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特許7516243ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20240708BHJP
   C08J 9/04 20060101ALI20240708BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240708BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240708BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240708BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240708BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240708BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20240708BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
C08J9/16 CFD
C08J9/04 101
B29C44/00 G ZBP
B29C44/44
C08K5/053
C08K5/14
C08L67/04
C08L101/16
B29K105:04
B29K67:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020217636
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102731
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安本 考広
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146555(WO,A1)
【文献】特開2017-101256(JP,A)
【文献】特開2007-302778(JP,A)
【文献】特開2012-241166(JP,A)
【文献】特開平6-49139(JP,A)
【文献】国際公開第2007/049694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法であって、
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子100重量部と、水系分散剤と、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物1.2重量部以上と、発泡剤とを容器中で分散させる分散工程を含み、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部およびペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部含むことを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物が、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートからなる群より選択される1種類以上である、請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記分散工程において、前記パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物の使用量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子100重量部に対して1.2重量部~5.0重量部である、請求項1または2に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、
前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%であり、
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のゲル分率が30重量%~80重量%であり、
以下の(1)を満たすことを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子:
3(重量%)≧|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|・・・(1)
ここで、前記小粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径-20%以下の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、前記大粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径+20%以上の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子である。
【請求項5】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される1種類以上である、請求項4に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項6】
前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位とコモノマー繰り返し単位とを有する共重合体であり、
前記共重合体の全繰り返し単位100モル%中の3HB繰り返し単位とコモノマー繰り返し単位との比率は、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)である、請求項4または5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による埋立て処分場の不足および環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。このため、(a)海、土等の環境中、並びに(b)埋立て処分場およびコンポスト中で、微生物の作用によって分解される生分解性プラスチックが注目されている。生分解性プラスチックは、(a)環境中で利用される農林水産業用資材、並びに(b)使用後の回収および再利用が困難な食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋等、への幅広い応用を目指して、開発が進められている。更に生分解性プラスチックから成る発泡体は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等での使用が期待されている。
【0003】
前記生分解性プラスチックの中でも、優れた生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物原料由来のプラスチックとしてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下、「P3HA」と称する場合がある)が注目されている。
【0004】
上述の生分解性プラスチックを成形体用途に展開することが検討されている。例えば、特許文献1には、生分解性を有するP3HAを用いて得られる発泡粒子、および、該発泡粒子を型内発泡成形して発泡成形体を得る技術が開示されている。また、特許文献2には、P3HAを含み、かつ結晶核剤としてペンタエリスリトールを含む成形体を射出成形によって得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/146555号
【文献】国際公開第2014/020838号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のような従来技術は、P3HA系発泡粒子の生産効率において、改善の余地がある。
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明の一実施形態の目的は、生産効率よく、P3HA系発泡粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0010】
〔1〕ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法であって、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子100重量部と、水系分散剤と、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物1.2重量部以上と、発泡剤とを容器中で分散させる分散工程を含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部およびペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部含むことを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【0011】
〔2〕前記パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物が、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネートからなる群より選択される1種類以上である、〔1〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【0012】
〔3〕前記分散工程において、前記パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物の使用量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子100重量部に対して1.2重量部~5.0重量部である、〔1〕または〔2〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法。
【0013】
〔4〕ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であって、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%であり、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のゲル分率が30重量%~80重量%であり、以下の(1)を満たすことを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子:
3(重量%)≧|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|・・・(1)
ここで、前記小粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径-20%以下の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、前記大粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径+20%以上の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子である。
【0014】
〔5〕前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される1種類以上である、〔4〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【0015】
〔6〕前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、3-ヒドロキシブチレート繰り返し単位とコモノマー繰り返し単位とを有する共重合体であり、
前記共重合体の全繰り返し単位100モル%中の3HB繰り返し単位とコモノマー繰り返し単位との比率は、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)である、〔4〕または〔5〕に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【0016】
〔7〕〔4〕~〔6〕の何れか1つに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を成形してなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形によれば、生産効率よく、P3HA系発泡粒子を提供できるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0019】
〔1.本発明の技術的思想〕
特許文献1に記載のとおり、P3HA系発泡粒子の熱安定性、耐溶剤性、耐衝撃性などを向上させるために、P3HA系発泡粒子を製造するとき、原料であるP3HA系樹脂粒子に架橋剤を添加する技術が知られている。この技術では、P3HA系樹脂粒子と架橋剤とを水系分散媒系に分散させて、P3HA系樹脂粒子と架橋剤とを反応させることが一般的である。しかしながら、水系分散媒中におけるP3HA系樹脂粒子と架橋剤との反応は、均一に制御することが難しく、不均一になる場合もある。その結果、当該反応により得られるP3HA系発泡粒子では、特に、比較的小さいP3HA系発泡粒子と比較的大きいP3HA系発泡粒子との間で架橋度合いが不均一となる問題が生じ得る。この原因について、本発明者らは、以下に起因していると推測した:P3HA系樹脂粒子を製造する際、一般的に得られるP3HA系樹脂粒子の大きさにある程度のバラツキが生じるが、小さいP3HA系樹脂粒子に由来する小さいP3HA系発泡粒子ほど架橋剤による架橋度合いが過度に大きくなる一方で、大きいP3HA系樹脂粒子に由来する大きいP3HA系発泡粒子では架橋剤による架橋度合いが過度に小さくなってしまうこと。かかる推測に基づき、鋭意検討したところ、本発明者らは、特許文献1に記載の技術で得られたP3HA系発泡粒子は、比較的小さいP3HA系発泡粒子と比較的大きいP3HA系発泡粒子との間でP3HA系発泡粒子の架橋度合いが、不均一であることを独自に見出した。
【0020】
P3HA系発泡粒子の架橋度合いは、P3HA系発泡粒子の型内発泡成形時におけるP3HA系発泡粒子の膨張の度合いに影響を与え得る。そのため、粒子間で架橋度合いが不均一であるP3HA系発泡粒子を型内発泡成形した場合、P3HA系発泡粒子の膨張の度合いのバラツキから、得られるP3HA系発泡成形体に成形ムラが発生する。特許文献1の技術で得られるP3HA系発泡粒子を用いて成形ムラがほとんどないP3HA系発泡成形体を得るためには、得られるP3HA系発泡粒子から、P3HA系発泡粒子全体のゲル分率の平均値に対してゲル分率が過度に大きいP3HA系発泡粒子、および過度に小さいP3HA系発泡粒子を、不良品として取り除く必要がある。すなわち、特許文献1に記載の技術には、良品として得られるP3HA系発泡粒子が限られており、P3HA系発泡粒子の生産効率が低いという問題があった。
【0021】
そこで、本発明者らは、(a)生産効率よく、P3HA系発泡粒子を提供すること、具体的には、(b)架橋度合いの不均一性に起因して不良品として取り除く必要があるP3HA系発泡粒子の量を低減し、良品と見做せるP3HA系発泡粒子の大きさの範囲を広げることを課題として、検討を行った。すなわち、本発明者らは、P3HA系発泡粒子の架橋度合いの不均一性を解消するために、P3HA系樹脂粒子を従来よりも均一に架橋することを課題として、検討を行った。検討過程において、本発明者らは、最初にP3HA系樹脂粒子と架橋剤との反応時間を延ばす方法を考えた。しかしながら、P3HAは加水分解が進行しやすいため、P3HA系樹脂粒子を水系分散媒中に長時間留めることは好ましくない。そこで、本発明者らは、P3HA系樹脂粒子と架橋剤との反応時間を延ばすことなく、従来よりも均一にP3HA系樹脂粒子を架橋することを目的として、さらに検討を行った。
【0022】
鋭意検討の結果、本発明者らは、驚くべきことに、以下の新規知見を独自に見出し、本発明を完成するに至った:(a)親水性であるペンタエリスリトールを特定量含むP3HA系樹脂粒子と、(b)疎水性である、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物と、を原料として使用することにより、従来よりも均一に架橋されたP3HA系発泡粒子を提供することができ、すなわち、生産効率良く、P3HA系発泡粒子を提供することができること。
【0023】
また、本発明者らは、以下の新規知見を独自に見出した:(a)本発明の一実施形態に係るP3HA系発泡粒子の製造方法により得られるP3HA系発泡粒子は、所定の大粒子と小粒子とのゲル分率の差が所定値以内であること、および(b)その結果、当該P3HA系発泡粒子は、成形ムラの少ない良品の発泡成形体を提供できること。
【0024】
〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子100重量部と、水系分散剤と、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物1.2重量部以上と、発泡剤とを容器中で分散させる分散工程を含み、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)100重量部およびペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部含むことを特徴とする。
【0025】
本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子」を「樹脂粒子」と称する場合があり、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子」を「発泡粒子」と称する場合があり、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子の製造方法」を「製造方法」と称する場合があり、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系発泡粒子の製造方法」を「本製造方法」と称する場合がある。
【0026】
本明細書において、X単量体に由来する繰り返し単位を「X単位」と称する場合がある。繰り返し単位は、構成単位ともいえる。
【0027】
本製造方法は、上述の構成を有するため、生産効率よく、発泡粒子を提供できるという利点を有する。また、本製造方法により提供される発泡粒子は、発泡粒子内のP3HAが均一に架橋されているという利点も有する。その結果、本製造方法により提供される発泡粒子は、成形ムラの少ない良品の発泡成形体を提供できるという利点も有する。
【0028】
<ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子>
樹脂粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂組成物からなる。本明細書において、「ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HA)系樹脂組成物」を「樹脂組成物」と称する場合がある。
【0029】
最初に、樹脂組成物、すなわち樹脂粒子に含まれる各成分について説明する。
【0030】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
樹脂粒子は、P3HAを含む。本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート単位を必須の構成単位(モノマー単位)として有する重合体である。本明細書において、「3-ヒドロキシアルカノエート」を「3HA」と称する場合もある。P3HAとしては、具体的には、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む重合体が好ましい:
[-CHR-CH-CO-O-]・・・(1)。
【0031】
一般式(1)中、RはC2n+1で表されるアルキル基を示し、nは1~15の整数を示す。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。nとしては、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。
【0032】
P3HAとしては、特に微生物から産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAは、3HA単位が、全て(R)-3HAであるポリ[(R)-3HA]である。
【0033】
P3HAは、3HA単位(特に一般式(1)の繰り返し単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことがさらに好ましい。また、繰り返し単位(モノマー単位)としては、3HA単位のみであってもよいし、3HA単位に加えて3HA以外の単量体に由来する繰り返し単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート単位等)を含んでいてもよい。
【0034】
3HA単位の具体例としては、3-ヒドロキシブチレート単位、3-ヒドロキシバレレート単位および3-ヒドロキシヘキサノエート単位などが挙げられる。3-ヒドロキシブチレートは、融点および引張強度がプロピレンに近い。それ故、本発明の一実施形態に係るP3HAは、3-ヒドロキシブチレート単位を含むことが好ましい。本明細書において、「3-ヒドロキシブチレート」を「3HB」と称する場合もある。
【0035】
P3HAは、3HB単位(モノマー単位)を、P3HAの全繰り返し単位100モル%中、80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。P3HAとしては、特に、3HB単位を含み、かつ3HBが全て(R)-3HBである重合体(微生物によって産生された重合体)が好ましい。
【0036】
P3HAが2種以上の繰り返し単位を含む場合、含有量が最も多い繰り返し単位以外の繰り返し単位の由来となるモノマーをコモノマーと称する。本明細書において、「コモノマーに由来する繰り返し単位」を「コモノマー単位」と称する場合もある。
【0037】
コモノマーとしては、特に限定されないが、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)または4-ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)などが好ましい。
【0038】
P3HAの具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(以下、「P3HB3HV」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、「P3HB3HH」と称する場合がある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(以下、「P3HB4HB」と称する場合がある。)等が挙げられる。特に、加工性および発泡成形体の物性等の観点から、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、またはポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。本発明の一実施形態において、上述したP3HAとしては、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
P3HAは、3HB単位を必須の繰り返し単位(構成単位)として有し、かつコモノマー単位を有することが好ましい。すなわち、P3HAは、3HB単位とコモノマー単位とを有する共重合体であることが好ましい。P3HAが3HB単位とコモノマー単位とを有する場合について説明する。この場合、P3HAにおける全繰り返し単位100モル%中の3HB単位とコモノマー単位との比率(3HB単位/コモノマー単位)としては、99/1(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)が好ましく、97/3(モル%/モル%)~80/20(モル%/モル%)がより好ましく、95/5(モル%/モル%)~85/15(モル%/モル%)がさらに好ましい。P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が1モル%以上であれば、P3HAの溶融混練可能な温度域と熱分解温度域とが十分に離れているため、得られる発泡粒子が加工性に優れるという利点を有する。一方、P3HAの全繰り返し単位100モル%に対するコモノマー単位の比率が20モル%以下であれば、溶融混練時のP3HA系組成物の結晶化が早く、生産性が高い。このような各モノマー単位の比率を有するP3HAは、当業者に公知の方法、例えば国際公開WO2009/145164号に記載の方法に準拠して作製することができる。
【0040】
なお、P3HA中の各モノマー単位の比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることができる。
【0041】
P3HAの融点は、特に限定されないが、110.0℃~165.0℃が好ましく、120.0℃~155.0℃がより好ましい。P3HAの融点が110.0℃以上であれば、得られる発泡成形体の加熱寸法変化の虞がなく、一方、P3HAの融点が165.0℃以下であれば、発泡工程中に加水分解が起こる虞がない。
【0042】
ここで、P3HAの融点は、示差走査熱量計法(以降、「DSC法」と称する)により測定したものである。具体的な操作手順は以下の通りである:(1)P3HA5mg~6mgを量り取る;(2)P3HAの温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、P3HAを融解する;(3)前記(2)の過程で得られるP3HAのDSC曲線の、最も高温の融解ピークの温度をP3HAの融点として求めることができる。
【0043】
P3HAの重量平均分子量は、特に限定されないが、20万~200万が好ましく、25万~150万がより好ましく、30万~100万がさらに好ましい。P3HAの重量平均分子量が20万以上であれば、得られる発泡粒子の独立気泡率が低くなる虞がない。一方、重量平均分子量が200万以下であれば、P3HA系組成物を溶融混練する時の機械への負荷が低くなり、生産性が良好となる。なお、P3HAの重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定することができる。当該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切な公知のカラムを使用すればよい。
【0044】
本発明の一実施形態において、P3HAの製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、微生物による製造方法が好ましい。P3HAの微生物による製造方法については、公知の方法を適用できる。
【0045】
3HBと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌として、具体的には、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が挙げられる。特に、P3HB3HHに関し、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入することでP3HB3HHの生産性を向上させたアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましい。P3HAの製造方法では、アルカリゲネス・ユートロファス AC32株等の微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が好適に用いられる。またコポリマー生産菌に関して、前記以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良い。また、微生物(菌)の培養条件についても、生産したいP3HAに合わせて、基質の種類を含む様々な培養条件の最適化をすればよい。
【0046】
本発明の一実施形態において、P3HAを生産する微生物を培養する方法は特に限定されず、例えば、国際公開第WO2019/142717号に記載の方法を使用することができる。
【0047】
樹脂粒子におけるP3HAの含有量は、特に限定されないが、得られる発泡粒子および発泡成形体が生分解性に優れることから、樹脂粒子100重量%に対して、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましい。
【0048】
樹脂粒子は、更に、P3HA以外の樹脂成分(「その他の樹脂成分」と称する場合がある)を含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、(a)ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル、または(b)脂肪族芳香族ポリエステル等が挙げられる。P3HAと共に、これらその他の樹脂成分の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0049】
樹脂粒子のその他の樹脂成分の含有量は特に限定されないが、例えば、P3HA100重量部に対して、10重量部~400重量部が好ましく、50重量部~150重量部がより好ましい。
【0050】
(ペンタエリスリトール)
樹脂粒子は、ペンタエリスリトールを含む。樹脂粒子におけるペンタエリスリトールの含有量は、P3HA100重量部に対して、0.20重量部~20.00重量部であり、0.30重量部~10.00重量部であることが好ましく、0.40重量部~5.00重量部であることがより好ましく、0.50重量部~3.00重量部であることがさらに好ましい。樹脂粒子のペンタエリスリトールの含有量がP3HA100重量部に対して0.20重量部~20.00重量部である場合、(a)生産効率よく、発泡粒子を提供でき、(b)発泡粒子内のP3HAが均一に架橋されている発泡粒子を提供でき、(c)成形ムラの少ない良品の発泡成形体を提供し得る発泡粒子を提供でき、かつ(d)低い成形圧力で、内部融着性に優れた発泡成形体を提供し得る発泡粒子を提供できる、という利点を有する。また、上述の範囲内の量でペンタエリスリトールを含む樹脂粒子を使用する場合、本製造方法により得られる発泡粒子では、ペンタエリスリトールが発泡粒子の表面に多量に染み出てくる(ブリードしてくる)虞がない。そのため、本製造方法により得られる発泡粒子は、べたつくこともなく、ハンドリング性が良好となる。その結果、本製造方法により得られる発泡粒子を使用して発泡成形体を型内発泡成形する際、発泡粒子の金型への充填性が良好となる利点を有する。
【0051】
ペンタエリスリトールとは、下記一般式(2)で示される化合物である。
【0052】
【化1】
【0053】
ペンタエリスリトールは多価アルコール類の一種であり、融点260.5℃の白色結晶の有機化合物である。ペンタエリスリトールは糖アルコールに分類されるが、天然物由来ではない。ペンタエリスリトールは、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドとを塩基性環境下で縮合して合成することができる。
【0054】
本発明で用いられるペンタエリスリトールとしては市販品を用いることもできる。ペンタエリスリトールの市販品としては、パーストープ社品、三菱ケミカル株式会社品、富士フィルム和光純薬工業株式会社品、シグマ・アルドリッチ社品、東京化成工業株式会社品、メルク社品、広栄化学工業株式会社品(商品名:ペンタリット)および東洋ケミカルズ株式会社品などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
ペンタエリスリトールの市販品の中には不純物として、ペンタエリスリトールが脱水縮合することで生成されるジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのオリゴマーが含まれているものがある。当該オリゴマーはP3HAの結晶化効果を有しないが、ペンタエリスリトールの機能を阻害もしない。従って、本発明の一実施形態で使用するペンタエリスリトールには、前記オリゴマーが含まれていても構わない。
【0056】
(添加剤)
樹脂粒子は、ペンタエリスリトール以外の添加剤(その他の添加剤)をさらに含んでもよい。その他の添加剤としては、例えば、結晶核剤、気泡調整剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。その他の添加剤としては、特に生分解性を有する添加剤が好ましい。なお、「結晶核剤」は、「結晶化核剤」と称する場合がある。
【0057】
結晶核剤としては、例えば、オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。これら結晶核剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の結晶核剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。但し、ここで例示した結晶核剤は発泡粒子の融着性を阻害する場合がある。
【0058】
したがって、樹脂粒子における結晶核剤の含有量は、P3HA100重量部に対して、5.0重量部以下が好ましく、3.0重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。樹脂粒子は、その他の添加剤としての結晶核剤を含まないことが最も好ましい。
【0059】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレイ、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等が挙げられる。これら気泡調整剤の中でも、P3HAへの分散性に特に優れている点で、タルクが好ましい。また、これら気泡調整剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の気泡調整剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0060】
樹脂粒子における気泡調整剤の含有量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.01重量部~1.00重量部が好ましく、0.03重量部~0.50重量部がより好ましく、0.05重量部~0.30重量部がさらに好ましい。
【0061】
滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。これら滑剤の中でも、P3HAへの滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミドおよび/またはエルカ酸アミドが好ましい。これら滑剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の滑剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0062】
樹脂粒子における滑剤の含有量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.01重量部~5.00重量部が好ましく、0.05重量部~3.00重量部がより好ましく、0.10重量部~1.50重量部がさらに好ましい。
【0063】
可塑剤としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート等のグリセリンエステル系化合物、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル系化合物、セバシン酸ジブチル等のセバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等の二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの中でも、P3HAへの可塑化効果が特に優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物および二塩基酸エステル系化合物が好ましい。これら可塑剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の可塑剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0064】
樹脂粒子における可塑剤の含有量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、1重量部~20重量部が好ましく、2重量部~15重量部がより好ましく、3重量部~10重量部がさらに好ましい。
【0065】
樹脂粒子は、イソシアネート基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物と称する場合がある。)を含んでもよい。但し、イソシアネート化合物は毒性を持つ場合がある。また、樹脂粒子がイソシアネート化合物を含む場合、得られる発泡粒子および発泡成形体が黄色くなる場合がある。
【0066】
したがって、樹脂粒子におけるイソシアネート化合物の含有量としては、P3HA100重量部に対して、3.0重量部未満が好ましく、1.0重量部未満がより好ましく、0.1重量部未満がさらに好ましい。樹脂粒子がイソシアネート化合物を含まないことが最も好ましい。
【0067】
イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート化合物の具体的な種類としては芳香族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物等が挙げられる。例えば、(a)芳香族イソシアネート化合物としては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレンおよび/またはトリフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物が挙げられ、(b)脂環族イソシアネート化合物としてはイソホロンおよび/または水素化ジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物が挙げられ、(c)脂肪族イソシアネート化合物としてはヘキサメチレンおよび/またはリジンを骨格とするイソシアネート化合物等が挙げられる。更に、これらイソシアネート化合物を2種類以上組み合わせて得られる混合物も使用可能である。イソシアネート化合物を使用する場合には、汎用性、取扱い性、耐候性等からトリレンおよび/またはジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)を使用することが好ましい。
<ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子の製造方法>
次に、樹脂粒子の製造方法について説明する。樹脂粒子の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。樹脂粒子の製造方法は、樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する方法ともいえ、樹脂粒子を調製する方法ともいえる。本製造方法は、分散工程の前に、樹脂粒子の製造方法を一工程として含んでいてもよい。換言すれば、本製造方法は、分散工程の前に、樹脂粒子調製工程を含んでいてもよい。
【0068】
(樹脂粒子調製工程)
樹脂粒子調製工程は、P3HA100重量部およびペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部を含むP3HA系樹脂粒子を調製する工程である。
【0069】
樹脂粒子調製工程の具体的な態様としては、特に限定されない。樹脂粒子調製工程は、
(a)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部とを含む樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程と、
(b)溶融混練された樹脂組成物を発泡に利用しやすい形状に成形する粒子成形工程とを含むことが好ましい。
【0070】
溶融混練工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を得ることができる限り、特に限定されない。溶融混練工程の具体例としては、例えば以下(b1)および(b2)の方法が挙げられる:
(b1)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部と、必要に応じてその他の添加剤とを混合装置などで混合またはブレンドし、樹脂組成物を調製する。その後、当該樹脂組成物を溶融混練装置に供給し、溶融混練する方法;
(b2)P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部と、必要に応じてその他の添加剤とを溶融混練装置に供給し、溶融混練装置内で樹脂組成物を調製する(完成させる)とともに、当該樹脂組成物を溶融混練する方法。
【0071】
前記(b1)の方法において、P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部と、必要に応じてその他の添加剤とを混合またはブレンド(ドライブレンド)する順序は特に限定されない。前記(b2)の方法において、P3HA100重量部と、ペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部と、必要に応じてその他の添加剤とを溶融混練装置に供給する順序は特に限定されない。
【0072】
前記(b1)の方法において、混合装置としては、特に限定されず、リボンブレンダー、フラッシュブレンダー、タンブラーミキサー、スーパーミキサーなどが挙げられる。
【0073】
前記(b1)および(b2)の方法において、溶融混練装置としては、特に限定されず、押出機、ニーダー、バンバリミキサー、およびロール等が挙げられる。生産性と利便性優れることから、溶融混練装置としては、押出機が好ましく、2軸押出機がさらに好ましい。
【0074】
前記(b1)の方法において、混合またはブレンドに使用するペンタエリスリトールおよびその他の添加剤の使用量が、得られる樹脂粒子におけるペンタエリスリトールおよびその他の添加剤の含有量となる。また、前記(b2)の方法において、溶融混練装置に供給されるペンタエリスリトールおよびその他の添加剤の供給量が、得られる樹脂粒子におけるペンタエリスリトールおよびその他の添加剤の含有量となる。それ故、ペンタエリスリトールおよびその他の添加剤の前記使用量および前記供給量については、上述の(ペンタエリスリトール)の項および(添加剤)の項の記載が援用される。なお、本製造方法で使用するその他の添加剤の全てを樹脂粒子調製工程で使用する必要はない。換言すれば、本製造方法で使用するその他の添加剤の全てまたは一部(例えば架橋剤および可塑剤等)を、樹脂粒子調製工程で使用することなく、すなわち樹脂粒子に含有させることなく、続く分散工程で分散液中に添加してもよい。
【0075】
本発明者らは、驚くべきことに、樹脂粒子に含まれるペンタエリスリトールの量よりも、得られる発泡粒子中のペンタエリスリトールの量が少ない場合がある、という知見を独自に得た。この理由について、本発明者らは、以下の点を推測した:(a)樹脂粒子中のペンタエリスリトールが、本製造方法の発泡工程中で、水系分散媒中に溶出する場合があること;(b)発泡工程における、樹脂粒子中のペンタエリスリトールの溶出量は、発泡工程の条件および/または要する時間等により変化し得ること;(c)ペンタエリスリトールの前記溶出量は、樹脂粒子中に含まれるペンタエリスリトールの量(100重量%)のおおむね0.1重量%~99重量%程度であること。なお、本発明はかかる推測に限定されるものではない。
【0076】
所望の範囲内のペンタエリスリトール量を含む発泡粒子を最終的に得たい場合、後述する発泡工程の各工程の所定の条件下におけるペンタエリスリトールの溶出量を事前に調べておくことが好ましい。所望の範囲内のペンタエリスリトール量を含む発泡粒子を得る場合、事前に調べたペンタエリスリトールの溶出量に基づき、樹脂粒子調製工程で使用するペンタエリスリトールの使用量を調整することができる。
【0077】
溶融混練工程において、樹脂組成物を溶融混練するときの温度は、P3HAの物性(融点、重量平均分子量等)および使用するその他の添加剤の種類等によるため一概には規定できない。樹脂組成物を溶融混練するときの温度に関して、例えば、ダイスのノズルから吐出される溶融混練された樹脂組成物の温度(以下、組成物温度と称する場合がある。)を150℃~200℃とすることが好ましく、160℃~195℃とすることがより好ましく、170℃~190℃とすることがさらに好ましい。組成物温度が150℃以上である場合、樹脂組成物が溶融混練不足となる虞がない。一方、組成物温度が200℃以下である場合、P3HAが熱分解する虞がない。
【0078】
粒子成形工程の態様としては、溶融混練された樹脂組成物を所望の形状に成形できる限り、特に限定されない。前記溶融混練装置としてダイスおよび切断装置を備える溶融混練装置を使用することにより、粒子成形工程において、溶融混練された樹脂組成物を所望の形状に容易に成形できる。具体的には、溶融混練された樹脂組成物を、溶融混練装置に備えられたダイスのノズルから吐出し、吐出と同時に、または吐出後に樹脂組成物を切断装置により切断することにより、所望の形状に成形できる。得られる樹脂粒子の形状としては特に限定されないが、発泡に利用しやすいことから、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状などが好ましい。
【0079】
粒子成形工程では、ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却してもよい。ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却する場合、樹脂組成物の冷却と同時に、または冷却後に樹脂組成物を切断装置により切断すればよい。
【0080】
粒子成形工程において、ダイスのノズルから吐出される樹脂組成物を冷却するとき、冷却された樹脂組成物が示す温度(以下、冷却温度と称する場合がある。)は、特に限定されない。冷却温度は、20℃~80℃が好ましく、30℃~70℃がより好ましく、40℃~60℃がさらに好ましい。当該構成によると、溶融混練された樹脂組成物の結晶化が十分に早いため、樹脂粒子の生産性が良好となる利点を有する。
【0081】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子の物性)
(樹脂粒子の融点)
樹脂粒子の融点(以下、「Tmp」と称する場合がある)は、特に限定されないが、110.0℃~165.0℃が好ましく、120.0℃~155.0℃がより好ましい。樹脂粒子の融点が110.0℃以上であれば、得られる発泡粒子の成形時の、加熱による寸法の変化を抑制できる。一方、樹脂粒子の融点が165.0℃以下であれば、樹脂粒子の発泡中に、P3HAが加水分解する虞がない。なお、樹脂粒子が含むP3HA以外の成分(例えばペンタエリスリトールなど)は樹脂粒子の融点にほとんど影響を及ぼさない。換言すると、樹脂粒子の融点は、樹脂粒子が含むP3HAの融点とも言える。
【0082】
ここで、樹脂粒子の融点(Tmp)は、示差走査熱量計法(以降、「DSC法」と称する)により測定したものである。具体的な操作手順は以下の通りである:(1)樹脂粒子5mg~6mgを量り取る;(2)樹脂粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、樹脂粒子を融解する;(3)前記(2)の過程で得られる樹脂粒子のDSC曲線の、最も高温の融解ピークの温度を樹脂粒子の融点として求めることができる。
【0083】
(樹脂粒子の1個当たりの重量)
樹脂粒子の1個当たりの重量は、特に限定されないが、0.3mg~10.0mgが好ましく、0.5mg~5.0mgがより好ましい。樹脂粒子の1個当たりの重量が0.3mg以上であれば、樹脂粒子を高い生産性で安定して製造することができる。一方、樹脂粒子の1個当たりの重量が10.0mg以下であれば、当該樹脂粒子から得られる発泡粒子は、薄肉化された発泡成形体を容易に提供し得る。
【0084】
(樹脂粒子の形状)
樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、長さと直径との比率(長さ/直径)が0.5~3.0が好ましく、1.5~2.7がより好ましく、2.0~2.7がさらに好ましい。樹脂粒子の長さ/直径が0.5~3.0であれば、得られる発泡粒子の形状が偏平とならず、球形または略球形となり易い。球形または略球形の発泡粒子は、成形機の金型の成形空間への充填性が良く、表面美麗性が良好な発泡成形体を提供し得る。ここで、樹脂粒子の長さとは、樹脂粒子の製造過程において、樹脂粒子を切断するときに樹脂粒子に現れる(生じる)、2つの切断面間の距離の最大値を意図する。次に、樹脂粒子の長さ方向をx方向としたとき、x方向に垂直な断面(断面x)上に、任意の直線yと、直線yに垂直な直線zとを引く。直線yが断面xで切り取られて得られる線分を線分yとし、直線zが断面xで切り取られて得られる線分を線分zとする。樹脂粒子の直径とは、線分yの長さと線分zの長さとの平均値を意図する。
【0085】
<ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法>
次に、本製造方法の工程について説明する。なお、本明細書において、「パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物」を「有機過酸化物P」と称する場合もある。
【0086】
(分散工程)
分散工程は、水系分散媒中に、P3HAおよびペンタエリスリトールを含むP3HA系樹脂粒子と有機過酸化物Pと発泡剤とが分散している分散液を調製する工程ともいえる。なお、分散液中で、(a)有機過酸化物P、有機過酸化物P以外の架橋剤および架橋助剤は樹脂粒子中のP3HAとの反応により消費され、存在していなくてもよく、(b)発泡剤および可塑剤は樹脂粒子中に含浸され、分散された状態で存在していなくてもよい。
【0087】
容器としては特に限定されないが、後述する発泡温度および発泡圧力に耐えられる容器であることが好ましく、例えば耐圧容器であることが好ましい。
【0088】
水系分散媒としては、樹脂粒子、有機過酸化物P、発泡剤等を均一に分散できるものであればよく、特に限定されない。水系分散媒としては、例えば、水道水および/または工業用水を用いることもできる。発泡粒子の安定した生産が可能な点から、水系分散媒としては、RO水(逆浸透膜法により精製された水)、蒸留水、脱イオン水(イオン交換樹脂により精製された水)等の純水および超純水等を用いることが好ましい。
【0089】
水系分散媒の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、100重量部~1000重量部が好ましい。
【0090】
本製造方法で使用する有機過酸化物Pは、樹脂粒子、より具体的には樹脂粒子中のP3HAに対して架橋剤として機能し得る。本製造方法において有機過酸化物Pを使用することにより、得られる発泡粒子中のP3HAは架橋構造を有するP3HAとなる。すなわち、ゲル分率に優れたP3HA発泡粒子を得ることができる。すなわち、本製造方法において有機過酸化物Pを使用することにより、(a)発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するとともに、(b)低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体が得られるという利点を有する。発泡工程では樹脂粒子中のP3HAの架橋反応も進行するため、発泡工程は架橋工程ともいえる。
【0091】
本明細書において、有機過酸化物Pとは分子中に少なくとも一つのパーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物を意図する。有機過酸化物Pの中でも、パーオキシカーボネート基を1つ有する有機過酸化物が好ましく、具体的には、下記一般式(3)で示される有機過酸化物が好ましい:
-O-CO-OO-R・・・(3):
一般式(3)中、Rは、炭素数1~20の直鎖状、環状、または分枝状の飽和炭化水素基であり、Rは炭素数1~20の直鎖状、環状、または分枝状の飽和炭化水素基である。前記炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子、窒素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。
【0092】
有機過酸化物Pは、(a)樹脂粒子製造工程で使用してもよく、(b)分散工程で使用してもよく、(c)樹脂粒子製造工程および分散工程で使用してもよい。より具体的に、有機過酸化物PをP3HAと反応させるためには、(a)樹脂粒子製造工程において有機過酸化物PとP3HAを溶融混練してもよく、(b)分散工程において樹脂粒子と有機過酸化物Pとを水系分散媒中に分散させてもよく、(c)有機過酸化物PとP3HAを溶融混練するとともに、さらに、樹脂粒子と有機過酸化物Pとを水系分散媒中に分散させてもよい。分散工程において、樹脂粒子製造工程にて製造された樹脂粒子と有機過酸化物Pとを水系分散媒中に分散させることにより、当該樹脂粒子に有機過酸化物Pを含浸および反応させることができる。これらの理由から、有機過酸化物Pは、本製造方法のプロセス上好ましい架橋剤である。なお、架橋剤として有機過酸化物Pを使用する場合、P3HAの分子鎖同士が直接(架橋剤に由来する構造を介することなく)結合することにより、架橋構造が形成される。
【0093】
使用するP3HAの種類等によるが、有機過酸化物Pの1時間半減期温度は90℃~160℃が好ましく、110℃~160℃がより好ましく、110℃~125℃がさらに好ましく、114℃~124℃が特に好ましい。有機過酸化物Pの1時間半減期温度が90℃以上である場合、樹脂粒子が均一に架橋されるという利点を有する。一方、有機過酸化物Pの1時間半減期温度が160℃以下である場合、未反応の有機過酸化物Pが最終生成物中に残存する虞がないという利点を有する。
【0094】
有機過酸化物Pは、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC、1時間半減期温度:121℃)、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(TBIC、1時間半減期温度:118℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TAEC、1時間半減期温度:117℃)、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(TAIC、1時間半減期温度:115℃)からなる群より選択される1種類以上であることが好ましい。
【0095】
有機過酸化物Pの使用量は、樹脂粒子100重量部に対して、1.2重量部~5.0重量部が好ましく、1.5重量部~3.0重量部がより好ましく、1.5重量部~2.5重量部がさらに好ましい。有機過酸化物Pの使用量が、樹脂粒子100重量部に対して、1.2重量部以上である場合、(a)得られる発泡粒子を十分に架橋することができるとともに、(b)得られる発泡粒子の独立気泡率が高くなり、表面美麗性が良好で成形収縮率が小さい発泡成形体を得ることができる。一方、有機過酸化物Pの使用量が樹脂粒子100重量部に対して、5.0重量部以下である場合、有機過酸化物Pの添加量に応じた効果を得られるため、経済的に無駄が生じる虞がない。有機過酸化物Pの使用量は発泡粒子のゲル分率と正の相関関係があり、発泡粒子のゲル分率の値に大きく影響する。そのため、得られる発泡粒子のゲル分率を考慮して有機過酸化物Pの使用量を厳密に設定することが望ましい。
【0096】
本製造方法では、架橋剤として有機過酸化物P以外の架橋剤をさらに使用してもよい。有機過酸化物P以外の架橋剤としては、P3HAを架橋できる限り特に限定されないが、例えば、有機過酸化物P以外の有機過酸化物が挙げられる。本明細書において、「有機過酸化物P以外の有機過酸化物」を「その他有機過酸化物」と称する場合がある。その他有機過酸化物としては、1時間半減期温度が90℃~160℃の有機過酸化物が好ましい。そのようなその他有機過酸化物として、具体的には、過酸化ベンゾイル(BPO、1時間半減期温度:92℃)が挙げられる。本製造方法において、有機過酸化物Pとその他有機過酸化物との合計使用量、換言すれば架橋剤の合計使用量は、樹脂粒子100重量部に対して、1.2重量部より多く、5.0重量部以下であることが好ましく、1.5重量部~3.0重量部がより好ましく、1.5重量部~2.5重量部がさらに好ましい。有機過酸化物Pとその他有機過酸化物との合計使用量が、上述の範囲内であることが好ましい理由、または上述の範囲内であることにより得られる利点は、有機過酸化物Pの使用量について説明した理由および利点と同じである。有機過酸化物Pとその他有機過酸化物との合計使用量が、上述の範囲内であることが好ましい理由、または上述の範囲内であることにより得られる利点は、有機過酸化物Pの使用量について説明した理由および利点と同じである。本製造方法において、その他有機過酸化物の使用量は、樹脂粒子100重量部に対して、2.0重量部以下であることが好ましく、1.0重量部以下であることがより好ましく、0.5重量部以下であることがさらに好ましく、0.1重量部以下であることが特に好ましい。
【0097】
発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、空気等の無機ガス;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3~5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテル等のエーテル;モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;水等が挙げられる。発泡剤としては、上述した無機ガス、炭素数3~5の飽和炭化水素、エーテル、ハロゲン化炭化水素および水からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができる。中でも、環境負荷や発泡力の観点から、発泡剤としては窒素または二酸化炭素を用いることが好ましい。これら発泡剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の発泡剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0098】
発泡剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、2重量部~10000重量部が好ましく、5重量部~5000重量部がより好ましく、10重量部~1000重量部がさらに好ましい。発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して2重量部以上である場合、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。一方、発泡剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して10000重量部以下である場合、発泡剤の使用量に応じた効果が得られるため、経済的な無駄が生じない。
【0099】
本製造方法では、分散剤を使用することが好ましい。分散剤を使用することにより、樹脂粒子同士の合着(ブロッキングと称する場合がある。)を抑制でき、安定的に発泡粒子を製造できるという利点を有する。分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレイ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機物が挙げられる。これら分散剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0100】
分散剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.1重量部~3.0重量部が好ましく、0.5重量部~1.5重量部がより好ましい
本製造方法では、P3HAの架橋効率を向上させるために、架橋助剤を使用してもよい。架橋助剤としては、例えば、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋助剤としては、当該化合物の中でも、特に、アリルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジビニル化合物等が好ましい。これら架橋助剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の架橋助剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0101】
架橋助剤の使用量は特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.01重量部~3.00重量部が好ましく、0.03重量部~1.50重量部がより好ましく、0.05重量部~1.00重量部がさらに好ましい。架橋助剤の使用量が樹脂粒子100重量部に対して0.01重量部以上であれば、架橋助剤として十分な効果を発揮する。
【0102】
分散工程において、樹脂粒子に有機過酸化物Pと、必要に応じて有機過酸化物P以外の架橋剤および/または架橋助剤とを含浸および反応させるとき、P3HAの架橋効率を上げるために、容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くすることが好ましい。容器内の酸素濃度および分散液中の溶存酸素量を低くする方法としては、二酸化炭素および窒素等の無機ガスで容器内の気体および分散液中に溶解している気体を置換すること、並びに容器内の気体を真空引きすることが挙げられる。
【0103】
本製造方法では、樹脂粒子同士の合着抑制効果を向上させるために、分散助剤を使用してもよい。分散助剤としては、例えば、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤が挙げられる。これら分散助剤の1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の分散助剤を混合して使用する場合、目的に応じて、混合比率を適宜調整してもよい。
【0104】
分散助剤の使用量は、特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0.001重量部~0.500重量部が好ましく、0.010重量部~0.200重量部がより好ましい。樹脂粒子同士の合着抑制効果をより向上させるために、前記分散剤と当該分散助剤とは、併用することが好ましい。
【0105】
本製造方法では、可塑剤を使用してもよい。可塑剤を使用することにより、発泡粒子の密度を小さくしやすい、すなわち発泡粒子の発泡倍率を向上しやすいという利点を有する。
【0106】
本製造方法で使用する可塑剤、または好適に使用する可塑剤としては、前記<ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系樹脂粒子>の(添加剤)の項に記載の可塑剤を挙げることができる。
【0107】
可塑剤の使用量は特に限定されないが、樹脂粒子100重量部に対して、0重量部より多く、20重量部以下が好ましく、1重量部~20重量部が好ましく、2重量部~15重量部がより好ましく、3重量部~10重量部がさらに好ましい。分散工程で使用する樹脂粒子が、分散工程前に既に可塑剤を含んでいてもよい。使用する樹脂粒子が分散工程前に既に可塑剤を含んでいる場合、樹脂粒子が分散工程前に既に含んでいる可塑剤の量と、分散工程において使用される可塑剤の量との合計量が、上記の範囲を充足することが好ましい。
【0108】
(昇温-昇圧工程および保持工程)
本製造方法は、容器内温度を一定温度まで昇温し、かつ容器内圧力を一定圧力まで昇圧する昇温-昇圧工程をさらに有することが好ましい。本製造方法は、昇温-昇圧工程に加えて、容器内温度および圧力を一定温度かつ一定圧力で保持する保持工程をさらに有することがより好ましい。昇温-昇圧工程は、分散工程後に実施されることが好ましく、保持工程は、昇温-昇圧工程後に実施されることが好ましい。本明細書において、昇温-昇圧工程および保持工程における(a)一定温度を発泡温度と称する場合があり、(b)一定圧力を発泡圧力と称する場合がある。
【0109】
発泡温度は、P3HAの種類、発泡剤の種類、所望の発泡粒子の見掛け密度等によって異なるので、一概には規定できない。発泡温度は、発泡させる前の樹脂粒子の融点(Tmp)よりも低い温度とすることが好ましい。発泡温度は、例えば、(Tmp-40.0)℃~Tmp℃が好ましく、(Tmp-30.0)℃~(Tmp-10.0)℃がより好ましく、(Tmp-20.0)℃~(Tmp-15.0)℃がさらに好ましく、(Tmp-19.0)℃~(Tmp-16.0)℃が最も好ましい。発泡温度が(Tmp-40.0)℃以上である場合、密度の好適な発泡粒子が得られる傾向がある。一方、発泡温度がTmp℃以下である場合、容器内で樹脂粒子の加水分解が起こる虞がない。
【0110】
昇温-昇圧工程において、所望の発泡温度まで昇温するときの速度(以下、昇温速度と称する場合がある)としては1.0℃/分~3.0℃/分が好ましく、1.5℃/分~3.0℃/分がより好ましい。昇温速度が1.0℃/分以上であれば、生産性に優れる。一方、昇温速度が3.0℃/分以下であれば、昇温時に、樹脂粒子への発泡剤の含浸および有機過酸化物PとP3HAとの反応が不十分となってしまう虞がない。
【0111】
発泡圧力は、例えば、1.0MPa(ゲージ圧)~10.0MPa(ゲージ圧)が好ましく、2.0MPa(ゲージ圧)~5.0MPa(ゲージ圧)がより好ましく、2.5MPa(ゲージ圧)~4.5MPa(ゲージ圧)がより好ましく、3.0MPa(ゲージ圧)~4.0MPa(ゲージ圧)がさらに好ましく、3.2MPa(ゲージ圧)~3.5MPa(ゲージ圧)がよりさらに好ましく、3.2MPa(ゲージ圧)~3.4MPa(ゲージ圧)が特に好ましい。発泡圧力が1.0MPa(ゲージ圧)以上であれば、密度の好適な発泡粒子を得ることができる。
【0112】
保持工程において、容器内の分散液を発泡温度および発泡圧力付近で保持する時間(保持時間)は、特に限定されない。保持時間は、1分間~120分間が好ましく、30分間~120分間がより好ましく、45分間~90分間がさらに好ましい。保持時間が1分間以上であれば、未反応の有機過酸化物Pが残る虞がない。一方、120分間以下であれば、樹脂粒子の含むP3HAの余分な加水分解が起こる虞がない。
【0113】
(放出工程)
本製造方法は、容器の一端を解放し、容器内の分散液を、発泡圧力(すなわち、容器内圧力)よりも低圧の領域に放出する放出工程をさらに有することが好ましい。放出工程は、昇温-昇圧工程後、または保持工程後、に実施されることが好ましい。放出工程により、樹脂粒子を発泡させることができ、結果として発泡粒子が得られる。
【0114】
放出工程において、「発泡圧力よりも低圧の領域」は、「発泡圧力よりも低い圧力下の領域」または「発泡圧力よりも低い圧力下の空間」を意図し、「発泡圧力よりも低圧の雰囲気下」ともいえる。発泡圧力よりも低圧の領域は、発泡圧力よりも低圧であれば特に限定されず、例えば、大気圧下の領域であってもよい。
【0115】
放出工程において、発泡圧力よりも低圧の領域に分散液を放出するとき、分散液の流量調整、得られる発泡粒子の発泡倍率のバラツキ低減等の目的で、直径1mm~5mmの開口オリフィスを通して分散液を放出することもできる。また、比較的融点の高い樹脂粒子を使用する場合、発泡性を向上させる目的で、前記低圧の領域(空間)を飽和水蒸気で満たしても良い。
【0116】
本製造方法において、上述した分散工程から放出工程までをまとめて「発泡工程」と称する場合がある。発泡工程は、架橋剤を使用して樹脂粒子を発泡させる工程、ともいえる。
【0117】
(二段発泡工程)
本製造方法において、発泡工程だけでは、所望の見掛け密度の発泡粒子が得られない場合がある。その場合、本製造方法は、発泡工程で得られた発泡粒子をさらに膨張させる二段発泡工程をさらに含んでいてもよい。二段発泡工程としては、発泡工程で得られた発泡粒子をさらに膨張させることにより、発泡工程で得られた発泡粒子の見掛け密度よりもさらに小さい見掛け密度の発泡粒子を得られる限り特に限定されない。二段発泡工程としては、例えば、以下のような態様が挙げられる:(s1)発泡工程で得られた発泡粒子を容器内に供給する;(s2)容器内に空気または二酸化炭素などの無機ガスを供給して容器内圧力を昇圧する;(s3)前記(s2)により、発泡粒子に当該無機ガスを含浸させ、発泡粒子内の圧力(以下、「発泡粒子内圧」と称する場合がある。)を常圧よりも高くする;(s4)その後、当該発泡粒子を水蒸気等で加熱して更に膨張させ、所望の見掛け密度の発泡粒子を得る。二段発泡工程にて得られる発泡粒子を二段発泡粒子と称する場合がある。また、二段発泡工程を行う場合、前記発泡工程を一段発泡工程と称し、一段発泡工程で得られる発泡粒子を一段発泡粒子と称する場合がある。
【0118】
二段発泡工程における、発泡粒子内圧は、0.15MPa(絶対圧)~0.60MPa(絶対圧)が好ましく、0.30MPa(絶対圧)~0.60MPa(絶対圧)がより好ましい。
【0119】
二段発泡工程において(前記s2およびs3において)、発泡粒子に当該無機ガスを含浸させるときの、容器内温度としては、10℃~90℃が好ましく、20℃~90℃がより好ましく、40℃~90℃がさらに好ましい。
【0120】
二段発泡工程において(前記s4において)、発泡粒子を加熱する水蒸気等の圧力(以下、「二段発泡圧力」と称する場合がある。)は、用いる発泡粒子の特性および所望の見掛け密度によって異なり、一概には規定できない。二段発泡圧力は、0.01MPa(ゲージ圧)~0.17MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.03MPa(ゲージ圧)~0.11MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
【0121】
二段発泡粒子のゲル分率および見掛け密度としては、それぞれ、発泡粒子のゲル分率および見掛け密度と同じ態様であることが好ましい。すなわち、二段発泡粒子のゲル分率および見掛け密度としては、上述の(ゲル分率)の項および(密度)の項の記載を適宜援用できる。
【0122】
〔3.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)およびペンタエリスリトールを含み、前記ペンタエリスリトールの含有量は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%であり、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子のゲル分率が30重量%~80重量%であり、以下の(1)を満たす:
3(重量%)≧|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|・・・(1)、
ここで、前記小粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径-20%以下の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、前記大粒子は、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径+20%以上の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子である。
【0123】
本明細書において、「本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子」を「本発泡粒子」と称する場合がある。
【0124】
本発泡粒子は、上述の構成を有するため、発泡粒子内のP3HAが均一に架橋されているという利点を有する。なお、本明細書において、「発泡粒子内のP3HAが均一に架橋されている」とは、大きさの異なる複数の発泡粒子間で、当該発泡粒子が含むP3HAの架橋の度合いの差、具体的には当該発泡粒子のゲル分率の差が、小さい(例えば3重量%以下である)ことを意図する。また、本発泡粒子は、発泡粒子内のP3HAが均一に架橋されていることにより、成形ムラの少ない良品の発泡成形体を提供できるという利点も有する。
【0125】
本発泡粒子は、本製造方法により得られる発泡粒子であることが好ましい。換言すれば、本製造方は、本発泡粒子を生産効率よく提供することができる。
【0126】
上述したように、樹脂粒子に含まれるペンタエリスリトールの量よりも、得られる発泡粒子中のペンタエリスリトールの量が少ない場合がある。本発泡粒子(例えば本製造方法により得られる発泡粒子)中のペンタエリスリトール含有量は、例えば、発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%であり、0.05重量%~4.00重量%であってもよく、0.10重量%~2.50重量%であってもよく、0.15重量%~1.50重量%であってもよい。本製造方法、すなわち、P3HA100重量部に対してペンタエリスリトール0.20重量部~20.00重量部含む樹脂粒子を原料として用い、上述した分散工程を含む製造方法により得られる発泡粒子は、概ね、発泡粒子100重量%に対して0.01重量%~4.50重量%のペンタエリスリトールを含み得る。
【0127】
発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を定量する方法に特に限定はない。発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、分析機関等で分析可能である。発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、例えば、以下の(1)~(3)の方法によって測定することができる:(1)発泡粒子20mgをクロロホルム0.8ml中に完全に溶解する;(2)前記クロロホルム中に、さらに内部標準として(3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む重水1.6mlを加えて分液操作を行い、発泡粒子中のペンタエリスリトールを重水層に移行させる;(3)H-NMRによって、(a)1.6mg~9.6mg(1.6mg、5.0mg、7.0mg、9.6mg)のペンタエリスリトール標品と、(b)(2)で抽出した重水層中((3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む)のペンタエリスリトール量のNMRスペクトルを測定する;(4)ペンタエリスリトール標品の測定結果から得られる検量線に基づき、重水層中のペンタエリスリトール量を定量し、発泡粒子の含むペンタエリスリトール量とする。当該方法を分液法と称する場合もある。
【0128】
なお、架橋剤を使用した発泡粒子は有機溶媒に完全に溶解しない場合がある。そのため、架橋剤を使用して得られた発泡粒子X中のペンタエリスリトール含有量を算出したい場合、以下のようにする;(1)架橋剤を使用しないこと以外は発泡粒子Xの製造方法と全く同じ条件で発泡粒子を製造し、発泡粒子Yを得る;(2)発泡粒子Yのペンタエリスリトール量を定量する;(3)発泡粒子Y中のペンタエリスリトール含有量を、発泡粒子X中のペンタエリスリトール含有量と見做す。
【0129】
なお、樹脂粒子中に含まれるペンタエリスリトール以外の成分(添加剤など)については、分散工程において樹脂粒子から溶出する虞は少ない。そのため、樹脂粒子中に含まれるペンタエリスリトール以外の成分については、P3HA100重量部に対する添加部数あるいは供給部数から算術計算し、得られた結果を発泡粒子中の含有量とすることができる。
【0130】
<物性>
以下、本発泡粒子の物性について説明する。
【0131】
(ゲル分率)
本発泡粒子は、上述するように有機過酸化物Pを使用して製造されることが好ましい。有機過酸化物Pを使用して発泡粒子を製造する場合、得られる発泡粒子は架橋構造を有し得る。すなわち、本発泡粒子は、架橋構造を有することが好ましい。本明細書において、発泡粒子の架橋構造は、発泡粒子のゲル分率によって評価される。発泡粒子が架橋構造を有するとは、発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して、1重量%以上であることを意図する。なお、「発泡粒子のゲル分率」は、後述する小粒子のゲル分率および大粒子のゲル分率との比較のために、「全発泡粒子のゲル分率」と称される場合がある。
【0132】
本発明の一実施形態において、全発泡粒子のゲル分率は、発泡粒子100重量%に対して、30重量%~80重量%であり、35重量%~80重量%であることが好ましく、40重量%~80重量%であることがより好ましく、45重量%~80重量%であることがより好ましく、50重量%~80重量%であることがより好ましく、55重量%~80重量%であることがさらに好ましく、65重量%~80重量%であることがよりさらに好ましく、70重量%~75重量%であることが特に好ましい。全発泡粒子のゲル分率が、発泡粒子100重量%に対して、(a)30重量%以上である場合、発泡成形体を成形するとき、良質の発泡成形体を提供し得る発泡粒子の成形温度幅が広くなり、生産性が向上するという利点を有し、(b)80重量%以下である場合、低い成形圧力で内部融着性に優れる発泡成形体が得られるという利点を有する。
【0133】
なお、本発明の一実施形態において、全発泡粒子のゲル分率とは、該発泡粒子中のP3HAの架橋度を示す指標である。全発泡粒子のゲル分率は、(a)有機過酸化物Pおよび(b)任意で使用される有機過酸化物P以外の架橋剤(例えば上述するその他有機過酸化物)の種類および/またはその使用量等により制御し得る。
【0134】
本明細書において、発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(a1)~(a5)の通りである:(a1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れる;(a2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流する;(a3)得られる加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理する;(a4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定する;(a5)以下の式により、ゲル分率を算出する:
ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
【0135】
本発泡粒子は、以下の(1)を満たす:
3(重量%)≧|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|・・・(1)。
【0136】
ここで、前記小粒子とは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径-20%以下の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子であり、前記大粒子とは、前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の平均粒子径+20%以上の粒子径を有する前記ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子である。
【0137】
本発泡粒子は、小粒子のゲル分率と、大粒子のゲル分率との差(絶対値)、すなわち|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|が3重量%以下であり、2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。なお、小粒子のゲル分率および大粒子のゲル分率は、それぞれ、前記(a1)において、1gの発泡粒子を1gの小粒子または1gの大粒子に置き換える以外は、前記(a1)~(a5)の方法と同じ方法で測定して得られたゲル分率(重量%)である。
【0138】
本発明の一実施形態において、小粒子と大粒子とを選別する方法は特に限定されないが、例えば以下の(1)~(3)を順に含む方法が挙げられる:(1)発泡粒子の平均粒子径より20%大きい目開きを持つ篩(例えば、金網、メッシュ、またはパンチングメタル等)を上段に、発泡粒子の平均粒子径より20%小さい目開きを持つ篩を下段に配置したふるい機に発泡粒子を投入する;(2)ふるい機を振動させ、発泡粒子を分級する;(3)上段に残った発泡粒子を大粒子とし、下段より排出された発泡粒子を小粒子とする。なお、上述のように平均粒子径で切り分けた大粒子と小粒子とは、平均粒子径+20%以下の大粒子と、平均粒子径-20%以下の小粒子と言える。ここで、発泡粒子の平均粒子径より20%大きい目開きを持つ篩および/または発泡粒子の平均粒子径より20%小さい目開きを持つ篩を入手することが困難な場合もある。その場合には、発泡粒子の平均粒子径より20%以上大きい(例えば20%~25%大きい)目開きを持つ篩および/または発泡粒子の平均粒子径より20%以上小さい(例えば20%~25%小さい)目開きを持つ篩を、それぞれ入手して用いればよい。発泡粒子の平均粒子径+20%より大きい粒子径を有する発泡粒子のゲル分率と、発泡粒子の平均粒子径-20%より小さい粒子径を有する発泡粒子のゲル分率と、の差(絶対値)が3重量%以下である場合、発泡粒子の平均粒子径+20%以上大きい粒子径を有する発泡粒子のゲル分率と、発泡粒子の平均粒子径-20%以上小さい粒子径を有する発泡粒子のゲル分率と、の差(絶対値)は3重量%以下となる蓋然性が高い。
【0139】
ここで、発泡粒子の平均粒子径の測定方法は、以下の(1)~(3)の方法によって測定した値を意図する;(1)1個の発泡粒子について、ノギスおよび/またはデジタルマイクロスコープを用いて、長さと直径を測定する;(2)長さと直径との和の平均値を当該発泡粒子の粒子径とする;(3)異なる10個の発泡粒子について、(1)~(2)の方法によって粒子径を測定し、10個の発泡粒子の粒子径の平均値を発泡粒子の平均粒子径とする。
【0140】
本明細書において、発泡粒子の長さとは、発泡粒子において、2点間の直線距離が最も長くなるよう任意の2点を選択した場合の、2点間直線距離となる長さを意図する。次に、発泡粒子の長さ方向をx方向としたとき、x方向に垂直な断面(断面x)上に、任意の直線yと、直線yに垂直な直線zとを引く。直線yが断面xで切り取られて得られる線分を線分yとし、直線zが断面xで切り取られて得られる線分を線分zとする。本明細書において、本発泡粒子の直径とは、線分yの長さと線分zの長さとの平均値を意図する。
【0141】
本発泡粒子は、上述のように小粒子と大粒子のゲル分率の差が少ない。すなわち、従来発泡粒子では不良品として取り除く必要がある小粒子および大粒子を含む発泡粒子を用いて成形した場合であっても、成形ムラの少ない発泡成形体を提供することができる。換言すると、本発泡粒子は、小粒子および大粒子を良品として使用できるため、不良品を分級して取り除く必要がなく、生産効率に優れると言える。
【0142】
本発明の一実施形態において、発泡粒子の生産効率は、表面の色のムラが全くないか、あってもほんのわずかである発泡成形体を得るために、材料の発泡粒子を分級する必要が有るか否かに基づき、評価する。具体的な評価方法は、下記実施例にて詳述する。
【0143】
(密度)
本発泡粒子の密度(見掛け密度)は、特に限定されないが、0.020g/cm~0.600g/cmであることが好ましく、0.030g/cm~0.300g/cmであることがより好ましく、0.050g/cm~0.100g/cmであることがさらに好ましい。発泡粒子の密度が、(a)0.030g/cm以上である場合、緩衝特性および/または機械的強度に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有し、(b)0.600g/cm以下である場合、軽量性に優れる発泡成形体が得られる傾向があるという利点を有する。1回の発泡だけでは所望の密度の発泡粒子が得られない場合、1回発泡した発泡粒子を、2回目以降の発泡工程に付してもよい。
【0144】
なお、本明細書において、発泡粒子の密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りである:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈める;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cm)とする;(3)以下の式により、発泡粒子の密度を算出する;
密度(g/cm)=Wd/Vd。
【0145】
本発泡粒子の形状は、特に限定されないが、長さと直径との比率(長さ/直径)が1.0~2.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましい。発泡粒子の長さ/直径が1.0~2.0であれば、成形機の金型の成形空間への充填性が良く、表面美麗性が良好な発泡成形体が得られるという利点を有する。さらに、発泡粒子の長さ/直径が1.0~1.2に近づくほど、特に1.0に近づくほど、当該発泡粒子から得られる発泡成形体において、発泡粒子間の空隙が小さくなる傾向となり、その結果、緩衝特性および/または機械的強度に優れるという利点を有する。ここで、本発泡粒子の長さとは、発泡粒子において、2点間の直線距離が最も長くなるよう任意の2点を選択した場合の、2点間直線距離となる長さを意図する。次に、発泡粒子の長さ方向をx方向としたとき、x方向に垂直な断面(断面x)上に、任意の直線yと、直線yに垂直な直線zとを引く。直線yが断面xで切り取られて得られる線分を線分yとし、直線zが断面xで切り取られて得られる線分を線分zとする。本発泡粒子の直径とは、線分yの長さと線分zの長さとの平均値を意図する。
【0146】
〔4.P3HA系発泡成形体〕
本発明の一実施形態に係るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体は、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子の製造方法〕の項に記載の製造方法により得られるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子、または、〔3.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子、を成形してなる発泡成形体である。本発泡成形体は、〔2.ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子〕の項に記載の発泡粒子を含む発泡成形体であるともいえる。
【0147】
本発泡成形体は、上述の構成を有するため、成形ムラ(色ムラ)が少ないという利点を有する。
【0148】
本発泡成形体の製造方法(すなわち発泡粒子の成形方法)は特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、金型を備える成型機を使用する、次の(A)~(D)の型内発泡成形の方法等が挙げられるが、特に限定されない:
(A)発泡粒子(上述の二段発泡粒子を含む、以下同じ)を容器内で無機ガスで加圧処理して、当該発泡粒子内に無機ガスを含浸させ、所定の発泡粒子内圧を付与した後、当該発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱する方法;
(B)発泡粒子を金型に充填した後、当該金型内の体積を10%~75%減ずるように圧縮し、水蒸気で加熱する方法;
(C)発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、当該発泡粒子の回復力を利用して、水蒸気で加熱する方法;
(D)特に前処理することなく、発泡粒子を金型に充填し、水蒸気で加熱する方法。
【0149】
本発泡成形体の製造において、発泡粒子を加熱する水蒸気の圧力(以下、成形圧力と称する場合がある)は、用いる発泡粒子の特性等によって異なり、一概には規定できない。当該成形圧力は、0.05MPa(ゲージ圧)~0.30MPa(ゲージ圧)が好ましく、0.08MPa(ゲージ圧)~0.25MPa(ゲージ圧)がより好ましい。
【0150】
本発泡成形体の製造方法のうち前記(A)法での無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用できる。これら無機ガスの中でも、空気および/または二酸化炭素が好ましい。
【0151】
本発泡成形体の製造方法のうち前記(A)法での発泡粒子内圧は0.10MPa(絶対圧)~0.30MPa(絶対圧)が好ましく、0.11MPa(絶対圧)~0.25MPa(絶対圧)が好ましい。
【0152】
本発泡成形体の製造方法のうち(A)法での無機ガスを発泡粒子に含浸させる際の容器内の温度としては、10℃~90℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましい。
【実施例
【0153】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0154】
〔材料〕
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0155】
(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート))
P3HA:P3HB3HH(発明者が作製、モノマー比率は3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点145.0℃)
なお、P3HAは、国際公開WO2009/145164の段落[0064]~[0125]に記載の方法に準拠して作製した。
【0156】
(ペンタエリスリトール)
ペンタエリスリトール(ノイライザーP:三菱ケミカル株式会社)
(パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカルボナート(TBEC:アルケマ吉富株式会社製、ルぺロックスTBEC)
t-ブチルパーオキシイソプロピルカルボナート(TBIC:アルケマ吉富株式会社製、ルぺロックスTBIC)
t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカルボナート(TAEC:アルケマ吉富株式会社製、ルぺロックスTAEC)
t-アミルパーオキシイソプロピルカルボナート(TAIC:アルケマ吉富株式会社製、ルぺロックスTAIC)
(その他有機過酸化物)
過酸化ベンゾイル(BPO:アルケマ吉富株式会社製、ルぺロックスA75)
(気泡調整剤)
タルク(林化成社製タルカンパウダーPKS)
(発泡剤)
二酸化炭素(エア・ウォーター株式会社製)
窒素(エア・ウォーター株式会社製)
(分散剤)
第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)
(分散助剤)
アルカンスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製ラテムルPS)
〔測定方法〕
実施例および比較例において実施した評価方法に関して、以下に説明する。
【0157】
(樹脂粒子の融点(Tmp)の測定)
樹脂粒子の融点(Tmp)は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて測定した。具体的な操作手順は以下(1)~(3)の通りであった:(1)樹脂粒子5mg~6mgを量り取った;(2)樹脂粒子の温度を10.0℃/分の昇温速度で10.0℃から190.0℃まで昇温して、樹脂粒子を融解した;(3)前記(2)の過程で得られるDSC曲線において、最も高温の融解ピークの温度を樹脂粒子の融点とした。
【0158】
(発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量の測定)
発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量は、以下の(1)~(3)の方法によって測定した:(1)発泡粒子20mgをクロロホルム0.8ml中に完全に溶解した;(2)前記クロロホルム中に、さらに(3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む重水1.6mlmlを加えて分液操作を行い、ペンタエリスリトールを重水層に移行させた;(3)H-NMRによって、(a)1.6mg~9.6mg(1.6mg、5.0mg、7.0mg、9.6mg)のペンタエリスリトール標品と、(b)(2)で抽出した重水層((3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3-d4)1.6mgを含む)中のペンタエリスリトール量のスペクトルを測定し、ペンタエリスリトール標品の測定結果から得られる検量線に基づき、重水層中のペンタエリスリトール量を定量し、発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を算出した。なお、架橋構造を有する発泡粒子はクロロホルムに完全に溶解しない場合がある。そのため、架橋剤を使用しないこと以外は、各実施例および比較例と同じ条件で製造して得られた発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量を定量し、各実施例および比較例の発泡粒子(すなわち、架橋構造を有する発泡粒子)中のペンタエリスリトール含有量とした。
【0159】
(発泡粒子のゲル分率の測定)
発泡粒子のゲル分率の測定方法は以下の(a1)~(a5)の通りであった:(a1)150mlのフラスコに、1gの発泡粒子と、100mlのクロロホルムとを入れた;(a2)大気圧下、62℃で、フラスコ内の混合物を8時間加熱還流した;(a3)得られた加熱処理物を100メッシュの金網を備える吸引濾過装置を用いて濾過処理した;(a4)金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥し、乾燥物の重量Wg(g)を測定した;(a5)以下の式により、ゲル分率を算出した:
ゲル分率(重量%)=Wg/1×100。
【0160】
(小粒子と大粒子との選別)
発泡粒子中の小粒子と大粒子とを、以下の(1)~(3)を順に含む方法で選別した:(1)発泡粒子の平均粒子径より20%~25%大きい目開きを持つ篩を上段に、発泡粒子の平均粒子径より20%~25%小さい目開きを持つ篩を下段に配置したふるい機に発泡粒子を投入した;(2)ふるい機を振動させ、発泡粒子を分級した;(3)上段に残った発泡粒子を大粒子とし、下段より排出された発泡粒子を小粒子とした。
【0161】
ここで、発泡粒子の平均粒子径の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった;(1)1個の発泡粒子について、デジタルマイクロスコープを用いて、長さと直径を測定した;(2)長さと直径との和の平均値を当該発泡粒子の粒子径とした;(3)異なる10個の発泡粒子について、(1)~(2)の方法によって粒子径を測定し、10個の発泡粒子の粒子径の平均値を発泡粒子の平均粒子径とした。
【0162】
(小粒子と大粒子のゲル分率の差の測定)
前記(a1)の工程において、1gの発泡粒子を1gの前記選別した小粒子または大粒子と下したこと以外は、前記(発泡粒子のゲル分率の測定)項の方法に従って小粒子のゲル分率および大粒子のゲル分率を算出した。
以下の式により小粒子と大粒子のゲル分率の差を算出した:
小粒子と大粒子のゲル分率の差=|小粒子のゲル分率-大粒子のゲル分率|
(発泡粒子の密度の測定)
発泡粒子の密度の測定方法は、以下の(1)~(3)の通りであった:(1)エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、当該エタノール中に重量Wd(g)の発泡粒子を沈めた;(2)エタノールの水位上昇分(水没法)より読みとられる発泡粒子の容積をVd(cm)とした;(3)以下の式により、発泡粒子の密度を算出した;
密度(g/cm)=Wd/Vd。
【0163】
(発泡成形体の成形ムラの評価)
得られた発泡成形体の表面を目視で確認し、以下の基準で成形ムラを評価した:
E(非常に良い);発泡成形体の色が均一で、薄い色または濃い色の部分がない。
G(良い);発泡成形体の色がほぼ均一で、薄い色または濃い色の部分がほんのわずかある。
P(合格);発泡成形体の色がある程度均一で、薄い色または濃い色の部分がある程度ある。
B(不良);発泡成形体の色にムラがあり、薄い色または濃い色の部分がしばしばある。
BB(非常に不良);発泡成形体の色に非常にムラがあり、薄い色または濃い色の部分が非常に多くある。
【0164】
(生産効率の評価)
発泡成形体のムラの評価に基づき、発泡粒子の分級の必要性について以下のように評価した。
G(必要ない);発泡成形体のムラの評価がE(非常に良い)またはG(良い)である。
B(必要である);発泡成形体のムラの評価がB(不良)、BB(非常に不良)またはP(合格)である。
【0165】
発泡粒子の分級の必要性に基づき、生産効率を以下のように評価した:
G(良い);発泡粒子の分級の必要性がなく、全粒子が使用可能(選別不要)である。
B(不良);発泡粒子の分級の必要性があり、例えば、平均粒子径+20%未満の粒子径の粒子、または平均粒子径-20%超の粒子径の粒子のみが良品粒子として使用可能(選別要)である。
【0166】
〔実施例1〕
(樹脂粒子製造工程)
P3HA系組成物の溶融混練には、二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)を用いた。100重量部のP3HAと、ペンタエリスリトール1.0重量部と、タルク0.10重量部とを計量し、ドライブレンドして、P3HA系組成物を調製した。調製したP3HA系組成物を二軸押出機に供給し、当該P3HA系組成物をシリンダー設定温度130℃~160℃にて溶融混練した(溶融混練工程)。押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから183℃の溶融混練されたP3HA系組成物を吐出した。吐出されたP3HA系組成物を、43℃の水で水冷後、切断して、1個当たりの重量が2.0mgであり、長さ/直径が2.5の円柱状のP3HA系樹脂粒子を得た(粒子成形工程)。
【0167】
(発泡工程)
前記(樹脂粒子製造工程)で得られたP3HA系樹脂粒子100重量部と、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物としてTBEC2.0重量部と、純水200重量部と、分散剤として第三リン酸カルシウム0.8重量部と、分散助剤としてアルカンスルホン酸ナトリウム0.08重量部とを、耐圧容器内に供給した。耐圧容器内の原料を攪拌した。以降、分散液の放出が終わるまで、耐圧容器内の内容物(分散液)を攪拌し続けた。
【0168】
耐圧容器内に窒素を導入して真空引きを行い、耐圧容器内の酸素を除去した。さらに、耐圧容器内に発泡剤として二酸化炭素を供給し、分散液を調製した(分散工程)。その後、耐圧容器内の温度を129.5℃の発泡温度まで昇温した。
さらに、耐圧容器に二酸化炭素を供給して耐圧容器内の圧力を3.3MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧した(昇温―昇圧工程)。次いで、耐圧容器内の温度および圧力を、それぞれ、発泡温度および発泡圧力付近で60分間保持した(保持工程)。保持工程後、耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.2mmの開口オリフィスを通して、前記耐圧容器の分散液を大気圧下に放出し、P3HA系発泡粒子を得た(放出工程)。当該発泡粒子の表面に付着した分散剤等を水で洗浄した後、発泡粒子を75℃で乾燥した。得られた発泡粒子の長さ/直径は1.0であり、形状は円柱状であった。得られた発泡粒子中のペンタエリスリトール含有量、ゲル分率、大粒子のゲル分率、小分子のゲル分率、大分子と小分子のゲル分率の差、および密度を測定した。結果を表1に示す。
【0169】
(P3HA系発泡成形体の製造)
成形機(DAISEN社製EP-900)に搭載された縦370mm×横320mm×厚み60mmの金型内に、加圧処理を行わずに、前記(発泡工程)で得られた発泡粒子を充填した。充填した発泡粒子を0.15MPa(ゲージ圧)の過熱水蒸気で加熱して、発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を75℃で乾燥した。なお、各実施例および比較例で得られた発泡粒子を分級することなく、得られた発泡粒子全量を使用して発泡成形体を得た。得られた発泡成形体について、成形ムラを評価し、成形ムラに基づき、生産性を評価した。
【0170】
〔実施例2〕
TBECを1.5重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0171】
〔実施例3〕
パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物として、TBECに変えて、TBIC2.0重量部を使用したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0172】
〔実施例4〕
パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物として、TBECに変えて、TAEC2.0重量部を使用したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0173】
〔実施例5〕
パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物として、TBECに変えて、TAIC2.0重量部を使用したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0174】
〔実施例6〕
ペンタエリスリトールを0.5重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0175】
〔実施例7〕
ペンタエリスリトールを3.0重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0176】
〔比較例1〕
パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物であるTBECを使用することなく、パーオキシカーボネート基を有さない有機過酸化物であるBPO2.0重量部を使用したこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0177】
〔比較例2〕
TBECを1.0重量部としたこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0178】
〔比較例3〕
ペンタエリスリトールを加えなかったこと以外は実施例1と同じ方法により発泡粒子および発泡成形体を製造し、各物性を測定した。結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
表1中、「MPa(G)」とは、「MPa(ゲージ圧)」を意図する。
【0181】
〔考察〕
表1より、以下のことが明らかにわかる:
(1)実施例1~7の発泡粒子は、ゲル分率が良好であり、また大粒子と小粒子のゲル分率の差が小さいことが分かる。
【0182】
(2)実施例1~7と、比較例1との比較より、パーオキシカーボネート基を有さない有機過酸化物であるBPOを使用し、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物を使用しなかった場合、大粒子と小粒子のゲル分率の差が著しく大きくなること、すなわち、発泡粒子が均一に架橋されていないことが分かる。
【0183】
(3)実施例1~7と、比較例2との比較より、パーオキシカーボネート基を有する有機過酸化物の使用量が本発明の一実施形態の範囲外である場合、ゲル分率が低い発泡粒子となること、すなわち、発泡粒子が均一に架橋されていないことがわかる。
【0184】
(4)実施例1~7と、比較例3との比較より、ペンタエリスリトールの含有量が本発明の一実施形態の範囲外である場合、大粒子と小粒子のゲル分率の差が大きい発泡粒子となること、すなわち、発泡粒子が均一に架橋されていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明によれば、生産効率よく、P3HA系発泡粒子を提供し得る。該発泡粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体は、食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等に好適に使用し得る。