(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】地熱を発生させるプロセスおよび方法
(51)【国際特許分類】
F03G 4/00 20060101AFI20240708BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
F03G4/00 501
E21B43/00 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021058275
(22)【出願日】2021-03-30
(62)【分割の表示】P 2016573722の分割
【原出願日】2015-03-09
【審査請求日】2021-04-28
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-06
(32)【優先日】2014-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516268312
【氏名又は名称】グリーンファイア・エナジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GREENFIRE ENERGY INC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミューア,マーク・ピィ
(72)【発明者】
【氏名】イーストマン,アラン・ディ
(72)【発明者】
【氏名】バリーク,ランディ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ミューア,ジョン・アール
【合議体】
【審判長】八木 誠
【審判官】山本 信平
【審判官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0174581(US,A1)
【文献】特開2010-14359(JP,A)
【文献】特開平7-190503(JP,A)
【文献】米国特許第4047093(US,A)
【文献】特表2010-532842(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0100002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00
E21B43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を生成するためのプロセスであって、
注入ウェルを通じて第
2の熱伝導流体を第
1の熱伝導流体を含む地熱で加熱された層に注入するステップと、
前記注入ウェルと流体接続され前記地熱で加熱された層内に配置される中間ウェル経路において間接的な熱交換を介して前記第
2の熱伝導流体を加熱するステップと、
前記中間ウェル経路と流体接続した生成ウェルを通じ
て加熱された
前記第
2の熱伝導流体を回収するステップと、
前記注入ウェルと前記生成ウェルに流体接続した電力生成ユニット内におい
て回収された加熱された
前記第2の熱伝導流体内に含まれた熱エネルギーを変換するステップと、を備え、
前記中間ウェル経路は、穿孔されたケーシングと、前記穿孔されたケーシング内に配置され前記層から前記第2の熱伝導流体を流体分離する1またはそれ以上の流れ導管とを備え、
前記注入するステップおよび前記回収するステップは、熱サイフォン循環をさらに含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
地熱分野における中心的なパラドックスは、潜在的な地熱はすべての化石燃料を合わせたよりも少なくとも一定規模大きいにも関わらず、実務上は全体的なエネルギーポートフォリオ上地熱は約1%のみしか構成しない点にある。従来の地熱は電力を生み出すタービンを動かすために地熱で温められた水を活用する。しかしながら、潜在的な地熱電力生成と実際の地熱電力生成との差異を埋める地熱電力生成のコスト効率の良い適切な熱、水および岩石透過性を有する場所は比較的少ない。
【背景技術】
【0002】
自然の地熱場所の少なさに対処するために、「地熱促進システム」(EGS)のための技術開発に過去40年にわたって約1,000,000,000USドルが使われた。EGSは自然熱と水の入手容易性を必要とするが、乾いた岩石内に透過貯留層を創出(「設計」)するために圧力を共有する技術を利用する。透過性は自然地熱場所をまねて岩石構造を通じて熱を運ぶ水の十分な流れをもたらすに違いない。
【0003】
安定した進歩がなされているものの、EGSはまだ他の電力生成形態とコスト競合できるかのボーダー上にある。中心的な問題は岩石構造を通じて注入ウェルから生成ウェルへ十分な量の温水の生産の困難性である。岩石構成物の熱伝導係数は概ね低いので、温水は表面エリアを最大化するためにほころびたゾーンの小さなひび割れを通じざるを得ず、望まれる熱は落ちる。このプロセスは注入ウェルを通じてまた高温岩石層を通じて水を下に流す大きなポンプと、電力生成のための表面に温水を持ち上げる追加的なポンプを要する。ポンプ使用それ自体はエネルギー集約的であり、全体的な電力出力上重大な寄生的な負担を課す。
【0004】
閉鎖ループシステムは世界中の建物を温めたり冷やしたりするための地中熱ヒートポンプ(GSHP)地熱機器において非常に一般的である。概して、垂直ウェルが掘削されパイプが孔内を下に延びるか問題になっている建物付近の水平掘削内にコイルシステムが配置される。近くに適切な池又は湖があれば水の本体内に配置されるかもしれない。すべてのGSHPの機器において、表面下を循環するパイプは非常に浅く最終使用は直接の加熱または冷却が非常に局所集中する。GSHPは概して一次品として電力を生産しないので、その設計上タービンや疑似タービン装置をパーツとして有しない。
【0005】
こうして電力電力生成のために閉鎖ループの地熱手法はあまり使えない。いくつかの要因がこの比較的な無活動の要因であろう。たとえば、閉鎖ループタービン内の流体と周辺岩石または流体間の良い熱伝導を得るためにチューブの直径は比較的小さくなければいけない。しかしながら、熱伝導流体としての水は高圧でのポンピングを要する重大な降圧を生じる。このシステム上の規制的な負荷は全体的なプロジェクト経済性に有害である。さらに、良い熱効率を得るためのより小さいタービンは、多くの小さいチューブ(付随的に掘削コスト増加を伴う)かシステムを通じたより大きな圧力を要して、タービンを通じうる水量を減少させ、増加した圧力に耐えるために、ポンピングのまたはおそらくパイピングそれ自体のコスト増加につながる。
【0006】
これらまたは他の問題を解決するためにいくつかのアプローチが試みられてきた。たとえば、様々な地熱方法がUS特許およびUS特許公開20110048005、7059131、20110067399、20120144829、20130192816、20120174581、20100180593および20070245729その他に開示されている。それにもかかわらず、地熱電力生成は多くのパートで非経済のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
1つの態様において、ここに開示された実施形態は電力生成のためのプロセスに関する。プロセスは第1の熱伝導流体を注入ウェルを通じて第2の熱伝導流体を含む地熱で加熱された層への注入を含む。第1の熱伝導流体は間接的熱交換を通じて注入ウェルと流体接続した中間ウェル経路において加熱され地熱で加熱された層内に配置される。加熱された第1の熱伝導流体は中間ウェル経路と流体接続した生成ウェルを通じて回収される。回復された第1の熱伝導流体内に含有された熱エネルギーは注入ウェルおよび生成ウェルと流体接続した電力生成ユニット内において変換される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
別の形態において、ここに開示された実施形態は電力生成のためのプロセスに関する。プロセスは注入ウェル、中間ウェル経路、生成ウェルおよび電力生成ユニットを含む閉鎖ループシステムを通じて超臨界の二酸化炭素を循環させることを含む。地熱で加熱された層は超臨界の二酸化炭素は自然または人工発生した熱伝導流体を含んで間接的熱交換を介して加熱される。加熱された超臨界の二酸化炭素に含まれた熱エネルギーは電力生成ユニット内において電力に変換される。
【0009】
別の態様では、ここに示された実施形態は電力生成のためのシステムに関する。システムは第1の熱伝導流体を第2の熱伝導流体を含む地熱で加熱された層へまたはここから運搬する注入ウェルおよび生成ウェルを含む。システムはまた、注入ウェルを生成ウェルに流体接続し第1の熱伝導流体を第2の熱伝導流体に流体分離する中間ウェル経路を含む。中間ウェル経路は第2の熱伝導流体を含む地熱で加熱された層内に配置され第1の熱伝導流体は熱伝導層および第2の熱伝導流体によって間接的に加熱される。電力生成ユニットもまた提供され、加熱された第1の熱伝導流体から電力生成するよう設計される。
【0010】
他の態様および利点以下の説明および添付の請求の範囲により明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この実施形態による電力生成システムの単純化されたフローダイアグラムで。
【
図2】この実施形態による穿孔された中間ウェル経路の断面図である。
【
図3】この実施形態による複数の電力生成ユニットを含む電力生成システムの単純化されたフローダイアグラムである。
【
図4】この実施形態による複数の電力生成ユニットを含む電力生成システムの単純化されたフローダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
ここに開示された実施形態は地熱電力生成のためのシステムおよび方法に関する。より具体的に、ここに開示された実施形態は地熱で加熱された層内の伝導、対流、移流を介して間接的に加熱された超臨界の熱伝導流体を好適に使用する閉鎖ループシステムを用いる電力生成のためのシステムおよび方法に関する。
【0013】
この実施形態による地熱システムは地質学層を通じて走るウェルシステムを含むかもしれない。この形成物の透過性は自然に発生する可水圧破砕、圧力共有、装薬、酸化または熱共有のようなある範囲の技術を用いて促進されるかもしれない。
【0014】
地層は地熱および地層流体(すなわち第1の熱伝導媒体または熱伝導流体)を含み、間接的熱交換を介して、ウェルシステムを通じて循環する循環流体、第2の熱伝導媒体または流体にその熱を伝導する。地層流体は水、塩水または炭化水素またはその混合物を含むかもしれない。いくつかの実施形態では地層流体は水または塩水である。他の実施形態では地層流体は液体炭化水素または天然ガスを含む液体炭化水素の混合物である。炭化水素は層の温度または圧力状態において液体であるかもしれない。
【0015】
地層に含まれた地層流体はいくつかの実施形態において自然発生するか、層内に既に存在する。他の実施形態では、地層流体は1またはそれ以上のウェルで地熱で加熱された層内に注入するなどにより地層に追加されるかもしれない。
【0016】
形成物に含まれる地層流体を含む透過性のある地熱で加熱された層は約100℃から500℃の範囲の温度にあるかもしれない。いくつかの実施形態では、層および地層流体は約150℃から350℃の範囲の温度にあるかもしれない。
【0017】
ウェルシステムは注入ウェルと生成ウェルを含むかもしれず、いずれかは垂直方向にまたは一方向に掘削される。第2の熱伝導流体が地上の水やシステム外の岩石に露出せず循環するよう注入ウェルと生成ウェルを接続して連続的なウェルシステムを形成する追加的なウェルを含むかもしれない。「中間ウェル経路」と称されるこの第3のウェルは概ね地層流体を含む地熱で加熱された層内に配置される。中間ウェル経路の全体長は地熱で加熱された形成物または一定レベル以下の地層流体内にある必要はないが、いくつかの実施形態では中間ウェル経路は完全に地熱で加熱された形成物内にある。上では3つの分離したウェルで説明されているが、この実施形態によるシステムは単一の一方向に掘削されたウェルのような単一のウェルまたは複数のウェルを介して形成されるかもしれない。たとえば、端部から端部までU形状を実現するためにコイル化されたチューブ掘削も可能である。代替的に、コイル化されたチューブまたは他の素材は注入ウェルまたは中間ウェルを通じて挿入され、その後に循環を実現するために生成ウェルに引き上げられてもよい。
【0018】
操作中、第2の熱伝導流体は注入ウェルを降り中間ウェル経路を通じて循環する。中間ウェル経路において、注入ウェルの下層部と同様に、第2の熱伝導流体は地熱で加熱された層とその内部に含まれた地層流体の熱で間接的な熱交換で加熱される。このようにして、間接的な熱交換は層それ自体から導かれた熱エネルギーとたとえば伝導または対流によって中間ウェル経路にもたらされるかもしれない地層流体からの熱エネルギーを含むかもしれない。このようにして、システムは少なくとも1つの透過性層が存在し、地層流体地熱で加熱される位置に配置され、その熱はその後伝導または対流によってパイプシステム周辺に伝導される。その正味の効果はエネルギーが常に利用可能で層内の自然流により安定して補充されることである。
【0019】
中間ウェル経路で第2の熱伝導媒体が加熱された後、第2の熱伝導媒体は生成ウェルによって表面に運ばれる。第2の熱伝導流体はその後注入ウェルと生成ウェルの両方に流体接続した電力生成ユニットを起動してその内部に含まれた熱エネルギーを変換するために電力生成ユニットに提供される。いくつかの実施形態では、加熱された第2の熱伝導流体を運搬する生成ウェルは周囲の地質学層または空気との熱損失を防止するために絶縁される。電力生成ユニットは1またはそれ以上のタービン、タービンおよび電力生成機、CO2タービン、疑似タービン、これらを含む線形または非線形の動きにより電気的または機械的な力を引き出すタービン、ランキンサイクル電力生成システム内の熱交換器、ブライトンサイクルタービンまたは他の熱から有用な仕事または力をもたらす任意の機構を含むかもしれない。第2の熱伝導流体に含まれたエネルギーの変換に従い、第2の熱伝導流体は再循環のために電力生成ユニットから注入ウェルに向かうかもしれない。
【0020】
全体的に、ここに開示された実施形態による電力生成システムはこうして注入ウェルを通じて第2の熱伝導流体を循環させるための閉鎖ループシステム、中間ウェル経路、生成ウェルおよび電力生成ユニットを含むかもしれない。システムを通じて循環する第2の熱伝導流体は1またはそれ以上の二酸化炭素、窒素、アンモニアおよび/または炭素数C1からC6を有するアミン、炭素数C1からC8を有する炭化水素、炭素数C1からC10と塩素またはフッ素に置換される1またはそれ以上の水素とを有する炭化水素を含むかもしれない。いくつかの実施形態では、循環流体は超臨界の二酸化炭素である。
【0021】
システムはまたバルブ、操作およびその他のシステムを調節操作する要素を含む。いくつかの実施形態では、システムはウェルシステムを通じて第2の熱伝導流体を循環させるためのポンプを含むかもしれない。他の実施形態では、ウェルシステムを通じた第2の熱伝導流体の循環は部分的にまたは完全に循環流体内の密度勾配から生じる。この循環形態は一般的に「熱サイフォン」と知られている。熱サイフォン循環が見込まれる場では、システムは最初に循環する熱伝導流体を供給して圧する1またはそれ以上の初期ポンプを含むかもしれない。
【0022】
図1を参照して、この実施形態の電力生成システムの単純化されたフローダイアグラムが図示される。電力生成システムは地表面から地熱で加熱された層200に向けて地下に延びる単一の注入ウェルまたは注入ウェルの集まりかもしれない注入ウェル100を含む。電力生成システムはまた地表面から地下に延びる単一の生成ウェルまたは生成ウェルの集まりかもしれない生成ウェル120を含む。
【0023】
注入ウェル100の下方端部は中間ウェル経路110の第1の端部と流体連結され、中間ウェル経路は部分的または全体的に地熱で加熱された層200内に配置され、層の孔または割れ目スペース内に配置された熱伝導流体を含み、伝導または対流によって層内を動くかもしれない。生成ウェル120の下側端部は中間ウェル経路110の第2の端部と流体結合する。
【0024】
注入ウェル100と生成ウェル120のの上側端部は導管150、130を介してそれぞれ流体結合され、それぞれ電力生成ユニットと結合される。導管150、130は電力生成ユニットを起動し、循環流体の注入または回復を調節するために生成ウェル120と注入ウェル100を接続するために必要なポンプ、パイプおよび調節システム(示されていない)を含むかもしれない。
【0025】
注入ウェル100は地熱で加熱された層内の第1の深さへの掘削孔を介して配置される。掘削孔はいくつかの実施形態では収納されるかセメント固定される。同様に、生成ウェル120は地熱で加熱された層内の第2の深さへの掘削孔を介して配置され、第2の深さは注入ウェルの深さと同じか異なるかもしれない。生産掘削孔もまたいくつかの実施形態では収納されるかセメント固定される。いくつかの実施形態では、生産掘削孔の下側端部の深さは注入ウェル掘削孔の深さよりも小さい。
【0026】
中間ウェル経路110はまた掘削孔を通じて配置されるかもしれない。中間ウェル経路110は注入ウェル100と生成ウェル110の1つまたは両方の連続、または別途掘削された孔かもしれない。中間ウェル経路110もまた収納された掘削孔かもしれない。
【0027】
いくつかの実施形態において中間ウェル経路110は直接掘削を介して配置されるかもしれない。比較的直線の路として図示されているけれども、中間ウェル経路110は仰角や地層を含む地層流体内に残る方向に様々な変化を含む。いくつかの他の実施形態では、中間ウェル経路110は地熱で加熱された層を横断する形態で、循環する流体は注入ウェル100から生成ウェル120(すなわち現在の熱交換に類似する)に沿って、層内で温度勾配が自然発生するという利点を有して、層温度上昇に遭遇する。
【0028】
いくつかの実施形態では、中間ウェル経路110は注入ウェル100の深さがほぼ生成ウェル120と同じである水平に配置されてもよい。他の実施形態では、中間ウェル経路水平方向から±75°などの一定の角度を有して配置されてもよい。
【0029】
中間ウェル経路110は注入ウェル100と生成ウェル120を流体接続する単一のパイプまたは複数のパイプを含むかもしれない。パイプは鋼または腐食耐性のある鋼を含む他の金属、または鋼補強パイプを含む熱プラスチック、ゴム、またはエラストマーで形成される。使用される素材のタイプは地層流体、地熱で加熱された層の状態(温度、圧力など)、循環流体および加熱部の全体的な長さまたは表面部に依存するかもしれない。たとえば、比較的短い中間ウェル経路は高い導電素材を有し、長いパイプ路は循環流体を運搬するためにより低い導電素材の使用が可能かもしれない。
【0030】
図1で示したシステムでは、循環する流体の流れは注入ウェル100から中間ウェル経路110を通じて時計回りに進み、循環流体は間接的熱交換を介して層および周囲の熱伝導媒体(地層流体)とともに生成ウェル120、伝導ライン130を通じおよび電力生成ユニット140内で加熱され、今は地熱で加熱された熱伝導流体(循環流体)からの熱および/または圧力の形態のエネルギーは電力または他の有用な仕事に変換される。熱伝導流体はその後伝導ライン150を通じて電力生成ユニットから注入ウェルに運搬されて循環が再開する。
【0031】
伝導ライン130、150は注入ウェルおよび生成ウェルを電力生成ユニットに接続するために必要な長さかもしれない。いくつかの実施形態においては、注入ウェルおよび生成ウェルへの一定方向の掘削は伝導ラインをほんの少し長くして電力生成ユニットの位置から始めてもよいことが想定される。
【0032】
上に記載したとおり、中間ウェル経路110は注入ウェル100から生成ウェル120へ地熱で加熱された層を動くにつれて段階的に増えるおよび/または減る。循環流体はここで循環内のすべてのポイントにおいて臨界ポイント(すなわち臨界圧力と臨界温度の双方を超える)上またはそれを超えて維持される。結果として、パルス流または高低の密度の循環流体の隣接ポケットは昇進変化が顕著な場所であっても形成されない。ここでの実施形態による循環流体または循環流体混合物の臨界点を超えた操作は地層内または電力生成に適さない位置での好適な地熱電力生成をもたらす。
【0033】
いくつかの実施形態においては、ウェルシステムを循環する第2の熱伝導流体は臨界点を超えた二酸化炭素、sCO2である。臨界点を超えた二酸化炭素は熱伝導流体として水を超えるいくつかの利点を有する。たとえば、sCO2の密度は温度に応じて素早く変化させることができる。この密度変化は熱サイフォンとも呼ばれる密度サイフォンの始まりを起こし、ウェルシステムを通じたsCO2の循環を起こし、おそらくシステム起動中を除き機械ポンピングを全く要しないかほとんど要しない。さらに、sCO2タービンは同一の圧力、温度および流率において蒸気タービンよりも効率的であり、比較対象の出力上記タービンに比べて著しく体積が小さいという利点を有する。これらの効果の両方が類似の水を熱伝導媒体として使用した閉鎖ループシステムと比較してシステムの有用性を増す。
【0034】
注入ウェル100、中間ウェル経路110および生成ウェル120の直径は同一または異なる。いくつかの実施形態では、生成ウェル120の直径は中間ウェル経路110よりも大きく、生成ウェル120内での循環する熱伝導流体からの熱損失を少なくするかもしれない。熱損失はまた注入ウェル120と表面伝導ライン130を断熱することによっても低減できる。他の実施形態では、生成ウェル120は注入ウェル100よりも小さい直径を有する。それぞれのセクションの直径は循環する流体の流率、圧力降下制限、層の温度、望ましい循環流体の温度上昇、圧力降下による温度損失に依存する。
【0035】
他の実施形態では、注入ウェルの直径は中間ウェル経路と生成ウェル双方の直径よりも小さくてもよい。さらに他の実施形態では、生成ウェルと中間ウェル経路の直径は表面から注入ウェルとの交差ポイントまでの距離が増すにつれて段階的に減少する。直径の変化は中間ウェル経路における荒れを好適に減少させ、超臨界の循環流体への熱伝導を改善する。他の実施形態では、1またはそれ以上の乱流を減少させる装置は循環流体への熱伝導を促進するために中間ウェル経路に配置されてもよく、システムを通じた全体的な圧力低下が懸念されるものの、超臨界の循環流体の使用はそのような装置を通じて顕著な圧力降下を生じない。したがって、熱伝導の増した恩恵はわずかな圧力降下の短所を上回る。
【0036】
図1に示されたように、単一の中間ウェル経路は注入ウェル100と生成ウェル120を内部接続する。いくつかの実施形態では、2またはそれ以上の中間ウェル経路110は注入ウェル100と生成ウェル120を流体接続するために使用される。複数の中間ウェル経路110は同一の高度にあるかもしれず、同一層の異なる高度または軌道にあるかもしれず、同一または異なる地層流体を含有する異なる層内で異なる高度にあるかもしれない。たとえば、第2の中間ウェル経路(示されていない)注入ウェル100と生成ウェル120を流体接続して層210内に配置される。複数の注入ウェル100および中間ウェル経路は共通の生成ウェル120に可熱された循環流体を供給するために使用される。
【0037】
図1に示されたような中間ウェル経路110は層から循環流体を流体分離する単一のパイプまたはケーシングかもしれない。地層流体からの熱伝導は上に記載したとおり熱を有し層内の自然流によって安定して補充されるが、ここでの実施形態は熱伝導を促進するために中間ウェル経路に近い地層流体の流れの励起を期待する。いくつかの実施形態では、中間ウェル経路110に近い層では、中間ウェル経路周辺の地層流体の流れを改善して励起するかもしれない。たとえば、中間ウェル経路周辺の層は、爆破、水破、推進励起、酸化などの方法で砕かれてもよい。他の例として、ドラフト井が中間ウェル経路の近い層内の地層流体の流れを分けるために使用され、直接熱伝導のための層を通じた熱伝導流体のポンピングの際通常使用され部分的な流れのみ誘導し、循環流体への熱伝導における改善と比較してポンピングへの熱損失は受け入れ可能である。中間ウェル経路に近い流体の流れを励起する他の方法もまた使用されるかもしれない。
【0038】
図2に示されたような他の実施形態では、中間ウェル経路110は穿孔されたケーシング112および穿孔されたケーシング内に配置され層から熱伝導流体を流体分離する1またはそれ以上の流れ導管114(チューブまたはパイプ114)を誘導する。中間ウェル経路の最終端部において、個別のウェル114はヘッダにおいてそれぞれ分割されても統合されてもよく、注入ウェル100および生成ウェル120と関連し、またはその内部に配置される。
【0039】
穿孔されたケーシング112は穿孔116を通じて管状スペース118内へまたは管状スペース118から外へ地層流体の流れを許容する。管状スペース内の空洞体積は周辺の層よりも著しく大きく、熱伝導流体に近接する地層流体の循環を増し、地層流体の循環流体への対流、移流および/または導電熱伝導を改善する。外部井の穿孔は油田またはガス田の完成に用いられる形状破砕などの任意の便利な方法で実行される。
【0040】
複数のチューブまたはホースが用いられるならば、そのチューブやホースは1群のパイプ、チューブ、またはホースを一体に保持するために個別または束でラップされた穿孔されたパイプ内に挿入される。たとえば、穿孔されたセクション内に配置された複数のより小さなチューブは螺旋状にラップされた2またはそれ以上のチューブまたはホースを含むかもしれず、外部ラッピング要素によって一体に保持される。他の実施形態では、2またはそれ以上のチューブまたはホースは1またはそれ以上の仕切り要素によって対にされるかもしれず、露出した表面エリアからの損失を最小化しつつ、設定を補助する。
【0041】
内部流媒体114の配置された中間ウェル経路110の穿孔と地層流体から循環流体を流体分離するための注入ウェルおよび生成ウェル110の封止はシステム設定コストを増加するかもしれない。しかしながら、熱伝導の促進は管状スペース118内の地層流体の循環の増加から生じても、より小さな直径の複数のパイプを有して熱交換表面エリアの増加から生じても著しく追加コストが上回る。いくつかの実施形態では、たとえば、熱伝導の促進は設定コストを下げるだけでなく、注入ウェルと生成ウェルを接続するときに1方向への正確な掘削を改善する著しく短い中間ウェル経路の使用を許容するかもしれない。
【0042】
中間ウェル経路110の全長は、以上に述べたとおり、いくつかのファクターに依存するかもしれない。たとえば、循環流体内の望ましい温度上昇に要する長さは地熱で加熱された層内の温度および利用可能な熱、熱伝導パイプ(中間ウェル経路およまたはその内部に配置されたチューブ)の構造の素材、ユニット長あたりの熱交換表面エリア、地層流体および層の特性(導電性、透過性、多孔性など)、他の要因に依存する。ここで説明された実施形態は熱伝導効果を促進するかもしれないが、いくつかの実施形態では、中間ウェル経路の要する長さは1kmよりも長く、2kmよりも長く5kmよりも長いかもしれない。
【0043】
中間ウェル経路の長さが増すにつれ、電力生成ユニットから生成ウェルへ循環流体を運搬するための伝導パイプに必要な長さは比例的に増加する。表面上のパイプを最小化するまたは表面化に最少に位置させるために、注入ウェルと生成ウェルの1または双方は一方向を向いたウェル(すなわち垂直でない)かもしれず、表面端部が電力生成ユニットに近接して位置し、表面下の端部が十分な長さの中間ウェル経路のために電力生成ユニットからそれる。
【0044】
図3および4は伝導パイプ長を効果的に最小化する代替的な実施形態を図示し、2またはそれ以上の電力生成ユニットが連続して接続される。
図3に示されるように、2つの電力生成ユニット310、312は連続して接続される。循環流体は電力生成ユニット312から注入ウェル314に注入されて中間ウェル経路316内で加熱される。加熱された循環流体はその後生成ウェル318内で回復され電力生成のために電力生成ユニット310に伝導される。電力生成に続いて、利用された循環流体は電力生成ユニット310から注入ウェル320に移動されて中間ウェル経路322内で加熱される。加熱された循環流体は生成ウェル324内で回復され電力生成のために電力生成ユニット312に伝導される。
【0045】
図3に示された中間ウェル経路322は中間ウェル経路316よりも著しく短いけれども、図は縮尺通りではなく3次元システムを正確に描いていないため、実際の長さは同じくらいかもしれない。こうして、それぞれの電力生成ユニット310、312からの電力生成は同様かもしれない。わずかまたは著しい長さの違いが生じるところでは、他のシステム変数が同様の電力生成輪郭となるために調節されるかもしれない。たとえば、より短い中間ウェル経路316はより長い中間ウェル経路322よりも深いところに配置されるかもしれず、より高い温度の層および地層流体に晒されて同様に循環流体出力断面を達成する。代替的に、電力生成は電力生成ユニット間で変化されるかもしれない。たとえば、第1の電力生成ユニット312は10MWの電力を生み出すためにCO2タービンを有して設計され、第2の電力生成ユニット310は20MWの電力を生み出すために複数のCO2タービンを有して設計され、追加的な中間ウェル経路長が電力生成増加をもたらすかもしれない。中間ウェル経路の設計はサイズに関わらず商業的に利用可能なタービンを効果的に活用して調節され、所定のキャパシティから実質的に任意の増加状態で操作された耐性を効果的に活用する。
図3に示されたような複数の電力生成ユニットサーキットでは、中間ウェル経路は同様または異なる方向または高度かもしれず、同様または異なる建築の素材を使用し、一方は穿孔された中間ウェル経路を有し他方は持たないような同様または異なる熱伝導ネットワークを含むかもしれない。
【0046】
図4の実施形態に示されるように、複数の電力生成ユニットは連続して接続される。1つの電力生成ユニットから注入ウェル412を通じた循環流体は中間ウェル経路414内で加熱され生成ウェル416内で回復され、加熱された循環流体を第2の電力生成ユニットにもたらす。ここで説明された連続は複数の注入ウェル、電力生成ウェルおよび生成ウェルを有して何回も繰り返される。望ましいまたは地熱で加熱された層との使用に耐えうるリピートユニットには多くの複製がある。
【0047】
図4に示されたような複数の電力生成ユニットサーキットは
図3に示されたのと同様で、中間ウェル経路は同様または異なる方向または高度かもしれず、同様または異なる構築素材を用い、一方は穿孔された中間ウェル経路を有し他方は持たないような同様または異なる熱伝導ネットワークを含むかもしれない。異なる高度および方向の使用は層からの利用可能な利用可能な熱の捕捉を改善する。いくつかの実施形態では、ここでの実施形態によるネットワーク化されたウェルシステムは30年の稼働期間にわたって、地熱資源内に利用可能な熱の20%以上を補足するよう設計され、他の実施形態では25%以上である。
【0048】
さらに表面パイプ路を最小化するために
図3および
図4の実施形態は電力生成に関する弾力性を提供する。高い要求のピリオドから低い要求のピリオドまで電気サイクルへの要求はたとえば暖かい日中の空調装置に電力を与える要求の増加から来るかもしれない。
図3および
図4に示されたループシステムはより小さなタービンおよび電力生成機のネットワークを提供するかもしれず、こうして管理された出力が許容される。たとえば、パイプとバルブ電力生成ユニット周辺の循環流体の部分の迂回を提供するかもしれず、これに関連して電力ユニットからの電力出力の低下をもたらすかもしれない。代替的にまたは追加的に、パイプおよびバルブは電力生成ユニット周辺の循環流体を完全に迂回して提供されるかもしれない。
【0049】
部分的にまたは完全に電力生成ユニットを迂回するとき、循環流体内の望ましくない温度上昇を避けるために、電力生成を伴わずに循環流体から熱の一部を抜き出す膨張機、冷却機、熱交換ユニットまたは他の装置が提供されるかもしれない。流率および他の変形もまた地熱で加熱された層から引き出す熱量を減少させて調節される。たとえば、穿孔されたパイプを含み4つの内部熱交換パイプを含む(
図2の114)中間ウェル経路のために、1またはそれ以上のパイプを通じる流れはバルブなどにより制限されるかもしれず、これによりそのセクションの循環流体の流率を増し熱交換エリアの25%、50%、または75%を除去し、ウェル内セクションを通じる層から引き出すエネルギーの減少をもたらす。次の電力生成ユニットの迂回または部分的迂回に続き、次の中間ウェル経路は同様のバルブ構成によるなどして、後に続く電力生成ユニットでの電力生成のために必要なエネルギーを提供するよう設計されるかもしれない。他の実施形態では、複数の中間ウェル経路がタービンにエネルギーを提供することが要求される部分などで、1またはそれ以上のこれらのラインは流率を調節し電力生成をもたらすために分岐するかもしれない。
【0050】
図3および
図4のループシステムはこうして電力生成弾力性を提供し、予測可能なベースロード電力キャパシティと5分、15分または60分のインターバルのような短い時間ピリオドでの相当なパーセンテージによる出力電力の低下が可能な反応の速い弾力的な電力低下率との唯一無二の組み合わせをもたらす。ループシステムは追加的に表面露出または表面近くの設置面積または表面上の伝導パイプを最小化し、低排出または無排出と、水の最少消費または無消費、および他の魅力的な貢献を有する。可能な時に高い電力生成収入の獲得の弾力性は重要なターンダウン区別を提供する一方で他の再生可能エネルギーからのループシステムが現在思考され、また、利用可能である。
【0051】
上に述べたとおり、ここで開示された実施形態は地熱で加熱された層から流体分離されたパイプシステムを通じて循環する熱伝導流体の地熱による加熱を介して十分な電力生成を提供する。循環流体は超臨界流体であり、いくつかの実施形態では超臨界の二酸化炭素かもしれない。超臨界の二酸化炭素(sCO2)は水などの他の熱伝導流体に対して、1)sCO2は水よりも粘度が低く小さい直径のパイプやチューブをより容易に動くことができ、こうしてsCO2の熱キャパシティは水よりも低くても一度により多くの熱を除去できる。2)システムウェルの注入側と生成側の温度差による密度差はシステムを通じてsCO2がポンプの必要と関連する規制的な電力ロスが限定されまたはない熱サイフォンを形成する、という利点を有する。sCO2の第3の重要な利点は水に比べて多くの鉱物層との反応性が低く、それにもかかわらず、ループシステムを通じた任意のCO2の漏洩は時間にわたっていくつかの鉱物層と反応し、最悪のケースではCO2を有する一定の鉱物層の反応により形成された炭化物による層透過性の閉塞を生じうる。追加的な利点として、sCO2は水よりも強力な効率性でタービンを動かすことができる。
【0052】
普及している意見はsCO2地熱電力生成は、sCO2が実質的に層内に失われる亀裂がほとんどない高温乾燥岩に最も適する。これは水の含有と層の閉塞と対にして、sCO2地熱電力生成の発展を妨げる。しかしながら、上に述べたとおり、ここに開示された電力生成システムの実施形態は超臨界の流体損失および水含有に関する問題に取り組み、sCO2と他の超臨界流体を地層流体を含む地熱で加熱された層からの電力生成に効果的に使用され、こうして実効性と経済性の双方を改善する。また、閉鎖システムにおいてsCO2などの超臨界流体を含むことにより、水または鉱物の汚染が回避され、電力生成装置内の腐食や鉱物堆積を防止する。
【0053】
ここに開示された実施形態は従前のプロジェクトよりも経済的に小さい熱資源であり、典型的には最少25MWのキャパシティを有する。さらに、熱はただの自然の要求であることから、ここに開示された実施形態は、熱、水および高い透過性を同時に交差させなければならない熱水ウェルよりも本来的にリスクが低い。ここでの実施形態は約10MWステップなどで電力出力の増加を提供する。
【0054】
ここに開示された実施形態は、概ね十分な熱を有するが流量の十分な透過性を欠き、契約上の電力出力に達しないか、腐食率が高いか、水内で堆積や有害物質が生じる失敗プロジェクトまたはウェルの再生に利用されるかもしれない。これらの失敗システムはここでの実施形態での特徴に、たとえば穿孔された中間ウェル経路などによって熱伝導効率を改善するために中間ウェル経路の修正または含有を介して改良される。
【0055】
ここで開示された実施形態は追加的に、効果的かつ効率的な電力出力管理を好適に提供する。ここで開示された実施形態は要求サイクルに合致するよう電力出力を制御して容易にターンダウンできる。ここで開示されたシステムの他の利点は上でほのめかされ、あるいは以下の説明により当業者に明らかである。
【0056】
開示は限定された数の実施形態しか含まないものの、この開示によって恩恵を受ける当業者は本開示範囲から逸脱しない他の実施形態の改良を理解するであろう。したがって、その範囲は添付の請求項によってのみ限定されるべきである。