(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】眼球撮像装置および診断サポートシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240708BHJP
A61B 3/14 20060101ALI20240708BHJP
G02C 13/00 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
A61B3/10
A61B3/14
G02C13/00
(21)【出願番号】P 2021535354
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028881
(87)【国際公開番号】W WO2021020388
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2019141530
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519280058
【氏名又は名称】小林 瑶一▲郎▼
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 瑶一▲郎▼
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-010978(JP,A)
【文献】特開2004-081387(JP,A)
【文献】特開2019-068932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被観察者の頭部に当接可能な開口を有する筐体と、
前記筐体に配置され、前記被観察者の左眼球を側面から撮像する第1の撮影光学系と、
前記第1の撮影光学系と対向して前記筐体に配置され、前記被観察者の右眼球を側面から撮像する第2の撮影光学系と、
前記筐体に前記第1の撮影光学系と前記第2の撮影光学系とが対向する方向に滑動可能に配置され、被観察者の左右眼球を正面から撮像する第3の撮影光学系と、
前記第1の撮影光学系、前記第2の撮影光学系、および第3の撮影光学系で撮像した画像を格納する記憶部と、
を備える眼球撮像装置。
【請求項2】
前記第3の撮影光学系は複数配置される、請求項1に記載の眼球撮像装置。
【請求項3】
前記第1の撮影光学系、前記第2の撮影光学系、および前記第3の撮影光学系は動画を撮像する、請求項1または2に記載の眼球撮像装置。
【請求項4】
前記画像を送信する通信部をさらに備える、請求項1乃至3の何れか1項に記載の眼球撮像装置と、
前記眼球撮像装置に接続し、前記画像を格納するサーバと、
前記画像を表示する端末と、
を備える診断サポートシステム。
【請求項5】
前記端末は複数の前記画像を同時に表示する、請求項4に記載の診断サポートシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被観察者の眼球を撮像する眼球撮像装置に関する。本発明の一実施形態は、特に、コンタクトレンズの処方をサポートする眼球撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンタクトレンズ使用者は増えつづけ、国内のコンタクトレンズ使用者はすでに2000万人近くいるものと推定される。コンタクトレンズ使用者の増加に伴い、コンタクトレンズ市場の規模は拡大し、流通形態も変化しつつある。コンタクトレンズは医薬品ではないことから、法律上は、医療機関が薬剤師に指示する処方箋を必要としない。このため、従来は眼科やコンタクトレンズ専門店でのみ販売されていたが、現在ではコンタクトレンズ量販店での販売、通信販売、インターネット販売などが加わり、より安価で簡単に手に入れることができるようになった。
【0003】
一方で、医薬品医療機器等法上、コンタクトレンズは高度管理医療機器として副作用・機能障害を生じた場合の人体へのリスクが高いものと位置づけられている。コンタクトレンズ使用者が従来の眼科やコンタクトレンズ専門店でコンタクトレンズの処方を受ける場合、まず目に異常がないか専門医による検査を受ける。続いてコンタクトレンズを選定しフィッティング検査を受ける。さらにはコンタクトレンズの取り扱いや正しいケア方法について指導を受けることができる。このような適正な検査および指導は、コンタクトレンズを安全、快適に使用するために必要なものである。しかしながら、コンタクトレンズ量販店での販売、通信販売、インターネット販売などにおいては、このような適正な検査および指導を受けることができず、様々な原因からコンタクトレンズの使用による目のトラブルを招く危険性がある。
【0004】
コンタクトレンズの使用が引き起こす、代表的な疾患としては、角膜びらん、角膜感染、角膜新生血管、巨大乳頭結膜炎などがあげられるが、これらの疾患は放置することで失明するおそれもある。多くのコンタクトレンズ使用者が眼科を受診することの重要性を認識しているにもかかわらず、より安価で簡単なコンタクトレンズ量販店、通信販売、インターネット販売などでの購入に頼る実情として、専門医による検査および指導を受けることへの時間的制約および金銭的負担が考えられる。このため、コンタクトレンズ量販店での販売、通信販売、インターネット販売などにおいても、安価で簡単に専門医による検査および指導を受けることができる環境が望まれる。
【0005】
例えば、特許文献1には、患者や眼科検査機器が離れた場所にあっても、眼科検査機器を眼科の専門医が遠隔から操作することで精度の高い診断を行えるような操作性を有した眼科遠隔診断システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、細隙灯顕微鏡を構成要素とした眼科診療システムであり、専門的な診断を可能とする一方で、高度な技術を有する専門医がリアルタイムで操作をする必要性がある。このため、安価で簡単に専門医による検査および指導を受けることができるシステムとは言い難い。
【0008】
本発明は、上述した問題を解決するものであって、安価で簡単に専門医による検査および指導をサポートすることができる眼球撮像装置および診断サポートシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、被観察者の頭部に当接可能な開口を有する筐体と、筐体に配置され、被観察者の左眼球を側面から撮像する第1の撮影光学系と、第1の撮影光学系と対向して筐体に配置され、被観察者の右眼球を側面から撮像する第2の撮影光学系と、筐体に第1の撮影光学系と第2の撮影光学系とが対向する方向に滑動可能に配置され、被観察者の左右眼球を正面から撮像する第3の撮影光学系と、第1の撮影光学系、第2の撮影光学系、および第3の撮影光学系で撮像した画像を格納する記憶部と、を備える眼球撮像装置が提供される。
【0010】
また、第3の撮影光学系は複数配置されてもよい。
【0011】
また、第1の撮影光学系、第2の撮影光学系、および第3の撮影光学系は動画を撮像してもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によると、画像を送信する通信部をさらに備える、眼球撮像装置と、眼球撮像装置に接続し、画像を格納するサーバと、画像を表示する端末と、を備える診断サポートシステムが提供される。
【0013】
また、端末は複数の画像を同時に表示してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、安価で簡単に専門医による検査および指導をサポートすることができる眼球撮像装置および診断サポートシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る眼球撮像装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る眼球撮像装置を示すブロック構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る診断サポートシステムを示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る診断サポート表示画面を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るコンタクトレンズ処方手順を説明するフロー図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る角膜曲率半径および角膜径の測定方法を説明する模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るコンタクトレンズのフィッティング状態を説明する模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る画像においてコンタクトレンズの動きを説明する模式図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る画像においてフルオレセインパターンを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る眼球撮像装置について説明する。本発明に係る眼球撮像装置は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0017】
<眼球撮像装置>
図1は、本発明の一実施形態に係る眼球撮像装置を示す模式図である。眼球撮像装置10は、被観察者の眼球を撮像可能なデバイスであって、例えば、
図1に示すような箱型のデバイスであってもよい。眼球撮像装置10は、被観察者の頭部に装着可能なデバイスであって、さらに固定手段としてバンドを有するゴーグルタイプのデバイスであってもよい。
【0018】
眼球撮像装置10は、筐体20と、被観察者の左眼球を側面から撮像する第1のカメラ30a(第1の撮影光学系)と、被観察者の右眼球を側面から撮像する第2のカメラ30b(第2の撮影光学系)と、被観察者の左右眼球を正面から撮像する第3のカメラ30c(第3の撮影光学系)と、を備える。ここで、第1のカメラ30aと第2のカメラ30bと第3のカメラ30cとを区別しないときには、カメラ30という。
【0019】
筐体20は、被観察者の頭部(顔面)に当接可能な開口21を有する。本実施形態において開口21は、被観察者の顔面上部の曲面に対応するよう筐体20を半円柱型にくり抜いた形状で示した。すなわち、筐体20は湾曲した凹部に開口21を有する。しかしながらこれに限定されず、開口21は、筐体20を被観察者の頭部に当接したとき、被観察者の眼球を正面および側面から撮像可能であればよい。例えば、被観察者の顔面上部の曲面に対応するよう筐体20自体が湾曲した形状であってもよい。筐体20は、眼球撮像装置10の使用環境による光の影響を抑制するために遮光性を有する材料で構成されることが好ましい。開口21の縁部は、多様な被観察者の頭部形状に対応できるよう可撓性を有する材料で構成されることが好ましい。筐体20は、開口21とは反対側の面(正面)にスリット23を有する。スリット23は、筐体20を被観察者の頭部(顔面)に当接したとき眼球に対応する高さ(Y方向)に位置し、左右の眼球に対応する方向(X方向)に延在する。スリット23の縁部には、光が洩れないよう遮光弁24が配置される。遮光弁24は、後述する第3のカメラ30cが配置されても光が洩れないように可撓性を有する材料で構成されることが好ましい。筐体20が遮光性を有する場合、筐体20はさらに光源を有することが好ましい。光源は、筐体20の内側に配置されることが好ましい。光源を筐体20の内側に配置することで、被観察者の眼球をより鮮明に撮像することができる。しかしながらこれに限定されず、例えば、筐体20は上側の面だけ透過性を有してもよい。筐体20をこのように構成することで、上側に光源を配置するのと同等の効果を得ることができる。
【0020】
本実施形態において、カメラ30は、被観察者1の眼球を撮像する撮影光学系であって、単焦点レンズを含んでもよく、ズームレンズを含んでもよい。
【0021】
本実施形態において、第1のカメラ30aは、筐体20の被観察者の左眼球を左側面から逆X方向に撮像できる位置に配置される。第2のカメラ30bは、筐体20の被観察者の右眼球を右側面からX方向に撮像できる位置に配置される。すなわち、
図1において、第1のカメラ30aは筐体20の右側面(X側面)に、第2のカメラ30bは筐体20の左側面(逆X側面)に配置される。第1のカメラ30aと第2のカメラ30bとは対向している。第3のカメラ30cは、筐体20の被観察者の左右眼球を正面からZ方向に撮像できる位置に配置される。すなわち、
図1において、第3のカメラ30cは、筐体20の正面(逆Z側面)に配置される。第3のカメラ30cは、筐体20のスリット23に配置される。第3のカメラ30cは、スリット23において第1のカメラ30aと第2のカメラ30bとが対向する方向(X方向)に滑動可能に配置される。すなわち、第3のカメラ30cは、観察者の左眼球を正面からZ方向に撮像できる位置に移動することができ、且つ観察者の右眼球を正面からZ方向に撮像できる位置に移動することができる。第1のカメラ30aと第2のカメラ30bと第3のカメラ30cとはいずれも、筐体20を被観察者の頭部(顔面)に当接したとき眼球に対応する高さ(Y方向)に配置される。
【0022】
本実施形態において眼球撮像装置10は、第1のカメラ30aと第2のカメラ30bと第3のカメラ30cとを1個ずつ配置した。しかしながらこれに限定されず、第1のカメラ30aと第2のカメラ30bと第3のカメラ30cとは何れも複数配置してもよい。例えば、多様な被観察者の眼球の位置に対応できるよう、第1のカメラ30aと第2のカメラ30bとはY-Z方向に複数配置してもよく、第3のカメラ30cはX-Y方向に複数配置してもよい。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係る眼球撮像装置を示すブロック構成図である。眼球撮像装置10は、例えば、カメラ30、記憶部11、制御部15、通信部16、電源17および入力部18を備えるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
記憶部11は、例えば、メモリであり、カメラ30で撮像した被観察者の眼球の画像を一時的に格納してもよい。記憶部11は、カメラ30で撮像した被観察者の眼球の画像とともに被観察者の認証情報を格納してもよい。本実施形態においては、認証情報に基づいて被観察者を特定することができる。メモリは、例えば、メモリカードなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含んでよい。
【0025】
制御部15は、眼球撮像装置10を制御する装置であって、例えば、中央処理装置(CPU)である。また、制御部15は、眼球撮像装置10を制御するプログラムを含む。なお、眼球撮像装置10を制御するプログラムは、記憶部11に格納され、制御部15で実行される。また、一実施形態において、制御部15は、眼球撮像装置10を制御するオペレーティングシステム(OS)を含んでもよい。
【0026】
通信部16は、眼球撮像装置10と外部の装置との通信を行う装置であって、例えば、Wi-Fi(登録商標)(IEEE 802.11規格を使用する通信手段)やBluetooth(登録商標)等の無線通信規格に適合した通信手段を備えるが、これらに限定されるものではない。通信部16には物理アドレス(MACアドレス)が割り当てられており、物理アドレスから眼球撮像装置10を特定することができる。すなわち、通信部16に割り当てられた物理アドレス(MACアドレス)は、眼球撮像装置10の端末特定情報として用いてもよい。眼球撮像装置10の物理アドレスは、例えば、コンタクトレンズ販売店舗と対応付けられている。このため、眼球撮像装置10の物理アドレスに基づいて、コンタクトレンズ販売店舗を特定することができる。一実施形態において、眼球撮像装置10は、通信部16による無線通信を介して、診断サポートシステムに接続し、カメラ30で撮像した被観察者の眼球の画像を送信してもよい。眼球撮像装置10は、カメラ30で撮像した被観察者の眼球の画像とともに被観察者の認証情報を診断サポートシステムに送信してもよい。また、後述するように、眼球撮像装置10は、通信部16による無線通信を介して、医療従事者用端末131と接続することもできる。
【0027】
電源17は、一般的なバッテリであって、眼球撮像装置10に配設された各装置に電源を供給する繰り返しの充放電が可能な電源である。例えば、電源17は、接続端子を備え、外部から電源供給して充電してもよい。また、電源17は、ワイヤレス電力伝送により、非接触で外部から電源供給して充電してもよい。電源17は、軽量、且つ大容量であることが好ましいが、特に限定されない。したがって、眼球撮像装置10はコンタクトレンズ販売店舗内のみでの利用に限られず、携帯可能である。
【0028】
入力部18は、被観察者1が眼球撮像装置10を操作可能な入力手段であって、例えば、スイッチ、選択ボタン、タッチパネル等であってもよい。一実施形態において、入力部18は、タッチパネルを備えた表示装置(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)であってもよい。また、入力部18の形状や位置は任意に選択可能であり、特に限定されない。入力部18は、例えば、被観察者1が押下操作することにより、眼球の撮像を開始してもよい。また、入力部18が表示装置を備える場合、例えば、カメラ30で撮像した被観察者1の眼球の画像を表示装置に表示して、眼球とカメラの位置あわせに利用してもよい。
【0029】
一実施形態において、被観察者1の認証情報とは、被観察者1の氏名、認証コード(ID)等であり、被観察者1を特定する情報であればよい。また、被観察者1の認証情報には、例えば、被観察者1が既往歴を有することを示すコード等を含むことが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る眼球撮像装置10は、このような構成を有することで、安価で簡単に被観察者1の眼球の正面および側面画像を撮像することができ、専門医による検査および指導をサポートすることができる。
【0031】
<診断サポートシステム>
図3は、本発明の一実施形態に係る診断サポートシステム100を示す模式図である。診断サポートシステム100は、例えば、眼球撮像装置10と、サーバ101、医療従事者用端末131、151で構成されるが、これに限定されるものではない。サーバ101は、例えば、眼球撮像装置10と無線通信を介して接続可能なサーバであり、医療機関130または医療従事者の自宅150の医療従事者用端末131、151と有線通信又は無線通信を介して接続される。即ち、サーバ101は、診断サポートシステム100において、眼球撮像装置10と医療従事者用端末131、151とを接続するためのハブとして機能するサーバである。サーバ101のハードウェアは特に限定されず、公知のサーバ及び公知のサーバが備える各種の電子機器により構成される。
【0032】
一実施形態において、サーバ101は、眼球撮像装置10で撮像した被観察者1の眼球の画像とともに被観察者1の情報と眼球撮像装置10の端末特定情報を関連付けて格納してもよい。被観察者1の情報とは、被観察者1の氏名、住所、病歴等であり、被観察者1を特定する情報であればよい。また、被観察者1の情報には、例えば、被観察者1の角膜曲率半径、角膜径、裸眼視力等を含むことが好ましい。また、被観察者1の情報には、被観察者1が使用していた、または使用しているコンタクトレンズの情報等を含んでもよい。
【0033】
一実施形態において、サーバ101の被観察者1の情報を格納する記憶領域は、医療従事者等の専門家のみがアクセス可能な領域に格納されることが好ましい。医療従事者用端末131、151は、サーバ101と接続することにより、被観察者1の情報を書き込むことができる。したがって、本実施形態において、被観察者1の情報は、医療従事者用端末131、151を操作可能な者、即ち、医療従事者等の専門家のみが書き換え可能である。
【0034】
医療従事者用端末131、151は無線通信手段を備え、無線通信を介して、診断サポートシステム100のサーバ101と通信してもよい。このため医療従事者用端末131、151は、医療従事者が所有する携帯電話、スマートフォン、iPad(登録商標)等のタブレット型端末であってもよい。
【0035】
医療機関130は、少なくとも眼科専門医が在籍する医療機関を含む。また、医療機関130は、眼科を併設するコンタクトレンズ専門店も含む。医療機関130は、医療従事者用端末131を備え、サーバ101と有線通信又は無線通信を介して接続される。したがって、医療従事者用端末131は、サーバ101を介して、診断サポートシステム100と接続可能である。なお、医療従事者用端末131は、汎用のコンピュータ端末でよく、専用の端末であってもよい。例えば、医療従事者用端末131には、パーソナルコンピュータ、iPad(登録商標)等のタブレット型端末、スマートフォン等のメールを受信可能な端末を用いることができる。一実施形態において、医療従事者用端末131は、サーバ101を介さずに、診断サポートシステム100と接続してもよい。医療従事者用端末131は、診断サポートシステム100から、被観察者1の眼球の画像を受信し、医療従事者が被観察者1の眼球の状態をモニタリングすることを可能にしてもよい。また、被観察者1の眼球の状態に異常が検出されたときに、医療従事者用端末131から診断サポートシステム100に異常を通知してもよい。一実施形態において、医療従事者用端末131が診断サポートシステム100に被観察者1の眼球の状態の異常を通知した場合、コンタクトレンズ販売店舗110は被観察者1に検査の結果を通知することが好ましい。
【0036】
また、一実施形態において、医療従事者用端末151は、医療従事者の自宅150に設置されてもよい。診断サポートシステム100から被観察者1の眼球の画像の取得を通知する医療従事者用端末131の優先順位をサーバ101に登録しておいてもよい。サーバ101は、優先順位が1番目の医療従事者用端末131(例えば、かかりつけ眼科医)に被観察者1の眼球の画像の取得を通知し、1番目の医療従事者用端末131からの応答がない場合に、優先順位が2番目の医療従事者用端末131(例えば、眼科専門医等)に被観察者1の眼球の画像の取得を通知してもよい。また、一実施形態において、1番目の医療従事者用端末131からの応答がない場合に、その医療従事者の自宅150の医療従事者用端末151被観察者1の眼球の画像の取得を通知してもよい。また、一実施形態においては、被観察者1の眼球の画像は、サーバ101に格納しておいてもよく、その後、1番目に診断サポートシステム100にアクセスした医療従事者用端末131、151に被観察者1の眼球の画像の取得を通知してもよい。医療従事者用端末131、151は、診断サポートシステム100から取得した被観察者1の眼球の画像等を表示可能なアプリケーションを記憶装置に格納して実行するか、インターネットブラウザを介して、サーバ101から提供される被観察者1の眼球の画像を表示させてもよい。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態に係る診断サポート表示画面200を示す模式図である。例えば
図4において診断サポート表示画面200は、医療従事者用端末131のディスプレイに診断サポートシステム100から取得した6人分の被観察者1の眼球の正面画像210を表示しているが、これに限定されるものではない。例えば、1以上の被観察者1の眼球の正面および左右側面画像を同時に表示してもよい。被観察者1の眼球の正面および左右側面画像から3D画像として表示してもよい。また、被観察者1の眼球の画像210はそれぞれ動画であってもよいし、静止画であってもよい。複数の被観察者1の眼球の画像210の動画を同時に再生してもよいし、1人分ずつ再生してもよい。
【0038】
また、一実施形態において、診断サポートシステム100から取得した被観察者1の眼球の画像は、サーバ101に格納されてもよい。医療従事者等の専門家は、医療従事者用端末131を介して、サーバ101に格納され、蓄積された被観察者1の眼球の画像を同時に閲覧することもできる。医療従事者は、被観察者1の定期的な検査の際に、被観察者1の検査結果と、蓄積された被観察者1の眼球の画像に基づいて、経時的な変化を診断に利用することができる。このため、医療従事者等の専門家は、医療従事者用端末131を介して検査結果をサーバ101に格納することにより、定期的に検査情報を更新してもよい。
【0039】
本実施形態に係る診断サポートシステム100は、このような構成を有することで、安価で簡単に被観察者1の眼球の正面および側面画像を撮像することができ、専門医による検査および指導をサポートすることができる。被観察者および医療従事者の場所・時間を選ばないことから、効率よく専門医による検査および指導をサポートすることができる。
【0040】
<コンタクトレンズ処方手順>
図5は、本発明の一実施形態に係るコンタクトレンズ処方手順を説明するフロー図である。まず、コンタクトレンズ処方希望者の問診(1)を行う。問診では、コンタクトレンズ処方希望者の目の状態、生活状況、コンタクトレンズの使用状況などを問診する。
【0041】
次に、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いて前眼部検査(2)を行う。コンタクトレンズ処方希望者(被観察者1)の左右裸眼の正面画像および左右側面画像を、眼球撮像装置10を用いて撮像する。被観察者1の眼球の画像は、診断サポートシステム100を介してリアルタイムまたは録画にて医療従事者によってモニタリングされる。前眼部検査では、水晶体の濁りや、結膜の充血、炎症など、被観察者1の眼球の状態に異常がないかを観察する。
【0042】
被観察者1の眼球の状態に異常がない場合、次に、オートレフケラトメーターを用いて角膜曲率半径の測定(3)、角膜径の測定(4)、裸眼視力測定(5)、屈折検査(6)、および涙液量検査(7)を行う。
図6は、本発明の一実施形態に係る角膜曲率半径および角膜径の測定方法を説明する模式図である。
図6に示すように、角膜曲率半径の測定(3)および角膜径の測定(4)では、角膜の縦のカーブと横のカーブの値および角膜径を測定する。角膜の縦のカーブと横のカーブの中間の値および角膜径を基準にトライアルレンズの選定(8)を行い、試験装用(9)する。
【0043】
次に、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いてコンタクトレンズのフィッティング検査(10)を行う。コンタクトレンズ装着時の左右裸眼の正面画像および左右側面画像を、眼球撮像装置10を用いて動画で撮像する。コンタクトレンズを装着した被観察者1の眼球の画像は、診断サポートシステム100を介してリアルタイムまたは録画にて医療従事者によってモニタリングされる。コンタクトレンズのフィッティング検査では、眼球上でのコンタクトレンズの動きを観察する。
【0044】
図7は、本発明の一実施形態に係るコンタクトレンズのフィッティング状態を説明する模式図である。
図8は、本発明の一実施形態に係る画像においてコンタクトレンズの動きを説明する模式図である。
図7(A)に示すように、コンタクトレンズのフィッティングが正常である場合、角膜のカーブとコンタクトレンズのカーブは略平行で、涙を挟んで角膜上にコンタクトレンズが浮いている状態となる。このため、
図8(A)に示すように、コンタクトレンズは瞬きのたびに瞼によって持ち上げられ、その後、重力によってゆっくり落ちてくる。
【0045】
図7(B)に示すように、コンタクトレンズの曲率半径が角膜の曲率半径よりも小さい場合、コンタクトレンズのカーブが角膜のカーブよりもきつく、コンタクトレンズのエッジ(外周)が眼球にあたる状態となる。このためコンタクトレンズは眼球に吸着しやすく、
図8(B)に示すように、眼球上でのコンタクトレンズの動きは小さく、遅くなる。
【0046】
図7(C)に示すように、コンタクトレンズの曲率半径が角膜の曲率半径よりも大きい場合、コンタクトレンズのカーブが角膜のカーブよりもゆるく、コンタクトレンズの中央が眼球にあたる状態となる。このためコンタクトレンズは眼球から浮きやすく、
図8(C)に示すように、眼球上でのコンタクトレンズの動きは大きく、早くなる。
【0047】
なお、コンタクトレンズのフィッティングは、上述するコンタクトレンズの動きの幅で判断してもよく、コンタクトレンズの動きの速度で判断してもよい。
【0048】
一実施形態において、コンタクトレンズのフィッティングは、フルオレセインパターンによって判断してもよい。フルオレセインで涙液を染め、コンタクトレンズ装着時の左右裸眼の正面画像および左右側面画像を、眼球撮像装置10を用いて撮像する。この際、ブルーライトを光源として用いることが好ましい。コンタクトレンズを装着した被観察者1の眼球の画像は、診断サポートシステム100を介してリアルタイムまたは録画にて医療従事者によってモニタリングされる。フルオレセインパターンによるコンタクトレンズのフィッティング検査では、角膜とレンズの間の涙液層の配置を観察する。
【0049】
図9は、本発明の一実施形態に係る画像においてフルオレセインパターンを説明する模式図である。コンタクトレンズのフィッティングが正常である場合、角膜のカーブとコンタクトレンズのカーブは略平行で、涙を挟んで角膜上にコンタクトレンズが浮いている状態となる。このため、
図9(A)に示すように、角膜とコンタクトレンズの間はフルオレセインで略均一に染まる。
【0050】
コンタクトレンズの曲率半径が角膜の曲率半径よりも小さい場合、コンタクトレンズのカーブが角膜のカーブよりもきつく、コンタクトレンズのエッジ(外周)が眼球にあたる状態となる。このため、
図9(B)に示すように、角膜とコンタクトレンズの間は中央がフルオレセインで染まる。
【0051】
コンタクトレンズの曲率半径が角膜の曲率半径よりも大きい場合、コンタクトレンズのカーブが角膜のカーブよりもゆるく、コンタクトレンズの中央が眼球にあたる状態となる。このため、
図9(C)に示すように、角膜とコンタクトレンズの間は周辺部がフルオレセインで染まる。
【0052】
コンタクトレンズのフィッティングに異常がない場合、次に強制視力検査(11)を行い、レンズ規格の決定(12)を行う。最終的に、決定したレンズに適した取り扱いの指導(13)を行う。
【0053】
本実施形態に係る診断サポートシステム100は、コンタクトレンズ処方において、専門医による前眼部検査(2)およびフィッティング検査(10)をサポートすることができる。被観察者および医療従事者の場所・時間を選ばないことから、効率よく専門医による検査および指導をサポートすることができる。
【実施例】
【0054】
I群として、6名の被験者に対し、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いて、オルソケラトロジー初診処方時のトライアルレンズのフィッティング検査を行った。また、その後の定期的な検査において、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いて、裸眼での前眼部検査を行った。いずれのフィッティング検査および前眼部検査においても、医療従事者による対面での追検査を行った。この結果、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査によって、細隙灯顕微鏡などを用いた対面での検査と同等の結果が得られることが確認できた。また、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査によって、接触性皮膚炎、角膜損傷、光毒性による障害など、被検者への有害事象は認められなかった。したがって、涙液量検査や角膜形状測定など特別な検査を必要とする場合を除いて、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査は、オルソケラトロジー処方時およびその後の定期検査において有用であることが分かる。
【0055】
II群として、アレルギー性結膜炎、VDT(ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)症候群疑いの症例を有する5名の被験者に対し、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いて、前眼部検査を行った。いずれの前眼部検査においても、医療従事者による対面での追検査を行った。この結果、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査によって、同上の疾病診断に対して有用な検査情報を得ることができ、細隙灯顕微鏡などを用いた対面での検査と同等の結果が得られることが確認できた。また、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査によって、接触性皮膚炎、角膜損傷、光毒性による障害など、被検者への有害事象は認められなかった。したがって、特別な検査を必要とする場合を除いて、本実施形態に係る眼球撮像装置10を用いた検査は、アレルギー性結膜炎、VDT症候群疑いの症例などの診断において有用であることが分かる。
【符号の説明】
【0056】
1 被観察者、10 眼球撮像装置、100 診断サポートシステム、101 サーバ、131、151 医療従事者用端末