(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電気/電子装置及び電流センサ
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20240708BHJP
G01R 15/20 20060101ALI20240708BHJP
H05K 7/06 20060101ALI20240708BHJP
H05K 9/00 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
H05K7/00 T
G01R15/20 A
G01R15/20 B
G01R15/20 Z
H05K7/06 C
H05K9/00 Q
(21)【出願番号】P 2021012609
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】安土 隆史
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-031188(JP,U)
【文献】実開昭63-155684(JP,U)
【文献】実開昭60-146387(JP,U)
【文献】実開昭59-063483(JP,U)
【文献】実開昭62-044491(JP,U)
【文献】国際公開第2018/047491(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0174623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H05K 7/06
H05K 9/00
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気/電子部品が搭載された回路基板と、
有底筒状に形成され、前記回路基板が底壁と対面するように開口から収容されるハウジングと、
可撓性を有した帯状のケーブルであって、一端が前記回路基板に接続されるとともに他端側が前記開口から前記ハウジングの周壁を乗り越えて外側へと前記周壁の軸方向に引き出された後に周方向へ向かうように折り畳まれ、所定の引出し位置まで前記周壁の外面に沿って配策され、更に前記引出し位置で前記外面から離れる方向へと引き出される可撓性ケーブルと、
前記ハウジングの前記開口の一部を覆うように配置される天板部、前記周壁の前記外面との間に前記可撓性ケーブルの一部を挟むように前記天板部の縁から前記軸方向に延出して前記周壁に係止するロック部、及び、当該ロック部よりも前記引出し位置に近い位置で前記縁から前記軸方向に延出して前記周壁の前記外面との間に前記可撓性ケーブルの他の一部を挟む挟み部、を有するケーブルクリップと、
を備えたことを特徴とする電気/電子装置。
【請求項2】
前記ハウジングが、前記周壁において前記ケーブルクリップの前記挟み部との間に前記可撓性ケーブルの前記他の一部を挟む周壁部分の、前記開口とは反対側の端部の外面から突出形成され、前記挟み部における前記天板部とは反対側の端部が差し込まれるスリットが設けられた受入れ部を有していることを特徴とする請求項1に記載の電気/電子装置。
【請求項3】
前記ケーブルクリップの前記天板部が、前記ハウジングの前記開口において前記可撓性ケーブルが外側へと引き出される部分を覆うように配置され、
前記ケーブルクリップの前記ロック部が、前記可撓性ケーブルにおいて前記軸方向から前記周方向へと折り畳まれた部分を前記周壁の前記外面との間に挟むことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気/電子装置。
【請求項4】
前記ハウジングの前記周壁において前記ケーブルクリップの前記ロック部との間に前記可撓性ケーブルの前記一部を挟む周壁部分の前記開口とは反対側の端部が、前記ハウジングの前記底壁の縁から前記軸方向に突出したリブ壁となっており、
前記ケーブルクリップの前記ロック部が、前記天板部とは反対側の端部に前記リブ壁を乗り越えて係止するロック爪を有していることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の電気/電子装置。
【請求項5】
前記ケーブルクリップは、前記ロック爪が前記リブ壁を乗り越えるのに可能な程度に前記ロック部を撓ませるのに十分な柔軟性を有する樹脂で一体成形されたものであることを特徴とする請求項4に記載の電気/電子装置。
【請求項6】
前記ケーブルクリップが、前記ロック部との間に前記可撓性ケーブルの前記一部、及び前記ハウジングの前記周壁を挟むように前記天板部から前記ハウジングの内側へと前記軸方向に延出したクリップリブ壁を有していることを特徴とする請求項1~5のうち何れか一項に記載の電気/電子装置。
【請求項7】
前記ハウジングの前記周壁が、第1板壁部分と、当該第1板壁部分において前記周方向と交差する測縁に連続するとともに前記第1板壁部分の延在方向と交差して外側に凸の角部を形成するように延在する第2板壁部分と、を有し、
前記可撓性ケーブルが、前記周方向について前記第1板壁部分から前記第2板壁部分へと配策され、
前記ケーブルクリップは、前記天板部が前記ハウジングの前記開口における前記角部に対応した部分を覆うように配置され、前記ロック部が帯板状に形成されて前記第1板壁部分の外面との間に前記可撓性ケーブルの前記一部を挟んで当該第1板壁部分に係止し、前記挟み部が帯板状に形成されて前記第2板壁部分の外面との間に前記可撓性ケーブルの前記他の一部を挟むものであることを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載の電気/電子装置。
【請求項8】
車両における電流の測定対象に接続されるバスバと、
前記バスバに流される前記測定対象の電流を検出する電流検出素子が、前記電気/電子部品として前記回路基板に搭載された請求項1~7のうち何れか一項に記載の電気/電子装置と、を備えたことを特徴とする電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板がハウジングに収容された電気/電子装置と、そのような電気/電子装置を備えて車両における測定対象の電流を検出する電流センサと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板がハウジングに収容された電気/電子装置が種々の用途で広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の電気/電子装置は、車両用の電流センサを構成している。この電気/電子装置は、電流検出素子が搭載された回路基板がハウジングに収容されたものである。そして、車両における測定対象に接続されるバスバと組み合わされ、バスバに流される測定対象の電流を電流検出素子で検出する電流センサを構成している。この電流センサにおける電気/電子装置では、電流検出素子での検出結果が、ハウジングと一体形成されたコネクタと、このコネクタに嵌合する相手方コネクタと、相手方コネクタから延出する電線と、を介して外部機器等に出力される。
【0003】
ところで、近年では、様々な機器において、柔軟な樹脂フィルムをベースに使用した可撓性のプリント基板であるFPC(Flexible Printed Circuits)や可撓性のケーブルであるFFC(Flexible Flat Cable)が使われている。車両搭載機器においてもこのような可撓性部材が広く利用されている。このため、上述の電流センサにおける電流検出素子での検出結果のような、電気/電子装置における電気信号の出力先が、外部機器におけるFPCやFFCとなる場合がある。この場合、電気信号を出力するための電線をFPCやFFC等の可撓性部材に接続する必要が生じるが、このような接続は困難であることが多い。
【0004】
そこで、電気信号の発生元の回路基板に、FPCやFFCで形成された帯状の可撓性ケーブルの一端を接続して他端側をハウジングから引き出すことで、電気信号の出力に上記の可撓性ケーブルを利用することが考えられる。一般的に、FPC同士の接続、FFC同士の接続、あるいはFPCとFFCとの接続は、電線とこれらの可撓性部材との接続に比べて容易である。このため、回路基板の電気信号の出力に可撓性ケーブルを利用する上記の構成によれば、出力先が外部機器における可撓性部材である場合に、当該可撓性部材に回路基板からの可撓性ケーブルを容易に接続して電気信号を伝えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電気/電子装置における電気信号の出力に可撓性ケーブルを用いる上記の構成では、例えば当該可撓性ケーブルの出力端を外部機器側に接続する際等に、可撓性ケーブルが引っ張られることがある。この場合、可撓性ケーブルにおける回路基板との接続部に引っ張り力が加わることとなるが、このような力が大き過ぎると、回路基板との接続部に過剰なストレスが掛かり導通不良等の原因となる可能性がある。
【0007】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、電気信号の出力に可撓性ケーブルを用いるとともに回路基板との接続部に掛かるストレスを抑制することができる電気/電子装置を提供することを目的とする。また、そのような電気/電子装置を備えて測定対象の電流を検出する電流センサを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、電気/電子装置は、電気/電子部品が搭載された回路基板と、有底筒状に形成され、前記回路基板が底壁と対面するように開口から収容されるハウジングと、可撓性を有した帯状のケーブルであって、一端が前記回路基板に接続されるとともに他端側が前記開口から前記ハウジングの周壁を乗り越えて外側へと前記周壁の軸方向に引き出された後に周方向へ向かうように折り畳まれ、所定の引出し位置まで前記周壁の外面に沿って配策され、更に前記引出し位置で前記外面から離れる方向へと引き出される可撓性ケーブルと、前記ハウジングの前記開口の一部を覆うように配置される天板部、前記周壁の前記外面との間に前記可撓性ケーブルの一部を挟むように前記天板部の縁から前記軸方向に延出して前記周壁に係止するロック部、及び、当該ロック部よりも前記引出し位置に近い位置で前記縁から前記軸方向に延出して前記周壁の前記外面との間に前記可撓性ケーブルの他の一部を挟む挟み部、を有するケーブルクリップと、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、電流センサは、車両における電流の測定対象に接続されるバスバと、前記バスバに流される前記測定対象の電流を検出する電流検出素子が、前記電気/電子部品として前記回路基板に搭載された上述の電気/電子装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の可撓性ケーブルの他端側が引っ張られるときには、ハウジングの周壁に沿って配策された可撓性ケーブルを周壁から引き離す力が可撓性ケーブルに加わる。このとき、上記の電気/電子装置及び電流センサでは、回路基板に一端が接続された可撓性ケーブルは、ハウジングから引き出された後、ケーブルクリップのロック部とハウジングの周壁との間、及び挟み部と周壁との間、という2箇所で挟まれて配策されている。従って、可撓性ケーブルを周壁から引き離す力は、これらの2箇所においてケーブルクリップのロック部及び挟み部によって受け止められ、可撓性ケーブルと回路基板との接続部に直に及ぶ力は弱められる。つまり、可撓性ケーブルと回路基板との接続部に掛かるストレスが抑制されることとなる。このように、上記の電気/電子装置及び電流センサによれば、電気信号の出力に可撓性ケーブルを用いるとともに回路基板との接続部に掛かるストレスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態にかかる電流センサを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されている電流センサの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示されている電流センサの、
図1中のV11-V11線に沿った断面図である。
【
図4】
図1及び
図2に示されているケーブルクリップの拡大斜視図である。
【
図5】ケーブルクリップのハウジングへの取付け手順を示す模式図である。
【
図6】取付け途中のケーブルクリップ及びハウジングの、
図5中のV12-V12線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電気/電子装置及び電流センサの一実施形態について説明する。
【0013】
図1は、一実施形態にかかる電流センサを示す斜視図であり、
図2は、
図1に示されている電流センサの分解斜視図である。また、
図3は、
図1に示されている電流センサの、
図1中のV11-V11線に沿った断面図である。
【0014】
図1~
図3に示されている電流センサ1は、車両における測定対象の電流を検出するセンサである。測定対象としては、ハイボルテージの車載バッテリや高圧ジャンクションボックスにおける通電部分等が挙げられる。電流センサ1は、このような測定対象に接続されて用いられるものであり、バスバ11、回路基板12、ハウジング13、可撓性ケーブル14、ケーブルクリップ15、ポッティング材16、及びシールド材17、を備えている。また、本実施形態では、バスバ11及びシールド材17とともに電流センサ1を構成する電気/電子装置2が、回路基板12、ハウジング13、可撓性ケーブル14、ケーブルクリップ15、及びポッティング材16によって構築されている。
【0015】
バスバ11は、長方形板状に形成された金属板であり、車両における電流の測定対象に接続される。バスバ11には、この測定対象の電流が検出のために流される。
【0016】
回路基板12は、長方形板状のプリント配線基板であり、その表裏両面に電流検出素子121が電気/電子部品として搭載される。
【0017】
ハウジング13は、樹脂で概ね有底四角筒状に形成された部材である。バスバ11が、底壁131の外側に当該底壁131に沿って固定されるとともに、回路基板12が、バスバ11との間に底壁131を挟んで当該底壁131と対面するように開口132から内部に収容される。
【0018】
可撓性ケーブル14は、FPCやFFC等といった可撓性を有した帯状のケーブルである。
図2に示されているように、可撓性ケーブル14は、一端が回路基板12の裏面にハンダ接続されるとともに他端側がハウジング13の開口132からハウジング13の周壁133を乗り越えて外側へと周壁133の軸方向D11に引き出される。その後、可撓性ケーブル14は、周方向D12へ向かう折畳み方向D13に折り畳まれ、所定の引出し位置P11までハウジング13の周壁133の外面に沿って配策される。更に、可撓性ケーブル14は、この引出し位置P11において略90°に折り曲げられ、周壁133の外面から離れる引出し方向D14へと引き出される。
【0019】
ケーブルクリップ15は、柔軟性を有する樹脂で形成され、ハウジング13に取り付けられて周壁133との間に可撓性ケーブル14を挟んでクリップする部材である。このケーブルクリップ15については後で詳述する。
【0020】
ポッティング材16は、回路基板12に搭載された電流検出素子121や、回路基板12上の導体パターン等の絶縁、及びこれらの部位への外部環境からの水等の液体の浸入等を抑制するためにハウジング13の開口132から充填される樹脂材である。
【0021】
シールド材17は、バスバ11における電流検出素子121との対面部分を電磁的に保護する金属部材で、
図3の断面図に示されているように、バスバ11との間に間隔を開けてハウジング13の底壁131側に固定される。
【0022】
以上に説明した概略構成を有する電流センサ1では、バスバ11が車両における電流の測定対象に接続され、このバスバ11に流される測定対象の電流が電流検出素子121で検出される。その検出結果は、可撓性ケーブル14によって外部機器へと出力される。以下、この電流センサ1において可撓性ケーブル14を保持するためのケーブルクリップ15について、その構造と、ハウジング13への取付け手順について
図4~
図6を参照して説明する。
【0023】
図4は、
図1及び
図2に示されているケーブルクリップの拡大斜視図であり、
図5は、ケーブルクリップのハウジングへの取付け手順を示す模式図である。また、
図6は、取付け途中のケーブルクリップ及びハウジングの、
図5中のV12-V12線に沿った断面図である。尚、
図5及び
図6では、図示の簡略化のために、バスバ11、ポッティング材16、及びシールド材17の図示が割愛されている。
【0024】
まず、
図4に示されているように、ケーブルクリップ15は、天板部151、ロック部152、挟み部153、及びクリップリブ壁154を有している。天板部151は、ハウジング13の開口132の一部を覆うように配置される部位である。ロック部152は、ハウジング13の周壁133の外面との間に可撓性ケーブル14の一部を挟むように天板部151の縁151aから周壁133の軸方向D11に延出して当該周壁133に係止する部位である。このロック部152は、帯板状に形成され、天板部151とは反対側の端部に周壁133に係止するロック爪152aを有している。挟み部153は、ロック部152よりも引出し位置P11に近い位置で天板部151の縁151aから軸方向D11に延出してハウジング13の周壁133の外面との間に可撓性ケーブル14の他の一部を挟む部位である。この挟み部153は、周方向D12についてロック部152と略90°に交差する方向に延在する帯板状の部位となっている。また、クリップリブ壁154は、ロック部152との間に可撓性ケーブル14の一部、及びハウジング13の周壁133を挟むように天板部151からハウジング13の内側へと軸方向D11に延出する部位である。
【0025】
このようなケーブルクリップ15が、
図5及び
図6に示されている手順を経てハウジング13に取り付けられる。
【0026】
まず、
図5のステップS11に示されているように、ケーブルクリップ15の取付け前の段階では、ハウジング13の開口132の周壁133を乗り越えて軸方向D11に引き出された可撓性ケーブル14が次のような状態にある。即ち、可撓性ケーブル14は、軸方向D11から周方向D12へ向かうように折り畳まれ、引出し位置P11まで周壁133の外面に沿って配策されている。
【0027】
ここで、本実施形態では、略有底四角筒状のハウジング13の周壁133が、外側に凸の角部13aを形成するように互いに略90°で交差した第1板壁部分133a及び第2板壁部分133bを有している。第2板壁部分133bは、第1板壁部分133aにおいて周方向D12と交差する測縁に連続するとともに第1板壁部分133aの延在方向と交差して外側に凸の角部13aを形成するように延在する板壁部位である。可撓性ケーブル14は、第1板壁部分133aの外面上で折り畳まれ、周方向D12について第1板壁部分133aから第2板壁部分133bへと配策されている。
【0028】
可撓性ケーブル14がこのように配策されたハウジング13に対し、
図5及び
図6のステップS12及びステップS13に示されているようにケーブルクリップ15が取り付けられる。まず、ケーブルクリップ15は、天板部151が、ハウジング13の開口132において、可撓性ケーブル14が第1板壁部分133aを乗り越えて外側へと引き出される上記の角部13aに対応した部分を覆うように配置されて取り付けられる。このとき、ロック部152は周壁133における第1板壁部分133aの外面との間に、可撓性ケーブル14において軸方向D11から周方向D12へと折り畳まれた折畳み部分14aを挟んで第1板壁部分133aに係止する。
【0029】
ここで、ロック部152との間に可撓性ケーブル14の折畳み部14aを挟む第1板壁部分133aの開口132とは反対側の端部が、
図6に示されているように、底壁131の縁から軸方向D11に突出したリブ壁133a-1となっている。ロック部152の端部のロック爪152aが、第1板壁部分133aにおけるリブ壁133a-1を乗り越えて係止するように構成されている。また、本実施形態では、ケーブルクリップ15は、ロック爪152aがリブ壁133a-1を乗り越えるのに可能な程度にロック部152を撓ませるのに十分な柔軟性を有する樹脂で一体成形されたものとなっている。
【0030】
ステップS12では、クリップリブ壁154が第1板壁部分133aの内面側に差し入れられ、ロック部152のロック爪152aが第1板壁部分133aのリブ壁133a-1の方へ向かうようにケーブルクリップ15が押し込まれる。こときには、ロック部152が外側に撓みつつロック爪152aが第1板壁部分133aの外面を滑ってリブ壁133a-1の方へ向かう。やがて、ステップS13では、ロック爪152aがリブ壁133a-1を乗り越え、ロック部152の撓みが解消されてロック爪152aがリブ壁133a-1に係止する。そして、可撓性ケーブル14の折畳み部分14aがロック部152と第1板壁部分133aとの間に挟まれる。
【0031】
また、本実施形態では、ケーブルクリップ15の挟み部153との間に可撓性ケーブル14の折畳み部分14aとは別の他の一部14bを挟む第2板壁部分133bには、次のような挟み部153の受入れ部133b-1が設けられている。受入れ部133b-1は、第2板壁部分133bの、開口132とは反対側の端部の外面から突出形成され、挟み部153における天板部151とは反対側の端部が差し込まれるスリット133b-1aが設けられている。
【0032】
ステップS12においてロック爪152aがリブ壁133a-1を乗り越える前の段階では、挟み部153が傾いた状態で、その先端部が受入れ部133b-1のスリット133b-1aに差し入れられる。ステップS13に至ってロック爪152aがリブ壁133a-1に係止すると、挟み部153が軸方向D11に沿った姿勢となり先端部が受入れ部133b-1のスリット133b-1aに収まる。可撓性ケーブル14における上記の他の一部14bは、この軸方向D11に沿った姿勢の挟み部153と第2板壁部分133bとで挟まれる。このステップS13を以てケーブルクリップ15のハウジング13への取付けが完了し、電流センサ1における電気/電子装置2が完成する。
【0033】
以上に説明した実施形態の電気/電子装置2及び電流センサ1によれば次のような効果を奏することができる。即ち、引出し位置P11から引き出された可撓性ケーブル14が引っ張られるときには、ハウジング13の周壁133に沿って配策された可撓性ケーブル14を周壁133から引き離す力が可撓性ケーブル14に加わる。このとき、本実施形態によれば、回路基板12に一端が接続された可撓性ケーブル14は、ハウジング13から引き出された後、次の2箇所で挟まれた状態で配策されている。可撓性ケーブル14は、ケーブルクリップ15のロック部152とハウジング13の周壁133との間、及び挟み部153と周壁133との間、という2箇所で挟まれた状態で配策されている。従って、可撓性ケーブル14を周壁133から引き離す力は、これらの2箇所においてケーブルクリップ15のロック部152及び挟み部153によって受け止められ、可撓性ケーブル14と回路基板12との接続部に直に及ぶ力は弱められる。つまり、可撓性ケーブル14と回路基板12との接続部に掛かるストレスが抑制されることとなる。このように、本実施形態によれば、電気信号の出力に可撓性ケーブル14を用いるとともに回路基板12との接続部に掛かるストレスを抑制することができる。
【0034】
ここで、本実施形態では、ハウジング13の開口132からポッティング材16が充填されており、外部環境からの電流検出素子121の絶縁や水等の液体の浸入抑制が図られている。本実施形態によれば、可撓性ケーブル14が引っ張られたときに回路基板12との接続部に掛かるストレスが抑制されることから、当該接続部における可撓性ケーブル14の動きも抑制される。このような抑制作用により、可撓性ケーブル14が引っ張られたときに回路基板12との接続部において可撓性ケーブル14が過剰に動くことでポッティング材16との間に間隙が生じること等が抑えられる。そして、このような間隙の発生抑制により、絶縁の劣化や液体の浸入等を抑制することもできる。
【0035】
また、本実施形態では、ハウジング13が、ケーブルクリップ15の挟み部153との間に可撓性ケーブル14を挟む第2板壁部分133bの端部に、挟み部153の端部が差し込まれるスリット133b-1aが設けられた受入れ部133b-1を有している。この構成によれば、挟み部153の端部が受入れ部133b-1のスリット133b-1aに差し込まれるので、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力を挟み部153が受け止める受止め強度が向上する。この挟み部153における受止め強度の向上により、回路基板12との接続部に掛かるストレスを一層抑制することができる。また、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの挟み部153の過度な変形が抑えられるので、可撓性ケーブル14が引っ張られたときにケーブルクリップ15がハウジング13から外れてしまう等といった事態を効果的に抑えることもできる。
【0036】
また、本実施形態では、ケーブルクリップ15の天板部151が、ハウジング13の開口132において可撓性ケーブル14が外側へと引き出される部分を覆うように配置される。そして、ケーブルクリップ15のロック部152が、可撓性ケーブル14の折畳み部分14aを第1板壁部分133aとの間に挟む。この構成によれば、ケーブルクリップ15におけるロック部152が、可撓性ケーブル14がハウジング13の周壁133を乗り越えて折り畳まれるという、引出し位置P11に近い挟み部153から遠い位置に設けられる。このように、上記の構成では、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力をまず受け止める挟み部153からロック部152が離されている。挟み部153とロック部152とのこのような位置関係により、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力でロック部152での係止が解除されてケーブルクリップ15がハウジング13から外れてしまう等といった事態を効果的に抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態では、ケーブルクリップ15のロック部152との間に可撓性ケーブル14の折畳み部分14aを挟む第1板壁部分133aの端部がリブ壁133a-1となっている。そして、ロック部152の端部に、第1板壁部分133aのリブ壁133a-1を乗り越えて係止するロック爪152aが設けられている。この構成によれば、リブ壁133a-1にロック爪152aを係止させることで、ロック部152、つまりはケーブルクリップ15をハウジング13に強固に固定することができる。
【0038】
また、本実施形態では、ケーブルクリップ15は、ロック爪152aがリブ壁133a-1を乗り越えるのに可能な程度にロック部152を撓ませるのに十分な柔軟性を有する樹脂で一体成形されている。この構成によれば、ロック部152を撓ませることで、ケーブルクリップ15をハウジング13に容易に取り付けることができる。
【0039】
また、本実施形態では、ケーブルクリップ15が、ロック部152との間に可撓性ケーブル14とハウジング13の周壁133を挟むクリップリブ壁154を有している。この構成によれば、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力が、ロック部152とクリップリブ壁154とで協働して受け止められるので、回路基板12との接続部に掛かるストレスを一層抑制することができる。また、ハウジング13に対するケーブルクリップ15の取付け強度も向上するので、ケーブルクリップ15がハウジング13から一層外れ難くなっている。
【0040】
また、本実施形態では、ハウジング13の周壁133が、外側に凸の角部13aを形成する第1板壁部分133aと第2板壁部分133bとを有している。また、可撓性ケーブル14が、周方向D12について第1板壁部分133aから第2板壁部分133bへと配策される。ケーブルクリップ15は、天板部151がハウジング13の開口132における角部13aに対応した部分を覆うように配置される。ロック部152が帯板状に形成されて第1板壁部分133aの外面との間に可撓性ケーブル14を挟んで当該第1板壁部分133aに係止し、挟み部153が帯板状に形成されて第2板壁部分133bの外面との間に可撓性ケーブル14を挟む。この構成によれば、まず、帯板状のロック部152と第1板壁部分133aとの間、帯板状の挟み部153と第2板壁部分133bとの間、という各々面同士の間に可撓性ケーブル14が挟まれる。可撓性ケーブル14がこのように挟まれることで、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力が面で受け止められる。このように面で受け止められることで、ロック部152及び挟み部153における力の受止め強度を向上させることができる。また、第1板壁部分133aと第2板壁部分133bとが互いに交差して延在していることから、互いに異なる方向に掛かる力をロック部152及び挟み部153によって効果的に受け止めることができる。
【0041】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお電気/電子装置及び電流センサの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0042】
例えば、上述の実施形態では、電気/電子装置の一例として、電流センサ1の一部を構成する電気/電子装置2が例示されている。しかしながら、電気/電子装置はこれに限るものではなく、その具体的な適用態様を問うものではない。
【0043】
また、上述の実施形態では、電気/電子装置及び電流センサの一例として、ハウジング13の内側にポッティング材16が充填された電気/電子装置2及び電流センサ1が例示されている。しかしながら、電気/電子装置及び電流センサは、これに限るものではなく、ポッティング材の充填等は行わず、例えばキャップでハウジングの開口を塞いだもの等であってもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、ハウジングの一例として、ケーブルクリップ15の挟み部153の受入れ部133b-1を有するハウジング13が例示されている。しかしながら、ハウジングは、これに限るものではなく、受入れ部が設けられずケーブルクリップの挟み部の端部がフリーな状態となるものであってもよい。ただし、ハウジング13に受入れ部133b-1を設けることで、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力に対する挟み部153の受止め強度の向上や、ケーブルクリップ15の外れ抑制を図ることができる点は上述した通りである。
【0045】
また、上述の実施形態では、ケーブルクリップの一例として、可撓性ケーブル14が外側へと引き出される部分を天板部151が覆うように配置され、ロック部152で可撓性ケーブル14の折畳み部分14aを挟むケーブルクリップ15が例示されている。しかしながら、ケーブルクリップは、これに限るものではなく、可撓性ケーブルの折畳み部分とは別の部分をロック部で挟むもの等であってもよい。ただし、可撓性ケーブル14の折畳み部分14aという挟み部153から遠い位置でロック部152が可撓性ケーブル14を挟むことで、ケーブルクリップ15の外れ抑制を図ることができる点は上述した通りである。
【0046】
また、上述の実施形態では、ケーブルクリップの一例として、ハウジング13の周壁133における第1板壁部分133aのリブ壁133a-1に係止するロック爪152aがロック部152に設けられたケーブルクリップ15が例示されている。しかしながら、ケーブルクリップは、これに限るものではなく、ロック部における具体的な係止構造を問うものではない。ただし、リブ壁133a-1にロック爪152aを係止させる係止構造によれば、ケーブルクリップ15をハウジング13に強固に固定することができる点は上述した通りである。
【0047】
また、上述の実施形態では、ケーブルクリップの一例として、十分に柔軟な樹脂で一体成形されたケーブルクリップ15が例示されている。しかしながら、ケーブルクリップは、これに限るものではなく、例えば各部が硬質樹脂で別体に形成され、ハウジングに取り付けられる際に各部が組み合わされるもの等であってもよい。ただし、ケーブルクリップ15が十分に柔軟な樹脂で一体成形されることで、ロック部152を撓ませてケーブルクリップ15をハウジング13に容易に取り付けることができる点は上述した通りである。
【0048】
また、上述の実施形態では、ケーブルクリップの一例として、ロック部152との間に可撓性ケーブル14とハウジング13の周壁133を挟むクリップリブ壁154を有するケーブルクリップ15が例示されている。しかしながら、ケーブルクリップは、これに限るものではなく、クリップリブ壁を設けないこととしてもよい。ただし、ケーブルクリップ15にクリップリブ壁154を設けることで、可撓性ケーブル14と回路基板12との接続部に掛かるストレスを一層抑制でき、また、ケーブルクリップ15をハウジング13から一層外れ難くできる点は上述した通りである。
【0049】
また、上述の実施形態では、ハウジングの一例として、角部13aを形成する第1板壁部分133aと第2板壁部分133bとを有し、略有底四角筒状に形成されたハウジング13が例示されている。そして、本実施形態では、ケーブルクリップの一例として、帯板状のロック部152と第1板壁部分133aとで可撓性ケーブル14を挟み、帯板状の挟み部153と第2板壁部分133bとで可撓性ケーブル14を挟むケーブルクリップ15が例示されている。しかしながら、ハウジング及びケーブルクリップはこれに限るものではない。ハウジングは、有底筒状であれば、有底円筒状等といった有底四角筒状以外の形状に形成されたものであってもよい。そして、ケーブルクリップのロック部や挟み部が、ハウジングの周壁におけるどのような部分との間に可撓性ケーブルを挟むかは任意に設定し得る。ただし、上記のように可撓性ケーブル14を挟むことで、可撓性ケーブル14が引っ張られたときの力の受止め強度を向上させることができ、互いに異なる方向に掛かる力を効果的に受け止めることができる点は上述した通りである。
【符号の説明】
【0050】
1 電流センサ
2 電気/電子装置
11 バスバ
12 回路基板
13 ハウジング
13a 角部
14 可撓性ケーブル
14a 折畳み部分
14b 他の一部
15 ケーブルクリップ
16 ポッティング材
17 シールド材
121 電流検出素子
131 底壁
132 開口
133 周壁
133a 第1板壁部分
133a-1 リブ壁
133b 第2板壁部分
133b-1 受入れ部
133b-1a スリット
151 天板部
151a 縁
152 ロック部
152a ロック爪
153 挟み部
154 クリップリブ壁
D11 軸方向
D12 周方向
D13 折畳み方向
D14 引出し方向
P11 引出し位置