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特許7516267靭皮繊維を含む植物紙及びそれから作られた化粧品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】靭皮繊維を含む植物紙及びそれから作られた化粧品
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/22 20060101AFI20240708BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240708BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20240708BHJP
   D04H 1/425 20120101ALI20240708BHJP
   D21H 11/12 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A45D44/22 C
D21H27/30 B
D21H21/14 Z
D04H1/425
D21H11/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020572758
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019067886
(87)【国際公開番号】W WO2020007930
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】1856140
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518100443
【氏名又は名称】エスダブリュエム・ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ルソー
(72)【発明者】
【氏名】アルテュール・グト
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106373(JP,A)
【文献】特開2006-265742(JP,A)
【文献】特開2006-274531(JP,A)
【文献】特表2016-516914(JP,A)
【文献】特開2006-316002(JP,A)
【文献】登録実用新案第3185098(JP,U)
【文献】再公表特許第2006/016601(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D8/00-8/40
24/00-31/00
42/00-97/00
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靭皮繊維及びセルロース繊維を含む植物紙を含む、化粧用マスク、アイパッチ、ボディエンベロープ、及びワイプから選択される化粧品であって、
靭皮繊維の量が植物紙の乾燥物の45質量%~60質量%であり、かつ
靭皮繊維が、1mm~12mmの長さ加重平均繊維長を有し、
靭皮繊維及びセルロース繊維の混合物が、5°SR~50°SRのショッパー・リーグラー度を有し、かつ
その坪量が15g/m~70g/mであり、
前記靭皮繊維が、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、クズ繊維、ダルベルギア・エカスタフィラム(Dalbergia ecastaphyllum)繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル繊維、エスパルト繊維、及びそれらの混合物から選択され、
前記セルロース繊維が、木材パルプ及びリヨセル繊維の混合物である、化粧品
【請求項2】
靭皮繊維が溶媒中での抽出をうけた、請求項に記載の化粧品
【請求項3】
リヨセル繊維の量が、植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%である、請求項に記載の化粧品
【請求項4】
木材パルプの量が、植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%である、請求項に記載の化粧品
【請求項5】
湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、柔軟剤、ローション組成物、湿潤剤、ラテックス、カンナビノイド、及びそれらの混合物から選択される添加物をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品
【請求項6】
添加剤がカンナビノイドである、請求項に記載の化粧品
【請求項7】
カンナビノイドが、カンナビジオール又はテトラヒドロカンナビノールである、請求項に記載の化粧品
【請求項8】
添加剤の量が、植物紙の乾燥物の3質量%未満である、請求項5~7のいずれか一項に記載の化粧品
【請求項9】
皮脂調節剤、抗菌剤、殺菌剤、マット効果剤、収斂剤、酸性化剤、瘢痕形成剤、角質除去剤又は角質調節剤、閉塞剤(オクルーシブ剤)、保護剤、消毒剤、皮膚軟化剤、栄養剤、保湿剤、老化防止剤、鎮静剤、鬱血除去剤又は静脈緊張剤、閉塞剤、UVスクリーニング剤、保湿剤、吸湿剤、ゲル化剤、角質除去剤、抗フリーラジカル剤、細胞再生剤又は細胞刺激剤、引き締め剤、緊張剤、抗糖化剤、美白剤、及びそれらの混合物から選択される活性成分をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧品。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧品を湿式経路で製造する方法。
【請求項11】
請求項2~9のいずれか一項に記載の化粧品を製造するための請求項10に記載の方法であって、以下のステップ:
a)靭皮繊維を溶媒と混合して、前記溶媒に可溶な靭皮繊維の化合物の全て又は一部を抽出するステップ、
b)靭皮繊維を可溶性化合物から分離して、溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維を得るステップ、
c)溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維を用いて湿式プロセスによって植物紙を形成するステップ
を含む方法。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載している植物紙が追加のハイドロ・エンタングルメント処理を受ける方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靭皮繊維を含む植物紙に関し、この植物紙は、化粧品又は化粧品の基材として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
化粧品は、一般的に肌に潤いを与えたり、輝く肌を手に獲得したり、顔を浄化したり、肌を引き締めたりするために使用される。通常、ユーザーは、化粧品、例えばフェイスマスクを顔に10分から20分間適用し、フェイスマスクに含まれるローションが次に顔に放出されて、所望する化粧効果を得る。化粧品の成功は、近年、世界的な需要が非常に大きくなっているとおりである。
【0003】
化粧用マスクなどの化粧品は、主に紙又は合成繊維からできている。しかし、紙及び合成繊維を製造するためのプロセスは非常にエネルギーを消費し、環境に大きな影響を及ぼす。実際に、製紙は森林由来の木材を大量に消費し、水酸化ナトリウム、塩素、二酸化塩素、酸素、オゾン、又は過酸化水素などの有害な化学製品の使用を必要とする。合成繊維は、それらについては化学合成によって得られ、ほとんどが炭化水素に由来する。
【0004】
化粧用マスクの製造による環境への影響を制限し、より自然な製品を提案するために、1つの解決策は、紙又は合成繊維を植物繊維に置き換えると同時に、植物繊維から作られたフェイスマスクがユーザーのニーズに適合することを確実にすることである。
【0005】
化粧用マスクは、ユーザーを満足させるためにいくつかの特性を満たす必要がある。それはその使用を通して良好な感覚効果を有していなければならず、特にそれは見た目が心地よく(光沢があり、自然である)かつ肌に心地よい(柔らかく、絹のようで、しなやかである)必要がある。また、取り扱いが快適でなければならない(展開及び広げるのが簡単で、粒子を失うことがない)。化粧用フェイスマスクはまた、良好な貯蔵効果を有していなければならず、すなわち、化粧用活性剤を皮膚に送達できるようにするために、化粧用活性剤を含む化粧用ローションを吸収できなければならない。さらに、化粧用マスクは、ひとたびそれがローションで湿らせられたり、含浸されたりしたときに、耐性であるための耐湿性も有していなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面では、本発明者らは、化粧品として、又は化粧品の基材として使用できる植物紙を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は靭皮繊維を含む植物紙に関し、それは、靭皮繊維の量が植物紙の乾燥物(dry matter)(植物紙を構成する乾燥物)の少なくとも40質量%であり、かつ靭皮繊維の長さ加重平均繊維長が1mm~12mmであるという特徴を有する。
【0008】
有利には、本発明による植物紙は、ニュートラルな匂い、及び明るく均質な色を有する。本発明による植物紙はまた、柔らかく、軽く、かつしなやかである。本発明による植物紙は、取り扱いが容易であり、特に折った状態から広げるのが容易であり、粒子を失うことがない。本発明による植物紙はまた、化粧ローションを満足がいくように吸収及び放出することができる。さらに、本発明による植物紙は容易に製造することができる。これらの特性により、本発明による植物紙は、化粧用フェイスマスクの基材として使用することができる。
【0009】
本特許出願の目的のためには、「靭皮繊維」という用語は、植物の師部に含まれる植物繊維をいう。
【0010】
通常、靭皮繊維は、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、クズ繊維、ダルベルギア・エカスタフィラム(Dalbergia ecastaphyllum)繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル繊維、エスパルト繊維、及びそれらの混合物、特に麻繊維、亜麻繊維、及びそれらの混合物、最も具体的には亜麻繊維から選択される。
【0011】
一実施形態によれば、本発明による植物紙中の靭皮繊維の量は、その植物紙の乾燥物の45質量%~75質量%、特に50質量%~60質量%である。
【0012】
典型的には、靭皮繊維は、1.5mm~4mm、最も特に1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0013】
特定の実施形態によれば、靭皮繊維は、3mm~6mm、最も特に4mm~5mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0014】
別の特定の実施形態によれば、靭皮繊維は、7mm~11.5mm、最も特に9mm~11mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0015】
繊維の長さは、TECHPAP社のMorFI LABO(LB-01)装置で測定される。靭皮繊維は、300mg/L、次に30mg/Lの濃度になるように水中に入れられる。MorFI LABO(LB-01)装置のカメラは、そのカメラの視野内に存在する各靭皮繊維の展開した長さ(Li)を測定する。
【0016】
長さ加重平均繊維長Lwlは、次の式:
【数1】
を用いて計算される。
【0017】
典型的には、靭皮繊維は、靭皮繊維の長さ加重平均繊維長が上述した範囲内になるように細断される。典型的には、細断技術は、当業者に公知のもの、例えばギロチンチョッピングである。
【0018】
従来、靭皮繊維は、ストロー(straw)として知られる小さな粒子の形態である木質部分から繊維を分離することを目的としたスクラッチング(引っ掻く)及びコーミング(梳く)プロセスを介して、靭皮茎から製造されている。例えば、これらのストローは亜麻繊維に対する外皮断片(shive)として知られており、また、麻繊維に対する苞(chaff)として知られている。
【0019】
典型的には、本発明による植物紙の靭皮繊維中のストローの残留含有量は、靭皮繊維の質量に対して2質量%未満、特に靭皮繊維の質量に対して1質量%未満であり、なおさらに特に、靭皮繊維の質量と比べて0.5質量%未満である。
【0020】
ストローの含有量は以下の方法で決定される。ストローは、100gの靭皮繊維組成物のサンプル中、手作業で集められ、次に計量して、質量比を計算する。
【0021】
典型的には、靭皮繊維をスクラッチングし、コーミングするプロセスは、ストローを取り除き、ストローの所望の含有量を達成することを可能にする。
【0022】
ストローは美的に心地よいものではない。さらには、ストローの含有量が上述した範囲よりも多い場合には、本発明による植物紙は研磨性である。
【0023】
典型的には、靭皮繊維は、溶媒中での抽出を受けていてもよい。この抽出は、溶媒に可溶な靭皮繊維の化合物(以下、可溶性化合物とよぶ)を抽出することを可能にする。
【0024】
これらの可溶性化合物と溶媒との混合物は、一般に暗い色であり、臭いがする場合がある。有利なことに、溶媒中での抽出を受けた靭皮繊維を含む植物紙はニュートラルな匂い及び明るい色を有する。
【0025】
可溶性化合物を抽出するために行われる溶媒中での抽出は、水酸化ナトリウムなどの化合物がかかわらない穏やかな方法である。また、紙パルプ製造のために製紙において一般に使用されている脱リグニン処理とも、漂白処理とも異なる。典型的には、製紙において一般的に使用されている脱リグニン処理は、機械パルプ、熱機械パルプ、化学機械パルプ、又は化学パルプとして知られているものである。典型的には、漂白処理は、塩素、二酸化塩素、酸素、オゾン、又は過酸化水素を使用する処理である。有利なことに、溶媒中での抽出の環境への影響は、上述した脱リグニン及び漂白処理の環境への影響よりも小さい。その結果、溶媒中での抽出をうけた靭皮繊維を含む植物紙の環境への影響は、紙の環境への影響よりも小さい。
【0026】
特定の実施形態によれば、溶媒は水性溶媒である。最も特には、溶媒は水である。
【0027】
典型的には、水性溶媒は、70~30(v/v)の水/アルコール混合物であってよい。
【0028】
溶媒が水である実施形態によれば、抽出は大気圧において行われ、水の温度は40℃~100℃、特に60℃~90℃である。
【0029】
典型的には、溶媒中での抽出をうけた靭皮繊維は、溶媒中での抽出、及び可溶性化合物からの分離の後に得られる。したがって、溶媒中での抽出をうけた靭皮繊維は、可溶性化合物の残留画分を含みうる。典型的には、溶媒中での抽出をうけた靭皮繊維を含む植物紙は、したがって、その植物紙の乾燥物量で10質量%未満の可溶性化合物を含みうる。典型的には、溶媒中での抽出を受けた靭皮繊維を含む植物紙は、その植物紙の乾燥物の、質量で5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の可溶性化合物を含みうる。特定の実施態様によれば、溶媒中での抽出をうけた靭皮繊維を含む植物紙は、可溶性化合物を含まない。
【0030】
上記の植物紙の乾燥物の可溶性化合物の質量による百分率を決定するために、以下の方法が使用される。分析する植物紙を、2mm以下の粒子サイズを達成するように粉砕する。粉砕した植物紙を次に、沸騰したお湯と10分間混合して、可溶性化合物を抽出する。溶媒に可溶な靭皮繊維の化合物の、植物紙中の乾燥物質量を、植物紙サンプルの乾燥質量と抽出後の繊維状残留物の乾燥質量との差によって計算する。
【0031】
本発明による植物紙はまた、セルロース繊維を含みうる。
【0032】
典型的には、セルロース繊維は、針葉樹又は広葉樹に、及び針葉樹と広葉樹の混合物に由来する木材パルプ(脱リグニン及び漂白された、又はその他)に由来する旧来のセルロース繊維、及び/又は人工的なセルロース繊維、例えば、リオセル繊維、ビスコース繊維、セルロースアセテート繊維、及びそれらの混合物から選択されうる。
【0033】
一実施形態によれば、植物紙は、木材パルプ、リヨセル繊維、ビスコース繊維、セルロースアセテート繊維、及びそれらの混合物から選択されるセルロース繊維を含む。
【0034】
典型的には、本発明による植物紙中のセルロース繊維の量は、その植物紙の乾燥物の20質量%~60質量%、特にその植物紙の乾燥物の40質量%~50質量%である。
【0035】
典型的には、本発明による植物紙中のリヨセル繊維の量は、その植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%、特にその植物紙の乾燥物の15質量%~35質量%である。
【0036】
典型的には、植物紙中のリヨセル繊維は、1mm~58mm、特に4mm~20mm、そして最も特に5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0037】
典型的には、植物紙中のリヨセル繊維は、0.5dTex~2.5dTex、特に1dTex~2dTex、そして最も特に1.65dTex~1.75dTexの細さを有する。
【0038】
典型的には、植物紙中のビスコース繊維は、1mm~58mm、特に4mm~20mm、そして最も特に5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0039】
典型的には、植物紙中のビスコース繊維は、0.5dTex~2.5dTex、特に1dTex~2dTex、最も特に1.65dTex~1.75dTexの細さを有する。
【0040】
典型的には、本発明による植物紙中のビスコース繊維の量は、植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%、特に植物紙の乾燥物の15質量%~35質量%である。
【0041】
典型的には、植物紙中のセルロースアセテート繊維は、1mm~58mm、特に4mm~20mm、そして最も特に5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0042】
典型的には、植物紙中のセルロースアセテート繊維は、0.5dTex~2.5dTex、特に1dTex~2dTex、そして最も特に1.65dTex~1.75dTexの細さを有する。
【0043】
典型的には、本発明による植物紙中のセルロースアセテート繊維の量は、植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%、特に植物紙の乾燥物の15質量%~35質量%である。
【0044】
典型的には、本発明による植物紙中の木材パルプに由来するセルロース繊維の量は、植物紙の乾燥物の10質量%~40質量%、特に、乾燥物の15質量%~35質量%である。
【0045】
典型的には、木材パルプに由来するセルロース繊維はリファイニングされており、15°SR~90°SR、特に30°SR~75°SR、最も特に50°SR~65°SRのショッパー・リーグラー度(°SR)度を有している。
【0046】
典型的には、木材パルプは、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、及びそれらの混合物である。
【0047】
特定の実施形態によれば、木材パルプは針葉樹パルプである。
【0048】
植物紙の特性を改変するために、セルロース繊維を植物紙に添加してもよい。典型的には、改変されうる植物紙の特性は、機械的強度特性、例えば、乾燥及び湿潤引張強度、引裂強度、破裂強度、折り畳み抵抗、曲げ強度;感覚特性、例えば、柔らかさ;光学特性、例えば、白色度、不透明度、又は光沢;あるいはその他の特性、例えば、坪量、多孔度、空気又は液体についての透過性;比体積(フランス語でLa main)、 吸収能力、及び放出能力である。
【0049】
有利には、上述したリヨセル繊維は、本発明による植物紙の柔らかさ及び乾燥強度を高め、上述した木材パルプは、本発明による植物紙の機械的強度特性及び吸収能力を高める。
【0050】
植物紙はまた、植物紙に新しい特性、例えば、化学的、光学的、感覚的、又は機械的特性、例えば、乾燥強度、湿潤強度、及び/又は耐折り畳み性を発現させ又は付与するために、製紙に通常使用される添加剤を含んでもよい。
【0051】
典型的には、添加剤は、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、柔軟剤、ローション組成物、湿潤剤、ラテックス、カンナビノイド、例えば、カンナビジオール(CBD)及びテトラヒドロカンナビノール(THC)、並びにそれらの混合物から選択されることができ、特に、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、ローション組成物、カンナビノイド、例えば、カンナビジオール(CBD)及びテトラヒドロカンナビノール(THC)、並びにそれらの混合物、最も特に湿潤紙力増強剤から選択されることができる。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、添加剤は、カンナビノイド、例えば、カンナビジオール(CBD)又はテトラヒドロカンナビノール(THC)、特にカンナビジオール(CBD)であることができる。
【0053】
典型的には、添加剤の量は、植物紙の乾燥物の3質量%未満、特に植物紙の乾燥物の0.5質量%~2質量%、そして最も特に植物紙の乾燥物の1.3質量%~1.7質量%である。
【0054】
湿潤紙力増強剤は、植物紙が液体、例えば水と接触して置かれた場合に、植物紙の潜在的な分解を低減することを可能にする。典型的には、湿潤紙力増強剤は、ポリアミド、例えば、エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂、ポリ(アミノアミド)-エピクロロヒドリン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキルケテンダイマー、アルキルコハク酸無水物、ポリビニルアミン、酸化された多糖類、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0055】
乾燥強度剤は、植物紙がかなりの機械的応力を受けた場合に、植物紙の強度を高めることを可能にする。乾燥強度剤は、デンプン及び変性ガム、セルロースポリマー、合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0056】
柔軟剤は、本発明による植物紙の柔らかさを向上することを可能にする。典型的には、柔軟剤は、脂肪酸、シロキサン化合物、シリコーン化合物、アミノシリコーン化合物、アロエ・ベラ抽出物、スイートアーモンド抽出物、カモミール抽出物、第四級アンモニウム化合物、及びそれらの混合物である。
【0057】
典型的には、本発明による植物紙は、15g/m~70g/m、特に35g/m~60g/mの坪量を有する。
【0058】
有利には、これらの値の範囲内の坪量は、本発明による植物紙にその適合性(本発明による植物紙が使用者の顔の形をとる能力)並びに化粧のための使用に満足のいく吸収能力及び放出能力を付与する。
【0059】
典型的には、本発明による植物紙が靭皮繊維及びセルロース繊維、特にリヨセル繊維及び針葉樹パルプの混合物を含む場合、靭皮繊維及びセルロース繊維の混合物は、5°SR~50°SR、特に10°SR~25°SR、最も特に11°SR~14°SRのショッパー・リーグラー度(°SR)を有しうる。
【0060】
有利なことには、これらの値の範囲内のショッパー・リーグラー度は、本発明による植物紙に、たとえ植物紙が湿っていてもそれを使用でき、容易に成形できる機械的強度特性を与える。
【0061】
特定の実施形態によれば、本発明による植物紙は、
- 抽出操作をうけ、1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する亜麻繊維、
- 5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長、及び1.65dTex~1.75dTexの細さをもつリヨセル繊維、
- 60°SR~65°SRのショッパー・リーグラー度(°SR)をもつ針葉樹パルプ、及び
- 湿潤紙力増強剤、
を含み、
前記亜麻繊維の量は、植物紙の乾燥物の45質量%~55質量%であり、
前記リヨセル繊維の量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、
前記針葉樹パルプの量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、かつ
湿潤紙力増強剤の量は、植物紙の乾燥質量の1.4質量%~1.6質量%である。
【0062】
別の特定の実施形態によれば、本発明による植物紙は、
- 抽出操作を受け、1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する亜麻繊維、
- 5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長、及び1.65dTex~1.75dTexの細さをもつリヨセル繊維、
- 50°SR~55°SRのショッパー・リーグラー度(°SR)をもつ針葉樹パルプ、及び
- 湿潤紙力増強剤、
を含み、
前記亜麻繊維の量は、植物紙の乾燥物の45質量%~55質量%であり、
前記リヨセル繊維の量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、
前記針葉樹パルプの量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、かつ
湿潤紙力増強剤の量は、植物紙の乾燥質量の1.4質量%~1.6質量%である。
【0063】
別の特定の実施形態によれば、本発明による植物紙は、
- 抽出操作を受け、1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する麻繊維、
- 5.5mm~6.5mmの長さ加重平均繊維長、及び1.65dTex~1.75dTexの細さをもつリヨセル繊維、
- 50°SR~55°SRのショッパー・リーグラー度(°SR)をもつ針葉樹パルプ、及び
- 湿潤紙力増強剤、
を含み、
前記麻繊維の量は、植物紙の乾燥物の45質量%~55質量%であり、
前記リヨセル繊維の量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、
前記針葉樹パルプの量は、植物紙の乾燥物の20質量%~30質量%であり、かつ
湿潤紙力増強剤の量は、植物紙の乾燥質量の1.4質量%~1.6質量%である。
【0064】
本発明による植物紙はまた、第2の紙と共に使用して、ハイブリッド紙を形成することもできる。
【0065】
この第2の紙は、当業者に公知のプロセス、例えば、長い人工繊維、長い天然繊維、セルロース繊維、及びそれらの混合物を使用する、ウェット・レイド法、ドライ・レイド・カーデッド法、あるいは長い人工繊維、長い天然繊維、セルロース繊維、及びそれらの混合物を使用するエア・レイド法によって製造することができる。この第2の紙はまた、スパンボンド支持体であってもよい。
【0066】
第2の紙のセルロース繊維は、植物紙に関連して上述したとおりであることができる。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、ハイブリッド紙は、本発明による植物紙及び第2の紙を含むことができ、特に、植物紙が第2の紙と複合化されている。
【0068】
典型的には、ハイブリッド紙は、本発明による植物紙を第1の層として使用し、第2の紙を第2の層として使用する、ハイドロ・エンタングルメント法によって得ることができる。
【0069】
一実施形態によれば、本発明はまた、本発明による植物紙がハイドロ・エンタングルメント法によって第2の紙と複合化される、ハイブリッド紙を製造するための方法に関する。
【0070】
この実施形態によれば、第2の紙は、ハイブリッド紙に関連して上述したとおりである。
【0071】
その感覚特性、その吸収及びその放出能力のおかげで、植物紙及びハイブリッド紙は、化粧品、ワイプ、衛生製品、及び吸収紙であることができ、あるいはそれらの基材として使用することができる。
【0072】
典型的には、化粧品は、フェイスマスク、眼帯(アイパッチ)、ボディエンベロープ(body envelop)、又はワイプであることができる。
【0073】
典型的には、本発明による化粧品は、本発明による植物紙又はハイブリッド紙に加えて、皮脂調節剤、抗菌剤、殺菌剤、マット効果剤、収斂剤、酸性化剤、瘢痕形成剤、角質除去剤又は角質調節剤、閉塞剤(オクルーシブ剤)、保護剤、消毒剤、皮膚軟化剤、栄養剤、保湿剤、老化防止剤、鎮静剤、鬱血除去剤又は静脈緊張剤、閉塞剤、UVスクリーニング剤、保湿剤、吸湿剤、ゲル化剤、角質除去剤、抗フリーラジカル剤、細胞再生剤又は細胞刺激剤、引き締め剤、緊張剤、抗糖化剤、美白剤、及びそれらの混合物から選択される活性成分を含みうる。
【0074】
典型的には、本発明によるワイプは、本発明による植物紙又はハイブリッド紙に加えて、柔軟剤、例えば、脂肪酸、シロキサン化合物、シリコーン化合物、アミノシリコーン化合物、アロエ・ベラ抽出物、スイートアーモンド抽出物、カモミール抽出物、第四級アンモニウム化合物、殺生物性化合物、例えば、消毒剤、抗菌剤、殺菌剤、及びそれらの混合物、鬱血除去剤、例えば、ハッカの抽出物(メントール)又はユーカリの抽出物、香料、保湿化合物、例えばビタミンE、及びそれらの混合物を含むことができる。
【0075】
一実施形態によれば、本発明による衛生用紙は、上記の植物紙又はハイブリッド紙を含むことができる。
【0076】
一実施形態によれば、本発明による吸収紙は、上記の植物紙又はハイブリッド紙を含むことができる。
【0077】
典型的には、本発明による植物紙は、湿式プロセス、特に上向流式傾斜脱水ファブリック(一般に製紙において「傾斜ワイヤー」とよばれる)を使用する湿式プロセスによって製造することができる。
【0078】
典型的には、脱水ファブリックを使う湿式プロセスによれば、靭皮繊維は水と混合されてパルプを形成する。次に、このパルプは脱水ファブリックの上に送られ、ウェブ(網目)の形成を可能にし、次に吸引ボックスの上で水の脱水が行われる。
【0079】
当業者は、本発明による植物紙を製造するために、脱水ファブリックを使用した湿式プロセスのパラメータをどのように適合させるか知っているであろう。
【0080】
本発明による植物紙の繊維は、湿式製造工程においてほとんど又は全く凝集しない。従来、繊維凝集物は、湿式製造プロセスの実施の問題を引き起こす可能性がある。有利なことに、本発明による植物紙はしたがって湿式製造プロセスによって容易に製造することができる。
【0081】
本発明による植物紙の靭皮繊維は、溶媒中での抽出操作を受けてもよい。この場合、本発明による植物紙を製造するためのプロセスは、以下のステップを含む。
a)靭皮繊維を溶媒と混合して、溶媒に可溶な靭皮繊維の化合物の全て又は一部を抽出するステップ、
b)靭皮繊維を可溶性化合物から分離して、溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維を得るステップ、
c)溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維を用いて、湿式プロセスによって植物紙を形成するステップ。
【0082】
そのようなプロセスにおいて、靭皮繊維を、例えば抽出器中で、溶媒と混合して、溶媒に可溶である靭皮繊維の化合物を抽出する。溶媒に可溶であるこれらの化合物は、次に、例えばスクリュープレスを通過させることによって、靭皮繊維から分離され、一方では溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維が、他方では溶媒に可溶な抽出物が得られる。溶媒中での抽出操作を受けた靭皮繊維を次に水と混合してパルプを形成し、これを上向流式傾斜脱水ファブリック(傾斜ワイヤー)に送って、本発明による植物紙を形成する。
【0083】
特定の実施形態によれば、溶媒は水性溶媒である。最も特に、溶媒は水である。
【0084】
溶媒が水である実施形態によれば、水の温度は、処理される靭皮繊維に適合させることができる。典型的には、水の温度は40℃か~100℃、特に60℃~90℃である。
【0085】
植物紙がセルロース繊維も含む場合は、これらの繊維を靭皮繊維又は靭皮繊維混合物と混合して繊維混合物を形成し、この繊維混合物を次に水と混合してパルプを形成することができ、これが、上向流式傾斜脱水ファブリック(傾斜ワイヤー)に送られて、本発明による植物紙を形成するパルプとなる。
【0086】
植物紙が添加剤、特に湿潤紙力増強剤を含む場合、この添加剤は、水と混合してパルプを形成する前に、靭皮繊維に、及び任意選択により場合によってはセルロース繊維に添加してもよい。添加剤はまた、サイズプレスを使用することによって、コーティングすることによって、又は噴霧することによって、形成された植物紙に直接添加することもできる。
【0087】
典型的には、水と混合される前に、繊維混合物は、例えば、リファイナーを通過して、繊維混合物のショッパー・リーグラー度を10°SR~50°SR、最も特に12°SR~14°SRに調整することができる。
【0088】
製造されたら、植物紙は、乾燥装置、例えば乾燥ローラーによって乾燥されうる。
【0089】
植物紙は、次に、シート又はリーフレットの形に成形されるか、又はロールとして巻きとられてこれは次にボビン又はバンドに切断されうる。
【0090】
植物紙はまた、製紙業界で知られている追加の処理を受けてもよい。
【0091】
典型的には、これらの処理の1つによって、複数のヘッドボックスを使用した多層植物紙の製造が可能になる。各層は、繊維及び/又は添加剤の同じ又は異なる組成を有しうる。
【0092】
これらの追加の処理の別の1つは、ハイドロ・エンタングルメントである。この処理では、高圧ウォータージェットを使用して繊維を絡ませる。格子(grate)と圧縮ストリップ(compression strip)の間に挟まれて、本発明による植物紙は、最初に圧縮され、湿らされて、エアポケットの形成が防止される。細かい金網で覆われた穴あきシリンダー上を循環して、本発明による植物紙は、一方の面の上に、次に他方の面の上に高圧水ジェットをうける。典型的には、ウォータージェットは、インジェクター、すなわち、典型的には3mm~5mm離れた列上に、1ミリメートルあたり1~3個の穴の割合で配置された、典型的には直径80μm~150μmの穴から放出される。水圧は最初のインジェクターから最後のインジェクターに向かって上昇する。本発明による植物紙が溢れることを回避するために、シリンダーの内部は負圧下にある。残留水は、最初に吸引によって、次に乾燥によって除去される。
【0093】
有利なことに、ハイドロ・エンタングルメント処理を施した植物紙の官能特性、特に柔らかさ、及び吸収能力は改善される。さらには、ハイドロ・エンタングルメント処理を受けた植物紙は、それを吊り下げたときに調和のとれた折り目を形成し、大きな引張強度を有し、成形が容易である。その官能特性、特にその柔らかさ及びその適合性の改善によって、ハイドロ・エンタングルメント処理を受けた植物紙はまた、有利なことには、上述した、化粧品、ワイプ、衛生製品、及び吸収紙の基材であることができ、あるいはその基材として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1図1は、8つの例示した植物紙の比体積を示す図である。
図2図2は、例1-1~2-2の植物紙の水についての吸収能力、例1-2の植物紙のTechnatureローションについての吸収能力、及びび合成繊維で作られた市販のフェイスマスクのTechnatureローションについての吸収能力(図2中ではローションについての比較サンプルという)を示す図である。
図3図3は、水についての例1-2~2-2の8つの異なる植物紙、Technatureローションについての実施例1-2の植物紙、予め含浸された市販のフェイスマスク、及びTechnatureローションについての合成繊維製の市販のフェイスマスク(図3ではローションについての比較サンプルという)の放出能力(又は保持能力)を示す図である。
図4図4は、水を使用した8つの例示した植物紙の機械方向(MD)および交差方向(CD)の乾燥引張強度を示す図である。
図5図5は、水を使用した8つの例示的な植物紙の機械方向(MD)及び交差方向(CD)の湿潤引張強度を示す図である。
【実施例
【0095】
例1:亜麻繊維を含む植物紙
例1-1:亜麻繊維、テンセル(Tencell)繊維、及びソドラブルー(Sodra blue (sodraのoはoウムラウトである)),パルプの製品名)を含む植物紙、この植物紙は50g/m の坪量を有し、その繊維混合物は12°SRのショッパー・リーグラー度を有する
【0096】
亜麻繊維50%、Lenzing AG社から入手可能な6mmかつ1.7dTexの光沢のあるテンセル(登録商標)リヨセル繊維30%、Sodra(oはoウムラウトである、以下同様)社から入手可能な53°SRにリファインされたSodra blue 85Zウッドパルプ20%、Solenis社から入手可能なKymene GHP20 BF(湿潤紙力増強剤)1.5%を含む植物紙を製造した。これらのパーセント割合は、植物紙の乾燥物の質量に対する質量基準で表している。
【0097】
亜麻繊維は、1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する。亜麻繊維を70℃±10℃において50分間、水と混合した。その混合物に、次に、スクリュープレス中での抽出操作のステップを行って、亜麻繊維の水溶性の化合物を含む水性部分から亜麻繊維を分離する。
【0098】
Sodra blue 85Zを、24インチ・オフライン・リファイナー中で、出力設定値170kWで25分間リファイニングした。
【0099】
水中での抽出操作をうけた亜麻繊維を、テンセル(登録商標)繊維及びリファイニングされたSodra blueと混合して、繊維混合物を形成する。この繊維混合物を次に水と混合してパルプを形成する。次に、このパルプを次に傾斜ワイヤー抄紙機を通して、植物紙を製造する。
【0100】
例1-2:亜麻繊維、テンセル繊維、及びSodra blueを含む植物紙、この植物紙は50g/m の坪量を有し、その繊維混合物は13°SRのショッパー・リーグラー度を有する
【0101】
例1-2の植物紙は、例1-1の植物紙と同様の方法で製造される。唯一の違いは、繊維混合物を、14インチのオンラインリファイナーを使用して40kWの出力設定値でリファイニングしてから、傾斜ワイヤー抄紙機に送り、植物紙を得ることである。
【0102】
このリファイニングステップが、繊維混合物のショッパー・リーグラー度を高めることを可能にする。
【0103】
例1-3:亜麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、及びSodra blueを含む植物紙、その植物紙は45g/m の坪量を有し、その繊維混合物は13°SRのショッパー・リーグラー度を有する
【0104】
例1-3の植物紙は、例1-2の植物紙と同様の方法で製造されるが、唯一の違いは、例1-3の植物紙の坪量である。当業者は、ウェットルート製紙プロセスをどのように適応させて、植物紙の坪量を変えるかを知っている。
【0105】
例1-4:亜麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、Sodra blueを含む植物紙、その植物紙は50g/m の坪量を有し、その繊維混合物は13°SRのショッパー・リーグラー度を有する
【0106】
2mmの亜麻繊維50%、6mm及び1.7dTexの光沢のあるテンセル(登録商標)繊維20%、61°SRにリファイニングされたSodra blue 85Zを30%、及びKymene GHP20 BF(湿潤紙力増強剤)1.5%を含む植物紙をウェットルートで製造した。これらのパーセント割合は、植物紙の乾燥物の質量に対する質量基準で表している。
【0107】
亜麻繊維の数の90%は、1.95mm~2.05mmの長さを有する。亜麻繊維を、70℃±10℃にて、平均45分間、水と混合した。その混合物を、次に、油圧プレスでの抽出ステップにかけて、水溶性の亜麻繊維の化合物を含む水性部分から亜麻繊維を分離する。
【0108】
Sodra blue 85は、30分間、24インチのリファイナー中で、170kWの出力設定値でリファイニングした。
【0109】
水中での抽出処理をうけた亜麻繊維を、テンセル(登録商標)繊維、リファイニングされたSodra blue、及び水と混合してパルプを形成する。このパルプを次に、傾斜ワイヤー抄紙機に送り、植物紙を得る。
【0110】
例1-5:亜麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、及びSodra blueを用いた植物紙、この植物紙は45g/m の坪量を有し、その繊維混合物は13°SRのショッパー・リーグラー度を有する
【0111】
例1-5の植物紙は、例1-4の植物紙と同様の方法で得られるが、唯一の違いは、例1-5の植物紙の坪量である。当業者は、どのようにウェットルート製紙プロセスを適応させて、植物紙の坪量を変えるかを知っている。
【0112】
例1-1~1-5の植物紙を、以下の表1にまとめてある。
【0113】
【表1】
【0114】
例2:麻繊維を含む植物紙
例2-1:麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、Sodra blueを含む植物紙、この植物紙は60g/m の坪量を有する
【0115】
2mmの麻繊維50%、6mm及び1.7dTexの光沢のあるテンセル(登録商標)繊維30%、37°SRにリファイニングされたSodra blue 85Zを20%、Kymene GHP20 BF(湿潤紙力増強剤)1.5%を含む植物紙をウェットルートで製造した。これらのパーセント割合は、植物紙の乾燥物の質量に対する質量基準で表している。
【0116】
麻繊維は、1.95mm~2.05mmの長さ加重平均繊維長を有する。麻繊維を85℃±5℃にて、45分間、水と混合した。混合物を次に、機械的抽出ステップにかけて、水溶性の麻繊維の化合物を含む水性部分から麻繊維を分離する。
【0117】
水中での抽出処理をうけた麻繊維を、テンセル(登録商標)繊維及びリファイニングされたSodra blue 85Zと混合して繊維混合物を形成する。この繊維混合物を次に水と混合してパルプを形成する。このパルプを次に、傾斜ワイヤー抄紙機に送り、植物紙を得る。
【0118】
例2-2:麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、及びSodra blueを含む植物紙、この植物紙は50g/m の坪量を有する
例2-2の植物紙は、例2-1の植物紙と同様の方法で製造される。 唯一の違いは、繊維混合物を、14インチのリファイナーを使用して、55kWの出力設定値でリファイニングした後、上向流式傾斜脱水ファブリックを通して、植物紙が得られることである。当業者は、どのようにウェットルート製紙プロセスを適応させて、植物紙の坪量を変えるか知っている。
【0119】
例2-3:麻繊維、テンセル(登録商標)繊維、及びSodra blueを含む植物紙、この植物紙は50g/m の坪量を有する
例2-3の植物紙は、例2-1の植物紙と同様の方法で製造される。違いは、例2-1の植物紙の坪量と、繊維混合物を14インチのリファイナーを使用して45kwの出力設定値でリファイニングした後、上向流式傾斜脱水ファブリックを通して植物紙を得ることである。当業者は、どのようにウェットルート製紙プロセスを適応させて、植物紙の坪量を変えるか知っている。
【0120】
例2-1~2-3の植物紙を、下の表2にまとめてある:
【0121】
【表2】
【0122】
例3:例1及び2の植物紙の特性
【0123】
例3-1:官能特性(感覚特性)
例1及び2の植物紙の官能特性は、複数のパネリストで組織された化粧パネリストによって評価される。
【0124】
例1の植物紙は以下の点を有している。
- 明るい色を有し、均質であり、ストローがないので、非常に有望な外観である、
- 柔らかく、「軽く」かつ紙ではないベールのような外観を有しているので、非常に有望な触覚効果がある、
- 十分な強度、特に例1-2及び1-5の紙について十分な強度、及び
- 取り扱い及び広げやすさ。
【0125】
さらに、例1の亜麻繊維を含む植物紙は、いかなる粒子も失わない。
【0126】
例2の麻繊維を含む植物紙は、以下の点を有している。
- 明るくニュートラルな色を有し且つ光沢があるので、非常に有望な外観である、
- 柔らかいので、非常に有望な触覚効果、及び
- ニュートラルな匂い。
【0127】
例1及び2の植物紙は、化粧用フェイスマスクの基材として使用できる官能特性を有する。
【0128】
例3-2:貯留効果の評価
貯留効果は比体積(m/kg)によって特徴づけられる。図1は、8つの例示した植物紙の比体積を示している。
【0129】
例示した全ての植物紙は、4.55dm/kgより大きな比体積を有している。これは、例1及び2の植物紙を化粧品として、又は化粧用マスクの基材として使用するのに完全に満足のいくものである。
【0130】
例3-3:吸収及び放出能力の評価
それぞれの例示した植物紙の吸収及び放出能力は、以下のように測定される:
- 例示した植物紙のシートを秤量し(m1)、4つに折る、
- アルミニウムプレートを、150mlの水又はTechnature化粧品ローション(Tech Nature社から入手可能)で満たす、
- 4つに折りたたまれた紙のシートをそのプレート中に置き、水又はTechnatureローションの下に2分間保持する、
- そのシートを次にプレートから取り出し、30秒間、水気をきる、
- その水気が除かれたシートを次に秤量し(m2)、式Ca=(m2-m1)/m1×100に従って吸収容量(Ca)を決定する、
- そのシートを次にオペレーターの腕の上に置き、毎分秤量してシートの放出能力を決定する(各秤量後にシートは腕に戻す)。
【0131】
図2は、例1-1~2-2の植物紙の水についての吸収能力、例1-2の植物紙のTechnatureローションについての吸収能力、及びび合成繊維で作られた市販のフェイスマスクのTechnatureローションについての吸収能力(図2中ではローションについての比較サンプルという)を示している。
【0132】
図3は、水についての例1-2~2-2の8つの異なる植物紙、Technatureローションについての実施例1-2の植物紙、予め含浸された市販のフェイスマスク、及びTechnatureローションについての合成繊維製の市販のフェイスマスク(図3ではローションについての比較サンプルという)の放出能力(又は保持能力)を示している。
【0133】
様々な例示された植物紙は、市販のマスクよりも劣る吸収能力を有するが、同等の放出能力を有する。このことはフェイスマスク製造業者にとって有利でありえ、なぜなら、基材が例示した植物紙であるフェイスマスクは、合成繊維で作られた市販のマスクよりも少ない化粧ローションしか消費せず、かつ合成繊維で作られた市販のマスクと同様に化粧ローションを放出するからである。本発明による植物紙のおかげで、フェイスマスク製造業者は、マスク1つ当たりに必要なローションの量を節約することができる。
【0134】
例3-4:乾燥強度及び湿潤強度の評価
【0135】
図4は、水を使用した8つの例示した植物紙の機械方向(MD)および交差方向(CD)の乾燥引張強度を示している。
【0136】
例示された全ての植物紙は、フェイスマスクの製造に使用するために完全に満足のいく乾燥強度を有している。
【0137】
図5は、水を使用した8つの例示的な植物紙の機械方向(MD)及び交差方向(CD)の湿潤引張強度を示しています。
【0138】
全ての例示した植物紙は、化粧用フェイスマスクの基材として使用するために完全に満足のいく湿潤強度を有する。
【0139】
例4:例1の植物紙のハイドロ・エンタングルメント法による処理
【0140】
例4-1:処理プロセス
例1のそれぞれの植物紙を、3つの増加するレベルの全圧でハイドロ・エンタングルメント処理にかける:
- レベル1:2つのインジェクター:30+40=70バール、
- レベル2:2つのインジェクター:47+67=114バール、
- レベル3:2つのインジェクター:62+88=150バール。
【0141】
上記のインジェクター(複数)は、110μmの直径を有し、間隔は1mmである。
【0142】
例4-2:上記の処理を受けた植物紙の特性
【0143】
ハイドロ・エンタングルメント法は、例1の植物紙の乾燥強度及び湿潤強度を低下させる。しかし、この処理によって、紙の変形能が大幅に改善される。
【0144】
ハイドロ・エンタングルメント処理後の例1-2の植物紙の官能特性(感覚特性)を化粧パネルによって評価した。
【0145】
未処理の植物紙と比較して、処理された植物紙の柔らかさ、そのドレープ、及びその形状適合性が向上する。特に、その形状適合性は市販製品の形状適合性に匹敵する。さらに、折り目のマーキングが減少した。処理された植物紙はまた、未処理の植物紙よりも多くの水分を吸収し、乾燥が遅い。
【0146】
したがって、ハイドロ・エンタングルメント処理後の例1-2の植物紙は、合成繊維に基づく市販のフェイスマスクの基材を有利に置き換えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5