(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】生検装置、キット部品、装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A61B10/02 110H
(21)【出願番号】P 2021524300
(86)(22)【出願日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2019079896
(87)【国際公開番号】W WO2020089422
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521189444
【氏名又は名称】マイクロカーディックス アーベー
【氏名又は名称原語表記】MICROCARDIX AB
【住所又は居所原語表記】c/o Rikard Grankvist,Hamngatan 18D,172 66 Sundbyberg,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ホルミン スタファン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンソン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】グランクヴィスト リカルド
(72)【発明者】
【氏名】サンデル ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】キレフ アーヴィン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3001522(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0163418(US,A1)
【文献】特開2016-032633(JP,A)
【文献】国際公開第01/015609(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02-10/06
A61B 17/32-17/326
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生検装置であって、
第1の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する細長い可撓性ロッド部材と、
第2の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する先端部材であって、前記先端部材が、前記細長い部材の前記遠位端において、もしくは前記遠位端に向かって位置付けられ、および前記先端部材の前記長手方向軸が前記細長い部材の前記長手方向軸に対して角度オフセットされるように、位置決めされるかまたは位置決め可能である、先端部材と、を備え、
前記先端部材の前記遠位端が、被験者の組織を貫通するように構成され、前記先端部材の前記近位端が、被験者の組織を切断するための切断部分を備え、
前記先端部材及び前記ロッド部材は、前記先端部材が前記被験者の前記組織を貫通するとき、前記先端部材の前記長手方向軸が、既に所望の角度で前記ロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットしているように、互いに強固に固定される、生検装置。
【請求項2】
前記先端部材の前記長手方向軸が、前記細長い部材の前記長手方向軸に対して、1°~80°の角度でオフセットされるように、位置決めされるかまたは位置決め可能である、請求項1に記載の生検装置。
【請求項3】
前記先端部材の前記切断部分が、尖端ブレードを備え、前記ブレードの尖端部が、前記先端部材の前記長手方向軸の近位方向に実質的に延びている、請求項1または請求項2に記載の生検装置。
【請求項4】
前記先端部材の前記切断部分が、2つの尖端ブレードを備え、前記ブレードの尖端部が、前記先端部材の前記長手方向軸の近位方向に延びている、請求項1~3のいずれか一項に記載の生検装置。
【請求項5】
前記ブレードが、前記先端部材の前記長手方向軸の前記近位方向において互いに平行に延びている、請求項4に記載の生検装置。
【請求項6】
前記ブレードが、互いに面している単一ブレードであり、前記ブレードが、前記ブレード間の前記切断部分内の空隙を画定するように互いに離間配置されている、請求項5に記載の生検装置。
【請求項7】
前記ロッド部材が、その遠位端に位置付けられた谷部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の生検装置。
【請求項8】
前記ロッド部材が、その遠位端に位置付けられた谷部を備え、
前記ロッド部材の前記谷部が、前記先端部材の前記切断部分および/または前記切断部分内の前記空隙の反対側に位置決めされ、およびこれらに面している、請求項6に記載の生検装置。
【請求項9】
前記ロッド部材が、シース部材の管腔内に摺動可能および回転可能に配設され、前記シースが、近位端と遠位端とを備え、前記ロッド部材が、前記シース部材の前記遠位端から延びている、請求項1~8のいずれか一項に記載の生検装置。
【請求項10】
前記シース部材が、アンビルを備え、前記シース部材が使用中の前記先端部材の前記切断部分とのブレードおよびアンビル関係を形成できるようにする、請求項9に記載の生検装置。
【請求項11】
前記アンビルが、前記シース部材の前記遠位端における前記管腔の少なくとも一部又は縁部全体の周りに延びている、請求項10に記載の生検装置。
【請求項12】
前記シース部材が、前記遠位端の近位に位置付けられた侵入深さ制限部材として機能するカラーを備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の生検装置。
【請求項13】
前記先端部材の前記遠位端が、被験者の前記組織を貫通するために前記先端部材の前記長手方向軸に対して鋭角に面取りされた先端部の形態である、請求項1~12のいずれか一項に記載の生検装置。
【請求項14】
前記カラーが、金属、好ましくは金、白金、または他の放射線不透過性金属からなる、請求項12に記載の生検装置。
【請求項15】
前記先端部材、ロッド部材、および/またはシース部材のうちの少なくとも1つが、形状記憶合金、好ましくはニチノールからなる、請求項14に記載の生検装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の生検装置を、単回使用のための滅菌された、事前包装されたキット部品の形態で備える、キット部品。
【請求項17】
前記キットが、マイクロカテーテルおよび/またはガイドカテーテルをさらに備え、前記マイクロカテーテルおよび/またはガイドカテーテルが、前記生検装置と同じパック内または別個のパック内にあり得る、請求項16に記載のキット部品。
【請求項18】
生検装置の製造方法であって、
第1の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する細長い可撓性ロッド部材を作成し、
第2の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する先端部材を作成し、
前記先端部材を、前記ロッド部材の前記遠位端において、もしくは前記遠位端に向かって位置付け、および、前記先端部材の前記長手方向軸が前記ロッド部材の前記長手方向軸に対して角度オフセットされるように、位置決めし、
前記先端部材の前記遠位端が、被験者の組織を貫通するように構成し、前記先端部材の前記近位端が、被験者の組織を切断するための切断部分を備え、
前記先端部材及び前記ロッド部材を、前記先端部材が前記被験者の前記組織を貫通するとき、前記先端部材の前記長手方向軸が、既に所望の角度で前記ロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットしているように、互いに強固に固定する、
生検装置の製造方法。
【請求項19】
前記ロッド部材を、シース部材の管腔内に摺動可能および回転可能に配設し、
前記シース部材は、近位端と遠位端とを備え、前記ロッド部材が、前記シース部材の前記遠位端から延びている、
請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ロッド部材は、直径が228μmのニチノールワイヤにより形成され、
前記先端部材は、外径および内径がそれぞれ380μmおよび280μmである、ニチノールチューブにより形成される、
請求項18または請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生検処置で使用するための後方に面した切断部分を有する先端部材を備える生検装置を対象とする。生検処置は、装置を被験者の組織内に導入し、およびこれを操作することと、生検サンプルを得ることと、を含む。
【背景技術】
【0002】
心内膜生検は、移植後の拒絶反応モニタリングで主に使用される確立された診断モダリティであるが、心筋症、感染症、および腫瘍性疾患などの様々な心臓病理でも使用される。難しい診断のための生検率は、部分的には処置に内在するリスクと診断歩留まりの低さにより、低すぎると説明されてきた。心内膜バイオプトームは、他の近代的なサブミリメートルサイズの血管内介入装置と比較して比較的大きな装置であり、これにより、これらの装置は外傷的であり、生検目的で所望される場合、心臓の全ての部分、ならびに身体の他の部分に操縦することが困難である。したがって、現在の診療では、心筋内膜生検は、それらの装置の固有の特性に起因して心臓の特定の部分に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、生検は、一般に、右心室の中隔壁に限定され、その心筋は、診断が困難な病理の多くが存在する左心室(LV)を代表するものではない場合がある。本発明は、LV心筋のほとんどの部分、ならびに身体の他の部分へのより容易かつ安全なアクセスを可能にし、より高い診断歩留まりおよび全体的な安全性を有する生検を可能にすることができる、より小さく、より操縦可能なバイオプトームであるように製造され得る装置を対象とする。
【0004】
サンプリングされている被験者の組織に最小限の損傷を引き起こしながら、心臓の任意の部分からより小さく、より均一な組織サンプルを得ることができる改良された生検装置を提供することが、本発明のさらなる目的である。本装置は、心臓から生検サンプルを得るためだけでなく、任意の生検処置に使用することができる。例えば、装置はまた、患者の血管内システムまたは患者の気管支内システムを通じて装置を前進させることによって、肺腫瘍から生検サンプルを得るのにも好適である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、生検装置が提供され、生検装置は、
第1の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する細長い可撓性ロッド部材と、
第2の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する先端部材であって、先端部材が、細長い部材の遠位端において、もしくは遠位端に向かって位置付けられ、および先端部材の長手方向軸が細長いロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされるように、位置決めされるかまたは位置決め可能である、先端部材と、を備え、先端部材の遠位端が、被験者の組織を貫通するように構成されており、先端部材の近位端が、被験者の組織を切断するための切断部分を備える。
【0006】
本発明の別の態様によれば、単回使用のための滅菌された事前包装されたキット部品の形態で、上記で定義された生検装置を備えるキット部品が提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、上記に定義される装置を使用して被験者から生検を得るための方法が提供され、方法は、
上記に定義された装置を身体位置に送達することと、
先端部材の全体が組織内に前進するように、装置の先端部材の遠位端を組織内に前進させることと、
先端部材を組織から引き出すことと、を含む。
【0008】
本発明の別の態様によれば、被験者から生検を得るための、上記に定義された生検装置の使用が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、約10mg未満、好ましくは0.1mg未満のサイズを有する組織サンプルをサンプリングおよび/または分析する方法が提供され、任意選択で、サンプルは、本明細書に記載される方法に従って、または本明細書に記載される生検装置の使用によって得られている。
【0011】
定義
近位端:装置が使用されているときに医師に最も近い生検装置の関連部分の端部を定義する。
【0012】
遠位端:装置が使用されているときに医師に最も遠くにある生検装置の関連部分の端部を定義する。
【0013】
ロッド部材長手方向軸:ロッド部材の遠位端および近位端により定義されるロッド部材の長さに沿った軸。ロッド部材は、可撓性であってもよく、したがって、長手方向軸は、真っ直ぐである必要はないが、ロッド部材が曲がった構成にあるとき、湾曲した経路に沿って延びることもできる。
【0014】
先端部材長手方向軸:先端部材の遠位端および近位端によって定義される先端部材の長さに沿った軸。
【0015】
ロッド部材と先端部材との間の角度オフセット:先端部材は、先端部材の長手方向軸が細長いロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされるように位置決めされるか、または位置決め可能であり、これは、先端部材および細長いロッド部材の長手方向軸が単一の点で交差することを意味する。当業者は、長手方向軸が実際に交差する必要がないことを理解するであろう。例えば、先端部材および細長いロッド部材が、先端部材および細長いロッド部材が物理的に互いに取り付けられていないことを意味する、ヒンジ部分によって接続される実施形態では、それらの長手方向軸は物理的に交差しない。しかしながら、長手方向軸がロッド部材および先端部材の遠位端および近位端を通って延びると、それらは必然的に単一の点で交差し、互いに角度オフセットされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の実施形態は、その利点と併せて、同じ特徴が同じ数字によって表される、添付の図面と併せて以下に詳述される説明から最もよく理解され得る。
【
図1】本発明の生検装置の実施形態の側面図である。
【
図2】
図1に示される生検装置の側面図であり、ロッド部材の第1の長手方向軸および先端部材の第2の長手方向軸が識別されている。
【
図4】本発明による先端部材の一実施形態の複数の図を示す。
【
図5】現在使用されているバイオプトームと、生検サンプルを得るために依然として使用可能でありながら、本発明の装置を製造することができるスケールとの間のサイズ比較を示す。
【
図6】Aは本発明の装置によって得られ、May-Grunwald-giemsa染色で染色された組織サンプルを示す。Bは組織中のトロポニンIの存在を確認するために、本発明の装置によって得られた染色された組織サンプルを示す。Cは縞模様が強調表示されている組織サンプルを示す。
【
図7-1】本発明の装置によって得られた24個のサンプル微生物検査のアライメントスコアを示す。
【
図7-2】本発明の装置によって得られた24個のサンプル微生物検査のアライメントスコアを示す。
【
図8-1】
図7の24個のサンプルの遺伝子マッピングを示す。
【
図8-2】
図7の24個のサンプルの遺伝子マッピングを示す。
【
図9】本発明の装置によって得られた組織サンプルのPCA分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、独立特許請求の範囲に存在するこれらの特徴を除いて、以下の実施形態のいずれか、またはこれらの実施形態に記載される特徴のいずれかに限定されると解釈されるべきではない。さらに、実施形態における全ての特徴が、適切かつ合理的にもっともらしい場合、他の実施形態における他の特徴と組み合わせてもよいことが想定される。
【0018】
本発明によれば、第1の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する細長い可撓性ロッド部材を備える生検装置が開示される。装置はまた、第2の長手方向軸を画定する近位端および遠位端を有する先端部材も備える。
【0019】
先端部材は、細長い部材の遠位端において、もしくはこれに向かって位置付けられ、および先端部材の長手方向軸が細長いロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされるように、位置決めされるかまたは位置決め可能である。「に向かって位置付けられる」という用語は、先端部材がロッド部材の遠位端に位置付けられており、ロッド部材に直接接続されるか、またはヒンジ区分などの接続部分を介して接続されるかのいずれかであることを意味する。
【0020】
先端部材の遠位端はまた、被験者の組織を貫通するようにも構成されており、先端部材の近位端は、被験者の組織を切断するための切断部分を備える。好ましくは、先端部材の遠位端は、被験者の組織を貫通することができる鋭利にされた先端の形態である。例えば、先端部材の遠位端は、円錐形先端部、面取り先端、またはフランセン(三角形)先端の形態であり得る。
【0021】
一実施形態では、先端部材の遠位端は、中実であり、すなわち、それが中空管腔を備えないこと、および/または被験者の組織を貫通することができる先端部材の遠位端の面が中実であることを意味する。
【0022】
好都合には、先端部材の遠位端は、被験者の組織を貫通するための先端部材の長手方向軸に対して鋭角に面取りされた先端の形態である。このような実施形態では、鋭角は、約1°~約45°、例えば約1°~約30°、例えば約5°~約30°、好ましくは約10°~約30°、より好ましくは約10°~約20°であり得る。
【0023】
好ましくは、先端部材の全長(すなわち、先端部材の遠位部分の最後から先端部材の近位部分の最後までの長さ)は、約500μm~約5000μm、例えば約1000μm~約4000μm、例えば約1000μm~約3000μmである。
【0024】
有利には、先端部材の幅は、約100μm~約1000μm、例えば約100μm~約500μm、例えば約200μm~約500μm、好ましくは約300μm~約500μmである。
【0025】
ロッド部材については、この部材の幅は、好ましくは約50μm~約500μm、例えば約100μm~約400μm、例えば約100μm~約300μm、好ましくは約200μm~約300μmである。ロッド部材が有し得る長さに制限はない。
【0026】
使用において、装置は、被験者の身体部位に送達される。例えば、装置は、ガイドカテーテルの使用を通じて被験者の身体部位に送達され得る。ガイドカテーテルは、体腔、管、または血管に挿入するための中空の可撓性チューブである。ガイドカテーテルは、概して、少なくとも約100cm、場合によっては最大約150cmの長さを有する。使用中、ガイドカテーテルの遠位端は、体腔を通って目的の身体部位に向かって前進される。目的の身体部位に送達されると、本発明による生検装置は、ガイドカテーテルの近位端に位置付けられた入口ポートを通して導入され、ガイドカテーテルの管腔を通って前進され得る。
【0027】
好ましくは、装置(および使用される場合はガイドカテーテル)は、患者の血管内または気管支内システムを通じて目的の身体部位に前進される。
【0028】
次いで、ガイドカテーテルの遠位端に達すると、生検装置は、その遠位端に位置付けられたガイドカテーテルの出口ポートから前進され得る。先端部材の遠位端は、ガイドカテーテルの出口ポートから出る生検装置の最初の部分であり、さらに前進すると、先端部材が目的の身体部位の組織を貫通するようになっている。
【0029】
任意選択で、生検装置は、自身がガイドカテーテル内に位置付けられたマイクロカテーテル内に収容され得る。ガイドカテーテルから装置を前進させるとき、ガイドカテーテルはマイクロカテーテルと同時に前進され、装置がガイドカテーテルを出ると、マイクロカテーテルが装置を露出させるために所定の位置に保持(または格納)されている間にさらに前進されてもよい。
【0030】
組織を貫通すると、装置は、サンプルが採取されることが所望される組織深さまでさらに前進される。組織を貫通するとき、一実施形態では、先端部材の長手方向軸とロッド部材の長手方向軸とが重なり合ってもよい。すなわち、先端部材およびロッド部材は、主に同じ方向におよび同じ軸に沿って延びるように位置決めされ得る。所望の組織深さに達すると、この時点で、細長い部材の長手方向軸に対して先端部材の長手方向軸をオフセットするように、例えばプーリーワイヤを通して先端部材を操作することができる。例えば、この実施形態では、先端部材は、先端部材が枢動し得るヒンジ区分を通してロッド部材に接続され得る。
【0031】
あるいは、先端部材およびロッド部材は、先端部材が被験者の組織を貫通するとき、先端部材の長手方向軸が所望の角度で既にロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされているように、互いに強固に固定され得る。
【0032】
したがって、「位置決め可能」という用語は、先端部材およびロッド部材が、それらの長手方向軸が恒久的にオフセットされるように互いに強固に固定されるシナリオと、先端部材がロッド部材上に位置付けられ、2つの長手方向軸間のオフセット角度を変更するように操作され得るようになるシナリオと、を包含するように想定される。
【0033】
さらに、ロッド部材および/または先端部材自体が剛性であってもよく、すなわち、それらから作られる材料が実質的に剛性であることを意味する。
【0034】
好ましくは、先端部材の長手方向軸は、細長いロッド部材の長手方向軸に対して、約1°~約60°の角度でオフセットされるように位置決めされるかまたは位置決め可能である。例えば、オフセット角度は、約1°~約50°、例えば約1°~約40°、または約1°~約20°であり得る。好ましくは、オフセット角度は、約5°~約20°、より好ましくは約10°~約20°であり得る。理想的には、先端部材の遠位端が容易に組織を貫通することを可能にし、および装置が組織から格納されたときに、切断部分が先端部材の遠位端によって貫通されていない組織を貫通することを可能にするために、オフセット角度は60°以下とする。
【0035】
上記に詳述したように、装置の遠位端は、被験者の組織を切断するための切断部分を備える。先端部材の長手方向軸がロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされており、これにより、先端部材の切断部分が、貫通時に先端の遠位端によって損傷されていない組織を切断することが可能になり、また、組織サンプルが貫通によって作成された穴から離れる方向に取り出されるときに、より均一なサンプルが取り出されることも可能になる。
【0036】
有利には、先端部材の切断部分は、尖端ブレードを備え、ブレードの尖端部は、先端部材の長手方向軸の実質的に近位方向に延びている。すなわち、ブレードの尖端部は、先端部材の長手方向軸の方向から20°以内、例えば15°以内、10°以内、または5°以内の方向に延びている。
【0037】
好都合には、先端部材の切断部分は、2つの尖端ブレードを備え、ブレードの尖端部は、先端部材の長手方向軸の近位方向に実質的に延びている(「実質的に」という用語は前の段落で説明されている)。
【0038】
好ましくは、ブレードは、先端部材の長手方向軸の実質的に近位方向に互いに平行に延びている。
【0039】
切断部分が尖端ブレードまたは複数のブレードの形態である場合、ブレード(複数可)の長さは、好ましくは約100μm~約2000μm、例えば約100μm~約1000μm、例えば約100μm~約500μm、好ましくは約200μm~約500μm、より好ましくは約200μm~約400μmである。
【0040】
切断部分はまた、先端部材の長手方向軸に対して鋭角に面取りされた縁部の形態でもあり得る。好ましくは、貫通部分および切断部分の両方が面取り部の形態である場合、面取り部の尖端部は、径方向に反対の方向に延びている。すなわち、側面角度から見たとき、先端部材は、平行四辺形または疑似平行四辺形(面取り角度が同一でない場合)の形態をとる。
【0041】
切断部分が、本明細書に詳述される尖端ブレード(複数可)も備え得る面取りされた縁部の形態であるそのような実施形態では、鋭角は、約1°~約45°、例えば約1°~約35°、例えば約5°~約35°、好ましくは約10°~約35°、より好ましくは約20°~約35°であり得る。
【0042】
有利には、切断部分は、互いに面している2つの単一縁部のブレードを備え、ブレードは、ブレード間の切断部分内の空隙またはスリットを画定するように、互いに離間配置される。好ましくは、空隙の幅は、約50μm~約500μm、例えば約50μm~約400μm、例えば約50μm~約300μm、好ましくは約100μm~約300μmである。
【0043】
本発明の1つの追加の利点は、装置の独自の構成に起因して、現在使用されている生検装置よりもはるかに信頼性が高く、均一なサンプルサイズが得られることである。
【0044】
本発明の追加の利点の1つは、この設計により、装置全体がマイクロカテーテルに収まるように装置を小さな寸法で製造および機能させることが可能になり、これによりシステムが柔軟になり、襲撃性が最小化されることである。
【0045】
さらに、本装置によって得られたサンプルは、現在使用されている装置によって得られたサンプルよりもはるかに損傷が少ない。結果として、装置は、現在使用されている生検装置よりもはるかに小さくなるように製造されてもよく、したがって、本発明の装置によって得られた組織のサンプルは、トランスクリプトーム、プロテオミクス、および遺伝子分析を含む細胞学的および生化学的評価に依然として適している一方で、ミリグラム、またはサブミリグラムの範囲内の質量を有することができる。例えば、本発明による装置によって得られるサンプル質量は、約10mg未満、例えば約9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg未満であり得る。好ましくは、装置によって得られるサンプル質量は、約0.01mg~約5mg、例えば約0.01~約1mg、および約0.01~約0.1mgの範囲である。
【0046】
これは、本発明の装置が、現在使用されている装置よりもはるかに少ない、サンプル組織と身体内に残っている組織との両方の組織への損傷しか引き起こす可能性がないという追加の利点を有する。
【0047】
さらに、現在使用されている装置よりもはるかに小さい寸法で装置を製造する能力に起因して、本発明の装置を使用して、現在使用されている装置によってアクセスできない組織にアクセスし、サンプリングすることができる。
【0048】
目的の組織内の所望の深さに達した後、生検装置の組織内への前進が停止する。すでにそのように位置決めされていない場合、先端部材の長手方向軸は次いで、ロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされる。その後、先端部材の切断部分を使用することによって組織のサンプルが得られる。
【0049】
好ましくは、サンプルを得るために、先端部材は、前進後にまず回転され、次いで近位方向に格納される。サンプルを得るために必要な回転量に制限はなく、これは特定の状況に依存する。例えば、装置は、90°、180°、270°、またはさらには360°全回転され得る。同様に、装置が時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転する方向に制限はなく、これは切断部分の構成に依存する。
【0050】
好都合なことに、ロッド部材は、その遠位端に位置付けられた谷部を備え、好ましくは、ロッド部材の谷部は、先端部材の切断部分の反対側に位置決めされ、先端部材の切断部分に面している。装置が切断部分に空隙を備える場合、谷部はまた、空隙の反対側にあるように、また空隙に面するように位置決めされてもよい。谷部部材は有利には、切断部分が組織のサンプルを切断した後に組織サンプルを保持するためのさらなる空間を提供する。
【0051】
好ましくは、谷部の深さは、ロッド部材の幅の約20%~70%、例えば、ロッド部材の幅の約20%~約60%、好ましくはロッド部材の幅の約30%~約50%である。
【0052】
有利には、ロッド部材は、シース部材の管腔内に摺動可能かつ回転可能に配設され、シースは、近位端と遠位端とを備え、ロッド部材は、シース部材の遠位端から延びている。
【0053】
一実施形態では、シース部材は、約100μm~約1000μm、例えば約100μm~約500μm、例えば約200μm~約500μm、好ましくは約300μm~約500μmの外径を有する。
【0054】
好ましくは、シース部材の管腔は、約100μm~約1000μm、例えば、約100μm~約500μm、例えば、約200μm~約500μm、好ましくは約200μm~約400μmの直径を有する。いずれの場合でも、シース部材の管腔の直径は、シース部材の外径よりも小さい。
【0055】
好都合には、シース部材は、使用中の先端部材の切断部分とのブレードおよびアンビル関係を形成できるように、シース部材の遠位端にアンビルを備える。好ましくは、アンビルは、シース部材の遠位端にある管腔の少なくとも一部の周りに、または優先的に縁部全体に延びている。より好ましくは、アンビルは、シース部材の遠位端にある管腔の縁部全体の周りで均一であり、対称である。「アンビル」という用語は、シース部材の遠位端が鈍い縁部であるか、または鋭利にされた縁部、例えば、面取りされた縁部であることを意味する。
【0056】
好ましくは、アンビルは、約1°~約45°、例えば約1°~約30°、例えば約5°~約30°、好ましくは約10°~約30°、より好ましくは約10°~約20°の鋭角を形成する面取りされた縁部(鋭利にされ得る)の形態である。
【0057】
生検装置がシース部材を備える実施形態では、ロッド部材は、先端部材の近位端がシース部材の遠位端に隣接するように、組織貫通の前に格納された位置にあってもよい。すなわち、ロッド部材は、先端部材の近位端がシース部材の遠位端に達し、およびそれに当たるときに停止するように、シース部材内で格納される。しかしながら、先端部材の遠位端は、先端が前進時に組織を貫通できるように、シース部材の外側にとどまる。装置は、それが組織に前進され、先端部材、ロッド部材、およびシースが一緒に前進され、先端部材の近位端がまず目的の組織を貫通する間、この構成で保持され得る。ある所定の深さに達すると、シース部材の組織内への通過は停止されてもよく、装置の先端部材およびロッド部材は、組織内にさらに前進され、シースから出ることができる。
【0058】
最終的な所望の組織深さに達すると、上記で詳述したように、先端部材を回転させることによって、組織サンプルを得ることができる。回転後、ロッド部材は、シース部材内に格納されてもよく、先端部材の近位部分の切断部分は、それによって組織の区分を切断し、ロッド部材がシース内で格納されると、シース部材のアンビルは、組織を切断し、ロッドの谷部内で所望のサイズのサンプルを保持するためのさらなる切断縁部として作用してもよい。
【0059】
代替の実施形態では、先端部材の組織を切断するための回転、およびロッド部材のシース内への格納は、同時に実行され得る。いずれかの実施形態では、先端部材の近位端が上記で概説したように、シースの遠位端に隣接するように、ロッドがシース内で格納された後、装置は次いで組織を出て格納され、最終的には被験者の身体を出て格納される。
【0060】
ロッド部材をシース内に戻し、先端部材をシース部材の遠位部分に向かって格納する利点は、組織のサンプルがシース内で、少なくとも部分的に、好ましくはロッド部材の谷部内に収容され、その結果、後退時にサンプルが固定され、脱出できないことである。例えば、心臓組織のサンプルを得るために装置を使用している場合、そしてサンプルが固定されていない場合、患者の内血管系に逃げ込んで塞栓症を引き起こす可能性がある。
【0061】
有利には、シース部材は、遠位端の近位に位置付けられた侵入深さ制限部材として機能するカラーを備える。例えば、カラーは、組織内の所望の深さへのシースの正しい挿入を補助するために定義された停止点をユーザに提供するための突起辺縁の形態であってもよい。
【0062】
好ましくは、カラーは、約100μm~約2000μm、例えば、約100μm~約1000μm、例えば、約500μm~約1000μm、好ましくは約500μm~約800μmの全幅を有し得る。
【0063】
カラーは、シース部材に剛性的に固定されてもよく、または代替的に、カラーは、使用中の組織をシースが貫通する深さをユーザが調整することを可能にするために、シース部材上で移動可能であってもよい。例えば、カラーは、シースの外周の周りに摺動可能であってもよい。別の例として、シースの外側は、その周りに延びるねじ山を備えてもよく、カラーは、シースのねじ山の反対側にもねじ山を備える内腔を有するチューブであってもよく、カラーがシース上にねじ込まれるように構成されてもよい。これにより、シース部材が使用中に貫通する深さをユーザが調整できるようになり、より汎用性の高い装置が提供される。
【0064】
好都合には、カラーは、金属、好ましくは金、白金、または他の放射線不透過性金属からなる。
【0065】
好ましくは、先端部材、ロッド部材、および/またはシース部材を含む装置の構成要素のいずれも、独立して、ニッケルおよびチタンの合金である形状記憶合金、好ましくはニチノールからなってもよい。有利には、記憶形状合金は、約20重量%~約60重量%のチタンおよび約80重量%~約40重量%のニッケル、例えば約30重量%~約50重量%のチタンおよび約70重量%~約50重量%のニッケル、好ましくは約40重量%~約50重量%のチタンおよび約60重量%~約50重量%のニッケルからなる。
【0066】
本発明の別の態様によれば、単回使用のための滅菌された事前包装されたキット部品の形態で、上記に定義された生検装置を備えるキット部品が提供される。好ましくは、キットは、マイクロカテーテルおよび/またはガイドカテーテルをさらに備え、これらのさらなる構成要素は、キット内の任意の他の構成要素とともに、生検装置と同じパックまたは別個のパックに提供されてもよい。
【0067】
また、装置自体は、キット内の別々の部品(すなわち、ロッド部材、先端部材、およびシース部材)に供給されてもよく、ユーザが使用前に装置を組み立てることも想定される。
【0068】
本発明のさらなる態様によれば、上記に定義された装置を使用して被験者から生検を得るための方法が提供され、方法は、
上記に定義された装置を身体位置に送達することと、
先端部材の全体が組織内に前進するように、装置の先端部材の遠位端を組織内に前進させることと、
先端部材を組織から引き出すことと、を含む。
【0069】
使用方法は、上記に詳述されたステップのいずれかを含んでよい。
【0070】
好ましくは、組織を貫通した後、および格納前に、先端部材は組織内で回転する。
【0071】
有利には、装置は、装置を組織内に前進させる際にシース部分を備える場合、ロッド部材は、先端部材の近位端がシース部分の遠位端に隣接するように、シース部分内で格納される。
【0072】
好都合には、装置を組織内に前進させた後、ロッド部材がシース部分から延び出し、それによって先端およびロッド部材が組織内にさらに貫通する。
【0073】
好ましくは、先端部材を組織から引き出すと、ロッド部材は、まずシース部分に格納され、任意選択で、生検装置が遠位端に位置付けられたアンビルを有するシース部材を備える場合、これは使用中の先端部材の切断部分とのブレードおよびアンビル関係を提供し得る。
【0074】
有利には、本発明に従って使用されるときに装置によって得られるサンプル質量は約10mg未満、例えば約9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg未満であり得る。好ましくは、装置によって得られるサンプル質量は、約0.01mg~約5mg、例えば約0.01~約1mg、および約0.01~約0.1mgの範囲である。
【0075】
本発明の別の態様によれば、被験者から生検を得るための、上記に定義される生検装置の使用が提供される。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、本発明による装置の製造方法が提供される。
【0077】
上述したように、本発明による装置は、心臓または肺などの患者の多くの部分から組織サンプルを得るために使用されてもよく、装置のサイズは、その意図された使用に応じて変更されてもよい。
【0078】
本装置の利点は、現在使用されているバイオプトームよりもはるかに小さいサイズに製造することができ、したがって、装置によって得られるサンプルサイズは、現在の装置によって得られるサンプルサイズよりもはるかに小さくすることができることである。
【0079】
本発明者らは、さらなる分析のために組織サンプルを調製するための新しいプロトコルを考案し、組織サンプルは、ほとんどの既知の調製および分析方法で使用するために必要な組織サンプルよりもはるかに小さい。得られる/使用される組織サンプルのサイズが小さいにもかかわらず、本発明者らによって考案されたプロトコルは、小さい組織サンプルの正確かつ再現可能な分析およびサンプリングを可能にすることが見出されている。
【0080】
したがって、本発明の別の態様によれば、約10mg未満のサイズを有する組織サンプルを分析する方法が提供され、任意選択で、サンプルは、本明細書に記載される方法または本明細書に記載される生検装置の使用に従って得られている。好ましくは、組織サンプルの分析方法で使用されるサンプルは、生検装置および/または本明細書に記載される方法によって以前に得られている。
【0081】
有利には、組織サンプルは、約9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg未満のサイズを有し得る。好ましくは、組織サンプルサイズは、約0.01mg~約5mg、例えば約0.01~約1mg、および約0.01~約0.1mgである。
【0082】
好都合には、実施された分析は、組織学、細胞学プロテオミクス、トランスクリプトミクス、および遺伝子分析からなるリストから選択され得る。
【0083】
好ましくは、サンプルが得られた後、本発明による装置の使用または別の装置もしくは方法による使用を問わず、サンプルは直ちに凍結され、好ましくは、組織サンプルは容器に配置され、さらなる分析のためにサンプルを保管するために容器をドライアイスと接触させることによって凍結される。この文脈における「直ちに」という用語は、組織サンプルを得ることから10分以内、例えば、組織サンプルを得ることから9、8、7、6、5、4、3、2、または1分以内を意味する。最も好ましくは、組織サンプルを容器中に配置し、その後、サンプルを採取してから1分未満でドライアイス上にある容器に配置する。
【0084】
有利には、約10μL~約200μL、例えば約10μL~約100μL、好ましくは約10μL~約50μLの溶解緩衝液を組織サンプルに添加する。その後、サンプルは、好ましくはベンチトップボルテキサー上で1~60秒間、例えば5~30秒間、好ましくは10~20秒間ボルテックスすることによって均質化されてもよい。
【0085】
好都合には、サンプルは、好ましくは、5秒間~2分間、例えば5秒~60秒、好ましくは5秒~30秒、ベンチトップマイクロ遠心分離器で遠心分離される。
【0086】
有利には、サンプルは、上記で概説したように、少なくともさらいもう1回、例えば、2、3、4、または5回、均質化され、遠心分離される。
【0087】
好ましくは、サンプルは、35℃~40℃、例えば35℃~38℃の温度で、10~60分間、例えば10~30分間インキュベートされる。
【0088】
有利には、組織サンプルは、均質化され、上記に概説した方法に従ってさらに1回遠心分離され、好ましくは、サンプルはさらに2回均質化および遠心分離ステップを受ける。
【0089】
好都合には、約25μL~約500μL、例えば約25μL~約250μL、例えば約25μL~約100μLの緩衝液が、均質化および遠心分離後にサンプルに添加される。
【0090】
好ましくは、次いで磁気ビーズがサンプルに添加され、磁気ビーズは、磁気ビーズの表面上の固相可逆的不動化を通じてRNAに結合するように構成される。以下のステップでは、RNAが組織サンプルから抽出され、サンプルが洗浄され得るように磁気ビーズの表面に結合する。
【0091】
有利には、サンプルは、約20℃~約40℃、例えば、約20℃~約30℃、好ましくは約20℃~約25℃の温度で、約5~約30分間、例えば、約5~約25分間、好ましくは約5~約20分間、別のインキュベーションステップを受ける。
【0092】
好都合には、サンプルは、約5~約20分間、例えば約5~30分間、磁石上に配置される。その後、上清をデカントすることが好ましい。
【0093】
理想的には、次いで、サンプルを、好ましくは緩衝液で数回(例えば、2、3、4、または5回)洗浄する。好ましくは、約20μL~約200μL、例えば、約20μL~約100μL、好ましくは約20μL~約80μLの緩衝液が、サンプルに添加され、サンプルを洗浄する。その後、サンプルは上述のように磁石上に配置され、上清がデカントされる。
【0094】
有利には、次いで、サンプルはエタノール溶液で洗浄され、好ましくは約75体積%~95体積%のエタノールおよび約25体積%~5体積%の水、例えば約80体積%~約90体積%のエタノールならびに約20体積%~10体積%の水からなるエタノール溶液が使用される。その後、サンプルは、好ましくは、上記に概説したように、磁石上に配置され、上清がデカントされる。
【0095】
好ましくは、エタノールで洗浄する場合、サンプルは、約50μL~約500μL、例えば約50μL~約200μL、好ましくは約100μL~約200μLの前項に記載の溶液で洗浄される。
【0096】
好ましくは、約1μL~約100μLのDNA分解酵素溶液、例えば約1μL~約50μL、好ましくは約3~約10μLのDNA分解酵素溶液がサンプルに添加される。
【0097】
DNA分解酵素を添加した後、サンプルは、例えば35℃~40℃、例えば35℃~38℃の温度で、5~30分間、例えば10~20分間インキュベートされる。
【0098】
有利には、約10μL~約200μLの洗浄緩衝液、例えば約10μL~約100μLの洗浄緩衝液がサンプルに添加され、好ましくは、サンプルが、約20℃~約40℃、例えば約20℃~約30℃、好ましくは約20℃~約25℃の温度で、約1~約20分間、約1~約15分間好ましくは約1~約10分間インキュベートされる。
【0099】
好都合には、次いで、サンプルは、約1分~約20分間、例えば約1分~約10分間、磁石上に配置される。その後、上清を除去することが好ましい。
【0100】
好ましくは、次いで、サンプルを洗浄するために、エタノール溶液がサンプルに添加される。有利には、エタノール溶液は、約75体積%~95体積%のエタノールを含み、約25体積%および5体積%の水、例えば、約80体積%~約90体積%のエタノールならびに約20体積%および10体積%の水が使用される。その後、サンプルは、好ましくは、上記に概説したように、磁石上に配置され、上清がデカントされる。
【0101】
好ましくは、エタノールで洗浄する場合、サンプルは、約50μL~約500μL、例えば、約50μL~約200μL、好ましくは約100μL~約200μLの前項に記載される溶液で洗浄される。
【0102】
好都合には、上清を除去した後、磁気ビーズを、室温で約1分~約30分、例えば約1分~約20分、好ましくは約1分~約10分の期間乾燥させる。
【0103】
有利には、磁気ビーズを乾燥させた後、ヌクレアーゼ水に再懸濁して、磁気ビーズの表面に結合したRNAを放出する。好ましくは、使用されるヌクレアーゼ水の体積は、約1μL~約50μL、例えば約1μL~約30μL、例えば約1μL~約20μL、好ましくは約1μL~約10μLである。
【0104】
好ましくは、再懸濁したビーズをその後、室温で、約1分~約10分の期間、例えば、約1分~約5分間インキュベートし、その後、磁気スタンドに戻す。
【0105】
好都合には、次いで、溶出したRNAを保管のために新鮮な容器に移す。
【0106】
本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【0107】
図1~3は、細長い可撓性ロッド部材(108)および先端部材(102)を有する本発明の生検装置(100)の実施形態を示す。可撓性ロッド部材は、遠位端(110)と近位端(112)とを備え、先端部材(102)がロッド部材の遠位端(110)に向かって位置付けられている。
【0108】
先端部材(102)はまた、遠位端(104)と近位端(106)とを備える。この実施形態では、遠位端は、被験者の組織を貫通することができる面取りされて鋭利にされた先端部の形態である。
図1に提供される角度から、先端部材の近位切断部分端はまた、面取りされた形態であり、近位端の尖端部は、先端の遠位端の尖端部の反対側にあり、その結果、側面突起上で先端部材は平行四辺形の形状にある。
【0109】
先端部材(102)の遠位端(104)および近位端(106)は、
図2に例示される先端部材(102)の長手方向の長さにまたがる長手方向軸(202)を画定する。ロッド部材(108)の遠位端(110)および近位端(112)は、ロッド部材が直線構成にあるときに、ロッド部材の長手方向軸(204)を画定する。
【0110】
先端部材は、先端部材およびロッド部材の長手方向軸が、それらが交差する点(206)を形成するように、ロッド部材の長手方向軸に対して角度オフセットされ、これは
図2に示されている。
【0111】
図3は、先端部材の近位端の切断部分が、単一の縁部を有する2つの尖端ブレード(302)の形態であることを示しており、ブレードは、空隙を画定するために互いに離間配置される。この実施形態では、ブレードの尖端部は、先端部材の長手方向軸の近位方向に互いに平行に延びており、ブレード縁部は互いに面している。
【0112】
ロッド部材(108)は、2つの尖端ブレード(302)間の空隙の下に位置付けられるように、先端部材の切断部分(106)の反対側に位置決めされ、先端部材の切断部分(106)に面する谷部部分(114)を備える。
【0113】
図1~
図3に記載の生検装置は、ロッド部材(108)がシース部材(116)の管腔内に摺動可能かつ回転可能に配設されるように構成され、先端部材(102)は、先端部材とロッド部材の長手方向軸間の角度オフセットに起因して、シース部材(116)に入ることができず、先端部材(102)は、ロッド部材(108)が格納されたときにシース部材(116)の開口部に隣接する。シース部材は、遠位端(118)と近位端(120)とを備え、遠位端は、遠位端の縁部において管腔全体の周りに対称的に配設された面取りされた切断縁部(122)を備える。
【0114】
シース部材(120)の近位端に向かって、侵入深さ制限部材として機能するカラー(124)が位置付けられており、シース部材が被験者の組織の中に前進し得る最大深さを制御できるようにする。
【0115】
使用中、装置は、独立して、またはガイドカテーテル、もしくは同様の一般的に使用される装置の使用を通じて、被験者の身体部位に方向付けられる。目的の身体部位に達すると、生検装置は、身体組織に向かって前進され、常にシース部材の外側に位置付けられた尖端の先端部材が組織を貫通する。この時点で、ロッド部材は、シース部材の遠位端の切断縁部が先端部材の近位端に隣接するように、シース部材内の完全に格納された位置にある。
【0116】
組織を貫通すると、装置はさらに組織内に前進され、所望の位置で停止されるか、またはシース上のカラーが組織に達し、シースの組織内へのさらなる貫通に抵抗するときに前進が停止されるかのいずれかである。
【0117】
この実施形態では、先端部材およびロッド部材は、先端部材の長手方向軸がロッド部材の長手方向軸に対して恒久的にオフセットされるように、互いに強固に固定される。しかしながら、装置はまた、装置が組織内に貫通されるとき、先端部材とロッド部材の長手方向軸がほぼ同一線上に沿って延びるように、また先端が所望の深さに達した場合にのみ、ロッド部材に角度オフセットされるように枢動されるように構成され得る先端部材であることも想定される。
【0118】
所望の深さに達すると、先端およびロッド部材は、ロッド部材の谷部が被覆されないように、ロッド部材をシース部材から摺動可能に前進させることによって、さらに組織内に前進される。
【0119】
サンプルを得るために、ロッドおよび先端部材は回転され、次いでシース部材内で格納され、シース部材の遠位端に位置付けられた面取りされた切断縁部は、組織を先端部材の切断部分に対して反対方向からスライスするための第2の切断縁部として機能する。
【0120】
ロッド部材が再びシース部材内に完全に収容され、シース部材の遠位端が先端部材の近位端に隣接するまで、格納が続く。この作用により、組織のサンプルがシース内に部分的に収容されるロッド部材の谷部内に含まれるか、または組織サンプルサイズが谷部よりも大きい場合、組織サンプルが切断部分によって谷部領域内に閉じ込められ得る。
【0121】
本方法のわずかに変形した例として、先端部材の回転と後退が順次行われるのではなく、これらのステップが同時に行われてもよい。
【0122】
装置および装置の使用方法により、予測されたサイズの均一なサンプルはロッド部材の谷部内に収容されるようになり、組織にもたらされる損傷を最小限に抑える。しかしながら、組織のより大きなサンプルが必要とされる場合、ロッド部材が回転後にシース内で格納されず、回転後、装置が被験者の身体から出て完全に格納され、組織のより大きなサンプルサイズをもたらすことが想定される。
【実施例】
【0123】
本発明は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによってさらに説明される。
【0124】
装置の製造方法
以下は、本発明による装置を製造するための例示的な方法を提供する。この例示的な方法によって調製される本発明の装置は、a)ニチノールチューブの約2mmの長さの研削およびレーザ切断区分である先端部材、b)先端部材が取り付けられているニチノールワイヤから製造されるロッド部材、およびc)研削された遠位端を有するシース部材ニチノールハウジング部品の3つの部分から構成される。
【0125】
ニチノールは、当該技術分野で周知の用語であり、その形状記憶および超弾性特性によって他の材料と区別されるニッケルチタン合金である。
【0126】
本発明の生検装置を構築するために使用される材料は、外径380μmおよび内径280μmのニチノールチューブ、ならびに直径228μmのニチノールワイヤであってもよい。
【0127】
この例示的な方法では、先端部材(102)を作成する第1のステップは、チューブの断面にわたって15°の角度でチューブを研削することを含む。チューブを45度回転させ、各面で20°の研削を実施する。2つの研削は、チューブの中央軸の鋭い尖端部で合流する。
図4に示すように、その後、チューブを研削の先端から2mmの位置でレーザ切断する。装置の近位加工が行われた後、装置は90度回転し、切断され、近位端で2つの鋭利な縁部を生成する(302)。
【0128】
先端部材を加工後、次いでそれを16~19°の角度で手動で曲げたワイヤに取り付ける。ワイヤの上に組み立てられ、その後シアノアクリレート接着剤で所定の位置に固定される。任意のシアノアクリレート残基は、レーザで加工される。装置の先端は、最初に行った研削に合わせて、レーザで鋭利にされる。組み立て後、
図4に示すように、先端部材の遠位端の角度は、組み立て後、約20度である。
図1および
図3に示すように、ワイヤは、先端部材の近位端の近くで遠位方向に加工されて、空洞(谷部、(114))を作成する。空洞は側面から加工され、
図4に示すような寸法の平行四辺形の形状に切断される。
【0129】
ワイヤはチューブの内側に配置され、近位トルク装置を用いて移動を制御し、これにより遠位部分の回転を可能にし、並進移動を制限する。
【0130】
シース部材は、ニチノールチューブの遠位端の円周全体の周りに20°の先細部を研削し、その後、(所望のサンプリング深さに応じて)遠位端から1~20mmの金カラーをシアノアクリレート接着剤で接着することによって製造され得る。最終的に残った研削剤およびシアノアクリレートの残渣はいずれもレーザで除去した。ワイヤに取り付けられた装置の遠位部分は、逆に取り付けることによってシース部材の近位端の内側に配置され、遠位部分の移動は、ワイヤに取り付けられたトルク装置で制御され、これにより遠位部の回転を可能にし、並進運動を制限した。装置全体は、臨床で利用できる2.7Fの高流量マイクロカテーテルに収容して、サポートを提供するとともに、身体を通って誘導する際に鋭利な先端部をシールドするように設計された。
【0131】
サンプリング手順
サンプリング手順で試験した全ての装置は、円錐状に鋭利にされた筐体部分(シース部材)と、遠位端の切断先端(先端部材)に取り付けられたワイヤ(ロッド部材)で構成されており、このワイヤをブタの心筋内に前進させ、その後回転させ、および後退された、装置システムがガイドカテーテルを通って格納されるときに、小さな組織サンプルを「挟み取り」、収集ポケットに固定した。
【0132】
装置によって得られた5つのサンプルの重量を測定し、得られたサンプルの平均質量は0.052mgであり、個々の重量は0.04、0.04、0.09、0.06、および0.03mgである。
【0133】
深さ制限カラーはX線透視で視認性を提供し、心室壁の誤った穿孔のリスクを最小化する。装置を身体から除去した際、顕微鏡モニタリング下で組織サンプルを抽出するために顕微鏡手術用鉗子を使用し、組織学のために顕微鏡スライドに即座に、または分子分析が所望される場合は0.2mlのPCRチューブに保管した。マイクロバイオプトームから組織片を抽出しながら、外科用または解剖用顕微鏡を使用して検査し、サイズ、外観および質感に基づいてサイズスコア(1~4、単一のオペレータによって評価される)を与えた。スコアリングシステムを、以下の表1に記載する。
【表1】
【0134】
生体外および生体内シミュレータでの評価
生体外組織学的評価は、降伏を評価するために、死後の心筋に装置を使用して実施された。また、プラスチックチューブおよびアクリルガラス室から構築されたカスタムのシミュレータでも装置を試験し、試作品を使用した誘導およびサンプリングを現実的な解剖学的状況で評価することができた。
【0135】
生体内評価
装置の反復生体内評価は、設備の整った臨床グレードの3D血管カテーテル検査室で、平均37kg、体重29~48.5kgの成体ブタ23頭を用いてブタモデルで実施した。簡潔に述べると、動物は鎮静剤で事前に投薬され、臨床用の血管造影室に連れて行かれ、標準的な外科麻酔治療を受けながら挿管し、機械的に人工呼吸を行った。
【0136】
介入注、ECG、侵襲的血圧測定、酸素飽和度、体温、尿量を用いて、動物を合併症について監視した。動物に75mgのアミオダロンを静脈内投与し、介入時間が3時間を超えた場合は75mgを追加投与した。最初の装置を、8.6Fの屈折可能なシース(Agilis NXT, Saint Jude Medical, Saint Paul, MI, USA)を使用して、右心室への経頸動脈アクセスを使用して試験した。装置は小型化されているので、左心室(LV)を含む両心室で試験した。全ての左心室生検は、経大腿アプローチを使用して得られた。
【0137】
大腿動脈にアクセスするために5Fまたは7Fの短いシースを使用し、LVにアクセスするために標準的な5Fまたは4Fの直線診断カテーテル(Torcon NB advantage, Cook Medical, USA)を使用し、そこからバイオプトームを収容する2.7フランスのマイクロカテーテルを進めた。生検対照は、標準的な心内膜鉗子のバイオプトーム(3Fもしくは5.2F Flexible Myocardial Biopsy Forceps, Cook Medical, USAまたは6F Jawz Endomyocardial Biopsy Forceps, Argon Medical Devices, Frisco, TX, USA)を使用して得た。配列決定のための対照組織として、全血および四肢からの骨格筋も得た。いくつかのブタから、左心室の心内層を追加の対照サンプルとして削り取った。サンプリング後、過剰用量のペントバルビタールナトリウムを使用して動物を犠牲にした。
【0138】
生体内でのフォローアップ評価
平均体重28.75kgの27~31.9kgの6頭のブタにおいて、本発明の装置を、単独で(n=3)、または従来の心筋内膜生検(n=3)と併せて、7日間のフォローアップ期間中の安全性について評価した。動物を順次募集したが、群は麻酔および介入の開始前に事前に指定した。動物は、獣医の監督のもと、大規模な動物飼育と臨床モニタリングの訓練を受けた専任のスタッフとともに、専用の大動物飼育施設に収容された。最初の手順は、ペントバルビタールナトリウムではなく吸入麻酔薬(イソフルラン)を使用することを除いて、非フォローアップ群と同様に実施した。介入後、動物を麻酔から覚醒させ、7日間収容し、標準的な術後ケアを受けさせ、合併症を監視した。7日目に、追加の微生物検査および従来の生検を用いてフォローアップ介入を実施し、その後、動物を犠牲にして心臓を検査した。サンプルのサブセットをRNA-seqを使用して配列決定し、mRNA発現の長手方向変動を評価した。
【0139】
組織学
生体内評価研究で得られたマイクロバイオプシーサンプルは、は小さすぎて、スライドに確実に切片を作成することができなかった。代わりに、組織片を顕微鏡スライドに直接配置し、細胞学的検体の調製と同様の様式で圧縮した。スライドを、May-Grunwald-giemsaを使用して染色するか、間接蛍光法を使用して免疫組織化学的にトロポニンIを染色した(Rabbit-anti-pig primary antibody, Abcam, Cambridge, UK)。
【0140】
RNAの単離および配列決定
生体内評価群内の動物由来のRNAを単離し、処理し、RNA配列決定に供した。配列決定のパイロットラウンドでは、従来の生検からの全血および心筋からなる対照を含む、24個のサンプルを配列決定した。その後、5匹の個々のブタからの57個のサンプルの第2ラウンドの配列決定で結果を確認し、追加の対照として骨格筋および心内膜組織を添加した。サンプルの取り扱いおよびRNA単離のために、一般に、以下のプロトコルを使用した。
【0141】
一般に、使用したサンプリングプロトコルは以下の通りであった。生検装置が格納された直後、組織サンプルを生検装置からマイクロフォーサープを有する0.2mlのPCRチューブに移した。サンプルを直ちにドライアイス上に置き、さらなる処理まで凍結した。
【0142】
31μLの独自溶解緩衝液をサンプルに添加し、次いで、組織サンプルを破壊し、ベンチトップボルテキサー上で15秒間ボルテックスすることによって均質化した。その後、サンプルをベンチトップ微小遠心機上で15秒間遠心分離した。この手順を2回繰り返した。次いで、サンプルを37℃で25分間インキュベートし、その後、サンプルをボルテックスし、上記で詳述したようにさらに2回遠心分離した。
【0143】
磁気ビーズを含む52.3μLの独自結合緩衝液(キット)をサンプルに添加し、サンプルを室温で10分間インキュベートした。
【0144】
インキュベート後、サンプルを磁石上に、溶液が透明になるまで6~20分間配置し、その後上清をデカントした。
【0145】
次いで、77μLの独自洗浄緩衝液(キット)を添加し、溶液をピペッティングし、磁石上に5分間配置し、上清をデカントすることによって、サンプルを数回洗浄した。
【0146】
次いで、100μL~200μLの85体積%のエタノールを添加し、サンプルを混合し、磁石上に配置し、その後、上清を除去した。
【0147】
任意選択で、(下流ライブラリ調製プロトコルに応じて)7.7μLのDNA分解酵素溶液を添加し、サンプルを37℃で15分間インキュベートした。
【0148】
42.3μLの洗浄緩衝液を添加し、サンプルを室温で4分間インキュベートし、磁石上に7分間配置し、その後、上清を除去した。
【0149】
100~200μLの85体積%のエタノールをサンプルに添加し、サンプルを磁石上に5分間配置した。次に上清を除去し、洗浄ステップを2、3回繰り返した。次に磁気ビーズを室温で5分間乾燥させた。
【0150】
次いで、磁気ビーズを3~10μLのヌクレアーゼ水に再懸濁し、室温で2分間インキュベートし、次いで、磁気スタンドに戻した。次いで、溶出したRNAを保管のために新鮮なプレートまたはチューブに移した。
【0151】
次いで、totalRNAを、キットおよびプロトコルのいくつかの組み合わせのいずれかで処理し、変更したものまたはそのままで処理し、配列決定プラットフォーム、例えば、概念証明のために当社の研究で使用されるIlluminaで配列決定した。
【0152】
ライブラリはまた、変更されたか、または標準として使用されるかのいずれかのキットおよびプロトコルの組み合わせも使用して調製した。
【0153】
データ分析と統計学的方法
統計学的分析は、R統計的コンピューティング言語、バージョン3.4.1(Vienna, Austria, https://www.R-project.org/)を使用して実施した。特に指定がない限り、記述的統計は中央値(範囲)として提示される。RNA-seqデータのベンチマークおよび処理には、STAR、Cutadaptを使用し、品質管理にはFastQCを使用し、最後に高レベルの統計にはRを使用した。
【0154】
マイクロバイオプトーム設計の結果
65個のプロトタイプ設計を評価し、いずれも心筋を貫通し、組織の小片を「挟み取る」切断先端を有するワイヤを含む、鋭利にされた筐体部分の基本原理に基づいている。最終的な装置設計は、約0.4mm(放射線不透過性マーカーで0.68mm)の外径を有し、塞栓形成のために設計された2.7F高流量マイクロカテーテル(Renegade Hi-Flo,Boston Scientific,Marlborough,MA,USAまたはCarnelian,Tokai Medical Products,Aichi,Japan)に収容された。傾斜した先端「ガイド」カテーテルを使用し、マイクロバイオプトムシステムを心臓内で操縦および誘導できるようにした。現在のプロトコルでは、装置を含むマイクロカテーテルのための「ガイド」カテーテルとして4Fまたは5F標準診断カテーテルを使用した。設計の反復的改善により、生検成功率、歩留まり(定性スコアリングシステムを使用して測定)、および装置の使用しやすさが向上した。生体内フォローアップ調査に使用される最終設計を、
図1~3に示す。
図5は、本発明によるバイオプトームが、現在使用されている臨床機器と比較して、良好な組織サンプルを得るのに適したサイズで製造できるかどうかを示している。
【0155】
生体内試験の結果
マイクロバイオプシーおよび従来の生検は、全ての動物において成功した(n=6、プロトタイプと従来の生検を組み合わせた場合はn=3)。本発明の装置を使用して、94%の成功率を達成した。未知の理由により、本研究の全ての動物は、介入開始前に頻拍を有し、非フォローアップ群と比較して一過性心室不整脈の傾向が高かった。
【0156】
しかしながら、全ての動物はマイクロバイオプシー処置に十分に耐え、この段階では特に治療は必要なかった。従来の生検を実施した動物では、生検鉗子を大動脈弓を横切ってLVに移動させることは困難であった。1匹の動物は、最終的な従来の生検後、約60分間、持続的な心室頻拍を発症した。300mgのアミオダロンを静脈内投与した後、動物は安定化し、合併症を伴わずに覚醒させることができた。両方の種類の生検が実施された別の動物は、介入中は安定していたが、麻酔から覚醒した直後に呼吸不全およびその後の心臓停止を発症した。総病理学的評価では、心筋症と一致する、異常に小さいLVを有する小さな心臓が示された。したがって、この動物をその後の分析から除外した。全ての動物は、少量(10ml未満)の血液刺激性心膜液、および生検部位で可視的な痕跡を有した。動物の心臓の総検査では、肉眼的な梗塞または心室破裂の兆候は認められなかった。
【0157】
要約すると、新規装置で心臓生検を繰り返した3匹の動物は全て正常に、追加のサンプリングのために7日後に覚醒され、血管造影室に戻された。新規装置と従来装置の両方で心臓生検を受けた3匹の動物のうち、2匹は正常に覚醒し、フォローアップサンプリングのために連れ戻された。
【0158】
組織学および免疫組織化学による組織同定の結果
サンプルが心筋組織のみを含有していることを検証するために、組織学的および免疫組織化学を、サンプルのサブセットに対して実施した。May-Grunwald-giemsa染色は、かなりの破砕アーティファクトを有する固体組織片を示した(
図6A)。ほとんどのサンプルにおける切断されていない組織の厚い層は、病理学の評価を妨げた。多くの場合、サンプルは、心筋組織として容易に識別できなかった。したがって、免疫組織化学を使用して、組織片におけるトロポニンIの存在を確認した(
図6Bおよび
図6C)。
【0159】
RNA配列決定の結果
RNA配列決定は、配列決定の第1のラウンドにおいて配列決定施設に提出された24個全てのサンプルについて成功した。アライメントスコアは、微生物検査および対照にわたって比較的一貫していた(
図7を参照)。遺伝子マッピングは、心筋サンプルと血液対照とで異なり、ほとんどの心筋サンプルは、遺伝子にマッピングされたリードの割合が低く、未知の特徴にマッピングされたリードの割合が高かった(
図8)。試作または従来のサンプルで得られた心筋サンプル間のマルチマッピングおよびマッピングされていないリードの速度は同等であった。
【0160】
以下の配列決定のラウンドでは、57個全てのサンプルは、リード数および全体的なリード品質の観点から成功した。しかしながら、1つの心臓生検サンプルは、ブタゲノムに対するマッピング率が低かったため除外した。ライブラリの複雑性が低いため、3つのサンプルが新規の器具で採取された追加の5つのサンプルを除外した。合計51/57個のサンプルを遺伝子発現分析に使用した。表2は、ベースライン品質管理データを示す。
【表2】
【0161】
トランスクリプトーム分析の結果
マイクロバイオプシーサンプルの組織タイプをさらに確認するために、主成分分析(PCA)を実施し、対照をとのクラスタリングパターンを評価した(
図9)。心筋のマイクロバイオプシーは、全血よりも従来の心筋の生検に近いクラスターを形成した。骨格筋は、血液および心臓サンプルとは別個のクラスターを形成した。心臓内組織は、心臓生検サンプルと一緒にクラスターを形成した。従来の心筋生検よりもマイクロバイオプシーの方が広がっていた。個々のサンプル対サンプル比較では、心臓サンプルではMYH7、骨格筋サンプルではMYH8、血液ではヘモグロビン関連の転写物など、期待される転写物が多く見られた。心筋における上位差次的に発現された遺伝子の遺伝子オントロジー(血液と比較した)は、マイクロバイオプシーサンプル中の心筋細胞機能および発達に関連する遺伝子の濃縮を示した。