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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】排熱回収ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/00 20060101AFI20240708BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
F22B37/00 B
F22B1/18 Z
F22B1/18 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021004570
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022109184
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】中本 充
(72)【発明者】
【氏名】中尾 啓輔
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-088002(JP,A)
【文献】特開2000-065313(JP,A)
【文献】特開平09-296904(JP,A)
【文献】特開2003-056801(JP,A)
【文献】特開平01-281322(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0282803(US,A1)
【文献】特開平11-141801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/00
F22B 1/18
F23J 15/00
F22G 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンからの排ガスが流通するボイラダクトに、排ガスとの熱交換によって蒸気を発生させる蒸発器と、前記蒸発器で発生した蒸気を排ガスとの熱交換によって過熱する過熱器と、前記過熱器の下流に配置されて排ガスが通過する脱硝装置とが設けられる排熱回収ボイラであって、
前記過熱器の蒸気流入部に接続され、前記蒸発器で発生した蒸気を前記過熱器へ供給する流入側蒸気管と、
前記過熱器の蒸気流出部に接続され、前記過熱器で過熱された蒸気が流入する流出側蒸気管と、
前記流入側蒸気管から分岐して前記流出側蒸気管に合流するバイパス蒸気管と、
前記バイパス蒸気管に設けられ、前記バイパス蒸気管を流通する蒸気量を調節可能なバイパス調節弁と、
前記脱硝装置を通過する排ガスの温度を検出する排ガス温度検出手段と、
前記バイパス蒸気管を流通する蒸気量が前記脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて減少するように、前記排ガス温度検出手段が検出する排ガスの温度に基づいて前記バイパス調節弁を制御する弁制御手段と、を備える
ことを特徴とする排熱回収ボイラ。
【請求項2】
ガスタービンからの排ガスが流通するボイラダクトに、排ガスとの熱交換によって蒸気を発生させる蒸発器と、前記蒸発器で発生した蒸気を排ガスとの熱交換によって過熱する過熱器と、前記過熱器の下流に配置されて排ガスが通過する脱硝装置とが設けられる排熱回収ボイラであって、
前記過熱器の蒸気流入部に接続され、前記蒸発器で発生した蒸気を前記過熱器へ供給する流入側蒸気管と、
前記過熱器の蒸気流出部に接続され、前記過熱器で過熱された蒸気が流入する流出側蒸気管と、
前記流入側蒸気管から分岐して前記流出側蒸気管に合流するバイパス蒸気管と、
前記バイパス蒸気管に設けられ、前記バイパス蒸気管を流通する蒸気量を調節可能なバイパス調節弁と、
前記バイパス蒸気管が分岐する分岐部と前記蒸気流入部との間の前記流入側蒸気管に設けられ、前記過熱器へ流入する蒸気量を調節可能な流入調節弁と、を備える
ことを特徴とする排熱回収ボイラ。
【請求項3】
請求項に記載の排熱回収ボイラであって、
前記脱硝装置を通過する排ガスの温度を検出する排ガス温度検出手段と、
前記バイパス蒸気管を流通する蒸気量が前記脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて減少するように、前記排ガス温度検出手段が検出する排ガスの温度に基づいて前記バイパス調節弁を制御するとともに、前記過熱器へ流入する蒸気量が前記脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて増大するように、前記排ガス温度検出手段が検出する排ガスの温度に基づいて前記流入調節弁を制御する弁制御手段と、を備える
ことを特徴とする排熱回収ボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)では、ガスタービン(GT)で窒素酸化物(NOx)を含む燃焼ガス(排ガス)が発生し、発生した排ガスがガスタービンに後続する排熱回収ボイラ(HRSG)に流入する。排熱回収ボイラには、NOxを還元分解する脱硝触媒層(触媒)を有する脱硝装置が内装され(例えば、特許文献1)、触媒が十分な活性を示して反応するためには、活性化温度(例えば250~300℃)以上に触媒を上昇させる必要がある。
【0003】
しかし、脱硝装置の上流には排ガスの熱を回収する伝熱部が設けられているため、排熱回収ボイラの起動時において、触媒を通過する排ガスの温度の上昇が遅れ、触媒が活性化温度に達するまでの時間が長くなる。NOxを含む低温の排ガスは、NOxが高いというばかりでなく、硝酸による伝熱管の腐食を引き起こし、煙突から放出される排ガスの煙色の原因ともなる。
【0004】
上記課題を解決するため、特許文献2には、蒸発器とドラムとライザ管と降水管とサプライ管とからなる蒸発器自然循環系を備える排熱回収ボイラにおいて、起動時に蒸発器へ流入する熱水の流量を抑制する技術が開示されている。蒸発器は、脱硝装置の上流に配置され、ガスタービンからの排ガスとの熱交換により蒸気を発生させる。ドラムは、蒸発器からの蒸気と熱水とを分離して溜める。ライザ管は、蒸発器とドラムとを連結する。降水管は、ドラム内に溜められた熱水のみを排熱回収ボイラの下部に下降させる。サプライ管は、降水管と蒸発器とを連結し、熱水を蒸発器に供給する。降水管には、蒸発器循環系を循環する熱水の流量(蒸気管内循環量)を調節する流量調節弁が設けられ、起動時には、流量調節弁を用いて蒸発管内循環量を抑制し、蒸発器での回収熱量を低減する。これにより、触媒を通過する排ガスの温度の上昇を早めることができ、触媒が活性化温度に達するまでの時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-57468号公報
【文献】特開平8-200603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の排熱回収ボイラでは、起動時において、降水管から蒸発器への水の供給を制限するので、ボイラ発熱量が抑制される。このため、熱容量が大きいドラム(容器及び貯留された水)のウォーミングが遅れ、ドラムから飽和蒸気管への飽和蒸気の供給量を増大させるために時間を要し、排熱回収ボイラの起動時間が長くなる。
【0007】
そこで、本発明は、排熱回収ボイラの起動時において、起動時間の増長を抑制しつつ、触媒温度を迅速に上昇させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本発明の第1の態様は、ボイラダクトに蒸発器と過熱器と脱硝装置とが設けられた排熱回収ボイラであって、流入側蒸気管と流出側蒸気管とバイパス蒸気管とバイパス調節弁とを備える。ガスタービンからの排ガスは、ボイラダクトを流通する。蒸発器は、排ガスとの熱交換によって蒸気を発生させる。過熱器は、蒸発器で発生した蒸気を排ガスとの熱交換によって過熱する。脱硝装置は、過熱器の下流に配置されて排ガスが通過する。
【0009】
流入側蒸気管は、過熱器の蒸気流入部に接続され、蒸発器で発生した蒸気を過熱器へ供給する。流出側蒸気管は、過熱器の蒸気流出部に接続され、過熱器で過熱された蒸気が流入する。バイパス蒸気管は、流入側蒸気管から分岐して流出側蒸気管に合流する。バイパス調節弁は、バイパス蒸気管に設けられ、バイパス蒸気管を流通する蒸気量を調節可能である。
排熱回収ボイラは、排ガス温度検出手段と弁制御手段とを備える。排ガス温度検出手段は、脱硝装置を通過する排ガスの温度を検出する。弁制御手段は、バイパス蒸気管を流通する蒸気量が脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて減少するように、排ガス温度検出手段が検出する排ガスの温度に基づいてバイパス調節弁を制御する。
【0010】
上記構成では、ガスタービンが起動し、ガスタービンから排熱回収ボイラへ流入する排ガスの温度が上昇し、排ガスからの熱吸収によって蒸発器で蒸気が発生すると、過熱器に向けて流入側蒸気管に蒸気が供給される。脱硝装置を通過する排ガスの温度が触媒の活性化温度に対して十分に上昇していない昇温途中では、バイパス調節弁を開放し、流入側蒸気管に供給された蒸気の一部を、過熱器を流通しないようにバイパスさせる。蒸気の一部が過熱器を流通せずに流出側蒸気管へ流入するので、過熱器による熱吸収が抑えられる。このため、脱硝装置を通過する排ガスの温度を短時間に所望の温度(例えば、触媒の活性化温度)まで上昇させることができる。
【0011】
また、蒸発器での蒸気の発生を制限しない(ボイラ発熱量を抑制しない)ので、ボイラ発熱量の抑制に起因した排熱回収ボイラの起動時間(定格運転へ移行するまでの時間)の増長を抑制することができる。
【0013】
上記構成では、バイパス蒸気管を流通する蒸気量が脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて減少するように、弁制御手段がバイパス調節弁を制御するので、触媒温度の上昇に要する時間を確実に短縮することができる。
【0014】
本発明の第の態様は、ガスタービンからの排ガスが流通するボイラダクトに、排ガスとの熱交換によって蒸気を発生させる蒸発器と、前記蒸発器で発生した蒸気を排ガスとの熱交換によって過熱する過熱器と、前記過熱器の下流に配置されて排ガスが通過する脱硝装置とが設けられる排熱回収ボイラであって、前記過熱器の蒸気流入部に接続され、前記蒸発器で発生した蒸気を前記過熱器へ供給する流入側蒸気管と、前記過熱器の蒸気流出部に接続され、前記過熱器で過熱された蒸気が流入する流出側蒸気管と、前記流入側蒸気管から分岐して前記流出側蒸気管に合流するバイパス蒸気管と、前記バイパス蒸気管に設けられ、前記バイパス蒸気管を流通する蒸気量を調節可能なバイパス調節弁と、バイパス蒸気管が分岐する分岐部と蒸気流入部との間の流入側蒸気管に設けられ、過熱器へ流入する蒸気量を調節可能な流入調節弁と、を備える。
【0015】
上記構成では、例えば起動直後等において、バイパス調節弁の全開のみでは過熱器での熱吸収の抑制が不十分であり、過熱器へ流入する蒸気量をさらに減少させたい場合、過熱器へ流入する蒸気量が減少するように流入調節弁を絞る。これにより、触媒温度の上昇に要する時間をさらに短縮することができる。
【0016】
本発明の第の態様は、第の態様の排熱回収ボイラであって、排ガス温度検出手段と
弁制御手段とを備える。排ガス温度検出手段は、脱硝装置を通過する排ガスの温度を検出
する。弁制御手段は、バイパス蒸気管を流通する蒸気量が脱硝装置を通過する排ガスの温
度の上昇に応じて減少するように、排ガス温度検出手段が検出する排ガスの温度に基づい
てバイパス調節弁を制御する。また、弁制御手段は、過熱器へ流入する蒸気量が脱硝装置
を通過する排ガスの温度の上昇に応じて増大するように、排ガス温度検出手段が検出する
排ガスの温度に基づいて流入調節弁を制御する。
【0017】
上記構成では、バイパス蒸気管を流通する蒸気量が脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて減少するように、弁制御手段がバイパス調節弁を制御し、また、過熱器へ流入する蒸気量が脱硝装置を通過する排ガスの温度の上昇に応じて増大するように、弁制御手段が流入調節弁を制御するので、触媒温度の上昇に要する時間を確実に短縮することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、排熱回収ボイラの起動時において、起動時間の増長を抑制しつつ、触媒温度を迅速に上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る排熱回収ボイラを備えたガスタービン・コンバインドサイクル発電プラントの概略系統図である。
図2】ドラムと過熱器とを接続する蒸気配管を図1の矢印II方向から視た概略系統図である。
図3】過熱器の斜視図である。
図4】ドラムと過熱器とを接続する蒸気配管の変形例の概略系統図である。
図5】第2実施形態に係る排熱回収ボイラの概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を適用したガスタービン・コンバインドサイクル発電プラント(GTCC)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明における左右は、排熱回収ボイラ(HRSG)2における排ガスGの上流側(流入側)から下流側(流出側)を視た状態での左右を意味する。
【0021】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のガスタービン・コンバインドサイクル発電プラントの排熱回収ボイラ2は、排ガスGが略水平に流通する横型の排熱回収ボイラであり、ボイラダクト11と過熱器3と第1の蒸発器4と脱硝装置5と第2の蒸発器6と節炭器7とドラム(汽水分離ドラム)8とを備える。ボイラダクト11は矩形筒状であり、ガスタービン1からボイラダクト11内へ排ガスGが流入する。過熱器3と第1の蒸発器4と脱硝装置5と第2の蒸発器6と節炭器7とは、ボイラダクト11内で上流側(排ガスGの流入側)から下流側(排ガスGの流出側)に向かって並ぶ。ドラム8は、ボイラダクト11の外部に配置される。ガスタービン1からボイラダクト11内へ流入した高温高速の排ガスGは、過熱器3、第1の蒸発器4、脱硝装置5、第2の蒸発器6、節炭器7に順次に接触して熱交換される。すなわち、排ガスGの温度は、過熱器3、第1の蒸発器4、脱硝装置5、第2の蒸発器6及び節炭器7を通過することによって順次低下する。
【0022】
排熱回収ボイラ2には、蒸発器自然循環系が設けられる。蒸発器自然循環系は、蒸発器4,6とドラム8とライザ管12,13と降水管18とサプライ管19,20とから構成される。定格運転時において、ドラム8には給水管16から熱水が供給される。降水管18は、ドラム8の下部に接続され、ドラム8の下部に溜まった熱水は、降水管18によってボイラダクト11内の下部に送られる。降水管18を降下した熱水の一部は、第1のサプライ管19を介して第1の蒸発器4へ供給され、残りの熱水は第2のサプライ管20を介して第2の蒸発器6へ供給される。第1の蒸発器4へ供給された熱水は、過熱器3を通過した後の排ガスGから熱量を回収し、蒸気と熱水の混相流となり、第1のライザ管12を介してドラム8に供給される。第2の蒸発器6へ供給された熱水は、脱硝装置5を通過した排ガスGから熱量を回収し、蒸気と熱水の混相流となり、第2のライザ管13を介してドラム8に供給される。ライザ管12,13からドラム8に供給された蒸気と熱水の混相流は、ドラム8内で気液分離され、蒸気のみが飽和蒸気管(流入側蒸気管)14へ放出される。
【0023】
蒸発器4,6で発生し、ドラム8で気液分離された蒸気(飽和蒸気)は、飽和蒸気管14を介して過熱器3へ流入する。過熱器3へ流入した蒸気は、排ガスGから熱量を回収して過熱された後、主蒸気管(流出側蒸気管)15を経由して蒸気タービン9を駆動する過熱蒸気として利用される。蒸気タービン9で用いられた蒸気は、復水器10で水Wに戻されて給水管16へ流入し、給水ポンプ17により節炭器7に循環供給される。節炭器7に供給された水Wは、第2の蒸発器6を通過した排ガスGから熱量を回収して熱水となり、給水管16からドラム8内に供給される。主蒸気管15の途中には、蒸気タービン9をバイパスして蒸気を復水器10に直接導くタービンバイパス管21が接続されている。
【0024】
ボイラダクト11の下流端には、ボイラダクト11の下流端開口23を開閉するダンパ22が設けられている。ボイラダクト11の下流端開口23は、レデューサダクト(図示省略)を介して煙突(図示省略)が接続される。ガスタービン1からの排ガスGは、ボイラダクト11内からレデューサダクト内を略水平に流通して煙突の下部へ流入し、煙突内を上方へ流通して、煙突の上端開口から放出される。
【0025】
脱硝装置5には、脱硝触媒層(図示省略)が設けられている。脱硝触媒層は、窒素酸化物(NOx)を還元分解する触媒(脱硝触媒)によって構成され、排ガスGが脱硝装置5を通過して触媒と接触することにより、排ガスGに含まれるNOxが還元分解される。触媒が十分な活性を示して反応するためには、活性化温度(例えば250~300℃)以上に触媒を上昇させる必要がある。
【0026】
図2及び図3に示すように、過熱器3は、上部ヘッダ(蒸気流入部)24と下部ヘッダ(蒸気流出部)25と複数の伝熱管26とから構成される。伝熱管26は、ボイラダクト11内で排ガスGの流通方向と交叉するように鉛直方向に延びる。伝熱管26の上端(上流端)は、上部ヘッダ24に接続され、伝熱管26の下端(下流端)は、下部ヘッダ25に接続される。なお、図2では複数の伝熱管26を集約して表示し、図3では伝熱管26の本数を省略して表示している。
【0027】
ドラム8と過熱器3の上部ヘッダ24とは、複数(本実施形態では3本)の飽和蒸気管14によって接続される。3本の飽和蒸気管14の上流端は、ドラム8の上部にそれぞれ接続され、3本の飽和蒸気管14の下流端は、上部ヘッダ24にそれぞれ接続される。ドラム8から放出された蒸気は、3本の飽和蒸気管14から過熱器3(上部ヘッダ24)に供給される。このように複数の飽和蒸気管14を設けているのは、上部ヘッダ24の外周に接続される飽和蒸気管14の管径(最大径)は、上部ヘッダ24の管径(外径)によって制限され、単数の飽和蒸気管14では要求される蒸気流量を確保することが難しいためである。
【0028】
主蒸気管15は、複数(本実施形態では3本)の上流側主蒸気管27と、下流側主蒸気管28とから構成される。3本の上流側主蒸気管27の上流端は、下部ヘッダ25にそれぞれ接続され、3本の上流側主蒸気管27の下流端は、合流部41で合流して下流側主蒸気管28の上流端に接続される。複数の上流側主蒸気管27を設けているのは、複数の飽和蒸気管14を設けている上記理由と同様である。飽和蒸気管14から過熱器3の上部ヘッダ24へ流入した蒸気は、伝熱管26を流通することにより排ガスGから熱量を回収して過熱され、下部ヘッダ25から上流側主蒸気管27へ流入し、下流側主蒸気管28を介して蒸気タービン9や復水器10へ供給される。
【0029】
飽和蒸気管14と主蒸気管15との間には、ドラム8から放出された蒸気を過熱器3を経由せずに主蒸気管15へ流通させるためのバイパス蒸気管30が設けられている。バイパス蒸気管30は、飽和蒸気管14と同数(3本)の上流側バイパス蒸気管31と、下流側バイパス蒸気管32とから構成される。3本の上流側バイパス蒸気管31の上流端は、3本の飽和蒸気管14にそれぞれ接続され、3本の上流側バイパス蒸気管31の下流端は、合流部42で合流して下流側バイパス蒸気管32の上流端に接続される。すなわち、バイパス蒸気管30は、3本の飽和蒸気管14の分岐部40からそれぞれ分岐し、合流部42で合流する。下流側バイパス蒸気管32の下流端は、上流側主蒸気管27が合流する合流部41の下流側である下流側主蒸気管28に接続される。このように、バイパス蒸気管30は、飽和蒸気管14から分岐して主蒸気管15に合流し、飽和蒸気管14からバイパス蒸気管30へ流入した蒸気は、過熱器3を通過せずに主蒸気管15へ流入する。
【0030】
上流側バイパス蒸気管31が合流する合流部42の下流側である下流側バイパス蒸気管32には、バイパス蒸気管30(上流側バイパス蒸気管31及び下流側バイパス蒸気管32)を流通する蒸気量を調節可能であるバイパス調節弁33が設けられている。
【0031】
図1に示すように、脱硝装置5のガス流入口には、脱硝装置5を通過する排ガスGの温度を検出する温度センサ(排ガス温度検出手段)34が設けられている。温度センサ34は、検出した排ガスGの温度を弁制御ユニット(弁制御手段)35へ逐次出力する。なお、温度センサ34を上記とは異なる場所(例えば脱硝装置5のガス流出口など)に設けてもよい。
【0032】
弁制御ユニット35は、例えばコンピュータによって構成され、記憶部45及び弁制御部46として機能する。記憶部45には、温度センサ34が検出する排ガスGの温度とバイパス調節弁33の開度との対応関係が予め設定され記憶される。弁制御部46は、バイパス蒸気管30を流通する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて減少するように、温度センサ34が検出する排ガスGの温度と記憶部45に記憶された対応関係とに基づいてバイパス調節弁33を制御する。具体的には、ガスタービン1からの排ガスGが低温である起動時(GTCCの起動時)は、バイパス調節弁33を開状態(例えば全開)に設定する。ガスタービン1からの排ガスGの温度が上昇し、温度センサ34が検出する排ガスGの温度が上昇すると、温度の上昇に応じてバイパス調節弁33を徐々に閉じ、所定温度(例えば触媒の活性化温度)に達したときにバイパス調節弁33を全閉する。
【0033】
ガスタービン1の起動直後は、ガスタービン1からの排ガスGが低温のため蒸発器4,6で蒸気は発生せず、飽和蒸気管14に蒸気は供給されない。起動から時間が経過して排ガスGの温度が上昇し、排ガスGからの熱吸収によって蒸発器4,6で蒸気が発生し、蒸気と熱水の混相流がドラム8で気液分離されると、ドラム8から飽和蒸気管14に蒸気が供給される。
【0034】
本実施形態によれば、脱硝装置5を通過する排ガスGの温度が触媒の活性化温度に対して十分に上昇していない昇温途中では、弁制御ユニット35によってバイパス調節弁33が開放され、飽和蒸気管14に供給された蒸気の一部は、過熱器3を流通せず、過熱器3をバイパスして主蒸気管15へ流入する。蒸気の一部が過熱器3を流通せずに主蒸気管15へ流入するので、過熱器3による熱吸収が抑えられる。このため、脱硝装置5を通過する排ガスGの温度を短時間に所望の温度(例えば触媒の活性化温度)まで上昇させることができる。
【0035】
また、弁制御ユニット35は、バイパス蒸気管30を流通する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて減少するように、温度センサ34が検出する脱硝装置5のガス流入口の排ガスGの温度に基づいてバイパス調節弁33を制御するので、触媒温度の上昇に要する時間を確実に短縮することができる。
【0036】
一方、降水管18から蒸発器4,6への水の供給を制限しないので、定格運転前であっても蒸発器4,6からドラム8への蒸気の流入量が増大し、ドラム8から飽和蒸気管14への飽和蒸気の供給量も増大する。すなわち、蒸発器4,6での蒸気の発生を制限しない(ボイラ発熱量を抑制しない)ので、ボイラ発熱量の抑制に起因した排熱回収ボイラ2の起動時間(定格運転へ移行するまでの時間)の増長を抑制することができる。
【0037】
温度センサ34が検出する排ガスGの温度が所定温度(例えば触媒の活性化温度)に達すると、弁制御ユニット35はバイパス調節弁33を全閉する。従って、定格運転時において、排熱回収ボイラ2から蒸気タービン9へ蒸気を安定して供給することができる。
【0038】
なお、図2のような複数の飽和蒸気管14に代えて、図4に示すように、太径の上流側飽和蒸気管37と、複数(図示の例では3本)の細径の下流側飽和蒸気管38とから構成された飽和蒸気管36を用いてもよい。上流側飽和蒸気管37の上流端は、ドラム8の上部に接続され、下流側飽和蒸気管38は、上流側飽和蒸気管37の下流端(分岐部43)から分岐する。3本の下流側飽和蒸気管38の下流端は、上部ヘッダ24にそれぞれ接続される。このような飽和蒸気管36を用いる場合、図2のように上流側が分岐したバイパス蒸気管30に代えて、図4に示すように、上流側が分岐しないバイパス蒸気管39を用いてもよい。バイパス蒸気管39の上流端は、下流側飽和蒸気管38が分岐する分岐部43の上流側である上流側飽和蒸気管37に接続される。すなわち、バイパス蒸気管39は、下流側飽和蒸気管38が分岐する分岐部43の上流の分岐部40で飽和蒸気管36から分岐する。また、バイパス蒸気管39の下流端は、上流側主蒸気管27が合流する合流部41の下流側である下流側主蒸気管28に接続される。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図5を参照して説明する。本実施形態は、第1実施形態の排熱回収ボイラ2に流入調節弁44を追加したものであるため、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、バイパス蒸気管30が分岐する分岐部40と過熱器3の上部ヘッダ24との間の飽和蒸気管14には、飽和蒸気管14から過熱器3へ流入する蒸気量を調節可能な流入調節弁44が設けられている。流入調節弁44は、例えば図2の構成では、3本の飽和蒸気管14にそれぞれ設けられ、図4の構成では、バイパス蒸気管39が分岐する分岐部40と下流側飽和蒸気管38が分岐する分岐部43との間の上流側飽和蒸気管37に設けられる。なお、図4の構成において、上流側飽和蒸気管37ではなく、3本の下流側飽和蒸気管38にそれぞれ流入調節弁44を設けてもよい。
【0041】
弁制御ユニット35の記憶部45には、温度センサ34が検出する排ガスGの温度とバイパス調節弁33の開度及び流入調節弁44の開度との対応関係が予め設定され記憶される。弁制御部46は、バイパス蒸気管30を流通する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて減少するとともに、過熱器3へ流入する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて増大するように、温度センサ34が検出する排ガスGの温度と記憶部45に記憶された対応関係とに基づいて、バイパス調節弁33と流入調節弁44とを制御する。具体的には、ガスタービン1からの排ガスGが低温である起動時(GTCCの起動時)は、バイパス調節弁33を開状態(例えば全開)に設定し、流入調節弁44を所定開度まで絞った状態に設定する。ガスタービン1からの排ガスGの温度が上昇し、温度センサ34が検出する排ガスGの温度が上昇すると、温度の上昇に応じて流入調節弁44を徐々に開き、触媒の活性化温度よりも低い所定温度に達したときに流入調節弁44を全開する。また、排ガスGの温度の上昇に応じてバイパス調節弁33を徐々に閉じ、所定温度(例えば触媒の活性化温度)に達したときにバイパス調節弁33を全閉する。バイパス調節弁33を閉じ始めるタイミングは、流入調節弁44が全閉となるタイミングの前であってもよく、同時であってもよく、後であってもよい。すなわち、バイパス調節弁33を閉じ始める排ガスGの温度は、流入調節弁44を全閉する排ガスGの温度よりも低くてもよく、同じであってもよく、高くてもよい。
【0042】
本実施形態によれば、例えば起動直後等において、バイパス調節弁33の全開のみでは過熱器3での熱吸収の抑制が不十分であり、過熱器3へ流入する蒸気量をさらに減少させたい場合、過熱器3へ流入する蒸気量が減少するように流入調節弁44を絞る。これにより、触媒温度の上昇に要する時間をさらに短縮することができる。
【0043】
また、バイパス蒸気管30を流通する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて減少するように、弁制御ユニット35がバイパス調節弁33を制御し、また、過熱器3へ流入する蒸気量が脱硝装置5を通過する排ガスGの温度の上昇に応じて増大するように、弁制御ユニット35が流入調節弁44を制御するので、触媒温度の上昇に要する時間を確実に短縮することができる。
【0044】
なお、本発明は、一例として説明した上述の実施形態及び変形例に限定されることはなく、上述の実施形態等以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では横型(ガス横流れ式)の排熱回収ボイラ2について説明したが、竪型(ガス竪流れ式)の排熱回収ボイラであってもよい。
【0046】
また、第2の蒸発器6を設けずに第1の蒸発器4のみを設けてもよく、第1及び第2の蒸発器4,6に加えて他の蒸発器を設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:ガスタービン
2:排熱回収ボイラ(HRSG)
3:過熱器
4:第1の蒸発器
5:脱硝装置
6:第2の蒸発器
7:節炭器
8:ドラム
9:蒸気タービン
10:復水器
11:ボイラダクト
12:第1のライザ管
13:第2のライザ管
14,36:飽和蒸気管
15:主蒸気管
16:給水管
17:給水ポンプ
18:降水管
19:第1のサプライ管
20:第2のサプライ管
21:タービンバイパス管
22:ダンパ
23:ボイラダクトの下流端開口
24:上部ヘッダ(蒸気流入部)
25:下部ヘッダ(蒸気流出部)
26:伝熱管
27:上流側主蒸気管
28:下流側主蒸気管
30,39:バイパス蒸気管
31:上流側バイパス蒸気管
32:下流側バイパス蒸気管
33:バイパス調節弁
34:温度センサ(排ガス温度検出手段)
35:弁制御ユニット(弁制御手段)
37:上流側飽和蒸気管
38:下流側飽和蒸気管
40,43:分岐部
41,42:合流部
44:流入調節弁
45:記憶部
46:弁制御部
G:排ガス
W:水
図1
図2
図3
図4
図5