(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ダイの受取基板への移転を用いたフォトニックチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20240708BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020177454
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-10-16
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】メネゾ シルヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ゼーラグ ベルトラン
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0265413(US,A1)
【文献】国際公開第2018/087485(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0291265(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/10 - 6/14
G02B 6/30
G02B 6/42 - 6/43
H01L 25/16
H01L 27/15
H05K 1/02
H01S 7/00
G02F 1/00 - 1/11
G02F 1/29 - 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受取基板(20)上に配置され、第1集積導波路(23)に光学的に結合された少なくとも1つの光電子部品を含む、フォトニックチップ(1)の製造方法であって、
-受取基板(20)の上面(20a)上に、受取基板の平面内で所定の寸法Lc、lcを有する中央領域Zcを画定し、該
中央領域
Zcは、
該中央領域Zcに関するダイ(10)の位置決めにおける所定の不確実性d
ipを許容した後に、受取基板(20)に前記ダイを移転する工程に続いて、前記ダイ(10)によって全体が覆われることが意図され、
-初期寸法Lv
(i)、lv
(i)を有し、寸法Lc、lc及び位置決めの不確実性性d
ipに基づいて予め設定された前記ダイ(10)を製造し、
ここで、Lv
(i)
、Lcは、Z軸に沿った長さであり、lv
(i)
、lcは、X軸に沿った幅であり、
Z軸が第1集積導波路(23)の長手軸に沿って配向され、X軸が第1集積導波路(23)の幅に沿って配向され、
-受取基板(20)と、中央領域Zcを含む上面(20a)と、中央領域Zcを囲み、移転工程後に前記ダイ(10)によって部分的に覆われることが意図される周辺領域Zpとを形成し、これらが一体となって、前記ダイが全体的に配置されることが意図される実際の移転領域Zr
eを形成し、受取基板(20)は、
・中心領域Zcのみに存在する第1集積導波路(23)と、
・第1集積導波路(23)に重ね合わされ、光学的に結合された、少なくとも周辺領域Zp内に位置し、上面(20a)に対して予め設定された閾値P
thよりも大きい間隔e
gap
(2)を有する第2集積導波路(24)とを含み、
-前記ダイ(10)を受取基板(20)の実際の移転領域Zr
eに移転して、中央領域Zcは前記ダイ(10)によって完全に覆われ、周辺領域Zpは前記ダイ(10)によって覆われない自由表面(25)を有し、
-エッチングマスク(31)を一方で前記ダイ(10)のセグメント上に堆積させ、他方で実際の移転領域Zr
eの周囲に堆積させ、
-エッチングマスク(31)で被覆されていない前記ダイ(10)の自由部分をドライエッチングして、周辺領域Zpの自由表面(25)を閾値P
th以下の深さP
sgv
(a)までエッチングすることにより、前記ダイ(10)から光電子部品を製造する、
工程を含む、製造方法。
【請求項2】
前記第1集積導波路(23)は、前記上面(20a)に対して、予め設定された閾値P
thよりも小さい間隔e
gap
(1)を有する、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記受取基板(20)は、前記第2集積導波路(24)に重ね合わされ、光学的に結合された第3集積導波路を含み、前記第3集積導波路は、少なくとも前記実際の移転領域Zr
eに位置し、前記上面(20a)に対して予め設定された閾値P
thよりも小さい間隔e
gap
(3)を有する、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ダイ(10)を製造する工程の後、前記ダイは、それぞれ少なくともLc+2d
ip、lc+2d
ipに等しい初期寸法Lv
(i)、lv
(i)を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記実際の移転領域Zr
eが、少なくともLc+4d
ip、lc+4d
ipに等しい寸法Lr
e、lr
eを有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記光電子部品を製造する工程の前に、ウェットエッチングによって前記ダイ(10)の成長基板(11)を除去する工程を含み、前記ウェットエッチングによって、ゼロでない距離d
sglにわたって、前記受取基板(20)に平行な平面内で前記ダイ(10)の横方向のオーバーエッチングを生じ、前記ダイ(10)が前記距離d
sglに基づいてさらに予め設定された初期寸法Lv
(i)、lv
(i)を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
同一の前記ダイ(10)から複数の光電子部品を製造する工程を含み、各光電子部品が対応する前記第1集積導波路(23)に結合される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記光電子部品が、レーザダイオード、フォトダイオード又は電気光学変調器である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ダイ(10)がIII-V族半導体化合物に基づいて作製される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記光電子部品がDFBレーザダイオードであり、ブラッグミラーが前記第1集積導波路(23)内に配置されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記光電子部品がDBRレーザダイオードであり、2つのブラッグミラーが前記レーザダイオードの光キャビティを囲み、それぞれ重ね合わされた、対応する前記第1集積導波路(23)の一端に光学的に結合された前記第2集積導波路(24)内に配置されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
複数のフォトニックチップ(1)を同一の前記受取基板(20)から同時に製造することを保証する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、少なくとも1つのダイを機能化された受取基板に移転する工程を含むフォトニックチップの製造方法の分野である。
【背景技術】
【0002】
一般に、フォトニックチップは、集積フォトニック回路を含む受取基板(receiving substrate)上に載置される少なくとも1つの光電子部品、例えばレーザダイオードを備える。このような集積フォトニック回路は、光電子部品に光学的に結合された導波路と、能動光学部品(変調器等)及び/又は受動光学部品(マルチプレクサ等)とを含む。シリコンフォトニクス技術の場合、光電子部品は、半導体、例えば、InPのようなIII-V化合物に基づいて作製され得、受取基板は、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板であり得る。
【0003】
このようなフォトニックチップの製造方法は、ダイを受取基板に移転する工程を含むことができる。ダイは、半導体に基づいて作成されたブロックであり、複数の半導体層のスタックを含む。移転は、ダイが、受取基板の上面の移転領域と呼ばれる領域に載置され、集積された導波路を少なくとも部分的に覆うように行われる。そして、III-Vダイを構造化する工程が実行され、光電子部品が製造され、集積導波路に光学的に結合される。一般に、光電子部品は、とりわけ、レーザダイオード、フォトダイオード及び電界吸収型変調器であってもよい。多数のフォトニックチップが同じ受取基板上に同時に製造される場合、それらは受取基板をダイシングすることによって個片化される。
【0004】
国際公開第2018/087485号明細書には、このような製造方法の一例が記載されている。それは、ダイの受取基板への移転がゼロではない位置決めの不確実性dipの影響を受ける可能性があるという事実に言及している。さらに、ダイは、移転工程の後にウェットエッチングによって除去され得る成長基板を含み得る。このウェットエッチングは、受取基板の平面に平行な平面におけるダイの横方向のオーバーエッチングdsglをもたらし得る。従って、ダイが最終的に所望の寸法(Lv(f)、lv(f))を有する場合、例えば寸法が1×1mm2に等しい、1つ以上の光電子部品を製造することを可能にするために、位置決めの不確実性dip及び横方向のオーバーエッチングdsglを考慮することが重要であり、従って、例えば約2×2mm2の、より大きな初期寸法(Lv(i)、lv(i))を有するダイを移転することが重要である。さらに、このタイプの製造方法を改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善することであり、より詳細には、光電子部品に光学的に結合された1つ以上の集積導波路の構造的完全性を確保するフォトニックチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本発明の主題は、受取基板上に配置され、第1集積導波路に光学的に結合された少なくとも1つの光電子部品を含むフォトニックチップの製造方法であって、この方法は、以下の工程を含む。
-受取基板の上面上に、受取基板の平面内で所定の寸法Lc、lcを有する中央領域Zcを画定し、該領域は、中央領域Zcに関するダイの位置決めにおける所定の不確実性dipを許容した後に、受取基板にダイを移転する工程に続いて、前記ダイによって全体が覆われることが意図され、
-初期寸法Lv(i)、lv(i)を有し、寸法Lc、lc及び位置決めの不確実性性dipに基づいて予め設定された前記ダイを製造し、
-受取基板と、中央領域Zcを含む上面と、中央領域Zcを囲み、移転工程後に前記ダイによって部分的に覆われることが意図される周辺領域Zpとを形成し、これらが一体となって、前記ダイが全体的に配置されることが意図される実際の移転領域Zreを形成し、受取基板は、
・中心領域Zcのみに存在する第1集積導波路と、
・第1集積導波路に重ね合わされ、光学的に結合された、少なくとも周辺領域Zp内に位置し、上面に対して予め設定された閾値Pthよりも大きい間隔egap
(2)を有する第2集積導波路とを含み、
-前記ダイを受取基板の実際の移転領域Zreに移転して、中央領域Zcは前記ダイによって完全に覆われ、周辺領域Zpは前記ダイによって覆われない自由表面を有し、
-エッチングマスクを一方で前記ダイのセグメント上に堆積させ、他方で実際の移転領域Zreの周囲に堆積させ、
-エッチングマスクで被覆されていない前記ダイの自由部分をドライエッチングして、周辺領域Zpの自由表面を閾値Pth以下の深さPsgv
(a)までエッチングすることにより、前記ダイから光電子部品を製造する。
【0008】
以下は、この製造方法の特定の好ましいが非限定的な態様である。
【0009】
前記第1集積導波路は、前記上面に対して、予め設定された閾値Pthよりも小さい間隔egap
(1)を有していてもよい。間隔は、受取基板の平面に直交する軸に沿って規定される。
【0010】
前記受取基板は、前記第2集積導波路に重ね合わされ、光学的に結合され、少なくとも前記実際の移転領域Zreに位置し、前記上面に対して予め設定された閾値Pthよりも小さい間隔egap
(3)を有する第3集積導波路を含んでいてもよい。第3導波路は、egap
(1と等しい間隔egap
(3)を有することができる。
【0011】
前記ダイを製造する工程の後、前記ダイは、それぞれ少なくともLc+2dip、lc+2dipに等しい初期寸法Lv(i)、lv(i)を有することができる。
【0012】
前記実際の移転領域Zreが、少なくともLc+4dip、lc+4dipに等しい寸法Lre、lreを有することができる。
【0013】
製造方法は、前記光電子部品を製造する工程の前に、ウェットエッチングによって前記ダイの成長基板を除去する工程を含み、前記ウェットエッチングによって、ゼロでない距離dsglにわたって、前記受取基板に平行な平面内で前記ダイの横方向のオーバーエッチングを生じ、前記ダイが前記距離dsglに基づいてさらに予め設定された初期寸法Lv(i)、lv(i)を有する。
【0014】
製造方法は、同一の前記ダイから複数の光電子部品を製造する工程を含み、各光電子部品が対応する前記第1集積導波路に結合される。
【0015】
前記光電子部品は、レーザダイオード、フォトダイオード又は電気光学変調器であってもよい。
【0016】
前記ダイは、III-V族半導体化合物に基づいて作製することができる。
【0017】
前記光電子部品は、DFBレーザダイオードであってもよく、ブラッグミラーが前記第1導波路内に配置される。
【0018】
前記光電子部品は、DBRレーザダイオードであってもよく、2つのブラッグミラーが前記レーザダイオードの光キャビティを囲み、前記第1導波路の一端にそれぞれ結合された前記第2導波路内に配置される。
【0019】
製造方法は、複数のフォトニックチップを同一の受取基板からの同時に製造を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の他の態様、目的、利点及び特徴は、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、より明確に明らかになるであろう。この説明は、添付図面を参照して、非限定的な例として与えられる。
【
図1A】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図1B】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図1C】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図1D】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図1E】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図1F】集積導波路の局所的な構造劣化を見ることができる、少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の一例の様々な工程を示す概略及び部分断面図である。
【
図2A】中央領域Zc、ターゲット移転領域Zr
c、及び実際の移転領域Zr
eを見ることができる、受取基板に移転されたダイの上方からの概略的及び部分的な図である。
【
図2B】成長基板をウェットエッチングする工程の前の、実際の移転領域Zr
eにおけるダイの2つの位置についての、受取基板に移転されたダイの2つの例の上方からの概略的及び部分的な図である。
【
図2C】成長基板をウェットエッチングする工程の後の、受取基板に移転される、
図2Bに示されるようなダイの2つの例の上方からの概略的及び部分的な図である。
【
図3A】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3B】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3C】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3D】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3E】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3F】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3G】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3H】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【
図3I】第1及び第2集積導波路の局所的な構造劣化を回避することができる、一実施形態に係る少なくとも1つのフォトニックチップの製造方法の様々な工程を示す概略的及び部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図及び説明の残りの部分では、同一又は類似の要素が同じ参照符号で参照されている。加えて、種々の要素は、図を明確にするために、図示されていない。さらに、様々な実施形態及び変形例は、互いに排他的ではなく、一緒に組み合わせることができる。特に明記しない限り、用語 「実質的に(substantially)」、「約(about)」及び「~程度(of the order of)」は、10%以内、好ましくは5%以内を意味する。さらに、用語「...と...の間で構成される」及び同等表現は、別段の記載がない限り、限界値を含めて理解されるべきである。
【0022】
本発明は、機能化された受取基板に移転された所与のダイから1つ以上のフォトニックチップを製造する方法に関する。
【0023】
フォトニックチップは、受取基板上に載置され、受取基板内に配置された集積導波路に光学的に結合された少なくとも1つの光電子部品を含む光電子デバイスである。この導波路は、集積フォトニック回路の一部を形成する。
【0024】
ダイは、1つ以上の光電子部品を製造することを意図した半導体セグメントを含み、この半導体セグメントは、成長基板からエピタキシによって得られる。ダイは、受取基板に平行な面内の初期寸法(Lv(i)、lv(i))が1~数平方ミリメートル程度であり、厚さが数十~数百ミクロン程度である。ここで、ダイの長さをL、その幅をlとする。ダイは、多角形の初期形状、例えば正方形又は長方形の形状、又は円形又は楕円形の形状を有し得る。
【0025】
光電子部品は、特に、レーザダイオード又はフォトダイオードであり得る。これは、半導体に基づいて作製されており、すなわち、主に当該半導体を含む。従って、Inは、半導体を含む種々の半導体化合物からなる薄層の積層体を含み得る。好ましくは、光電子部品はIII-V型であり、InP又はGaAsに基づいて作製され得る。ダイはIII-Vダイと呼ばれる。光電子部品は、nドープ層、Pドープ層、及び量子井戸を含む中間活性層から形成されたヘテロ構造を含むことができる。
【0026】
受取基板は、基板に集積された、すなわち、受取基板の上面の上又は下に生成された少なくとも1つの導波路を含むという意味で機能化されていると言われる。集積フォトニック回路を形成するように、互いに光学的に結合された他の受動光学部品(マルチプレクサ/デマルチプレクサ、光ファイバーカプラなど)及び/又は能動光学部品(変調器)を含むこともできる。受取基板は、SOI基板であってもよく、すなわち、シリコンの薄層とシリコンからなるキャリア基板とを含み得、その間に、(埋め込み酸化物用)BOXと呼ばれる酸化物層が挿入される。薄いシリコン層は、ダイを受取基板の上面に結合させることができる薄い層、例えば、分子接着による結合の場合には酸化物層で覆われてもよい。
【0027】
一般に、フォトニックチップは、各々が1つの集積導波路に結合されたレーザダイオード、及び、例えば、変調器、少なくとも1つのマルチプレクサ、並びに光ファイバーへの結合器が見られる送信器Txであってもよい。フォトニックチップはまた、カプラ、デマルチプレクサ、及びフォトダイオードを含む受信器Rxであってもよい。また、レーザダイオードとフォトダイオードの両方を含む送受信器であってもよい。説明の残りの部分では、単に例示のために、フォトニックチップは、集積フォトニック回路の第1導波路に光学的に結合された少なくとも1つのレーザダイオードを含む送信器であり、該レーザダイオードはIII-V化合物からなり、この導波路は、例えばSOI型のシリコンに基づいて作製された受取基板に集積される。
【0028】
さらに、製造方法は、1つ以上の光電子部品を製造するために、ドライエッチングによってダイを構成する少なくとも1つの工程を用いる。ドライエッチングは、ダイの自由表面、すなわちエッチングマスク(ハードマスクとも呼ばれる)によって保護されていない表面のイオン衝撃からなる。それは本質的に物理的エッチングであり、高度に異方性の特性を有する。したがって、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)又は誘導結合プラズマRIE(ICP-RIE)の問題であってもよい。
【0029】
図1A~1Fは、フォトニックチップ1の製造方法の一例の様々な工程を示し、ダイ10のドライエッチングの工程の間に、光電子部品に光学的に結合された集積導波路23の局所的な構造劣化を見ることを可能にする。この例では、フォトニックチップ1はここでは送信器であり、ダイ10は少なくとも1つのレーザダイオードを形成することを意図している。ダイ10はIII-V型であり、InPで形成され、受取基板20はSOI型である。
【0030】
XZ平面が受取基板20の平面に平行な平面であり、Z軸が集積導波路23の長手軸に沿って配向され、X軸が導波路23の幅に沿って配向され、Y軸が受取基板20からダイ10に向かって配向される直交三次元直接座標系XYZがここで定義され、説明の残りで参照される。
【0031】
図1Aを参照すると、光電子部品、ここではレーザダイオードが形成されるダイ10が製造される。ダイ10は、ここでは、InPからなる成長基板11と、ここではPドープInPからなる第1導電型にドープされた半導体層と、InGaAsP/InAsPからなる量子井戸を含む活性層13と、ここではnドープInPからなる第1導電型とは反対の第2導電型にドープされた半導体層14と、を含むスタックから形成される。
【0032】
ダイ10は、XZ平面内の初期寸法(Lv(i)、lv(i))、すなわち、Z軸に沿った初期長さLv(i)及びX軸に沿った初期幅lv(i)を有する。これらの初期寸法(Lv(i)、lv(i))は、ここでは、ウェットエッチングによる成長基板11の除去中に生じるダイ10の横方向のオーバーエッチングdsglと、ダイ10の所望の最終寸法(Lv(f)、lv(f))に依存する。最終寸法(Lv(f)、lv(f))は、光電子部品を形成するために行われるドライエッチングの工程前のダイ10の寸法に対応する。例として、所望の最終寸法(Lv(f)、lv(f))は1×1mm2であり、横方向オーバーエッチングdsglは、ここでは100μm程度である。したがって、初期寸法(Lv(i)、lv(i))は、ここでは少なくとも1.2×1.2mm2に等しい。最終寸法(Lv(f)、lv(f))が1×1mm2であることは、特に、国際公開第2018/087485号明細書に明示されているように、複数のリッジレーザダイオードを同一のダイ10から製造することを可能にし、各レーザダイオードは、例えば、約800μmの波長、約50μmの幅、約200μmのダイオード間間隔を有する。
【0033】
図1Bを参照すると、光電子部品に光学的に結合されることが意図された少なくとも1つの集積導波路23を含む受取基板20が製造される。ここで、基板はSOI基板である。それは、例えばシリコンで作製され、数百ミクロン程度の厚さを有するキャリア基板(不図示)と、キャリア基板を覆う埋め込み酸化物(BOX)の層21と、集積導波路23とを含む。ここで、導波路23は、シリコンからなるコアを有し、酸化物で囲まれている。この例では、薄い酸化物層22で被覆され、特に、ここでは、受取基板20の上面20aを画定する、シリコン酸化物からなる結合層を含む。それは、数十ナノメートル程度の厚さ、例えば、約20nm~100nmの間の厚さを有する。変形例として、この結合層が存在しないことが可能である。導波路23、より正確にはその上面は、受取基板20の上面20aからY軸に沿って距離e
gapだけ離れており、それは0(酸化物層22が導波路23の上方にない)から、例えば、数十ナノメートルまで含まれ得る。
【0034】
また、受取基板20の上面20aには、移転工程後にダイ10が配置される領域であるターゲット移転領域Zrcが形成されている。ここで、このターゲット移転領域Zrcは、ダイ10の初期寸法(Lv(i)、lv(i))と同じ寸法を有する。集積導波路23は、ターゲット移転領域Zrcの内外を連続的に延びている。
【0035】
図1Cを参照すると、次に、ダイ10は、集積導波路23を覆うように、ターゲット移転領域Zr
c内の受取基板20に移転される。ダイ10は、酸化物/酸化物直接結合によって受取基板20に固定される。しかしながら、使用される移転装置に関連する位置決めの不確実性d
ipのために、ダイ10は正確にはターゲット移転領域Zr
cに配置されず、例えば移転装置の仕様に示される所定の値d
ipのオフセットを有する。この例では、+Z方向に300μmの位置決めオフセットd
ipで移転される。したがって、ターゲット移転領域Zr
cにおいて、受取基板20は自由表面25、すなわちダイ10によって覆われない表面を有する。さらに、ダイ10は、ターゲット移転領域Zr
cの外側に位置するセグメントを含む。
【0036】
図1Dを参照すると、次に、成長基板11は、ここでは、塩酸中でのウェットエッチングによって除去され、これは、選択的には機械的薄層化によって先行され、ここでPドープ半導体層12が解放される。このウェットエッチングの工程は、ダイ10がここでは1×1mm
2に等しい最終寸法(Lv
(f)、lv
(f))を有するように、ここでは、XZ平面(オーバーエッチングの値d
sglは、例えば約100μmと等しい)において等方的にダイ10の横方向のオーバーエッチングを伴う。
【0037】
図1Eを参照すると、例えば窒化シリコンからなるハードマスク31が、一方ではターゲット移転領域Zr
cを取り囲むように、他方では光電子部品を形成することを意図したダイ10のセグメントを被覆するように堆積される。ハードマスク31は、XZ平面におけるダイ10の境界までは延びていないことが分かる。したがって、受取基板20は、ターゲット移転領域Zr
cにおいて、ハードマスク31とダイ10との間に位置する自由表面25を有する。さらに、ハードマスク31は、ターゲット移転領域Zr
cを越えて位置するダイ10のセグメントを覆う。
【0038】
図1Fを参照すると、ダイ10は、光電子部品を製造するために構成される。このため、ドライエッチングを行い、ダイ10のハードマスク31が塗布されていない部分を除去する。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)であり得る。この例では、それは本質的に異方性であり、ここでは実質的にゼロの横方向オーバーエッチングをもたらす。
【0039】
本発明者らは、ダイ10の位置決めの不確実性dipが、ターゲット移転領域Zrcにおける集積導波路23の局所的な構造劣化をもたらす可能性があることを観察した。具体的には、この例では、受取基板20の自由表面25は、深さPsgvまでエッチングされ、その値は、エッチングの動作条件及びエッチングされる材料の性質に著しく依存する。この垂直オーバーエッチングの値Psgvは、導波路23と受取基板20の上面20aとの間の間隔egapよりも大きいことが分かる。垂直オーバーエッチングの深さPsgvは、約75nmの値に達することがあり、間隔egapがこの値Psgvよりも小さい場合、集積導波路23の少なくとも部分的なエッチングをもたらす。このように、集積導波路は、フォトニックチップ1の性能を低下させる可能性のある局所的な構造劣化を受ける。さらに、集積導波路23のこの局所的な劣化は、製造方法が、例えばnドープInP半導体層14の構造化中に、ドライエッチングの少なくとも1つの追加工程を含む場合に、強調され得る。また、例えば約75nmの値の受取基板20の新たな垂直オーバーエッチングが生じ、集積導波路23の構造の局所的な劣化を悪化させる。
【0040】
さらに、
図1Fに示すように、ターゲット移転領域Zr
cからのダイ10のオフセットは、1つ以上の望ましくない壁(wall(s))又はパッド(pad(s))の形成をもたらす。三次元トポロジーのこれらの寄生領域は、リソグラフィ及びエッチングの工程であっても、薄い層を堆積する(特にバイアス電極の製造)工程であっても、製造方法の後続の工程において破壊を引き起こす可能性がある。
【0041】
次に、一実施形態によるフォトニックチップ1の製造方法について、
図2A~
図2C及び
図3A~
図3Iを参照して説明する。この方法によれば、受取基板20の垂直オーバーエッチング中に、1つ以上の集積導波路(光電子部品に直接又は間接的に結合されている光電子部品)が劣化するリスクを回避することができる。
【0042】
図2Aを参照すると、寸法(Lc、lc)の中央領域Zcが受取基板20の上面20a上に画定され、1つ以上の光電子部品が製造されることを可能にし、この中央領域Zcは、中央領域Zcに関する位置決めの不確実性d
ipのためにダイ10の実際の位置がどのようなものであっても、移転工程に続いてダイ10によって完全に覆われることが意図される。この例では、中央領域Zcの寸法(Lc、lc)は、ここでは1×1mm
2であり、複数のリッジ型ダイオードを製造することができる。
【0043】
ダイ10は、ウェットエッチングによって成長基板11を除去する工程の後、少なくとも(Lc、lc)に等しい最終寸法を有することが望ましい。したがって、ターゲット移転領域Zrcは、成長基板11のウェットエッチング中に生じる横方向オーバーエッチングに関連する距離dsglだけ増加した中央領域Zcに対応する。したがって、このターゲット移転領域Zrcは、中央領域Zcを中心とし、少なくとも(Lrc、lcc)に等しい寸法(Lc+2dsgl、lc+2dsgl)を有する。
【0044】
ターゲット移転領域Zrcに関するダイ10の位置決めの不正確性、ここでは値dipが300μmであることを考慮すると、ダイ10は初期寸法(Lv(i)、lv(i))が少なくとも(Lrc+2dip、lrc+2dip)に等しく、したがって少なくとも(Lc+2dsgl+2dip、lc+2dsgl+2dip)に等しく、すなわちここでは少なくとも1.8×1.8mm2に等しい。したがって、実際の移転領域Zre(有効移転領域(effective transfer region)Zreとも呼ばれる)は、ターゲット移転領域Zrcについての位置決めの不確実性dip考慮すると、移転工程後にダイ10が完全に配置される領域であると定義することができる。したがって、この実際の移転領域Zreは中央領域Zcを中心とし、寸法(Lre、lre)は少なくとも(Lc+2dsgl+4dip、lc+2dsgl+4dip)に等しく、すなわちここでは少なくとも2.4×2.4mm2に等しい。
【0045】
換言すれば、実際の移転領域Zreは、中央領域Zcを取り囲む受取基板20の領域であり、所定の位置決めの不確実性性dip、ここでは成長基板11のウェットエッチングに関連する所定の横方向オーバーエッチングdsglが与えられると、ダイ10が実際に移転される。従って、ダイ10は、この領域Zreの外側に部分的には位置しないという意味で、この実際の移転領域Zre内に完全に位置する。
【0046】
また、予め規定された初期寸法(Lv(i)、lv(i))のダイ10を実際の移転領域Zreに移転することにより、移転工程後、また、成長基板11をウェットエッチングする工程後に、中央領域Zc全体が確実にダイ10で覆われるようになる。換言すれば、中央領域Zcは、ダイ10によって覆われていない自由表面を含まない。中央領域Zcは、実際の移転領域Zreの周辺境界からdsgl+2dipの値の距離にある周辺境界によって画定される。
【0047】
周辺領域Zpは、中央領域Zcを囲む実移転領域Zreの領域である。したがって、移転工程の後、ダイ10によって部分的にのみ覆われることが意図される。したがって、いわゆる自由表面25、すなわち、ダイ10によって覆われない表面を有することが意図されており、それは、製造方法によって使用されるドライエッチングの工程において、予め設定された閾値深さPthの垂直オーバーエッチングを受ける。
【0048】
図2Bは、成長基板11をウェットエッチングする工程の前の、所定の実際の移転領域Zr
eにおけるダイ10の位置決めの2つの例を示す。一例では、ダイ10は、実際の移転領域Zr
eのコーナー(左上コーナー)に配置され、他の例では、反対のコーナー(右下コーナー)に配置される。なお、ダイ10の位置決めの不確実性がどのようなものであっても、ダイは常に中央領域Zc、ここではまたターゲット移転領域Zr
cをカバーしている。周辺領域Zpは、ドライエッチング工程において垂直オーバーエッチングを受けやすい自由表面25を有する。
【0049】
図2Cは、ダイ10の位置決めの2つの例を示しており、これらは
図2Bに示されている例の、成長基板11をウェットエッチングする工程の後である。したがって、ダイ10は、初期寸法(Lv
(i)、lv
(i))から、値d
sglだけ小さい最終寸法(Lv
(f)、lv
(f))となる。ここで、ダイ10は、再び中央領域Zcを全体的に覆うが、周辺領域Zpを部分的にしか覆っていない。したがって、垂直オーバーエッチングを受ける可能性のある自由表面25が存在する。
【0050】
図3A~
図3Iは、本実施形態による製造方法の様々な工程を示しており、光電子部品に結合された集積導波路の構造の局所的な劣化を回避することができる。
【0051】
図3Aを参照すると、ダイ10が製造される。ダイは、上述したように、InPからなる成長基板11、任意選択的にInGaAs(不図示)からなる犠牲層、PドープInPからなるドープ半導体層12、例えばInAsP/InGaAsPからなる量子井戸からなる活性層13、及びnドープInPからなるドープ半導体層14を含む。初期寸法(Lv
(i)、lv
(i))は、中央領域Zcの寸法Lc、lc(ここでは約1×1mm
2)、位置決めの不確実性d
ip(ここでは約300μm)、及び横方向オーバーエッチングd
sgl(ここでは約100μm)を考慮している。換言すれば、ダイ10の初期寸法(Lv
(i)、lv
(i))は、少なくとも(Lc+2d
ip+2d
sgl)×(lc+2d
ip+2d
sgl)に等しく、すなわち、ここでは少なくとも約1.8×1.8mm
2に等しい。
【0052】
図3Bを参照すると、受取基板20が製造される。ここでは、例えばシリコンからなるキャリア基板(不図示)と、BOX酸化物層21と、少なくとも2つの集積導波路23、24と、導波路23を受取基板20から離間させる酸化物層22とを含む。より正確には、受取基板20は、
-XZ平面内の中央領域Zcのみに位置し、受取基板20の上面20aに対してY軸に沿った間隔e
gap
(1)が閾値P
th以下である、光電子部品に光学的に結合されることが意図された第1導波路23と、
-XZ平面内の少なくとも周辺領域Zpに位置し、受取基板20の上面20aに対するY軸に沿った間隔e
gap
(2)が閾値P
thより大きい、Y軸に沿って重ね合わされ、第1導波路23に光学的に結合された少なくとも1つの第2導波路24と、
を含む。
【0053】
第1導波路23は、光電子部品に光学的に結合されることが意図されており、XZ平面内の中央領域Zcのみに存在する。換言すれば、周辺領域Zpには延在しない。XZ平面内でのその配置のために、また、レーザダイオードへの光学的結合を最適化するように定義される、受取基板20の上面20aに対する潜在的に小さい間隔egap
(1)にもかかわらず、所定の位置決めの不確実性性dipの結果として領域Zre内のダイ10の実際の移転位置がどのようなものであっても、また、成長基板11のウェットエッチング中に、所定の値dsglの横方向のオーバーエッチングの可能性がどのようなものであっても、受取基板20の垂直オーバーエッチングによる局所的な構造劣化を受けない。具体的には、周辺領域Zpに位置しないので、ドライエッチングに伴う垂直オーバーエッチングに対して安全である。
【0054】
第2導波路24は、第1導波路23上にY軸に沿って重畳され、光学的に結合されている。それは、少なくとも周辺領域Zp内のXZ平面内にある。ここでも、一方では移転領域Zr
e
の外側から、他方では第1導波路23との光結合を最適化できる距離にわたって中央領域Zcまで延びている。その間隔egap
(2)は閾値Pthよりも大きいので、周辺領域Zpにあるにもかかわらず、受取基板20の垂直オーバーエッチングに対して安全である。Pthは、製造方法で使用される1つ以上の様々なドライエッチングの工程の結果として周辺領域Zpで受ける累積的な垂直オーバーエッチングの最大値と定義される。
【0055】
図3Cを参照すると、ダイ10は、実際の移転領域Zr
e内の受取基板20に移転される。この例では、ダイ10は、ここでは約300μmに等しい値d
ipだけ+Z方向にオフセットされる。従って、上述したように実際の移転領域Zr
e内に位置したままであり、必然的に中央領域Zcを完全に覆っている。したがって、周辺領域Zpにおける受取基板20の表面は自由表面25、すなわちダイ10によって覆われない表面である。
【0056】
図3Dを参照すると、次に、ここではウェットエッチングによって成長基板11を除去し、Pドープ半導体層12を解放する。このウェットエッチングの工程は、ここでは、XZ平面において、等方的な態様のダイ10の横方向のオーバーエッチングを伴い、値d
sglがここでは約100μmに等しく、ダイ10は、寸法(Lc+2d
ip、lc+2d
ip)、ここでは1.6×1.6mm
2に等しい寸法を有する。
【0057】
図3Eを参照すると、例えば窒化シリコンからなるハードマスク31が、実際の移転領域Zr
eを取り囲む受取基板20の表面を連続的に被覆し、光電子部品を形成することを意図するダイ10のセグメント(中央領域Zcに位置する)を被覆するように堆積される。これにより、受取基板20の表面は、実際の移転領域Zr
eの外側ではハードマスク31によって保護されているが、周辺領域Zpは、自由表面25、すなわちハードマスク31によって保護されていない面を有している。対照的に、中央領域Zcは、依然としてダイ10によって完全に覆われている。さらに、ハードマスク31をターゲット移転領域Zr
cの周囲ではなく実際の移転領域Zr
eの周囲に堆積させることにより、
図1Fに示すような望ましくない壁及び/又はパッドの生成を回避することができる。
【0058】
図3Fを参照すると、ダイ10は、光電子部品を製造するために構成される。このため、ドライエッチングを行い、ダイ10のハードマスク31が塗布されていない部分を除去する。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)であり得る。この例では、それは本質的に異方性であり、ここでは実質的にゼロの横方向オーバーエッチングをもたらす。ドライエッチングは、PドープInP半導体層12及び活性層13の局所エッチングを保証し、nドープInP半導体層14上で停止する。次に、ハードマスク31を除去する。
【0059】
周辺領域Zpが自由表面25を有する限り、ドライエッチングは、距離Psgv
(a)にわたって受取基板20の自由表面25の垂直オーバーエッチングをもたらす。この例では、製造方法は、2つの工程のドライエッチングを含み、各工程は、値Psgv
(a)及びPsgv
(b)の垂直オーバーエッチングをもたらす。ここで、閾値Pthは、Psgv
(a)とPsgv
(b)との和にほぼ等しい。閾値Pthは、Psgv
(a)及びPsgv
(b)がそれぞれ75nm程度であれば、実質的に150nmとなる。
【0060】
しかし、第1導波路23が中央領域Zcに位置している限り、ダイ10の存在によって保護されるため、垂直オーバーエッチングPsgv
(a)による損傷を受けない。さらに、第2導波路24が周辺領域Zpに位置している限り、間隔egap
(2)がPthよりも大きい場合、それに到達するのに十分である垂直オーバーエッチングPsgv
(a)によっても損傷を受けない。
【0061】
図3Gを参照すると、電気コンタクト15がPドープInP半導体層12上に形成される。この電気コンタクト15は、電気ポンプ電流をレーザダイオードに注入することを可能にする。
【0062】
図3Hを参照すると、第2ハードマスク32が、nドープInP半導体層14を構成するために堆積される。ハードマスク32は、例えば窒化シリコンからなり、電気コンタクト15、p型半導体層12、活性層13及びn型半導体層14の周辺部を覆う。この例では、ハードマスク32は、実際の移転領域Zr
eを取り囲むように延在しているが、これは、第2導波路24がP
thよりも大きい間隔e
gap
(2)を有する場合は必要ではなく、次のドライエッチング中の局所的な劣化に対して安全である。実際の移転領域Zr
eの外側の保護は、集積フォトニック回路がP
sgv
(b)よりも小さい間隔e
gapを有する導波路を含む場合に有用である。
【0063】
図3Iを参照すると、nドープInP半導体層14は、レーザダイオードの製造を完了するために構成される。このため、再度ドライエッチングを行い、ハードマスク32で覆われていないn型InP半導体層14のセグメントを除去する。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)であり得る。この例では、それは本質的に異方性であり、ここでは実質的にゼロの横方向オーバーエッチングをもたらす。ドライエッチングにより、n型ドープInP半導体層14が局所的にエッチングされる。次に、ハードマスク32を除去する。
【0064】
ドライエッチングは、値Psgv
(b)の、受取基板20の自由表面25のさらなる垂直オーバーエッチングを引き起こし、このオーバーエッチングは、先行する垂直オーバーエッチング値Psgv
(a)に加えられる。そして、受取基板20の周辺領域Zpの自由表面25の垂直オーバーエッチングは、閾値Pthに達する。
【0065】
しかし、第1導波路23が中央領域Zcに位置している限り、値Psgv
(b)のこの新たな垂直オーバーエッチングによって損傷を受けることはない。また、第2導波路24が周辺領域ZpにPthよりも大きい間隔egap
(2)で配置されている限り、この値Psgv
(b)の垂直オーバーエッチによる損傷も受けない。
【0066】
このように、製造方法は、受取基板20の自由表面25の垂直オーバーエッチングを誘発する、使用される1つ以上の様々なドライエッチングが、集積導波路、特に第1及び第2集積導波路を劣化させることを防止することを可能にする。これにより、フォトニックチップ1の性能が維持される。
【0067】
特定の実施形態について説明した。種々の変形及び改変は、当業者には明らかであろう。
【0068】
従って、所定のダイ10は、複数のレーザダイオードを製造することを可能にする。一例として、各レーザダイオードは、リッジ型ダイオードであってもよく、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)であってもよい。
【0069】
製造方法は、同じ受取基板20上に複数のフォトニックチップを製造することを可能にする。そして、受取基板20をダイシングしてフォトニックチップを個片化する工程を含む。
【0070】
図3A~
図3Iの例では、第2導波路24もまた、実際の移転領域Zr
eから延在する。変形例として、第2導波路24は、主に周辺領域Zp内に位置することができ、集積フォトニック回路は、Y軸に沿って重ね合わされ、第2導波路24に光学的に結合され、閾値P
thよりも小さい受取基板20の上面20aに対する間隔e
gap
(3)を有する少なくとも1つの第3導波路を含み得る。この第3導波路は、第1導波路23と同一平面であってもよい。そして、それは、実際の移転領域Zr
eの外側に配置され、ドライエッチングの様々な工程によって引き起こされる受取基板20の垂直方向のオーバーエッチングから保護される。
【0071】
光電子部品がレーザダイオードである場合には、ハイブリッドであってもよく、受取基板20内に配置されたレーザ源の光キャビティを囲む反射器を含む。従って、分布ブラッグ反射器(DBR)レーザの場合、光キャビティは、第1導波路23内に配置された2つのブラッグ格子によって、又は、第2(又は第3)導波路内の変形として、限定される。より正確には、2つの第2導波路は、第1導波路23に光学的に結合され、各々は、1つのブラッグミラーを含む。分布帰還(DFB)レーザの場合、所与のブラッグ格子が、第1導波路23内で、光キャビティの全長にわたって延びる。