(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】中空球状ガラス粒子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/083 20060101AFI20240708BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20240708BHJP
C03B 19/08 20060101ALI20240708BHJP
C03C 11/00 20060101ALI20240708BHJP
C01B 39/02 20060101ALI20240708BHJP
C01B 33/40 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C03C3/083
C03C3/062
C03B19/08 B
C03C11/00
C01B39/02
C01B33/40
(21)【出願番号】P 2021504200
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 EP2019069865
(87)【国際公開番号】W WO2020020921
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453383
【氏名又は名称】オムヤ インターナショナル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト オルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ライラ ラクエル パジン エー マトス
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/108831(WO,A1)
【文献】特開2010-037164(JP,A)
【文献】特開2014-144879(JP,A)
【文献】特開平08-073232(JP,A)
【文献】特開昭61-006142(JP,A)
【文献】特開昭49-002810(JP,A)
【文献】特開昭61-295241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/02
C01B 33/40
C03B 7/00-7/22
9/00-17/06
19/00-19/10
21/00-21/06
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空球状ガラス粒子の製造方法であって、
中空球状ガラス粒子が、中空内部を画定する球状ガラスシェルを
含み、前記中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含み:
(i)少なくとも30重量%のAl
2O
3、
(ii)少なくとも35重量%のSiO
2、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
ここで、
前記中空球状ガラス粒子が、20μmを超え75μmまでの範囲の粒径を有し、
前記中空球状ガラス粒子が、ホウ素を含まず、かつ
以下の工程を含む:
(a)組成物の全重量に対して以下を含む前記組成物を提供すること:
(i)少なくとも30重量%のAl
2
O
3
、
(ii)少なくとも35重量%のSiO
2
、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
(b)任意に、工程(a)で得られた組成物を粉砕工程にかけ、それによって、10.0μm又はそれ未満の粒径を有する微粉砕粒子を得ること、
(c)工程(b)で得られた前記微粉砕粒子と、水及び任意に有機バインダーとを混合し、これによってスラリーを得ること、
(d)工程(c)で得られた前記スラリーを噴霧乾燥すること、及び
(e1)工程(d)で得られた粒子を加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を上に向かって吹き込み、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e2)工程(d)で得られた粒子を、直列に接続した少なくとも二つの加熱装置を含む加熱システムに供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を第一の前記加熱装置に通過させ、かつ後続の前記加熱装置に前記粒子を連続的に移送し、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e3)工程(d)で得られた粒子を少なくとも一つの加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を前記加熱装置に通過させ、かつこうして得られた粒子の少なくとも一部を前記加熱装置に返送し、それによって、前記粒子を前記加熱装置に通過させ、これによって中空球状ガラス粒子を得ること
中空球状ガラス粒子の製造方法。
【請求項2】
前記中空球状ガラス粒子が、20μmを超え70μmまでの範囲の粒径を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記中空球状ガラス粒子のμmでの粒径の、
前記中空球状ガラス粒子のμmでの壁厚に対する比率が、10~30の範囲である、請求項1又は2に記載の
方法。
【請求項4】
前記中空球状ガラス粒子が、0.1~15μmの範囲の壁厚を有する、請求項1又は2に記載の
方法。
【請求項5】
前記中空球状ガラス粒子が、前記中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の
方法:
(i)30~45重量%のAl
2O
3、
(ii)35~42重量%のSiO
2、及び
(iii)18~30重量%のNa
2OとK
2Oとの混合物。
【請求項6】
任意に工程(b)で得られた前記微粉砕粒子が、1.0~10μmの範囲、好ましくは1.0~7.0μmの範囲の粒径を有する第一の画分の粒子、及び1.0μm又はそれ未満の粒径を有する第二の画分の粒子を含有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)において、任意に工程(b)で得られた前記微粉砕粒子を、好ましくは多価アルコールである有機バインダーとさらに混合する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の
方法によって複数の
前記中空球状ガラス粒子
を製造し、そして製造された複数の前記中空球状ガラス粒子をフィラーとして使用することを含む、物品の製造方法。
【請求項9】
前記物品が、高温製品、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、又はコンクリートである、
請求項8に記載の
方法。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の
方法によって複数の
前記中空球状ガラス粒子
を製造し、そして製造された複数の前記中空球状ガラス粒子を、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、コンクリート、及び油田用途のための充填材として
使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空アルミノケイ酸塩ガラス粒子及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、この中空アルミノケイ酸塩ガラス粒子を含む物品、並びにこの粒子の、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、コンクリート、及び油田用途のための充填材としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
中空ガラス微小球としても知られる中空球状ガラス粒子は、様々な適用分野の材料のための充填材として使用されている。耐熱性、耐圧性、耐衝撃性などの物理的性質を高いレベルに保ったままにしながら、中空球状ガラス粒子の比重は、他の充填材と比較して著しく低い。したがって、中空球状ガラス粒子は、成形樹脂又は金属部品を含む重量減少物品のための、例えば、自動車部品、家庭用品、シール材料、又は建築材料のための充填材として広く使用されている。
【0003】
中空球状ガラス粒子を製造するためのこの技術分野で公知の方法は、通常、乾燥した微細ガラス粉末を高温の熱風中に分散させることを含み、ここで、ガラスの粘度が低下するようにガラスを加熱する。それと同時に、発泡剤の熱分解によってガスが生じる。したがって、表面張力に起因して、得られる粒子の形状は球形であり、かつ同時に、粒子中で形成されたガスのために粒子は中空になる。
【0004】
中空球状ガラス粒子の化学組成に関しては、その優れた化学的及び機械的耐性のために、ホウケイ酸ガラスが広く使用されている。例えば、特開平58-156551号には、SiO2、H3BO3、CaCO3、Na2CO3、NH4H2PO4、及びNa2SO4のような出発材料から中空ホウケイ酸ガラス微小球を形成する方法が開示されている。しかしながら、出発材料としてホウ酸を適用すると、中空球状ガラス粒子の製造プロセス中に毒性化合物が形成される可能性がある。現在のEU法規(REACH)によれば、ホウ酸及びホウ酸エステルは健康に有害なものに分類されている。したがって、調製品は、ホウ素含有量1%から、「生殖機能を損なう可能性がある」という危険有害性情報とともに、毒性があると表示しなければならない。これらの増加する要件及び処理中の危険有害性を回避するために、ホウ素を含まない出発材料を適用することが好ましい。
【0005】
国際公開第2017/108831号は、Al2O3、SiO2、及び少なくとも一つのアルカリ金属酸化物を出発材料として使用する中空球状アルモシリケートガラス粒子の製造方法を開示している。したがって、得られる中空球状ガラス粒子は、ホウ素を含まず、かつ粒径が10~600μmの範囲にあることが開示されている。しかしながら、国際公開第2017/108831号に従って得られる粒子の直径は、少なくとも80μmであって、その壁厚はむしろ不均一であり、これは粒子の機械的特性に悪影響を及ぼす。さらに、80μm又はこれを超える大きさを有する粒子は、より微細な表面構造を有する物品のための充填材としては適しておらず、あるいは充填した物品の優れた触覚特性を所望する場合にも適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、この技術分野では、改善した機械的特性によって特徴付けられる、ホウ素を含まない中空球状ガラス粒子が必要とされている。
【0007】
そのため、本発明の目的は、粒径が小さく、かつ壁厚が均一な、ホウ素を含まない中空球状ガラス粒子を提供すること、及びこの中空球状ガラス粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の及びその他の課題は、本発明の主題によって解決される。
【0009】
本発明の第一の態様によれば、中空内部を画定する球状ガラスシェルを含む中空球状ガラス粒子が提供され、この中空球状ガラス粒子は、この中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含む:
(i)少なくとも30重量%のAl2O3、
(ii)少なくとも35重量%のSiO2、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
ここで、
この中空球状ガラス粒子が、20μmを超え75μmまでの範囲の粒径を有し、かつ
この中空球状ガラス粒子が、ホウ素を含まない。
【0010】
本発明者らによって、驚くべきことに、20μmを超え75μmまでの直径を有する中空球状ガラス粒子が、Al2O3、SiO2、及び少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を含む出発材料組成物から得られることが見出された。この大きさの粒子は、より微細な表面構造を有する物品に適用することができる。
【0011】
中空球状ガラス粒子は、20μmを超え70μmまでの範囲の粒径を有することが特に好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも一種のアルカリ金属酸化物は、Na2O、K2O、又はそれらの混合物から選択される。特に、この少なくとも一種のアルカリ金属酸化物は、Na2OとK2Oとの混合物であることが好ましい。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、Na2O:K2Oの重量比は、10:1から30:1の範囲内である。
【0014】
さらなる実施形態によれば、μmでの粒径の、μmでの壁厚に対する比率が、10~30の範囲であり、より好ましくは15~25の範囲、さらにより好ましくは17~23の範囲、例えば、20~22の範囲である。理論に束縛されることなく、上記の範囲内において、粒径(粒子直径)の壁厚に対する比率は、中空球状ガラス粒子の機械的安定性を向上させる。
【0015】
したがって、本発明に係る中空球状ガラス粒子は、0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらに一層好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有することが好ましい。この範囲の壁厚は、機械的特性にとっても有利である。
【0016】
中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含む中空球状ガラス粒子が特に好ましい:
(i)30~45重量%のAl2O3、
(ii)35~42重量%のSiO2、及び
(iii)18~30重量%のNa2OとK2Oとの混合物。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、中空球状ガラス粒子は、120~150MPaの範囲の圧力崩壊強度値を有する。以下でさらに詳細に、この圧力崩壊強度値の決定方法を説明する。
【0018】
本発明は、さらに、複数の上記で定義したような中空球状ガラス粒子を対象とする。
【0019】
この複数の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え75μmまでの範囲の平均粒径(D50)を有することが特に好ましい。
【0020】
本発明はまた、以下の工程を含む、中空球状ガラス粒子の製造方法に関する:
(a)組成物の全重量に対して以下を含む組成物を提供すること:
(i)少なくとも30重量%のAl2O3、
(ii)少なくとも35重量%のSiO2、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
(b)任意に、工程(a)で得られた組成物を粉砕工程にかけ、それによって、10.0μm又はそれ未満の粒径を有する微粉砕粒子を得ること、
(c)工程(b)で得られた微粉砕粒子と、水及び任意に有機バインダーとを混合し、これによってスラリーを得ること、
(d)工程(c)で得られたスラリーを噴霧乾燥すること、及び
(e1)工程(d)で得られた粒子を加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子を上に向かって吹き込み、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e2)工程(d)で得られた粒子を、直列に接続した少なくとも二つの加熱装置を含む加熱システムに供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子を第一の加熱装置に通過させ、かつ後続の加熱装置にこの粒子を連続的に移送し、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e3)工程(d)で得られた粒子を少なくとも一つの加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子を加熱装置に通過させ、かつこうして得られた粒子の少なくとも一部を加熱装置に返送し、それによって、この粒子を加熱装置に通過させ、これによって中空球状ガラス粒子を得ること。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、工程(b)で得られた微粉砕粒子は、1.0~10.0μmの範囲、好ましくは1.0~7.0μmの範囲の粒径を有する第一の画分の粒子と、1.0μm又はそれ未満の粒径を有する第二の画分の粒子とを含有する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、有機バインダーは、比較的多価のアルコールである。
【0023】
この製造方法によって得られた中空球状ガラス粒子は、上記のような中空球状ガラス粒子であることが特に好ましい。
【0024】
本発明はさらに、上記のような複数の中空球状ガラス粒子を含む物品に関する。
【0025】
好ましくは、この物品は、高温製品、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、又はコンクリートである。
【0026】
本発明はまた、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、コンクリート、及び油田用途のための充填材としての上記の複数の中空球状ガラス粒子の使用に関する。
【0027】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ガス流(1)、供給ユニット(3)、孔あきのダブルテーパープレートを有する分配ユニット(4)、3つの加熱ゾーン(5)、外部から加熱するセラミック管を有する管状炉(6)、分離器(7)、及び分離物質の捕集器(8)を備えるパイロットプラントを示す。粒子(2)は、パイロットプラントを通って導かれている。
【
図2】
図2は、分離物質の捕集後の粒子混合物の顕微鏡写真を示す。
【
図3】
図3は、浮遊分離後の粒子の顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、20μmを超え75μmまでの範囲の平均粒径を有する中空ガラス微小球である中空球状アルモシリケートガラス粒子を提供する。上記で概説したように、本発明に係る中空球状ガラス粒子は、Al2O3、SiO2、及び少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0030】
特に、本発明の中空球状ガラス粒子は、中空球状ガラス粒子の全重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらに好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらに好ましくは41~42重量%のSiO2;及び少なくとも18重量%、好ましくは18~30重量%、より好ましくは20~24重量%、さらに好ましくは21~23重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0031】
好ましくは、中空球状ガラス粒子は、Li2O、Na2O、及びK2Oからなる群から選択される少なくとも二種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0032】
中空球状ガラス粒子内の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物は、Na2OとK2Oとの混合物であることが特に好ましい。
【0033】
したがって、本発明の中空球状ガラス粒子は、中空球状ガラス粒子の全重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらに好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらに好ましくは41~42重量%のSiO2;及び少なくとも18重量%、好ましくは18~30重量%、より好ましくは20~24重量%、さらに好ましくは21~23重量%のNa2OとK2Oとの混合物を含むことが好ましい。
【0034】
好ましくは、この混合物中のNa2O:K2Oの重量比は、10:1~30:1の範囲、より好ましくは15:1~25:1の範囲、さらに好ましくは18:1~22:1の範囲、例えば20:1~21:1の範囲である。
【0035】
したがって、本発明の中空球状ガラス粒子は、中空球状ガラス粒子の全重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらに好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらに好ましくは41~42重量%のSiO2;少なくとも10重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~24重量%、さらに好ましくは18~23重量%のNa2O;及び少なくとも0.5重量%、より好ましくは0.5~5重量%、さらにより好ましくは1.0~2.0重量%のK2Oを含むことが好ましい。
【0036】
上述したとおり、本発明の目的は、ホウ素を含まない中空球状ガラス粒子を提供することにある。したがって、本発明の中空球状ガラス粒子は、ホウ素を含まない。
【0037】
本明細書中で使用する場合、「ホウ素を含まない」又は「ホウ素不含の」との用語は、通常の定量法の検出限界外の量のホウ素を含む組成物又は材料に関連する。特に、中空球状ガラス粒子が、中空球状ガラス粒子の全重量を基準として、1.0重量%又はそれ未満、より好ましくは0.1重量%又はそれ未満、さらに好ましくは0.01重量%又はそれ未満、例えば0.001重量%又はそれ未満の量で、ホウ素を含むことが好ましい。
【0038】
本発明の中空球状ガラス粒子は、Al2O3、SiO2、及び少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を上記の量で含有しなければならないが、本発明の中空球状ガラス粒子のための出発材料は、いかなる特定の供給源にも限定されない。Al2O3、SiO2、及び少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を上述した量で提供する任意の出発組成物が好適である。適切な出発物質は、ゼオライト、クレー、マイカ、又はそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、出発物質はゼオライトである。
【0039】
上記の段落に加えて、又はこれに代えて、ホウ素を含有する化合物を、中空球状ガラス粒子の調製のために使用しないことが好ましい。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え70μmまでの範囲、より好ましくは21~50μmの範囲、さらに好ましくは22~45μmの範囲、例えば23~38μmの範囲の粒径を有する。
【0041】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え60μmまでの範囲、より好ましくは21~55μmの範囲、さらに好ましくは22~43μmの範囲、例えば23~35μmの範囲の粒径を有する。
【0042】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え50μmまでの範囲、より好ましくは21~47μmの範囲、さらに好ましくは22~41μmの範囲、例えば23~32μmの範囲の粒径を有する。
【0043】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え40μmまでの範囲、より好ましくは21~44μmの範囲、さらに好ましくは22~31μmの範囲、例えば23~29μmの範囲の粒径を有する。
【0044】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え~30μmまでの範囲、より好ましくは21~28μmの範囲、さらに好ましくは22~26μmの範囲、例えば23~25μmの範囲の粒径を有する。
【0045】
本発明に係る中空球状ガラス粒子は、壁厚が、0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらに好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲であることが好ましい。このような壁厚は、強化された機械的安定性を提供する。その結果、中空球状ガラス粒子は、窓敷居、ドアパネル等の屋内及び屋外用途のための建設物品に有利に使用することができる。
【0046】
上記の段落に加えて、又はこれに代えて、本発明による中空球状ガラス粒子のμmでの粒径のμmでの壁厚に対する比率は、10~30の範囲、より好ましくは15~25の範囲、さらに好ましくは17~23の範囲、例えば20~22の範囲であることが好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え70μmまでの範囲、より好ましくは21~50μmの範囲、さらに好ましくは22~45μmの範囲、例えば23~38μmの範囲の粒径を有し、かつ0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらにより好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有する。
【0048】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え60μmまでの範囲、より好ましくは21~55μmの範囲、さらに好ましくは22~43μmの範囲、例えば23~35μmの範囲の粒径を有し、かつ0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらにより好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有する。
【0049】
本発明のさらなる実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え50μmまでの範囲、より好ましくは21~47μmの範囲、さらに好ましくは22~41μmの範囲、例えば23~32μmの範囲の粒径を有し、かつ0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらにより好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有する。
【0050】
本発明のさらに他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え40μmまでの範囲、より好ましくは21~44μmの範囲、さらに好ましくは22~31μmの範囲、例えば23~29μmの範囲の粒径を有し、かつ0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらにより好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有する。
【0051】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の中空球状ガラス粒子は、20μmを超え30μmまでの範囲、より好ましくは21~28μmの範囲、さらに好ましくは22~26μmの範囲、例えば23~25μmの範囲の粒径を有し、かつ0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.2~12μmの範囲、さらにより好ましくは1.5~10μmの範囲、例えば0.3~7.0μmの範囲の壁厚を有する。
【0052】
さらに、本発明に係る中空球状ガラス粒子は、圧力崩壊強度値が120~150MPaの範囲、より好ましくは125~140MPaの範囲、さらにより好ましくは130~135MPaの範囲であることが好ましい。
【0053】
圧力崩壊強度値の決定のために、底が閉じたシリンダーに中空球状ガラス粒子を移し、ポンチを使って上部に圧力をかけることができる。中空球状ガラス粒子は、プレス機の中のように、ポンチによってプレスされる。シリンダー内の中空球状ガラス粒子の充填高さは粒径に依存する。シリンダーを、ポンチの力を制御する引張/圧縮試験装置に配置する。したがって、所定の垂直抗力又は表面圧力が生じる。粒子サイズに応じて、顕微鏡検査又は肉眼検査を用いて破壊された中空球状ガラス粒子の割合を決定することにより、結果を評価する。この手順のために使用したシリンダーは、内径20mm、シリンダーの内部長さ80mmを有する。充填高さは20mmであった。この基準は、80%の無傷の適切な直径の中空球状ガラス粒子に基づくものである。
【0054】
この中空球状ガラス粒子は、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、及び難燃性断熱発泡体のための充填材として適用可能であるべきである。したがって、この中空球状ガラス粒子は、これらの物品の製造のための条件に耐えることができるものでなければならない。したがって、本発明に係る中空球状ガラス粒子は、少なくとも800℃、より好ましくは少なくとも1000℃、さらに好ましくは少なくとも1200℃、例えば少なくとも1400℃の溶融温度を有することが好ましい。この範囲の融解温度は、油田用途における中空球状ガラス粒子の適用も可能にする。
【0055】
本発明はまた、複数の上記のとおりの中空球状ガラス粒子を対象とする。
【0056】
中空球状ガラス粒子の粒径について上述した範囲は、それに応じて複数の中空球状ガラス粒子に適用される。この複数の中空球状ガラス粒子について、その粒径(粒子直径)は、平均値を表す。
【0057】
好ましくは、粒径についての上述した範囲は、D10値を表し、すなわち、複数の中空球状ガラス粒子の10%が、粒径に関する上述の要件を満たす。
【0058】
より好ましくは、粒径についての上述の範囲は、D50値を表し、すなわち、複数の中空球状ガラス粒子の50%が、粒径に関する上述の要件を満たす。
【0059】
最も好ましくは、粒径についての上述の範囲は、D90値を表し、すなわち、複数の中空球状ガラス粒子の90%が、粒径に関する上述の要件を満たす。
【0060】
好ましくは、この複数の中空球状ガラス粒子は、0.4~1.2g/cm3の範囲、より好ましくは0.5~1.0g/cm3の範囲、さらにより好ましくは0.6~0.9g/cm3の範囲、例えば0.7~0.8g/cm3の範囲の密度を有する。
【0061】
本発明はまた、中空球状ガラス粒子の製造方法に関する。
【0062】
本発明の方法の工程(a)によれば、組成物を提供し、この組成物は、組成物の全重量に対して、以下を含む:
(i)少なくとも30重量%のAl2O3、
(ii)少なくとも35重量%のSiO2、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物。
【0063】
特に、この組成物は、組成物全重量を基準として、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらにより好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらにより好ましくは41~42重量%のSiO2;及び少なくとも18重量%、好ましくは18~30重量%、より好ましくは20~24重量%、さらに好ましくは21~23重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物を含む。
【0064】
少なくとも一種のアルカリ金属酸化物に関して、この組成物は、ガラス製造に適した任意のアルカリ金属源を含有することができる。好ましくは、組成物は、Li、Na及びKからなる群から選択される少なくとも二つのアルカリ金属を含む。
【0065】
組成物内の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物は、NaとKとの混合物であることが特に好ましい。
【0066】
したがって、この組成物は、組成物の全重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらに好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらに好ましくは41~42重量%のSiO2;及び少なくとも18重量%、好ましくは18~30重量%、より好ましくは20~24重量%、さらにより好ましくは21~23重量%のNa2OとK2Oとの混合物を含むことが好ましい。
【0067】
好ましくは、上記混合物中のNa2O:K2Oの重量比は、10:1~30:1の範囲、より好ましくは15:1~25:1の範囲、さらに好ましくは18:1~22:1の範囲、例えば20:1~21:1の範囲である。
【0068】
したがって、この組成物は、組成物の全重量に基づいて、少なくとも30重量%、好ましくは30~45重量%、より好ましくは33~40重量%、さらに好ましくは35~38重量%のAl2O3;少なくとも35重量%、好ましくは35~55重量%、より好ましくは40~46重量%、さらに好ましくは41~42重量%のSiO2;少なくとも10重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~24重量%、さらに好ましくは18~23重量%のNa2O;及び少なくとも0.5重量%、より好ましくは0.5~5重量%、さらにより好ましくは1.0~2.0重量%のK2Oを含むことが好ましく、より好ましくはこれらからなることが好ましい。
【0069】
さらに、この組成物はホウ素を含まないことが好ましい。「ホウ素を含まない」との用語に関しては、上記の定義を参照されたい。したがって、この組成物は、組成物の全重量に対して、1.0重量%又はこれ未満、より好ましくは0.1重量%又はこれ未満、さらに好ましくは0.01重量%又はこれ未満、例えば0.001重量%又はこれ未満の量のホウ素を含むことが好ましい。加えて、又はその代わりに、この組成物の調製のためにホウ素を含有する化合物を使用しないことが好ましい。
【0070】
この組成物は、上記に概略を説明した量で、Al2O3、SiO2、及び少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、好ましくはNa2O及びK2Oを選択し、かつ必要に応じて混合することによって得られる。
【0071】
上記で概略を説明したように、中空球状ガラス粒子の製造のための出発材料、すなわち、本発明の方法における工程(a)で提供する組成物は、ゼオライト、クレー、マイカ又はそれらの混合物から選択することができる。
【0072】
特に工業的用途のために、工程(a)で提供する組成物は、さらなる粉砕を必要とし得る。したがって、本発明の一態様によれば、本発明の方法の工程(b)に従い、工程(a)で得られた組成物を粉砕処理する。
【0073】
上記で概略を説明したように、本発明に係る中空球状ガラス粒子は、粒径が100μm未満である。このような小さい粒子を得るためには、工程(a)で得られた組成物を小さい粒径に粉砕し、それによって、本発明の中空球状ガラス粒子の前駆体材料を得るようにすることが有利である。
【0074】
したがって、工程(a)における組成物を粉砕し、それによって、粒径が10μm又はそれ未満、好ましくは7.0μm又はそれ未満の微粉砕粒子を得る。より好ましくは、粉砕工程(b)後に得られる粒子は、5.0μm又はそれ未満、さらに好ましくは3.0μm又はそれ未満、例えば2.0μm又はそれ未満の粒径を有する。適切な粉砕媒体を使用して、ボールミル中で組成物を粉砕し、それによって、所望の粒子サイズを実現することができる。適切な粉砕媒体は、当業界で知られている。粉砕プロセスは、乾式又は湿式であってよい。
【0075】
本発明の一実施形態によれば、工程(b)で得られる粉砕組成物が、異なる粒径を有する2つの画分を含むことが好ましい。特に、第一の画分は、1.0~10.0μmの範囲、好ましくは1.0~7.0μmの範囲、より好ましくは2.0~5.0μmの範囲、さらに好ましくは2.5~3.5μmの範囲、例えば2.8~3.2μmの範囲の粒径を有し、かつ第二の画分は、1.0μm又はそれ未満、好ましくは0.5μm又はそれ未満、より好ましくは0.4μm又はそれ未満、さらに好ましくは0.3μm又はそれ未満、例えば0.2μm又はそれ未満の粒径を有することが好ましい。
【0076】
好ましくは、第一の画分:第二の画分の重量比は、90:10~10:90の範囲、より好ましくは80:20~20:80の範囲、さらに好ましくは70:30~30:70の範囲、例えば60:40~40:60の範囲である。
【0077】
上記のように異なる粒径を有する2つの画分を含む粉砕組成物は、適切な粉砕媒体を使用して別々のプロセスで第一の画分及び第二の画分を調製し、上記に示した重量比で、この二つの画分を混合することによって得ることができる。
【0078】
工程(b)で任意に得られた微粉砕粒子を、続いて、水及び任意に有機バインダーと混合してスラリーを得る。その結果、この粒子は、次の噴霧乾燥工程のために十分な流動性を有する。
【0079】
したがって、本発明の方法の工程(c)では、工程(b)で得られた微粉砕粒子を、水及び任意に有機バインダーと混合し、これによってスラリーを得る。
【0080】
好ましくは、この有機バインダーは、多価アルコール(価数が高いアルコール)である。特に、この有機バインダーは、グリセリン、グリコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、ポリビニルアルコール、又はそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。この有機バインダーが、グリセリン又はグリコールであることが特に好ましい。
【0081】
スラリーは、スラリーの全重量に基づいて、80.0重量%まで、より好ましくは40.0~80.0重量%、さらにより好ましくは50.0~70.0重量%、例えば60.0~65重量%の工程(b)で得られた微粉砕粒子;25.0重量%まで、より好ましくは10.0~25.0重量%、さらにより好ましくは12.0~23.0重量%、例えば15.0~20.0重量%の水;及び25.0重量%まで、より好ましくは1.0~25.0重量%、さらにより好ましくは1.5~10.0重量%、例えば2.0~5.0重量%の有機バインダーを含むことが好ましい。
【0082】
さらに、分散剤を使用して、粒子を混合し、懸濁させ、かつ分散させる助けとしてもよい。したがって、スラリーは、分散剤をさらに含んでもよい。好ましくは、この分散剤は、ポリビニル化合物又はポリアクリル化合物などのポリマー分散剤から選択される。特に、分散剤は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリアクリレートコポリマー、又はそれらの混合物からなる群から選択される。適切な分散剤の非限定的な例は、BASFの市販製品Luviskol K90及びSokalan PA 15である。
【0083】
好ましくは、スラリーは、スラリーの全重量を基準として、80.0重量%まで、より好ましくは40.0~80.0重量%、さらに好ましくは50.0~70.0重量%、例えば60.0~65重量%の工程(b)で得られた微粉砕粒子;25.0重量%まで、より好ましくは10.0~25.0重量%、さらに好ましくは12.0~23.0重量%、例えば15.0~20.0重量%の水;25.0重量%まで、より好ましくは1.0~25.0重量%、さらに好ましくは1.5~10.0重量%、例えば2.0~5.0重量%の有機バインダー;及び2.0重量%まで、より好ましくは0.01~2.0重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%、例えば1.0~1.3重量%の分散剤を含み、より好ましくはこれらからなる。
【0084】
本発明の一つの好ましい実施形態では、スラリーは有機バインダーを含まない。
【0085】
本発明の工程(d)では、工程(c)で得られたスラリーを噴霧乾燥する。好ましくは、150~250℃の範囲の温度でスラリーを噴霧乾燥する。
【0086】
このようにして得られた噴霧乾燥した粒子を、続いて加熱装置に供給し、それによって、中空球状ガラス粒子を得るようにする。
【0087】
本発明による中空球状ガラス粒子は、100μm未満のかなり小さい粒径を有する。微粉砕した出発材料の噴霧乾燥から得られた前駆体粒子が、加熱装置の上部から底部までを通過するように供給する通常の加熱装置を使用して、すなわち、粒子が加熱装置を通って落下するように供給する通常の加熱装置を使用して、こうした微粒子を単離することは、ほぼ無理なことである。理論に束縛されることなく、加熱装置を通って落下するときの粒子の降下速度は、粒径の2乗に比例する。したがって、加熱装置内で微細に分散した小さな粒子の滞留時間は長くなる。さらに、小さな粒子は、加熱装置内で起こる流れの乱流の影響を受けやすい。このため、前駆体粒子を上部から底部へと供給する加熱装置の適用は、より大きな粒子の調製のためにはより適切なものとなる。
【0088】
したがって、改良した加熱装置を適用することが、100μm未満の粒径を有する本発明の中空球状ガラス粒子を得るためには有利である。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、工程(d)で得られた粒子を加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子を上に向かって吹き込み、これによって中空球状ガラス粒子を得る。
【0090】
より好ましくは、加熱装置内の温度は1000℃を超え1700℃までの範囲であり、さらに好ましくは1300~1400℃の範囲である。
【0091】
好ましくは、工程(d)で得られた粒子を、上向きのけん引流を用いて上に向かって吹き込む。理論に束縛されることなく、膨張した粒子の流動抵抗はより高く、それゆえ、これらの粒子は、それらのより大きな表面に関連した流動抵抗に起因して、上を向いたけん引流内でより加速する。したがって、底部から上部に粒子を通過させる加熱装置を適用することは、本発明に従う小さな粒子の単離を可能にする。
【0092】
好ましくは、工程(d)で得られた粒子を、離解空気(defibrating air)を用いて加熱装置を通過させる。
【0093】
さらに、キャリアガスは、窒素又は空気であることが好ましい。
【0094】
キャリアガス中の固体粒子の体積分率は、キャリアガスの全体積を基準として、5.0体積%未満であり、好ましくは0.05~1.0体積%の範囲である。この固体粒子は、工程(d)で得られた粒子である。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、工程(d)で得られた粒子を、直列に接続した少なくとも二つの加熱装置を含む加熱システムに供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子を第一の加熱装置に通過させ、かつ後続の加熱装置にこの粒子を連続的に移送し、これによって中空球状ガラス粒子を得る。
【0096】
加熱プロセスの間に、完全に閉じていない球体であるか、又は壁内に空気の介在物を有する多数の中空ガラス粒子が形成する。このような不完全に形成した粒子は、しばしば、機械的安定性に乏しく、中空ガラス粒子の品質は、満足のいくものではない。中空ガラス粒子が一を超える複数の加熱装置を通過すると、不完全に形成した粒子は閉じた球になり、かつ壁内の介在物が減少する。したがって、一を超える複数の加熱装置を適用することは、中空球状ガラス粒子の機械的安定性を改善する。
【0097】
少なくとも二つの加熱装置は、工程(d)で得られた粒子が、上部から底部に、又は底部から上部に通過する加熱装置であってよい。本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも二つの加熱装置のうちの少なくとも一つは、工程(d)で得られた粒子を底部から上部に通過させる加熱装置である。
【0098】
好ましくは、工程(d)で得られた粒子を、離解空気を用いて加熱装置を通過させる。
【0099】
さらに、キャリアガスは窒素又は空気であることが好ましい。
【0100】
粒子が底部から上部へ加熱装置を通過する場合に、キャリアガス中の固体粒子の体積分率は、キャリアガスの全体積を基準にして、5.0体積%未満であり、より好ましくは0.05~1.0体積%の範囲である。この固体粒子は、工程(d)で得られた粒子である。
【0101】
一方、粒子が上部から底部へ加熱装置を通過する場合に、キャリアガス中の固体粒子の体積分率は、キャリアガスの全体積を基準にして、10.0重量%未満であり、より好ましくは0.1~2.0体積%の範囲である。この固体粒子は、工程(d)で得られた粒子である。
【0102】
好ましくは、直列に接続した少なくとも2つの加熱装置、例えば3つ、4つ、又は5つの加熱装置を適用する。
【0103】
例えば、中空球状ガラス粒子を、以下の工程を含む逐次プロセスで製造することが好ましい:
(i)1000℃を超える温度に第一の加熱装置(H1)を維持しながら、工程(d)で得られた粒子を第一の加熱装置(H1)に供給し、これによって中空の球状ガラス粒子の第一の画分(F1)を得ること、
(ii)1000℃を超える温度に第二の加熱装置(H2)を維持しながら、工程(i)で得られた中空球状ガラス粒子の第一の画分(F1)を第二の加熱装置(H2)に供給し、これによって中空球状ガラス粒子の第二の画分(F2)を得ること、
(iii)任意に、1000℃を超える温度に第三の加熱装置(H3)を維持しながら、工程(ii)で得られた中空球状ガラス粒子の第二の画分(F2)を第三の加熱装置(H3)に供給し、これによって中空球状ガラス粒子の第三の画分(F3)を得ること、及び
(iv)任意に、1000℃を超える温度に第四の加熱装置(H4)を維持しながら、工程(iii)で得られた中空球状ガラス粒子の第三の画分(F3)を第四の加熱装置(H4)に供給し、これによって中空球状ガラス粒子の第四の画分(F4)を得ること、
ここで、中空球状ガラス粒子の第一の画分(F1)及び第二の画分(F2)と、任意に第三の画分(F3)及び第四の画分(F4)とが、中空球状ガラス粒子を形成する。
【0104】
第一の加熱装置(H1)及び/又は第二の加熱装置(H2)は、工程(d)で得られた粒子を底部から上部に通過させる加熱装置であることが好ましい。
【0105】
好ましくは、加熱装置内の温度は、1000℃を超え1700℃までの範囲であり、より好ましくは1300~1400℃の範囲である。第一、第二、第三及び第四の加熱装置のような加熱装置における温度は、異なるものであってもよく、同一のものであってもよい。
【0106】
さらに、この少なくとも2つの加熱装置間の粒子流、例えば3つ、4つ又は5つの加熱装置間の粒子流を、混合装置を通じて供給することが好ましい。
【0107】
本発明のさらなる実施形態によれば、工程(d)で得られた粒子を少なくとも一つの加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、この粒子が加熱装置を通過するようにし、かつこうして得られた粒子の少なくとも一部をこの加熱装置に返送し、これによって中空球状ガラス粒子を得る。
【0108】
好ましくは、工程(d)で得られた粒子を、離解空気を用いて加熱装置を通過させる。
【0109】
さらに、キャリアガスは窒素又は空気であることが好ましい。
【0110】
粒子が底部から上部へ加熱装置を通過する場合に、キャリアガス中の固体粒子の体積分率は、キャリアガスの全体積に基づいて、5.0体積%未満であり、より好ましくは0.05~1.0体積%の範囲である。この固体粒子は、工程(d)で得られた粒子である。
【0111】
一方、粒子が上部から底部に加熱装置を通過する場合に、キャリアガス中の固体粒子の体積分率は、キャリアガスの全体積を基準にして、10.0重量%未満であり、より好ましくは0.1~2.0体積%の範囲である。この固体粒子は、工程(d)で得られた粒子である。
【0112】
この少なくとも一つの加熱装置は、工程(d)で得られた粒子が上部から底部に、又は底部から上部に通過する加熱装置であってもよい。
【0113】
粒子の少なくとも部分的な流れ、すなわち部分流を、加熱装置の出口から加熱装置の入口に移送し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、粒子のこの部分流が加熱装置をもう1回通過するようにする。
【0114】
好ましくは、粒子のこの部分流は、工程(d)で得られた粒子の第一回目の通過後に得られた粒子の、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含有する。本発明の一実施形態によれば、この部分流は、工程(d)で得られた粒子の第一回目の通過後に得られた粒子全体を含有する。
【0115】
上述したように、完全に閉じた球体ではないか、又は壁内に空気の介在物を有する多数の中空ガラス粒子が、加熱プロセス中に形成され、これは、粒子の機械的安定性に悪影響を及ぼす。中空ガラス粒子が加熱装置を繰り返し通過すると、不完全に形成した粒子が、閉じた球体になり、壁内の介在物が減少する。
【0116】
本発明の好ましい実施形態によれば、加熱装置の出口から加熱装置の入口へと移送され、それによって、加熱装置をもう1回通過するようにされている粒子の部分流は、大部分は、完全に閉じた球体ではないか、又は壁内に空気の介在物を有する粒子から構成されている。したがって、完全に閉じた球体ではないか、又は壁内に空気の介在物を有する粒子を、工程(d)で得られた粒子の加熱装置への第一回目の通過後に得られた粒子から分離することが好ましい。好ましくは、加熱装置は、加熱装置の出口の下流側に分画装置を含む。
【0117】
粒子の部分流が、加熱装置をもう1回通過する。言い換えれば、粒子のこの部分流が、加熱装置を2回目に通過する。粒子の部分流の第2回目の通過後に、粒子の第二の部分流を加熱装置の出口から加熱装置の入口へ移送することができ、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、粒子のこの部分流がもう1回加熱装置を通過するようにしてもよい。
【0118】
好ましくは、粒子のこの第二の部分流は、加熱装置を通過した粒子の第2回目の通過後に得られた粒子の少なくとも20重量%を含み、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含有する。本発明の一実施形態によれば、部分流は、粒子の第2回目の通過後に得られた粒子全体を含有する。
【0119】
粒子の第2回目の通過後に、粒子の第三の部分流を加熱装置の出口から加熱装置の入口へ移送することができ、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置内を維持しながら、粒子のこの部分流がもう1回加熱装置を通過するようにしてもよい。
【0120】
したがって、少なくとも部分的な粒子の流れが、少なくとも2回、例えば2回、3回又は4回、加熱装置を通過することが好ましい。それぞれの部分流は、先の部分流の部分的な流れである。特に、それぞれの部分流は、先の部分流の少なくとも20重量%を含むことが好ましく、先の部分流の、より好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含む。本発明の一実施形態によれば、それぞれの部分流は、前の部分流の粒子全体を含有する。
【0121】
例えば、中空球状ガラス粒子は、以下の工程を含む逐次プロセスで製造することが好ましい:
(i)1000℃を超える温度に加熱装置(H)内を維持しながら、工程(d)で得られた粒子を加熱装置(H)に供給し、これによって中空球状ガラス粒子の第一の画分(F1’)を得ること、
(ii)中空球状ガラス粒子の第一の画分(F1’)の少なくとも第一の部分流(P1)を、加熱装置の出口から加熱装置の入口に移送し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置(H)内を維持しながら、粒子のこの第一の部分流が加熱装置をもう1回通過し、ここで、この第一の部分流は、先の部分流の少なくとも20重量%を好ましくは含有し、工程(i)で得られた中空球状ガラス粒子の第一の画分(F1’)のより好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含有し、これによって中空球状ガラス粒子の第二の画分(F2’)を得ること、
(iii)任意に、中空球状ガラス粒子の第二の画分(F2’)の少なくとも第二の部分流(P2)を、加熱装置の出口から加熱装置の入口に移送し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置(H)内を維持しながら、粒子のこの第二の部分流が加熱装置をもう1回通過し、ここで、この第二の部分流は、先の部分流の少なくとも20重量%を好ましくは含有し、工程(ii)で得られた中空球状ガラス粒子の第二の画分(F2’)のより好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含有し、これによって中空球状ガラス粒子の第三の画分(F3’)を得ること、及び
(iv)任意に、中空球状ガラス粒子の第三の画分(F3’)の少なくとも第三の部分流(P3)を、加熱装置の出口から加熱装置の入口に移送し、それによって、1000℃を超える温度に加熱装置(H)内を維持しながら、粒子のこの第三の部分流が加熱装置をもう1回通過し、ここで、この第三の部分流は、先の部分流の少なくとも20重量%を好ましくは含有し、工程(iii)で得られた中空球状ガラス粒子の第三の画分(F3’)のより好ましくは少なくとも50重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%を含有し、これによって中空球状ガラス粒子の第四の画分(F4’)を得ること、
ここで、加熱装置は、任意に、加熱装置の出口の下流側に分画装置を含む。
【0122】
好ましくは、加熱装置内の温度は、1000℃を超え1700℃までの範囲であり、さらに好ましくは1300~1400℃の範囲である。
【0123】
また、加熱装置は、加熱装置の出口の下流側に混合装置を備えることが好ましい。
【0124】
上記で概説したように、本発明はさらに、上記の複数の中空球状ガラス粒子を含む物品に関する。
【0125】
好ましくは、物品は、少なくとも5.0重量%、より好ましくは少なくとも20.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも40.0重量%、例えば少なくとも60.0重量%の複数の中空球状ガラス粒子を含む。
【0126】
特に、この物品は、高温製品、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、又はコンクリートであることが好ましい。
【0127】
さらに、本発明は、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、コンクリート、及び油田用途のための、充填材としての上記の複数の中空球状ガラス粒子の使用に関する。
【0128】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は、いかなる意味においても、本発明の技術的範囲に制限を課すものとして解釈すべきではない。以下の実施例に開示した技術は、本明細書に開示する実施において十分に機能することが発見された技術を示し、したがって、その実施のための好ましい態様を構成すると考えることができることを当業者は認識すべきである。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、かつ本明細書の精神及び範囲から逸脱することなく、同様又は類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【実施例】
【0129】
かさ密度は、2.5mmの内径及び100mmの長さを有するガラス管中で決定した。適用したガラス管の容量は0.49mlであった。空のガラス管及び充填したガラス管の重量を、化学天秤を介して決定した。かさ密度は、これによって求めた差をガラス管の体積で割ることによって計算した。低い値は、ゆるい充填を表し、高い値は、ぎっしり詰まった充填を表す。
【0130】
顕微鏡検査には、Leica-Leitz、Laborlux 12HLを用いた。
【0131】
ふるい分けは超音波援用タンブラースクリーニング装置(Allgaier VTS600)で行った。
【0132】
使用したゼオライトA(ZP-4A、Silkem VertriebsAGで購入)及びカオリン(Stephan、Burbachで購入)は、3~10μmの一次粒径を有していた。
【0133】
プロセスを、
図1に従ったパイロットプラントで実施した。
【0134】
ガス流(1)において、遠心特性を有するサイクロン分離器(7)を有する加熱装置としての鉛直多段加熱管状炉(6)に、粒子(2)(すなわち、それぞれの粒径画分)を、底部から鉛直方向に供給ユニット(3)を使って添加することができる。サイクロン分離器が粒子を分離し、分離した粒子を分離器での分離物質の捕集器(8)で捕集する。ガス流(1)を排気システムの上を通して大気中に導く。管状炉(6)は、内径78mm、長さ1000mmの酸化物セラミック管(酸化アルミニウム)を備えている。この管を、管の長さにわたって3つの異なる加熱ゾーン(5)によって外部から加熱する。1800℃の最高温度を達成することができる。個々の加熱ゾーンの長さは250mmである。加熱ゾーン(5)内の温度は個別に調整可能である。しかしながら、2つの加熱ゾーン間の温度差は、150℃を超えてはならない。そうでなければ、酸化物セラミック管に機械的な問題が生じる可能性があるからである。管の底部入口での一貫したガス粒子流を実現するために、分配ユニットが設置されている。この分配ユニット(4)は、厚いセラミックの多孔プレートであり、この孔はダブルテーパーになっている。したがって、プレートの前で粒子が沈殿せず、かつ出口で流れの分離が起こらない。
【0135】
工程(a)~(d):
Na2CO3(28重量%)を10リットルの攪拌槽中の水に溶解した。ゼオライトA(60重量%)及びカオリン(12重量%)を予備混合し、次いで漏斗を介して、この10リットルの撹拌槽に添加した。スラリーを噴霧塔に送り込むことができるようにするだけのために、十分な水を含むスラリーを1時間撹拌した。
【0136】
本発明の方法の工程(d)で得られた噴霧乾燥した前駆体材料を、ふるい分けによって最初に2つの異なる粒径画分(微細な前駆体画分<80μmのもの、及び全体の前駆体画分>80μmのもの)に分割した。
【0137】
微細な前駆体画分をさらに分級し、4つの粒径画分に分けた:
< 20μm
20~40μm
40~63μm
63~80μm
【0138】
20μm未満の画分は廃棄した。
DIN ISO 9044に準拠したふるい布を適用し、それに関してステンレス鋼メッシュを使用した。
【0139】
実施例は、それぞれの微細な前駆体を用いて行った。
【0140】
実施例1:20~40μm
設定:
22~26℃の周囲温度で80リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1750℃
加熱ゾーンII 1600℃
加熱ゾーンIII 1450℃
【0141】
炉を通って移送した粒子を分離器に捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では、すべての前駆体が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m3の密度を有する液体流体(アセトン)で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した。
【0142】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.35gの分離物質を回収した。浮遊分離後、2.88gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.278の質量分率に相当する。
【0143】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、23~45μmの寸法を有していた。かさ密度は0.65~0.7g/cm3であった。
【0144】
実施例2:40~63μm
設定:
22~26℃の周囲温度で55リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1720℃
加熱ゾーンII 1650℃
加熱ゾーンIII 1500℃
【0145】
炉を通って移送した粒子を分離器に捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では(
図2)、すべての前駆体が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m
3の密度を有する流体で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した(
図3)。
【0146】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.52gの分離物質を回収した。浮遊分離後、3.13gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.298の質量分率に相当する。
【0147】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、43~48μmの寸法を有していた。かさ密度は0.62~0.67g/cm3であった。
【0148】
実施例3:63~80μm
設定:
22~26℃の周囲温度で40リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1700℃
加熱ゾーンII 1650℃
加熱ゾーンIII 1500℃
【0149】
炉を通って移送した粒子を分離器に捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では、すべての前駆体が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m3の密度を有する流体で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した。
【0150】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.81gの分離物質を回収した。浮遊分離後、3.62gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.335の質量分率に相当する。
【0151】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、65~90μmの寸法を有していた。かさ密度は0.58~0.63g/cm3であった。
【0152】
完全な中空球状ガラス粒子を系統的にふるい分けして、所望の粒径を得ることができる。したがって、次の工程では、完全な中空球状ガラス粒子を2つの画分にふるい分けすることによって分離でき、ここで、一方の画分が65~75μmの粒径を有し、他方の画分が75~90μmの粒径を有する。
【0153】
比較例
比較例のために、同じ管状炉を用いた。しかしながら、前駆体材料を少量の空気を用いて上部から供給ユニットを使って添加し、この前駆体粒子は、上部から底部へ炉を通って重力に起因して落下した。少量の空気は、均一な分布のためだけに使用した。
【0154】
比較例1:125~175μm
125~175μmの粒径画分は、この炉の配置(各々250mmの長さを有する3つの加熱ゾーン、78mmの内径、1000mmの管の長さ)にとって最良の変形例であることが判明した。前駆体粒子は、管を通って底部まで約0.3m/sの平均速度で落下し、かつ加熱ゾーンにおいて2.5秒の平均滞留時間を有した。これは、粒子の表面を溶融し、かつ粒子の内側から外側への蒸気の拡散物質交換及び粒子の外側から内側への逆オーブンパージガスのメカニズムのために必要な表面膜をもたらすのに十分であった。
【0155】
設定:
粒子の分散のための22~26℃の周囲温度で10リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1500℃
加熱ゾーンII 1650℃
加熱ゾーンIII 1700℃
【0156】
上部から底部に向かって管状炉を通って落下した粒子を管状炉の底部で捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では、すべての前駆体粒子が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m3の密度を有する流体で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した。
【0157】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.9gの分離物質を回収した。浮遊分離後、3.9gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.36の質量分率に相当する。
【0158】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、130~190μmの寸法を有していた。かさ密度は0.48~0.53g/cm3であった。
【0159】
比較例2:80~125μm
80~125μmの粒径画分は、同様に、この炉の配置(各々250mmの長さを有する3つの加熱ゾーン、78mmの内径、1000mmの管の長さ)を通って落下することを可能にした。前駆体粒子は、管を通って底部まで約0.13m/sの平均速度で落下し、かつ加熱ゾーンにおいて5.9秒の平均滞留時間を有した。
【0160】
設定:
粒子の分散のための22~26℃の周囲温度で10リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1500℃
加熱ゾーンII 1650℃
加熱ゾーンIII 1700℃
【0161】
上部から底部に向かって管状炉を通って落下した粒子を管状炉の底部で捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では、すべての前駆体粒子が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m3の密度を有する流体で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した。
【0162】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.7gの分離物質を回収した。浮遊分離後、1.2gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.11の質量分率に相当する。
【0163】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、85~132μmの寸法を有していた。かさ密度は0.5~0.55g/cm3であった。
【0164】
顕微鏡写真は、大部分が膨張していない粒子であることを明らかにしている。いかなる理論にも束縛されないが、自由落下における滞留時間があまりにも長すぎて、前駆体粒子が直ちに融合してしまい、これらの粒子が膨張する機会がないと考えられる。
【0165】
比較例3:63~80μm
63~80μmの粒径画分は、同様に、この炉の配置(各々250mmの長さを有する3つの加熱ゾーン、78mmの内径、1000mmの管の長さ)を通って落下することを可能にした。前駆体粒子は、管を通って底部まで約0.063m/sの平均速度で落下し、かつ加熱ゾーンにおいて11.9秒の平均滞留時間を有した。
【0166】
設定:
粒子の分散のための22~26℃の周囲温度で10リットル/分の空気
2.4g/分の前駆体
加熱ゾーンI 1500℃
加熱ゾーンII 1650℃
加熱ゾーンIII 1700℃
【0167】
上部から底部に向かって管状炉を通って落下した粒子を管状炉の底部で捕集し、かつ冷却後に秤量した。顕微鏡下では、すべての前駆体粒子が理想的に膨張しているわけではないことがはっきりと見えた。分離物質の全部を、780kg/m3の密度を有する流体で浮遊させた。これにより、膨張せずに開いていた全ての粒子が沈殿した。所望の膨張粒子は、表面に浮遊した。膨張した粒子を乾燥させ、再び秤量した。
【0168】
プロセスは6時間の継続時間で実施した。10.4gの分離物質を回収した。浮遊分離後、0.14gの完全な中空球状ガラス粒子を得た。これは、分離物質の質量に対して0.013の質量分率に相当する。
【0169】
完全な中空球状ガラス粒子は、顕微鏡によって決定して、65~90μmの寸法を有していた。かさ密度は0.55~0.60g/cm3であった。
【0170】
顕微鏡写真は、膨張していない粒子のみであることを明らかにしている。これは、自由落下における滞留時間があまりにも長すぎるという理論を裏付けるさらに別の指標となる。
【0171】
実施例3と比較例3との比較:
実施例3によれば、63~80μmの粒径画分を、上述のように、管状炉を通って底部から上部に移送した。実施例3における滞留時間は、ガス/空気流で約1~1.2秒に調整した。内壁近くを流れるガス/空気流のため、内壁上の粒子のケーキングが防止される。この設定に従って、実施例3では膨張した粒子の0.335の質量分率が得られた。
【0172】
比較例3では、粒子を上部から底部に落下させている。粒子が内壁に堆積するので、閉鎖装置の利用は適用不可能である。粒子を上部から底部に落下させるという設定での結果を得るためには、装置の上部を開ける必要がある。したがって、予熱したガス/空気の流れを底部から側面に向かって供給することができ、次いで、これは内壁に沿って上部に流れ、出て行くことができる。前駆体粒子を、少量の空気で上部から炉に添加する。63~80μmの粒径を有する粒子は、約11.9秒の滞留時間を有することが判明した。したがって、粒子は溶融し、かつ膨張しなかった。実施例3とは対照的に、比較例3では、質量分率0.013の膨張粒子しか得られなかった。
【0173】
これらの実施例は、粒子を管状炉の上部から導入するプロセスと比較して、上向きのけん引流によって得られた粒子が優れており、それによって、小さな粒子を得ることができるという理論を裏付けるものである。
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]中空内部を画定する球状ガラスシェルを含む中空球状ガラス粒子であって、前記中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含み:
(i)少なくとも30重量%のAl
2
O
3
、
(ii)少なくとも35重量%のSiO
2
、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
ここで、
前記中空球状ガラス粒子が、20μmを超え75μmまでの範囲の粒径を有し、かつ
前記中空球状ガラス粒子が、ホウ素を含まない、
中空球状ガラス粒子。
[2]20μmを超え70μmまでの範囲の粒径を有する、上記[1]に記載の中空球状ガラス粒子。
[3]μmでの粒径の、μmでの壁厚に対する比率が、10~30の範囲である、上記[1]又は[2]に記載の中空球状ガラス粒子。
[4]0.1~15μmの範囲の壁厚を有する、上記[1]又は[2]に記載の中空球状ガラス粒子。
[5]前記中空球状ガラス粒子の全重量に対して、以下を含む、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の中空球状ガラス粒子:
(i)30~45重量%のAl
2
O
3
、
(ii)35~42重量%のSiO
2
、及び
(iii)18~30重量%のNa
2
OとK
2
Oとの混合物。
[6]120~150MPaの範囲の圧力崩壊強度値を有する、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の中空球状ガラス粒子。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の複数の中空球状ガラス粒子。
[8]20μmを超え75μmまでの範囲の平均粒径(D50)を有する、上記[7]に記載の複数の中空球状ガラス粒子。
[9]以下の工程を含む、中空球状ガラス粒子の製造方法:
(a)組成物の全重量に対して以下を含む前記組成物を提供すること:
(i)少なくとも30重量%のAl
2
O
3
、
(ii)少なくとも35重量%のSiO
2
、及び
(iii)少なくとも18重量%の少なくとも一種のアルカリ金属酸化物、
(b)任意に、工程(a)で得られた組成物を粉砕工程にかけ、それによって、10.0μm又はそれ未満の粒径を有する微粉砕粒子を得ること、
(c)工程(b)で得られた前記微粉砕粒子と、水及び任意に有機バインダーとを混合し、これによってスラリーを得ること、
(d)工程(c)で得られた前記スラリーを噴霧乾燥すること、及び
(e1)工程(d)で得られた粒子を加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を上に向かって吹き込み、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e2)工程(d)で得られた粒子を、直列に接続した少なくとも二つの加熱装置を含む加熱システムに供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を第一の前記加熱装置に通過させ、かつ後続の前記加熱装置に前記粒子を連続的に移送し、これによって中空球状ガラス粒子を得ること、
又は
(e3)工程(d)で得られた粒子を少なくとも一つの加熱装置に供給し、それによって、1000℃を超える温度に前記加熱装置内を維持しながら、前記粒子を前記加熱装置に通過させ、かつこうして得られた粒子の少なくとも一部を前記加熱装置に返送し、それによって、前記粒子を前記加熱装置に通過させ、これによって中空球状ガラス粒子を得ること。
[10]任意に工程(b)で得られた前記微粉砕粒子が、1.0~10μmの範囲、好ましくは1.0~7.0μmの範囲の粒径を有する第一の画分の粒子、及び1.0μm又はそれ未満の粒径を有する第二の画分の粒子を含有する、上記[9]に記載の方法。
[11]工程(c)において、任意に工程(b)で得られた前記微粉砕粒子を、好ましくは多価アルコールである有機バインダーとさらに混合する、上記[9]又は[10]に記載の方法。
[12]上記[9]~[11]のいずれか一つに記載の方法によって得られる中空球状ガラス粒子。
[13]上記[7]又は[8]に記載の複数の中空球状ガラス粒子を含む物品。
[14]前記物品が、高温製品、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、又はコンクリートである、上記[13]に記載の物品。
[15]上記[7]又は[8]に記載の複数の中空球状ガラス粒子の、高温製品、溶融金属、射出成形合成材料、難燃性断熱発泡体、セメントスラリー、モルタル、コンクリート、及び油田用途のための充填材としての使用。