(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/475 20060101AFI20240708BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61F13/475 111
A61F13/475 112
A61F13/494 111
(21)【出願番号】P 2021120157
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】則元 由美
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/134480(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/027051(WO,A1)
【文献】特開2013-188437(JP,A)
【文献】特開2000-79141(JP,A)
【文献】特表2009-511159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配置されるとともに、幅方向内方側に二重シート部が形成されたサイドシートと、前記二重シート部の間に長手方向に沿って配置された糸状弾性伸縮部材とを備え、前記糸状弾性伸縮部材の収縮力によって、着用者の体液排出部を含む長手方向の所定区間において前記サイドシートの内方側部分が肌側に起立する立体ギャザーが形成されており、
前記立体ギャザーが形成された区間よりも少なくとも後側に、前記二重シート部を一体に肌側に膨出させた凸部が長手方向に沿って複数配置され、かつ前記凸部間の隙間を埋めるように前記二重シート部の前記サイドシート同士を接着する接着部が配置されてなる整列用接合部が設けられており、前記糸状弾性伸縮部材が、前記サイドシートに接合されない状態で、前記整列用接合部以外の部位に長手方向に沿って設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記凸部は、閉合する曲線からなる輪郭線を有している請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記接着部が、長手方向に隣り合う前記凸部間における幅方向への窪み部にそれぞれ配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記糸状弾性伸縮部材が複数本配置されており、前記整列用接合部が幅方向に間隔を空けて複数並設されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
幅方向に複数並設された前記整列用接合部が、幅方向に対して同じ位置に配置されるか、隣り合う前記整列用接合部同士で幅方向に対して異なる位置に配置されている請求項4記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記糸状弾性伸縮部材は、白色以外の色を有している請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳細には肌当接面側の両側部にそれぞれ、糸状弾性伸縮部材の収縮力によって肌側に起立する立体ギャザーが形成された吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、吸収性物品Nとしては、例えば
図9および
図10に示されるように、ポリエチレンシートまたはポリエチレンラミネート不織布などからなる不透液性の裏面シート50と、不織布または多孔性プラスチックシートなどからなる透液性の表面シート51との間に綿状パルプなどからなる吸収体52を介在させ、かつ肌当接面側の両側部にそれぞれ不織布からなるサイドシート53、53を配置し、このサイドシート53の内方側部分53aに幅方向に折り返した折り返し部を形成するとともに、この折り返し部のサイドシート53、53間に長手方向に沿って1条または複数条の糸状弾性伸縮部材54を伸長状態で配置することにより、長手方向の所定区間に亘り、前記糸状弾性伸縮部材54の収縮力によって肌側に起立する立体ギャザー55、55を形成したものが知られている。
【0003】
前記サイドシート53は、少なくとも着用者の体液排出部位Hに対応する区間を含む長手方向の所定区間(立体ギャザー形成区間)に亘り、前記糸状弾性伸縮部材54の収縮力によって肌側に起立する立体ギャザー55を形成し、前記立体ギャザー55の先端を身体に密着させることで体液を堰き止めて横漏れを防止するようになっている。また、これよりも前後端側の区間(固定区間)では、糸状弾性伸縮部材54の収縮力がサイドシート53に作用しないように、糸状弾性伸縮部材54がサイドシート53に接合されないとともに、サイドシート53が折り畳まれた状態で吸収体52側に積層され、接合されている。
【0004】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、例えば、下記特許文献1には、整列性が高く、外観に優れた襞構造が形成されるようにするため、一方向に伸縮可能な複合伸縮部を有しており、前記複合伸縮部は、二枚のシート材と、該二枚のシート材間に配された複数本の弾性部材とを有しており、前記複数本の弾性部材は、前記一方向に沿って延び、且つ該一方向と直交する方向に間隔を空けて配されており、前記二枚のシート材のうちの少なくとも一方のシート材は、前記二枚のシート材どうしを直接接合していない複数の高密度部を有しており、前記高密度部は、前記複数本の弾性部材のうち少なくとも一本の弾性部材と重なっており、且つ該一本の弾性部材の延在方向に間欠的に複数形成されており、収縮状態の前記複合伸縮部に、前記一方のシート材が、前記高密度部を底部に有する複数の凹条部と該凹条部間に位置する凸条部とを有するように変形した襞構造が形成されている吸収性物品が開示されている。
【0005】
このような構造を採用することにより、糸状弾性伸縮部材の収縮力によってサイドシートに襞構造が形成される立体ギャザー形成区間では、立体ギャザーの外観が優れるようになる。ところが、これよりも前後端側の固定区間、つまり糸状弾性伸縮部材がサイドシートに接合されず、サイドシートが折り畳まれて吸収体側に固定された区間では、
図9に示されるように、糸状弾性伸縮部材の端部が、糸状弾性伸縮部材の切断時に勢いよく収縮することによって、サイドシート間で絡まったり捻れたりして見栄えが悪かった。このような現象は、固定区間の長さが前側に比べて長い後側に発生しやすい傾向にあった。また、特に白色以外の色(例えば、水色)の糸状弾性伸縮部材を用いた場合は、絡まったり捻れたりした状態が外部からはっきりと視認でき、使用者に吸収性物品の品質が低劣であるという印象を与えかねない。
【0006】
このような、糸状弾性伸縮部材の切断による端部の絡まりや捻れを防止したものとして、下記特許文献2には、防漏部が、吸収性物品の長手方向に沿って配設される弾性体と、長手方向に沿って配設され、前記弾性体を包むとともに、表面シートに少なくとも一部が固定されるシートとによって構成され、前記防漏部は、長手方向における中央領域と、前記中央領域よりも長手方向の外側に位置する一対の端部領域とを有し、前記弾性体は、前記中央領域と前記端部領域との少なくとも境界において、前記弾性体が長手方向に伸張した状態で前記シートに固定される固定部と、前記固定部よりも長手方向の外側に位置し、前記シートに固定されていない自由端とを有し、前記端部領域は、前記シートが互いに対面する部分を接合する接合処理が施される接合処理部と、前記接合処理が施されていない非接合処理部とを有し、前記自由端は、前記非接合処理部に配設される吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-195504号公報
【文献】特開2010-264161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2には、該特許文献2の明細書の段落[0073]及び
図8(C)に示されるように、接合処理部(53A)が弾性体(51)とシート(52)とが接触する部分以外の全てに設けられていてもよいことが記載されている。この構成を採用することによって、弾性体の端部が絡まったり捻れたりするのが防止できると考えられる。
【0009】
ところが、上記特許文献2に記載の吸収性物品では、前記接合処理部がエンボスによって形成されるため、前記弾性体とシートが接触する部分以外の全てに前記接合処理部を設けたとき、エンボスによってシートが圧密化した前記接合処理部が着用者の肌面に直接接触して肌触りが悪化する問題があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、糸状弾性伸縮部材の端部の整列性を向上するとともに、肌触りを良好にした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために第1の態様として、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配置されるとともに、幅方向内方側に二重シート部が形成されたサイドシートと、前記二重シート部の間に長手方向に沿って配置された糸状弾性伸縮部材とを備え、前記糸状弾性伸縮部材の収縮力によって、着用者の体液排出部を含む長手方向の所定区間において前記サイドシートの内方側部分が肌側に起立する立体ギャザーが形成されており、
前記立体ギャザーが形成された区間よりも少なくとも後側に、前記二重シート部を一体に肌側に膨出させた凸部が長手方向に沿って複数配置され、かつ前記凸部間の隙間を埋めるように前記二重シート部の前記サイドシート同士を接着する接着部が配置されてなる整列用接合部が設けられており、前記糸状弾性伸縮部材が、前記サイドシートに接合されない状態で、前記整列用接合部以外の部位に長手方向に沿って設けられていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記第1の態様では、肌側に起立する立体ギャザーが形成された立体ギャザー形成区間よりも少なくとも後側に、前記二重シート部を一体に肌側に膨出させた凸部が長手方向に沿って複数配置され、かつ前記凸部間の隙間を埋めるように前記二重シート部の前記サイドシート同士を接着する接着部が配置されてなる整列用接合部が設けられており、前記糸状弾性伸縮部材が、前記サイドシートに接合されない状態で、前記整列用接合部以外の部位に長手方向に沿って設けられている。これによって、前記糸状弾性伸縮部材の切断時に、糸状弾性伸縮部材の端部が勢いよく収縮しても、前記整列用接合部によって幅方向へのうねりが抑制されるため、糸状弾性伸縮部材の端部の整列性が向上できる。
【0013】
また、前記整列用接合部では、サイドシートを肌側に膨出させた凸部の先端部が着用者の肌面に接触するため、良好な肌触りを実現することができる。
【0014】
第2の態様として、前記凸部は、閉合する曲線からなる輪郭線を有している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記第2の態様では、前記凸部が、閉合する曲線からなる輪郭線を有することにより、吸収性物品の製造過程や吸収性物品の装着状態において、サイドシートが引き伸ばされても、肌側に膨出した凸部形状が維持されやすくなり、より確実に良好な装着感が得られるようになる。
【0016】
第3の態様として、前記接着部が、長手方向に隣り合う前記凸部間における幅方向への窪み部にそれぞれ配置されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記第3の態様では、前記接着部の配置について具体的に規定しており、長手方向に隣り合う凸部間における幅方向への窪み部にそれぞれ前記接着部を配置している。このように接着部を配置することによって、凸部間において糸状弾性伸縮部材が入り込む空間が埋められるため、糸状弾性伸縮部材のうねりや捻れが防止できるため、糸状弾性伸縮部材の端部の整列性が更に向上できる。
【0018】
第4の態様として、前記糸状弾性伸縮部材が複数本配置されており、前記整列用接合部が幅方向に間隔を空けて複数並設されている請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記第4の態様では、前記糸状弾性伸縮部材を複数本配置した場合は、これに合わせて整列用接合部を幅方向に間隔を空けて複数並設するようにしている。
【0020】
第5の態様として、幅方向に複数並設された前記整列用接合部が、幅方向に対して同じ位置に配置されるか、隣り合う前記整列用接合部同士で幅方向に対して異なる位置に配置されている請求項4記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記第5の態様では、前記整列用接合部を幅方向に間隔を空けて複数並設した場合において、幅方向に複数並設された前記整列用接合部を配置する全体のパターンについて規定している。
【0022】
第6の態様として、前記糸状弾性伸縮部材は、白色以外の色を有している請求項1~5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記第6の態様では、糸状弾性伸縮部材として、白色以外の色を用いた場合に、糸状弾性伸縮部材の端部の絡まりや捻れがより目立つため、その場合を対象としている。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、糸状弾性伸縮部材の端部の絡まりや捻れを防止するとともに、肌触りを良好にした吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図4】整列用接合部10が設けられた部位の拡大平面図である。
【
図7】変形例に係る整列用接合部10が設けられた部位の拡大平面図である。
【
図8】他の形態例に係る生理用ナプキン1の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1~
図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向のほぼ全長に亘って設けられたサイドシート7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その前後端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0028】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記吸収体4が介在する本体部分の裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1をショーツに固定するようになっている。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0030】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0031】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0032】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図2及び
図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワつき感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0033】
前記サイドシート7は、
図2及び
図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、当該サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により、吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないサイドフラップ部を形成している。
【0034】
このサイドフラップ部は、ほぼ着用者の体液排出部Hに相当する側部位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のウイング状フラップ部W、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bを形成する。これらウイング状フラップ部W、Wおよびヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bの外面側(裏面シート2の外面側)にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップ部W、Wを基端部の折返し線RL(
図1参照。)位置にて反対側(裏面シート2側)に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップ部W
Bをショーツの内面に止着し、装着時に着用者の臀部を覆うようになっている。
【0035】
一方、前記サイドシート7の内方側部分7aは幅方向に折り返されて二重シート部を形成するとともに、この二重シート部の間に、長手方向に沿って1条又は複数条の、図示例では3条の糸状弾性伸縮部材9、9…が配設されている。前記糸状弾性伸縮部材9、9…は、着用者の体液排出部Hを含む長手方向の中間部では、伸長状態で、その区間の両端または長手方向の適宜の位置が前記サイドシート7、7に接合されており、この区間よりも長手方向の端部側(後側及び前側)では、サイドシート7、7に接合されない自由端を形成している。前記サイドシート7の二重シート部は、着用者の体液排出部Hを含む長手方向の中間部であって前記糸状弾性伸縮部材9、9…がサイドシート7、7に接合された区間では、
図2に示されるように、互いに接合されずに着用者の肌側に向けて突出可能な状態で配置されており、この区間よりも長手方向の端部側であって前記糸状弾性伸縮部材9、9…がサイドシートに接合されない区間では、
図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されている。これによって、着用者の体液排出部Hを含む長手方向の中間部であって前記糸状弾性伸縮部材9、9…がサイドシート7、7に接合された区間は、前記糸状弾性伸縮部材9、9…の収縮力により前記サイドシート7が肌側に起立する立体ギャザーBS、BSが左右対で形成された、立体ギャザー形成区間となっており、この立体ギャザー形成区間よりも長手方向の端部側は、サイドシート7が吸収体4側に固定された固定区間となっている。前記サイドシート7の「内方側部分7a」とは、サイドシート7の幅方向内方側の部分であって、上述の通り、立体ギャザーBSを形成するための二重シート部を含む部分である。
【0036】
図1に示されるように、前記表面シート3の肌当接面側には、所定の形態で圧搾溝6が形成されている。前記圧搾溝6は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3及び吸収体4を一体的に裏面シート2側に窪ませた凹溝である。前記圧搾溝6は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って左右対で設けられている。
【0037】
〔整列用接合部〕
本生理用ナプキン1では、
図4及び
図5に示されるように、前記立体ギャザー形成区間よりも少なくとも後側の前記固定区間に、前記サイドシート7の二重シート部を一体に肌側に膨出させた凸部11が長手方向に沿って複数配置され、かつ前記凸部11、11間の隙間を埋めるように前記二重シート部のサイドシート7、7同士を接着する接着部12が配置されてなる整列用接合部10が、幅方向に間隔を空けて複数並設されており、前記糸状弾性伸縮部材9、9…が、サイドシート7に接合されない状態で、前記整列用接合部10以外の部位に長手方向に沿って設けられている。
【0038】
前記整列用接合部10では、前記凸部11及び接着部12によって、二重シート部を形成するサイドシート7、7同士が接合されているため、糸状弾性伸縮部材9が入り込めないようになっている。一方、それ以外の部位では、二重シート部を形成するサイドシート7、7同士が互いに接合されていないため、糸状弾性伸縮部材9が入り込めるようになっている。
【0039】
このため、立体ギャザー形成区間よりも少なくとも後側に、前記整列用接合部10を幅方向に間隔を空けて複数並設することによって、糸状弾性伸縮部材9の切断時に、糸状弾性伸縮部材の端部が勢いよく収縮しても、前記整列用接合部10によって幅方向へのうねりが抑制されるため、糸状弾性伸縮部材9の端部が長手方向に整列した状態で配置され、整列性が向上できる。
【0040】
特に、前記整列用接合部10が凸部11と接着部12とを組み合わせてなり、接着部12が凸部11の隙間を埋めるように設けられているため、前記接着部12によって糸状弾性伸縮部材9が整列用接合部10に入り込める余地が完全に封鎖され、糸状弾性伸縮部材9の整列性がより確実に向上できるようになっている。仮に前記接着部12を設けない場合には、糸状弾性伸縮部材9を切断したときに端部が勢いよく収縮し、その際の収縮力によって端部がうねって、凸部11、11間の隙間に入り込むおそれがあるとともに、凸部11のヒートシールが不完全な場合には、糸状弾性伸縮部材9のうねりによってサイドシート7、7同士の接合が解除され、整列用接合部10内に糸状弾性伸縮部材9が入り込むおそれがある。
【0041】
また、前記整列用接合部10にはサイドシート7を肌側に膨出させた凸部11が形成されているため、この凸部11の先端部が着用者の肌面に接触し、ヒートシールによって硬化した凸部11の輪郭部や、接着剤が固化した接着部12などが肌面に接触しにくい構造となっているため、良好な肌触りを実現することができる。
【0042】
更に、前記立体ギャザー形成区間よりも少なくとも後側では、糸状弾性伸縮部材9がサイドシート7に接合されない状態で配置されているため、糸状弾性伸縮部材9の収縮力によって生理用ナプキン1の端部が極端に内側に湾曲しなくなり、装着感の低下が抑えられる。
【0043】
前記凸部11を形成するには、サイドシート7に糸状弾性伸縮部材9、9…を配置した状態でサイドシート7の幅方向内方側を幅方向に折り返して二重シート部を形成した後、このサイドシート7を、前記凸部11に対応する突起部が形成された第1エンボスロールと、この第1エンボスロールの前記突起部に対応して窪み部が形成された第2エンボスロールとの間を通過させ、前記第1エンボスロールの突起部と第2エンボスロールの窪み部との噛み合わせ時に、少なくとも輪郭部に熱又は超音波を加えることにより成形することができる。
【0044】
前記凸部11は、閉合する曲線からなる輪郭線を有しており、これが長手方向に沿って複数配置されている。凸部11の平面形状は、
図4に示される形態例では円形であるが、
図6に示されるように、(A)縦長の楕円形、(B)横長の楕円形、(C)ハート形などとしてもよい。このように、前記凸部11の輪郭線を閉合する曲線で形成することにより、生理用ナプキン1の製造時や生理用ナプキン1の装着時などにおいて、サイドシート7が引き伸ばされても、凸部11が肌側に突出した状態を維持しやすく、より確実に装着感を向上させることができるようになる。閉合する曲線からなる輪郭線を有する凸部11を、長手方向に複数配置したとき、隣り合う凸部11、11間には、少なくとも両側部に凸部11、11同士が離隔する幅方向への窪み部が形成されるので、この窪み部を埋めるようにして前記接着部12が設けられている。
【0045】
前記凸部11の寸法としては、装着時における肌面との接触面積を低減するため、長手方向及び幅方向にそれぞれ5mm以下とするのがよい。また、凸部11の高さは、装着時に、凸部11の輪郭部や前記接着部12が肌面に接触しにくくなる高さとするのがよく、具体的には、1.5~5mmである。
【0046】
長手方向に隣り合う凸部11、11同士は、輪郭線が互いに接続するように連なって配置してもよいし、所定距離だけ離隔して間欠的に配置してもよい。
図4に示されるように、隣り合う凸部11、11の輪郭線同士が接続するように配置した方が、生理用ナプキン1の製造時や装着時などにおいて凸部11の形状が保持されやすくなるので好ましい。なお、いずれの場合においても、隣り合う凸部11、11間の少なくとも両側部にそれぞれ、前記接着部12が配置されている。
【0047】
前記接着部12は、サイドシート7の二重シート部の間にホットメルト接着剤等を塗布することにより形成された接合部である。前記接着部12を設けるには、前記二重シート部を形成する予定のサイドシート部分のうち、前記二重シート部を形成した際に対向する面の少なくとも一方の面に接着剤を塗布することにより設けることができる。
【0048】
前記接着部12は、前記整列用接合部10の両側縁が長手方向に沿ってほぼ直線となるように、長手方向に隣り合う凸部11、11間の少なくとも両側部の隙間を埋めるように配置されている。前記接着部12は、前記凸部11と重ならない位置に配置するのが好ましいが、前記凸部11に多少重なっていても構わない。ただし、凸部11の頂部にまで接着部12が重なると、接着剤が硬化して、肌面に接触する凸部11の頂部が硬くなるおそれがあるため、前記接着部12は凸部11の頂部には重ならないように配置する。
【0049】
図4に示されるように、前記凸部11が円形で形成される場合、前記接着部12は、幅方向中央に向けて先細となる三角形又は凸部11の輪郭線と対向する辺がそれぞれ内側に膨出する曲線からなる略三角形で形成することができる。
【0050】
前記接着部12は、
図4に示されるように、長手方向に隣り合う凸部11、11間の両側部にそれぞれ左右対で配置されている。また、長手方向に隣り合う凸部11、11間が離隔している場合などにおいて、左右の接着部12、12を連結する接着部を中央に設けることによって幅方向に連続した一体の接着部12を形成してもよい。いずれの場合においても、前記接着部12は、長手方向に隣り合う凸部11、11間の両側に窪みや隙間が生じないように配置してあればよい。
【0051】
上述の凸部11及び接着部12からなる整列用接合部10は、幅方向に所定の離隔幅を空けて複数、図示例では3つ並設されている。隣り合う整列用接合部10、10の離隔幅は、前記糸状弾性伸縮部材9の太さより大きく形成されており、前記糸状弾性伸縮部材9の太さの1.5倍~3倍程度とするのが好ましい。糸状弾性伸縮部材9の太さの1.5倍より小さいと、離隔幅が小さすぎて製造が困難になるとともに、糸状弾性伸縮部材9の切断時に、糸状弾性伸縮部材9が整列用接合部10、10…の形成区間内にまで収縮しにくく、糸状弾性伸縮部材9の収縮力が作用した状態になるおそれがある。一方、糸状弾性伸縮部材9の太さの3倍より大きいと、糸状弾性伸縮部材9の切断時に、糸状弾性伸縮部材9の端部が勢いよく収縮したときに、整列用接合部10、10間でうねりや捻れが生じて整列性が低下するおそれがある。
【0052】
前記整列用接合部10の長手方向の長さは、前記ギャザー形成区間の直ぐ後方部から、糸状弾性伸縮部材9の端部を引張力が作用しない自然状態で長手方向に沿ってほぼ真っ直ぐに配置したときの先端までの範囲を含む長さで形成するのがよく、具体的には、前記ギャザー形成区間の直ぐ後方部から生理用ナプキン1の全長の約1/3程度の長さとするのが好ましい。前記整列用接合部10をこの範囲に形成することにより、糸状弾性伸縮部材9の端部の整列性が良好となり、かつ脚周りのフィット性に対して影響を与えることがない。
【0053】
幅方向に複数並設された前記整列用接合部10、10…は、
図4に示される形態例では、隣り合う整列用接合部10、10同士で幅方向に対して異なる位置、具体的には凸部11…の配置ピッチに対して半ピッチ分長手方向にずらした位置に配置されているが、
図7に示されるように、幅方向に対して同じ位置に配置してもよい。前記凸部11が隣接する部位では、凸部11の輪郭部において上層側のサイドシート7が下層側に押圧されることにより、上下層のサイドシート7、7間が狭められるのに伴い、上下層のサイドシート7、7が単に積層されただけの前記接着部12が隣接する部位と比較して、糸状弾性伸縮部材9が収縮する際の制動力が大きくなると考えられる。この点を考慮すると、
図4に示される形態例では、糸状弾性伸縮部材9の両側に、左右の配置が逆転するものの、凸部11と接着部12とが左右にそれぞれ配置された状態が連続しているため、この整列用接合部10が設けられた区間において、ほぼ均等の制動力を受ながら糸状弾性伸縮部材9が収縮すると考えられる。一方、
図7に示される形態例では、糸状弾性伸縮部材9の両側に、凸部11、11が対向する領域と接着部12、12が対向する領域とが交互に複数配置されているため、制動力が大きくなったり小さくなったりを繰り返し受けながら糸状弾性伸縮部材9が収縮すると考えられる。このように、制動力が作用する形態が違えども、両者とも適切な制動力が作用することによって、糸状弾性伸縮部材9の収縮力の勢いを低減し、糸状弾性伸縮部材9の端部の整列性を良好にしている。
【0054】
前記整列用接合部10は、糸状弾性伸縮部材9の両側にそれぞれ配置されているが、立体ギャザー形成区間において起立先端部に配置される糸状弾性伸縮部材9の場合は、起立先端側がサイドシート7の折り返し部となっており、起立先端方向には糸状弾性伸縮部材9のうねりや捻れが生じないため、これと反対側にのみ前記整列用接合部10が配置されている。
【0055】
以上の構成からなる生理用ナプキン1の製造工程のうち、前記整列用接合部10に関連する部分の製造工程について詳細に説明すると、サイドシート7の所定部位に接着剤を塗布することにより前記接着部12を設けた後、このサイドシート7の所定位置に、前記立体ギャザー形成区間に対応する部分の所定部位に接着剤を塗布した糸状弾性伸縮部材9、9…を伸長状態で配置し、サイドシート7の内方側部分7aを幅方向に折り返して二重シート部を形成する。その後、このサイドシート7を前記第1エンボスロールと第2エンボスロールとの間を通過させることによって前記凸部11を形成した後、表面シート3の両側に接合する。しかる後、製品外形線に沿って裁断する。この裁断と同時に、糸状弾性伸縮部材9、9…が切断され、サイドシート7の二重シート部内に向けて収縮する。
【0056】
ところで、前記糸状弾性伸縮部材9、9…は、サイドシート7と同じ白色としてもよいが、端部が整列した状態が明確に視認できるようにするなどのため、白色以外の色、例えば水色などとしてもよい。
【0057】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記整列用接合部10は、立体ギャザー形成区間よりも後側にのみ設けられていたが、立体ギャザー形成区間よりも前側にも設けることができる。
【0058】
(2)上記形態例では、糸状弾性伸縮部材9が複数条(3条)配置され、前記整列用接合部10が幅方向に間隔を空けて複数(3つ)並設されていたが、
図8に示されるように、糸状弾性伸縮部材9が、立体ギャザー形成区間における起立先端部に1条配置され、整列用接合部10が、起立先端側(サイドシート7の折り返し端側)と反対側に1つ設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…圧搾溝、7…サイドシート、9…糸状弾性伸縮部材、10…整列用接合部、11…凸部、12…接着部