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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】核酸単離のための方法と組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
C12N15/10 100Z
C12N15/10 110Z
C12N15/10 ZNA
【請求項の数】 57
(21)【出願番号】P 2021507772
(86)(22)【出願日】2019-08-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019046908
(87)【国際公開番号】W WO2020037260
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】62/765,013
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504019928
【氏名又は名称】セファイド
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】バラズネノク, ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】クチャビン, アレックス, アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ナナシー, オリバー, ジー.
(72)【発明者】
【氏名】セルゲエフ, ドミトリ
(72)【発明者】
【氏名】ゴール, アレクサンダー, エー.
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-513385(JP,A)
【文献】特表2013-502934(JP,A)
【文献】Biophysical Journal,1998年,Vol.74,pp.381-393
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含むサンプルから核酸を単離する方法であって、
(a)核酸を含むサンプルを、1つ以上のウロン酸単位を含む多糖を含む水性組成物と接触させる工程、及び
(b)前記核酸を固体支持体上に濃縮し、それによって前記核酸を単離する工程、
を含み、
(i)前記1つ以上のウロン酸単位を含む多糖が、アミド化ペクチンである修飾ペクチンである、又は
(ii)前記多糖が、式II
【化1】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、前記R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、又は任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルである、又は
(iii)前記多糖が、式(III)
【化2】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3はH、CH3、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、(CH2)2O(CH2)2NH2、又はCH2CH2NHCH2CH2NH2である、又は
(iv)前記多糖が、式VI
【化3】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、又は
(v)前記多糖が、式V
【化4】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、又は
(vi)前記多糖が、式VI、式VII、又は式VIII
【化5】
又はそれらの立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む、
方法。
【請求項2】
前記多糖が、式II
【化1】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、前記R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、又は任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルである、請求項1の方法。
【請求項3】
前記多糖が、式(III)
【化2】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3はH、CH3、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、(CH2)2O(CH2)2NH2、又はCH2CH2NHCH2CH2NH2である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記多糖が、式VI
【化3】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、請求項1の方法。
【請求項5】
前記多糖が、式V
【化4】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、請求項1の方法。
【請求項6】
前記多糖が、式VI、式VII、又は式VIII
【化5】
又はそれらの立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む、請求項1の方法。
【請求項7】
前記多糖が水溶性多糖である、請求項1の方法
【請求項8】
前記修飾ペクチンが修飾シトラスペクチン又は修飾リンゴペクチンである、請求項1の方法。
【請求項9】
前記多糖が、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg~約20μgの濃度で水性組成物中に存在する、請求項1の方法。
【請求項10】
前記多糖が、約120kDaと約500kDaの間、約150kDaと約300kDaの間、又は約120kDaと約175kDaの間の相対分子量を有する、請求項1の方法。
【請求項11】
前記修飾ペクチンが、非修飾ペクチンのアミド化によって得られる、請求項1の方法。
【請求項12】
非修飾ペクチンが、約5kDaと約1,100kDaの間、約10kDaと約500kDaの間、約10kDaと約300kDaの間、約20kDaと約200kDaの間、又は約20kDaと約100kDaの間の相対分子量を有する、請求項11の方法。
【請求項13】
前記核酸が、遠心分離、沈殿、又はそれらの組み合わせによって濃縮される、請求項1の方法。
【請求項14】
前記核酸が、固体支持体上に沈殿によって濃縮される、請求項1の方法。
【請求項15】
前記固体支持体が、シリカ、ガラス、エチレン性骨格ポリマー、雲母、ポリカーボネート、ゼオライト、二酸化チタン、又はそれらの組み合わせから選択される材料を含む、請求項14の方法。
【請求項16】
前記固体支持体が、磁性ビーズ、ガラスビーズ、セルロースフィルター、ポリカーボネートフィルター、ポリテトラフルオロエチレンフィルター、ポリビニルピロリドンフィルター、ポリエーテルスルホンフィルター、又はガラスフィルターである、請求項14の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記固体支持体上に沈殿した前記核酸を洗浄する工程をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記核酸を溶出する工程をさらに含む、請求項14の方法。
【請求項19】
前記溶出が、濃縮された前記核酸を溶出剤と接触させる工程を含む、請求項18の方法。
【請求項20】
前記溶出剤が、アンモニア又はアルカリ金属水酸化物である、請求項19の方法。
【請求項21】
前記溶出剤が、約9を超えるpH、約10を超えるpH、又は約11を超えるpHを有する、請求項19の方法。
【請求項22】
前記溶出剤が、約9と約12の間、約9.5と約12の間、約10と約12の間、又は約9と約11の間のpHを有する、請求項19の方法。
【請求項23】
前記溶出剤が、ポリアニオンを含む、請求項19の方法。
【請求項24】
前記ポリアニオンが、カラギーナンである、請求項23の方法。
【請求項25】
前記ポリアニオンが、キャリア核酸である、請求項23の方法。
【請求項26】
前記溶出剤が、i-カラギーナン及びKOHを含む、請求項19の方法。
【請求項27】
前記水性組成物が、溶解剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記水性組成物が、カオトロピック剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記カオトロピック剤が、グアニジニウムチオシアネート、グアニジニウムヒドロクロリド、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、ホルムアミド、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項28の方法。
【請求項30】
前記水溶液が、塩をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項31】
前記塩が、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムである、請求項30の方法。
【請求項32】
前記水性組成物が、緩衝剤をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項33】
前記緩衝剤が、Tris又はHEPESである、請求項32の方法。
【請求項34】
前記水性組成物が、サーファクタントをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項35】
前記サーファクタントが、ポリソルベートである、請求項34の方法。
【請求項36】
前記水性組成物が、消泡剤をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項37】
核酸を含む前記サンプルが、血液、血漿、血清、精液、髄液、組織生検、涙、尿、便、唾液、塗抹標本、細菌培養物、哺乳類細胞培養物、ウイルス培養物、ヒト細胞、細菌、細胞外液、PCR反応混合物、又はインビトロ核酸修飾反応混合物である、請求項1の方法。
【請求項38】
前記組織生検が、パラフィン包埋組織である、請求項37の方法。
【請求項39】
前記核酸が、ゲノムDNAを含む、請求項1の方法。
【請求項40】
前記核酸が、総RNAを含む、請求項1の方法。
【請求項41】
前記サンプルが、微生物核酸又はウイルス核酸を含む、請求項1の方法。
【請求項42】
前記ウイルス核酸が、HBV DNAである、請求項41の方法。
【請求項43】
前記核酸が、循環核酸を含む、請求項1の方法。
【請求項44】
前記方法が、カートリッジ内で行われる、前記請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
核酸を含む前記サンプルが、細胞ライセートである、請求項1の方法。
【請求項46】
前記サンプルが、水性組成物と接触する前に溶解バッファーと接触する、請求項1の方法。
【請求項47】
前記溶解バッファーが、1種以上のプロテアーゼを含む、請求項46の方法。
【請求項48】
サンプル中の核酸を検出する方法であって、
(a)前記サンプルを、1つ以上のウロン酸単位を含む多糖を含む水性組成物と接触させる工程、
(b)前記核酸を濃縮する工程、及び
(c)前記核酸を検出する工程、
を含み、
(i)前記1つ以上のウロン酸単位を含む多糖が、アミド化ペクチンである修飾ペクチンである、又は
(ii)前記多糖が、式II
【化6】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含み、
ここで、R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、及び任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルから選択される、又は
(iii)前記多糖が、式IIII
【化7】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3は、H、CH3、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、(CH2)2O(CH2)2NH2、又はNHCH2CH2NHCH2CH2NH2である、又は
(iv)前記多糖が、式VI
【化8】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、又は
(v)前記多糖が、式V
【化9】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、又は
(vi)前記多糖が、式VI、式VII、又は式VIII
【化10】
又はそれらの立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む、
方法。
【請求項49】
前記多糖が、式II
【化6】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含み、
ここで、R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、及び任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルから選択される、請求項48の方法。
【請求項50】
前記多糖が、式IIII
【化7】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3は、H、CH3、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、(CH2)2O(CH2)2NH2、又はNHCH2CH2NHCH2CH2NH2である、請求項48の方法。
【請求項51】
前記多糖が、式VI
【化8】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、請求項48の方法。
【請求項52】
前記多糖が、式V
【化9】
又は立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである、請求項48の方法。
【請求項53】
前記多糖が、式VI、式VII、又は式VIII
【化10】
又はそれらの立体異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む、請求項48の方法。
【請求項54】
前記修飾ペクチンが、修飾シトラスペクチン又は修飾リンゴペクチンである、請求項48の方法。
【請求項55】
前記多糖が、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約1μg/mL~約1000μg/mL、約5μg/mL~約500μg/mL、約1μg/mL~約200μg/mL、約5μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg/mL~約20μg/mLの濃度で水性組成物中に存在する、請求項48の方法。
【請求項56】
核酸を検出する工程が、ポリメラーゼ連鎖反応によって核酸を増幅する工程を含む、請求項48~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記ポリメラーゼ連鎖反応が、ネステッドPCR、アイソサーマルPCR、qPCR、又はRT-PCRである、請求項56の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2018年8月17日に出願された米国仮出願第62/765,013号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる
【0002】
配列表に関するステイトメント
本願に関連する配列リストは、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列リストを含むテキストファイルの名前は、70132_Seq_Final_2019-08-14.txtである。このテキストファイルは3.0 KBであり、2019年8月14日に作成され、本明細書の提出とともにEFS-Webを介して提出されている。
【0003】
発明の分野
本発明は、核酸含有サンプルから核酸を単離するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような様々な自動化された分析技術による核酸の増幅及び/又は検出を利用する分子診断アッセイは、従来の診断法と比較して、より短い時間で迅速かつ正確な結果を提供し、容易に自動化できる。しかしながら、生物学的サンプルの分子診断分析を行うためには、例えば、ポリメラーゼ活性を阻害することによってアッセイの精度に影響を与え得る要素を除去するために、核酸を生物学的材料から単離しなければならない。核酸抽出のための様々な方法が存在するにもかかわらず、現在利用可能な方法は、一般的に長い工程を伴い、自動化が容易ではない。そのため、特定の標的を増幅して検出する前の核酸サンプルの調製は、分子診断学の最も難しいステップである。
【0005】
増幅阻害剤を含まない高品質の核酸を生産するためには、大規模なサンプル処理を必要とせず、臨床検査の自動化にも対応できる簡便で迅速な核酸単離法が必要とされている。核酸を含む生体サンプルからの核酸単離を、高速で自動化された核酸検出法に適合した方法で容易に行うことができる薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本明細書は核酸を含むサンプルから核酸を単離する方法であって、
(a)核酸を含むサンプルを、1以上のウロン酸単位酸を含む多糖を含む水性組成物と接触させる工程、及び
(b)核酸を固体支持体上に濃縮し、それによって核酸を単離する工程、
を含む、方法を提供する。
【0007】
本明細書に開示の方法のいくつかの実施形態では、多糖は、ウロン酸アミド単位、ウロン酸エステル単位、又はそれらの組み合わせのような修飾ウロン酸単位をさらに含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、多糖は、式II
【化1】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、前記R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、又は任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルである。
【0009】
いくつかの実施形態では、多糖は、式(III)
【化2】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3はCH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、NH2、H、CH3、CH2CH2OCH2CH2NH2、又はCH2CH2NHCH2CH2NH2である。
【0010】
いくつかの実施形態では、多糖は、式VI
【化3】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0011】
いくつかの実施形態では、多糖は、式V
【化4】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの構造を有する1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R1、R2、及びR3は、独立して、H又はC1-C3アルキルであり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0012】
いくつかの実施形態では、多糖は、式VI、式VII、又は式VIII
【化5】
それらの異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、多糖は水溶性多糖である。
【0014】
いくつかの実施形態では、多糖は、修飾ペクチンである。いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、部分的に脱エステル化されたペクチン、部分的に脱エステル化された解重合ペクチン、アミド化ペクチン、アミド化解重合ペクチン、又はそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、修飾シトラスペクチン又は修飾リンゴペクチンである。
【0015】
いくつかの実施形態では、多糖は、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.1μg/mL~約200μg/mL、約0.1μg/mL~約100μg/mL、約0.1μg/mL~約50μg/mL、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg~約20μgの濃度で水性組成物中に存在する。
【0016】
いくつかの実施形態では、多糖は、約120kDaと約500kDaの間、約150kDaと約300kDaの間、又は約120kDaと約175kDaの間の相対分子量を有する。いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、非修飾ペクチンのアミド化によって得られる。いくつかの実施形態では、非修飾ペクチンは、約5kDaと約1,100kDaの間、約10kDaと約500kDaの間、約10kDaと約300kDaの間、約20kDaと約200kDaの間、又は約20kDaと約100kDaの間の相対分子量を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、核酸は、遠心分離、沈殿、又はそれらの組み合わせによって固体支持体上に濃縮される。いくつかの実施形態では、核酸は、固体支持体上での沈殿、例えば、遠心分離によって、又はフィルターを通過させることによって濃縮される。
【0018】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、シリカ、ガラス、エチレン性骨格ポリマー、雲母、ポリカーボネート、ゼオライト、二酸化チタン、又はそれらの組み合わせから選択される材料を含む。いくつかの実施形態では、固体支持体は、磁性ビーズ、ガラスビーズ、セルロースフィルター、ポリカーボネートフィルター、ポリテトラフルオロエチレンフィルター、ポリビニルピロリドンフィルター、ポリエーテルスルホンフィルター、又はガラスフィルターである。いくつかの実施形態では、固体支持体は、ポリエチレン又はポリプロピレンチューブのような遠心分離チューブの壁である。
【0019】
いくつかの実施形態では、方法は、固体支持体上に沈殿又は濃縮された核酸を洗浄する工程をさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、固体支持体から核酸を溶出する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、洗浄及び溶出の工程をさらにを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、核酸を溶出する工程は、濃縮された核酸を溶出剤と接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、溶出剤は、アンモニア又はアルカリ金属水酸化物を含む。いくつかの実施形態では、溶出剤は約9以上、約10以上、又は約11以上のpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出剤は、約9~約12、約9.5~約12、約10~約12、又は約9~約11のpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出剤は、ポリアニオンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアニオンはカラギーナンである。いくつかの実施形態では、ポリアニオンはキャリア核酸である。いくつかの実施形態では、溶出剤は、カラギーナン及びアルカリ金属水酸化物又は水酸化アンモニウムを含む。いくつかの実施形態では、カラギーナンは、i-カラギーナンである。いくつかの実施形態では、溶出剤は、i-カラギーナン及び水酸化カリウムを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、水性組成物は、さらに溶解剤を含む。いくつかの実施形態では、水性組成物は、カオトロピック剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、カオトロピック剤は、グアニジニウムチオシアネート、グアニジニウムヒドロクロリド、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、ホルムアミド、又はそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、水溶液は、塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、塩は、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムである。いくつかの実施形態では、水性組成物は、緩衝剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、トリス又はHEPESである。いくつかの実施形態では、水性組成物は、サーファクタントをさらに含む。いくつかの実施形態では、サーファクタントは、ポリソルベートである。いくつかの実施形態では、水性組成物は、消泡剤をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、サンプルは、血液、血漿、血清、精液、組織生検、涙、尿、便、唾液、髄液、塗抹標本、細菌培養物、哺乳類細胞培養物、ウイルス培養物、ヒト細胞、細菌、細胞外液、PCR反応混合物、又はインビトロ核酸修飾反応混合物である。いくつかの実施形態では、組織生検は、パラフィン包埋組織である。いくつかの実施形態では、核酸は、ゲノムDNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、総RNAを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、微生物核酸又はウイルス核酸を含む。いくつかの実施形態では、ウイルス核酸は、HBV DNAである。いくつかの実施形態では、核酸は、循環核酸を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、カートリッジ内で行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、サンプルは、細胞ライセートである。いくつかの実施形態では、サンプルは、水性組成物と接触する前に、溶解バッファーと接触する。いくつかの実施形態では、溶解バッファーは、1種以上のプロテアーゼを含む。
【0026】
別の態様において、本明細書では、
(a)1つ以上のウロン酸単位を含む多糖を含む水性組成物をサンプルに接触させる工程、
(b)核酸を濃縮する工程、及び
(c)核酸を検出する工程、
を含む、サンプル中の核酸を検出する方法が提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、多糖は、式II
【化6】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含み、
ここで、R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、及び任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルから選択される。
【0028】
いくつかの実施形態では、多糖は、式IIII
【化7】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3は、H、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、NH2、NCH3、CH2CH2OCH2CH2NH2、又はCH2CH2NHCH2CH2NH2である。
【0029】
いくつかの実施形態では、多糖は、式VI
【化8】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0030】
いくつかの実施形態では、多糖は、式V
【化9】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0031】
いくつかの実施形態では、式VI、式VII、又は式VIII
【化10】
それらの異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、多糖は、修飾ペクチンである。いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、修飾シトラスペクチン又は修飾リンゴペクチンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、多糖は、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.1μg/mL~約200μg/mL、約0.1μg/mL~約100μg/mL、約0.1μg/mL~約50μg/mL、約0.1μg/mL~約20μg/mL、約1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg~約20μgの濃度で水性組成物中に存在する。
【0034】
いくつかの実施形態では、核酸を検出する工程は、ポリメラーゼ連鎖反応によって核酸を増幅する工程を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ連鎖反応は、ネステッドPCR、アイソサーマルPCR、qPCR、又はRT-PCRである。
【0036】
別の態様において、本明細書では、式(II)~(VIII)で表される1つ以上の単位を含む多糖を含む核酸単離のためのキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、使用説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、式(I)~(VIII)で表される1つ以上の単位を含む多糖の溶液を含む。いくつかの実施形態では、キットは、固体形態の式(I)~(VIII)で表される1つ以上の単位を含む多糖を含む。いくつかの実施形態では、キットは、細胞溶解試薬又は細胞溶解成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、溶出試薬をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、バッファー成分をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、カオトロピック剤成分をさらに含む。
【詳細な説明】
【0037】
本明細書では、自動核酸増幅アッセイに適合する方法で核酸含有サンプルから核酸を単離するための方法が提供される。
【0038】
一つの態様において、本明細書では、核酸含有サンプルを水性組成物と接触させる工程を含む核酸含有サンプルから核酸を単離する方法が提供される。ここで、水性組成物は、単離された(例えば、沈殿又は濃縮された)核酸を提供するために、1以上のウロン酸単位を含む多糖を含む。
【0039】
本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、様々な核酸含有サンプルから核酸を単離、濃縮又は沈殿させるために使用できる。好適なサンプルには、血液、血漿、血清、精液、組織生検、尿、便、唾液、塗抹標本、パラフィン包埋組織、細菌培養物、細胞培養物、ウイルス培養物、PCR反応混合物、及びインビトロ核酸修飾反応混合物、並びにそれらの混合物を含む。
【0040】
本発明の方法の技術的特徴は、細胞ライセート及び組織のようなサンプルからの核酸の単離、例えば、沈殿又は凝集による単離を促進するために、1つ以上のウロン酸単位を含む多糖を使用することである。本発明者らは、本明細書に開示のいくつかの多糖剤が、細胞ライセート及び他の生物学的サンプルのような核酸含有サンプルに、約0.1μg/ml~約1,000μg/mlの範囲の濃度で添加された場合、驚くべきことに、遠心分離又は多孔性基材を通した濾過のような従来の方法による核酸の回収の収率の増加を促進することを発見した。いくつかの実施形態では、本方法は、室温での核酸の単離を可能にし、これにより、本方法は、自動化されたカートリッジベースの分子診断アッセイに有用である。さらに、本発明の方法は、多糖剤の存在がPCRなどの標準的な核酸増幅法による単離核酸の検出を阻害しないため、単離された核酸からの多糖剤の除去、又は追加の精製工程を必要としない。
【0041】
多糖剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多糖剤は、1つ以上のウロン酸単位を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の多糖剤は、ウロン酸モノマー単位を含む。好ましくは、多糖剤は、1つ以上のガラクツロン酸単位を含む。いくつかの実施形態では、多糖剤は、ポリガラクツロン酸(PGA)である。他の実施形態では、多糖は、ゼランガム、酸化デンプン、酸化セルロース、酸化デキストラン、及びそれらの組み合わせである。
【0042】
いくつかの実施形態では、多糖は、複数のウロン酸単位及び1つ以上の追加のモノマー単位を含む。ウロン酸は、カルボニル(例えば、アルデヒド基又はケト基)及びカルボン酸(-COOH)官能基の両方を含む糖酸を含む。典型的には、ウロン酸は、末端水酸基がカルボン酸に酸化された糖に由来するものであり、一般的には親糖に応じて命名され、例えば、グルクロン酸はグルコースに由来するウロン酸である。ヘキソースに由来するウロン酸は、ヘキスロン酸として知られており、ペントースに由来するウロン酸は、ペントロン酸として知られている。
【0043】
いくつかの実施形態では、1つ以上のウロン酸単位に加えて、多糖剤は、式(I)又は式(II)
【化11】
それらの異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される単位からなる群から選択される1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R1は、任意に置換されたC1-C8アルキル、任意に置換されたC3-C8シクロアルキル、任意に置換されたC3-C8ヘテロシクロアルキル、及び任意に置換されたC2-C20ヘテロアルキルから選択され、及び
R2及びR3は、独立して、H、任意に置換されたC1-C6アルキル、任意に置換されたC3-C6シクロアルキル、及び任意に置換されたC4-C20ヘテロアルキルから選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、R3は、任意に置換されたC1-C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R3は、任意に置換されたC4-C20ヘテロアルキル、例えば、1つ以上のアミノ基で任意に置換されたショートPEG鎖である。
【0045】
いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、1個以下のアミノ基を含む。いくつかの実施形態では、R1、R2、及びR3の各々は、アミノ基を含まない。いくつかの実施形態では、R2及びR3の各々は、1つ以上のアミノ基を含む。いくつかの実施形態では、R2はHであり、R3はC4-C20ヘテロアルキル、例えば、ポリアミン又は2~6個のエチレングリコール単位を含むオリゴマーエチレングリコールである。
【0046】
いくつかの実施形態では、R1は、メチル、エチル、又はプロピルである。いくつかの実施形態では、R2及びR3は、両方ともHである。いくつかの実施形態では、R2はHであり、R3は、任意に置換されたC1-C8アルキルである。いくつかの実施形態では、R2はHであり、R3は、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2NHCH2CH2NH2、CH2CH2OH、NH2、H、又はCH3である。いくつかの実施形態では、R2及びR3の両方ともCH3である。
【0047】
本明細書で使用される用語「アルキル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」には、直鎖、分岐鎖、及び環状の一価のヒドロカルビルラジカル、及びそれらの組み合わせが含まれ、それらが非置換の場合にはC及びHのみを含む。例としては、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニルなどを含む。そのような各基の炭素原子の合計数は、本明細書に記載されることがあり、例えば、基が最大10個の炭素原子を含むことができる場合には、1-10C、C1-C10、C1-C10、C1-10、又はC1-10として表現されることがある。本明細書で使用される用語「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、及び「ヘテロアルキニル」は、1つ以上の鎖状炭素原子がヘテロ原子で置換されている対応する炭化水素を意味する。例示的なヘテロ原子は、N、O、S、及びPを含む。ヘテロ原子が炭素原子を置換することが許容される場合、例えば、ヘテロアルキル基において、その基を記述する数字は、例えば、C3-C10と書かれるが、その基を記述する環又は鎖中の炭素原子の数に、記述されている環又は鎖中の炭素原子の置換として含まれるそのようなヘテロ原子の数を加えた数の合計を表す。
【0048】
単一の基は、1種類以上の多重結合、又は1つ以上の多重結合を含んでもよい。そのような基は、それらが少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む場合、用語「アルケニル」の定義内に含まれ、それらが少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含む場合、用語「アルキニル」の定義内に含まれる。
【0049】
アルキル、アルケニル、及びアルキニル基は、そのような置換が化学的に意味をなす範囲で任意に置換できる。代表的な置換基としては、限定されないが、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、=O、=NCN、=NOR、=NR、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRC(O)OR、NRC(O)R、CN、C(O)OR、C(O)NR2、OC(O)R、C(O)R、及びNO2を含み、ここで、各Rは、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C6-C10アリール、又はC5-C10ヘテロアリールであり、且つ各Rは、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、=O、=NCN、=NOR'、=NR'、OR'、NR'2、SR'、SO2R'、SO2NR'2、NR'SO2R'、NR'CONR'2、NR'C(O)OR'、NR'C(O)R'、CN、C(O)OR'、C(O)NR'2、OC(O)R'、C(O)R'、及びNO2で任意に置換され、ここで、各R'は、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール又はC5-C10ヘテロアリールである。また、アルキル、アルケニル、及びアルキニルはC1-C8アシル、C2-C8ヘテロアシル、C6-C10アリール又はC5-C10ヘテロアリールによって置換されていてもよく、これらはそれぞれ、特定の基に適した置換基によって置換されていてもよい。
【0050】
本明細書で使用される「アルキル」は、シクロアルキル基及びシクロアルキルアルキル基を含み、本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、環炭素原子を介して連結された炭素環式非芳香族基を記述するために使用され、「シクロアルキルアルキル」という用語は、アルキルリンカーを介して分子に連結された炭素環式非芳香族基を記述するために使用される。同様に、「ヘテロシクリル」は、少なくとも1つのヘテロ原子を環メンバーとして含み、C又はNであってもよい環原子を介して分子に連結している非芳香族環基を表すために使用され、さらに、「ヘテロシクリルアルキル」は、アルキレンリンカーを介して別の分子に連結するそのような基を表すために使用できる。また、本明細書で使用されるこれらの用語は環が芳香族でない限り、二重結合を含む環又は2つの環を含む。
【0051】
「芳香族」又は「アリール」置換基又は部位は、芳香族性のよく知られた特性を有する単環式又は縮合二環式の部位を指し、アリールの例は、フェニル及びナフチルを含む。同様に、「ヘテロ芳香族」及び「ヘテロアリール」は、1個以上のヘテロ原子を環メンバーとして含む、そのような単環式又は縮合二環式環系を指す。好適なヘテロ原子としては、N、O、及びSが挙げられ、これらのヘテロ原子を含むことにより、5員環及び6員環の芳香族性が得られる。代表的なヘテロ芳香族系としては、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、チエニル、フラニル、ピロニル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、及びイミダゾリルなどの単環C5-C6芳香族基、及びこれらの単環基のいずれかをフェニル環又はヘテロ芳香族単環基のいずれかと融合させて形成される縮合二環式基であり、インドリル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ピラゾロピリジル、キナゾリニル、キノキサリニル、シノリニル等のC8-C10の二環式基を形成するものを含む。環系全体の電子分布に関して芳香族性の特徴を有する任意の単環式又は縮合二環式系は、この定義に含まれる。また、少なくとも分子の残部に直接結合している環が芳香族性の特徴を有する二環式基も含まれる。典型的には、環系は5~14個の環員原子を含む。典型的には、単環式ヘテロアリールは5~6個の環員を含み、二環式ヘテロアリールは8~10個の環員を含む。
【0052】
アリール及びヘテロアリール部位は、C1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C5-C12アリール、C1-C8アシル、及びこれらのヘテロ型を含む様々な置換基で置換されていてもよく、これらの各々はそれ自体がさらに置換されていてもよい。アリール及びヘテロアリール部位の他の置換基としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、OR、NR2、SR、SO2R、SO2NR2、NRSO2R、NRCONR2、NRC(O)OR、NRC(O)R、CN、C(O)OR、C(O)NR2、OC(O)R、C(O)R、及びNO2を含み、ここで、各Rは、独立して、H、C1-C8アルキル、C2-C8ヘテロアルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8ヘテロアルケニル、C2-C8アルキニル、C2-C8ヘテロアルキニル、C6-C10アリール、C5-C10ヘテロアリール、C7-C12アリールアルキル、又はC6-C12ヘテロアリールアルキルであり、各Rは、アルキル基について上述したように任意に置換されていてもよい。アリール基又はヘテロアリール基上の置換基は、そのような置換基の種類ごとに、又は置換基の各成分ごとに適したものとして本明細書に記載された基でさらに置換されていてもよい。従って、例えば、アリールアルキル置換基は、アリール部分上に、アリール基のための典型的なものとして本明細書に記載された置換基で置換することができ、アルキル部分上に、アルキル基のための典型的な又は好適なものとして本明細書に記載された置換基でさらに置換できる。
【0053】
本明細書で使用される「任意に置換された」は、記載される特定の基が、非水素置換基で置換された1つ以上の水素置換基を有し得ることを示す。いくつかの任意に置換された基又は部位では、全ての水素置換基が非水素置換基(例えば、トリフルオロメチル等のポリフルオリネイテッドアルキル)で置換される。特に指定がない場合、存在し得るそのような置換基の総数は、記載されている基の置換されていない形態に存在するH原子の数に等しい。任意の置換基がカルボニル酸素やオキソ(=O)のような二重結合を介して結合している場合、グループは2つの利用可能な価数を取るので、含まれてもよい置換基の合計数は、利用可能な価数の数に応じて減少してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、多糖剤は、式(III)
【化12】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせの1つ以上の単位をさらに含み、
ここで、R3は、CH2CH2NH2、CH2CH2N(CH3)2、CH2CH2OH、CH3、(CH2)2O(CH2)2NH2、又はCH2CH2NHCH2CH2NH2である。いくつかの実施形態では、R3はHである。いくつかの実施形態では、R3はCH2CH2OHである。
【0055】
多糖剤が式(II)又は(III)の2つ以上の単位を含む場合、それらのR3は、多糖剤内で同じであっても異なっていてもよいことが理解される。
【0056】
いくつかの実施形態では、多糖剤は、修飾ペクチンである。ペクチンは、天然に存在する複雑な多糖であり、典型的には植物の細胞壁に見られる。ペクチンは、典型的には、ラムノース残基によって介在され、中性糖側鎖及びアセチル基、メチル基、及びフェルラ酸基のような非糖成分で修飾されたアルファ1~4連結ポリガラクツロン酸バックボーンを含む。ペクチン中のガラクツロン酸残基は、部分的にエステル化され、メチルエステルとして存在する。ペクチンは、典型的には、エステル化されたカルボキシル基の割合として定義されるエステル化度によって特徴づけられる。エステル化度、例えば、50%超のペクチンは、高メチルエステル(「HM」)ペクチン又は高エステルペクチンとして分類され、エステル化度が50%より低いペクチンは、低メチルエステル(「LM」)ペクチン又は低エステルペクチンと呼ばれる。果物及び野菜に見られるペクチンのほとんどは、HMペクチンである。本明細書に開示の方法のいくつかの実施形態では、多糖剤は、HMペクチン又は修飾HMペクチンである。本明細書で使用される「修飾ペクチン」という用語は、例えば、化学的、物理的、又は生物学的(酵素を含む)手段によって、又はそれらのいくつかの組み合わせによって、構造的に修飾された、任意の天然に存在するペクチンを指す。ペクチン構造に対するそのような修飾の非限定的な例としては、脱エステル化、加水分解、糖部位の酸化及び/又は還元、糖部位の官能化、コンフォメーションの変化、及び分子量、連結、及び凝集状態の変化を含む。いくつかの実施形態では、構造修飾は、脱エステル化及び加水分解を含む。他の実施形態では、構造修飾は、分子量及び/又は重合度の低下を含む。
【0057】
修飾ペクチンは、共有結合又はイオン結合などのペクチン構造の化学結合を破壊又は変更する任意の化学反応又はプロセスを含む、当技術分野で知られている化学的手段によって製造できる。例示的には、化学結合は、触媒反応、加水分解、アミノ分解、置換、エリミネーション、還元、酸化、及びラジカル反応によって破壊又は形成されてもよい。いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、好ましくは、例えば、酸又は塩基によって触媒される加水分解を含むプロセスによって製造される。
【0058】
いくつかの実施形態では、修飾ペクチンはアミド化ペクチンである。アミド化ペクチンは、当該技術分野で知られている方法によって調製できる。例えば、非修飾ペクチンのようなエステル基を含むペクチンを、適当なアミンの溶液と接触させることにより、非修飾ペクチンのエステル基を、例えば、スキーム1に示されるように、アミドに変換できる。
【化13】
【0059】
あるいは、エステル基の全部または一部が加水分解された未修飾ペクチンまたはペクチンは、スキーム2に描かれているように、アミド化ペクチンを形成するために、適当なカップリング剤の存在下で、第一級アミンまたは第二級アミンまたはアミンの混合物と反応させることができる。
【化14】
【0060】
本明細書に開示のアミド化ペクチンを調製するために、任意の適切なカップリング方法及び試薬を使用できる。適当なカップリング剤の非限定的な例としては、DCC及びEDCIのようなカルボジイミドカップリング剤、及びBOP、PyBOP、PyBrOP、TBTU、HBTU、HATU、COMU、及びTFFHのようなホスホニウム及びイモニウムタイプの試薬を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の多糖試薬は、例えば、ペクチンのようなペリオデート処理された多糖の還元的アミノ化によって得ることができる。このような多糖の還元的アミノ化の方法は、当技術分野で知られている。
【0062】
修飾された、例えば、アミド化ペクチンは、本明細書に記載された方法のいずれかによって得ることができる。修飾ペクチンの合成のための特に有用な出発物質は、果実ペクチン、例えば、リンゴ及びシトラスペクチンを含む。いくつかの実施形態では、前駆体(非修飾)ペクチンは、約5kDaと約1,100kDaの間、約10kDaと約500kDaの間、約10kDaと約300kDaの間、約20kDaと約200kDaの間、又は約20kDaと約100kDaの間の相対分子量を有する。いくつかの実施形態では、多糖剤は、約120kDaと約300kDaの間、約150kDaと約300kDaの間、又は約120kDaと約175kDaの間の相対分子量を有する。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンの相対分子量は、プルランシリーズ標準物質などの分子量標準物質を参照として、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定できる。
【0063】
いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、表2の化合物である。
【0064】
いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、アンモニアでアミド化されたペクチンである。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、アミノエタノールでアミド化されたペクチンである。他の実施形態では、アミド化ペクチンは、エチレンジアミンでアミド化されたペクチンである。他の実施形態では、アミド化ペクチンは、ジエチレントリアミンでアミド化されたペクチンである。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、式(II)又は式(III)で表される1つ以上の単位を含む。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、下記の表1に記載のいずれかの手順A~Lによって得られるペクチンである。
【0065】
いくつかの実施形態では、修飾ペクチンは、例えば、当技術分野で知られている方法に従って、ペリオデート-酸化ペクチンの還元的アミノ化によって修飾されたペクチンである。従って、一態様において、本明細書で提供される核酸をサンプルから単離する方法は、核酸を含むサンプルを修飾多糖を含む水性組成物と接触させる工程、及び固体支持体上に核酸を濃縮することによって核酸を単離する工程を含み、ここで、修飾多糖は、ペリオデート-酸化ペクチンの還元的アミノ化によって修飾されたペクチンである。いくつかの実施形態では、還元的アミノ化は、ペリオデート-酸化ペクチンをポリアミン、例えば、スペルミン又はスペルミジン、及びボロンハイドライドと接触させることによって行われる。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のアミド化ペクチンは、少なくとも1つのアミノ基を有する1つ以上のモノマー単位を含む。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、式IV
【化15】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、
Xは、各出現において、独立して、C2-C4アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、
Yは、C2-C3アルキレン又はC4-C6ヘテロアルキレンであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のアミド化ペクチンは、式V
【化16】
異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上のモノマー単位を含み、
ここで、nは、0、1、2又は3であり、
mは、各出現において、独立して、2、3又は4であり、
pは2、3又は4であり、
R4は、H又はC1-C3アルキルであり、及び
R5及びR6は、独立して、H又はC1-C3アルキルである。
【0068】
本明細書に開示の方法のいくつかの実施形態では、アミド化ペクチン又は修飾ペクチンは、第一級アミノ基を含む1つ以上のモノマー単位を含む。いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、ポリアミンでアミド化される。本明細書で使用されるポリアミンは、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、及びそれらの組み合わせなどの複数のアミノ基を含む化合物である。本明細書に開示のペクチンの修飾に適したポリアミンは、合成ポリアミン及び天然に存在するポリアミンの両方、例えば、スペルミジン、スペルミン、及びプトレスシンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、スペルミン、スペルミジン、カダベリン、エチレンジアミン、及びプトレシンから選択される。いくつかの実施形態では、ポリアミンは、スペルミン又はスペルミジンである。
【0069】
いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、式VI、式VII、又は式VIII
【化17】
それらの異性体、塩、互変異性体、又はそれらの組み合わせで表される1つ以上の単位を含む多糖で表される1つ以上の単位を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、アミド化ペクチンは、式I~VIIの構造で表される複数のモノマー単位を含む。本明細書で使用される用語「複数」は、2つ以上を意味する。例えば、複数のモノマー単位は、少なくとも2つのモノマー単位、少なくとも3つのモノマー単位、又は少なくともモノマー単位などを意味する。本発明の実施形態が2つ以上の単量体ユニットを含む場合、それらはまた、第一の単量体ユニット、第二の単量体ユニット、第三の単量体ユニットなどと呼ばれてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、多糖剤は、水溶性多糖、例えば、水溶性修飾又はアミド化ペクチンである。いくつかの実施形態では、多糖剤は、組成物中に溶解している。いくつかの実施形態では、多糖剤は、組成物中に分散しており、例えば、組成物は、多糖剤の懸濁液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、修飾又はアミド化ペクチンなどの多糖剤の溶液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、多糖剤の懸濁液を含む。いくつかの実施形態では、多糖剤は、水溶液に溶解又は懸濁されている。
【0072】
核酸含有サンプルからの核酸の単離を促進するために、本明細書に記載された多糖剤は、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg~約20μgの多糖剤の最終濃度になるようにサンプルに添加される。いくつかの実施形態では、多糖剤はストック溶液又は懸濁液の形態で提供され、これは核酸含有サンプルに添加されると、約0.1μg/mL~約1000μg/mL、約0.1μg/mL~約500μg/mL、約0.1μg/mL~約200μg/mL、約1μg/mL~約100μg/mL、約1μg/mL~約50μg/mL、又は約1μg~約20μgの多糖剤の最終濃度を提供する。他の実施形態では、多糖剤は溶解バッファーに溶解又は懸濁され、次に核酸含有サンプルに添加されて、核酸の溶解及び単離を促進する。
【0073】
他の要素
本明細書に開示の方法において、多糖剤に加えて、水性組成物は、緩衝剤、キレート剤、塩類、消泡剤、デタージェント、カオトロピック剤、沈殿溶媒、溶解剤、及び/又は有機添加剤などの任意の数の他の剤を含み得る。本明細書に開示の方法において、本明細書に記載された他の剤の任意の好適な組み合わせを使用できる。例えば、いくつかの実施形態では、多糖剤を含む水性組成物は、1つ以上の緩衝剤、キレート剤、塩類、消泡剤、デタージェント、カオトロピック剤、沈殿溶媒、溶解剤、有機添加剤、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0074】
A. 緩衝剤
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の組成物は、約pH3.5~約pH9、約pH5~約pH8.5、約pH6~約pH8.5の範囲のpHで溶液を緩衝する1つ以上の緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約pH6.6~約7.5、約pH6.7~7.4、約pH6.8~約pH7.3、又は約6.9~約7.5の範囲のpHで溶液を緩衝する。いくつかの実施形態では、pHは約pH7.05で緩衝される。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、約10mM~約100mM、又は約20mM~約50mM、又は約50mMである。核酸単離において典型的に使用される緩衝剤などの任意の適切な緩衝剤を、本明細書に開示の組成物に含めることができ、これには、クエン酸バッファー、トリス、リン酸塩、PBS、TAPS、ビシン、トリシン、TAPSO、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジレート、SSC、及びMESを含むが、これらに限定されるものではない。
【0075】
いくつかの実施形態では、組成物は、HEPES又はTrisを含む。典型的には、緩衝剤は、約100mM、約75mM、約50mM、約40mM、又は約25mMで存在する。上記に記載された様々な緩衝剤は、例示的なものであることを意図している。本明細書に記載された方法に従って核酸の単離及び分析に使用するのに適した多数の他の緩衝剤は、当業者であれば入手可能である。
【0076】
B. キレート剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、1つ以上のキレート剤を含む。キレート剤は、当業者にはよく知られており、限定されないが、N-アセチル-L-システイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸(EDDS)、1,2-ビス(o-アミノフェノキシ)エタン-N,N,N',N'-四酢酸(BAPTA)、及びホスホン酸キレート剤(例えば、限定されないが、ニトリロクリス(メチレン)ホスホン酸(NTMP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)などを含む)を含む。いくつかの実施形態では、キレート剤は、EDTA又はDTAPを含む。いくつかの実施形態では、キレート剤はEDTAを含む。いくつかの実施形態では、存在する場合、キレート剤は、約5mM~約200mM、又は約10mM~約100mMの濃度範囲で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、又は約100mMの濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、キレート剤の濃度は、約1mMup~約140mM、約5mMup~約100mM、又は約10mM~約50mMの範囲である。
【0077】
C. デタージェント又はサーファクタント
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、1つ以上の好適なデタージェントを含む。いくつかの実施形態では、デタージェントは、イオン性デタージェント又は非イオン性デタージェントを含む。好適なデタージェントの例としては、塩化ベンゼトニウム、CHAPS、CHAPSO、1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム塩、n-ラウロイルサルコシンナトリウム塩、Tween(R)80やTween(R)20のようなポリソルベート、Brij 58、スルホベタインSB 12、スルホベタインSB 14、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、PLURONIC(R) F-68、SDS、サポニン、TRITON(R) X-100、及びTRITON(R) X-114を含む。好ましくは、デタージェントは、Tween(R) 20などのポリソルベート20を含む。いくつかの実施形態では、デタージェントは、約5mM~約200mM、約10mM~約100mM、約20mM~約50mM、又は約30mM~約40mMの濃度範囲で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、デタージェントは、約5mM、約10mM、約15mM、約20mM、約25mM、約40mM、約50mM、約75mM、約100mM、約150mM、又は約200mMの濃度を有する。いくつかの実施形態では、デタージェントは、約35 mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、デタージェントは、約0.5%(v/v)~約30%(v/v)、又は約1%(v/v)~約20%(v/v)、又は約5%~約15%(v/v)の範囲の割合で存在する。いくつかの実施形態では、デタージェントは、上記溶液の約0.1%~約2%、又は上記溶液の約0.5%~約1.5%、又は前記多糖剤溶液の約1%の重量で含まれる。
【0078】
D. 溶解剤
いくつかの実施形態では、サンプルは、核酸の単離に先立って、サンプルを溶解バッファーと接触させることにより溶解される。本明細書で使用される「溶解バッファー」は、オープンセルを破壊する目的で使用されるバッファーを意味する。いくつかの実施形態では、溶解バッファーは、本明細書に開示の1つ以上の多糖剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の多糖剤は、溶解液中に溶解又は懸濁される。いくつかの実施形態では、溶解液は、1つ以上の溶解剤、例えば、プロテアーゼを含む。好適なプロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、及びそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。例示的な適切なプロテアーゼは、プロテイナーゼk(広スペクトルセリンプロテアーゼ)、サブチライシントリプシン、キモトリプシン、ペプシン、パパインなどを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、プロテアーゼの量は、約0.1mg/mL、約0.2mg/mL、約0.3mg/mL、約0.4mg/mL、約0.5mg/mL、約0.6mg/mL、約0.7mg/mL、約0.8mg/mL、約5mg/mL、約4mg/mL、約3mg/mL、約2mg/mL、又は約1mg/mLである。他の適切なプロテアーゼは、当技術分野の当業者に知られている。
【0079】
E. カオトロピック剤
本発明の方法のいくつかの実施形態では、組成物は、好適なカオトロピック剤をさらに含む。カオトロピック剤の例としては、バリウム塩、アルカリパークロレイト、グアニジニウムヒドロクロリド、及びグアニジニウムチオシアネートを含む。その溶解度に応じて、カオトロピック剤は、典型的には、約1M~約8Mの間の濃度範囲で使用される。いくつかの実施形態では、グアニジニウムチオシアネートは、本明細書に記載の溶液及び方法において使用される。
【0080】
F. 有機添加剤
いくつかの実施形態では、核酸は、固体基質上に沈殿させるか、固体基質に結合させるか、又は固体基質上に固定化することによって単離される。いくつかの実施形態では、そのような沈殿、結合、及び/又は固定化は、有機添加剤の存在下で容易に達成され得る。いくつかの実施形態では、有機添加剤は、水と混和性のある有機溶媒である。このような溶媒の様々なものが当技術分野で知られている。例示的な溶媒は、アルコール、例えば、低級アルコール(例えば、C1-C6アルコール)を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、エタノール又はイソプロパノールを含み得る。いくつかの実施形態では、アルコールはエタノールである。あるいは、いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシド又はオリゴエチレンオキシドを使用できる。
【0081】
本明細書に開示の方法で使用するのに適した有機添加剤の他の例としては、例えば、C3及びC4アルキルジオール、並びに短鎖エチレングリコール誘導体及び多様な水溶性高分子化合物からなる群から選択される薬剤を含む。これらの有機添加剤は、実質的にエタノールを含まないものを使用できる。例示的な有機添加剤としては、1,2-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1-メトキシ-2-プロパノラセテート、3-メチル-1,3,5-ペンタネトリオール、DBE-2二塩基エステル、DBE-3二塩基エステル、DBE-4二塩基エステル、DBE-5二塩基エステル、DBE-6ジメチルアジペイト、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(DGMEA)、乳酸エチル、エチレングリコール、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、テトラエチレングリコール(TEG)、テトラグリコール(テトラヒドロフルフリルポリエチレングリコールエーテル)、テトラヒドロフルフリルポリエチレングリコール200、トリ(エチレングリコール)-ジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGME)、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びトリエチレングリコールモノエチルエーテルを含む。
【0082】
核酸単離方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、固相又は支持体上での沈殿によって核酸を単離するために使用される。いくつかの実施形態では、固相又は支持体は、ガラス、シリカ、セルロース、又はそれらの組み合わせを含む。固相又は支持体は、容器の壁、繊維(例えば、ガラス繊維)、膜(例えば、セルロース膜)、ビーズ(例えば、磁性ビーズ、ガラスビーズ、セルロースビーズ、マイクロ粒子、又はナノ粒子など)などを含む。いくつかの実施形態では、固相は、カラムに充填されたビーズである。任意の適切な固体支持体材料を本明細書に記載の方法で使用することができ、例えば、シリカ、ガラス、セルロース、エチレン性骨格ポリマー、ポリカーボネート、ゼオライト、及び二酸化チタンから選択される材料を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、核酸の単離又は濃縮は、遠心分離によって、又は多孔性材料、例えば、定義されたポアサイズの材料を通した濾過によって行うことができる。この実施形態では、当業者は、適切な多孔性の固体支持体を選択することにより、核酸の回収を最適化でき得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、大容量(例えば、約5mL以上又は約10mL以上)のサンプルへの多糖剤の添加は、例えば、核酸を磁気ビーズ上に濃縮することによって、サンプルからの核酸の単離を促進する。これは、マイクロ流体核酸検出装置で直接処理するには大きすぎる希釈サンプルからの核酸の事前濃縮に特に有用である。
【0085】
いくつかの実施形態では、多糖剤の添加は、方法の全ての工程を室温で実施し得る。いくつかの実施形態では、方法は、周囲温度、例えば、15℃~35℃の温度で核酸を単離するのに適している。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の方法を用いた核酸の単離は、自動化カートリッジ、例えば、GeneXpert(R)(Cepheid, Sunnyvale, CA, U.S.A.)カートリッジ中で実施できる。
【0086】
核酸
本明細書で使用される「核酸」という用語は、任意の可能な構成、即ち、二本鎖核酸、一本鎖核酸、又はそれらの任意の組み合わせの形態で、DNA又はRNAなどの任意の合成又は天然に存在する核酸を指す。核酸は、ゲノムDNAなどのDNA、及び総RNAなどのRNAを含む。また、核酸はショート二本鎖DNA断片などの一本鎖又は二本鎖核酸を含む。いくつかの実施形態では、合成核酸は、本明細書に開示の方法によって単離され得る。いくつかの実施形態では、核酸は、ヒト血漿又は血液中に見出される循環核酸である。
【0087】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、核酸含有溶液から核酸を沈殿させるために使用される。核酸含有溶液は、核酸含有細胞又は材料の溶解によって得ることができる。好適な核酸含有材料は、血液、パラフィン包埋組織などのサンプルを含む組織生検、塗抹標本、髄液、細菌培養物、ウイルス培養物、尿、精液、細胞懸濁液及び付着細胞、PCR反応混合物、及びインビトロ核酸修飾反応混合物を含む。核酸含有材料は、ヒト、動物、細菌、真菌、ウイルス、又は植物材料を含むことができる。他の実施形態では、核酸含有溶液は、核酸修飾反応又は核酸合成反応から得ることができる。
【0088】
核酸検出方法
本明細書に記載の方法及び薬剤を用いて単離された核酸は、多糖剤の除去を必要とせずに、サンプル中の1つ以上の標的核酸配列を検出及び/又は定量するために増幅するのに適した品質である。本明細書に記載の核酸沈殿法及び薬剤は、疾患の診断及び予後に関連する遺伝子発現プロファイルの発見を目的とした基礎研究にも適用可能である。また、本明細書に記載された方法は、疾患の診断及び/又は予後、特定の治療レジメンの決定、及び/又は治療効果のモニタリングにも適用可能である。
【0089】
本明細書に記載の方法は、生物学的サンプルからの核酸の単離を単純化し、PCR、RT-PCR、及びシーケンシングシステムでの使用に適した単離核酸を効率的に生産する。本発明の方法は、既知の核酸分析及び検出方法に適合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて核酸含有サンプルから単離された核酸は、任意の適切な既知の核酸検出方法によって検出できる。いくつかの実施形態では、単離された核酸は増幅反応に使用されるが、他の用途も企図される。従って、例えば、単離された核酸(又はその増幅産物)は、核酸ベースのマイクロアレイを含むがこれらに限定されない様々なハイブリダイゼーションプロトコルにおいて使用することができ、また次世代シークエンシング(NGS)プラットフォームにおいても使用できる。
【0090】
従って、一態様において、(a)サンプルを本明細書に開示の多糖剤を含む水性組成物と接触させる工程、(b)核酸を濃縮する工程、及び(c)核酸を検出する工程を含む、サンプル中の核酸を検出するための方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、核酸は、固体支持体上に沈殿によって濃縮される。
【0091】
いくつかの実施形態では、検出方法は核酸増幅を含む。好適な非限定的な例示的増幅方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、ネステッドPCR、マルチプレックスPCR、定量PCR(Q-PCR)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、転写媒介増幅(TMA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、及びストランド置換増幅(SDA)を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、増幅方法は、約90℃~約100℃で約1~約10分間の初期変性、続く、約90℃~約100℃で約1~約30秒間の変性、約55℃~約75℃で約1~約30秒間のアニーリング、及び約55℃~約75℃で約5~約60秒間の伸長を含むサイクリングを含む。いくつかの実施形態では、初期変性に続く最初のサイクルについては、サイクル変性工程は省略される。特定の時間及び温度は、増幅される特定の核酸配列に依存し、当業者によって容易に決定され得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、核酸の単離及び検出は、自動化サンプルハンドリング及び/又は分析プラットフォームで行われる。いくつかの実施形態では、商業的に入手可能な自動分析プラットフォームが利用される。例えば、いくつかの実施形態では、GeneXpertシステム(Cepheid, Sunnyvale, Calif.)が利用される。しかし、本発明は、特定の検出方法又は分析プラットフォームに限定されるものではない。当業者であれば、任意の数のプラットフォーム及び方法を利用できることを認識する。
【0094】
GeneXpertは、自己充足型の単回使用カートリッジを利用する。サンプルの抽出、増幅、及び核酸の検出はすべて、この自己充足型の「カートリッジ内のラボラトリー」で行うことができる。例えば、米国特許第6,374,684号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照。カートリッジの構成要素には、試薬、フィルター、及び標的核酸の抽出、精製、増幅に有用な捕捉技術を含む処理チャンバーを含むが、これらに限定されない。バルブは、チャンバーからチャンバーへの流体の移動を可能にし、核酸の溶解及びろ過のコンポーネントを含む。光学窓は、リアルタイムの光学検出を可能にする。反応管は、非常に迅速な熱サイクルを可能にする。いくつかの実施形態では、GenXpertシステムは、拡張性のために複数のモジュールを含む。各モジュールには、複数のカートリッジと、サンプルハンドリング及び分析コンポーネントが含まれている。
【0095】
サンプルをカートリッジに加えた後、サンプルを溶解バッファーと接触させて核酸を放出させることができ、放出された核酸は、溶解したサンプルを1つ以上のウロン酸単位を含む水溶性多糖を含む水溶液と接触させ、その後、核酸をシリカ又はガラス基材などの固体基材上に沈殿させることによって単離される。いくつかの実施形態では、1つ以上のウロン酸単位を含む水溶性多糖は、溶解バッファーに溶解される。沈殿後、次に上清を除去し、核酸を溶出バッファー、例えば、トリス/EDTAバッファーで基材から溶出する。その後、溶出液をカートリッジで処理して、目的の標的遺伝子を検出してもよい。いくつかの実施形態では、溶出液を使用して、凍結乾燥粒子としてカートリッジ内に存在するPCR試薬の少なくとも一部を再構成する。いくつかの実施形態では、PCRは、AptaTaq(Roche Inc., Basel, Switzerland)などのホットスタート機能を有するTaqポリメラーゼを使用する。
【0096】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のいずれかの方法に従って、固定されたパラフィン包埋生体組織サンプルから核酸(例えば、DNA、RNA)を単離し、沈殿した核酸を、標的核酸の領域を増幅できるペアーのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅に供し、増幅サンプルを得、標的核酸の存在及び/又は量を決定するために使用される。いくつかの実施形態では、標的核酸は、DNA(例えば、遺伝子)である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、RNA(例えば、mRNA、ノンコーディングRNAなど)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて単離された核酸は、診断方法、予後診断方法、治療(例えば、がん治療)をモニタリングする方法などに使用するのに適している。従って、いくつかの例示的かつ非限定的な実施形態において、固定パラフィン包埋サンプル(例えば、FFPETサンプルから)から抽出された核酸は、遺伝子の存在及び/又は発現レベル、及び/又は遺伝子の変異状態を同定するために使用できる。そのような方法は、1つ以上のがんマーカーの存在、及び/又は発現レベル、及び/又は変異状態の同定に特に適している。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を用いて単離された核酸は、1つ以上のがんマーカーの存在、及び/又はコピー数、及び/又は発現レベル、及び/又は変異状態を検出するために利用される。
【0097】
核酸の溶出
本明細書に開示の検出及び単離方法は、任意に洗浄工程を含むことができ、即ち、沈殿した核酸を、例えば、固体支持体上で任意に洗浄して、溶解バッファーの成分を除去できる。典型的には、濃縮された、例えば、沈殿した核酸は、検出の前に溶解される。いくつかの実施形態では、濃縮核酸は、PCR反応に適合するバッファーに溶解される。
【0098】
いくつかの実施形態では、例えば、核酸を沈殿させるためにポリアミン修飾多糖が使用される場合、沈殿した核酸は、適切な溶出剤と接触させることによってポリアミンから溶出させることができる。いくつかの実施形態では、溶出剤は、アンモニア又はアルカリ金属水酸化物からなる。いくつかの実施形態では、溶出剤は、塩基性のpHを有する。いくつかの実施形態では、溶出剤は、約9~約12、約9.5~約12、約10~約12、又は約9~約11のpHを有する。好ましくは、溶出剤のpHは10超である。好ましくは、溶出剤は、核酸と多糖剤との結合を破壊するのに十分な濃度の水酸化アンモニウム、NaOH、又はKOHを含む。例示的な溶出剤は、1%アンモニア、15mM KOH、又は15mM NaOHを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、溶出剤は、ポリアニオンを含む。いくつかの実施形態では、ポリアニオンは、複数のアニオン性基を含むポリマーである。いくつかの実施形態では、アニオン性基は、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、もしくはスルホネート基、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ポリアニオンは、約7超のpHで負に帯電するポリマーである。合成ポリアニオンと天然由来のポリアニオンの両方が、本明細書で開示される方法に使用できる。いくつかの実施形態では、ポリアニオンはカラギーナンである。いくつかの実施形態では、ポリアニオンは、キャリア核酸である。本明細書で使用されるキャリア核酸は、例えば、PCRによる、濃縮核酸の後続の検出を妨害しない核酸である。例示的なキャリア核酸には、ポリrA、ポリdA、ヘリング精子DNA、サルモン精子DNAなどがある。いくつかの実施形態では、溶出剤は、カラギーナン及びアルカリ金属水酸化物、例えば、NaOH又はKOHを含む。いくつかの実施形態では、溶出剤は、i-カラギーナン及びKOHを含む。
【0100】
本発明の各要素は、複数の実施形態を含むものとして本明細書に記載されているが、別段の指示がない限り、本発明の所定の要素の実施形態のそれぞれは、本発明の他の要素の実施形態のそれぞれと一緒に使用することが可能であり、そのような使用のそれぞれは、本発明の別個の実施形態を形成することを意図していることを理解すべきである。
【0101】
本明細書で参照された特許、特許出願、及び科学文献は、あたかも個々の出版物、特許、又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用した参考文献と本明細書の具体的な教示との間に矛盾がある場合は、後者を優先して解決するものとする。同様に、技術的に理解されている単語やフレーズの定義と、本明細書で具体的に教えられている単語やフレーズの定義との間に矛盾がある場合は、後者を優先して解決するものとする。
【0102】
上記の開示から理解できるように、本発明は多様な応用が可能である。本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは例示に過ぎず、本発明の定義及び範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。
【実施例
【0103】
他に明記しない限り、全ての試薬は市販のものを使用した。
【0104】
実施例1:多糖試薬の調製と特性評価
以下に記載され、表1にまとめられているように、商業的に入手可能な材料からのアミン修飾酸性多糖の合成を以下の手順の1つに従って行った。ここで、EDAはエチレンジアミンを、DETAはジエチレントリアミンを、DMPDAは1,3-ジメチルジプロピレンジアミンを、AETMAは(2-アミノエチル)トリメチルアンモニウムクロリドヒドロクロリドを、TAEAはトリス(2-アミノエチル)アミンを意味する。
【0105】
アミド化多糖の調製の一般的な手順(方法A~G)
出発多糖(1g)を50mLの水(方法B、D~G)又はアミン溶液(方法A及びC)に少しずつ加え、30分間又は目に見える固形物が観察されなくなるまで撹拌した。必要に応じて、この混合物に適切なカップリング試薬を加え(方法D~F)、混合物が均質になるまで撹拌した。得られた混合物を適切な量のアミンで処理し(方法B、D~G)、混合物をさらに表1に指定した時間、中速で磁気的に撹拌した。反応終了後、水性反応混合物(方法A、B、D~G)を300mLの1:1アセトン/メタノールに希釈し、ろ過前にスラリーを15分間撹拌した。ろ過したゲル状物質をメタノール(50mL)で4回洗浄した。メタノール反応混合物(方法C)は、メタノールに希釈することなく直接ろ過した。沈殿した変性多糖を45℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。必要に応じて、乾燥したペクチンペレットを乳鉢と乳棒で粉砕し、微粉末を得た。
【0106】
多糖の酸化のための一般的な手順(方法H)
多糖(1g)を、TEMPO(30mg)を含む水(50mL)に懸濁し、懸濁液を氷上で冷却した。混合物に次亜塩素酸ナトリウム溶液(10~15%の有効塩素)18mLをゆっくりと加え、ガラス電極を用いてpHをモニターし、次亜塩素酸処理中に1M NaOHを加えて10.8付近に維持した。pHが安定したところで、250 mLのエタノールを加えて反応を停止した。得られた沈殿物をろ過して回収し、60/30/10イソプロパノール-水-濃HCl溶液(3x50 mL)、続くメタノール(3 x50 mL)で洗浄した。残った固体を減圧下で乾燥させた。
【0107】
アロエベラ植物からのペクチンの抽出(方法I)
採取したばかりのアロエベラの葉のスライス95gに65mLのエタノールを加え、混合物を90℃で15分間加熱した。その後、濃アンモニア水200mLを加え、30分間撹拌しながら90℃に加熱した。混合物をガラスフィルターで濾過し、濾液をDEAE-セルロースカラムに通した。生成物を1M NaH2PO4で溶出した。製品の溶出液を、分子生物学グレードの水に対して十分に透析し(~1kDa膜)、凍結し、凍結乾燥した。得られた固体をアンモニア水に再懸濁した。
【0108】
プレ加水分解工程を伴うEDC/NHSカップリングによるペクチンの修飾のための一般的な手順(方法K~L)
出発多糖(0.5g)を50mLの水に少しずつ加え、60分間又は目に見える固形物が観察されなくなるまで撹拌した。1M水酸化ナトリウム溶液をpHが12~13になるまで加え、20分間撹拌して残留するエステルをカルボキシレートに加水分解した。この溶液を十分に撹拌しながら注意深く酸性化し、1M塩酸でpH4.5~5.5にした。その後、EDC-HCL(0.5g)とNHS(0.15g)を5mLの水に溶かした溶液を加え、混合物を周囲温度で1時間撹拌した。続いて、対応する量のアミンを最小限の量のDI水に溶かした溶液として加え、混合物を室温で22時間撹拌した。反応終了後、水性反応混合物を300mLの1:1アセトン/メタノールに希釈し、ろ過前にスラリーを15分間撹拌した。ろ過したゲル状物質をメタノール(50mL)で4回洗浄した。沈殿した修飾多糖を45℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。乾燥したペレットを乳鉢と乳棒で粉砕し、微粉末を得た。生成物から非共有結合アミンを除去するために、後述するように、微細な生成物粉末を酸洗浄した。
【0109】
粉末状のペクチン製品に、100mLの酸性洗浄液(イソプロパノール(550mL)、DI水(345mL)、濃塩酸(105mL))を加え、混合物を30分間、磁気的に撹拌した。その後、スラリーをフリットガラスフィルターでろ過し、酸性洗浄液(3x25mL)で洗浄した後、中性洗浄液(イソプロパノール(590mL)及びDI水(345mL);3x25mL)で洗浄した。得られた粉末を50℃の真空オーブンで一晩乾燥させた。
【0110】
【表1】
【0111】
NHSカップリングによる実施例の多糖剤(スペルミン修飾ペクチン)の合成
リンゴペクチン(10.0g)を1LのMilli-Q濾過水に加え、1時間撹拌した。5M NaOH(10mL)を加え、さらに20分間撹拌した後、1N HCl(30mL)を加えた(pH=4.2)。この溶液にN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC、10.08g、52.59mmol)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、3.026g、52.59mmol)を加え、RTで1時間撹拌した。スペルミン(80mL、368mmol)を加え、溶液をRTで22時間撹拌した。その後、溶液を急速に撹拌しているMeOH(2L)に注ぎ、20分間撹拌した。ミディアムフリットガラス漏斗で溶液をろ過して固形物を回収し、その後、MeOHで2回洗浄した。固形物を真空下、50℃で40時間乾燥させた。電動コーヒーグラインダーを用いて固体を微粉末にし、500mLの酸洗浄液(55%イソプロピルアルコール、34.5%水、及び10.5%濃塩酸)に懸濁し、4.5時間撹拌した。溶液をろ過し、固形物を酸洗浄液で2回追加洗浄した後、50℃で一晩真空乾燥した。固形物を750mLのDI水に懸濁し、50mLの遠心チューブを用いて4200rpmで10分間遠心分離した。上清を集めて混合した。ペレットを集め、350 mLのDI水に懸濁し、50 mLの遠心チューブを用いて4200 rpmで17時間遠心分離した。上清を最初の上清と混合した。混合した上清をすべて2ミクロンのフィルターでろ過した。ろ過した溶液を凍結乾燥すると、7.78gのスペルミン-ペクチンコンジュゲートが得られた。分析結果。計算C16H32N4O5(ガラクツロン酸モノマー+スペルミン):C, 53.3; H, 8.95; N, 15.5。ファウンドN, 7.21。
【0112】
ペクチンの酸化的開裂と続くスペルミンによる還元的アミノ化による実施例の多糖剤(スペルミン修飾ペクチン)の合成
この実施例では、酸化と続く還元的アミノ化による様々なポリアミンでの多糖ポリマーの修飾のための一般的な手順が提供される。
【0113】
(A)酸化。リンゴペクチン(2.5g)を250mLの脱イオン水に少しずつ加え、すべてが溶解するまで磁気的に攪拌した。これに過ヨウ素酸カリウム2.43gを撹拌しながら少しずつ加え、18時間撹拌を続けた。反応混合物を、8 kd MWCOの透析チューブを用いて水に対して3日かけて透析した。その後、得られた脱塩ポリマーを凍結乾燥して、酸化ペクチンをクランチなオフホワイトの固体として得た。アルデヒドの濃度は,ヒドロキシルアミン滴定によって容易に測定できる(Zhao, H.; Heindel, N. D. J. Pharm. Res. 8(3), 400-402に記載))。アルデヒド量は4.9mmol/g(ポリマーユニットあたり~1eqのアルデヒド)と決定された。
【0114】
(B)還元的アミノ化。工程Aからの酸化ペクチン(1.0g)を100mLの脱イオン水に懸濁し、スペルミン(1.32g、1.25eq)を加え、室温で18時間撹拌させた。反応物に1gのボロンハイドライドナトリウムペレットを加え、18時間撹拌した。反応混合物を、8 kd MWCOの透析チューブを用いて水に対して3日かけて透析し、その後、凍結乾燥して、200 mgの化合物2をオフホワイトのふわふわした固体として得た。
【0115】
修飾多糖の特性評価
サイズ排除クロマトグラフィー、元素分析、及び/又はIR分光法を用いて、A~Lの方法で得られた多糖の特性を調べた。
【0116】
元素分析は,Perkin Elmer 2400 CHNアナライザーを用いて行った。IRスペクトルは,化合物の微粉砕粉末をUniversal ATRサンプリングアクセサリを装備したPerkin Elmer Frontier装置のIRディテクター結晶上に置くことで記録した。実施例の修飾多糖(化合物29)及びその未修飾前駆体の代表的なIRスペクトルを図1に示す。
【0117】
表2は、修飾多糖の特性をまとめたものである。表2において、「A+」は修飾アミンの対応するアンモニウム塩を示し、「N/O」はIRアミド周波数が観測されなかったことを示す。これは、他のピークと重なったためと考えられる。
【0118】
【表2】
【0119】
高性能サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量の測定
多糖剤の相対分子量(RMw)の測定にHPSEC-ELSD(High Performance Size Exclusion Chromatography with Evaporative Light Scattering Detection)を用いた。クロマトグラフィーは,分子量校正スタンダードとしてプルランシリーズ(Sigma Aldrich)を用い、Agilent HPLCシステムで実施した。
1.3 kDa: 53168 BCBS8194V、
12 kDa: 97873 8224V、
50 kDa: 43807 BCBT5326、
110 kDa: 47053 R4555V、
400 kDa: 18579 BCBT5321、及び
800 kDa: 18789 BCBS8188。
【0120】
プルランシリーズは、水系サイズ排除クロマトグラフィーの校正用スタンダードとして知られている。プルランは、マルトトリオースの単位がアルファ-1,6結合で結合した直鎖状の多糖である。プルランは、多糖のサイズ排除クロマトグラフィーの分子量スタンダードとして典型的に使用される。
【0121】
Agilent HPLCのサイズ排除カラム(Agilent PL アクアゲルMIXED-Hカラム、8 μm 300 x 7.5 mm)を使用した。スタンダード溶液及びサンプル溶液は,2 mg/mlで0.05% NaN3溶液に1分間ボルテックスし、溶解するまで室温で静置して調整した。得られた溶液は,HPLC分析の前に,0.45umのナイロンシリンジフィルターでろ過した。10mMアンモニウムビカルボネート(pH7)の移動相を1mL/minの流速で使用し、最適化されたELSD条件(ネブライザー温度70℃、エバポレーター温度80℃、及びガス流量1.0 SLM)で、スタンダード及び分析サンプルを30分以内に溶出させた。一般的なスタンダードピークの積分とは異なり、サンプルピークはピークの幅が広いため、「エリアサムスライス」と呼ばれる積分イベントで積分される。
【0122】
【0123】
実施例2:遠心によるRNA及びDNAの回収
この実験は、多糖剤が、遠心分離を用いた沈殿によるDNA及びRNAの精製を促進できることを示す。一般的に使用されているエタノール沈殿手順(Sambrook J, Russell D (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edn. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press)と比較して、本発明の方法は、核酸(NA)沈殿手順を大幅に短縮し、室温で実施することを可能にする。このことは、サンプル処理を、カートリッジベースのNA分析のような自動化されたNA分析に適応させるのに有利である。
【0124】
核酸(ゲノムDNA, Promega, Madison, WI Cat#G3041, 202 ng/uL)及びRNAコントロール(Life Technologies, Carlsbad, CA Cat# 4307281, 50 ng/uL)を所望の5x最終濃度(例えば、最終1μg/mLに対して5μg/mL)で1x TEバッファーに溶解した。多糖剤を異なる濃度で適切なバッファー(米国特許出願20160257998に記載されているように調製したCT/NGバッファー、及び米国特許出願20170137871に記載されているように調製したウイルス及びFFPE結合バッファー)に溶解した。ここで、各試験サンプル中に1、5、20μgの多糖剤が提供される。多糖剤を添加していないバッファーをネガティブコントロールとして使用し、70%EtOHを添加した0.3M酢酸ナトリウムを100%沈殿コントロールとして使用した(Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N.Y.の手順を使用)。標準的なエッペンドルフチューブに入れた核酸サンプル溶液100uLに、多糖剤溶液200uLとEtOH200uLを加えた。サンプルを5秒間ボルテックスして混合した後、12,000gで25分間遠心分離し、沈殿したDNAをペレット化した。ペレットを壊さないように注意しながら上清をデカントした。ペレットを冷やした70%EtOH溶液で洗浄し、12,000gで10分間遠心分離し、上清をデカントし、SpeedVacでやや高めの温度(35℃)で乾燥させた。各チューブに500uLのTEバッファーを加え、最大速度で30秒間ボルテックスしてペレットを再懸濁させた。定量的蛍光ピコグリーンDNA色素(Thermo)又は定量的蛍光リボグリーンRNA色素(Thermo)を用いて核酸を定量した。核酸の回収率は試験サンプルを100%コントロールと比較して算出した。その結果を表3にまとめている。
【0125】
【表3】
【0126】
実施例3:フィルター装置上での沈殿によるRNA及びDNAの回収
この実験は、多糖剤が、膜やガラスフィルターなどの濾過装置上での沈殿によるDNA及びRNAの精製を促進できることを示す。
【0127】
核酸(ゲノムDNA, Promega, Madison, WI, Cat #G3041, 202ng/uL)及びRNAコントロール(Life Technologies, Carlsbad, CA Cat #4307281, 50ng/uL)を所望の5x最終濃度(例えば、最終1μg/mlに対して5μg/ml)で1x TEバッファーに溶解した。多糖剤を異なる濃度で適切なバッファー(実施例2に記載のCT/NG、ウイルス及びFFPE結合バッファー)に溶解した。ここで、各試験サンプル中に1、5、20μgの多糖剤が提供される。薬剤を添加していないバッファーをネガティブコントロールとして使用し、70%EtOHを添加した0.3M酢酸ナトリウムを100%沈殿コントロールとして使用した(Sambrookらの手順を使用)。標準的なエッペンドルフチューブに入れた核酸サンプル溶液100uLに多糖剤溶液200uLとEtOH200uLを加えた。サンプルを5秒間ボルテックスして混合した。得られたライセートを、シリンジフィルター装置を用いて0.8umのPESフィルターに通した。余分な溶液をフィルターに空気を通し除去した。市販のトリス溶出バッファー1mLを用いて、沈殿した物質を42℃で25分間かけてフィルターから溶出した。定量的蛍光ピコグリーンDNA色素又は定量的蛍光リボグリーンRNA色素を用いて核酸を定量した。核酸の回収率は試験サンプルを100%コントロールと比較して算出した。その結果を表4にまとめている。
【0128】
【表4】
【0129】
実施例4:各種核酸の単離
実施例4A.ヒト血漿からのウイルス及びファージ核酸の単離
模擬臨床検体の調製
模擬臨床検体として、プール血液から調製した血漿又はベースマトリクス、及び不活化ウイルスを用いた。EDTA保存全プール血液(Bioreclamation, Westbury, NY)から調製したヒト血漿サンプル(1mL)又はベースマトリクス(複数の個体からプールされたもの、Seracare Inc., Milford, MA)を約1mgのProteinase K(Roche Inc., Basel, Switzerland)で処理した。
【0130】
ウイルス又はファージ核酸の単離を実証する実験では、核酸を単離する前に、既知の力価の不活化HIV、ウイルス又はMS2ファージ(すべてZeptometrix Inc., Buffalo, NYから入手)を、血漿又はベースマトリックスに直接スパイクした。HIVを血漿又はベースマトリクスに10~1000 IU/mLの濃度で投入した。MS2ファージを1e6 CFU/mLまで血漿又はベースマトリクスに投入した。核酸を本明細書で開示されている方法に従って、多糖剤の存在下で模擬臨床サンプルから単離した。コントロールサンプルは多糖剤を添加せずに処理した。単離した核酸をPCR又はRT PCRで増幅した。デルタCt値は、対応するコントロール(多糖剤を添加せずに処理したサンプル)と多糖剤を添加して処理したサンプルのCt値の差として計算される。
【0131】
PCR及びRT-PCRアッセイによる単離された核酸の検出
単離後、ウイルス核酸を市販の方法、例えば、市販のキット(例えば、AmpliSens, Interlabservice, Russia)を用いて検出した。他の任意の検出方法は、当業者が選択し、メーカー説明書に従って使用できる。表5及び6は、血漿からのファージRNA抽出(表5)及び血漿からのウイルスRNA(HIV)抽出(表6)のための各種多糖剤の試験結果を示す。多糖を添加した場合と添加しない場合で回収した核酸を、上述の各PCR及びRT-PCRアッセイで検査した。デルタCt値は、多糖剤なしで得られたCt値から多糖剤を添加して得られたCt値を差し引いた最小差を示す。
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
実施例4B:血漿又はベースマトリクスからのHBVウイルスの抽出
HBV DNA抽出のために、ヒトベースマトリクス1mLあたり~100コピーの不活化ウイルス粒子を2mg/mlプロテイナーゼK(Roche Inc., Basel, Switzerland)で処理し、室温で5分間インキュベートした。その後、サンプルを1又は2容量の溶解バッファーで溶解し、ボルテックスをかけ、異なる濃度の実施例の多糖剤を含むアリコートに分割した。CT/NG溶解バッファーは、米国特許出願20160257998に記載されているように調製し、ウイルス及びFFPE溶解バッファーは、米国特許出願20170137871に記載されているように調製した。次に、1又は2容量の結合試薬を加えてDNAを沈殿させ、ボルテックスし、V-Eカラム(Zymo Research, Irvine, CA)に移し、ベンダーの推奨に従ってスピンさせた。その後、カラムを70%エタノールで1回、HBVリンス試薬で2回洗浄し、膜が乾燥するまでベンダーの推奨に従ってスピンさせた。リンス試薬は、KClから構成され、分子量約200のポリエチレングリコールも含んでいた。理想的には、リンスに使用されるポリエチレングリコールは、200~8000Daの分子量範囲を有し得る。結合剤及び/又はリンス組成物の選択は、当業者であればサンプルの種類に応じて最適化できる。その後、フィルターを新しい遠心分離管に移し、最大速度でスピンさせて膜を完全に乾燥させた。その後、各フィルターを新しいコレクションチューブに移した。その後、フィルターを適切な低塩溶出バッファーと一緒に室温で1~5分間インキュベートした後、テーブルトップ型遠心分離機で最高速度でスピンさせ、精製された核酸を回収した。
【0135】
PCRアッセイでは、以下のオリゴヌクレオチドを200nMの濃度で反応に用いた。
フォワードプライマー:GGCCATCAGCGCATGC(配列番号1)
リバースプライマー:CGGCTGCGAGCAAAACA(配列番号2)
プローブ:FAM色素(5')とBHQクエンチャー(3')で修飾されたCCTCTGCCGATCCATACTGCGGAACTC(配列番号3)
【0136】
本文中で特に明記しない限り、PCR反応混合物は20uL容量で行った。バッファーの組成は、ベンダーが記載した条件に基づいて選択するか、又は当業者に馴染みのある方法に適合させた。リアルタイムPCRは、PCR Max Eco 48(Cole Parmer, Vernon Hills, IL)又はBioRad CFX Maestro(BioRad, Hercules, CA)のいずれかで行った。反応混合物を95℃で60秒インキュベートした後、95℃で10秒、60℃で50秒の50サイクルを行った。その結果を以下の表7にまとめている。
【0137】
【表7】
【0138】
実施例4C:血漿又はベースマトリクスからのHIVウイルスの抽出
不活化HIVウイルスを、Qiagen viral minElute(Qiagen、Hilden、Germany)カラムキットを用いて、メーカープロトコルに従って抽出した。
【0139】
PCRアッセイでは,以下のオリゴヌクレオチド(200nM)を用いた。
フォワードプライマー:AATCCCCAAAGTCAAGGAGT(配列番号4)
リバースプライマー:ACTGTACCCCCCAATCC(配列番号5)
プローブ:FAM色素(5')とBHQクエンチャー(3')で修飾したCATCTTAAGACAGCAGTACAAATGGCAGT(配列番号6)
【0140】
特に明記しない限り、PCR反応混合物は20uL容量で行った。バッファーの組成は、ベンダーが記載した条件に基づいて選択するか、当業者に馴染みのある方法に適合させた。リアルタイムPCRは、PCR Max Eco 48で行った。反応混合物を88℃で120秒、及び60℃で300秒インキュベートした後、90℃で20秒、70℃で30秒、及び60℃で10秒の1サイクル、さらに90℃で10秒の8サイクルのステップダウンサイクル、69℃で1℃を8サイクルでステップダウンして62℃で30秒、及び60℃で10秒、その後、90℃で10秒、60℃で40秒の40サイクルを行った。その結果を以下の表8にまとめている。
【0141】
【表8】
【0142】
実施例4D:細菌及びヒト細胞からの核酸の抽出
保存されたC. trachomatis(CT)、N. gonorrhea(NG)、及びヒトの細胞を10X Tris EDTAバッファー(TE)の10X溶液として調製した。その後、サンプル中の核酸を簡便に抽出し、リアルタイムPCRアッセイを用いて測定できるように、サンプルを1X TEバッファーで希釈して1Xサンプルとした。その後、1又は2容量の溶解バッファーで細胞を溶解し、ボルテックスし、室温で5分間インキュベートした。CT/NG溶解バッファーは、米国特許出願20160257998に記載されているように調製し、ウイルス及びFFPE溶解バッファーは、米国特許出願20170137871に記載されているように調製した。その後、混合物を異なる濃度のCP剤を含むサンプルに分割し、56℃で5分間撹拌しながらインキュベートした。DNAを1又は2容量の指示された結合試薬で沈殿させ、ボルテックスし、V-Eカラム(Zymo Research, Irvine, CA)に移し、ベンダーの推奨に従ってスピンした。その後、カラムを70%エタノールで1回、リンス試薬で2回洗浄し、業者の推奨する方法で膜が乾くまでスピンした。リンス試薬は上記の通りである。その後、フィルターを新しい遠心分離管に移し、最大速度でスピンさせて膜を完全に乾燥させた。その後、フィルターを新しいコレクションチューブに移し、適切な低塩溶出バッファーと室温で1~5分間インキュベートした後、テーブルトップ遠心機で最大速度でスピンし、精製された核酸を回収した。
【0143】
CT/NG/hgDNAを検出するPCRアッセイは、以下のオリゴヌクレオチドを使用した(200nM)。
CTフォワードプライマー:GAAACACCGCCCG(配列番号7)
CTリバースプライマー:TTTGACCGGTTAAAAAAAGAT(配列番号8)
CTプローブ:FAM色素(5')とBHQクエンチャー(3')で標識されたCCGCCCTTCAACATCAGTGAA(配列番号9)
NGフォワードプライマー:ACGCATGCTGATAGCGTCA(配列番号10)
NGリベラルプライマー:TTGAGTTCTGCTTCCTCCTTG(配列番号11)
NGプローブ:FAM色素(5')とBHQクエンチャー(3')で標識されたCCGGAGATCCTTGCGATCCTTGCACC(配列番号12)
hgDNAフォワードプライマー:GCATTCCTGAAGCTGACAGCA(配列番号13)
hgDNAリバースプライマー:CTCCAGGCCAGAAAGAGAGAGTAG(配列番号14
hgDNAプローブ:FAM色素(5')とBHQクエンチャー(3')で標識したCCGTGGCCTTAGCTGTGCTCGC(配列番号15)
【0144】
本文中で特に明記しない限り、PCR反応混合物は20uL容量で行った。バッファーの組成は、ベンダーが記載した条件に基づいて選択するか、当業者に馴染みのある方法に適合させた。リアルタイムPCRは、PCR Max Eco 48又はBioRad CFX Maestroのいずれかで行った。反応混合物を95℃で120秒間インキュベートし、続いて95℃で10秒間、及び60℃で50秒間の50サイクルを行った。その結果を以下の表9~11にまとめている。
【0145】
【表9】
【0146】
【表10】
【0147】
【表11】
【0148】
実施例4E:カラム(Zymo Research)を用いた2mLの血漿からの断片化MTB DNAの抽出
断片化MTB DNA(fMTB DNA 200-400bp)を、0.1mLの2mg/mlプロテイナーゼK(Roche Inc.、Basel, Switzerland)で処理した2mLの血漿サンプル(BioIVT)に加え、室温で5分間インキュベートした。その後、サンプルを3mLのウイルス溶解バッファーで溶解し、ボルテックスし、0.005mLの化合物33の2.5%溶液を加えた。CT/NG、ウイルス及びFFPEの溶解バッファーを上記のように調製した。その後、3mLのエタノールを加えてDNAを沈殿させ、ボルテックスし、Zymo Research V-Eカラムに移し、ベンダーの推奨に従ってスピンした。その後、1mLのカラムを70%エタノールで1回、1mLのリンス試薬で2回洗浄し、ベンダーの推奨する方法で膜が乾燥するまでスピンした。リンス試薬はKClから構成され、分子量訳200のポリエチレングリコールも含まれていた。次に、フィルターを新しい遠心チューブに移し、最大速度でスピンさせて膜を完全に乾燥させた後、新しいコレクションチューブに移し、0.1mLの適切な低塩溶出バッファーと一緒に室温で1~5分間インキュベートした後、テーブルトップ遠心機で最大速度でスピンさせて精製された核酸を回収した。PCRはChakravorty et al. mBio, 2017 Volume 8 Issue 4 e00812-17のXpert MTB/RIFウルトラアッセイに記載されている通りに実施した。
【0149】
【表12】
【0150】
実施例4F:Zymo Researchカラムを用いた血漿又は尿サンプルからの断片化MTB DNAの抽出
断片化MTB DNA(fMTB DNA 200-400bp)を0.25mLの2mg/mlプロテイナーゼK(Roche)で処理した血漿又は尿サンプル(BioIVT)に加え、室温で5分間インキュベートした。その後,サンプルを7.5mLのウイルス溶解バッファーで溶解し、ボルテックスし、0.005 mLの化合物33の2.5%溶液を加えた。CT/NG、ウイルス及びFFPEの溶解バッファーを上記のように調製した。その後、7.5mLのエタノールを加えてDNAを沈殿させ、ボルテックスし、Zymo Research V-Eカラムに移し、ベンダーの推奨する方法でスピンした。その後、カラムを1mLの70%エタノールで1回、1mLのHBVリンス試薬で2回洗浄し、膜が乾燥するまで業者の推奨する方法でスピンした。リンス試薬は、KClから構成され、分子量200のポリエチレングリコールも含んでいた。その後,フィルターを新しい遠心分離管に移し,最大速度でスピンさせて膜を完全に乾燥させた。その後、フィルターを新しいコレクションチューブに移し、0.1mLの適切な低塩溶出バッファーと一緒に室温で1~5分間インキュベートした後、テーブルトップ型遠心分離機で最高速度でスピンさせ、精製された核酸を回収した。この実験のコントロールは、100%の抽出及び回収効率を示す比較を行うために、同量のfMTB DNAを別のRT-PCR反応に直接スパイクスパイクすることによって調製した。PCRはChakravorty et al. mBio, 2017 Volume 8 Issue 4 e00812-17のXpert MTB/RIFウルトラアッセイに記載されている通りに実施した。その結果を以下の表13及び14に示す。
【0151】
【表13】
【0152】
【表14】
【0153】
実施例4G:遠心分離機を用いた尿又は血漿サンプルからの断片化MTB DNAの抽出
断片化MTB DNA(fMTB DNA 200-400bp)が添加された血漿5mLを0.25mLのProteinase K溶液(~2mg/ml)と混合し、短時間インキュベートした。次に、5mLのウイルス溶解バッファーを、5mLの飽和硫酸アンモニウムとともに加えた。その後、混合物をテーブルトップ型遠心分離機で高速で10分間遠心分離した。上清を回収し、そこに10%(w/v)グリコーゲン溶液0.01mL、化合物33溶液(CP15 1%)0.005mL、ウイルス溶解バッファー7.5mL、及びエタノール15mLを加えた。その後、混合液をテーブルトップ型遠心分離機で20分間高速でスピンさせた。上清を捨て、ペレットを70%エタノールで洗い、テーブルトップ型遠心機で高速で5分間スピンさせた。洗浄液を捨てた後、ペレットを短時間乾燥させ、0.1mLの低塩溶出バッファーを加えた。インキュベーション後、溶出バッファーを回収し、RT-PCRでさらに分析した。溶出時間を60分まで長くすると、収率が向上することがわかった。この実験のコントロールは、100%の抽出及び回収効率を示す比較を行うために、同量のfMTB DNAを別のRT-PCR反応に直接スパイクすることによって調製した。PCRはChakravorty et al. mBio, 2017 Volume 8 Issue 4 e00812-17のXpert MTB/RIFウルトラアッセイに記載されている通りに実施した。結果を以下の表15に示す。
【0154】
【表15】
【0155】
実施例5:沈殿によるDNA回収における多糖剤濃度の影響
この実験は、多糖剤が濃度依存的に核酸の単離を促進することを示している。
【0156】
ろ過によるヒトゲノムDNAの沈殿は、上述のようにして行った。核酸(ゲノムDNA, Promega, Madison, WI Cat#G3041, 202 ng/uL)及びRNAコントロール(Life Technologies, Carlsbad, CA Cat# 4307281, 50 ng/uL)を所望の5x最終濃度(例えば、最終1μg/mlに対して5μg/ml)で1x TEバッファーに溶解した。多糖剤を各試験サンプル中に異なる濃度の多糖剤を有するように適切なバッファー(例えば、上述のCT/NGバッファー)に溶解した。その結果を表16にまとめている。
【0157】
【表16】
【0158】
実施例6:血漿からのHBVウイルスDNAの磁気ビーズベース抽出
この実施例では、多糖剤が磁気ビーズ上でウイルスDNAの沈殿を促進することを示す。ビーズから溶出した沈殿DNAは、薬剤を除去するための追加工程なしにPCRのような増幅法で検出するのに適した品質である。
【0159】
EDTA保存全血(Bioreclamation, Westbury, NY)から調製したヒト血漿サンプル(0.25mL)にHBVウイルスをスパイクし、メーカープロトコルに従ってDynabead SILANEウイルスNAキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて抽出した。臨床検体から抽出したDNAは、メーカー説明書に従って、AmpliSenS HBV FRTモニターキットとして市販されているRT-PCR技術を用いて増幅した。多糖剤は、調製物あたり20μgの濃度で使用した。以下のものを組み合わせて各サンプルを調製した。1440uLヒト血漿、160mL HBV(50kU/mL)、400uL Proteinase K 6(Roche Inc.、Basel、Switzerland)。以下の薬剤を使用した。(a)溶解バッファー中の2x非多糖剤(コントロール)、(b)溶解バッファー中の2x化合物21、(c)溶解バッファー中の2x化合物32。
【0160】
2mLの遠心チューブに入れた250uLのサンプルに300uLの溶解/結合バッファー(ウイルスNA)を加えた。試験条件に応じて、溶解バッファーを加えた各サンプルの1.4uLを、化合物21又は化合物32のいずれかの溶液1.4uLに置き換えた。混合液を室温で5分間インキュベートした後、150 uLのイソプロパノールを各チューブに加えた。各チューブに、再懸濁したばかりのDynabeads(Invitrogen, Carlsbad, CA)を50uL加え、内容物を混合し、室温で10分間インキュベートした(低速で混合しながら)。チューブをマグネットスタンドに2分間置き、ピペットで上清を除去した。ビーズを850uLのキットの洗浄バッファー1に再懸濁し、チューブをマグネットスタンドに1分間置いて沈殿させた。この洗浄手順を繰り返し、ビーズを450uLのキットの洗浄バッファー2に再懸濁した。コンタミネーションを減らすために、サンプルを新しい遠心チューブに移し、2回目の洗浄手順を繰り返した。ビーズを10~15分間乾燥させ、各チューブに100uLのキットの溶出バッファー(viral NA)を加えた。70℃で3分間インキュベートした後、ビーズを再懸濁し、サンプルをマグネットスタンドに2分間戻して沈殿させた。抽出した核酸を含む上清を新しい試験管に移し、以降のPCRに使用するか、-80℃で保存した。
【0161】
【表17】
この実験は、本発明の方法を用いて単離した核酸が、単離した核酸から多糖剤を除去するための追加の工程なしに、PCRによって増幅可能であることを示している。
【0162】
実施例7:磁気ビーズと多糖剤を用いた大容量の水、尿、血漿からの核酸の抽出
この実験は、本明細書で開示されている核酸単離の方法が、より大容量(5mL以上)のサンプルから核酸を単離するのに適していることを示している。
【0163】
A. 血漿からの核酸の回収
EDTA保存全血(Bioreclamation, Westbury, NY)から調製した10mLのヒト血漿サンプルを約10mgのProteinase K(Roche Inc.)で処理し、好ましくは約1.8Mの最終濃度の同量の溶解試薬(3~5Mのグアニジニウムチオシアネート、0.1~1% w/v Tween(R) 20を含む)と混合し、好ましくは7~8の間のpHに調整した。この混合物に、70~100%のポリエチレンオキシド200又は同量のエタノールを最終濃度が約30~40%になるように加えた。このサンプルをシェーカーで10分間混合した。混合物に磁気ビーズ(Agencourt AMPure XP beads, Beckman Coulter, Brea, CA、キットの説明書に記載されている通りに使用)と多糖剤(化合物29、50μg/mlの血漿)を添加し、一方でコントロール実験では磁気ビーズのみを添加した。サンプルを磁気スタンドに10分間置いた。磁気ビーズを使用しない場合は、サンプルを4000gで10分間遠心分離した。
【0164】
1. 洗浄及び溶出の手順
30~40mLの容量の全混合物から得られた遠心分離したペレット状の物質又は磁気ビーズ(1mL)、及びライセート中に放出された核酸を、好ましくは0.4~1umの間の特定のポアサイズのトラックエッチングされたフィルターに結合させる。続いて、1~2Mのグアニジニウムチオシアネート及び60~100%のポリエチレンオキシド200又はエタノールなどの代替添加剤の混合物で繊維又はフィルターを洗浄する。その後、ポリエチレンオキサイド200を含むバッファーで繊維やフィルターを洗浄し、総DNAを約80uLのTris/EDTAバッファー(20mM Tris)に溶出させる。
【0165】
2. 臨床検体から抽出したウイルス及びヒト核酸のPCR及びRT-PCRアッセイ
抽出したヒトゲノムDNAを上述の方法でPCRで増幅した。また、抽出したDNAの検出には、以下のヒト遺伝子に対するPCRプライマー及びプローブを用いた。GUS B、SDH A、TUB B、RPL P0。PCRの酵素は反応あたり10UのAptaTaq DNAポリメラーゼ(Roche Inc., Basel, Switzerland)を使用した。PCRは95℃で10秒の変性工程と64℃で40秒のアニーリング/エクステンションサイクルを45サイクル行った。磁気ビーズに実施例の多糖剤を添加した場合のDNAの優れた回収率を示す結果が表11に示されており、サンプルに多糖剤を添加したときにCt値の顕著な低下が見られたことが示されている。
【0166】
B. 尿からの核酸の回収
健康なボランティアからインフォームドコンセントを得て入手したヒトの尿10mLサンプルを、同量のグアニジニウムチオシアネート溶解試薬(3~5Mのグアニジニウムチオシアネート、0.1~1% w/v Tween(R) 20を含む)と混合した。好ましくは約1.8Mの最終濃度で、適切なpH、好ましくは7~8に調整した。サンプルを処理し、大容量の血漿からの核酸の回収に関して上述したようにPCRを行うことで核酸の検出を行った。代表的な結果が表11に示されており、実施例の多糖剤をサンプルに添加したときにCt値の顕著な減少が見られたことが示されている。
【0167】
この結果は、実施例の多糖剤を添加することで、大容量の尿からの核酸の回収が促進されることを示している。
【0168】
C. 水からの核酸の回収
10mLの水サンプルにプロメガ社(Madison, WI)から入手した290ngのヒトゲノムDNAをスパイクし、同量のグアニジニウムチオシアネート溶解試薬(3~5Mのグアニジニウムチオシアネート、0.1~1% w/v Tween(R)20を含む)と混合した。好ましくは約1.8Mの最終濃度で、pHを7~8に調整した。この混合物に、70-100%のポリエチレンオキシド200溶液又は同量のエタノールを加えて、有機試薬の最終濃度を約30~40にした。サンプルを処理し、上述のようにしてPCRによる核酸の検出を行った。代表的な結果を表18に示す。実施例の多糖剤をサンプルに添加したときにCt値の顕著な減少が見られたことを示している。この結果は、多糖剤を添加することで、大容量の水からの核酸の回収が促進されることを示している。
【0169】
【表18】
【0170】
別の実験では、磁気ビーズは使用せず、多糖剤のみを混合物に加えたことを除いて、より大容量の尿(5~10mL)を用いて同じ手順で行った。本発明者らは、磁気ビーズを用いた研究から得られた知見を発展させて、多糖剤自体が、例えば、凝集によって、より大容量のサンプルから無細胞核酸の収集と濃縮を促進し、凝集した核酸は遠心分離によってさらに濃縮されることを発見した。核酸凝集体の抽出後、回収されたDNAの濃度は、キットメーカーが規定したプロトコルを用いて磁気ビーズで回収されたものと同等であることがわかった。
【0171】
実施例8:ポリアミン-アミド化ペクチンを用いた遠心分離によるhgDNAの回収
この実施例は、ポリアミン-多糖剤を用いて、遠心分離により溶液から核酸を分離できることを示している。抽出された核酸は放出され、PCRで検出される。抽出されたDNAは、薬剤を除去するための追加の工程なしにPCRのような増幅法で検出するのに適した品質である。化合物80(スペルミン修飾ペクチン)を水に溶解し、1M NaOHでpHを調整して、pH10.5の1%溶液を得た。核酸(ゲノムDNA, Promega, Madison, WI、Cat #G3041, 202ng/uL)を脱イオン水に溶解した(1μg/500μl)。標準的なエッペンドルフチューブ(2mL)内の核酸サンプル溶液500ulに、対応する量の1%ポリマー溶液を加えて、10ugのポリマースパイクしたhgDNA-ポリマー溶液を得た。次に,等量のエタノール(500μl)とグアニジンチオシアネート(4.5M、500μl)をサンプルに加えた。コントロールとして,多糖剤溶液を加えないサンプルも用意した。
【0172】
サンプルを5秒間ボルテックスして混合した後、20,000rpmで25分間、5℃で遠心分離し、沈殿DNAをペレット化した。ペレットを壊さないように慎重に上清をデカントした。ペレットを冷やした70%EtOH溶液で洗浄し、20,000rpmで10分間遠心分離し、上清をデカントした後、ペレットをSpeedVacで40℃で乾燥させた。0.04% w/v i-カラギーナンを含む15mM KOHを20ul加え、42℃で1250rpmのサーモミキサーに5分間かけた後、短時間の遠心分離で核酸を溶出させた。hgDNAは、Qiagen Inc.の標準的なバッファーとPhoenix酵素を用いて、上記のようにPCRによって定量した。PCRマスターミックスに、溶出バッファーの中和を補助するための追加のトリスバッファー(20mM pH8.6)を加えた。PCRは,95℃で30秒の初期変性を行った後、45サイクル(93℃で5秒の変性、及び69℃で30秒のアニーリング/エクステンション)を実施した。
【0173】
PCRの結果を表12にまとめており、これは実施例の核酸単離の方法を用いて水から核酸を回収したことを示す。スペルミン修飾ペクチン剤を加えた場合と加えない場合の、1μgのhgDNAをスパイクした1:1:1の水/エタノール/グアニジンチオシアネート4.5M遠心分離から得られたhgDNAのPCR増幅によるCt値を示す。DNAスパイクコントロール(100%コントロール)は、hgDNAを含むサンプルと同様の方法で処理したhgDNAを含まないサンプルであり、PCRの前に1μgのhgDNAをスパイクした。その結果を表19にまとめている。
【0174】
【表19】
【0175】
実施例9:水からのポリアミンアミド化ペクチンを用いた遠心分離によるhgDNAの回収
この実施例では、ポリアミン修飾多糖剤を用いて、他の溶媒や塩などの他の添加物を必要とせずに、単純な水溶液から核酸を抽出できることを示す。その後、抽出された核酸は放出され、PCRで検出される。抽出されたDNAは、薬剤を除去するための追加工程なしにPCRのような増幅法で検出するのに適した品質である。化合物80(スペルミン修飾ペクチン)を水に溶かして1%溶液を得た。
【0176】
核酸(ゲノムDNA, Promega, Madison, WI、Cat#G3041, 202 ng/uL)を脱イオン水に溶解した(1μg/1 mL)。標準的な1.5 mLの遠心チューブ内の核酸サンプル溶液1 mLに、対応する量の1%ポリマー溶液を加えて、10、50、100、及び200 μgのポリマースパイクしたhgDNA-ポリマー溶液を得た。このサンプルには,他の溶媒や溶液は加えなかった。コントロールとして,ポリマー溶液を添加しないサンプルも調製した。
【0177】
サンプルを5秒間ボルテックスして混合した後、20,000rpmで25℃で25分間遠心分離し、沈殿DNAをペレット化した。ペレットを壊さないように慎重に上清をデカントした。ペレットを冷やした70%EtOH溶液(2mL)で洗浄し、25,000rpmで25分間遠心分離し、上清をデカントした後、ペレットをSpeedVacで40℃で乾燥させた。0.04% w/vのi-カラギーナンを含む15mM KOHを25ul加え、42℃で1250rpmのサーモミキサーに5分間かけた後、短時間の遠心分離で核酸を溶出させた。hgDNAを100%コントロールと比較して上述のようにPCRで定量した。その結果を表20に示す。ポリアミン-アミド化多糖は、ポリマーなしのコントロールと比較して、水性サンプルからの回収DNAの収量を有意に増加させた。また、ポリアミン修飾ペクチン(化合物80)がジアミン修飾ペクチン(化合物29)に比べて抽出効率が有意に高いことを示すために、化合物29も配合した。DNAスパイクコントロール(100%コントロール)は、hgDNAを含むサンプルと同様の方法で処理したhgDNAを含まないサンプルであり、PCRの前に1μgのhgDNAをスパイクした。その結果を表20にまとめている。
【0178】
【表20】
【0179】
ジアミンでアミド化された実施例の多糖試薬、例えば、ポリアミン修飾ペクチンを使用する際に、溶出バッファー中に負に帯電したポリマー(即ちカラギーナンなどのポリアニオン)を有することの重要性を実証するために、カラギーナンを用いた場合と用いない場合とで、PCRサンプルを上記のように調製した。10、50、100、200μgの化合物80(水中1%溶液として使用)を、0.04%のカラギーナン及び1μgのhgDNAを含む15mMKOHの20μLアリコートに加えた。このモック溶出バッファーに、80ulのPCRマスターミックス(実施例7及び8に記載の調製物)を加えた。表21は、スペルミン修飾ペクチン(化合物80)で処理したペレットから回収したhgDNAのPCRにおけるカラギーナンの効果を示す。増幅なしはCt=45と報告されている。溶出バッファーにカラギーナンを加えないと増幅は検出されない。
【0180】
【表21】
【0181】
例示的な実施形態を図示及び説明してきたが、本発明の意図及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を加えることができることが理解されるであろう。
【配列表】
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