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特許7516262動的に同調可能なアポダイズされた多焦点眼科用装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】動的に同調可能なアポダイズされた多焦点眼科用装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240708BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20240708BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240708BHJP
   A61B 3/09 20060101ALI20240708BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20240708BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/06
G02C7/10
A61B3/09
G02F1/15 503
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020566900
(86)(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2019056545
(87)【国際公開番号】W WO2020026172
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】16/054,685
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
【住所又は居所原語表記】7500 Centurion Parkway, Jacksonville, FL 32256, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リーディ・マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ピュー・ランドール・ビー
(72)【発明者】
【氏名】ナンキビル・デレク
(72)【発明者】
【氏名】ベンチュラ・ペレ
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン・ロス
(72)【発明者】
【氏名】トナー・アダム
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/051223(WO,A2)
【文献】特表2013-541730(JP,A)
【文献】特開昭63-080231(JP,A)
【文献】国際公開第2008/078320(WO,A2)
【文献】特開2014-178685(JP,A)
【文献】特開2007-108750(JP,A)
【文献】中国実用新案第204256303(CN,U)
【文献】国際公開第2015/001120(WO,A1)
【文献】特開2001-290101(JP,A)
【文献】特表2017-526949(JP,A)
【文献】特表2011-515157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02C 7/06
G02C 7/10
A61B 3/09
G02F 1/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する複数の光学ゾーンを含むレンズと、
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクと、
着用者の所望の焦点距離の変化に応じて、前記同調可能なアポディゼーションマスクの光透過特性を変化させるように構成されたプロセッサと、を備え、
前記同調可能なアポディゼーションマスクが複数の環状セルを備え、前記環状セルに印加される電位が前記コンタクトレンズの外径方向に隣接した前記環状セルの前記光透過特性をそれぞれ対向する特性に変化させるように構成される、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、エレクトロクロミック材料、液晶材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、ナノ構造材料、ナノ粒子材料、ナノ結晶材料、及び懸濁粒子のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記光透過特性の変化が、前記同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度の変化を含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記レンズが、ゾーン多焦点面、二焦点面、及び連続多焦点面のうちの1つ又は2つ以上を有する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、封入されたインサート内に配置されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、エレクトロクロミックデバイスを備え、前記エレクトロクロミックデバイスが、
内側導電層及び外側導電層と、
第1のイオン輸送と、
第2のイオン輸送と、を含み、
前記内側導電層及び前記外側導電層に加えられた電気的バイアスが、前記第1のイオン輸送及び前記第2のイオン輸送のうちの一方を透明状態で機能させ、前記第1のイオン輸送及び前記第2のイオン輸送のうちの他方を不透明状態で機能させるように、前記第1のイオン輸送及び前記第2のイオン輸送が、前記内側導電層及び前記外側導電層に対してそれぞれ反対の向きで前記内側導電層と前記外側導電層との間に介在されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記複数の光学ゾーンが、近方ゾーン、遠方ゾーン、及び中間ゾーンのそれぞれの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの近方ゾーン、遠方ゾーン、及び中間ゾーンのうちの1つが、前記レンズの中心に存在する、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記複数の光学ゾーンが、少なくとも2つの遠方ゾーンを含む、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記複数の光学ゾーンが、少なくとも2つの近方ゾーンを含む、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、第1の屈折力を有する前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つに対応する第1の領域と、第2の屈折力を有する別の前記複数の光学ゾーンに対応する第2の領域とを含み、焦点の所望の変化を示す信号を受信すると、前記第1の領域の不透明度が増大又は減少し、前記第2の領域の不透明度が、前記第1の領域の不透明度とは逆に増大又は減少する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通る透過率が、前記着用者の前記所望の焦点距離に関係なく、前記レンズのバルク材料の透過率に近いように、前記同調可能なアポディゼーションマスクが、前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの周方向外側又は内側に存在する、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、前記着用者の前記所望の焦点距離に関係なく、前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通る少なくとも50%の光透過を可能にするように構成されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記同調可能なアポディゼーションマスクが、1つ又は2つ以上の窓を備える、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記複数の光学ゾーンが、前記着用者の眼の光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動瞳孔反射のうちの1つ又は2つ以上に基づいて改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するように最適化された1つ又は2つ以上の直径を含む、請求項7に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記同調可能なアポディゼーションマスクと前記プロセッサとの間に電気的接続性を形成するように構成された剛性相互接続構造体を更に備え、前記剛性相互接続構造体が、半透明材料から構成され、少なくとも1つの空隙を含むように寸法決めされている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に、前記着用者の眼上の前記レンズの予想される偏心をオフセットするように計算された量だけ偏心されている、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する複数の光学ゾーンを有するコンタクトレンズにおいて使用するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記非一時的コンピュータ可読媒体が、プロセッサによって実行されると、
1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからリアルタイム焦点データを受信するステップと、
前記1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからの前記リアルタイム焦点データに基づいて、着用者の所望の焦点距離を判定するステップと、
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクを作動させるステップであって、前記同調可能なアポディゼーションマスクを作動させることが、前記着用者の前記所望の焦点距離に対して最適化されていない前記光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通過する光をアポダイズする、ステップと、を実行する、前記非一時的コンピュータ可読媒体に記憶された命令を備え、
前記同調可能なアポディゼーションマスクが複数の環状セルを備え、前記環状セルに印加される電位が前記コンタクトレンズの外径方向に隣接する前記環状セルの光透過特性を対向する特性に変化させるように構成された、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記リアルタイム焦点データに関連付けられた所望のモードを前記同調可能なアポディゼーションマスクの現在のモードと比較することによって、焦点の変化が必要かどうかを判定するステップを更に含む、請求項18に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記同調可能なアポディゼーションマスクの前記現在のモードが、近見視モード、遠見視モード、及び中間視モードのうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ、眼内レンズ(IOL)を含む埋め込み型レンズ、及び光学構成要素を含む任意の他のタイプの装置を含む、ウェアラブルレンズなどの電子眼科用装置に関し、より詳細には、特に老眼の影響を受ける個人において、着用者の視覚性能を向上させるように動作する、同調可能なアポディゼーションマスク及び複数焦点レンズを有するエネルギー印加された眼科用装置を提供するための方法、システム、及び装置に関する
【背景技術】
【0002】
人が加齢するにしたがい、観測者に比較的近い物体に焦点を合わせるための調節力、すなわち水晶体を曲げる眼の能力が低下する。年齢に焦点を合わせる能力のこの損失は、老眼として知られている。その極端な形態では、例えば、成熟した老眼又はそれらの天然レンズが除去された人、及び置換として挿入された眼内レンズでは、収容能力は完全に不在であり得る。眼の障害に対処するために、多くの方法及び装置が試みられてきた。眼の調節力の障害を矯正するために使用される方法の1つとして、遠方視力を矯正するための単焦点レンズをレンズ着用者の優位眼に使用し、近方視力を矯正するための単焦点レンズを非優位眼に使用する、モノビジョンとして知られる方法がある。モノビジョンは、立体視の損失をもたらすため、不利である。老眼を矯正するための別の公知の方法、個人の両眼に二重焦点又は多焦点コンタクトレンズを使用することを含む。このアプローチは、典型的には、連続多焦点面において滑らかな又はゾーン多焦点面において不連続的なレンズ中心についての回転対称性を有する、屈折力が変化する同時視(又は同時画像)レンズと呼ばれることがあるものを利用する。しかしながら、同時視二焦点又は多焦点レンズは、単焦点と比較して、画像コントラスト及び解像度の低減をもたらす可能性がある。修正モノビジョンと呼ばれる老眼を治療するための更なる別の方法は、二重焦点又は多焦点レンズを一方の眼に、単焦点レンズを他方の眼に配置することを含む。この方法は、性能が改善された個人を提供するために多くのレンズを考慮する必要があり、同様に前述の欠陥に完全に対処しないという欠点がある。上記技術の組み合わせが採用されてきたが、集団の少なくとも有意な部分では、所望の主観のスルーフォーカス視覚性能を提供するものではない。多焦点(すなわち、網膜上への複数の同時画像の投影)に対する、老眼治療する上述のモードに関連する視覚性能の欠陥は、自然な人間の視覚的経験に適合しないそれらの信頼に起因すると仮定されている。換言すれば、それらの設計によって、二焦点及び他の多焦点レンズは、複数の焦点を可能にすることによって自然な生理学的両眼視力をアップセットして、単一の眼内で様々に合焦及び非合焦の画像を生成することができる。また、人間の知覚機構は、時間スケールの範囲にわたって非常に適応性であるため、着用者は、視覚品質が許容可能であるかどうかを最終的に決定する前に、神経適応期間を経ていなければならない。
【0003】
可変開口機構を用いるものなどの、電気活性装置を使用して老眼を打ち消すために、更に他のアプローチが試みられてきた。レンズの光学領域内の開口を低減することは、着用者の焦点深度を増加させることによって、老眼の影響をある程度軽減することが知られている。この効果は、静的又は動的アポディゼーションマスクを制御するためにレンズと一体化された電子機器を用いる電気活性眼科用装置において試みられてきた。そのような装置では、アポディゼーションマスクは、着用者の視野深度の変化をもたらすために、カメラレンズとは異なり、開口機構を含む。主に開口効果に依存するこの技術及び同様の技術は、いくつかの課題を提示する。例えば、狭い開口を有する視野の深さを増加させるために遮断されなければならない実質的な量の光は、特定の条件で着用者の視力を妨げる場合がある。焦点深度の増大に依存するアプローチの別の欠点は、多焦点、二焦点、及び他の矯正レンズ設計として効果的に眼の光学的欠陥を矯正しないということである。したがって、老眼の有効な治療のための視覚的経験を改善するための眼科用装置、方法、及び装置に対する必要性が依然として存在する
【0004】
更にまた、電子装置の小型化の増大に伴い、ウェアラブル又は埋め込み可能な超小型電子装置は、より実用的な用途を見出している。かかる用途としては、生体化学反応の様相を監視すること、測定値に応答するか又は外部制御信号に応答する、自動を含む、様々なメカニズムを介する薬物若しくは治療薬の制御された投与量を投与すること、並びに器官又は組織の能力を増強することを挙げることができる。かかるデバイスの例としては、ブドウ糖注入ポンプ、ペースメーカー、除細動器、補助人工心臓、及び神経刺激器が挙げられる。特に有用な新たな応用分野は、眼科用装着型レンズ及びコンタクトレンズである。例えば、装着型レンズは、眼の能力を増強又は向上させる、電子式焦点調整が可能なレンズアセンブリを組み込んでもよい。別の例では、焦点調整可能の有無にかかわらず、装着可能なコンタクトレンズは、前角膜(涙膜)における特定の化学物質の濃度を検出する電子センサを組み込んでもよい。レンズアセンブリに埋込み型電子部品を使用することにより、電子部品の電力供給及び/又は再励起の方法として、また、電子部品同士を相互接続するため、内部及び外部の感知及び/又は監視を行うため、並びに電子部品及びレンズの全体的機能の制御を行うために、電子部品と通信する潜在的必要性が生じる。
【0005】
従来のコンタクトレンズは、様々な視力の問題を矯正するための特定の形状を有するポリマー構造である。機能性の向上を達成するため、様々な回路及び構成要素がこれらのポリマー構造に統合される必要があり得る。例えば、制御回路、マイクロプロセッサ、通信装置、電源、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナを特別に設計された光電子素子を介してコンタクトレンズに組み込み、視力を補正するだけでなく、視力を向上させ、更なる機能性を与え得る。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、ズームイン及びズームアウト機能によって、又は単純にレンズの屈折能力を変化させることによって、視力を向上させるように設計されてもよい。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、色及び解像度を向上させるように、文字情報を表示するように、会話をリアルタイムでキャプションに変換するように、ナビゲーションシステムから視覚的キューを与えるように、また、画像処理及びインターネットアクセスを提供するように設計され得る。レンズは、着用者が低光量条件で見ることができるように設計され得る。適切に設計された電子部品及び/又はレンズ上の電子部品の配置、例えば可変焦点光学レンズを用いることなく網膜に画像を投影することを可能とし、画像を表示し、更には目覚ましアラートを提供することも可能とする。これらの機能若しくは類似の機能のいずれかの代わりに、又はそれらに加えて、コンタクトレンズは、着用者のバイオマーカ及びヘルスインジケータを非侵襲的に監視する構成要素を組み込み得る。例えば、レンズに組み込まれたセンサによって涙膜の成分を分析することにより、糖尿病患者が血液を採取する必要なくして、血糖値を監視することが可能となる可能性がある。それに加えて、適切に構成されたレンズは、コレステロール、ナトリウム、及びカリウムのレベル、並びに他の生物学的マーカを監視するセンサを組み込み得る。これを、無線データ送信機と連結することにより、医師が患者の血液化学にほぼ即時にアクセスすることが可能となって、患者が検査機関に赴いて血液を採取するために時間を浪費する必要がなくなる。それに加えて、レンズに内蔵されたセンサを利用して、眼に入射する光を検出することにより、周辺光条件を補償するか、又は瞬きのパターンを調べるのに使用することができる。
【0006】
装置の適切な組み合わせによって、潜在的に前例のない機能性をもたらすことができるが、光学グレードポリマー眼科用レンズに余分な構成要素を組み込むことに伴う、多数の困難が存在する。一般に、レンズの小規模且つ複雑な形状のために、そのような構成要素をレンズ上に直接製造することは困難である。構成要素は、構成要素を眼上の液体環境から保護しながら、多くの場合は1.5平方センチメートルの透明ポリマー上などの極端に制限された空間においてレンズ上又はレンズ内に置かれる必要があり得る。コンタクトレンズは、追加の構成要素の追加の厚さであっても、着用者にとって快適且つ安全でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンタクトレンズの眼科用装置の面積及び体積の制約、並びに該装置が使用される環境を考慮すると、装置の物理的実現は、その大部分が光学プラスチックを含むことができる非平面の面に、多数の電子構成要を装着し相互接続することを含む、多くの問題を克服しなければならない。したがって、機械的及び電気的に堅牢な電子コンタクトレンズを提供することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の動的に同調可能なアポダイズされた多焦点眼科用装置及び方法は、上記簡潔に説明されるように、先行技術に関連する欠点を克服する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、本発明は、1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する光学ゾーンを含むレンズと、複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクと、着用者の所望の焦点距離の変化に応じて、同調可能なアポディゼーションマスクの光透過特性を変化させるように構成されたプロセッサと、を対象とする。いくつかの実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、エレクトロクロミック材料、液晶材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、ナノ構造材料、ナノ粒子材料、ナノ結晶材料、及び/又は懸濁粒子を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、光透過特性の変化は、同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度の変化を含む。レンズは、ゾーン多焦点面、二焦点面、及び連続多焦点面のうちの1つ又は2つ以上を有することができるまた、いくつかの実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスク、封入されたインサート内に配置されている。いくつかの実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、エレクトロクロミックデバイスを備えエレクトロクロミックデバイスは、内側導電層及び外側導電層と、第1イオン輸送基と、第2イオン輸送基と、を含む。特定の実施形態では内側導電層及び外側導電層に加えられた電気的バイアスが、イオン輸送基のうちの一方を透明状態で機能させ、他方不透明状態で機能させるように、第1のイオン輸送基及び第2のイオン輸送基が、内側導電層及び外側導電層に対してそれぞれ反対の向きで内側導電層と外側導電層との間に介在され得る
【0011】
更なる実施形態では、複数の光学ゾーンは、近方ゾーン、遠方ゾーン、及び中間ゾーンを含む。いくつかの実施形態では、近方ゾーン、遠方ゾーン、又は中間ゾーンは、レンズの中心に存在する。複数の光学ゾーンは、少なくとも2つの遠方ゾーンを含むことができ、及び/又は光学ゾーンは、少なくとも2つの近方ゾーンを含むことができる。更に別の実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、第1の屈折力を有する複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つに対応する第1の領域と、第2の屈折力を有する別の複数の光学ゾーンに対応する第2の領域とを含み、焦点の所望の変化を示す信号を受信すると、第1の領域の不透明度が増大又は減少し、第2の領域の不透明度が、第1の領域の不透明度とは逆に増大又は減少する。
【0012】
更に他の実施形態で、複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通る透過率、着用者の所望の焦点距離に関係なく、レンズのバルク材料の透過率に近いように、同調可能なアポディゼーションマスクは、複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの周方向外側又は内側に存在する。更なる実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、着用者の所望の焦点距離に関係なく、複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通少なくとも50%の光透過を可能にするように構成されている。特定の実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、1つ又は2つ以上の窓を備える。なお更なる実施形態では、光学ゾーンは、着用者の眼の光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動瞳孔反射のうちの1つ又は2つ以上に基づいて改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するように最適化された1つ又は2つ以上の直径を含むことができる。特定の実施形態は、同調可能なアポディゼーションマスクとプロセッサとの間に電気的接続性を形成するように構成された剛性相互接続構造体を含むことができ、相互接続構造は、半透明材料から構成され、少なくとも1つの空隙を含むように寸法決めされている。また、いくつかの実施形態では、光学ゾーンは、少なくとも部分的に、着用者の眼上のレンズの予想される偏心をオフセットするように計算された量だけ偏心されることができる
【0013】
更に他の実施形態は、1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する複数の光学ゾーンを有する眼科用装置において使用するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、コンピュータ可読媒体、プロセッサによって実行されると、1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからリアルタイム焦点データを受信するステップと、1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからのリアルタイム焦点データに基づいて、着用者の所望の焦点距離を判定するステップと、複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクを作動させるステップであって、同調可能なアポディゼーションマスクを作動させることが、着用者の所望の焦点距離に対して最適化されていない光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通過する光をアポダイズする、ステップと、を実行する、コンピュータ可読媒体に記憶された命令を備える、非一時的コンピュータ可読媒体を対象とする。いくつかの実施形態では、焦点の変化が必要かどうかを判定することは、データに関連付けられたモードを同調可能なアポディゼーションマスクの現在のモードと比較することを含む。更に更なる実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクの現在のモードは、近見視モード、遠見視モード、及び/又は中間視モードを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上述及び他の特徴と利点は、添付図面に示されるような、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な記載から明白となるであろう。
図1】本発明の実施形態に係る、例示的な同調可能なアポダイズされた多焦点電動式コンタクトレンズを示している
図2】本発明の実施形態に係る、例示的な同調可能なアポダイズされた多焦点電動式コンタクトレンズの断面図を示している
図3】材料の不透明度が変化することができる複数の領域を有する例示的な同調可能なアポディゼーションマスクを示している
図4A】本発明の特定の実施形態で使用されることができる例示的なエレクトロクロミックデバイスの断面図を示している
図4B】本発明の特定の実施形態で使用されることができる例示的なエレクトロクロミックデバイスの断面図を示している
図5A】本発明のいくつかの実施形態における同調可能なアポディゼーションマスクとして機能することができる例示的なエレクトロクロミックデバイスを示している
図5B】本発明のいくつかの実施形態における同調可能なアポディゼーションマスクとして機能することができる例示的なエレクトロクロミックデバイスを示している
図6】本発明のいくつかの実施例を実現するために使用されることができる相互接続構造体を示している
図7眼科用装置の酸素透過性を増加させるのに有用とすることができる窓を有する同調可能なアポディゼーションマスクを示している
図8A】中間、近方、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図8B】中間、近方、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図8C】中間、近方、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図8D】中間、近方、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図8E】中間、近方、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図9A】中間視力、近方視力、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図9B】中間視力、近方視力、及び遠方視力に対応する屈折力をそれぞれ有する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している
図10A】例示的な実施形態の一般的な動作原理を示している
図10B】例示的な実施形態の一般的な動作原理を示している
図11】本発明の範囲内の眼科用装置が動作することができる例示的な方法を示している
【発明を実施するための形態】
【0015】
用語集
本開示において使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。ポリマーの定義は、Compendium of Polymer Terminology and Nomenclature,IUPAC Recommendations 2008,edited by:Richard G.Jones,Jaroslav Kahovec,Robert Stepto,Edward S.Wilks,Michael Hess,Tatsuki Kitayama,and W.Val Metanomskiに開示される定義に一致する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、修飾されている数字の+/-5%の範囲を指す。例えば、「約10」という語句は、9.5及び10.5の双方を含むであろう。
【0017】
別途記載のない限り、比率、百分率、部などは重量による。
【0018】
別途記載のない限り、例えば、「2~10」のような数字範囲は、その範囲を定義する数字(例えば、2及び10)を含む。
【0019】
用語「アポダイズされた」又は「アポディゼーションは、光学的に濾過される状態、又は光学的フィルタリングの効果、例えば、不透明度の変化を指す。
【0020】
用語「多焦点」は、2つ以上の屈折力を有するレンズを指す。
【0021】
用語「二重焦点」は、本明細書の目的のために「多焦点」と互換的に使用される。
【0022】
焦点レンズ、漸進レンズ、累進処方レンズ、漸進的付加レンズ、及び/又は多焦点レンズの拡張深度と呼ばれることもある用語「連続多焦点」は、レンズ度数の勾配によって特徴付けられるレンズである。
【0023】
用語「ゾーン多焦点面」、連続多焦点面と比較して、比較的急激な不連続部で合流する光学屈折力補正の領域を有する多焦点レンズを指す。
【0024】
用語「多焦点レンズ」は、1つ又は2つ以上の矯正光学度数領域を有し、多焦点、二焦点、連続多焦点、多焦点レンズを含む任意のレンズを指す。
【0025】
用語「窓」は、酸素又は他の望ましい液体又は気体が横断することができる領域を指す。
【0026】
用語「イオン輸送基」は、エレクトロクロミックデバイス内で一緒に機能するエレクトロクロミック層、イオン貯蔵層、及び/又は電解質層を指す。
【0027】
「生物医学用デバイス」という用語は、哺乳類の組織又は体液の中又は上のいずれか、好ましくは、ヒトの組織又は体液の中又は上のいずれかにおいて用いられるように設計されている、任意の物品を指す。これらのデバイスの例としては、創傷包帯、シーラント、組織補填体、薬物送達システム、コーティング、癒着防止バリア、カテーテル、インプラント、ステント、並びに眼内レンズ及びコンタクトレンズなどの眼科用装置が挙げられるが、これらに限定されない。生物医学用デバイスは、眼科用装置、具体的にはコンタクトレンズ、最も具体的にはシリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルから作製されるコンタクトレンズであってもよい。
【0028】
「眼の表面」という用語は、角膜、結膜、涙腺、副涙腺、鼻涙管、及びマイボーム腺の表面及び腺上皮、並びにそれらの先端及び基部マトリクス、涙点、並びに神経支配による上皮の連続性と内分泌系及び免疫系との両方によって機能的システムとして連結されている瞼を含む隣接した又は関連する構造を含む。
【0029】
「眼科用装置」という用語は、眼又は眼の表面を含む眼の任意の一部の中又は上に存在する任意の装置を指す。これらのデバイスは、光学補正、外見向上、視力強化、治療効果(例えば、包帯として)、若しくは医薬成分及び栄養補助成分などの活性成分の供給、又は前述の任意の組み合わせを提供することができる。眼科用装置の例としては、限定されるものではないが、レンズ、光学及び眼挿入物(限定されるものではないが、涙点プラグを含む)などが挙げられる。「レンズ」、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズ、ハイブリッドコンタクトレンズ、眼内レンズ、及びインレー又はオーバーレイレンズを含む。眼科用装置は、コンタクトレンズを含み得る。
【0030】
「コンタクトレンズ」という用語は、個体の眼の角膜上に置くことができる眼科用装置を指す。コンタクトレンズは、創傷治癒、薬剤若しくは栄養補助剤の供給、診断的評価若しくは監視、紫外線遮断、可視光線若しくはグレアの抑制、又はこれらの組み合わせを含む、矯正的、美容的、治療的な利益をもたらし得る。コンタクトレンズは、当該技術分野で既知の任意の適切な材料であり得、ソフトレンズ、ハードレンズ、又は弾性率、含水率、光透過、若しくはこれらの組み合わせなどの、異なる物理、機械、若しくは光学特性を有する少なくとも2つの別個の部分を含有するハイブリッドレンズであり得る。
【0031】
本発明の生物医学用デバイス、眼科用装置、及びレンズは、シリコーンヒドロゲル又は従来のヒドロゲルで構成され得る。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、硬化されたデバイス内で互いに共有結合した、少なくとも1つの親水性モノマー及び少なくとも1つのシリコーン含有成分を含有する。
【0032】
用語「光学ゾーン」又は「ゾーン」は、着用者の網膜に入る前に光が物体から通過するレンズの領域を指す。
【0033】
「重合性化合物」という用語は、1つ又は複数の重合性基を含有する化合物を意味する。この用語は、例えば、モノマー、マクロマー、オリゴマー、プレポリマー、架橋剤などを包含する。
【0034】
「重合性基」は、フリーラジカル重合及び/又はカチオン性重合などの連鎖成長重合を受けることができる基である。重合性基の非限定的な例、アクリレート、メタクリレート、スチリル、ビニル、アリル、N-ビニルラクタムなどを含む。
【0035】
「シリコーン含有成分」は、通常は、シロキシ基、シロキサン基、カルボシロキサン基、及びこれらの混合物の形態で、少なくとも1つのケイ素-酸素結合を有する、反応性混合物中のモノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、開始剤、添加剤、又はポリマーである。
【0036】
「ポリマー」は、重合中に使用されるモノマーの反復単位で構成される標的高分子である。
【0037】
「反応開始剤」とは、続いてモノマーと反応してフリーラジカル重合反応を開始することができるラジカルに分解可能である分子である。熱開始剤は、温度に応じて特定の速度で分解し、典型例は、1,1’-アゾビスイソブチロニトリル及び4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)などのアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、及びラウロイルペルオキシドなどのペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムなどの過酸、並びに様々な酸化還元系である。光開始剤は、光化学プロセスにより分解し、典型例は、ベンジル、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、及びこれらの混合物の誘導体、並びに様々なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシド、並びにこれらの組み合わせである。
【0038】
「架橋剤」は、分子上の2つ以上の位置でフリーラジカル重合を受け、それにより分岐点及びポリマーネットワークを作り出すことができる、二官能性又は多官能性モノマーである。一般的な例は、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、それらの混合物などである。
【0039】
「ポリマーネットワーク」は、膨潤し得るが溶媒に溶解できない架橋巨大分子である。「ヒドロゲル」とは、典型的には少なくとも10重量%の水を吸収しながら、水又は水溶液中で膨潤するポリマーネットワークである。「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも1つの親水性成分と共に少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるヒドロゲルである。親水性成分はまた、非反応性ポリマーを含んでもよい。
【0040】
「従来のヒドロゲル」は、いかなるシロキシ、シロキサン、又はカルボシロキサン基も有しない成分から作製されたポリマーネットワークを指す。従来のヒドロゲルは、親水性モノマーを含む反応性混合物から調製される。例としては、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(「hydroxyethyl methacrylate、HEMA」)、N-ビニルピロリドン(「N-vinyl pyrrolidone、NVP」)、N,N-ジメチルアクリルアミド(「dimethylacrylamide、DMA」)、酢酸ビニル、又はビニルアセテートを含有するポリマーが挙げられる。米国特許第4,436,887号、同第4,495,313号、同第4,889,664号、同第5,006,622号、同第5,039459号、同第5,236,969号、同第5,270,418号、同第5,298,533号、同第5,824,719号、同第6,420,453号、同第6,423,761号、同第6,767,979号、同第7,934,830号、同第8,138,290号、及び同第8,389,597号は、従来のヒドロゲルの形成を開示している。市販の従来のヒドロゲルとしては、エタフィルコン(etafilcon)、ゲンフィルコン(genfilcon)、ヒラフィルコン(hilafilcon)、レネフィルコン(lenefilcon)、ネソフィルコン(nesofilcon)、オマフィルコン(omafilcon)、ポリマコン(polymacon)、及びビフィルコン(vifilcon)(それらの変形の全てを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「シリコーンヒドロゲル」は、少なくとも1つの親水性成分及び少なくとも1つのシリコーン含有成分から作製されるポリマーネットワークを指す。シリコーンヒドロゲルの例としては、アクアフィルコン(acquafilcon)、アスモフィルコン(asmofilcon)、バラフィルコン(balafilcon)、コムフィルコン(comfilcon)、デレフィルコン(delefilcon)、エンフィルコン(enfilcon)、ファルコン(falcon)、ファンフィルコン(fanfilcon)、フォルモフィルコン(formofilcon)、ガリーフィルコン(galyfilcon)、ロトラフィルコン(lotrafilcon)、ナラフィルコン(narafilcon)、リオフィルコン(riofilcon)、サムフィルコン(samfilcon)、セノフィルコン(senofilcon)、ソモフィルコン(somofilcon)、及びステンフィルコン(stenfilcon)(それらの変形の全てを含む)、並びに米国特許第4,659,782号、同第4,659,783号、同第5,244,981号、同第5,314,960号、同第5,331,067号、同第5,371,147号、同第5,998,498号、同第6,087,415号、同第5,760,100号、同第5,776,999号、同第5,789,461号、同第5,849,811号、同第5,965,631号、同第6,367,929号、同第6,822,016号、同第6,867,245号、同第6,943,203号、同第7,247,692号、同第7,249,848号、同第7,553,880号、同第7,666,921号、同第7,786,185号、同第7,956,131号、同第8,022,158号、同第8,273,802号、同第8,399,538号、同第8,470,906号、同第8,450,387号、同第8,487,058号、同第8,507,577号、同第8,637,621号、同第8,703,891号、同第8,937,110号、同第8,937,111号、同第8,940,812号、同第9,056,878号、同第9,057,821号、同第9,125,808号、同第9,140,825号、同第9156,934号、同第9,170,349号、同第9,244,196号、同第9,244,197号、同第9,260,544号、同第9,297,928号、同第9,297,929号、並びに国際公開第03/22321号、同第2008/061992号、及び米国特許出願公開第2010/0048847号で調製されているようなシリコーンヒドロゲルが挙げられる。これらの特許は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
「反応性混合物」及び「反応性モノマー混合物」という用語は、一緒に混合され、重合条件に曝されたとき、従来の又は本発明のシリコーンヒドロゲルを形成するとに、そこから作製されるコンタクトレンズを形成する成分(反応性及び非反応性の両方)の混合物を指す。反応性モノマー混合物は、モノマー、マクロマー、プレポリマー、架橋剤、及び反応開始剤などの反応性成分、湿潤剤、離型剤、ポリマー、染料などの添加剤、光吸収化合物、例えば、UV吸収剤、顔料、染料、及びフォトクロミック化合物(それらのいずれも反応性又は非反応性であってもよいが、得られる生物医学装置内に保持されることが可能である)、並びに医薬化合物及び栄養補助化合物、及び任意の希釈剤を含んでもよい。作製される生物医学用デバイス及びその使用目的に基づき、多様な添加剤が添加され得ることが理解されるであろう。反応性混合物の成分の濃度は、希釈剤を除いて、反応性混合物中の全ての成分の重量百分率として表される。希釈剤が使用される場合、それらの濃度は、反応性混合物中の全ての成分及び希釈剤の量に基づき重量百分率として表される。
【0043】
「反応性成分」は、共有結合、水素結合、静電相互作用、相互貫入ポリマーネットワークの形成、又は任意の他の手段により、得られるヒドロゲルのポリマーネットワークの化学構造の一部となる、反応性混合物の成分である。
【0044】
用語「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」は、少なくとも1つのシリコーンヒドロゲルを含むコンタクトレンズを指す。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは通常、従来のヒドロゲルと比較して増加した酸素透過性を有する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、それらの含水量及びポリマー含有量の両方を機能させて酸素を眼に送る。
【0045】
「リアルタイム」は、瞬時はなく、むしろ、商業的に有意な着用者の母集団の許容可能な主観的寛容を超えることなく、データが受信され、処理され、作用され得る期間を指す。
【0046】
同調可能」とは、1つ又は2つ以上の動作パラメータを変更することができる又は変化させることができる装置の機能を指す。「動的に」同調可能な装置は、生理学的状態又は状態の変化に応答して、リアルタイム又はほぼリアルタイムでそのような動作パラメータの変化をもたらすことができる。
【0047】
視力矯正、及び潜在的な視力向上は、典型的には、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、眼内レンズ(IOL)、及び他の眼科用装置において、静的光学部品によって達成される。例えば、近視(近眼)を治療するための眼鏡レンズ又はコンタクトレンズは、角膜、水晶体レンズ又は眼の形状の欠陥によって引き起こされる網膜上の焦点を矯正する、球面屈折力を有するレンズを含む。しかしながら、これらのレンズは光学的に静的なものであるため、眼の水晶体レンズの光学度数を変化させることによって遂行される可変焦点動作である、人間の眼の自然な反応と合致しない。老眼の患者では、異なる焦点距離に順応する眼の自然な能力が大幅に低下しており、機能の喪失及び不快感につながっている。この分野における最近の進歩には、ある程度の動的調節作用を有する眼鏡レンズ及び更にはIOL、例えば、限られた量の屈折力変化を達成するための電子眼鏡レンズ又はいわゆる調節IOLが挙げられる。これらの既存のシステムには、わずかな範囲の追加度数しか、おそらくは+1ジオプターしかカバーしないこと、眼鏡レンズの着用を必要とすること、IOLを埋め込む手術を必要とすること、その他の欠点による制限がある。
【0048】
従来のコンタクトレンズは、上記に簡潔に述べた様々な視力の問題を静的に矯正する、特定の形状を有するポリマー構造である。機能性の向上を達成するため、様々な回路及び構成要素がこれらのポリマー構造に統合される必要がある。例えば、制御回路、マイクロプロセッサ、通信デバイス、電源装置、センサ、アクチュエータ、発光ダイオード、及び小型アンテナを、特別に設計された光電子素子を介してコンタクトレンズに統合して、視力を矯正するだけでなく、視力を向上させると共に、本明細書に説明するような追加の機能性を提供してもよい。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、拡大縮小能力を介して、又は単にレンズの屈折能力を修正して、視力の向上を提供してもよい。電子及び/又は電動式コンタクトレンズは、色及び解像度の視覚を向上させるように、文字情報を表示するように、会話をリアルタイムで字幕に翻訳するように、ナビゲーションシステムから視覚的キューを与えるように、また、画像処理及びインターネットアクセスを提供するように設計されてもよい。レンズは、着用者が低光量条件で見ることができるように設計され得る。これらの機能若しくは類似の機能のいずれかの代わりに、又はそれらに加えて、コンタクトレンズは、着用者のバイオマーカ及びヘルスインジケータを非侵襲的に監視する構成要素を組み込み得る。例えば、レンズに内蔵されたセンサは、涙膜の成分を分析することによって、糖尿病患者が血液を採取する必要なく血糖レベルを定期的にチェックするのを可能にし得る。それに加えて、適切に構成されたレンズは、コレステロール、ナトリウム、及びカリウムのレベル、並びに他の生物学的マーカを監視するセンサを組み込んでもよい。これを、無線データ送信器と連結することにより、医師が患者の血液の化学的情報にほぼ即時にアクセスすることが可能となって、患者が検査機関に赴いて血液を採取するために時間を浪費する必要がなくなる。それに加えて、レンズに内蔵されたセンサを利用して、眼に入射する光を検出することにより、周辺光条件を補償するか、又は瞬きのパターンを調べるのに使用することができる。
【0049】
上記に述べたように、本発明は、多くの構成要素を含むコンタクトレンズなどの眼科用装置に関する。装置の適切な組み合わせによって、潜在的に前例のない機能性をもたらすことができるが、眼科用レンズを構成する光学グレードのポリマーに余分な構成要素を組み込むことに関連する多くの困難が存在する。一般に、レンズの小規模且つ複雑な形状のために、そのような構成要素をレンズ上に直接製造することは困難である。レンズ上又はレンズ内に置かれる構成要素は、構成要素を眼上の液体環境から保護しながら、わずか1.5平方センチメートルの、又は場合によっては17平方ミリメートルの透明ポリマーの領域上に小型化及び統合される必要がある。コンタクトレンズは、追加の構成要素の追加の厚さであっても、着用者にとって快適でなければならない。
【0050】
潜在的なサイズ制約に加えて、コンタクトレンズに組み込まれる電子装置は、本質的に水性の環境で堅牢且つ安全に使用できるものでなければならない。涙は、約7.4のpHを有し、約98.2%が水分であり、1.8%が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及び塩化物などの電解質を含む溶解した生理塩である。これは、電子部品を導入するにはいささか過酷な環境である。また、コンタクトレンズは、少なくとも4時間、好ましくは8時間以上にわたって着用されるように一般的に設計されている。
【0051】
電子構成要素はエネルギーを必要とする。このエネルギーは、内蔵式電池などの任意の数の内部又は外部電源から供給されてもよい。電池及び他の潜在的エネルギー源は、これらのサイズでは可能性が限定されるため、レンズ駆動機構を含む全ての電子構成要素は、比較的長い期間(貯蔵寿命)にわたってアイドル状態に置かれた後でも十分な時間コンタクトレンズを着用することができるよう、消費電力ができるだけ小さくなるように設計されることが好ましい。最後に、電子コンタクトレンズの全ての構成要素は、生体適合性であって安全なものでなければならない。したがって、コンタクトレンズに組み込まれた全ての電子機器は、理想的には、前述の設計パラメータ、すなわち、サイズ、水溶液中での生存性、消費電力及び安全性を満たす必要がある
【0052】
図1を参照すると、100において、例示的な同調可能なアポダイズされた多焦点電動式コンタクトレンズの実施形態の等角図が示されている。装置は、以下により詳細に記載されるように、ヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルを含む任意の数の好適な眼用材料から構成され得るレンズ本体102含む。レンズ本体102は、装置の残りの構成要素を取り囲むことができる。レンズ本体102は、好ましくは、レンズの中心に対して1つ又は2つ以上の直径に位置付けられた屈折力、並びに着用者の眼の光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動瞳孔反射のうちの1つ又は2つ以上に基づいて改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するように最適化された幅を有する多焦点又は二焦点の設計など、それぞれが屈折力を有する1つ又は2つ以上の光学ゾーンを有する光学設計によって形成される。レンズは、多焦点面、二焦点面、又は連続多焦点面などのマルチフォーカス面の1つ又は組み合わせを有してもよい。ゾーン多焦点面とは、光学屈折力の変化の勾配を呈する連続多焦点面と比較して、比較的急激な不連続部で合流する光学屈折力補正の領域を有する多焦点レンズを指す。用語「ゾーン」は、1つの屈折力又は屈折力範囲を有するレンズの領域を説明するために使用され、ゾーン多焦点面、二焦点面、及び/又は連続多焦点面の考察に等しく適用されてもよい。
【0053】
図示される実施形態では、いくつかの構成要素が、同調可能なアポディゼーションマスク104を含むレンズ本体材料に埋め込まれる。同調可能なアポディゼーションマスク104は同調可能なアポディゼーションマスクの変化(すなわち、同調)が所望の光学ゾーンを通過する光の光透過特性を選択的に変更することができるように、レンズ102の光学ゾーンの少なくとも一部の内部に配置されることができる。この実施例では、特定の環状光学ゾーンを通過する光の量は、同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度を調節することによって選択的に同調される。しかしながら、これらに限定されるものではないが、量、色、光路長、及び屈折率を含む、同調可能なアポディゼーションマスクを介して光学ゾーンを通過する光の可能な光透過特性のホストは、同調可能なアポディゼーションマスク内の適切な材料を使用して、所望に応じて変化させることができる。材料としては、これらに限定されるものではないが、液晶材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、ナノ構造材料、ナノ粒子材料、ナノ結晶材料、又は懸濁粒子及び組み合わせが挙げられる。当業者は、上記のように、これらの材料又は他の材料の中から認識及び選択して、関連する設計制約を満たし、光透過特性に対する所望の変更を達成することができる。
【0054】
この実施例では、同調可能なアポディゼーションマスク104は、レンズの指定された光学ゾーンを通じて眼に入射する光の量を遮断するために、不透明と透明な状態との間で電気能動的に切り替えられ得る領域を有するエレクトロクロミックデバイスを用いる。同調可能なアポディゼーションマスク104は、遠方視力のために最適化された焦点屈折力を有するレンズの2つの光学ゾーンに対応する領域106及び108を含む。同様に、マスク104は、近方視力のために最適化された光学ゾーンに対応する別の領域107を含む。この説明の目的のために、アポディゼーションマスクの領域は、その領域が眼科用装置の特定の光学ゾーンの少なくとも一部に配置されているときに、光学ゾーンに対応すると言われる。更に、本開示で使用される「最適化された」とは、焦点距離又は焦点距離の範囲における視力を強化する光学設計又は矯正特徴を意味し、用語は、絶対的な最良又は最も効果的な設計を暗示することを意味するものではない。中央領域110は、近方、遠方、中間視力、又は別の焦点距離又は焦点距離範囲に対して最適化されたレンズの領域を表すことができる。臨床用語では、遠方視力は、典型的には0から1/6D(無限から6メートル)の範囲内であると見なされ、近方視力は、2から3D(0.5から0.33メートル)と見なされ、中間視力は、近方視力と遠方視力との間の任意の場所である。しかしながら、本開示の目的のために、近方、遠方、及び中間視力は、いかなる特定の範囲にも拘束されない。用語は、本明細書では、単に相対距離及び関連する調節要求を伝達するために使用される。
【0055】
例示的な装置100同様に、中央領域を通る光の透過率が比較的妨げられず、したがって、着用者の所望の焦点距離に関係なくレンズのバルク材料の透過率のものに近付くように、アポディゼーションマスクは、中央領域110の周囲方向外側に存在してもよい。別の言い方をすれば、中央領域110は、アポダイズされないものとして説明されてもよい。場合によっては、同調可能なアポディゼーションマスクを構成する材料のレンズ空洞のこの中央領域を残すことによって、酸素は、レンズの中央領域を角膜まで自由に通過することができ、したがって、レンズの全酸素透過性を増加させることができる。レンズのバルクを構成する材料は、一般に、同調可能なアポディゼーションマスクの材料よりも高い酸素透過率(Dk)を有すると予想され得るため、この利点は達成されることができる。その結果、エレクトロクロミック材料は、下にある角膜に対して比較的低い酸素透過率を有するレンズの領域を形成する。これらの状況において、マスクを取り囲む領域は、比較的多量の酸素が眼表面に到達することを可能にする材料を組み込むことによって補償することができる。眼表面への酸素透過を更に向上させるために、同調可能なアポディゼーションマスクに関連する材料を含まないように、レンズの他の部分に有用であり得ることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、これは、以下より詳細に説明するように、同調可能なアポディゼーションマスク内に複数のを作り出すことによって達成されることができる
【0056】
この実施例では、同調可能なアポディゼーションマスクの領域106及び108は、着用者の近くの物体に焦点を合わせるという要望と一致する、同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度の選択的増加を示すために陰影が付けられている。これは、本明細書では、領域106及び108がアポダイズされているか、又は不透明な「状態」又は「モード」で機能するものとして説明することができる。同様に、図中の明るく示される領域107、透明な状態で機能するものとして説明することができる。より具体的には、遠方のために最適化されたレンズのゾーンを通して眼に入射する光の一部又は全てを遮断することによって、眼に入射する光波は、近方視力及び/又は中間視力のために最適化されたものに限定される。遠方視力に関連する追加の焦点(すなわち、ユーザが焦点を合わせていない場合)を低減すると共に、近方視力のために最適化された視覚情報の共有(すなわち、ユーザが焦点を合わせる)を対応して増大させることにより、主観のスルーフォーカス視覚性能は、単一レンズ内の複数の焦点距離の最適化された視力の利益を保持しながら、従来の多焦点又は二焦点レンズに対して改善されることができる
【0057】
以下より詳細に説明するように、同調可能なアポディゼーションマスクは、例えば、近くから遠くまで、又はその逆に、着用者の焦点の所望の変化を示す信号をプロセッサから受信するように構成されることができる。信号を受信すると、近くに対応する領域内の同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度は増加又は減少し、遠くに対応する領域の不透明度は、近方領域のものに反比例して増加又は減少する。近く及び遠くのシナリオに加えて、又はその代わりに、互いに対して相対的に又は独立して変化するように構成されることができる任意の他の数の状態及び領域が存在し得る。レンズの光学設計及びマルチフォーカス面タイプに応じて、任意の数の離散的又は連続的に可変の同調可能領域が提供されてもよい。着用者の現在所望の焦点距離を検出するように構成されたセンサを断続的にサンプリングすることによって、同調可能なアポディゼーションマスクは、着用者によって現在所望されている焦点距離のために最適化された状態の間で連続的に切り替わることができる。同様に、同調可能なアポディゼーションマスクのいくつかの領域は、静的、すなわち、アポダイズされないままとすることができる。例えば、場合によっては、1つ以上のゾーンが、着用者が、近く若しくは遠くにある対象に焦点を合わせるか、又はその間のどこかに焦点を合わせるかどうかにかかわらず、1つ又は2つ以上のゾーンが活性のままであることが望ましい場合がある。これは、これらの非アポダイズゾーンが、レンズの残りの部分と比較して比較的低い酸素透過性を有し得る、同調可能なアポディゼーションマスクの任意の対応する部分を含まないため、角膜への酸素透過を増加させることができる。
【0058】
同調可能なアポディゼーションされた多焦点の電動式コンタクトレンズ100は、眼科用装置の動作を容易にすることができる電子構成要素を含む電子インサートを更に含んでもよい。電子インサートは、プロセッサ111レンズ駆動装置113エネルギー源又は蓄積装置、この例では電池109、着用者のリアルタイムの所望の焦点距離を検出することができるセンサ、及びこれらの電子構成要素間の相互接続を形成する電気トレースを含んでもよい。電気部品は、薄シリコンウェハなどの任意の好適な基板上に配設されてもよい。この例では、電子インサート112は環状形状を有し、電子部品はインサートの周囲に放射状に配置されている。特定の電子構成要素はまた、環状基材に良好に適合する環状形状を呈してもよい。例えば、本実施例の電池109は、電子インサートのかなりの部分の半径に広がる環状形状を有する。この実施形態の電子インサートは、着用者の視力を妨げないようにレンズの非光学ゾーン内に位置する。しかしながら、特に、透明な導電性酸化物若しくは薄膜トランジスタなどの透明又は近透明電子機器が使用される場合、又は構成要素が視力に過度に影響を与えない程度に小型化されている場合、光学ゾーンを含むレンズの他の領域に電子部品を配置することができることを理解されたい。当該技術分野において既知であるように、屈折率整合技術を用いて、レンズの光学ゾーン内に存在する構成要素の視認性を更に低減することができる。本発明の範囲内の更に他の実施形態では、眼科用装置の電子構成要素は、例えば、垂直方向に積層されたダイ(図示せず)上に電子構成要素を配置するか、又は熱成形プロセスなどによって、三次元構造を有する電気基板を形成することなどによって、それらの密度を最大化するように他の方法で配置されてもよい。また、プロセッサ111及びレンズ駆動装置113など、本明細書に示される電子構成要素及び回路は、単一の集積回路上に組み合わされてもよく、又は本発明の範囲内の個別のICに分離されてもよいことに留意されたい。
【0059】
以下の図6を参照して更に論じられるように、本発明の実施形態と一致する眼科用装置は、装置への電気接続性、支持、及び/又は酸素透過性の増加をもたらし得る相互接続構造を含んでもよい。図1の同調可能なアポディゼーションされた焦点コンタクトレンズ100を更に参照すると、例示的な相互接続構造114が、同調可能なアポディゼーションマスク104と電子インサートとの間に介在して示されている。いくつかの実施形態では、相互接続構造は、1つ以上の電子構成要素、例えば、プロセッサ111のレンズ駆動装置113と同調可能なアポディゼーションマスク104との間に電気接続性を提供することを含む、複数の目的を果たすことができる。電気トレースは、相互接続構造114に埋め込まれるか、又は配線されて、電子インサートの1つ以上の電気接点及び同調可能なアポディゼーションマスクにおいて相互接続を形成することができる。
【0060】
ここで図2を参照すると、図1の実施形態に係る例示的な同調可能なアポディゼーションされた多焦点電動式コンタクトレンズの断面が提供される。レンズ本体202は、図示されるように、装置の構成要素の残りの部分を取り囲むことができる。本発明の全ての実施形態において必須ではないが、電子インサート204相互接続構造体206、及び同調可能なアポディゼーションマスク208を含む、本実施例における内部構成要素は、項目203示される境界によって画定される封入インサート内に配置される。インサート内に構成要素を封入することは、構造的剛性、製造の容易さ、及び重合されてレンズ本体を形成することができる水性モノマー混合物からの内部構成要素の遮蔽を提供することができる。封入は、同様に、眼組織又は流体が、生体適合性でなくてもよい眼科用装置の電子機器及び/又は任意の材料と接触することを防止することによって、着用者を保護することができる。任意の数の電極が用いられることができる。しかしながら、好ましい材料は、比較的透明であり、収縮抵抗性であってもよいが、これらの属性はいずれも本発明の全ての実施形態に必須ではない。また、封入は、着用者の視力に対する潜在的な妨害を最小限に抑えるために、レンズ材料と同様の屈折率を有することが有益とすることができる。好適な材料としては、例えば、およそ84Dの硬化硬度及び1.5Ndの屈折率を有するEPO-TEK OG603エポキシが挙げられる。
【0061】
外側周辺部で始まり、封入されたインサート203中心に向かって移動することは、最初に電子インサート204対して行われる。この例では、電子インサート204装置の動作を容易にすることができる様々な電子構成要素、例えば、プロセッサ、エネルギー源、及び着用者の所望の焦点距離を検出することが可能なセンサなど、(この断面からは識別できないが)装置の動作を容易にすることができる様々な電子構成要素を装着した基材を含む。図示の実施形態における構成要素の環状配置により、インサートの左側に記載される構成要素は、重複する参照符号によって示されるように、インサートの右側に鏡写されることに留意されたい。内側に移動すると、同調可能なアポディゼーションマスク208と電子インサート204の間に介在する相互接続構造体206が次に示されている。インサート内に収容される構成要素は、接着剤、好ましくは導電性接着剤を使用して互いに固定されてもよい。更にまた、図示されるように、構成要素は、インサートのチャンバ内に正確な嵌合を可能にするために、隣接構成要素に対してノッチ、舌部/溝、棚、又は他の噛合係合可能な表面を有してもよい。接着剤を被係合可能な表面の一方又は双方に適用して、構成要素間の適切な接合界面を可能にしてもよい。同様に、この例に示されるように、構成要素は、相互に相互接続されたときに、構成要素が、一般に、レンズ本体の曲率を追跡して、レンズ本体内での構成要素の取り付けを支援し、構成要素を収容するために必要なレンズ全体の厚さを低減するように、インサートのチャンバ内の空間内の角度で配向されてもよい。しかしながら、本明細書に図示されていない他の実施形態では、構成要素は、眼科用装置の所望のアーキテクチャ、設計、及び体積制約に応じて、水平、垂直、又は他の平面上に置かれてもよいことに留意されたい。
【0062】
相互接続構造206から内側に移動することは、この例では、重なり合うリップ接合で相互接続構造206に物理的に取り付けられる、同調可能なアポディゼーションマスク208である。同調可能なアポディゼーションマスクの領域208は、この図の領域208の上の前方表面レンズ材料の光学ゾーンに対応する領域を画定する。前述したように、遠方のために最適化されたレンズのゾーンを介して眼に入射する光の一部又は全てを遮断することによって、眼に入射する光波は、この例では近方視力及び/又は中間視力のために最適化されたものに制限される。この実施例におけるレンズ210の中央領域は、レンズ本体の材料以外の材料の空隙を残している。例えば、ここでのアポディゼーションマスク208は、中央ゾーンを通る光の透過率が妨げられず、したがって、着用者の所望の焦点距離に関係なくレンズのバルク材料のものに近付くように、中央ゾーン210の周囲方向外側に存在する。同調可能なアポディゼーションマスクを構成する材料のレンズ空洞のこの中央領域を残すことによって、酸素は、レンズの中央領域を眼表面までより自由に通過させることができ、したがって、レンズの全酸素透過性を増加させることができる。中央ゾーン210は、近方、遠方、中間視力、又は別の焦点距離又は焦点距離の範囲に対して最適化されたレンズ設計の領域を表すことができる
【0063】
図3では、例示的な同調可能なアポディゼーションマスク300がより詳細に示されている。この例におけるエレクトロクロミックデバイス300は、図1及び図2を参照して上述した領域を含む。領域302及び306は、遠方視力に最適化された前方表面レンズ材料の光学ゾーンに対応する。領域304は、近方視力に最適化された光学ゾーンに対応する。領域302及び領域306は、不透明状態で示されており、したがって、着用者に比較的近い対象に焦点を合わせるように望む着用者の望みと一致する、同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度の選択的増加を示すために暗色化されている。ここでも、本実施例に示す領域は、例示的なものに過ぎない。同調可能領域の数、相対的スケール、位置、サイズ、及び形状は、本発明の範囲内で無数に変化することができる。実際に、以下により詳細に論じられるように、レンズの光学設計における様々な最適化は、特定の着用者の1つ又は2つ以上の眼光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動応答、母集団の断面、及び/又は一般の母集団に基づいて、改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するために、異なる所望の効果を達成するために、これらの領域の形状、サイズ、位置、及び他の属性(それらがレンズの近方、遠方、中間又は他のゾーンに対応するかどうかを含む)に影響を及ぼすことができる
【0064】
装置300は、これらに限定されるものではないが、固体無機又は有機材料が電解質として使用されることができる固体状態ECDを含む任意の数のエレクトロクロミックデバイス(ECD)、液体ゲルが電解質として使用されることができる積層ECD、コポリマーマルチカラーECD、及び/又はこれらの組み合わせの形態をとることができる。他の代替的な同調可能なアポディゼーションマスクと比較して、エレクトロクロミックデバイスは、比較的低い電力消費、より低コスト、より速いスイッチング時間、及びより良好な製造可能性を含む利点を提供することができる。図4に関してより詳細に論じられるように、そのようなECDは、その前面及び後面において機械的基材を含む。機械的基材は、ガラス、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート「PET」)、又は他の好ましくは透明な材料であってもよい。ECD内では、内側導電層及び外側導電層(本明細書では電極とも呼ばれる)は、それぞれの内側機械的基材及び外側機械的基材上に位置してもよい。選択されたECDの種類及び能力に応じて、透明状態、不透明状態、及び/又は着色状態の間の状態の変化をもたらすために、電極に電気的バイアスを印加することができるように、導電層又は電極の少なくとも一部は、相互接続構造体と電気的に接触している(又は、電子インサート内に収容されることができるものなど、電子機器に直接接触している)。
【0065】
図4A及び図4Bは、本発明の特定の実施形態で使用されることができる例示的なエレクトロクロミックデバイス400の断面を示している図4Aは、透明モードで機能する装置を示しているが、図4Bは、不透明モードで機能する装置を示している。ECDの基本構造は、電解質層404よって分離されたエレクトロクロミック層402及びイオン貯蔵層405からなる。互いに機能するエレクトロクロミック層、イオン貯蔵層、及び電解質層は、イオン輸送基と総称されることができる。エレクトロクロミック層は、ベンゼン構造に基づいてエレクトロクロミック共役ポリマー(ECP)から形成され、所望の波長吸収、プロセス能力、及び他の関連するパラメータを提供するように合成されてもよい。波長吸収は、広範囲の色を提供するように制御されてもよい。無色のECPは、イオン貯蔵層として機能することができる。代替的なエレクトロクロミック材料としては、とりわけ、メタロヘキサン、ビオロゲン、遷移金属錯体、金属水素化物が挙げられる。電解質の化学的性質は、エレクトロクロミックデバイスの所望の電気特性に応じて大きく変化することができる。これらに限定されるものではないが、液体、ゲル、及び乾燥ポリマーを含む様々な種類の電解質が用いられてもよい。液体電解質を有する装置は、機械的シールを必要とする場合があるが、乾燥ポリマーを有する装置は、封止を必要としなくてもよい。ECD400は、装置の前面及び後面に位置する機械的基材層410によって収容されることができる。機械的基材は、ガラス、プラスチック、又は他の好ましくは透明な材料であってもよい。
【0066】
ECDは、一般に、本明細書では、エレクトロクロミック層402電解質404及びイオン貯蔵層405が挟まれた導電層とも称される電極406及び407外部電圧を供給することによって動作する。電極は、好ましくは、インジウムスズ酸化物(すなわちITO)などの透明導電体から作製されるが、単層グラフェン、グラフェン酸化物、グラフェン-ヘキサナール窒化ホウ素(hBN)、金属ナノワイヤ、又は導電性ポリマーを含む他の材料を使用してもよい。エレクトロクロミック材料の着色又は不透明度は、電極に電圧バイアスを印加することによって、セルの電位を変化させることに起因する。前述したように、好適なECDは、装置パーセント送信、遷移時間、ライフサイクル、貯蔵寿命、安定性、電力消費を含む用途要件に基づいて異なるタイプを含んでもよい。例えば、積層されたECDは、より速い遷移時間のための液体又はゲル電解質を含んでもよく、その一方で、封止されていないECDは、状態安定性の増大のために設計された固体電解質を含んでもよい。
【0067】
図4Aを参照すると、ECDを通過する光401によって示されるように、例示的なECD 400は、透明モードで機能するように示されている。この例示的な装置では、電極406及び407印加される電圧を減少させる(又は無効にする)ことによって、透明モードが達成されることができる。そうすることで、エレクトロクロミック層のイオン403が電解質層404を通ってイオン貯蔵層406と移動する。エレクトロクロミック層のイオンの存在により、エレクトロクロミック層404における光吸収(又はいくつかの材料の場合の反射)が得られ、材料を比較的不透明にするため、エレクトロクロミック層からイオン貯蔵層406へとイオンが移動することにより、光がECDを通って移動し、ECDが比較的透明に見える。この実施例におけるレンズ408の中央領域は、レンズ本体の材料以外の材料の空隙を残している。ここで、ECD400は、中央ゾーンを通る光の透過率が妨げられず、したがって、透明及び不透明な動作モードの双方においてバルク材料のものに近付くように、中央ゾーン408を囲む。
【0068】
図4Bを参照すると、例示的なECD420は、遮光されている光411によって示されるように、不透明モードで機能するように示されている。この例示的な装置では、不透明モードは、電極406及び407印加される極性を反転(すなわち、増加又は有効化)することによって達成されることができる。そうすることで、イオン貯蔵層405内のイオン403は、エレクトロクロミック層402戻る。エレクトロクロミック層のイオンの存在により、エレクトロクロミック層402における光吸収(又は、いくつかの材料の場合の反射)が得られるため、材料を比較的不透明にする。電圧源の極性は、例えば、不透明な状態から透明な状態への状態の変化を開始するためにのみECDが電力を必要とするように構成されてもよいことに留意されたい。したがって、ECD又は構成の選択に応じて、状態、陰影、又は不透明度を維持することは、一定の電圧を必要とせず、したがって、有利にはエネルギーを節約することができる。ECDの状態をより良好に維持するために、電圧のパルスを周期的に印加して、それらのバイアスされていない状態に戻るイオンの傾向を相殺することが有利であり得る。上述したように、当業者は、いくつかの場合には、それを吸収するのではなく光を反射するヒドリドを含む、好適なエレクトロクロミック材料のホストを認識することができる。場合によっては、ニッケル-マグネシウム合金から作製された薄膜は、透明から反射状態へと前後に切り替わってもよい。ECDに印加される電圧の極性は、本発明の範囲内で本明細書に記載される方法とは逆に印加されてもよいことを理解されたい。
【0069】
図5Aは、2つの個別に封止されたECDセルを有する例示的な同調可能なアポディゼーションマスクの断面を示している。セル502は、内側導電層532及び外側導電層530から作製される。これらの導電層の間に挟まれるものは、イオン貯蔵層538電解質層536エレクトロクロミック層534からなるイオン輸送基である。隣接するセル構成領域504は同様に、内側導電層522及び外側導電層520を含み、これらの間にエレクトロクロミック層528電解質層526及びイオン貯蔵層524からなるイオン輸送基が挟まれている。このセルのイオン輸送基は、隣接セルのイオン輸送基に対して逆方向又は反対側の内側の順に配向される。隣接するセル502及び504のイオン輸送基を反対の相対的な構成で配向することによって、双方のセルに同時に印加される単一の電位は、それらを対向するモードで動作させることができ、すなわち、一方が不透明であり、他方が透明であるか、又はその逆である。本実施例のセルは個別に封止され、これは、レーザー溶接、超音波溶接、又は任意の好適な接着剤によって達成されることができる
【0070】
1つの代替的な設計アプローチでは、図5Bは、単一のECDセル内で交互層を採用する同調可能なアポディゼーションマスクの断面を示している。ここで、一対の内側導電層及び外側導電層540及び542、互いに対向して配向された2つの隣接するイオン輸送基を含む。イオン輸送基は、スプレーコーティング、コンフォーマルコーティング、又は原子層堆積を使用して、内側及び外側導電性材料に適用されてもよい。選択された導電性材料は、材料を関連する表面上に噴霧して、イオン層を形成することによって適用されることができる。図5Aに関して上述したように、隣接する領域のイオン輸送基が相対的な相対構成にあるため、双方のセルに同時に印加される単一の電位は、それらを対向するモードで動作させることになる。しかしながら、単一セル内に層状イオン輸送基を組み込むことにより、より少ない電気接点が必要とされると、ECDの製造を簡略化することができる。加えて、セルの制御は簡略化されてもよく、本明細書の他の箇所で議論される酸素輸送を改善するための機構が改善されることができる図5A及び5Bを参照して説明される例示的なECD設計は、2状態又は3状態構成を使用する本発明の実施形態においてすなわち、レンズが、近距離モードと遠距離モードとの間、又は近方、遠方、及び中間モードの間で切り替わるように構成され、中間モード、光がレンズの遠方及び近方ゾーンに入ることを可能にすることによって達成される場合に、特に有用であり得る。これらのシナリオでは、着用者の焦点の所望の変化を示す信号(プロセッサ及び/又はフォーカスセンサから)を受信すると、同調可能なアポディゼーションマスクの第1の領域の不透明度は、遠方視力ゾーンの不透明度に反比例する近方視力ゾーンの不透明度を同時に増大又は減少させるように構成されてもよい。
【0071】
本発明の実施形態と一致する眼科用装置は、装置への電気接続性、支持、及び/又は酸素透過性の増加をもたらす相互接続構造体を含んでもよい。図6は、図1を参照して上述した形態の例示的な相互接続構造体600をより詳細に示している。そのような相互接続構造体は、1つ以上の電子構成要素、例えば、プロセッサ、レンズ駆動装置、及び同調可能なアポディゼーションマスクの間に電気的接続性を提供することを含む、複数の目的を果たすことができる。相互接続構造体600は、これらに限定されるものではないが、エポキシ、成形ガラス、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などのプラスチック、剛性ガラス透過性材料、又は任意の他の透明な硬質材料を含む多くの好適な材料から形成されることができる。認識されるように、好ましい材料は、比較的透明、収縮耐性、及び剛性とすることができるが、これらの属性はいずれも本発明の全ての実施形態に必須ではない。また、レンズ材料と同様の屈折率を有して、着用者の視力に対する潜在的な障害を最小限に抑えることが一般的に有益であり得る。好適な材料としては、例えば、およそ84Dの硬化硬度及び1.5037Ndの屈折率を有するEPO-TEK OG603エポキシが挙げられる。
【0072】
この実施形態では、相互接続構造体600は、単一の材料片で形成されるが、特定の実施形態ではマルチピース構造が可能である。例示的な構造600は、同調可能なアポディゼーションマスクの外周を囲むように寸法決めされた環状形状を有し、電子インサートと同調可能なアポディゼーションマスクとの間に位置するように寸法決めされた環状形状を有する。604a604b及び604cなどの1つ以上の空隙領域は、同調可能なアポディゼーションマスクと電子インサートとの間の領域内の相互接続構造体600内に形成されてもよい。この構成は、周辺部又は非光学ゾーン内に存在することができる電子インサートと中央又は光学ゾーン内に位置する同調可能なアポディゼーションマスクとの間の電気的接続性を維持しながら、眼表面への酸素透過を有利に増加させることができる。605a605b及び605cなどの1つ以上のブリッジ部材は、電気トレースが同調可能なアポディゼーションマスクを作動させるために使用される電圧などの電気信号を伝送することができる基材として機能することができる。電気トレース材料は、Au、ITO、金属ナノワイヤ、導電性ポリマーなどを含む、任意の数の好適な材料を含んでもよい。更に、内部リング表面607は、1つ以上のノッチ又は溝を有してもよく、その上に接着剤が適用されて、同調可能なアポディゼーションマスクの対応する嵌合係合可能な表面との結合を形成してもよい。いくつかの実施形態では、導電性接着剤をこの領域に適用して、同調可能なアポディゼーションマスクの電極との電気的接続を形成することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態では、装置から不要な材料を排除することによって、眼科用装置を通る酸素輸送を更に高めることが望ましい場合がある。この利点は、レンズのバルクを構成する材料が、一般に、これらに限定されるものではないが、電子インサート及び同調可能なアポディゼーションマスクを含む眼科用装置の他の要素の材料よりも高い酸素透過率(Dk)を有すると予想されることができるため、達成されることができる。いくつかの実施形態では、低Dk材料の低減は、本明細書では、装置の1つ以上の材料における空隙、又は孔、又は貫通部とも称される窓を介して達成されることができる。一実施例を例示するために、図7は、眼科用装置の酸素透過性を増加させるのに有用であり得るいくつかの窓を有する同調可能なアポディゼーションマスク700を示している。この実施形態では、8つの円形702が、近方視力のために最適化されることができる同調可能なアポディゼーションマスクの領域704内に形成されている。しかしながら、窓の数、サイズ、形状、及び配置は、アポディゼーションマスクの領域の設計及びレイアウト、及び/又は視力と酸素透過性との間の所望のトレードオフを含む多数の要因に応じて、本発明の範囲内で無数に変化することができる。例えば、この例示的な実施形態に示すものよりも、より小さい直径を有し且つアポディゼーションマスクのより大きな表面積を被覆する多数のマイクロ窓は、眼の健康に対するより大きな有効性を有することができる。窓は、空気で「充填された」空隙であってもよく、又はシリコーンエラストマー、シリコーンヒドロゲル、及びいくつかの実施形態では従来のヒドロゲルが挙げられる適切な材料で充填されてもよい。いくつかの実施形態では、シリコーンエラストマー及びシリコーンヒドロゲル、特に、少なくとも約100バーラーの酸素透過性を有するもの、いくつかの実施形態では、少なくとも約150バーラーが望ましい。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態では、偏心は、本明細書で論じられる様々な構成要素によって生成される追加の質量を考慮して、予想される設計負荷とすることができる。偏心は、レンズが眼の涙膜上に概ね浮いており、したがって外力の影響を受けるコンタクトレンズの実施形態において特に懸念されることがある。例えば、重力の下で、レンズは、被験体のレンズ設計の光学ゾーンが瞳孔の生理学的中心からずれているため、レンズの性能を損なうのに十分な量だけ偏心することがある。この効果は、場合によっては、レンズの1つ又は2つ以上の光学ゾーンを、少なくとも部分的に、着用者の眼上でのレンズの予想される偏心をオフセットするように計算された量だけずれることがある。同心環状光学ゾーンを含むレンズ設計の場合、これは、光学ゾーンが幾何学的中心よりもむしろレンズが眼に着用されたときに偏心の予想される効果を受けているときに予想される中心点に外接しないようにレンズ設計を構成することによって達成することができる。いくつかの実施形態では、安定化又は回転防止効果を提供する特徴又は構造にこのアプローチを連結することも有益とすることができ、これらのいくつかは、バラスト及び動的安定化/二重薄ゾーンを含む当該技術分野において周知である。例えば、レンズは、増粘安定化設計を利用してもよく、この場合、増粘安定化設計は、眼の3時及び9時の位置よりも上及び下の瞼の開口内に置かれる
【0075】
上述したように、レンズ直径の中心に対して1つ又は2つ以上の直径に位置付けられた屈折力、並びに着用者の眼の光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動瞳孔反射のうちの1つ又は2つ以上に基づいて改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するように最適化された幅を有する多焦点又は二焦点設計など、多数の光学レンズ設計が本発明の範囲内で採用されてもよい。レンズは、多焦点面、二焦点面、又は連続多焦点面などのマルチフォーカス面の1つ又は組み合わせを有してもよい。ゾーン多焦点面とは、光学屈折力の勾配を呈する連続多焦点面と比較して、比較的急激な不連続部で合流する光学屈折力補正の領域を有する多焦点レンズを指す。本明細書で使用される場合、ゾーンという用語は、1つの屈折力又は屈折力範囲を有するレンズの領域を説明するために使用され、ゾーン多焦点面、二焦点面、連続多焦点面、及び/又はこれらの組み合わせのいずれかを利用する実施形態に等しく適用されてもよい。いくつかの例示的なゾーン多焦点設計の実施形態は、同調可能なアポディゼーションマスクと併せて使用される場合、有利な視覚性能特性を呈すると判定されている。特定の例示的実施形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することなく、本明細書で論じられる。例えば、更に他の実施形態は、上述したような実施形態を含む、本発明の範囲内であると理解され、ゾーンの勾配がレンズ上に存在する焦点距離勾配を十分に反映するように、同調可能なアポディゼーションマスクのいくつかのゾーンを提供することによって実現される同様の効果を有する連続多焦点面を含む
【0076】
本明細書に示される特定の例示的な実施形態のそれぞれは、レンズの各環状ゾーンのおよその半径方向位置、直径、及びレンズ度数が指定される近軸度数プロファイルによって説明される。半径方向の位置及び直径はミリメートルで示されるのに対して、レンズ度数はジオプターで表される。後述するレンズの個々のゾーンは、例えば、エレクトロクロミック材料、液晶材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、ナノ構造材料、ナノ粒子材料、ナノ結晶材料、及び懸濁粒子などを含む、上述のような任意の可能な種類の同調可能なアポディゼーションマスクを使用してアポダイズされてもよい。更にまた、以下の光学設計実施形態に関して論じられるアポディゼーションの形態は、レンズの所与のゾーン又はゾーンを通る光の透過率の変化に限定される。このアポディゼーションは、同調可能なアポディゼーションマスクの対応する部分又は部分の不透明度の増加を介して、光を遮断することによって達成されることができる。説明を容易にするために、同調可能なアポディゼーションマスクの理想的な「オン」又は「オフ」条件が想定される。すなわち、同調可能なアポディゼーションマスクは、透明な状態で光を100%、不透明な状態では0%の光を透過させることが可能であると想定される。しかしながら、実際には、利用可能な材料は、これらの性能パラメータが可能でなくてもよく、それでもなお、本発明の範囲内で所望の効果を達成することができる。例えば、約50%のみを透過することができる材料は、有効な透明な状態を達成するのに十分であり得る一方で、約20%以上の透過性を有する材料は、有効な不透明状態を達成するのに十分であることが観察されている。
【0077】
図8ACは、中間、近方、及び遠方最適化された視力に対応する4つの光学ゾーンを有する1つの可能な多焦点レンズ設計の概略図を示している図8Aは、中間視力モードで動作する例示的なレンズを示している図8Bは、近方視力モードで動作するレンズを示している図8Cは、遠方視力モードで動作するレンズを示している。この実施形態の目的のために、遠方視力は、約0.80D(ジオプター)未満の両眼離反運動要求(時には調節要求と呼ばれる)と考えることができる。中間視力は、両眼離反運動要求の約0.80Dから1.25Dの範囲内と考えることができる。そして、近方視力は、両眼離反運動要求の約1.25D超と考えることができる。
【0078】
図8Aから始めて、レンズ設計800の平面的な二次元描写が、眼に対する前方又は後方の視点から提供される。この描写は、例示目的のためであり、したがって、ゾーンの正確なスケール、サイズ、又は配置を含まないことに留意されたい。この設計の実施形態におけるゾーンは、同心の環状の配置を有する。ゾーン802及び806は、遠方視力のために最適化された焦点屈折力を有する。ゾーン804は、近方視力のために最適化された焦点屈折力を有する。中央ゾーン808は、中間視力のために最適化された焦点屈折力を有する。前の図を参照して論じたように、同調可能なアポディゼーションマスク(この図では識別できない)は、1つ又は2つ以上のゾーンに対して最適化された焦点屈折力を有するレンズの光学ゾーンに対応する領域を含む。この実施形態では、近方ゾーン804及び遠方ゾーン802及び806は、対応する領域をそれぞれ比較的透明又は不透明な状態にすることによって、ゾーンが「オン」又は「オフ」にされることができるように、同調可能なアポディゼーションの領域に対応する。この実施形態では、中間ゾーン808は、静的又はアポダイズされず、これは、着用者の所望の焦点距離に関係なく透明なままであることを意味する。これは、同調可能なアポディゼーションマスクの任意の部分のレンズ空洞のゾーンを残すことによって達成されることができる。このようにして、レンズの中心で酸素透過性を高めることができる。
【0079】
図8Aは、この実施形態では、レンズの全てのゾーンを「オン」又は透明な状態に置く、中間視力モードで機能するレンズを示している。このモードでは、光は、ゾーン802、804、806、及び808の全て、並びにゾーン802804806及び808に対応する同調可能なアポディゼーションマスクの領域を通過する。図8Bは、遠方視力のために最適化されたゾーン802及び806が、比較的不透明な状態で機能するように同調可能なアポディゼーションマスクの対応する領域を設定することによってアポダイズされ、それによって遠方視力のために最適化された焦点距離を遮断する近方視力モードで機能する同じレンズ設計の実施形態を示している。同様に、図8Cは、近方視力によって最適化されるゾーン804が、比較的不透明な状態で機能するように同調可能なアポディゼーションマスクの対応する領域を設定することによってアポダイズされ、それによって近方視力のために最適化された焦点距離を遮断する遠方視力モードで機能する同じレンズ設計の実施形態を示している。このようにして、着用者が近くに焦点を合わせるときに、遠方共役ゾーンを減衰させることによって、及び着用者が遠くに焦点を合わせるときに近方共役ゾーンを減衰させることによって、単一のレンズ内の複数の焦点距離の最適化された視力の利益を保持しながら、主観スルーフォーカス視覚性能が従来の多焦点又は二焦点レンズに対して改善されることができる
【0080】
図8Dは、図8ACを参照して上述した例示的な4ゾーン中央伝送実施形態の近軸度数プロファイルを示している。本明細書で使用される場合、中央伝送設計は、レンズの中央領域にアポダイズされていない領域を含む。近軸度数プロファイルにおいて、X軸は、レンズの中心からミリメートル単位での半径距離を表し、X軸はジオプターにおけるレンズ度数を表す。プロットがレンズの中心で3D度数に近付くことによって反映されるように、この特定の度数プロファイルは、+3Dの屈折異常を有する患者の矯正レンズに基づく。レンズの4つのゾーンは、この実施形態では、近軸度数特性に沿った急激な不連続部によって描かれている。レンズ0mmの中心から始まり、約0.20mmまで延在する、中間視力ゾーン812は、およそ-2Dの平均屈折力を有する。約0.20mmから約1.40mmまで延在する第1の遠方ゾーン814は、-3Dの度数を有する。約1.40mmから約2mmの近方ゾーン816は、-1Dの度数を有する。また、約2mmを超え第2の遠方ゾーン818は、レンズの光学ゾーンの縁部において、約-3Dから約-4D未満の範囲の度数を有する。
【0081】
図8Eを参照すると、中間視力モード、近方視力モード、及び遠方視力モードで機能するときのレンズの両眼視力を示している。Y軸は、-10logMAR(解像度の最小角の対数)で表される両眼視力を表し、X軸は、ジオプターで表される両眼離反運動を表している。視力がどれだけ遠くから近くまで変化することができるかを例示するために、完全な範囲の両眼離反運動要求にわたって、3つのモードのそれぞれに対してプロット線が提供される。プロットは、42cd/m^2(1平方メートル当たりンデラ)の選択された網膜輝度レベルでの性能を投影する。プロット線820は、遠方視力モードで機能する、すなわち、近方ゾーンがアポダイズされ、遠方ゾーンがアポダイズされていないレンズの視力性能を表している。プロット線822は、中間視モードで機能するレンズ、すなわち、全てのゾーンがアポダイズされていないことを表している。プロット線824は、近方視力モードで機能するレンズを表している。予想されるように、遠方性能(すなわち、両眼離反運動要求が約0.80D未満である場合、垂直破断840によって示される閾値)は、レンズが遠方視力モードで機能するときの最適モードであることが観察されることができる。同様に、レンズが近方視力モードで機能するとき、すなわち、両眼離反運動要求が垂直破断842によって示される閾値である約1.25Dよりも大きい場合に、近方性能が最適である。中間性能(すなわち、両眼離反運動要求が、閾値840と842との間の領域によって示されるように、約0.80D超であるが、約1.25D未満である場合)は、レンズが中間視力モードで機能するときに最良である。
【0082】
所与の光学設計に対する両眼離反運動要求の範囲にわたって最適な性能を達成するために、両眼離反運動要求の変化に基づいてモード間で遷移することが有利であり得る。例えば、図8A-Eに関して説明される実施形態では、着用者の検出された両眼離反運動要求が、垂直破断840及び842によって画定されるように、近方視力と中間視力又は中間視力と遠方視力との間の閾値を横切るときに遷移が生じ得る。例えば、着用者の両眼離反運動要求が閾値842を超える場合、着用者が比較的近くの対象に焦点を合わせることを試みていると推測されてもよく、したがって、プロセッサは、遠方視力又は中間視力モードで現在動作している場合に、近方視力モードで同調可能なアポディゼーションマスク機能を引き起こすように構成されてもよい。動的同調可能なアポディゼーションマスクと併せてこのように構成されているので、上述した設計は、両焦点要求スペクトルの少なくとも実質的な部分にわたって、市販の多焦点コンタクトレンズに対して改善された視力性能を呈する。
【0083】
いくつかの実施形態では、本発明に係る同調可能なアポディゼーションされた多焦点眼科用装置の主観的視覚性能は、モノビジョン原理の適用によって更に改善されることができる。互いに差動度数プロファイルを有する着用者レンズを提供することにより、度数の両眼加算の効果は、図8Aから図8Eを参照して説明される例示的な実施形態などの、厳密な二焦点又は多焦点設計によって与えられる効果を超える追加の正味の利益を提供することができる。モノビジョンの実施形態を参照すると、図9Aは、0.75ジオプターのモノビジョン及び2.0ジオプターの加入度数を有する、例示的な4ゾーンの中央透過設計を示している。レンズの中心で始まり、中間視力ゾーン912は、およそ-1Dの度数を有する。外側に移動すると、中間ゾーン914は、-3Dの度数を有する。次に、近方ゾーン916は、-1Dの度数を有する。約2mmを超える第2の遠方ゾーン918は、レンズの外周で約-3Dから約-1D未満の範囲の平均度数を有する。
【0084】
図9Bを参照すると、中間視力モード、近方視力モード、及び遠方視力モードで機能するときのレンズの両眼視力を示している。Y軸は、-10logMAR(解像度の最小角の対数)で表される両眼視力を表し、X軸はジオプターで表される両眼離反運動を表している。視力がどれだけ遠くから近くまで変化することができるかを例示するために、完全な範囲の両眼離反運動要求にわたって、3つのモードのそれぞれに対してプロット線が提供される。プロットは、42cd/m^2(1平方メートル当たりンデラ)の選択された網膜輝度レベルでの性能を投影する。それぞれ、遠方視力、近方視力、及び中間視力モードのそれぞれについて、3.6mm、3.9mm、及び3.4mmの瞳孔径が想定される。プロット線920は、遠方視力モードで機能する、すなわち、近方ゾーンがアポダイズされ、遠方ゾーンがアポダイズされていないレンズの視力性能を表している。プロット線924は、中間視力モードで機能するレンズ、すなわち、全てのゾーンがアポダイズされていないことを表している。プロット線922は、近方視力モードで機能するレンズを表している。ここで、遠方性能は、レンズが遠方モードで機能しているとき(すなわち、両眼離反運動要求が垂直破断940によって示される閾値である約1.5D未満であるとき)に最適化されることが観察されることができる。同様に、レンズが近方視力モードで機能するとき、すなわち、両眼離反運動要求が約1.5Dより大きい場合に、近方性能が最適である。中間モードの性能の線924は、この実施例では、両眼離反運動要求の全範囲にわたって遠方及び近方視力線の下方にとどまり、この特定の設計の最適な構成は、中間モードを採用することができず、むしろ、両眼離反運動要求が閾値940を横切るとき、近方モードと遠方モードとの間の直接遷移に依存する。
【0085】
ここでも、本明細書に詳細に示されるのは、本発明の範囲内の無数の潜在的な解決策のうちの2つに過ぎない。一般的に言えば、レンズの領域及びゾーンの数を増加させることは、より良好な性能をもたらし得ることに留意されたい。したがって、本発明の範囲内の理想化された解決策は、本明細書に概説される原理に従って構成された連続多焦点及び連続可変アポディゼーションマスクの組み合わせを含んでもよい。そのような実施形態では、アポディゼーションマスクは、対応する光学ゾーンにわたる透過率関数の滑らかな遷移をもたらし、それによって、スターバースト及び光輪などの回折効果を有利に低減する、テーパ状又は勾配の一連の領域を含んでもよい。ここでも、本明細書に具体的に示されていないが、これらに限定されるものではないが、パイの1つ又は2つ以上のスライスが、近方、中間、及び遠方視力のために最適化されるレンズ上の中心点の周りに放射状に配置されたパイ形状領域を含む、同調可能領域の無数の代替的な設計形状、サイズ、位置、及び他の属性(レンズの近方、遠方、中間又は他のゾーンに対応するかどうかを含む)が本発明の範囲内で可能である
【0086】
図10A及び10Bは、本発明の眼科用装置が、コンタクトレンズの実施形態では角膜1006の表面上に角膜インレ又はオンレーの実施形態では角膜1006内に、又は眼内レンズの実施形態では嚢状バッグ1008内に配置されることができる、患者(本明細書では互換的に「着用者」とも呼ばれる)の眼1002を示している図10B時計1010などの患者の近くの物体を見ると、眼の自然な調節の生理学的応答が引き起こされる。老眼を伴わない通常の眼では、調節は、眼の水晶体レンズの厚さを変えることによって眼の集束力を調節する。毛様体筋を収縮させることにより、レンズは厚くなり、それによってレンズの焦点距離を十分に短くして光1012を集束させ、したがって、近方物体の像が眼の網膜1004上で鋭くなる。
【0087】
図10Aは、遠方におけるツリー1010に焦点を合わせることができるように、患者にとって遠方視力が所望される事例を示している。この場合、同調可能なアポディゼーションマスクは、同調可能なアポディゼーションマスクの対応する領域を比較的不透明な状態(クロスハッチングで示される)で機能させることにより、近方視力のために最適化された焦点距離を遮断することにより、近方視力のために最適化されたゾーンをアポダイズすることによって遠方視力モードで機能するように構成されることができる。同様に、図10Bは、遠方視力用に最適化されたゾーンが、比較的不透明な状態(クロスハッチングによって示される)機能するように同調可能なアポディゼーションマスクの対応する領域を設定することによってアポダイズされる近方視力モードで機能する同じレンズ設計の実施形態を示している。双方の実施例では、レンズの中心に位置する中間ゾーンは、そのゾーンを透過した光が、着用者の所望の焦点距離に関係なくレンズのバルク材料のものに近付くように、アポダイズされないままであり、それによって、眼への酸素透過性及び/又は全体的な光透過率が増加する。
【0088】
本発明の眼科用装置の実施形態は、毛様体筋の収縮などの1つ又は2つ以上の自然な生理学的応答を利用して、本発明の同調可能なアポディゼーションマスクの状態の変化を引き起こすことができる。眼科用装置の様々な動作モード間で切り替わるトリガとして機能することができる、ユーザの所望の焦点距離の他の自然な生理学的インジケータとしては、視線検出、両眼離反運動検出(眼の発散及び/又は収束)、眼球運動検出、インピーダンス検出、及び瞳孔径検出が挙げられ、これらのいくつかのトリガは、本明細書で更に詳細に開示される。同様、意図的な瞬き又は極度の視線パターンの使用、又は、例えば無線送信プロトコルを介してレンズと通信することができる、フォブ、スマートフォン、又は他の電子装置などの手動外部装置の使用など、意図的な、計画的な、又は意識的な技術を、着用者(又は臨床環境におけるアイケア専門家などの第三者)によって使用して、所望の焦点変化を引き起こすことができる。更にまた、多入力及び投票スキームを使用するなど、前述のインジケータ又はトリガのうちの1つ又は2つ以上を組み合わせて、それらの精度を高め、偽陽性応答を低減することができる。当業者、これらの自然な生理学的なインジケータ又は意図的な手段の制御の使用が眼科用装置内に収容された電子インサート上に存在することができる適切なセンサを必要とすることを認識するであろう。例えば、瞳孔径検出が、焦点距離の所望の変化を感知する選択された手段である場合、1つ以上のカメラを使用することができる。眼球運動検出又は両眼離反運動は、カメラ、ジャイロスコープ、フォトダイオード及び/又は加速度計を使用することができる。様々な検知及び検出アルゴリズムの使用、並びに1つ以上の集積回路間のソフトウェア及びハードウェアを分割する様々なモードの使用など、更なる変形が可能であることが理解されるであろう。
【0089】
図11は、本発明の範囲内の眼科用装置が動作することができる例示的な方法を示している。例えば、プロセッサは、眼科用装置上又は眼科用装置内に埋め込まれてもよく、眼科用装置の動作を指示するコンピュータ可読記憶媒体上に記憶された一連の命令を実行するように構成されてもよい。着用者にとって現在所望されている焦点距離を検出するように構成されたセンサを断続的にサンプリングすることによって、プロセッサは、同調可能なアポディゼーションマスクを、着用者が所望する焦点距離に最適化された状態の間で動的に切り替えることができる。両眼離反運動要求は、一般に、着用者の所望の焦点距離として見ることができ、本明細書の他の箇所に記載されるように、断続的な間隔で確認することができ、理想的には、許容可能な許容誤差内でのヒトの眼の自然な応答及び遷移時間に近い合焦状態間の遷移をもたらすのに十分な規則的である。約100ミリ秒未満のサンプリング周期及び約1秒未満の変化時間は、一般に、これらの基準を満たすのに十分である。当業者によって理解されるように、そのような機能性は、連続デジタル論理で、ステートマシン論理を介して、又は別個のデジタル論理によって、及びハードウェア又はソフトウェアを介して実装されることができる。そのようなソフトウェア又はデジタル論理は、電子インサート内などの眼科用装置内に収容されたコンピュータ可読媒体内に存在することができる。例示的な一実施形態では、プロセッサは、シリコーンCMOS集積回路ダイに完全に統合されたシステムコントローラの形態をとることができる。しかしながら、1つ以上の集積回路のうちの1つ以上のハードウェア及びソフトウェアの様々な組み合わせ又はパーティションが、特定の設計制約に応じて可能である。
【0090】
ステップ1102において開始すると、プロセッサは、1つ又は2つ以上のフォーカスセンサをサンプリングすることができ、これは、上述したように、これらに限定されるものではないが、着用者の所望の焦点距離の表示として監視される生理学的又は手動的インジケータに応じて、カメラ、ジャイロスコープ、フォトダイオード、及び/又は加速度計を含む様々な検知装置の形態をとることができる。眼科用装置は、プロセッサを駆動して、電力及び応答時間の制約を満たす周波数でステップを実行し得る。いくつかの実施形態では、プロセス又はシステムコントローラは、約850Hzで動作することができる。更にまた、複数のクロック信号は、それぞれのクロックのドメイン内の下位構成要素の要求に基づいて、異なる周波数で眼科用装置の様々な構成要素を駆動することができる。代替的に、又は組み合わせて、クロック信号、電力消費を更に低減するために、フォーカスセンサなどの1つ以上のセンサなどの特定の下位構成要素のためのより低い周波数クロック信号を生成することができる。いくつかの実施形態では、フォーカスセンサは、約100Hzの速度でサンプリングされてもよく、これは、眼科用装置が、自然な調節応答に近似する焦点の変化をもたらすことができ、及び/又は着用者の主観的期待を満足する範囲内にある。
【0091】
ステップ1104は、システムは、フォーカスセンサからサンプリングされたリアルタイム焦点データに基づいて、着用者の現在の両眼離反運動要求を判定することができる。本明細書で使用される場合、両眼離反運動要求は、着用者の所望の焦点距離を示す測定値を意味するために集合的に調節要求又は所望の焦点距離と互換的に使用される。所与のサンプルを対応する両眼離反運動要求に分割することは、どのモード又は設定(例えば、電圧レベル)かを判定して、同調可能なアポディゼーションマスクに適用するプロセスを単純化することができる。本明細書で論じられるように、レンズ設計は、本発明内で、様々な焦点力の範囲を生成する複数の別個のゾーン又は連続的に可変の表面を有してもよく、同調可能なアポディゼーションマスクは、レンズの所定の対応する領域又はゾーンに入射する光をアポディゼーションするように構成された、連続的に可変の領域の範囲を有してもよい。したがって、フォーカスセンサからサンプリングされたデータに基づいて、同調可能なアポディゼーションマスクに適用するための適切な設定の判定は、単純例えば、比較的少数の別個の光学ゾーン及び対応する調整可能領域が存在する場合)から、多数のゾーン又は連続多焦点及び/又は連続可変同調可能なアポディゼーションの場合の複雑まで及ぶことができる。前者に向かう傾向がある実施形態では、プロセッサが、フォーカスセンサからサンプリングされた入力として取得されるアルゴリズムを実行し、同調可能なアポディゼーションマスクを特定の「モード」に設定することによって、又は適切な電圧バイアスを印加することによって、同調可能なアポディゼーションマスクを適切な設定に作動させるために使用されることができる出力を生成することが有益であり得る。アルゴリズムプロセスの代替として、そのような計算は、ステートマシン論理を使用して、及び/又は、データサンプル及び同調可能なアポディゼーションマスクの対応する設定が、コンピュータ可読記憶媒体内で事前に計算及び記憶されている1つ以上のルックアップテーブルを使用することによって、簡略化することができる。
【0092】
ステップ1106に移動すると、システムは、焦点の変化が必要かどうか、又は同調可能なアポディゼーションマスクの現在の設定若しくはモードが、着用者の現在所望されている焦点距離を満たすかどうかを判定することができる。この判定は、ステップ1104で判定された両眼離反運動要求に基づいて、又はステップ1102でフォーカスセンサからサンプリングされたデータに基づいて(ステップ1104が省略されている実施形態では)行うことができる。ステップ1102又は1104で取得又は生成されたデータは、可変として記憶されることができるフォーカスセンサの現在のモード又は設定を表すデータと比較されることができ、このデータは、変数として、例えば、nビットフリップフロップなどのレジスタに記憶されることができ、nは、変数を記憶するために必要なビット数を表す。現在設定又はモードと所望の設定モードとの比較に基づいて、変更必要とされない場合、プロセスはステップ1102に戻ってもよく、ここでフォーカスセンサは、再びサンプリングされてもよい。しかしながら、比較が、現在の設定又はモードが着用者の所望の焦点を満たさないことを示す場合、プロセスは、同調可能なアポディゼーションマスクが作動されるステップ1108に続く。
【0093】
ステップ1108において、プロセッサは、同調可能なアポディゼーションマスクを、そのモード又は設定を変化させて、着用者の所望の焦点距離に適合させることができる。例えば、近方視力、中間視力、及び/又は遠方視力モードを有する、本明細書に記載の別個のゾーン多焦点の実施形態では、同調可能なアポディゼーションマスクは、着用者の所望の焦点距離に適したモードに作動されてもよい。同様に、焦点屈折力の勾配を有する連続多焦点面において、同調可能なアポディゼーションマスクは、エレクトロクロミック(又は他の好適な材料)の勾配に沿って、又は微調整されたゾーンのアレイに沿って、連続的な表面の周りで可変的に調整されてもよい。いずれの場合でも、これは、1つ以上の所定の電圧を同調可能なアポディゼーションマスクの端子に印加することによって達成されることができる。次に、同調可能なアポディゼーションマスクの新たな設定は、将来の参照のために前述したようにレジスタに記憶されることができる。上述したプロセスのステップは、例示目的のためにのみ提供され、本発明の範囲内の装置の動作を構成するために使用されることができる多くのステップの唯一の手段として理解されるべきではない。更にまた、これらのステップは、いずれも絶対的であると見なされるべきではない。ステップは、完全に省略され、組み合わされ、及び/又は様々な順序で実行されてもよい。
【0094】
別の方法として、又は本明細書で論じられる他の方法と組み合わせて、本発明の電動眼科レンズの制御は、手持ち式遠隔ユニットなどの無線でレンズと通信する手動操作式外部装置を介して達成されてもよく、これは、例えば、検眼医又は眼科医が試験又は較正の目的のためにレンズを制御しようとする臨床設定において有用であり得る。あるいは、電動眼用レンズの制御は、着用者からの直接のフィードバック又は制御信号を介して遂行されてもよい。例えば、レンズに内蔵されたセンサは、瞬き及び/又は瞬きパターンを検出してもよい。瞬きのパターン、又は、シーケンスに基づいて、電動式眼科用レンズは、動作状態を変えてもよい。
【0095】
本発明の他の実施形態では、電動式眼科用レンズの制御は、電子システムによって可能にされることができ、これは、可変光学系、又は実行されることができる任意の数の多数の機能を実施するように構成された任意の他の装置を作動させる。電子システムは、1つ又は2つ以上の電池又は他の電源、電力貯蔵装置、電力管理回路、1つ又は2つ以上のセンサ、クロック発生回路、適当な制御アルゴリズムを実施する制御回路、及びレンズ駆動回路を含む。これらの構成要素の複合体は、レンズの必要な又は所望の機能性に応じて様々に変動し得る。
【0096】
本発明のシステムコントローラは、例えば、遠方物体に焦点を合わせるための及び近方物体に焦点を合わせるための可変屈折力光学素子又は可変焦点光学系を含むコンタクトレンズなどの電動式又は電子式眼科用レンズを制御するための任意の数の入力を受信することができることに留意することが重要である
【0097】
システムコントローラ又は制御システムは、他の装置及び/又はシステムの動作を管理、命令、指令、及び/又は制御するように構成された1以上の装置を含み得る。多くの異なる種類の制御システムが存在するが、それらは一般に2つのクラス又はタイプに分類される。すなわち、論理又は逐次制御システム及びフィードバック又は線形制御システムである。論理又は逐次制御システムでは、コマンド信号が出力され、これにより一連のアクチュエータが所定の順序で1つ又は2つ以上のタスクを実行することをトリガする。フィードバック制御システムでは、1以上のセンサ、制御アルゴリズム、及びアクチュエータを含む制御ループが目標値又は参照値に変数を制御するように構成されている。いかなるフィードバック制御システムにおいても、システムが何を行うべきかを知り、システムがどれだけ効率的に動作しているかを知り、動作情報を用いてシステムを補正及び制御することが必要である。
【0098】
基本的なフィードバック制御システムの構成要素は下記のように述べることができる。制御システムは、制御しようとするシステム又は設備を含み、入力を受信して出力を与えるように構成される。設備の出力はセンサに入力され、センサは設備の1以上のパラメータを測定してフィードバック信号を与える。次いでフィードバック信号は、コンパレータ又は他の適当な手段によって入力信号から差し引かれてエラー信号を生成する。次いでエラー信号はコントローラに入力され、コントローラは設備に信号を出力し、これにより設備が所望の動作を実行する。基本的に、センサからのフィードバックはシステム全体の複雑度を全て考慮しようとするものであり、所定の入力に対する所望の結果である出力を生成する。全ての制御システムは、一定の制御法則の制約の範囲内で設計されており、一般的に、速度及び精度などの様々な側面におけるトレードオフを伴う。この説明は、大幅に簡素化されたものであり、ハードウェアの観点から述べたものであるが、ハードウェア、ソフトウェア、又はこれらの任意の組み合わせとして実施することが可能なフィードバック制御システムの基礎的理解を与えるものである。
【0099】
フィードバック制御システムは、更に、比例制御システム、積分制御システム、微分制御システム、又はこれらの組み合わせに更に分類することができる。比例制御システムでは、制御動作は誤差に比例する。積分制御システムでは、設備への作動信号又は入力は誤差の積分に比例する。微分制御システムでは、プロセスの出力は入力が変化する割合に比例する。それぞれの制御システムのタイプには、制御の技術分野において知られるようなそれぞれの長所がある。例えば、積分制御システムを用いた場合には定常誤差が得られるはずである。
【0100】
上記に述べたように、逐次制御システムとは、一連の動作が特定の順序で起こる必要がある制御である。これらの動作は、プロセス全体の条件の全てが把握されなければならないことから、非常に複雑となる可能性がある。逐次制御システムは、電気的及び/又は機械的動作を制御するためのコマンドに順序付けする論理システムを一般的に含んでいる。プログラム可能な論理制御システム及びマイクロ制御システムを逐次制御を行うようにプログラムすることができる。
【0101】
システムコントローラ又はシステムコントローラに関連付けられたサブシステムは、センサ入力によって提供されるフィードバックに応答する特徴を組み込んでもよいことが当業者によって理解されるであろう。そのような動作の例は、バッテリ容量の低下に応答してサブシステムのデューティサイクル又は電力レベルを変更すること、受信された信号に関連する周波数に同期するように内部クロック周波数を調整すること、及び/又は涙液膜化学の測定に応答して眼の涙膜に送達される治療薬若しくは薬物の量を調節することを含むことができる
【0102】
瞬き検出アルゴリズムは、瞬きの特性、例えば瞼が開いているか若しくは閉じているか、瞬きの開瞼若しくは閉瞼の継続時間、瞬きの間の継続時間、及び所与の期間における瞬きの回数を検出する、システムコントローラの構成要素とすることができる。本発明に係る例示的なアルゴリズムは、ある特定の速度で眼への光の入射をサンプリングすることに依存する。所定の瞬きパターンが記憶され、入射光サンプルの最近の履歴と比較されることができる。パターンが整合するとき、瞬き検出アルゴリズムは、例えば、レンズドライバを作動させてレンズのモードを変化させるために、システムコントローラの活動を引き起こす。
【0103】
本発明の瞬き検出アルゴリズム及び関連した回路は、好ましくは、適度に広い範囲の照明条件で動作し、且つ好ましくは、意図的な瞬きシーケンスと無意識の瞬きを区別することができる。また、意図的な瞬きを利用して電動眼用レンズの作動及び/又は制御に要するトレーニングは最小限であることが好ましい。本発明の瞬き検出アルゴリズム及び関連する回路構成は、電動又は電子眼用レンズの作動又は制御のうち少なくとも1つのため、電動又は電子コンタクトレンズを介して瞬きを検出する、安全で低コストで信頼性が高く、更に電力消費率が低く、且つ眼科用レンズに組み込むための拡張性を有する、手段及び方法を提供する。
【0104】
したがって、例えば、充電式電池、太陽電池、又はコンデンサなどの自蔵式の電力貯蔵装置を組み込むことが望ましくあり得る。それに代わって、電子機器は、自蔵式の電力貯蔵装置から給電されるのではなく、遠くから誘導的に給電されてもよく、したがって充電の必要はない。電池を再充電するための、ある許容される方法は、誘導結合によるものであり、この誘導結合により、外部コイルが、ある充電回路に結合されるか、接続されるか、あるいは他の方式で結び付けられたコイルに磁気的に結合され、その充電回路は、装置に埋め込まれた電池を再充電するように適合されている。
【0105】
ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、角膜オンレー、角膜インレー、眼内レンズ、度数レンズ、オーバーレイレンズなどを含む、様々な眼科用装置を調製することができる。眼科用装置は、所望の眼科用装置を作製するのに好適な重合性及び非重合性化合物を含む反応性混合物を重合することによって調製することができる。例えば、眼科用装置がコンタクトレンズである場合、反応性混合物は、これらに限定されるものではないが、従来のヒドロゲル及びシリコーンヒドロゲルであってもよい。したがって、反応性混合物は、親水性成分、疎水性成分、シリコーン含有成分、ポリアミドなどの湿潤剤、架橋剤、並びに希釈剤及び開始剤などの更なる成分のうちの1つ以上を含み得る。他の眼科用装置のための追加の好適な材料の例は既知であり、アクリレート(剛性及び折り畳み可能)、眼内レンズ用のヒドロゲル及びシリコーン、並びに眼鏡レンズ用のポリカーボネートが挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の範囲内の眼科用装置の電子構成要素は、電子インサート内に収容されてもよい。眼科用装置は、前方湾曲鋳型部分及び後方湾曲鋳型部分を使用して製造されることができる。次に、センサ位置及び予想される偏心などの考慮事項を考慮するために必要に応じて眼科用装置を眼上で配向することができるように、安定化特徴部、後方湾曲鋳型部分と前方湾曲鋳型部分との間の位置に配置されることができる。次に、電子インサートは、安定化特徴部に対して所定の位置に、後方湾曲鋳型部分と前方湾曲鋳型部分との間の位置に配置されることができる。反応性モノマー混合物は、後方湾曲鋳型部分を前方湾曲鋳型部分に近接して位置決めして、反応性モノマー混合物、電子インサート及び安定化特徴部が存在することができる空洞を形成する前に、前方湾曲鋳型部分及び後方湾曲鋳型部分の一方又は双方に堆積されてもよい。次に、反応性モノマー混合物を硬化させて、内部に収容された電子構成要素を有する生体適合性レンズ材料を形成することができる。
【0107】
ここで図示及び説明した実施形態は、最も実用的で好適な実施形態と考えられるが、当業者であれば、ここに図示及び開示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明し例証した特定の構成に限定されないが、添付の特許請求の範囲に含まれ得る全ての修正と一貫するように構成されているべきである。
【0108】
〔実施の態様〕
(1) 眼科用装置であって、
1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する複数の光学ゾーンを含むレンズと、
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクと、
着用者の所望の焦点距離の変化に応じて、前記同調可能なアポディゼーションマスクの光透過特性を変化させるように構成されたプロセッサと、を備える、眼科用装置。
(2) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、エレクトロクロミック材料、液晶材料、サーモクロミック材料、フォトクロミック材料、ナノ構造材料、ナノ粒子材料、ナノ結晶材料、及び懸濁粒子のうちの少なくとも1つを備える、実施態様1に記載の眼科用装置。
(3) 前記光透過特性の変化が、前記同調可能なアポディゼーションマスクの不透明度の変化を含む、実施態様1に記載の眼科用装置。
(4) 前記レンズが、ゾーン多焦点面、二焦点面、及び連続多焦点面のうちの1つ又は2つ以上を有する、実施態様1に記載の眼科用装置。
(5) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、封入されたインサート内に配置されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
【0109】
(6) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、エレクトロクロミックデバイスを備え、前記エレクトロクロミックデバイスが、
内側導電層及び外側導電層と、
第1のイオン輸送基(ion transport group)と、
第2のイオン輸送基と、を含み、
前記内側導電層及び前記外側導電層に加えられた電気的バイアスが、前記第1のイオン輸送基及び前記第2のイオン輸送基のうちの一方を透明状態で機能させ、前記第1のイオン輸送基及び前記第2のイオン輸送基のうちの他方を不透明状態で機能させるように、前記第1のイオン輸送基及び前記第2のイオン輸送基が、前記内側導電層及び前記外側導電層に対してそれぞれ反対の向きで前記内側導電層と前記外側導電層との間に介在されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(7) 前記複数の光学ゾーンが、近方ゾーン、遠方ゾーン、及び中間ゾーンのそれぞれの少なくとも1つを含む、実施態様1に記載の眼科用装置。
(8) 前記少なくとも1つの近方ゾーン、遠方ゾーン、及び中間ゾーンのうちの1つが、前記レンズの中心に存在する、実施態様7に記載の眼科用装置。
(9) 前記複数の光学ゾーンが、少なくとも2つの遠方ゾーンを含む、実施態様7に記載の眼科用装置。
(10) 前記複数の光学ゾーンが、少なくとも2つの近方ゾーンを含む、実施態様7に記載の眼科用装置。
【0110】
(11) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、第1の屈折力を有する前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つに対応する第1の領域と、第2の屈折力を有する別の前記複数の光学ゾーンに対応する第2の領域とを含み、焦点の所望の変化を示す信号を受信すると、前記第1の領域の不透明度が増大又は減少し、前記第2の領域の不透明度が、前記第1の領域の不透明度とは逆に増大又は減少する、実施態様1に記載の眼科用装置。
(12) 前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通る透過率が、前記着用者の前記所望の焦点距離に関係なく、前記レンズのバルク材料の透過率に近いように、前記同調可能なアポディゼーションマスクが、前記複数の光学ゾーンのうちの前記少なくとも1つの周方向外側又は内側に存在する、実施態様1に記載の眼科用装置。
(13) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、前記着用者の前記所望の焦点距離に関係なく、前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通る少なくとも50%の光透過を可能にするように構成されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(14) 前記同調可能なアポディゼーションマスクが、1つ又は2つ以上の窓を備える、実施態様1に記載の眼科用装置。
(15) 前記複数の光学ゾーンが、前記着用者の眼の光学的特性、輝度、屈折、年齢、及び両眼離反運動瞳孔反射(vergence pupillary response)のうちの1つ又は2つ以上に基づいて改善されたスルーフォーカス視覚性能を提供するように最適化された1つ又は2つ以上の直径を含む、実施態様7に記載の眼科用装置。
【0111】
(16) 前記同調可能なアポディゼーションマスクと前記プロセッサとの間に電気的接続性を形成するように構成された剛性相互接続構造体を更に備え、前記相互接続構造体が、半透明材料から構成され、少なくとも1つの空隙を含むように寸法決めされている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(17) 前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に、前記着用者の眼上の前記レンズの予想される偏心をオフセットするように計算された量だけ偏心されている、実施態様1に記載の眼科用装置。
(18) 1つ又は2つ以上の焦点距離に対して最適化された屈折力をそれぞれ有する複数の光学ゾーンを有する眼科用装置において使用するための非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータ可読媒体が、プロセッサによって実行されると、
1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからリアルタイム焦点データを受信するステップと、
前記1つ又は2つ以上のフォーカスセンサからの前記リアルタイム焦点データに基づいて、前記着用者の所望の焦点距離を判定するステップと、
前記複数の光学ゾーンのうちの少なくとも1つの少なくとも一部の内部に配置された同調可能なアポディゼーションマスクを作動させるステップであって、前記同調可能なアポディゼーションマスクを作動させることが、前記着用者の前記所望の焦点距離に対して最適化されていない前記光学ゾーンのうちの少なくとも1つを通過する光をアポダイズする、ステップと、を実行する、前記コンピュータ可読媒体に記憶された命令を備える、非一時的コンピュータ可読媒体。
(19) 前記データに関連付けられた所望のモードを前記同調可能なアポディゼーションマスクの現在のモードと比較することによって、焦点の変化が必要かどうかを判定するステップを更に含む、実施態様18に記載のコンピュータ可読媒体。
(20) 前記同調可能なアポディゼーションマスクの前記現在のモードが、近見視モード、遠見視モード、及び中間視モードのうちの少なくとも1つを含む、実施態様19に記載のコンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10A
図10B
図11