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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック、及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20240708BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240708BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/284 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240708BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240708BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M4/131
H01M50/103
H01M50/133
H01M4/66 A
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M50/119
H01M50/284
H01M50/209
H01M50/249
H01M10/052
H01M4/58
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021131941
(22)【出願日】2021-08-13
(65)【公開番号】P2023026188
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】保科 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】並木 佑介
(72)【発明者】
【氏名】吉間 一臣
(72)【発明者】
【氏名】柳 逸人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 充
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英俊
(72)【発明者】
【氏名】安田 一浩
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/059131(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/049032(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/075766(WO,A1)
【文献】特開2013-045757(JP,A)
【文献】特開2020-057458(JP,A)
【文献】特開2016-081868(JP,A)
【文献】特開2015-022833(JP,A)
【文献】特開2004-047332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 4/00-4/62
H01M 50/103
H01M 50/133
H01M 4/66
H01M 50/119
H01M 50/284
H01M 50/209
H01M 50/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、チタン含有酸化物を含む負極とを含み、前記正極と前記負極とを含む積層体が捲回されて成る扁平形状の捲回型構造を有する電極群と、
前記電極群を収容し、且つ前記電極群の主面に沿う一対の主壁を有する角型容器を含む外装部材と
を具備し、
前記電極群を収容した前記角型容器の前記主壁と交差する方向への厚さTPCと、前記角型容器の肉厚T1と、前記角型容器の外にある状態の前記電極群の厚さTEGとは、1.01×(TPC-T1×2) TEG ≦ 1.05×(TPC-T1×2)の関係を満たす、二次電池。
【請求項2】
前記角型容器の一対の前記主壁は、前記角型容器の外側を向いている第1主壁面と第2主壁面とを含み、前記第1主壁面の第1中央と前記第1主壁面の第1基準面との間の第1距離が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にあり、前記第2主壁面の第2中央と前記第2主壁面の第2基準面との間の第2距離が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にある、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記負極はアルミニウムを含む負極集電体と前記負極集電体上に設けられ前記チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層とを含み、前記チタン含有酸化物はチタンニオブ複合酸化物を含む、請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記チタンニオブ複合酸化物は、一般式LiaTi1-xM1xNb2-yM2y7-δで表される化合物を含み、0≦a<5、0≦x<1、0≦y<1、-0.3≦δ≦0.3、及び元素M1及び元素M2は、それぞれ、Mg、Fe、Ni、Co、W、Ta及びMoからなる群より選択される少なくとも1つであり、且つ、前記元素M1及び前記元素M2は互いに同じ又は異なる、請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記正極は、アルミニウムを含む正極集電体と、前記正極集電体上に設けられ、且つリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムリン酸化物、及びリチウムニッケルマンガン複合酸化物から成る群より選択される1以上を含む正極活物質含有層とを含む、請求項1から4の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記角型容器は、アルミニウム製金属缶またはアルミニウム合金製缶から成る、請求項1から5の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記角型容器の肉厚T1は、0.1mm以上1mm以下である、請求項1から6の何れか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の二次電池を具備する、電池パック。
【請求項9】
通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する請求項8に記載の電池パック。
【請求項10】
複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている請求項8又は9に記載の電池パック。
【請求項11】
請求項8から10の何れか1項に記載の電池パックを具備する車両。
【請求項12】
前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む請求項11に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池、電池パック、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極との間を移動することにより充放電が行われるリチウムイオン電池、例えば、非水電解質電池は、高エネルギー密度電池として、盛んに研究が進められている。
【0003】
リチウムイオン電池等の二次電池の負極に用いられる負極活物質として、炭素材料、珪素、珪素合金、並びに種々の金属酸化物等が知られている。このような負極活物質の多くは、電池の充放電に伴って体積変化を示すことが知られている。また、炭素材料や珪素(Si)系の活物質を用いた場合は、充放電を繰り返すとリチウムデンドライトが析出することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-73576号公報
【文献】特開2019-61851号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「粉末X線解析の実際」初版(2002年)日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
良好な寿命性能および高いエネルギー密度を示す二次電池および電池パック、並びにこの電池パックを含む車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、扁平形状の捲回型構造を有する電極群と、角型容器を含む外装部材とを具備する二次電池が提供される。電極群は、正極と、チタン含有酸化物を含む負極とを含んでいる。捲回型構造は、正極と負極とを含む積層体が捲回されて成る。外装部材は、電極群を収容し、且つ電極群の主面に沿う一対の主壁を有する。電極群を収容した角型容器の主壁と交差する方向への厚さTPCと、角型容器の肉厚T1と、角型容器の外にある状態の電極群の厚さTEGとは、1.01×(TPC-T1×2) TEG ≦ 1.05×(TPC-T1×2)の関係を満たす。
【0008】
他の実施形態によれば、上記実施形態に係る二次電池を具備する電池パックが提供される。
【0009】
さらに他の実施形態によれば、上記実施形態に係る電池パックを具備する車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る二次電池の一例の展開斜視図。
図2】実施形態に係る二次電池の一例の部分展開斜視図。
図3】実施形態に係る二次電池が含む電極群の一例の部分展開斜視図。
図4】実施形態に係る二次電池の一例の平面図。
図5図4のV-V線に沿った概略断面図。
図6】実施形態に係る二次電池が含む一例の角型容器と電極群を表す概略断面図。
図7】実施形態に係る二次電池の一例における測定箇所を表す平面図。
図8】実施形態に係る二次電池が含む角型容器の一例における測定箇所を表す平面図。
図9】実施形態に係る二次電池が含む電極群の一例における測定箇所を表す平面図。
図10】実施形態に係る電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
図11】実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図。
図12】実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
体積変化の大きい炭素やSiなどの負極活物質を用いた負極を含む電池は、電池を拘束して充放電を行うことが好ましい。さらに電極の体積変化を考慮して、電極群の寸法および外装部材の内寸を設定することが好ましい。一方では、電極群の体積増加に対して外装部材の大きさに余裕を持たせすぎると、その結果エネルギー密度が低下することになる。また、増加した電極群の厚さに対し外装部材の厚さが大きすぎると、電極群の拘束がされず充放電性能が低くなり得る。他方、外装部材の厚さが小さくなり過ぎると、電極群の撚れやリチウムデンドライトの影響による負極と正極との接触が生じやすくなり、自己放電や微小短絡が起こりやすい。
【0012】
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態によれば、二次電池が提供される。二次電池は、扁平形状の捲回型構造を有する電極群と、電極群を収容し且つ角型容器を含む外装部材とを具備する。電極群は、正極と、チタン含有酸化物を含む負極とを含んでいる。電極群の捲回型構造は、正極と負極とを含む積層体が捲回されて成る。角型容器は、電極群の主面に沿う一対の主壁を有する。電極群を収容した外装部材の主壁と交差する方向への厚さをTPCとする。角型容器の肉厚をT1とする。そして、角型容器の外にある状態の電極群の厚さをTEGとする。これらの厚さは、1×(TPC-T1×2) < TEG ≦ 1.05×(TPC-T1×2)の関係を満たす。
【0014】
係る二次電池では、電極群および外装部材の寸法が、外装部材に収容された電極群が外装部材の内壁に押し当てられた状態になる関係にある。外装部材に収容されていない状態の電極群の厚さTPCがTPC-T1×2、つまり外装部材内に収容されている状態の電極群の厚さより大きいということは、二次電池内で電極群が角型容器の内壁により押しつぶされている(squished)状態にあることを示す。このような二次電池では、発電要素を含む電極群が外装部材の内部容積を占める割合が多いため、高いエネルギー密度が得られる。また、電池の充放電に伴って電極活物質が電荷のキャリアイオン(例えば、リチウムイオン)の挿入・脱離によって膨張収縮し得るが、角型容器により拘束されて電極群の形状が整えられる。そのため、充放電に起因する電極群の変形が抑えられるので、充放電を繰り返した際の電極群の撚れや正負極の配置ズレに起因する短絡が少ない。収容されていない電極群の厚さTEGが1.05×(TPC-T1×2)以下である、つまり電極群の厚さが収容されていない状態では収容されている状態の1.05倍以下になる寸法の電極群および外装部材を含む二次電池では、電極群の撚れや正負極の配置ズレに起因する短絡を生じさせずに電極群が角型容器の内壁に押し当てられた状態を取り得る。そのため、電極群および角型容器が上記の厚さ関係を満たすことで、自己放電に対する耐性を損ねることなく、良好な寿命性能と高いエネルギー密度を示す二次電池を得ることができる。
【0015】
係る二次電池は、電解質をさらに含み得る。電解質は、電極群とともに外装部材に収容される。電解質は、電極群に保持され得る。
【0016】
係る二次電池は、電極群にて正極と負極との間に配されたセパレータを更に具備することもできる。
【0017】
また、係る二次電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
【0018】
係る二次電池は、拘束部材を更に具備することができる。拘束部材は、二次電池を外装部材の外部より拘束する。拘束部材は、角型容器の主壁の中央の部分を主に加圧するものであることが好ましい。拘束部材の形態は特に限定されるものではなく、例えば、一対の板形状の加圧部材およびそれらを連結する連結部材を含む拘束具を用いることができる。或いは、例えば、1以上の二次電池を含んだ電池パックにおける用途にて、電池パックの構成部材に拘束部材が含まれ得る。拘束部材を構成する材料の例として、樹脂や金属等を挙げることができる。なお、第1実施形態に係る二次電池は、拘束部材で拘束されている状態および拘束されていない状態の少なくとも何れか一方について、上述した電極群および角型容器の厚さ関係 1×(TPC-T1×2) < TEG ≦ 1.05×(TPC-T1×2)を満たし得る。また、拘束部材で拘束されている二次電池についての角型容器の厚さTEGは、拘束されている状態と拘束部材を取り外した状態とで等しくあり得る。
【0019】
係る二次電池は、例えばリチウム二次電池であり得る。また、二次電池は、非水電解質を含んだ非水電解質二次電池を含む。
【0020】
図1から図6を参照しながら、第1実施形態に係る二次電池の一例を説明する。図1及び図2は、係る二次電池の一例の展開斜視図および部分展開斜視図である。図3は、係る二次電池が含む電極群の一例の部分展開斜視図である。図4は係る二次電池の一例の平面図であり、図5は、図4のV-V線に沿った概略断面図である。図6は、係る二次電池が含む一例の角型容器と電極群を表す概略断面図である。図示する二次電池は、密閉型の角型電池である。
【0021】
二次電池100は、外装部材1と、外装部材1内に収容された扁平型の電極群2と、電極群2に保持された電解質(図示しない)とを含む。外装部材1は、角型容器3と、角型容器3の開口部に、例えば溶接によって固定された封口板4とを有する。角型容器3は、例えば、金属製または合金製の有底角筒型容器であり得る。
【0022】
図示する例では、角型容器3は矩形形状の底面34と、底面34と交差する二対の側壁を有する。底面34は、封口板4の反対側に位置する。二対の側壁は、第1の側壁として底面34の長辺に沿う一対の主壁30と、底面34の短辺に沿う一対の第2側壁33とを含む。一対の主壁30は、底面34及び封口板4と交差する。一対の主壁30の一方と他方は、角型容器3の内面側で互いに向き合う。一対の第2側壁33は、底面34、封口板4、及び一対の主壁30と交差する。一対の第2側壁33の一方と他方は、角型容器3の内面側で互いに向き合う。各第2側壁33は、一対の主壁30の一方と他方とを連結させている。
【0023】
図3に示すように、扁平型の電極群2は、正極5と負極6とがその間にセパレータ7を介した積層体が扁平形状に捲回された構造を有する。正極5は、例えば金属箔からなる帯状の正極集電体と、正極集電体の長辺に平行な一端部からなる正極集電タブ5aと、少なくとも正極集電タブ5aの部分を除いて正極集電体に形成された正極活物質含有層5bとを含む。一方、負極6は、例えば金属箔からなる帯状の負極集電体と、負極集電体の長辺に平行な一端部からなる負極集電タブ6aと、少なくとも負極集電タブ6aの部分を除いて負極集電体に形成された負極活物質含有層6bとを含む。
【0024】
このような正極5、セパレータ7及び負極6は、正極集電タブ5aが電極群の捲回軸方向にセパレータ7から突出し、かつ負極集電タブ6aがこれとは反対方向にセパレータ7から突出するよう、正極5及び負極6の位置をずらして捲回されている。このような捲回により、電極群2は、図3に示すように、一方の端面から渦巻状に捲回された正極集電タブ5aが突出し、かつ他方の端面から渦巻状に捲回された負極集電タブ6aが突出している。
【0025】
図1及び図2に示すように、正極リード8は、正極端子9と電気的に接続するための接続プレート8aと、接続プレート8aに開口された貫通孔8bと、接続プレート8aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部8cとを有する。正極リード8の集電部8cは、その間に電極群2の正極集電タブ5aを挟み、溶接によって正極集電タブ5aに電気的に接続されている。一方、負極リード10は、負極端子11と電気的に接続するための接続プレート10aと、接続プレート10aに開口された貫通孔10bと、接続プレート10aから二股に分岐し、下方に延出した短冊状の集電部10cとを有する。負極リード10の集電部10cは、その間に電極群2の負極集電タブ6aを挟み、溶接によって負極集電タブ6aに電気的に接続されている。正負極リード8,10を正負極集電タブ5a,6aに電気的に接続する方法は、特に限定されるものではないが、例えば超音波溶接又はレーザ溶接等の溶接が挙げられる。
【0026】
電極ガード12は、正負極集電タブ5a,6aの端面を覆う側板12aと、正負極集電タブ5a,6aの最外周を覆うようにU字状に湾曲した側板12bとを有する。電極ガード12の上端は、そこから電極群2を収容するため、開放されている。電極群2の正極集電タブ5aは、正極リード8の集電部8cが溶接された状態で電極ガード12によって被覆される。正極リード8の接続プレート8aは、電極ガード12の上方に位置している。一方、電極群2の負極集電タブ6aは、負極リード10の集電部10cが溶接された状態で電極ガード12によって被覆される。負極リード10の接続プレート10aは、電極ガード12の上方に位置している。2つの電極ガード12は、電極群2に絶縁テープ13によって固定されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、封口板4は、矩形板状をしている。封口板4は、正負極端子9,11を取り付けるための貫通孔4a,4bを有する。また、封口板4は、注液口20を有する。封口板4に設けられる貫通孔は、貫通孔4a、4b及び注液口20の3つのみであり得る。この場合、注液口20がガス抜き穴を兼ねるため、別途ガス抜き穴を設ける必要がない。それ故、封口板4の作製工程を減らすことができるという利点がある。なお、注液口20は、角型容器3の壁面に設けられていてもよい。
【0028】
注液口20は、そこを通して電解液が注液された後、電池内部において発生したガスの放出にも使用される。注液口20は、封止蓋14によって封止される。封止蓋14は、ここでは円板状の形状を有する。封止蓋14は、封口板4の表面に例えば溶接によって固定される。封止蓋14は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属から形成される。また、封止蓋14の形状は、円板状に限定されるものではなく、注液口の形状に応じて適宜変更することができる。
【0029】
図2に示すように、封口板4の裏面には絶縁板16が配置されている。絶縁板16は、一方の端部に正極リード8の接続プレート8aが収容される凹部16aと、他方の端部に負極リード10の接続プレート10aが収容される凹部16bとを有する。凹部16aと凹部16bとの間は、開口されており、封口板4の裏面が露出している。また、絶縁板16の凹部16a及び凹部16bは、それぞれ、封口板4の貫通孔4a,4bと連通する貫通孔を有する。
【0030】
正負極端子9,11は、それぞれ、矩形板状の頭部9a,11aと、頭部9a,11aから延出された軸部9b,11bとを有する。絶縁ガスケット17は、正負極端子9,11の軸部9b,11bが挿入される貫通孔17aを有する。正極端子9の軸部9bは、絶縁ガスケット17の貫通孔17a、封口板4の貫通孔4a、絶縁板16の貫通孔、正極リード8の接続プレート8aの貫通孔8bに挿入され、これら部材にかしめ固定されている。これにより、正極端子9は、正極リード8を経由して正極集電タブ5aと電気的に接続される。一方、負極端子11の軸部11bは、絶縁ガスケット17の貫通孔17a、封口板4の貫通孔4b、絶縁板16の貫通孔、負極リード10の接続プレート10aの貫通孔10bに挿入され、これら部材にかしめ固定されている。これにより、負極端子11は、負極リード10を経由して負極集電タブ6aと電気的に接続される。
【0031】
図5に示すように、外装部材1に収容されている電極群2の主面21は、角型容器3が有する一対の主壁30に沿っている。角型容器3の一対の主壁30の各々は、角型容器3の外側を向いている第1主壁面31と第2主壁面32とをそれぞれ含む。ここでいう電極群2の主面21とは、扁平形状の厚さ方向と交差するとともに捲回型構造の捲回軸方向に沿った面を指す。電極群2の主面21は、表側および裏側ともに、平坦であってもよいが、平坦ではなくてもよく、例えば、盛り上がったりへこんだりしていてもよい。図5では、平坦ではないことが視覚的に明確になるよう、電極群2の断面形状を大げさに表している。
【0032】
電極群2の扁平形状の表裏それぞれの主面21は、角型容器3の主壁の内面に押し当てられている。図示する例では、角型容器3の各主壁30が内側から電極群2に押され、一方の主壁30の外面である第1主壁面31側の外側へ向かう第1方向310及び第1主壁面31に対し角型容器3の裏側にある他方の主壁30の外面である第2主壁面32側の外側へ向かう第2方向320にそれぞれ向かって膨れる形で変形している。なお、図5では、角型容器3の主壁30の変形が視覚的に明確になるよう、変形を大げさに表している。角型容器3の主壁30の変形は、図示するように第1主壁面31及び第2主壁面32の両側で角型容器3の外側へ向かって各主壁30が出っ張るものに限られない。例えば、第1主壁面31及び第2主壁面32の両側で角型容器3の内側に向かって各主壁30がへこむ変形であってもよい。或いは、片側の主壁30が外側に出っ張りつつ、反対側の主壁30が内側にへこむ変形であってもよい。また、各々の主壁30は、部分的に出っ張り部分的にへこむ形状に変形し得る。
【0033】
各主壁30の変形の程度は、第1主壁面31及び第2主壁面32の両側で、各面の中心の起伏が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内に留まることが望ましい。具体的には、第1主壁面31の第1中央と第1主壁面31の第1基準面との間の第1距離が、-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にあると同時に、第2主壁面32の第2中央と第2主壁面32の第2基準面との間の第2距離が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にあることが望ましい。ここでいう第1距離は、第1中央と第1基準面との間の最短距離、即ち、第1基準面と直交する方向に沿った距離である。同様に、第2中央と第2基準面との間の最短距離、即ち、第2距離は、第2基準面と直交する方向に沿った距離である。第1距離が正の値の場合は、第1主壁面31が第1基準面よりも角型容器3の外側へ出っ張っている。第1距離が負の値の場合は、第1主壁面が第1基準面よりも角型容器3の内側にへこんでいる。同様に、第2距離が正の値の場合は第2主壁面32が外側へ出っ張り、第2距離が負の値の場合は第2主壁面が内側にへこんでいる。第1基準面および第2基準面の詳細は後述するが、各基準面はそれぞれが対応する主壁面の外周に位置する額縁部の内周で規定される仮想面に対応する。
【0034】
第1距離は、-0.6mm以上0mm未満の範囲内にあり得る。又は、第1距離は0mmを超え0.2mm以下の範囲内にあり得る。第2距離は、-0.6mm以上0mm未満の範囲内にあり得る。又は、第2距離は0mmを超え0.2mm以下の範囲内にあり得る。第1距離及び第2距離が共に-0.6mm以上0mm未満の範囲内にあることが好ましい。つまり角型容器3の両側の主壁30がへこんでいることが好ましい。第1距離及び第2距離が0mm未満の場合、主壁が電池内部の電極群における電極同士のセパレータを介した密着を良好にする。また0mmを超える電池では、電極群が主壁面と接しており、電極同士のセパレータを介した密着が良好な状態にある。過剰な出っ張りは電池内部での電極群における電極距離の広がりが起こる要因となり好ましくない。
【0035】
外装部材を外部から拘束する場合は、拘束部材による加圧の程度を調節することにより、上記第1距離および第2距離を制御することができる。例えば、拘束を強くすると、第1距離および第2距離の値が減少し負の値になりやすい傾向がある。また、例えば、第1主壁面31側および第2主壁面32側の一方で拘束を強くし他方で拘束を弱くすることで、第1距離および第2距離の一方を正の値にしつつ他方を負の値にする、つまり片側の主壁30を出っ張らせて他方側の主壁30をへこませることができる。
【0036】
電極群を収容した角型容器の厚さTPCには、上述した主壁30の変形が反映されている。図5に示すように、角型容器の厚さTPCは、主壁30と交差する方向の厚さである。つまり、厚さTPCは、第1方向310及び第2方向320に沿った厚さであるといえる。
【0037】
図6に、外装部材1から電極群2を取り出した状態を表す。図の簡略化のため、図示する例では角型容器3の主壁30を平坦に表しているが、電極群2を取り出した後の角型容器3の形状は、この例に限られない。角型容器3の肉厚T1は、図6に示すように、少なくとも主壁30の厚さに対応し得る。角型容器3の外にある状態の電極群2の厚さTEGは、電極群2の表裏両側の主面21の中心の間の距離に等しい。
【0038】
上記例では、捲回軸方向の両側の各端面から正極集電タブ5a及び負極集電タブ6aがそれぞれ突出した捲回型構造を有する電極群2を含み、正極集電タブ5a又は負極集電タブ6aが位置する何れの端面も封口板4ではなく角型容器3の各主壁30をつなぐ短辺方向沿いの第2側壁33に面する横捲き形態の二次電池100を説明したが、係る二次電池の態様は、図示した例に限られない。例えば、正極集電タブ5a及び負極集電タブ6aは、電極群2における同一の端面に位置し得る。また、二次電池は、捲回軸方向が封口板4と交差し、正極集電タブ5a及び/又は負極集電タブ6aが突出する端面が封口板4に面する縦捲き形態の二次電池であり得る。
【0039】
以下、負極、正極、電解質、セパレータ、外装部材、負極端子及び正極端子について詳細に説明する。
【0040】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に設けられた負極活物質含有層とを含むことができる。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0041】
負極活物質含有層は、チタン含有酸化物を負極活物質として含む。負極活物質含有層に含まれているチタン含有酸化物は、チタンニオブ複合酸化物を含み得る。チタンニオブ複合酸化物は、例えば、単斜晶の結晶構造を有するチタンニオブ複合酸化物および直方晶(orthorhombic)の結晶構造を有するチタンニオブ複合酸化物を含み得る。
【0042】
単斜晶構造のチタンニオブ複合酸化物の例として、LiaTi1-xM1xNb2-yM2y7-δで表される化合物を挙げることができる。一般式LiaTi1-xM1xNb2-yM2y7-δにおいて、添字aは0≦a<5の範囲内にあり、添字xは0≦x<1の範囲内にあり、添字yは0≦y<1の範囲内にあり、添字δは-0.3≦δ≦0.3の範囲内にある。元素M1及び元素M2は、それぞれ、Mg、Fe、Ni、Co、W、Ta及びMoからなる群より選択される少なくとも1つである。元素M1及び元素M2は、互いに同じ又は異なる元素である。チタンニオブ複合酸化物として、上記LiaTi1-xM1xNb2-yM2y7-δを含むことが好ましい。具体例として、LiaNb2TiO7(0≦a<5)が挙げられる。
【0043】
チタンニオブ複合酸化物は、直方晶の結晶構造を有するチタンニオブ複合酸化物を含み得る。直方晶構造のチタンニオブ複合酸化物の例として、Li2+sNa2-tM3uTi6-v-wNbvM4w14+σで表される化合物を挙げることができる。一般式Li2+sNa2-tM3uTi6-v-wNbvM4w14+σにおいて、添字sは0≦s≦4の範囲内にあり、添字tは0<t<2の範囲内にあり、添字uは0≦u<2の範囲内にあり、添字vは0<v<6の範囲内にあり、添字wは0≦w<3の範囲内にあり、添字vと添字wとの和は0<v+w<6の範囲内にあり、添字σは-0.5≦σ≦0.5の範囲内にある。元素M3はCs、K、Sr、Ba及びCaからなる群より選択される少なくとも1つである。元素M4はZr、Sn、V、Ta、Mo、W、Fe、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1つである。
【0044】
負極活物質含有層は、例えば、チタンニオブ複合酸化物を単独で1種含み得る。或いは、負極活物質含有層は、チタンニオブ複合酸化物を2種以上含み得る。例えば、負極活物質含有層には、単斜晶のチタンニオブ複合酸化物と直方晶のチタンニオブ複合酸化物との両方が含まれ得る。また、負極活物質含有層に、1種のチタンニオブ複合酸化物または2種以上のチタンニオブ複合酸化物に加え、他のチタン含有酸化物を1種含んでもよく、他のチタン含有酸化物を2種以上含んでもよい。他のチタン含有酸化物の例は、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物(例えば、Li4+zTi512で表され、0≦z≦3であるチタン酸リチウム)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2)、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ホランダイト型チタン複合酸化物、及びラムスデライト構造を有するリチウムチタン酸化物(例えば、Li4+zTi512、0≦z≦3)を含む。負極活物質含有層中における負極活物質の総質量に対するチタンニオブ複合酸化物の含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが望ましい。
【0045】
負極活物質として、上記チタン含有酸化物に加え五酸化ニオブなどのニオブ酸化物を含んでもよい。
【0046】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、負極活物質と負極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。或いは、導電剤を用いる代わりに、活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
【0047】
結着剤は、分散された負極活物質の間隙を埋め、また、負極活物質と負極集電体を結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、アクリル樹脂、アクリル樹脂の共重合体、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0048】
負極活物質含有層において、負極活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ、70質量%以上96質量%以下、2質量%以上28質量%以下及び2質量%以上28質量%以下の割合で配合することが好ましい。導電剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層の集電性能を向上させることができる。それにより、大電流の出力性能が期待できる。また、結着剤の量を2質量%以上とすることにより、負極活物質含有層と負極集電体との結着性が十分となり、優れたサイクル性能を期待できる。一方、導電剤及び結着剤はそれぞれ28質量%以下にすることが高容量化を図る上で好ましい。
【0049】
負極集電体には、負極活物質にリチウム(Li)が挿入及び脱離される電位において電気化学的に安定である材料が用いられる。負極集電体がアルミニウムを含むことが好ましい。具体的には、負極集電体がアルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金から作られることが好ましい。負極集電体の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。このような厚さを有する負極集電体は、負極の強度と軽量化のバランスをとることができる。
【0050】
また、負極集電体は、その表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、負極集電タブとして働くことができる。
【0051】
具体例として、負極集電体にアルミニウム含有箔を用い、負極活物質にチタンニオブ複合酸化物を用いた負極を挙げることができる。このような負極は強度が高く、リチウムデンドライトの形成が問題にならない電位範囲で作動する。そのため、当該負極を用いた捲回型電極群は短絡を気にせずにきつく捲回することができ、それにより外装部材によって電極群が抑え付けられても負極は撚れたり破損したりしない。そのため、上述したような電極群が外装部材に押し当てられた構成を採用できるので、エネルギー密度と充放電性能を両立できる。
【0052】
これに対し、例えば、負極集電体として銅箔を含み、負極活物質としてグラファイト又はSiを含む負極を用いた場合は、微小短絡の懸念があるため、電極群を外装部材の内壁に押し当てるような設計は難しい。また、グラファイト系の負極を用いた場合は、グラファイト活物質の解砕を避けるために電極群の捲回を緩くする傾向があり、短絡の懸念から強く押さえ付けることが難しく撚れが生じやすい。
【0053】
負極活物質含有層の密度(集電体を含まず)は、1.8g/cm3以上2.8g/cm3以下であることが好ましい。負極活物質含有層の密度がこの範囲内にある負極は、エネルギー密度と電解質の保持性とに優れている。負極活物質含有層の密度は、2.1g/cm3以上2.6g/cm3以下であることがより好ましい。
【0054】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。スラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層と集電体とが積層された複合体を得る。その後、この複合体にプレスを施す。このようにして、負極を作製する。
【0055】
或いは、負極は、次の方法により作製してもよい。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、負極を得ることができる。
【0056】
2)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体上に設けられた正極活物質含有層とを含むことができる。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質と、任意に導電剤及び結着剤を含むことができる。
【0057】
正極活物質としては、例えば、酸化物又は硫化物を用いることができる。正極は、正極活物質として、1種類の化合物を単独で含んでいてもよく、或いは2種類以上の化合物を組み合わせて含んでいてもよい。酸化物及び硫化物の例には、Li又はLiイオンを挿入及び脱離させることができる化合物を挙げることができる。
【0058】
このような化合物としては、例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLipMn24又はLipMnO2;0<p≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLipNiO2;0<p≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLipCoO2;0<p≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLipNi1-qCoq2;0<p≦1、0<q<1)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLipMnqCo1-q2;0<p≦1、0<q<1)、スピネル構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物(例えばLipNihMn2-h4;0<p≦1、0<h<2)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLipFePO4;0<p≦1、LipMnPO4;0<p≦1、LipMn1-tFetPO4;0<p≦1、0<t≦1、LipCoPO4;0<p≦1)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV25)、及び、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LipNi1-q-rCoqMnr2;0<p≦1、0<q<1、0<r<1、q+r<1)が含まれる。
【0059】
上記のうち、正極活物質としてより好ましい化合物の例には、スピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLipMn24;0<p≦1)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLipNiO2;0<p≦1)、リチウムコバルト複合酸化物(例えばLipCoO2;0<p≦1)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLipNi1-qCoq2;0<p≦1、0<q<1)、スピネル構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物(例えばLipNihMn2-h4;0<p≦1、0<h<2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLipMnqCo1-q2;0<p≦1、0<q<1)、リチウムリン酸鉄(例えばLipFePO4;0<p≦1)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LipNi1-q-rCoqMnr2;0<p≦1、0<q<1、0<r<1、q+r<1)、及び、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(例えばLipFePO4;0<p≦1、LipMnPO4;0<p≦1、LipMn1-tFetPO4;0<p≦1、0<t≦1、LipCoPO4;0<p≦1)が含まれる。これらの化合物を正極活物質に用いると、正極電位を高めることができる。具体例として、上記リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムリン酸化物、及びリチウムニッケルマンガン複合酸化物から成る群より選択される1以上を含む正極活物質を挙げることができる。
【0060】
電池の電解質として常温溶融塩を用いる場合、リチウムリン酸鉄、LibVPO4F(0≦b≦1)、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、又はこれらの混合物を含む正極活物質を用いることが好ましい。これらの化合物は常温溶融塩との反応性が低いため、サイクル寿命を向上させることができる。常温溶融塩の詳細については、後述する。
【0061】
正極活物質の一次粒径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。一次粒径が100nm以上の正極活物質は、工業生産上の取り扱いが容易である。一次粒径が1μm以下の正極活物質は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
【0062】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0063】
結着剤は、分散された正極活物質の間隙を埋め、また、正極活物質と正極集電体とを結着させるために配合される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoro ethylene;PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム(styrene-butadiene rubber;SBR)、ポリアクリル酸化合物、イミド化合物、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose;CMC)、及びCMCの塩が含まれる。これらの1つを結着剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて結着剤として用いてもよい。
【0064】
導電剤は、集電性能を高め、且つ、正極活物質と正極集電体との接触抵抗を抑えるために配合される。導電剤の例には、気相成長カーボン繊維(Vapor Grown Carbon Fiber;VGCF)、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノファイバー、及びカーボンナノチューブのような炭素質物が含まれる。これらの1つを導電剤として用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせて導電剤として用いてもよい。また、導電剤を省略することもできる。
【0065】
正極活物質含有層において、正極活物質及び結着剤は、それぞれ、80質量%以上98質量%以下、及び2質量%以上20質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0066】
結着剤の量を2質量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤は、絶縁体として機能し得る。そのため、結着剤の量を20質量%以下にすると、電極に含まれる絶縁体の量が減るため、内部抵抗を減少できる。
【0067】
導電剤を加える場合には、正極活物質、結着剤及び導電剤は、それぞれ、77質量%以上95質量%以下、2質量%以上20質量%以下、及び3質量%以上15質量%以下の割合で配合することが好ましい。
【0068】
導電剤の量を3質量%以上にすることにより、上述した効果を発揮することができる。また、導電剤の量を15質量%以下にすることにより、電解質と接触する導電剤の割合を低くすることができる。この割合が低いと、高温保存下において、電解質の分解を低減することができる。
【0069】
正極集電体は、アルミニウムを含むことが好ましい。好ましい正極集電体の具体例として、アルミニウム箔、並びに、Mg、Ti、Zn、Ni、Cr、Mn、Fe、Cu及びSiから選択される一以上の元素を含むアルミニウム合金箔を挙げることができる。
【0070】
アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。アルミニウム箔の純度は99質量%以上であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔に含まれる鉄、銅、ニッケル、及びクロムなどの遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。
【0071】
また、正極集電体は、その表面に正極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができる。この部分は、正極集電タブとして働くことができる。
【0072】
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁してスラリーを調製する。このスラリーを、集電体の片面又は両面に塗布する。次いで、塗布したスラリーを乾燥させて、活物質含有層(正極活物質含有層)と集電体とが積層された複合体を得る。その後、この複合体にプレスを施す。このようにして、正極を作製する。
【0073】
或いは、正極は、次の方法により作製してもよい。まず、正極活物質、導電剤及び結着剤を混合して、混合物を得る。次いで、この混合物をペレット状に成形する。次いで、これらのペレットを集電体上に配置することにより、正極を得ることができる。
【0074】
3)電解質
電解質としては、例えば液状非水電解質又はゲル状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質は、溶質としての電解質塩を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質塩の濃度は、0.5 mol/L以上2.5 mol/L以下であることが好ましい。
【0075】
電解質塩の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質塩は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
【0076】
有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(propylene carbonate;PC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate;EC)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate;VC)のような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(diethyl carbonate;DEC)、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate;DMC)、メチルエチルカーボネート(methyl ethyl carbonate;MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-methyl tetrahydrofuran;2MeTHF)、ジオキソラン(dioxolane;DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(dimethoxy ethane;DME)、ジエトキシエタン(diethoxy ethane;DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone;GBL)、アセトニトリル(acetonitrile;AN)、及びスルホラン(sulfolane;SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。
【0077】
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile;PAN)、ポリエチレンオキサイド(polyethylene oxide;PEO)、又はこれらの混合物が含まれる。
【0078】
或いは、非水電解質としては、液状非水電解質及びゲル状非水電解質の他に、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、及び無機固体電解質等を用いてもよい。
【0079】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。常温溶融塩には、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質塩と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩、又はこれらの混合物が含まれる。一般に、二次電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
【0080】
高分子固体電解質は、電解質塩を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
【0081】
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
【0082】
4)セパレータ
セパレータは、例えば、ポリエチレン(polyethylene;PE)、ポリプロピレン(polypropylene;PP)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、セルロース、若しくはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride;PVdF)を含む多孔質フィルム、又は合成樹脂製不織布から形成される。安全性の観点からは、ポリエチレン又はポリプロピレンから形成された多孔質フィルムを用いることが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能なためである。
【0083】
5)外装部材
外装部材は、角型容器を含む。外装部材としては、例えば、金属製の角型容器を含む金属製容器を用いることができる。外装部材は、角型容器の開口に対する蓋、例えば、金属製の封口板を含み得る。
【0084】
角型容器の壁の厚さ、つまり肉厚T1は、例えば、1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは、0.2mm以下である。肉厚T1の好ましい下限値は、0.1mmである。つまり、肉厚T1は、0.1mm以上1mm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0085】
金属製容器は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等から作られる。アルミニウム合金は、マグネシウム、亜鉛、及びケイ素等の元素を含むことが好ましい。アルミニウム合金は、鉄、銅、ニッケル、及びクロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100質量ppm以下であることが好ましい。このような金属製容器を備えた電池では、高温環境下での長期信頼性および放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。具体例として、アルミニウム製金属缶から成る角型容器およびアルミニウム合金製缶から成る角型容器を含む外装部材を挙げることができる。
【0086】
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位において電気化学的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成することができる。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
【0087】
7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対し3V以上4.5V以下 の電位範囲(vs.Li/Li)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成することができる。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
【0088】
<製造方法>
第1実施形態に係る二次電池は、例えば、次のとおり製造することができる。ここでは、電解質として液状電解質を用いた二次電池を製造する例を説明する。
【0089】
負極と、正極と、セパレータとを準備する。負極および正極は、上述した方法により作製することができる。
【0090】
準備した負極とセパレータと正極とを、負極、セパレータ、正極、セパレータの順で積層し、積層体を得る。次いで、この積層体を渦巻き状に捲回し、捲回体を得る。この際、負極、正極、及びセパレータが蛇行して、重ねている位置がずれて、正極と負極が接しないように注意する。得られた捲回体に対し、プレス処理を施し、扁平形状の捲回型電極群を得ることができる。
【0091】
プレス処理を行った後、電極群を角型容器へ挿入する前に、外装部材の蓋に設置されている正負極端子に接続されているリードと正負極の集電体とをそれぞれ溶接する。例えば、対応するリードを集電タブに溶接する。リードが溶接された電極群を角型容器内へ挿入した後、電極端子が設置された蓋と角型容器とを溶接する。この際、電極群に損傷がないよう、電極群を保護する部材、例えば、電極ガードとともに電極群を角型容器へ挿入することが好ましい。
【0092】
角型容器および蓋の何れかに、液状電解質を導入するための注液口を設けておく。電解質を調製し、注液口から導入する。電解質を入れる前に、外装部材を乾燥しておくことが好ましい。真空乾燥を実施することがより好ましい。電解質を導入後、注液口を封止蓋で塞ぎ、溶接することにより注液口を封じる。その際、注液口に電解質が付着していないことを確認する。
【0093】
上記のとおり組み上げた角型電池を、樹脂もしくは金属板等の拘束具を用いて拘束し、充放電を行う。この際、少なくとも角型容器の主壁の中央部分を表裏両側から押さえつけることが望ましい。
【0094】
液状電解質が浸み込むことによって電極群が膨潤し、膨張し得る。また、上記充放電に伴って電荷のキャリアイオンが負極活物質に挿入および脱離されることによって活物質が膨張収縮し、その結果電極群が膨張し得る。例えば、負極活物質としてチタンニオブ複合酸化物が含まれている負極を用いた場合、充電に伴ってチタンニオブ複合酸化物が膨張する。放電に伴ってチタンニオブ複合酸化物自体は収縮するものの、活物質粒子間に距離が空いた状態で負極全体としては膨張したままになる。このように充放電によって電極群が膨張する際に角型容器の外側から拘束を施すことで、電極群が角型容器の内面に押し当てられた状態を達成できる。
【0095】
電極群を角型容器に挿入する際の電極群の寸法および角型容器の内寸の関係を適切に調節したり、充放電条件を調整したりすることで、電極群の膨張具合、ひいては電極群を取り出した後の厚さTEGを制御できる。挿入時の電極群の厚さと角型容器の主壁の内面間の距離が近い方が、膨張した電極群が角型容器の内面に密着する傾向がある。但し、電極群を挿入する際に角型容器の縁で表面を引っ掻いて傷付けることを避ける観点からは、一定のクリアランスを確保することが好ましい。また、充電電圧を高くして負極電位をより下げた方が負極活物質の膨張率が高くなり、電極群をより大きく膨張させることができる。なお、スピネル構造を有するリチウムチタン酸化物は充放電に伴って膨張収縮しないことが知られているが、上述したチタンニオブ複合酸化物のように充放電に伴って大きく膨張収縮する化合物を負極活物質に用いることが好ましい。
【0096】
<測定方法>
以下、係る二次電池に関する各種測定方法を説明する。具体的には、二次電池の角型容器および電極群の寸法の測定方法、並びに電極活物質の測定方法を説明する。角型容器の寸法には、電極群を収容している角型容器の厚さTPC、第1主壁面における第1距離、第2主壁面における第2距離、及び角型容器の肉厚T1が含まれる。電極群の寸法には、角型容器の外にある状態の電極群の厚さTEGが含まれる。
【0097】
(角型容器の厚さTPCの測定方法)
電極群を収容した状態にある角型容器の厚さTPCは、次のとおり測定する。まず、二次電池を放電状態にする。ここでの放電状態とは、25℃の環境下で0.2C以下の電流値にて放電下限電圧まで定電流放電した状態を示す。
【0098】
放電状態とした電池の中心の厚さをマイクロメータで測定する。ここでいう電池の中心とは、角型容器の主面における対角線の交点をいう。図7に示す二次電池の平面図を参照しながら、具体的に説明する。図7は、二次電池100の角型容器3の第1主壁面31側の平面である。2本の対角線L1の交点X1を第1主壁面31の中心と見なす。図示しないが、二次電池100の裏側における対角線の交点を第2主壁面の中心と見なす。両主壁面の中心位置にて、角型容器3の主壁と交差する方向への厚さTPCを測定する。角型容器3の厚さTPCは、第1主壁面31の中心と第2主壁面の中心との間の距離と言い換える事ができる。上記厚さ測定は、角型容器3に電極群を収容したままの状態で行う。
【0099】
(第1及び第2主壁面における第1及び第2距離の測定方法)
角型容器が有する一対の主壁のそれぞれにおける、第1主壁面の第1基準面から第1中央までの第1距離および第2主壁面の第2基準面から第2中央までの第2距離は、次のとおり測定する。
【0100】
放電状態とした電池の主壁面を、Computer Numerical Control(CNC)画像測定システムにて測定する。例えば、株式会社ニコン製NEXIV VMR-3020にて測定を行う。
【0101】
図1及び図2に示したような蓋として長方形の封口板4を含む外装部材1を備えた典型的な二次電池100は、封口板4の反対側の面を底面34として、封口板4および底面34と交差する二対の側壁を有する。二対の側壁のうちより広い面を有する一対を主壁30として、各主壁30の外面をそれぞれ第1主壁面および第2主壁面として、測定する。
【0102】
図7を参照しながら、具体的に説明する。第1主壁面31において、四つ角付近に対角線L1上に4つの基準点Rをそれぞれ設定する。各々の基準点Rは、第1主壁面31の角から距離D離れた位置に設定する。角からの距離Dは、5mmとする。4つの基準点Rをつないで得られる仮想面を、第1基準面とする。
【0103】
第1基準面に対し二次電池100の外側へ向かう凸部となっている部分を正の値とし、第1基準面に対し二次電池100の内側へ向かう凹部となっている部分を負の値とし、第1主壁面31の起伏の程度を測定する。第1主壁面31における対角線L1の交点X1の位置を第1中央と見なし、第1中央から第1基準面までの第1距離を求める。第1距離は、第1基準面から第1中央までの最短距離、且つ、第1基準面と直交する方向の距離になる。
【0104】
具体的には例を図示しないが、第2距離についても同様に、第2主壁面にて四つ角付近に対角線上に4つの基準点Rを設定し、それら基準点Rをつないで得られる仮想面を第2基準面とする。第2主壁面における対角線の交点の位置を第2中央と見なし、第2中央から第2基準面までの第2距離を求める。
【0105】
上記の第1距離および第2距離の測定は、角型容器3に電極群を収容したままの状態で行う。
【0106】
(角型容器の肉厚T1の測定方法)
角型容器の肉厚T1は、次のとおり測定する。上述のとおり放電状態とした電池を、不活性雰囲気のグローブボックス、例えば、アルゴンガスで充填されたグローブボックス内に入れる。次に、グローブボックス内で電池を解体し、電極群を外装部材から取り出す。具体的には、グローブボックスの中で、念のため正極、負極をショートさせないよう注意を払いながら、角型容器と封口板とを溶接部分にて切り離す。封口板と共に電極群を引く抜く。
【0107】
電極群を取り除いた角型容器に対し、マイクロメータを用いて肉厚の測定を行う。上述した典型的な角型電池については、より広い面を有する一対の主壁のそれぞれにおいて、任意に5箇所の肉厚を測定し、それら合計10箇所の平均値を角型容器の肉厚T1とする。測定箇所には、各主壁の中央付近を選択することが望ましい。
【0108】
図8に示す角型容器の平面図を参照しながら、望ましい例を具体的に説明する。角型容器3の第1主壁面31側の主壁を、縦破線V1及び横破線H1で示すとおり、縦方向および横方向にそれぞれ均等に4分割した領域を設定する。4×4に分割した16領域のうち中央の4領域に該当する中央部分31cの範囲内において、任意の5箇所にて主壁の厚みを測定する。図示しないが同様に、第2主壁面側の他方の主壁を4×4に分割し、中央の4領域における中央部分の範囲内で任意の5箇所にて該主壁の厚みを測定する。第1主壁面31側で測定した5点の測定値と第2主壁面側で測定した5点の測定値との合計10点の平均値を算出し、角型容器の肉厚T1を求める。
【0109】
(電極群の厚さTEGの測定方法)
角型容器の外にある状態の電極群の厚さTEGは、次のとおり測定する。
【0110】
上述のとおり外装部材から取り出した電極群の表面を、例えば、メチルエチルカーボネート(MEC)溶媒で洗浄する。この洗浄により、電極群の表面に付着しているLi塩を取り除く。その後、電極群を乾燥する。また、測定を行ううえでの利便性のために封口板および電極端子等から電極群を取り外してもよい。
【0111】
洗浄した電極群の中心の厚さをマイクロメータで測定する。ここでいう電極群の中心とは、電極群の主面における対角線の交点をいう。図9に示す電極群の平面図を参照しながら、具体的に説明する。電極群2の一方の主面21における2本の対角線L2の交点X2をその主面21の中心と見なす。図示しないが、電極群2の裏側における対角線の交点を他方の主面の中心と見なす。両主面の中心位置にて、電極群2の主面21と交差する方向への厚さTEGを測定する。電極群の厚さTEGは、両主面の中心との間の距離と言い換える事ができる。
【0112】
(活物質の測定方法)
下記のとおり測定することにより、電極に含まれている活物質の組成を求めることができる。
【0113】
電極群から電極を取り出し、測定試料を得る。例えば、負極側端子と電気的に接続されている電極を切り出して負極試料を得る。或いは、正極端子と電気的に接続されている電極を切り出して正極試料を得る。取り出した電極を、例えば、メチルエチルカーボネート(MEC)溶媒で洗浄する。この洗浄により電極表面に付着しているLi塩を取り除き、その後電極を乾燥する。
【0114】
得られた電極を試料として用い、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray spectrometry;SEM-EDX)による元素分析、X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)測定、及び誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光法を組合わせることにより、電極に、例えば、活物質含有層に含まれている活物質の組成を確認できる。SEM-EDX分析により、活物質含有層に含まれている成分の形状、及び活物質含有層に含まれている成分の組成(周期表におけるB~Uの各元素)を知ることができる。ICP測定により、活物質含有層中の元素を定量できる。そしてXRD測定により活物質含有層に含まれている材料の結晶構造を確認できる。
【0115】
以上のようにして取り出した電極の断面を、Arイオンミリングにより切り出す。切り出した断面を、SEMにて観察する。試料のサンプリングについても大気に触れないようにし、アルゴンや窒素など不活性雰囲気で行う。3000倍のSEM観察像にて、幾つかの粒子を選定する。この際、選定した粒子の粒度分布ができるだけ広くなるように選定する。
【0116】
次に、選定したそれぞれの粒子について、EDXによる元素分析を行う。これにより、選定したそれぞれの粒子に含まれる元素のうちLi以外の元素の種類及び量を特定することができる。
【0117】
Liについては、ICP発光分光法により、活物質全体におけるLiの含有量についての情報を得ることができる。ICP発光分光法は、以下の手順に従って行う。
【0118】
乾燥させた電極から、次のようにして粉末試料を準備する。活物質含有層を集電体から剥がし、乳鉢ですりつぶす。すりつぶした試料を酸で溶解して、液体サンプルを調製する。このとき、酸としては塩酸、硝酸、硫酸、フッ化水素などを使用できる。この液体サンプルをICP発光分光分析に供することで、測定対象の活物質に含まれていた元素の濃度を知ることができる。
【0119】
SEMで選定したそれぞれの粒子に含まれている化合物の結晶構造は、XRD測定により特定することができる。XRD測定は、CuKα線を線源として、2θ=5°~90°の測定範囲で行う。この測定により、選定した粒子に含まれる化合物のX線回折パターンを得ることができる。
【0120】
XRD測定の装置としては、Rigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV、200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅(2θ):0.02deg
スキャン速度:20deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)
測定範囲:5°≦2θ≦90°の範囲。
【0121】
その他の装置を使用する場合は、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行って、上記装置によって得られる結果と同等のピーク強度、半値幅及び回折角の測定結果が得られる条件を見つけ、その条件で試料の測定を行う。
【0122】
XRD測定の条件は、リートベルト解析に適用できるXRDパターンを取得できる条件とする。リートベルト解析用のデータを収集するには、具体的にはステップ幅が回折ピークの最小半値幅の1/3-1/5となるようにし、最強度反射のピーク位置における強度が5000cps以上となるように適宜、測定時間またはX線強度を調整する。
【0123】
以上のようにして得られたXRDパターンを、リートベルト法によって解析する。リートベルト法では、あらかじめ推定した結晶構造モデルから回折パターンを計算する。ここでの結晶構造モデルの推定は、EDX及びICPによる分析結果に基づいて行う。この計算値と実測値とを全てフィッティングすることにより、結晶構造に関するパラメータ(格子定数、原子座標、占有率等)を精密に分析することができる。
【0124】
リートベルト解析により、例えば負極に複数の活物質が含まれる場合、チタンニオブ複合酸化物の含有量を見積もることができる。リートベルト解析における観測強度と計算強度の一致の程度を見積もるための尺度として、フィッティングパラメータSを用いる。このSが1.8より小さくなるように解析を行う必要がある。また、各サイトの占有率を決定する際には、標準偏差σjを考慮に入れなければならない。ここで定義するフィッティングパラメータS及び標準偏差σjについては、非特許文献1(「粉末X線解析の実際」日本分析化学会X線分析研究懇談会編 中井泉、泉富士夫編著(朝倉書店))に記載の数式で推定するものとする。
【0125】
XRD測定は、広角X線回折装置のガラスホルダーに電極試料を直接貼り付けて測定することによって行うことができる。このとき、電極集電体の金属箔の種類に応じてあらかじめXRDスペクトルを測定しておき、どの位置に集電体由来のピークが現れるかを把握しておく。また、導電剤や結着剤といった合剤のピークの有無もあらかじめ把握しておく。集電体のピークと活物質のピークが重なる場合、集電体から活物質含有層を剥離して測定することが望ましい。これは、ピーク強度を定量的に測定する際、重なったピークを分離するためである。もちろん、これらを事前に把握できているのであれば、この操作を省略することができる。
【0126】
先のSEM-EDX測定により観察された粒子が、Ti、Nb及びOを含んでおり、更に、先のXRD測定で測定対象の電極から単斜晶型に帰属されるX線回折パターンが得られた場合、測定対象の活物質に、単斜晶型チタンニオブ複合酸化物の粒子が存在することが分かる。EDX測定から、TiやNbの含有量が大きく異なる粒子が含まれる場合、複数の活物質を含有している可能性がある。電極中の活物質に含まれている元素の量は、先に説明した手順に従うICP発光分光法により、特定することができる。
【0127】
活物質含有層におけるチタンニオブ複合酸化物の含有量は、以下の方法で見積もることができる。
【0128】
先に説明した手順で電池から取り出した電極を洗浄および乾燥した後に、活物質含有層を集電体から剥がし、乳鉢ですりつぶす。すりつぶした試料をガラス試料板に入れ、ガラス試料板の面と試料面が一致するようにすりきる。また、ピーク位置を補正するためSi標準試料を加えてもよい。
【0129】
ガラス試料板に充填した粉末試料に対し、上述した条件でXRD測定およびリートベルト解析を行う。また、粉末試料を用いて、上記した手順でSEM-EDX測定およびICP測定を行う。XRD測定、SEM-EDX測定、及びICP測定の結果を鑑み、含有する活物質種と比率を見積もることができる。
【0130】
第1実施形態に係る二次電池は、電極群と電極群を収容する外装部材とを具備する。電極群は、正極とチタン含有酸化物を含んだ負極とを含む積層体が捲回されて成る扁平形状の捲回型構造を有する。外装部材は、電極群を収容する角型容器を含む。角型容器は、電極群の主面に沿う一対の主壁を有する。角型容器外の電極群単体の厚さTEGは、電極群を収容した状態の角型容器の厚さをTPCとするとともに角型容器の肉厚をT1として、1×(TPC-T1×2)を超え、且つ、1.05×(TPC-T1×2)以下の範囲内にある。上記構成によれば、良好な寿命性能および高いエネルギー密度を示す二次電池および電池パックを提供することができる。
【0131】
[第2実施形態]
第2実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第1実施形態に係る二次電池を具備している。この電池パックは、第1実施形態に係る二次電池を1つ具備してもよいし、第1実施形態に係る二次電池を複数具備していてもよい。複数の二次電池は、組電池を構成し得る。
【0132】
係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
【0133】
また、電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
【0134】
次に、係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
【0135】
図10は、実施形態に係る電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0136】
図10に示す電池パック300は、組電池200と、プリント配線基板340と、配線330とを備えている。図示しないが、電池パック300は、組電池200とプリント配線基板340と配線330とを収容可能な収容容器と蓋とをさらに含むことができる。収納容器は、例えば、長方形の底面を有する有底角型容器であり得る。蓋は、例えば、矩形型の形状を有し得る。蓋は、収容容器を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器及び蓋には、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等を設けることができる。
【0137】
また、電池パック300は、組電池200等と共に収容容器に収容される1以上の保護シートを含み得る。保護シートは、例えば、組電池200と収容容器の壁面との間に配置される。保護シートは、例えば、樹脂又はゴムからなる。
【0138】
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。
【0139】
複数の単電池100の少なくとも1つは、第1実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100の各々は、図10に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
【0140】
例えば、1つの単電池100の負極端子と、隣に位置する単電池100の正極端子とがバスバーにより接続され得る。このようにして、複数の単電池100を複数のバスバーにより直列に接続することができる。または、例えば、複数の負極端子同士がバスバーにより接続されるとともに複数の正極端子同士がバスバーにより接続されることで、複数の単電池が電気的に接続され得る。
【0141】
各々の単電池100は、拘束部材で拘束され得る。単電池100の各々が、拘束部材をそれぞれ有し得る。或いは、複数の単電池100を拘束可能な拘束部材が含まれ得る。また、拘束部材とし機能する部位を収容容器が有していてもよい。
【0142】
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、例えば、組電池200の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
【0143】
正極側リード22の一端は、組電池200に接続されている。正極側リード22の一端は、1以上の単電池100の正極と電気的に接続されている。負極側リード23の一端は、組電池200に接続されている。負極側リード23の一端は、1以上の単電池100の負極と電気的に接続されている。
【0144】
プリント配線基板340は、正極側コネクタ342と、負極側コネクタ343と、サーミスタ345と、保護回路346と、配線342a及び343aと、通電用の外部端子350と、プラス側配線(正側配線)348aと、マイナス側配線(負側配線)348bとを備えている。例えば、プリント配線基板340の主面は、組電池200の一側面と向き合うことができ、その間には絶縁板が設けられ得る。
【0145】
正極側コネクタ342に、正極側リード22の他端22aが電気的に接続されている。負極側コネクタ343に、負極側リード23の他端23aが電気的に接続されている。
【0146】
サーミスタ345は、プリント配線基板340に固定されている。サーミスタ345は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路346に送信する。
【0147】
通電用の外部端子350は、プリント配線基板340に固定されている。通電用の外部端子350は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。通電用の外部端子350は、正側端子352と負側端子353とを含む。
【0148】
保護回路346は、プリント配線基板340に固定されている。保護回路346は、プラス側配線348aを介して正側端子352と接続されている。保護回路346は、マイナス側配線348bを介して負側端子353と接続されている。また、保護回路346は、配線342aを介して正極側コネクタ342に電気的に接続されている。保護回路346は、配線343aを介して負極側コネクタ343に電気的に接続されている。更に、保護回路346は、複数の単電池100の各々と配線330を介して電気的に接続されている。
【0149】
保護回路346は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路346は、サーミスタ345から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路346と外部機器への通電用の外部端子350(正側端子352、負側端子353)との電気的な接続を遮断する。
【0150】
サーミスタ345から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
【0151】
なお、保護回路346としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
【0152】
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子350を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子350を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子350を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子350を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
【0153】
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板340及び配線330は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子350の正側端子352と負側端子353としてそれぞれ用いてもよい。
【0154】
このような電池パックは、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パックは、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、各種車両の車載用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パックは、車載用電池として特に好適に用いられる。
【0155】
第2実施形態に係る電池パックは、第1実施形態に係る二次電池を備えている。そのため、係る電池パックは良好な寿命性能および高いエネルギー密度を示すことができる。
【0156】
[第3実施形態]
第3実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第2実施形態に係る電池パックを含む。
【0157】
係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。車両は、この車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構(Regenerator:再生器)を含んでいてもよい。
【0158】
係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び鉄道用車両が挙げられる。
【0159】
車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
【0160】
係る車両は、複数の電池パックを搭載してもよい。この場合、それぞれの電池パックが含む電池同士は、電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。例えば、各電池パックが組電池を含む場合は、組電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、又は電気的に並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。或いは、各電池パックが単一の電池を含む場合は、それぞれの電池同士が電気的に直列に接続されてもよく、電気的に並列に接続されてもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続されてもよい。
【0161】
次に、第3実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0162】
図11は、実施形態に係る車両の一例を概略的に示す部分透過図である。
【0163】
図11に示す車両400は、車両本体40と、第2実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。図11に示す例では、車両400は、四輪の自動車である。
【0164】
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300が含む電池(例えば、単電池または組電池)は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
【0165】
図11では、電池パック300が車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている例を図示している。上述したとおり、電池パック300は、例えば、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
【0166】
次に、図12を参照しながら、第3実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
【0167】
図12は、実施形態に係る車両における電気系統に関する制御システムの一例を概略的に示した図である。図12に示す車両400は、電気自動車である。
【0168】
図12に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位の制御装置である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
【0169】
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図12に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
【0170】
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
【0171】
電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置301a(例えば、VTM:Voltage Temperature Monitoring)とを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a~300cは、前述の電池パック300と同様の電池パックであり、組電池200a~200cは、前述の組電池200と同様の組電池である。組電池200a~200cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
【0172】
組電池200a~200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第1実施形態に係る二次電池である。組電池200a~200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
【0173】
電池管理装置411は、組電池監視装置301a~301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a~200cに含まれる単電池100のそれぞれについて電圧及び温度などに関する情報を収集する。これにより、電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を収集する。
【0174】
電池管理装置411と組電池監視装置301a~301cとは、通信バス412を介して接続されている。通信バス412では、1組の通信線が複数のノード(電池管理装置411と1つ以上の組電池監視装置301a~301cと)で共有されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
【0175】
組電池監視装置301a~301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a~200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
【0176】
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との間の電気的な接続の有無を切り替える電磁接触器(例えば図12に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a~200cへの充電が行われるときにオンになるプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、組電池200a~200cからの出力が負荷へ供給されるときにオンになるメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチ及びメインスイッチのそれぞれは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフに切り替わるリレー回路(図示せず)を備えている。スイッチ装置415等の電磁接触器は、電池管理装置411又は車両400全体の動作を制御する車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。
【0177】
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411又は車両全体の動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、制御される。インバータ44が制御されることにより、インバータ44からの出力電圧が調整される。
【0178】
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。駆動モータ45の回転によって発生する駆動力は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
【0179】
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構(リジェネレータ)を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。変換された直流電流は、車両用電源41に入力される。
【0180】
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子417に接続されている。接続ラインL1には、負極端子414と負極入力端子417との間に電池管理装置411内の電流検出部(電流検出回路)416が設けられている。
【0181】
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子418に接続されている。接続ラインL2には、正極端子413と正極入力端子418との間にスイッチ装置415が設けられている。
【0182】
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
【0183】
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置411を含む他の管理装置及び制御装置とともに車両用電源41、スイッチ装置415、及びインバータ44等を協調制御する。車両ECU42等の協調制御によって、車両用電源41からの電力の出力及び車両用電源41の充電等が制御され、車両400全体の管理が行われる。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
【0184】
第3実施形態に係る車両は、第2実施形態に係る電池パックを搭載している。従って、寿命性能が優れた電池パックを備えているため信頼性が高く、高エネルギー密度を有する電池パックを備えていることで高パフォーマンスを示すことができる。
【0185】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0186】
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で電極群および該電極群を備えた非水電解質電池を製造した。
【0187】
<負極の作製>
負極活物質として、式TiNb27で表される組成を有する単斜晶型チタンニオブ複合酸化物の粒子を準備した。導電剤としてのアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジェンゴム(SBR)とを準備した。これらを、負極活物質:AB:CMC:SBRの質量比が90:5:2.5:2.5となるように純水中で混合し、スラリーを得た。このスラリーを厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の表裏両方の主面上に塗布し、塗膜を乾燥させた。かくして、集電体と、集電体の両面上に形成された負極活物質含有層とを含んだ複合体を得た。負極活物質含有層の片面当たりの塗布量は75g/mとした。スリット装置によって負極の幅を調整し、負極塗工幅を90mm、電極が塗布されていないアルミニウム箔の幅を10mmとした。次いで、得られた複合体を負極活物質含有層の密度が2.55 g/cm3となるようにロールプレスに供した。次いで、この複合体を更に真空乾燥に供し、負極を得た。
【0188】
<正極の作製>
正極活物質として、式LiNi0.5Co0.2Mn0.32で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒子を準備した。また、導電剤としてのアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを用意した。これらを、正極活物質:AB:PVdFの質量比が90:5:5となるように混合して混合物を得た。次に、得られた混合物をn-メチルピロリドン(NMP)溶媒中に分散して、正極スラリーを調製した。このスラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム箔からなる集電体の表裏両方の主面上に塗布し、塗膜を乾燥させた。かくして、集電体と、集電体の両面上に形成された正極活物質含有層とを含んだ複合体を得た。正極活物質含有層の片面当たりの塗布量は100g/mとした。スリット装置によって正極の幅を調整し、正極塗工幅を90mm、電極が塗布されていないアルミニウム箔の幅を10mmとした。次いで、得られた複合体を正極活物質含有層の密度が3.05 g/cm3となるようにロールプレスに供した。次いで、この複合体を更に真空乾燥に供し、正極を得た。
【0189】
<電極群の製造>
厚さが15μmであるポリエチレン(PE)セパレータを用意した。次いで、用意したセパレータと上記負極と上記正極とを、負極、セパレータ、正極、及びセパレータの順で積層し、積層体を得た。次いで、この積層体を、負極の一部が最も外側に位置するように渦巻き状に捲回し、捲回体を得た。捲回体の捲き数は100とした。次いで、この捲回体をプレスした。捲回体のプレスは室温(25℃)において実施し、80kNの荷重を1分間かけることにより、プレスを行った。かくして、電極群を製造した。
【0190】
<非水電解質の調製>
以下の手順で非水電解質を調製した。先ず、プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)を体積比PC:DECが1:2となるように混合して、混合溶媒を得た。この混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウムLiPF6を1Mの濃度で溶解させ、液状非水電解質を得た。
【0191】
<電池の組み立て>
肉厚(T1)1 mmのアルミニウム外装缶(角型容器)及びその蓋(封口板)を準備した。外装缶の蓋に、電極端子(正負極端子)及び電極リード(正負極リード)を組付けた。外装缶の蓋と電極端子と電極リードとが一体となった部材と、製造した電極群の集電箔を溶接した。電極群を外装缶へ挿入し、外装缶に蓋を溶接した後、組み上げた電池を80℃にて10時間、真空乾燥した。その後、注液口から電解液を注液した。注液後、注液口に蓋をし、溶接することで、外装缶を封止した。
【0192】
<初回充放電>
組み立てた電池に対し、次のとおり充放電を実施した。外装缶の両側の主面に2 mm厚のポリテトラフルオロエチレン板(PTFE板)をそれぞれ設置し、各面にてさらに外側に7 mm厚のAl板を設置した。2枚のPTFE板間の幅が、電極群挿入前の外装缶の厚さと等しい値、22 mmとなるようにねじで止めた状態で充放電を行った。
【0193】
充電は、定電流定電圧(CCCV)モードで行った。具体的には、充電レート0.2Cの定電流で3.0Vまで充電した後、続いて充電電圧3.0Vの定電圧で充電を行った。充電終止条件は0.05C電流値に到達した時点とした。放電は、0.2Cの放電レートにて定電流モードで行った。放電終止電圧を1.5Vとした。
【0194】
(実施例2)
実施例2では、初回充放電の際に、2枚のPTFE板間の幅が22.2 mmとなるようにした状態で充放電を行った以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0195】
(実施例3)
実施例3では、初回充放電の際に、2枚のPTFE板間の幅が21.8 mmとなるようにした状態で充放電を行った以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0196】
(実施例4)
実施例4では、初回充放電の際のPTFE板およびAl板の配置を次のとおり変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。外装缶の一方の主面に2 mm厚のPTFE板を2枚設置し、外装缶の他方の主面にはPTFE板は設置しなかった。各面にてさらに外側から7 mm厚のAl板を設置し、一方の主面にて外装缶と接しているPTFE板と他方の主面にて外装缶と接しているAl板間の幅が21.6mmとなるようにねじで止めた状態で充放電を行った。
【0197】
(実施例5)
実施例5では、初回充放電の際に、一方の主面にて外装缶と接しているPTFE板と他方の主面にて外装缶と接しているAl板間の幅が22mmとなるようにねじで止めた状態で充放電を行った以外、実施例4と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0198】
(実施例6)
実施例6では、初回充放電の際に、PTFE板が外装缶と接している主面側のPTFE板の枚数を1枚に変更した以外、実施例5と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0199】
(実施例7)
実施例7では、正極活物質を式LiNi0.6Co0.2Mn0.22で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒子に変更し、正極活物質含有層の片面当たりの塗布量を98g/mに変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0200】
(実施例8)
実施例8では、正極活物質を式LiNi0.8Co0.1Mn0.12で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の粒子に変更し、正極活物質含有層の片面当たりの塗布量を96g/mに変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0201】
(実施例9)
実施例9では、負極活物質を、式TiNb1.95Ta0.057で表される組成を有する単斜晶型チタンニオブ複合酸化物の粒子に変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0202】
(実施例10)
実施例10では、負極活物質を、式TiNb1.950.057で表される組成を有する単斜晶型チタンニオブ複合酸化物の粒子に変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0203】
(実施例11)
実施例11では、負極活物質を、式TiNb1.95Mo0.057で表される組成を有する単斜晶型チタンニオブ複合酸化物の粒子に変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0204】
(実施例12)
実施例12では、正極活物質を式LiMn0.8Fe0.2PO4で表されるリチウムマンガン鉄複合リン酸化合物の粒子に変更し、正極活物質含有層の片面当たりの塗布量を110g/mに変更し、正極活物質含有層の密度を2.05 g/cm3とした以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0205】
(実施例13)
実施例13では、正極活物質を式LiNi0.5Mn1.54で表されるリチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子に変更し、正極活物質含有層の片面当たりの塗布量を130g/mに変更し、正極活物質含有層の密度を2.6 g/cm3とし、初回充電時の充電電圧を3.5Vに変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0206】
(比較例1)
比較例1では、初回充放電の際、PTFE板およびAl板にてねじで外装缶を止めずに充放電をした以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0207】
(比較例2)
比較例2では、初回充電時の充電電圧を3.8Vに変更した以外、実施例1と同様の手順で非水電解質電池を製造した。
【0208】
下記表1から表3に、実施例1-13及び比較例1-2で製造した非水電解質電池の設計をまとめる。
【0209】
表1には、各電池の電極の設計をまとめる。詳細には、負極および正極のそれぞれに用いた電極活物質の組成、並びに電極活物質含有層の目付および密度を示す。
【0210】
表2には、セパレータの詳細および捲回型電極群における積層体(負極、正極、及びセパレータを含む積層体)の捲回数を示す。
【0211】
表3には、電池、外装部材、及び電極群の寸法、並びに電池の両面における起伏量をまとめる。詳細には、電池の寸法として、電極群を収容したままの角型容器の厚さTPCを示す。なお、表3が示すとおり厚さTPCは電池を拘束するPTFE板間(片側にPTFE板を設置せずにAl板のみ設置した例については、PTFE板とAl板の間)の距離に等しいが、PTFE板およびAl板を用いた拘束を解いた後でも、電池はこの厚さを維持した。外装部材の寸法としては、角型容器の肉厚T1を示す。電極群の寸法としては、外装部材から取り出した電極群の厚さTEG、並びにこの厚さTEGを角型容器の厚さTPC及び肉厚T1との関係式に換算した表記(倍数×(TPC-T1×2))を示す。電池の両面における起伏量としては、上述した方法で測定した第1主壁面における第1中央と第1基準面間の第1距離および第2主壁面における第2中央と第1基準面間の第2距離を示す。なお、各電池について、第1主壁面側および第2主壁面側は、両側の主壁の間で任意に選択した。
【0212】
【表1】
【0213】
【表2】
【0214】
【表3】
【0215】
<評価>
実施例1-13及び比較例1-2にて製造した各電池について、サイクル寿命性能を評価した。具体的には、次のとおり充放電サイクル試験を行って、放電容量維持率を測定した。
【0216】
電池を、35℃環境下において1Cの定電流にて充電終止電圧まで充電した。実施例1-12及び比較例1-2で製造した電池については、3.0 Vの充電終止電圧に達するまで充電した。正極活物質にLiNi0.5Mn1.5O4を用いた実施例13で製造した電池については、3.5 Vの充電終止電圧に達するまで充電した。次いで、電池を充電終止電圧にて定電圧充電した。充電は、電流が0.05C相当の値に収束した時点で完了した。
【0217】
その後、電池を、30分開回路状態で放置した。次いで、電池を、1Cの定電流で、電圧が1.5 Vに達するまで放電した。
【0218】
上記充電、開回路状態での放置、及び放電からなる組を、1回の充放電サイクルとした。この充放電サイクルを1000回繰り返した。1回目のサイクルで得られた放電容量に対する、1000回目の放電容量の比率(%)を算出した。得られた比率をサイクル放電容量維持率(放電容量維持率={[1000回目の放電容量]/[1回目の放電容量]}×100%)として寿命性能の指標とした。
【0219】
試験結果を、下記表4に示す。
【0220】
【表4】
【0221】
表4が示すとおり、実施例1-13で製造した各々の非水電解質電池では、1000サイクルの充放電を繰り返した際の容量維持率が高く、優れた寿命性能を示した。また、これら実施例1-13では、電池から取り出した電極群の厚さTEGが1×(TPC-T1×2)より大きく1.05×(TPC-T1×2)以下の範囲内の値を有していた。即ち、電池全体の厚み(電極群を収容した状態の角型容器の厚さTPC)と比して厚い電極群を備えており、そのため高いエネルギー密度を有していた。
【0222】
対して比較例1で製造した非水電解質電池では、充放電サイクルにおける容量維持率が低く、寿命性能が劣っていた。比較例1では、外装部材の内寸と比較して電極群の寸法が小さかった。そのため、外装部材内の空間に余裕があったことから充放電サイクルにて活物質が膨張収縮した際に電極群が変形する余地があり、それにより電極群内で正負極での反応分布が不均一になり劣化が加速された、又は正負極間の微小な短絡が生じ、自己放電が起きていたものと推測される。また、電極群の大きさに対して外装部材内の空間に余裕があったことから、体積エネルギー密度が最適ではなかったといえる。
【0223】
以上説明した1以上の実施形態および実施例によれば、二次電池が提供される。係る二次電池は、正極と負極とを含む電極群と、電極群を収容する外装部材とを具備する。電極群は、正極と負極とを含む積層体が捲回されて成る扁平形状の捲回型構造を有する。負極は、チタン含有酸化物を含む。外装部材は、電極群を収容する角型容器を含む。角型容器は、電極群の主面に沿う一対の主壁を有する。電極群を収容した角型容器の厚さTPCと、角型容器の肉厚T1と、角型容器の外にある単体状態の電極群の厚さTEGとは、1×(TPC-T1×2) < TEG ≦ 1.05×(TPC-T1×2)の関係を満たす。上記二次電池は、良好な寿命性能および高いエネルギー密度を示すことができ、良好な寿命性能および高いエネルギー密度を示す電池パック及びこの電池パックを搭載した車両を提供することができる。
【0224】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 正極と、チタン含有酸化物を含む負極とを含み、前記正極と前記負極とを含む積層体が捲回されて成る扁平形状の捲回型構造を有する電極群と、
前記電極群を収容し、且つ前記電極群の主面に沿う一対の主壁を有する角型容器を含む外装部材と
を具備し、
前記電極群を収容した前記角型容器の前記主壁と交差する方向への厚さT PC と、前記角型容器の肉厚T1と、前記角型容器の外にある状態の前記電極群の厚さT EG とは、1×(T PC -T1×2) < T EG ≦ 1.05×(T PC -T1×2)の関係を満たす、二次電池。
[2] 前記角型容器の一対の前記主壁は、前記角型容器の外側を向いている第1主壁面と第2主壁面とを含み、前記第1主壁面の第1中央と前記第1主壁面の第1基準面との間の第1距離が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にあり、前記第2主壁面の第2中央と前記第2主壁面の第2基準面との間の第2距離が-0.6mm以上0.2mm以下の範囲内にある、[1]に記載の二次電池。
[3] 前記負極はアルミニウムを含む負極集電体と前記負極集電体上に設けられ前記チタン含有酸化物を含む負極活物質含有層とを含み、前記チタン含有酸化物はチタンニオブ複合酸化物を含む、[1]又は[2]に記載の二次電池。
[4] 前記チタンニオブ複合酸化物は、一般式Li a Ti 1-x M1 x Nb 2-y M2 y 7-δ で表される化合物を含み、0≦a<5、0≦x<1、0≦y<1、-0.3≦δ≦0.3、及び元素M1及び元素M2は、それぞれ、Mg、Fe、Ni、Co、W、Ta及びMoからなる群より選択される少なくとも1つであり、且つ、前記元素M1及び前記元素M2は互いに同じ又は異なる、[3]に記載の二次電池。
[5] 前記正極は、アルミニウムを含む正極集電体と、前記正極集電体上に設けられ、且つリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、リチウムリン酸化物、及びリチウムニッケルマンガン複合酸化物から成る群より選択される1以上を含む正極活物質含有層とを含む、[1]から[4]の何れか1つに記載の二次電池。
[6] 前記角型容器は、アルミニウム製金属缶またはアルミニウム合金製缶から成る、[1]から[5]の何れか1つに記載の二次電池。
[7] 前記角型容器の肉厚T1は、0.1mm以上1mm以下である、[1]から[6]の何れか1つに記載の二次電池。
[8] [1]から[7]の何れか1つに記載の二次電池を具備する、電池パック。
[9] 通電用の外部端子と、
保護回路と
を更に具備する[8]に記載の電池パック。
[10] 複数の前記二次電池を具備し、
前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続されている[8]又は[9]に記載の電池パック。
[11] [8]から[10]の何れか1つに記載の電池パックを具備する車両。
[12] 前記車両の運動エネルギーを回生エネルギーに変換する機構を含む[11]に記載の車両。
【符号の説明】
【0225】
1…外装部材、2…電極群、3…角型容器、4…封口板、5…正極、5a…正極集電タブ、5b…正極活物質含有層、6…負極、6a…負極集電タブ、6b…負極活物質含有層、7…セパレータ、9…正極端子、11…負極端子、12…電極ガード、13…絶縁テープ、14…封止蓋、16…絶縁板、17…絶縁ガスケット、20…注液口、21…主面、22…正極側リード、23…負極側リード、24…粘着テープ、30…主壁、31…第1主壁面、32…第2主壁面、33…第2側壁、34…底面、40…車両本体、41…車両用電源、42…電気制御装置、43…外部端子、44…インバータ、45…駆動モータ、100…二次電池、340…プリント配線基板、300…電池パック、300a…電池パック、300b…電池パック、300c…電池パック、301a…組電池監視装置、301b…組電池監視装置、301c…組電池監視装置、330…配線、342…正極側コネクタ、342a…配線、343…負極側コネクタ、343a…配線、345…サーミスタ、346…保護回路、350…通電用の外部端子、352…正側端子、353…負側端子、348a…プラス側配線、348b…マイナス側配線、400…車両、411…電池管理装置、412…通信バス、413…正極端子、414…負極端子、415…スイッチ装置、416…電流検出部、417…負極入力端子、418…正極入力端子、L1…接続ライン、L2…接続ライン、W…駆動輪。
図1
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図12