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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/535 20060101AFI20240708BHJP
   A61F 13/536 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61F13/535 200
A61F13/535 100
A61F13/536 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021011028
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114650
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】倉持 圭佑
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187354(JP,A)
【文献】特表平09-502633(JP,A)
【文献】特開平02-277453(JP,A)
【文献】特開2016-123641(JP,A)
【文献】特開2005-177078(JP,A)
【文献】特開2020-000717(JP,A)
【文献】特開2009-131417(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0004581(US,A1)
【文献】国際公開第2019/171934(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0163809(US,A1)
【文献】国際公開第2022/144074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された透液性の表面シートとを備え、
前記吸収体の肌側面に、前記表面シートとの間に空間を形成しながら前記吸収体を非肌側に凹ませたコアエンボス溝が形成され、前記コアエンボス溝は、着用者の体液排出部に対応する部位の少なくとも前後部にそれぞれ配置された、吸収性物品の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなる前側V字状コアエンボス溝及び後側V字状コアエンボス溝からなり、
着用者の体液排出部に対応する部位であって、前記コアエンボス溝で少なくとも前後部が囲まれた領域に、前記表面シートが前記吸収体の肌側面に沿って配置されるとともに、相対的に前記吸収体の密度を高くした高密度部が形成されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記前側V字状コアエンボス溝と後側V字状コアエンボス溝とが接続するか、吸収性物品の前後方向に離隔して配置されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記前側V字状コアエンボス溝及び後側V字状コアエンボス溝のいずれか一方又は両方は、1又は吸収性物品の前後方向に離隔して複数設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高密度部と前記コアエンボス溝とは、接続するか、離隔して配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高密度部における前記吸収体の厚みは、前記コアエンボス溝が設けられていない部分と比較して、ほぼ同等か、小さい請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記高密度部が形成された領域内に、前記高密度部より密度が低い低密度部が形成されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳細には、体液排出部対応部位を中心として、吸収体の肌側面にコアエンボス溝が形成されるとともに、所定の領域に吸収体の密度を高くした高密度部が形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、体液の漏れ防止や、装着時におけるフィット性の向上などを目的として、吸収体の肌側面に非肌側に凹ませた凹部を形成したものが種々開発されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、吸収体が、幅方向中心線を挟む一対の折り線で、幅方向両端部が長手方向の全長に亘って身体側に屈曲して、各折り線を挟んだ両側の部位が対向して保持されており、前記吸収体の幅方向両端部が身体側に屈曲した状態において、前記吸収体の幅方向両端部が幅方向に互いに離間しており、前記吸収体の2本の折り線の間の領域には、少なくとも吸収体の長手方向中心部に及ぶ凹部が設けられた吸収性物品が開示されている。
【0004】
下記特許文献2には、吸収体が上層吸収体と下層吸収体とからなり、前記上層吸収体に、吸収性物品の長手方向に延びる表裏を貫通するスリットが形成され、前記下層吸収体に、前記スリットが形成された位置に対応して、前記スリットが延びる方向に沿うエンボス溝が形成され、装着時に吸収性物品の幅方向両側から幅方向中央に向けた圧力によって前記スリットが幅方向に収縮した際、前記下層吸収体のスリットに跨がる部分が、前記エンボス溝を可撓軸として幅方向に折り曲げられ、前記スリット内で折り返されたスリット内折り返し部を形成する吸収性物品が開示されている。
【0005】
下記特許文献3には、吸収体の体液吸収/拡散を大きく必要とする中央付近に密なエンボスを掛け、その前後部分には疎なエンボスを掛けて、該エンボスが全体として連続模様になっている吸収コアが開示されている。
【0006】
また、下記特許文献4には、吸収体の少なくとも表面シート側の面に、裏面シート側に向けて窪んだ、吸収体の厚みを厚み方向に圧縮するコアプレスが形成され、かつ着用者の体液排出部に対応する領域の少なくとも両側部に、吸収性物品の長手方向に沿って左右対の圧搾溝が形成され、前記吸収体の少なくとも前記左右の圧搾溝間に、他の部位より単位面積当たりの吸収容量を大きくした高吸収部が形成されている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-179301号公報
【文献】特開2020-103406号公報
【文献】特開2004-16373号公報
【文献】特開2019-150344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1~4に記載される吸収性物品では、吸収性物品を長時間装着し続ける中で、着座時に脚を組み替えたときや、歩行時に脚を前後させたとき、寝返りのときなど、脚を前後に動かしたときに、吸収性物品の装着位置がずれて、所定の位置に体液が吸収されなかったり、吸収性物品がヨレたりすることが少なからずあった。また、吸収性物品がヨレて身体とのフィット性が低下することにより、排泄した体液が漏れるおそれがあった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、着用中のヨレを低減し、脚の動きに沿って追従しやすく、体液の漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために第1の態様として、吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された透液性の表面シートとを備え、
前記吸収体の肌側面に、前記表面シートとの間に空間を形成しながら前記吸収体を非肌側に凹ませたコアエンボス溝が形成され、前記コアエンボス溝は、着用者の体液排出部に対応する部位の少なくとも前後部にそれぞれ配置された、吸収性物品の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなる前側V字状コアエンボス溝及び後側V字状コアエンボス溝からなり、
着用者の体液排出部に対応する部位であって、前記コアエンボス溝で少なくとも前後部が囲まれた領域に、前記表面シートが前記吸収体の肌側面に沿って配置されるとともに、相対的に前記吸収体の密度を高くした高密度部が形成されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記第1の態様では、吸収体の肌側面に形成されるコアエンボス溝が、着用者の体液排出部に対応する部位の少なくとも前後部それぞれにおいて、吸収性物品の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなるV字状に形成されているため、このコアエンボス溝のV字形状に沿って吸収体が変形しやすくなり、吸収体が脚の動きに沿って追従しやすくなる。
【0012】
また、着用者の体液排出部に対応する部位であって、前記コアエンボス溝で少なくとも前後部が囲まれた領域に、相対的に吸収体の密度を高くした高密度部が形成されているため、体液排出部に対応する部位の吸収体が高剛性化し、着用中のヨレが低減できる。更に、前記高密度部が前記コアエンボス溝で少なくとも前後部が囲まれた領域に形成されているため、高密度部に吸収された体液が、その後コアエンボス溝に沿って、吸収体の前後領域の幅方向中央部に向けて拡散することにより、体液が吸収体の広い範囲に拡散して、吸収体の端部からの体液の漏れが防止できる。また、前記高密度部において、表面シートが吸収体の肌側面に沿って配置されているため、表面シートから吸収体に体液が移行しやすく、表面シートを伝う体液の漏れも生じにくくなる。
【0013】
第2の態様として、前記前側V字状コアエンボス溝と後側V字状コアエンボス溝とが接続するか、吸収性物品の前後方向に離隔して配置されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記第2の態様では、前記前側V字状コアエンボス溝と後側V字状コアエンボス溝とを接続して配置した場合は、全体として略菱形のコアエンボス溝が形成され、幅方向への体液の漏れが確実に防止できる。一方、前側V字状コアエンボス溝と後側V字状コアエンボス溝とを前後方向に離隔して配置した場合は、前記高密度部によって体液排出部に対応する部位における吸収体のヨレを防止しつつ、その前後部でコアエンボス溝に沿った吸収体の変形が生じやすくなり、脚の動きに追従しやすくなる。
【0015】
第3の態様として、前記前側V字状コアエンボス溝及び後側V字状コアエンボス溝のいずれか一方又は両方は、1又は吸収性物品の前後方向に離隔して複数設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記第3の態様では、V字状のコアエンボス溝を着用者の体液排出部に対応する部位の前後部にそれぞれ、1又は複数設けている。例えば、後方に長く形成された吸収性物品において、後側への体液の漏れをより確実に防止するため、後側V字状コアエンボス溝を吸収性物品の前後方向に離隔して複数設けることができる。
【0017】
第4の態様として、前記高密度部と前記コアエンボス溝とは、接続するか、離隔して配置されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第4の態様では、前記高密度部がコアエンボス溝の外側に延出しなければ、高密度部とコアエンボス溝とを接続してもよいし、離隔して配置してもよいが、特に、前記高密度部とコアエンボス溝とを接続させた方が、高密度部に吸収された体液がコアエンボス溝に沿って拡散しやすくなるため、好ましい。
【0019】
第5の態様として、前記高密度部における前記吸収体の厚みは、前記コアエンボス溝が設けられていない部分と比較して、ほぼ同等か、小さい請求項1~4いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0020】
上記第5の態様では、前記高密度部を形成する手段として、高密度部を設ける部分の吸収体の目付をそれ以外の部分より部分的に高くしておき、この高目付の部分を表面シートの表面側からの圧搾により凹ませて、前記コアエンボス溝が設けられていない部分とほぼ同等の厚みとする第1の手段と、前述と同様に高密度部を設ける部分の吸収体の目付を部分的に高くするか、それ以外の部分と同じとし、表面シートの表面側からの圧搾により表面シート及び吸収体を一体的に凹ませて、前記コアエンボス溝が設けられていない部分より小さな厚みとする第2の手段のいずれかとする。これにより、高密度部の吸収体の密度が高密度となり、確実に高剛性化してヨレが生じにくくなる。
【0021】
第6の態様として、前記高密度部が形成された領域内に、前記高密度部より密度が低い低密度部が形成されている請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記第6の態様では、前記高密度部が形成された領域内に、この高密度部より密度が低い低密度部を形成することによって、この低密度部を通じて吸収体に体液を吸収しやすくしている。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、着用中のヨレが低減でき、脚の動きに沿って追従しやすくなり、体液の漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】コアエンボス溝10が形成された吸収体4の平面図である。
図5】高密度部13を形成する第1の手段を示す断面図である。
図6】高密度部13を形成する第2の手段を示す断面図である。
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図8】変形例に係る生理用ナプキン1の平面図である。
図9】低圧搾部14が設けられた生理用ナプキン1の平面図である。
図10図9のX-X線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1に示されるように、非肌側に配置されたポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、肌側に配置されるとともに、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に前後方向のほぼ全長に亘って設けられたサイドシート7、7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されるとともに、その両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合された前記吸収体4が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シートで囲繞してもよい。また、前記表面シート3と吸収体4との間であって前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状のセカンドシートを配置してもよい。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン前後方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0028】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0029】
前記表面シート3は、図1に示されるように、多数の開孔8、8…がナプキン前後方向及び幅方向にそれぞれ所定の間隔をあけて形成されている。前記開孔8は、後段で詳述する高密度部13を除く領域に設けるのが好ましいが、表面シート3の全面に形成してもよいし、無くてもよい。前記開孔8の平面形状は、円形、長円形、楕円形、多角形など任意の平面形状で形成することが可能である。前記開孔8…の配列は、図1に示されるように千鳥格子状に配置してもよいし、正格子状に配置してもよい。
【0030】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。吸収体4の製造方法は、柔軟性に富むように積繊パルプとするのが望ましいが、嵩を小さくできるエアレイド吸収体としてもよい。前記吸収体4は、形状保持および拡散性向上のため、クレープ紙や不織布などからなる被包シート(図示せず)で囲繞してもよい。
【0031】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0032】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、吸収体4の幅と略同等とされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。
【0033】
かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは体液の隠蔽性を高めるため、坪量を高めた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイドシート7は、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、これら前記サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないサイドフラップ部が形成されている。一方、前記サイドシート7の内方側部分は、図示例では、表面シート3の肌側に積層された状態で吸収体4側(表面シート3の肌側面)に接着されているが、幅方向に折り畳んで、この折り畳み部に前後方向に沿って弾性伸縮部材を配設することにより、肌側に起立する立体ギャザーが形成されるようにしてもよい。また、図示例の生理用ナプキン1は、両側部に側方に突出するウイング状フラップが設けられないものであるが、ショーツに対する装着時に、ショーツのクロッチ部分の外側を巻き込むようにして折り返されるウイング状フラップを、着用者の体液排出部Hに対応する部分の両側部に、前記サイドフラップ部の側方に突出して設けてもよい。
【0035】
〔コアエンボス溝、高密度部〕
本発明に係る生理用ナプキン1では、図1図3に示されるように、前記吸収体4の肌側面に、前記表面シート3との間に空間を形成しながら吸収体4を非肌側に凹ませたコアエンボス溝10が形成されている。このコアエンボス溝10は、着用者の体液排出部Hに対応する部位の少なくとも前後部にそれぞれ配置された、生理用ナプキン1の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなる前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12で構成されている。
【0036】
また、本生理用ナプキン1では、図1及び図2に示されるように、着用者の体液排出部Hに対応する部位であって、前記コアエンボス溝10で少なくとも前後部が囲まれた領域に、前記表面シート3が吸収体4の肌側面に沿って配置されるとともに、相対的に吸収体4の密度を高くした高密度部13が形成されている。
【0037】
このように、吸収体4の肌側面に形成されるコアエンボス溝10が、着用者の体液排出部Hに対応する部位の少なくとも前後部それぞれにおいて、生理用ナプキン1の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなる前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12によって構成されているため、これらの前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12のV字形状に沿って、すなわち前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12を可撓軸として、吸収体4の前後の両側部がそれぞれ斜め方向に折れ曲がり変形しやすくなり、着用者が脚を前後に動かしたときの脚の動きに追従しやすくなる。このため、装着中に生理用ナプキン1のヨレが生じにくく、着用者の体液排出部Hに生理用ナプキン1の表面が密着した状態が維持され、体液の漏れが防止できる。
【0038】
また、着用者の体液排出部Hに対応する部位であって、前記コアエンボス溝10で少なくとも前後部が囲まれた領域に、相対的に吸収体4の密度を高くした高密度部13が形成されているため、前記高密度部13によって体液排出部Hに対応する部位の吸収体4が高剛性化し、着用中のヨレが低減できる。このため、着用者の体液排出部Hに生理用ナプキン1の表面が密着した状態が維持でき、体液の漏れが防止できる。
【0039】
更に、前記高密度部13がコアエンボス溝10で少なくとも前後部が囲まれた領域に形成されているため、前記高密度部13に吸収され、その後吸収体4内を周囲に拡散する体液が、生理用ナプキン1の前後方向端部側に向かうに従って先細の平面形状からなる前記コアエンボス溝10に沿って拡散することにより、吸収体4の前後領域の幅方向中央部に向けて拡散しやすくなり、吸収体4の端部からの体液の漏れが防止できる。
【0040】
また、前記高密度部13では、表面シート3が吸収体4の肌側面に沿って配置されているため、表面シート3から吸収体4に体液が移行しやすく、表面シート3を伝う体液の漏れも生じにくくなる。その一方で、前記コアエンボス溝10と表面シート3との間には空間が形成されているため、コアエンボス溝10に沿って吸収体4内を拡散する体液が、表面シート3の表面側に逆戻りするのが低減できる。
【0041】
以下、前記コアエンボス溝10及び高密度部13について、更に詳細に説明すると、
前記コアエンボス溝10は、吸収体4の肌側面からの圧搾により、吸収体4のみ又は吸収体4とこの肌側面に配置された被包シートとを一体的に圧縮して凹ませたものであり、このコアエンボス溝10を形成した吸収体4の肌側に表面シート3を配置することにより、コアエンボス溝10と表面シート3との間に空間が形成されるようになっている。
【0042】
前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12はそれぞれ、生理用ナプキン1の前後方向の端部側の幅方向中央部から、着用者の体液排出部Hの中央部に向けて、幅方向外側の斜め方向にそれぞれ延びるV字状の平面形状で形成されている。V字の各線分は、図示例のように直線とするのが好ましいが、幅方向内側又は外側に若干膨出する曲線などの平面形状で形成してもよい。
【0043】
前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12は、着用者の体液排出部Hに対応する部位のほぼ中央部を通る幅方向線Wに対して、前後方向に線対称となる平面形状で形成されたものを含んでいる。これにより、体液排出部Hの中央部を中心として前後のそれぞれの領域が脚の動きに追従しやすくなるとともに、吸収体4に吸収された体液が前後方向の広い範囲に拡散するようになる。
【0044】
図1に示されるように、前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12のV字部分の内角θは、20~90°、好ましくは30~60°とするのよい。
【0045】
前記コアエンボス溝10は、吸収体4の外縁にまで達することなく、吸収体4の中間部に独立して設けられている。また、前記高密度部13以外に、他の圧搾部や高密度部と接続したり枝分かれしたりすることなく、単独で設けられている。
【0046】
前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12は、図1に示されるように、前後に接続した状態で配置してもよいし、図4に示されるように、前後に離隔した状態で配置してもよい。これらコアエンボス溝11、12を前後に接続した状態で配置した場合には、図1に示されるように、全体として略菱形の閉合した平面形状のコアエンボス溝10が形成され、これによって、体液排出部Hの周囲がコアエンボス溝10によって囲われるため、全ての方向に対して、特に幅方向に対する体液の漏れが確実に防止できるようになる。一方、これらコアエンボス溝11、12を前後に離隔した状態で配置した場合には、前記高密度部13によって着用者の体液排出部Hに対応する部位における吸収体4のヨレを防止しつつ、その前後部でコアエンボス溝11、12に沿った吸収体の変形が生じやすくなり、脚の動きに追従しやすくなる。
【0047】
前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12は、着用者の体液排出部Hに対応する部位の中央部を通る幅方向線Wを境に、前側及び後側にそれぞれ1又は生理用ナプキン1の前後方向に離隔して複数設けられている。図1及び図4(A)に示される形態例では、前記幅方向線Wを境に、前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12がそれぞれ1つずつ設けられている。また、図4(B)に示される形態例では、後側V字状コアエンボス溝12が生理用ナプキン1の前後方向に離隔して複数(2つ)設けられている。このように、全長が25cm以上の、着用者の臀部溝を広く覆うように後側に長く形成された生理用ナプキン1では、後側V字状コアエンボス溝12を複数設けるのが好ましい。前側V字状コアエンボス溝11及び/又は後側V字状コアエンボス溝12を生理用ナプキン1の前後方向に離隔して複数設けた形態では、少なくとも体液排出部Hに最も近い前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12が、前記幅方向線Wに対して線対称の形状で形成されている。
【0048】
前記コアエンボス溝11、12を前記幅方向線Wの前側及び/又は後側に複数設ける際は、隣り合うコアエンボス溝11、11又は12、12同士の一部が幅方向にオーバーラップするように配置するのが好ましい。すなわち、図4(B)に示されるように、複数設けられた後側V字状コアエンボス溝12、12のうち、前記幅方向線W寄りのコアエンボス溝12の後方部が、その後側に隣接するコアエンボス溝12の開口する前端部からV字形の空間内部に挿入された状態で配置されている。これによって、体液排出部Hに近い側のコアエンボス溝12に沿って拡散した体液が、先細の先端部分から更に後方に拡散したとき、その外側に隣接するコアエンボス溝12に沿って拡散しやすくなり、吸収体の幅方向中央部に向けて拡散することにより、体液の漏れがより確実に防止できる。
【0049】
次に、前記高密度部13について説明する。前記高密度部13は、吸収体4の肌側に表面シート3を積層した状態で、前記表面シート3の表面側からの圧搾により、少なくとも前記表面シート3及び吸収体4を一体的に圧縮して非肌側に凹ませたものであり、前記高密度部13が形成された部分では、吸収体4の肌側面に沿って表面シート3が配置されるようになる。すなわち、図2に示される形態例のように、前記高密度部13が吸収体4の肌側面を他の領域より非肌側に窪ませた窪み部からなる場合、この窪み部に沿って、表面シート3が非肌側に窪むように配置されている。
【0050】
前記高密度部13は、前記コアエンボス溝10が設けられていない部分と比較して、吸収体4の厚みがほぼ同等か、小さくなるように形成されている。前記高密度部13をコアエンボス溝10が設けられていない部分とほぼ同等の厚みで形成するには、図5に示されるように、高密度部13を設ける部分の吸収体4の目付をそれ以外の部分より部分的に高くしておき、この高目付の部分を表面シート3の表面側からの圧搾により凹ませて、前記コアエンボス溝10が設けられていない部分の吸収体4の厚みとほぼ同等の厚みとする。
【0051】
また、前記高密度部13をコアエンボス溝10が設けられていない部分より小さな厚みで形成するには、図6に示されるように、高密度部13を設ける部分の吸収体4の目付をそれ以外の部分と同じとするか、前述の図5と同様に高密度部13を設ける部分の吸収体4の目付をそれ以外の部分より部分的に高くしておき、表面シート3の表面側からの圧搾により表面シート3及び吸収体4を一体的に凹ませて、前記コアエンボス溝10が設けられていない部分の吸収体4の厚みより小さな厚みとする。
【0052】
上述のいずれかの方法により高密度部13を設けることにより、高密度部13の吸収体4が確実に高密度化して、この部分の剛性が高まり、装着時におけるヨレが生じにくくなる。
【0053】
前記高密度部13は、着用者の体液排出部Hに対応する部位を含む領域に形成されており、着用者の体液排出部Hを全て含む領域に設けるのが好ましい。
【0054】
前記高密度部13は、前記コアエンボス溝10で少なくとも前後部が囲まれた領域に形成されており、前記コアエンボス溝10の外側に延出しなければ、高密度部13とコアエンボス溝10とが接続してもよいし、離隔して配置されるようにしてもよい。前記高密度部13とコアエンボス溝10とが接続して配置されるとは、コアエンボス溝10によって圧搾された吸収体4の部分と、高密度部13によって高密度化された吸収体4の部分とが、これらコアエンボス溝10及び高密度部13によって高密度化していない吸収体4を介さずに隣接して配置されるか、重ねて配置されることである。一方、前記高密度部13とコアエンボス溝10とが離隔して配置されるとは、これらコアエンボス溝10によって圧搾された吸収体4の部分と、高密度部13によって高密度化された吸収体4の部分との間に、高密度化していない吸収体4が介在することである。
【0055】
前記高密度部13とコアエンボス溝10とが接続せずに離隔して配置される場合、相対的に密の吸収体間に、相対的に疎の吸収体が介在することになるため、高密度部13からコアエンボス溝10への体液の拡散性が低下するおそれがある。このため、高密度部13からコアエンボス溝10への体液の拡散性を向上させる観点から、前記高密度部13とコアエンボス溝10とを接続して配置するのが好ましい。
【0056】
図1に示されるように、コアエンボス溝10を略菱形の閉合した平面形状で形成した場合、前記高密度部13は、このコアエンボス溝10の内縁に沿うとともに、着用者の体液排出部Hの中央部を中心としてその前後にそれぞれ所定の長さで形成されることにより、略六角形の平面形状で形成するのが好ましい。これにより、高密度部13に吸収された体液は、前記高密度部13の両側に接続するコアエンボス溝10を通じて前後に拡散しやすくなる。
【0057】
前記高密度部13の平面形状は、前記コアエンボス溝10によって少なくとも前後部が囲まれた領域内であれば、任意の形状で形成することが可能である。例えば、図7に示される形態例では、略菱形の閉合した平面形状で形成されたコアエンボス溝10に内接し、両側縁が幅方向外側に膨出する曲線からなるとともに、前後端縁が幅方向に延びる直線からなる平面形状で形成されている。このように、高密度部13の両側縁を幅方向外側に膨出する曲線で形成することにより、高密度部13が着用者の体液排出部Hの形状にフィットしやすくなり、装着性の向上や体液の吸収効率の向上が図れる。
【0058】
また、図8に示される形態例では、前側V字状コアエンボス溝11と後側V字状コアエンボス溝12とが前後方向に離隔する離隔部であって、前記前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12の両側縁を通る前後方向線L、Lで挟まれた範囲内に、前後端縁の両側部がそれぞれ前側V字状コアエンボス溝11及び後側V字状コアエンボス溝12に接続するとともに、両側縁が幅方向内側に膨出する曲線からなり、前後端縁が幅方向に延びる直線からなる平面形状で形成されている。前記高密度部13をこのような平面形状で形成することにより、高密度部13に吸収された体液が高密度部13より幅方向外側に拡散するのが抑えられるとともに、高密度部13の両側縁に達した体液が曲線状の両側縁に沿って前後端部に向けて拡散した後、この前後端縁の両側部に接続するコアエンボス溝10に沿って更に前後方向に拡散するため、吸収体4の両側部からの体液の漏れがより確実に防止できる。
【0059】
前記高密度部13は、全面に亘ってほぼ均一に高密度化した領域としてもよいし、図9及び図10に示されるように、高密度部13が形成された領域内に、前記高密度部より密度が低い低密度部14が形成されるようにしてもよい。前記低密度部14の密度は、前記高密度部13より低い密度であれば、前記コアエンボス溝10を除く部分の吸収体とほぼ同じ密度であってもよいし、これより高い密度であっても構わない。前記低密度部14を設けることにより、この低密度部14を通じて体液が吸収体4に吸収されやすくなる。前記低密度部14は、前記高密度部13より肌側に膨出しているのが好ましく、図10に示されるように、高密度部13が他の領域の肌側面より非肌側に凹んで形成される場合、他の領域の肌側面とほぼ同じ高さとなるように形成するのが好ましい。また、前記低密度部14の平面形状は、図9に示されるように、幅方向に延びる線状に形成するのが好ましく、これを1本又は前後方向に離隔して複数本形成するのがよい。また、図9(B)に示されるように、幅方向に分断した間欠線で形成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、7…サイドシート、10…コアエンボス溝、11…前側V字状コアエンボス溝、12…後側V字状コアエンボス溝、13…高密度部、14…低密度部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10