(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】超音波探傷装置および超音波探傷方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/28 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
G01N29/28
(21)【出願番号】P 2020185119
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千星 淳
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真興
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-132402(JP,A)
【文献】特開2016-182378(JP,A)
【文献】特開平02-132368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
A61B 8/00 - A61B 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサと、
前記超音波センサを駆動するための超音波探傷装置と、
受信した超音波信号を信号処理する信号処理装置と、
前記超音波センサの超音波送信面と検査対象との間に介在し、これらの接触を確保するための柔軟性のある音響伝播媒質と、
前記超音波センサと前記音響伝播媒質を保持し、前記検査対象へ押し付ける押し付け機構とを具備し、
前記信号処理装置は、前記超音波センサを前記検査対象に押し付けた際にその接触の状態を、前記音響伝播媒質のエコーの状態で判断する
接触確認を実施し、当該接触確認時には、検査時とは異なる多重エコーの信号レベルが高くなるような高いゲインを設定する
ことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
超音波センサと、
前記超音波センサを駆動するための超音波探傷装置と、
受信した超音波信号を信号処理する信号処理装置と、
前記超音波センサの超音波送信面と検査対象との間に介在し、これらの接触を確保するための柔軟性のある音響伝播媒質と、
前記超音波センサと前記音響伝播媒質を保持し、前記検査対象へ押し付ける押し付け機構とを具備し、
前記信号処理装置は、前記超音波センサを前記検査対象に押し付けた際に、その接触の状態を、前記音響伝播媒質のエコーの状態で判断する超音波探傷装置において、
前記超音波センサと、前記音響伝播媒質とを保持する保持具を有し、
前記保持具は、前記超音波センサを押し付けていない場合は超音波を反射して前記音響伝播媒質内で多重エコーを生じさせ、前記超音波センサを押し付けて前記音響伝播媒質の厚さの変化に応じて当該超音波センサが動いた際に前記検査対象に超音波が伝播する構造を有する
ことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項3】
請求項1
または2記載の超音波探傷装置において、
前記信号処理装置は、予め求めた前記音響伝播媒質の多重エコーが出現する時間のうち、n回目(nは2以上の整数)の多重エコー受信時間を中心とした範囲をゲート時間として、前記ゲート時間の範囲内の多重エコー信号レベルがしきい値以下である場合に、前記超音波センサの接触が確保されていると判断することを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項4】
請求項1
または2記載の超音波探傷装置において、
前記信号処理装置は、予め求めた前記音響伝播媒質の多重エコーが出現する時間のうち、nからm回目(n、mは2以上の整数)の多重エコー受信時間のそれぞれを中心とした範囲をゲート時間として、各前記ゲート時間の範囲内の多重エコー信号レベルをしきい値と比較して、各ゲート時間の範囲内にしきい値以上の多重エコー信号がない場合に、前記超音波センサの接触が確保されていると判断することを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の超音波探傷装置を用いた超音波探傷方法であって、
前記超音波センサと、前記音響伝播媒質と、前記押し付け機構とを、発電機内に挿入して発電機ロータを検査することを特徴とする超音波探傷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波探傷装置および超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探傷技術は、超音波を検査対象に送信して、受信された反射信号に基づいて検査対象内部における欠陥の有無を非破壊で検知する技術であり、様々な分野で欠かせない検査技術となっている。
【0003】
発電機におけるロータの欠陥検査は、発電機からロータを抜き、熟練した検査員が超音波センサを、検査対象部位の上を走査させ、検査対象内部を伝播した超音波信号を表示する超音波探傷器を目視しながら、超音波信号の変化から欠陥の有無を判定している。
【0004】
しかしながら、発電機からロータを抜くこと、また検査終了後に組み立てを行うためには多くの時間が必要であり、発電所の稼働率向上の点からも効率化が求められている。現在、発電機点検の効率化のために発電機ロータとステータの隙間にロボットを挿入して発電機ロータを検査するなど様々な技術が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したとおり、従来は発電機からロータを抜いて検査員が直接ロータにアクセスして目視可能な状態で探傷を実施しているのに対して、発電機の点検の効率化および定期検査の期間短縮のためには、ロータを抜かないで、ロータとステータ間に直接ロボットを挿入して検査を実施する検査装置が提案されている。この検査装置では、例えば、主にカメラによる目視検査代替や固定子鉄心の欠陥検出などを行う。しかし、この検査装置には、超音波探傷によりロータのティースやくさびの欠陥を自動で検出するような機能は有していない。
【0007】
また、発電機ロータのティース或いはくさびの欠陥を、ロータを抜かずに検出するための方法も提案されている。この方法では、複数のトランスデューサをアレイ状に配置し、ロボットによりロータのティースの上面に沿って移動しながら検査を実施するものである。この方法によれば、ロータのティースに欠陥がある場合には複数の場所から複数の探傷角度で検査することにより、自動で欠陥を検出する可能性を高めることができる。
【0008】
しかしながら、発電機ロータの表面は、通風孔など凹凸を有するものが多数あり、パルスエコートランスデューサを、発電機ロータの表面上を走査することは難しい。また、超音波探傷では一般的に接触媒質が必要であるが、接触媒質は発電機内にとって異物となるため完全な拭き取りを要求されることとなり、その実現が難しい。
【0009】
本発明は、このような従来の事情を考慮してなされたもので、発電機ロータのティース或いはくさびの欠陥を、ロータを抜かずに検出することのできる超音波探傷装置および超音波探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の超音波探傷装置は、超音波センサと、前記超音波センサを駆動するための超音波探傷装置と、受信した超音波信号を信号処理する信号処理装置と、前記超音波センサの超音波送信面と検査対象との間に介在し、これらの接触を確保するための柔軟性のある音響伝播媒質と、前記超音波センサと前記音響伝播媒質を保持し、前記検査対象へ押し付ける押し付け機構とを具備し、前記信号処理装置は、前記超音波センサを前記検査対象に押し付けた際にその接触の状態を、前記音響伝播媒質のエコーの状態で判断する接触確認を実施し、当該接触確認時には、検査時とは異なる多重エコーの信号レベルが高くなるような高いゲインを設定することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る超音波探傷装置の概略構成を示す図。
【
図2】第1実施形態に係る超音波探傷装置の要部概略構成を示す図。
【
図3】非接触時の超音波センサの状態と超音波信号の例を示す図。
【
図4】接触時の超音波センサの状態と超音波信号の例を示す図。
【
図6】非接触状態と接触状態の波形信号を説明するための図。
【
図7】接触状態を判断する工程を説明するためのフロー図。
【
図8】第2実施形態に係る超音波探傷装置の要部概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る超音波探傷装置および超音波探傷方法ついて、図面を参照して説明する。
【0013】
実施形態に係る超音波探傷装置は、発電機内に挿入して発電機ロータを検査するロボットに搭載可能で、超音波センサと、発電機ロータのティース或いはくさびとの接触を、液体の接触媒質なしに確保することが可能な構成となっている。
【0014】
本実施形態では、超音波センサと、発電機ロータのティース或いはくさびとの接触確保のために、超音波センサと発電機ロータのティース或いはくさびとの間に、超音波の伝播特性が良く容易に変形可能なゲルを配置する。また、超音波センサの移動は非接触で行い、移動後に超音波センサを、ゲルを介して発電機ロータのティース或いはくさびへ押し付けることで超音波センサの接触を確保する。この際、超音波センサの接触確認は重要であるが、目視できないため、超音波信号から超音波センサと発電機ロータのティース或いはくさびとの接触確認を実現する。
【0015】
(第1実施形態)
まず、
図1を参照して、第1実施形態に係る超音波探傷装置および超音波探傷方法について説明する。第1実施形態では、発電機ロータのティース或いはくさびを検査対象とするものとする。発電機ロータのティース或いはくさびの超音波探傷は、以下に示す(1)~(6)に示す処理を行うことが考えられている。
(1)超音波センサなどを搭載した検査ロボットを発電機ロータとステータ間に挿入する。
(2)検査ロボットを検査すべき位置へ移動する。
(3)所定の位置で、超音波センサを押し付ける。
(4)超音波信号を評価し欠陥の有無を記録する(評価および記録は自動化しても可)。
(5)超音波センサの押し付けを解除する。
(6)次の検査位置へ移動する。(3)以降を繰り返す。
【0016】
図1に発電機内に挿入する検査ロボット100の超音波探傷に関連する機器を抜き出して示した。
図1に示すように、検査ロボット100には、超音波センサ1と、押し付け機構4が搭載されている(なお、後述するように本実施形態では超音波センサ1とゲル材6を使用するが、ゲル材6を含む超音波センサ1全体を、単に超音波センサ1と言う場合がある)。一方、発電機の外側には、超音波探傷部2、信号処理部3、位置・押し付け制御部5が配置される。
【0017】
このような構成において、検査ロボット100を発電機ロータとステータ間に挿入し(1)、検査ロボット100を動かして所定の位置まで移動させ(2)、押し付け機構4を発電機ロータの外側から位置・押し付け制御部5によって制御して超音波センサ1を検査対象7である発電機ロータに押し付ける(3)。
【0018】
そして、発電機の外側に設けた超音波探傷部2から超音波センサ1へパルス電圧を印可し超音波101を送受信し、受信した信号を信号処理部3で処理することによって、検査対象7の超音波探傷を実施する(4)。所定箇所での超音波探傷終了後に、押し付けを解除し(5)、次の検査位置へ移動する(6)。この後、(3)~(6)の動作を繰り返すことで、発電機ロータの全長に渡っての検査を実現する。
【0019】
なお、検査ロボット100を所定の位置に制御するなど、検査ロボット100で発電機を検査するためには他の駆動機構及び制御機構などの構成要素が必要となるが、本発明と直接関係しない部分の構成に関しては
図1への記載は省略している。
【0020】
ここで、(4)にある「超音波信号を評価し」に関しては、超音波探傷が正しく実行されたか、すなわち超音波センサ1が検査対象7と確実に接触しているかを確認することが重要である。なお、一般の超音波探傷でも“カップリングチェック”といわれる検査対象の底面エコーの現れ方の確認など接触の確認は実施されている。本実施形態の例が一般の超音波探傷と異なる点は、超音波センサ1が発電機内に挿入されているために、超音波センサ1と検査対象7がどのように接触しているかを目視で確認することはできないことと、超音波センサ1を検査対象7に接触させるための液体の接触媒質が使えないことである。
【0021】
そこで、本実施形態では、
図2に示すように、超音波センサ1(一般に利用されているアクリルなどでできたシューを含む)の超音波送信面にさらにゲル材6でできた接触媒質を設けた構造の超音波センサ1を利用する。なお、ここで利用するゲル材6は、柔軟性を持ち、物性的に水と近いものを想定しており、検査対象7に押し付けると変形して検査対象7と密着するような性質を持つものである。そのため押し付けるだけで超音波101を検査対象7に入射することができ、カプラントのような液体の接触媒質が不要となる。ゲル材6としては、例えば、ハイドロゲルや超音波減衰の少ないゴム、こんにゃくなどを使用することができる。もちろんこれらの例以外のものも適用することができる。
【0022】
図3に超音波センサ1が検査対象7に押し付けられる前の状態と、その際の超音波信号の例を、
図4に超音波センサ1が検査対象7に押し付けられた際の状態と、その際の超音波信号の例を示す。なお、探傷方法として、検査対象7へは斜め方向に超音波101を入射する斜角探傷法を用いるものとする。
【0023】
図4に示すような構造で、検査対象7へ45°で超音波101を入射するためには、
図5に示すように、スネルの法則よりゲル材6中への入射角度は約19°となる(アクリルシューの音速:2700m/s、ゲル材6の音速:1500m/s、検査対象7(炭素鋼・横波):3200m/s とする)。したがって、ゲル材6中では超音波101は垂直に近く伝播することになるため、非接触時には
図3の下側に示したようなゲル材6の多重エコーが得られることになる。
【0024】
一方、超音波センサ1を検査対象7に押し付けた際にゲル材6と検査対象7とが密着すると、ゲル材6の厚さが薄くなるために多重エコーの間隔が狭くなること、および超音波101は検査対象7に入射し、ゲル材6の表面での反射成分は小さくなる。そのためゲル材6の多重エコー成分は小さくなり、
図4の下側に示したように多重エコーはほとんど観察されなくなる。
【0025】
この性質を利用して、予め押し付け開始前にゲルの多重エコーが現れると考えられる時間幅に対してゲートを設け、ゲート内の信号レベルにしきい値を設定して、押し付け時にゲート内の信号レベルがしきい値以下となった場合に正常に接触していると判断することができる。
【0026】
図6に非接触時と接触時の超音波信号の模式図を示す。
図6に示すように、非接触時にはゲル材6の多重エコーがt1、t2、t3・・・のように出現する。ここでt1、t2、t3・・・を使って信号処理部3で接触状態を判定するフローを
図7に示す。
【0027】
図7に示すように、先ず、事前に上述した非接触時におけるゲル材6の多重エコーが現れる時間t1、t2、t3・・・を測定する(
図7のステップ201)。
【0028】
次に、t2以降の任意の多重エコーが得られる点、例えばt3をゲート時間の中心と設定する。実際の超音波探傷試験では得られる時間にばらつきがあると考えられるため、接触を確認するためのゲート時間に幅を持たせて設定する。例えば、5MHzの超音波101を使う場合には、周期は200nsであるため前後1波長分をゲートとするためにはゲートの範囲をt3-200nsからt3+200nsと設定する。ゲート時間の幅は、実際の試験環境に依存するものであり、検査条件により適切な時間を設定するものとする。また、予め試験で得られたデータからしきい値(Th)を設定する(
図7のステップ202)。
【0029】
次に、実際に超音波探傷部2によって、超音波センサ1による超音波101の送受信(探傷)を行い、得られた超音波信号を信号処理部3に入力する(
図7のステップ203)。
【0030】
信号処理部3では、超音波センサ1からの超音波信号を処理し、上記で指定したゲート時間の範囲内の超音波信号の最大値を求める(
図7のステップ204)。
【0031】
次に、信号処理部3では、求めた最大値(S)と予め試験で設定したしきい値(Th)とを比較して(
図7のステップ205)、S<Thとなった場合に正常に接触が確保されていると判断し(
図7のステップ206)、一方、S<Thとなっていない場合は、接触異常と判断する(
図7のステップ207)。
【0032】
なお、
図6の下側に示すように、接触時にはゲル材6が薄くなるために多重エコーのスタート点が手前にずれ、多重エコーの間隔が短くなり、さらに検査対象7に超音波101が伝播するため超音波信号の減衰は早くなる。このため、非接触時に複数回ゲル材6を往復した後の多重エコーが得られる点(例えばt3)では、接触時にはゲル材6の多重エコーは消失しているものと考えられるため、上記のようにして接触状態の正常、異常を判断することができる。
【0033】
実際の試験での信号は、非接触時である
図3の下側に示す超音波信号例において、4回目の多重エコーが得られる白い四角で囲む22-24μs間をゲート範囲とし、信号レベル50%をしきい値とした場合には、押し付けた際に得られた信号を示す
図4では、ゲート内の超音波信号が50%以下であることから、正常に接触が確保されていると判断することができる。
【0034】
ここでは、ゲート時間をある1つの多重エコー信号に焦点をあてて設定したが、例えば複数の多重エコーが得られる点(t2、t、3、t4など)それぞれにゲートを設定して、各ゲート時間での多重エコー信号レベルを評価して接触を判定しても良い。例えば、多重エコーが出現する時間のうち、nからm回目(n、mは2以上の整数)の多重エコー受信時間のそれぞれを中心とした範囲をゲート時間として、各ゲート時間の範囲内の多重エコー信号レベルをしきい値と比較して、各ゲート時間の範囲内にしきい値以上の多重エコー信号がない場合に、超音波センサ1の接触が確保されていると判断するようにしても良い。また、実際の探傷では、欠陥を検出するために必要な超音波探傷部2のゲインは予め行う校正試験で決めることが一般的ではあるが、接触確認時は多重エコー信号が飽和しても問題はなく、接触確認時のみ探傷ゲインを大きく設定して多重エコーを明確に検出することも可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態では、超音波センサ1が発電機内に挿入されているために、超音波センサ1と検査対象7がどのように接触しているかを目視で確認することができず、また、超音波センサ1を検査対象7に接触させるための液体の接触媒質が使えないという条件下においても、超音波センサ1と検査対象7との接触状態を良好に保つことができる。したがって、発電機ロータのティース或いはくさびの欠陥を、ロータを抜かずに高精度で検出することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、発電機内のロータとステータとの間に検査ロボット100を挿入して発電機ロータを検査する構成を示したが、検査対象はこれに限定されるものではなく、全ての非破壊検査で適用可能な技術であり、とくに液体の接触媒質の使用に対して制限のある対象の超音波検査に有用である技術である。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態では、
図8に示すように、第1実施形態に記載したゲル材6及び超音波センサ1を保持する保持具8を設けて、保持具8の構造により非接触時のゲル材6の多重エコーが強く戻ってくるようにしたものである。保持具8の構造の例としては、
図8に示すように、超音波センサ1を押し付けることによりゲル材6がつぶれることと同期して超音波センサ1が保持具8内にて上下に可動するものである。
【0038】
図8(b)に示すように、ゲル材6を含む超音波センサ1は、検査対象7に押し付ける際にはゲル材6がつぶれることにより、ゲル材6内での超音波101の伝播経路は短くなる。そこで、
図8(a)に示すように、押し付ける前の状態では、ゲル材6を伝播した超音波101が保持具8の面にあたり強い反射信号が得られるが、超音波センサ1を押し付けた際には、超音波101が検査対象7に伝播する点には保持具8の面が存在しない構造とする。
【0039】
これにより、非接触時の多重エコーの信号レベルが強く出るため、非接触時と接触時の変化が大きく、接触状態を確実に検出できることとなる。なお、
図8に模式的に示した例では、接触状態の判定の精度向上を図ることが可能であるが、実際には超音波101の音場を考慮して保持具8を設計すべきである。また、本実施形態の構成を有効に使用するためには、非接触時のゲル材6の厚さをある程度厚く設定する必要がある。なお,ゲル材6の厚さとしては、例えば1mm程度から、数mm程度(例えば3mm程度)とすることが好ましい。
【0040】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1……超音波センサ、2……超音波探傷部、3……信号処理部、4……押し付け機構、5……位置・押し付け制御部、6……ゲル材(音響伝播媒質)、7……検査対象、8……保持具、100……検査ロボット、101……超音波。