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特許7516253受動放射冷却のための製作方法、構造体、および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】受動放射冷却のための製作方法、構造体、および使用
(51)【国際特許分類】
   H02S 40/42 20140101AFI20240708BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H02S40/42
F28D15/02 102A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020556774
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019027715
(87)【国際公開番号】W WO2019204331
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】62/658,146
(32)【優先日】2018-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520393392
【氏名又は名称】ファイン, ロミー エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ファイン, ロミー エム.
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102620266(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0248381(US,A1)
【文献】再公表特許第97/048646(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0318031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0155043(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042052(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0131146(US,A1)
【文献】特開2010-281442(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159387(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062011(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162762(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338175(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1021627(KR,B1)
【文献】特開2010-000460(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106972068(CN,A)
【文献】特開2015-179797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0297361(US,A1)
【文献】国際公開第2016/205717(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 40/42
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却されるべき熱源から熱を伝導するように構成された受動放射冷却構造体であって、前記受動放射冷却構造体は、
1または複数の冷却スタックであって、各冷却スタックは、
レンズを有する第1の副層と、複数の方向転換結合要素を有する第2の副層とを備える第1の導波層と、
熱伝導層と、
前記第1の導波層と前記熱伝導層との間に挟まれている第1の放出層と
を備える、1または複数の冷却スタック
を備え、
前記第1の放出層は、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成され、地球の大気が透明である前記波長は、7μm~13μmの範囲内にあり、
前記第1の導波層の前記第1の副層内の前記レンズは、前記第1の放出層からの前記赤外線放射を前記第1の導波層の前記第2の副層内の前記複数の方向転換結合要素上に収集および集光するように構成され、
前記複数の方向転換結合要素の各々は、相互に平行であるように構成され、前記複数の方向転換結合要素の各々が、前記赤外線放射を前記受動放射冷却構造体から離れる方向に向けるように構成された注入ファセットを一端に有し、前記赤外線放射が前記受動放射冷却構造体の方に反射されることを防ぐように構成されたテーパ状部をもう一端に有する、受動放射冷却構造体。
【請求項2】
前記1または複数の冷却スタックの各冷却スタックは、第2の導波層と第2の放出層とをさらに備え、
前記第2の放出層は、前記第2の導波層と前記熱伝導層との間に挟まれており、
前記熱伝導層は、前記第1の放出層と前記第2の放出層との間に挟まれており、
前記第2の放出層は、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成され、地球の大気が透明である前記波長は、7μm~13μmの範囲内にある、請求項1に記載の受動放射冷却構造体。
【請求項3】
地球の大気が透明である前記波長に対して透明である前記受動放射冷却構造体上に装備される窓をさらに備える、請求項1~のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この特許出願は、2018年4月16日に出願された米国仮特許出願第62/658,146号の利益を主張する。この出願の開示は、参照によってその全体が本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、受動放射冷却に基づく構造体、使用および方法に関する。本明細書中で用いられるように、受動放射冷却は、地球の大気または他の周辺環境/囲いにおける透明の窓に対応する波長を放出するデバイスの使用によって達成される。例えば、受動放射冷却は、7μmから13μmの範囲内の赤外線(IR)波長を放出する材料を用いて屋外で達成され得る。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
「温室効果」として公知である現象において、大気は、電磁的放射の形で熱を捕らえる。しかし、全ての放射される波長が等しく捕らえられるわけではない。例えば、地球の表面から放出される放射が大気を離れる約7μmから13μmの間のIR放射波長において、いわゆる「大気の窓」が存在する。熱力学的観点から、これらの「大気の窓」の結果は、地球の表面上の物体からこれらの波長で放出される熱放射が、空間の冷却シンクに変換されることである。このように、蒸発冷却が乾燥気候において温度を低減するために用いられ得るのと同様にして、受動放出冷却は、惑星の表面においてでさえ、物体の温度を低減するために用いられ得る。
【0004】
放射冷却は、夜間日中の両方の条件下で実証されている。Raman et al.,“Passive radiative cooling below ambient air temperature under direct sunlight”,Nature,vol 515,2014年11月27日,pp540-544は、大気の窓において放出しながら入射光を反射するHfOおよびSiOの7つの層を用いる熱フォトニック手法を説明する。この手法を用いて、彼らは、直射日光で摂氏5度を超える屋上における冷却を実証した。それから、このグループは、可視的に透明なエッチングされたシリカフォトニック結晶バージョンを含む、放射で冷却する材料のいくつかの異なるバージョンを実証した。
【0005】
しかし、Ramanの手法は、低コスト材料、適用の容易さのための可撓性、ほこり収集に抵抗するための滑らかな頂面、および屋外環境に対する耐久性を要求する商業的な用途のためには実用的ではない。本発明の一側面は、高い冷却容量を有する実用的でコスト効率の良い放射冷却構造体を提供する。
【0006】
米国出願US2017/0248381において、分光的に透明であるが霞みがかかった放射冷却構造体が説明されており、非ポリマ粒子がポリマのマトリクスに無作為に埋め込まれている。粒子サイズの好ましい範囲は、1μmおよび30μmの間の球面粒子の平均有効径に対応する。ポリマのマトリクスに対する粒子の体積パーセンテージの好ましい範囲は、2%から25%までである。上記のサイズ範囲および体積パーセンテージ内の粒子は、7μmから13μmの範囲の波長でIR放射を捕捉および放出するために十分に適しているが、光散乱は、透明性の有意な損失につながる問題である。
【0007】
貨物温度制御トラックトレーラ内の製品を冷蔵するために、有意なエネルギー消費が要求される。毎年、冷蔵トラック業界は300億ドルよりも多い金額を燃料に費やしており、燃料は、労働よりもはるかに多い最大の費用の1つとなっている。その上、この多量のディーゼルの燃焼からの排気は、87MMTのCO換算放出量(冷却剤からの放出の寄与、および従来の冷却方法によって生み出される廃熱の効果を含んでいない)という結果となり、冷蔵トラック業界を米国で最大の汚染者の1つにしている。冷蔵トラックトレーラのために要求される燃料の緩やかな低減でさえも、車両の所有者の収益を有意に高め、それと同時に、汚染放出の大幅な低減を提供し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第2017/0248381号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Raman et al.,“Passive radiative cooling below ambient air temperature under direct sunlight”,Nature,vol 515,2014年11月27日,pp540-544
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(実施形態の概要)
本発明の側面によると、受動放射冷却は、屋外で表面を冷却するために用いられ得、エンジン、電子機器、化学反応、および太陽(例えば、変圧器を含む高電力電子機器、窓を含む建物の覆い、太陽光起電力およびバッテリストレージ、電気自動車を含む輸送、水浄化/蒸留)のような源からの熱をオフセットすることによってシステムの効率を増加させ得る。本発明の別の側面は、可視光に対して透明である効率的な放射冷却構造体を提供することである。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、受動放射冷却構造体は、可視光に対して透明である可撓性フィルムの形式で提供され、地球の大気が透明である波長で赤外線放射を吸収および放出するように構成される。可撓性フィルムは、単一の基礎材料から製作され得るか、または、25%よりも多い体積の埋め込まれた材料を統合し得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、可撓性フィルムは、30μmよりも大きい径を有する実質的に球状の粒子を統合し得る。他の実施形態では、非球形状を有する粒子が統合され、粒子は、約14200μmよりも大きい粒子当たりの平均体積を有し、フィルムの頂面と底面との間に装備するために十分小さい。
【0013】
いくつかの実施形態では、統合された粒子は、シート内に整然とした繰り返しの態様で配列され、他の実施形態では、統合された粒子は、より無作為に、または無秩序に、しかし偏ることない態様で、分配され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、可撓性フィルムは、透明なプラスチックシートによって形成され、統合された粒子は、シリカガラスで作製される。好ましい実施形態では、粒子は、溶融シリカガラスで作製される。
【0015】
いくつかの実施形態では、埋め込まれた粒子は、円柱状で凹状または凸状の側壁を有する構造体であり、各々の側壁を有する構造体は、第1の円形区域円周によって境界付けられる第1の円形区域と、第2の円形区域円周によって境界付けられる第2の円形区域とを有し、第1の円形区域円周および第2の円形区域円周は、側壁表面によって接続され、側壁表面は、第1の円形区域および第2の円形区域を接続する内部体積を囲み、第1および第2の円形区域は、フィルム表面に平行に配向される。
【0016】
いくつかの実施形態では、透明可撓性フィルムから作製される受動放射冷却構造体は、パネル内の太陽光電池を十分に冷却し、かつ電気エネルギーへの光の変換の効率性を増加させるために、パネルの頂部に位置付けられる。
【0017】
他の実施形態では、透明可撓性フィルムは、1つの材料の単一のシートを含み、エッチングは、2つの平行な表面の一方または両方に存在する。エッチングは、表面間の結合を向上させるために、周辺の媒質により類似した屈折率を有する別の材料によって随意に充填され得る。
【0018】
別の好ましい実施形態では、受動放射冷却構造体は、1または複数の冷却スタックを含む。冷却構造体の各冷却スタックは、導波層と、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成される放出層と、熱伝導層とによって構成される。この実施形態では、放出層は、導波層と熱伝導層との間に挟まれている。熱伝導層は、冷却される熱源に熱接触している。これは、直接的であるか、または熱伝導インタフェースを通してであり得る。熱伝導層は、冷却される熱源に実質的に垂直に構成され得る。これらの構造体は、冷却される水平面または鉛直面上で利用され得る。
【0019】
別の実施形態では、受動放射冷却の各冷却スタックは、2つの導波層と、2つの放出層とを含み、各放出層は、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成され、導波層は、スタックの外側の層を形成し、2つの放出層は、スタックの次の最も外側の層を形成し、スタックの内側の中心部は、熱伝導層であり、熱伝導層は、2つの放出層の間に挟まれている。これらの構造体は、冷却される水平面または鉛直面上で利用され得る。
【0020】
本発明のさらなる実施形態によると、冷蔵コンテナは、コンテナを冷蔵するために要求されるエネルギー量を低減するために、大気が透明である波長の赤外線を吸収および放出するように構成される受動放射冷却構造体を冷蔵コンテナの外側に含む。可撓性フィルムで作製される受動放射冷却構造体のために、反射性層が、フィルムの下に挿入され得る。他の実施形態では、受動放射冷却構造体は、熱スイッチ層の頂部に位置し、熱スイッチ層は、コンテナの屋根部と熱接触しており、熱スイッチ層は、熱伝導流体および断熱流体で代替的に充填され得るチャネルを含む。別の好ましい実施形態では、透明受動放射冷却構造体は、コンテナ側壁のうちの1または複数を覆うために用いられ、それによって、高められた受動冷却、ならびに、コンテナの側壁上の広告または他の情報が透明構造体を通して見えることを可能とする能力の両方を可能とする。
【0021】
さらなる実施形態では、受動放射冷却構造体は、変圧器、壁、屋根、製造における冷却装置、冷却塔、アパレル物品、電気自動車を含む自動車、シェード構造体、水飲み器およびバッテリを含むが、これらに限定されない各種の構造体およびデバイスを冷却するように構成される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
受動放射冷却構造体であって、前記受動放射冷却構造体は、
1または複数の冷却スタック
を備え、各々の冷却スタックは、第1の導波層と、第1の放出層と、熱伝導層とで構成され、前記第1の放出層は、前記第1の導波層と前記熱伝導層との間に挟まれており、
前記第1の放出層は、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成され、
前記熱伝導層は、近位端と遠位端とを有し、
前記熱伝導層は、冷却される熱源に対して実質的に垂直であり、かつ前記熱源とその近位端で熱接触している、受動放射冷却構造体。
(項目2)
各々の冷却スタックは、第2の導波層と第2の放出層とをさらに備え、
前記第2の放出層は、前記第2の導波層と前記熱伝導層との間に挟まれており、
前記熱伝導層は、前記第1の放出層と前記第2の放出層との間に挟まれており、
前記第2の放出層は、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成される、項目1に記載の受動放射冷却構造体。
(項目3)
前記第1の導波層は、空に向かう電磁的放射の熱波長を方向転換するために、1または複数の副層を備える、項目1または項目2に記載の受動放射冷却構造体。
(項目4)
地球の大気が透明である前記波長に対して透明である前記放射構造体上に装備される窓をさらに備える、項目1~3のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目5)
受動放射冷却構造体であって、前記受動放射冷却構造体は、
可視光に対して透明であり、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するために、25%よりも大きい体積パーセンテージで第1の材料を統合する可撓性フィルムを備え、
前記可撓性フィルムは、第2の表面に平行な第1の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面との間の内部領域とを含む、受動放射冷却構造体。
(項目6)
前記可撓性フィルムは、14200μm よりも大きい粒子当たりの平均体積を有する埋め込まれた粒子として前記第1の材料を統合する第2の材料の可撓性シートを備える、項目5に記載の受動放射冷却構造体。
(項目7)
前記埋め込まれた粒子は、球状粒子である、項目5または項目6に記載の受動放射冷却構造体。
(項目8)
前記球状粒子は、表面の粗さを最小化するために磨かれるかまたはフラッシュ加熱される、項目7に記載の受動放射冷却構造体。
(項目9)
前記埋め込まれた粒子は、湾曲した側壁を有する構造体であり、各々の湾曲した側壁を有する構造体は、第1の円形区域円周によって境界付けられる第1の円形区域と、第2の円形区域円周によって境界付けられる第2の変形区域とを備え、前記第1の円形区域円周および前記第2の円形区域円周は、前記第1の円形区域と前記第2の円形区域とを接続する内部体積を囲む凹面によって接続され、前記第1の円形区域は、前記第1の表面と平行に配向され、前記第2の円形領域は、前記第2の表面に平行に配向される、項目5または項目6に記載の受動放射冷却構造体。
(項目10)
電気エネルギーへの光の変換の効率を増加させるようにパネル内の太陽光電池を十分に冷却するために、パネルの表面の近位に位置付けられる、項目5~9のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目11)
前記埋め込まれた粒子は、73%より少ない前記可撓性フィルムの体積パーセンテージを占める、項目5から10のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目12)
受動放射冷却構造体であって、前記受動放射冷却構造体は、
可視光に対して透明であり、地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成される可撓性フィルムを備え、
前記可撓性フィルムは、第2の表面に平行な第1の表面と、前記第1の表面と前記第2の表面との間の内部領域とを含み、
前記可撓性フィルムは、第1の材料の薄いシートを備え、エッチングが、前記第1の表面および前記第2の表面の一方または両方に存在する、受動放射冷却構造体。
(項目13)
前記可撓性フィルムに接触している反射性バック層をさらに備える、項目5、6、7、8、9、11または12のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目14)
電気エネルギーへの光の変換の効率を向上させるようにパネル内の太陽光電池を十分に冷却するために、パネルの表面の近位に位置付けられる、項目12に記載の受動放射冷却構造体。
(項目15)
地球の大気が透明である前記波長に対して透明である窓をさらに備え、前記窓は、前記可撓性フィルム上に装備される、項目5、6、7、8、9、11、12、13または14のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目16)
前記第1の表面および前記第2の表面の一方または両方は、前記可撓性フィルムの表面の粗さを最小化するために磨かれるかまたはフラッシュ加熱される、項目12~15のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目17)
前記第1の表面および第2の表面の一方または両方に付着される適合材料層をさらに備える、項目12~16のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
(項目18)
コンテナであって、前記コンテナは、
囲いを形成する少なくとも1つの側壁および頂部と、
地球の大気が透明である波長の赤外線放射を吸収および放出するように構成される受動放射冷却構造体であって、前記受動放射冷却構造体は、前記囲いの外側の表面上に位置する、受動放射冷却構造体と、
前記コンテナ内に収容されるアクティブ冷却ユニットと
を備える、コンテナ。
(項目19)
前記外側の表面と前記受動放射冷却構造体との間に挟まれた反射性層をさらに備える、項目18に記載のコンテナ。
(項目20)
前記受動放射冷却構造体は、複数のスタックを含み、前記複数のスタックの各々は、導波層と熱伝導層との間に挟まれた放出層で構成され、前記コンテナは、前記外側の表面と前記受動放射冷却構造体との間の熱スイッチ層をさらに備える、項目18に記載のコンテナ。
(項目21)
前記熱スイッチ層は、熱伝導流体および断熱流体で代替的に充填されるように構成されるチャネルを備える、項目20に記載のコンテナ。
(項目22)
前記側壁のうちの少なくとも1つに、透明受動放射冷却構造体をさらに備える、項目18に記載のコンテナ。
(項目23)
太陽光蒸留器または水浄化デバイスのスループットを増加させるために、受動温度差増加を用いる、項目1~17のうちのいずれか一項に記載の受動放射冷却構造体。
【図面の簡単な説明】
【0022】
(図面の簡単な説明)
実施形態の前述の特徴は、添付の図面への参照がなされる以下の詳細な説明への参照によってより容易に理解されるであろう。
【0023】
図1A図1Aは、無秩序な態様で埋め込まれた粒子を有する、本発明の実施形態の可撓性透明受動放射冷却構造体を示す。
【0024】
図1B図1Bは、規則的に離間されて埋め込まれた凹状側壁の粒子を有する、本発明の実施形態の可撓性透明受動放射冷却構造体を示す。
【0025】
図1C図1Cは、図1Bの冷却構造体において用いられ得る各種の粒子を示す。
【0026】
図2図2は、エッチングされた外側の表面を有する、単一の材料から構成される本発明の実施形態の可撓性透明受動放射冷却構造体を示す。
【0027】
図3図3は、本発明の実施形態による太陽光パネルの頂部に積層された透明受動放射冷却構造体を示す。
【0028】
図4図4は、日光によって加熱される水を濃縮するために透明受動放射冷却構造体を用いる本発明の実施形態の太陽光蒸留器を示す。
【0029】
図5A図5Aは、導波層と共に構成される本発明の実施形態の両面輻射冷却スタックの斜視図を示す。
【0030】
図5B図5Bは、本発明の実施形態の複数のスタックを有する輻射冷却構造体の斜視図を示す。
【0031】
図5C図5Cは、冷却される鉛直面に対して変位するように配向された図5Bの輻射冷却構造体の、部分的に破断された斜視図を示す。
【0032】
図5D図5Dは、図5A図5Bおよび図5Cの輻射冷却スタックの一部を形成し得る導波層のマイクロレンズおよび注入副層の拡大図を示す。
【0033】
図5E図5Eは、図5Dの導波層の注入副層に関連する方向転換結合要素のさらに拡大された図を示す。
【0034】
図6A図6Aは、本発明の実施形態の輸送コンテナを示す。
【0035】
図6B図6Bは、熱スイッチ層の頂部における図6Aの受動放射冷却構造体の拡大図を示す。
【0036】
図6C図6Cは、熱スイッチ層の頂部における図6Aの受動放射冷却構造体の代替となる実施形態の拡大図を示す。
【0037】
図6D図6Dは、受動放射冷却構造体を伴う使用のための本発明の実施形態の遮断窓を示す。
【0038】
図6E図6Eは、受動放射冷却構造体を伴う使用のための遮断窓の代替となる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(特定の実施形態の詳細な説明)
定義
この説明および添付の図面において用いられる場合、以下の用語は、文脈が別様に要求しない限り、示される意味を有する。
「実質的に透明」とは、以下の物体ために十分に通過する波長が、許容されるパラメータ内で設計どおりに動作するか、または別様に不要な波長の吸収を最小化することを可能とすることを意味する。
「可撓性」とは、材料が、ロールツーロール製作技術において典型的であるようなスプール上に回転する間に損傷を受けないために十分屈曲し得ることを意味する。
【0040】
可撓性透明受動放射冷却構造体
図1Aおよび図1Bは、本発明の実施形態による可撓性透明受動放射冷却構造体を示す。冷却構造体10は、第1の表面20および第2の表面25ならびに2つの表面の間の内側領域30を有する可撓性フィルム15という形式である。冷却構造体は、可視光に対して透明であり、地球の大気が透明である波長(典型的には約7μmから13μmの間である)で赤外線放射を吸収および放出するように構成される。これらの図面において、第1の材料40の埋め込まれた粒子35は、第2の材料45で形成される可撓性フィルム15内に分配される。光散乱を最小化し、それによって可視的透明性を最大化するために、第1の材料40は、可視周波数範囲内の第2の材料の屈折率により近い値に一致する可視周波数範囲内の屈折率を有するように選択され得る。好ましい実施形態において、第1の材料は、シリカガラスであり得る。粗い表面での散乱をさらに最小化するために、埋め込まれた粒子35は、磨かれるかまたはフラッシュ加熱され得る。粒子の所与の体積パーセンテージに対する散乱が発生する合計粒子表面積を低減するために、より大きい粒子が利用され得、それによって一定量の散乱のためのより大きい体積パーセンテージの粒子の使用を可能とする。最終的に、より大きい特徴サイズによって散乱は低減され、従って、幾何学的散乱範囲内に粒子サイズを保つことは、粒子当たりの散乱を低減する。
【0041】
IR吸収および放出の強度および帯域幅を制御するために、埋め込まれた粒子35のサイズ、化学的組成および分配が制御され得る。より大きい粒子を用いることの結果として、25%よりも大きい粒子の体積部分が用いられ得、低散乱の透明性が到達可能である。幸運にも、より大きい粒子が、所望の波長領域内の低減された吸収/放出最大強度という結果となり、かつ吸収最大値の波長を変更するときでさえも、より大きい粒子はまた、広帯域吸収応答を提供し、それによって、任意の単一波長における強度の損失を部分的に補う。より大きい粒子に関連する波長のより広範な帯域分配は、a)大気の窓にわたる相当な合計強度を依然として提供しながら、粒子の波長で強度の損失を部分的に補い、かつ、b)変化する大気条件に起因して、IR窓における変化に適合させるためのより堅実な能力を提供し得る。
【0042】
可視における散乱について粒子の粒子サイズおよび体積パーセンテージの相互に関連する効果、所望の大気の窓における全体の吸収、ならびに変化する大気条件にもかかわらず遂行する能力の上記検討に基づいて、開示される発明の好ましい実施形態は、14200μmよりも大きい粒子当たりの平均体積サイズ、および25%より上の体積パーセンテージを有する粒子を利用する。より詳しくは、好ましい実施形態における体積パーセンテージは、25%から73%の間である。
【0043】
図1Aにおいて、第1の材料40の埋め込まれた粒子35は、第2の材料45から形成される可撓性フィルム15内に無秩序な態様で分配される。第2の材料は、典型的には熱可塑性ポリマである。好ましくは、ポリマは、配合され押出成形される。また、2液型ポリマまたは注入ポリマ溶液が、可視透明媒質内のナノ粒子の懸濁を達成するために用いられ得る。この図において、粒子は、楕円形状を有することが示されるが、粒子形状は、複合材料のフォノンポラリトン共振および全体の吸収スペクトルについて大きな影響を有するため、幅広い各種の形状が、可撓性透明受動放射冷却構造体10の特性を微調整するために用いられ得る。好ましい実施形態では、粒子は、形状が球体であり、30μmよりも大きい平均径を有する。
【0044】
図1Bに示される実施形態では、第1の材料40の埋め込まれた粒子35は、可撓性フィルム15内に均一な態様で分配される。この図に示されるように、粒子は、特定の凹状側壁を有する構造体50を有し、特定の凹状側壁を有する構造体50は、第1円形区域150および第2の円形区域250を有し、第1の円形区域および第2の円形区域は、それらの円周を介して凹面350によって接続され、凹面350は、第1の円形区域および第2の円形区域を接続し、第1の円形区域および第2の円形区域は、フィルム15の第1の表面20および第2の表面25と平行に配向される。
【0045】
図1Cにさらに詳解されるように、粒子35は、各種の形状のうちのいずれかを有する。円形区域は、例えば、平らであるか、凹状であるか、または凸状であり得る。粒子の側面は、同様に、直線であるか、凹状であるか、または凸状であり得る。粒子の円形表面は、異なる径を有し得る。凹状側面は、円形表面を接続する役割を果たす。
【0046】
別の実施形態では、図2に図示されるように、可撓性透明受動放射冷却構造体10は、埋め込まれた粒子を有しない単一の材料で構築される。この場合では、光の吸収/放出は、第1の表面20および随意に第2の表面25上に、パターン化された堆積および/またはエッチング55によって調整される。1つの実施形態では、エッチングは、シートの表面上に整然とした配列で配列された半球状のくぼみである。好ましい実施形態では、単一の材料は、折れ曲がり可能なガラスの非常に薄いシートであり得る。第1の表面20または第2の表面25のうちのいずれかは、可撓性フィルムの表面の粗さを最小化するために、磨かれるかまたはフラッシュ加熱され得る。好ましい実施形態では、パターン化された堆積および/またはエッチングは、遺伝的アルゴリズムまたは機械学習を用いて生み出されるように不規則であり得る。よって、受動放射冷却構造体は、可視光、および典型的には約7μmから13μmの間である地球の大気が透明である赤外線の放出に対して実質的に透明であるように構成される。随意に、第2の層28は、薄いシートの頂上および/または下に堆積され得る。第2の層28は、薄いシートの屈折率と周囲の媒質の屈折率との間の値の屈折率を有する適合材料で作製され得る。
【0047】
可撓性の薄いフィルムの吸収体は、所望の光学特性および機械的特性を達成するために、標準的なシリコンオンインシュレータ(SOI)ウエハのデバイス層、および/または材料における同等のパネルもしくはロールツーローバージョンを用いて製作され得る。これは、次のように作用し得る。1)ドーピング/アニーリングを介してか、またはエッチング、ナノインプリント、微細加工、堆積もしくはフォトニック結晶構造体を作り出すための他のマイクロ製作技術を介して、図1Bおよび図2において説明されたフィルムと同様に、大気の窓の吸収を高めるためにデバイス層の随意の前処理をすること、(2)頂部デバイス層を解放するために、デバイス層の下のインシュレータ層全体をエッチングすること、(3)デバイス層の前面および背面への機械的および/または光学的結合を高めるために、ポリマまたは他の材料を加えることによって、デバイス層を処理すること。
【0048】
図1A図1Bおよび図2に示されるものを含む、可撓性透明受動放射冷却構造体10の実施形態は、可視光が構造体を横切る必要があるが、受動放射冷却特徴が有利である用途のために有利である。そのような用途の1つの実施形態が、図3に示される。本発明の1つの目標は、太陽光パネルを冷却し、それによってそれらの効率性を向上するための実質的に透明な放射冷却構造体を提供することである。この実施形態では、可撓性透明受動冷却構造体10は、太陽光パネル60の表面を覆っている。冷却構造体10は、太陽光パネルにおける所望の冷却効果が達成されるような態様で、太陽光パネル60の表面に近接して向けられる。可視光は、可撓性冷却構造体10を通過し、太陽光パネルによって電気が生成される。温度が減少するに従って、太陽光パネルの効率性が増加する。冷却構造体が可視波長において十分に透明である限り、温度の緩やかな減少でさえ、太陽光電池の効率性を劇的に向上させ得る。この太陽光パネル機能への向上は、非可撓性受動放射冷却構造体によっても同様に達成され得る。
【0049】
1つの実施形態において、実質的に透明な受動放射冷却構造体を備える薄いフィルムは、毛細管力によって、太陽光パネルの表面または代替の冷却される表面と均一に接触して保持される。毛細管力によって太陽光パネルまたは代替表面上にフィルムを保持する好ましい方法では、フィルムは、構造体の背部を湿らせ、構造体を表面上に配置し、かつ構造体の表面にわたってスキージ(均一な線形の圧力を付与)し、それによってフィルムと表面との間で捕らえられる水および気泡を除去し、かつ毛細管接着を促進することを伴う方法によって添付される。端部が剥がれて表面と脱係合することを制約するための、フィルムの端部での接着剤の付与が、これに続く。この設置方法は、接着剤の端部のビードを取り除き、可撓性フィルムを1つの端または隅から剥がすことによって、容易に取り外すことも可能とする。
【0050】
透明受動放射冷却構造体10は、図4において示されるように、有利に用いられ得る。より大きい温度差を受動的に提供することによって、透明放射冷却構造体は、水を浄化するために用いられる蒸留器の効率およびスループットを向上するために採用され得る。この実施形態では、透明受動放射冷却構造体10は、蒸留器の頂部を覆っている。蒸留器の他の壁は、断熱材料65で囲まれている。蒸留器の底部には、汽水または海水70が、太陽光波長吸収材料75の境界内に含まれている。日光は、透明受動放射冷却構造体10を通過し、水70および水を含む熱吸収材料75を加熱する。水70は、加熱されると蒸発する。7μmから13μmの大気の窓における赤外線照射の形式でエネルギーを解放することによって、冷却構造体10は、蒸発した水が凝縮するための比較的冷却された表面を提供し、水が凝縮して蒸留物チャネル80に向かって流れることを可能とする。蒸留物チャネル80は、純水凝縮物を捕捉して、収集するために運ぶ。
【0051】
直角偏向および層の積み重ねによる放射冷却増加
先行する実施形態において説明されたもの等の薄いフィルムベースの放射冷却構造体は、典型的に、およそ100ワット毎平方メートルの冷却力を与える。日中の冷却は、日光および周辺環境からの入射する可視的な近赤外線放射の追加された熱負荷によってさらに低減される。1冷凍トン(1TR)の冷却目標を達成するために、35平方メートルのそのような冷却パネルが必要とされる。結果的に、利用可能な表面積が、放射冷却の実施における制限要因のままである。追加される複雑性として、大きな面積のフットプリントは、太陽および周囲の環境からの熱負荷が、増加された表面積の利益を部分的に無効化することを意味する。
【0052】
本発明の他の実施形態において、受動放射冷却構造体の効率は、直角偏向および層の積み重ねによって高められ得る。そのような実施形態は、典型的に、不透明熱伝導体を含み、それらが透けることを防ぐが、それらは、日光に曝露される表面積を最小化しつつ、有効冷却パネル表面積の劇的な増加を提供し得る。そのような実施形態は、平らなパネルディスプレイに関係するフォトニクス用途および消費者用途において広く用いられる、よく理解された導波路原理を用いる。
【0053】
そのような実施形態は、薄い光導波路を活用し、導波路は、放射冷却の非常に大きい合計表面積が非常により小さい面積のフットプリント内に収容され得るように放射区域が積み重ねられることを可能とするために、大きな面積上に放出されるIR放射が、集中されて90度に偏向されることを可能とする。そのような実施形態は、それによって、冷却パネル面積の100平方メートルまたはそれより多くが、1平方メートルのフットプリント上で1立方メートルを占めることを可能とし得る。冷却パネル面積の各平方メートル当たりのこの配置からの効率損失が存在するが、より大きい有効表面積に起因する合計冷却容量における増加効率は、導波路内の結合および吸収損失によって導入される損失よりも大きい。加えて、IR放射ははるかに小さい面積上に放出されるため、日中の加熱の影響を受ける面積は、いずれの特別なフィルタリングの追加もすることなく、大いに低減される。
【0054】
そのような実施形態では、IR放射は、大きい面積上の輻射冷却吸収体/放出体によって放出され、典型的には冷却表面から90度の角度で導波路内に集光されかつ/または結合される。この配列の利点は、冷却がなされる放出層が、非常に密集した配列で積み重ねられ得ることである。
【0055】
光導波路を用いる1つの実施形態が、図5Aおよび図5Bに示される。図5Aでは、2つの導波層22を統合し、そのうちの1つがスタックのいずれかの外側にある両面放射冷却スタック12が示される。各導波層は、大気が透明である周波数で赤外線を集中させて方向転換する。スタックの内側に移動すると、2つの放出層14は、外側の導波層22および内側の中央に配置される熱伝導層16に各々平行である。この実施形態において、各放出層14は、導波層22と熱伝導層16との間に挟まれている。熱伝導層16の一端は、冷却される熱源か、または熱伝導層16に実質的に垂直である熱伝導インタフェース24に熱接触している。次に、熱伝導インタフェース24は、冷却される熱源に実質的に平行である。インタフェースは、使用時に、水平方向で、スタックの空向きの頂面と反対の底面にあり得るか、または図5Cに示されるように、インタフェースは、鉛直に向けられる表面を冷却するために、空向きの頂面に垂直なスタックの鉛直面であり得る。熱源自体は、それが水平か、鉛直か、またはそれらの間の何処かにかかわらず、インタフェース24に代用し得る。代替として、インタフェース24は、好ましくは、熱源から離れて熱を伝導するように、熱源に接触するように構成され得る。熱伝導層16は、金属、特に銅またはアルミニウム等の材料から作製され得る。放出層14は、上記で説明される受動放射冷却シートのうちのいずれかであるか、または、可視範囲内で透明であるかにかかわらず、大気が透明である波長において設計されまたは固有の放出性を有する任意の材料であり得る。例えば、炭化ケイ素、窒化ケイ素、SiO、Te、PbS、PbSe、石英ZnOおよびTiOである。例えばグラフェン、黒リン、窒化ホウ素、hBN、BCN、フルオログラフェンまたは酸化グラフェンを含む2D材料は、薄いフィルム内の放出を向上させるために、放出層14内に統合され得る。粒子の選択および構造体は、所望の透明性、反射性および吸収スペクトルに最適化することによって導かれ得るが、複層冷却構造体においては、透明性は、重要度が低減される。導波層の主要な目的は、空に向かう熱波長の伝播を方向転換しかつ可能とすることであり、従って、ポリエチレンフィルム、カルコゲナイドガラス、多結晶ハロゲン化銀、サファイア、亜鉛モノカルコゲナイド、CdS、CdTe、ゲルマニウム、ZnSe、ZnS、およびLiNbOのような理想的な導波層材料は、大気が透明である波長に対して透明である。
【0056】
冷却動作において、冷却される熱源からの熱は、熱伝導層16を通って伝導される。IR放射の形式での熱伝導層16からの熱は、放出層14から吸収および放出され、導波層22内に結合され、そこで、空に向かって上向きに方向転換され、大気の窓を通って宇宙空間の深部へ放射する。
【0057】
図5Bは、図5Aにおいて説明されるような積層スタック26の側面図を示す。スタックのそのような配置において、直射日光への緩やかな曝露を維持しながら、熱放出のための有効表面積が劇的に増加され得ることが容易に明らかである。また、導波層22は、導波層22の両側から空に向かって熱波長を方向転換するために、隣接するスタック内に組み合され得る。
【0058】
図5Dおよび図5Eは、図5Aおよび図5Bの実施形態のさらなる詳細を示す。この実施形態では、放出層32から放出する熱エネルギーは、導波層22の第1の副層を形成する熱波長マイクロレンズ34で収集され集光される。マイクロレンズで集光されたIR放射36は、導波層22の第2の副層内に埋め込まれた方向転換結合要素38上に集光される。結合要素38は、相互に平行であるように構成され、各結合要素38は、一端に注入ファセット42を有し、もう一端には狭小部を有し、注入ファセット42が放射を空に向け、かつ狭小部が反対方向に向けられるように導波層内に配向される。注入ファセット42は、マイクロレンズで集光されたIR放射36を空に向かって上向きに導くように構成される。結合要素のもう一端の狭小部は、光が後方に反射されることを防ぐように構成される。
【0059】
これらのスタックは、空に向かって進むように導波層において熱波長の方向転換および伝播の角度を変化させることによって、空に対して法線方向の表面、空に対して垂直な表面、および、例えば任意の方向の冷却表面の間の何処かの表面を含む任意の方向の表面から、熱を取り除くように構成され得ることに留意されたい。
【0060】
コンテナの受動放射冷却
本発明の実施形態のさらなる目標は、コンテナの屋根部および側面での受動放射冷却構造体の使用を通して、トラックトレーラ上の冷凍貨物コンテナによる燃料使用を低減させることである。これらのコンテナは、コンテナの内側を低温に維持するために、冷蔵コンプレッサ等のアクティブ冷却ユニットを収容する。図6Aは、コンテナの頂部の外側の表面上の受動放射冷却構造体54によって冷却される冷蔵コンテナ52の実施形態を図示する。さらなる受動冷却は、標識または広告を保つようにコンテナの1または複数の側面の外側の表面上の透明受動放射冷却構造体10によって提供され得る。受動放射冷却構造体54は、コンテナの頂部において不透明であり得る一方で、透明受動放射冷却構造体10は、コンテナの1または複数の側面上の画像および文字の可視化が可能であるように構成される。受動放射冷却構造体54は、図5Aおよび図5Bにおいて述べられるような輻射冷却スタックを備え得る。実際上、本発明の実施形態による輻射冷却スタックは、コンテナの外側の表面のいずれかまたは全てに用いられ得る。受動放射冷却構造体54は、図1A図1Bまたは図2に述べられるような透明受動放射冷却構造体を含み得、これは、コンテナの外側の表面のうちのいずれかまたは全てに同様に用いられ得る。
【0061】
図6Bに示される他の実施形態において、受動放射冷却構造体54は、高効率輻射冷却スタックまたは受動放射冷却シートを備える上部層56と、熱スイッチ流体のためのチャネル62で構成されるコンテナの頂部と熱接触している下部層58とを含み得る。動作中、チャネルは、代替的に、コンテナを冷却することが所望されるときには熱伝導流体で充填され、目標がコンテナに熱が入ることを防ぐことであるとき(冷却要素が内部にあるかまたは別様に空から遮られるとき等)は、断熱流体で充填され得る。好ましい熱伝導流体は、水を含む。好ましい断熱流体は、空気を含む。
【0062】
上部層56は、図1A図1B、または図2に述べられる透明受動冷却構造体であり得る。上部層56はコンテナの頂上にあるため、透明である必要はない。好ましい実施形態では、上部層56は、図5Aおよび図5Bに述べられるような輻射冷却スタックを備える。
【0063】
下の冷却される表面によって特定の波長が必要とされないかまたは所望されない図1A図1B、または図2の受動放射冷却構造体の適用のために、構造体10は、反射層64によってバッキングされ得る。反射層は、特定の不要な波長を反射し、全体の熱負荷を低減するように構成され得る。そのような反射性バッキング冷却構造体は、コンテナの頂上において有用であり得る。図6Cに示されるように、放射性冷却コンテナは、上部層56と下部層58との間に挟まれた熱伝導および可視反射性バック層64を有する受動放射冷却構造体を含み得る。反射性バック層64は、熱がコンテナ52から離れて放出的に向けられること依然として可能としながら、太陽光の熱負荷を低減するための手段を提供する。
【0064】
他の実施形態では、受動放射冷却構造体54は、大気が透明である波長に対して透明である伝導および対流遮蔽窓が装備される。これは、周辺の媒質からの加温を抑制するが、依然として放出冷却を可能とするため、より低い温度への冷却を高める。窓は、例えばポリエチレン発泡体等の発泡体65であり、図6Dのように放出冷却材料に直接的に置かれるか、または図6Eのように窓と放出材料との間における遮蔽空気ギャップ67を伴って、放出材料の上に設置され得る。
【0065】
上記に説明される本発明の実施形態は、例示的であることを意図されたものに過ぎない。種々の変更物および変形物が当業者にとって明らかであろう。そのような変更物および変形物の全てが、いずれかの添付される請求項において定義されるものとして、本発明の範囲内にあることを意図される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E