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特許7516191ディスク装置用サスペンションの製造方法と、製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ディスク装置用サスペンションの製造方法と、製造装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/21 20060101AFI20240708BHJP
   G11B 5/60 20060101ALI20240708BHJP
   G11B 21/10 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G11B21/21 C
G11B5/60 C
G11B21/10 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020162864
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055440
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小垣 省悟
【審査官】松元 伸次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108589(JP,A)
【文献】特開2017-191914(JP,A)
【文献】特開2011-070740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B5/56-5/60
21/10
21/16-21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造方法であって、
紫外線に反応する接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布し、
前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に紫外線を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させ、
粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置し、
前記圧電素子の電極と前記アクチュエータ搭載部の導体との間に熱硬化形の導電材を塗布し、
前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱し、
前記接着剤と前記導電材とを同時に加熱することにより、
前記加熱によって前記接着剤と前記導電材とを硬化させ、前記圧電素子を前記アクチュエータ搭載部に固定することを特徴とするディスク装置用サスペンションの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記導電材が熱硬化形の有機系樹脂からなるバインダと該バインダに混入された導電粒子とを含む製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記アクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されたのち、前記アクチュエータ搭載部に追加の接着剤を塗布し、追加された前記接着剤に紫外線を照射することにより粘度を増加させることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記アクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されたのち、前記接着剤を前記加熱によって硬化させる前に、前記接着剤に高温ガスを吹付けることにより、前記接着剤の表面付近を硬化させることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のディスク装置用サスペンションの製造方法において、
前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出し、検出された前記圧電素子の高さに応じて前記紫外線の照射量を調整することを特徴とする製造方法。
【請求項6】
圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造装置であって、
前記サスペンションを保持する搬送シャトルと、
前記搬送シャトルを移動させる駆動機構と、
紫外線に反応する接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布する接着剤供給装置と、
塗布された前記接着剤に紫外線を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させる光照射装置と、
粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置する素子供給装置と、
前記圧電素子の電極と前記アクチュエータ搭載部の導体との間に熱硬化形の導電材を塗布する導電材供給装置と、
前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱することにより前記接着剤と前記導電材を硬化させる加熱装置と、
を具備したことを特徴とするディスク装置用サスペンションの製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置において、
前記導電材が熱硬化形の有機系樹脂からなるバインダと該バインダに混入された導電粒子とを含む製造装置。
【請求項8】
請求項6に記載のディスク装置用サスペンションの製造装置において、
前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出する高さ検出器と、
検出された前記圧電素子の高さに応じて前記紫外線の照射量を調整する制御部と、
をさらに有したことを特徴とする製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えたディスク装置サスペンションの製造方法と、製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置にディスク装置が使用されている。ディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームにディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ベースプレートと、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに沿って配置されたフレキシャ(flexure)などを備えている。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、スライダが設けられている。スライダには、ディスクに記録されたデータの読取りや書込み等のアクセスを行なうための素子が設けられている。
【0004】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ディスクの記録面に対して磁気ヘッドをさらに高精度に位置決めできるようにすることが必要である。このため特許文献1や特許文献2に開示されているように、アクチュエータとして機能する圧電素子を備えたサスペンションが開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-50140号公報
【文献】特開2011-216160号公報
【文献】特開2017-191914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧電素子はサスペンションのアクチュエータ搭載部に配置される。この圧電素子を接着剤によってアクチュエータ搭載部に固定する場合、接着剤がアクチュエータ搭載部に塗布される。そして未硬化の接着剤の上に圧電素子が置かれる。そののちそのサスペンションが加熱装置に供給されることにより接着剤が加熱される。加熱された接着剤が硬化することにより、圧電素子がアクチュエータ搭載部に固定される。
【0007】
サスペンションの生産ラインにおいて、未硬化の接着剤の上に置かれた圧電素子が移動してしまうことがある。圧電素子が所定の位置からずれると、アクチュエータとしての圧電素子が所定の性能を発揮できなくなる。また圧電素子の高さがばらつくと、サスペンションの種類によっては、スウェイモード(sway mode)やヨーモード(yaw mode)の共振特性に悪影響が生じるという知見も得られた。
【0008】
特許文献3に開示された電子機器製造装置のように、アクチュエータ搭載部に塗布された接着剤の上に圧電素子を配置し、そののちヒータによって高温のガスを吹付けることにより、接着剤を仮硬化させることも提案された。しかし接着剤が仮硬化する前に、接着剤の表面張力や振動などにより、圧電素子が移動してしまうことが問題となった。
【0009】
本発明の目的は、アクチュエータ搭載部に配置された圧電素子の位置がずれてしまうことを抑制できるディスク装置用サスペンションの製造方法と、製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態は、圧電素子が搭載されるアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの製造方法であって、紫外線に反応する接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布する工程と、前記アクチュエータ搭載部に塗布された前記接着剤に紫外線を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させる工程と、粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置する工程と、前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱する工程とを含んでいる。前記加熱によって前記接着剤が硬化することにより、前記圧電素子が前記アクチュエータ搭載部に固定される。
【0011】
前記製造方法において、前記圧電素子の電極と前記アクチュエータ搭載部の導体との間に熱硬化形の導電材を塗布し、前記接着剤と前記導電材とを同時に加熱することにより、前記接着剤と前記導電材とを硬化させてもよい。また前記アクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されたのち、前記アクチュエータ搭載部に追加の接着剤を塗布し、追加された前記接着剤に紫外線を照射してもよい。
【0012】
前記アクチュエータ搭載部に前記圧電素子が配置されたのち、前記接着剤を前記加熱によって硬化させる前に、前記接着剤に高温ガスを吹付けることにより、前記接着剤の表面付近を硬化させてもよい。前記アクチュエータ搭載部に配置された前記圧電素子の高さを検出し、検出された前記圧電素子の高さに応じて前記紫外線の照射量を調整してもよい。
【0013】
1つの実施形態に係る製造装置は、アクチュエータ搭載部を有するサスペンションを保持する搬送シャトルと、前記搬送シャトルを移動させる駆動機構と、紫外線に反応する接着剤を前記アクチュエータ搭載部に塗布する接着剤供給装置と、塗布された前記接着剤に紫外線を照射することにより前記接着剤の粘度を増加させる光照射装置と、粘度が増加した前記接着剤の上に前記圧電素子を配置する素子供給装置と、前記圧電素子が配置された前記アクチュエータ搭載部を加熱することにより前記接着剤を硬化させる加熱装置とを具備している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ディスク装置用サスペンションのアクチュエータ搭載部に配置された圧電素子の位置がずれることを抑制でき、接着剤によって圧電素子を所定位置に正確に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施形態に係るアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの平面図。
図2】ディスク装置の一例を示した斜視図。
図3図1中のF3-F3線に沿うアクチュエータ搭載部の断面図。
図4図1に示されたディスク装置用サスペンションに圧電素子が配置される前のワークの平面図。
図5図1に示されたディスク装置用サスペンションの製造工程を示したフローチャート。
図6】アクチュエータ搭載部の一部と、導電材供給装置の一部を模式的に示した断面図。
図7】搬送シャトルと接着剤供給装置とを模式的に示した斜視図。
図8】搬送シャトルと光照射装置とを模式的に示した斜視図。
図9】搬送シャトルと素子供給装置と高さ検出器を模式的に示した斜視図。
図10】圧電素子の高さとスウェイ周波数との関係を示した図。
図11】加熱装置を模式的に示した断面図。
図12】第2の実施形態に係るアクチュエータ搭載部を備えたディスク装置用サスペンションの一部の斜視図。
図13図12に示されたアクチュエータ搭載部の断面図。
図14図12に示されたディスク装置用サスペンションの製造工程を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、第1の実施形態に係るディスク装置用サスペンションと、その製造方法および製造装置について、図1から図11を参照して説明する。
図1は、1つの実施形態に係るディスク装置用サスペンション10(この明細書では単にサスペンション10と称すこともある)を示している。
【0017】
図2は、サスペンション10を有するディスク装置1の一例を示す斜視図である。ディスク装置1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転するディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回するキャリッジ6と、キャリッジ6を旋回させるポジショニング用モータ7などを有している。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。キャリッジ6のアーム8にサスペンション10が取付けられている。
【0018】
図1に示されたサスペンション10は、ベースプレート11を含むベース部12と、ステンレス鋼の板からなるロードビーム13と、フレキシャ14と、一対のアクチュエータ搭載部15,16とを備えている。ベース部12には、キャリッジ6のアーム8に固定するためのボス部12aが形成されている。
【0019】
ロードビーム13の基部13a(図3に一部を示す)がベースプレート11に重なっている。ロードビーム13の基部13a付近には、厚さ方向に弾性的に撓むことができるヒンジ部13bが形成されている。図1に矢印X1で示された方向がサスペンション10の長さ方向である。図1に矢印Y1で示された方向がサスペンション10の幅方向である。
【0020】
フレキシャ14は、ロードビーム13に沿ってサスペンション10の長さ方向に延びている。フレキシャ14は、ロードビーム13よりも薄いステンレス鋼の板からなるメタルベース20と、メタルベース20に沿って形成された配線部21(図1に一部を示す)とを含んでいる。
【0021】
フレキシャ14の先端付近にジンバル部として機能するタング22が形成されている。タング22には、磁気ヘッドをなすスライダ23が配置されている。スライダ23には、ディスク4(図2に示す)にデータを磁気的に記録するための素子と、ディスク4に記録されたデータを読取るための素子などが設けられている。フレキシャ14の後部(フレキシャテール14a)は、ベース部12の後方に延びている。
【0022】
サスペンション10のベース部12に、一対のアクチュエータ搭載部15,16が設けられている。図1においてベース部12の右側に第1のアクチュエータ搭載部15が配置されている。図1においてベース部12の左側に第2のアクチュエータ搭載部16が配置されている。
【0023】
これらアクチュエータ搭載部15,16に、それぞれ、アクチュエータとして機能する圧電素子31,32が配置されている。圧電素子31,32はPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電体からなり、サスペンション10の先端側を微小量移動させる機能を有している。圧電素子31,32に印加された電圧に応じて、圧電素子31,32が伸縮する。これによりサスペンション10の先端側をスウェイ方向(図1に両方向矢印Sで示す)に移動させることができる。
【0024】
図3は第1のアクチュエータ搭載部15を示す断面図である。第2のアクチュエータ搭載部16は第1のアクチュエータ搭載部15と同様に構成されている。図4は、圧電素子31,32を配置する前のサスペンション(ワーク10´と称す)を示している。ワーク10´のベース部12に、第1の圧電素子31が配置される第1の開口部41と、第2の圧電素子32が配置される第2の開口部42とが形成されている。
【0025】
図4に示されたように、第1の開口部41の内側にロードビーム13の一部(基部13a)からなる支持部43が形成されている。第2の開口部42の内側にも、ロードビーム13の一部(基部13a)からなる支持部44が形成されている。第1の圧電素子31は、接着剤50(図1図3に示す)によって、第1の開口部41の内面41aと支持部43とに固定されている。
【0026】
第2の圧電素子32は、接着剤50によって、第2の開口部42の内面42aと支持部44とに固定されている。接着剤50は電気絶縁性である。接着剤50の一例は紫外線に反応する光硬化形のエポキシ系樹脂からなる。この接着剤50は、照射した紫外線のエネルギーが比較的少ないと粘度が増加し、紫外線のエネルギーが多いと硬化する性質と、加熱により硬化する性質とを有している。接着剤50に温風を吹付けた場合には、接着剤50の表面が内部よりも先に乾いて硬化する。
【0027】
第1のアクチュエータ搭載部15と第2のアクチュエータ搭載部16とは、互いに実質的に同様に構成されている。このためこれ以降は、図3に示された第1のアクチュエータ搭載部15を代表して説明する。
【0028】
図3に示されたように圧電素子31の厚さ方向の一方の面に、第1の電極61が設けられている。圧電素子31の他方の面に、第2の電極62が設けられている。第1の電極61は、導電材70aを介して配線部21の端子21aに接続されている。配線部21は、絶縁層21bと、導体21cと、カバー層21dとを含んでいる。
【0029】
圧電素子31の第2の電極62(図3に示す)は、導電材70bを介して、ベースプレート11と電気的に導通している。ベースプレート11は、アース側の導体としても機能する。導電材70a,70bは互いに同一の導電性接着剤からなり、例えば熱硬化形の有機系樹脂からなるバインダと、バインダに混入された導電粒子とを含んでいる。
【0030】
以下に、圧電素子31,32をアクチュエータ搭載部15,16に実装する工程について、図5から図11を参照して説明する。
図5は、サスペンション10の製造工程を示すフローチャートである。図5に示された一連のステップST1-ST10を経ることにより、圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16に実装される。
【0031】
(1)ステップST1(導電材70aを塗布する工程)
ステップST1では、未硬化の導電材70aが配線部21の端子21aに塗布される。例えば図6に示されるように、ペースト状の導電材70aが導電材供給装置80のノズル81によって、端子21aの導体21cに塗布される。導電材70aは、紫外線が照射されても硬化しないように、紫外線には反応しない熱硬化形の接着剤が使用される。
【0032】
ワーク10´は、図7に示された搬送機構90によって搬送される。搬送機構90は、複数のワーク10´を所定間隔で保持する搬送シャトル91と、搬送シャトル91を矢印M1で示す方向に所定ピッチで移動させる駆動機構92とを有している。駆動機構92は、搬送シャトル91を矢印M2で示す方向に後退させることもできる。搬送シャトル91と駆動機構92とは、複数のワーク10´を所定ピッチで一定の方向に移動させるための移送手段をなしている。
【0033】
(2)ステップST2(接着剤を塗布する工程)
ステップST2において、アクチュエータ搭載部15,16に接着剤50を塗布する。図7に示された接着剤供給装置100は、ノズル101を有するディスペンサ102と、ディスペンサ102を三次元方向(矢印X,Y,Zで示す)に移動させる移動機構103と、ノズル101の位置を制御するコントローラ104と、接着剤の供給源105などを含んでいる。ノズル101から吐出された液状の接着剤50が、アクチュエータ搭載部15,16の支持部43,44などに塗布される。
【0034】
(3)ステップST3(紫外線を照射する工程)
ステップST3では、ステップST2によって塗布された未硬化の接着剤50に、光照射装置110(図8に示す)によって紫外線が照射される。紫外線の照射は、接着剤50が塗布されたのち3-10秒程度が経過し、接着剤50が濡れ広がってから行われる。
【0035】
図8に示された光照射装置110は、アクチュエータ搭載部15,16に向けて紫外線UVを照射する照射ヘッド111と、照射ヘッド111を支持するホルダ112と、紫外線を制御する制御部113などを含んでいる。未硬化の接着剤50に紫外線が照射されることにより、接着剤50の粘度が増加する。すなわちステップST3によって接着剤50の増粘が行われる。
【0036】
(4)ステップST4(圧電素子を載置する工程)
図9は、アクチュエータ搭載部15,16に圧電素子31,32を載置する素子供給装置120と、圧電素子31,32の高さを検出する高さ検出器121とを模式的に示している。
素子供給装置120によって、圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16の接着剤50の上に載置される。このとき接着剤50は、予めステップST3において粘度が増加した状態となっている。このため接着剤50の上に置かれた圧電素子31,32が、接着剤50の表面張力や搬送シャトル91の振動などによって、所定位置から移動してしまうことが抑制される。また圧電素子31,32が自重により下方に移動しすぎることが抑制される。
【0037】
ステップST4において第1の圧電素子31がアクチュエータ搭載部15に配置されると、第1の圧電素子31の下面の電極61と端子21aの導体21cとが、未硬化の導電材70aを介して互いに接する。また第2の圧電素子32がアクチュエータ搭載部16に配置されると、第2の圧電素子32の下面の電極と端子21eの導体とが、未硬化の導電材70aを介して互いに接する。
【0038】
(5)ステップST5(圧電素子の高さを検出する工程)
ステップST5では、圧電素子31,32の高さが高さ検出器121(図9に示す)によって検出される。高さ検出器121は、例えばレーザ光LBを圧電素子31,32の表面に向けて照射し、その反射光を受光することにより、圧電素子31,32の高さを検出する。
【0039】
未硬化の接着剤50は、粘度が増加したとしても、ある程度の流動性を有している。このため接着剤50の上に圧電素子31,32が置かれると、圧電素子31,32が自重により下方に移動しようとする。このため接着剤50の粘度が小さいほど、圧電素子31,32の高さが低くなる(高さが小さくなる)。
【0040】
図10は、アクチュエータ搭載部15,16に配置された圧電素子31,32の高さとスウェイ周波数との関係を示している。図10の横軸は圧電素子の高さを示している。横軸のゼロが圧電素子の基準高さ(目標値)である。図10の縦軸はスウェイ方向の共振振動数を示している。圧電素子の高さが大きすぎても、小さすぎても、スウェイ方向のピーク周波数が変動するため、サスペンションの特性としては好ましくない。
【0041】
このためステップST5において検出された圧電素子31,32の高さが基準値と比較され、光照射装置110の制御部113にフィードバックされる。検出された高さが第1のしきい値よりも大きければ、後続するワーク10´の接着剤50に照射する紫外線の量を減少させる。検出された高さが第2のしきい値よりも小さければ、後続するワーク10´の接着剤50に照射する紫外線の量を増加させる。
【0042】
(6)ステップST6(接着剤を仮硬化させる工程)
ステップST6では、接着剤50を仮硬化させる。この明細書で言う「仮硬化」とは、ステップST10の加熱装置130によって接着剤50を完全に硬化(本硬化)させる前に、接着剤50の表面付近をある程度硬化させておくことを意味する。
例えばアクチュエータ搭載部15,16に高温ガス(エアあるいは不活性ガス)を吹付けることにより、接着剤50の表面付近をある程度硬化させる。これにより圧電素子31,32の動き止めがなされる。ここで言う高温ガスとは、接着剤50を短時間で硬化させるに足る温度に加熱されたガス(例えば不活性ガス)である。ただし接着剤50の性質等の諸条件によっては、ステップST6を省略してもよい。
【0043】
(7)ステップST7(追加の接着剤を塗布する工程)
ステップST7では、アクチュエータ搭載部15,16に追加の接着剤を供給する。例えば、圧電素子31,32の外周と開口部41,42の内面41a,42aとの間に、必要に応じて接着剤50を塗布する。接着剤50を塗布する装置は、図7に示された接着剤供給装置100と同様でよい。ただし接着剤50の性質や工程上の諸条件によっては、ステップST7を省略することが可能である。
【0044】
(8)ステップST8(追加の紫外線を照射する工程)
ステップST8では、ステップST7によって追加された接着剤に紫外線を照射する。このとき使用される光照射装置は、図8に示された光照射装置110と同様でよい。追加された接着剤に紫外線を照射することにより、接着剤の粘度が増加する。追加の接着剤により、圧電素子31,32をさらに確実に固定することができる。ただしステップST8は、工程上の諸条件によっては省略される。
【0045】
(9)ステップST9(導電材70bを塗布する工程)
ステップST9では、第1の圧電素子31の上面の電極62とベースプレート11との間に、未硬化の導電材70bが塗布される。第2の圧電素子32の上面の電極とベースプレート11との間にも、未硬化の導電材70bが塗布される。
【0046】
(10)ステップST10(接着剤を本硬化させる工程)
ステップST10において、複数のサスペンション10が加熱装置130(図11に示す)に搬入される。加熱装置130は、装置本体131の内部にヒータ132等の加熱源を有し、支持体133に載置された複数のサスペンション10をバッチ処理によって同時に加熱する。ヒータ132は、接着剤50と導電材70a,70bとの双方が硬化するのに適した温度にサスペンション10を加熱する。加熱する温度は、圧電素子31,32のキュリー点以下とし、好ましくはキュリー点の2分の1以下とするとよい。
【0047】
ステップST10において、接着剤50と導電材70a,70bとが同時に加熱されることにより、接着剤50が本硬化するとともに、導電材70a,70bも硬化する。ここで言う「本硬化」とは、接着剤50の表面付近だけでなく接着剤50の内部も硬化することにより、実用上の固定強度が得られた状態を意味する。
【0048】
以上の一連の製造工程を経ることにより、接着剤50が硬化し、圧電素子31,32がアクチュエータ搭載部15,16に固定される。導電材70aが硬化することにより、圧電素子31,32と端子21a,21eとの接続状態が固定される。また導電材70bが硬化することにより、圧電素子31,32とベースプレート11との接続状態が固定される。
【0049】
本実施形態の製造方法によれば、ステップST3(紫外線の照射)によって接着剤50の粘度を大きくしている。これにより、圧電素子31,32の位置がずれてしまうことが抑制される。例えばワーク10´が搬送シャトル91によって搬送される際の振動により、圧電素子31,32が移動することが回避される。こうして圧電素子31,32が所定位置に保持された状態のもとで、ワーク10´が加熱装置130に導入される。そして加熱装置130によって接着剤50が加熱され本硬化する。このため圧電素子31,32をアクチュエータ搭載部15,16の所定位置に正確に固定することができた。
【0050】
また本実施形態では、ステップST5において圧電素子31,32の高さを検出し、光照射装置110にフィードバックして接着剤50の粘度を調整している。これにより、圧電素子31,32の高さを基準値に近付けることができ、スウェイ振動モードのばらつきを回避できた。
【0051】
図12は第2の実施形態に係るサスペンション10Aの一部を示している。このサスペンション10Aについて、第1の実施形態のサスペンション10と共通の箇所には、両者に共通の部位に共通の符号が付されている。
第2の実施形態に係るサスペンション10Aは、第1の実施形態のサスペンション10と同様に、ロードビーム13と、フレキシャ14とを有している。フレキシャ14に形成されたタング22にスライダ23が搭載されている。
【0052】
スライダ23の両側に、それぞれアクチュエータ搭載部15A,16Aが設けられている。第1のアクチュエータ搭載部15Aに第1の圧電素子31が配置されている。図13は第1のアクチュエータ搭載部15Aの断面を示している。第2のアクチュエータ搭載部16A(図12に示す)は、第1のアクチュエータ搭載部15Aと実質的に同様の構成である。このため第1のアクチュエータ搭載部15Aについて以下に説明し、第2のアクチュエータ搭載部16Aの説明は省略する。
【0053】
図13に示されたように、圧電素子31の一方の端部31aが、接着剤50によってメタルベース20の第1の支持部20aに固定されている。圧電素子31の他方の端部31bは、接着剤50によってメタルベース20の第2の支持部20bに固定されている。接着剤50は電気絶縁性である。圧電素子31の第1の電極61は、導電材70aを介してアクチュエータ搭載部15Aの第1の導体21fと導通している。圧電素子31の第2の電極62は、導電材70bを介してアクチュエータ搭載部15Aの第2の導体21gと導通している。
【0054】
図14は、サスペンション10Aの製造工程を示すフローチャートである。
ステップST11(接着剤を塗布する工程)において、アクチュエータ搭載部15A,16Aの支持部20a,20bに未硬化の接着剤50が塗布される。
ステップST12(紫外線を照射する工程)において、接着剤50に紫外線を照射することにより、接着剤50の粘度を増加させる。
【0055】
ステップST13(圧電素子を載置する工程)では、アクチュエータ搭載部15A,16Aに塗布された接着剤50の上に圧電素子31,32が載置される。接着剤50の粘度がステップST12によって増加しているため、圧電素子31,32が所定の位置から移動してしまうことが抑制される。
【0056】
ステップST14(高さを検出する工程)において、圧電素子31,32の高さが検出される。検出された圧電素子31,32の高さが基準値と比較され、光照射装置110(図8に示す)にフィードバックされる。検出された高さが第1のしきい値よりも大きければ、後続するワークの接着剤に照射する紫外線の量を減少させる。検出された高さが第2のしきい値よりも小さければ、後続するワークの接着剤に照射する紫外線の量を増加させる。
【0057】
ステップST15(接着剤の仮硬化)において、接着剤50を仮硬化させる。例えばアクチュエータ搭載部15A,16Aに高温ガスを吹付けることにより、接着剤50の表面付近をある程度硬化させる。これにより、圧電素子31,32の動き止めがなされる。ただし接着剤50の性質等の諸条件によっては、ステップST15を省略してもよい。
【0058】
ステップST16(導電材を塗布する工程)において、第1のアクチュエータ搭載部15Aに未硬化の導電材70a,70bが供給される。また第2のアクチュエータ搭載部16Aに未硬化の導電材70a,70bが供給される。
ステップST17(本硬化工程)では、複数のサスペンション10Aが加熱装置130(図11に示す)に収容される。これらサスペンション10Aが加熱装置130内で加熱されることにより、接着剤50と導電材70a,70bとが硬化する。この実施形態のサスペンション10Aは、圧電素子31,32を所定位置に固定できたことにより、特にヨーモードの共振特性を改善する上で効果を奏することができた。
【0059】
なお本発明を実施するに当たって、サスペンションの具体的な形態をはじめとして、圧電素子や、接着剤、導電材などアクチュエータ搭載部を構成する各要素の具体的な態様を種々に変更して実施できることは言うまでもない。また接着剤供給装置や光照射装置、素子供給装置なども種々の形態で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1…ディスク装置、10,10A…ディスク装置用サスペンション、11…ベースプレート、13…ロードビーム、14…フレキシャ、15,15A…第1のアクチュエータ搭載部、16,16A…第2のアクチュエータ搭載部、21c,21f,21g…導体、31…第1の圧電素子、32…第2の圧電素子、50…接着剤、61,62…電極、70a,70b…導電材、80…導電材供給装置、90…搬送機構、91…搬送シャトル、100…接着剤供給装置、110…光照射装置、113…制御部、120…素子供給装置、121…高さ検出器、130…加熱装置。
図1
図2
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図4
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図11
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図14