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特許7516202ツーリング交換機構およびこれを備えた工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ツーリング交換機構およびこれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20240708BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20240708BHJP
   B23B 29/24 20060101ALI20240708BHJP
   B23B 31/06 20060101ALI20240708BHJP
   B23B 31/107 20060101ALI20240708BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B23Q3/157 W
B23Q3/155 A
B23B29/24 A
B23B31/06
B23B31/107 A
B23Q3/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020172352
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2022063936
(43)【公開日】2022-04-25
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 厚志
(72)【発明者】
【氏名】北沢 和敏
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-188499(JP,A)
【文献】特開2019-123063(JP,A)
【文献】特開平6-63806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/24 - 29/34
B23B 31/00 - 31/42
B23Q 3/155- 3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する回転工具と該回転工具を着脱自在に保持する工具ホルダーとからなるツーリングを着脱自在に保持するツーリング保持ユニットを装着したタレットと、
前記ツーリング保持ユニットに装着された前記ツーリングを前記ツーリング保持ユニットから脱離させるツーリング脱離ユニットを有したタレット支持体とを備えた工作機械のツーリング交換機構であって、
前記タレットに装着されたツーリング保持ユニットが、前記ツーリングの工具ホルダーを引き込んだ状態で前記工具ホルダーを装着する工具ホルダー保持部を有し、
前記タレット支持体のツーリング脱離ユニットが、前記ツーリング保持ユニットの後端に向かって進退自在な押圧部材と該押圧部材の進退方向と平行に進退自在な係止レバーとを有し、
前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が、前記ツーリング保持ユニットの後端を押圧して前記ツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部による前記ツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除自在であり、
前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが、前記ツーリング保持ユニットの後端側に形成された係合突起と係合自在であり、
前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前記ツーリング保持ユニットの後端に当接した後に、前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが前記ツーリング保持ユニットの係合突起と係合しつつ前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前進して前記ツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部による前記ツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除して前記ツーリングを交換自在とする、工作機械のツーリング交換機構。
【請求項2】
前記ツーリング脱離ユニットが、該ツーリング脱離ユニット自体を前記タレットに向けて付勢する弾性体を有している、請求項1に記載された工作機械のツーリング交換機構。
【請求項3】
前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前記ツーリング保持ユニットの後端に当接した後における前記押圧部材の前記ツーリング保持ユニットから受ける反力が前記弾性体による付勢力より大きい、請求項2に記載された工作機械のツーリング交換機構。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のツーリング交換機構と、
前記ワークを回転自在に把持する主軸と、
前記ツーリングを格納するツーリング格納装置とを備え、
前記タレットが所定のツーリング交換位置に旋回した際に、前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端側を前方に向かって押圧すると共に前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが前記ツーリング保持ユニットの係合突起を後方に引く、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツーリング交換機構およびこれを備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを加工する工具を回転自在に固定する工具主軸ユニットが取り付けられたタレットにおける工具交換機構として、工具主軸ユニットのプッシュ部材を外部から押して、ブッシュ部材の先端と当接するロッドを前進させて、このロッドの先端に装着された工具を取り外すものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-188499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような工具交換機構では工具主軸ユニットの背面側を押圧しているため、タレットのユニット保持部に過大な曲げモーメントが加わり、タレットに過大な負荷が加わってしまうことから、タレットの耐久性の向上には更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、工作機械におけるツーリング交換時にタレットへの負荷が少ないツーリング交換機構およびこれを備えた工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、ワークを加工する回転工具と該回転工具を着脱自在に保持する工具ホルダーとからなるツーリングを着脱自在に保持するツーリング保持ユニットを装着したタレットと、前記ツーリング保持ユニットに装着された前記ツーリングを前記ツーリング保持ユニットから脱離させるツーリング脱離ユニットを有したタレット支持体とを備えた工作機械のツーリング交換機構であって、前記タレットに装着されたツーリング保持ユニットが、前記ツーリングの工具ホルダーを引き込んだ状態で前記工具ホルダーを装着する工具ホルダー保持部を有し、前記タレット支持体のツーリング脱離ユニットが、前記ツーリング保持ユニットの後端に向かって進退自在な押圧部材と該押圧部材の進退方向と平行に進退自在な係止レバーとを有し、前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が、前記ツーリング保持ユニットの後端を押圧して前記ツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部による前記ツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除自在であり、前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが、前記ツーリング保持ユニットの後端側に形成された係合突起と係合自在であり、前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前記ツーリング保持ユニットの後端に当接した後に、前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが前記ツーリング保持ユニットの係合突起と係合しつつ前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前進して前記ツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部による前記ツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除して前記ツーリングを交換自在とすることを特徴とする。
【0007】
第2に、前記ツーリング脱離ユニットが、該ツーリング脱離ユニット自体を前記タレットに向けて付勢する弾性体を有していることを特徴とする。
【0008】
第3に、前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材が前記ツーリング保持ユニットの後端に当接した後における前記押圧部材の前記ツーリング保持ユニットから受ける反力が前記弾性体による付勢力より大きいことを特徴とする。
【0009】
第4に、上述したツーリング交換機構と、前記ワークを回転自在に把持する主軸と、前記ツーリングを格納するツーリング格納装置とを備え、前記タレットが所定のツーリング交換位置に旋回した際に、前記ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端側を前方に向かって押圧すると共に前記ツーリング脱離ユニットの係止レバーが前記ツーリング保持ユニットの係合突起を後方に引くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏することができる。
(1)ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端に当接した後に、ツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起と係合しつつツーリング脱離ユニットの押圧部材が前進してツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部によるツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除してツーリングを交換自在とすることにより、ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端側を前方に向かって押す一方で、ツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起を後方に引くため、タレットに加わる曲げモーメントが相殺され、ツーリング交換時にタレットへの負荷を少なくすることができる。
【0011】
(2)ツーリング脱離ユニットが、このツーリング脱離ユニット自体をタレットに向けて付勢する弾性体を有していることにより、ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端に当接する前において、ツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起よりも前方に位置した状態で保持されるため、ワークの加工中に発生する振動などによりツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起と接触することを防ぐことができる。
【0012】
(3)ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端に当接した後における押圧部材のツーリング保持ユニットから受ける反力が弾性体による付勢力より大きいことにより、ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端に当接した後に、ツーリング脱離ユニットの係止レバーをツーリング保持ユニットの係合突起に係合させ、その状態を維持してツーリング脱離ユニットの押圧部材が前進するため、タレットに加わる曲げモーメントを相殺した状態でツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除することができる。
【0013】
(4)ツーリング交換機構と、ワークを回転自在に把持する主軸と、ツーリングを格納するツーリング格納装置とを備え、タレットが所定のツーリング交換位置に旋回した際に、ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端側を前方に向かって押圧すると共にツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起を後方に引くことにより、ツーリング交換機構によりツーリングが交換自在となると共にツーリング格納装置との間でツーリングが交換されるため、タレットに加わる曲げモーメントが相殺されてタレットに加わる負荷が少なくなり、タレットへの負荷を低減した状態でツーリングを交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例であるツーリング交換機構を組み込んだ工作機械の斜視図。
図2図1に示すタレットの正面図。
図3図1に示すツーリングの部分断面斜視図。
図4図2のIV-IV断面図。
図5図2のV方向から見たタレットおよびタレット支持体の平面図。
図6A】ツーリング交換機構によるツーリング交換手順を説明する図。
図6B】ツーリング交換機構によるツーリング交換手順を説明する図。
図6C】ツーリング交換機構によるツーリング交換手順を説明する図。
図6D】ツーリング交換機構によるツーリング交換手順を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ワークを加工する回転工具とこの回転工具を着脱自在に保持する工具ホルダーとからなるツーリングを着脱自在に保持するツーリング保持ユニットを装着したタレットと、ツーリング保持ユニットに装着されたツーリングをツーリング保持ユニットから脱離させるツーリング脱離ユニットを有したタレット支持体とを備えた工作機械のツーリング交換機構であって、タレットに装着されたツーリング保持ユニットが、ツーリングの工具ホルダーを引き込んだ状態で工具ホルダーを装着する工具ホルダー保持部を有し、タレット支持体のツーリング脱離ユニットが、ツーリング保持ユニットの後端に向かって進退自在な押圧部材とこの押圧部材の進退方向と平行に進退自在な係止レバーとを有し、ツーリング脱離ユニットの押圧部材が、ツーリング保持ユニットの後端を押圧してツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部によるツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除自在であり、ツーリング脱離ユニットの係止レバーが、ツーリング保持ユニットの後端側に形成された係合突起と係合自在であり、ツーリング脱離ユニットの押圧部材がツーリング保持ユニットの後端に当接した後に、ツーリング脱離ユニットの係止レバーがツーリング保持ユニットの係合突起と係合しつつツーリング脱離ユニットの押圧部材が前進してツーリング保持ユニットの工具ホルダー保持部によるツーリングの工具ホルダーの引き込み状態を解除してツーリングを交換自在とし、工作機械におけるツーリング交換時にタレットへの負荷が少ないものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【実施例
【0016】
以下、図1乃至図6Dに基づいて、本発明の一実施例であるツーリング交換機構およびこれを備えた工作機械について説明する。
【0017】
<1.工作機械の概要>
まず、図1および図2に基づき、工作機械10の概要について説明する。
図1は本発明の実施例であるツーリング交換機構を組み込んだ工作機械の斜視図であり、図2図1に示すタレットの正面図である。
【0018】
工作機械10は、自動旋盤であり、ワークWを加工する加工室10aを有している。
加工室10aの内部には、図1に示すように、ワークWを回転自在かつ着脱自在に把持する主軸11と、この主軸11に対向配置されるタレット12と、このタレット12を割り出し旋回自在に支持するタレット支持体13と、タレット12に装着する工具やツーリングを格納および交換するツーリング格納装置14とを備えている。
【0019】
タレット12は、図2に示すように、正面視において8角形となっている。
そして、このタレット12の周面であるタレット面12aには、加工用の工具を保持するツールホルダーHがそれぞれ着脱自在である。
そして、これらのタレット面12aの1つには、ツーリングTを着脱自在に保持するツーリング保持ユニット100が装着されている。
【0020】
他方、タレット支持体13は、不図示の支持体移動機構により、前後左右上下に直線移動自在となっている。
したがって、タレット12も、タレット支持体13と一体になって前後左右上下に直線移動自在となっている。
このように工作機械10は、タレット12が支持体移動機構により主軸11に把持されたワークWに接近し、タレット12の割り出し旋回によって選択された工具により、ワークWの加工を行うことができる。
【0021】
また、タレット支持体13は、ツーリングTをツーリング保持ユニット100から脱離させるツーリング脱離ユニット200が設けられている。
【0022】
そして、上述したツーリング格納装置14は、主軸11と同じ側に配置され、主軸11の軸線方向である前後方向に移動自在となっており、正面にはシャッター14aを有している。
ツーリング格納装置14の内部には、複数のツーリングが収容されており、ツーリング保持ユニット100が保持するツーリングTと同じツーリングも複数収容することが可能である。
【0023】
さらに、工作機械10は、ツーリング格納装置14に収容されたツーリングとツーリング保持ユニット100に装着されているツーリングTを自動で交換するために、ツーリングTを脱離するツーリング交換機構15を備えている。
このツーリング交換機構15は、タレット12に装着されたツーリング保持ユニット100とタレット支持体13に設けられたツーリング脱離ユニット200とにより構成されている。
【0024】
<2.ツーリングの構造>
ここで、図3に基づき、ツーリング保持ユニット100に装着されるツーリングTについて説明する。
図3は、図1に示すツーリングの部分断面斜視図である。
【0025】
ツーリングTは、ワークを加工するドリル等の回転工具Tbと、この回転工具Tbを着脱自在に保持する工具ホルダーThと、この工具ホルダーThの後端に取り付けられたプルスタッドTpとを備えている。
工具ホルダーThは、後端側に向かって縮径、すなわち後端側に向かってテーパが形成されている。
プルスタッドTpは、工具ホルダーThの後端に形成された貫通孔に挿入固定され、後端側の頭部Tp1と、この頭部Tp1の前方側に接続されて頭部Tp1より小径の括れ部Tp2とから形成されている。
【0026】
<3.ツーリング保持ユニットの構造>
次に、図3および図4に基づき、ツーリング保持ユニット100について説明する。
図4は、図2のIV-IV断面図である。
【0027】
ツーリング保持ユニット100は、ハウジング110と、タレット12から突出する回転駆動力伝達軸12bと咬合する第1回転駆動力伝達軸120と、この第1回転駆動力伝達軸120と咬合する伝達歯車130と、この伝達歯車130と咬合する第2回転駆動力伝達軸140と、この第2回転駆動力伝達軸140の先端に取り付けられる工具ホルダー保持部150とを有している。
【0028】
ハウジング110は、図4に示すように、前後方向に延びてタレット12に取り付けられる基部111と、この基部111からタレット12の旋回軸から遠ざかる方向に立ち上がる立ち上がり部112とから形成され、側面視で逆L字状になっている。
立ち上がり部112の後端側上部には、タレット12の旋回軸から遠ざかる方向に突出する係合突起112aが形成されている。
【0029】
第1回転駆動力伝達軸120は、ハウジング110の基部111の内部に回転自在に設置され、前後方向に延びている。
第1回転駆動力伝達軸120の前端側には、回転駆動力伝達軸12bの先端に形成されたかさ歯車と咬合するかさ歯車が形成されている。
また、第1回転駆動力伝達軸120の後端側には、伝達歯車130と咬合する歯車が形成されている。
【0030】
伝達歯車130は、タレット12の旋回軸と平行な軸線回りに回動自在となっている。
【0031】
第2回転駆動力伝達軸140は、ハウジング110の立ち上がり部112の内部の後端側に回転自在に設置される円筒状の中空軸であり、前後方向に延びている。
【0032】
工具ホルダー保持部150は、ハウジング110の立ち上がり部112の内側に設けられた軸受160により、ハウジング110の立ち上がり部112に対して回転自在に保持されている。
そして、工具ホルダー保持部150は、第2回転駆動力伝達軸140に連結された筒状ホルダー151と、この筒状ホルダー151の後端に挿入されるドローバー152と、このドローバー152に固定された鍔153と、この鍔153を付勢するドローバー付勢ばね154とを有している。
【0033】
筒状ホルダー151は、ツーリングTの工具ホルダーThが挿入されるツーリング挿入部151aと、このツーリング挿入部151aの後端と連通して同一径で後端側に向かって延びる中間部151bと、この中間部151bの後端と連通すると共にドローバー152が挿入されるドローバー挿入部151cとを有している。
【0034】
ツーリング挿入部151aは、内側において後端側に向かって縮径、すなわち、後端側に向かってテーパが形成されている。
なお、ツーリングTの工具ホルダーThのテーパは、ツーリング挿入部151aのテーパと合致するように形成されている。
【0035】
中間部151bの直径は、ツーリングTの工具ホルダーThの後端の直径よりも僅かに大きくなっている。
ドローバー挿入部151cの直径は、中間部151bの直径よりも小径となっている。
【0036】
ドローバー152は、円筒状の棒材であり、その先端には、凹状のツーリング収容領域152aが形成されている。
また、ツーリング収容領域152aの外周壁の周囲には、複数の係合ボール152bが嵌め込まれる係合ボール収容孔が間隔を開けて複数形成されている。
この係合ボール収容孔は、外周側と内周側とで孔径が異なっており、外周側の孔径は係合ボール152bの直径と概ね等しく、内周側の孔径は係合ボール152bの直径より小さくなっている。
【0037】
以上より、ドローバー152の先端が筒状ホルダー151の中間部151bに位置している際は、係合ボール152bがドローバー152の外側に向かって移動して係合ボール152bがドローバー152の内側に向かって突出しない状態を取ることが可能となる。
また、ドローバー152の先端が筒状ホルダー151のドローバー挿入部151cに位置している際は、係合ボール152bがドローバー挿入部151cを形成する壁面と当接することで係合ボール152bがドローバー152の内側に向かって突出している状態となる。
この状態において、ドローバー152の先端の内径は、ツーリングTのプルスタッドTpの頭部Tp1の直径より小さく、ツーリングTのプルスタッドTpの括れ部Tp2の直径より大きくなっている。
【0038】
したがって、ツーリングTを工具ホルダー保持部150に保持する場合は、ドローバー152の先端が筒状ホルダー151の中間部151bに位置するまでドローバー152を押し込んだ状態でツーリングTをツーリング挿入部151aに挿入する。
このとき、係合ボール152bが頭部Tp1により一旦ドローバー152の外側に向かって突出し、その後で括れ部Tp2と対向する位置となり、ツーリングTのプルスタッドTpの頭部Tp1がツーリング収容領域152aに収容される。
【0039】
この状態でドローバー152の先端が筒状ホルダー151のドローバー挿入部151cに位置するまでドローバー152を後退させると、係合ボール152bがドローバー152の内側に向かって突出し、ツーリングTのプルスタッドTpの括れ部Tp2と当接する。
これにより、ドローバー152の先端が筒状ホルダー151の中間部151bに位置するまでドローバー152を押し込まない限り、ツーリングTが工具ホルダー保持部150に保持される。
【0040】
ドローバー付勢ばね154は、鍔153を介してドローバー152を後方に付勢している。
すなわち、ドローバー152は、ドローバー付勢ばね154による付勢力により、ツーリングTのプルスタッドTpを咥えた状態でツーリングTを引き込んでいる。
したがって、工具ホルダー保持部150は、ツーリングTの工具ホルダーThを引き込んだ状態で工具ホルダーThを装着する。
【0041】
<4.ツーリング脱離ユニットの構造>
次に、図4および図5に基づき、ツーリング脱離ユニット200について説明する。
図5は、図2のV方向から見たタレットおよびタレット支持体の平面図である。
【0042】
ツーリング脱離ユニット200は、ツーリング保持ユニット100の後端に向かって進退自在な押圧部材210と、この押圧部材210の進退方向と平行に進退自在な係止レバー220と、押圧部材210と係止レバー220とを連結する連結板230と、タレット支持体13に取り付けられ固定端となるベース240と、連結板230を前方に向かって付勢するコイルばね(弾性体)250とを有している。
【0043】
押圧部材210は、図4に示すように、タレット支持体13に挿通されているピストンロッド211と、このピストンロッド211の後端と接続されるシリンダーロッド212と、このシリンダーロッド212を進退させるシリンダー213とから構成されている。
【0044】
ピストンロッド211は、ツーリング保持ユニット100がツーリング格納装置14と対向する位置(ツーリング交換位置)Pに到達するまでタレット12を割り出し旋回させたときに、ツーリング保持ユニット100のドローバー152の後端と対向する。
【0045】
シリンダー213は、シリンダー室213a内に作動油が充填された油圧シリンダーである。
このシリンダー213は、不図示のポンプでシリンダー室213a内の作動油の量を調整することによって、シリンダーロッド212(すなわち、ピストンロッド211)を進退自在にしている。
【0046】
押圧部材210がこのように構成されていることにより、押圧部材210は、ツーリング保持ユニット100のドローバー152の後端を押圧してツーリング保持ユニット100の工具ホルダー保持部150によるツーリングTの工具ホルダーThの引き込み状態を解除自在となっている。
【0047】
他方、係止レバー220は、図4に示すように、タレット支持体13および連結板230に挿通されているレバー本体221と、このレバー本体221の先端に取り付けられた突出部材222と、コイルばね250と当接するばね受け部材223と、レバー本体221の後端が挿入されるスリーブ224とを有している。
【0048】
レバー本体221は、段付き丸棒であり、押圧部材210のピストンロッド211と同方向に伸びている。
突出部材222は、レバー本体221よりもタレット12の旋回軸に向かって突設されている。
また、突出部材222は、ツーリング保持ユニット100がツーリング交換位置Pに到達するまでタレット12を割り出し旋回させたときに、ツーリング保持ユニット100の係合突起112aと対向している。
【0049】
ばね受け部材223は、図4および図5に示すように、レバー本体221に組み付けられており、レバー本体221と一体となっている。
また、ばね受け部材223の後端は、図4に示すように、コイルばね250と当接しており、前方に向かって付勢されている。
スリーブ224は、図4に示すように、左端がレバー本体221の右側の段を構成する右側肩部221aと当接し、右端がベース240と当接している。
【0050】
このように係止レバー220が構成されていることにより、係止レバー220はツーリング保持ユニット100の後端側に形成された係合突起112aと係合自在となっている。
【0051】
連結板230は1枚の板であり、図4に示すように、押圧部材210のシリンダーロッド212および係止レバー220のレバー本体221が挿通されている。
この連結板230の後面231には、押圧部材210のシリンダー213が取り付けられている。
また、連結板230は、レバー本体221の左側の段となっている左側肩部221bとばね受け部材223とに挟持されている。
したがって、押圧部材210のシリンダー213および係止レバー220は、連結板230と一体になって前後方向に進退する。
【0052】
ベース240は、図5に示すように、固定ボルトBにより、タレット支持体13に固定されている。
そして、このベース240は、押圧部材210のシリンダー213から離間している。
【0053】
コイルばね250は、図4に示すように、係止レバー220のスリーブ224の外周を覆っており、連結板230を介してツーリング脱離ユニット200自体を前方に向けて付勢している。
このコイルばね250により、ツーリング脱離ユニット200と一体に移動する係止レバー220が前方に付勢されることになる。
【0054】
<5.ツーリング交換手順>
次に、図2図4図6A乃至図6Dに基づいて、このように構成された工作機械10およびツーリング交換機構15によるツーリング交換手順について説明する。
図6A乃至図6Dは、ツーリング交換機構によるツーリング交換手順を説明する図である。
【0055】
まず、タレット12を割り出し旋回させて、ツーリングTを保持しているツーリング保持ユニット100をツーリング交換位置Pに到達させる(図2参照)。
この状態を模式的に示した図が、図6Aである。
このとき、コイルばね250により連結板230が前方に付勢されており、連結板230がタレット支持体13に当接している。
したがって、ツーリング保持ユニット100がツーリング交換位置Pに到達した際に、ツーリング保持ユニット100の係合突起112aと係止レバー220の突出部材222とが、図6Aに示すように、確実に離間対向する。
【0056】
この図6Aの状態から、不図示のポンプによりシリンダー213内に作動油を流入させてシリンダーロッド212を前方に押し出す。
シリンダーロッド212を前方に押し出すと、シリンダーロッド212と連結しているピストンロッド211も前進する。
【0057】
ピストンロッド211が前進していくと、図6Bに示すように、ピストンロッド211の先端がツーリング保持ユニット100のドローバー152の後端に当接する。
この状態から、シリンダーロッド212を前方にさらに押し出そうとすると、コイルばね250による連結板230への付勢力(すなわち、連結板230を前方に押し出す力)が、ドローバー付勢ばね154(図4参照)によるドローバー152への付勢力(すなわち、ドローバー152を後方に付勢する力)より小さいため、ドローバー152が前進しない。
【0058】
このときのドローバー152からの反力が、ピストンロッド211を介してシリンダー室213a内に伝わり、シリンダー室213aの作動油がシリンダー室213aの後壁を後方側に押すため、シリンダー213がシリンダーロッド212に対して後退する。
シリンダー213は連結板230と一体になっているため、シリンダー213の後退に伴い、連結板230も後退する。
連結板230は係止レバー220と一体になっているため、連結板230の後退に伴い、係止レバー220も後退する。
したがって、ツーリング脱離ユニット200の押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端に当接した後において、押圧部材210がツーリング保持ユニット100から受ける反力はコイルばね250による付勢力よりも大きくなっている。
【0059】
係止レバー220が後退していくと、図6Cのように、係止レバー220の突出部材222が、ツーリング保持ユニット100の係合突起112aと当接して係合する。
この状態から、シリンダーロッド212を前方にさらに押し出そうとすると、係止レバー220の突出部材222がツーリング保持ユニット100の係合突起112aと係合していることに加え、タレット12がタレット支持体13に対して前後移動できないため、連結板230はこれ以上後退できない。
【0060】
そして、押圧部材210によるドローバー152の押し出し力がドローバー付勢ばね154(図4参照)によるドローバー152への付勢力より大きいため、押圧部材210とツーリング保持ユニット100の係合突起112aとが係合しつつドローバー152が前進する。
ドローバー152が前進してドローバー152の先端が筒状ホルダー151の中間部151b(図4参照)まで到達すると、ドローバー152の係合ボール152bとツーリングTのプルスタッドTpとの係合が解除され、ツーリング保持ユニット100の工具ホルダー保持部150によるツーリングTの工具ホルダーThの引き込み状態を解除される。
【0061】
工具ホルダーThの引き込み状態が解除された状態で、ツーリング格納装置14とタレット12とがお互いに接近移動しつつ、ツーリング格納装置14のシャッター14aが開口して、ツーリングTがツーリング格納装置14内に格納される。
【0062】
次に、ツーリング格納装置14の内部にある複数のツーリングから所望のツーリングが選択される。
そして、タレット12の工具ホルダー保持部150が、ツーリング格納装置14内で選択された新しいツーリングを引きこんで保持する。
以上により、ツーリング格納装置14とタレット12との間でツーリングTが交換される。
【0063】
そして、ツーリング格納装置14とタレット12とが離間して、タレット12は次の加工工程等に移行する。
【0064】
<6.本実施例の工作機械が奏する効果>
以上説明したように、本発明の一実施例である工作機械10およびツーリング交換機構15によれば、押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端に当接した後に、係止レバー220に突設した突出部材222が係合突起112aと係合しつつ押圧部材210が前進して工具ホルダー保持部150によるツーリングTの工具ホルダーThの引き込み状態を解除してツーリングTを交換自在とすることにより、押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端側を前方に向かって押す一方で、係止レバー220が係合突起112aを後方に引くため、タレット12に加わる曲げモーメントが相殺され、ツーリング交換時にタレット12への負荷を少なくすることができる。
【0065】
また、ツーリング脱離ユニット200が、このツーリング脱離ユニット200自体をタレット12に向けて付勢する弾性体であるコイルばね250を有していることにより、押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端に当接する前において、係止レバー220が係合突起112aよりも前方に位置した状態で保持されるため、ワークWの加工中に発生する振動などにより係止レバー220が係合突起112aと接触することを防ぐことができる。
【0066】
また、押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端に当接した後における押圧部材210のツーリング保持ユニット100から受ける反力がコイルばね250による付勢力より大きいことにより、押圧部材210がツーリング保持ユニット100の後端に当接した後に、係止レバー220を係合突起112aに係合させ、その状態を維持して押圧部材210が前進するため、タレット12に加わる曲げモーメントを相殺した状態でツーリングTの工具ホルダーThの引き込み状態を解除することができる。
【0067】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。
【0068】
例えば、本実施例において、タレット12には8つのタレット面12aが形成されていたが、タレットに形成されるタレット面の個数はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0069】
10 ・・・ 工作機械
10a ・・・ 加工室
11 ・・・ 主軸
12 ・・・ タレット
12a ・・・ タレット面
12b ・・・ 回転駆動力伝達軸
13 ・・・ タレット支持体
14 ・・・ ツーリング格納装置
14a ・・・ シャッター
15 ・・・ ツーリング交換機構

100 ・・・ ツーリング保持ユニット
110 ・・・ ハウジング
111 ・・・ 基部
112 ・・・ 立ち上がり部
112a・・・ 係合突起
120 ・・・ 第1回転駆動力伝達軸
130 ・・・ 伝達歯車
140 ・・・ 第2回転駆動力伝達軸
150 ・・・ 工具ホルダー保持部
151 ・・・ 筒状ホルダー
151a・・・ ツーリング挿入部
151b・・・ 中間部
151c・・・ ドローバー挿入部
152 ・・・ ドローバー
152a・・・ ツーリング収容領域
152b・・・ 係合ボール
153 ・・・ 鍔
154 ・・・ ドローバー付勢ばね
160 ・・・ 軸受
200 ・・・ ツーリング脱離ユニット
210 ・・・ 押圧部材
211 ・・・ ピストンロッド
212 ・・・ シリンダーロッド
213 ・・・ シリンダー
213a・・・ シリンダー室
220 ・・・ 係止レバー
221 ・・・ レバー本体
221a・・・ 右側肩部
221b・・・ 左側肩部
222 ・・・ 突出部材
223 ・・・ ばね受け部材
224 ・・・ スリーブ
230 ・・・ 連結板
231 ・・・ 後面
240 ・・・ ベース
250 ・・・ コイルばね(弾性体)
T ・・・ ツーリング
Tb ・・・ 回転工具
Th ・・・ 工具ホルダー
Tp ・・・ プルスタッド
Tp1 ・・・ 頭部
Tp2 ・・・ 括れ部
W ・・・ ワーク
H ・・・ ツールホルダー
B ・・・ 固定ボルト
P ・・・ ツーリング交換位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D