾部が、前記第1の結び目に対して摺動して前記第1のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口のイズを縮小させるように構成されており、
前記第2の尾部が、前記第2の結び目に対して摺動して前記第2のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口の前記サイズを縮小させるように構成されており、
前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分は、前記第1の結び目を前記第2の結び目に接続し、前記縫合糸構造体がロック構成に操作されるときに前記調節可能なループ開口の拡張を防止するように構成されており、
前記第1の結び目又は前記第2の結び目のうちの少なくとも1つが、自己ロック式結び目を含み、
前記自己ロック式結び目が、8の字形引き結びの結び目又は拡張された8の字形引き結びの結び目のうちの少なくとも1つを含むか、または少なくとも1つのプル-ジック型結び目を含む、縫合糸構造体。
【請求項2】
縫合糸フィラメントから形成された縫合糸構造体であって、前記縫合糸フィラメントが、
第1の縫合糸フィラメントであって、
第1の結び目であって、前記第1の縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第1の結び目から延在する第1のループを形成しており、前記第1のループが第1のループ開口を画定する、第1の結び目と、
前記第1の結び目から延在する前記第1の縫合糸フィラメントの第1の尾部と、
前記第1の結び目から延在する前記第1の縫合糸フィラメントのブリッジ部分と、
第2の結び目であって、前記第1の縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第2の結び目から延在する第2のループを形成しており、前記第2のループが第2のループ開口を画定し、前記第2のループの一部分が前記第1のループ開口を通って、前記縫合糸構造体の調節可能なループを画定し、前記調節可能なループが調節可能なループ開口を画定する、第2の結び目と、
前記第2の結び目から延在する前記第1の縫合糸フィラメントの第2の尾部と、を含み、
前記第1の尾部が、前記第1の結び目に対して摺動して前記第1のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口のサイズを縮小させるように構成されており、
前記第2の尾部が、前記第2の結び目に対して摺動して前記第2のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口の前記サイズを縮小させるように構成されており、
前記第1の縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分は、前記第1の結び目を前記第2の結び目に接続し、前記縫合糸構造体がロック構成に操作されるときに前記調節可能なループ開口の拡張を防止するように構成されている、第1の縫合糸フィラメントと、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目の一部分を捕捉するように構成された第2の縫合糸フィラメントと、を含み、
前記第2の縫合糸フィラメントの第1のリム又は前記第2の縫合糸フィラメントの第2のリムのうちの少なくとも1つに対する張力がそれぞれ前記第1の結び目又は前記第2の結び目を弛緩させるように、前記第1のリムは前記第1の結び目まで延在し、前記第2のリムは前記第2の結び目まで延在している、合糸構造体。
【請求項3】
前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分に連結された固定本体を更に含む、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項4】
縫合糸構造体であって、
縫合糸フィラメントであって、
第1の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第1の結び目から延在する第1のループを形成しており、前記第1のループが第1のループ開口を画定する、第1の結び目と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第1の尾部と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントのブリッジ部分と、
第2の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第2の結び目から延在する第2のループを形成しており、前記第2のループが第2のループ開口を画定し、前記第2のループの一部分が前記第1のループ開口を通って、前記縫合糸構造体の調節可能なループを画定し、前記調節可能なループが調節可能なループ開口を画定する、第2の結び目と、
前記第2の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第2の尾部と、を含む、縫合糸フィラメントと、
前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分に連結された第1の固定本体と、
前記調節可能なループに連結された第2の固定本体と、を含み、
前記第1の尾部が、前記第1の結び目に対して摺動して前記第1のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口のサイズを縮小させるように構成されており、
前記第2の尾部が、前記第2の結び目に対して摺動して前記第2のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口の前記サイズを縮小させるように構成されており、
前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分は、前記第1の結び目を前記第2の結び目に接続し、前記縫合糸構造体がロック構成に操作されるときに前記調節可能なループ開口の拡張を防止するように構成されている、縫合糸構造体。
【請求項5】
前記縫合糸構造体が、ロック解除構成を更に含み、前記縫合糸構造体が、前記ブリッジ部分、前記第1の尾部、又は前記第2の尾部のうちの少なくとも1つの相対的な荷重を調節することによって、前記ロック解除構成と前記ロック成との間を動かされるように構成されている、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項6】
外科用インプラントであって、
第1の固定本体であって、それに沿って延在する長手方向軸、第1及び第2の側面、並びに第1及び第2の貫通孔を有する、第1の固定本体と、
前記第1の固定本体に連結された縫合糸フィラメントであって、
第1の部分であって、前記第1の貫通孔を通って延在する第1の尾部と、前記第1の部分の上に形成され、前記第1の固定本体の前記第1の側面上に配設された第1の結び目と、前記第1の固定本体から離れて、前記第1の結び目から延在する第1のループ部分と、を有する、第1の部分と、
第2の部分であって、前記第2の貫通孔を通って延在する第2の尾部と、前記第2の部分の上に形成され、前記第1の固定本体の前記第1の側面上に配設された第2の結び目と、前記第1の固定本体から離れて、前記第2の結び目から延在する第2のループ部分と、を有しており、前記第2のループ部分が前記第1のループ部分に連結されて、前記外科用インプラントの調節可能なループを画定する、第2の部分と、
前記第1の結び目から前記第2の結び目まで延在するブリッジ部分と、を含む、縫合糸フィラメントと、
第2の固定本体であって、前記第2の固定本体が前記調節可能なループに連結されている、第2の固定本体と、を含み、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記第1の尾部に対する張力が前記第1のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させ、かつ前記第2の尾部に対する張力が前記第2のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させるように構成されており、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記ブリッジ部分に対する張力が前記調節可能なループの拡張を防止するように更に構成されている、外科用インプラント。
【請求項7】
前記第1の結び目又は前記第2の結び目のうちの少なくとも1つが、自己ロック式結び目を含む、請求項6に記載の外科用インプラント。
【請求項8】
前記縫合糸フィラメントが、前記第1の結び目及び前記第2の結び目の位置でつなぎ合わされていない、請求項6に記載の外科用インプラント。
【請求項9】
前記第1の固定本体が皮質ボタンを含む、請求項6に記載の外科用インプラント。
【請求項10】
前記ブリッジ部分が、前記第1の結び目から、前記第1の貫通孔を通って、前記第1の固定本体を横切って、かつ前記第2の貫通孔を通って前記第2の結び目まで延在する、請求項6に記載の外科用インプラント。
【請求項11】
外科用インプラントであって、
固定本体であって、それに沿って延在する長手方向軸、第1及び第2の側面、並びに第1及び第2の貫通孔を有する、固定本体と、
前記固定本体に連結された第1の縫合糸フィラメントであって、
第1の部分であって、前記第1の貫通孔を通って延在する第1の尾部と、前記第1の部分の上に形成され、前記固定本体の前記第1の側面上に配設された第1の結び目と、前記固定本体から離れて、前記第1の結び目から延在する第1のループ部分と、を有する、第1の部分と、
第2の部分であって、前記第2の貫通孔を通って延在する第2の尾部と、前記第2の部分の上に形成され、前記固定本体の前記第1の側面上に配設された第2の結び目と、前記固定本体から離れて、前記第2の結び目から延在する第2のループ部分と、を有しており、前記第2のループ部分が前記第1のループ部分に連結されて、前記外科用インプラントの調節可能なループを画定する、第2の部分と、
前記第1の結び目から前記第2の結び目まで延在するブリッジ部分と、を含み、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記第1の尾部に対する張力が前記第1のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させ、かつ前記第2の尾部に対する張力が前記第2のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させるように構成されており、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記ブリッジ部分に対する張力が前記調節可能なループの拡張を防止するように更に構成されている、第1の縫合糸フィラメントと、
記第1の結び目及び前記第2の結び目の一部分を捕捉する第2の縫合糸フィラメントであって、
前記第2の縫合糸フィラメントの第1のリムが前記第1の結び目まで延在しており、前記第2の縫合糸フィラメントの第2のリムが前記第2の結び目まで延在しており、
前記第2の縫合糸フィラメントは、前記第1又は第2のリムのうちの少なくとも1つに対する張力が、それぞれ前記第1又は第2の結び目を弛緩させるように構成されている、第2の縫合糸フィラメントと、を含む、外科用インプラント。
【請求項12】
外科用インプラントを調製する方法であって、
縫合糸長さの第1の部分に第1の結び目を形成して、前記第1の結び目の一方の側から延在する第1の尾部と、前記第1の結び目の反対側から延在する前記縫合糸長さの第2の部分と、を形成することと、
前記第2の部分から第1のループを形成することであって、前記第1のループが前記第1の結び目によって閉じられる、第1のループを形成することと、
前記縫合糸長さの前記第2の部分に第2の結び目を形成して、前記第2の結び目の一方の側から延在する第2の尾部と、前記第2の結び目の反対側から延在する前記縫合糸長さの第3の部分と、を形成することと、
前記第3の部分から第2のループを形成することであって、前記第2のループが前記第2の結び目によって閉じられ、前記第2のループが前記第1のループと相互接続されて、前記外科用インプラントの調節可能な固定ループを画定する、第2のループを形成することと、
前記第1の尾部を第1の固定本体の第1の貫通孔に通すことと、
前記第2の尾部を前記第1の固定本体の第2の貫通孔に通すことと、
前記縫合糸長さの前記第2の部分を、前記第1の固定本体の前記第1の貫通孔、前記第1の固定本体の前記第2の貫通孔、又は前記第1の固定本体の少なくとももう1つの貫通孔のうちの少なくとも2つに通すことと、
前記調節可能な固定ループを第2の固定本体に連結することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記縫合糸長さの前記第2の部分が、前記第1の結び目と前記第2の結び目との間に延在するブリッジ部分を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の尾部又は前記第2の尾部のうちの少なくとも1つは、張力がそれに加えられて、それぞれ前記第1のループ又は前記第2のループによって画定される第1又は第2の開口のサイズを収縮させるときに、前記調節可能な固定ループによって画定される開口のサイズを収縮させるように構成されている、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、軟組織(例えば、靭帯、腱、移植片)を骨に固定する装置及び方法に関し、より具体的には、一方向に調節可能な特定のループ構成を採用する縫合糸構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
靭帯は、体内において骨を他の骨に連結する線維組織である。組織の剥離は、例えば、転落などの事故、仕事に関連する活動中、競技イベントの進行中、又は多くの他の状況及び/又は活動のいずれか1つにおける過度の努力の結果など、多岐にわたる態様で発生し得る。これらのタイプの損傷は一般的に、組織に過剰な応力又は異常な力が作用した結果、生ずるものである。靭帯が損傷すると、靭帯は自身で再生しないので、再建手術が必要となる場合がある。「捻挫」という総称で通常呼ばれる部分的剥離の場合、損傷は、医療的な介入を行うことなくしばしば治癒し、患者は安静にして、治癒過程の間に損傷が過度に激しい活動に曝されないように配慮する。しかしながら、靱帯又は腱が、付随する骨又は複数の骨上の付着部位から完全に剥離している場合、又は靱帯又は腱が外傷性損傷の結果、断裂している場合には、損傷した関節に完全な機能を回復するために外科的介入が必要となる場合がある。
【0003】
靭帯又は他の軟組織を骨に再結合させるために多くの外科的処置が存在する。一例は、図1に示される膝100であり、この膝100には、脛骨106の頭部から大腿骨108の顆間窩へと延びる前及び後十字靭帯102、104が含まれる。これらの靭帯は、2本の骨の間の前方及び後方への相対運動を防止するように動作する。断裂すると(例えば、激しい運動競技での動きで生じ得るように)、外科的再建が必要となり得る。
【0004】
膝の十字靭帯の裂傷は、死体(すなわち、同種移植片)から又は患者自身の組織(すなわち、自家移植片)から採取された靭帯移植片を使用して修復され得る。再建処置は一般に、大腿骨と脛骨の両方に孔を形成することと、次いでこれらの孔の中に靭帯移植組片の両端部を固定することとを含む。1つの十字靱帯修復処置では、靭帯移植片は、外科用インプラントと関連付けられ、大腿骨に固定される。共通の大腿骨固定手段は、皮質ボタンと呼ばれることがある細長い「ボタン」を含む。皮質ボタンは、確実な皮質外固定を提供しながら軟組織移植片の適切な長さが大腿骨骨孔内にあることを可能にするようにサイズ決めされた縫合糸ループに取り付けられる。
【0005】
既存の装置及び方法は、それらが所望の強度及び調節性を常時提供しないために、限定され得る。場合によっては、例えば、皮質ボタンに対して、またひいてはそれと関連付けられる移植片に対して、縫合糸ループの位置を維持する助けとなるように結び付けられた1つ以上の結び目が、弛緩するか又はずれる場合がある。したがって、靭帯移植片が処置中に所望の位置に配設された場合であっても、手術後にループの円周が増加し、移植片が所望の位置から離れて移動する可能性がある。更に、結び目弛緩の可能性のため、及び結び目の追加の表面積が周囲の組織に対する外傷の危険性を増加させる可能性があるため、このような装置と共に使用される結び目の数を制限することが望ましい場合がある。更に、既存のデバイス及び方法はまた、多くの場合で調節機能を欠いている。例えば、複数の靭帯移植片が皮質ボタンと関連付けられる処置では、一方の靭帯移植片の配置を制御し、同時に他方の靭帯移植片を移動させないことは困難であり得る。
【0006】
結び目を採用する整形外科で使用される現在の調節可能な皮質ボタンは、安定を得るために、ボタン形状及び/又は複数のループに依存する。これらは、装置の汎用性の制限要因となり、有用性において潜在的な困難を惹起する。これらの懸念事項に取り組むために、スプライスが一方向固定要素として使用されてきたが、そのような構成は、少なくとも、テープ、密着シース及び/又はコアを有する縫合糸に対する使用感が悪く、一般に、安定を得るためにより長い長さのループを必要とし、それによって最小の調節可能な長さを増加させるという理由で、限定的である。更に、純粋に吊り下げ固定装置(例えば、位置決め/保持機構を有しない皮質ボタン)と共に使用する際、非等角修復(non-isometric repai)による装置の除荷によって引き起こされる可能性のある骨トンネルに対するボタンの位置又は移動は、装置の一方の側に低減された干渉領域をもたらし、固定強度を低下させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、例えば、膝の十字靭帯を含む修復及び再建処置に使用するための改善された移植片固定装置及び方法が必要である。具体的には、縫合糸をつなぎ合わせることなく、又はつなぎ合わせることができない縫合糸を使用することなく、強度及び調節性を向上させる、靭帯移植片を位置決め及び固定するための装置及び方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一方向に調節可能なループを有する縫合糸構造体に関する。縫合糸構造体は、単一の縫合糸フィラメントから形成することができ、少なくともいくつかの実施形態では、様々な軟組織修復処置で使用するための1つ又は2つ以上の固定本体(例えば、皮質ボタン)に連結され得る。単一の縫合糸フィラメントは、その中に形成された少なくとも2つの結び目と、少なくとも2つのループ部分とを含む。各ループ部分は、それぞれの結び目から延在し、次いで、2つのループ部分は相互接続されて、一方向に調節可能なループを形成する。2つのループ部分は、例えば、1つのループ部分を、他のループ部分によって画定された開口に通すことによって、相互接続され得る。縫合糸フィラメントから形成され、結び目から延在する摺動尾部は、ループ部分を収縮させるか又は他の方法でより小さくさせて、それによって、調節可能なループを収縮させるか又は他の方法でより小さくさせるように操作可能であり得る。更に、縫合糸フィラメントから形成され、結び目から延在する収縮尾部は、結び目を収縮させ、それによって、摺動尾部が結び目に対して摺動することを防止するように操作可能であり得る。収縮尾部が結び目を収縮させるとき、ループ部分、ひいては調節可能なループは、拡張され得ない。少なくともいくつかの実施形態では、収縮尾部は、2つの結び目の間に延在するブリッジ部分を形成し、ブリッジ部分は、一方向に調節可能なループが収縮されるが拡張されないように、構造体をロック構成に維持する。
【0009】
本明細書に開示される構造体は、軟組織が骨に対して所望の位置に配設される様々な外科的修復処置で使用され得る。靭帯又は移植片が骨トンネル内に配設されるように設計される処置は、ACL及びMCL修復などの本開示の構造体及びインプラント装置から利益を得ることができる。本開示はまた、AC関節修復、腱膜瘤修復、及び足関節靭帯結合修復を含むがこれらに限定されない、他の種類の修復における有益な使用を可能にする。
【0010】
例示的な一実施形態では、縫合糸フィラメントから形成される縫合糸構造体は、縫合糸フィラメント内に形成された第1の結び目と、第1の結び目から延在する縫合糸フィラメントの第1の尾部と、縫合糸フィラメントのブライド(bride)部分と、縫合糸フィラメント内に形成された第2の結び目と、第2の結び目から延在する縫合糸フィラメントの第2の尾部と、を含む。第1の結び目は、第1の結び目から延在する第1のループを形成し、第1のループは第1のループ開口を画定する。ブリッジ部分は、第1の結び目から延在し、第1の結び目を第2の結び目に接続する。第2の結び目は、第2の結び目から延在する第2のループを形成し、第2のループが第2のループ開口を画定し、第2のループの一部分は第1のループ開口を通って、縫合糸構造体の調節可能なループを画定する。調節可能なループは、調節可能なループ開口を画定する。第1の尾部は、第1の結び目に対して摺動して、第1のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては調節可能なループ開口のサイズを縮小させるように構成されている。同様に、第2の尾部は、第2の結び目に対して摺動して、第2のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては調節可能なループ開口のサイズを縮小させるように構成されている。ブリッジ部分は、縫合糸がロック構成に操作されるときに、調節可能なループ開口の拡張を防止するように構成されている。
【0011】
第1の結び目又は第2の結び目の少なくとも一方は、自己ロック式結び目であり得る。このような結び目の非限定的な例としては、8の字形引き結びの結び目、拡張された8の字形引き結びの結び目、及びプル-ジック型結び目が挙げられる。縫合糸フィラメントは、第1の結び目及び第2の結び目の位置でつなぎ合わされていなくてもよい。いくつかの実施形態では、第2の縫合糸フィラメントは、一方の結び目及び/又は両方の結び目の一部分を捕捉して、牽引力が第2のフィラメントに加えられたときに結び目の収縮を解放することを可能にするように構成され得る。この構成の例示的な一実施形態では、第2のフィラメントは、リムに対する張力がそれぞれ第1の結び目及び/又は第2の結び目を弛緩させるように、第1の結び目を通って延在する第2の縫合糸フィラメントの第1のリム及び第2の結び目を通って延在する第2の縫合糸フィラメントの第2のリムにより、第1の結び目及び第2の結び目に通される。
【0012】
固定本体は、縫合糸フィラメントのブリッジ部分に連結され得る。例えば、ブリッジ部分は、固定本体内に配設された複数の貫通孔に通され得る。いくつかの実施形態では、第2の固定本体は、調節可能なループに連結され得る。
【0013】
縫合糸はまた、ロック解除構成を含み得る。いくつかのそのような実施形態では、縫合糸は、ブリッジ部分及び/又は尾部部分(すなわち、第1の尾部及び第2の尾部)の相対的な荷重を調節することによって、ロック解除構成とロック解除構成との間で動かされるように構成され得る。外科用インプラントの例示的な一実施形態では、インプラントは、固定本体と、固定本体に連結された縫合糸フィラメントとを含む。固定本体は、それに沿って延在する長手方向軸、第1及び第2の側面、並びに第1及び第2の貫通孔を有する。縫合糸フィラメントは、第1の尾部と、第1の部分上に形成された第1の結び目と、第1のループ部分とを有する第1の部分を含む。第1の尾部は第1の貫通孔を通って延在し、第1の結び目は本体の第1の側面上に配設され、第1のループ部分は本体から離れて第1の結び目から延在する。縫合糸フィラメントはまた、第2の尾部と、第2の部分上に形成された第2の結び目と、第2のループ部分とを有する第2の部分を含む。第2の尾部は第2の貫通孔を通って延在し、第2の結び目は本体の第1の側面上に配設され、第2のループ部分は本体から離れて第2の結び目から延在する。第2のループ部分は、第1のループ部分に連結されて、外科用インプラントの調節可能なループを画定する。縫合糸フィラメントは、第1の結び目から第2の結び目まで延在するブリッジ部分を更に含む。第1の結び目及び第2の結び目は、第1の尾部に対する張力が第1のループ部分を収縮させることによって調節可能なループを収縮させ、かつ第2の尾部に対する張力が第2のループ部分を収縮させることによって調節可能なループを収縮させるように構成されている。第1の結び目及び第2の結び目は、ブリッジ部分に対する張力が調節可能なループの拡張を防止するように更に構成されている。
【0014】
第1の結び目又は第2の結び目の少なくとも一方は、自己ロック式結び目であり得る。このような結び目の非限定的な例としては、8の字形引き結びの結び目、拡張された8の字形引き結びの結び目、及びプル-ジック型結び目が挙げられる。縫合糸フィラメントは、第1の結び目及び第2の結び目の位置でつなぎ合わされなくてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、ブリッジ部分は、第1の結び目から、第1の貫通孔を通って、本体を横切って、かつ第2の貫通孔を通って第2の結び目まで延在し得る。インプラントは、第2の固定本体を含み得、その場合、第2の固定本体は調節可能なループに連結され得る。一方の固定本体又は両方の本体は皮質ボタンを含み得る。いくつかの実施形態では、固定本体は第3の貫通孔を含み得る。いくつかのこのような実施形態では、並びに第2の固定本体を含むが必ずしも第3の貫通孔を含まない実施形態では、外科用インプラントは、第1の結び目及び第2の結び目の一部分を捕捉する第2の縫合糸フィラメントを含み得、第2の縫合糸フィラメントの第1のリムは第1の結び目を通って延在し、第2の縫合糸フィラメントの第2のリムは第2の結び目まで延在する。第2の縫合糸フィラメントは、第1又は第2のリムのうちの少なくとも一方に対する張力が、それぞれ第1又は第2の結び目を弛緩させるように構成され得る。
【0016】
外科用インプラントを調製するための1つの例示的な方法は、縫合糸長さの第1の部分に第1の結び目を形成して、第1の結び目の一方の側から延在する第1の尾部と、第1の結び目の反対側から延在する縫合糸長さの第2の部分と、を形成することを含む。本方法は更に、第2の部分から第1のループを形成することを更に含み、第1のループは、第1の結び目によって閉じられる。更に、第2の結び目は、縫合糸長さの第2の部分に形成されて、第2の結び目の一方の側から延在する第2の尾部と、第2の結び目の反対側から延在する縫合糸長さの第3の部分と、を形成する。本方法は、第3の部分から第2のループを形成することを更に含み、第2のループは第2の結び目によって閉じられ、第2のループは、第1のループと相互接続されて、縫合糸構造体の調節可能な固定ループを画定する。
【0017】
縫合糸長さの第2の部分は、第1の結び目と第2の結び目との間に延在するブリッジ部分を含み得る。いくつかの実施形態では、第1の尾部又は第2の尾部のうちの少なくとも1つは、張力が尾部に加えられて、それぞれ第1のループ又は第2のループによって画定される第1又は第2の開口のサイズを収縮させるときに、調節可能な固定ループによって画定される開口のサイズを収縮させるように構成され得る。
【0018】
この方法はまた、第1の尾部を固定本体の第1の貫通孔に通すことと、第2の尾部を固定本体の第2の貫通孔に通すことと、縫合糸長さの第2の部分を、(1)固定本体の第1の貫通孔、(2)固定本体の第2の貫通孔、(3)固定本体の別の貫通孔、又は(4)固定本体の更に別の貫通孔、のうちの少なくとも2つに通すことと、を更に含み得る。更に、本方法は、調節可能な固定ループを第2の固定本体に連結することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されよう。
図1】ヒトの膝の解剖学的構造の概略側面図である。
図2】調節可能な固定インプラントの例示的な一実施形態の側面図である。
図3図2の調節可能な固定インプラントの固定本体の斜視図である。
図4A図2の調節可能な固定インプラントの縫合糸構造体の側面図であり、縫合糸構造体は一方向に調節可能なループを有する。
図4B】2つの8の字形引き結びの結び目を含む、図4Aの縫合糸構造体の一部分の詳細側面図である。
図5】縫合糸構造体に連結された第2の固定本体を有する、図2の調節可能な固定インプラントの側面図であり、縫合糸構造体は図4Aに更に示されている。
図6】8の字形引き結びの結び目を形成する例示的な一実施形態の概略側面図である。
図7A図4Aの縫合糸構造体と同様の縫合糸構造体の一部分の詳細側面図であり、縫合糸構造体は、調節される向きに配設された図6の8の字形引き結びの結び目を含む。
図7B】ロックされる向きに配設された図7Aの縫合糸構造体の一部分の詳細側面図である。
図8A図4Aの縫合糸構造体と同様の縫合糸構造体の一部分の詳細側面図であり、縫合糸構造体は、調節される向きに延在した8の字形引き結びの結び目を含む。
図8B】ロックされる向きに配設された図8Aの縫合糸構造体の一部分の詳細側面図である。
図9A図4Aの縫合糸構造体と同様の縫合糸構造体の一部分の詳細側面図であり、縫合糸構成体は単一のプルージック型結び目を含む。
図9B図4Aの縫合糸構造体と同様の縫合糸構造体の例示的な一実施形態の詳細側面図であり、縫合糸構造体は、少なくとも2つのプルージック型結び目(図示されるように、4つのそのような結び目)を使用して構築された一方向に調節可能なループを含む。
図10A】一方向に調節可能なループを締め付ける方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
図10B】一方向に調節可能なループを締め付ける方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
図10C】一方向に調節可能なループを締め付ける方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
図11】大腿骨内に配設置された調節可能な固定インプラントの例示的な一実施形態の概略側面図である。
図12A図4Aの縫合糸構造体の斜視図であり、縫合糸構造体は2つの固定本体と関連付けられている。
図12B図4Aの縫合糸構造体の斜視図であり、縫合糸構造体は2つの固定本体と関連付けられている。
図12C図4Aの縫合糸構造体の斜視図であり、縫合糸構造体は2つの固定本体と関連付けられている。
図13図3の固定本体に連結された図4Aの縫合糸構造体を含む調節可能な固定インプラントの例示的な一実施形態の側面図であり、縫合糸構造体はまた、ユーティリティステッチを含む。
図14A図13の調節可能な固定インプラントを使用する方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
図14B図13の調節可能な固定インプラントを使用する方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
図14C図13の調節可能な固定インプラントを使用する方法の例示的な一実施形態の工程の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態のうちの1つ以上の実施例が、添付の図面に例示されている。当業者は、具体的に本明細書において説明され、添付の図面において例解される装置及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本開示の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して図示又は記載される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。そのような修正及び変形は、本開示の範囲内に含まれるものとする。更に、本開示において、実施形態の同様の番号が付された構成要素は、概して類似する特徴を有する。加えて、開示されるシステム、装置、及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、装置、及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置、並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくとも、システム及び装置が内部で用いられる対象の解剖学的構造、システム及び装置が一緒に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び手順に依存し得る。
【0021】
本明細書で提供される図面は、必ずしも原寸に比例していない。更に、構成要素に張力を加えるか又はそれを引っ張ることができる方向を説明するために矢印が使用される限りにおいて、これらの矢印は、例示的なものであり、個々の構成要素に張力を加えるか又はそれを引っ張ることができる方向をいかなる形でも限定するものではない。当業者であれば、所望の張力又は移動をもたらすための他の方法及び方向を認識するであろう。同様に、いくつかの実施形態では、ある構成要素の動きが別の構成要素に対して説明されるが、当業者であれば、他の動きも可能であることを認識するであろう。加えて、多様な用語が開示全体をとおして互換的に使用される場合があるが、このことは当業者には理解されるであろう。非限定例として、用語「縫合糸」、「フィラメント」、及び「縫合糸フィラメント」は互換的に使用されてもよい。
【0022】
本開示は、概して、靭帯、腱、及び移植片を含むがこれらに限定されない軟組織を、対象(例えば、ヒト、動物)の内部の骨又は他の所望の位置に固定する方法及び装置に関する。本明細書に記載の外科用インプラントは、概して、「皮質ボタン」などの本体又は固定本体と、一方向に調節可能なループを提供する様式で本体に通されるか、又は別の方法で本体に関連付けられる縫合糸(フィラメント又は縫合糸フィラメントとも呼ばれる)から形成される縫合糸構造体と、を含む。一方向に調節可能なループは、縫合糸の2つの相互連結ループによって形成され得る(例えば、図2及び4のループ部分501、503を参照されたい)。一方向に調節可能なループのサイズは、縫合糸の末端部を使用して、縫合糸の相互連結ループの一方又は両方を操作することによって調節され得る。使用時には、移植片、及び/又は他の組織(例えば、靭帯(複数可)、腱(複数可))は、例えば、一方向に調節可能なループによって画定された開口を通して組織を配置することによって、一方向に調節可能なループに連結され得るか、又は別様に一方向に調節可能なループと関連付けられ得、一方向に調節可能なループはインプラントの固定本体から延在する。組織は、トンネルの外側に固定本体を配置及び固定し、一方向に調節可能なループの位置を、所望のサイズに、ひいては所望の位置に調節した後に固定して、骨トンネルに対する移植片の位置を維持することによって、骨トンネル内に確実に位置決めされ得る。
【0023】
図2は、固定本体(図示のように皮質ボタン200)に連結された、又は別様に関連付けられた外科用構造体400を含む、1つの例示的な修復インプラント600の図である。外科用構造体は、互いに相互接続された2つのループ部分501、503によって形成され得る一方向に調節可能なループ550を含む。インプラント600は、外科用構造体400の第1の尾部502が本体200の第2の貫通孔212(第2の貫通孔212をより理解するために図3を参照されたい)を通り、第2の尾部504が本体200の第1の貫通孔210(第1の貫通孔210をより理解するための図3を参照されたい)を通った状態で配置される。尾部502、504は、外科用構造体400上に形成された結び目520、540から延在し、結び目520、540は、本体200の、一方向に調節可能な固定ループ550と同じ側に配設される。結び目520、540及び/又は貫通孔212、210は、結び目520、540が貫通孔212、210を容易に通ることができないようにサイズ決めされ得る。加えて、ブリッジ部分505(図4A及び図4Bを参照されたい)は、第1の結び目520と第2の結び目540との間に延在し得る。例えば、図2に示されるインプラントと併せて、ブリッジ部分505は、第1の結び目520から、第2の貫通孔212を通って、本体200の反対側の面を横切って(一方向に調節可能な固定ループ550と比べて)、第1の貫通孔210を通って、第2の結び目540まで延在し得る。あるいは、図4A及び図4Bに提供される縫合糸構造体400の図とより類似していて、ブリッジ部分505は、本体200の中を、その上を、それを横切って、及び/又は本体200と接触して通ることなく、2つの結び目520、540の間に直接延在し得る。一方向に調節可能な固定ループ550を拡張させるために、本体200に力を加えるなどによってループ550に加えられた力は、結び目520、540を収縮させ、尾部502、504が摺動するのを防止するブリッジ550によって抵抗されるために、固定ループ550は一方向ループとみなされる。
【0024】
図2に示される構成では、尾部502、504のいずれか又は両方に対する方向Dの力によって加えられるような第1の尾部502又は第2の尾部504のいずれかに対する張力は、それぞれ尾部502、504及び結び目520、540に関連付けられたループ部分501、503によって画定される開口507、509のサイズを低減させ得る。開口507及び/又は509のサイズが縮小するにつれて、一方向に調節可能な固定ループ550によって画定される開口552のサイズも縮小する。より具体的には、開口507、509の一方又は両方が収縮するにつれて、ループ550の末端部550tは本体200に向かって移動し、末端部550tは、フィラメントの2つのループ部分501、503が互いに係合する位置にほぼある。当業者であれば、フィラメントの2つのループ501、503が係合される位置に末端部550tが必ずしも存在しないように、フィラメントが移動する場合があることを認識するであろう。例えば、一方のループ部分507、509が他方よりも著しく大きい場合、末端部550tは、ループ部分507、509が互いに係合する位置に存在しなくてもよい。したがって、ループ550の末端部550tは、より一般的には、本体200からほぼ最も離れているループ550の一部分であり得、少なくともいくつかの例では、ループ部分507、509は相互接続される位置であり得る。
【0025】
更に、図2に示す構成は、調節可能な固定ループ550を拡張する試みにおいて、本体200及び/又は調節可能な固定ループ550に加えられる張力又は力が防止され得るように構成されているが、防止する理由は、このような加えられる張力又は力が、ブリッジ部分505に張力を生じさせ得、これにより、2つの結び目520、540を収縮又はロックさせ得るためである。上記にもかかわらず、本開示は、以下により詳細に説明されるように、ループ550の収縮が任意選択的に逆になり得るように、結び目520、540を「ロック解除」する能力を企図する。
【0026】
操作中、縫合糸500の尾部502、504は、所望に応じて、一緒に又は交互に引っ張られて、調節可能な固定ループ550の長さを低減してもよい。調節可能な固定ループ550の所望の位置が達成された後、調節可能な固定ループ550に力を加えて張力を生じさせ、結び目520、540に縫合糸500の摺動可能部分(例えば、それぞれの結び目520、540を通過する縫合糸尾部502、504)を収縮させ、したがって、調節可能な固定ループ550の長さを維持することができる。
【0027】
結び目520、540は、ループ550の構成において結び目を作ることにより、つなぎ合わせ可能でない縫合糸500が、一方向に調節可能な固定ループ550の形成において使用されることが可能になる。縫合糸500がつなぎ合わせ可能である場合であっても、構造体400の構成は、少なくとも結び目520、540が位置する場所に関して、スプライスが使用されないようなものとすることができる。スプライスとは対照的な結び目の使用は、他の利点の中でも特に、スプライスなどの代替的なロック機構との適合性がない縫合糸を使用することを可能にするため、一方向に収縮するループを製造するための強化された安全性及びより大きな汎用性を提供する。したがって、本明細書で提供される結び目520、540は、医療用途で以前に使用されていたようなスプライスを含まないため、つなぎ合わせのないものとして説明することができる。インプラント600、及び他の開示している構成、又はそれらの構成要素(例えば、縫合糸構造体の様々な構成)は、結び目520、540が本体200(例えば、主要固定装置、皮質ボタン、アンカー、又はプレート)から独立して機能することを可能にする。この構成は、多くの異なる種類の固定装置と共に使用される調節可能な固定ループ550の適合性を増加させ、また、少なくとも部分的に、結び目520が本体200の一方の側に配設され、尾部502、504が本体200の他方の側に配置されていることから、ユーザが尾部502、504をトリミングするときに、結び目520、540を隔離及び/又は保護する助けとなる。更に、スプライスとは対照的な結び目520、540の使用は、より短いロック機構を有する構造体400を提供する。典型的なスプライスは、結び目520、540とは対照的に、約17ミリメートルの長さであり、結び目520、540は、およそ、結び目当たり約2ミリメートル~結び目当たり約3ミリメートルの範囲内にある。結び目の長さの減少は、ループ長を短くし、ひいては使用時のより大きな調節性を提供する。
【0028】
例示的な実施形態では、縫合糸構造体400は単一のフィラメントで形成される。当業者であれば、本明細書で提供される開示を、複数のフィラメントを使用して形成するように適合させることができることを理解するであろう。例えば、いくつかの例では、ブリッジ部分505に類似するブリッジ部分が、2つの別個のフィラメントを一緒に結ぶか又は別様に接続することによって形成され得、各フィラメントは1つの結び目、1つのループ状部分、及び1つの摺動尾部を有し、本明細書で形成される結び目520、540、ループ状部分501、503、及び摺動尾部502、504に類似している。単一のフィラメントの使用は、とりわけ、製造及び/又は形成、強度、及び信頼性を容易にする利点を提供し得る。特に、本明細書における任意の図が、異なる着色又は濃淡のフィラメントを示すように見えるという点で、そのような違いは、様々な特徴(例えば、尾部、ループ部分など)に使用されるフィラメントの部分間の差異を強調するために存在し、図示している実施形態は、各々単一のフィラメントから形成される。
【0029】
図3は、本開示で提供される縫合糸構造体と併せて使用される本体200の一実施形態を示す。「皮質ボタン」200としても知られる本体は、丸みを帯びた又は湾曲した末端部202、204を有する細長い、多少矩形の形状を有し得る。複数の貫通孔は、第1の側面206と第2の対向する側面208との間に延在して、本体に形成され得る。第1の貫通孔210及び第2の貫通孔212は、互いに隣接し、それらの中心が本体200の長手方向軸214に沿って存在するように位置決めされ得る。第3の貫通孔216は、第1の貫通孔210と第2の貫通孔212との間に位置決めされ得、その中心は、図に示しているように、長手方向軸214からある距離だけオフセットされ得る。本体200はまた、第1及び第2の貫通孔210、212の外側で、かつ本体の末端部202、204近傍に位置決めされた、第4及び第5の貫通孔218、220を含み得る。これらの貫通孔はまた、長手方向軸214に沿って中心が置かれてもよい。
【0030】
図示のように、第1~第4の貫通孔210、212、218、220は、実質的に同じである直径を有し得、隣接する貫通孔を隔てる空間は、各隣接する対に対して実質的に同じであり得る。本体200の長さLは、末端部202、204間の距離によって画定され得、幅Wは、第1又は第2の表面206、208に沿って延在する本体200の第1の側壁と第2の側壁との間の距離によって画定され得る。本体200はまた、図3に示すように、第1の表面206と第2の表面208との間の距離によって画定される厚さTを有し得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、本体200の長さLは、約5mm~約20mmの範囲内にあってもよく、幅Wは約2mm~約6mmの範囲内にあってもよく、厚さTは約1mm~約3mmの範囲内にあってもよい。例示的な一実施形態では、長さLは約12mmであってもよく、幅Wは約4.25mmであってもよく、厚さTは約2mmであってもよい。
【0032】
貫通孔210、212、216、218、220の直径は、約1mm~約2mmの範囲内にあってもよい。第1及び第2の貫通孔210、212の直径は、縫合糸長さから形成される結び目が孔を通ることができないように選択され得る。更に、いくつかの実施形態では、第3の貫通孔216は、第1及び第2の貫通孔210、212よりも小さくてもよい。例えば、一実施形態では、第1、第2、第4、及び第5の貫通孔210、212、218、220の直径は約1.6mmであってもよく、第3の貫通孔216の直径は約1.2mmであってもよい。
【0033】
本体200は、内部を通る縫合糸長さのより容易な操作を可能にする1つ又は2つ以上の特徴を含んでもよい。例えば、貫通孔210、212、216、218、220のうちのいずれかの上縁部222又は底縁部224は、縫合糸長さが内部を通るのを容易にし、かつ縁部が鋭利な隅部と接触することによって縫合糸長さに損傷が生じる可能性を低減し得るように、面取り又は丸みつけされてもよい。加えて、第2の表面208が、例えば、骨の外側表面に押し付けられたときに、複数の貫通孔のうちの1つを通して縫合糸長さを引っ張ることを容易にするために、1つ又は2つ以上の切り欠きが、本体200の第2の表面208上に設けられてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、本体200は、本体200が骨などの表面に押し付けられたときに構造体400の結び目520、540を受容するために、第2の表面208上に凹部を含み得る。そのような構成によって、結び目520、540が第2の表面208と骨の表面との間の接触に干渉することを防止し得、又はそのような接触に対する結び目520、540の影響を少なくとも最小限に抑え得る。
【0035】
図3に示す本体200は、本明細書で提供される教示による本体の単なる一例である。本明細書で説明される外科用インプラントを作製するために縫合糸長さと関連付けられるように構成された本体は、様々な異なる形状、サイズ、及び特徴を有してもよく、様々な異なる材料で作製されてもよい。これらの様々な形状、サイズ、及び材料は、縫合糸長さ、軟組織移植片の種類などの、本体と共に使用される他の構成要素の特性に少なくとも部分的に依存し得る。形状、サイズ、及び材料はまた、本体を埋め込むために使用される特定の種類の処置に依存し得る。したがって、図示の実施形態では、本体200は、湾曲した末端部202、204を有するやや矩形であるが、他の実施形態では、本体は、実質的に管状であっても、又は様々な他の形状のうちのいずれかを有してもよい。皮質ボタン以外の構成も可能であり、したがって、「本体」という用語は、皮質ボタンのみを含むことに決して限定されない。当業者に既知の様々なアンカー、プレート、及び他の固定装置が、インプラント600のような調節可能な固定インプラントを形成するために、本明細書で提供される縫合糸構造体(例えば、構造体400)と併せて使用され得、ないしは別の方法で本開示から導き出され得る。
【0036】
加えて、本体200を貫通して形成される複数の貫通孔の配置も同様に変更され得る。例えば、図示される実施形態では、長手方向軸214は、本体の長手方向中心軸として示されている。しかしながら、他の実施形態では、軸214は、本体の一方の側に向かってオフセットされてもよい。複数の貫通孔は、同様に、オフセットされてもよく、又は本体200に対して角度付けされてもよい。更に、第1及び第2の貫通孔210、212は、必ずしも第4及び第5の貫通孔218、220と同じ軸に沿って中心が置かれる必要はない。いくつかの例では、より少ない又はより多い貫通孔を使用してもよい。例えば、場合によっては、第3の貫通孔216は省略されてもよい。しかしながら、第3の貫通孔216が使用される場合には、通常は、第3の貫通孔216の中心は、第1及び第2の貫通孔210、212の中心によって画定される任意の軸からオフセットされる必要がある。
【0037】
図3と併せて提供される埋め込み可能な本体の説明及び図は、本明細書で提供される縫合糸構造体(例えば、縫合糸構造体400)と併せて使用され得る、骨に軟組織を固定するための外科用インプラントの単なる例である。外科用インプラントの非限定的な例、並びに軟組織を骨に固定する方法は、以下に、並びに米国特許第9,974,643号及び同第9,757,113号に更に提供され、上記各特許文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、処置を実行するための技術、及びその中に開示される種類のインプラント本体が、本明細書に開示される縫合糸構造体及び関連技術と併せて使用され得る。
【0038】
図4A及び図4Bは、構造体400が2つの8の字形引き結びの結び目520、540を使用して構成された一方向に調節可能なループ550を含む、インプラント600の外科用構造体400を示す。図示のように、外科用構造体400は、第1の結び目520から延在する第1の尾部502及び第2の結び目540から延在する第2の尾部540を有する、単一の長さの縫合糸500から作製され得る。尾部502、504及び調節可能なループ部分、又はループ501、503、開口部507、509を画定するループ部分が、結び目の対向する側又は両側から延在するように、結び目520、540は縫合糸500の2つの部分で結ばれ得る。ループ501、503は、それぞれの結び目520、540によって画定される閉鎖ループであってもよい。図示のように、ループ部分501、503の端部(末端部550tに図示)が連結されて、それ自体が開口552を画定する一方向に調節可能な固定ループ550を形成し得る。図示される実施形態では、ループ部分501、503は、一方のループ部分(例えば、ループ部分503)からのフィラメント500を他方のループ部分(例えば、ループ部分501)からのフィラメント500によって画定される開口(例えば、開口507)を通すことによって、連結される。その結果、各ループ部分501、503は、他のループ部分501、503のフィラメント500によって画定されるそれぞれの開口507、509を通る。そのような構成によって、ループ部分501及び/又は503のフィラメント500が、結び目520 540(及び/又は構造体400が固定本体と併せて使用されるときの固定本体)に向かって進んで、一方向に調節可能な固定ループ550によって画定される開口552のサイズを減少させることが可能になる限り、一方のループ部分を他方に連結する他の方法も可能であり得る。操作中、第1の尾部502及び第2の尾部504のいずれかに対する張力は、第1及び第2の調節可能なループ部分501、503の対応する開口507、509の減少を引き起こすことができ、それにより、一方向に調節可能な固定ループ550によって画定される開口552のサイズを減少させることができる。
【0039】
結び目520、540は、多くの異なる様式でフィラメント500上に形成され得る。図示される実施形態では、図4Bにより詳細に示されるように、結び目520、540は、8の字形引き結びの結び目として形成されている。より一般的には、結び目520、540は、最も適切には、投げ縄結び目及び/又はシングルストランドシングルループ摺動結び目(single strand single loop slipknot)の種類として分類され得る。これらの結び目は、一方向外科用構造体400におけるように配置されるときに、例えば、552に対して加えられる張力の大部分が、それらが加えられている尾部502、504とは反対側の結び目520、540に方向付けられるために、自己ロック式挙動を示し得る。図示される実施形態は、結び目が一方向構成で使用されることを可能にする一方で、所望に応じて反対にされる能力を依然として有する、8の字形引き結びの結び目(図4A図7Bを参照されたい)、拡張された8の字形引き結びの結び目(図8A及び図8Bを参照されたい)、及びプル-ジック型結び目(図9A及び図9Bを参照されたい)を含む、いくつかの例示的な自己ロック式結び目を提供する。図示される実施形態は、所望の構造体の機能を達成するために、本明細書で提供される縫合糸構造体(例えば、構造体400)と併せて結び目(例えば、結び目520、540)として使用することができる結び目の種類及び/又は数を決して制限するものではない。当業者であれば、本開示を考慮すると、本開示の構造体及びインプラントと併せて使用するのに好適な他の結び目を認識するであろう。更に、ブリッジ部分505は、第1の結び目520を第2の結び目540に接続し、ブリッジ部分505に対する張力は、結び目520、540を収縮させ、一方向に調節可能な固定ループ550の拡張を防止し得る。
【0040】
尾部502、504、ループ部分501、503、結び目520、540、及びブリッジ部分505の各々を形成するための単一フィラメント500の操作は、様々な様式で達成され得る。構造体400の様々な特徴(例えば、尾部、ループ部分、結び目、ブリッジ部分など)が形成される順序は、通常は重要ではない。一般に図示されるように、単一フィラメント500は2つの末端部を含み、その末端部は尾部502、504である。例示的な一実施形態では、フィラメント500は、尾部502から延在し、第1のループ501に形成され、尾部502の周りに結ばれて、結び目520及び開口507を形成する。フィラメント500は、第1の結び目520を抜け出ることができ、結び目540に結び付けられてブリッジ505を形成することができる。フィラメント500の作業端部は、開口507に通されてもよく、屈曲部がループ501の周りに形成されて、ループ503を形成してもよい。作業端部が戻され、かつ結び目540に通されて、開口509及び尾部504を形成してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、図10A図10C及び図11に示すように、軟組織は、一方向に調節可能な固定ループ550を通して吊持されてもよく、それにより、軟組織をループ550に、より広くは修復インプラント(例えば、インプラント600)に連結してもよい。軟組織をループ550と関連付けるために任意の数の技術を使用して、ループ550の動きが軟組織の動きをもたらす連結構成を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、一方向に調節可能な固定ループ550は、2つの結び目520、540の間の縫合糸500のブリッジ部分505によって、皮質ボタン200又はプレートなどの主要固定装置から吊るされ得る。他の実施形態では、以下により詳細に記載されているように、構造体400は、連結された任意の固定装置なしに、それ自体によって操作され得る。更に他の実施形態では、以下に更に詳細に説明されるように、構造体400は、複数(すなわち、2つ以上)の固定装置で操作され得る。このような構成の一例を、図5に提供する。
【0042】
図5は、2つのループ部分501、503及び結び目520、540、並びに2つの皮質ボタン200、200’によって形成された一方向に調節可能なループ550を有する縫合糸500を含む外科用インプラント700の一実施形態の図である。第2の本体200’は、固定本体を縫合糸と関連付けるために、当業者に既知の技術を使用して、調節可能な固定ループ550に通され得るか、又は別様でそれに関連付けられ得る。図示している実施形態では、ループ部分503は、本体200’の1つの貫通孔210’に通され、本体200’の第2の貫通孔212’を通って戻される。第2の本体200’は、尾部502、504の一方又は両方に張力を選択的に加えることによって、骨の2つの側面、又は2つの別個の骨を一緒に引っ張ることを含むがこれに限定されない様々な状況で使用され得る。更に、複数の固定本体を利用するインプラント構成の追加の非限定的な例について、図12A図12Cに関して以下に説明する。
【0043】
構造体400自体は、固定本体なしに使用されて、2つの骨を一緒に引っ張るなどの同様の機能を達成し得る。より一般的には、構造体400は、骨(例えば、組織)以外の身体の他の構成要素と共に、更には外科的処置以外の状況において、ひいては1つ又は2つ以上の対象と共に、使用され得る。本明細書に開示される構造体(例えば、構造体400)と併せて複数の固定本体を使用することから利益を得ることができる処置の種類のいくつかの非限定的な例としては、AC関節修復、腱膜瘤修復、及び足関節靭帯結合修復を挙げることができる。本明細書での考察は主に医療分野での使用に焦点を当てているが、当業者であれば、本明細書で提供される縫合糸構造体が、1つ若しくは2つ以上の対象を固定位置に向かって前進させるために、及び/又は1つ若しくは2つ以上の対象を別の対象に向けて前進させるために一般的に使用され得る場合に、多くの分野及び産業における用途を有し得ることを認識するであろう。
【0044】
図6は、縫合糸700から8の字形引き結びの結び目を形成するための例示的な一実施形態を示す。図示のように、縫合糸700は末端部701tを含む。縫合糸700は8の字形の構成708に形成され、末端部701tは、位置Eに示されるように、8の字形形状を完結させるように、8の字形の上半分708aを通って延在する。縫合糸700は、位置Fに示されるように、8の字形の上半分720aを少なくとも1回、並びに、位置G及びHに示されるように、8の字形の下半分720aを少なくとも2回、通ることができる。本明細書で提供される構造体の文脈においては、図6で部分701tとして特定される、末端部702tとしての縫合糸の反対側の端部にある縫合糸700の部分は、本開示による縫合糸構造体(例えば、構造体400)の残りの部分を形成するために使用され得、したがって、縫合糸700の反対側の末端部を通常は表していない。更に、本明細書で提供される構造体の文脈において、703として特定されるフィラメント700の部分はループ部分であってもよく、末端部702tは尾部であってもよい。
【0045】
図7Aは、図6の8の字形引き結びの結び目720と結ばれて、ループ部分703、摺動尾部又はポスト702(図6の部分702tに関連付けられる)、及び収縮性尾部701(図6の末端部701tと関連付けられる)を形成する縫合糸700を示す。操作中、摺動尾部702は、8の字形引き結びの結び目720を通して自在に引っ張られて、ループ部分703を収縮させる。すなわち、摺動尾部702は、ループ部分703によって画定される開口部709をより小さくさせる。上述のように、このような動きは、同様に、ループ部分703及び相互接続されたループ部分(図示せず)によって画定される開口をまた、小さくさせることができる。図7Bに示されるように、収縮性尾部701に張力を加えることによって、縫合糸700はロック構成に配置され得る。より具体的には、方向P及びP’に力を加えることによって、反対方向の張力が、収縮性尾部701及びループ703にそれぞれ加えられ得、尾部702が結び目720を自然に出る方向に対して実質的に垂直に及び/又はループ部分に加えられる力に対して実質的に垂直に尾部702が捻れ、結び目が収縮又はロックされ、したがって、8の字形引き結びの結び目720を通る摺動尾部702の更なる動きを防止するように、この力が結び目720を収縮させる。当業者であれば、結び目720を、又はより一般的には結び目720を含む縫合糸構造体をロック構成にするために収縮性尾部701に加えられる力は、尾部701が結び目720を自然に出る方向に対して実質的に垂直である、及び/又は摺動尾部702に対して実質的に垂直である方向である必要は必ずしもなく、結び目720をロック構成にすることができる他の様式が存在することを認識するであろう。
【0046】
図8Aは、拡張された8の字形引き結びの結び目820と結ばれて、ループ部分803、収縮性尾部又はポスト801、及び摺動尾部又はポスト802を形成する縫合糸800を示す。操作中、摺動尾部802は、8の字形引き結びの結び目820を通って自在に引っ張られて、ループ部分803を収縮させる。すなわち、摺動尾部802は、ループ部分803によって画定される開口809をより小さくさせる。上述のように、このような動きは、同様に、ループ部分803によって画定される開口及び相互接続されたループ部分(図示せず)をまた、より小さくさせることができる。図8Bに示されるように、収縮性尾部801に対して張力を加えることによって、縫合糸800をロック構成に配置することができる。より具体的には、それぞれ方向R及びR’に反対方向の張力を加えることによって、張力が収縮性尾部801及びループ803に加えられて、結び目820を収縮又はロックさせ、ひいては、拡張された8の字形引き結びの結び目820を通る摺動尾部802の更なる動きを防止することができる。当業者であれば、結び目820を、又はより一般的には結び目820を含む縫合糸構造体をロック構成にするために収縮性尾部801に加えられる力は、方向R及びR’である必要は必ずしもなく、結び目720をロック構成に配置することができる他の様式が存在することを認識するであろう。8の字形引き結びの結び目720と比較して、拡張された8の字形引き結びの結び目820は、摺動可能な尾部802の曲がりを低減する。8の字形引き結びの結び目720と同様に、収縮性尾部801はブリッジ部分の一部となり得、結び目820はまた、摺動尾部801が再び動かされ得るように、可逆的であり得る。
【0047】
図9Aは、プル-ジック型結び目920で結ばれて、ループ部分903、収縮性尾部902、及び摺動尾部又はポスト901を形成する縫合糸900を示す。プル-ジック型結び目920は、例えば、縫合糸900の端部を縫合糸900の中央部分に通すことによって作製することができる。操作中、摺動尾部901は、プル-ジック型結び目920を通して自在に引っ張られて、ループ部分903を収縮させる。すなわち、摺動尾部901は、ループ部分903によって画定される開口909をより小さくさせる。上述のように、このような動きは、同様に、ループ部分903によって画定される開口及び相互接続されたループ部分(図9Aには図示せず)もまた、より小さくさせることができる。収縮性尾部902及びループ903に張力を加えることによって、縫合糸900をロック構成に配置することができる。より具体的には、方向K及びK’に力を加えることによって、反対方向の張力を収縮性尾部902及びループ903に加えて、結び目920を収縮又はロックさせ、したがって、プル-ジック型結び目920を通る摺動尾部901の更なる動きを防止し得る。当業者であれば、結び目920を、又はより一般的には結び目920を含む縫合糸構造体をロック構成にするために収縮性尾部902に加えられる力は、例示された方向である必要が必ずしもないが、一般に、結び目920の収縮部分に張力を簡単発生させることを認識するであろう。当業者であれば、結び目920をロック構成に配置することができる他の様式が存在することを更に認識するであろう。結び目720及び820と同様に、尾部902がブリッジ部分の一部となり得、結び目920はまた、摺動尾部901が再び動かされ得るように、及び/又はループ部分903が拡張され得るように、可逆的であってもよい。
【0048】
プル-ジック型結び目920は、必要に応じて安全性を高めるために直列に積み重ねられてもよく、図9Bは、開口552’を画定する調節可能な固定ループ550’の第1のループ部分501’を形成する2つのプル-ジック型結び目921、922と、調節可能な固定ループ550’の第2のループ部分503’を形成する2つのプル-ジック型結び目941、942とを含む外科用構造体400’を示す。図9A図9Bと比較すると、収縮性尾部902の等価物がブリッジ部分505’を形成し得、摺動尾部901の等価物が第1及び第2の尾部502’、504’を形成し得、ループ部分902の等価物が、第1及び第2のループ部分501’、503’を形成し得る。例えば、自由浮動皮質ボタンなどの皮質ボタン(図示せず)と共に使用される場合、ボタンの下方に吊るされた結び目921、922、941、942によって作り出される増加した断面積は、骨トンネル内の位置決め機構として機能して、トンネルのトンネル開口に対するボタンの位置をより密接に制約し得る。これは、トンネルに関して本体を中心に配置するのに役立ち、ボタンの下の縫合糸が真っ直ぐである解決策と比較して、初期固定が損なわれた固定になる可能性を低減するのに役立ち得る。実際に、本明細書で提供される構成のいずれかによって、結び目(例えば、結び目520、540、720、820)が位置決め機構として使用されることを可能にし得る。
【0049】
プル-ジック型結び目920の尾部901、902の等価物を使用して、第1及び第2の尾部502’、504’及びブリッジ部分505’をそれぞれ形成することができ、ループ部分903の等価物を使用して、第1及び第2のループ部分501’、503’を形成することができる図9Bとまさに同じように、8の字形引き結びの結び目720又は拡張された8の字形引き結びの結び目820が外科用構造体400に使用される場合、外科用構造体400の尾部502、504は摺動尾部702、802であってもよく、外科用構造体400のループ部分501、503はループ部分703、803であってもよく、外科用構造体400のブリッジ部分505は、収縮性尾部701、801であってもよい。
【0050】
更に、本開示は、尾部702、802、901が、図7A図8A、及び図9Aにそれぞれ示されるものとより類似した構成に戻され、結び目720、820、920をロック構成から外すことを可能にし、したがって、摺動尾部702、802、901は再び動かされることが可能になる。収縮性尾部701、801、902がロック解除構成にあるとき、ループ部分703、803、903に張力を加えることにより、ループ部分703、803、903によって画定された開口709、809、909が拡張されることが可能となり得る。
【0051】
図10A図10Cは、一方向に調節可能なループの1つの例示的な実施形態のループを締め付ける工程の図である。図10Aは、調節可能な固定ループ550に連結された軟組織110を有する外科用構造体400及び本体200を含むインプラント600を示す。調節可能な固定ループは、ループ部分501及び503によって形成される。図10Bは、外科用構造体400の第1の尾部502及び第2の尾部504尾部のいずれか又は両方に方向Sに加えられた力が、調節可能な固定ループ550を収縮させ、開口552のサイズを減少させ、軟組織110を本体200に向かって図10Cに示す位置まで引き寄せる、締め付け及び収縮操作を示す。より具体的には、尾部502に対して加えられる張力は、ループ部分501を収縮させ得、尾部504に加えられる張力は、ループ部分503を収縮させ得る。図10Cでは、軟組織110に対して方向Tに加えられる力は、調節可能な固定ループ550の拡張をもたらさず、これは、結果として生じる張力が、外科用構造体400のブリッジ部分505に結び目520、540を収縮させ、これは結び目520、540がロック構成にあることを意味するためである。本明細書の他の箇所に記載されるように、結び目520、540は、ロック解除構成に移動し得、その場合、方向Tに加えられる力、並びにループ550に加えられる他の力は、そのような拡張を引き起こし得る。
【0052】
結び目520、540を使用することにより、代替的なロック機構(例えば、スプライス)と適合しない縫合糸500の使用を可能にすることによって、一方向収縮性ループ構造体400の製造可能性のためのより大きな汎用性が可能になる。そのような一例は、DePuy Synthes Sport Medicine (Mitek)(Raynham, MA)から入手可能なDePuy Synthes Dynacord(商標)縫合糸などの中実コアを有する縫合糸である。Dynacord(商標)縫合糸は、水和されるときに縫合糸が収縮する能力に不可欠な中実コアで構成される。このような縫合糸構成に関する追加情報は、少なくとも米国特許第8,870,915号(Mayerら)において提供され、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で提供される構造体(例えば、構造体400)の収縮挙動は、クリープによる修復の損失に抵抗し、間に間隙が形成された組織を再接近させ、又は接近した組織上に圧縮力を維持するために、ダイナコード(Dynacord)技術と併せて使用されてもよい。中実コアの存在、及び縫合糸ブレードとのその必要とされる密接な関係は、縫合糸のコアの外側にある結び目などのロック機構を要請する。
【0053】
例えば、図10A図10Cと併せて上記されている締め付け工程は、外科的処置と併せて使用され得る。本明細書で提供される外科用構造体及びインプラントは、軟組織移植片を骨に固定するための様々な手順で使用され得る。1つの一般的な処置は、患者の膝における断裂又は破裂したACLの修復である。例示的な修復処置は、当該技術分野において既知の様式で、患者の脛骨106及び大腿骨108(図1を参照)を通して骨トンネルを形成することを含み得る。これは、例えば、図11に示す骨トンネル130を作り出すことができる。
【0054】
図11に提供されるインプラント600は、縫合糸構造体400及び固定本体200を含む。2つの結び目520、540の間に延在するブリッジ部分505は、本体200を横切って吊るされることができ、一度植え込まれると、骨108から遠い側に着座する。各結び目520、540は、結び目の一方の側から延在し、かつボタン200を通って延在する、縫合糸尾部502、504をそれぞれ有し、ループ501、503を形成するフィラメントは、それぞれ結び目520、540の反対側から延在する。ループ501、503は、一方向に調節可能な固定ループ550をもたらす末端部550t(図2)に示されるインターロックループ部分を形成する。
【0055】
インプラント600は、死体又は患者自身の組織から取られた靭帯移植片、例えば、軟組織110を、一方向に調節可能な固定ループ550によって本体200に連結することによって調製され得る。軟組織110は、一方向に調節可能な固定ループ550に吊るされるか、又は別様にそれに関連付けられ、軟組織110が骨トンネル130に対して所望の位置にくるまで、張力が縫合糸尾部502、504に加えられて、ループ550の開口のサイズを低減し得る。
【0056】
より具体的には、トンネル130が修復部位で骨108を通して穿設された後、インプラント600が導入され得る。場合によっては、縫合糸構造体400と本体200との組み合わせは、前もって一緒に連結されて、インプラント600を形成してもよい。他の例では、縫合糸構造体400は、修復を行うことと併せて、1つ又は2つ以上の本体200と関連付けられ得る。
【0057】
本体200は、患者の脛骨106の骨トンネルに導入され、本体200が患者の大腿骨の外側部分に現われるまで、脛骨及び大腿骨108を通って引っ張られ得る。本体200を骨トンネルを通して引っ張るために、シャトル縫合糸(図示せず)が、本体200の第1の(前方)末端部202近傍にある第4の貫通孔218(図3を参照)に通され得る。本体の長手方向軸214にほぼ沿って骨トンネル130を通して本体引っ張って、本体の断面積を最小化するために、シャトル縫合糸を使用し得る。このようにして本体200を引っ張ることにより、固定ループ550及び移植片110を患者の体内に引き込むことができる。
【0058】
本体200が骨トンネル130から大腿骨108の外側表面に現われた後、本体200は、本体200が骨トンネル130に再び入ることができないように、第2の側面208を大腿骨の外側表面に対して面一にする向きに反転され得る。本体200の向きを反転させることは、本体200の第2の(後方)末端部204近傍の第5の貫通孔220(図3を参照)を通すことができる回転縫合糸(図示せず)を引っ張ることによって達成され得る。シャトル縫合糸及び回転縫合糸は両方とも、本体200を骨トンネルに導入する前に、所望に応じて第4及び第5の貫通孔218、220又は他の貫通孔に通され得ることに留意されたい。本体200が骨トンネルを通して引っ張られ、(図11に示されるように)大腿骨108の外側表面302に対して面一になるように反転された後、シャトル縫合糸及び回転縫合糸は、単にその自由端部を引っ張ることによって取り外され得る。
【0059】
図11に示されるように、及び図10A図10Cに関連して上述したのと同様に、末端部502、504は、矢印304の方向に張力がかけられて、一方向固定ループ550のサイズを縮小し、大腿骨108内に形成された骨トンネル130内に靭帯移植片110を引き込むことができる。固定ループ550のサイズは、所望の量の移植片110が骨トンネル130内に存在するようになるまで低減され得る。縫合糸長さ500の末端部502、504に張力をかけることによって、本体200の下に位置決めされた対応する結び目520、540を通して縫合糸が引っ張られる。ブリッジ部分505に張力をかけることにより2つの結び目520、540が大腿骨108に対して本体をロック及び固定することによって、本体200が大腿骨108から離れていく動きが防止されるように、縫合糸500のブリッジ部分505は、第1の結び目520を第2の結び目540に接続する。所望に応じて、追加の補足的な固定(例えば、1つ又は2つ以上のひと結びの結び目による)が尾部502、504に適用され得る。
【0060】
処置を完了するために、靭帯移植片110の末端部は、当該技術分野において既知の様々な様式のいずれかにおいて、患者の脛骨106内に形成された骨トンネル130内に固定され得る。特定の実施形態では、末端部502、504が一緒に接合されて、張力をかけるための単一の縫合糸ストランドをユーザに提供し得る。これは、当該技術分野において既知の多くの様式で達成され得る。いくつかの実施形態では、例えば、末端部502、504は、一方を他方の体積内に通して、単一の末端部を形成することによって、互いに関連付けられ得る。所望の深さ/修復張力が達成されると、縫合糸尾部502、504は、長さが整えられ得る。開示された技術を更に拡張し、記載された技術に対する代替の技術を提供する詳細を含むがこれらに限定されない、本開示と併せて使用され得る埋め込み技術に関する更なる詳細は、米国特許第9,974,643号及び同第9,757,113号に提供されており、これら特許文献のそれぞれの内容は参照により上記に組み込まれる。
【0061】
上述のように、本開示の実施形態は、2つ以上の固定本体の使用を含む。本体は、(図5に示されるように)組み立てられるときにループがボタンに通される閉鎖形状、又は図12A図12Cに示されるように、ループがボタンの一部分に吊るされる開放形状であってもよい。当業者であれば、本明細書で提供される構造体を固定本体と関連付けるために使用され得る他の技術を更に認識するであろう。
【0062】
図12Aは、外科用修復構造体400を形成するために、2つの開放形状の固定本体又はボタン1111、1111’と、一方向に調節可能な固定ループ550と共に配置された縫合糸500とを含むインプラント1110を示す。開放形状ボタン1111、1111’は、縫合糸500を閉じた貫通孔に通すことなくインプラント1110を構成するのを容易にするために、開放形状ボタンの貫通孔内に間隙1112を含む。これにより、縫合糸500が結ばれて、ボタン1111、1111’を縫合糸500に組み付ける前に一方向に調節可能な固定ループ550を有する外科用構造体400を形成すること、及び/又は構造体400を固定本体1111、1111’に容易に関連付けること及びそれらから関連付けを解除することを可能にする。
【0063】
図12Bは、この例においては、一方向に調節可能な固定ループ550を有する外科用構造体400の縫合糸500を、閉鎖形状の固定本体、又はボタン200及び開放形状固定本体又はプレート1121の別の実施例、の各々に連結する、インプラント1120の別の実施形態である。プレート1121は、本明細書に記載されるように、縫合糸が閉鎖形状のボタン200に通された後に、開放形状のプレート1121を縫合糸500に連結するための横方向間隙1120を含む。この場合もやはり、開放形状は、構造体400が固定本体1121とより容易に関連付け及び関連付け解除されるのを可能にし得る。
【0064】
図12Cは、この例においては、一方向に調節可能な固定ループ550を有する外科用構造体400の縫合糸500を、閉鎖形状の固定本体又はボタン200、及び閉鎖形状の固定本体又はプレート1131の別の実施例、の各々に連結する、インプラント1130の更に別の実施形態である。ボタン1131は、閉鎖形状のボタン1131に縫合糸500を通すための内部通路1132を含む。内部通路1132は、処置の過程で、及び/又はインプラントが体内に植え込まれると、縫合糸500をほつれ又は他の損傷からより良好に保護することができる。
【0065】
図13は、一方向に調節可能な固定ループ550を形成する縫合糸500、単一の皮質ボタン200、及びユーティリティステッチ1201を含むインプラント1200の図である。過剰に張力が加わることが懸念事項であり、張力を反転させることが有利である用途(例えば、内側膝蓋大腿靭帯を伴う処置)のために、例えば、結び目520、540を通しユーティリティステッチ1201のリムを通過又は延在させることによって、ユーティリティステッチ1201が結び目520、540に追加されてもよく、これにより、張力がユーティリティステッチ1201に加えられたときに、結び目520、540が開いてボタン200が摺動するのを可能にし、それによって調節可能な固定ループ550を拡張することができる。ユーティリティステッチ1201は、本体200の貫通孔のうちの1つ、(図示のような第3の貫通孔216)に通されてもよく、これにより、ユーティリティステッチ1201に加えられた張力が本体200を引っ張って、調節可能な固定ループ550を拡張することが可能になる。ループ接合部における圧縮力によって引き起こされるループの干渉により、図14A図14Cに示されるトグル技術が採用されて、接合部が圧縮領域(すなわち、軟組織がループ550を通って吊るされる場所)へと移動するのを防止してもよい。
【0066】
図14Aは、調節可能な固定ループ550に吊持された軟組織110と、ユーティリティステッチ1201に加えられて、結び目520、540を弛緩させ、矢印1302によって示されるように、軟組織110からボタン200を引き離すことによって調節可能な固定ループ550を拡張する、矢印1301によって示される力とを示す。その後、図14Bに示すように、第1及び第2の尾部502、504に加えられた矢印1303によって示される力は、矢印1304によって示されるように、ボタン200を軟組織110に向かって引っ張ることによって、調節可能な固定ループ550を収縮させ得る。最後に、図14Cに示すように、調節可能な固定ループ550が収縮され、結び目520、540がロックされた後であっても、例えば、矢印1301によって示されるように、ユーティリティステッチ1201に加えられる力は尚も、結び目520、540を弛緩させ、ボタン200を軟組織110から引き離すことによって調節可能な固定ループ550を拡張し得る。
【0067】
当業者であれば、上述の実施形態に基づいた本開示の更なる特徴及び利点を理解するであろう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され、かつ説明されている内容によって限定されるものではない。本明細書において引用されている全ての刊行物及び参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
【0068】
〔実施の態様〕
(1) 縫合糸フィラメントから形成された縫合糸構造体であって、
第1の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第1の結び目から延在する第1のループを形成しており、前記第1のループが第1のループ開口を画定する、第1の結び目と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第1の尾部と、
前記第1の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントのブリッジ部分と、
第2の結び目であって、前記縫合糸フィラメント内に形成されて、前記第2の結び目から延在する第2のループを形成しており、前記第2のループが第2のループ開口を画定し、前記第2のループの一部分が前記第1のループ開口を通って、前記縫合糸構造体の調節可能なループを画定し、前記調節可能なループが調節可能なループ開口を画定する、第2の結び目と、
前記第2の結び目から延在する前記縫合糸フィラメントの第2の尾部と、を含み、
前記第1の尾部が、前記第1の結び目に対して摺動して前記第1のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口の前記サイズを縮小させるように構成されており、
前記第2の尾部が、前記第2の結び目に対して摺動して前記第2のループ開口のサイズを縮小させ、ひいては前記調節可能なループ開口の前記サイズを縮小させるように構成されており、
前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分は、前記第1の結び目を前記第2の結び目に接続し、前記縫合糸がロック構成に操作されるときに前記調節可能なループ開口の拡張を防止するように構成されている、縫合糸構造体。
(2) 前記第1の結び目又は前記第2の結び目のうちの少なくとも1つが、自己ロック式結び目を含む、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(3) 前記自己ロック式結び目が、8の字形引き結びの結び目又は拡張された8の字形引き結びの結び目のうちの少なくとも1つを含む、実施態様2に記載の縫合糸構造体。
(4) 前記自己ロック式結び目が、少なくとも1つのプル-ジック型結び目を含む、実施態様2に記載の縫合糸構造体。
(5) 前記縫合糸フィラメントが、前記第1の結び目及び前記第2の結び目の位置でつなぎ合わされていない、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
【0069】
(6) 前記第1の結び目及び前記第2の結び目の一部分を捕捉するように構成された第2の縫合糸フィラメントを更に含み、前記第2の縫合糸フィラメントの第1のリム又は前記第2の縫合糸フィラメントの第2のリムのうちの少なくとも1つに対する張力がそれぞれ前記第1の結び目又は前記第2の結び目を弛緩させるように、前記第1のリムは前記第1の結び目まで延在し、前記第2のリムは前記第2の結び目まで延在している、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(7) 前記縫合糸フィラメントの前記ブリッジ部分に連結された固定本体を更に含む、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(8) 前記調節可能なループに連結された第2の固定本体を更に含む、実施態様7に記載の縫合糸構造体。
(9) 前記縫合糸が、ロック解除構成を更に含み、前記縫合糸が、前記ブリッジ部分、前記第1の尾部、又は前記第2の尾部のうちの少なくとも1つの相対的な荷重を調節することによって、前記ロック解除構成と前記ロック解除構成との間を動かされるように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(10) 外科用インプラントであって、
固定本体であって、それに沿って延在する長手方向軸、第1及び第2の側面、並びに第1及び第2の貫通孔を有する、固定本体と、
前記固定本体に連結された縫合糸フィラメントであって、
第1の部分であって、前記第1の貫通孔を通って延在する第1の尾部と、前記第1の部分の上に形成され、前記本体の前記第1の側面上に配設された第1の結び目と、前記本体から離れて、前記第1の結び目から延在する第1のループ部分と、を有する、第1の部分と、
第2の部分であって、前記第2の貫通孔を通って延在する第2の尾部と、前記第2の部分の上に形成され、前記本体の前記第1の側面上に配設された第2の結び目と、前記本体から離れて、前記第2の結び目から延在する第2のループ部分と、を有しており、前記第2のループ部分が前記第1のループ部分に連結されて、前記外科用インプラントの調節可能なループを画定する、第2の部分と、
前記第1の結び目から前記第2の結び目まで延在するブリッジ部分と、を含む、縫合糸フィラメントと、を含み、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記第1の尾部に対する張力が前記第1のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させ、かつ前記第2の尾部に対する張力が前記第2のループ部分を収縮させることによって前記調節可能なループを収縮させるように構成されており、
前記第1の結び目及び前記第2の結び目は、前記ブリッジ部分に対する張力が前記調節可能なループの拡張を防止するように更に構成されている、外科用インプラント。
【0070】
(11) 前記第1の結び目又は前記第2の結び目のうちの少なくとも1つが、自己ロック式結び目を含む、実施態様10に記載の外科用インプラント。
(12) 前記縫合糸フィラメントが、前記第1の結び目及び前記第2の結び目の位置でつなぎ合わされていない、実施態様10に記載の外科用インプラント。
(13) 前記固定本体が皮質ボタンを含む、実施態様10に記載の外科用インプラント。
(14) 前記ブリッジ部分が、前記第1の結び目から、前記第1の貫通孔を通って、前記固定本体を横切って、かつ前記第2の貫通孔を通って前記第2の結び目まで延在する、実施態様10に記載の外科用インプラント。
(15) 第2の固定本体を更に含み、前記第2の固定本体が前記調節可能なループに連結されている、実施態様14に記載の縫合糸構造体。
【0071】
(16) 前記外科用インプラントが、前記第1の結び目及び前記第2の結び目の一部分を捕捉する第2の縫合糸フィラメントを更に含み、前記第2の縫合糸フィラメントの第1のリムが前記第1の結び目まで延在しており、前記第2の縫合糸フィラメントの第2のリムが前記第2の結び目まで延在しており、
前記第2の縫合糸フィラメントは、前記第1又は第2のリムのうちの少なくとも1つに対する張力が、それぞれ前記第1又は第2の結び目を弛緩させるように構成されている、実施態様10に記載の外科用インプラント。
(17) 外科用インプラントを調製する方法であって、
縫合糸長さの第1の部分に第1の結び目を形成して、前記第1の結び目の一方の側から延在する第1の尾部と、前記第1の結び目の反対側から延在する前記縫合糸長さの第2の部分と、を形成することと、
前記第2の部分から第1のループを形成することであって、前記第1のループが前記第1の結び目によって閉じられる、第1のループを形成することと、
前記縫合糸長さの前記第2の部分に第2の結び目を形成して、前記第2の結び目の一方の側から延在する第2の尾部と、前記第2の結び目の反対側から延在する前記縫合糸長さの第3の部分と、を形成することと、
前記第3の部分から第2のループを形成することであって、前記第2のループが前記第2の結び目によって閉じられ、前記第2のループが前記第1のループと相互接続されて、前記縫合糸構造体の調節可能な固定ループを画定する、第2のループを形成することと、を含む、方法。
(18) 前記縫合糸長さの前記第2の部分が、前記第1の結び目と前記第2の結び目との間に延在するブリッジ部分を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記第1の尾部又は前記第2の尾部のうちの少なくとも1つは、張力がそれに加えられて、それぞれ前記第1のループ又は前記第2のループによって画定される第1又は第2の開口のサイズを収縮させるときに、前記調節可能な固定ループによって画定される開口のサイズを収縮させるように構成されている、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記第1の尾部を固定本体の第1の貫通孔に通すことと、
前記第2の尾部を前記固定本体の第2の貫通孔に通すことと、
前記縫合糸長さの前記第2の部分を、前記固定本体の前記第1の貫通孔、前記固定本体の前記第2の貫通孔、又は前記固定本体の少なくとももう1つの貫通孔のうちの少なくとも2つに通すことと、を更に含む、実施態様17に記載の方法。
【0072】
(21) 前記調節可能な固定ループを第2の固定本体に連結することを更に含む、実施態様20に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図14C