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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】高圧濾過のための多孔質膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/72 20060101AFI20240708BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240708BHJP
   B01D 71/56 20060101ALI20240708BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240708BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
B01D71/72
C02F1/44 H
B01D71/56
B01D69/10
B01D69/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021535166
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2019085902
(87)【国際公開番号】W WO2020127454
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-16
(31)【優先権主張番号】18214560.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ディ ニコロ, エマヌエーレ
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/065526(WO,A1)
【文献】特許第3245166(JP,B2)
【文献】特開昭60-197288(JP,A)
【文献】特開2017-066184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の汚染物質を含有する流体を精製する方法であって、
(i)少なくとも1種の汚染物質を含有する流体を提供する工程と;
(ii)少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]を含む少なくとも1つの多孔質層[層(PP)]を含む膜[膜(PP)]を提供する工程と;
(iii)1バール超の圧力を前記流体に加えることにより、少なくとも1種の汚染物質を含有する前記流体と前記膜(PP)とを接触させる工程と;
(iv)前記少なくとも1種の汚染物質を含まない前記流体を回収する工程と
を含み、
前記ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)の100モル当たり)少なくとも10モルパーセントの、以下の式:


によって表される繰り返し単位(R pm )と、少なくとも10モルパーセントの、以下の式:


によって表される繰り返し単位(R pp )とを含み、式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素及び臭素からなる群から選択され、
前記膜(PP)が、少なくとも201MPaの引張弾性率(ASTM D638タイプVに従って測定される)及び少なくとも0.55の重量多孔率(イソプロピルアルコール中において、Appendix of Desalination,72,1989,249-262に記載されている手順に従って測定される)によって特徴付けられ、
前記膜(PP)が、少なくとも243MPaの引張弾性率と重量多孔率との間の比率を有する、方法。
【請求項2】
前記膜(PP)は、前記層(PP)を唯一の層として含むか、又は前記膜(PP)は、重層化膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
、R、R及びRの1つ以上は、独立して、式Ar-T-
(式中、
Arは、以下の式の群:


(式中、
各R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
互いに等しいか又は異なるj及びlは、独立して、0、1、2、3、4又は5であり、及び
j又はlと等しいか又は異なるkは、独立して、0、1、2、3又は4である)
から選択される式によって表され;
Tは、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(式中、各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基である);-(CH-及び-(CF-(ここで、nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐の脂肪族二価基からなる群から選択される)
によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
、R、R及びRの1つ以上は、式:


によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記繰り返し単位(Rpm)は、式


によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリマー(PP)は、少なくとも30モルパーセントの繰り返し単位(Rpm)を含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
、R、R及びRの1つ以上は、独立して、式Ar’’-T’’-
(式中、
Ar’’は、以下の式の群


(式中、
各Rj’’、Rk’’及びRl’’は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
互いに等しいか又は異なるj’’及びl’’は、独立して、0、1、2、3又は5であり、及び
j’’又はl’’と等しいか又は異なるk’’は、独立して、0、1、2、3又は4である)
から選択される式によって表され;
T’’は、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(式中、各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基である);-(CH-及び-(CF-(ここで、nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐の脂肪族二価からなる群から選択される)
によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記繰り返し単位(Rpp)は、式:


によって表される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー(PP)は、少なくとも40モルパーセントの繰り返し単位(Rpp)を含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
非飲用水を精製するためのものであり、前記流体は、塩水又は汽水であり、前記汚染物質は、前記流体に溶解された塩分であり、及び前記膜(PP)は、(I)基材層、(II)芳香族ポリアミドからなる外層、及び(III)請求項1に記載の層(PP)を含む重層化膜であり、前記層(PP)は、前記基材層と前記外層との間に置かれる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の汚染物質を含有する前記流体は、液相又は気相である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記膜(PP)は、液体組成物[組成物(C)]であって、前記組成物(C)の総重量を基準として7~60重量%未満の量で前記ポリマー(PP)を含む液体組成物[組成物(C)]又は固体組成物[組成物(C)]であって、前記組成物(C)の総重量を基準として1~85重量%の量で前記ポリマー(PP)を含む固体組成物[組成物(C)]から得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記膜(PP)が、10μm~200μmの厚さを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
平膜[膜(PP*)]であって、
少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]と、少なくとも1種の溶媒[媒体(L)]とを含む組成物[組成物(C*)]から得られる少なくとも1つの多孔質層[層(PP*)]を含む膜[膜(PP*)]であって、前記ポリマー(PP)は、前記組成物(C*)の重量を基準として7重量%~60重量%未満の量であり、
前記ポリマー(PP)は、(ポリマー(PP)の100モル当たり)少なくとも10モルパーセントの、以下の式:


によって表される繰り返し単位(R pm )と、少なくとも10モルパーセントの、以下の式:


によって表される繰り返し単位(R pp )とを含み、式中、R 、R 、R 、R 、R 、R 、R 及びR は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素及び臭素からなる群から選択され、
前記膜(PP*)が、少なくとも201MPaの引張弾性率(ASTM D638タイプVに従って測定される)及び少なくとも0.55の重量多孔率(イソプロピルアルコール中において、Appendix of Desalination,72,1989,249-262に記載されている手順に従って測定される)によって特徴付けられ、
前記膜(PP*)が、少なくとも243MPaの引張弾性率と重量多孔率との間の比率を有する、平膜[膜(PP*)]。
【請求項15】
前記膜(PP*)が、10μm~200μmの厚さを有する、請求項14に記載の[膜(PP*)]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月20日出願の欧州特許出願公開第18214560.7号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、高圧濾過方法での使用に好適な多孔質膜に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質膜は、それらと接触した化学種の浸透を適度にする不連続の薄い界面である。多孔質膜の重要な特性は、膜自体を通した化学種の浸透速度を制御するそれらの能力である。この特徴は、分離用途(水及びガス)又は薬物送達用途のような多くの異なる用途において利用されている。
【0004】
芳香族ポリマー(例えば、ポルスルホン及びポリエーテルスルホンなど)、部分フッ素化ポリマー(例えば、ポリフッ化ビニリデンなど)及びポリアミドは、それらの良好な機械的強度及び熱安定性のため、精密濾過膜及び限外濾過膜の調製に広く使用されている。
【0005】
精密濾過及び限外濾過としての使用のために好適なポリマー膜は、典型的には、液体又は気体の通過が対流流束によって主として支配されるため、「ふるい」メカニズム下で透過を制御する。そのようなポリマー膜は、非常に大きい分率の空隙(多孔率)を有するアイテムを生じさせ得る相反転法によって主として製造される。
【0006】
ポリマー、好適な溶媒及び/又は共溶媒並びに任意選択で1種以上の添加物を含有する均一なポリマー溶液(「ドープ溶液」とも称される)は、典型的には、キャスティングによってフィルムに加工され、次いでそれを非溶媒媒体と接触させることにより、いわゆる非溶媒誘起相分離(NIPS)法によって沈澱される。非溶媒媒体は、通常、水又は水と、界面活性剤、アルコール及び/又は溶媒自体との混合物である。
【0007】
沈澱は、ポリマー溶液の温度を下げることにより、いわゆる熱誘起相分離(TIPS)法によっても得ることができる。
【0008】
代わりに、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムを非常に高い水蒸気含有量の空気と接触させることにより、いわゆる蒸気誘起相分離(VIPS)法によって誘起され得る。
【0009】
さらに、沈澱は、キャスティングによって加工されたフィルムからの溶媒の蒸発により、いわゆる蒸発誘起相分離(EIPS)法によって誘起され得る。典型的には、この方法では、低い沸点の有機溶媒(例えば、THF、アセトン、MEK等など)が水(いわゆる「非溶媒」)と混ぜて使用される。ポリマー溶液は、最初に押し出され、次いで揮発性溶媒の蒸発及び非溶媒の富化が原因で沈澱する。
【0010】
上記の方法は、特定の形態学及び性能を有する膜を提供するために組み合わせて及び/又は順次使用され得る。例えば、EIPS法は、凝固プロセスを完了させるために、VIPS法及びNIPS法と組み合わせることができる。
【0011】
EIPS法は、ポリウレタンポリマーが多孔質膜を製造するために使用される場合、「熱凝固法」として公知である。この場合、ドープ溶液は、プレポリマーを用いて調製され、膜が形成されるにつれて、それは、熱後処理で安定化されて多孔質構造を固定し、プレポリマーを架橋する。
【0012】
加えて、(凝固プロセス中又は凝固プロセス後のいずれかでの)加熱下の伸張は、多孔率及び細孔サイズを増加させるための当技術分野において公知の方法である。
【0013】
逆浸透又は限外濾過プロセスにおける液体又は気体の分離のための、特に薄膜複合材料(TFC)の形態の多孔質膜の使用は、周知である。
【0014】
逆浸透は、塩水の精製の分野においてかなりの注目を集めている。このプロセスにおいて、高圧塩水は、水を通すが、塩を比較的通さない半透膜(典型的にはポリアミド層でできている)と接触され得る。濃縮塩水と比較的純粋な水とがそれによって分離され、比較的純粋な水は、その結果、飲用、料理等などの個人的使用向けに利用され得る一方、塩水は、捨てられ得る。
【0015】
加えて、TFC膜は、様々なガスの分離のためにも利用され得る。膜を利用するガス混合物の分離は、膜の表面を通してガスの供給流れを通過させることによって達成される。供給流れは、流出物流れに対して高圧であるため、混合物のより高い透過性の成分は、より低い透過性の成分が通過するよりも速い速度で膜を通過するであろう。そのため、膜を通過する透過液流れは、より高い透過性の成分に富む一方、逆に、残液流れは、供給物のより低い透過性の成分に富む。
【0016】
逆浸透プロセスの効率は、膜の本質及びいくつかの種類のポリマー製の膜の多数のタイプに大きく依存し、それらの調製方法は、先行技術、例えば米国特許第4039440号明細書)(U.S.A.DEPARTMENT OF THE INTERIOR)、米国特許第8177978号明細書(NANOH20,INC.)及び米国特許第5250185号明細書(TEXACO INC.)に記載されている。
【0017】
しかしながら、本出願人は、当技術分野において公知の膜が、高い運転圧力にさらされた場合、ある期間後に透過液生産性の低下をその後もたらす圧縮を受ける傾向があることを認識した。膜の圧縮は、圧力下での比較的弱い多孔質構造の崩壊に起因する。また、避けることができない外面汚染は、必要とされる供給圧力の増加につながる。外部汚染及び多孔質構造の崩壊は、空隙容積を低下させ、且つ水圧抵抗を増加させることにより、膜のマクロボイド構造を変更することに必然的に寄与する。
【0018】
逆浸透膜は、界面重合プロセスのための可溶性金属イオンを放出させるために、及び/又はおそらく逆浸透中に支持膜の圧縮に耐えることによって流束フロー低下を改善するためにナノ粒子を多孔質支持膜中に含めて製作され得る。逆浸透膜の製造のためのナノ複合材料技術は、例えば、PENDERGAST,Mary Theresa M.らのUsing nanocomposite materials technology to understand and control reverse osmosis membrane compaction.Desalination,2010,vol.261,p.255-263によって評価され、考察された。
【0019】
しかしながら、前記ナノ粒子の使用は、一方では、それらが、凝固後に膜が粒子の一様な分布を示さないように、ドープ溶液の粘度及び凝固プロセスを変更することによって相反転プロセスを妨げるため、望ましくない。加えて、他方では、毒性プロフィールの点で規制上の視点から深刻な懸念を提供する漏洩のリスクが存在する。
【0020】
芳香族ポリマーを含む組成物からの膜及びフィルターの製造は、当技術分野において広く開示されている。例えば、欧州特許第1858977 B号明細書(SOLVAY ADVANCED POLYMERS LLC)は、物品、例えば特に膜及びフィルターなどの調製のためのポリフェニレン及び/又はポリ(アリールエーテルスルホン)を含むブレンド組成物を広範に開示している。
【0021】
フェニレン繰り返し単位を含むポリマーの使用は、実際には非多孔質フィルムであるイオン交換膜の製造のための技術分野において開示されている。例えば、米国特許第7868124号明細書(COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE)は、それ自体が-SOH、-PO又-COOH基を有する、パーフルオロ基又は鎖で置換されたフェニレン側基をその少なくとも1つが有する、フェニレン単位を含むポリマー及び燃料電池膜を製造するためのそれらの使用を開示している。また、米国特許第7888397号明細書(SANDIA CORPORATION)は、ポリフェニレン系アニオン交換膜を開示している。米国特許第7906608号明細書(JSR CORPORATION)は、プロトン伝導度に恵まれたポリマーの製造を可能にする窒素含有芳香族化合物を開示している。前記ポリマーは、プロトン伝導性フィルムを製造するために使用することができる。
【0022】
しかしながら、本出願人の知る限り、高圧濾過のためのポリフェニレンポリマー製の膜の使用は、当技術分野において決して開示されていない。
【0023】
国際公開第2008/116837号パンフレット(Solvay Advanced polymers,L.L.C.)は、異なる芳香族ポリマーから選択されるポリマー材で製造される繊維を開示している。繊維の製造のための好ましい方法は、出発ポリマーが溶融状態にあるものである。前記繊維は、次いで、織物産業及び航空宇宙、自動車、医療、軍事、安全、化学、製薬及び冶金産業での使用のためのものなどの布に組み入れることができる。布は、工業プラント、例えば電力プラント及びセメントプラントなどのために使用することができるフィルターアセンブリに組み入れることができる。上記のような繊維又は布の例は、この特許出願には全く提供されていない。また、この特許出願は、特に細孔サイズ寸法の観点から、異なる物理的特性を有することが知られているフィルターを記載しており、膜を記載していない。
【0024】
国際公開第2018/065526号パンフレット(Solvay Specialty Polymers USA,LLC)は、多孔質物品、特に微多孔膜又は中空繊維の調製のためのポリマー組成物及び少なくとも1種の半結晶性又は非晶質ポリマーと添加物とのブレンドからの方法を開示している。
【0025】
Q.Shiらは、“Poly(p-phenylene terephthalamide)embedded in a polysulfone as the substrate for improving compaction resistance and adhesion of a thin film composite polyamide membrane”J.Mater.Chem.A,2017,5,13610-13624において、相反転段階による膜キャスティング前のポリスルホン(PSf)溶液中のp-フェニレンテレフタルアミド(PPTA)のその場重合、それによるPPTA埋込みPSf基材の形成に基づく、薄膜複合材料(TFC)膜における圧縮耐性と、基材へのポリアミドスキン層接着性とを改善するためのアプローチを開示している。手短に言えば、この論文は、PPTAをPSfに結合するための反応を開示し、2つの成分の物理的ブレンドを開示していない。
【発明の概要】
【0026】
本出願人は、したがって、高圧濾過方法に使用される場合に圧縮を受けない膜を提供するという課題に直面した。
【0027】
本出願人は、小さい厚さを有する膜を製造することができるように、優れた機械的特性を有する膜を提供するという課題にも直面した。
【0028】
また、本出願人は、出発ドープ組成物での無機充填材又は他の添加物の使用なしに、上述の特性を示す膜を提供するという課題に直面した。
【0029】
意外にも、本出願人は、少なくとも1種のポリフェニレンポリマーを含む組成物から得られる少なくとも1つの多孔質層を含む膜が高圧濾過方法での使用に好適であることを見出した。
【0030】
本出願人は、意外にも、本発明による膜が、圧縮又は流束減衰を示すことなく、高圧に耐えることができることを見出した。
【0031】
したがって、第1の態様では、本発明は、少なくとも1種の汚染物質を含有する流体を精製する方法であって、
(i)少なくとも1種の汚染物質を含有する流体を提供する工程と;
(ii)少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]を含む少なくとも1つの多孔質層[層(PP)]を含む膜[膜(PP)]を提供する工程と;
(iii)1バール超の圧力を前記流体に加えることにより、少なくとも1種の汚染物質を含有する前記流体と前記膜(PP)とを接触させる工程と;
(iv)前記少なくとも1種の汚染物質を含まない流体を回収する工程と
を含む方法に関する。
【0032】
また、本出願人は、本発明による膜(PP)が、約10ミクロンの厚さの膜が製造される場合でも優れた機械的特性を有することを見出した。
【0033】
また、本出願人は、本発明による膜(PP)が強アルカリ性環境への優れた耐性を有し、そのため、強アルカリ性環境で使用される場合にそれが壊れるまでそのポリマー構造が変えられる、フッ素化ポリマー、例えばフッ化ビニリデン(PVDF)などを含む組成物から製造された膜よりも利点を提供することを見出した。
【0034】
有利には、前記膜は、少なくとも1種のポリマー(PP)と、少なくとも1種の溶媒[媒体(L)]とを含む組成物[組成物(C)]から調製される。
【0035】
したがって、さらなる態様では、本発明は、少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]を含む少なくとも1つの多孔質層[層(PP*)]を含む膜[膜(PP*)]に関する。
【0036】
有利には、前記ポリマー(PP)は、唯一のポリマーであり、すなわち、それは、さらなるポリマーの添加なしに単独で使用される。
【0037】
有利には、前記膜(PP*)は、少なくとも1種のポリフェニレンポリマー[ポリマー(PP)]と、少なくとも1種の溶媒[媒体(L)]とを含む組成物[組成物(C*)]であって、前記ポリマー(PP)は、前記組成物(C*)の重量を基準として7重量%~60重量%未満、より好ましくは8~55重量%、さらにより好ましくは10~50重量%の量である、組成物[組成物(C*)]によって調製される。
【0038】
実際に、本出願人は、前記組成物(C*)が、前記組成物(C*)の重量を基準として7重量%未満の量の前記ポリマーを含む場合、得られる多孔質層が、その後の操作に対して余りにも壊れやすく、そのため、それから得られる膜が、技術者によって取り扱われるのに十分な機械的強度を有さず、且つ高圧下で耐えることがさらにより少ないことを見出した。
【0039】
また、本出願人は、前記組成物(C*)が、前記組成物(C*)の重量を基準として60重量%以上の量の前記ポリマー(PP)を含む場合、ポリマー(PP)が溶解せず、そのため、膜を製造することが可能ではないことを見出した。
【0040】
加えて、本発明による膜(PP*)は、少なくとも201MPa、より好ましくは201~400MPaの引張弾性率(ASTM D638タイプVに従って測定される);及び/又は少なくとも0.55、より好ましくは少なくとも0.65、好ましくは0.83以下の重量多孔率(イソプロピルアルコール中において、Appendix of Desalination,72,1989,249-262に記載されている手順に従って測定される)によって特徴付けられる。好ましい実施形態によれば、膜(PP*)は、少なくとも201MPaの引張弾性率及び0.65超の重量多孔率を有する。
【0041】
加えて、本出願人は、1バール超の作動圧力に耐えるために、本発明による膜(PP*)が、少なくとも243MPa、好ましくは365MPaまでの上で定義されたような引張弾性率と、重量多孔率(上で定義されたような)との間の比率の観点から、機械的特性の組み合わせを有さなければならないことを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本説明の目的のために、
- 化合物、化学式又は式の一部を特定する記号又は数字の前後の括弧の使用は、それらの記号又は数字を本文の残りからよりよく区別する目的を有するにすぎず、そのため、前記括弧は、省略することもでき;
- 用語「膜」は、それと接触した化学種の透過を適度にする、不連続の概して薄い界面を示すことが意図され、前記膜は、有限寸法の細孔を含有し;
- 用語「重量多孔率」は、多孔質膜の全体容積にわたって空隙の分率を意味することが意図され;
- 用語「溶媒」は、その通常の意味で本明細書において用いられ、すなわち、それは、別の物質(溶質)を溶解させて、分子レベルで一様に分散した混合物を形成することができる物質を示す。ポリマー溶質の場合、結果として生じた混合物が透明であり、及び相分離が系中で全く見られない場合に溶媒中のポリマーの溶液を指すことが一般的慣習である。相分離は、ポリマー凝集体の形成が原因で溶液が濁るか又は曇るようになる、多くの場合に「曇点」と称されるポイントであると解釈される。
【0043】
それらの厚さの全体にわたって均一に分布した細孔を含有する膜は、一般に、対称(又は等方性)膜として公知であり;それらの厚さの全体にわたって不均一に分布している細孔を含有する膜は、一般に、非対称(又は異方性)膜として公知である。
【0044】
前記膜(PP)は、対称膜又は非対称膜のいずれかであり得る。
【0045】
非対称多孔質膜(PP)は、典型的には、1つ以上の内層における細孔の平均細孔径よりも小さい平均細孔径を有する細孔を含有する外層を含む。
【0046】
膜(PP)は、好ましくは、少なくとも0.001μm、より好ましくは少なくとも0.005μm、さらにより好ましくは少なくとも0.01μmの平均細孔径を有する。膜(PP)は、好ましくは、最大で50μm、より好ましくは最大で20μm、さらにより好ましくは最大で15μmの平均細孔径を有する。
【0047】
本発明の多孔質膜における平均細孔直径の測定のための好適な技術は、例えば、Handbook of Industrial Membrane Technology.Edited by PORTER,Mark C.Noyes Publications,1990.p.70-78に記載されている。平均細孔径は、好ましくは、走査電子顕微鏡法(SEM)により測定される。
【0048】
膜(PP)は、典型的には、膜の全容積を基準として5容積%~90容積%、好ましくは10容積%~85容積%、より好ましくは30%~90%に含まれる重量多孔率を有する。
【0049】
膜(PP)における重量多孔率の測定のための好適な技術は、例えば、SMOLDERS,K.らのTerminology for membrane distillation.Desalination.1989,vol.72,p.249-262によって記載されている。
【0050】
膜(PP)は、前記層(PP)を唯一の層として含む自立多孔質膜又は基材上に支持された前記層(PP)のいずれかを好ましくは含む重層化膜であり得る。
【0051】
前記基材層は、前記層(PP)と部分的に又は完全に相互貫入し得る。
【0052】
重層化膜は、典型的には、前記基材を前記層(PP)でコートするか、又は上で定義されたような前記組成物(C)を前記基材に含浸させるか若しくは基材を前記組成物(C)に浸すことによって得られる。
【0053】
基材の本質は、特に限定されない。基材は、一般に、多孔質膜の選択性に最小限の影響を及ぼす材料からなる。基材層は、好ましくは、不織材料、ガラス繊維並びに/又はポリマー材料、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどからなる。
【0054】
基材に加えて、膜(PP)は、好ましくは、芳香族ポリアミドでのコーティングである追加の層を含むことができる。
【0055】
最終の意図される使用に応じて、膜(PP)は、平膜が必要とされる場合、平らであり得るか、又は管状膜若しくは中空繊維膜が必要とされる場合、管状の形状であり得る。
【0056】
高い表面積を有するコンパクトモジュールが必要とされる用途では、中空繊維膜が特に有利であるのに対して、高い流束が必要とされる場合、平膜が一般に好ましい。
【0057】
平膜は、好ましくは、10μm~200μm、より好ましくは15μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0058】
管状膜は、典型的には、3mm超の外径を有する。0.5mm~3mmに含まれる外径を有する管状膜は、典型的には、中空繊維膜と称される。0.5mm未満の直径を有する管状膜は、典型的には、毛細管膜と称される。
【0059】
ポリマー(PP)は、好ましくは、少なくとも約10モルパーセント(ポリマー(PP)の100モル当たり)、より好ましくは少なくとも12モルパーセント、さらにより好ましくは少なくとも15モルパーセントの、以下の式:
によって表される繰り返し単位(Rpm)と、少なくとも約10モルパーセントの、以下の式:
によって表される繰り返し単位(Rpp)とを含み、式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルケトン、アリールケトン、フルオロアルキル、フルオロアリール、ブロモアルキル、ブロモアリール、クロロアルキル、クロロアリール、アルキルスルホン、アリールスルホン、アルキルアミド、アリールアミド、アルキルエステル、アリールエステル、フッ素、塩素及び臭素からなる群から選択される。
【0060】
好ましくは、R、R、R及びRの1つ以上は、独立して、式Ar-T-によって表され、ここで、
Arは、以下の式の群:
(式中、
各R、R及びRは、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
互いに等しいか又は異なるj及びlは、独立して、0、1、2、3、4又は5であり、及び
j又はlに等しいか又は異なるkは、独立して、1、2、3又は4である)
から選択される式によって表され;
Tは、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基である);-(CH-及び-(CF-(ここで、nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐の脂肪族二価基からなる群から選択される。
【0061】
いくつかの実施形態では、R、R、R及びRの1つ以上は、式:
によって表される。
【0062】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(Rpm)は、式
によって表される。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PP)は、少なくとも約30モルパーセント、好ましくは少なくとも約40モルパーセントの繰り返し単位(Rpm)を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、R、R、R及びRの1つ以上は、独立して、式Ar’’-T’’-によって表され、ここで、
Ar’’は、以下の式の群:
(式中、
各Rj’’、Rk’’及びRl’’は、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ又はアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン及び第四級アンモニウムからなる群から選択され、
互いに等しいか又は異なるj’’及びl’’は、独立して、0、1、2、3又は5であり、及び
j’’又はl’’に等しいか又は異なるk’’は、独立して、0、1、2、3又は4である)
から選択される式によって表され;
T’’は、-CH-;-O-;-SO-;-S-;-C(O)-;-C(CH-;-C(CF-;-C(=CCl)-;-C(CH)(CHCHCOOH)-;-N=N-;-RC=CR-(ここで、各R及びRは、互いに独立して、水素、C~C12-アルキル、C~C12-アルコキシ又はC~C18-アリール基である);-(CH-及び-(CF-(ここで、nは、1~6の整数である);1~6個の炭素原子を有する線状又は分岐の脂肪族二価基からなる群から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位(Rpp)は、式:
によって表される。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリマー(PP)は、少なくとも約40モルパーセントの繰り返し単位(Rpp)を含む。
【0067】
好ましい実施形態では、前記ポリマー(PP)は、商品名PrimoSpire(登録商標)SRPの下でSolvay Specialty Polymersから商業的に入手可能である。
【0068】
前記媒体(L)は、有利には、極性の非プロトン性溶媒から選択される。
【0069】
媒体(L)は、好ましくは、少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0070】
有機溶媒の好適な例は、
- より具体的にはパラフィン、例えば特にペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン又はシクロヘキサンなどを含む脂肪族炭化水素並びにナフタレン及び芳香族炭化水素、より具体的には芳香族炭化水素、例えば特にベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、アルキルベンゼンの混合物から構成される石油留分など;
- より具体的には過塩素化炭化水素、例えば特にテトラクロロエチレン、ヘキサクロロエタンなどを含む脂肪族又は芳香族ハロゲン化炭化水素;
- 部分塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、トリクロロエチレン、1-クロロブタン、1,2-ジクロロブタン、モノクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン又は異なるクロロベンゼンの混合物など;
- 脂肪族、脂環式又は芳香族エーテルオキシド、より具体的にはジエチルオキシド、ジプロピルオキシド、ジイソプロピルオキシド、ジブチルオキシド、メチルテルブチルエーテル、ジペンチルオキシド、ジイソペンチルオキシド、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルベンジルオキシド;ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF);
- ジメチルスルホキシド(DMSO);
- グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルなど;
- グリコールエーテルエステル、例えばエチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなど;
- 多価アルコールを含むアルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールなど;
- ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなど;
- 線状又は環状エステル、例えばイソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレート、γ-ブチロラクトンなど;
- 線状又は環状カルボキサミド、例えばN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)など;
- 有機カーボネート、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート;
- リン酸エステル、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)など;
- 尿素、例えばテトラメチル尿素、テトラエチル尿素など;
- メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標)の下で商業的に入手可能)
である。
【0071】
好ましくは、前記少なくとも1種の有機溶媒は、極性の非プロトン性溶媒から、さらにより好ましくはN-メチル-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、メチル-5-ジメチルアミノ-2-メチル-5-オキソペンタノエート(商品名Rhodialsov Polarclean(登録商標)の下で商業的に入手可能)及びトリエチルホスフェート(TEP)からなる群において選択される。
【0072】
媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の総重量を基準として少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも50重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。媒体(L)は、好ましくは、前記媒体(L)の総重量を基準として最大で100重量%、より好ましくは最大で99重量%の少なくとも1種の有機溶媒を含む。
【0073】
媒体(L)は、少なくとも1種の非溶媒媒体[媒体(NS)]をさらに含み得る。媒体(NS)は、水を含み得る。
【0074】
好ましくは、少なくとも1種の汚染物質を含有する前記流体は、液相又は気相である。
【0075】
前記汚染物質は、固体汚染物質であり得る。この実施形態によれば、1種以上の固体汚染物質を含む液相及び気相は、「懸濁液」とも称され、すなわち、不均一混合物は、連続相(又は液体若しくは気体の形態である「分散媒体」)中に分散された少なくとも1種の固体粒子(汚染物質)を含む。
【0076】
前記少なくとも1種の固体汚染物質は、細菌、例えばスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)及びシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)など、藻類、真菌、原虫及びウイルスからなる群から好ましくは選択される微生物を好ましくは含む。
【0077】
別の実施形態によれば、塩水が液相である場合、前記汚染物質は、塩水自体中の溶解した塩分である。この実施形態によれば、液相は、「水溶液」、すなわち塩(溶質)が水(溶媒)に溶解している均一な混合物である。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、非飲用水を精製する方法であって、前記流体は、塩水又は汽水であり、前記汚染物質は、溶解された塩分であり、及び前記膜(PP)は、(I)基材層、(II)芳香族ポリアミドからなる外層、及び(III)上で定義されたような層(PP)を含み、前記層(PP)は、前記基材層と前記外層との間に置かれる、方法である。
【0079】
一実施形態では、2つ以上の膜(PP)を液相及び/又は気相の濾過のために一連で使用することができる。有利には、第1の濾過工程は、1種以上の固体汚染物質を含む液相及び/又は気相を、5μm超、より好ましくは5~50μmの平均細孔径を有する第1の膜[膜(PP1)]と接触させることによって行われ;第2の濾過工程は、同じ液相及び/又は気相を、0.001~5μmの平均細孔径を有する第2の膜[膜(PP2)]と接触させることにより、前記第1の濾過工程後に行われる。
【0080】
代わりに、少なくとも1種の膜(PP)は、本発明による組成物(C)と異なる組成物から得られる少なくとも1種の多孔質膜と一連で使用される。
【0081】
好ましくは、前記工程(iii)は、少なくとも2バール、好ましくは少なくとも4バールの圧力を加えることによって行われる。好ましくは、前記工程(iii)は、50バール以下、より好ましくは100バール以下の圧力を加えることによって行われる。
【0082】
膜(PP)は、当技術分野において公知の技術に従い、例えば液相又は溶融相で製造することができる。
【0083】
本発明の第1の実施形態によれば、多孔質膜を製造する方法は、液相で実施される。
【0084】
この第1の実施形態による方法は、好ましくは、
(i^)液体組成物[組成物(C)]であって、
- 上で定義されたようなポリマー(PP)、及び
- 上で定義されたような液体媒体[媒体(L)]
を含む液体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^)工程(i)において提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程と;
(iii^)工程(ii)において提供されたフィルムを沈澱させ、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0085】
工程(i^)下において、組成物(C)は、任意の従来技術によって製造される。例えば、媒体(L)がポリマー(PP)に添加され得るか、又は好ましくはポリマー(PP)が媒体(L)に添加され得るか、又はポリマー(PP)及び媒体(L)がさらに同時に混合され得る。
【0086】
任意の好適な混合装置が使用され得る。好ましくは、混合装置は、最終的な膜に欠陥を生じさせ得る組成物(C)中に閉じ込められた空気の量を減少させるように選択される。ポリマー(PP)と媒体(L)との混合は、好都合には、不活性雰囲気下に任意選択で保持された密封容器中で実施され得る。不活性雰囲気、より正確には窒素雰囲気は、組成物(C)の製造にとって特に有利であると分かった。
【0087】
工程(i^)下において、透明な均一組成物(C)を得るために必要とされる攪拌中の混合時間は、成分の溶解速度、温度、混合装置の効率、組成物(C)の粘度等に依存して広く変わり得る。
【0088】
工程(ii^)下において、組成物(C)は、典型的には液相で加工される。
【0089】
工程(ii^)下において、組成物(C)は、キャストし、それによってフィルムを提供することによって典型的には加工される。
【0090】
キャスティングは、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒又はスロットダイが、好適な媒体(L)を含む液体組成物の平らなフィルムを好適な支持体にわたって広げるために使用される、溶液キャスティングを一般に含む。
【0091】
工程(ii^)下において、組成物(C)がキャスティングによって加工される温度は、組成物(C)が撹拌下に混合される温度と同じものであっても又はなくてもよい。
【0092】
製造される膜の最終形態に応じて異なるキャスティング技術が使用される。
【0093】
最終生成物が平膜である場合、組成物(C)は、典型的にはキャスティングナイフ、ドローダウン棒又はスロットダイを用いて、平支持基材、典型的にはプレート、ベルト若しくは布又は別の微小孔性支持膜一面にフィルムとしてキャストされる。
【0094】
工程(ii^)の第1の実施形態によれば、組成物(C)は、平支持基材上にキャストして平フィルムを提供することによって加工される。
【0095】
工程(ii^)の第2の実施形態によれば、組成物(C)は、管状フィルムを提供するために加工される。
【0096】
工程(ii^)のこの第2の実施形態の変形形態によれば、管状フィルムは、紡糸口金を使用して製造される。
【0097】
用語「紡糸口金」は、少なくとも2つの同心毛細管:すなわち、組成物(C)の通路のための第1の外側毛細管と、一般に「ルーメン」と称される、支持流体の通路のための第2の内側毛細管とを含む環状ノズルを意味すると本明細書では理解される。
【0098】
中空繊維膜及び毛細管膜は、工程(ii^)の第2の実施形態のこの変形形態によるいわゆる紡糸プロセスによって製造され得る。本発明の第2の実施形態のこの変形形態によれば、組成物(C)は、一般に、紡糸口金を通してポンプ送液される。ルーメンは、組成物(C)のキャスティングのための支持体としての役割を果たし、中空繊維前駆体又は毛細管前駆体の穴を開いた状態に維持する。ルーメンは、ガス又は好ましくは媒体(NS)若しくは媒体(NS)と媒体(L)との混合物であり得る。ルーメン及びその温度の選択は、それらが膜における細孔のサイズ及び分布に著しい影響を及ぼし得るため、最終膜に必要とされる特性に依存する。
【0099】
本発明のこの第1の実施形態による多孔質膜を製造する方法の工程(iii^)下において、空気中又は制御雰囲気中での短い滞留時間後、紡糸口金の出口において、中空繊維前駆体又は毛細管前駆体は、沈澱され、それによって中空繊維膜又は毛細管膜を提供する。
【0100】
支持流体は、最終中空繊維膜又は毛細管膜の穴を形成する。
【0101】
管状膜は、それらのより大きい直径のため、中空繊維膜の製造のために用いられる方法と異なる方法を使用して一般に製造される。
【0102】
本出願人は、本発明による方法の工程(ii^)及び工程(iii^)のいずれか1つにおける、所与の温度での溶媒/非溶媒混合物の使用が、有利には、その平均多孔率を含めて最終多孔質膜の形態学の制御を可能にすることを見出した。
【0103】
本発明の第1の実施形態による方法の工程(ii^)及び工程(iii^)のいずれか1つにおいて提供されるフィルムと、媒体(NS)との間の温度勾配は、それが一般に組成物(C)からのポリマー(A)の沈澱の速度に影響を与えるため、最終多孔質膜における細孔サイズ及び/又は細孔分布にも影響を与え得る。
【0104】
本発明の第2の実施形態によれば、多孔質膜を製造する方法は、溶融相で実施される。
【0105】
本発明の第2の実施形態による方法は、好ましくは、以下の工程:
(i^^)上で定義されたような少なくとも1種のポリマー(PP)を含む固体組成物[組成物(C)]を提供する工程と;
(ii^^-A)工程(i^^^)において提供された組成物(C)を加工し、それによってフィルムを提供する工程及び(iii^^-A)工程(ii^^-A)において提供されたフィルムを延伸し、それによって多孔質膜を提供する工程;又は
(ii^^-B)工程(i^^)において提供された組成物(C)を加工し、それによって繊維を提供する工程及び(iii^^-B)(ii^^-B)において提供された繊維を加工し、それによって多孔質膜を提供する工程と
を含む。
【0106】
工程(ii^^-A)下において、組成物(C)は、好ましくは、溶融相で加工される。
【0107】
溶融成形は、フィルム押出、好ましくはフラットキャストフィルム押出又はインフレートフィルム押出によって高密度フィルムを製造するために一般に使用される。
【0108】
この技術によれば、組成物(C)は、溶融テープを得るためにダイを通して押し出され、溶融テープは、次いで、必要とされる厚さ及び幅を得るまで2方向に較正及び延伸される。組成物(C)は、溶融組成物を得るために溶融配合される。一般に、溶融配合は、押出機で実施される。組成物(C)は、一般に、250℃未満、好ましくは200℃未満の温度でダイを通して典型的には押し出され、それによってストランドを提供し、ストランドは、典型的には切断され、それによってペレットを提供する。
【0109】
二軸スクリュー押出機が、組成物(C)の溶融配合を達成するための好ましい装置である。
【0110】
次いで、フィルムは、そのようにして得られたペレットを従来のフィルム押出技術によって加工することによって製造することができる。フィルム押出は、好ましくは、フラットキャストフィルム押出法又はホットインフレートフィルム押出法によって達成される。フィルム押出は、より好ましくは、ホットインフレートフィルム押出法によって達成される。
【0111】
工程(iii^^-A)下において、工程(ii^^-A)において提供されたフィルムは、溶融相において又はその冷却固化後のいずれかで延伸され得る。
【0112】
本発明の方法によって得られる多孔質膜は、好ましくは、少なくとも30℃の温度で典型的には乾燥される。
【0113】
乾燥は、空気下又は改善雰囲気下、例えば典型的には水分を除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)不活性ガス下で行うことができる。乾燥は、代わりに、真空下で行うことができる。
【0114】
本明細書内で用いるとき、「組成物(C)」は、特に明記しない限り、液体組成物[組成物(C)]及び固体組成物[組成物(C)]の両方を含むことが意図される。
【0115】
好ましい実施形態によれば、組成物(C)は、可塑剤を含まず、すなわち、可塑剤は、組成物(C)に添加されないか、又はそれらは、前記組成物(C)の総重量を基準として1重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の量で存在する。
【0116】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量を基準として7~60重量%未満、より好ましくは8~55重量%、さらにより好ましくは10~50重量%の量で前記ポリマー(PP)を含む。
【0117】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量を基準として40重量%以上、より好ましくは少なくとも45重量%、さらにより好ましくは少なくとも50重量%の量で前記媒体(L)を含む。
【0118】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量を基準として93重量%まで、より好ましくは92重量%、さらにより好ましくは90重量%の量で前記媒体(L)を含む。
【0119】
好ましくは、前記組成物(C)は、前記組成物(C)の総重量を基準として1~85重量%の量で前記ポリマー(PP)を含む。
【0120】
本発明による膜(PP)の好ましい実施形態は、膜(PP*)と称される実施形態である。
【0121】
好ましくは、組成物(C*)は、組成物(C)について上で記載された特徴を有する。
【0122】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0123】
本発明は、以下の実験の部に含有される実施例によってより詳細に本明細書で以下に例示されるが;実施例は、例示的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【実施例
【0124】
原材料
ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、イソプロピルアルコール(IPA)及びポリビニルピロリドン(PVP)K10は、Sigma Aldrichから入手した。Veradel(登録商標)3000P(ポリエーテルスルホン-PESU)及びPrimospire(登録商標)PR 250(ポリフェニレン)は、Solvay Specialty Polymersから入手した。
【0125】
方法
フラットシート膜に関する機械的(引張)試験
フラットシート多孔質膜に関する機械的特性は、グリップ距離=25.4mm及び初期長L=21.5mmでASTM基準D638タイプVに従って室温(23℃)で評価した。速度は、1~50mm/分であった。水中で保存した試料を容器ボックスから取り出し、直ちに見かけ弾性率及び破断応力を測定するために試験した。
【0126】
中空繊維膜に関する機械的(引張)試験
押出繊維に関する試験は、全て初期長L=125mm及び125mm/分の速度でASTM D3032方法に従って行った。試験した繊維の全ては、いかなる追加の処理もなしに水中で保存した。試験中、繊維を湿った状態に維持した:すなわち、各試験は、いくつかの繊維検体に関して少なくとも4~5の繰り返しを伴った。見かけ弾性率及び破断応力を測定した。
【0127】
多孔率及び細孔サイズの測定
膜の重量多孔率は、膜の総容積で割られた細孔の容積と定義する。多孔率は、Appendix of Desalination,72(1989)249-262に記載されている手順に従って湿潤流体としてIPA(イソプロピルアルコール)を使用して測定した。
ここで、
Wetは、湿った膜の重量であり、
Dryは、乾燥した膜の重量であり、
ρpolymerは、ポリマーの密度(1.19g/cmのPrimoSpire(登録商標);1.36g/cmのPESU)であり、
ρliquidは、IPAの密度(0.78g/cm)である。
【0128】
水透過性の測定
純水透過性は、当技術分野において公知の技術に従って測定した。所定の圧力で各膜を通る水流束(J)は、単位面積当たり及び単位時間当たり透過する容積と定義した。この流束は、以下の式:
(ここで、V(L)は、透過水の容積であり、Aは、膜面積であり、Δtは、操作時間である)
によって計算する。フラットシート膜に関する水流束測定は、一定の窒素下で行き止まり構造を用いて室温で行った。
【0129】
流束減衰試験(「圧縮試験」)
この試験は、圧力圧縮への製造品目の性向を評価するために行った。この試験は、いくつかの選択されたフラットシート品目に関してのみ行い、1~2及び4バールの印加圧力での3つの所定の連続的段階のそれぞれについて流束(上で定義されたような)を長時間(約45分)測定することに存する。1バールでの第1の流束測定を、およそ11分の圧力保持後に行った。全体試験は、135分間続いた。終わりに、各圧力段階の継続時間中の流束減衰を評価し、且つまた流束と印加圧力との間の最終的な比例関係をチェックすることが可能であった。
【0130】
ドープ溶液の調製
以下の実施例において詳述される量のポリマーと、溶媒(以下に詳述されるようなDMAC又はNMP)中の任意選択の添加物とを添加すること及び各溶液について透明な及び均一な系が得られるまで数時間機械アンカーで撹拌することにより、溶液を30℃で調製した。必要に応じて、溶解プロセスを加速するために系の温度を50℃~60℃に上げた。
【0131】
フラットシートの形態の膜の調製
フラットシートの形態の多孔質膜を、自動化キャスティングナイフにより、好適な滑らかなガラス支持体一面に、上で記載されたとおりに調製されたドープ溶液をフィルムにすることによって調製した。ポリマーの時期尚早の沈澱を防ぐために、ドープ溶液、キャスティングナイフ及び支持体の温度を25℃に保つことによって膜キャスティングを行った。ナイフ隙間を250μmに設定した。キャスティング後、相反転を誘起するために、ポリマーフィルムを直ちに凝固浴(純粋な脱イオン水又は混合物IPA/水50:50v/vのいずれか)に浸した。凝固後、膜を次の数日間純水中で数回洗浄して残存痕跡の溶媒を除去した。
【0132】
中空繊維の形態の膜の調製
中空繊維の形態の多孔質膜を、上で詳述されたとおりに調製されたドープ溶液を、紡糸口金を通して押し出すことによって調製した(図1における3)。1~10ml/分の範囲の流量で供給される水を環の中央でボア流体として共押出することにより、中空繊維が崩壊することを防いだ。回転(凝固)水浴(図1における6)は、相反転による凝固を生じさせることを可能にした。装置の温度をPIDシステムによって制御した。押出パートにおいて使用される紡糸口金形状は、800μmの内径(IDsp)、1600μmの外径(ODsp)及び300μmのボア径を有した(本文では後に0.3-0.8-1.6として示される)。
【0133】
実施例1
フラットシートの形態での本発明による多孔質膜を、DMAC溶媒と、以下の濃度:15w/w%、20w/w%及び25w/w%でのPrimospire(登録商標)PR-250とを使用して調製した。
(a)発生期膜を水中で凝固させた。
(b)発生期膜を50/50v/vのIPA/水のブレンド中で凝固させた。
【0134】
実施例1C
比較として、フラットシートの形態での多孔質膜を、DMAC溶媒と、以下の濃度:15w/w%及び20w/w%でのVeradel(登録商標)PESU(ポリエーテルスルホン)3000 MPとを使用して調製した。
(a)発生期膜を水中で凝固させた。
(b)発生期膜を50/50v/vのIPA/水のブレンド中で凝固させた。
得られた膜についての機械的特性を以下の表1に示す。
【0135】
【0136】
表1の結果は、本発明に従って調製された膜が、改善された機械的特性を有したことを示す。
【0137】
圧縮試験を、濃度15w/w%で実施例1方法(a)及び濃度15w/w%で実施例1C(*)方法(a)に従って調製された膜を使用して行った。結果を以下の表2に示す。
【0138】
【0139】
上記の結果は、本発明に従って調製された膜が、各圧力段階において、特に2バール以上でより良好な流束を保持することと、圧力が増加したとき、流束と圧力との間の比例関係が維持されることとを示した。それに対して、圧力が増加したとき、比較膜について測定された流束は、圧力圧縮によって強く影響を受けた。
【0140】
実施例2
フラットシートの形態での本発明による多孔質膜を、DMAC溶媒と、5w/w%のPVP K10及び20w/w%のPrimospire(登録商標)PR-250を含むブレンドとを使用して調製した。
(a)発生期膜を水中で凝固させた。
(b)発生期膜を50/50v/vのIPA/水のブレンド中で凝固させた。
【0141】
実施例2C
比較として、フラットシートの形態での多孔質膜を、DMAC溶媒と、5w/w%のPVP K10及び20w/w%のVeradel(登録商標)PESU(ポリエーテルスルホン)3000 MPを含むブレンドとを使用して調製した。
(a)発生期膜を水中で凝固させた。
(b)発生期膜を50/50v/vのIPA/水のブレンド中で凝固させた。
得られた膜についての機械的特性を以下の表3に示す。
【0142】
【0143】
表3の結果は、本発明に従って調製された膜が、改善された機械的特性を有することを示した。
【0144】
圧縮試験を、実施例2方法(a)及び実施例2C(*)方法(a)に従って調製された膜を使用して行った。結果を以下の表4に示す。
【0145】
【0146】
上記の結果は、本発明に従って調製された膜が、各圧力段階において、特に2バール以上でより良好な流束を保持することと、圧力が増加したとき、流束と圧力との間の比例関係が維持されることとを示した。それに対して、圧力が増加したとき、比較膜について測定された流束は、圧力圧縮によって強く影響を受けた。
【0147】
実施例3
中空繊維の形態での本発明による多孔質膜を、DMAC溶媒と25w/w%のPrimospire(登録商標)PR-250とを使用して調製した。
【0148】
実施例3C
比較として、中空繊維の形態の多孔質膜を、DMAC溶媒と25w/w%のVeradel(登録商標)PESU 3000 MP(ポリエーテルスルホン)とを使用して調製した。
【0149】
実施例3及び実施例3Cの膜の調製のための実験条件は、下記であった。
- ドープ組成物/T℃押出:25重量%/30℃
- ノズル(mm):0.3-0.8-1.6
- ボア流体:純水
- 凝固浴温度:25℃での水
- ドープスループット(g/分)対ボアスループットの比(D/B比):0.6~3.5
- 空隙:9cm
得られた膜についての機械的特性を以下の表5に示す。
【0150】
【0151】
表5の結果は、本発明に従って調製された膜が、改善された機械的特性を有したことを示した。
【0152】
実施例4C
フラットシートの形態の多孔質膜を、DMAC溶媒とPrimoSpire(登録商標)PR250 5w/w%とを使用して調製した。
【0153】
膜を水中で凝固させた。
【0154】
このように得られた膜は、ハンドリング時に機械的完全性を全く示さず、そのため、その機械的特性を測定することができなかった。
【0155】
実施例5C
DMAC溶媒とPrimoSpire(登録商標)PR250 60w/w%とを含む組成物を調製した。
【0156】
上記の組成物から、膜をキャストフィルムすることはできなかった。実に、磁気攪拌機又は機械撹拌機のいずれかを使用し、130℃まで加熱して、PrimoSpire(登録商標)PR250ポリマーをDMAC溶媒中に溶解させることはできなかった。