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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】薬液容器及び揮散装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
B65D83/00 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020195332
(22)【出願日】2020-11-25
(65)【公開番号】P2022083796
(43)【公開日】2022-06-06
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】小林 諒子
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-103744(JP,A)
【文献】登録実用新案第3013955(JP,U)
【文献】特開2018-203286(JP,A)
【文献】特開2020-116111(JP,A)
【文献】特開2009-286442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0284655(US,A1)
【文献】特開2010-247849(JP,A)
【文献】意匠登録第1685011(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
A61L 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の前端辺を有し、この前端辺と直交する第1の方向に延びた筋状の模様を有する板状の底部と、
前記底部の前記前端辺に接続した平らな前壁部を含み、前記底部の外周部から上方に立設され、前記第1の方向の幅が前記第1の方向と直交し且つ前記底部と平行な第2の方向の幅より狭い扁平な筒状の胴部と、
前記胴部の前記底部と反対側に設けた開口部と、を有し、
薬液を収容した透光性を有する薬液容器。
【請求項2】
前記底部は、前記前端辺を1辺とする多角形状に形成されている、
請求項1の薬液容器。
【請求項3】
前記底部は、前記第1の方向の幅が前記第2の方向の幅より狭い扁平な多角形状に形成されている、
請求項2の薬液容器。
【請求項4】
直線状の前端辺を有し、この前端辺と直交する第1の方向に延びた筋状の模様を有する板状の底部と、前記底部の前記前端辺に接続した平らな前壁部を含み、前記底部の外周部から上方に立設され、前記第1の方向の幅が前記第1の方向と直交し且つ前記底部と平行な第2の方向の幅より狭い扁平な筒状の胴部と、前記胴部の前記底部と反対側に設けた開口部と、を有し、薬液を収容した透光性を有する容器と;
一部を前記容器の外方に放射状に突出させた状態で前記開口部を介して前記容器内に挿入配置され、前記容器内に収容した薬液に部分的に浸漬される複数本の棒状の揮散体と;
を有する揮散装置。
【請求項5】
前記底部は、前記前端辺を1辺とする多角形状に形成されている、
請求項4の揮散装置。
【請求項6】
前記底部は、前記第1の方向の幅が前記第2の方向の幅より狭い扁平な多角形状に形成されている、
請求項5の揮散装置。
【請求項7】
前記揮散体の本数は、前記底部の角の数と同じもしくは前記底部の角の数より少ない、
請求項5又は請求項6の揮散装置。
【請求項8】
前記容器と前記所定本数の揮散体をセットにして収容した収容体をさらに有する、
請求項7の揮散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬液を収容する薬液容器、及びこの薬液容器に収容した薬液を揮散させる揮散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤を揮散させる揮散装置として、例えば、液状の芳香剤(以下、薬液と称する)を収容した透明な容器の開口部に複数本の棒状の揮散体を差し込んだ揮散装置が知られている。この種の揮散装置では、薬液を複数本の棒状の揮散体により吸い上げて、容器の開口部から外方へ突出した各揮散体の突出部分から揮散させる。
【0003】
複数本の揮散体は、容器の開口部から外方に突出した部分を放射状に拡げた状態で容器に挿し込まれる。このように、揮散体を放射状に拡げて配置することにより、薬液の揮散効率を高めることができるとともに、揮散装置の見栄えを良くすることができる。
【0004】
揮散装置の見栄えを良くするため、容器自体に凸凹模様を付けた揮散装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された揮散装置は、円形の底部、横断面が楕円形の胴部、円筒形の首部、及び胴部と首部を接続した肩部を有し、底部と肩部に凸凹模様を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2019-214422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の揮散装置は、胴部が湾曲しているため、揮散装置を見る角度によっては、胴部を透過して見える底部の模様がわずかに歪んで見える場合がある。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、見栄えを良くすることができる薬液容器及び揮散装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薬液容器の一態様は、直線状の前端辺を有し、この前端辺と直交する第1の方向に延びた筋状の模様を有する板状の底部と、底部の前端辺に接続した平らな前壁部を含み、底部の外周部から上方に立設され、第1の方向の幅が第1の方向と直交し且つ底部と平行な第2の方向の幅より狭い扁平な筒状の胴部と、胴部の底部と反対側に設けた開口部と、を有し、薬液を収容する透光性を有する容器である。
【0009】
また、本発明の揮散装置の一態様は、直線状の前端辺を有し、この前端辺と直交する第1の方向に延びた筋状の模様を有する板状の底部と、底部の前端辺に接続した平らな前壁部を含み、底部の外周部から上方に立設され、第1の方向の幅が第1の方向と直交し且つ底部と平行な第2の方向の幅より狭い扁平な筒状の胴部と、胴部の底部と反対側に設けた開口部と、を有し、薬液を収容した透光性を有する容器と;一部を容器の外方に放射状に突出させた状態で開口部を介して容器内に挿入配置され、容器内に収容した薬液に部分的に浸漬される複数本の棒状の揮散体と;を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、見栄えを良くすることができる薬液容器及び揮散装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る揮散装置を示す外観斜視図である。
図2図2は、図1の揮散装置の容器を底部側から見た斜視図である。
図3図3は、図2の容器の底面図である。
図4図4は、図1の揮散装置の容器をF4-F4に沿って切断した断面図である。
図5図5は、図1の揮散装置を上方から見た平面図である。
図6図6は、図1の揮散装置の容器、揮散体、薬液ボトル、及びブリスター容器を示す分解斜視図である。
図7図7は、図1の揮散装置を矢印F7の方向(横)から見た側面図である。
図8図8は、図1の揮散装置を矢印F8の方向(正面)から見た正面図である。
図9図9は、図1の揮散装置の容器の底部に設けた模様の変形例を示す底面図である。
図10図10は、図1の揮散装置の容器の第1の変形例を示す横断面図である。
図11図11は、図1の揮散装置の容器の第2の変形例を示す横断面図である。
図12図12は、図1の揮散装置の容器の第3の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る揮散装置10について図面を参照して説明する。
図1に示すように、揮散装置10は、液状の芳香剤などの薬液Yを収容する容器20(薬液容器)と、複数本(本実施形態では6本)の棒状の揮散体30と、を有する。
【0013】
容器20は、ガラスや樹脂など、透光性を有する材料により形成することができる。本実施形態の容器20は、透明なガラスのブロー成形により形成した。すなわち、溶融したガラス材の塊を金型(図示せず)の中に配置して、ガラス材の内部に空気を送り込んで膨らませて、金型の内面形状にガラス材の外面を倣わせることにより容器20を形成した。このため、容器20の外側表面と内側表面との間の肉厚は不均一である。
【0014】
容器20は、略六角形の板状の底部22と、横断面が略六角形の筒状の胴部24と、端部に開口部21を有する略円筒状の首部28と、胴部24と首部28を接続した肩部26と、を一体に有する。首部28は、本発明に必須の構成ではなく、肩部26の上端に開口部21を設けてもよい。また、肩部26も、本発明に必須の構成ではなく、例えば図11に示す変形例のように、胴部24の上端に開口部21を設けてもよい。
【0015】
底部22の外周縁と胴部24の下端縁との間の接続部分、胴部24の上端縁と肩部26の下端縁との間の接続部分、及び肩部26の上端縁と首部28の下端縁との間の接続部分は、容器20の内面及び外面ともに、角の無いなだらかな曲面により形成されている。容器20は、開口部21以外、液密な構造を有する。開口部21は、略円形である。
【0016】
揮散体30は、開口部21を介して容器20内に挿入配置される。容器20内には、所定量の薬液Yが収容されている。揮散体30は、図1に示すように、その挿入方向の先端31側の部分が薬液Yに浸漬され、後端32側の部分が容器20の外方へ放射状に拡がるように突出される。
【0017】
揮散体30は、断面が略円形の細長い棒状に形成されている。揮散体30の断面形状は円形に限らずいかなる形状であってもよい。揮散体30は、ポリエステル、ポリアセタール、ラタン、葦など、薬液Yを吸い上げて揮散させることのできる材料であればいかなる材料によって形成してもよい。本実施形態の揮散体30は、ポリエステルにより形成した。
【0018】
揮散体30は、容器20の開口部21より十分に小さな直径を有する。本実施形態では、揮散体30の直径を、容器20の開口部21の直径の1/10程度とし、揮散体30の長さを、容器20の底部22から開口部21までの軸に沿った高さの2倍より長く3倍より短い長さにした。
【0019】
以下、容器20の構造について詳細に説明する。
図2及び図3に示すように、容器20の底部22は、その外周部に互いに平行な3組の辺を有する略六角形の板状に形成されている。底部22の6つの角部は、角が無く丸くされている。底部22の互いに隣接する2辺がなす角度は全て120度である。底部22の3組の辺のうちの1組の辺1a、2aは、同じ長さであり、他の2組の辺3a、4a、5a、6aより長い。比較的短い2組の4つの辺3a、4a、5a、6aは同じ長さである。つまり、底部22は、正六角形の6つの角部を丸くして平行な1組の辺1a、2aを他の辺3a、4a、5a、6aより長くしたような扁平な六角形状を有する。
【0020】
6つの辺のうち最も長い辺1aは、容器20の前面側に配置される前端辺である。辺1aに対向する辺2aは、容器20の背面側に配置される辺である。辺1aの両端に接続した辺3a、4aは、それぞれ辺1aに対して鈍角(本実施形態では120度)に配置されている。残り2つの辺5a、6aは、辺2aの両端と2つの辺3a、4aの辺1aと反対の端部をそれぞれ接続している。よって、底部22は、辺3a、5aの間の角部15aと辺4a、6aの間の角部16aを結ぶ架空の線(図示せず)の長さが辺1a、2aの間隔より長い扁平な六角形状に形成されている。
【0021】
容器20は、上述したようにガラスのブロー成形により形成されているため、底部22の6つの角部11a、12a、13a、14a、15a、16aは、角の無い丸くされた形状に形成されている。特許請求の範囲及び当該明細書における多角形状はこのように角を丸くした形状を含むものとする。以下の説明では、1組の辺1a、2aに沿った方向を扁平な底部22の長手方向(第2の方向)とする。
【0022】
底部22の外面(すなわち、容器20の底面)には、底部22の厚さの半分より浅い深さの凹部22aが設けられている。凹部22aは、底部22の外周縁より一回り小さい大きさを有する。凹部22aは、底部22と略相似形である扁平な六角形に形成されている。
【0023】
凹部22aの中には、複数本のかまぼこ状の凸条部23が設けられている。複数本の凸条部23は、凹部22aの底から外方へ突出して底部22と一体に設けられている。凸条部23の突出高さは、凹部22aの深さを超えない高さである。凸条部23は、円柱を軸に沿って中心軸から外れた位置で切断したような形状(このような形状をここではかまぼこ状としている)を有する。複数本の凸条部23は、底部22の長手方向と直交する短手方向(第1の方向)に延びて、底部22の長手方向に並んで配置されている。
【0024】
複数本の凸条部23は、底部22に設けた筋状の模様として機能する。本実施形態の凸条部23は、底部22の短手方向に延設されて互いに平行に配置されている。底部22の模様は、この凸条部23に限らず、例えば底部22の下面を部分的に凹ませた溝などであってもよく、底部22の短手方向に延びた筋状の模様であればいかなるものであってもよい。例えば、底部22の模様として、底部22とは別体に設けた底部22の下面に貼り付けるシールなどであってもよい。また、模様は、底部22の下面に限らず、底部22の内面や底部22の厚み方向の中央などに設けてもよい。
【0025】
図4に示すように、底部22の内面には、容器20の内部に向けて底部の中央部を膨出させた膨出部25が設けられている。膨出部25は、底部22の中央から底部22の内面における6つの角11b、12b、13b、14b、15b、16b及び底部22の内面における6つの辺1b、2b、3b、4b、5b、6bに向けて下方に傾斜した表面を有する。
【0026】
ここで言う6つの角11b~16b及び6つの辺1b~6bは、胴部24によって囲まれた底部22の内面における角及び辺であり、底部22の角部11a~16a及び辺1a~6aは、底部22の外周部における角部及び辺である。
【0027】
なお、底部22の内面における6つの角11b~16bは、底部22の内面における6つの辺1b~6bとともに、同じ水平面に配置されている。このため、容器20の底に残った薬液Yは、底部22の膨出部25の表面に沿って6つの角11b~16b及び6つの辺1b~6bに流れる。
【0028】
図1図2、及び図5に示すように、容器20の胴部24は、6つの略長方形板状の側壁24a、24b、24c、24d、24e、24fを筒状につなげて配置した扁平な略六角筒状に形成されている。揮散装置10の前面側に配置される側壁24aは、平らな前壁部として機能する。互いに平行に配置された2つの側壁24a、24dは、底部22の比較的長い1組の辺1a、2aにそれぞれ接続され、底部22と直交する方向に延設されている。他の4つの側壁24b、24c、24e、24fは、底部22の比較的短い2組の辺3a、5a、6a、4aにそれぞれ接続され、底部22と直交する方向に延設されている。そして、6つの側壁24a~24fは、容器20の周方向に隣接した側壁同士が接続され、筒状の胴部24を構成している。
【0029】
6つの側壁24a~24fは、必ずしも長方形である必要は無く、底部22から離れるに連れて幅が狭くなる矩形状であってもよい。この場合、胴部24は、底部22から上方に向けて収束する形状となる。また、6つの側壁24a~24fは、必ずしも長方形である必要は無く、底部22から離れるに連れて幅が広くなる矩形状であってもよい。この場合、胴部24は、底部22から上方に向けて拡開する形状となる。
【0030】
なお、いずれの場合も、側壁24aの内面と底部22の内面が交差する線が辺1bであり、側壁24bの内面と底部22の内面が交差する線が辺3bであり、側壁24cの内面と底部22の内面が交差する線が辺5bであり、側壁24dの内面と底部22の内面が交差する線が辺2bであり、側壁24eの内面と底部22の内面が交差する線が辺6bであり、側壁24fの内面と底部22の内面が交差する線が辺4bである。また、底部22の内面における角11bは辺1bと辺3bの間の角であり、角12bは辺1bと辺4bの間の角であり、角13bは辺2bと辺5bの間の角であり、角14bは辺2bと辺6bの間の角であり、角15bは辺3bと辺5bの間の角であり、角16bは辺4bと辺6bの間の角である。
【0031】
底部22が扁平な六角形状であるため、胴部24も扁平な六角形状の横断面を有する。胴部24の6つの側壁24a~24fは、それぞれ平らな長方形板状であるため、その外面は柱面を構成している。柱面とは、胴部24の外面と水平面が交差する線を鉛直方向に移動したときに形成される面である。底部22の比較的長い1組の辺1a、2aに接続した比較的幅広の側壁24a、24dは、比較的幅が狭い側壁24b、24c、24e、24fと比べて表面積が大きい。このため、この比較的幅広の1組の側壁24a、24dの外面を容器20の前面及び背面とし、辺1aに連続した側壁24aの前面に比較的大きなラベルなど(図示せず)を貼り付けることができる。
【0032】
図1及び図4に示すように、容器20の肩部26は、胴部24の上端から首部28の下端に向けて上方に傾斜している。胴部24の上端は、6つの側壁24a~24fの上端を環状に配置した扁平な六角形状である。このため、肩部26は、6つの側壁24a~24fの上端に接続した6つの略台形部分26a、26b、26c、26d、26e、26fを有する。6つの略台形部分26a~26fは、容器20の周方向に隣接した略台形部分同士が接続されて、肩部26が構成されている。
【0033】
首部28は、略円筒形状に形成されており、その上端に容器20の開口部21を有する。また、首部28の上端外側には、円環状のフランジ部28aが設けられている。図4に示すように、首部28の内面は、その上端においてフランジ部28aに向けてなだらかに湾曲しており、その下端において肩部26の内面に向けてなだらかに湾曲している。
【0034】
図6に示すように、揮散装置10は、上述した容器20と揮散体30の他に、所定量の薬液Yを収容した薬液ボトル40とブリスター容器50(収容体)を含む。ブリスター容器50は、図示上方の収容部51に薬液ボトル40を収容し、図示下方の収容部52に容器20を収容し、収容部51、52と反対側の裏側に所定本数(本実施形態では6本)の揮散体30を束ねた状態で収容する。揮散装置10は、薬液ボトル40、容器20、及び揮散体30を収容した状態のブリスター容器50を図示しない箱に入れて流通される。
【0035】
そして、揮散装置10を使用する際には、ブリスター容器50から容器20と薬液ボトル40を取り出し、薬液ボトル40内に収容されている薬液Yの全量を容器20に移し替える。そして、ブリスター容器50の裏側に収納されている複数本の揮散体30を容器20の開口部21から差し込み、揮散体30の一部を薬液Yに浸漬させ、開口部21から突出した揮散体30の後端32側を拡げる。この状態を図1に示す。これにより、複数本の揮散体30により薬液Yが吸い上げられて、容器20の開口部21から上方に突出した揮散体30の部分から薬液Yの揮散が開始される。
【0036】
揮散装置10の使用開始時に、容器20内に収容する薬液Yの量は決まっている。つまり、薬液ボトル40は、一定量の薬液Yを液密な状態で収容している。このため、揮散装置10の使用開始時に、薬液ボトル40内の薬液Yの全量を容器20に移し替えると、容器20内の使用開始時における薬液Yの液面Yaは、図1及び図4に示すように、容器20の胴部24の上端縁より下にある。
【0037】
以下、上述した揮散装置10の作用・効果について説明する。
所定量の薬液Yを収容した容器20の開口部21を介して揮散体30を差し込むと、図1及び図4に示すように、揮散体30は、容器20の底部22の中心を通って鉛直方向に延びる架空の中心軸(図示せず)に対して傾斜した(倒れた)姿勢となる。
【0038】
つまり、揮散体30を容器20に挿し込むと、揮散体30が薬液Yに浸漬され、挿入方向の先端31が底部22の内面に当接する。そして、揮散体30の自重により、先端31が底部22の膨出部25の表面を滑って底部22の内面の1つの角に向けて移動する。図4では、底部22の内面の角16bに先端31が配置された揮散体30を図示している。この状態で、揮散体30は、容器20の中心軸に対して傾斜し、開口部21から外方に突出した揮散体30の突出部分が放射状に拡がる。
【0039】
本実施形態では、6本の揮散体30を容器20に挿し込むため、容器20に挿し込んだ状態の複数本の揮散体30の突出部分を放射状に拡げることにより、各揮散体30の先端31を底部22の内面における6つの角11b~16bにそれぞれ配置することができる。各揮散体30の先端31を6つの角11b~16bにそれぞれ配置することにより、揮散体30の後端32側の突出部分を図5に示すように均等に放射状に拡げることができる。
【0040】
仮に、六角形状の底部22を有する容器20に7本以上の揮散体30を差し込むと、少なくとも1つの角に2本の揮散体30の先端31が配置され、揮散体30が密集してしまう。このため、本実施形態のように、容器20の底部22の角の数と同じ本数の揮散体30を差し込むことが望ましい。或いは、5本以下の揮散体30を容器20に挿し込んでもよく、1つの角に複数本の揮散体30の先端31が集まる不具合を防止することができる。
【0041】
図6に示すように、6本の揮散体30をセットにして流通させた場合、ユーザーの好みによって6本の揮散体30の全てを使用せずに6本未満の揮散体30を容器20に挿して使用する可能性がある。例えば、薬液Yの揮散量を抑えたい場合には、5本の揮散体30を容器20に挿して使用してもよい。しかし、6本の揮散体30をセットにして流通させた場合、7本以上の揮散体30が容器20に挿し込まれることは無く、上述した密集の問題を生じることも無い。
【0042】
いずれにしても、複数本の揮散体30の後端32側の突出部分が放射状に拡がるように複数本の揮散体30を容器20に挿し込むと、容器20の底部22の内面形状に応じて揮散体30の突出部分の拡がり方に特徴が表れる。例えば、同じ長さの6本の揮散体30の先端31を底部22の6つの角11b、12b、13b、14b、15b、16bにそれぞれ配置して揮散体30の後端32側の突出部分を放射状に拡げると、図5に示すように、6本の揮散体30の後端32を結ぶ六角形が形成される。この場合、6本の揮散体30の後端32を結ぶ六角形は、扁平な六角形状の底部22と略相似形になり易い。
【0043】
このため、底部22の比較的長い一方の辺1aに接続した側壁24aが正面を向き、底部22の比較的長いもう一方の辺2aに接続した側壁24dが壁Wに対向する向きで、揮散装置10を壁際に設置した場合、揮散装置10の奥行方向(側壁24aから側壁24dに向かう方向)の幅を比較的狭くすることができ、揮散体30の後端32が壁に接触する不具合を抑制することができる。
【0044】
図7に示すように、揮散装置10を壁Wに沿った横方向から見ると、揮散装置10の前方及び後方に拡がる揮散体30-1、30-2は、底部22の短手方向に傾斜した揮散体30である。このように底部22の短手方向に傾斜した揮散体30は、容器20の高さに対する底部22の短手方向の幅の比率が小さいため、傾斜角度が比較的小さくなり、後端32側の突出部分の拡がりが小さくなる。
【0045】
より具体的には、揮散装置10の後方に傾斜して拡がる揮散体30-2は、底部22の内面における辺1b、3bの間の角11b、或いは辺1b、4bの間の角12bに先端31が配置された揮散体であり、図5に示すように、底部22の短手方向のみならず長手方向にも傾斜している。このため、底部22の短手方向にのみ傾斜した揮散体(実際にはこのような揮散体は存在しない)と比較して、揮散体30-2の装置後方への傾斜角度はさらに小さくなり、揮散体30-2の後端32が壁Wに接触する不具合をより確実に抑制することができる。
【0046】
一方、揮散装置10を正面から見ると、図8に示すように、底部22の内面における辺3b、5bの間の角15bに先端31を配置した揮散体30-3と、底部22の内面における辺4b、6bの間の角16bに先端31を配置した揮散体30-4が、揮散装置10の横方向に最も大きく拡がる揮散体となる。容器20の高さに対する底部22の長手方向の長さ(すなわち、辺4b、6bの間の角16bから辺3b、5bの間の角15bまでの距離)の比率が大きいため、これら2本の揮散体30-3、30-4の傾斜角度が大きくなり、揮散体30-3、30-4の後端32側の突出部分の横方向への拡がりが大きくなる。
【0047】
このような揮散体30の横方向への拡がりは、容器20の胴部24の正面の側壁24aに隣接した側壁24b、24fの側壁24aに対する角度を鈍角にし、側壁24bの側壁24aと反対側に隣接する側壁24cと側壁24bの間の角15a、及び側壁24fの側壁24aと反対側に隣接する側壁24eと側壁24fの間の角16aを、側壁24aの幅方向の外側に配置することにより、大きくすることができる。つまり、容器20の底部22の角15a、16a間の距離を大きくすることにより、揮散体30の横方向への拡がりを大きくすることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の揮散装置10によると、奥行方向の幅を横方向の幅より狭くして後の壁に揮散体30が接触する不具合を抑制した上で、揮散体30を横方向に大きく拡げることができ、見栄えを良くすることができる。また、本実施形態によると、容器20の胴部24が扁平な横断面を有するため、所定量の薬液Yを容器20に入れた場合に、液面Yaの位置を高くすることができ、揮散装置10の美観を良くすることができる。
【0049】
反面、本実施形態の揮散装置10のように、容器20の胴部24を扁平にすると、薬液Yの収容量が少なく感じたり、容器20が前後に倒れ易く感じたりして、商品としての価値が低く見られてしまう可能性が考えられる。このため、本実施形態では、容器20の底部22に上述した筋状の模様(複数の凸条部23)を設けて、容器20が実際より奥行があるように錯覚して見えるようにした。
【0050】
容器20の底部22に設けた複数の凸条部23は、容器20の胴部24の前面側の側壁24aを透過して見ることができる。この際、側壁24aが比較的表面積が大きい平らな板状に形成されているため、複数の凸条部23が歪んで見えることが無く、複数の凸条部23の模様をより美しく鮮明に見ることができ、揮散装置10の見栄えをよくすることができる。
【0051】
なお、上述したように、底部22の複数の凸条部23は、底部22の短手方向に互いに平行に延設したが、必ずしも平行に配置する必要はなく、揮散装置10の奥行方向に向けて収束するように傾斜させてもよい。これにより、揮散装置10の奥行があるように錯覚して見える効果を高めることができる。
【0052】
また、容器20の底部22に設ける筋状の模様は、上述した凸条部23のように必ずしも真っ直ぐな模様である必要はなく、例えば、図9に示すように、波線状の模様にしてもよい。特許請求の範囲における「底部の前端辺と直交する筋状の模様」は、上述したように底部の短手方向に対して傾斜した模様や、上述した波線状の模様を含むものとする。
【0053】
また、本実施形態によると、複数本の揮散体30を放射状に均等に拡げることができ、薬液Yの揮散効率を高めることができる。つまり、複数本の揮散体30を放射状に拡げることにより、揮散体30同士が接触する面積が小さくなり、揮散体30が外気に触れる面積を大きくすることができ、薬液Yの揮散効率を高めることができる。また、複数本の揮散体30を放射状に拡げることにより、各揮散体30から揮散した薬液Yが外気に拡散し易くなり、薬液Yの揮散効率を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態によると、揮散装置10の設置場所を移動する際に、揮散装置10に振動が与えられた場合であっても、揮散体30の先端31を底部22の角に保持することができ、揮散体30の姿勢を維持することができる。つまり、容器20は、図4に示すように、底部22に設けた膨出部25の周部において、底部22の内面における角11b~16bの位置にポケットのような窪みを有するため、揮散体30の先端31をこのポケット内に配置することで先端31を保持することができる。
【0055】
さらに、本実施形態のように、各揮散体30の先端31を底部22の内面の角11b~16bに1つずつ配置することにより、揮散装置10の使用終了時に、容器20の底に残った薬液Yを無駄なく使用することができる。つまり、底部22に設けた膨出部25の表面に沿って薬液Yが角11b~16bに流れ込み、揮散体30の先端31により角11b~16bの薬液Yを吸い上げることができる。仮に、6本未満の揮散体30を容器20に挿し込んで使用した場合であっても、揮散体30の先端31が配置されていない角に流れた薬液Yが当該角を形成する2辺を介して隣接する角に流れるため、薬液Yを無駄無く最後まで使用することができる。
【0056】
以下、上述した揮散装置10の容器20の変形例について説明する。なお、ここでは、上述した実施形態と同様に機能する構成について、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、第1の変形例に係る容器60は、その図示しない中心軸と直交する面で切断した横断面が扁平な略五角形状に形成されている。つまり、容器60の底部が扁平な略五角形であり、容器60の胴部の側壁が5つある。5つの側壁のうちの最も横幅の広い側壁61が、容器60の正面の壁(前壁部)となり、ラベルなどを貼り付けることができる。側壁61に隣接する2つの側壁62、63は、側壁61に対して鈍角に配置されている。
【0058】
第1の変形例の容器60も、上述した実施形態の容器20と同様に、その底部及び胴部が、側壁61と直交する短手方向の幅が側壁61に沿った長手方向の幅より狭い扁平な形状に形成されている。このため、容器60に複数本の揮散体30を差し込んだ状態で、容器60を正面から見た場合に、揮散体30の横方向の拡がりを大きくして見栄えを良くすることができるとともに、揮散装置の奥行方向の幅を抑えることができ、装置を壁際に設置した際に揮散体が壁に接触する不具合を抑制することができる。
【0059】
また、容器60は、上述した実施形態と同様に、底部に複数の凸条部(図示せず)を備えている。このため、第1の変形例の容器60も、実際より奥行があるように錯覚して見え、揮散装置としての見栄えをよくすることができる。
【0060】
図11に示すように、第2の変形例に係る容器70は、その図示しない中心軸と直交する面で切断した横断面が扁平な略八角形状に形成されている。つまり、容器70の底部が扁平な略八角形であり、容器70の胴部の側壁が8つある。8つの側壁のうち最も幅の広い一対の側壁71の一方が、容器70の正面の壁(前壁部)となり、ラベルなどを貼り付けることができる。側壁71に隣接する2つの側壁72、73は、側壁71に対して鈍角に配置されている。
【0061】
第2の変形例の容器70も、上述した実施形態の容器20と同様に、その底部及び胴部が、側壁71と直交する短手方向の幅が側壁71に沿った長手方向の幅より狭い扁平な形状に形成されている。このため、容器70に複数本の揮散体30を差し込んだ状態で、容器70を正面から見た場合に、揮散体30の横方向の拡がりを大きくして見栄えを良くすることができるとともに、揮散装置の奥行方向の幅を抑えることができ、装置を壁際に設置した際に揮散体が壁に接触する不具合を抑制することができる。
【0062】
また、容器70も、上述した実施形態と同様に、底部に複数の凸条部(図示せず)を備えている。このため、第2の変形例の容器70も、実際より奥行があるように錯覚して見え、揮散装置としての見栄えをよくすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0064】
例えば、上述した実施形態、第1の変形例、及び第2の変形例では、底部の角が5つ、6つ、8つの容器を用いた場合について説明したが、これに限らず、容器の底部の角の数は任意に設定することができ、底部を多角形にすればよい。
【0065】
また、上述した実施形態(図1図5)では、底部22と直交する柱面を構成する6つの側壁24a~24fを筒状につなげて配置した胴部24を有する容器20について説明したが、例えば、図12に示す第3の変形例のように、胴部24’の各側壁24a’~24f’の幅が開口部21に向けて狭くなるように、胴部24’を開口部21に向けて収束させてもよい。この変形例の容器20’は、胴部24’の上端に開口部21を有し、肩部26及び首部28を有していない。或いは、6つの周壁の幅が開口部に向けて広くなるように、胴部を開口部に向けて拡開させてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…揮散装置、 20…容器、 21…開口部、 22…底部、 23…凸条部、 24…胴部、 24a、24b、24c、24d、24e、24f…側壁、 25…膨出部、 26…肩部、 28…首部、 30…揮散体、 31…先端、 32…後端、 40…薬液ボトル、 50…ブリスター容器、 Y…薬液。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12