(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】部品載置ユニット
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240708BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
H05K7/20 H
(21)【出願番号】P 2021022553
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】荒井 將崇
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-111425(JP,A)
【文献】特開2000-077585(JP,A)
【文献】特開2005-136211(JP,A)
【文献】特開2005-292265(JP,A)
【文献】特開2008-028878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する部品載置ユニットであって、
収容部を有する基台と、
前記基台に組付けられ、前記所定位置において部品を保持すると共に移動させ、前記基板に部品を載置する動作を行うヘッドユニットと、
前記収容部に収容され、前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部を含む発熱体と、
前記発熱体と熱的に接続される第1面を有するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子から供給される電力により駆動され、前記収容部内の熱を前記基台の外部に放出する気流を発生するファンと、
を備える部品載置ユニット
において、
前記ペルチェ素子は、前記発熱体よりも所定温度だけ低温の冷熱体と熱的に接続される第2面を有する、部品載置ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の部品載置ユニットにおいて、
前記冷熱体が保有する冷熱を前記第2面へ伝達する熱伝導部材をさらに備える、部品載置ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の部品載置ユニットにおいて、
前記発熱体は、熱を放散する発熱面を備え、
前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記発熱面に直接取り付けられるよう配置されている、部品載置ユニット。
【請求項4】
所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する部品載置ユニットであって、
収容部を有する基台と、
前記基台に組付けられ、前記所定位置において部品を保持すると共に移動させ、前記基板に部品を載置する動作を行うヘッドユニットと、
前記収容部に収容され、前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部を含む発熱体と、
前記発熱体と熱的に接続される第1面を有するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子から供給される電力により駆動され、前記収容部内の熱を前記基台の外部に放出する気流を発生するファンと、を備える部品載置ユニットにおいて、
前記発熱体は、熱を放散する発熱面を備え、
前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記発熱面に直接取り付けられるよう配置され、
前記発熱体として、鉄心が露出したトランスを含み、
前記発熱面が前記鉄心の表面である、部品載置ユニット。
【請求項5】
請求項1または2に記載の部品載置ユニットにおいて、
前記発熱体が発生する熱を輸送する輸送手段をさらに備え、
前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記輸送手段によって輸送された熱を受熱する位置に配置されている、部品載置ユニット。
【請求項6】
所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する部品載置ユニットであって、
収容部を有する基台と、
前記基台に組付けられ、前記所定位置において部品を保持すると共に移動させ、前記基板に部品を載置する動作を行うヘッドユニットと、
前記収容部に収容され、前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部を含む発熱体と、
前記発熱体と熱的に接続される第1面を有するペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子から供給される電力により駆動され、前記収容部内の熱を前記基台の外部に放出する気流を発生するファンと、を備える部品載置ユニットにおいて、
前記制御部は、発熱部が実装された基板と、この基板を収納する収納ボックスとを含み、
前記
収納ボックスは、外方に向けて開口する開口部と、前記発熱部が発生する熱を含む前記
収納ボックス内の空気を、前記開口部を通して排出する輸送気流を生成する気流発生装置と、を備え、
前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記開口部の近傍に位置するように配置されている、部品載置ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載の部品載置ユニットにおいて、
前記輸送手段は、前記発熱体が保有する熱を前記第1面へ伝達する熱伝導部材を含む、部品載置ユニット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の部品載置ユニットにおいて、
前記収容部は、前記制御部を収容する第1収容部と、トランスを収容する第2収容部とを含み、
前記ファンは、前記第1収容部内の熱を外部に放出する気流を発生する第1ファンと、前記第2収容部内の熱を外部に放出する気流を発生する第2ファンとを含む、部品載置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する部品載置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子部品を基板に実装する部品実装装置(部品載置ユニットの一例)は、部品の吸着ノズルを有する実装ヘッド等を含むヘッドユニットと、このヘッドユニットの動作を制御するコントローラと、商用電圧を装置動作用の電圧に変圧する電源トランスを含む電源ユニットとを備える。前記コントローラや前記電源ユニットは、動作時に発熱する。このため、部品実装装置には、機内の熱を機外へ放散するための複数の冷却ファンが備えられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一般に、上記冷却ファンに対しては、機内温度に応じたON-OFF制御や、回転速度制御は行われない。多くの部品実装装置では、装置電源がONとされたことに連動して冷却ファンもONとなり、常時回転する状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置電源がON状態のとき常時冷却ファンを動作させた場合、消費電力が大きくなる、騒音が大きくなるといった問題が生じる。近年の部品実装装置では、高性能化に伴って発熱要素が多くなり、冷却ファンの個数も増加傾向にある。一つの冷却ファンの消費電力が数W程度であるとしても、ファン個数が増えると消費電力が大きくなる。また、冷却ファンは不可避的に回転騒音を発生するため、ファン個数の増加に伴い騒音も大きくなる。この騒音は、作業者のストレス要因になり得る。さらに、冷却ファンは、装置内の具備された直流電源にて駆動される。多数の冷却ファンの突入電力を確保するには、前記直流電源の大容量化が必要となる問題も生じる。
【0006】
本発明は、装置冷却用のファンを備えた部品載置ユニットにおいて、消費電力及び騒音を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る部品載置ユニットは、所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する部品載置ユニットであって、収容部を有する基台と、前記基台に組付けられ、前記所定位置において部品を保持すると共に移動させ、前記基板に部品を載置する動作を行うヘッドユニットと、前記収容部に収容され、前記ヘッドユニットの動作を制御する制御部を含む発熱体と、前記発熱体と熱的に接続される第1面を有するペルチェ素子と、前記ペルチェ素子から供給される電力により駆動され、前記収容部内の熱を前記基台の外部に放出する気流を発生するファンと、を備えることを特徴とする。
【0008】
この部品載置ユニットによれば、自身のユニットに含まれる発熱体が発生する熱を利用してペルチェ素子が電力を生成し、その電力にてファンが駆動される。つまり、部品載置ユニットの排熱を回収し、その排熱エネルギーで電力を起こし、冷却用のファンを動作させる。従って、消費電力を低減させることができる。また、前記発熱体が相応に高温化しないと前記ペルチェ素子は十分な起電力を発生しないので、前記ファンも動作しない。すなわち、収容部内が低温であるときには前記ファンは通常の動作を行わないので、当該ファンの動作騒音を抑制することができる。さらに、部品載置ユニットの冷却に必要なファンの少なくとも一部を前記ペルチェ素子の起電力で駆動させることで、ファン駆動用の直流電源の容量を抑制することができる。このことは、部品載置ユニットの小型化や発熱量の低減に貢献する。
【0009】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記ペルチェ素子は、前記発熱体とは熱的に接続されない第2面を有することが望ましい。
【0010】
この部品載置ユニットによれば、ペルチェ素子の第1面と第2面との温度差を大きくすることができる。従って、前記ペルチェ素子が発生する起電力を大きくすることが可能となり、前記ファンによる冷却効率を高めることができる。
【0011】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記第2面に取り付けられるヒートシンクをさらに備えることが望ましい。
【0012】
この部品載置ユニットによれば、第2面の熱をヒートシンクにて積極的に放熱させることができる。従って、ペルチェ素子の第1面と第2面との温度差を大きし、発生する電力を大きくすることが可能となる。
【0013】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記ペルチェ素子は、前記発熱体よりも所定温度だけ低温の冷熱体と熱的に接続される第2面を有することが望ましい。この場合、前記冷熱体が保有する冷熱を前記第2面へ伝達する熱伝導部材をさらに備えることが望ましい。
【0014】
これらの構成によっても、ペルチェ素子の第1面と第2面との温度差を大きくすることができる。なお、前記冷熱体は、部品載置ユニットが備える筐体やフレームでも良いし、部品載置ユニット以外の他の冷熱部材であっても良い。
【0015】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記発熱体は、熱を放散する発熱面を備え、前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記発熱面に直接取り付けられるよう配置されていることが望ましい。
【0016】
この部品載置ユニットによれば、発熱体の発熱面からペルチェ素子の第1面に熱が直接的に授受される。従って、発熱体の発生熱を前記第1面へ効率的に伝熱させ、前記ペルチェ素子の発電効率を高めることができる。
【0017】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記発熱体として、鉄心が露出したトランスを含み、前記発熱面が前記鉄心の表面であることが望ましい。
【0018】
トランスの鉄心は高熱化し易い。このような鉄心に前記第1面を直接取り付けることにより、前記第1面を効率良く高温化させることができる。
【0019】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記発熱体が発生する熱を輸送する輸送手段をさらに備え、前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記輸送手段によって輸送された熱を受熱する位置に配置されている構成とすることができる。
【0020】
この部品載置ユニットによれば、輸送手段によって発熱体の発生熱をペルチェ素子の第1面に伝熱させることができる。このため、例えば前記発熱体から直接熱を取り出すことが困難な場合や、前記ペルチェ素子を前記発熱体の近傍に配置することが難しいような場合であっても、前記ペルチェ素子を動作させることができる。
【0021】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記制御部は、発熱部が実装された基板と、この基板を収納する収納ボックスとを含み、前記収容ボックスは、外方に向けて開口する開口部と、前記発熱部が発生する熱を含む前記収容ボックス内の空気を、前記開口部を通して排出する輸送気流を生成する気流発生装置と、を備え、前記ペルチェ素子は、前記第1面が前記開口部の近傍に位置するように配置されていることが望ましい。
【0022】
この部品載置ユニットによれば、制御部がボックス構造を備える場合において、前記収容ボックス内の熱を気流で移送し、収容ボックスの開口部近傍に配置されたペルチェ素子の第1面へ供給することができる。
【0023】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記輸送手段は、前記発熱体が保有する熱を前記第1面へ伝達する熱伝導部材を含むことが望ましい。この構成によれば、熱伝導部材を通して前記第1面へ熱を効率良く供給することができる。
【0024】
上記の部品載置ユニットにおいて、前記収容部は、前記制御部を収容する第1収容部と、トランスを収容する第2収容部とを含み、前記ファンは、前記第1収容部内の熱を外部に放出する気流を発生する第1ファンと、前記第2収容部内の熱を外部に放出する気流を発生する第2ファンとを含むことが望ましい。
【0025】
この部品載置ユニットによれば、制御部が発熱して第1収容部内が高温化したときに第1ファンを動作させて当該第1収容部を冷却し、また、トランスが発熱して第2収容部内が高温化したときに第2ファンを動作させて当該第2収容部を冷却するという運用が可能となる。このため、前記制御部又は前記トランスの一方が発熱して第1又は第2収容部が高温化したとき、他方の収容部にその熱が伝わり難くすることができる。従って、実際に発熱している収容部のファンだけを動作させれば足りることとなり、騒音を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装置冷却用のファンを備えた部品載置ユニットにおいて、消費電力及び騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の部品載置ユニットの一例である表面実装機の外観を示す側面図である。
【
図2】
図2は、表面実装機の概略構成を示す上面図である。
【
図3】
図3は、表面実装機の概略構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、ペルチェ素子を組み込んだ第1実施形態に係る表面実装機の概略断面図である。
【
図5】
図5(A)~(C)は、ペルチェ素子の発熱体への取り付け例を示す模式図である。
【
図6】
図6(A)は、
図6(B)のVIA-VIA線断面図であって、ペルチェ素子を組み込んだ第2実施形態に係る表面実装機の模式図、
図6(B)はベース部10の側面図である。
【
図7】
図7(A)及び(B)は、電源トランスへのペルチェ素子の取り付け例を示す模式図である。
【
図8】
図8(A)~(C)は、制御ボックスへのペルチェ素子の取り付け例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、ペルチェ素子を組み込んだ第3実施形態に係る表面実装機の模式図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る表面実装機の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態では、本発明に係る部品載置ユニットが、各種の電子部品を基板に実装する表面実装機に適用される例を示す。表面実装機に限らず、本発明の部品載置ユニットは、所定位置から部品を移動させ、当該部品を基板に載置する機構を備える各種装置に適用することができる。
【0029】
[表面実装機の全体構造]
図1は、表面実装機1(部品載置ユニット)の外観を示す側面図、
図2は、表面実装機1の概略構成を示す上面図、
図3は、表面実装機1の実装ユニット40部分の概略構成を示す側面図である。表面実装機1は、各種の電子部品を基板Pに実装してなる実装基板を生産する装置である。
図1~
図3おいて、XYZの方向表示が付されている。以下の説明において、X方向を基板Pの移動方向である左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向という場合がある。
【0030】
表面実装機1は、ベース部10(基台)と、このベース部10上に配置された実装ユニット40とを含む。ベース部10は、剛性を有するフレーム部材の組立体からなる。ベース部10の上面には、基板搬送部2及び部品供給部3が組付けられている。実装ユニット40は、複数本のヘッド4Hを有するヘッドユニット4と、ヘッドユニット4に固定された基板認識カメラ5とを含む。
【0031】
図1に示すように、ベース部10及び実装ユニット40の周囲は、表面実装機1のケーシングであるエンクロージャ1Aで覆われている。但し、エンクロージャ1Aの左右の側部には、基板搬送部2による基板Pの搬入・搬出のための開口が設けられている。エンクロージャ1Aの上部には、表面実装機1に関する各種の表示を行うモニタ12と、表面実装機1の状態を示す表示灯13が取り付けられている。
【0032】
基板搬送部2は、電子部品が実装される基板Pを搬送する。基板搬送部2は、ベース部10上において、基板Pを左右方向へ搬送する一対のコンベア21、22を有している。コンベア21、22は、基板Pを右側からエンクロージャ1Aの内側に搬入し、所定の作業位置(
図1に示す基板Pの位置)まで左方へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、電子部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア21、22は基板Pを左側へ搬送し、エンクロージャ1Aの外側へ搬出する。
【0033】
部品供給部3は、基板Pへ実装される電子部品を供給する。部品供給部3は、基板搬送部2の前後方向に各々配置されている。各部品供給部3は、左右方向に配列された複数のテープフィーダ31を備えている。各テープフィーダ31は、各種の電子部品を所定間隔で収容するテープが巻回されたリールを保持している。テープフィーダ31は、前記リールからテープを間欠的に繰り出し、フィーダ先端の部品供給位置に電子部品を供給する。
【0034】
ヘッドユニット4は、所定位置において部品を保持する共に移動させ、基板Pに当該部品を載置する動作を行う。ヘッドユニット4は、ベース部10の上方に位置し、前記部品供給位置においてテープフィーダ31から電子部品を取り出すと共に、前記作業位置において前記電子部品を基板Pの所定位置に実装する。
【0035】
図3に示すように、ベース部10の上面には、Y方向に延びる2つのY軸固定レール25が架設されている。表面実装機1においては、これら2つのY軸固定レール25にX方向に延びる支持ビーム23が支持され、その支持ビーム23にX軸固定レール24が固定された構造をしている。ヘッドユニット4は、支持ビーム23に固定されたX軸固定レール24に支持されている。
【0036】
Y軸固定レール25に対して、Y軸サーボモータ28及びボールねじ軸29が取り付けられている。X軸固定レール24が固定された支持ビーム23は、Y軸固定レール25に沿ってY方向に移動可能である。X軸固定レール24に対して、X軸サーボモータ26及びボールねじ軸27が取り付けられている。よって、ヘッドユニット4は、X軸サーボモータ26によるボールねじ軸27の回転駆動によってX方向に移動し、Y軸サーボモータ28によるボールねじ軸29の回転駆動によってY方向に移動する。言い換えると、ヘッドユニット4は、X軸固定レール24及びY軸固定レール25を介して、XY方向に移動自在である。
【0037】
ヘッドユニット4には、部品を保持して搬送するための複数の実装用ヘッド4Hが搭載されている。各ヘッド4Hは、Z方向に延びるシャフト41と、該シャフト41の下端に装着された吸着ノズル42とを含む。シャフト41は、ヘッドユニット4に対して昇降及びノズル中心軸(R軸)回りの回転が可能とされている。吸着ノズル42は、電子部品を吸着して保持し、これを基板Pの表面に搭載することが可能である。
【0038】
ベース部10にはマルチカメラ11が組み込まれている。マルチカメラ11は、ベース部10の上方を撮像視野とするカメラである。マルチカメラ11の主たる役目は、吸着ノズル42による当該電子部品の吸着状態を画像認識するために、吸着ノズル42に吸着された電子部品を下面側から撮像することにある。
【0039】
基板認識カメラ5は、ヘッドユニット4の左側に固定されている。基板認識カメラ5は、コンベア21、22により前記作業位置に搬入された基板Pの表面に付設されている各種マークを撮像する。
図2では、前記マークの一例として、矩形の基板Pの対角線上に付設された一対のフィデューシャルマークFMを示している。フィデューシャルマークFMは、搬入された基板Pの前記作業位置の原点座標に対する位置ズレ量を検知するためのマークである。
【0040】
図3に示すように、ベース部10には、コントローラ14(制御部)、インターフェース基板15、電源トランス16及びDC電源17が内蔵されている。コントローラ14は、制御用電子部品が搭載された基板を含む。コントローラ14は、ヘッドユニット4の動作制御をはじめ、表面実装機1の各部の動作を制御するコントローラである。インターフェース基板15は、表面実装機1と他の機械装置、パーソナルコンピュータ等の制御装置若しくは携帯端末とのデータ通信を可能とする制御基板である。電源トランス16は、商用電圧を表面実装機1の動作電圧に変圧する機器である。DC電源17は、表面実装機1に装備されている直流動作機器に直流電圧を供給する。
【0041】
ベース部10に内蔵される機器のうち、コントローラ14、電源トランス16及びDC電源17は動作時に大きな熱を発生する発熱性の機器である。また、コントローラ14、インターフェース基板15及びDC電源17は、耐熱性が比較的低い。このため、これらの機器は冷却を要する。前記冷却には、一般的に空冷用のファンが用いられる。本実施形態では、表面実装機1に、熱電素子として汎用されているペルチェ素子が組み込まれる。前記発熱性の機器が発する熱を利用して前記ペルチェ素子に起電力を発生させ、その発生電力にて前記空冷用のファンを駆動する。以下、ペルチェ素子を組み込んだ表面実装機1の具体例を示す。
【0042】
[第1実施形態]
図4は、ペルチェ素子7、70が組み込まれた第1実施形態に係る表面実装機1の概略断面図である。ベース部10には、制御ユニットや電源ユニット等の電気機器を収容する収容部18が備えられている。収容部18は、塵埃などの侵入を防止するため、略密閉された空間である。
図4では、収容部18に発熱体HRが収容されている状態を模式的に示している。この発熱体HRは、例えば上述のコントローラ14、電源トランス16及びDC電源17の一部又は全部である。
【0043】
収容部18には、空冷用のファン6が取り付けられている。ファン6は、収容部18内の熱をベース部10の外部に放出する気流を発生する。
図4では、ベース部10のさらに外側の、エンクロージャ1Aの外部に熱を放出するファン6を例示している。エンクロージャ1Aには、実装ユニット40の収容空間の熱を外部に放出する気流を発生するエンクロージャファン60が取り付けられている。
【0044】
発熱体HRに対して、ヒートシンクHSが付設されたペルチェ素子7が熱的に接続されている。ペルチェ素子7は、ファン6を動作させる電力を発生する。すなわち、ファン6は、ペルチェ素子7から供給される電力により駆動される。エンクロージャ1Aの内面にも、ヒートシンクHSが付設されたペルチェ素子70が熱的に接続されている。ペルチェ素子70は、エンクロージャファン60を動作させる電力を発生する。
【0045】
上述のペルチェ素子7、70の取り付けの態様について、
図5(A)~(C)を参照して説明する。
図5(A)は、収容部18内に配置されるペルチェ素子7の、発熱体HRへの取り付けの態様を模式的に示す図である。ペルチェ素子7は、平板状の半導体ユニット71と、当該半導体ユニット71を挟み込むように配置される吸熱板72及び放熱板73とを含む。半導体ユニット71は、P型半導体とN型半導体とを接合した単位素子が複数個直列に接続されてなり、ゼーベック効果に基づき起電力を発生するユニットである。吸熱板72は半導体ユニット71の高温側に、放熱板73は半導体ユニット71の低温側に各々取り付けられる、セラミックプレート等の絶縁体プレートである。
【0046】
吸熱板72の表面は、発熱体HRと熱的に接続される高温側の面(第1面)である。一方、放熱板73の表面は、発熱体HRと熱的に接続されない低温側の面(第2面)である。発熱体HRは、熱を外部に放散する発熱面を備える。
図5(A)の例では、発熱体HRの上面が前記発熱面であるとする。ペルチェ素子7は、吸熱板72が前記発熱面に直接取り付けられるように配置されている。吸熱板72は、発熱体HRの発熱面から吸熱する。放熱板73には、ヒートシンクHSが取り付けられている。ヒートシンクHSは、アルミニウム等の熱伝導性に優れた金属からなり、熱放散を行う多数枚のフィンを備える。放熱板73は、ヒートシンクHSを介して熱を放散する。
【0047】
ここで、吸熱板72が発熱体HRと「熱的に接続される」とは、発熱体HR側から吸熱板72へ熱の授受が可能な各種の態様を含む。端的な態様は、
図5(A)の例のように、吸熱板72が直接的に発熱体HRの発熱面に取り付けられる態様である。この他、発熱体HR側から吸熱板72へ間接的に熱伝達が為される態様であっても良い。例えば、発熱体HRの熱を、ファンや対流が生成する空気流、金属板やヒートパイプ等の熱伝達部材などを利用して、吸熱板72へ熱輸送する態様を例示することができる。前記空気流を利用する場合、吸熱板72へ当該空気流を直接吹き当てても良いし、吸熱板72に付設されたヒートシンク等の吸熱部材に吹き当てるようにしても良い。
【0048】
半導体ユニット71は、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じたときに直流の起電力を発生する。もちろん、前記温度差が大きいほど、起電力は大きくなる。半導体ユニット71からは、正極リード線74P及び負極リード線74Nが引き出され、ファン6を回転駆動するモータMに電気的に接続されている。従って、半導体ユニット71が起電力を発生すると、ファン6は回転駆動され、排気流を発生する。この排気流により、発熱体HRの発熱によって高温化した収容部18内の熱が、エンクロージャ1Aの外部に逃がされる。
【0049】
図5(A)に示す態様によれば、ペルチェ素子7の吸熱板72が発熱体HRの発熱面に直接取り付けられるので、前記発熱面から吸熱板72に熱が直接的に授受される。従って、発熱体HRの発生熱を前記第1面へ効率的に伝熱させることができる。また、放熱板73は、発熱体とは熱的に接続されていないだけでなく、ヒートシンクHSにて積極的に放熱させることができる構成である。従って、吸熱板72と放熱板73との温度差を大きくして発電効率を高め、ペルチェ素子7(半導体ユニット71)が発生する電力を大きくすることができる。
【0050】
図5(B)は、
図5(A)に示すペルチェ素子7の取り付け態様の変形例である。この変形例も、吸熱板72が発熱体HRと熱的に接続される面である一方、放熱板73が発熱体HRと熱的に接続されない面である。変形例が
図5(A)の態様と相違する点は、放熱板73にヒートシンクHSが取り付けられていない点である。表面実装機1の動作時に、吸熱板72と放熱板73とに十分な温度差が生じると想定される場合は、この変形例のように、ヒートシンクHSを省くことができる。
【0051】
図5(C)は、エンクロージャ1Aに配置されるペルチェ素子70の取り付けの態様を模式的に示す図である。ペルチェ素子70の構造は、上述のペルチェ素子7と同様であって、半導体ユニット71、吸熱板72及び放熱板73を含む。吸熱板72と放熱板73との温度差に基づき半導体ユニット71が発生する直流電力は、正極リード線74P及び負極リード線74Nを通して、エンクロージャファン60を回転駆動するモータMに供給される。
【0052】
ペルチェ素子70の吸熱板72及び放熱板73に取り付けられる部材は、先のペルチェ素子7とは異なる。高温側の吸熱板72には、ヒートシンクHSが取り付けられている。一方、放熱板73はエンクロージャ1A(冷熱体の一例)に直接取り付けられている。エンクロージャ1Aの内部空間は、ベース部10から輻射される熱や、実装ユニット40の動作に伴う熱により高温化することがある。ヒートシンクHSは、エンクロージャ1Aの内部空間と熱交換を行い、その熱を吸熱板72に伝熱する。一方、エンクロージャ1A自体は、その外側面が外気と接していることから、熱的には冷熱体と扱うことができる。放熱板73は、このようなエンクロージャ1Aと熱的に接続されている。
【0053】
エンクロージャ1Aの内部空間が高温化すると、ヒートシンクHSを介して吸熱板72に伝熱される熱も高温化する。他方、放熱板73は、エンクロージャ1Aを通しての放熱により室温に近い状態を維持できる。従って、吸熱板72と放熱板73との温度差が大きくなり、ペルチェ素子70はエンクロージャファン60のモータMを駆動させる直流電力を発生することができる。エンクロージャファン60の回転駆動により排気流が発生され、エンクロージャ1A内の熱気は外部に逃がされる。なお、放熱板73は、エンクロージャ1Aではなく、表面実装機1が備えるフレーム部材や板金部材等の他の冷熱体に熱的に接続しても良い。
【0054】
[第2実施形態]
図6(A)、(B)は、ペルチェ素子を組み込んだ第2実施形態に係る表面実装機1のベース部10を示す図である。
図6(B)はベース部10の側面図、
図6(A)は
図6(B)のVIA-VIA線断面図である。ベース部10は、パラレルに並ぶ第1収容部181及び第2収容部182(収容部)と、気流の流動方向における両収容部181、182の上流側に位置する上流通気室183と、下流側に位置する下流通気室184との4つに区画されている。
【0055】
ベース部10には、
図3で例示した発熱性の機器が収容されている。具体的には、第1収容部181にはコントローラ14が収容されている。第2収容部182には、インターフェース基板15、電源トランス16及びDC電源17が収容されている。これら発熱性の機器のうち、コントローラ14に対して第1ペルチェ素子7Aが熱的に接続され、電源トランス16に対して第2ペルチェ素子7Bが熱的に接続されている。
【0056】
第1収容部181を形成する壁には、当該第1収容部181内の熱を外部に放出する気流を発生する第1ファン6Aが取り付けられている。第2収容部182を形成する壁には、当該第2収容部182内の熱を外部に放出する気流を発生する第2ファン6Bが取り付けられている。第1ファン6Aは、第1ペルチェ素子7Aが発生する直流電力を駆動電力とするファンである。第2ファン6Bは、第2ペルチェ素子7Bが発生する直流電力を駆動電力とするファンである。
【0057】
第1収容部181を形成する他の壁であって、第1ファン6Aが取り付けられる壁と対向する壁には、第3ファン63が配置されている。第2収容部182を形成する他の壁であって、第2ファン6Bが取り付けられる壁と対向する壁には、第4ファン64が配置されている。上流通気室183の吸気開口には、吸気ファン61が配置されている。下流通気室184の排気開口には、排気ファン62が配置されている。
【0058】
上流通気室183は、第1ファン6Aの取り付け開口を通して第1収容部181と連通し、第2ファン6Bの取り付け開口を通して第2収容部182と連通している。下流通気室184は、第3ファン63の取り付け開口を通して第1収容部181と連通し、第4ファン64の取り付け開口を通して第2収容部182と連通している。
【0059】
吸気ファン61、排気ファン62、第3ファン63及び第4ファン64は、DC電源17から供給される直流電力を駆動電力とするファンであり、表面実装機1が動作中には常時駆動されるファンである。これらファンの動作によって、
図6で矢印にて示すように、上流通気室183から第1収容部181及び第2収容部182を通過し、下流通気室184から外部へ向かう排気流が、第1ファン6A及び第2ファン6Bの動作の有無に拘わらず常時形成される。当該排気流により、第1収容部181及び第2収容部182は空冷される。
【0060】
第1ファン6Aは、コントローラ14の高温化に伴い、第1ペルチェ素子7Aが発電することによって駆動される。第2ファン6Bは、電源トランス16の高温化に伴い、第2ペルチェ素子7Bが発電することによって駆動される。第1ファン6A、第2ファン6Bの駆動により、第1収容部181、第2収容部182にはより積極的な排気流が各々形成され、第1収容部181及び第2収容部182の空冷が促進される。
【0061】
つまり、表面実装機1が動作中は、最小限のファンで第1収容部181及び第2収容部182を空冷することを基本としながら、コントローラ14及び/又は電源トランス16が高温化したときには、第1ファン6A及び/又は第2ファン6Bを追加駆動して空冷力をアップさせる。しかも、前記追加駆動の電源は、その熱を利用して第1ペルチェ素子7A及び第2ペルチェ素子7Bが発生する起電力である。従って、表面実装機1が発するファンの動作騒音を抑制することができると共に、消費電力を抑制することができる。また、DC電源17の電力供給先から第1ファン6A及び第2ファン6Bを除外できるので、DC電源17の容量を抑制し、小型化を図ることができる。
【0062】
また、
図6の実施形態では、ベース部10において発熱性の機器を収容する収容部が、第1収容部181と第2収容部182とに区分されている。そして、コントローラ14が発熱して第1収容部181内が高温化したときに第1ファン6Aを動作させて当該第1収容部181を冷却し、また、電源トランス16が発熱して第2収容部182内が高温化したときに第2ファン6Bを動作させて当該第2収容部182を冷却するというように、各収容部別に空冷が行われ得る。このため、コントローラ14又は電源トランス16の一方が発熱して第1収容部181又は第2収容部182が高温化したとき、その高温化した一方の収容部の空冷が、第1ファン6A又は第2ファン6Bの駆動により促進される。これにより、高温化した一方の収容部の熱を他方の収容部に伝わり難くし、当該他方の収容部の高温化を抑制できる。結果として、実際に発熱している収容部181、182のファン6A、6Bのいずれかだけが動作する状況も期待できる。このことは、ファン騒音の抑制にも繋がる。
【0063】
続いて、第1ペルチェ素子7A及び第2ペルチェ素子7Bの具体的な取り付け態様について説明する。
図7(A)及び(B)は、電源トランス16の第2ペルチェ素子7Bへの取り付け例を示す模式図である。電源トランス16は、Eコア162とIコア163との組み合わせで形成されている鉄心161と、鉄心161に巻回された一次コイル164及び二次コイル165とを含む。Iコア163の上面(鉄心161の表面)は、第2収容部182内において露出した面であり、発熱面であるとする。
【0064】
図7(A)に示す第2ペルチェ素子7Bは、吸熱板72が鉄心161の表面に直接取り付けられる態様で、電源トランス16に対して配置されている。鉄心161の表面はフラットな面を含んでいる場合が多く、吸熱板72の直接取り付けが比較的容易である。また、鉄心161は高熱化し易い。従って、吸熱板72を効率良く高温化させることができる。放熱板73にはヒートシンクHSが付設されている。電源トランス16の変圧動作により鉄心161は高熱を帯び、吸熱板72は加熱される。一方、放熱板73は、ヒートシンクHSを介して常時放熱する。吸熱板72と放熱板73との温度差に基づき半導体ユニット71は起電力を発生し、第2ファン6Bを駆動する。
【0065】
図7(B)は、第2ペルチェ素子7Bの他の取り付け態様を示す図である。
図7(A)の例と相違する点は、放熱板73に冷熱体CRが保有する熱を積極的に与える構成とされている点である。冷熱体CRは、動作中の電源トランス16(発熱体)よりも所定温度だけ低温の部材である。冷熱体CRとしては、例えばエンクロージャ1A、表面実装機1が具備するフレーム部材、或いは表面実装機1が据え付けられる床面等を利用することができる。
【0066】
放熱板73と冷熱体CRとは、熱伝導部材75及び均熱板76にて熱的に接続されている。熱伝導部材75は、例えば、銅やアルミニウム等の良熱伝導性の伝熱板、或いは熱輸送を行うヒートパイプである。均熱板76は、放熱板73と略同サイズの良熱伝導性の金属板である。熱伝導部材75は、冷熱体CRが保有する冷熱を放熱板73に向けて伝達する部材であって、均熱板76に熱接続される一端751と、冷熱体CRに熱接続される他端752とを有する。均熱板76は、一端751に伝達された冷熱が、放熱板73の全面に均等に伝熱させる部材である。
【0067】
電源トランス16の鉄心161が高熱化すると、吸熱板72は加熱される。一方、放熱板73は、熱伝導部材75及び均熱板76を介して冷熱体CRの冷熱が常時供給される。このため、吸熱板72と放熱板73との温度差を大きくし易い。従って、半導体ユニット71に大きな起電力を発生させ易くすることができる。
【0068】
図8(A)~(C)は、コントローラ14への第1ペルチェ素子7Aの取り付け例を示す模式図である。コントローラ14は、基板141と、この基板141に実装された発熱部品142とを含む。発熱部品142は、例えばモータ制御用トランジスタ、サイリスタ等の電力用半導体素子である。
【0069】
図8(A)に示す第1ペルチェ素子7Aは、吸熱板72が基板141の片面に直接取り付けられる態様で、コントローラ14に対して配置されている。発熱部品142が実装されている基板141の裏面は、発熱面となる。この発熱面に吸熱板72が接触するように、第1ペルチェ素子7Aがコントローラ14に取り付けられている。コントローラ14の動作により、基板141は高熱を帯び、吸熱板72は加熱される。一方、放熱板73は、前記発熱面とは熱的に接続されない面である。従って、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じ、半導体ユニット71は起電力を発生する。この起電力により、第1ファン6Aは駆動される。
【0070】
コントローラ14に第1ペルチェ素子7Aを直付けすることが可能であれば、
図8(A)に示す第1ペルチェ素子7Aの取り付け態様が採用できる。しかし、一般にコントローラ14は、ボックス化され、メンテナンスの際にベース部10から引き出されたり、基板141の交換が為されたりすることがある。また、コントローラ14に第1ペルチェ素子7Aを直付けできる箇所が乏しい場合もある。これらの理由で、コントローラ14に第1ペルチェ素子7Aを直付けすることが困難な場合が多い。そこで、コントローラ14が発生する熱を輸送手段で輸送し、輸送された熱を受熱する位置に第1ペルチェ素子7Aを配置する構成を、
図8(B)及び(C)に例示する。
【0071】
図8(B)は、第1ペルチェ素子7Aの他の取り付け態様を示す図である。この例では、前記輸送手段として、送気ファン65が用いられている。基板141の裏面には、第1ヒートシンクHS1が取り付けられている。第1ペルチェ素子7Aの吸熱板72には、第2ヒートシンクHS2が取り付けられている。第1ヒートシンクHS1は、コントローラ14は発生する熱の放散を促進する。第2ヒートシンクHS2は、吸熱板72の吸熱性を高める。
【0072】
送気ファン65は、コントローラ14から第1ペルチェ素子7Aへ向かう気流Fを発生し、コントローラ14の発生熱を第1ペルチェ素子7Aの吸熱板72に伝熱させる。具体的には送気ファン65は、第1ヒートシンクHS1が放散する熱を含む空気を、第2ヒートシンクHS2へ向かわせる気流Fを生成する。気流Fで移送された熱は、第2ヒートシンクHS2を介して吸熱板72に与えられる。これにより、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じ、半導体ユニット71は起電力を発生する。この実施形態によれば、コントローラ14から直接熱を取り出すことが困難な場合であっても、第1ペルチェ素子7Aを動作させることができる。
【0073】
図8(C)は、第1ペルチェ素子7Aのさらに他の取り付け態様を示す図である。この例では、前記輸送手段として、熱伝導部材75Aが用いられている。熱伝導部材75Aとしては、例えば銅やアルミニウム等の良熱伝導性の伝熱板、ヒートパイプ等を用いることができる。
【0074】
熱伝導部材75Aは、発生熱を第1ペルチェ素子7Aの吸熱板72に伝熱する部材であり、基板141の裏面に取り付けられる一端751と、吸熱板72に取り付けられる他端752とを備える。熱伝導部材75Aで移送された熱は吸熱板72に伝熱される。これにより、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じ、半導体ユニット71は起電力を発生する。この実施形態によれば、熱伝導部材75Aを通して吸熱板72へ熱を効率良く供給することができる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、コントローラ14がボックス構造を備えている場合の適用例を示す。
図9は、ペルチェ素子を組み込んだ第3実施形態に係る表面実装機1の収容部18の模式図である。コントローラ14は、基板141と、この基板141を収納する収納ボックス143とを含む。基板141は、放熱部14H(発熱部)を含む。放熱部14Hは、例えば上述の発熱部品142が発する熱を放熱するヒートシンクである。収納ボックス143は、基板141を収容する収容空間14Aと、収容空間14Aの下方に設けられた通気室144と、通気室144に設けられた入気開口145と、収容空間14Aの上端付近に設けられた排気開口146(開口部)と、送気ファン66(気流発生装置)とを備えている。
【0076】
送気ファン66は、回転駆動されることにより、通気室144及び収容空間14Aを経由するよう入気開口145から排気開口146へ向かう、図中に矢印で示す輸送気流Fを発生させる。送気ファン66は、表面実装機1の動作時に常に駆動状態となるファンである。排気開口146は、収納ボックス143の外方に向けて開口している。収納ボックス143の外部であって排気開口146に対向する位置に、ペルチェ素子7が配置されている。ペルチェ素子7は、ヒートシンクHSが付設された吸熱板72が排気開口146の近傍に位置するように配置されている。
【0077】
ペルチェ素子7の放熱板73は、熱伝導部材75Bに取り付けられている。熱伝導部材75Bは、例えば銅やアルミニウム等の金属板又はヒートパイプ等である。熱伝導部材75Bは、放熱板73と熱的に接続される一端751と、ベース部10の適所と熱的に接続される他端752とを備えている。
【0078】
コントローラ14の動作により放熱部14Hが熱を発生すると、その熱を含む収容空間14A内の空気は、送気ファン66が生成する輸送気流Fによって排気開口146へ向かう。ペルチェ素子7に付設されているヒートシンクHSには、気流Fが吹きつけられる。これにより、ヒートシンクHSは排気開口146から排出される熱を帯びた空気と熱交換し、吸熱板72に熱を与える。一方、放熱板73にはエンクロージャ1Aの冷熱が与えられている。これにより、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じ、半導体ユニット71は起電力を発生する。この起電力を利用して、適所に配置された図略のファンが駆動される。
【0079】
[第4実施形態]
図10は、コントローラ14がボックス構造を備えている場合の他の実施形態を示す模式図である。この実施形態では、対流を利用する例を示す。コントローラ14は、基板141及び収納ボックス143を備え、基板141は放熱部14Hを含んでいる。収納ボックス143の天壁には、ダクト77が取り付けられている。ダクト77は、放熱部14Hの真上に位置し、下方に開口している。収納ボックス143の側壁には、当該収納ボックス143内の熱を外部へ放出する気流を発生する送気ファン67が装備されている。
【0080】
ダクト77の取り付け位置に、ヒートシンクHSを備えたペルチェ素子7が配置されている。ヒートシンクHSは、ペルチェ素子7の吸熱板72に取り付けられ、ダクト77にフィン部分が露呈している。ダクト77は、下方に向かうに連れ、開口面積が大きくなるテーパ形状を有している。
【0081】
コントローラ14の動作により放熱部14Hが熱を発生すると、収納ボックス143内では対流が生じる。放熱部14Hで熱せられた熱気Hは上昇気流を形成し、ダクト77内に進入する。ペルチェ素子7に付設されているヒートシンクHSは、熱気Hと熱交換し、吸熱板72に熱を与える。一方、放熱板73は収納ボックス143の外に配置されているため、熱気Hの影響を受けない。これにより、吸熱板72と放熱板73とに温度差が生じ、半導体ユニット71は起電力を発生する。この起電力により送気ファン67が駆動され、収納ボックス143内が空冷される。
【0082】
上記の対流を利用する態様は、上掲の第2実施形態にも適用が可能である。例えば、
図7(A)に示した電源トランス16と第2ペルチェ素子7Bとの熱的な接続の態様として、鉄心161の表面から離間した上方位置に、ダクト77及びヒートシンクHSを備えたペルチェ素子7を配置する態様を採用しても良い。
【0083】
以上説明した上記の各実施形態に係る表面実装機1によれば、自身が具備している発熱性の機器、上記実施形態ではコントローラ14及び電源トランス16、が発生する熱を利用してペルチェ素子7(7A、7B)が電力を生成し、その電力にてファン6(6A、6B)が駆動される。つまり、表面実装機1の排熱を回収し、その排熱エネルギーで電力を起こという動作をペルチェ素子7な担い、その電力で冷却用のファン6を動作させる。従って、消費電力を低減させることができる。
【0084】
また、前記発熱性の機器が相応に高温化しないとペルチェ素子7は十分な起電力を発生しないので、ファン6も動作しない。すなわち、収容部18内が低温であるときにはファン6は通常の気流発生動作を行わないので、当該ファン6の動作騒音を抑制することができる。
【0085】
さらに、表面実装機1の冷却に必要なファンの少なくとも一部をペルチェ素子7が発生する電力で駆動させることで、ファン駆動用の直流電源(DC電源17)が駆動するファンの数を減らすことができる。一般にファンは、回転開始時において通常回転時に必要な電力の数倍に当たる突入電力の供給を必要とする。当然、ファンの数が多くなると前記突入電力も大きくなり、その突入電力の確保のためのDC電源17の大容量化も必要となる。しかし、上記実施形態によれば、DC電源17の駆動対象のファン数が減るので、DC電源17の大容量化を抑制することができ、ひいては表面実装機1の小型化並びにコストダウンを図ることができる。
【0086】
また、上記の各実施形態では、基板認識カメラ5がヘッドユニット4の側面に1つだけ固定されている例について説明した。しかしながら、表面実装機1は基板認識カメラ5を複数(例えば2つ)有していてもよい。表面実装機1が基板認識カメラ5を2つ有する場合、それらの基板認識カメラ5は、一方がヘッドユニット4の左側の側面に固定され、他方がヘッドユニット4の右側の側面に固定される。これにより、基板を撮像する際のヘッドユニット4の移動時間を短縮することができる。
【0087】
更に、第2実施形態に係る表面実装機では、第3ファン63及び第4ファン64が、DC電源17から供給される直流電力を駆動電力とするファンである例について説明した。しかしながら、本発明の表面実装機は、第3ファン63と電気的に接続された第3ペルチェ素子が第1収容部181に設けられており、その第3ペルチェ素子から給電された電力により第3ファン63が回転する構成をしていてもよい。この時、第3ファン63は、第1収容部181の空気を外部に放出するように、平面透視において第1ファン6Aの回転方向とは逆側に回転する。言うまでもないが、表面実装機は、第4ファン64と電気的に接続された第4ペルチェ素子が第2収容部182にも設けられており、その第4ペルチェ素子から給電された電力により第4ファン64が回転する構成をしていてもよい。第4ファン64の回転方向の説明については、第3ファン63の回転方向の説明を援用できる。また、第1ペルチェ素子7Aの発生電力で第1ファン6A及び第3ファン63の双方を、第2ペルチェ素子7Bの発生電力で第2ファン6B及び第4ファン64の双方を、それぞれ駆動させても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 表面実装機(部品載置ユニット)
1A エンクロージャ(冷熱体)
10 ベース部(基台)
14 コントローラ(制御部/発熱体)
15 インターフェース基板(発熱体)
16 電源トランス(トランス/発熱体)
161 鉄心
17 DC電源(発熱体)
18 収容部
181 第1収容部
182 第2収容部
187 排気開口(開口部)
4 ヘッドユニット
6 ファン
6A 第1ファン
6B 第2ファン
65 送気ファン(輸送手段)
66 送気ファン(輸送手段/気流発生装置)
7、70 ペルチェ素子
7A 第1ペルチェ素子
7B 第2ペルチェ素子
72 吸熱板(第1面)
73 放熱板(第2面)
75、75A、75B 熱伝導部材
CR 冷熱体
F 気流
HR 発熱体
HS ヒートシンク