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特許7516373バランスの取れた特性を備えたポリマーベースのフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】バランスの取れた特性を備えたポリマーベースのフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20240708BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240708BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240708BHJP
   C08F 210/16 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
C08L23/08
A61F13/514 100
C08F210/16
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021527039
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 US2019062750
(87)【国際公開番号】W WO2020112526
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】62/773,468
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハイチ、アンドリュー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リン、イーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ボナヴォグリア、バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】ハート、カイル イー.
(72)【発明者】
【氏名】デミロール、メフメト
(72)【発明者】
【氏名】チュア、ロウホア
(72)【発明者】
【氏名】トータ、マノジ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/152065(WO,A1)
【文献】特表2019-508551(JP,A)
【文献】特開2002-003661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08J 5/18
C08L
C08K
C08F 6/00-246/00;301/00
A61F 13/514
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20.0重量パーセント~69.5重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系ポリマーであって、前記LLDPE系ポリマーが、
3.0%~8.0%の高密度画分(HDF)であって、93℃~119℃の温度での結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、前記高密度画分(HDF)、
5.5~6.9のI10/I比であって、Iが、ASTM D1238に従って、2.16kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスであり、I10が、ASTM D1238に従って、10kgの荷重および190℃の温度で測定した場合の前記メルトインデックスである、I10/I比、ならびに
8.0℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)であって、CEF半値全幅によって測定される、前記短鎖分岐分布、を含む、LLDPE系ポリマーと、
0.0重量パーセント~10.0重量パーセントの低密度ポリエチレン(LDPE)系ポリマーと、
30.0重量パーセント~70.0重量パーセントの孔形成剤と、を含む、配向フィルム。
【請求項2】
前記配向フィルムが、40.0重量パーセント~60.0重量パーセントのLLDPE系ポリマーを含む、請求項1に記載の配向フィルム。
【請求項3】
前記LLDPE系ポリマーが、1.1~3.0のゼロせん断粘度比を有する、請求項1および2のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項4】
前記LLDPE系ポリマーが、5.5~6.5のI10/I比を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項5】
前記LLDPE系ポリマーが、0.910~0.925g/cmの密度を有し、密度がASTM D792、方法Bに従って測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項6】
前記LLDPE系ポリマーが、1.0~6.0g/10分のIを有し、IがASTM D1238に従って、2.16kgの荷重で測定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項7】
前記LLDPE系ポリマーが、3.0~4.0g/10分のIを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項8】
前記配向フィルムが、機械方向配向フィルムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項9】
前記配向フィルムが、2.5倍~6.0倍の機械方向配向比を有し、機械方向配向比が、MDOユニットに存在する前記配向フィルムの速度と前記MDOユニットに入る前記配向フィルムの速度との比として計算される、請求項8に記載の配向フィルム。
【請求項10】
前記配向フィルムが、5.0g以上の平均機械方向引裂きを有し、前記平均機械方向引裂きが、14gsmで測定されるエルメンドルフ引裂き強さASTM D1922に従って測定される、請求項1~9のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項11】
前記配向フィルムが、16.0ニュートン以上の、10%の伸びにおける平均機械方向力を有し、10%の伸びにおける平均機械方向力が、20インチ/分の引張速度で14gsmで測定されるASTM D638に従って測定される、請求項1~10のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項12】
前記配向フィルムが、15,000g/m/日以上の平均水蒸気透過度を有し、平均水蒸気透過度が、14gsm、100%RH、および38℃で測定されるASTM D6701に従って測定される、請求項1~11のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項13】
前記配向フィルムが、120水柱cm以上の静水圧を有し、前記静水圧が、14gsmで測定されるISO1420に従って測定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項14】
前記配向フィルムが、5.9ソーン未満のラウドネスを有し、前記ラウドネスが18gsmおよび5.2倍以下の機械方向配向比で測定されるか、または
前記配向フィルムが、6.3ソーン未満のラウドネスを有し、前記ラウドネスが18gsmおよび5.2倍超~5.8倍以下の機械方向配向比で測定される、請求項1~13のいずれか一項に記載の配向フィルム。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の配向フィルムを含む、衛生吸収性製品。
【請求項16】
前記配向フィルムが、延伸フィルムである、請求項1に記載の配向フィルム。
【請求項17】
前記配向フィルムが、2.5倍~6.0倍の延伸比を有する延伸フィルムであり、延伸比が、MDOユニットに存在する前記配向フィルムの速度と前記MDOユニットに入る前記配向フィルムの速度との比として計算される、請求項1に記載の配向フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月30日に出願された米国仮出願第62/773,468号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、高密度画分を有するエチレン系ポリマーから作製されたバランスの取れた特性を有する通気性バックシートに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーベースのフィルムは、例えば、おむつ、衛生パッド、包帯などのような製品で使用するためのバックシートとして最終製品で使用することができる。このようなフィルムは、一般に、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、および、例えば、炭酸カルシウム(CaCO)などの1つ以上の充填剤の混合物から作製される。これらのポリマーベースのフィルムは、それらが組み込まれる可能性のあるバックシートの性能を示すいくつかの特性に焦点を当てて配合される。これらの特性の中には、水蒸気透過度(WVTR)、静水圧、引裂き抵抗、ノイズ、および割線弾性係数がある。これらの特性の1つを高めると、これらの特性のうち1つ以上が一般に低下するため、これらすべての特性のバランスが良好であるポリマーベースのフィルムを形成することは困難である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、通気性バックシート業界における競争が激化するにつれて、エチレン系ポリマーの製造者は、より幅広い特性を備えた製品の作製に努めており、その結果、例えば、通気性バックシートなどの、特性のバランスが改善された製品が生まれている。そのため、例えば、高密度画分などの、より幅広い特性を有するエチレン系ポリマーを製造することができるプロセスに対する継続的なニーズが存在し、これらのエチレン系ポリマーを使用して、例えば、通気性バックシートなどの製品において改善された特性のバランスをもたらすことができる。第1の反応器の上流および第2の反応器の下流となるように触媒入口の位置を制御することにより、エチレン系ポリマーを生成する際に、触媒の存在下での成分の反応をより良好に制御することができることが見出された。さらに、触媒は、反応器の大部分と比較して、流れ制限領域内の成分と組み合わされるため、触媒と該成分は、それらが第2の反応器に到達する前に十分に混合され、第2の反応器は、非撹拌反応器であり得、コストとエネルギー消費が削減される。
【0005】
したがって、本開示の実施形態は、エチレン系ポリマーで作製された通気性バックシートに関する。
【0006】
本開示の実施形態は、20.0重量パーセント~69.5重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系ポリマーであって、このLLDPE系ポリマーは、3.0%~10.0%の高密度画分(HDF)であって、93℃~119℃の温度での結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、高密度画分(HDF)、5.5~6.9のI10/I比であって、Iは、ASTM D1238に従って、2.16kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスであり、I10は、ASTM D1238に従って、10kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスである、I10/I比、ならびに8.0℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)であって、CEF半値全幅によって測定される、短鎖分岐分布、を含む、LLDPE系ポリマーと、0.0重量パーセント~10.0重量パーセントの低密度ポリエチレン(LDPE)系ポリマーと、30.0重量パーセント~70.0重量パーセントの孔形成剤と、を含むフィルムに関する。
【0007】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明において記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の発明を実施するための形態、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本明細書に記載される実施形態を実施することによって認識されるであろう。
【0008】
上記の一般的な説明および下記の発明を実施するための形態の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質および特徴を理解するための概要または枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付の図面は、様々な実施形態のさらなる理解を提供するために含められ、本明細書内に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本明細書に記載される様々な実施形態を例示し、説明と共に、特許請求される主題の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本明細書に開示および記載される実施形態による、高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成するためのシステムを概略的に示す。
図2】本明細書に開示および記載される実施形態に従って製造された実施例1、および比較例1~5のフィルムの特性をグラフで示す。
図3A】本明細書に開示および記載される実施形態による、ノイズを測定するための試験装置の概略図である。
図3B】本明細書に開示および記載される実施形態による、ノイズを測定するための試験装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0011】
一実施形態によれば、フィルムは、20.0重量パーセント~69.5重量パーセントの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)系ポリマーであって、このLLDPE系ポリマーは、3.0%~10.0%の高密度画分(HDF)であって、93℃~119℃の温度での結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される、高密度画分(HDF)、5.5~6.9のI10/I比であって、Iは、ASTM D1238に従って、2.16kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスであり、I10は、ASTM D1238に従って、10kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスである、I10/I比、ならびに8.0℃以下の短鎖分岐分布(SCBD)であって、CEF半値全幅によって測定される、短鎖分岐分布、を含む、LLDPE系ポリマーと、0.0重量パーセント~10.0重量パーセントの低密度ポリエチレン(LDPE)系ポリマーと、30.0重量パーセント~70.0重量パーセントの孔形成剤と、を含む。
【0012】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。このため、総称のポリマーは、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称である共重合体という用語は、コポリマーと、ターポリマー等の3つのタイプ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーとを含む。
【0013】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」は、溶液重合を行う容器であり、エチレンモノマーおよび少なくともC~C12α-オレフィンコモノマーが、触媒を含有する非反応性溶媒に溶解した後に共重合する。溶液重合プロセスでは、水素が利用され得るが、すべての溶液重合プロセスにおいて必要なわけではない。
【0014】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマー由来の50モル%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系のホモポリマーまたはコポリマー(単位が2つ以上のコモノマーに由来することを意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状と実質的に直鎖状との両方の低密度樹脂を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」または「高分岐ポリエチレン」をも指すことができ、オートクレーブ中または管状反応器中で、過酸化物などのフリーラジカル反応開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、ポリマーが部分的または全体的に単独重合または共重合されるものを意味すると定義される(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0016】
「LLDPE」という用語には、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、および拘束幾何触媒を含むが、これらに限定されない、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、およびシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂;ならびにビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)を含むが、これらに限定されないポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂を含む。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEには、LDPEよりも少ない長鎖分岐が含有され、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、および同第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号におけるものなどの均一分岐直鎖状エチレンポリマー、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたものなどの不均一分岐エチレンポリマー、ならびにそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号または同第5,854,045号に開示されるものなど)が含まれる。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意の種類の反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0017】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」および「活性化剤」という用語は、交換可能な用語である。
【0018】
「非撹拌反応器」という用語は、撹拌機、ミキサー、ニーダーなどによる撹拌などの機械的撹拌を含まない反応器を指す。非撹拌反応器の例には、プラグフロー反応器、タンク反応器、およびループ反応器が含まれ、これらはすべて撹拌機、ミキサーなどを備えていない。
【0019】
「ミキサー」という用語は、装置内に存在する成分を機械的に混合する装置を指す。ミキサーの例には、静的ミキサー、フローシェイパー、およびスターラー、ミキサー、ニーダーなどを含む容器が含まれる。実施形態では、モノマー、コモノマーなどのミキサー内に存在する成分は、ミキサー内で反応する。
【0020】
システム構成
次に、本明細書に開示および記載される実施形態による、高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成するためのシステムについて詳細に言及する。
【0021】
ここで図1を参照すると、実施形態による高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成するためのシステム100は、第1の反応器110および第1の反応器110に流体接続された第2の反応器120を含む。第1の反応器110および第2の反応器120に使用される反応器の種類は限定されず、実施形態では、溶液重合反応器として使用するのに好適な反応器である。実施形態では、第1の反応器110は、例えば、ループ反応器、等温反応器、断熱反応器、および連続撹拌槽型反応器などの撹拌溶液重合反応器であり、並列、直列、およびそれらの任意の組み合わせである。第2の反応器120は、実施形態によれば、例えば、非撹拌槽反応器または管状反応器(例えば、プラグフロー反応器、ピストンフロー反応器など)などの非撹拌溶液重合反応器である。
【0022】
実施形態によれば、1つ以上のミキサー130は、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に配置される。図1は1つのミキサーのみを示しているが、追加のミキサーは、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に直列または並列に配置できることを理解されたい。ミキサー130は、フローシェイパーまたは静的ミキサーであり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ミキサー130は、フローシェイパーおよび静的ミキサーを含み得る。本明細書で使用される「フローシェイパー」は、例えば、テーパパイプ、ディフューザー、またはノズルなどの構成要素流の流れを変更する任意の種類の装置であり得る。図1に示す実施形態などの実施形態では、ミキサー130および非撹拌レクター120は、別個の物理的装置であり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器120は、2つの別個のゾーンを有する単一の物理的装置であり得る。一例として、実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器120は両方とも細長い管内に収容され得る。静的ミキサーは、細長い管の第1の部分に配置され得るが、細長い管の第2の部分は、静的ミキサーまたは任意の他の種類の撹拌機を含まない。このような実施形態では、静的ミキサーが存在する細長い管の第1のゾーンはミキサー130であり、撹拌機が存在しない細長い管の第2のゾーンは非撹拌反応器120である。このような実施形態では、ミキサー130および非撹拌反応器は、単一の物理的装置に収容される。
【0023】
図1に示す実施形態に示すように、第1の反応器110は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーを含む供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で、水素(H)流102を受け入れるように構成される。供給流101、第1の触媒流103、および任意選択の水素流102の成分は、第1の反応器110内で反応し、第1のポリマー画分を生成する。この第1のポリマー画分は、第1の反応器110から流出物111aとして産出される。実施形態では、流出物111aは、第1のポリマー画分に加えて、未反応のエチレンモノマーおよび未反応C~C12α-オレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101の成分は、一緒にまたは別個の流として第1の反応器110に追加され得ることが理解されよう。例えば、エチレンモノマーおよび溶媒は、C~C12α-オレフィンコモノマーと異なる流として第1の反応器に添加してもよい。第1の反応器110へのエチレンモノマー、C~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒の順は限定されない。
【0024】
さらに図1を参照すると、第2の触媒流112は、第1の反応器110(すなわち、撹拌溶液重合反応器)の下流および第2の反応器120(すなわち、非撹拌溶液重合反応器)の上流の流出物111aに添加される。第2の触媒流112は、実施形態では、ミキサー130に添加することができる。他の実施形態では、第2の触媒流112は、ミキサー130の直前に加えることができる。第2の触媒流112は、第1の触媒流103とは異なる触媒を含み、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C~C12α-オレフィンコモノマーの反応を促進し、第2のポリマー画分を生成する。実施形態では、第2のポリマー画分は、第1のポリマー画分の密度およびメルトインデックス(I)とは異なる密度およびメルトインデックス(I)を有する。第1のポリマー画分、第2のポリマー画分、および第2の触媒を含む改変流出物111bは、ミキサー130から第2の反応器120に移る。
【0025】
追加のエチレンモノマー、追加のC~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒を含む第2の供給流の121は、第2の反応器120に移る。第2の供給流121からの追加のエチレンモノマーおよび追加のC~C12α-オレフィンコモノマーは、第2の反応器120に導入された第2の触媒の存在下で、改変流出物111bによって反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。したがって、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含むエチレン系ポリマーは、生成物流122において第2の反応器120から産出される。
【0026】
第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を導入することにより、第2の触媒流112は、第2の触媒を第2の反応器120に導入する前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C~C12α-オレフィンコモノマーと混合する。これは、第2の触媒が第2の反応器120に直接導入される場合に発生する一般的な問題を回避する。つまり、第2の反応器120に添加される第2の触媒の量を不必要に制限する第2の触媒入口の目詰まりである。したがって、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流に第2の触媒流112を提供することにより、第2の反応器120において撹拌は不要であり、これは装置および操業コストを削減することができる。ミキサー130は、流出物111aおよび第2の触媒流112を第2の反応器120に移す前に、流出物111aに存在する未反応のエチレンモノマーおよび未反応C~C12α-オレフィンコモノマーと第2の触媒流112を混合する。第2の触媒の存在下で、ミキサー130において未反応のエチレンモノマーと未反応C~C12α-オレフィンコモノマーとを混合することにより、低温および高エチレンモノマー濃度で、未反応のエチレンモノマーと未反応C~C12α-オレフィンコモノマーとの反応を可能にし、これにより、高密度の部分を有する第2のポリマー画分がミキサー130で形成される。
【0027】
さらに、いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを、第1の反応器110の下流および第2の反応器120の上流で、例えばミキサー130に添加し、改変流出物111bが第2の反応器120に入る前に、第2のポリマー画分の形成を促進し得る。いくつかの実施形態では、追加のエチレンモノマーを流出物111aに添加することができ(すなわち、第2の触媒流112をミキサー130に導入する前に)、他の実施形態では、追加のエチレンモノマーをミキサー130に添加することができる。
【0028】
方法および構成要素
次に、本明細書に開示および記載される実施形態による、高密度画分を有するエチレン系ポリマーを生成するための、上記に開示される実施形態のシステムで使用される方法および構成要素について詳細に言及する。
【0029】
本明細書で先に開示したように、図1を参照すると、撹拌溶液重合反応器である第1の反応器110は、供給流101、第1の触媒流103、および任意選択で、水素流102を受け入れる。供給流101の成分(任意選択で水素流102からの水素と)は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に導入される第1の触媒の存在下で反応し、第1のポリマー画分を形成する。第1のポリマー画分および未反応成分は、流出物111aを通じて第1の反応器110を出る。これらの流れの各々および第1の反応器110内の反応条件は、以下でより詳細に記載される。
【0030】
供給流101は、溶媒中にエチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、コモノマーは、C~Cα-オレフィンである。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、実施形態において、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から選択され得る。供給流中に存在する溶媒は、実施形態では、芳香族およびパラフィンの溶媒であり得る。いくつかの実施形態では、溶媒は、例えば、ExxonMobil Chemicalによって製造されるISOPAR Eなどのイソパラフィンであり得る。
【0031】
水素流102は、本質的に純粋な水素であり、実施形態では、97体積パーセント(vol.%)超の水素、例えば、98体積%超の水素、または99体積%超の水素を含む。
【0032】
第1の触媒は、第1の触媒流103を通じて第1の反応器110に添加され、エチレンモノマー、C~C12α-オレフィンコモノマー、および、任意に、水素の間の反応を促進する。実施形態で使用され得る触媒には、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、またはビス(ビフェニルフェノキシ)触媒が挙げられ得るが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細および例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、および国際公開第WO93/08221号に提供され、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒の詳細および例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号に提供されており、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。実施形態において、第1の触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも呼ばれる)を含むがこれらに限定されない分子触媒であり得る。
【0033】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒、該プロ触媒を活性化する共触媒、および他の任意選択の成分を含む多成分触媒系である。実施形態では、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含み得る。
【化1】
【0034】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、その金属は、+2、+3、または+4のホルマール酸化状態にあり、nは0、1、または2であり、nが1である場合、Xは単座配位子または二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は全体的に中性であり、OはO(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R)-、または-P(R)-から独立して選択され、Lは(C~C40)ヒドロカルビレンまたは(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、(C~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基(Lが結合している)を連結する1炭素原子~10炭素原子のリンカー骨格を含む部分を有するか、または(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結する1原子~10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子~10原子のリンカー骨格の1~10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は独立して、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、またはN(R)であり、各Rは独立して、(C~C30)ヒドロカルビルまたは(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、RおよびRは、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルから成る群から独立して選択される。
【化2】
【0035】
式(II)、(III)、および(IV)において、R31~35、R41~48、またはR51~59の各々は、RまたはRのうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルであることを条件として、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立して選択される。
【0036】
式(I)において、R2~4、R5~7、およびR9~16の各々は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立して選択される。
【0037】
式(I)~(IV)に示される組成物に存在することができる様々な官能基の詳細な実施形態を次に詳細に記載する。以下の官能基は例示的であり、実施形態に従って使用することができるビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒の非限定的な例を提供するために開示されることを理解されたい。
【0038】
本明細書で使用される「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、およびRなどのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R、R、R、R、およびRはすべて、置換アルキルであってもよく、またはRおよびRは、置換アルキルであってもよく、Rは、アリールであってもよい等)を示す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は、ヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を補足し、例示することを意図したものであり、排除するものではない。
【0039】
ある特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用される場合、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現または「C~C」の形態を有する括弧なしの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換されてもよい。括弧付きの「(C~C)」または括弧なしの「C~C」を使用して定義される化学基のR置換版は、任意の基Rの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「Rがフェニル(-C)である厳密に1つの基Rで置換された(C~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C~C)」括弧なしの「C~C」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子を含有する置換基Rによって置換される場合、化学基の炭素原子の最小および最大の合計数は、xとyとの両方に、炭素原子を含有する置換基Rすべてに由来する炭素原子の合計数を加えることによって決定される。
【0040】
いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、R等)の各々は、非置換であり、R置換基を有しない。他の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して1つもしくは2つ以上のRを含有し得る。いくつかの実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRの総数は、20個を超えない。他の実施形態において、化学基におけるRの総数は10を超えない。例えば、各R1~5が2つのRで置換された場合、XおよびZをRで置換することはできない。別の実施形態において、式(I)の金属-配位子錯体の化学基におけるRの総数は、5つのRを超えない場合がある。2つまたは3つ以上のRが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合する場合、各Rは独立して同じかまたは異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合し、化学基の過置換を含み得る。
【0041】
本明細書で使用される「置換」とは、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子もしくはヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。本明細書で使用される「過置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。本明細書で使用される「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。
【0042】
本明細書で使用されるように、「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一のことを意味する。
【0043】
本明細書で使用される「(C~C40)ヒドロカルビル」とは、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(二環式、3個以上の炭素原子を含む、単環式および多環式、縮合および非縮合を含む)または非環式であり、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換される。
【0044】
本開示で用いられるように、(C~C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換の(C~C40)アルキル、(C~C40)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、または(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態において、上記の(C~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子(すなわち、(C~C20)ヒドロカルビル)を有し、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0045】
本明細書で使用される「(C~C40)アルキル」および「(C~C18)アルキル」とは、1~40個の炭素原子または1~18個の炭素原子の飽和、直鎖または分岐の炭化水素ラジカルをそれぞれ意味し、該ラジカルは、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換される。非置換(C~C40)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。本明細書で使用される「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含むラジカルに最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C~C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0046】
本明細書で使用される「(C~C40)アリール」は、6~40個の炭素原子の非置換または置換(1つ以上のRによる)、単環式、二環式、または三環式の芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環式または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、1つの環は、芳香族であり、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環の少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C~C40)アリールの例は、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C~C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンである。置換(C~C40)アリールの例は、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0047】
本明細書で使用される「(C~C40)シクロアルキル」は、非置換であるかまたは1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)は、同様に、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換されているかのいずれかであると定義される。非置換(C~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C~C40)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0048】
(C~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換の(C~C40)アリーレン、(C~C40)シクロアルキレン、および(C~C40)アルキレン(例えば(C~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態において、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH-)であるか、または隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、または1個、2個、または2個より多くの介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれ、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CHCH-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C~C40)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される「(C~C40)アルキレン」は、非置換または1つ以上のRで置換された炭素原子1~40個の飽和、直鎖または分岐鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C~C40)アルキレンの例は、非置換-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHC*HCH、および-(CHC*(H)(CH)を含む非置換(C~C20)アルキレンであり、「C」は、第2級または第3級アルキルラジカルを形成するために水素原子が除去される炭素原子を意味する。置換(C~C40)アルキレンの例は、置換(C~C20)アルキレン、-CF-、-C(O)-、および-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。上記のように、2つのRは一緒になって、(C~C18)アルキレンを形成することができ、置換(C~C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「(C~C40)シクロアルキレン」とは、非置換または1つ以上のRによって置換されている3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0051】
本明細書で使用される「ヘテロ原子」とは、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、または-Si(R)-が挙げられ、各Rおよび各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各Rは非置換(C~C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子または分子骨格を指す。「(C~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素が1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子またはヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個または2個の炭素原子、(2)1個または2個のヘテロ原子、または(3)炭素原子とヘテロ原子上に存在し得る。(C~C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは各々、非置換または(1つ以上のRによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0052】
(C~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C~C40)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C~C40)ヘテロアルキル、(C~C40)ヒドロカルビル-O-、(C~C40)ヒドロカルビル-S-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C~C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C~C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C~C40)ヘテロシクロアルキル、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C20)シクロアルキル-(C~C19)ヘテロアルキレン、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)ヘテロアルキレン、(C~C50)ヘテロアリール、(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)アルキレン、(C~C20)アリール-(C~C19)ヘテロアルキレン、または(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0053】
本明細書で使用される「(C~C40)ヘテロアリール」とは、1~40個の総炭素原子および1~10個のヘテロ原子の非置換または置換(1つ以上のRによる)、単環式、二環式、または三環式のヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式ラジカルは、それぞれ1つ、2つまたは3つの環を含み、2つまたは3つの環は、独立して縮合または非縮合であり、2つまたは3つの環のうちの少なくとも1つはヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(C~C)ヘテロアリール、概して(C~C12)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(1~12個の炭素原子等)を有し、非置換であるか、または1つもしくは2つ以上のRによって置換されているものと類似した様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0054】
前述のヘテロアルキルは、(C~C40)の炭素原子またはそれより少ない炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルであってもよい。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子および1個もしくは2個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されるようなヘテロ原子は、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、およびS(O)を含んでもよく、ヘテロアルキル基およびヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、または1つ以上のRによって置換される。
【0055】
非置換(C~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、またはヨウ化物(I)のハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0057】
本明細書で使用される「飽和」とは、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素の二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rで置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択で、置換基R中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を含有すること、存在する場合、置換基R中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0058】
上記のように、第1の触媒は、実施形態では、プロ触媒(例えば、上記のビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒など)と、プロ触媒を活性化する1つ以上の共触媒とを含み得る。実施形態に従って使用するのに好適な活性化共触媒として、アルキルアルミニウム、ポリマーまたはオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られる)、中性または強いルイス酸、および非ポリマー性、非配位性のイオン形成化合物が挙げられる(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)。例示的な好適な共触媒としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、トリエチルアルミニウム(TEA)およびこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化共触媒および技術のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。本明細書で使用される「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハロゲン化物、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハロゲン化物、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0059】
実施形態によるルイス酸活性化剤(共触媒)は、本明細書に記載するように、1~3つの(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウムまたはトリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態において、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換アルミニウム、トリ(ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、およびそのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化共触媒は、テトラキス((C~C20)ヒドロカルビルボレート(例えば、トリチルテトラフルオロボレート)またはトリ((C~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C~C20)ヒドロカルビル)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C~C20)ヒドロカルビルN(H) 、またはN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0060】
本明細書に記載するような中性ルイス酸活性化剤(共触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、とりわけ、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモルの数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では1:1:1.5~1:5:10である。
【0061】
実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と1つ以上の活性化共触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、他のいくつかの実施形態では少なくとも1:1000、および10:1以下であり、さらにいくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサン単独が活性化共触媒として使用される場合、いくつかの実施形態では、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化共触媒として使用する場合、他のいくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数を、0.5:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~5:1とする。残りの活性化共触媒は一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0062】
ここで、第1の触媒(上記で提供された実施形態)の存在下で、エチレンモノマー、C~C12α-オレフィンコモノマー、および、任意選択で水素を反応させるための第1の反応器110における反応条件を記載する。
【0063】
第1の触媒の存在下で、エチレンモノマーとC~C12α-オレフィンコモノマーとの反応を促進するために、実施形態では、第1の反応器110は、155℃~190℃、例えば160℃~190℃、165℃~190℃、170℃~190℃、175℃~190℃、180℃~190℃、または185℃~190℃の温度まで加熱される。実施形態では、第1の反応器は、155℃~185℃、例えば、155℃~180℃、155℃~175℃、155℃~170℃、155℃~165℃、または155℃~160℃の温度まで加熱される。上記の温度範囲は、その中に記載された終点を含み(例えば、「155℃~190℃」は、155℃および190℃の両方を含む)、第1の反応器110の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアを用いて測定され得ることを理解されたい。
【0064】
実施形態では、第1の反応器110に導入される供給流101は、高濃度のエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、70グラム/リットル(g/L)~135g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、供給流101は、75g/L~135g/Lのエチレンモノマー、例えば、80g/L~135g/Lのエチレンモノマー、85g/L~135g/Lのエチレンモノマー、90g/L~135g/Lのエチレンモノマー、95g/L~135g/Lのエチレンモノマー、100g/L~135g/Lのエチレンモノマー、105g/L~135g/Lのエチレンモノマー、110g/L~135g/Lのエチレンモノマー、115g/L~135g/Lのエチレンモノマー、120g/L~135g/Lのエチレンモノマー、125g/L~135g/Lエチレンモノマー、または130g/L~135g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、供給流101は、70g/L~130g/Lのエチレンモノマー、例えば、70g/L~125g/Lのエチレンモノマー、70g/L~120g/Lのエチレンモノマー、70g/L~115g/Lのエチレンモノマー、70g/L~110g/Lのエチレンモノマー、70g/L~105g/Lのエチレンモノマー、70g/L~100g/Lのエチレンモノマー、70g/L~95g/Lのエチレンモノマー、70g/L~90g/Lのエチレンモノマー、70g/L~85g/Lのエチレンモノマー、70g/L~80g/Lエチレンモノマー、または70g/L~75g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0065】
供給流101中のコモノマーの濃度は、限定されず、0.0g/L~95.0g/L、例えば5.0g/L~95.0g/L、15.0g/L~95.0g/L、25.0g/L~95.0g/L、35.0g/L~95.0g/L、45.0g/L~95.0g/L、55.0g/L~95.0g/L、65.0g/L~95.0g/L、75.0g/L~95.0g/L、または85.0g/L~95.0g/Lの濃度で存在することができる。いくつかの実施形態では、供給流101中のコモノマーの濃度は、0.0g/L~90.0g/L、0.0g/L~80.0g/L、0.0g/L~70.0g/L、0.0g/L~60.0g/L、0.0g/L~50.0g/L、0.0g/L~40.0g/L、0.0g/L~30.0g/L、0.0g/L~20.0g/L、または0.0g/L~10.0g/Lである。
【0066】
実施形態では、第1の触媒は、0.06マイクロモル/リットル(μモル/L)~3.00μモル/L、例えば、0.500μモル/L~3.00μモル/L、1.00μモル/L~3.00μモル/L、1.50μモル/L~3.00μモル/L、2.00μモル/L~3.00μモル/L、または2.50μモル/L~3.00μモル/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。実施形態では、第1の触媒は、0.06μモルL~2.50μモル/L、例えば、0.06μモル/L~2.00μモル/L、0.06μモル/L~1.50μモル/L、0.06μモル/L~1.00μモル/L、0.06μモル/L~0.500μモル/L、0.06μモル/L~0.250μモル/L、または0.06μモル/L~0.100μモル/Lの濃度で第1の反応器110に存在する。
【0067】
これらの反応条件下で、エチレンモノマー、C~C12α-オレフィンコモノマー、および、任意選択で水素は、第1の触媒、例えば上記の触媒などの存在下で反応させ、第1のポリマー画分を形成する。実施形態では、この第1のポリマー画分は、ミキサー130で形成された第2のポリマー画分よりも密度が低く、メルトインデックス(I)が低い。
【0068】
本開示において上述したように、少なくとも第1のポリマー画分、未反応のエチレンモノマー、および未反応C~C12α-オレフィンコモノマーは、第1の反応器110を出て流出物111aに入る。第2の触媒は第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入され、未反応のエチレンモノマーおよび未反応のC~C12α-オレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、第2のポリマー画分を形成する。供給流101および流出物111aの両方に存在する高濃度のエチレンモノマーは、第2の触媒流112がミキサー130で流出物111aに導入され、第2のポリマー画分の形成を可能にする際に十分なエチレンが存在することを確実にする。
【0069】
実施形態では、流出物111aは、20グラム/リットル(g/L)~45g/Lのエチレンモノマーを含む。いくつかの実施形態では、流出物111aは、25g/L~45g/Lのエチレンモノマー、例えば、30g/L~45g/Lのエチレンモノマー、35g/L~45g/Lのエチレンモノマー、または40g/L~45g/Lのエチレンモノマーを含む。他の実施形態では、流出物111aは、20g/L~40g/Lのエチレンモノマー、例えば、20g/L~35g/Lのエチレンモノマー、20g/L~30g/Lのエチレンモノマー、または20g/L~25g/Lのエチレンモノマーを含む。
【0070】
改変された流出物111b(エチレンモノマー、C~C12α-オレフィンコモノマー、第2の触媒、および第2のポリマー画分を含む)は、ミキサー130の中を第2の反応器120に向かって進み、改変された流出物111bに存在するエチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し続け、第2のポリマー画分を形成する。第2の触媒流112が、流出物111aに導入される温度は、第1の反応器110内の温度(すなわち、155℃~190℃)にほぼ等しく、これは、第2の反応器内の温度よりも低いことを理解されたい。さらに、エチレンモノマーは第1の反応器110で反応して第1のポリマー画分を形成するが、第1の反応器110に導入されるエチレンの量は、流出物111a中の未反応エチレンモノマーの濃度が第2のポリマー画分を形成するのに十分であるような量である。いくつかの実施形態では、追加の新鮮なエチレンモノマーを、流出物111a(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入される前)または改変された流出物111b(すなわち、第2の触媒流112が流出物に導入された後)のいずれかに添加することができる。実施形態では、第2の触媒の存在下におけるエチレンモノマーとC~C12α-オレフィンコモノマーとの反応は、ミキサー130で生じる。改変された流出物111bは第2の反応器120に導入される前に、第2の触媒の存在下でエチレンモノマーとC~C12α-オレフィンコモノマーとを反応させ、高密度画分を有する第2のポリマー画分を生成し、それにより、密度およびメルトインデックスのバランスがより良好なエチレン系ポリマーが得られる。特定の理論に拘束されることなく、改変された流出物111bの比較的低い温度および改変された流出物111b中の高濃度のエチレンモノマーは、例えば、第2の触媒が第2の反応器およびより高温で添加される従来のプロセスで達成される伝播速度よりも2~4倍高い伝播速度などの伝播速度の増加をもたらすと考えられる。伝播速度の増加は、エチレン系ポリマーにおいて高密度画分を提供すると考えられる。
【0071】
第2の触媒流112を通じて流出物111aに導入される第2の触媒は、実施形態では、上記で詳細に説明されたチーグラー・ナッタ触媒または第2の分子触媒である。実施形態において、例示的なチーグラー・ナッタ触媒は、(1)有機マグネシウム化合物、(2)ハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アルミニウムまたは塩化水素、および(3)遷移金属化合物から誘導されるものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.et al.)、同第4,547,475号(Glass et al.)、および同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、その教示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。チーグラー・ナッタ・プロ触媒は、(a)炭化水素に可溶な有機マグネシウム化合物またはその複合体と活性な非金属または金属ハロゲン化物とを反応させてハロゲン化マグネシウム担体を形成すること、b)ハロゲン化マグネシウム担体を、調整されたハロゲン化マグネシウム支持体を形成するのに十分な条件下で、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムおよびテルルからなる群から選択される元素を含む調整化合物と接触させること、(c)ハロゲン化マグネシウム担体と、第1の金属としてチタンを含む化合物とを接触させて、担持チタン化合物を形成すること、(d)任意選択で、第2の金属および第3の金属が同じでないという条件で、さらにマグネシウムとチタンおよび第2および第3の金属の組み合わせとのモル比が30:1~5:1の範囲であるという条件で、担持チタン化合物と、遷移金属系列から独立して選択される第2の金属および任意選択で第3の金属とを接触させること、によって、すべてプロ触媒を形成するのに十分な条件下で、形成することができる。
【0072】
特に、チーグラー・ナッタ触媒で使用するのに好適な有機マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムジアルキルおよびマグネシウムジアリールなどの炭化水素に可溶なジヒドロカルビルマグネシウムが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアルキルとしては、特に、n-ブチル-secブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシル-マグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム等が挙げられ、アルキルが1~20個の炭素原子を有する。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシドならびにアリールオキシド、ならびにアリールおよびアルキルマグネシウムハロゲン化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、有機マグネシウム化合物は、ハロゲンを含まない有機マグネシウムである。
【0073】
改変された流出物111b(未反応メチレン、未反応C~C12α-オレフィンコモノマー、第2の触媒、第1のポリマー画分、および第2のポリマー画分を含む)は、第2の反応器120に導入される前に、3分~5分、または3分~4分など、3分~6分の持続時間、ミキサー130中に存在する。
【0074】
改質された流出物111bが、非撹拌溶液重合反応器である第2の反応器120に導入された後、改変された流出物111bは、第1の反応器110の温度よりも高く、ミキサー130内の改変された流出物111bの温度よりも高い温度まで加熱される。実施形態では、第2の反応器120内の温度は、190℃~265℃である。第2の反応器内120の温度は、いくつかの実施形態では、195℃~265℃、例えば、200℃~265℃、205℃~265℃、210℃~265℃、215℃~265℃、220℃~265℃、225℃~265℃、230℃~265℃、235℃~265℃、240℃~265℃、240℃~265℃、245℃~265℃、250℃~265℃、または255℃~265℃である。他の実施形態では、第2の反応器内の温度は、190℃~260℃、例えば、190℃~255℃、190℃~250℃、190℃~245℃、190℃~240℃、190℃~235℃、190℃~230℃、190℃~225℃、190℃~220℃、190℃~215℃、190℃~210℃、190℃~205℃、190℃~200℃、または190℃~195℃である。上記の温度範囲は、その中に記載された終点を含み(例えば、「190℃~265℃」は、190℃および265℃の両方を含む)、第2の反応器120の温度は、任意の従来の反応器温度監視システムおよびソフトウェアを用いて測定され得ることを理解されたい。
【0075】
第2の反応器120に入る改変流出物111b中の未反応エチレンモノマーおよび未反応C~C12α-オレフィンコモノマーは、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。加えて、溶媒中にエチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーを含む第2の供給流121は、第2の反応器120に導入される。第2の供給流121からのエチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーも、第2の触媒の存在下で反応し、追加の第2のポリマー画分を形成する。図1は、第2の供給流121を単一の供給流として示しているが、成分は、第2の反応器120に個別に導入され得ることを理解されたい。
【0076】
第2の反応器120で十分な時間が経過した後、エチレン系ポリマーを含む生成物流122は、第2の反応器120を出る。生成物流122に存在するエチレン系ポリマーの特性は、以下でより詳細に説明される。図1には示されていないが、生成物流122中に存在する任意の未反応のエチレンモノマー、未反応のC~C12α-オレフィンコモノマー、および溶媒は、エチレン系ポリマーから分離され、第1の反応器110への供給流101、または第2の反応器120への第2の供給流121において、システム100または200に再循環され得ることを理解されたい。
【0077】
システム100におけるエチレンモノマーの過剰変換率は、90%~94%、例えば、91%~94%、92%~94%、または93%~94%である。
【0078】
エチレン系ポリマーの特性
ここで、本明細書に開示および記載される実施形態に従って生成されたエチレン系ポリマーの例示的な特性を提供する。上記のように、特定の理論に拘束されることなく、以下に列挙される例示的な特性の組み合わせは、上記に開示および説明されたプロセスおよびシステムによって可能になると考えられる。
【0079】
実施形態によれば、エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定された0.900~0.925g/ccの密度を有し得る。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.925g/cc、例えば、0.915g/cc~0.925g/cc、または0.920g/cc~0.925g/ccの密度を有する。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.910g/cc~0.920g/cc、例えば、0.910g/cc~0.915g/ccの密度を有する。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.912g/cc~0.920g/cc、または0.910g/cc~0.918g/ccの密度を有する。上記の密度範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0080】
実施形態のエチレン系ポリマーは、3.0%~10.0%、例えば、3.5%~10.0%、4.0%~10.0%、5.5%~10.0%、6.0%~10.0%、6.5%~10.0%、7.0%~10.0%、7.5%~10.0%、8.0%~10.0%、8.5%~10.0%、9.0%~10.0%、または9.5%~10.0の高密度画分(HDF)(93℃~119℃の温度での結晶化溶出分別(CEF)積分によって測定される)を有する。他の実施形態では、実施形態のエチレン系ポリマーは、3.0%~9.5%、例えば、3.0%~9.0%、3.0%~8.5%、3.0%~8.0%、3.0%~7.5%、3.0%~7.0%、3.0%~6.5%、3.0%~6.0%、3.0%~5.5%、3.0%%~5.0%、3.0%~4.5%、または3.0%~4.0%のHDFを有する。さらに他の実施形態では、実施形態のエチレン系ポリマーは、3.5%~9.5%、例えば、4.0%~9.0%、4.5%~8.5%、5.0%~8.0%、5.5%~7.5%、または6.0%~7.0のHDFを有する。上記のHDF範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0081】
実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.0グラム/10分(g/10分)~6.0g/10分、例えば、1.5g/10分~6.0g/10分、2.0g/10分~6.0g/10分、2.5g/10分~6.0g/10分、3.0g/10分~6.0g/10分、3.5g/10分~6.0g/10分、4.0g/10分~6.0g/10分、4.5g/10分~6.0g/10分、5.0g/10分~6.0g/10分、または5.5g/10分~6.0g/10分のメルトインデックス(I)(ASTM D1238に従って、2.16kgの荷重で測定される)を有する。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.0g/10分~5.5g/10分、例えば、1.0g/10分~5.5g/10分、1.0g/10分~4.5g/10分、1.0g/10分~4.0g/10分、1.0g/10分~3.5g/10分、1.0g/10分~3.0g/10分、1.0g/10分~2.5g/10分、1.0g/10分~2.0g/10分、または1.0g/10分~1.5g/10分のIを有する。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.0g/10分~4.5g/10分、例えば、1.5g/10分~4.0g/10分、2.0g/10分~4.0g/10分、3.0g/10分~4.0g/10分、または3.0g/10分~3.5g/10分のIを有する。上記のI範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0082】
エチレン系ポリマーは、5.5~6.9、例えば、5.7~6.9、5.9~6.9、6.0~6.9、6.2~6.9、6.4~6.9、6.6~6.9、または6.8~6.9のI10/I比(Iは、ASTM D1238に従って、2.16kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスであり、I10は、ASTM D1238に従って、10kgの荷重および190℃の温度で測定した場合のメルトインデックスである)を有し得る。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.5~6.8、例えば、5.5~6.6、5.5~6.4、5.5~6.2、5.5~6.0、5.5~5.8、または5.5~5.6のI10/I比を有し得る。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.6~6.8、例えば、5.7~6.7、5.8~6.6、5.9~6.5、6.0~6.4、または6.1~6.3のI10/I比を有し得る。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.5~6.5のI10/I比を有し得る。上記のI10/I比範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0083】
エチレン系ポリマーの短鎖分岐分布(SCBD)は、実施形態によれば、CEF半値全幅によって測定された10℃未満である。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーのSCBDは、8.0℃未満、例えば、7.5℃未満、7.0℃未満、6.5℃未満、6.0℃未満、5.0℃未満である。上記のSCBD範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0084】
エチレン系ポリマーは、実施形態によれば、1.1~3.0、例えば、1.2~3.0、1.3~3.0、1.4~3.0、1.5~3.0、1.6~3.0、1.7~3.0、1.8~3.0、1.9~3.0、2.0~3.0、2.1~3.0、2.2~3.0、2.3~3.0、2.4~3.0、2.5~3.0、2.6~3.0、2.7~3.0、2.8~3.0、または2.9~3.0のゼロせん断粘度比(ZSVR)を有する。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.1~2.9、1.1~2.8、1.1~2.7、1.1~2.6、1.1~2.5、1.1~2.4、例えば、1.1~2.3、1.1~2.2、1.1~2.1、1.1~2.0、1.1~1.9、1.1~1.8、1.1~1.7、1.1~1.6、1.1~1.5、1.1~1.4、1.1~1.3、または1.1~1.2のゼロせん断粘度比を有する。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、1.2~2.9、例えば、1.3~2.8、1.4~2.7、1.5~2.6、1.6~2.5、1.7~2.4、1.8~2.3、1.9~2.2、または2.0~2.1のゼロせん断粘度比を有する。上記のゼロせん断粘度比の範囲には本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0085】
実施形態によれば、エチレン系ポリマーは、70.0重量パーセント(重量%)~95.0重量%の第1のポリマー画分、および8.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分を含む。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、72.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、例えば、74.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、76.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、78.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、80.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、82.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、84.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、86.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、88.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分、または90.0重量%~95.0重量%の第1のポリマー画分を含む。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、70.0重量%~92.0重量%の第1のポリマー画分、例えば、70.0重量%~90.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~88.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~86.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~84.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~82.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~80.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~78.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~76.0重量%の第1のポリマー画分、70.0重量%~74.0重量%の第1のポリマー画分、または70.0重量%~72.0重量%の第1のポリマー画分を含む。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、72.0重量%~92.0重量%の第1のポリマー画分、例えば、74.0重量%~90.0重量%の第1のポリマー画分、76.0重量%~88.0重量%の第1のポリマー画分、78.0重量%~86.0重量%の第1のポリマー画分、または80.0重量%~84.0重量%の第1のポリマー画分を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0086】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、例えば、8.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、10.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、12.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、14.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、16.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、18.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、20.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、22.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、24.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、26.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分、または28.0重量%~30.0重量%の第2のポリマー画分を含む。他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.0重量%~28.0重量%の第2のポリマー画分、例えば、5.0重量%~26.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~24.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~22.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~20.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~18.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~16.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~14.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~12.0重量%の第2のポリマー画分、5.0重量%~10.0重量%の第2のポリマー画分、または5.0重量%~8.0重量%の第2のポリマー画分を含む。さらに他の実施形態では、エチレン系ポリマーは、5.0重量%~28.0重量%の第2のポリマー画分、6.0重量%~26.0重量%の第2のポリマー画分、8.0重量%~24.0重量%の第2のポリマー画分、10.0重量%~22.0重量%の第2のポリマー画分、12.0重量%~20.0重量%の第2のポリマー画分、または14.0重量%~18.0重量%の第2のポリマー画分を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0087】
エチレン系ポリマーの各ポリマー画分の量は、用途または使用に基づいて調整され得る。例えば、低温用途(例えば、0℃未満)と、エチレン系ポリマーがより高い温度(例えば、40℃超の温度)に曝される用途とでは、特性のバランスが異なることが望ましい場合がある。
【0088】
実施形態では、第2のポリマー画分のメルトインデックスおよび密度は、ミキサー130および第2の反応器120の反応環境で形成されるポリマー画分からなる。ミキサー130で作製されたポリマー画分は、より低いメルトインデックス(MI)を有し、第2の反応器120で形成されたポリマー画分は、より高いMIを有する(例えば、ミキサー130で形成されたポリマー画分よりも約4倍高い)。ミキサー130および第2の反応器120で形成され組み合わされた第2のポリマー画分は、第1のエチレン系ポリマー画分の密度よりも少なくとも0.03g/cc大きい高密度画分を有し、例えば、CEFピーク温度で示されるように少なくとも0.04g/cc大きい密度である。さらに、本明細書に開示および記載される実施形態によるエチレン系ポリマーを形成するためのプロセスを用いると、最終的なエチレン系ポリマー(すなわち、第1のポリマー画分および第2のポリマー画分を含む)は、第1のポリマー画分より高い密度およびより高いメルトインデックス(I)を有する。また、ミキサーで形成された第2のポリマー画分の部分は、第2の非撹拌反応器で形成された第2のポリマー画分の部分よりも高分子量である。
【0089】
いくつかのプロセスでは、可塑剤などの加工助剤も、エチレン系ポリマー生成物に含められ得る。これらの助剤としては、ジオクチルフタレートまたはジイソブチルフタレートなどのフタレート、ラノリンなどの天然油、ならびに石油精製から得られるパラフィン、ナフテン、および芳香油、ならびにロジンまたは石油原料からの液体樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。加工助剤として有用な、例示的な部類の油としては、KAYDOL油(Chemtura Corp.,Middlebury、Conn.)、およびSHELLFLEX 371ナフテン油(Shell Lubricants、Houston、Tex.)などの白色鉱油が挙げられる。別の好適な油は、TUFFLO油(Lyondell Lubricants、Houston、Tex.)である。
【0090】
いくつかのプロセスでは、エチレン系ポリマー組成物は、1つ以上の安定剤、例えば、IRGANOX 1010およびIRGAFOS168(Ciba Specialty Chemicals;Glattbrugg,Switzerland)などの酸化防止剤で処理される。一般に、ポリマーは、押出または他の溶融プロセスの前に、1つ以上の安定剤で処理される。他の実施形態のプロセスでは、他のポリマー添加剤としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、核形成剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、煙抑制剤、粘度調整剤、およびブロッキング防止剤が挙げられるが、これらに限定されない。エチレン系ポリマー組成物は、例えば、エチレン系ポリマー組成物の重量に基づいて、10パーセント未満の1つ以上の添加剤の合計重量を含み得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、1つ以上の酸化防止剤は、エチレン系ポリマー組成物および/または配合ポリマーにさらに添加され得る。エチレン系ポリマー組成物は、任意の量の1つ以上の酸化防止剤を含有し得る。例えば、エチレン系ポリマー組成物は、エチレン系ポリマー組成物100万部当たり、200~600部の1つ以上のフェノール系酸化防止剤を含み得る。加えて、エチレン系ポリマー組成物は、エチレン系ポリマー組成物100万部当たり、800~1200部のホスファイト系酸化防止剤を含み得る。
【0092】
添加剤およびアジュバントは、形成後のエチレン系ポリマー組成物に添加され得る。好適な添加剤としては、粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末状金属を含む有機または無機粒子、炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線またはメッシュ、およびナイロンまたはポリエステルコーディングを含む有機または無機繊維、ナノサイズの粒子、粘土などの充填剤、粘着付与剤、パラフィン油またはナフテン油を含む油エクステンダー、ならびに実施形態の方法に従って作製されるまたは作製され得る他のポリマーを含む他の天然および合成ポリマーが挙げられる。
【0093】
フィルムの組成および特性
実施形態では、ポリマーベースのフィルムは、本明細書に開示および記載されるエチレン系ポリマーを含む組成物で形成することができる。いくつかの実施形態では、フィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態によるLLDPE(例えば、本明細書に開示されるHDF、I10/I比、SCBDなどのうちの1つ以上を有するLLDPE)、LDPE、および孔形成剤を含む組成物から作製してよい。1つ以上の実施形態では、ポリマーベースのフィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態による20.0重量パーセント(重量%)~69.5重量%のLLDPE、0.5重量%~10.0重量%のLDPE、および30.0重量%~70.0重量%の孔形成剤を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0094】
実施形態では、フィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態による20.0重量%~69.5重量%、例えば、25.0重量%~69.5重量%、30.0重量%~69.5重量%、35.0重量%~69.5重量%、40.0重量%~69.5重量%、45.0重量%~69.5重量%、50.0重量%~69.5重量%、55.0重量%~69.5重量%、60.0重量%~69.5重量%、または65.0重量%~69.5重量%のLLDPEを含み得る。他の実施形態では、フィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態による20.0重量%~65.0重量%、例えば、20.0重量%~60.0重量%、20.0重量%~55.0重量%、20.0重量%~50.0重量%、20.0重量%~45.0重量%、20.0重量%~40.0重量%、20.0重量%~35.0重量%、20.0重量%~30.0重量%、または20.0重量%~25.0重量%のLLDPEを含み得る。さらに他の実施形態では、フィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態による25.0重量%~65.0重量%、例えば、30.0重量%~60.0重量%、35.0重量%~55.0重量%、または40.0重量%~50.0重量%のLLDPEを含み得る。さらなる実施形態では、フィルムは、本明細書に開示および記載される実施形態による40.0重量%~60.0重量%のLLDPEを含み得る。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0095】
実施形態では、フィルムは、0.0重量%のLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、フィルムは、0.0重量%~10.0重量%、例えば、0.5重量%~10.0重量%、1.0重量%~10.0重量%、1.5重量%~10.0重量%、2.0重量%~10.0重量%、2.5重量%~10.0重量%、3.0重量%~10.0重量%、3.5重量%~10.0重量%、4.0重量%~10.0重量%、4.5重量%~10.0重量%、5.0重量%~10.0重量%、5.5重量%~10.0重量%、6.0重量%~10.0重量%、6.5重量%~10.0重量%、7.0重量%~10.0重量%、7.5重量%~10.0重量%、8.0重量%~10.0重量%、8.5重量%~10.0重量%、9.0重量%~10.0重量%、または9.5重量%~10.0重量%のLDPEを含み得る。いくつかの実施形態では、フィルムは、0.5重量%~9.5重量%、例えば、0.5重量%~9.0重量%、0.5重量%~8.5重量%、0.5重量%~8.0重量%、0.5重量%~7.5重量%、0.5重量%~7.0重量%、0.5重量%~6.5重量%、0.5重量%~6.0重量%、0.5重量%~5.5重量%、0.5重量%~5.0重量%、0.5重量%~4.5重量%、0.5重量%~4.0重量%、0.5重量%~3.5重量%、0.5重量%~3.0重量%、0.5重量%~2.5重量%、0.5重量%~2.0重量%、0.5重量%~1.5重量%、または0.5重量%~1.0重量%のLDPEを含み得る。さらに他の実施形態では、フィルムは、1.0重量%~9.5重量%、例えば、1.5重量%~9.0重量%、2.0重量%~8.5重量%、2.5重量%~8.0重量%、3.0重量%~7.5重量%、3.5重量%~7.0重量%、4.0重量%~6.5重量%、4.5重量%~6.0重量%、または5.0重量%~5.5重量%のLDPEを含み得る。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0096】
本明細書に記載されるように、「LDPE」という用語は、オートクレーブ中または管状反応器中で、過酸化物などのフリーラジカル反応開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、ポリマーが部分的または全体的に単独重合または共重合されるものを意味すると定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。いくつかの実施形態によれば、フィルムに使用されるLDPEは、Dow Chemical Companyによって製造されたAGILITY(商標)EC 7000、LDPE 450E、LDPE 410E、LDPE 310E、およびLDPE PG7008であってもよい。
【0097】
実施形態によるフィルムは、30.0重量%~70.0重量%、例えば、35.0重量%~70.0重量%、40.0重量%~70.0重量%、45.0重量%~70.0重量%、50.0重量%~70.0重量%、55.0重量%~70.0重量%、60.0重量%~70.0重量%、または65.0重量%~70.0重量%の孔形成剤を含む。他の実施形態では、フィルムは、30.0重量%~65.0重量%、例えば、30.0重量%~60.0重量%、30.0重量%~55.0重量%、30.0重量%~50.0重量%、30.0重量%~45.0重量%、30.0重量%~40.0重量%、または30.0重量%~35.0重量%の孔形成剤を含む。さらに他の実施形態では、フィルムは、35.0重量%~65.0重量%、例えば、40.0重量%~60.0重量%、または45.0重量%~55.0重量%の孔形成剤を含む。上記の重量パーセントの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0098】
実施形態で使用することができる孔形成剤には、Imerysによって製造されたFilmlink(商標)500またはOmyaによって製造されたOmyafilm(商標)753などの炭酸カルシウム(CaCO)が含まれる。
【0099】
フィルムは、それら全体が、すべて、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,176,952号、米国特許第3,338,992号、米国特許第3,502,538号、米国特許第3,502,763号、米国特許第3,849,241号、米国特許第4,041,203号、米国特許第4,340,563号、米国特許第4,374,888号、米国特許第5,169,706号、米国特許第7,230,511号およびWO2017/152065に開示されている、プロセスなどの任意のプロセスによって、本明細書に開示されている組成物から形成することができる。
【0100】
本明細書で形成されるフィルムは、実施形態によれば、機械方向配向フィルムである。様々な実施形態において、機械方向配向フィルムは、2.5倍~6.0倍、例えば、3.0倍~6.0倍、3.5倍~6.0倍、4.0倍~6.0倍、4.5倍~6.0倍、5.0倍~6.0倍、または5.5倍~6.0倍の配向比を有し得る。他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、2.5倍~5.5倍、例えば、2.5倍~5.0倍、2.5倍~4.5倍、2.5倍~4.0倍、2.5倍~3.5倍、または2.5倍~3.0倍の配向比を有し得る。さらに他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、3.0倍~5.5倍、例えば、3.5倍~5.0倍、または4.0倍~4.5倍の配向比を有し得る。上記の配向比の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。上記の延伸比は、MDOユニットを出るフィルムの速度とMDOユニットに入るフィルムの速度との比として計算される。
【0101】
本明細書に開示されるLLDPE、LDPE、および孔形成剤の組み合わせから作製されたフィルムの特性を次に説明する。様々なフィルムが本明細書に開示される1つ以上の特性を有し、LLDPE、LDPE、および孔形成剤の様々な組み合わせを組み合わせて、フィルムの最終用途に応じて特性の所望のバランスを達成できることを理解されたい。上に開示したように、本明細書に開示および記載されるLLDPE、LDPE、および孔形成剤の組み合わせを使用することにより、特性の望ましいバランスを達成することができる。したがって、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムの1つ以上の特性は、市販のフィルムにおける同じ特性に類似している可能性がある。しかしながら、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムの1つの特性が市販のフィルムにおけるその特性に類似している場合、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムの別の特性は、市販のフィルムよりも優れている。したがって、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムの改善された性能を示すのは、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムのすべての特性の組み合わせである。例えば、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムは、市販のフィルムと同様の静水圧を有し得るが、本明細書に開示される実施形態に従って作製されたフィルムにおける引裂き抵抗は、実施形態において、市販のフィルムの引裂き抵抗よりも優れている可能性がある。
【0102】
実施形態によれば、フィルムは、5.0グラムフォース(g)以上、例えば、5.1g以上、5.2g以上、5.3g以上、5.4g以上、5.5g以上、5.6g以上、5.7g以上、5.8g以上、5.9g以上、または6.0g以上である、平均機械方向引裂き(エルメンドルフ引裂き強さASTM D1922に従って、14グラム/平方メートル(gsm)で測定される)を有し得る。実施形態では、フィルムは、5.0g~7.0g、例えば、5.2g~7.0g、5.4g~7.0g、5.6g~7.0g、5.8g~7.0g、6.0g~7.0g、6.2g~7.0g、6.4g~7.0g、6.6g~7.0g、または6.8g~7.0gの平均機械方向引裂きを有し得る。他の実施形態では、フィルムは、5.0g~6.8g、例えば、5.0g~6.6g、5.0g~6.4g、5.0g~6.2g、5.0g~6.0g、5.0g~5.8g、5.0g~5.6g、5.0g~5.4g、または5.0g~5.2gの平均機械方向引裂きを有し得る。さらに他の実施形態では、フィルムは、5.2g~6.8g、例えば、5.4g~6.6g、5.6g~6.4g、または5.8g~6.2gの平均機械方向引裂きを有し得る。上記の平均機械方向引裂きの範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0103】
実施形態では、機械方向配向フィルムは、16.0ニュートン(N)以上、例えば、16.2N以上、16.4N以上、16.6N以上、16.8N以上、17.0N以上、17.2N以上、17.4N以上、17.6N以上、または17.8N以上の、10%の伸びにおける機械方向力(14gsmで測定された割線弾性係数ASTM D638に従って測定される)を有する。実施形態では、機械方向配向フィルムは、16.0N~18.0N、例えば、16.2N~18.0N、16.4N~18.0N、16.6N~18.0N、16.8N~18.0N、17.0N~18.0N、17.2N~18.0N、17.4N~18.0N、17.6N~18.0N、または17.8N~18.0Nの、10%の伸びにおける力を有する。他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、16.0N~17.8N、例えば、16.0N~17.6N、16.0N~17.4N、16.0N~17.2N、16.0N~17.0N、16.0N~16.8N、16.0N~16.6N、16.0N~16.4N、または16.0N~16.2Nの、10%の伸びにおける力を有する。さらに他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、16.2N~17.8N、例えば、16.4N~17.6N、16.6N~17.4N、または16.8N~17.2Nの、10%の伸びにおける力を有する。上記の10%の伸びにおける力の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0104】
実施形態による機械方向配向フィルムは、15,000グラム/平方メートル/日(g/m/日)以上、例えば、15,250g/m/日以上、15,500g/m/日以上、15,750g/m/日以上、16,000g/m/日以上、16,250g/m/日以上、16,500g/m/日以上、または16,750g/m/日以上の平均水蒸気透過度(WVTR)(ASTM D6701に従って、14gsm、100%相対湿度(RH)、および38℃で測定される)を有し得る。実施形態では、機械配向フィルムは、15,000~17,000g/m/日、例えば、15,250~17,000g/m/日、15,500~17,000g/m/日、15,750~17,000g/m/日、16,000~17,000g/m/日、16,250~17,000g/m/日、16,500~17,000g/m/日、または16,750~17,000g/m/日の平均WVTRを有し得る。他の実施形態では、機械配向フィルムは、15,000~16,750g/m/日、例えば、15,000~16,500g/m/日、15,000~16,250g/m/日、15,000~16,000g/m/日、15,000~15,750g/m/日、15,000~15,500g/m/日、または15,000~15,250g/m/日の平均WVTRを有し得る。さらに他の実施形態では、機械配向フィルムは、15,250~16,750g/m/日、例えば、15,500~16,500g/m/日、または15,750~16,250g/m/日の平均WVTRを有し得る。上記の平均WVTR範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0105】
実施形態によれば、機械方向配向フィルムは、120水柱センチメートル(cm)以上、例えば、121水柱cm以上、122水柱cm以上、123水柱cm以上、124水柱cm以上、125水柱cm以上、126水柱cm以上、127水柱cm以上、128水柱cm以上、または129水柱cm以上の、14gsmでISO1420に従って測定された静水圧を有し得る。実施形態では、機械方向配向フィルムは、120~130水柱cm、例えば、121~130水柱cm、122~130水柱cm、123~130水柱cm、124~130水柱cm、125~130水柱cm、126~130水柱cm、127~130水柱cm、128~130水柱cm、または129~130水柱cmの静水圧を有する。他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、120~129水柱cm、例えば、120~128水柱cm、120~127水柱cm、120~126水柱cm、120~125水柱cm、120~124水柱cm、120~123水柱cm、120~122水柱cm、または120~121水柱cmの静水圧を有する。さらに他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、121~129水柱cm、例えば、122~128水柱cm、123~127水柱cm、または124~126水柱cmの静水圧を有する。上記の静水圧の範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0106】
実施形態によれば、機械方向配向フィルムは、5.9ソーン以下、5.8ソーン以下、5.7ソーン以下、5.6ソーン以下、5.5ソーン以下、5.4ソーン以下、5.3ソーン以下、5.2ソーン以下、5.1ソーン以下、5.0ソーン以下、4.9ソーン以下の、18gsmで以下に説明する方法に従って測定されたソーンにおけるノイズレスポンスを有し得る。実施形態では、機械方向配向フィルムは、4.9ソーン~5.7ソーン、例えば、5.0ソーン~5.7ソーン、例えば、5.1ソーン~5.7ソーン、例えば、5.2ソーン~5.7ソーン、例えば、5.3ソーン~5.7ソーン、例えば、5.4ソーン~5.7ソーン、例えば、5.5ソーン~5.7ソーン、例えば、5.6ソーン~5.7ソーンのノイズレベルを有し得る。さらに他の実施形態では、機械方向配向フィルムは、4.9ソーン~5.6ソーン、例えば、4.9ソーン~5.5ソーン、例えば、4.9ソーン~5.4ソーン、例えば、4.9ソーン~5.3ソーン、例えば、4.9ソーン~5.2ソーン、例えば、4.9ソーン~5.1ソーン、例えば、4.9ソーン~5.0ソーンのノイズレベルを有し得る。上記のノイズ範囲には、本明細書に列挙される端点が含まれることを理解されたい。
【0107】
本明細書に開示および記載されるフィルムは、例えば、乳児および子供用おむつ、子供用オーバーナイト製品、成人用失禁製品、女性用衛生製品、包帯などのような最終製品の通気性バックシートとして使用することができる。
【0108】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0109】
メルトインデックス(I)および(I10
エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)値を、ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定した。同様に、エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)値は、ASTM D1238に従って、190℃、10kgで測定した。値はg/10分で報告し、これは10分あたりに溶出したグラムに対応する。
【0110】
密度
エチレン系ポリマーの密度測定は、ASTM D792、方法Bに従って行った。
【0111】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来型GPC)
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(スペイン、バレンシア)の高温GPCクロマトグラフで構成された。オートサンプラーのオーブンコンパートメントは、160℃に設定され、カラムコンパートメントは、150℃に設定された。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有した。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
【0112】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/モルの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準は、1,000,000g/モル以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000g/モル未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製された。ポリスチレン標準を、30分間優しくかき混ぜながら、80℃で溶解した。ポリスチレン標準のピーク分子量を、式1を使用してエチレン系ポリマー分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
【数1】
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0113】
5次多項式を使用して、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合させた。NIST標準NBS1475が52,000g/モルの分子量で得られるように、カラム分解能およびバンド広がり効果を補正するために、Aに対するわずかな調整(約0.39~0.44)を行った。
【0114】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式2)および対称性(式3)を、200マイクロリットル注入で以下の式:
【数2】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、半分の高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数3】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0115】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製され、2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下、160℃で3時間溶解させた。
【0116】
n(GPC)、Mw(GPC)、およびMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IR)でベースラインを除算したIRクロマトグラム、および等式1からの点iの狭い標準検量線から得たエチレン系ポリマー等価分子量(g/モルでのMポリエチレン、i)を使用して、等式4~7に従うPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPCの結果に基づく。続いて、エチレン系ポリマー試料についてのGPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wtGPC(lgMW)対lgMWプロット、ここで、wtGPC(lgMW)は、分子量lgMWによるエチレン系ポリマー分子の重量分率)を得た。分子量はg/モルであり、wtGPC(lgMW)は式4に従う。
【数4】
【0117】
数平均分子量Mn(GPC)、重量平均分子量Mw(GPC)およびz平均分子量Mz(GPC)は、次の式のように計算することができる。
【数5】
【数6】
【数7】
【0118】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)は、試料(RV(FM試料))内のそれぞれのデカンピークのRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのRVと一致させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正するために使用した。その後、デカンマーカーピークの時間におけるあらゆる変化は、実験全体における流量(流量(有効))の線形シフトに関連すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合する。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に関して)有効流量を式8のように計算する。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量補正は、有効流量が公称流量の0.5%以内であるようになされる。
流量有効=流量公称×(RV(FM較正済み)/RV(FMサンプル))(式8)
【0119】
結晶化溶出分別(CEF)
コモノマー分布分析は、通常、短鎖分岐分布(SCBD)とも呼ばれ、この分布を、IR(IR-4またはIR-5)検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度式光散乱検出器モデル2040(Precision Detectors、現在はAgilent Technologies)を装備した結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar、スペイン)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Monrabal et al,Macromol.Symp.257,71-79(2007))で測定した。600ppmの酸化防止剤であるブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む蒸留した無水オルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒として使用した。Nパージ機能を備えたオートサンプラーの場合、BHTは追加されなかった。検出器オーブン内のIR検出器のすぐ前に、GPCガードカラム(20ミクロン、または10ミクロン、50×7.5mm)(Agilent Technologies)を設置する。試料調製は、160℃で2時間の振盪下で、4mg/ml(特に指示がない限り)でオートサンプラーによって行う。注入体積は、300μLである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃~30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡、3℃/分で30℃~140℃での溶出である。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0120】
CEFカラムには、Dow Chemical Companyによって、1/8インチのステンレス管を用いて125μm+6%のガラスビーズ(MO-SCI Specialty Products)が充填されている。The Dow Chemical Company~の要望に従って、ガラスビーズをMO-SCI Specialtyにより酸洗浄する。カラム容量は、2.06mlである。カラム温度較正を、ODCB中のNIST標準参照物質直鎖エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とエイコサン(2mg/ml)との混合物を使用して実行した。NIST直鎖エチレン系ポリマー1475aが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、溶出加熱速度を調整することにより、温度を較正する。CEFカラム分解能を、NIST直鎖状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とヘキサコンタン(Fluka、プルム(purum)≧97.0%、lmg/ml)との混合物を用いて計算した。ヘキサコンタンとNISTエチレン系ポリマー1475aのベースライン分離が達成された。ヘキサコンタンの領域(35.0~67.0℃)対NIST1475aの領域67.0~110.0℃は、50対50であり、35.0℃未満の溶解画分の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能を、式9に定義する:
【数8】
式中、半値幅は温度で測定され、分解能は少なくとも6.0である。
【0121】
短鎖分岐分布(SCBD)-CEF半値全幅
短鎖分岐分布を説明する追加のパラメータは、CEF半値全幅である。これは、以下に概説する手順によって行われる。
【0122】
(A)以下の式に従って、CEFからの0.20℃の温度ステップ上昇で、20.0℃~119.0℃の各温度(T)での重量分率(w(T))を得ること、
【数9】
【0123】
(B)35.0℃~119.0℃の最高ピークについて各データポイントを調べることにより、CEFコモノマー分布プロファイルから最大ピーク高さを得ること。SCBD CEF半値全幅は、最大ピーク高さの半値での前部温度と後部温度の間の全体の温度差として定義される。最大ピークの半値での前部温度は、35.0℃より前方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。最大ピークの半値での後部温度は、119.0℃より後方で調べ、最大ピーク高さの半値以上の最初のデータポイントである。
【0124】
高密度画分(HDF)は、93℃~119℃のCEF曲線から積分として計算され得る。これは、以下の式に従って、93℃~119℃の範囲の溶出温度でのIR-4クロマトグラム(ベースライン減算測定チャネル)の積分を、20℃~140℃の合計積分で割ったものとして定義される。
【数10】
式中、Tは(上記の較正からの)溶出温度である。
【0125】
ゼロせん断粘度比(ZSVR)
ゼロせん断粘度比は、以下の式15に従って、g/モルにおける等価重量平均分子量(Mw(GPC))での分岐ポリエチレン材料のゼロせん断粘度(ZSV)の直鎖状ポリエチレン材料のZSVに対する比(以下のANTEC proceedingを参照されたい)として定義される。
【数11】
【0126】
LLDPE系ポリマーのZSV値(η0B)を、以下で説明する方法を介して190℃でのクリープ試験から得た。Mw(GPC)値は、上述のように従来のGPC法(式6)によって決定した。直鎖状ポリエチレンのZSV(η0L)とそのMw(GPC)との間の相関関係は、一連の直鎖状ポリエチレン標準物質に基づいて確立した。ZSV-Mw(GPC)の関係についての説明は、ANTEC proceeding:Karjalaら,Detection of Low Levels of Long-chain Branching in Polyolefins,Annual Technical Conference-Society of Plastics Engineers(2008),66th887-891に見出すことができる。
【0127】
クリープ試験
LLDPEポリマーのZSV値(η0B)は、DHR(TA Instrument)を使用して、窒素環境において190℃での一定応力レオメータクリープ試験から得られた。LLDPE試料を、互いに平行に配置された2つの直径25mmのプレート固定具の間の流れに供した。試料は、LLDPEのペレットを約1.5~2.0mmの厚さの円形プラークに圧縮成形することによって調製した。プラークを直径25mmのディスクにさらにカットし、TA Instrumentのプレート固定具の間に挟持した。試料を装填した後、プレート固定具間のギャップを1.5mmに設定する前に、TA Instrumentのオーブンを5分間閉じ、オーブンを開いて試料の縁部をトリミングし、オーブンを再び閉じる。クリープ試験の前後に、190℃、300秒の浸漬時間、および10%のひずみで0.1~100ラジアン/秒の対数掃引を行い、試料が劣化したかどうかを決定した。定常状態のせん断速度がニュートン領域になるように十分な低さであることを確実にするために、試料のすべてに20Paの一定の低せん断応力を加えた。定常状態は、「lg(J(t))対lg(t)」のプロットの最後の10%の時間窓におけるデータについて線形回帰を得ることにより決定し、J(t)はクリープコンプライアンスであり、tはクリープ時間である。直線回帰の傾きが0.97を超える場合、定常状態に達したとみなし、次いでクリープ試験を停止した。この試験におけるすべての場合において、傾きは、1時間以内に基準を満たす。定常状態のせん断速度は、「ε対t」のプロットの最後の10%の時間窓における全データポイントの線形回帰の傾きから決定し、εはひずみである。ゼロせん断粘度は、加えられた応力と定常状態のせん断速度の比から決定した。
【0128】
機械方向配向引裂き
機械方向の引裂きは、14gsmで測定されるエルメンドルフ引裂き強さASTM D1922に従って測定された。15の試験体の平均値が報告された。
【0129】
10%の伸びにおける機械方向力
10%の伸びにおける機械方向の力は、ASTM D638に従って測定された。長方形のフィルム試料を、幅1インチ、長さ6インチで機械方向に沿って切断した。グリップ間の距離は4インチであった。試料を、20インチ/分の引張速度でインストロン引張機を用いて15%の伸びまで引き伸ばした。10%の伸びにおける力を記録した。5つの試験体の平均値が報告された。
【0130】
水蒸気透過度(WVTR)
WVTRは、Mocon PERMATRAN-W 101Kを使用して、14gsm、100%相対湿度、および38℃でASTM D6701に従って測定された。6つの試験体の平均値が報告された。
【0131】
静水圧
静水圧は、14gsmで測定されるISO1420に従って測定された。3つの試験体の平均値が報告された。
【0132】
ノイズ測定
図3Aおよび図3Bに示されるような試験セットアップは、ノイズを測定および定量化するように設計される。特に、図3Aは、2つの支持体310a、310bの間に配置されたフィルム300を示し、支持体310a、310bは、矢印によって示される方向に動かされて、フィルム300を横方向に引き伸ばす。図3Bは、ノイズを記録するためにフィルムが引き伸ばされている間、3つのマイクロフォン320a、320b、320cがフィルムから約2インチ~3インチ離れて配置されている試験セットアップを示す。試料測定に対するバックグラウンドノイズの影響を回避するために、試験は、以下の表1に示すように、周囲ノイズフロアが低い無響室で実施する。サイズ10x20cmのフィルム試料をフィルムロールから切り取り、測定する。フィルム試料の長辺の一方は、動きを防ぐために垂直にロックされ、反対側の自由端は、下の図の双方向の赤い矢印で示されるように、垂直軸に沿って作動される(1Hzの速度で)。発生したノイズは、下の図に示すように、3つのマイクロフォン(試験体から6cmの距離に配置)により捕捉される。データの取得および後処理は、業界標準のB&Kソフトウェアおよびハードウェアを使用して行われる。作動は32.768[kHz]のサンプリングレートで20[秒]にわたって行われ、データはソーンでのラウドネスを評価するために後処理される。試験は3回繰り返され、実行の平均/標準偏差が報告される。
【0133】
【表1】
【実施例
【0134】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0135】
実施例1
エチレン系ポリマーを、第1の反応器としてループ反応器、および第2の反応器としてプラグフロー反応器を使用して形成した。第1の反応器への供給流には、1327ポンド/時(lb/時)のISOPAR-E溶媒、186lb/時のエチレンモノマー、25lb/時のオクテンが含まれていた。水素も、6200sccmで第1の反応器に導入された。第1の反応器出口のエチレン濃度は、17g/Lであった。第1の反応器に導入された第1の触媒は、プロ触媒および共触媒を含んでいた。プロ触媒は、以下の構造を有する、ジルコニウム、ジメチル[[2,2’’’-[[ビス[1-メチルエチル)ゲルミレン]ビス(メチレンオキシ-κO)]ビス[3’’,5,5’’-トリス(1,1-ジメチルエチル)-5’-オクチル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-2’-オラト-κO]](2-)]であった。
【化3】
必要に応じて、プロ触媒を添加して、反応器出口のエチレン濃度を17g/Lに制御し、プロ触媒使用量は、典型的には、反応器出口で0.80μモル/Lであった。共触媒は、ビス(水素化タローアルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミンおよびトリエチルアルミニウムであった。
【0136】
第1の反応器を190℃の温度まで加熱し、エチレンモノマーおよびオクテンを第1の触媒の存在下で反応させて、第1のポリマー画分を形成した。
【0137】
第2の触媒を、第1の反応器の下流および第2の反応器の上流の流出物に添加し、改変された流出物を形成した。第2の触媒は、約1.9μモル/Lの濃度のチーグラー・ナッタ触媒であった。変性流出物を、第2のプラグフロー反応器に導入し、そこで未反応のエチレンおよび未反応のオクテンおよび未反応の水素を、第2の触媒の存在下で反応させて、第2のポリマー画分を形成した。
【0138】
上記の実施例において生成されたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1及および第2の反応器におけるエチレン消費の従来のモデリングを使用して測定された、91.7重量%の第1のポリマー画分、8.3重量%の第2のポリマー画分を含んでいた。バイモーダルエチレン系ポリマーは、3.56g/10分のメルトインデックス(I)、0.9154g/ccの密度、および5.75のI10/I比を有し、各々を、先に開示された技術に従って測定した。
【0139】
実施例1および比較例1~5
実施例1は、樹脂1として表1に示されているタイプの45重量%のLLDPE、LDPE成分としてDow Chemical Companyによって製造された5重量%のAGILITY(商標)EC 7000、および孔形成剤としてImerysによって製造された50重量%のCaCO Filmlink(商標)500の組み合わせを含む。詳細を表2に示す。
【0140】
比較例1~5は、比較樹脂1~4として表1に示されているタイプの45重量%のLLDPE、LDPE成分としてDow Chemical Companyによって製造された5重量%のAGILITY(商標)EC 7000、および孔形成剤としてImerysによって製造された50重量%のCaCO Filmlink(商標)500の組み合わせを含む。詳細を表2に示す。
【0141】
実施例2および3は、樹脂1として表1に示されているタイプの50重量%のLLDPE、および孔形成剤としてImerysによって製造された50重量%のCaCO Filmlink(商標)500の組み合わせを含む。詳細を表3に示す。
【0142】
比較例6~10は、比較樹脂1、3および4として表1に示されているタイプの50重量%のLLDPE、および孔形成剤としてImerysによって製造された50重量%のCaCO Filmlink(商標)500の組み合わせを含む。詳細を表3に示す。
【0143】
DOWLEX(商標)2047GおよびELITE(商標)5220GはDow Chemical Companyによって製造され、EXCEED(商標)3518CBはExxonMobil Corporationによって製造される。比較例5のLLDPEの組成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2017/152065に記載されている。LLDPE系ポリマーの特性を以下の表2に示す。
【0144】
【表2】
【0145】
実施例1および比較例1~5の場合、エチレン系ポリマー、AGILITY(商標)EC 7000、およびFilmlink(商標)500 CaCOを、Coperion ZSK26二軸スクリュー押出機で配合した。バレルの長さは100mmで、プロセスセクション全体を含む15バレルであった。スクリュー径は25.5mm、フライト深さは4.55mmであった。使用したスクリューの設計は汎用スクリューであった。材料の滞留時間は、スクリューの設計、25ポンド/時の供給速度、および400のスクリューRPMによって制御した。オイルは注入しなかった。サイドアームフィーダーはなかった。実施例1および比較例1~5の場合、エチレン系ポリマーおよびAgility(商標)EC 7000ペレットを、ドラム回転により90:10重量比で乾式混合した後、K-Tron、T-20、LWF、K-11フィーダーによってZSK26の主供給口に直接供給した。Filmlink(商標)500 CaCOを、パウダースクリューおよびフラッファーを取り付けたK-Tron、T-20、LWF、K-7フィーダーによってZSK26の主供給口に同時に供給した。K-7フィーダーおよびK-11フィーダーは、50重量%のブレンド:50重量%のCaCOがZSK26に供給されるように作動した。窒素もまた、5SCFHで供給口アダプタに供給し、材料を押出機に運ぶドロップパイプを掃引した。ゾーン2の温度は115℃、ゾーン3は190℃、ゾーン4~15およびダイ押出機の温度は200℃であった。真空引きはしなかった。配合した材料を、ZSK26を出た後、ストランドカットペレタイザーで切断する前に、水浴を通して送った。回収後、ペレット化された材料を窒素パージし、気密バッグに密封した。製品がパッケージ化された後、フィルムの押し出し、延伸、および試験のために別の実験室に送った。
【0146】
実施例2~3および比較例6~10の場合、エチレン系ポリマー、およびFilmlink(商標)500 CaCOを、BUSS Compounder MDK/E46(BUSS S.A.(スイス、バーゼル))で配合した。配合条件を以下の表3に要約する。得られた化合物のそれぞれを60℃で6時間乾燥させ、次いで、押出し前の水分の吸収を防ぐためにアルミニウムバッグに充填した。
【0147】
【表3】
【0148】
単層の機械方向配向(MDO)フィルムを、上記のすべての組み合わせから、コリンキャストMDOラインで次のように製造した。MDOフィルムをコリンキャストMDOラインを使用して製造した。コリンキャストMDOラインには、キャストフィルムユニットおよびオンラインMDOユニットが装備されている。キャストフィルムユニットは、3つの押出機(25/30/25mm)およびスロットダイ(0.7mmのダイギャップ)を有する。単層キャストフィルムを、最初に、2kg/時のスループット率でキャストフィルムユニットを用いて製造する。フィルムを、オンラインMDOユニットに入る前に、キャストフィルムユニットの冷却ロール(冷却ロール温度=20℃)で急冷する。オンラインMDOユニットの予熱ロール温度を、引張温度(または延伸温度)より15℃低い温度に設定する。延伸温度は60℃であった。フィルムをMDOユニットで機械方向に延伸し、MDOフィルムの機械方向配向比(または延伸比)を表2および表3に示す。実施例1および比較例1~5の場合の最終フィルム厚(MDO後)を14GSMに固定する。実施例2~3および比較例6~10の場合の最終フィルム厚(MDO後)を18GSMに固定する。
【0149】
機械方向配向比を、MDOユニットに存在するフィルムの速度とMDOユニットに入るフィルムの速度との比として測定した。
【0150】
上記の方法に従って形成した、実施例1の樹脂を含むフィルムおよび比較例1~5の樹脂を含むフィルムの特性を以下の表4に示す。
【0151】
【表4】
【0152】
表4に見られるように、実施例1によるフィルムは、比較例1~5によるフィルムよりも、機械方向引裂き、10%の伸びにおける機械方向力、WVTR、および静水圧のバランスが良好である。これらの結果を図2にグラフで示し、実施例1および比較例1~5の静水圧の結果(単位水柱cm)を正のx軸に、実施例1および比較例1~5の機械方向引裂きの結果(単位g)を負のy軸に、実施例1および比較例1~5の10%のひずみにおける機械方向力の結果(単位ニュートン)を負のx軸に、ならびに実施例1および比較例1~5のWVTRの結果(単位g/m/日)を正のy軸に示す。
【0153】
実施例および比較例から分かるように、本明細書に開示および記載される実施形態に従って作製されたフィルムは、改善された全体的な特性のバランスを提供する。例えば、比較例5は、実施例1よりも高いWVTR値を有するが、実施例1は、静水圧および平均機械方向引裂きにおいて比較例1よりも優れている。同様に、比較例2は、実施例および比較例の10%の伸びにおける機械方向の最大の力を有するが、実施例1は、他のすべての測定カテゴリにおいて比較例2よりも優れている。したがって、各比較例は、他の特性を犠牲にして特定の特性の高性能を目標としているが、実施例1は、比較例のいずれかによって達成された最大値またはそれに近い各測定された特性の値を提供する。したがって、実施例1のフィルムは、比較例のいずれよりも全体的に良好なフィルムを提供する。
【0154】
【表5】
【0155】
表5に見られるように、同一の機械方向配向比では、測定されたラウドネスに関して、実施例2~3は比較例6~10よりも優れている。ラウドネスの改善は、用いた機械方向配向比に関係ない。
【0156】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。さらに、本開示で列挙されるすべての範囲は、特に明記しない限り(「未満」または「超」など)、範囲の端点を含む。
図1
図2
図3A
図3B