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特許7516384単純化されたチーズスプレッドの製造方法、およびそれにより得られた製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】単純化されたチーズスプレッドの製造方法、およびそれにより得られた製品
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/08 20060101AFI20240708BHJP
   A23C 19/076 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A23C19/08
A23C19/076
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021536277
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 US2019059302
(87)【国際公開番号】W WO2020131230
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】16/229,377
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514062242
【氏名又は名称】クラフト・フーズ・グループ・ブランズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ウィーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジューディス モカ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-215192(JP,A)
【文献】国際公開第2005/074694(WO,A1)
【文献】特表2015-526095(JP,A)
【文献】特開2011-024574(JP,A)
【文献】特表2018-512046(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にキサンタンガムフリーであるクリームチーズを製造する方法であって、
(a)乳製品液体を発酵によってチーズカードを調製するステップと、
(b)固形物を基準とするホエイタンパク質のレベルが3~70%である乳製品液体含有ホエイタンパク質に、エキソポリサッカライド産生培養物を接種するステップであって、摂取される前記乳製品液体含有ホエイタンパク質は、前記ステップ(a)のチーズカード発酵とは切り離されている、接種するステップと、
(c)前記乳製品液体含有ホエイタンパク質をある時間および温度で発酵させて、生物生成エキソポリサッカライドを前記ホエイタンパク質の乳製品液体中に生成するステップと、
(d)前記ステップ(a)の発酵の後に得られた前記チーズカードと、前記ステップ(c)の生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体とを、混合タンクにおいて組み合わせるステップと、
(e)1つまたは複数の安定剤を、前記チーズカードおよび前記生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体と組み合わせるステップであって、前記1つまたは複数の安定剤は、実質的に添加キサンタンガムフリーである、組み合わせるステップと、
(f)前記ステップ(e)における組み合わせを混合して、実質的に添加キサンタンガムフリーであるクリームチーズを形成するステップと、を備える、方法。
【請求項2】
前記チーズカードと、前記ステップ(c)の生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体と組み合わせる前に、前記ステップ(a)の発酵させた乳製品液体からホエイストリームが分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の安定剤が、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナンガム、およびそれらの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記クリームチーズは、キサンタンガムフリーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記クリームチーズは、脂肪対タンパク質の比が4:1~5:1である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)の乳製品液体およびステップ(b)の乳製品液体含有ホエイタンパク質が、前記クリームチーズの前記脂肪対タンパク質の比を達成するための量のタンパク質および脂肪を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記クリームチーズが、2~25%の脂肪を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エキソポリサッカライド産生培養物が、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ブルガリクス、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ストレプトコッカス・サーモフィルス、もしくはラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(f)の混合された組み合わせが、4~80分の混合で、6~90パスカルの目標降伏応力を構築する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記乳製品液体含有ホエイタンパク質に、0.0005~0.2重量%のエキソポリサッカライド産生培養物が接種される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記カードを形成する前記乳製品液体の発酵が、エキソポリサッカライド産生培養物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記クリームチーズが、添加キサンタンガムなしで3~40%の凝集性を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
実質的にキサンタンガムフリーであるクリームチーズであって、
(a)乳製品液体を発酵によってチーズカードを調製するステップと、
(b)固形物を基準とするホエイタンパク質のレベルが3~70%である乳製品液体含有ホエイタンパク質に、エキソポリサッカライド産生培養物を接種するステップであって、接種される前記乳製品液体含有ホエイタンパク質は、前記ステップ(a)のチーズカード発酵とは切り離されている、接種するステップと、
(c)前記乳製品液体含有ホエイタンパク質をある時間および温度で発酵させて、微生物由来のエキソポリサッカライドを含むホエイタンパク質の乳製品液体を生成するステップと、
(d)前記ステップ(a)の発酵の後に得られたチーズカードと、前記ステップ(c)の微生物由来のエキソポリサッカライドを含むホエイタンパク質の乳製品液体とを、添加安定剤と共に混合タンクにおいて組み合わせるステップであって、実質的にキサンタンガムフリーである、組み合わせるステップと、
(e)前記ステップ(d)における組み合わせを混合して、実質的にキサンタンガムフリーであるクリームチーズを形成するステップと、を含むプロセスによって作られ、
前記微生物由来のエキソポリサッカライドは、前記クリームチーズ中のタンパク質とともに連続タンパク質相を形成し、該連続タンパク質相内に含有される粒子として分散する効果を有する、
クリームチーズ。
【請求項14】
前記クリームチーズが、5で50,000~60,000パスカル、25℃で6,000~7,000パスカル、および37℃で2,000~3,000パスカルの硬度プロファイルを示す、請求項13に記載のクリームチーズ。
【請求項15】
実質的にキサンタンガムフリーであるクリームチーズであって、該クリームチーズは、
~25重量%の脂肪;
カゼインおよびホエイタンパク質から提供される2~5%のタンパク質であって、脂肪対タンパク質の比が4:1から5:1である、該タンパク質;
ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナンガム、およびそれらの混合物から選択され、実質的にキサンタンガムフリーである、1つまたは複数の添加安定剤;並びに
生物生成エキソポリサッカライド;を含み、
5℃でのチーズ硬さに対する37℃でのチーズ硬さを反映する凝集係数が、30%~40%であり、
前記生物生成エキソポリサッカライドは、前記クリームチーズ中のタンパク質とともに連続タンパク質相を形成し、該連続タンパク質相内に含有される粒子として分散する効果を有する、
クリームチーズ。
【請求項16】
で50,000~60,000パスカル、25℃で6,000~7,000パスカル、および37℃で2,000~3,000パスカルの硬度プロファイルを達成するのに十分な、前記生物生成エキソポリサッカライドおよび前記ホエイタンパク質との間の接合密度をさらに含み、かつ、実質的に添加キサンタンガムフリーである、請求項15に記載のクリームチーズ。
【請求項17】
前記クリームチーズが、二峰性の粒子サイズ分布を有する、請求項15に記載のクリームチーズ。
【請求項18】
前記二峰性の粒子サイズ分布は、1~8ミクロンの平均粒子サイズ、0.2~0.4ミクロンのD10粒子サイズ、0.5~1.0ミクロンのD50粒子サイズ、および1~30ミクロンのD90粒子サイズを有する、請求項17に記載のクリームチーズ。
【請求項19】
前記二峰性の粒子サイズ分布の第1のモードは、0.3~3ミクロンの平均粒子サイズを有し、前記二峰性の粒子サイズ分布の第2のモードは、2~90ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項17に記載のクリームチーズ。
【請求項20】
前記クリームチーズは、0.02~0.25%のグアーガムおよび0.05~0.5%のローカストビーンガムを含み、キサンタンガムを含まない、請求項15に記載のクリームチーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリームチーズまたはクリームチーズスプレッドのような、単純化された成分リストを有する全脂肪から低脂肪のチーズの製造方法、およびその製品に関する。
【背景技術】
【0002】
クリームチーズは、クリームおよびミルクの混合物から生成される、柔らかくて酸凝固した未硬化のチーズである。クリームチーズは、通常、冷蔵状態にて保存され、クリームチーズのボディは、一般的に滑らかでバターのようなものである。冷蔵温度におけるクリームチーズの食感およびボディは、クリームチーズをスライスして広げることができる程度のものである。従来のクリームチーズの製造においては、全乳および/または脱脂乳をクリームと事前に選択した比率でブレンドして、クリームチーズミックスを形成する。このクリームチーズミックスは、通常、脂肪含有量が約10%~約20%であるが、完成した全脂肪クリームチーズは、典型的には、脂肪含有量が約22%~約35%であり、完成した低脂肪クリームチーズは、一般的には、脂肪含有量が約15~約21%である。
【0003】
クリームチーズを製造するために、ミルクおよびクリームの混合物を、初めに低温殺菌し、均質化する。(通常は約60°F~約95°Fの間の温度への)冷却後、混合物に従来の乳酸酸性培養物を接種する。混合物の凝固を助けるためにレンネットを使用してもよい。混合物が熟成し、凝固物が大体一般に約4.1から約4.9のpHで形成されるまで、当該混合物は適切な接種温度に保持される。所望の酸性度が得られた後、カードは通常、ホエイから分離され、次いで包装される。クリームチーズを製造し、カードをホエイから分離するための1つのよく知られた工程は、リンクへの米国特許第2,387,276号に開示されているような、カードおよびホエイの機械的分離である。リンク特許(Link patent)で説明されているように、混合物が熟成されて凝固物を形成した後、凝固物は高温まで加熱され、混合物の粘度を破壊する。加熱した混合物を高温で遠心分離して、カードをホエイから分離する。
【0004】
発酵後には、最終製品の食感、クリーミーさを含む製品特性を改善するために、および/または離液をコントロールするために、様々な増粘剤、食感調整剤、および/または安定剤が、しばしばクリームチーズに添加される。クリームチーズにおける典型的な添加物としては、イナゴマメガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム等のガムが挙げられる。このような従来の方法により製造されたクリームチーズは、滑らかでクリーミーな粘稠度と繊細な味および香りを持ち、離液はほとんど、もしくは全く無い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キサンタンガムのようなガム等の、クリームチーズに使用されるいくつかの従来の食感調整剤または安定剤は、添加物が非天然であると認識する消費者にはあまり望まれない傾向にある。しかしながら、消費者が期待するような従来のクリームチーズの完成品の特性を模倣することが困難となるため、これらの添加物をクリームチーズから除去することは、問題となる傾向がある。1つまたは複数の増粘剤、食感調整剤、および/または安定剤を除去すると、口当たり、食感、クリーミーさ、および/またはスプレダビリティーなどの特定の完成品特性に問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、添加ガムおよび/または添加安定剤のレベルが低減されたクリームチーズを製造する方法を提供する。いくつかのアプローチにおいて、該方法は、(a)乳製品液体の発酵によってチーズカードを調製するステップと、(b)固形物を基準とするホエイタンパク質のレベルが約30~約70%である乳製品液体含有ホエイタンパク質に、エキソポリサッカライド産生培養物を接種するステップであって、接種された乳製品液体含有ホエイタンパク質は、ステップ(a)のチーズカード発酵とは切り離されている、接種するステップと、(c)前記乳製品液体含有ホエイタンパク質をある時間および温度で発酵させて、生物生成エキソポリサッカライドを前記ホエイタンパク質の乳製品液体中に生成するステップと、(d)前記ステップ(a)の発酵の後に得られた前記チーズカードと、前記ステップ(c)の生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体とを、混合タンクにおいて組み合わせるステップと、(e)1つまたは複数の安定剤を、前記チーズカードおよび前記生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体と組み合わせるステップであって、前記1つまたは複数の安定剤は、実質的に添加キサンタンガムフリーである、組み合わせるステップと、(f)前記ステップ(e)における組み合わせを混合して、1種以上の添加ガムおよび/または添加安定剤のレベルが低減されたクリームチーズを形成するステップと、を備える。
【0007】
他の態様もしくは実施形態において、前の段落に記載の方法は、個別に、または組み合わせて、任意の特徴と組み合わせることもできる。前記方法におけるこれら任意の特徴は、以下の1つまたは複数を含む:前記チーズカードと、前記ステップ(c)の生物生成エキソポリサッカライドを含有するホエイタンパク質の乳製品液体と組み合わせる前に、前記ステップ(a)の発酵させた乳製品の液体からホエイストリームが分離されること;および/または、前記1つまたは複数の安定剤が、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナンガム、およびそれらの混合物を含むこと;および/または、前記クリームチーズは、キサンタンガムフリーであること;および/または、前記クリームチーズは、脂肪対タンパク質の比が約4:1~約5:1であること;および/または、前記ステップ(a)の乳製品液体およびステップ(b)の乳製品液体含有ホエイタンパク質が、前記クリームチーズの前記脂肪対タンパク質の比を達成するための量のタンパク質および脂肪を含むこと;および/または、前記クリームチーズが、約20~約25%の脂肪を有すること;および/または、前記エキソポリサッカライド産生培養物が、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、もしくはラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、またはそれらの組み合わせであること;および/または、前記ステップ(f)の混合された組み合わせが、約40~約80分の混合で、約60~約90パスカルの降伏応力を構築すること;および/または、前記乳製品液体含有ホエイタンパク質に、約0.0005~約0.2重量%のエキソポリサッカライド産生培養物が接種されること;および/または、前記カードを形成する前記乳製品液体の発酵が、エキソポリサッカライド産生培養物を含むこと;および/または、前記クリームチーズが、添加キサンタンガムなしで約30~約40パーセントの凝集性を示すこと、である。
【0008】
本発明の別の態様においては、添加ガムおよび/または添加安定剤のレベルが低減されたクリームチーズが提供される。いくつかのアプローチまたは実施形態において、該クリームチーズは、前の2つの段落の方法ステップのいずれかを含む工程によって作られる。他の態様において、クリームチーズは、任意の特徴を含んでもよい。いくつかのアプローチにおいて、これら任意の特徴は、次のものを含む;前記クリームチーズが、約5℃で約50,000~約60,000パスカル、約25℃で約6,000~約7,000パスカル、および37℃で約2,000~約3,000パスカルの硬度プロファイルを示すこと;および/または、前記クリームチーズは、25oCでのチーズ硬さに対する37oCでの相対的なチーズ硬さを反映する凝集係数が、約30%~約40%である。
【0009】
さらに他の態様では、添加ガムおよび/または添加安定剤のレベルが低減されたクリームチーズが、本明細書に記載されている。本態様のいくつかのアプローチまたは実施形態では、クリームチーズは、約20~約25重量%の脂肪;カゼインおよびホエイタンパク質から提供される約2~約5%のタンパク質;脂肪対タンパク質の比率は約3:1から約5:1である;ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナンガム、およびそれらの混合物から選択され、実質的にキサンタンガムフリーである、1つまたは複数の添加安定剤;並びに生物生成されたエキソポリサッカライド;を含み、および、約25℃でのチーズ硬さに対する約37℃での相対的なチーズ硬さを反映する凝集係数が、約30%~約40%の凝集係数である。
【0010】
他の態様では、前の段落に記載のチーズは、個別に、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかで、任意の特徴と組み合わせることができる。これら任意の特徴は、以下の1つまたは複数を含む:約5℃で約50,000~約60,000パスカル、約25℃で約6,000~約7,000パスカル、および37℃で約2,000~約3,000パスカルの硬度プロファイルを達成するのに十分な、前記生物生成エキソポリサッカライドとホエイタンパク質との間の接合密度(junction density)をさらに含み、かつ、実質的にキサンタンガムフリーであること;および/または、前記クリームチーズが、二峰性(bimodal)の粒子サイズ分布を有すること;および/または、前記二峰性の粒子サイズ分布は、約1~約8ミクロンの平均粒子サイズ、約0.2~約0.4ミクロンのD10粒子サイズ、約0.5~約1.0ミクロンのD50粒子サイズ、および約15~約30ミクロンのD90粒子サイズを有すること;および/または、前記二峰性の粒子サイズ分布の第1のモードは、約0.3~約3ミクロンの平均粒子サイズを有し、前記二峰性の粒子サイズ分布の第2のモードは、約20~約90ミクロンの平均粒子サイズを有すること;および/または、前記タンパク質は、前記生物生成エキソポリサッカライドとともに連続タンパク質相を形成し、前記生物生成エキソポリサッカライドは、前記連続タンパク質相内に含有される
粒子として分散すること;および/または、前記生物生成エキソポリサッカライドが、ホエイタンパク質濃縮物をエキソポリサッカライド産生培養物で発酵させることによってインサイチュー(in-situ)で得られること;および/または、前記クリームチーズは、約0.02~約0.25%のグアーガムおよび約0.05~約0.5%のローカストビーンガムを含み、キサンタンガムを含まないこと、である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本明細書に記載される例示的なプロセスのフローチャートである。
図2図2は、チーズのタンデルタ(Tan Delta)レオロジープロファイルのグラフである。
図3図3は、チーズのタンデルタレオロジープロファイルの別のグラフである。
図4図4は、温度によるチーズ硬さのグラフである。
図5図5は、混合時間による降伏応力のグラフである。
図6図6は、チーズタンパク質の微細構造の代表的な顕微鏡写真である。
図7図7は、粒子サイズのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1つの態様において、本開示は、新規のチーズ製品、および、インサイチューで形成された生物生成エキソポリサッカライド(EPS)を含み、かつ主要なクリームチーズ発酵とは切り離された、チーズ製品を製造する方法を提示する。いくつかのアプローチにおいて、ここに記載された方法およびクリームチーズは、該チーズへの単純化された成分ラインの利用を可能にしつつも、より従来型の全成分チーズの所望の官能特性を模倣した食感を呈し、かつ特有のタンパク質微細構造を構築する。たとえば、ここで見出された製造方法、インサイチューで生成されたEPS、および/または特有のタンパク質微細構造は、クリームチーズ、クリームチーズスプレッド、および他の柔らかい乳製品タイプのチーズまたはスプレッドのような全脂肪から低脂肪のソフトバラエティチーズに用い、従来のチーズまたは乳製品の特性を模倣しながらも、1つまたは複数の添加ガムおよび/または添加安定剤を低減または排除するのに特に適している。1つのアプローチにおいて、本明細書のチーズは、この特有のタンパク質微細構造を含み、実質的に添加キサンタンガムフリーでありながら、キサンタンガムを含む伝統的なチーズの所望の食感および口当たりを維持する。
【0013】
他の態様において、本開示は、インサイチューでEPSを生成する方法を記載し、また、あるアプローチにおいては、添加ガムまたは安定剤のレベルを低減しながら所望のテクスチャーおよび硬さを作り出す独特のタンパク質-多糖微細構造またはタンパク質-EPS微細構造を開発または構築する方法、別のアプローチにおいては、特定の添加ガムおよび/または添加安定剤が必要ない方法を記載する。1つのアプローチにおいては、該方法および得られたクリームチーズには含まれるキサンタンガムのレベルが低く、また、あるアプローチでは、キサンタンガムを全く含まない。
【0014】
本明細書で使用されている通り、低減されたレベル、フリーである、~がない、~が欠けて、または、実質的にフリーである、といった文言は、キサンタンガムなど、特定の成分の機能しない量を含む方法または製品を指す。1つのアプローチにおいて、そのような量は、最終製品中におけるキサンタンガム等のかかる成分が、0.1重量%未満、約0.08重量%未満、約0.05重量%未満、約0.02重量%未満、または検出可能でない量である。
【0015】
本明細書のチーズ製品を形成するために、該方法および得られるチーズは、まずは、所望の完成チーズ製品に依存する一般的な技術を使用して得られる従来のチーズカードを利用する。たとえば、生成されたカード、選択される培養物の種類、および出発材料のミルクまたは乳製品ミックスの組成は、所望のチーズの特徴的な風味および香りを決定する役割を果たす。上記出発材料のミルクまたは乳製品の混合物は、例えば、脂肪レベルが異なるミルク(例えば、無脂肪乳または脱脂乳、低脂肪乳、全脂肪乳または全乳、脂肪を添加した全乳、など)を用いることによって変えることができる。ミルクまたは乳製品の組成もまた、例えば、乳固形分、クリームなどの追加の乳成分を含有させることによって変えることができる。本開示の方法によって調製できる特定のチーズ種の例としては、非限定的な例として、クリームチーズ、クリームチーズスプレッド、新鮮な乳製品スプレッド、およびその他の柔らかくスプレタブルなチーズが挙げられる。本明細書の方法および技術は、インサイチューで生成されたエキソポリサッカライドおよび/または本明細書の製品の固有のタンパク質/EPS微細構造の使用を通じて、単純化された成分リストを期待する柔らかくスプレタブルないずれのチーズにも適し得るが、これらの方法は、クリームチーズの製造に最も適しており、以下では、クリームチーズおよびクリームチーズの製造方法を参照して説明する。
【0016】
図1を参照すると、クリームチーズ製品を形成する方法(10)が示される。該方法は、クリームチーズに適した脂肪対タンパク質比を提供するための所望の比率のミルクおよびクリームを含有する出発乳製品液体(12)を使用する。1つのアプローチにおいて、この出発混合物(12)は、約5:1から約6:1の範囲の、他のアプローチでは、約5.2:1から約5.8:1の範囲の脂肪対タンパク質比を生成するために、約55~約80パーセントのミルクおよび約20~約45パーセントのクリームを含む。この出発混合物(12)は、均質化することができ、適切な孔径を有する膜(図1には示さず)を介して任意に限外濾過され、特定の用途に必要であれば簡易な低温殺菌処理にさらされ得る。冷却後、得られた混合物(12)にクリームチーズ用の適切な出発培養物(14)を播種し、混合物を凝固させて凝固混合物を形成するのに適切な条件の下、主発酵タンク(16)内で発酵させる。凝固は、出発乳製品液体(12)中のラクトースが乳酸に発酵することから生じる酸性度によって誘発される。発酵は、培養を不活性化する高温への短時間の曝露によって終了する。1つのアプローチでは、得られたカードは、例えば、遠心分離機によって分離(18)され、ホエイ(20)を廃棄し、クリームチーズカード(22)を保持する。
【0017】
出発乳製品液体または出発混合物(12)は、乳タンパク質および脂肪を所望の量で含有する液体を含む。この出発乳製品液体(12)は、通常、クリームチーズを製造するために通常使用される乳成分の混合物であり、ミルクとクリームのブレンドを含み、脂肪含有量が、通常は約4~約35%であり、あるアプローチでは約6~約30%であり、他のアプローチでは約10~約20パーセントであり、また、タンパク質含有量が、約1~約5であり、他のアプローチでは約2~約4であり、さらに他のアプローチでは約2~約3%である。必要に応じて、出発乳製品液体は、従来のプロセスによって標準化され、所望の脂肪およびタンパク質レベルが得られる。出発乳製品液体(12)の脂肪対タンパク質比は、上記に記載されている。
【0018】
本明細書で使用される場合、「乳製品液体」は、一般に、ミルク、生乳の分画によって得られる乳製品、クリーム、およびそれらのブレンドを指す。特定のアプローチでは、出発乳製品液体(12)は、クリームおよびミルクの混合物を含む。出発乳製品液体(12)は、水分濃度が、約55~約90%であってもよく、他のアプローチでは約70~約85%であってもよい。出発乳製品液体(12)は、カゼイン/ホエイ比が、約90/10~約20/80であってもよく、他のアプローチでは約80/20~約30/70であってもよい。本発明で使用される乳製品液体、例えば、出発乳製品液体(12)内のものなどは、ミルクが人間の食物の供給源として有用である授乳中の家畜に由来してもよい。そのような家畜としては、限定されない例として、ウシ、バッファロー、他の反芻動物、ヤギ、ヒツジなどが挙げられる。しかしながら、一般的には、牛乳が、本明細書で使用される好ましい乳製品液体である。乳製品は、ミルク中のリンタンパク質のいずれか、または全て、およびそれらのいずれかの混合物に関連する、カゼインを含む。カゼインの重要な特徴は、天然に存在するミルクおよび本明細書で使用される乳製品液体中でミセルを形成することである。カゼインには、これらに限定されるものではないが、α-カゼイン(αs1-カゼインおよびαs2-カゼインを含む)、β-カゼイン、κ-カゼイン、およびそれらの遺伝的変異体が含まれる。また、乳製品液体は、ホエイタンパク質を含んでもよく、これは、一般に、ミルクまたはミルク成分を含む乳製品液体がカード化されて半固体としてチーズ製造カードを生成するときにカードの上清として得られる液体に含有されるタンパク質を指す。ホエイタンパク質には、通常、球状タンパク質のβ-ラクトグロブリンとα-ラクトアルブミンとが含まれる。乳製品液体はまた、脂肪源を含んでもよく、これは通常、クリームまたはバター脂肪などの乳製品脂肪である。脂肪源は、ミルクまたはクリームによって提供されてもよく、または、所望のタンパク質対脂肪比を達成するために必要に応じて個別に添加されてもよい。
【0019】
主発酵タンク(16)で使用される出発培養物(14)は、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、もしくはストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・クレモリス(Streptococcus cremoris)、ストレプトコッカス・ジアセチルラクティス(Streptococcus diacetyllactis)、ロイコノストック・クレモリス(Leuconostoc cremoris)、ベタコッカス・クレモリス(Betacoccus cremoris)、ラクトコッカスラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカスラクティス亜種生物型ジアセチラクティス(Lactococcus lactis subs. biovar diacetylactis)、ラクトコッカスラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、それらの組み合わせ、もしくはロイコノストック属のような乳酸産生株などのような乳酸産生細菌である。これらの乳酸産生細菌は、単独で、またはそれらの組み合わせで使用することができる。理論に限定されないが、そのような乳酸産生細菌は、チーズ製造に使用され、出発乳製品液体(12)に存在するラクトースを発酵させる。乳酸産生培養物(14)は、クリームチーズ製造に対して従来的な量(例えば、典型的には、約10,000~100,000細菌/乳製品液体1g)で添加することができる。培養物(14)は、凍結乾燥、凍結、または液体の培養物として加えることができる。
【0020】
プロセス(10)は、乳製品液体のpHが約4.0~約5.0、好ましくは約4.4~約4.9に低下するまで通常行われるように、主タンク(16)内での主発酵(17)(すなわち、培養)を含む。典型的には、培養は、所望のpHが得られるまで(一般に、約1時間~約24時間の間)、約70~約90°Fの間の温度で実施される。以下でさらに議論されるように、プロセス(10)はまた、別個の発酵タンクとは別に、そして別個の発酵タンク内で行われる第二の発酵(40)を含む。
【0021】
ホエイ分離(18)後の発酵から得られたカード(22)は、その後様々なポスト添加剤(25)と組み合わされる(24)。いくつかのアプローチでは、ポスト添加剤(25)は、1つまたは複数の添加乾燥ホエイ、塩、および安定剤を含む。安定剤は、ローカストビーンガム(LBG)、カラギーナンガム、および/またはグアーガムから選択される。特に、安定剤は、実質的にキサンタンガムフリーであるか、またはキサンタンガムを含まない。必要に応じて、特定の用途に必要な場合、クリームをポスト添加剤(25)の一部として加えることもできる。
【0022】
背景で説明したように、キサンタンガムは通常、従来のクリームチーズ加工における通常の添加剤(25)の1つであった。この成分は、食品では望ましくないものになりつつあるが、チーズ中のキサンタンガムを単に除去または減らすだけでは、一貫した製品品質を維持する上で課題がある。例えば、キサンタンガムレベルがクリームチーズ内で減少または除去されて、より単純な成分組成を提供する場合、得られるクリームチーズは一般に、所望のレベルの食感、クリーミーさ、または口当たりを維持しなかったことが発見された。一方、クリームチーズ工程において個別の第二の発酵ステップ(40)(以下で説明する。)が含まれている場合、生物生成エキソポリサッカライドがインサイチューで生成され、場合によっては、クリームチーズに特有のタンパク質/EPS微細構造が発現し、それにより、所望の製品特性を維持しながら、最終組成物からキサンタンガムを削減または排除できることが、予期せず発見された。実施例に示されるように、また、理論によって限定されるものではないが、本開示のインサイチューまたは生物生成エキソポリサッカライドは、室温および口当たりの(mouthfeel)温度(それぞれ25℃および37℃)の間で、クリームチーズの独特の凝集性をもたらすと考えられる。繰り返すが、理論によって制限されることを望まないが、凝集性または凝集係数は、テクスチャーおよび完全性を維持するのに十分なタンパク質接合密度(タンパク質/EPS構造またはマトリックス)を形成するチーズの能力を表す。これは、驚くことに、キサンタンガムを必要とせずに達成される。
【0023】
1つのアプローチにおいて、この個別のまたは第二の発酵ステップ(40)は、上述の主発酵ステップ(17)とは別個で、孤立した発酵である。この新しい発酵ステップ(40)は、エキソポリサッカライド(EPS)産生培養物(48)を用いて第二の発酵タンク(46)で発酵される別個の濃縮乳製品液体(44)を用いて開始する。この追加の発酵ステップ(40)は、主タンク(16)でのクリームチーズ処理に利用される従来のカード形成ステップ(17)とは、切り離され、別個であり、または孤立している。理論によって制限されることを望まないが、EPS産生培養物を切り離された発酵(40)に用い、その後にポスト添加剤(25)とともにカード(22)とブレンドすると、驚くべきことに、チーズ製品には、特有のタンパク質微細構造、タンパク質多糖微細構造、またはタンパク質EPS微細構造が形成される、または発達することが発見された。追加のEPS産生培養物(48)が主タンク(16)内の乳酸産生培養物(14)と共に第一の発酵(17)に直接添加された場合、最終生成物において所望のEPS構造、成分相互作用、テクスチャー、そしておそらく特有のタンパク質微細構造は、発現しないであろう。
【0024】
本明細書で使用される場合、ストリーム(44)の「濃縮乳製品液体」は、乳製品タンパク質が、起源とする乳製品液体よりも高い濃度レベルにある濃縮乳製品タンパク質源である。濃縮乳製品液体の例としては、これらに限定されるものではないが、ホエイタンパク質濃縮物、ホエイタンパク質単離物、乳タンパク質濃縮物、またはホエイタンパク質濃縮物と乳タンパク質濃縮物の組み合わせ、が挙げられる。好ましくは、濃縮乳製品液体(44)は、ホエイタンパク質濃縮物である。通常、ホエイタンパク質濃縮物は、(固形分を基準として)少なくとも約34%のタンパク質濃度を含む。1つのアプローチでは、濃縮乳製品液体(44)は、ホエイタンパク質レベルが従来の乳製品液体よりも高いホエイタンパク質濃縮物である。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ホエイタンパク質濃縮物」または略称としての「WPC」は、ホエイタンパク質単離物(WPI)などの他のタイプのホエイタンパク質とは異なる。WPCは通常、白から淡いクリーム色の製品で、淡白だがクリーンな味わいである。非タンパク質成分を除去することはできるが、WPCのタンパク質濃度は、(全固形分を基準として)一般に約10~約85%、より一般的には約25~約75%、その他のアプローチでは約45~約75%である。WPCは、脂肪を含んでもよいが、脂肪は約1%未満である。WPCは、限外濾過を通してホエイを濃縮し、そこで低分子量化合物がホエイから透過流に濾過され、ホエイタンパク質が保持液流に濃縮されることにより、製造することができる。WPCは、例えば、乾燥ホエイタンパク質濃縮物、液体ホエイタンパク質濃縮物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。乾燥ホエイは、ここで使用する前に再構成される。(固形物を基準として)約34、50、または70%のタンパク質を有するWPCを、本明細書の第二の発酵(40)で使用することができる。別のアプローチにおいて、濃縮乳製品液体(44)は、(全乳製品液体を基準として)約10~約20%のホエイタンパク質を伴う、約20~約30%の固形分を有する乳製品液体含有ホエイタンパク質である。
【0026】
濃縮乳製品液体(44)を用いた第二の発酵ステップ(40)で使用されるエキソポリサッカライド産生培養物(48)は、いくつかのアプローチでは、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・デルブルッキイ亜種ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis ssp. cremoris)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)のEPS産生形態である。これらのEPS産生培養物は、個々に、またはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。いくつかのアプローチでは、濃縮乳製品液体(44)に、約0.0005~約0.2重量%のEPS産生培養物(48)を接種する。発酵下では、ホエイタンパク質濃縮物ストリームを発酵させることにより、生物生成エキソポリサッカライドがインサイチューで得られる。EPS産生培養物および濃縮乳製品液体(44)(および好ましくはホエイタンパク質濃縮物)のこの個別の発酵(40)は、濃縮物のpHが約4.0~約5.5、好ましくは約4.3~約5.0、そしてより好ましくは約4.3~約4.8に達するまで発生する。発酵温度は、約72°F~約95°Fである。目標とするpHに達したら、35°Fに冷却して発酵を停止させる。
【0027】
この第二の発酵工程(40)から得られる発酵物(50)は、次いで、ポスト添加剤(25)と組み合わされるか、またはポスト添加剤(25)と共にミキサー(26)に別々に添加される。いくつかのアプローチでは、約80~約90重量%のカード(22)が、ポスト添加剤(25)における約1~約5重量%の粉末ブレンドおよび約3~約10%のWPC発酵物(50)と混合される。典型的なポスト添加ブレンド(25)は、約40~約65%の乾燥ホエイ、約20~約30%の塩および他の調味料、約5~約15%のローカストビーンガム、約0~約1%の食用酸、0~約1%の防腐剤、および約1~約5%のグアーガムを含む。好ましくは、カード、ポスト添加剤、および発酵WPCから得られたブレンド(28)は、脂肪対タンパク質の比が、約3:1~約5:1であり、他のアプローチでは約2:1~約4:1である。
【0028】
次いで、このブレンド(28)(すなわち、カード(22)、ポスト添加剤(25)、および発酵物(50))を、有効な時間および温度で(1つまたは複数のミキサーで)混合して(26)、所望のテクスチャーまたは降伏応力を構築させる。あるアプローチでは、典型的な混合時間は、約60~約90パスカルの目標降伏応力を達成するために、約40~約80分である。驚くべきことに、このテクスチャー構築は、所望のクリームチーズテクスチャーを達成するためには必要であると以前には信じられていたキサンタンガムの存在がなくても、本明細書の方法によって達成される。あるアプローチにおいて、混合ブレンド(28)は、任意に、約1,000~約8,000psi(他のアプローチでは約1,500~約6,000psi、さらなるアプローチでは約2,500~約4,000psi)の圧力で均質化される(30)。均質化により、混合物中の粒子サイズが小さくなる。あるアプローチにおいては、約2.5ミクロン未満の平均粒子サイズを達成することが好ましく、より好ましくは、約1.5ミクロン未満の粒子サイズである。あるアプローチにおいては、粒子サイズが約0.1ミクロン~約300ミクロンの範囲であり、粒子の大部分が約1および約30ミクロンである。均質化後、組成物は加熱され(32)、任意に濾過され(34)、クリーム化され(36)、次いでクリームチーズ製品(38)に包装され得る。
【0029】
形成されたタンパク質/EPSの微細構造により、チーズマトリックス内で十分な分子間相互作用および結合を形成する独自のタンパク質接合密度を有するチーズが得られる。この接合密度は、連続タンパク質相内に分散した粒子または凝集体として分散した生物生成エキソポリサッカライドを伴う、該連続タンパク質相(カゼインおよび/またはホエイ)をもたらす。1つのアプローチにおいて、タンパク質接合密度は、得られるクリームチーズが、約5℃(冷蔵温度)で約50,000パスカル~約60,000パスカルの、約25℃(室温)で約6,000パスカル~約7,000パスカルの、および37℃(摂食または口当たりの温度)で約2,000パスカル~約3,000パスカルの硬度プロファイルを示すようなものである。他のアプローチでは、タンパク質/EPSの微細構造は、以下の実施例で詳しく説明するように、口当たり温度(37℃)と室温(25℃)との間で約30%~約40%の凝集性または凝集係数を示す。このような接合密度、凝集係数、または硬度プロファイルは、上記のように実質的なレベルのキサンタンガムを必要とせずに達成されるが、あるアプローチでは、生物生成EPSをローカストビーンガムおよびグアーガムと一緒に含めることによって達成される。タンパク質の微細構造の例は、図6の画像で確認することができる。
【0030】
あるアプローチでは、クリームチーズは、図7に示すように、分布に2つの異なる粒子サイズのピークを有する二峰性の粒子サイズ分布を有する。この粒子サイズ分布は、約1~約8ミクロンの全体的な平均粒子サイズを有する一方、第1のモードの平均粒子サイズは、約0.3~約3ミクロンであってもよく、第2のモードの平均粒子サイズは、約20~約90ミクロンであってもよい。さらに他のアプローチでは、全体分布のD10粒子サイズが約0.2~約0.4ミクロン、全体分布のD50粒子サイズが約0.5~約1.0ミクロン、および全体分布のD90粒子サイズが約15~約30ミクロンであってもよい。
【0031】
本明細書のプロセスによって製造される典型的なクリームチーズ組成物は、約50~約70%のミルク、約20~約40%のクリーム、および約2~約10%のホエイタンパク質濃縮物を含んでもよい。クリームチーズは、さらに、約0.01~約0.25%のグアーガム(他のアプローチでは、約0.02~約0.1%)および約0.05~約1.0%のローカストビーンガム(他のアプローチでは、約0.1~約0.5%)を含んでもよく、実質的に上述したようにキサンタンガムは全く含んでいない。全脂肪チーズの場合、得られるクリームチーズの脂肪は約22~約35%であり、低脂肪チーズの場合、脂肪は約15~約21%である。また、チーズは、約3~約10%のWPC発酵物(50)%を含んでもよい。
【0032】
本明細書の方法によって製造されたチーズは、また、従来のキサンタンガム含有クリームチーズと一致する凝集性または凝集係数を有し得る。本明細書で使用される場合、凝集性、凝集、または凝集係数は、室温と摂食温度との間のチーズの分解を表すチーズ微細構造の特徴であり、かつ本明細書の方法および組成物を使用して形成されたチーズ中の連続タンパク質マトリックスおよびEPSのタンパク質微細構造および/または接合密度を反映する。本明細書で使用される場合、凝集係数または凝集性は、25℃で測定されたチーズ硬さに対する37℃で測定されたチーズ硬さのパーセント(%)である。つまり、37℃での硬さを25℃での硬さで割ったものである。硬度は、実施例でより詳細に説明されているように、Ares G2レオメーター(TA Instruments)を使用して測定される。本明細書における独自の方法およびチーズは、約30%~約40%の凝集係数を有し、他のアプローチでは、約30~約35%である。
【実施例
【0033】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態またはアプローチの例示である。これらの例、および本発明のあらゆる箇所では、特に明記しない限り、すべての比率、パーツ、およびパーセンテージは重量によるものである。これらの実施例は、例示のみを目的としての提示を意図しており、本明細書に開示されている本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0034】
(比較例1)
【0035】
製品の品質に対するポスト添加のガムの種類の変化の影響を判定するために、ポスト添加の粉末ブレンド(つまり、図1のポスト添加 ストリーム(25))にさまざまな種類のガムを使用して全脂肪クリームチーズ(つまり、約20~約25%の脂肪、この特定の実施例では約22%の脂肪を含むクリームチーズ)の製造サンプルを調製した。本研究では、ガムを添加せずに(比較サンプル1)、ローカストビーンガムのみを使用して(比較サンプル2)、ローカストビーンガムとグアーガムの両方を使用して(比較サンプル3)、比較例の全脂肪クリームチーズサンプルを調製した。比較サンプルのいずれも、添加キサンタンガムを含まず、サンプルのいずれも、補足発酵におけるエキソポリサッカライド産生培養物を含まなかった。それ以外は、従来のクリームチーズプロセスを使用してクリームチーズを調製した。
【0036】
キサンタンガムを含まない比較サンプル1~3を、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガムを含む市販のフィラデルフィアブランドの全脂肪ソフトクリームチーズと比較した(サンプル4)。したがって、この実施例により、ポスト添加安定剤ガムのタイプを変更して調製されたクリームチーズに対して、従来の方法で調製されたクリームチーズを評価した。
【0037】
形成されたクリームチーズの線形粘弾性特性のレオロジー熱分析を、温度の関数として測定した。評価に使用したレオメーターは、25mmのクロスハッチ平行プレートと50mmのクロスハッチ底板および約2mmの形状ギャップとを使用したAres G2(TA Instruments)であった。試験には、5℃/分の加熱速度で0℃~80℃の温度範囲が含まれていた。試験では、ひずみは約0.5~約5%であり、ひずみは線形粘弾性領域内で変化して、約0.1~約100nM.mのトルクを維持した。周波数は約10ラジアン/秒であった。サンプルの負荷(loading)は約30℃(テストを開始する前に0℃に冷却)で、サンプリングレートは約12秒/ポイントであった。結果を、クリームチーズの種々の条件を反映するいくつかの温度ポイントで以下の表1および1Aに示し:冷蔵温度でのクリームチーズを反映する約5℃、室温でのクリームチーズを反映する約25℃、口の温度または摂食温度でのクリームチーズを反映する約37℃、および典型的な処理温度でのクリームチーズを反映する約80℃で示している。
【0038】
【表1】
【0039】
【表1A】
【0040】
ガムを添加していないクリームチーズ(比較サンプル1)は、温度範囲全体で他のサンプルよりも大幅に硬く、市販のクリームチーズコントロール(サンプル4)よりも劇的に硬かった。これは、他のサンプルよりも強力な脂肪とタンパク質のネットワークによって促進されているようである。ローカストビーンガムのみを含有するサンプル(比較サンプル2)は、30℃未満の温度においてローカストビーンガムおよびグアーガムを含むサンプル(比較サンプル3)よりも大幅に硬かった。この違いは、ローカストビーンによって発達したより強い脂肪ネットワークの結果であるように思われる。30℃を超えると、2つのガム含有サンプル(比較サンプル2および3)の硬さにほとんど有意差はない。ローカストビーンガムおよびグアーガムの両方を含有するサンプル(比較サンプル3)は、ローカストビーンガムのみを含有する比較サンプルよりも強いタンパク質ネットワークを有していた。ガムを含有する2つのサンプルの硬度にはほとんど有意差がなかったため、この違いは30℃を超える硬度に影響を与えないように見えた。ガム無しのサンプル(比較サンプル1)は、他のすべてのサンプルよりも「凝集性」(つまり、25℃~37℃へのチーズ分解の割合または37℃での硬さを25℃での硬さで割ったもの)が大幅に低くなった。その結果、ガム無しチーズ(比較サンプル1)は、口内温度(37℃)での硬さが低いサンプルよりも口の中で柔らかく感じることが可能であり得る。ローカストビーンガムおよびグアーガムを含有するサンプル(比較サンプル3)は、ローカストビーンガムだけを含有するサンプルよりもわずかに凝集性が高かった。したがって、ローカストビーンガムおよびグアーガムのサンプル(比較サンプル3)は、口内温度(37℃)で同様の硬さにもかかわらず、ローカストビーンガムのみのチーズ(比較サンプル2)よりも口の中で硬く感じる場合がある。
【0041】
しかしながら、キサンタンガムを添加していないすべての比較サンプル1~3は、特に凝集性係数によって証明されるように、市販のクリームチーズコントロールとは大幅に異なり、従来のクリームチーズとは異なると認識される傾向にあるだろう。したがって、チーズ組成物からキサンタンガムを単に除去するだけでは、市販のチーズの官能特性を模倣することはできない。
【0042】
(比較例2)
【0043】
パイロットプラントにおいて、EPS生産培養物を乳酸生産培養物とともに従来のクリームチーズ発酵ステップ(すなわち、図1の発酵ステップ(17)の主発酵タンク(16))に追加し、クリームチーズカードを生産した(比較サンプル5)。このサンプルを、主発酵タンクでEPSを生成する発酵を行わない同じパイロットプラントで調製された従来のクリームチーズと比較した(比較サンプル6)。各サンプルは同じポスト添加剤を含み、約80分間ブレンドした。比較サンプル5は、ローカストビーンガムおよびグアーガムを含んでいた。比較サンプル6は、ローカストビーンガム、グアーガム、およびキサンタンガムを含んでいた。上記の比較例1に記載されたものと同様のレオロジー研究を実施した。結果を表2および2Aに示す。
【0044】
【表2】
【0045】
【表2A】
【0046】
EPS産生培養物を従来のクリームチーズミックスに乳酸産生培養物(グアーガムとローカストビーンガムを含むがキサンタンガムを含まない)とともに添加した比較サンプル5では、いくつかの温度ポイントでの硬度の観点において、また凝集性の観点において市販のクリームチーズの特性を模倣できなかった。EPS生成培養物をクリームチーズミックスに添加して作成された比較サンプル5もまた、従来のクリームチーズとは異なるものとして認識されるだろう。
【0047】
(実施例1)
【0048】
クリームチーズプロセスにおけるさまざまなロケーションに添加されたエキソポリサッカライド産生培養物(EPS産生ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス)の使用を評価する研究を行った。この研究のために評価したサンプルは、以下を含んだ:
・サンプルID 7:ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム(EPSなし)を含むポジティブコントロール(市販のフィラデルフィアブランドのクリームチーズ);
・サンプルID 8:キサンタンガムとEPSを含まないが、ローカストビーンガムとグアーガムを含むネガティブコントロール;
・サンプルID 9:EPS生成カルチャーをWPCサイドストリームに追加して(つまり、図1のストリーム(48)を介してEPSを追加して)生成されたWPCのみのサンプルであり、ローカストビーンガムとグアーガムが含まれるもの;
・サンプルID 10:ローカストビーンガムとグアーガムとともに、同様のEPS生成培養物を主発酵タンク(16)に追加した(つまり、ストリーム(14)を介してEPSを追加した)カードのみのサンプル;および、
・サンプルID 11:ローカストビーンガムとグアーガムとともに、主タンク(16)と第二のタンク(46)の両方にEPS生成培養物を追加した(つまり、ストリーム(14)とストリーム(48)を介してEPSを追加した)WPCとカードのサンプル。
以下の表3に示すように、ポジティブおよびネガティブコントロールとカードのみのサンプルは、WPCのみおよびWPCとカードのみのサンプルよりも脂肪レベルが高く水分レベルが低かった。WPCのみおよびカードのみのサンプルのタンパク質レベルは、コントロールおよびWPCとカードの製法よりもわずかに低くなっている。
【0049】
【表3】
【0050】
上記の比較例1に記載されたものと同一のレオロジー研究を実施した。結果を以下の表4および4Aに示す。ポジティブコントロールは、温度範囲全体でネガティブコントロールよりも大幅に硬かった。3つのプロトタイプ(サンプルID 9、10、および11)はすべて、温度範囲全体で、ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールと比較して極めて硬さが低かった。WPCのみのサンプル(サンプルID 9)は、ポジティブコントロールと同様のタンデルタ(tan delta)値を示し、このサンプルの強度には、ポジティブコントロールと同様の脂肪およびタンパク質ネットワークが含まれていることを示している(図2のグラフを参照)。WPCのみのサンプルは、温度範囲全体で硬さが低下する。これは、脂肪とタンパク質のレベルが大幅に低下し、水分量が大幅に増加した結果である可能性がある。しかしながら、水分が多くタンパク質が少ない場合でさえ、WPCのみのサンプル(サンプルID 9)は、同様のタンデルタ曲線から明らかなように、市販のクリームチーズと同様の強い脂肪とタンパク質のネットワークを示した。これは、主な発酵プロセスとは別に生じたWPCの第二発酵中に発達した強力なEPS-タンパク質マトリックスによるものであると考えられる。
【0051】
カードのみのプロトタイプの40℃未満でのタンデルタ値は、ポジティブコントロールよりも脂肪ネットワークが強いことを示している。40℃を超えると、カードのみのプロトタイプのタンデルタは、タンパク質ネットワークが著しく弱いことを示す。カードのみのプロトタイプは、タンパク質ネットワークが弱く、脂肪とタンパク質のレベルが低く、水分量が多いため、ポジティブコントロールよりも大幅に硬さがない。PCとカードのプロトタイプは、ポジティブコントロールと同様に40℃未満のタンデルタ値を持っていた。40℃を超えると、WPCとカードのプロトタイプのタンデルタは、タンパク質ネットワークが著しく弱いことを示す。WPCとカードのプロトタイプは、タンパク質ネットワークが大幅に弱く、脂肪のレベルが低く、水分の量が多いため、ポジティブコントロールよりも大幅に硬さがない。
【0052】
【表4】
【0053】
【表4A】
【0054】
(実施例2)
【0055】
製品品質への影響を評価するため、EPS生成培養物による濃縮乳製品液体の第二の発酵を、さまざまなタイプの濃縮乳製品ストリームで実施した。2つの異なるタイプの濃縮乳製品ストリームでEPS生成培養物を評価するレオロジー研究を、市販のフィラデルフィアブランドクリームチーズ(サンプルID 12)の形態のポジティブコントロールと比較した。ポジティブコントロールは、キサンタンガム、グアーガム、およびローカストビーンガムを含んだが、EPS産生培養物は含まなかった。この評価では、サンプルID 13は、WPC(50)乳製品ストリーム(つまり、図1のストリーム(48)を介して追加されたEPS)にEPS生成培養物を含み、ポスト添加にキサンタンガムを含まないプロセスによって生成された進歩的な(inventive)クリームチーズであった。この発明サンプルは、個別の発酵ステップ(40)において(WPCストリームではなく)3Xスキムミルク濃縮物中のEPS産生培養物を含むプロセスによって調製されたクリームチーズサンプルID 14、15、16、および17とさらに比較された。サンプルID 14は、ローカストビーンガム(LBG)とグアーガムを含むがキサンタンガムを含まない3Xスキムミルク濃縮物でEPS生成培養物を含むプロセスで生成されたクリームチーズであった。サンプルID 15は、ガムを含まない3Xスキムミルク濃縮物でEPS産生培養物を含むプロセスで生成され、ステップ(26)で約40分間ブレンドされたクリームチーズであった。サンプルID 16は、サンプルID 15(ガム無し)と一致するプロセスで製造されたクリームチーズであるが、ステップ(26)で約70分間ブレンドされ、サンプルID 17はサンプルID 15(ガム無し)と同じだが、約90分のブレンド時間であった。
【0056】
比較例1に記載されたものと一致するレオロジー研究を実施した。チーズの組成を表5に示し、レオロジーの結果を表6および6Aに示す。
【0057】
【表5】
【0058】
【表6】
【0059】
【表6A】
【0060】
3Xスキムミルク濃縮物内でEPS産生培養物を用いて作成された3種のガム無しサンプル(サンプルID 15、16、および17)はすべて、滑らかで柔らかいクリームチーズを連想させない、砕けやすくてもろいテクスチャーを持っていた。約30℃未満では、これらのガム無しサンプルは、市販のクリームチーズよりもかなり硬かった。約40分および約90分間保持されたガム無しのサンプルは、30℃以上で市販のクリームチーズと同様のテクスチャーを示したが、70分間保持されたガム無しサンプル(サンプルID 16)は、温度範囲全体でかなり硬かった。コールドテクスチャーの大きな差異は、市販のコントロールと比較して、ガムを含まないサンプルの脂肪滴のサイズが小さいことによる可能性がある。脂肪滴のサイズが小さいと、脂肪ネットワークの接合密度が高くなり、結果、硬さが増加する。70分間保持されたガム無しサンプルは、より強力なタンパク質ネットワークの結果として、他のすべてのサンプルよりも大幅に硬くなる。したがって、ガムを含まない3Xスキムミルクで製造されたサンプルは、従来のクリームチーズの官能特性を模倣できなかった。
【0061】
3X濃縮ミルク中でEPS産生培養物を用い、グアーガムおよびローカストビーンガムを含むサンプル(サンプルID 14)は、他のすべてのサンプルよりも温度範囲全体で著しく硬くなかった。これは、より弱いタンパク質ネットワークとより低いタンパク質レベルの組み合わせによるものと思われる。
【0062】
EPSをWPC50で培養し、グアーガムとローカストビーンガムを含有するサンプル(サンプルID 13)は、主な使用温度範囲である25℃未満のポジティブコントロールに対してテクスチャーが類似していた。ポジティブコントロールは、他のすべてのサンプルよりも有意に凝集性が高かった(25℃~37℃への分解の割合)。その結果、ポジティブコントロールは、口内温度(37℃)で同等以上の硬さのサンプルよりも口の中で硬く感じる可能性がある。
【0063】
(実施例3)
【0064】
異なるEPS産生培養物(1つはクリスチャンハンセンからのもの、およびもう1つはDSMからのもの)を使用し、主発酵とは別に加えて(すなわち、図1の発酵ステップ(40)に加えた)、クリームチーズサンプル18および19を調製した。これらのサンプルでは、ポスト添加剤(25)はグアーガムおよびローカストビーンガムを含んでいたが、キサンタンガムは添加しなかった。これらのサンプルを、市販のフィラデルフィアブランドクリームチーズ(サンプルID 20)と比較した。比較例1に記載されたものと一致するレオロジー研究を実施した。結果を表7および7Bに示す。
【0065】
【表7】
【0066】
【表7B】
【0067】
ポスト添加粉末ブレンドにキサンタンガムを含まない方法によって製造したサンプル18および19は、特に口の中で知覚される分解レベルを証明する凝集係数の点から、市販のサンプル20に近いクリームチーズを形成した。違いは、これらのサンプルで使用したポスト添加のガム混合物に起因すると考えられる。図3は、市販のサンプル20と比較したサンプル18および19のタンデルタを示す。
【0068】
(実施例4)
【0069】
ポスト添加物としてローカストビーンガムおよびグアーガムと組み合わせたWPC50ホエイストリームにおいてEPS産生培養物を含むプロセスによって、さらなるクリームチーズサンプルを調製した。図4に示すように、このサンプルは、市販のフィラデルフィアブランドのクリームチーズと比較した場合、約5℃~約37℃の使用温度で非常に類似した硬度プロファイルを示した。この発明サンプルはさらに、図5に示されるように、市販のクリームチーズと一致する約40~80分の混合で約60~約90パスカルの目標降伏応力を構築した。図6の代表的な顕微鏡写真に示すように、ローカストビーンガムおよびグアーガムを、WPCストリームに添加されたEPS生成培養物からの生物生成EPSと組み合わせると、タンパク質の凝集、および形成する水性ポケットの形成を最小限に抑える均一な混合物を作成することを促進させるタンパク質の微細構造が形成される。右側の図6の画像(EPSとローカストビーンガムあり)を、EPSなしの左側の画像と比較する。右の画像は、炭水化物/ガム(明るいポケット)の均一な混合物と、水相の広い領域である最小化された暗い、または黒いポケットを映している。左の画像は、タンパク質の大きな凝集体と大きな水の水溶液(aqueous of water)を含んでいる。
【0070】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「(an) 抗酸化剤」を例にとると、2つ以上の異なる抗酸化剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む(include)」という用語およびその文法的変形は、リスト内のアイテムの列挙が、リストされたアイテムに置換または追加できる他の同様のアイテムを除外しないように、非限定的であることを意図する。
【0071】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的のために、特に明記しない限り、数量、パーセンテージまたは比率を表すすべての数値、および明細書および特許請求の範囲で使用される他の数値は、すべての場合において「約」という用語によって修正されると理解されるべきである。したがって、反対が示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を請求項の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸め手法を適用することによって解釈されるべきである。
【0072】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基またはパラメーターは、単独で、または本明細書に開示される他のすべての成分、化合物、置換基またはパラメーターの1つまたは複数と組み合わせて使用するために開示されると解釈されるべきである。
【0073】
さらに、本明細書に開示される各範囲は、同じ有効桁数を有する開示された範囲内の各特定の値の開示として解釈されるべきであることが理解される。したがって、例えば、1から4の範囲は、値1、2、3および4、ならびにそのような値の任意の範囲の明示的な開示として解釈されるべきである。
【0074】
さらに、本明細書に開示される各範囲の各下限は、同じ成分、化合物、置換基、またはパラメーターについて、本明細書に開示される各範囲の各上限および各範囲内の各特定の値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることが理解される。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、もしくは各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって、または各範囲の各上限を各範囲内の各特定の値と組み合わせることによって導き出されたすべての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内のエンドポイント値間における任意の範囲も、本明細書で論じられることもさらに理解される。 したがって、1から4の範囲の場合、1から3、1から2、2から4、2から3などの範囲も意味する。
【0075】
さらに、明細書または実施例に開示されている成分、化合物、置換基またはパラメーターの特定の量/値は、範囲の下限または上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、その成分、化合物、置換基またはパラメーターの範囲を形成するための、本出願の(in the application)他の場所に開示されている同じ成分、化合物、置換基またはパラメーターの範囲もしくは特定の量/値の他の任意の下限または上限を組み合わせることができる。
【0076】
特定の実施形態が説明されているが、出願人または当業者には、現在予測されていない、または現在予測できない可能性のある代替、修正、変形、改善、および実質的な同等物が生じる可能性がある。したがって、提出され、補正される可能性のある添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正のバリエーション、改善、および実質的な同等物を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7