(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】パーティクルボード
(51)【国際特許分類】
B27N 3/02 20060101AFI20240708BHJP
B27N 3/06 20060101ALI20240708BHJP
B32B 21/02 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 C
B27N3/06 A
B32B21/02
(21)【出願番号】P 2021054702
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 英治
(72)【発明者】
【氏名】川端 文治
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-133138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0122438(US,A1)
【文献】特開平06-166011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 - 9/00
B32B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面に配置された一対の表層と、
一対の表層の間に配置された内部層と、
前記各表層と前記内部層との間に配置された一対の中間層と、を備えたパーティクルボードであって、
前記表層の木質チップの大きさは、前記内部層および前記中間層の木質チップの大きさよりも小さく、
前記中間層の木質チップの大きさは、前記内部層の木質チップの大きさよりも大きいことを特徴とするパーティクルボード。
【請求項2】
前記内部層および前記一対の中間層の木質チップの総質量に対する、前記各中間層の木質チップの割合は、15.5質量%以上、25.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のパーティクルボード。
【請求項3】
前記内部層および前記各中間層の木質チップの厚さは、0.6mm以上、1.0mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のパーティクルボード。
【請求項4】
前記内部層および一対の前記中間層の総質量に対する、前記内部層および一対の前記中間層に塗布された接着剤の割合は、5質量%以上、15質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のパーティクルボード。
【請求項5】
前記内部層、前記一対の中間層、および前記一対の表層の木質チップの総質量に対する、前記内部層および一対の前記中間層の木質チップの総質量の割合は、40質量%以上、80質量%以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のパーティクルボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質チップから熱圧成形されたパーティクルボードに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、たとえば、特許文献1には、微細チップで構成される一対の表層と、一対の表層の間に配置され、粗大チップで構成される内部層とを有したパーティクルボードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すパーティクルボードを、壁材または床材などで利用する目的で、釘で固定するようなことを想定されていない。したがって、このようなパーティクルボードは、釘側面抵抗力および釘頭貫通力などの耐釘性能が高いものであるとは言い難い。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、釘側面抵抗力および釘頭貫通力などの耐釘性能が高いパーティクルボードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を鑑みて、本発明に係るパーティクルボードは、両面に配置された一対の表層と、一対の表層の間に配置された内部層と、前記各表層と前記内部層との間に配置された一対の中間層と、を備えたパーティクルボードであって、前記表層の木質チップの大きさは、前記内部層および前記中間層の木質チップの大きさよりも小さく、前記中間層の木質チップの大きさは、前記内部層の木質チップの大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、このような木質チップの大きさの範囲を満たすことにより、パーティクルボードの釘頭貫通力への耐力(以下、「釘頭貫通力」という)を高めることがきる。具体的には、表面層の木質チップの大きさは、他の層に比べて小さく、表層では木質チップが緻密に配置されるため、表層では、他の層に比べて、釘頭から作用する力に対する抗力が大きくなる。さらに、中間層の木質チップは、他の層に比べて大きいため、各木質チップ同士が、パーティクルボードの面内方向においてより広い範囲で重なり合っている。このため、中間層では、釘頭から作用する力を、隣接する木質チップも含めた広い範囲で受けることができる。これにより、本発明に係るパーティクルボードによれば、これまでに比べて釘頭貫通力を高めることができる。
【0008】
さらに、中間層の木質チップの大きさが、内部層の木質チップの大きさよりも大きいので、中間層の木質チップ同士の拘束力を高めることができる。このような中間層で、内部層の両側を挟み、両側の中間層で、釘側面からの力を受けることができる。さらに、中間層の木質チップの大きさに比べて、内部層の木質チップの大きさが小さいため、中間層に比べて内部層の木質チップを緻密にすることができる。このような結果、本発明に係るパーティクルボードによれば、これまでに比べて釘側面抵抗力を高めることができる。
【0009】
より好ましい態様としては、前記内部層および前記一対の中間層の木質チップの総質量に対する、前記各中間層の木質チップの割合は、15.5質量%以上、25.0質量%以下である。
【0010】
この態様によれば、このような範囲を満たすことにより、パーティクルボードの釘頭貫通力および釘側面抵抗力をより一層高めることができる。ここで、各中間層の木質チップの割合が、15.5質量%未満である場合には、中間層による耐釘性能の効果は小さく、釘頭貫通力および釘側面抵抗力を十分に高められないことがある。一方、各中間層の木質チップの割合が、25.0質量%を超えたとしても、中間層の耐釘性能による効果を、これ以上期待することはできない。
【0011】
さらに、より好ましい態様としては、前記内部層および前記各中間層の木質チップの厚さは、0.6mm以上、1.0mm以下である。このような範囲の木質チップの厚さを満たすことにより、釘側面抵抗力の高いパーティクルボードとなる。ここで、この厚さが0.6mm未満となる木質チップは作製し難く、この厚さが1.0mmを超えた場合、中間層を構成するチップ同士の拘束力が低下してしまい、パーティクルボードの釘側面抵抗力を高めることができないことがある。
【0012】
さらに好ましい態様としては、前記内部層および一対の前記中間層の総質量に対する、前記内部層および一対の前記中間層に塗布された接着剤の割合は、5質量%以上、15質量%以下である。
【0013】
この態様によれば、接着剤の割合をこのような範囲にすることにより、内部層および中間層の接着剤の割合が増加するに従って、試験体の剥離強度も増加し、結果、釘側面抵抗力および釘頭貫通力も増加する。ここで、接着剤の割合が5質量%未満では、十分な釘側面抵抗力および釘頭貫通力を得ることができないことがある。接着剤の割合が15質量%を超えたとしても、これ以上の釘側面抵抗力および釘頭貫通力の向上の効果が期待できない。
【0014】
さらに好ましい態様としては、前記内部層、一対の前記中間層、および両側の前記表層の木質チップの総質量に対する、前記内部層および一対の前記中間層の総質量の割合は、40質量%以上、80質量%以下である。
【0015】
この態様によれば、接着剤の割合をこのような範囲にすることにより、パーティクルボードの生産性およびパーティクルボードの表面の品質を確保することができる。ここで、この割合が、40質量%未満の場合には、1つの木材から表面層の木質チップを確保することが難しい。一方、この割合が、80質量%を超えた場合には、パーティクルボードの表面の品質を確保することが難しい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るパーティクルボードは、これまでのものに比べて、釘側面抵抗力および釘頭貫通力などの耐釘性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るパーティクルボードの模式的断面図である。
【
図2】
図1に示すパーティクルボードの製造方法を説明するためのフロー図である。
【
図3】
図1に示すマット作製工程からボード成形工程までを説明するための模式的概念図である。
【
図4】(a)は、釘側面抵抗試験を説明するための側面図であり、(b)は、(a)の正面図である。
【
図5】(a)は、釘頭貫通試験を説明するための断面図であり、(b)は、(a)の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1~
図3を参照しながら、実施形態に係るパーティクルボードおよびその製造方法を以下に説明する。
【0019】
1.パーティクルボード10について
まず、本実施形態に係るパーティクルボード10について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るパーティクルボードの模式的断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るパーティクルボード10は、両面に配置された一対の表層13と、一対の表層13の間に配置された内部層11と、各表層13と内部層11との間に配置された一対の中間層12、12と、を備えたパーティクルボードである。
【0020】
木質チップの材料は、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹で構成される木片である。木質チップは、木材等を破砕機や切削機によって破砕や切削して小片化してチップとしたものである。
【0021】
本実施形態では、表層13の木質チップ13aの大きさは、内部層11および中間層12の木質チップ11a、12aの大きさよりも小さく、中間層12の木質チップ12aの大きさは、内部層11の木質チップ11aの大きさよりも大きい。木質チップ11a~13aの大きさは、篩で分級することにより、設定される大きさである。
【0022】
木質チップ11a~13aは、接着剤を介して接着されている。本実施形態では、接着剤は、熱硬化性樹脂の接着剤であることが好ましい。熱硬化性樹脂の接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、尿素樹脂接着剤、メラミン樹脂接着剤、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤、またはフェノール樹脂接着剤等を挙げることができる。ウレタン系接着剤としてイソアネートモノマーまたはイソシアネートと、ポリオールなど活性水素化合物との混合物、ウレタンプレポリマー、若しくはポリウレタンなどがある。
【0023】
イソシアネートとしては、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)の他に、TDI(トリレンジイソシアネート)、MDIプレポリマー、TDIプレポリマー、およびこれらの2種以上混合したものを挙げることができる。
【0024】
ウレタン系接着剤は、水分と反応し硬化する、湿気硬化型接着剤であるので、木質チップに含有する水分が、ボード成形のタイミングで蒸発し、接着剤の硬化を促進することができる。これにより、木質チップ同士の接着性を高めることができる。特に、このような観点から、表面層も木質チップの大きさが大きい木質チップを用いた内部層11および中間層12に、MDIなどのイソシアネートとポリオールなど活性水素化合物の混合物を用いることが好ましい。
【0025】
さらに、中間層12の木質チップ12aの大きさが、内部層11の木質チップ11aの大きさよりも大きいので、パーティクルボード10の厚さ方向に沿った中間層12の木質チップ12a、12a同士の拘束力を高めることができる。このような中間層12で、内部層11の両側を挟み、両側の中間層12、12で、釘側面からの力を受けることができる。さらに、中間層12の木質チップ12aの大きさに比べて、内部層11の木質チップ11aの大きさが小さいため、中間層12に比べて内部層11の木質チップを緻密にすることができる。このような結果、本実施形態に係るパーティクルボード10によれば、これまでに比べて釘側面抵抗力を高めることができる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、パーティクルボード10の釘頭貫通力を高めることがきる。具体的には、表層13の木質チップ11aの大きさは、他の層に比べて小さく、表層13では木質チップ11aが緻密に配置されるため、表層13では、他の層に比べて、釘頭から作用する力に対する抗力が大きくなる。
【0027】
さらに、中間層12の木質チップ12aは、他の層に比べて大きいため、各木質チップ12a、12a同士が、パーティクルボード10の面内方向においてより広い範囲で重なり合っている。このため、中間層12では、釘頭から作用する力を、隣接する木質チップ12a、12aも含めた広い範囲で受けることができる。このような結果、本実施形態に係るパーティクルボード10によれば、これまでに比べて釘頭貫通力を高めることができる。
【0028】
このような観点から、本実施形態では、内部層11および一対の中間層12、12の木質チップ11a、12aの総質量に対する、各中間層12、12の木質チップ12aの割合は、15.5質量%以上、25.0質量%以下であることが好ましい。
【0029】
このような範囲を満たすことにより、パーティクルボード10の釘頭貫通力および釘側面抵抗力をより一層高めることができる。ここで、各中間層12の木質チップ12aの割合が、15.5質量%未満である場合には、中間層12が起因とした釘頭貫通力および釘側面抵抗力を十分に高められないことがある。一方、各中間層12の木質チップ12aの割合が、25.0質量%を超えたとしても、中間層12の耐釘性能による効果を、これ以上期待することはできない。
【0030】
さらに、内部層11および各中間層12の木質チップ11a、12aの厚さは、0.6mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。このような範囲の木質チップ11a、12aの厚さを満たすことにより、釘頭貫通力および釘側面抵抗力の高いパーティクルボード10となる。ここで、厚さが0.6mm未満となる木質チップ11a、12aは作製し難く、各中間層12の木質チップ12aの厚さが1.0mmを超えた場合、中間層12を構成する木質チップ12a、12a同士の拘束力が低下してしまい、パーティクルボード10の釘側面抵抗力を高めることができない。
【0031】
なお、本実施形態では、内部層11および各中間層12の木質チップ11a、12aの厚さを上述した範囲に設定したが、表層13の木質チップ13aの厚さは、釘頭貫通力および釘側面抵抗力への寄与が低いため、これと同じ範囲であってもよく、表層13の木質チップ13aの大きさが、他の層のものよりも小さければ、特に限定されるものではない。
【0032】
さらに、内部層11および一対の中間層12、12の総質量に対する、内部層11および一対の中間層12、12に塗布された接着剤の割合は、5質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。接着剤の割合をこのような範囲にすることにより、内部層11および中間層12、12の接着剤の割合が増加するに従って、パーティクルボード10の剥離強度も増加し、結果、パーティクルボード10の釘側面抵抗力および釘頭貫通力も増加する。ここで、接着剤の割合が5質量%未満では、パーティクルボード10に十分な釘側面抵抗力および釘頭貫通力を得ることができないことがある。接着剤の割合が15質量%を超えたとしても、これ以上の釘側面抵抗力および釘頭貫通力の向上の効果が期待できない。
【0033】
さらに、内部層11、一対の中間層12、12および両側の表層13、13の木質チップの総質量に対する、内部層11および一対の中間層12、12の木質チップの総質量の割合は、40質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。ここで、接着剤の割合をこのような範囲にすることにより、パーティクルボード10の生産性およびパーティクルボード10の表面の品質を確保することができる。ここで、この割合が、40質量%未満の場合には、1つの木材から表層13の木質チップ13aを確保することが難しい。一方、この割合が、80質量%を超えた場合には、パーティクルボード10の表面の品質を確保することが難しい。
【0034】
2.パーティクルボードの製造方法
以下に、本実施形態に係るパーティクルボードの製造方法について、
図2および
図3を参照しながら説明する。
図2は、
図1に示すパーティクルボードの製造方法を説明するためのフロー図である。
図3は、
図1に示すマット作製工程からボード成形工程までを説明するための模式的概念図である。
【0035】
〔チップ作製工程S1〕
この製造方法では、まず、
図2に示すチップ作製工程S1を行う。この工程では、木材から木質チップを作製する。木質チップは、マツ、スギ、ヒノキ等の針葉樹、ラワン、カポール、ポプラ等の広葉樹で構成される木片である。木質チップは、木材等を破砕機や切削機によって破砕や切削して小片化してチップとしたものである。ここで、木質チップの厚さは、切削機のフレーカ刃物の刃出し量を調整することにより、調整することができる。
【0036】
〔分級工程S2〕
次に、
図2に示す分級工程S2を行う。この工程では、小片化した木質チップは、篩を用いて所望の大きさに分級する。本実施形態では、小片化した木質チップを、3つの大きさいの範囲に分級する。この分級では、目開きが異なる2つ篩を準備し、まず、小片化した木質チップに対して目開きが大きい篩にかけ、この篩に残った木質チップを中間層12用の木質チップ12aとする。次に、目開きが大きい篩を通過した木質チップに対して、目開きが大きい篩にかけ、この篩に残った木質チップを、内部層11用の木質チップ11aとし、この篩を通過した木質チップを、表層13用の木質チップ13aとする。
【0037】
〔接着剤塗布工程S3〕
次に、
図2に示す接着剤塗布工程S3を行う。上述した接着剤を、分級した木質チップ11a、12a、13aに塗布する。接着剤塗布工程S3では、接着剤をスプレーにより、木質チップに塗布してもよく、刷毛により塗布してもよく、接着剤と共に各木質チップ11a、12a、13aを混ぜ合わせてもよく、その塗布方法は特に限定されるものではない。また、後述するマット作製工程S4の際に、木質チップを層状に積層しながら、接着剤の塗布を行ってもよい。
【0038】
〔マット作製工程S4〕
次に、
図2に示すマット作製工程S4を行う。この工程では、接着剤を塗布した木質チップから、フォーミングマット10’を作製する。本実施形態では、
図3に示すプレス装置の台座51の上に、木質チップ11a、12a、13aを配置して、これをマット状に成形する(フォーミングマットに成形する)。具体的には、表層13となるマット層13’、中間層12となるマット層12’、および、内部層となるマット層11’を、
図3に示す順で積層することで、フォーミングマット10’を作製する。
【0039】
〔ボード成形工程S5〕
次に、
図2に示すボード成形工程S5を行う。この工程では、作製したフォーミングマット10’を熱圧することにより、パーティクルボード10を成形する。具体的には、
図3に示すように、フォーミングマット10’に対してホットプレス装置の加熱された押圧部材52で、熱圧成形を行うことによりパーティクルボード10を製造する。この際、台座51および押圧部材52の双方を加熱する。フォーミングマット10’をボード状に成形する温度(加熱温度)は、接着剤の種類にもよるが、たとえば120~220℃の範囲であり、熱圧時の加圧力は、たとえば2~5MPa程度である。
【0040】
このようにして、
図1に示すパーティクルボード10を得ることができる。パーティクルボード10は、たとえば、壁材、床材、天井材などの建材や、建具または収納家具などの基材として利用することができる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明を実施例により説明する。
1.各層の木質チップの大きさの関係について
[実施例1-1]
実施例1-1として、両面に配置された一対の表層と、一対の表層の間に配置された内部層と、各表層と内部層との間に配置された一対の中間層と、を備えたパーティクルボードを製造した。
【0042】
具体的には、まず、木質チップの厚さが1.5mmとなるように、フレーカ刃物の刃出し量を調整し、木材(スギ)を切削することにより作製し、以下のように分級した。表層の木質チップの大きさが、内部層および中間層の木質チップの大きさよりも小さく、中間層の木質チップの大きさが、内部層の木質チップの大きさよりも大きくなるように、木質チップを分級した。
【0043】
具体的には、表層の木質チップに、目開き2.00mmの篩を通過する木質チップを用いた。内部層の木質チップに、目開き2.00mmの篩を通過せず、5.66mmの篩を通過した木質チップを用いた。中間層の木質チップに、目開き5.66mmの篩を通過しない木質チップを用いた。ここで、目開きとは、JIS Z 8800-1(2006)に規定された公称目開きのことである。これらの分級した木質チップに対して、各層の全体質量に対して、5質量%となるように接着剤を添加した。表層の接着剤には、フェノール樹脂を用い、中間層と表面層の接着剤には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いた。
【0044】
ここで、各層の配合を以下の如く、設定したフォーミングマットを作製した。各表層の木質チップの比率を、パーティクルボードの全体の木質チップの総量に対して30質量%(合計で60質量%)とした。また、内部層および中間層の合計の木質チップの比率を、パーティクルボードの全体の木質チップの総量に対して40質量%とした。さらに、各中間層の木質チップの比率を、内部層および中間層の木質チップの15.5質量%(合計で31質量%)とした。
【0045】
得られたフォーミングマットに対して、厚さ9mm、設定密度0.75g/cm3となるように、熱盤の温度180℃、加圧力25kf/cm2、熱圧時間3分の熱圧条件で、熱圧成形することによりパーティクルボードを製造した。
【0046】
[比較例1-1]
実施例1と同様の厚さの市販のパーティクルボードを準備した。実施例1-1のパーティクルボードと相違する点は、中間層を設けていない点である。
【0047】
[比較例1-2]
実施例と同じようにして、パーティクルボードの作製をした。実施例1と相違する点は、中間層の木質チップの大きさが、内部層の木質チップの大きさよりも小さい点であり、実施例1の中間層で用いた木質チップを、内部層に用い、実施例1の内部層で用いた木質チップを、中間層に用いた点である。
【0048】
<釘側面抵抗試験>
JIS A 5908:2015に準拠して、実施例1および比較例1、2のパーティクルボードとなる試験体60に対して、釘側面抵抗試験を行った。具体的には、
図4(a)および(b)に示すように、試験体60に対して、N50の釘62を途中まで打ち込んだ状態で、装置本体61に釘62の両側を係合させた。この状態、装置本体61と試験体60とを引き離す方向に荷重を付加し、試験体60が破壊したときの、荷重を釘側面抵抗力とした。この結果を、以下の表1に示す。
【0049】
<釘頭貫通試験>
ASTM D1037およびJIS A 5908:2015に準拠して、実施例1および比較例1、2のパーティクルボードとなる試験体70に対して、釘頭貫通試験を行った。具体的には、
図5(a)および(b)に示すように、試験体70に対して、N50の釘72の頭部が接触するまで、釘72を打ち込み、釘72の先端が装置本体71の溝部73から突出するように、装置本体71に試験体70を固定した。この状態で、釘72を試験体70の側面方向から引き離すように、釘72に荷重を作用させ、試験体70から釘72の頭部が貫通したとき、荷重を釘頭貫通力とした。この結果を、表1に示す。
【0050】
【0051】
〔結果および考察〕
表1に示すように、実施例1-1の試験体では、比較例1-1、1-2のものに比べて、釘側面抵抗力および釘頭貫通力が高い値となった。これは、実施例1-1は、比較例1-1とは異なり中間層を設け、さらに比較例1-2は異なり、中間層の木質チップの大きさが、内部層の木質チップの大きさよりも大きくしたからであると考えられる。
【0052】
具体的には、実施例1-1では、比較例1-2に比べて、中間層の木質チップは、内部層の木質チップに比べて大きく、拘束力が高いため、内部層の両側を挟み、両側の中間層で、釘側面からの力を受けることができるため、釘側面抵抗力が高まったと考えられる。さらに、中間層を構成する木質チップは、他の層に比べて大きいため、各木質チップ同士が、パーティクルボードの面内方向においてより広い範囲で重なり合い、釘頭から作用する力を、隣接する木質チップも含めた広範囲で受けることができる。これにより、実施例1-1では、比較例1-1、1-2に比べて、釘頭貫通力が大きくなったと考えられる。
【0053】
2.各中間層の最適な割合について
以下に、パーティクルボードにおける各中間層の最適な割合について評価すべく、実施例1-1と同様の方法で、実施例2-1~2-4までのパーティクルボードの試験体を作製した。
【0054】
[実施例2-1~2-4]
実施例2-1~2-4が、実施例1-1と相違する点は、内部層および一対の中間層の木質チップの総量に対する、各中間層の木質チップの割合を、順次、12.5質量%(実施例2-1)、15.5質量%(実施例2-2)、25.0質量%(実施例2-3)、および30.0質量%(実施例2-4)にした点である。なお、実施例2-3は、実施例1-1と同じ条件で製造した試験体である。
【0055】
これら試験体に対して、実施例1-1と同様に、釘側面抵抗試験および釘頭貫通試験を実施し、釘側面抵抗力および釘頭貫通力を測定した。この結果を以下の表2に示す。なお、表2には、実施例2-1~2-4に係る耐釘性能の優位性を明確にするために、比較例1-1の測定結果も合わせて示した。
【0056】
【0057】
〔結果および考察〕
表2に示すように、実施例2-2、2-3の試験体では、実施例2-1のものに比べて、釘側面抵抗力および釘頭貫通力が高い値となった。これは、実施例2-1は、実施例2-2~2-4に比べて、各中間層の割合が少ないためである。一方、実施例2-4の如く、各中間層の割合を30.0質量%にしたとしても、それ以上の効果は得にくい。したがって、実施例2-2の中間層の割合を下限値とし、実施例2-3の中間層の割合を上限値とすることが好ましい。すなわち、内部層および一対の中間層の木質チップの総量に対する、各中間層の木質チップの割合は、15.5質量%以上、25.0質量%以下であることが好ましい。
【0058】
3.木質チップの厚さについて
以下に、パーティクルボードにおける木質チップの厚さの最適な割合について評価すべく、実施例1-1と同様の方法で、実施例3-1~3-4までのパーティクルボードの試験体を作製した。
【0059】
[実施例3-1~3-4]
具体的には、実施例3-1~3-4が、実施例1-1と相違する点は、フレーカ刃物の刃出し量を調整し、内部層および一対の中間層の木質チップの厚さを、順次、0.8mm(実施例3-1)、1.0mm(実施例3-2)、1.5mm(実施例3-3)、および1.8mm(実施例3-4)にした点である。なお、実施例3-3は、実施例1-1と同じ条件で製造した試験体であり、表層の木質チップの厚さも同等の厚さである。
【0060】
これら試験体に対して、実施例1-1と同様に、釘側面抵抗試験および釘頭貫通試験を実施し、釘側面抵抗力および釘頭貫通力を測定した。この結果を以下の表3に示す。なお、表3には、実施例3-1~3-4に係る耐釘性能の優位性を明確にするために、比較例1-2の測定結果も合わせて示した。
【0061】
【0062】
〔結果および考察〕
表3に示すように、実施例3-1、3-2の試験体では、実施例3-3、3-4のものに比べて、釘側面抵抗力および釘頭貫通力が高い値となった。これは、実施例3-1、3-2は、実施例3-3、3-4に比べて、木質チップの厚さが薄いため、木質チップが厚さ方向に緻密に積層されたからであると考えられる。実施例3-3、3-4の如く、各中間層の木質チップの厚さが1.0mmを超えた場合、中間層を構成する木質チップ同士の拘束力が低下してしまい、釘側面抵抗力および釘頭貫通力を高めることができない。
【0063】
したがって、実施例3-1の木質チップの厚さを下限値とし、実施例3-2の木質チップの厚さを上限値とすることが好ましい。すなわち、内部層および一対の中間層の木質チップの総量に対する、内部層および各中間層の木質チップの厚さは、0.8mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。なお、木質チップの厚さは、薄ければ薄いほど好ましいが、製造上の観点から、木質チップの厚さは、0.6mm以上であることが好ましい。
【0064】
4.接着剤の最適量について
以下に、パーティクルボードにおける中間層および内部層の接着剤の最適量、および表層の接着剤の影響について評価すべく、実施例1-1と同様の方法で、実施例4-1~4-7までのパーティクルボードの試験体を作製した。
【0065】
[実施例4-1~4-7]
具体的には、実施例4-1~4-4が、実施例1-1と相違する点は、中間層および一対の内部層の総量に対する、内部層および一対の中間層の接着剤の割合(添加率)を、順次、3質量%(実施例4-1)、5質量%(実施例4-2)、10質量%(実施例4-3)、および15質量%(実施例4-4)にした点である。なお、実施例4-2は、実施例1-1と同じ条件で製造した試験体である。なお、中間層および一対の内部層の総量は、これらの層の木質チップの質量と、これらの層に添加された接着剤の質量の合計である。中間層および一対の内部層の割合は、中間層および一対の内部層の接着剤の質量を、上で算出した合計となる質量で除算した値である。
【0066】
さらに、実施例4-5~4-7が、実施例1-1と相違する点は、表層の総量に対する、表層の接着剤の割合(添加率)を、10質量%とし、表面層の接着剤を、順次、10質量%(実施例4-5)、15質量%(実施例4-6)、および20質量%(実施例4-7)にした点である。
【0067】
[比較例4-1、4-2]
比較例4-1として、実施例4-1と同等の厚さを有した合板の試験体を準備した。比較例4-1として、比較例1-2と同様のパーティクルボードの試験体を準備した。
【0068】
これら試験体に対して、実施例1-1と同様に、釘側面抵抗試験および釘頭貫通試験を実施し、釘側面抵抗力および釘頭貫通力を測定した。さらに、JIS A 5908:2015に準拠して、これらの試験体に対して、表面層の剥離強度を測定した。具体的には、試験体の表面に剥離用治具を接着し、試験体の中間層近傍の剥離強度を測定した。これらの結果を以下の表4に示す。
【0069】
【0070】
〔結果および考察〕
表3に示すように、実施例4-1~実施例4-4の試験体では、内部層および中間層の接着剤の割合が増加するに従って、試験体の剥離強度も増加することがわかった。また、剥離強度が増加に伴い、釘側面抵抗力および釘頭貫通力も増加する。
【0071】
さらに、実施例4-2~実施例4-4の試験体では、比較例4-1、比較例4-2、実施例4-1のものに比べて、釘側面抵抗力および釘頭貫通力が高い値であった。したがって、実施例4-3の接着剤の割合を下限値とし、実施例4-4の接着剤の割合を上限値とすることが好ましい。すなわち、内部層および一対の中間層の総質量に対する、内部層および一対の中間層に塗布された接着剤の割合(添加率)は、5質量%以上、15質量%以下であることが好ましい。
【0072】
さらに、実施例4-5~実施例4-7の試験体では、表層の接着剤の割合を変更しても、釘側面抵抗力および釘頭貫通力には、変化がなかった。したがって、表層の接着剤の添加率による釘側面抵抗力および釘頭貫通力の効果は少ないことから、釘側面抵抗力および釘頭貫通力は、内部層および一対の中間層に塗布された接着剤の割合(添加率)に比べて、表層に塗布された接着剤の割合(添加率)が少ないことが好ましいと考えられる。
【0073】
5.内部層および中間層の木質チップの最適量について
以下に、パーティクルボードにおける内部層および中間層の木質チップの最適量を確認すべく、実施例1-1と同様の方法で、実施例5-1~5-3、比較例5-1、5-2のパーティクルボードの試験体を作製した。
【0074】
[実施例5-1~5-3]
具体的には、実施例5-1~5-3が、実施例1-1と相違する点は、内部層、一対の中間層、および両側の表層の木質チップの総質量に対する、内部層および一対の中間層の木質チップの総質量の割合を、40質量%(実施例5-1)、60質量%(実施例5-2)、および80質量(実施例5-3)とした点であり、実施例5-1は、実施例1-1と同じ条件で製造した試験体である。なお、内部層および一対の中間層の木質チップの総質量の割合は、パーティクルボードで用いた木質チップ全体の質量に対して、これらの層の木質チップの質量を除算した値である。
【0075】
[比較例5-1、5-2]
比較例5-1として、内部層および一対の中間層の木質チップの総質量の割合を、30質量%となるパーティクルボードを作製しようとしたが、1つの木材から切削し、切削した木質チップを分級の段階で、この表層の割合となる木質チップを確保するのが難しいことが分かった。さらに、比較例5-2として、内部層および一対の中間層の木質チップの総質量の割合を、90質量%となるパーティクルボードを作製しようとしたが、表面層の厚さを十分に確保し難いことがわかった。特に、表面層を研磨すると、中間層が露出するおそれがあることがわかった。これら試験体に対して、実施例1-1と同様に、釘側面抵抗試験および釘頭貫通試験を実施し、釘側面抵抗力および釘頭貫通力を測定した。1つの木材から切削し、切削した木質チップを分級の段階で、この表層の割合となる木質チップを確保するのが難しいことが分かった。
【0076】
【0077】
〔結果および考察〕
比較例5-1、比較例5-2の結果から、パーティクルボードの生産性およびパーティクルボードの表面の品質を考慮すると、内部層、一対の前記中間層、および両側の表層の木質チップの総質量に対する、内部層および一対の中間層の木質チップの総質量の割合は、40質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0079】
1:パーティクルボード、11:内部層、13:表層、12:中間層、11a:内部層の木質チップ、12a:中間層の木質チップ、13a:表層の木質チップ