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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】キーレスツールシャフト継ぎ手
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/14 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
A61B17/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021531245
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2019083102
(87)【国際公開番号】W WO2020109557
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】102018130576.1
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ シャーツ
(72)【発明者】
【氏名】ローランド-アロイス ヒューゲル
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193184(JP,A)
【文献】特開2007-105485(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0202043(US,A1)
【文献】特開2013-013732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074047(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/14-17/17
A61B 17/56-17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールシャフトと外科用器具のハンドピースのためのキーレス継ぎ手であって、
前記継ぎ手は、
前記ツールシャフトの近位部に設けられた第1の継ぎ手部と、
前記ハンドピースのシャフト受容部の遠位部に設けられた第2の継ぎ手部と、
ロック/ロック解除要素と、
を備え、
前記ロック/ロック解除要素は、前記ツールシャフトに配置され、ラッチ部を形成し、
前記シャフト受容部は、少なくとも一つの凹部を備え、
少なくとも一つの前記凹部は、前記ラッチ部と前記凹部が互いにラッチ係合し、二つの継ぎ手部を引張り方向及び円周方向の互いに対する相対的な軸方向運動に対して固定するように、前記ラッチ部を、前記二つの継ぎ手部の連結状態において受け入れるように設けられると共に構成され、
前記ロック/ロック解除要素は、前記連結状態において、予荷重要素によって、前記ラッチ部を前記少なくとも一つの凹部に収容するように予荷重が付加され、
前記予荷重要素は、弾力バネであって、
前記ツールシャフトは、実質的にその長軸方向に延びる溝を有し、
前記溝は、その全長に沿って、前記ロック/ロック解除要素を受け入れるように設けられると共に構成され、
前記ロック/ロック解除要素は、その遠位端において、旋回軸を中心として回転可能であるように前記溝内に配置されており、前記ロック/ロック解除要素は、旋回可能に、前記溝から出たり前記溝に入ったりすることを特徴とする、継ぎ手。
【請求項2】
前記弾力バネは、その一端において、前記ロック/ロック解除要素と同じ前記旋回軸を中心に回転可能であるように前記溝内に配置されており、前記ツールシャフトの半径方向において、前記ロック/ロック解除要素の下方に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項3】
前記ツールシャフトは、内部に、前記ツールシャフトの近位方向で前記溝に隣接するガイドポケットを有し、
前記ガイドポケットは、前記弾力バネの他端を受け入れ、弾力バネの旋回半径を制限し、特に前記弾力バネの旋回運動を妨げるように設けられると共に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項4】
弾力バネ及び前記ロック/ロック解除要素は、前記溝内の横ピンを中心に回転可能に取り付けられ、
前記弾力バネは、前記横ピンに載置されており、その周方向側面をほぼ完全に、少なくとも180°以上囲むことを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項5】
前記ロック/ロック解除要素は、前記ツールシャフトの半径方向の下面に延在部を有し、
前記延在部は、連結状態において、前記弾力バネを上方から押圧し、その結果、前記弾力バネは、前記連結状態において、その載置位置に抗して弾性的に変形し、前記ロック/ロック解除要素に、上方に向かって予荷重を与えることを特徴とする、請求項4に記載の継ぎ手。
【請求項6】
前記横ピンの領域内の前記溝の底部が、前記横ピン、前記横ピン上に載置される前記弾力バネ、及び前記ロック/ロック解除要素のための十分な設置スペースを提供するために、減少した壁厚を持つ膨らみ部を有し、
前記ツールシャフトの外径は一定に保たれることを特徴とする、請求項4に記載の継ぎ手。
【請求項7】
前記継ぎ手部のロック解除状態における、前記ロック/ロック解除要素の旋回半径は、少なくとも45°であることを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項8】
前記ラッチ部は、前記ツールシャフトの近位端に向かって傾斜した摺動面を有することを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項9】
前記シャフト受容部の前記凹部は、前記シャフト受容部の円周方向に離間し、特に等間隔に離間しており、
前記凹部の各々は、前記ラッチ部とラッチ係合するように、前記連結状態で前記ラッチ部を受け入れるように設けられると共に構成されることを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【請求項10】
前記ロック/ロック解除要素は、前記ラッチ部を、手動作動によって前記凹部とのラッチ係合から解放し、前記二つの継ぎ手部の互いに対する相対的な軸方向変位を、少なくとも前記引張り方向に解放するように設けられると共に構成された作動部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の継ぎ手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツールシャフトの近位部に設けられた第1の継ぎ手部と、ハンドピースのシャフト受容部の遠位部に設けられた第2の継ぎ手部と、ロック/ロック解除要素とを有する、ツールシャフトと外科用器具のハンドピースのためのキーレス継ぎ手に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用器具、特に横断のこぎり等ののこぎりの場合、器具のハンドピース(駆動ハンドピース)と比較して細い直径を有するいわゆるツールシャフトは、様々な長さで使用可能であり、特に適切なツールシャフト長さを選択することによって、外科医に外科手術部位への良好なアクセスを提供する。選択されたツールシャフトは、外科的使用の前に、ハンドピースに機械的に連結され、外科的処置の完了後には、ツールシャフトを洗浄するために、再びハンドピースから外される。
【0003】
ツールシャフト上及びハンドピース上の2つの継ぎ手部の機械的な接続及び分離は、提供された接続ツール又は接続キーを用いて、又はクイックカップリングの形態のツールを用いずに、実施することができる。
【0004】
特別に適合された又は標準化された連結ツール又は連結キーを使用することによって、ツールシャフト上の継ぎ手部とハンドピース上の継ぎ手部との連結が達成されるツールシャフト連結/ロック解除機構が、従来技術から公知である。例えば、ツールシャフトは、ねじ又はクランプスリーブを締めることによって、力嵌め及び/又は形態嵌めでハンドピースと連結される。
【0005】
しかしながら、指定されたツールを使用する接続は、器具を連結する際に、使用者が別の追加部品、即ち、連結ツールを取り扱わなければならない場合、比較的多大な労力を費やさなければならないという欠点を常に有する。さらに、再処理サイクル中に、例えば、連結ツールが、滅菌中に失われてしまったり、又は誤ったふるいに割り当てられてしまったりするおそれがある。
【0006】
したがって、従来技術における代替的な解決策は、押しボタン又は回転可能なスリーブの形態を含むハンドピース上のロック/ロック解除要素によって、形態嵌め接続の形態で、2つの継ぎ手部のツールフリー接続又はキーレス接続を提供することである。
【0007】
しかしながら、ハンドピース上に配置されたロック/ロック解除要素を使用する継ぎ手又はロック/ロック解除機構は、通常、ロック/ロック解除要素を、移動/可動シャフト受容部から分離しなければならないため、技術的に複雑である。さらに、外科医は通常、ハンドピースの使用中に、ロック/ロック解除領域においてハンドピースを保持及び案内するので、ハンドピース上にロック/ロック解除要素が配置されていると、外科的使用中に意図せずにロックを解除してしまう危険性がある。これは、患者に相当なリスクを生み出す。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を排除するか、又は少なくとも低減することである。特に、使用者が簡単な技術的方法でロック/ロック解除機構を快適に取り扱うことを可能にし、患者に対する危険を最小限に抑えることができる、外科用器具のためのツールシャフト継ぎ手が提供される。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する、外科用器具のための(又は外科用器具の)キーレスツールシャフト継手、または、ツールシャフト及び外科用器具のハンドピースのための(又はそれらの)キーレス継手によって解決される。本発明の有利なさらなる実施形態は、添付の従属請求項の主題である。
【0010】
本発明の基本的なアイデアは、ハンドピースの(画定された)保持領域の外側に配置された、より正確にはツールシャフト自体に配置されたロック/ロック解除要素を備え、ツール/キーを用いることなく動作可能な、外科用器具のためのツールシャフト継ぎ手を提供することである。
【0011】
具体的には、ツールシャフトと、外科用器具のハンドピース、特に外科用(横断)のこぎりとのためのキーレス継ぎ手、キーレス継ぎ手機構、又はロック/ロック解除機構は、ツールシャフトの近位(端)部、好ましくは近位側の半分に設けられた第1の継ぎ手部と、ハンドピースのシャフト受容部の遠位(端)部に設けられた第2の継ぎ手部と、ロック/ロック解除要素と、を備える。ロック/ロック解除要素は、ツールシャフト上に(ツールシャフトの一体部分として)配置され、ラッチ部を形成する。シャフト受容部は、少なくとも1つのアンダーカット、特に凹部、又は(代替的に)例えば、通路開口又は窓のような切欠き/短冊状突出を有し、アンダーカットは、ラッチ部とアンダーカットが互いにラッチ係合し、2つの継ぎ手部(従ってツールシャフトとシャフト受容部又はハンドピース)を、少なくとも引張り方向、即ち互いから離れる方向の互いに対する相対的な軸方向運動に対して固定するように、2つの継ぎ手部のロック位置においてラッチ部を受け入れるように設けられるとともに構成される。
【0012】
「近位」という語は、常に、外科用器具の使用者の方を向く端を指し、一方、「遠位」という語は、常に、使用者とは反対を向く端を指す。
【0013】
ロック/ロック解除要素は、ハンドピースの(画定された)保持領域の外側、又は、基本的にはハンドピースの外側に配置されるので、外科用器具の使用中に使用者がロック機構を意図せずに解除することは、事実上不可能である。したがって、外科医は、ツールシャフトを意図せず取り外してしまうことによる患者へのあらゆるリスクなしに、ハンドピース上の器具を快適に保持し、案内することができる。
【0014】
特に、ラッチ部は、ツールシャフトの近位端に向かって傾斜した摺動面を有してもよい。したがって、ツールシャフトがシャフト受容部に挿入される際に、シャフト受容部の遠位端において、ラッチ部が傾斜した摺動面に沿ってスライドすることによって、ロック/ロック解除要素が、自主的にシャフト受容部に入り(弾性的降伏)、最終的にアンダーカットにスナップ嵌めされる(「プラグアンドプレイ」連結プロセス)。
【0015】
ラッチ係合において、ラッチ部及びアンダーカットは、好ましくはさらに、円周方向の継ぎ手部の相対的な運動に対して、2つの継ぎ手部を固定する。このように、2つの継ぎ手部は、互いに対して回転できないように位置決めされ、その結果、一方では、連結がより安定し、他方では、シャフト受容部からツールシャフトにトルクを伝達することができる。
【0016】
好ましくは、予荷重要素は、弾力バネであり、特にニードルスプリングである。弾力バネは、その一端において、溝内でロック/ロック解除要素と同じ旋回軸を中心として回転可能であるように配置され、ツールシャフトの半径方向において、ロック/ロック解除要素の下に配置される。
【0017】
好ましくは、ツールシャフトは、内部にガイドポケットを有する。ガイドポケットは、ツールシャフトの近位方向において溝に隣接し、弾力バネの他端を受け入れ、弾力バネの旋回半径を制限する、特に弾力バネの旋回運動を妨げるように設けられるとともに構成される。
【0018】
有利な実施形態において、弾力バネ及びロック/ロック解除要素は、横ピンの周りを回転可能であるように溝内に取り付けられ、弾力バネは、横ピンに載置され、その円周方向側面をほぼ完全に、少なくとも180°以上、好ましくは270°囲む。
【0019】
好ましくは、ロック/ロック解除要素は、ツールシャフトの半径方向の下面に延在部を有する。それにより、延在部は、連結状態で上方から弾力バネを押圧し、その結果、バネは、ロック位置において載置位置に抗して弾性変形し、ロック/ロック解除要素にツールシャフトの半径方向外側に向かって予荷重を与える。
【0020】
別の利点は、横ピンの領域における溝の底部が、横ピン、横ピンに接触する弾力バネ、及び、ロック/ロック解除要素のための十分な設置スペースを提供するために、減少した壁厚を持つ膨らみ部を有する一方で、ツールシャフトの外径は一定に保たれる。
【0021】
さらに有利には、継ぎ手部のロック解除状態におけるロック/ロック解除要素の旋回半径は、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、特に好ましくは180°である。
【0022】
好ましくは、ラッチ部は、ツールシャフトの近位端に向かって傾斜した摺動面を有する。
【0023】
好ましくは、シャフト受容部は、シャフト受容部の円周方向に離間した、特に均等に離間した複数個のアンダーカット/凹部、好ましくは、2、3、又は4個のアンダーカット/凹部を有する。これらのアンダーカット/凹部の各々は、ラッチ部とラッチ係合するように、ロック位置でラッチ部を受け入れるように設けられると共に構成される。有利には、このようにして、連結のさらなる安定化を達成することができる。
【0024】
ロック/ロック解除要素は、特に、作動部を有する。作動部は、使用者による手動作動によってアンダーカットとのラッチ係合からラッチ部を解放し、2つの継ぎ手部の互いに対する相対的な軸方向変位を、少なくとも引張り方向に解放するように設けられると共に構成される。したがって、有利には、作動部が、ハンドピース上又はハンドピースの保持領域内に配置されず、ツールシャフト上に配置されるので、分離の際に、外科用デバイスを非常に簡単に便利に取り扱うことが可能になり、患者にデバイスを使用している間に意図せず分離してしまう危険性にさらされない。
【0025】
好ましくは、少なくともラッチ部、特に好ましくはロック/ロック解除要素全体が、予荷重要素によって、ツールシャフトの半径方向外側の方向に予荷重を受ける。このようにして、単純な手段を使用して、ロック位置において、確実にラッチ部がアンダーカットに保持され、予荷重が意図的に(手動で)取り除かれるまで、ラッチ係合が確実に所定の位置に留まるようにすることができる。
【0026】
特に、ツールシャフトは、その長軸方向に実質的に延びる溝を有する。溝は、その全長に亘って、ロック/ロック解除要素を収容するように設けられるとともに構成される。従って、ロック/ロック解除要素の高さの一部は、構造的にツールシャフト内へと沈んでおり、これにより、ツールシャフト-ロック/ロック解除要素ユニットのコンパクトな設計が可能となっている。
【0027】
好ましくは、ロック/ロック解除要素の遠位端は、ツールシャフトの長軸及び溝を横切って延びる旋回軸の周りに回転可能なように、溝内に配置/装着されており、その結果、ロック/ロック解除要素は、溝から出るように及び溝に入るように旋回可能である。旋回運動により、シャフト受容部のアンダーカットに入るように及びアンダーカットから出るように、即ちそのロック位置へと、ラッチ部を旋回させることができる。
【0028】
好ましくは、予荷重要素は、弾力バネであり、例えば、狭い幅、特に溝幅よりも狭い幅を有する板バネまたはロッドバネ、又は、特に好ましくはワイヤ又はニードルスプリングである。弾力バネは、ロック/ロック解除要素と同じ旋回軸を中心に又は旋回軸上で回転可能であるように、その一端(遠位端)において溝内に(長手方向の延在部に沿って)配置、装着、または固定され、かつツールシャフトの半径方向でロック/ロック解除要素の下に配置される。この設計は、ロック要素を有するツールシャフトの非常にコンパクトな構造を可能にする。
【0029】
さらに、ツールシャフトは、ツールシャフト内部に/形成されたガイドポケットを、好ましくは有してよい。ガイドポケットは、ツールシャフトの近位方向で溝に隣接し、かつ弾力バネの他(近位)端部を受け入れ、特に弾力バネの旋回半径を制限し、又は弾力バネの旋回運動を完全に抑制するように設けられるとともに構成される。これにより、一方では、弾力バネの安定した位置決めが可能になり、他方では、継ぎ手部のロック解除状態において、弾力バネが旋回してツールシャフトの溝から出てしまうことが防がれ、使用者を傷つけてしまう危険性が回避される。
【0030】
特に、継ぎ手部のロック解除状態におけるロック/ロック解除要素の旋回半径は、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、特に好ましくは180°である。従って、ロック解除状態では、ロック/ロック解除要素は、その規定の旋回半径内で、自由に旋回して溝から出てもよく、洗浄剤のために、内部の弾力バネと共に溝を開放するとともに、ガイドポケットも開放してもよい。規定の旋回半径が大きいほど、洗浄のために、溝、ガイドポケット、弾力バネにアクセスしやすくなる。
【0031】
本発明は、添付の図面を参照して、好ましい実施形態によって以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態による、非連結状態におけるツールシャフト及びシャフト受容部の上面斜視図を示す。
図2】本発明の実施形態による、連結状態におけるツールシャフト及びシャフト受容部の斜視上面図を示す。
図3】本発明の実施形態による、連結されたツールシャフトと共に外科用器具の上面斜視図を示す。
図4】連結状態のツールシャフト及びシャフト受容部を通る、図2の線IVに沿った縦断面図の断面を示す。
図5】洗浄位置におけるツールシャフトの斜視側面図である。
図6】洗浄位置におけるツールシャフトの底面斜視図である。
図7】洗浄ホルダにおけるツールシャフトの斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面は、本質的に概略的なものにすぎず、単に本発明を理解する目的のためのものである。同一の要素は、同一の参照符号で示される。
【0034】
図1は、キー無しで操作され得る、外科用器具4のための(または外科用器具4の)ハンドピース2(図3に示される)の一部であるシャフト受容部10及びツールシャフト1のための継ぎ手の斜視平面図を示し、継ぎ手は、ツールシャフト1の近位部に設けられた第1の継ぎ手部6と、ツールシャフト10の遠位部に設けられた第2の継ぎ手部8と、ツールシャフト1に(取り外し不可能に)配置され、ラッチ部14を形成するロック/ロック解除要素12と、を有する。シャフト受容部10(メス型)は、2つの継ぎ手部6,8のロック位置(図2に示す)においてラッチ部14を受け入れるように設けられると共に構成される少なくとも1つの凹部16(シャフト受容部方向に対して垂直に配向されている)を有し、これにより、ラッチ部14と凹部16が、互いにラッチ係合し、少なくとも引張り方向(シャフト受容部方向)の継ぎ手部の互いに対する相対的な軸方向運動に対して、2つの継ぎ手部6、8を固定する。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態による、非連結状態におけるツールシャフト1及びシャフト受容部10を示す。ツールシャフト1の遠位端には、例えば別体ののこぎり刃(不図示)を受け入れるための作動体受容部18が設けられている。図示のツールシャフト1は、作動体受容部18からその長軸方向延在部の約半分までは平坦であり、近位端に向かって幅及び高さ/厚さ(長軸方向延在部と直交する)が増大する。ツールシャフト1のこの平坦部に続いて、丸形状の遷移部を有する(本質的に)丸い断面のツールシャフト部があり、このツールシャフト部分は、その近位端の領域に円周方向の環状溝を有する。環状溝は、例えば、洗浄/消毒/滅菌のための洗浄ホルダにツールシャフトを保持するために使用され、この目的のために、洗浄ホルダには、固定要素、特に弾性クランププレートが設けられる。固定要素は、環状溝に係合し、シャフトを、軸方向に、好ましくは軸方向及び半径方向に固定する。ツールシャフト1の近位端には、面取りされた面も設けられている。
【0036】
平坦部における丸形状の遷移部から丸い断面のツールシャフト部にかけて、ツールシャフト1の近位端の方向において、細長い溝20がツールシャフト1に作られている。細長い溝20は、ツールシャフト1の長軸に沿って延在し、その幅及び長さは、ロック/ロック解除要素12の幅及び長さと一致する。ロック/ロック解除要素12は、その高さの一部まで、溝20内に収容される。ロック/ロック解除要素12は、近位端にラッチフック形状のラッチ部14を有し、遠位端に作動部22を有する。ラッチ部14と作動部22は、ツールシャフト1の非連結状態において、ツールシャフト1の表面を越えて突出する。ロック/ロック解除要素12のラッチ部14がツールシャフト1の近位端まで位置するツールシャフト1の長軸部は、ツールシャフト1の第1の継ぎ手部6を構成する。
【0037】
外科用器具4のハンドピース2(図3参照)に取り外せないように取り付けられているシャフト受容部10は、中空円筒形状の遠位領域を有し、遠位領域の内径は、第1の継ぎ手部6を収容するために、第1の継ぎ手部6の外径と一致する。近位方向において中空円筒に続くのは、広がった略三日月形の部分であり、中空円筒は、略三日月形部分のほぼ中央に取り付けられるか、又は一体的に形成されている。中空円筒の遠位領域には、中空円筒の円周方向に等間隔に配置された通路開口又は窓形状の4つの凹部16が設けられている。凹部16のサイズは、ラッチ部14をその中に収容できるように選択される。ラッチ部14が凹部16のうちの一つにスナップ嵌めされるまでツールシャフト1の第1の継ぎ手部6が挿入される中空円筒の長軸部は、シャフト受容部10の第2の継ぎ手部8を形成している。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る、連結状態におけるツールシャフト1とシャフト受容部10の斜視上面図である。連結状態では、ラッチ部14は、凹部16の一つに係合し、継ぎ手部6、8を互いに対する軸方向の引張り運動に対して固定する。また、凹部16にラッチ部14がロックされた状態では、ラッチ部14の長軸延在面が、凹部16の長軸延在壁に当接し、形状嵌めによって回転運動を妨げるので、継ぎ手部6、8の相対的な回転運動も阻止される。シャフト受容部10又はハンドピース2に対する作動体受容部18の所望の角度位置に応じて、4つの凹部16のうちの一つが、ラッチ部14のラッチ凹部として選択されてよい。
【0039】
図3は、本発明の実施形態による、外科用器具4の斜視上面図を連結されたツールシャフト1と共に示す。使用者が外科用器具4を把持して導くためのハンドル領域24を有する外科用器具4のハンドピース2が、示されている。シャフト受容部10は、ハンドピース2の内側に固定されているため、図3では見えない。連結されたツールシャフト1は、ロック/ロック解除要素12の作動部22がハンドピース2に対してすぐ遠位に位置する、即ちハンドピース2のすぐ外側に位置する程度に、ハンドピース2の遠位端から突出する。
【0040】
図4は、連結状態のツールシャフト1及びシャフト受容部10を通る図2の線IVに沿った縦断面図の断面を示す。ラッチ部14が凹部16に係合していることが分かる。これにより、ツールシャフト1の長軸延在部に対して略垂直に半径方向外側へ立ち上がるラッチ面26を有するラッチ部14が、連結状態でラッチ面26と対向する凹部16の接触面28に接触し、二つの継ぎ手部6、8の引張運動(互いから離れる相対的な軸方向運動)を形状嵌めによって抑制する。また、ツールシャフト1が、作動部22と半径方向反対側の面に、半径方向の段差又は肩部30を形成しており、肩部30の端面(シャフト受容部10と対向する面)が、シャフト受容部10の遠位端面(ツールシャフト1と対向する面)と接触して、2つの継ぎ手部6、8の押し込み運動(互いへと向かう相対的な軸方向運動)が、形状嵌めによって抑制されることも分かる。連結状態では、作動部22自体は、シャフト受容部10の表面/外面を超える高さ(ツールシャフト1の半径方向の長さ)である一方、ラッチ部14の高さは、連結状態でシャフト受容部10の表面とほぼ面一になるように選択される。ロック/ロック解除要素12のラッチ部14と作動部22との間の長軸方向の距離は、シャフト受容部10の遠位端と凹部16との間の長軸方向の範囲をわずかに超えるので、連結状態において、シャフト受容部10の遠位端と凹部16との間の部分は、ラッチ部14と作動部22との間に収容される。
【0041】
弾力バネ32は、ロック/ロック解除要素12の下方(半径方向内側)に配置される。この実施形態では、弾力バネ32は、ワイヤである。弾力バネ32及びロック/ロック解除要素12の両者は、溝20内の横ピン34を中心に回転可能に配置又は装着されている。このように、横ピン34は、ロック/ロック解除要素12及び弾力バネ32のための旋回軸を形成し、溝20の遠位端又は遠位部に設けられる。弾力バネ32は、横ピン34と接触しており、横ピン34の円周方向側面をほぼ完全に、少なくとも180°以上、好ましくは270°囲む。弾力バネ32は、横ピン34を囲む湾曲部から始まって、溝20の長軸方向に延在し、ガイドポケット36に入る。ガイドポケット36は、溝20の近位側に隣接し、ツールシャフト1の内部に挿入されている。即ち、ガイドポケット36は、ツールシャフト1の円周方向側面に向かう開口を有さない。ガイドポケット36は、ロック/ロック解除要素12に向かって半径方向に傾斜壁面を有し、傾斜壁面は、弾力バネ32が旋回してガイドポケット36から出ることができないように、弾力バネ32の半径方向の旋回半径を制限する。
【0042】
ロック/ロック解除要素12の遠位端は、横ピン34を囲む弾力バネ32の湾曲部に載置されており、弾力バネ32の円周方向側面を好ましくは180°以上囲む。ロック/ロック解除要素12の下面では、ロック/ロック解除要素12は、ツールシャフト1の半径方向に延在部38を示し、延在部38は、図4では僅かなV字形として見ることができる。連結状態において、延在部38は、弾力バネ32を上から押圧するので、弾力バネ32は、その載置位置に対して弾性変形し、ツールシャフト1の半径方向外側に向かって、ロック/ロック解除要素12に予荷重を加える。このようにして、弾力バネ32は、ラッチ部14の凹部16におけるラッチ係合を固定する。横ピン34、弾力バネ32、及び弾力バネ32に載るロック/ロック解除要素12のための十分な設置スペースを作りだすために、横ピン34の領域では、溝の底部が、減少させた壁厚を持つ膨らみ部40を有する一方で、ツールシャフト1の外径は、同じままである。
【0043】
横ピン34自体は、溝壁の貫通孔(不図示)内に保持され、ツールシャフト1の表面と面一である。横ピン34は、締まり嵌め又は溶接によって固定される。
【0044】
ツールシャフト1とシャフト受容部10とが互いに連結される場合、2つの継ぎ手部6,8が手動で互いに向かって押し込まれる。ラッチ部14は、ロック/ロック解除要素12の手動作動なしに、ラッチ部14の傾斜した摺動面42において第2の継ぎ手部8の遠位端に沿ってスライドし、シャフト受容部10の遠位端と凹部16との間のシャフト受容部10の長軸部を通過して、弾力バネ32の予荷重によって凹部16内にスナップ嵌めされるまで、弾力バネ32のバネ力に抗して半径方向内側に押圧される。
【0045】
ツールシャフト1とシャフト受容部とを互いから連結解除する場合、作動部22が、弾力バネ32の予荷重力に抗して手動で内側に押し込まれる。これにより、ラッチ部14も凹部16から出るように半径方向内側に動かされ、その結果、ラッチ部14と凹部16とのラッチ係合が解除され、ツールシャフト1をシャフト受容部10から手動で引き出すことができる。
【0046】
図5は、洗浄位置にあるツールシャフト1の斜視側面図を示す。ツールシャフト1が取り外されると、ロック/ロック解除要素12をツールシャフト1の下面に向けて回すことによって、ツールシャフト1を洗浄位置にもっていくことができる。ロック/ロック解除要素12は、重力によって下方に旋回し溝20から出る。それにより、溝20を露出させ、清浄剤及び/又は洗浄器具のために、弾力バネ32及びガイドポケット36へのアクセスを許可する。ガイドポケット36が、弾力バネ32の旋回半径を制限するので、弾力バネ32は、溝20から離れることはなく、洗浄位置でも溝20及びガイドポケット36内に保持される。これにより、弾力バネ36によって使用者を傷つけてしまうリスクは排除される。
【0047】
図6に、洗浄位置にあるツールシャフト1の底面斜視図を示す。この図では、溝20が洗浄位置でどのように露出しているかが分かる。
【0048】
図7は、洗浄ホルダにおけるツールシャフト1の斜視側面図を示す。洗浄ホルダは、ツールシャフト1の近位部を、ロック/ロック解除要素12ができるだけ溝から出る高さで、好ましくは垂直方向に出る高さで、略水平に支持する。したがって、ロック/ロック解除要素12は、機械的な洗浄のために自動的に出ることができる。
【0049】
要約すると、本発明は、ツールシャフト1及び外科用器具4のハンドピース2のためのキーレス継ぎ手に関する。キーレス継ぎ手は、ツールシャフト1の近位部に設けられた第1の継ぎ手部6と、ハンドピース2のシャフト受容部10の遠位部に設けられた第2の継ぎ手部8と、ロック/ロック解除要素12と、を備える。ロック/ロック解除要素12は、ツールシャフト1に配置され、ラッチ部14を形成する。シャフト受容部10は、2つの継ぎ手部6、8のロック位置においてラッチ部14を受け入れるように設けられると共に構成される少なくとも一つのアンダーカット、特に凹部16を備える。その結果、ラッチ部14とアンダーカット、特に凹部16は、互いにラッチ係合し、少なくとも引張り方向の継ぎ手部の互いに対する軸方向運動に対して、2つの継ぎ手部6、8を固定する。
以下の項目は、国際出願時の請求の範囲に記載の要素である。
(項目1)
ツールシャフト(1)と外科用器具(4)のハンドピース(2)のためのキーレス継ぎ手であって、
前記継ぎ手は、
前記ツールシャフト(1)の近位部に設けられた第1の継ぎ手部(6)と、
前記ハンドピース(2)のシャフト受容部(10)の遠位部に設けられた第2の継ぎ手部(8)と、
ロック/ロック解除要素(12)と、
を備え、
前記ロック/ロック解除要素(12)は、前記ツールシャフト(1)に配置され、ラッチ部(14)を形成し、
前記シャフト受容部(10)は、少なくとも一つの凹部(16)を備え、
少なくとも一つの前記凹部(16)は、前記ラッチ部(14)と前記凹部(16)が互いにラッチ係合し、二つの継ぎ手部(6、8)を引張り方向及び円周方向の互いに対する相対的な軸方向運動に対して固定するように、前記ラッチ部(14)を、前記二つの継ぎ手部(6、8)のロック位置において受け入れるように設けられると共に構成され、
前記ロック/ロック解除要素(12)は、前記ロック位置において、予荷重要素(32)によって前記ツールシャフト(1)の半径方向外側に向かって予荷重が付加され、
前記ツールシャフト(1)は、実質的にその長軸方向に延びる溝(20)を有し、
前記溝は、その全長に沿って、前記ロック/ロック解除要素(22)を受け入れるように設けられると共に構成され、
前記ロック/ロック解除要素(22)は、その遠位端において、旋回軸を中心として回転可能であるように前記溝(20)内に配置されており、前記ロック/ロック解除要素(22)は、旋回可能に、前記溝(20)から出たり前記溝(20)に入ったりすることを特徴とする、継ぎ手。
(項目2)
前記予荷重要素(32)は、弾力バネ、特にニードルスプリングであり、
前記弾力バネは、その一端において、前記ロック/ロック解除要素(22)と同じ前記旋回軸を中心に回転可能であるように前記溝(20)内に配置されており、前記ツールシャフト(1)の半径方向において、前記ロック/ロック解除要素(12)の下方に配置されることを特徴とする、項目1に記載の継ぎ手。
(項目3)
前記ツールシャフト(1)は、内部に、前記ツールシャフト(1)の近位方向で前記溝(20)に隣接するガイドポケット(36)を有し、
前記ガイドポケット(36)は、前記弾力バネ(32)の他端を受け入れ、弾力バネ(32)の旋回半径を制限し、特に前記弾力バネ(32)の旋回運動を妨げるように設けられると共に構成されることを特徴とする、項目1又は2に記載の継ぎ手。
(項目4)
弾力バネ(32)及び前記ロック/ロック解除要素(12)は、前記溝(20)内の横ピン(34)を中心に回転可能に取り付けられ、
前記弾力バネ(32)は、前記横ピン(34)に載置されており、その周方向側面をほぼ完全に、少なくとも180°以上、好ましくは270°囲むことを特徴とする、項目1から3のうちいずれか一項に記載の継ぎ手。
(項目5)
前記ロック/ロック解除要素(12)は、前記ツールシャフト(1)の半径方向の下面に延在部(38)を有し、
前記延在部(38)は、連結状態において、前記弾力バネ(32)を上方から押圧し、その結果、前記弾力バネ(32)は、前記ロック位置において、その載置位置に抗して弾性的に変形し、前記ロック/ロック解除要素(12)に前記ツールシャフト(1)の半径方向外側に向かって予荷重を与えることを特徴とする、項目4に記載の継ぎ手。
(項目6)
前記横ピン(34)の領域内の前記溝の底部が、前記横ピン(34)、前記横ピン(32)上に載置される前記弾力バネ(32)、及び前記ロック/ロック解除要素(12)のための十分な設置スペースを提供するために、減少した壁厚を持つ膨らみ部(40)を有し、
前記ツールシャフト(1)の外径は一定に保たれることを特徴とする、項目4又は5に記載の継ぎ手。
(項目7)
前記継ぎ手部(6、8)のロック解除状態における、前記ロック/ロック解除要素(12)の旋回半径は、少なくとも45°、好ましくは少なくとも90°、さらに好ましくは180°であることを特徴とする、項目1から6のいずれか一項に記載の継ぎ手。
(項目8)
前記ラッチ部(14)は、前記ツールシャフト(1)の近位端に向かって傾斜した摺動面(42)を有することを特徴とする、項目1から7のいずれか一項に記載の継ぎ手。
(項目9)
前記シャフト受容部(10)は、前記シャフト受容部(10)の円周方向に離間した、特に等間隔に離間した、複数個のアンダーカット、好ましくは2、3、又は4個のアンダーカットを有し、
前記アンダーカットの各々は、前記ラッチ部(14)とラッチ係合するように、前記ロック位置で前記ラッチ部(14)を受け入れるように設けられると共に構成されることを特徴とする、項目1から8のいずれか一項に記載の継ぎ手。
(項目10)
前記ロック/ロック解除要素(12)は、前記ラッチ部(14)を、手動作動によってアンダーカットとのラッチ係合から解放し、前記二つの継ぎ手部(6,8)の互いに対する相対的な軸方向変位を、少なくとも前記引張り方向に解放するように設けられると共に構成された作動部(22)をさらに備えることを特徴とする、項目1から9のいずれか一項に記載の継ぎ手。
【符号の説明】
【0050】
1:ツールシャフト
2:ハンドピース
4:外科用器具
6:第1の継ぎ手部
8:第2の継ぎ手部
10:シャフト受容部
12:ロック/ロック解除要素
14:ラッチ部
16:凹部
18:作動体受容部
20:溝
22:作動部
24:ハンドル領域
26:ラッチ面
28:接触面
30:肩部
32:弾力バネ
34:横ピン
36:ガイドポケット
38:延在部
40:膨らみ部
42:摺動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7