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特許7516394皮膚創傷治癒不全を治療するための選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】皮膚創傷治癒不全を治療するための選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20240708BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240708BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 31/536 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 31/4525 20060101ALI20240708BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240708BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240708BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240708BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240708BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240708BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61P43/00 111
A61P17/02 ZNA
A61K31/536
A61K31/416
A61K31/437
A61K31/4525
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/44
C12Q1/02
G01N33/68
G01N33/50 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021542103
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020051457
(87)【国際公開番号】W WO2020152193
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】19153026.0
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19170117.6
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519150979
【氏名又は名称】アクリベス ビオメディカル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AKRIBES BIOMEDICAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ-ヴィニスキー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥッツ,アントン
(72)【発明者】
【氏名】シェフマン,ニコール
(72)【発明者】
【氏名】デルフラー,ペトラ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230713(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/077792(WO,A1)
【文献】Journal of Surgical Research ,2009年,155,301-305
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩を含有する、対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物であって、
前記SEGRMは、
【化6】

【化7】

(R)-2-(4-((5-(エチルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メチル)-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-2-メチルペンタン-2-イル)-5-フルオロベンザミド;

【化8】

【化9】

【化10】

(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロキシ]ベンゾエート;
5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン;および
5-{[(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
または、その薬学的に許容可能な塩、
から選択される、
ことを特徴とする、対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物。
【請求項2】
前記皮膚創傷は、糖尿病患者の創傷、少なくとも一つの微生物が感染した皮膚創傷、虚血性創傷、血液供給不足や静脈うっ滞に罹患する患者の創傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性下肢潰瘍のような動脈性潰瘍、混合性潰瘍または褥瘡のような潰瘍、神経障害性創傷、下腿潰瘍、手術創、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、表皮水疱症のような水疱性皮膚疾患、希少潰瘍から選ばれる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の対象における皮膚創傷治癒不全の治療用組成物。
【請求項3】
前記対象は、皮膚創傷治癒不全に関連する少なくとも一つの併存疾患、特に糖尿病、に罹患し、および/または、前記対象は少なくとも一つの免疫抑制剤で治療される、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物。
【請求項4】
前記対象は、糖尿病に罹患する、および/または、少なくとも一つの糖尿病性潰瘍を有し、および/または、
前記対象は、
(i)移植片の移植を経験した、および/または、
(ii)免疫抑制療法を受け、
および、場合によっては糖尿病に罹患する、
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物。
【請求項5】
前記対象は、以下の工程i)および/またはii)を実施することにより皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められ、
前記工程は、
i)(1)前記対象の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、繊維芽細胞の増殖を測定する、任意で、繊維芽細胞の上清中の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量を測定する工程、
ii)(1)前記対象の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成を測定する工程、
であることを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物。
【請求項6】
工程i)で測定した、繊維芽細胞の増殖の値、および/または、工程ii)で測定した繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より、少なくとも20%高く、
任意で、工程i)で得られた繊維芽細胞の上清中の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
場合に、
前記対象は、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる、
ことを特徴とする、請求項に記載の対象における皮膚創傷治癒不全治療用組成物。
【請求項7】
追加で、工程iiia)および/または、次の工程iiib)からiiie)の一つ、二つ、三つまたは四つを実施し、
前記工程iiia)からiiie)は、
iiia)(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、、
の存在下でケラチノサイトの増殖を測定する工程、
iiib)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの上清中の一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーの量を測定する工程であって、
ここで、マクロファージを繊維芽細胞と共培養し、
前記一つ以上のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選ばれ、前記一つ以上のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選ばれる、ことを特徴とする工程、
iiic)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージ上の、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよびまたは一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定する工程であって、
マクロファージを繊維芽細胞とともに共培養し、
前記一つ以上のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選ばれ、前記一つ以上のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選ばれることを特徴とする工程、
iiid)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの、一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルを測定する工程であって、
マクロファージを繊維芽細胞とともに共培養し、
前記一つ以上のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、前記一つ以上のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれることを特徴とする工程、
iiie)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの上清中の一つ以上のサイトカインマーカーの量を測定する工程であって、
前記マクロファージを線維芽細胞と共培養し、
前記一つ以上のサイトカインマーカーが、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれ、
工程i)で測定した、繊維芽細胞の増殖の値、および/または、工程ii)で測定した繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値、および/または、工程iiia)で測定したケラチノサイトの増殖の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より、少なくとも20%高い場合、
および任意で、工程i)で得られた繊維芽細胞の上清中の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い場合、
および/または、次の条件、
・ iiib)で得られた一つ以上のM2マーカーの量に対する一つ以上のM1マーカーの量の比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
・ iiic)で得られた一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布に対する、一つ以上のM1細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布の比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低く、特に、前記比率が、CD38/CD209比率、CD197/CD209比率およびCD197/CD206比率から選ばれる、
・ iiid)で得られた一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルに対する一つ以上のM1マーカーmRNAの発現レベルの比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
・ iiie)で得られた値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
の一つ以上が該当する場合、
に、前記対象は、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる、
ことを特徴とする、請求項またはに記載の対象における皮膚創傷治癒不全の治療用組成物。
【請求項8】
前記選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、
(i)全身用、好ましくは、経口または静脈投与用に剤形される、または、
(ii)局所投与用、特に、局部投与、粘膜投与、点眼投与、皮内投与または皮下投与用に剤形される、
ことを特徴とする、請求項1からのいずれかに記載の対象における皮膚創傷治癒不全の治療用組成物。
【請求項9】
選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、局所投与用に剤形され、
前記薬学的剤形は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)、およびa)オレイルアルコール、b)オクタン酸セテアリル、c)植物油、を含む
ことを特徴とする、請求項に記載の対象における皮膚創傷治癒不全の治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における皮膚創傷治癒不全の治療に使用するための選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(Selective Glucocorticoid Receptor Modulator (SEGRM))またはその薬学的に許容可能な塩、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターまたはその薬学的に許容可能な塩での治療に応答性である皮膚創傷治癒不全を患う対象を認めるインビトロでの方法、およびそれらに関連するキットおよびキットオブパーツに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性創傷は、米国一国においてでさえ650万人の患者が影響を受ける、世界的に重大な健康問題であり、高齢化する人口と代謝疾患の発症の増加により、増加が予想されている(非特許文献1、2)。
【0003】
慢性創傷には他因子の病因を有しており、慢性創傷はa) 基礎疾患、例えば糖尿病、動脈または静脈不全、b) 血圧、c) 年齢および栄養状態、およびd) 微生物環境、といった異なる変化する要因に依存する(非特許文献2)。
【0004】
慢性創傷は、一般に、2か月以内に治癒しない創傷として理解される。これらは、世界的に重大な健康問題である。米国および欧州を含む先進国では、全人口の1から2%が、生涯において慢性創傷を経験すると推測されている(非特許文献3)。
【0005】
主な慢性創傷症状は、静脈性潰瘍、褥瘡、糖尿病性足潰瘍である。静脈性潰瘍は、慢性の静脈不全による下腿の病変組織における障害であり、しばしば深部静脈血栓症を併発する。褥瘡は、体を動かすことが難しい患者における重度の組織低酸素症に起因する。糖尿病性足潰瘍は、糖尿病患者の最大25%が生涯において影響を受け、しばしば下肢切断をすることになる。German Society for Dermatologyにより推奨されるこれらすべての創傷の標準的治療(非特許文献4)は、創傷被覆、外科的および生物学的デブリードマン、感染制御および陰圧閉鎖療法を含む。Regranex(登録商標)(PDGF:血小板由来成長因子)は、長期治療のための唯一の登録された薬学的治療であったが、その治療効果は小さく、細胞ベース治療の成功も同様である。組み換えヒトEGF (rhEGF)は、糖尿病性足潰瘍症状の潰瘍治療用としていくつかの国において、Heberprot-P(登録商標)として登録されている。さらに、組み換えヒト塩基性繊維芽細胞成長因子(rhbFGF)として知られるトラフェルミン(ブランド名:Fiblast(登録商標))は、ヒト塩基性繊維芽細胞成長因子(bFGF)の組み換え体であり、日本において、皮膚潰瘍の治療用に局所用スプレーとして上市されている。
【0006】
創傷の治療にかかわらず、すべての慢性創傷の3分の1において再発が問題となっている。
【0007】
グルココルチコイドは、他の状況においては抗炎症性であるが、その副作用の一つが創傷治癒の実際に遅延させてしまうので、局所的グルココルチコイドは使用できない(非特許文献5)。したがって、先行技術では独断的意見として、局所的グルココルチコイドが創傷治癒を損なうと述べられている(非特許文献6、7)。さらに、非ステロイド系抗炎症剤、例えばイブプロフェン、は創傷痛の改善にのみ効果的である(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】WO 2008/076048 A1
【文献】WO 2018/236749 A2
【文献】WO 2018/049255 A1
【文献】WO 2018/183947 A1
【文献】WO 2017/046096
【文献】WO 2009/023471 A2
【文献】WO 2008/027796 A2
【文献】WO 2008/033655 A2
【文献】WO 2008/005686 A2
【文献】WO 2008/021728 A2
【文献】WO 2008/021729 A2
【文献】WO 2008/154129 A1
【文献】WO 2009/042377 A1
【文献】WO 2010/123769 A1
【文献】WO 2012/170175 A1
【文献】WO 2013/126156 A
【文献】WO 2003/086294 A2
【文献】WO 2004/026248 A2
【文献】WO 2004/066920 A2
【文献】WO 2004/075840 A2
【文献】WO 2004/093805 A2
【文献】WO 2009/108525 A2
【文献】WO 2009/111214 A1
【文献】WO 2010/138421 A1
【文献】WO 2010/141247 A1
【文献】WO 2011/031574 A1
【文献】WO 2011/053567 A1
【文献】WO 2005/082909 A1
【文献】WO 2006/019716 A1
【文献】WO 2009/103007 A2
【文献】WO 2000/66522 A1
【文献】RU24858
【文献】WO 2009/149139 A1
【文献】EP 2 300 472
【文献】WO 2009/065503
【文献】WO 2018/046678
【文献】WO 2018/046685
【文献】WO 2006/050998
【文献】US 8,282,909
【非特許文献】
【0009】
【文献】Sen CK et al (2009) Wound Repair Regen 17: 763-771
【文献】Gould L et al (2015) Wound Repair Regen 23:1-13
【文献】Gottrup F (2004) Am J Surg 187:38S-43S
【文献】Dissemond J et al (2014) JDDG 1610-0379/2014/1207:541-554
【文献】Hengge UR (2006) J Am Acad Dermatol 54:1-15
【文献】Wicke C et al (2000) Arch Surg 135:1265-1270
【文献】Anderson K et al (2014) J Am Coll Clin Wound Spec 4:84-91
【文献】Schacke et al. (2004; PNAS, 101: 227-232)
【文献】Schacke et al. (2009; Br. J. Pharmacol., 158: 1088-1103)
【文献】Alexander et al., 2008 Guide to receptors and channels
【文献】Badarau E. et al. (European Journal of Medicinal Chemistry, 2019, 161: 354-363)
【文献】Tijssen P., supra, or Diamandis, E.P. and Christopoulos, T.K. (eds.), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、患者における皮膚創傷治癒不全の治療のための、信頼性が高く有効な治療が医学的に強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願では、実施例および対応する図にて示したように、慢性創傷患者からの創傷浸出液を用いたヒト関連ex vivo(エクスビボ)創傷治癒モデルにおいて、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRMs)は、繊維芽細胞増殖(2D)および繊維芽細胞由来マトリックス形成(3D)の顕著な増強効果を示し、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲン発現を増加し、IL-1β分泌を抑制することを、驚くべきことに見出した。例えば、SEGRMの例としてマプラコラットが、ヒト創傷浸出液が80より多く存在する条件下で、繊維芽細胞の増殖を120%より多く増加することを見出した。
【0012】
さらに、慢性ヒト創傷からの創傷浸出液で処理した創傷において、6日から12日の創傷スコアをマプラコラットが低下させることを見出し、および/または、創傷治癒遅延のブタモデルにおいて、TLR 7/8アゴニストR848(レシキモド)を創傷治癒遅延のインデューサーとして見出した(図13)。
【0013】
加えて、不活性化アナログであるBI-3047ではなく、BI-653048が、異なる攻撃的な創傷滲出液の存在下で線維芽細胞の増殖を用量依存的に増強し(図1)、これらの培養物においてIL-1β分泌を抑制する(図2)ことを見出した。化学的に異なるSEGRMである、マプラコラット、ZK216348およびHY14234は、創傷滲出液存在下で、類似の増殖効果およびIL-1β分泌またはmRNA発現を有した(図5、8および9から11)。質的には類似している一方、その効果の大きさはSEGRM化合物および各創傷滲出液によって異なった。したがって、好ましい態様として、異なる化合物に対する患者の浸出液のin vitro(インビトロ)プレテストを伴う個別化医療アプローチは、ここで述べる発明の方法を用いることによって行われる。培地ではなく創傷滲出液を用いた繊維芽細胞増殖アッセイにおける、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンmRNAの発現は、BI-653048およびマプラコラットによって増加した(図3および6から8)。このような効果は、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、ミフェプリストンによって逆転された(図4)。
【0014】
さらに、慢性の非治癒性創傷の患者からの創傷滲出液と、BI-653048(非活性アナログBI-3047ではない)、マプラコラット、ZK216348、AZD7594およびHY14234を含む複数の構造的に異なるSEGRMとともに培養した3D繊維芽細胞培養において、よい効果が観察された。繊維芽細胞由来マトリックス形成アッセイ(3D)同様に、繊維芽細胞増殖アッセイ(2D)は、創傷治癒のためのヒト関連ex vivoアッセイである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aから図1Cは、患者1から3からの創傷浸出液(WE)の存在下または非存在下でのヒト皮膚繊維芽細胞増殖アッセイ(2D)における、非活性アナログBI-30047と比較した、活性SEGRM化合物BI-653048のプロファイルを示す。図1DはWE非存在培地での繊維芽細胞増殖を示す。黒丸:段階的濃度のBI-653048、白三角:段階的濃度のBI-30047。活性化合物は創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖の阻害を戻したが、非活性アナログは効果がなかった。
図2】非活性アナログBI-30047と比較した、活性SEGRM化合物BI-653048の、WE-1存在下での、繊維芽細胞増殖への効果(図2A)、および上清中のIL-1β分泌への効果(図2B)を示す。黒丸:段階的濃度のBI-653048、白三角:段階的濃度のBI-30047。活性化合物は創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖の阻害およびIL-1β分泌阻害を用量依存的に戻した。非活性アナログは、増殖に対して効果がなく、IL-1β分泌への効果もより小さかった。
図3】非活性アナログBI-30047と比較した、活性SEGRM化合物BI-653048の、WE-2存在下での、繊維芽細胞増殖アッセイにおけるI型コラーゲンおよびIII型コラーゲンmRNAの発現への効果を示す。黒塗カラム(図3Aおよび3B):WE-2存在下で72時間インキュベーションを行った、白抜きカラム(図3Cおよび図3D):WE-2非存在の培地で72時間インキュベーションを行った。どちらの化合物も1μMで使用された。活性化合物は、WE存在下において、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンのmRNA発現を増加したが、培地中では増加しなかった。
図4】WE-1を伴う繊維芽細胞由来マトリックス形成に関する、3D繊維芽細胞培養における、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、ミフェプリストン(1μM濃度)存在下および非存在下の両方における、段階的濃度のSEGRM BI-653048の効果を示す。BI-653048のマトリックス促進効果は、ミフェプリストンの追加によって止められ、これは、このような効果が、グルココルチコイド受容体により仲介されることを示す。
図5】SEGRM化合物マプラコラットおよびBI-53048の、WE-4存在下での繊維芽細胞増殖への効果を示す。黒丸:段階的濃度のBI-53048、黒四角:段階的濃度のマプラコラット。異なる濃度でではあるが、どちらの化合物も、創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖の阻害を用量依存的に戻した。
図6】繊維芽細胞増殖アッセイにおけるWE-1存在下での、段階的濃度のマプラコラットのI型コラーゲンmRNAへの効果を示す。黒塗りカラム(図6A):WE-1存在下で行われた72時間インキュベーション、白抜きカラム(図6B):WE-1非存在下で行われた72時間インキュベーション。マプラコラットは、WE存在下でI型コラーゲンmRNA発現を用量依存的に増加したが、培地中では増加しなかった。
図7】繊維芽細胞増殖アッセイにおけるWE-1存在下での、段階的濃度のマプラコラットのIII型コラーゲンmRNAへの効果を示す。横線カラム(図7A):WE-1存在下で行われた72時間インキュベーション、白抜きカラム(図7B):WE-1非存在下で行われた72時間インキュベーション。3つすべての濃度でのマプラコラットは、WE存在下でIII型コラーゲンmRNA発現を増加したが、培地中では増加しなかった。
図8】繊維芽細胞増殖アッセイにおける、WE-1存在下での、段階的濃度のマプラコラットのIL-1β mRNA発現への効果を示す。斜線カラム(図8A):WE-1存在下で行われた72時間インキュベーション、白抜きカラム(図8B):WE-1非存在下で行われた72時間インキュベーション。マプラコラットは、WE存在下でZK216348 mRNA発現を用量依存的に阻害した。培地中ではIL-1β誘導は見られなかった。
図9】WE-1存在下でのSEGRM化合物、ZK216348およびHY14234の、繊維芽細胞増殖への効果(図9A)および上清中のIL-1β分泌への効果(図9B)を示す。黒丸:段階的濃度のHY14234、黒三角:段階的濃度のZK216348。すべてのテストした化合物は、創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖阻害を濃度依存的に部分的に戻し、これら化合物は、同一濃度においてIL-1β分泌を阻害した。ZK216348の有効性はHY14234のように高くはなかった。
図10】SEGRM化合物、ZK216348およびHY14234の、WE-2存在下での繊維芽細胞増殖への効果(図10A)および上清中のIL-1β分泌への効果(図10B)を示す。黒丸:段階的濃度のHY14234、黒三角:段階的濃度のZK216348。すべてのテストした化合物は、創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖阻害を濃度依存的に戻したが、WE-2においては、IL-1β分泌阻害は無視できる程度であった。
図11】SEGRM化合物、ZK216348およびHY14234の、WE-1存在下での繊維芽細胞増殖への効果(図11A)および上清中のIL-1β分泌への効果(図11B)を示す。黒丸:段階的濃度のHY14234、黒三角:段階的濃度のZK216348。すべてのテストした化合物は、創傷浸出液(WE)誘導繊維芽細胞増殖阻害を濃度依存的に戻し、同一濃度においてIL-1β分泌を阻害した。ZK216348の有効性はHY14234のように高くはなかった。
図12】患者番号92からのWEとともに培養した3D繊維芽細胞培養における複数のSEGRMの効果を示す。3D培養において、AZD7594がテストされたSEGRMの内最も活性が高く、マプラコラットおよびBI653048が続いた。これは、グルココルチコイド受容体活性(EC50値、それぞれ、0.9nM, 1.9nM および 55nM)の有効性に一致する。不活性化合物BI3047はマトリックス形成を誘導しなかった。黒菱型:AZD7594、黒丸:マプラコラット、黒四角:HY14234、黒三角:BI653048、白抜き三角:BI3047、ばつ(×)印:ZK216348。
図13A】創傷治癒遅延のブタモデルにおけるマプラコラット(MAPRA)の効果を示す。炎症誘導物質としてTLR7/8アゴニストR848の存在下(図13AからC)またはコントロールとしてヒト血清のみの存在下(図13D)で、ヒト慢性創傷浸出液WE-01およびWE-02または健常ヒト血清を用いて、ブタの背中に5日間創傷を誘導した。化合物治療を6日目に開始し、10日まで続けた。総創傷スコア(創傷の外観、大きさ、内容、膿、痂皮、紅斑、紅斑の広さ、腫れおよび壊死)を毎日、12日まで測定した。 創傷治癒遅延の誘導物質としてWE-01(図13A)、WE-02(図13B)およびR848(図13C)の存在下で、マプラコラット(MAPRA)は、10mMおよび1mMで、6から12日での創傷スコアを減少した。マプラコラットは、ヒト血清が存在するコントロール創傷(図13D)の治癒に対してネガティブな効果を有しなかった。 一方、両方のブタにおいてマプラコラットの概括的効果は似ており、創傷スコア減少の度合いは、個々のブタ、および使用した刺激(WEおよび/またはR848)に依存して異なった。番号2のブタは番号1のブタより良く応答し、マプラコラットの改善効果はWE-01よりWE-02への方がよかった。好ましい態様では、上述したような特定の薬剤に対する患者の浸出液のプレテストを含む、本明細書で述べられる方法を実施することにより、個々の患者への個別化医療アプローチが実施される。
図13B】炎症誘導物質としてTLR7/8アゴニストR848の存在下で、WE-02を用いて、ブタの背中に5日間創傷を誘導した。化合物治療を6日目に開始し、10日まで続けた。総創傷スコア(創傷の外観、大きさ、内容、膿、痂皮、紅斑、紅斑の広さ、腫れおよび壊死)を毎日、12日まで測定した。 創傷治癒遅延の誘導物質としてWE-02の存在下で、マプラコラット(MAPRA)は、10mMおよび1mMで、6から12日での創傷スコアを減少した。 一方、両方のブタにおいてマプラコラットの概括的効果は似ており、創傷スコア減少の度合いは、個々のブタ、および使用した刺激(WEおよび/またはR848)に依存して異なった。番号2のブタは番号1のブタより良く応答し、マプラコラットの改善効果はWE-01よりWE-02への方がよかった。
図13C】炎症誘導物質としてTLR7/8アゴニストR848の存在下で、健常ヒト血清を用いて、ブタの背中に5日間創傷を誘導した。化合物治療を6日目に開始し、10日まで続けた。総創傷スコア(創傷の外観、大きさ、内容、膿、痂皮、紅斑、紅斑の広さ、腫れおよび壊死)を毎日、12日まで測定した。 マプラコラット(MAPRA)は、10mMおよび1mMで、6から12日での創傷スコアを減少した。
図13D】コントロールとしてヒト血清のみの存在下で、ヒト慢性創傷浸出液WE-01およびWE-02または健常ヒト血清を用いて、ブタの背中に5日間創傷を誘導した。化合物治療を6日目に開始し、10日まで続けた。総創傷スコア(創傷の外観、大きさ、内容、膿、痂皮、紅斑、紅斑の広さ、腫れおよび壊死)を毎日、12日まで測定した。 マプラコラット(MAPRA)は、ヒト血清が存在するコントロール創傷の治癒に対してネガティブな効果を有しなかった。
図14】活性の測定として、グルココルチコイド受容体の繊維芽細胞の細胞質(C)から核(N)への移行を示す。細胞を段階的濃度の化合物とインキュベートし、細胞内グルココルチコイド受容体の局在を、受容体に対する抗体を用いて、間接的免疫蛍光法によって測定した。 マプラコラットおよび活性BI653048の両方が、低い濃度(1から10nM)で核内移行を示し、一方BI653048の不活性立体異性体BI3047では100nMまで不活性であった。ポジティブコントロールであるクロベタゾールでも同様に核内染色が見られた。
図15】表は、ヒト患者の慢性、非治癒皮膚創傷からの多数の創傷浸出液の存在下における、繊維芽細胞増殖への1μMマプラコラットの効果を示す。それぞれのWEの存在下における増殖のレベルを100%に設定し、マプラコラットの効果の計算のための基とした。120%より高い(WEコントロールの平均+2 SD)すべての値を、成長が促進しているとして考える。本発明の一つの好ましい態様では、患者は、上述したように個別化された方法の治療に効果的に応答すると最も思われる患者として、本発明の方法を用いてあらかじめ選別される。
図16】活性SEGRMマプラコラット(黒丸)、HY14234(黒三角)およびBI653048(黒四角)、不活性化合物BI3047(白抜き四角)、および比較としてグルココルチコイド デキサメタゾン(黒菱型)に応じた、U937細胞中のLPS誘導IL-8分泌(A)およびヒト単球中の自発的IL-8分泌(B)の阻害を示す。活性SEGRMは、U937細胞中のLPS誘導IL-8分泌および初代ヒト単球中の自発的IL-8分泌の両方をそれぞれ阻害したが、不活性立体異性体は高い濃度でIL-8分泌を誘導さえした。比較のコルチコイド、デキサメタゾンは、SEGRMと類似した様式でIL-8を阻害した。したがって、これらの化合物の抗炎症特性を確認した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、一態様では、本発明は、対象における皮膚創傷治癒不全の治療に使用に使用するための、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)、またはその薬学的許容可能な塩、に関する。
【0017】
「GR」、「GC」または「GCR」としても示される、ヒトグルココルチコイド受容体は、NR3C1(核内受容体サブファミリー3、グループC、メンバー1)としても知られ、コルチゾールおよび他のグルココルチコイドに結合する受容体である。好ましい態様において、グルココルチコイド受容体はヒトグルココルチコイド受容体である。
【0018】
GRは体のほぼすべての細胞で発現しており、発生、代謝および免疫応答を制御する遺伝子を調節する。受容体遺伝子はいくつかの形で発現するので、体の異なる部分における多くの異なる(多面発現)効果を有する。
【0019】
GRがグルココルチコイドに結合するとき、その働きの主要なメカニズムは遺伝子転写の制御である。非結合受容体は細胞内のサイトゾルに存在する。受容体がグルココルチコイドに結合した後、レセプター-グルココルチコイド複合体は異なる経路を取ることができる。活性化したGR複合体は核内の抗炎症タンパク質をアップレギュレートし、または、サイトゾルにおける炎症促進性の発現を抑制する(他の転写因子のサイトゾルから核内への移行を阻害することにより)。あるいは、他の転写因子が結合する同じ部位において受容体のDNAへの結合により抑制が達成され、したがって、他の転写因子の効果を止める。
【0020】
人において、GRタンパク質は、5番染色体(5q31)に位置するNR3C1遺伝子によってコードされる。様々な代替えのスプライシングされたアイソフォームが存在する。
【0021】
「選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター」または「SEGRM」はよく知られており、確立された化合物クラスである。選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターは好ましくは、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)である。古い先行技術文献では、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターはまた、「選択的グルココルチコイド受容体アゴニスト」または「SEGRA」として、または「解離性グルココルチコイド受容体アゴニスト」または「DIGRA」として示される。さらに、他の好ましい態様では、SEGRMはまたいくつかの先行文献において「SGRM」「GRアゴニスト」または「SEDIGRAM」として示される。よって、好ましい態様では、「選択的グルココルチコイド受容体活性化剤」または「SEGRA」はよく知られており、確立され化合物クラスである。選択的グルココルチコイド受容体活性化剤は、好ましくはステロイド系選択的グルココルチコイド受容体活性化剤(SEGRA)である。他の好ましい態様では、先行技術におけるSEGRMまたはSEGRAを「選択的グルココルチコイド受容体活性化剤およびモジュレーター」として参照する。よって、好ましい態様において、用語「SEGRM」および「SEGRA」は同類語である。好ましくは、類似した意味は用語「SEGRM」によっていくつかの先行技術において反映される。
【0022】
グルココルチコイドは抗炎症性の特徴を示すことが知られている。しかしながら、上述したように、グルココルチコイドは、例えば、とりわけ皮膚萎縮など、重篤な副作用も示す。局所的グルココルチコイドの副作用の一つは、実際に創傷治癒を遅延させることであるので、上述したように、局所的グルココルチコイドは、例えば糖尿病性腫瘍や創傷治癒遅延を伴う皮膚創傷の他の一般的タイプに使用できない。
【0023】
SEGRMは、グルココルチコイド受容体の作用機序のサブセットのみを誘発することにより、その選択性を達成する。特に、SEGRMはグルココルチコイド受容体(GC)に特異的に結合するが、GCの作用機序のサブセットのみ誘発する。
【0024】
非選択的グルココルチコイドおよびSEGRMの両方は、グルココルチコイド受容体(GR)に結合し、グルココルチコイド受容体を活性化することによりその効果を示す。「トランスアクチベーション」および「トランスリプレッション」として一般的に示される少なくとも二つのシグナル伝達経路を通してGRを活性化するグルココルチコイドとは対照的に、SEGRMは、二つのおもな可能経路の一つを操作して、または主に操作して、好ましくはトランスリプレッションによって、GRを活性化する。
【0025】
グルココルチコイドが存在しない条件において、GRはヒートショックプロテイン(HSP)およびイムノフィリンと複合した不活性化状態でサイトゾルに存在する。GRへのグルココルチコイドの結合が、GRのコンフォメーション変化を引き起こすことにより、受容体を活性化し、したがってHSP結合の解離が起こる。活性化GRは遺伝子発現を「トランスアクチベーション」および「トランスリプレッション」の二つの経路のうち一つを介して制御する。
【0026】
トランスアクチベーション:活性化GRがダイマー化し、核内に移動し、グルココルチコイド応答配列(GRE)と呼ばれるDNAの特異的配列に結合する、直接経路はトランスアクチベーションを示す。GR/DNA複合体は、下流のDNAをmRNAに転写し最終的にタンパク質に翻訳する、タンパク質をリクルートする。グルココルチコイド応答遺伝子の例には、チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)、アネキシンA1、T22D3、アンジオテンシン変換酵素、中性エンドペプチダーゼ、二重特異性ホスファターゼ1、インターフェロン調節因子1、および他の抗炎症タンパク質が含まれる。
【0027】
トランスリプレッション:第2、間接経路はトランスリプレッションと呼ばれ、この経路では、活性化モノマーGRがNF-κBおよびAP-1のような他の転写因子に結合し、これらがこれらの標的遺伝子の発現をアップレギュレートすることを防ぐ。これらの標的遺伝子は、シクロオキシゲナーゼ、NOシンターゼ、ホスホリパーゼA2、腫瘍壊死因子、トランスフォーミング増殖因子β、ICAM-1および複数の他の炎症促進タンパク質をコードする。
【0028】
したがって、グルココルチコイドの抗炎症効果は、トランスアクチベーションおよびトランスリプレッションの両方に起因する。
【0029】
よって、SEGRMは、トランスアクチベーションより、より強くトランスリプレッションする化合物である。
【0030】
トランスリプレッションを測定するアッセイは、先行技術にてよく知られており、例えば非特許文献8にて開示されている、PMBC細胞からのLPS誘導サイトカインIL-12またはTNF-αの分泌、または、非特許文献9に詳細が開示されている、コラゲナーゼプロモーター活性の阻害、刺激されたヒト初代細胞におけるIL-12またはIFNγのようなサイトカイン分泌の阻害、または混合リンパ球反応におけるリンパ球増殖の阻害、の測定が含まれる。
【0031】
トランスアクチベーションを測定するアッセイは、先行技術にてよく知られており、例えば非特許文献8にて開示されている、肝細胞におけるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘導、または、非特許文献9に開示されているMMTVプロモーター活性の誘導、または、TAT活性の誘導、の測定が含まれる。
【0032】
好ましくは、トランスアクチベーションおよびトランスリプレッションを測定するアッセイは、非特許文献9の記載に従って行われてよい。
【0033】
好ましくは、コラゲナーゼプロモーター活性の阻害は非特許文献9の記載に従って行われてよい:コラゲナーゼプロモーターをつなげたルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的にトランスフェクトしたHeLa細胞を、3%活性炭処理済みウシ胎児血清(FCS)、50 units/mLペニシリンおよび50 mg/mL ストレプトマイシン、4 mmol/L L-グルタミン、および300 μg/mL ゲネチシンを補填したDulbecco’s modified Eagle’s mediumで24時間培養する。細胞をその後、96ウェルディッシュに1×10細胞/ウェルで播く。24時間後、細胞を、増加する濃度(1 pmol/Lから1mmol/L)のリファレンスまたはテスト化合物の存在下、または非存在下で、炎症刺激[10 ng/mL 12-o-tetradecanoylphorbol 13-acetate(TPA)] とともにインキュベートする。ネガティブコントロール(刺激されていない細胞)細胞を、0.1%ジメチルスルホキシド(DMSO)とインキュベートし、ポジティブコントロール細胞(刺激された細胞)は10 mg/mL TPAを加えた0.1% DMSOでインキュベートする。18時間後、ルシフェラーゼアッセイを行う。
【0034】
好ましくは、刺激されたヒト初代細胞におけるIL-12またはIFNγのようなサイトカイン分泌の阻害は、非特許文献9の記載に従って行われてよい:モノサイトでのIL-12p40の分泌への化合物の効果を、健常ドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)を10 ng/mL リポポリサッカライド(大腸菌血清型0127:B8;Sigma)で刺激した後測定する。IFNγ分泌の効果は、10μg/mL分裂促進レクチン、フィトヘマグルチニンでPBMCを刺激した後測定する。24時間インキュベーション(37℃, 5% CO)後、処理した細胞の上清中のサイトカイン濃度を特異的ELISAキット、IFN-γ and IL-12p40 ELISA(R&DSystems)を用いて測定する。
【0035】
好ましくは、MMTVプロモーター活性の誘導は非特許文献9の記載に従って行われてよい:MMTVプロモーターをルシフェラーゼレポーター遺伝子につなげ、HeLa細胞にこのコンストラクトを安定的にトランスフェクトする。細胞を、50 unitsペニシリンおよび300μg/mL ゲネチシンを補填したDulbecco’s modified Eagle’s mediumで培養する。GRリガンドのトランスアクチベーション活性を調べるため、細胞を3%活性炭処理済みウシ胎児血清(FCS)で補填した培地で飼う。細胞をそして、96ウェルディッシュに1×10細胞/ウェルで播く。24時間後、増加する濃度のリファレンス(デキサメタゾン)またはテスト化合物とともにインキュベートする。ネガティブコントロール(刺激されていない細胞)として、細胞を0.1%DMSOで処理する。細胞を18時間化合物とインキュベートし、その後GR活性の測定としてルシフェラーゼ活性を測定する。
【0036】
好ましくは、TAT活性の誘導は非特許文献9の記載に従って行われてよい:テスト化合物によるTATの誘導は、ヒト肝細胞癌細胞株、HepG2を用いてin vitroで測定する。HepG2細胞を2mmol/Lグルタマックス、10%熱処理ずみFCSおよび1%非必須アミノ酸を含む最小必須培地にて培養する。テスト化合物によるTATの誘導を調べるために、細胞を96ウェルディッシュに1×10細胞/ウェルで播く。24時間後細胞を溶解し、TAT活性をp-ヒドロキシフェニルピルビン酸の変換に際する340nmでの芳香族p-ヒドロキシベンズアルデヒドの吸収を測定する。
【0037】
したがって、本発明のさらに好ましい態様では、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)、またはその薬学的に許容可能な塩は、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)である。選択的グルココルチコイド受容体モジュレーターはグルココルチコイド受容体(GC)に結合する。より好ましい実施形態では、SEGRMは作用機序のサブセットのみを誘発することにより、100nM,70nM,60nM,50nM,40nM,30nM,20nMまたは10nM未満の親和性(KD)での選択性を達成する。親和性(KD)は先行技術で知られる方法によって測定でき、例えばBiacore装置のような表面プラズモン共鳴(SPR)測定を用いることにより測定できる。好ましくは、親和性は約20℃または25℃において測定する。
【0038】
本発明のさらに好ましい態様では、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)は、細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際しトランスリプレッションを起こし、デキサメタゾンと比較して細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際しより低いトランスアクチベーションを示す。
【0039】
ある好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMのトランスリプレッション活性へのIC50値は、デキサメタゾンのトランスリプレッション活性へのIC50値より、高くて、100倍、50倍、30倍、高くて10倍、高くて5倍または高くて2倍高い。一つのより好ましい態様において、SEGRMのトランスリプレッション活性へのIC50値は、例えばマプラコラットで見られたように、デキサメタゾンのトランスリプレッション活性へのIC50値と類似している。例えば、デキサメタゾンのトランスリプレッション活性へのIC50値は、デキサメタゾンのトランスリプレッション活性のIC50値より、2倍または5倍低い、のように低くてよい。値は、好ましくは上述したトランスリプレッションアッセイの一つで測定される。
【0040】
一つの好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMのトランスリプレッション活性の有効性は、デキサメタゾンのトランスリプレッション活性の有効性の、少なくとも30%。40%、50%、60%、70%、80%または90%である。値は、好ましくは上述したトランスリプレッションアッセイの一つで測定される。
【0041】
一つの好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMのトランスアクチベーション活性へのEC50値は、デキサメタゾンのトランスアクチベーション活性へのEC50値より、少なくとも20倍、40倍、50倍または100倍高い。値は、好ましくは上述したトランスアクチベーションアッセイの一つで測定される。
【0042】
上述したように、SEGRMは、グルココルチコイド受容体(GR)に結合し活性化することにより効果を示す。
【0043】
よって、好ましい態様では、本発明の使用ためのSEGRMはグルココルチコイド受容体(GR)の活性化剤である。
【0044】
よって、好ましい態様では、本発明の使用ためのSEGRMはグルココルチコイド受容体(GR)アゴニストである。
【0045】
好ましくは、グルココルチコイド受容体(GR)の活性化剤、またはグルココルチコイド受容体(GR)アゴニストは、GRのトランスアクチベーションおよび/またはトランスリプレッションを介してGRを活性化する化合物として理解される。トランスアクチベーションおよびトランスリプレッションは上記アッセイを用いて測定できる。
【0046】
上述したように、本発明の使用ためのSEGRMは、トランスアクチベーションよりより強くトランスリプレッションをする化合物である。よって、好ましい態様では、本発明の使用ためのSEGRMは、GRのトランスリプレッションと任意でトランスアクチベーションを介してGRを活性化する。より好ましい態様では、本発明の使用ためのSEGRMは、GRのトランスリプレッションと任意でトランスアクチベーションを介してGRを活性化し、SEGRMはトランスアクチベーションより、より強くトランスリプレッションをする。トランスアクチベーションおよびトランスリプレッションを測定するためおよびSEGRMがトランスアクチベーションより、より強くトランスリプレッションするかどうかを測定するためのアッセイは、上述した。
【0047】
好ましくは、グルココルチコイド受容体(GR)の活性化剤、または、グルココルチコイド受容体(GR)アゴニストであるSEGRMは、実施例1.10において述べるようにin vitroトランスロケーションアッセイにおいて明確にテストすることができる。アッセイは、グルココルチコイド受容体(GR)の活性化剤または、グルココルチコイド受容体(GR)アゴニストであるSEGRMのための追加の明確なアッセイを意味する。特に、アッセイは、活性化グルココルチコイドと活性化SEGRMを区別することができず、実施例1.10におけるアッセイ用の10nMの濃度、37℃でのin vitro培養における初代ヒト繊維芽細胞において、グルココルチコイドがグルココルチコイド受容体の細胞質から核内への移行をもたらすことも区別することができない。
【0048】
よって、好ましい態様では、グルココルチコイド受容体(GR)の活性化剤または、グルココルチコイド受容体(GR)アゴニストである、本発明の使用のためのSEGRMは、10nMまたは100nMのSEGRMの濃度で、37℃でのin vitro培養における初代ヒト繊維芽細胞において、グルココルチコイド受容体の細胞質から核内への移行をもたらす。アッセイは実施例1.10にて詳細に述べられている。特に、培養細胞をオーバーナイトで飢餓状態にし、37℃で45分間化合物とインキュベートし、室温で10分間、4%パラホルムアルデヒドで固定し、室温で10分間1%BSA、PBS中0.5%Triton Xで透過処理する。その後、細胞をマウス抗グルココルチコイド受容体モノクローナル抗体で染色する。検出は、蛍光標識した二次抗体を用いて免疫蛍光顕微鏡検査によって行ってもよい。
【0049】
本発明のさらに好ましい態様では、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)は、グルココルチコイド受容体(GC)に100nM未満の親和性(KD)で特異的に結合する。
【0050】
本発明のさらに好ましい態様では、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)は、グルココルチコイド受容体(GC)に特異的に結合する。SEGRMテスト化合物のIC50/参照化合物のIC50として定義される、SEGRMの競合係数が、グルココルチコイド受容体(GC)について20、10、5、4または2より低く、プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)およびミネラルコルチコイドレセプター(MR)についての競合係数が、少なくとも5、10、15、20、30、40または50であるの場合において、SEGRMはグルココルチコイド受容体に特異的に結合すると理解される。非特許文献9に述べられているように、GC用の適切な参照化合物はデキサメタゾンであり、PR用の適切な参照化合物はプロゲステロンであり、AR用の適切な参照化合物はメトリボロンであり、MR用の適切な参照化合物はアルドステロンである。
【0051】
好ましくは、競合係数は非特許文献9の記載に従って測定される。
【0052】
非特許文献9の記載に従って測定する受容体結合へのIC50値を測定して良い。ヒトGR、プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)またはミネラルコルチコイドレセプター(MR)をコードする組み換えバキュロウイルスでインフェクションしたSf9細胞からの抽出物を、非特許文献8にすでに記載のように、受容体結合アッセイに用いる。全てのレセプターの命名法は、非特許文献10に従う。GR、PR、ARおよびMRへの結合アッセイのために、[1,2,4,6,7-H]デキサメタゾン(約3.18GBq/mmol)(~20nmol/L)、[1,2,6,7,H(N)]プロゲステロン(約3.7Gbq/mmol)[17a-メチル-H]メチルトリエノロン(約3.18Gbq/mmol)D[1,2,6,7-H(N)]アルドステロン(約2.81GBq/mmol)をそれぞれ用いた。Sf9サイトゾル(100-500μg タンパク質)、テスト化合物、および結合バッファー(10mmol/L Tris/HCl pH7.4、1.5mmol/L EDTA、10%グリセロール)を総体積50μL中で混合し、室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、冷温の活性炭懸濁液50μLを5分間加え、混合液をマイクロタイターフィルトレーションプレートに移す。混合液をPicoplates(Canberra Packard)にいれ濾過し、200μL Microszint-40(Canberra Packard)と混合する。結合した放射活性をPackard Top Count plate readerにて測定する。特異的結合を、10μmol/L非標識デキサメタゾン、プロゲステロン、メトリボロンまたはアルドステロンのそれぞれが非存在下で、[1,2,4,6,7-H]デキサメタゾン、[1,2,6,7,H(N)]プロゲステロン、[17a-メチル-H]メチルトリエノロンおよびD[1,2,6,7-H(N)]アルドステロンの結合の間での違いとして定義する。特異的結合の50%阻害(IC50)を与えるテスト化合物の濃度を、結合曲線のヒル解析から測定する。競合係数(CF)を テスト化合物のIC50/ 参照化合物のIC50 として定義し、測定することができる。定義によると、CFは参照化合物に対して1.0である。GCへの参照化合物は好ましくはデキサメタゾンであり、PRへの適切な参照化合物はプロゲステロン、ARへの適切な参照化合物はメトリボロン、MRへの適切な参照化合物はアルドステロンである。
【0053】
一つの好ましい態様において、本発明の使用のための選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、以下のように特徴づけられる選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)である。
100nM未満の親和性(KD)でグルココルチコイド受容体(GC)に特異的に結合する、SEGRMおよび/または、
SEGRMの競合係数がi)グルココルチコイド受容体(GC)については20以下、および ii)プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)およびミネラルコルチコイドレセプター(MR)については少なくとも5であり、競合係数は SEGRMのIC50/ 参照化合物のIC50 として定義され、GC用参照化合物は好ましくはデキサメタゾンであり、PR用参照化合物はプロゲステロン、AR用参照化合物はメトリボロン、MR用参照化合物はアルドステロンである、および/または、
細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際するトランスアクチベーションへのSEGRMのEC50値は、デキサメタゾンのトランスアクチベーション活性へのEC50値より少なくとも20倍高い、および/または、細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際するトランスリプレッション活性へのSEGRMのIC50値は、デキサメタゾンのトランスアクチベーション活性へのIC50値より最高で100倍高い。
【0054】
したがって、一つの好ましい態様では、本発明の使用のための選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、非ステロイド系選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)であり、
そして、
100nM未満の親和性(KD)でグルココルチコイド受容体(GC)に特異的に結合するSEGRM、および/または、
SEGRMの競合係数がi)グルココルチコイド受容体(GC)については20以下、および ii)プロゲステロンレセプター(PR)、アンドロゲンレセプター(AR)およびミネラルコルチコイドレセプター(MR)については少なくとも5であり、競合係数は SEGRMのIC50/参照化合物のIC50 として定義され、GC用参照化合物は好ましくはデキサメタゾンであり、PR用参照化合物はプロゲステロン、AR用参照化合物はメトリボロン、MR用参照化合物はアルドステロンである、および/または、
細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際するトランスアクチベーション活性へのSEGRMのEC50値は、デキサメタゾンのトランスアクチベーション活性へのEC50値より少なくとも20倍高い、および/または、細胞内でのグルココルチコイド受容体(GC)への結合に際するトランスリプレッション活性へのSEGRMのIC50値は、デキサメタゾンのトランスアクチベーション活性へのIC50値より最高で100倍高い。
【0055】
さらに好ましい態様において、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、100nM未満の親和性(KD)でグルココルチコイド受容体(GC)に特異的に結合する、および/または非ステロイド系SEGRMである。
【0056】
好ましくは、上記で定義したようにトランスアクチベーションよりより強くトランスリプレッションするSEGRMのために、SEGRMの活性は、加えて、実施例1.10、1.11、および/または1.12で述べるようなin vitroアッセイにおいて明確にテストされる。アッセイは、トランスアクチベーションより強くトランスリプレッションするSEGRMのための追加のポジティブアッセイを表し、アッセイは、BI-3047のような同じ構造の立体異性体の活性型と非活性型を区別するのに用いてよい。特に、実施例1.10におけるトランスロケーションアッセイの場合、37℃、グルココルチコイド10nM濃度でのin vitro培養における初代ヒト繊維芽細胞において、グルココルチコイド受容体が細胞質から核内に移行することをグルココルチコイドがもたらすので、アッセイは活性化グルココルチコイドと活性化SEGRMを区別することはできない。
【0057】
よって、好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMは、37℃でSEGRM濃度が10nMまたは100nMのin vitro培養における初代ヒト繊維芽細胞において、グルココルチコイド受容体が細胞質から核内に移行することをもたらす。アッセイについては、実施例1.10で詳細に説明する。特に、培養細胞をオーバーナイト飢餓状態にし、37℃で45分間化合物とインキュベートし、室温で10分間4%パラホルムアルデヒドで固定し、室温で10分間1%BSA、PBS中0.5%TritonXで透過処理する。その後、細胞をマウス抗グルココルチコイド受容体モノクローナル抗体で染色する。検出は、蛍光標識した二次抗体を用いて免疫蛍光顕微鏡使用によって行う。
【0058】
よって、他の好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMは、37℃、濃度100nMで、in vitroにおけるヒト単球からの自発的IL-8分泌を、SEGRM化合物なしでインキュベートしたコントロール細胞と比較して、少なくとも20%、30%または50%まで減らす。アッセイは、実施例1.10で詳細に説明する。
【0059】
よって、さらなる好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMは、37℃、濃度100nM、in vitroにおいて、LPSで刺激したU937細胞からのIL-8分泌を、SEGRM化合物なしでインキュベートしたコントロール細胞と比較して、少なくとも20%、30%または50%まで減らす。アッセイについては、実施例1.12で詳細に説明する。
【0060】
本発明の使用のための適切なSEGRMは、技術分野で知られており、マプラコラット(ZK-245186としても知られる)および関連する5位置換キノロン、およびイソキノリン誘導化合物、5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル)アミノ]-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル)アミノ]-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、BI653048、HY14234、LGD-5552、 MK-5932、Org214007-0、Compound A、AL-438、ZK-216348、PF-802、フォスダグロコラット、Compound 10を含む。本発明の使用のための、技術分野で知られている、さらに適切なSEGRMは、[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロキシ]ベンゾエート、5-{[(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、AZD-7594、AZD-5423、AZD-2906、JPT-117968および特許文献1に開示のSEGRM化合物、特許文献2から4に開示のSEGRM化合物、BI-54903、 BI-607812、GW870086X、PF-00251802、BOL-303242-X(マプラコラットと同義)、およびさらに、特許文献5から15に開示のDIGRA化合物およびその剤形、特許文献16に開示のNOドネーティングDIGRA化合物、コルチバゾール、フルオロコルチバゾール、非特許文献11に開示のフルオロコルチバゾールのスピロ環状の類似体、特許文献17から27に開示のSEGRM化合物、特許文献28から32に開示の化合物が含まれる。
【0061】
ダグロコラット2-(ジヒドロゲン ホスフェート)としても知られる、フォスダグロコラットは次の構造を有する。
【化1】

【0062】
HY14234は次の構造を有する。
【化2】
【0063】
LGD-5552は次の構造を有する。
【化3】

【0064】
MK-5932は次の構造を有する。
【化4】

【0065】
Org214007-0は次の構造を有する。
【化5】

【0066】
Compound Aの塩化物塩は次の構造を有する。
【化6】

【0067】
AL-438は次の構造を有する。
【化7】

【0068】
PF-802は次の構造を有する。
【化8】

【0069】
Compound 10は次の構造を有する。
【化9】

【0070】
AZD-7594は、IUPAC名 3-(5-((1R,2S)-2-(2,2-ジフルオロプロパンアミド)-1-(2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)プロキシ)-1H-インダゾール-1-イル)-N-(テトラヒドロフラン-3-イル)ベンザミドを有し、次の構造を有する。
【化10】



【0071】
AZD-5423は、IUPAC名 2,2,2-トリフルオロ-N-((1R,2S)-1-((1-(4-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-5-イル)オキシ)-1-(3-メトキシフェニル)-2-プロパニル)アセトアミドを有し、次の構造を有する。
【化11】
【0072】
AZD-2906は、IUPAC名 N-((1R,2S)-1-((1-(4-フルオロフェニル)-1H-インダゾール-5-イル)オキシ)-1-(6-メトキシピリジン-3-イル)プロパン-2-イル)シクロプロパンカルボキサミドを有し、次の構造を有する。
【化12】

【0073】
JPT-117968は、次の構造を有する。
【化13】

【0074】
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロポキシ]ベンゾエートは、次の構造を有する。
【化14】

【0075】
特許文献1は式(I)の化合物を開示する
【化15】

[式中、Aは、C1-6アルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6シアノアルキル、シア ノ、C1-6ニトロアルキル、ニトロ、C1-6アルキルS(O)、C1-6アルコキシ 、C3-7シクロアルキルC1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、C3-7ヘテロシクロアルキル、C3-7ヘテロシクロアルキルC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルキルC1-6チオアルキル、C1-6チオアルキル、C1-6アルキルOC1-6アルキル、C1-6アルキルOC1-6アルキルO、C1-6アルキルC(O)C1-6アルキル、C1-6アルキルC(O)、C1-6アルキルC(O)OC1-6アルキル、C1-6アルキルC(O)O、C1-6アルキルOC(O)C1-6アルキル、C1-6アルキルOC(O)、HOC(O)、NR1-6アルキル、NR、NRC(O)C1-6アルキル、 NRC(O)、NROC(O)C1-6アルキル、NROC(O)、RNH、C5-10アリール、C1-3アルキル、C5-10アリール、C5-10ヘテロアリール、C1-3アルキルまたはC5-10ヘテロアリールであり、ここで、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールは、所望によりハロ、シアノ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルキル、C1-4アルキルOC(O)、C1-4アルキルOC1-4アルキル、C1-4アルキルS(O)およびC1-4ハロアルキルOから独立して選択される1個以上の置換基によって置換されていてもよく、かつ、Rxが水素であるか、あるいは、
Aは、Rと一体となって、所望によりO、NおよびSから独立して選択される1個以上のさらなるヘテロ原子を有する5から6員のアザ環式環を形成し;
およびR1aは、水素、C1-4アルキル、C1-4ヒドロキシアルキル、C1-4アルキルOC1-4アルキル、C1-4アルキルC1-4チオアルキルおよびC1-4ハロアルキルから独立して選択されるか、あるいは、RおよびR1aは、一体となって、オキソであり;
は、水素またはC1-4アルキルであり;
は、C5-10アリール、C5-10アリールC1-4アルキル、C5-10アリールO、C5-10アリールOC1-4アルキルまたはC5-10ヘテロアリールであり、これらは、所望によりBから独立して選択される1個以上の置換基によって置換されていてもよく;
Bは、C1-3ヒドロキシアルキル、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルC1-4チオアルキル、C1-4チオアルキル、C3-6シクロアルキルC1-4チオアルキル、C3-6シクロアルキルS、C1-3アルキルS(O)1-4アルキル、C1-3アルキルS(O)、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルキルO、ハロ、ニトロ、シアノ、C1-4アルキルOC1-4アルキルOC1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)C1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)、C1-4アルキルC(O)OC1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)O、C1-4アルキルOC(O)C1-4アルキル、C1-4アルキルOC(O)、NR1-4アルキル、NR、NRC(O)C1-4アルキル、NRC(O)、NROC(O)C1-4アルキル、NROC(O)、NRC(O)OC1-4アルキル、NRC(O)O、RC(O)RNC1-4アルキル、RC(O)RNH、C1-4アルキルNH、C1-4アルキルOC(O)NH、C1-4アルキルC(O)OC1-4アルキルNH、C1-4アルキルC(O)C1-4アルキルNH、C1-4アルキルC(O)NH、NRS(O)1-4アルキルまたはNRS(O)であり;
nは、1または2であり;
は、水素、ヒドロキシ、ハロ、C1-4アルキルまたはC1-4ハロアルキルであり ;
Wは、水素であるか、あるいは、
フェニル、C1-4アルキル、C3-7シクロアルキル、チエニル、イソオキサゾリル、 ピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニルまたはピリミジニルであり、これらは全て、所望 によりC1-3ヒドロキシアルキル、ヒドロキシ、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルC1-4チオアルキル、C1-4チオアルキル、C3-6シクロアルキルC1-4チオアルキル、C3-6シクロアルキルS、C3-6シクロアルキル、C3-6シクロアルキルC1-4アルキル、C3-6ヘテロシクロアルキル、C3-6ヘテロシクロアルキルC1-4アルキル、C1-4アルキルS(O)1-4アルキル、C1-4アルキルS(O)、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルキルO、ハロ、ニトロ 、シアノ、C1-4アルキルOC1-4アルキル、C1-4アルキルOC1-4アルキロC1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)C1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)、C1-4アルキルC(O)OC1-4アルキル、C1-4アルキルC(O)O、C1-4アルキルOC(O)C1-4アルキル、C1-4アルキルOC(O)、NR1011、NR10C(O)C1-4アルキル、NR1011C(O)、NR1011C(O)O、NR1011C(O)C1-4アルキル、NR1011OC(O)、R11C(O)R10NC1-4アルキル、R11C(O)R10NH、C1-4アルキルOC(O)NH、C1-4アルキルC(O)OC1-4アルキルNH、C1-4アルキルC(O)C1-4アルキルNH、C1-4アルキルC(O)NH、NR1011S(O)1-4アルキルまたはNR1011S(O)から独立して選択される1個以上の置換基によって置換されており;
Xは、CH、O、S、S(O)、NHまたはNC1-4アルキルであり;
Yは、水素、ハロ、C1-4チオアルキル、C1-4ハロアルキル、C1-4ハロアルキルO、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、R12C(O)、R12OC(O)、R12C(O)O、C1-6アルキルS(O)、R1213NS(O)、ベンジルオキシ、イミダゾリル、C1-4アルキルNHC(O)、NR1213C(O)、C1-4アルキルC(O)NHまたはNR1213であり;
Zは、OまたはSであり;
、R、R、R、R10、R11、R12およびR13は、水素、C1-6アルキルC(O)、NHRC(O)およびC1-6アルキルから独立して選択され;
は、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキルC(O)OC1-3アルキル、C1-6アルキルC(O)O、C1-6アルキルOC(O)C1-3アルキル、C1-6アルキルOC(O)、C1-6アルキルC(O)、C5-10ヘテロアリールC1-3アルキル、C5-10ヘテロアリール、C5-10アリールC1-3アルキル、C5-10アリール、C3-6シクロアルキルC1-3アルキルまたはC3-6シクロアルキルである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【0076】
非特許文献11は、本発明によって使用することができる、フルオロコルチバゾールのスピロ環状の類似体を開示する。本発明によって使用できる化合物の例とその合成は次のとおりである。
式8a-eおよび9a-eの化合物:
【化16】

[式中、
化合物8a、8bにおいてnは1、Rはフェニルであり、
化合物8b、9bにおいてnは2、Rはジベンジルであり、
化合物8c、9cにおいてnは3、Rはフェニルであり、
化合物8d、9dにおいてnは3、Rはフェニルであり、
化合物8e、9eにおいてnは3、Rはベンジルである。]

式10a-cの化合物:
【化17】

および
式11a-b、 12a-b、13a-bおよび14aの化合物:
【化18】

[式中、
化合物11a、12a、13a、14aにおいてRはベンジルであり、
化合物11b、12b、13bにおいてRはプロパルギルである。]
【0077】
BI-54903はチオトロピウム、特にそのブロマイド塩として知られる。
BI-607812は次の構造を有する。
【化19】
【0078】
GW870086Xは次の構造を有する。
【化20】
【0079】
PF-00251802はフォスダグロコラットの活性化代謝物である。PF-00251802は、ダグロコラットとして知られ、次の構造を有する。
【化21】
【0080】
コルチバゾールは次の構造を有する。
【化22】
【0081】
フルオロコルチバゾールは先行技術で知られており、例えば、非特許文献11に開示されている。
特許文献6から11および13から15は式(I)のDIGRA化合物を開示する。
【化23】

[式中AおよびQは独立に、非置換および置換アリールおよびヘテロアリール基、非置換および置換シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケニル基、非置換および置換シクロアルキニルおよびヘテロシクロアルキニル、および非置換および置換複素環基からなる群から選ばれ、RおよびRは独立に、非置換C-C15(代わりにC-C10またはC-CまたはC-C)直鎖または分枝鎖アルキル基、置換C-C15(代わりにC-C10またはC-CまたはC-C)直鎖または分枝鎖アルキル基、および置換C-C15(代わりにC-CまたはC-C)シクロアルキル基、からなる群から選ばれ、;R3は水素、非置換C-C15(代わりにC-C10またはC-CまたはC-C)直鎖または分枝鎖アルキル基、置換C-C15(代わりにC-C10またはC-CまたはC-C)直鎖または分枝鎖アルキル基、非置換C-C15 (代わりにC-CまたはC-C)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基、置換C-C15(代わりにC-CまたはC-C)シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、および複素環基、からなる群アリールばれ;Bはカルボニル、アミノ、二価炭化水素またはヘテロ炭化水素基を含み;Eは水素またはアミノ基であり;およびDはカルボニル基、-NH-、または-NR’-を含む、または含まず、ここでR’は非置換または置換C-C15 (代わりにC-C10またはC-CまたはC-C)直鎖または分枝鎖アルキル基、RおよびRはともに非置換または置換C-C15シクロアルキル基である。
ある態様では、Bは1以上の非置換炭素-炭素結合を含むことができる。
他の態様では、Bはアルキレンカルボニル、アルキレンオキシカルボニル、アルキレンカルボニルオキシ、アルキレンオキシカルボニルアミノ、アルキレンアミノ、アルケニレンカルボニル、アルケニレンオキシカルボニル、アルケニレンカルボニルオキシ、アルケニレンオキシカルボニルアミノ、アルケニレンアミノ、アルキニレンカルボニル、アルキニレンオキシカルボニル、アルキニレンカルボニルオキシ、アルキニレンオキシカルボニルアミノ、アルキニレンアミノ、アリルカルボニロキシ、アリロキシカルボニルまたはウレイド基を含むことができる。
まだ他の態様では、AおよびQは独立して、アリール、少なくとも一つのハロゲン原子で置換されたヘテロアリール基、シアノ基、ヒドロキシ基、またはC-C10アルコキシ基(代わりにC-Cアルコキシ基またはC-Cアルコキシ基);R、R、およびRは独立に非置換または置換C-Cアルキル基(好ましくはC-Cアルキル基)からなる群から選ばれ;BはC-Cアルキレン基(代わりにC-Cアルキル基)であり;Dは-NH-または-NR’基、ここでR’はC-Cアルキル基(好ましくはC-Cアルキル基)であり;およびEはヒドロキシ基である。
さらに他の態様では、Aはハロゲン原子で置換されたジヒドロベンゾフラニル基を含み;QはC-C10アルキル基で置換されたキノリニルまたはイソキノリニル基を含み;RおよびRは独立に非置換および置換C-Cアルキル基(好ましくはC-Cアルキル基)からなる群から選ばれ;BはC-Cアルキレン基であり;Dは-NH-基であり;Eはヒドロキシ基であり;およびR3は完全にハロゲン化したC-C10アルキル基(好ましくは完全にハロゲン化したC-Cアルキル基、より好ましくは、完全にハロゲン化したC-Cアルキル基)を含む。
まだ他の態様では、Aはフッ素原子で置換したジヒドロベンゾフラニル基を含み;Qはメチル基で置換したキノリニルまたはイソキノリニル基を含み;RおよびRは独立に非置換および置換C-Cアルキル基からなる群から選ばれ;BはC-Cアルキレン基であり;Dは-NH-基であり;Eはヒドロキシ基であり;およびRはトリフルオロメチル基を含む。
【0082】
さらに、式(IV)のDIGRA化合物、つまりマプラコラット、が開示されている。
【化24】
【0083】
特許文献16は、NOドネーティングDIGRA化合物を開示する。
【0084】
BI653048は、(R)-2-(4-((5-(エチルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メチル)-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-2-メチルペンタン-2-イル)-5-フルオロベンザミドである。そのリン酸塩は次の構造を有する。
【化25】
【0085】
BI653048および関連化合物、およびそれらの合成は、特許文献33および34に開示されている。
【0086】
特許文献5は次のSEGRM化合物同様にその合成を開示する。特許文献5のSEGRM化合物は、本発明の使用に特に好ましい。
下の式(I)で示される化合物:
【化26】

[式中、
1は、5および6員ヘテロアリール、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(4-6)員ヘテロシクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、ここで、当該5および6員ヘテロアリール、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(4-6)員ヘテロシクロアルキルおよびフェニルは、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシルおよびシアノから独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく;
2は、(C1-C3)アルキルおよびハロ(C1-C3)アルキルから選択され;
3は、フェニル、5員ヘテロアリールおよび6員ヘテロアリールから選択され、ここで、当該フェニル、5員ヘテロアリールおよび6員ヘテロアリールは、R5から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく;
4は、水素、ハロゲン、(C1-C4)アルキルおよびハロ(C1-C4)アルキルから選択され;
5は、ハロゲン、シアノ、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルキル、ハロ(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、フェニル、5員ヘテロアリール、6員ヘテロアリールおよび-S(O)2Raから選択され、ここで、Raは、(C1-C4)アルキルを表し;
1は、CH、C(Rb)およびNから選択され、ここで、Rbは、ハロゲン、(C1-C4)アルキルまたはハロ(C1-C4)アルキルを表し;
2は、CHおよびNから選択され;
Yは、-NH-および-O-から選択され;
mは、0または1であり;nは、0または1であり;
Lは、結合、-O-、-NH-または-N(Rc)-を表し、ここで、Rcは、(C1-C4)アルキルを表す]、
またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0087】
好ましくは本発明の使用のためのSEGRM化合物は、次の化合物から選択される:
N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3- ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロア セチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(2,2-ジフルオロプロパノイルアミノ)プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラ ン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]イソチアゾール-3-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]イソチアゾール-5-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]オキサゾール-2-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]チアゾール-4-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]-3-メチル-イソオキサゾール-5-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]オキサゾール-5-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2S)-2-ヒドロキシブタノイル]アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-2-ヒドロキシプロパノイル]アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]イソオキサゾール-5-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-2-ヒドロキシブタノイル]アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-メトキシアセチル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパノイル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(3-ヒドロキシプロパノイルアミノ)プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(1-ヒドロキシシクロブタンカルボニル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(1-ヒドロキシシクロプロパンカルボニル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]オキサゾール-4-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2S)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-ヒドロキシアセチル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(1S,2R)-2-(4-シクロプロピルフェニル)-1-メチル-2-[[6-[[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]カルバモイル]-3-ピリジル]オキシ]エチル]イソオキサゾール-3-カルボキサミド、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(1,2,5-チアジアゾール-3-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチルチアゾール-2-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(チアゾール-5-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(4-メチル-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチルチアゾール-4-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(4-メチルチアゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(4-メチルチアジアゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(4-メチルオキサゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-メトキシアセチル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-メチルピラゾール-3-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(2-メチルチアゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(3-メチルトリアゾール-4-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(1,2,4-オキサジアゾール-3-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(l-メチルイミダゾール-2-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(3-メチルイソオキサゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(l-メチルイミダゾール-4-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(イソチアゾール-3-カルボニルアミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(3-メチルイソキサゾール-4-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(チアゾール-2-カルボニルアミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(イソチアゾール-5-カルボニルアミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチルイソチアゾール-4-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(オキサゾール-2-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(オキサゾール-5-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(イソオキサゾール-3-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(チアジアゾール-4-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(5-メチルイソオキサゾール-3-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(イソオキサゾール-5-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(チアゾール-4-カルボニルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-5-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[(1-メチルピラゾール-3-カルボニル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-(2,2-ジフルオロプロパノイルアミノ)プロポキシ]ベンゾエート、
N-[(3R)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3R)-1-[(3S)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロア セチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3R)-1-[(2S)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3R)-1-[(2R)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3S)-1-[(3S)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3S)-1-[(2S)-5-オキソテトラヒドロフラン-2-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3R)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]ピロリジン-3-イル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-エチルフェニル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
5-[(1R,2S)-1-(4-ブロモフェニル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]-N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(4-フェニル lフェニル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ベンズアミド、
[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ベンゾエート、
N-[(3S)-1-[[(3S)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル]カルバモイル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
N-[(3S)-1-[[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル]カルバモイル]-3-ピペリジル]-5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボキサミド、
[(3S)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル](3S)-3-[[5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボニル]アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート、
[(3R)-2-オキソテトラヒドロフラン-3-イル](3S)-3-[[5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボニル]アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート、
[(3S)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル](3S)-3-[[5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボニル]アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート、または、
[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-イル](3S)-3-[[5-[(1R,2S)-1-(p-トリル)-2-[(2,2,2-トリフルオロアセチル)アミノ]プロポキシ]ピリジン-2-カルボニル]アミノ]ピペリジン-1-カルボキシレート、
またはその薬学的 に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0088】
さらに好ましい態様では、[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]-4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロポキシ]ベンゾエートまたはその薬学的に許容可能な塩は、本発明により使用されることができる。化合物は、特許文献5の「化合物37」に対応し、次の構造を有する。
【化27】
【0089】
次の3つのSEGRM化合物およびその合成は、特許文献35に開示されている。
【0090】
5-{[1S,2S]-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3--トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル}アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オンは次の構造を有する。
【化28】
【0091】
化合物は特許文献35の実施例5として知られ(ラセミ体としての立体構造なし)、ヘキサン/エタノール(4:1)溶出液でChiralpak IC 5μmを用いたキラルHPLCによるラセミ体からえることができる。
【0092】
さらにこのましい態様では、5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、またはその薬学的に許容可能な塩を本発明により使用することができる。
【0093】
5-{[1S,2S][1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オンは次の構造を有する。
【化29】
【0094】
化合物は特許文献35の実施例7として知られ(ラセミ体としての立体構造なし)、ヘキサン/エタノール(4:1)溶出液でChiralpak IC 5μmを用いたキラルHPLCにより得られるラセミ体からえることができる。
【0095】
さらに好ましい態様では、5-{[1S,2S][1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、またはその薬学的に許容可能な塩を本発明により使用することができる。
【0096】
5-{[1S,2R][1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オンは次の構造を有する。
【化30】
【0097】
化合物は特許文献35の実施例3として知られ(ラセミ体としての立体構造なし)、ヘキサン/エタノール(4:1)溶出液でChiralpak IC 5μmを用いたキラルHPLCにより得られるラセミ体からえることができる。
【0098】
さらに好ましい態様では、5-{[1S,2R][1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オンまたはその薬学的に許容可能な塩を本発明により使用することができる。
【0099】
これらSEGRM化合物およびその合成は特許文献35に開示されている。
【0100】
よって、一つの態様では、式(I)の化合物の使用は、本発明において好まれる。
【化31】

[式中、
及びRは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、場合により置換された(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基、(C-C)-パーフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基を意味し、
或いはR及びRは、一緒になって、-O-(CH-O-、-O-(CH-CH2-、-O-CH=CH-、-(CHp+2-、-NH-(CHp+1、-N(C-C-アルキル)-(CHp+1、及び-NH-N=CH-基から選択される基を意味し、ここでp=1又は2であり、そして末端酸素原子及び/又は炭素原子及び/又は窒素原子は、隣接する環炭素原子と直接結合され、
或いはNRを意味し、ここでR及びRは、互いに独立して水素、C-C-アルキル、又は(CO)-(C-C)-アルキルを意味し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基 、又は(C-C)-パーフルオロアルキル基を意味し、
4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C-C)-アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)-アルキルチオ、(C-C)-パーフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、NR、COOR、(CO)NR又は(C-C-アルキレン)-O(CO)-(C-C)アルキル基を意味し、
は、
場合により部分的又は完全にハロゲン化され得る-(C-C10)アルキル、
-(C-C10)アルケニル、
-(C-C10)アルキニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルケニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルケニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキニル、
-R
-(C-C)アルキル、
-(C-C)アルケニル、
-(C-C)アルキニル、
-S-(C-C10)-アルキル、
-SO-(C-C10)-アルキル、
-S-R
-SO2-R8
-CN、
-Hal、
-O-(C-C10)-アルキル、
、Rが上で定義された意味である-NR
-O-R
-OH
から選択される基を意味し、ただし-CH(CH、又は-C(CH)=CHを除いてであり、
は、1~3個の、ヒドロキシ、ハロゲン、C-C-アルキル、C-C-アルコキシ、シアノ、CF、ニトロ、COO(C-C-アルキル)又はC(O)OCH-フェニルによって場合により置換され得るアリール基、或いは1~3個の、アルキル基、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、又はC-C-アルコキシ基によって場合により置換され得、1~3個のヘテロ原子を含み得るヘテロアリール基を意味する]
の化合物、或いはそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩。
【0101】
より好ましくは、式(I)の化合物の使用である。ここで:
及びRは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、場合により置換された(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基、(C-C)-パーフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基を意味し、
或いは
1及びR2は、一緒になって、-O-(CH-O-、-O-(CH-CH-、-O-CH=CH-、-(CHp+2-、-NH-(CHp+1、-N(C-C-アルキル)-(CHp+i、及び-NH-N=CH-基から選択される基を意味し、
ここでp=1又は2であり、そして
末端酸素原子及び/又は炭素原子及び/又は窒素原子は 、隣接する環炭素原子と直接結合され、或いはNRを意味し、
ここでR及びRは、互いに独立して水素、C-C-アルキル、又は(CO)-(C-C)-アルキルを意味し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基、又は(C-C)-パーフルオロアルキル基を意味し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子を意味し、
は、
場合により部分的又は完全にハロゲン化され得る-(C-C10)アルキル、-(C-C10)アルケニル、
-(C-C10)アルキニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルケニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルケニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキニル、
-R
-(C-C)アルキル、
-(C-C)アルケニル、
-(C-C)アルキニル、
-S-(C-C10)-アルキル、
-S-R
-SO-R
-SO-(C-C10)-アルキル、
-CN、
-Hal、
-O-(C-C10)-アルキル、
、Rが上で示された意味である-NR
-O-R
-OHから選択される基を意味し、
ただし-CH(CH、又は-C(CH)=CHを除いてであり、
は、1~3個の、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、又はC-C-アルコキシ基で場合により置換され得るアリール基、或いは1~3個の、アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、又はC-C-アルコキシ基で場合により置換され得、1~3個のヘテロ原子を含み得るヘテロアリール基を意味し、
nは、1、2、3、4、5から選択される整数を意味する、
およびそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩に関する。
【0102】
より好ましくは、一般式Iの化合物の使用であって、R及びRは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、場合により置換された(C-C10)-アルコキシ基、(C-C)-パーフルオロアルキル基、シアノ基、又はNRを意味し、ここでR及びRは、互いに独立して水素、C-C-アルキル、又は(CO)-(C-C)-アルキルを意味し、Rは、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、(C-C10)-アルコキシ基、又は(C-C)-パーフルオロアルキル基を意味し、Rは、水素、C-C-アルキル、C-C-アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲンを意味し、Rは、場合により部分的又は完全にハロゲン化され得る-(C-C10)アルキル、-(C-C10)アルケニル、-(C-C10)アルキニル、-(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキル、-(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルケニル、-S-(C-C10)-アルキル、-SO-(C-C10)-アルキル、-CN、-Hal、-O-(C-C10)-アルキル、R、Rが上で定義された意味である-NR、-OHから選択される基を意味し、ただし-CH(CH、又は-C(CH)=CHを除く、前記化合物、およびそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0103】
本発明のさらに別の態様は、請求項1の一般式Iの化合物であって、ここでR、R及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基であり、Rは水素、C-C-アルキル、ハロゲンであり、Rは、ヒドロキシル基、塩素、-S-CH、-S-CH-CH、-S-CH-CH-CH、-O-CH、又は-O-CH-CH、-O-CH-CH-CH、-N-(CH、-N-(CH-CHである、 前記化合物、およびそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0104】
本発明のさらに別の態様は、請求項1の一般式Iの化合物であって、ここでR、R及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基であり、Rは水素、C-C-アルキル、ハロゲンであり、Rは、ヒドロキシル基、塩素、-S-CH、-S-CH-CH、-S-CH-CH-CH、-O-CH、-O-CH-CH、-O-CH-CH-CH、-N-(CH、である、 前記化合物、およびそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0105】
より好ましくは、一般式Iの化合物の使用であって、ここでR、R及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、臭素、シアノ基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシ基であり、Rは水素、C-C-アルキル、ハロゲンであり、Rは、ヒドロキシル基、塩素、-S-CH、-S-CH-CH、-S-CH-CH-CH、-O-CH、または-O-CH-CH、-O-CH-CH-CH、である、 前記化合物、およびそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0106】
さらに好ましくは一般式Iの化合物の使用であって、ここでR及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、メトキシ基、ヒドロキシル基であり、Rは、水素、フッ素、塩素、又はメトキシ基であり、Rは、水素又はフッ素であり、Rは、ヒドロキシ基、塩素原子、-S-CH、-S-CH-CH、-O-CH、-O-CH-CH、又はN(CHである、前記化合物、及びそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0107】
本発明のさらなる態様は、請求項1の一般式Iの化合物であって、ここでR及びRは、互いに独立して、水素、フッ素、塩素、メトキシ基であり、Rは、水素、フッ素、塩素、又はメトキシ基であり、Rは、水素又はフッ素であり、Rは、ヒドロキシル基、塩素原子、-S-CH、-S-CH-CH、-O-CH、又は-O-CH-CH、である、前記化合物、及びそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0108】
本発明のより好ましい態様では、使用のための化合物は、エナンチオマー的に純粋な形態である、化合物、それらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩である。
【0109】
さらにより好ましい態様において、使用のための化合物は次のリストから選ばれる:
5-{[1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[2-([エチルスルファニル]メチル)-1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-([エチルスルファニル]メチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(エトキシメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-(クロロメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メトキシメチル)-1-フェニルプロピル]アミノ}-1H-キノリン-1-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(ジアミノメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(4-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(エトキシメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン
およびそれらの塩、溶媒和物、または溶媒和物の塩。
【0110】
さらにより好ましくは、化合物、特にエナンチオマー的に純粋な化合物、であり、以下から選択される:
5-{[1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[2-([エチルスルファニル]メチル)-1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-([エチルスルファニル]メチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(エトキシメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)-プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-(クロロメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メトキシメチル)-1-フェニルプロピル]アミノ}-1H-キノリン-1-オン、
およびそれらの塩、溶媒和物、または溶媒和物の塩。
【0111】
さらにより好ましくは、化合物の使用であり、特にエナンチオマー的に純粋な化合物の使用であり、化合物は次のリストから選ばれる:
5-{(1S,2R)[1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[2-([エチルスルファニル]メチル)-1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-([エチルスルファニル]メチル)-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(エトキシメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-(クロロメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メトキシメチル)-1-フェニルプロピル]アミノ}-1H-キノリン-1-オン、
5-{(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(ジアミノメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
およびそれらの塩、溶媒和物、または溶媒和物の塩、の使用。
【0112】
さらにより好ましくは、化合物の使用であり、特にエナンチオマー的に純粋な化合物の使用であり、化合物は次のリストから選ばれる:
5-{(1S,2R)[1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[2-([エチルスルファニル]メチル)-1-(2-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メチルスルファニル]メチル)プロピル]アミノ}-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-([エチルスルファニル]メチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-2-(エトキシメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2R)[1-(5-クロロ-3-フルオロ-2-メトキシフェニル)-2-(クロロメチル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン、
5-{(1S,2S)[3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-([メトキシメチル)-1-フェニルプロピル]アミノ}-1H-キノリン-1-オン、
およびそれらの塩、溶媒和物、または溶媒和物の塩、の使用。
【0113】
さらに好ましい態様では、式(I)の化合物が本発明により好ましい:
【化32】

[式中、
は、アリール又はヘテロアリール基(それぞれ場合により、C-Cアルキル、アミノカルボニル、C-Cアルキルアミノカルボニル、C-Cジアルキルアミノカルボニル、アミノスルホニル、C-Cアルキルアミノスルホニル、C-Cジアルキルアミノスルホニル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、及びC-Cアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)から選択される1個、2個、又は3個の置換基で独立に置換されている)であり;
は、C-Cアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、アルコキシアルキル、及びアミノカルボニルから選択される1個、2個、又は3個の置換
基で独立に置換されている)であり;
Xは、CH又はNであり; そして
Yは、CH又はNであるが、ここで、
X及びYは、両方がCHであることはない]
又、その互変異性体、光学異性体、プロドラッグ、共結晶、もしくは薬学的に許容可能な塩。
【0114】
好ましくは、式(I)の化合物の使用であり、
[式中、 Rは、アリール又はヘテロアリール基(それぞれ場合により、C-Cアルキル、アミノカルボニル、C-Cアルキルアミノカルボニル、C-Cジアルキルアミノカルボニル、アミノスルホニル、C-Cアルキルアミノスルホニル、C-Cジアルキルアミノスルホニル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、及びC-Cアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)から選択される1個、2個、又は3個の置換基で独立に置換されている)であり;
は、C-Cアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている、それぞれ場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、アルコキシアルキル、及びアミノカルボニルから選択される1~3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Xは、CHであり;そして
Yは、Nである]、
又はその互変異性体、プロドラッグ、共結晶、もしくは薬学的に許容可能な塩、の使用である。
【0115】
好ましくは、式(I)の化合物の使用であり、
[式中、
は、アリール基(場合により、C、C、又はCアルキル、アミノカルボニル、ハロゲン、及びC、C、又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)から独立に選択される1個、2個、又は3個の置換基で置換されている)であり;
は、C、C、又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている、それぞれ場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、シアノ、アルコキシアルキル、及びアミノカルボニルから選択される1~3個の置換基で独立に置換されている)であり;
Xは、CHであり;そして
Yは、Nである]
又はその互変異性体、プロドラッグ、共結晶、もしくは薬学的に許容可能な塩、の使用である。
【0116】
好ましくは、式(I)の化合物の使用であり、
[式中、
は、フェニル基(場合により、アミノカルボニル、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びC又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)から独立に選択される1個又は2個の置換基で置換されている)であり;
は、C、C、又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)であり;
Xは、CHであり;そして
Yは、Nである]、
又はその互変異性体、プロドラッグ、共結晶、もしくは塩、の使用である。
【0117】
より好ましくは、式(I)の化合物の使用であり、
[式中、
は、フェニル基(場合により、アミノカルボニル、メチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びC又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)から独立に選択される1個又は2個の置換基で置換されている)であり;
は、C又はCアルキルチオ(ここで、硫黄原子は、場合によりスルホキシド又はスルホンまで酸化されている)であり;
Xは、CHであり;そして
Yは、Nである]、
又はその互変異性体、プロドラッグ、共結晶、もしくは薬学的に許容可能な塩、の使用である。
【0118】
本発明におけるこれらの化合物の適切な局所製剤は特許文献36に開示されている。特許文献37は、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎のようなT細胞介入炎症性皮膚症の局所的治療にこのような化合物を用いることを開示する。
【0119】
BI-3047は次の構造を有し、BI-653048の不活性アナログである。
【化33】
【0120】
BI-3047はSEGRMではない。
【0121】
特に、実施例において、WE-1からWE-3について図1Aから1Cに示したように、BI-653048は、単層(2D)培養でのヒト初代繊維芽細胞を非治癒性の創傷滲出液による成長阻害からレスキューすることができる。この効果は最高10μMまで用量依存的である。対照的に、BI-653048の不活性アナログであるBI-3047は、すべてのテストした濃度において増殖促進効果を有しなかった。WE無の条件において、両方の化合物は線維芽細胞の同じような成長阻害を示した(図1D)。
【0122】
加えて、BI-3047ではなくBI-653048は,WEの存在下において,増殖を増加させるのと同じ濃度で、繊維芽細胞培養において、IL-1ベータの分泌を減少させた。
【0123】
創傷治癒の過程のために、線維芽細胞によるI型およびIII型コラーゲンの産生は重要である。I型およびIII型コラーゲンのmRNA発現は、攻撃的創傷滲出液により、減少する(例えばWEおよび培地の比較、I型コラーゲンについて図3Aおよび図3Cに、III型コラーゲンについて図3Bおよび図3Dに示す)。図3Bに示したように、BI-3047ではなく、BI-653048は、創傷滲出液の存在下でI型およびIII型両方のコラーゲンのmRNA発現を誘導した。培地の存在下ではI型コラーゲンmRNAに顕著な影響はなく、両方の化合物について培地存在下でIII型コラーゲンmRNAは減少した。
【0124】
繊維芽細胞由来マトリックス形成アッセイにおいて(3D繊維芽細胞培養)、図4に示したように、BI-653048は、創傷滲出液の存在下でマトリックス形成誘導に効果的であった。この効果はグルココルチコイド受容体アンタゴニスト、ミフェプリストンによって完全に止められ、SEGRMのマトリックス促進活性はグルココルチコイド受容体によって仲介されることが示された。
【0125】
マプラコラットおよび関連する5置換キノロン、およびZK-216348を含むイソキノリン誘導体、と同様にそれらの合成は特許文献38に開示されている。特に、式(IIa)および(IIb)の次の化合物を使用してもよい。
【化34】

(式中、RおよびRは、互いに独立して、水素原子、C1-3アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、C1-3アルコキシ基またはヒドロキシ基である)
同様にそれらのラセミ体または別々に存在する立体異性体およびそれらの生理学的に適合する塩を用いてもよい。
【0126】
ハロゲン原子またはハロゲンという表示は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を意味する。フッ素、塩素または臭素原子が好ましい。
【0127】
-Cアルキル基およびC-Cアルキル基は、直鎖状または分枝鎖状であることができ、そしてメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルまたはn-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、2-ジメチルブチルまたは3-メチルブチル基である。
メチルまたはエチル基が好ましい。
【0128】
基RおよびRは好ましくは水素、C1-3アルキル、ハロゲンまたはヒドロキシである。水素、メチル、塩素およびヒドロキシが特に好ましい。
【0129】
したがって、RおよびRが、互いに独立して、好ましくは水素、C1-3アルキル、ハロゲンまたはヒドロキシである、一般式(IIa)および(IIb)の5置換キノロンおよびイソキノリン誘導体の使用が好ましい。
【0130】
およびRが、互いに独立して、水素、メチル、塩素またはヒドロキシである、式IおよびIIbの化合物の5置換キノロンおよびイソキノリン誘導体の使用が特に好ましい。
【0131】
より好ましくは、一般式(IIa)の5置換キノロンおよびイソキノリン誘導体の使用である。
【0132】
本発明に係る使用のための、一般式(IIa)および(IIb)の5置換キノロンおよびイソキノリン誘導体は、不斉中心が存在するため、異なる立体異性体として存在することができる。ラセミ体および別々に存在する立体異性体の両方が、本発明の主題に属する。
【0133】
別々に存在する立体異性体、すなわち、(+)-エナンチオマーおよび(-)-エナンチオマー、特に特許文献38の実施例1、2、3、4、5、11および12の立体異性体が、本発明の使用に特に好ましい。
【0134】
本発明に係る使用のための化合物もまた、キノリニルまたはイソキノリニル-窒素原子に対してα-位にヒドロキシ基を含有する場合、ケト-エノール-互変異性の存在により区別される。本発明における用語において、例えば実験の部において2つの互変異体のうち1つのみが記載されているとしても、両方の形態が本発明の主題の一部である。
【0135】
特に、次のSEGRMを本発明にかかる使用に用いることができる:
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-1-メチルイソキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノル-1(2H)-オン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2,6-ジメチルキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-6-クロロ-2-メチルキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン、
5-[4-(2,4-ジヒドロ-5-フルオロ-7-ベンゾフラニル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン-2[1H]-オン、
6-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
8-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルイソキノル-1(2H)-オン、ならびにそれらの別々のエナンチオマー:
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-1-メチルイソキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノル-1(2H)-オン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2,6-ジメチルキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-6-クロロ-メチルキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン-2[1H]-オン、
2(R)-6-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(R)-8-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルイソキノル-1(2H)-オン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-1-メチルイソキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノル-1(2H)-オン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2,6-ジメチルキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-6-クロロ-2-メチルキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]イソキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン、
2(S)-5-[4-(2,3-ジヒドロ-5-フルオロ-7-ベンゾフラニル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]キノリン-2[1H]-オン、
2(S)-6-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(S)-8-フルオロ-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、
2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルイソキノル-1(2H)-オン。
【0136】
特に好ましくは、5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、およびその別々に存在するエナンチオマー、2(R)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、および、2(S)-5-[4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-2-トリフルオロメチル-ペンチルアミノ]-2-メチルキノリン、である。
【0137】
さらに好ましい態様では、マプラコラットまたはその薬学的に許容可能な塩は、本発明により使用されることができる。マプラコラットは次の式(I)の化合物のINN名である:
【化35】

(I)
【0138】
ZK-216348は次の構造(III)を有する
【化36】
【0139】
特に、実施例において、マプラコラットがBI-653048と同じように、創傷滲出液の存在下2D培養での繊維芽細胞の増殖を増強することがわかった(図5)。
【0140】
段階的な濃度のマプラコラットは、創傷滲出液の存在下2D繊維芽細胞培養において、I型コラーゲンおよびIII型コラーゲンのmRNA発現を増強したが、培地存在下ではおこらなかった(それぞれ図6および図7)。逆に、図8Aに示すように、マプラコラットは、これらの培養におけるIL-1βのmRNA発現を濃度依存的に阻害する(培地でのIL-1βmRNAレベルは検出限界より下であった)。
【0141】
さらに、創傷治癒遅延ブタモデルの、慢性ヒト創傷からの創傷滲出液および創傷治癒の遅延の誘導物質であるTLR7/8アゴニスト、R848で処理した創傷において、マプラコラットが6から12日での創傷スコアを減少することが分かった。
【0142】
特に、実施例では、ZK-216348およびHY14234が創傷滲出液により誘導された増殖阻害から、2D培養において、繊維芽細胞をレスキューすることができることが分かった。(図9A、10Aおよび11A)。ZK-216348はより効果的ではなかった。ZK-216348およびHY14234の両方が、3つの異なる創傷浸出液の存在下での繊維芽細胞培養における、創傷滲出液誘導IL-1β分泌を阻害した(図9B、10Bおよび11B)。
【0143】
特に好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMは以下から選ばれる:
【0144】
(i)下の式(IIa)または(IIb)の化合物:
【化37】

式中、
およびRは、互いに独立して、水素原子、C1-3アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、C1-3アルコキシ基またはヒドロキシ基であり、
および、それらのラセミ体または別々に存在する立体異性体およびそれらの薬学的に許容可能な塩またはそれらのプロドラッグ;
【0145】
(ii)化合物(R)-2-(4-((5-(エチルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メチル)-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-2-メチルペンタン-2-イル)-5-フルオロベンザミド、またはその薬学的に許容可能な塩;
【0146】
(iii)下記の式の化合物:
【化38】

またはその薬学的に許容可能な塩;
【0147】
(iv)下記の式の化合物:
【化39】

またはその薬学的に許容可能な塩;
【0148】
(v)下記の式(I)の化合物:
【化40】

[式中、
1は、5および6員ヘテロアリール、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(4-6)員ヘテロシクロアルキルおよびフェニルからなる群から選択され、ここで、当該5および6員ヘテロアリール、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(4-6)員ヘテロシクロアルキルおよびフェニルは、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシルおよびシアノから独立して選択される1個以上の置換 基で置換されていてもよく;
2は、(C1-C3)アルキルおよびハロ(C1-C3)アルキルから選択され;
3は、フェニル、5員ヘテロアリールおよび6員ヘテロアリールから選択され、ここで、当該フェニル、5員ヘテロアリールおよび6員ヘテロアリールは、R5から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく;
4は、水素、ハロゲン、(C1-C4)アルキルおよびハロ(C1-C4)アルキルから選択され;
5は、ハロゲン、シアノ、(C1-C6)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルキル、ハロ(C1-C6)アルコキシ、ヒドロキシ(C1-C6)アルキル、フェニル、5員ヘテロアリール、6員ヘテロアリールおよび-S(O)2Raから選択され、ここで、Raは、(C1-C4)アルキルを表し;
1は、CH、C(Rb)およびNから選択され、ここで、Rbは、ハロゲン、(C1-C4)アルキルまたはハロ(C1-C4)アルキルを表し;
2は、CHおよびNから選択され;
Yは、-NH-および-O-から選択され;
mは、0または1であり;nは、0または1であり;
Lは、結合、-O-、-NH-または-N(Rc)-を表し、ここで、Rcは、(C1-C4)アルキルを表す]、
またはその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【0149】
(vi)下記の式(III)の化合物:
【化41】

[式中、
及びRは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、場合により置換された(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基、(C-C)-パーフルオロアルキル基、シアノ基、ニトロ基を意味し、
或いはR及びRは、一緒になって、-O-(CH-O-、-O-(CH-CH2-、-O-CH=CH-、-(CHp+2-、-NH-(CHp+1、-N(C-C-アルキル)-(CHp+1、及び-NH-N=CH-基から選択される基を意味し、ここでp=1又は2であり、そして末端酸素原子及び/又は炭素原子及び/又は窒素原子は、隣接する環炭素原子と直接結合され、
或いはNRを意味し、ここでR及びRは、互いに独立して水素、C-C-アルキル、又は(CO)-(C-C)-アルキルを意味し、
は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、場合により置換された(C-C10)-アルキル基、(C-C10)-アルコキシ基、(C-C10)-アルキルチオ基 、又は(C-C)-パーフルオロアルキル基を意味し、
4は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C-C)-アルキル、(C-C)アルコキシ、(C-C)-アルキルチオ、(C-C)-パーフルオロアルキル、シアノ、ニトロ、NR、COOR、(CO)NR又は(C-C-アルキレン)-O(CO)-(C-C)アルキル基を意味し、
は、
場合により部分的又は完全にハロゲン化され得る-(C-C10)アルキル、
-(C-C10)アルケニル、
-(C-C10)アルキニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルケニル、
(C-C)シクロアルキル-(C-C)アルキニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルケニル、
ヘテロシクリル-(C-C)アルキニル、
-R
-(C-C)アルキル、
-(C-C)アルケニル、
-(C-C)アルキニル、
-S-(C-C10)-アルキル、
-SO-(C-C10)-アルキル、
-S-R
-SO2-R8
-CN、
-Hal、
-O-(C-C10)-アルキル、
、Rが上で定義された意味である-NR
-O-R
-OH
から選択される基を意味し、ただし-CH(CH、又は-C(CH)=CHを除いてであり、
は、1から3個の、ヒドロキシ、ハロゲン、C-C-アルキル、C-C-アルコキシ、シアノ、CF、ニトロ、COO(C-C-アルキル)又はC(O)OCH-フェニルによって場合により置換され得るアリール基、或いは1から3個の、アルキル基、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、又はC-C-アルコキシ基によって場合により置換され得、1から3個のヘテロ原子を含み得るヘテロアリール基を意味する]
の化合物、或いはそれらの塩、溶媒和物、又は溶媒和物の塩。
【0150】
さらに好ましい態様では、本発明の使用のための、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は次の化合物から選ばれる:

【化42】

【化43】


(R)-2-4-((5-(エチルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-2-イル)メチル)-5,5,5-トリフルオロ-4-ヒドロキシ-2-メチルペンタン-2-イル)-5-フルオロベンザミド;

【化44】

【化45】

【化46】

[(3S)-1-[(3R)-5-オキソテトラヒドロフラン-3-カルボニル]-3-ピペリジル]4-[(1R,2S)-1-(4-シクロプロピルフェニル)-2-[[(2R)-テトラヒドロフラン-2-カルボニル]アミノ]プロキシ]ベンゾエート;
5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(メトキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン;および
5-{[(1S,2S)-1-(2-クロロ-3-フルオロ-4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロ-2-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロピル]アミノ}-7-フルオロ-1H-キノリン-2-オン;
または、その薬学的に許容可能な塩。
【0151】
特に、複数のSEGRMを、患者番号92からの創傷滲出液とともに培養した3D繊維芽細胞培養において試験した。結果は図12に示す。3D培養において、AZD7594が試験したSEGRMのうち最も有効であり、続いてマプラコラットおよびBI653048であった。これは、それらのグルココルチコイド受容体活性の効力と一致する(それぞれのEC50値は、0.9nM、1.9nMおよび55nM)。さらに、HY-14234も有効であることが分かった。不活性化型アナログBI3047はマトリックス形成を誘導しなかった。
【0152】
用語「薬学的に許容可能」は、修飾された名詞が医薬品または医薬品の一部として用いるのに適切であることを意味する。薬学的に許容可能な塩には、アルカリ金属塩、および酸なしまたは塩基無の付加塩、の形に通常使用される塩が含まれる。一般にこれらの塩は、典型的には、例えば本発明に用いられる化合物と適切な酸または塩基を反応させることによる、従来の方法によって調製されてよい。
【0153】
薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機または有機酸から調製することができる。多くの場合適切な無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、およびリン酸が含まれる。適切な有機酸には、一般に、例えば、有機酸の脂肪族、環状脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、複素環、カルボン酸、およびスルホン酸のクラスが含まれる。多くの場合適切な有機酸の特定の例には、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、ジグルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸塩、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸塩、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸塩、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸p-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボネート(パモ酸)、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、アルゲン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、アジピン酸、アルギン酸、重硫酸、酪酸、樟脳酸、シクロペンタンプロピオン酸、ドデシル硫酸、グリコヘプタン酸、グリセロリン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、シュウ酸、パルモエート、ペクチン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、チオシアン酸、トシラート、およびウンデカン酸、が含まれる。
【0154】
薬学的許容可能な塩基付加塩には、例えば金属塩および有機塩が含まれる。好ましい金属塩には、アルカリ金属(IA属)塩、アルカリ土類(IIA属)塩、および他の物理的に許容可能な金属塩が含まれる。そのような塩は、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛から作られてよい。好ましい有機塩は、トロメタミン、ジエチルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、およびプロカインのようなアミンから作られることができる。含窒素塩基は、低級アルキル(C1-C6)ハライド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物、ヨウ化物)、ジアルキル硫酸塩(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸塩)、長鎖ハライド(例えば、ラウリル、ミリスチル、ステアリルの塩化物、臭化物、ヨウ化物)、アリルアルカリハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロマイド)および他の塩が含まれる。
【0155】
好ましいマプラコラットの生理学的に許容可能な塩には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸の塩など、鉱酸、カルボン酸、スルホン酸の酸付加塩が含まれる。マプラコラットの生理学的に許容可能な塩には、例として好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウムおよびカリウム塩)、アルカリ土類塩(例えばカルシウムおよびマグネシウム塩)および、アンモニアまたは1から16炭素原子を有する有機アミン(例として好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N-メチルモルホリン、アルギニン、リシン、エチレンジアミンおよびN-メチルピペリジンなど)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0156】
-C-アルケニルという用語は、例えば、ビニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル(アリル)、ブタ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-2-イル、ブタ-2-エン-1-イル、ブタ-2-エン-2-イル、2-メチル-プロプ-2-エン-1-イル、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イル、ブタ-1-エン-3-イル、ブタ-3-エン-1-イルなどのE-またはZ-構成の二重結合を有する異性体を含む、直鎖または分子鎖、置換鎖または非置換鎖である。アルケニル残基が2つの他の部分の間に配置されている場合、アルケニルという用語は、例えばビニレン、プロペン-1-イレン、プロペン-2-イレン(アリレン)、ブタ-1--エン-1-イレン、ブタ-1-エン-2-イレン、ブタ-2-エン-1-イレン、ブタ-2-エン-2-イレン、2-メチル-プロプ-2-エン-1-イレン、2-メチル-プロプ-1-エン-1-イレン、ブタ-1-エン-3-イレン、ブタ-3-エン-1-イレンなどのアルケニレンを意味する。
【0157】
【化47】
【0158】
-C-シクロアルキルという用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルから選ばれる、置換または非置換基を意味する。可能な置換基は、ヒドロキシ、ハロゲン、(C-C)-アルキル、(C-C)-アルコキシ、NR、COO(C-C)-アルキル、CHO、シアノから選ばれてよい。
【0159】
-C-シクロアルキル-(C10)-アルキルという用語は、例えば、-(CH)-シクロアルキル、-(C)-シクロアルキル、(C)-シクロアルキル、-(C)-シクロアルキル、-(C10)-シクロアルキル、を意味する。よってシクロアルキルは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルを表す。
【0160】
-C-シクロアルキル-(C-C)-アルケニルという用語は、例えば、-(CH=CH)-シクロアルキル、-[C(CH)=CH]-シクロアルキル、-[CH=C(CH)]-シクロアルキル、-(CH=CH-CH)-シクロアルキル、-(CH-CH=CH)-シクロアルキル、-(CH=CH-CH-CH-CH)-シクロアルキル、-(CHCH=CH-CH)-シクロアルキル、-(CH-CH-CH=CH)-シクロアルキル、-(C(CH)=CH-CH)-シクロアルキル、-(CH=C(CH)-CH)-シクロアルキルを意味する。よって、シクロアルキルという用語は、上に定義される。
【0161】
ヘテロシクリルという用語は、例えば、ピペリジニル-、モルホリニル-、チオモルオニリル-、ピペラジニル-、テトラヒドロフラニル-、テトラヒドロチエニル-、イミダゾリヂジル-、ピロロリジニル-、を意味し、よって、ヘテロシクリル基がいずれかの可能な環原子を介して結合することができる。ヘテロシクリル基は、C-C-アルキル(場合によっては置換された)、ヒドロキシ-、C-C-アルコキシ-、NR-、ハロゲン、シアノ-、COOR-、CHO-によって置換されてよい。もし可能であれば、これらの置換基は、もしあれば、遊離窒素原子の一つに結合してもよい。N-オキシドもまた定義に含まれる。
【0162】
ヘテロシクリル-(C-C10)-アルケニルという用語は、上記ですでに定義されたヘテロシクリル基に結合する、上記で定義されたアルキレン基を意味する。
【0163】
ヘテロシクリル-(C-C)-アルケニルという用語は、上記ですでに定義されたヘテロシクリル基に結合する、上記で定義されたアルキレニレン基を意味する。
【0164】
本発明の意味におけるアリールという用語は、例えばフェニルのような6から14炭素原子を有する芳香または部分的に芳香炭素環であり、また例えばナフチルまたはアントラニルのような縮合二環または縮合三環を有する芳香または部分的に芳香炭素環、を意味する。さらなる例として、フェニル、ナフチル、テトラリニル、アントラニル、ベンゾキサジオン、ジヒドロインドロン、インダニルおよびインデニルが挙げられる。アリール基は、一つ又はいくつかの置換基、例えばヒドロキシ、ハロゲン、C-C-アルキル、C-C-アルコキシ、シアノ、CF、ニトロ、COO(C-C-アルキルまたはベンジル)またはヘテロアリール基のような1-3置換基、によって、安定な分子につながるいずれの位置で置換されてもよく、好ましくは1-3C-C-アルキル基、ヒドロキシル、ハロゲン、シアノまたはC-C-アルコキシ、によって置換されてもよい。
【0165】
ヘテロアリールという用語は、窒素、酸素または硫黄から選ばれる1から3ヘテロ原子を有する芳香環システムを意味し、5員環では、ヘテロ原子の最大数は3であリ、よって二つの酸素または硫黄原子がお互いに直接結合しないならば、二つの酸素または硫黄原子のみが可能である。
【0166】
可能なヘテロアリール環は、例えばチエニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、アザインドリジニル、ベンゾピリジル、ベンゾピリダジニル、ベンゾピリミジニル、ベンゾピラジニル、ベンゾトリアジニル、キノリル、イソキノリル、フタリジル、チオフタリジル、インドロニル、ジヒドロインドロニル、イソインドロニル、ジヒドロイソインドロニル、ベンゾフラニルまたはベンゾイミダゾリル、である。
【0167】
本発明における使用のためのSEGRMは、治療的に有効な量を対象に投与される。全身投与について、各SEGRMによるが、各SEGRM用量は1日あたり約10から1000mgの範囲であるだろう。SEGRMの皮膚または皮内剤形のような局所製剤は、約0.00001から10%(w/v)、約0.00001から6%(w/v)、または約0.00001から1%(w/v)、0.0001から0.1%(w/v)の濃度で投与されてよく、例えば0.001から1%(w/v)のクリーム、ゲル、ローション、軟膏、リポソーム製剤またはナノ粒子製剤またはそのようなものである。
【0168】
例えば、マプラコラットの局所剤形には、好ましくは、0.01重量%超過から10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1重量%未満の濃度のマプラコラット(0.01重量% < マプラコラット濃度 < 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10重量%)を含み、特に、0.01重量%超過から5、4、3、2、または1重量%未満(0.01重量% < マプラコラット濃度 < 1、2、3、4、5重量%)、または0.05重量%超過から0.15重量%未満(0.05重量% < マプラコラット濃度 < 0.15重量%)、または0.02重量%超過から0.5重量%未満(0.02重量% < マプラコラット濃度 < 0.5重量%)、またはこれらの値の組み合わせの何れかの範囲の濃度のマプラコラットを含む。
【0169】
例えば、特許文献35の化合物について特許文献36に開示された局所製剤を本発明により使用することができる。製剤は、外側脂質マトリックスおよびポリマーのような手段でゲル化した内側層を含む水のない多層性ゲルシステムに関し、その多層ゲルシステムは、
(a)外側脂質マトリックスを含み、および
(b)少なくとも一つのポリマーによりゲル化した内側層を含み、前記ポリマーは、セルロース誘導体、アクリル酸ポリマーおよびそれらの誘導体、またはそれらの混合物からなる群から選ばれ、
有効成分は一般式(I)の化合物から選ばれる:
【化48】

[式中、化合物は上記で定義される]
ことを特徴とする。
【0170】
特に、そのような局所製剤は、本発明における使用に好ましく、有効成分は次の3つの化合物から選ばれる。
【化49】
【0171】
好ましくは、脂質層は、ペトロラタム、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、スクワレン、オクタン酸セチルステアリル、オレイン酸エチル、トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル、ミリスチン酸ミリスチル、ジカプリン酸プロピレングリコール、セチルエステル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、モノ・ジ・トリグリセリド、エトキシル化グリセリド、ポリエチレングリコールエステル類、ソルビタンエステル、硬質脂肪、ジブチルアジペート、リノール酸エチル、クロダモール、ステアリン酸イソセチル、パルミチン酸セチル、セチルアルコール、オレアルコール、ステアリルアルコール、ジカプリルエーテル、オレイン酸、ワックス、特にヨホバワックスとミツロウ、コレステロール、ポリエチレングリコール、ラノリン、ラノリンアルコール、シリコーンオイル、およびこれらの混合物など、からなる群から選ばれる、肌なじみの良い脂質を含む。好ましくは、脂質層は、多層性ゲルシステムの重量の60から95%、より好ましくは65から92%、より好ましくは70から90%の割合を構成する。
【0172】
好ましくは、脂質層は、
50から90重量%、より好ましくは55から85重量%、より好ましくは58から80重量%ペトロラタム;
0から20重量%、より好ましくは1から15重量%、より好ましくは5から13重量%パラフィンオイル;
0から8重量%、より好ましくは1から6重量%、より好ましくは1から4重量%ミツロウ;
0から20重量%、より好ましくは1から15重量%、より好ましくは5から13重量%硬質脂肪;および
0から8重量%、より好ましくは1から6重量%、より好ましくは1から4重量%シクロメチコン、を含み、重量は多層性ゲルシステムを基にしている。
好ましくは、内側ゲル化層は、セルロース誘導体、アクリル酸ポリマー、またはそれらの誘導体またはそれらの混物を含む群から選ばれる少なくとも一つのポリマーを含む。好ましくは、多層性ゲルシステムの重量の、5から40%、より好ましくは8から35%、より好ましくは10から30%の割合を含む。好ましくは、架橋性アクリル酸ポリマーおよびヒドロキシプロピルセルロースの組み合わせが内側ゲル化層において使用される。好ましくは、内側ゲル化層はポリオールとカルボン酸時エステルの混合物を含む。好ましくは、内側ゲル化層はプロピレングリコールおよびカルボン酸プロピレンの混合物を含む。好ましくは、内側ゲル化層は多層性ゲルシステムの重量を基にして、
0.05から0.5重量%、より好ましくは、0.075から0.4重量%、より好ましくは0.1から0.3重量%の架橋性アクリル酸ポリマー;
0.01から0.1重量%、より好ましくは0.01から0.08重量%、より好ましくは0.01から0.06重量%のセルロース誘導体、特にヒドロキシプロピルセルロース;
1から15重量%、より好ましくは2から13重量%、より好ましくは3から10重量%のカルボン酸時エステル、特にカルボン酸プロポリエン;および
0.5から20重量%、より好ましくは0.75から17重量%、より好ましくは1から15受領%のポリオール、特にプロピレングリコール、を含む。
【0173】
本発明は皮膚創傷治癒不全を示している皮膚創傷の異なるタイプを治療または予防するために使用されてよい。本発明により治療される皮膚創傷治癒不全を示す皮膚創傷の異なるタイプには、少なくとも一つの微生物によって感染した皮膚創傷、虚血性創傷、血液供給不足や静脈うっ滞の患者の創傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、動脈性潰瘍(混合性潰瘍、褥瘡などの潰瘍、神経性創傷、下腿潰瘍、外科的創傷、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、表皮水疱症などの水疱性皮膚疾患、希少潰瘍などの潰瘍が含まれる。皮膚創傷に感染する微生物には、当該分野で知られたものであり、コリネバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌などのバクテリアおよび真菌、およびカンジダ種などの酵母が含まれる。
【0174】
したがって、本発明の好ましい態様では、皮膚創傷は、糖尿病患者の創傷、少なくとも一つの微生物によって感染された創傷、虚血性創傷、血液不足や静脈うっ滞を患う患者の創傷、糖尿病性潰瘍、静脈性潰瘍、下肢動脈潰瘍のような動脈性潰瘍、混合潰瘍、褥瘡などの潰瘍、神経因性創傷、下腿潰瘍、外科的創傷、熱傷、裂開、腫瘍性潰瘍、表皮水疱症などの水疱性皮膚疾患、希少潰瘍、から選ばれる。
【0175】
対象または個体は、他には健康な個体であってよく、または、さらに疾患及び/または併存症を呈してよく、及び/または、さらなる疾患及び/または併存症のために薬物治療を受けていてもよい。好ましい態様において、対象または個体は、皮膚創傷治癒不全に加えて、他の疾患及び/または併存症を呈し、及び/または、さらなる疾患及び/または併存症のために薬物治療を受けている。
【0176】
したがって、ある好ましい態様では、対象は皮膚創傷治癒不全に関連する少なくとも一つの併存症に罹患する。そのような併存症は、例えば糖尿病、移植片の移植に続く免疫抑制システム、および、移植片対宿主病(GVHD)が挙げられる。さらに、併存症には、肥満症、血圧増加、静脈うっ滞、または末梢動脈閉塞性疾患が挙げられる。さらに、併存症はグルココルチコイドで治療可能な疾患である。
【0177】
併存症は、すでに発症している病気とともに起こる、一つ以上の追加の病気または疾患の存在として理解される。
【0178】
したがって、本発明の他の好ましい態様では、対象は、移植片の移植を経験する、及び/または、免疫抑制治療を受ける、及び/または、少なくとも一つの免疫抑制剤で治療される。例えば、免疫抑制治療は、グルココルチコイド及び/またはカルシニューリン抑制剤を投与することによる治療である。よって、免疫抑制剤はグルココルチコイド及びカルシニューリン抑制剤から選ばれる。適切なカルシニューリン抑制剤は当該技術分野において知られており、タクロリムス、ピメクロリムスおよびシクロスポリンAが含まれる。適切なグルココルチコイドは当該技術分野において知られており、コルチゾール、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、クロロプレドニゾン、クロプレドノール、ジフルプレドナート、フルドロコルチゾン酢酸、フルオシノロン、フルペロロン、フルプレドニソロン、ロテプレドノール、プレドニカルバート、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、アルクロメタゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコロトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルオコルトロン、デソキシメタゾン、ジフロラゾン、ジフルオコルトロン、フルクロロロン、フルメタゾン、フルオコルチン、フルコルトロン、フルプレドニデン、フルチカゾン、フルチカゾンフランカルボン酸エステル、ハロメタゾン、メプレドニゾン、モメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、パラメタゾン、プレドニリデン、リメキソロン、ウロベタゾール、アムシノニド、ブデソニド、シクレソニド、デフラザコルト、デソニド、ホルモコルタール、フルクロロンアセトニド、フルドロキシコルチド、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、ハルシノニド、ヒドロキシメチルプロゲステロンおよびメドロキシプロゲステロン、またはそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0179】
本発明は、対象における皮膚創傷治癒不全の予防及び/または治療のためのSEGRM、またはそれらの薬学的に許容可能な塩に関する。
【0180】
「皮膚創傷」は、切り傷、裂傷、火傷、切れ目のような、生体の皮膚への損傷として理解される。好ましくは、皮膚創傷は、生体の皮膚の開放性創傷として理解される。皮膚は個体のどの部位に配置されていてもよく、例えば、頭、腕、脚、胸、または背中が挙げられる。さらに、個体は、一つ、二つ、三つ、四つ以上の皮膚創傷を有して良い。さらに、皮膚創傷の場所は異なってよい。好ましい態様では、皮膚創傷は創傷滲出液を形成する。他の好ましい態様では、皮膚創傷は創傷バイオフィルムを形成する。
【0181】
「皮膚創傷治癒不全」とは、期待される割合で治癒しない皮膚創傷を意味する。好ましい態様では、皮膚創傷治癒不全は、治癒しない皮膚創傷または慢性的皮膚創傷である。治癒しない皮膚創傷は好ましくは、標準的療法の下で2か月以内にふさがれない皮膚創傷として理解される。好ましくは、治癒しない皮膚創傷は、創傷のふさぎの欠如、創傷の範囲および/または深さが増加、皮膚創傷のネクローシスおよび/または感染、および/または、顆粒の欠如、によって特徴づけられる。
【0182】
本願において、「治癒する皮膚創傷」は期待される割合で治癒する皮膚創傷として理解され、特に、標準的療法の下で2か月以内にふさがれる皮膚創傷として理解される。好ましくは、治癒する皮膚創傷は、創傷のふさぎ、顆粒、ネクローシスの欠如および/または感染の欠如が起こることによって特徴づけられる。
【0183】
「潰瘍」は、組織の崩壊を伴った、皮膚上の痛みとして理解される。潰瘍は、表皮の完全な喪失と、しばしば真皮の一部および皮下脂肪の喪失という結果になる。
【0184】
「対象」または「個体」は動物、好ましくは、個体は脊椎動物であり、特に哺乳類、より好ましくはヒトである。
【0185】
本発明の他の好ましい態様では、対象は糖尿病に罹患するおよび/または少なくとも一つの糖尿病性潰瘍を有する。
【0186】
対象の皮膚創傷は、創傷治癒治療のための標準的療法のような治療をすでに受けていてよく、または皮膚創傷に関して治療されていなくてよい。
「標準的療法」は、皮膚創傷の医師によって一般に推奨される治療として理解され、特に、創傷被覆、外科的および生物学的(蛆)デブリードマン、感染制御、陰圧閉鎖療法および生物学的処置または細胞処置での治療から選ばれる一つ以上、と理解される。
【0187】
したがって、好ましい態様の一つにおいて、対象の皮膚創傷は、創傷治癒治療のための標準的療法で治療されていない、または治療されていてよく、または、創傷治癒治療のための圧迫、創傷被覆、外科的デブリードマン、生物学的デブリードマン、感染制御、抗生物質療法、陰圧閉鎖療法、特にタンパク質成長因子のようなタンパク質、抗生物質、ペプチド、砂糖、細胞または細胞構成要素、人工皮膚、ヒト血液由来製剤、遺伝子療法、または遺伝的に工作した創面改変、薬剤、ハーブ薬、または植物抽出物からの一つ以上で治療されていてもいなくてもよい。好ましい態様の一つは、対象の皮膚創傷は、創傷治癒を治療するための標準的療法で治療されていない、または治療されていてよく、ここで、標準的療法は、タンパク質成長因子での治療を含まない。他の好ましい態様では、対象の皮膚創傷は、タンパク質成長因子での治療を含む、創傷治癒のための標準的療法で治療されない、または治療されてよい。
【0188】
したがって、本発明の他の好ましい態様では、対象は、糖尿病に罹患するおよび/または少なくとも一つの糖尿病性潰瘍を有する、および/または、対象は、(i)移植片の移植を経験した、および場合によっては糖尿病を罹患する、および/または、(ii)免疫抑制療法を受ける、および場合によっては糖尿病に罹患する。
【0189】
さらに、実施例において、線維芽細胞増殖を基にしたアッセイと線維芽細胞由来マトリックス形成を基にしたアッセイの両方が、SEGRMでの治療および/または予防に応答性である皮膚創傷治癒不全に罹患する対象を認めることを可能にすることが驚くべきことにわかった。さらに、IL-1サイトカインであるIL-1βの分泌が、精度が高く、予測的なマーカーであることが分かった。したがって、IL-1の測定は、線維芽細胞増殖を基にしたアッセイ、および/または線維芽細胞由来マトリックス形成を基にしたアッセイ、との組み合わせ、を用いた好ましい態様において、IL-1の測定は行われる。
【0190】
アッセイは、皮膚創傷治癒不全に罹患する対象の成功的階層化および特定に使用してもよい。よって、アッセイは、個別化医療アプローチに有用である。
【0191】
したがって、本発明のさらに他の好ましい態様では、対象は、次の工程i)および/またはii)を実施することによって皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であるとして認められる:
i)(1)前記対象の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、繊維芽細胞の増殖を測定する、任意で、繊維芽細胞の上清中の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量を測定する;
ii)(1)前記対象の皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つ選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成を測定する。
【0192】
さらに好ましい態様では、
工程i)で測定した、繊維芽細胞の増殖の値、および/または、工程ii)で測定した繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)の少なくとも一つ選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より、少なくとも20%高く、
任意で、工程i)で得られた繊維芽細胞の上清中の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が、(2)の少なくとも一つ選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
場合に、対象が選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる。
【0193】
本発明の好ましい態様の一つでは、サンプルは創傷滲出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。さらに好ましい態様では、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0194】
対象が、同一SEGRMまたは異なるSEGRM、好ましくは同一SEGRMに応答性であると認められた場合、SEGRMを対象に投与する。
【0195】
前記皮膚創傷から得られた創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMの存在下での繊維芽細胞の増殖測定は、実施例に示したように実施されてよい。アッセイは、本願において、「HDF増殖」、「ヒト皮膚繊維芽細胞増殖」、「繊維芽細胞増殖」または「2D繊維芽細胞増殖」アッセイとして称される。アッセイのために繊維芽細胞が用いられ、線維芽細胞は初代哺乳類皮膚繊維芽細胞のような初代繊維芽細胞または繊維芽細胞細胞株でもよく、好ましくは初代繊維芽細胞が用いられる。繊維芽細胞の培養方法は当該技術分野で知られており、例えば実施例で述べられるものである。例えば、細胞はFCSを含むDMEMを用いて培養されてよい。
【0196】
好ましい態様では、例えば、マルチウェルプレートが使用された実施例において述べるように、細胞が支持体に接着するように、細胞は固体の支持体上でインキュベートされる。さらに、細胞は、場合によって例えば培地または生理食塩水で希釈される創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMに接触する。接触は細胞の接着が起こる前または後に実施されてよい。例えば、接触は、例えば細胞を播くときのような、接着の前、または接着の後に、任意で希釈される創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMを細胞に加えることによって実施される。接触は、例えばピペッティング、任意でやさしく混ぜることによって達成される。細胞は適切な時間インキュベートされ、例えば6時間から300時間、より好ましくは12時間から200時間、更に好ましくは24時間から120時間インキュベートされる。実施例では、72時間が成功的に使用された。ネガティブコントロールサンプル用に、(2)のSEGRMが存在しない対応する液体を創傷滲出液または創傷バイオフィルムに追加で加えてもよく、または、創傷滲出液または創傷バイオフィルムのみを加える。その後、繊維芽細胞の量、細胞外マトリックスの形成を含む、好ましくは細胞数を、細胞を固定し総タンパク質量を測定することなどによって測定する。細胞は、例えばパラホルムアルデヒドを用いて固定される。さらに、スルホローダミンBのような適切な染色剤を、細胞外マトリックスの形成を含む、繊維芽細胞の量の測定、好ましくは細胞数の測定、に使用してよい。形成された細胞外マトリックスを含む染色された細胞を、たとえば、染色剤に依存する適切な波長で吸光または蛍光を測定することにより測定してよい。好ましくは、工程は、固体支持体上に接着する細胞を培養できるような2D細胞培養にて実施される。好ましくは、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0197】
したがって、他の好ましい態様では、方法の工程は次の工程を含む:
(i)線維芽細胞を培養する
(ii)支持体に細胞が接着すように、支持体上で細胞インキュベートする
(iii)細胞を(1)場合によっては希釈される創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および(2)のSEGRMを接触させる、ここで、接触は細胞の接着が起こる前または後に実施され、(1)及び(2)の接触は同時または順番に実施されてよい、および
(iv)細胞外マトリックスの形成を含む、細胞外マトリックスの形成を含む繊維芽細胞の量、好ましくは細胞数、を、細胞を固定し総タンパク質量を測定することなどにより測定する、
ここで、好ましくは、方法は2D細胞培養において実施される。
【0198】
本発明の好ましい態様の一つでは、サンプルは創傷滲出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。さらに好ましい態様では、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0199】
場合によっては、i)における線維芽細胞の上清でのIL-1サイトカインマーカーの少なくとも一つの量を測定する。
【0200】
実施例において、IL-1サイトカイン、特にIL-1β、は本発明において高感度であることが分かった。
【0201】
「IL-1サイトカイン」は、IL-1αおよびIL-1βを含むと理解される。好ましい態様では、IL-1サイトカインはIL-1βである。
【0202】
繊維芽細胞によって分泌される炎症促進性IL-1サイトカインの量は、創傷治癒をモニターするため同様に、治癒する皮膚創傷または治癒しない皮膚創傷の特定のために、特に予測的であることがわかった。特に、これらのサイトカインのたくさんの量が、治癒する創傷からの創傷滲出液に比較して、治癒しない創傷からの創傷滲出液の存在下において分泌されることが分かった。サイトカインIL-1αおよびIL-1βはタンパク質であり、好ましくは、ヒトタンパク質であり、当業者によく知られている。IL-1α(インターロイキン-1αまたはIL-1アルファとして知られる)およびIL-1β(インターロイキン-1βまたはIL-1ベータとして知られる)は、技術分野で知られる方法によって、例えば免疫学的アッセイを用いることによって、より好ましくは実施例にて述べられるようにELISAアッセイを用いることによって、または実施例にて述べられるようにIL-1サイトカインmRNAを測定することによって、測定されてよい。IL-1αおよびIL-1βは炎症促進性サイトカインとして知られる。
【0203】
したがって、好ましい態様では、対象は、工程i) 繊維芽細胞の増殖を測定する、場合によっては繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量を測定する、工程を実施することにより、皮膚創傷治癒不全の治療に応答性である、として認められる。
【0204】
好ましくはi)における繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量を測定は、次の工程を含む:
(i)繊維芽細胞を培養する;
(ii)支持体に細胞が接着すように、固体支持体上で細胞インキュベートする
(iii)細胞を(1)任意で希釈される、創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および(2)のSEGRMと接触させる、ここで、接触は細胞の接着が起こる前または後に実施され、(1)及び(2)の接触は同時または順番に実施されてよい、および
(iv)細胞培養上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量を測定する、
ここで好ましくは、方法は2D細胞培養にて実施され、少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量は、免疫学的アッセイを用いることによって、より好ましくはELISAアッセイを用いることによって、および/またはIL-1サイトカインmRNAを測定することによって、測定される。
【0205】
本発明の好ましい態様の一つでは、サンプルは創傷滲出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。さらに好ましい態様では、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0206】
細胞の培養は、好ましくは約20℃から40℃で実施され、より好ましくは25℃から38℃、更により好ましくは約37℃で実施される。
【0207】
皮膚創傷から得られた創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルの存在下で繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の測定は、実施例に示したように実施してよい。本願において、アッセイは「ECM形成」、「繊維芽細胞由来マトリックス」または「3D繊維芽細胞由来マトリックス」アッセイとして称される。アッセイ用に、初代哺乳類皮膚繊維芽細胞のような初代繊維芽細胞であってよい繊維芽細胞、または繊維芽細胞株の繊維芽細胞が使用され、好ましくは初代繊維芽細胞が使用される。実施例において、線維芽細胞は、支持体、好ましくはゼラチンのような接着増強剤で前もってコートされた支持体上に播かれる。例えば、コーティングは、ゼラチンのような接着増強剤を含む溶液または懸濁液と支持体をインキュベートすることにより達成できる。実施例では、0.2%ゼラチン溶液が成功的に用いられた。好ましくは、細胞をコンフルエントに達するまで培養する。その後、細胞は(i)マトリックス促進サプリメント、(ii)任意で希釈される、創傷滲出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および(iii)(2)のSEGRMと接触し、(i)、(ii)および(iii)は同時にまたは順番に接触される。例えば、マトリックス促進サプリメント、好ましくはビタミンCまたはナトリウム塩のようなビタミンCの生理学的に許容可能な塩、または、2-ホスホアスコルビン酸またはその生理的に許容可能な塩、およびEGFとインスリンの組み合わせを、例えばピペッティングおよび場合によっては優しく混ぜることによって細胞に加える。任意で希釈される、創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルは、同時にまたは順番に接触して良く、(2)のSEGRMは同時にまたは順番に加えられる。例えば、任意で希釈される創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、マトリックス促進サプリメントと混合して良く、混合物を細胞に加えてよく、(2)のSEGRMをその後に加える。代替えとしては、任意で希釈される創傷滲出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルを、マトリックス促進サプリメントおよび/または(2)のSEGRMと、同時に別々に、または後で別々に、または前もって別々に加えてもよい。 その後同時でなく接触させる場合、(i)、(ii)および(iii)の構成要素を好ましくは1時間以内接触させる。細胞をその後、好ましくは12時間から20日インキュベートし、培地を場合によっては少なくとも一度、場合によっては希釈される創傷滲出液または創傷バイオフィルムおよびマトリックス促進サプリメントで補充された新鮮な培地で交換する。実施例では、培地をインキュベーションの4日後一度交換した。3次元繊維芽細胞由来マトリックスが形成されるように、固体支持体は好ましくは空間を埋め、3D細胞培養ができるような少なくとも一つの空洞を含む。その後、繊維芽細胞由来マトリックスを、細胞の固定と総タンパク質量を測定することにより、測定する。細胞を、例えば、パラホルムアルデヒドを用いて固定して良い。さらに、スルホローダミンBのような適切な染色剤を、細胞外マトリックスの形成を含む、繊維芽細胞の量、好ましくは細胞数を測定するために使用して良い。細胞外マトリックスの形成を含む染色された細胞を、例えば、染色剤に依存する適切な波長で吸光または蛍光を測定することによって測定してよい。ネガティブコントロールサンプル用に、(2)のSEGRMが存在しない対応溶液を創傷滲出液または創傷バイオフィルムの追加に加えてもよく、又は創傷滲出液または創傷バイオフィルムのみを加える。好ましくは、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0208】
よって、方法の工程は、好ましくは次の工程を含む:
(i) 繊維芽細胞を支持体、好ましくは、ゼラチンのような接着増強剤であらかじめコートされた支持体、に播く:
(ii) 細胞を支持体上で培養する、好ましくはコンフルエントに達するまで培養する、
(iii) 細胞を(i)マトリックス促進サプリメント、(ii)任意で希釈される、創傷滲出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、(iii)(2)のSEGRM、と接触させる、ここで、(i)および(ii)は同時にまたは順番に接触してよい、
(iv) 細胞を固定し総タンパク質量を測定するなどによって、繊維芽細胞由来マトリックスの量を測定する、
好ましくは、ここで、方法は3D細胞培養において実施される。
【0209】
本発明の一つの好ましい態様において、サンプルは創傷滲出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。さらに好ましい態様では、サンプルは創傷滲出液サンプルである。
【0210】
「繊維芽細胞由来マトリックス」または「FDM」は、例えばマトリックス促進サプリメントの存在下で、マトリックス形成を招く環境において、生きた繊維芽細胞によって形成される細胞外マトリックス(ECM)として理解される。FDMは、実施例に記載のように入手可能である。特に、FDMは、(i)ゼラチンのような接着増強剤であらかじめコートされた支持体に繊維芽細胞を播く、(ii)好ましくはコンフルエントに達するまで、細胞を支持体上で培養する、(iii)ビタミンCまたはその生理学的に許容可能な塩、または、2-ホスホ-L-アスコルビン酸又はその生理学的に許容可能な塩、またはEGFおよびインスリンの組み合わせに接触させる、ことにより得ることができる。
【0211】
「マトリックス促進サプリメント」は、in vitro細胞培養において、生きた繊維芽細胞による、繊維芽細胞由来マトリックスの形成を促進する、化合物または組成物として理解される。適切なマトリックス促進サプリメントは、ビタミンCまたはナトリウム塩のようなビタミンCの生理学的に許容可能な塩、または、2-ホスホ-L-アスコルビン酸またはその生理学的に許容可能な塩、およびEGFとインスリンの組み合わせ、と同様に、溶液または懸濁液のような化合物を含む組成物、である。EGFとインスリンの組み合わせは、例えばEGFまたはインスリンをそれぞれ含む別々の溶液として細胞培養に別々に供給されてよく、または、例えばEGFとインスリンを含む溶液として一緒に提供されてもよい。
【0212】
「接着増強剤」は、細胞の生存率を実質的に邪魔しない、プラスチック支持体のような固体支持体に細胞が接着することを増強する物質である。好ましい態様では、接着増強剤は、ゼラチンまたはフィブロネクチン、より好ましくはゼラチンである。
【0213】
「2D細胞培養」は、平面状または実質的に平面状の表面において細胞を培養する細胞培養として理解される。好ましい態様では、2D細胞培養は接着細胞の培養である。
【0214】
「3D細胞培養」は、平面状でない、または実質的に平面状でない表面上に細胞を培養する細胞培養として理解される。好ましい態様では、3D細胞培養は、接着細胞の培養および/またはECMのような、マトリックス内の細胞培養であり、特にFDMである。
【0215】
「支持体」または「固体支持体」は、好ましくは、チップ、マイクロアレイやナノアレイのようなアレイ、マルチウェルプレートのようなプレート、またはディッシュから選ばれる。細胞培養への適用には、固体支持体が細胞を培養するために好ましくは適切であり、例えば支持体はプラスチック支持体であってよい。
【0216】
「創傷滲出液」は皮膚創傷の内部および上部にある細胞外の液体として理解される。創傷滲出液は「リキッドバイオプシー」としても称される。
【0217】
「創傷バイオフィルム」は、コロニーを形成することができる微生物による皮膚創傷の感染から生じる物質として理解される。典型的には、創傷バイオフィルムは粘着性または粘着様物質である。創傷バイオフィルムは、バクテリア、真菌類、酵母類、藻類および他の微生物から選ばれる微生物、および壊死細胞を含む。創傷バイオフィルムは、微生物の所定の種が粘着性または粘着様物質の分泌により皮膚創傷の表面に付着するとき形成される。例えば、創傷バイオフィルムサンプルは、創傷表面の鋭い外科的デブ―リードマン、または綿性の綿棒またはナイロンが集まった綿棒のような綿棒、または創傷被覆材で創傷表面をふく、ことにより得てよい。
【0218】
「創傷滲出液サンプル」または「WE」は固体の皮膚創傷から得られる創傷滲出液のサンプルとして理解される。創傷滲出液サンプルを得る方法は、技術分野で知られている。例えば、創傷滲出液サンプルは、物理的または化学的方法によって得てよく、特に、陰圧ドレナージ装置を用いることによる皮膚創傷に陰圧をかけることや、毛管力を用いる方法、フィルム被覆材または膜に創傷滲出液を集めること、創傷滲出液を注射器に集めること、吸収ビーズのような吸収材またはフィルターを適用すること、綿性の綿棒またはナイロンが集まった綿棒のような綿棒を用いること、によって得てよい。ここで特に、フィルム被覆材または膜はセルロース層であり、および/または、吸収材はセルロース層である。好ましいセルロース層は、ナノセルロース層である。創傷滲出液サンプルの量は、様々であってよく、1μLから1L、1mLから1L、10mLから1Lのような1nLから1L、10nLから1L、100nLから1Lの範囲であってよい。例えば、実施例で調査した創傷滲出液サンプルは400mLまでの量であり、典型的には0.1から100mL、特に、1から50mLであった。創傷滲出液サンプルは、サンプルを得た後または保存後直接発明の方法に用いてよく、特に、発明の方法に使用する前に、-20℃または-80℃のような、4℃未満、0℃未満、または10℃未満で保存されてよい。
【0219】
「創傷バイオフィルムサンプル」または「WB」は固体の皮膚創傷から得られる創傷バイオフィルムのサンプルとして理解される。創傷バイオフィルムサンプルを得る方法は、技術分野で知られている。例えば、創傷バイオフィルムサンプルは、鋭い外科的デブリードマンによって、または綿性の綿棒またはナイロンが集まった綿棒のような綿棒や創傷被覆材で創傷の表面をふくこと、によって得てよい。創傷バイオフィルムサンプルの量は、様々であってよく、1μLから10mL、1μLから1mL、10μLから1mLのような1nLから1L、10nLから1L、100nLから1Lの範囲であってよい。創傷バイオフィルムの湿重量は、様々であってよく、1mgから10g、10mgから10g、100mgから10g、または1gから10gのように、10μgから10g、100μgから10gの範囲であってよい。創傷バイオフィルムサンプルは、サンプルを得た後または保存後直接発明の方法に用いてよく、特に、発明の方法に使用する前に、4℃未満、0℃未満、または10℃未満で保存されてよい。創傷バイオフィルムサンプルは、細胞培養培地またはバッファー、特にサンプルの重量の5から10倍の液体、のような適切な液体で抽出されることができる。
【0220】
線維芽細胞の増殖および繊維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成の測定に関する上記アッセイが、本発明の上記態様の何れかの皮膚創傷治癒不全の治療および/または予防に応答性である対象を確実に認めることができることを、驚くべきことに見出した。
【0221】
さらに、応答性である対象の特定の正確さは、繊維芽細胞の増殖の測定、および任意で少なくとも一つのIL-1サイトカインの量の測定、の両方の場合において改善された。よって、より好ましい態様において、工程i)において測定された繊維芽細胞の増殖の値、および工程ii)において測定された繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)のSEGRMが存在しない条件で確立されたコントロール値を少なくとも20%超える場合、および任意で工程 i)において得られた繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である場合に、対象は皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる。
【0222】
よって、更に好ましい態様において、工程i)において測定された繊維芽細胞の増殖の値、および工程ii)において測定された繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)のSEGRMが存在しない条件で確立されたコントロール値を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、100%またはそれ以上超える場合に、及び、任意で、工程i)において得られた繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である場合に、対象は皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる。
【0223】
よって、さらに好ましい態様では、工程i)において測定された繊維芽細胞の増殖の値、および工程ii)において測定された繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)のSEGRMが存在しない条件で確立されたコントロール値を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、100%またはそれ以上超える場合に、及び、任意で工程i)において得られた繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値より少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上小さい場合に、対象は皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる。
【0224】
コントロール値は、並行して測定してよく、または独立して確立してよく、好ましくは並行で測定する。
【0225】
さらに、それぞれの対象から得た創傷浸出液または創傷バイオフィルムにおいて、マクロファージ/繊維芽細胞共培養における、マクロファージM1およびM2マーカーおよび/またはサイトカインマーカーIL-1α、IL-1β、および/またはTNFアルファを測定する一つ以上の追加アッセイを含むことにより、正確性と確実性をさらに増加することができる。これらのM1およびM2マーカーは、細胞表面タンパク質マーカー、マクロファージの上清のタンパク質マーカーまたはマクロファージのmRNAマーカーであってよい。
【0226】
マクロファージは、組織常在専門的ファゴサイトであり、抗原提示細胞(APC)であり、循環する末梢血単球から分化する。異なる表現型の活性化したマクロファージは、当業者により、M1マクロファージおよびM2マクロファージに分類される。M1マクロファージは活性化したマクロファージであり、急性の炎症表現型を有する免疫エフェクター細胞を含む。これらは、バクテリアに対して非常に攻撃的であり、多量のサイトカインを産生する。M2マクロファージは、代替え的に活性化され、抗炎症である。
【0227】
「M2マーカー」はM2マクロファージに特異的なタンパク質マーカーとして理解される。好ましくは、マーカーはマクロファージから分泌される。適切なM2マーカーは当該分野で知られており、CCL22およびCCL18から好ましくは選ばれる。マーカーは当該分野で知られる方法によって測定され、例えば免疫学的アッセイを用いて測定され、更に好ましくはELISAアッセイを用いて測定される。
【0228】
「M1マーカー」はM1マクロファージに特異的なタンパク質マーカーとして理解される。好ましくは、マーカーはマクロファージから分泌される。適切なM1マーカーは当該分野で知られており、CXCL10およびIL-23p19から好ましくは選ばれる。マーカーは当該分野で知られる方法によって測定され、例えば免疫学的アッセイを用いて測定され、更に好ましくはELISAアッセイを用いて測定される。
【0229】
「M1細胞表面マーカー」はマクロファージの表面に発現する、M1マクロファージに特異的な、タンパク質マーカーとして理解される。適切なM1細胞表面マーカーは、当該分野で知られており、CD38、CD64およびCD197から好ましくは選ばれる。細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布は、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって測定され、特にFACS解析、ここで典型的には細胞数頻度分布が測定される。
【0230】
「M2細胞表面マーカー」はマクロファージの表面に発現する、M2マクロファージに特異的な、タンパク質マーカーとして理解される。適切なM2細胞表面マーカーは、当該分野で知られており、CD200レセプター(CD200R)、CD206およびCD209から好ましくは選ばれる。細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布は、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイによって測定され、特にFACS解析、ここで典型的には細胞数頻度分布が測定される。
【0231】
「M2マーカーmRNA」はマクロファージによって発現される、M2マクロファージに特異的な、mRNAとして理解される。適切なM2マーカーmRNAは、当該分野で知られており、CD200レセプター(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から好ましくは選ばれる。マーカーmRNAの量は当該分野で知られる方法によって測定されてよい。好ましくはその量は、任意でラベルされた、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブを、ハイブリダイゼーションに導く条件下で、マクロファージRNAに接触させ、ハイブリダイズしたプローブを検出することにより測定してよい。
【0232】
「M1マーカーmRNA」はマクロファージによって発現される、M1マクロファージに特異的な、mRNAとして理解される。適切なM1マーカーmRNAは、当該分野で知られており、CD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から好ましくは選ばれる。好ましくはその量は、任意でラベルされた、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブを、ハイブリダイゼーションに導く条件下で、マクロファージRNAに接触させ、ハイブリダイズしたプローブを検出することにより測定してよい。
【0233】
M1マーカー/M2マーカーの比は、繊維芽細胞の増殖測定、繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス(FDM)形成の測定およびケラチノサイトの増殖測定、に関する上述した一つ以上のアッセイと組み合わせて,応答性である対象を示す。特に、上昇した、M1マーカー/M2マーカー、M1細胞表面マーカー/M2細胞表面マーカー、M1マーカーmRNA/M2マーカーmRNA、の比は、応答しない対象を示し、低い、M1マーカー/M2マーカー、M1細胞表面マーカー/M2細胞表面マーカー、M1マーカーmRNA/M2マーカーmRNA、の比は応答性である対象を示す。
【0234】
さらに、マクロファージ/繊維芽細胞共培養におけるマクロファージおよび/または繊維芽細胞により分泌される炎症促進性サイトカイン、IL1アルファ、IL1ベータ、TNF-アルファの量は、創傷治癒をモニターするためと同様に治癒する皮膚創傷または治癒しない皮膚創傷を特定するために特に予測的であることが分かった。特に、大量のこれらのサイトカインが、治癒する創傷からのWEに比較して、治癒しない創傷からのWEが存在するときに分泌されることが分かった。サイトカイン、IL1アルファ、IL1ベータ、TNF-アルファはタンパク質であり、好ましくはヒトのタンパク質であり、当業者によく知られている。IL1アルファ(インターロイキン-1αまたはIL-1αとしても知られる)、IL1ベータ(インターロイキン-1αまたはIL-1βとしても知られる)、TNF-アルファ(腫瘍壊死因子-アルファまたはTNF-αとしても知られる)は、当該分野で知られる方法によって測定されてよく、例えば、実施例で述べるように、免疫学的アッセイ、より好ましくはELISAアッセイを用いることによって測定され、または、IL1アルファ、IL1ベータ、TNF-TNF-アルファのmRNA発現を測定することによって測定される。IL1アルファ、IL1ベータ、TNF-アルファは炎症促進性サイトカインとして知られる。
【0235】
したがって、本発明のより好ましい態様では、追加で、工程iiia)および/または、次の工程iiib)からiiie)の一つ、二つ、三つ、四つを実施する:
iiia)ケラチノサイトの増殖を以下の存在下で測定する:
(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩
iiib)以下とともにインキュベートしたマクロファージの上清における、一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーの量を測定する:
(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩
ここで、マクロファージは繊維芽細胞とともに共培養され、および、
一つ以上のM1マーカーはCXCL10およびIL-23p19から選択され、一つ以上のM2マーカーはCCL22およびCCL18から選択される、
iiic)以下とともにインキュベートされたマクロファージ上の一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定する:
(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩
ここでマクロファージは繊維芽細胞ととともに共培養され、および
一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選択され、一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD200レセプター、CD206およびCD209から選択される、
iiid)以下とともにインキュベートしたマクロファージにおける一つ以上のM1マーカーmRNAおよびM2マーカーmRNAの発現レベルを測定する:
(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩
ここでマクロファージは繊維芽細胞ととともに共培養され、および
一つ以上のM1マーカーmRNAはCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、一つ以上のM2マーカーmRNAはCD200レセプター(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれる、
iiie)以下とともにインキュベートされるマクロファージの上清における一つ以上のサイトカインマーカーの量を測定する:
(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩
ここでマクロファージは繊維芽細胞ととともに共培養され、および
一つ以上のサイトカインマーカーはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれ、
および
ここで、工程i)において測定された繊維芽細胞の増殖の値、および工程ii)において測定された繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値、および/または、工程iiia)でのケラチノサイトの増殖の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値を少なくとも20%超える場合に、また、任意で、工程i)において得られた繊維芽細胞の上清のIL-1サイトカインマーカーの少なくとも一つの量の値が(2)の選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である場合に、
および/または、以下の一つ以上が該当する:
iiib)で得られる一つ以上のM2マーカーの量に対する一つ以上のM1マーカーの量の比が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である、
iiic)で得られる一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布に対する一つ以上のM1細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布の比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満であり、特にここで比率は、CD38/CD209比率、CD197/CD209比率およびCD197/CD206比率から選ばれる、
iiid)で得られる一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルに対する一つ以上のM1マーカーmRNAの発現レベルの比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である、
iiie)で得られる値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値未満である、
場合に、
対象は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での治療に応答性であると認められる。
【0236】
好ましくは、工程i)において測定された繊維芽細胞の増殖の値、および/または工程ii)において測定された繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値、および/または、工程iiia)でのケラチノサイトの増殖の値が、(2)の少なくとも一つのSEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値を少なくとも20%超える場合に、また、任意で、工程i)において得られた繊維芽細胞の上清の少なくとも一つのIL-1サイトカインマーカーの量の値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値より低い場合、例えば少なくとも5%,10%、15%、20%、30%、40%、50%、またはそれそれ以上低い場合、
および/または、
iiie)で得られた値が低い、例えば少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値より低い場合:
に、対象は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での治療に応答性であると認められる。
【0237】
より好ましい態様では、iiie)でのサイトカインマーカーがIL-1αおよびIL-1βから選ばれ、よりさらに好ましくは、iiie)でのサイトカインマーカーはIL-1βである。
【0238】
次のM1M1細胞表面マーカー/M2細胞表面マーカー比率は応答性に対して予測的であることが分かった:(2)のSEGRMが存在しない条件で確立されたコントロール値より低いCD38/CD209比率、CD197/CD209比率、またはCD197/CD206が、SEGRMでの治療に応答性である対象を認める。
【0239】
したがって、他の好ましい態様では、量および/または細胞数頻度分布は、CD38/CD209比率、CD197/CD209比率、およびCD197/CD206比率から選ばれる。
【0240】
細胞数頻度分布は、個体群内で、与えられたマーカーに陽性である細胞の百分率を測定することによって測定されてよく、FACS解析において最もよく使用されるリードアウトである。代替えとしては、マーカー用にラベルされた結合物質を用いるとき、個々の細胞当たりの細胞表面上のラベルされた分子の数を代理として、細胞表面発現の量の測定によって量は測定されてよく、例えば、平均蛍光強度によって測定される。
【0241】
好ましい態様では、皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとともにインキュベートしたマクロファージの上清における一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーの量の測定は次の工程を含む:
(i)(a)2D細胞培養中のヒト皮膚繊維芽細胞、または、(b)繊維芽細胞マトリックス、とともに初代ヒト単核細胞を共培養する、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベートする、任意でCD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いる、
(iii)細胞を、任意で希釈される、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させる、
(iv)細胞培養上清における一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーの量を測定する、
好ましくは、ここで、一つ以上のM1マーカーは、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、および/または、一つ以上のM2マーカーはCCL22およびCCL18から選ばれ、より好ましくは、マーカーは免疫学的アッセイ、更に好ましくはELISAアッセイを用いて、測定される。
【0242】
本発明の好ましい態様の一つでは、サンプルは創傷浸出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0243】
例えば、初代ヒト単核細胞は、2D細胞培養におけるヒト皮膚繊維芽細胞、または繊維芽細胞由来マトリックス、とともに共培養されてよい。繊維芽細胞由来マトリックスを生成するための方法は、実施例同様に、上述されている。その後、細胞をマクロファージが分化するまでインキュベートする。例えば、CD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いることができる。さらに、細胞を、任意で希釈される創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させ、例えば細胞に対してサンプルをピペッティングすることによって接触させ、任意で優しく攪拌する。化合物を、マクロファージが分化した後、例えば4から7日後、加える。さらに、細胞を、好ましくは1時間から100時間、インキュベートする。その後、細胞培養上清中の一つ以上のM1マーカーと一つ以上のM2マーカーの量を測定する。上清は典型的にはこのような目的のために回収され、マーカーは免疫学的アッセイのような適切なアッセイを用いて測定される。例えばELISAアッセイを使用して良い。
【0244】
他の好ましい態様では、皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベートしたマクロファージ上の一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布の測定は以下の工程を含む:
(i)(a)2D細胞培養中のヒト皮膚繊維芽細胞、または、(b)繊維芽細胞マトリックス、とともに初代ヒト単核細胞を共培養する、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベートする、任意でCD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いる、
(iii)細胞を、任意で希釈される、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させる、
(iv)マクロファージ細胞表面上の一つ以上のM1細胞表面マーカーと一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定する。
【0245】
本発明の一つの好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0246】
例えば、初代ヒト単核細胞は、2D細胞培養におけるヒト皮膚繊維芽細胞、または繊維芽細胞由来マトリックス、とともに共培養されてよい。繊維芽細胞由来マトリックスを生成するための方法は、実施例同様に、上述されている。その後、細胞をマクロファージが分化するまでインキュベートする。例えば、CD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いることができる。さらに、細胞を、任意で希釈される創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させ、例えば細胞に対してサンプルをピペッティングすることによって接触させ、任意で優しく攪拌する。化合物を、マクロファージが分化した後、例えば4から7日後、加える。さらに、細胞を、好ましくは1時間から100時間、インキュベートする。その後、マクロファージの細胞表面上の一つ以上のM1マーカーと一つ以上のM2マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定する。例えば、細胞を回収し、FACS解析に用いてもよい。平均蛍光強度の幾何学的平均を、表面マーカー発現を定量するために用いることができる。
【0247】
好ましくは、一つ以上のM1細胞表面マーカーは、CD38、CD64、およびCD197から選ばれ、および/または一つ以上のM2細胞表面マーカーは、CD200レセプター(CD200R)、CD206およびCD209から選ばれ、より好ましくは、細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布は、免疫学的アッセイおよび/または蛍光アッセイ、特にFACS解析によって測定される。
【0248】
次のM1細胞表面マーカー/M2細胞表面マーカー比率は応答性に対して予測的であることが分かった:CD38/CD209比率、CD197/CD209比率、またはCD197/CD206比率。(2)のSEGRMが存在しない条件で確立されたコントロール値より低いCD38/CD209比率、CD197/CD209率、またはCD197/CD206比率は、対象がSEGRMでの治療に応答性であると認める。
【0249】
したがって、他の好ましい態様では、量および/または細胞数頻度分布の比率は、CD38/CD209比率、CD197/CD209比率、またはCD197/CD206比率から選ばれる。
【0250】
よって、他の好ましい態様では、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD38から選ばれ、一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD209から選ばれ、または、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD197から選ばれ、一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD209およびCD206から選ばれる。
【0251】
一つの好ましい態様では、工程(iv)は、マクロファージを、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する、結合物質、好ましくは抗体、と接触させることを含み、ここで結合物質は任意でラベルされ、特に蛍光標識でラベルされる。また工程(iv)は、マクロファージに結合する結合分子の量を測定する、特に平均蛍光強度を測定する、これにより細胞表面マーカーの量を測定することを含む。例えば、表面マーカーを特異的に認識し、蛍光ラベルを含む、抗体を使用して良い。
【0252】
一つの好ましい態様では、工程(iv)は、マクロファージを、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する、結合物質、好ましくは抗体、と接触させることを含み、ここで結合物質は任意でラベルされ、特に蛍光標識でラベルされる。また工程(iv)は、細胞群内での、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーのそれぞれに陽性である細胞の百分率を測定し、特にFACS解析を実施し、これにより細胞表面マーカーの細胞数頻度分布を測定することを含む。例えば、表面マーカーを特異的に認識し、蛍光ラベルを含む、抗体を使用して良い。
【0253】
マーカータンパク質の結合物質としてのタンパク質の測定は、例えばイーストツーハイブリッドスクリーニングシステムのような、タンパク質またはポリペプチドに特異的に作用するタンパク質を特定し得るための、複数の既知の方法の何れかを用いて行うことができる。マーカーを特異的に認識する結合物質は、その対応する標的分子に対して少なくとも10l/molの親和性を好ましくは有する。マーカーを特異的に認識する結合物質は、その標的マーカー分子に対して、好ましくは10l/mol、より好ましくは10l/molの親和性を有する。当業者が認識するように、特異的という用語は、サンプル中に存在する他の生物分子が、マーカーを特異的に認識する結合物質に顕著に結合しないことを示すために用いられる。好ましくは、標的マーカー分子以外の生物分子に結合するレベルは、それぞれ、標的マーカー分子への親和性のたった10%以下、より好ましくはたった5%以下である結合親和性となる。好ましい特異的結合物質は、特異性と同様に親和性の最小基準より上であることの両方を満たす。
【0254】
マーカーを特異的に認識する結合物質は、好ましくはマーカーと反応する抗体である。抗体という用語はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、そのような抗体の抗原結合フラグメント、単鎖抗体と同様に、抗体の結合ドメインを有する遺伝子コンストラクトを示す。用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、F(ab')2およびFabフラグメントのような抗体のフラグメント、と同様に自然に生じるまたは組み換え的に生成される結合パートナーを含み、マーカータンパク質に特異的に結合する分子である。基準を満たす特異的な結合物質いずれの抗体フラグメントも使用することができる。
【0255】
測定のために、個体から得たサンプルを、結合物質マーカー複合体の形成に適切な状況の下、問題のマーカーを特異的に認識する結合物質とインキュベートする。当業者は進歩的な努力なしに適切なインキュベーションコンディションが簡単にわかるので、このような状況を特定する必要はない。結合物質マーカー複合体の量は測定され、本発明の方法と使用において用いられる。当業者が認識しているように、特定の結合物質マーカー複合体の量の測定のための方法が複数あり、すべては関連するテキストブック(非特許文献12等)に詳細が記載されている。
【0256】
特に、マーカーへのモノクローナル抗体は、定量的(マーカーの量または濃度を測定する)免疫学的アッセイにおいて用いられる。
【0257】
例えば、マーカーはサンドウィッチタイプのアッセイフォーマットにおいて検出されてよい。このようなアッセイにおいて、第一の特異的結合物質は当該マーカーを一側面上でとらえ、直接的または間接的に検出可能なようにラベルされた第二の特異的結合物質は他の側面上で用いられる。第二の特異的結合物質は、酵素、染料、放射性核種、発光基、蛍光基、またはビオチンなどのような、検出可能なレポーター部位またはラベルを含んでよい。いずれのレポーター部位またはラベルも、そのシグナルが洗浄後支持体上に残っている結合分子の量に直接関連または比例する限り、使用することができる。固体支持体に結合したままの第2結合物質の量を、その後、特定の検出可能なレポーター部位またはラベルのための適切な方法を用いて測定する。放射性基には、シンチレーション計測またはオートラジオグラフィー法が一般に適切である。抗体―酵素複合体は、さまざまなカップリング技術を用いて調製される。分光学的方法が、染料(例えば酵素反応の比色製品を含む)、発光基および蛍光基を検出するために用いられる。ビオチンをアビジンまたはストレプトアビジンを用いて、通常は放射性または蛍光基または酵素など、異なるレポーター基に結合させて、検出することができる。酵素レポーター基を、一般に特定の期間の時間の間、基質の追加によって検出し、反応物の分光学的、分光光度的または他の解析を続いて行う。標準および標準添加を、よく知られる技術を用いて、サンプル中の抗原レベルを測定するために用いることができる。
【0258】
本願で述べるマーカータンパク質の定量測定のために、本発明のマーカータンパク質を測定するための免疫学的アッセイには、例えば、ELISA、酵素免疫測定法(EIA)、電気化学発光免疫測定法が含まれる。
【0259】
他の好ましい態様では、皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとともにインキュベートしたマクロファージでの、一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルを測定は、下記の工程を含む:
(i)初代ヒト単球細胞を(a)2D細胞培養中のヒト皮膚繊維芽細胞または(b)繊維芽細胞由来マトリックスとともに共培養する、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベートする、任意でCD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いる、
(iii)細胞を、任意で希釈される、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させる、
(iv)マクロファージでの一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルを測定する。
【0260】
本発明の一つの好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0261】
好ましくは、一つ以上のM1マーカーmRNAはCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、および/または一つ以上のM2マーカーmRNAはCD200レセプター(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれ、さらにここで、方法は、マーカーmRNAに特異的に結合するプローブ(プローブは任意でラベルされてよく)が、ハイブリダイゼーションに導く条件のもとマクロファージRNAと接触することを含み、また、ハイブリダイズしたプローブを検出することを含む。
【0262】
たとえば、初代ヒト単球細胞を2D細胞培養でのヒト皮膚繊維芽細胞と、または繊維芽細胞由来マトリックスと共培養してよい。繊維芽細胞由来マトリックスを生成するための方法は、上記され、同様に実施例に記される。その後、細胞をマクロファージ分化が達成されるまでインキュベートする。例えば、マクロファージ分化の細胞表面マーカーとしてCD163を用いることができる。さらに、細胞を、任意で希釈される創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと、例えばサンプルを細胞にピペッティングする、任意で優しく攪拌することによって、接触させる。化合物を、マクロファージが分化した後、例えば4から7日後、加える。さらに、細胞を、好ましくは1から100時間インキュベートする。その後、マクロファージにおける一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAの発現を測定する。例えば、細胞を回収し、適切なプローブを用いてmRNA発現レベルを測定する。例えば、アクチンやGAPDHのようなハウスキーピング遺伝子の発現レベルを測定し、M1またはM2マーカーRNAの発現レベルをハウスキーピング遺伝子に対する発現レベルとして測定してよい。
【0263】
他の好ましい態様では、皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルとインキュベートしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる一つ以上のサイトカインマーカーの量の測定は以下の工程を含む:
(i)初代ヒト単球細胞を(a)2D細胞培養中のヒト皮膚繊維芽細胞または(b)繊維芽細胞由来マトリックスとともに共培養する、
(ii)マクロファージ分化が達成されるまで細胞をインキュベートする、任意でCD163をマクロファージ分化の細胞表面マーカーとして用いる、
(iii)細胞を、任意で希釈される、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと接触させる、
(iv)細胞培養上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる一つ以上のサイトカインマーカーの量を測定する、
好ましくは、ここでサイトカインマーカーを免疫学的アッセイ、より好ましくはELISAアッセイを用いて測定する。
【0264】
本発明の一つの好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。他の好ましい態様では、サンプルは創傷バイオフィルムサンプルである。より好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0265】
たとえば、初代ヒト単球細胞を2D細胞培養でのヒト皮膚繊維芽細胞と、または繊維芽細胞由来マトリックスと共培養してよい。繊維芽細胞由来マトリックスを生成するための方法は、上記され、同様に実施例に記される。その後、細胞をマクロファージ分化が達成されるまでインキュベートする。例えば、マクロファージ分化の細胞表面マーカーとしてCD163を用いることができる。さらに、細胞を、任意で希釈される創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプルと(2)のSEGRMと、例えばサンプルを細胞にピペッティングする、任意で優しく攪拌することによって、接触させる。化合物を、マクロファージが分化した後、例えば4から7日後、加える。さらに、細胞を、好ましくは1から100時間インキュベートする。その後、細胞培養上清中の、一つ以上のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αの量を測定する。上清は、このような目的のために典型的には回収され、サイトカインマーカーを免疫学的アッセイのような適切なアッセイを用いて測定する。例えば、ELISAが用いられる。好ましい態様では、サンプルは創傷浸出液サンプルである。
【0266】
マクロファージの上清中のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αの量は、(2)の化合物での治療に応答性である患者を示す。よって、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αの量として得られた値が(2)の化合物が存在しない条件で確立されたコントロール値より低い場合、患者は(2)の化合物での治療に応答性であると認められる。
【0267】
本発明の治療的または予防的使用のためのSEGRM、または本発明のキットまたはキットオブパーツとして含まれるSEGRMは、好ましくは薬学的組成物である。薬学的組成物は、それぞれの有効成分を含み、任意で、一つ以上の薬学的に許容可能な担体および/または薬学的に許容可能な賦形剤を含む。有効成分はSEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0268】
「薬学的に許容可能な担体」は、生物に著しい刺激を引き起こさず、投与した有効成分の生物学的活性と特性を止めない、担体または希釈剤を意味する。使えることができる担体は、例えば、固体、液体または気体である。固体担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸が含まれる。液体担体の例は、砂糖シロップ、ピーナッツオイル、オリーブオイル、および水である。気体担体の例には、二酸化炭素や窒素が含まれる。
【0269】
「薬学的に許容可能な賦形剤」は、化合物の投与をより簡単にするための薬学的組成物に加える不活性な物質を意味する。限定しないが、賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種砂糖、各種でんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0270】
本発明の上記様相の何れかの一つの好ましい態様では、SEGRMは全身用、好ましくは経口または静脈投与用に剤形され、又は局所投与用、特に局部、粘膜、目、皮内または皮下投与用に剤形される。例えば、マプラコラットまたはその薬学的に許容可能な塩の投与用局所製剤は、当該分野において知られており、特許文献39に詳細が述べられている。さらに、当業者は局所投与、特に局部、粘膜、目、皮内または皮下投与のためのさらなる製剤を提供するための技術を認識している。例えば、SEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩は、創傷被覆材または絆創膏に組み込まれたものとして、またはゲル、半固体ゲル、クリーム、ローション、外用薬、スプレー、フォーム、散体、軟膏、リポソーム製剤、またはナノ粒子製剤、またはマイクロニードルによる投与用に剤形されてよい。
【0271】
したがって、本発明のさらに好ましい態様において、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、
(i)全身用、好ましくは経口または静脈投与用に剤形される、または、
(ii)局所投与用、特に、局部、粘膜、目、皮内または皮下投与用、に剤形される。
【0272】
本発明の一つの好ましい態様では、本発明の使用のためのSEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩は、局所投与用、特に、局部、粘膜、目、皮内または皮下投与用、に剤形される。
【0273】
マプラコラットまたはその薬学的に許容可能な塩および関連するSEGRMの投与用局所製剤は、当該分野において知られており、特許文献39に詳細が記載されている。このような製剤は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)およびa)オレイルアルコール、b)オクタン酸セテアリル、c)植物油、を含む。より好ましい態様では、SEGRMは特許文献39に開示のSEGRMであり、特にマプラコラットまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0274】
したがって、本発明のさらに好ましい態様では、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩は、局所投与用に剤形され、医薬製剤は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)およびa)オレイルアルコール、b)オクタン酸セテアリル、c)植物油、を含む。
【0275】
より好ましい態様では、医薬製剤は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)およびa)2から50重量%のオレイルアルコール、b)2から50重量%のオクタン酸セテアリル、c)2から50重量%の植物油、を含み、
好ましくはここで、
植物油は、ダイズ油、オリーブ油、ゴマ油、ヒマシ油またはピーナッツオイル、であり、または、
医薬製剤はさらに、d)プロピレングリコールおよびe)グリセロールを含み、または、
医薬製剤は3から15重量%のオレイルアルコールを含み、または
医薬製剤は2から15重量%のオクタン酸セテアリルを含み、
医薬製剤は3から15重量%の植物油を含み、または
医薬製剤はさらに、中鎖トリグリセリド、ミネラルオイル、シクロメチコン、ステアリルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート、ポビドン、アクリル酸コポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸、および/またはトロメタモール、を含み、または、
医薬製剤はさらに、d)二酸化ケイ素を含み、または、
医薬製剤はさらに、d)ステアリン酸アルミニウムを含み、または、
医薬製剤はさらに、d)ポリプロピレングリコール、e)グリセロール、およびf)噴霧剤、を含み
医薬製剤は2から10重量%の噴霧剤を含み、または
噴霧剤は炭化水素またはヒドロフルオロアルカンであり、
少なくとも一つの医薬的に有効な化合物の水への溶解性は、20℃で、20mg/L以下であり、
医薬製剤は、2から50重量%のオレイルアルコール、3から20重量%のセテアリルオクタノアートおよび 5から20重量%の植物油、を含み、または、
医薬製剤は、3から15重量%のオレイルアルコール、2から15重量%のオクタン酸セテアリル、および 3から15重量%の植物油、を含み、または、
医薬製剤は、中鎖トリグリセリド、ミネラルオイル、シクロメチコン、ステアリルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、ポビドン、アクリル酸コポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸、および/またはトロメタモール、を含み、または、
医薬製剤は、さらに二酸化ケイ素およびステアリン酸アルミニウムを含み、
医薬製剤は、6から8重量%の噴霧剤、好ましくは、ここで噴霧剤はプロパン、ブタン、イソブタン、ヘプタフルオロプロパン、テトラフルオロエタン、ジメチルエーテル、またはこれらの混合物、を含む。
【0276】
他の好ましい態様では、医薬製剤は、少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)およa)2から50重量%のオレイルアルコール、b)2から50重量%のオクタン酸セテアリル、c)2から50重量%の植物油、を含み、ここでより好ましくは、
医薬製剤は、d)プロピレングリコールおよびe)グリセロールを含み、または、
医薬製剤は、3から15重量%のオレイルアルコール、2から15重量%のオクタン酸セテアリル、および 3から15重量%の植物油、を含み、または、
医薬製剤は、さらに、中鎖トリグリセリド、ミネラルオイル、シクロメチコン、ステアリルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート、ポビドン、アクリル酸コポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、アクリル酸、および/またはトロメタモール、を含み、または、
医薬製剤は、さらに、d)プロピレングリコールおよびe)グリセロール、およびf)噴霧剤を含み、または
医薬製剤は、2から10重量%の噴霧剤を含み、より好ましくは、ここで噴霧剤は炭化水素またはヒドロフルオロアルカンであり、またはここで噴霧剤はプロパン、ブタン、イソブタン、ヘプタフルオロプロパン、テトラフルオロエタン、ジメチルエーテル、またはこれらの混合物であり、または、6から8重量%の噴霧剤を含み、ここで噴霧剤はプロパン、ブタン、イソブタン、ヘプタフルオロプロパン、テトラフルオロエタン、ジメチルエーテル、またはこれらの混合物であり、または、
少なくとも一つの医薬的に有効な化合物の水への溶解性は、20℃で、20mg/L以下であり、
または、医薬製剤がさらに(R)-1,1,1-トリフルオロ-4-(5-フルオロ-2,3-ジヒドロベンゾフラン-7-イル)-4-メチル-2-{[-(2-メチル-5キノリル)アミノ]メチル}ペンタン-2-オール、または、
医薬製剤が2から50重量%のオレイルアルコール、3から20重量%のオクタン酸セテアリル、および5から20重量%の植物油、を含む。
【0277】
特許文献39に明確に開示されたクリーム、フォームおよびオレオゲル製剤は、特に好ましい局所製剤である。これらのクリーム、フォームおよびオレオゲル製剤は、ここに参照によって明確に組み込まれる。
【0278】
【表4】
【表5】
【表6】
【0279】
他の実施形態では、本発明は、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での治療に応答性である皮膚創傷治癒不全に罹患する対象を認めるためのin vitroの方法に関し、方法は工程i)および/またはii)を実施することを含む:
i) (1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2) 少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、線維芽細胞の増殖、および任意で繊維芽細胞の上清中のIL-1サイトカインマーカーの少なくとも一つの量、を測定する:
ii) (1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプルまたは創傷バイオフィルムサンプル、および
(2) 少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下で、繊維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成を測定する:
ここで、工程i)で測定された繊維芽細胞増殖の値、および/または工程ii)で測定された繊維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件において確立されたコントロール値より、少なくとも20%より高く、任意で、工程i)で測定されたIL-1サイトカインマーカーの少なくとも一つの量の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件において確立されたコントロール値より低い場合、対象は選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での治療に応答性であると、認められる。
【0280】
本発明のin vitroの方法の好ましい態様では、
追加で、工程iiia)および/または、以下の工程iiib)からiiie)の一つ、二つ、三つまたは四つを実施する:
iiia)(1)前記対象の皮膚創傷から得た、創傷浸出液サンプル、または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイドレセプターモジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
の存在下でケラチノサイトの増殖を測定する;
iiib)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの上清中の一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーの量を測定し、
ここで、マクロファージを繊維芽細胞と共培養し、
前記一つ以上のM1マーカーがCXCL10およびIL-23p19から選ばれ、前記一つ以上のM2マーカーがCCL22およびCCL18から選ばれる;
iiic)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージ上の、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよびまたは一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定し、
ここで、マクロファージを繊維芽細胞とともに共培養し、
前記一つ以上のM1細胞表面マーカーがCD38、CD64およびCD197から選ばれ、前記一つ以上のM2細胞表面マーカーがCD200受容体、CD206およびCD209から選ばれる;
iiid)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの、一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAの発現量を測定し、
ここで、マクロファージを繊維芽細胞とともに共培養し、
前記一つ以上のM1マーカーmRNAがCD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、前記一つ以上のM2マーカーmRNAがCD200受容体(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれる;
iiie)(1)前記皮膚創傷から得た、創傷浸出液または創傷バイオフィルムサンプル、および
(2)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩、
とともにインキュベーションしたマクロファージの上清中の、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる、一つ以上のサイトカインマーカーの量を測定し、
ここで前記対象は、工程i)で測定した、繊維芽細胞の増殖の値、および/または、工程ii)で測定した繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成の値、および/または、工程iii)で測定したケラチノサイトの増殖の値が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件で確立されたコントロール値より、少なくとも20%高い場合に、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められ、
および/または、下記条件、
・ iiib)で得られた一つ以上のM2マーカーの量に対する一つ以上のM1マーカーの量の比率が、(2)の少なくとも一つ選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
・ iiic)で得られた一つ以上のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布に対する、一つ以上のM1細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布の比率が、(2)の少なくとも一つ選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低く、特に、前記比率が、CD38/CD209比率、CD197/CD209比率およびCD197/CD206比率から選ばれる、
・ iiid)で得られた一つ以上のM2マーカーmRNAの発現レベルに対する一つ以上のM1マーカーmRNAの発現レベルの比率が、(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
・ iiie)で得られた値が(2)の少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩が存在しない条件下で確立されたコントロール値より低い、
の一つ以上が該当する場合に、前記対象は、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩での皮膚創傷治癒不全の治療に応答性であると認められる、
ことを特徴とする、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩。
【0281】
好ましい態様では、本発明のin vitroの方法は、本発明の使用のための、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩の好ましい態様の特徴により特徴づけられる。
【0282】
さらに他の態様では、本発明はキットまたはキットオブパーツに関し、
(a)少なくとも一つの選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物、および
(b)i)繊維芽細胞、
ii)複数の区切られた領域または穴を有する支持体、ここで領域または穴のサブセットは(i)接着増強剤でコートされ、および/または、(ii)繊維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填されている、
iii)マトリックス促進サプリメント、
の一つ以上を含む診断キット、
を含む。
【0283】
好ましい態様では、本発明のキットまたはキットオブパーツは、本発明の使用のための、選択的グルココルチコイド受容体モジュレーター(SEGRM)またはその薬学的に許容可能な塩の好ましい態様の特徴により特徴づけられる。
【0284】
よって、本発明の他の態様に関して述べられる好ましい態様は、本発明のこの態様にも当てはまると理解される。
【0285】
薬学的組成物、細胞、マトリックス促進サプリメントは、容器、バイアル、注射器、アンプルまたはそのようなものの中に供給されてよい。
【0286】
(b)の診断キットは、任意でさらに、下記の一つ以上を含む:
iv)ケラチノサイト
v)マトリックス促進サプリメント
vi)単球細胞、および
vii)結合物質、好ましくは一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーを特異的に認識する抗体、および/または、結合物質、好ましくは一つ以上のM1表面マーカーおよび一つ以上のM2表面マーカーを特異的に認識する抗体、および/または、一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブ
viii)結合物質、好ましくはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる一つ以上のサイトカインマーカーを特異的に認識する抗体、またはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれるサイトカインマーカーmRNAに特異的にハイブリダイズするハイブリダイゼーションプローブ。
【0287】
より好ましい態様では、(b)の診断キットはさらに、viii) 結合物質、好ましくはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる一つ以上のサイトカインマーカーを特異的に認識する抗体、またはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれるサイトカインマーカーmRNAに特異的にハイブリダイズするハイブリダイゼーションプローブ、をさらに含む。
【0288】
より好ましい態様では、サイトカインマーカーは、IL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれ、特にIL-1βである。
【0289】
好ましいM1およびM2マーカー、細胞表面マーカー、および/または、マーカーmRNAは上述される。
【0290】
一つの好ましい態様では、上記vii)の結合物質、好ましくは、抗体は、結合物質、好ましくは、一つ以上のM1細胞表面マーカーおよび一つ以上のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する抗体であり、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選ばれ、一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD200レセプター、CD206およびCD209から選ばれ、そして任意で、
結合物質、好ましくは一つ以上のM1マーカーおよび一つ以上のM2マーカーを特的に認識する抗体、および/または、一つ以上のM1マーカーmRNAおよび一つ以上のM2マーカーmRNAを認識するプローブであり、ここでMマーカーはCXCL10およびIL-23p19から選ばれ、一つ以上のM2マーカーはCCL22およびCCL18から選ばれ、一つ以上のM1マーカーmRNAはCD38、CD64、CD197、CXCL10および IL-23p19から選ばれ、一つ以上のM2マーカーmRNAはCD200レセプター(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれる。
【0291】
よって、他の好ましい態様では、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD38から選ばれかつ一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD209からから選ばれ、または、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD197からから選ばれかつ一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD209およびCD206から選ばれる。
【0292】
一つの好ましい態様では、ケラチノサイトはHaCaT細胞および初代ケラチノサイトから選ばれ、特にヒト初代ケラチノサイトである。
【0293】
より好ましい態様では、本発明で使用されるケラチノサイトは、HaCaT細胞である。
【0294】
繊維芽細胞由来マトリックス(FDM)は、(i)ゼラチンのような接着増強物質で前もってコートされた支持体上に初代ヒト皮膚繊維芽細胞を播く、(ii)好ましくはコンフルエントに達するまで支持体上で細胞を培養する、(iii)ビタミンCCまたはその薬学的に許容可能な塩、または2-ホスホ-L-アスコルビン酸またはその薬学的に許容可能な塩、またはEGFおよびインスリンの組み合わせ、のようなマトリックス促進サプリメントに細胞を接触させる、ことによって得ることができる。FDMは、in situで形成されてよく、または形成後支持体に移されてもよい。
【0295】
さらに、本発明のインビトロの方法または本発明の医薬的使用の方法工程を実施できる、チップのような支持体が好ましい。例えば、SEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩での創傷治癒不全の治療に応答性である対象を認めることができるチップが提供される。
【0296】
したがって、他の好ましい態様では、本発明は本発明のキットまたはキットオブパーツに関し、ここで、診断キット(b)の支持体ii)は、本発明の方法または本発明の医薬的使用の方法工程を実施するために適切であり、支持体が複数の区切られた領域又は穴を有し、ここで、
a)領域または穴のサブセットは接着増強剤でコートされ、
b)領域または穴のサブセットは接着増強剤でコートされ、および/または、繊維芽細胞由来マトリックス(FDM)で充填され、
c)領域または穴のサブセットは処理されず、
d)任意で:
d1)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM1マーカーを特異的に認識する抗体を含み、および
d2)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM2マーカーを特異的に認識する抗体を含み、
e)e) 任意で:
e1)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM1細胞表面マーカーを特異的に認識する抗体を含み、
e2)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM2細胞表面マーカーを特異的に認識する抗体を含み、
f)任意で:
f1)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM1マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、
f2)領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくは一つ以上のM2マーカーmRNAを特異的に認識するプローブを含み、および、
g) 任意で:領域または穴のサブセットは結合物質、好ましくはIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる、一つ以上のサイトカインマーカーを特異的に認識する抗体を含み、
ここで、サブセットa)からg)は重複せず、
好ましくは、
(x)少なくともいくつかの領域または穴はa)さらに繊維芽細胞を含む、に従い、および/または、
(xi)少なくともいくつかの領域または穴は(x)またはb)さらに単球細胞を含む、に従い、および/または、
(xii)少なくともいくつかの領域または穴はc)さらに繊維芽細胞を含む、に従い、および/または、
(xiii)少なくともいくつかの領域または穴はc)さらにケラチノサイトを含み、に従い、ここで領域または穴は、(xii)および(xiii)は重複しない、に従う。
【0297】
一つの好ましい態様では、一つ以上のM1マーカーはCXCL10およびIL-23p19から選ばれ、一つ以上のM2マーカーはCCL22およびCCL18から選ばれる。
【0298】
一つの好ましい態様では、一つ以上のM1細胞表面マーカーはCD38、CD64およびCD197から選ばれ、一つ以上のM2細胞表面マーカーはCD200レセプター、CD206およびCD209から選ばれる。
【0299】
一つの好ましい態様では、一つ以上のM1マーカーmRNAは、CD38、CD64、CD197、CXCL10およびIL-23p19から選ばれ、一つ以上のM2マーカーmRNAは、CD200レセプター(CD200R)、CD206、CD209、CCL22およびCCL18から選ばれる。
【0300】
一つの好ましい態様では、キットまたはキットオブパーツの支持体は、チップ、マイクロアレイまたはナノアレイのようなアレイ、マルチウェルプレートのようなプレート、またはディッシュであり、および/または、支持体はプラスチック支持体である。
【0301】
キットまたはキットオブパーツの固体支持体は、好ましくは複数の区別された穴を有する。穴では空間の充填ができ、したがって3D培養することができる。例えば、複数の区別された穴を含むマルチウェルプレートまたはマイクロアレイまたはナノアレイが使用されてよい。例えば、マルチウェルプレートが成功的に使用される。好ましくは、固体支持体は、細胞の生存を実質的に邪魔せず、および/または、細胞培養に適している、例えばプラスチック支持体である。3D培養のために、固体支持体は複数の区切られた穴を有して良い。例えば、マルチウェルプレートが利用されてよい。一つの好ましい態様では、支持体は、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の区切られた領域または穴を有し、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9または10から10、2、3、4、5、6、7、8、9または10から10、2、3、4、5、6、7、8、9または10から10、または2、3、4、5、6、7、8、9または10から10区切られた領域または穴を有する。
【0302】
さらなる態様では、本発明は対象の皮膚創傷治癒不全を予防または治療する方法に関し、それを必要とする対象に治療的に有効量のSEGRMまたはその薬学的に許容可能な塩を投与することを含む。
【0303】
「有効量」は、所望の生物学的、薬学的、または治療的結果を対象において誘導するのに十分な量を意味する。化合物の治療的有効量は、双性イオンとして、または薬学的許容可能な塩として仕える。治療的有効量は、合理的な利益/危険の割合でいずれの医学治療にあてはまる、皮膚損傷治癒不全を治療または予防するための化合物の十分な量を意味する。しかしながら、本発明の化合物および組成物の一日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医により決定されるであろう。いずれの特定の患者への、特異的な治療的有効投与量レベルは、治療される疾患および疾患の重症度、使用する特定の化合物の活性、使用する特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別および食事、投与する時間、投与経路、使用する特定の化合物の排泄率、治療期間、組み合わせて用いられる薬剤、または使用する特定の化合物との併用、および医学分野でしられるそのような因子を含む様々な因子に依存する。
【実施例
【0304】
実施例1:発明に用いられるアッセイ
略語
略語 詳述
DMSO ジメチルスルホキシド
FACS 蛍光活性化細胞選別機
FCS ウシ胎仔血清
FDM 繊維芽細胞由来マトリックス
HaCaT ヒトケラチノサイト細胞株
HBSS ハンクス平衡塩溶液
HDF ヒト皮膚繊維芽細胞
HGF 肝細胞増殖因子
M-CSF マクロファージコロニー刺激因子
PBS リン酸緩衝食塩水
RPMI ロズウェルパーク記念研究所培地
SRB スルホローダミンB
TGFbeta トランスフォーミング増殖因子β
WE 創傷浸出液
【0305】
実施例1.1および1.2は、皮膚創傷治癒のための予測的モデルを表す。さまざまな患者から得たほとんどの非治癒創傷浸出液(WE)は、実施例1.1に述べられるように、アッセイにおいて、初代ヒト繊維芽細胞(HDF)の増殖を抑制し、実施例1.2に述べられるように3Dにおいて繊維芽細胞由来マトリック(FDM)の形成も阻害する。
【0306】
実施例1.1 繊維芽細胞増殖アッセイ:皮膚創傷、特に慢性ヒト皮膚創傷、から得た損傷滲出液サンプルの存在下における、繊維芽細胞増殖およびIL-1βの分泌の測定
【0307】
初代ヒト皮膚繊維芽細胞(HDF)をCELLnTEC社(Bern,Switzerland)から購入した。細胞を、10%FCS、2mMグルタミン、および100 U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で日常的に育てた。培地、抗生物質およびグルタミンはLonza社から購入した。細胞を継代数5から15で使用した。細胞をトリプシン処理し、培地で様々に希釈したフィルターで滅菌したWEとともに、またはWEのない培地とともに、段階的な化合物濃度の存在下または非存在下において、384ウェルプレートの内側ウェルに30μL、2500細胞/ウェルで播種した。コントロールサンプル用に、特定の刺激の代わりに30μL培地を加えた。外側のウェルには滅菌水を充填した。細胞を72時間、37℃でインキュベーションした。
【0308】
インキュベーション期間の最後に、IL-1βの測定用に上清を取り除き、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Morphisto社)で15分間、室温で固定し、PBSで3回洗浄した。細胞を一晩接着(1日目)した後に、コントロールプレートを固定して、開始細胞数を測定した。
【0309】
総細胞タンパク質を、固定した細胞をスルホローダミンB(SRB)(Sigma社)で染色することにより細胞数の計数として測定した。1%酢酸中の0.4%SRB溶液をウェルに30分間加えた。その後ウェルを、洗浄液が透明のままになるまで1%酢酸で洗浄した。乾燥後、染色を10mM Tris・HCl、pH8.5で溶出し、低細胞密度または高細胞密度についてそれぞれ550nmまたは492nmのいずれかで吸光度を測定した。1日目の開始細胞数を示すサンプルの平均吸光度を、WE処理細胞の吸光度の値から差し引いた。
【0310】
IL-1βレベルを市販のELISAキットで測定した。細胞によって分泌されたサイトカインを測定するために、細胞に添加した創傷浸出液中に含まれるIL-1βの量を、上清中の総IL-1βから差し引いた。
【0311】
すべての実験を、それぞれのサンプルおよび濃度用にトリプリケートで行い、平均±標準偏差(SD)を実験の評価用に用いた。結果を、非刺激細胞用コントロール値の百分率として表した。
【0312】
図15の表は、ヒト患者の慢性、非治癒性皮膚創傷からの、多数の異なる創傷浸出液の存在下における、繊維芽細胞増殖に対する1μMマプラコラットの効果を示す。それぞれのWEの存在下での増殖レベルを100%に設定し、マプラコラットの効果の計算用の基を作成した。120%より高い(WEコントロールの平均+2 SD)すべての値は、成長が促進されていると考えられる。
【0313】
さらなる結果を下記表1に示す。
【表1】
【0314】
前記表は、複数の異なる創傷浸出液の存在下における、繊維芽細胞増殖への1μM AZD7594の効果を示す。それぞれのWEの存在下での増殖レベルを100%に設定し、AZD7594の効果の計算用の基を作成した。120%より高い(WEコントロールの平均+2 SD)すべての値は、成長が促進されていると考えられる。AZD7594の有効性をマプラコラットの効果と比較した(図15参照)。
【0315】
実施例1.2: 繊維芽細胞による繊維芽細胞由来マトリックス形成(FDM)の測定:皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプル、特に慢性ヒト創傷浸出液サンプル、存在下での繊維芽細胞による線維芽細胞由来マトリックス形成の測定
【0316】
ヒト皮膚繊維芽(HDF)細胞を、0.2%ゼラチン溶液(Sigma)で1時間、37℃でプレコーティングした384ウェル組織培養プレートに、-3日目に、1250細胞/ウェルで播種した。細胞がコンフルエントに達したとき(=0日目)、HDF増殖アッセイで記載したように、マトリックス促進サプリメント(ビタミンC:2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、100μg/mL;Sigma)をTGF-β1または段階的濃度の化合物-/+WEを含むテストサンプルとともに加えた。4日後、培地をビタミンCと刺激物と化合物とを含む新鮮な培地で交換し、0日目で開始した条件を維持した。TGF-β1をFDM形成促進のポジティブコントロールとして含んだ。総インキュベーション時間7から8日後、FDM生成をSRB染色で固定した培養中で測定し、上記に述べたように評価した。いくつかの場合では、実験を止め、4日目に評価した。
【0317】
実験結果は、例えば図12に示されている。図12は、患者番号92からのWEとともに培養した3D繊維芽細胞培養における複数のSEGRMの効果を示す。AZD7594は3D培養でテストしたもっとも活性が高いSEGRMで、マプラコラットおよびBI653048がこれに続く。これは、グルココルチコイド受容体活性(EC50値、それぞれ、0.9nM、1.9nMおよび55nM)の効力を示す。SEGRMではない、不活性化合物BI3047はマトリックス形成を誘導しなかった。
【0318】
実施例1.3 ケラチノサイト増殖アッセイ:皮膚創傷、特に慢性ヒト皮膚創傷から得た創傷浸出液サンプルの存在下でのケラチノサイト増殖の測定
【0319】
HaCaTケラチノサイト細胞株を、10%FCS、2mMグルタミン、および100u/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンを含むDMEMで日常的に培養した。増殖アッセイは、HDF用に述べたように実施した。初代ヒトケラチノサイトを、ラット尾部コラーゲン(40μg/mL;Gibco)またはゼラチン(0.2%;Sigma)でコーティングしたプラスチック上に成長因子(Lonza)で補充した0.06mMカルシウムを含むKBM培地(Lonza)で増殖させた。抗生物質は使用しなかった。増殖アッセイをHDF細胞用に述べたように実施した。
【0320】
実施例1.4 初代ヒトマクロファージ刺激アッセイ:サイトカイン生成の測定
【0321】
初代ヒトマクロファージを、末梢血単核細胞(PBMC)から単離された単球から分化させた。PBMCを赤十字(ウィーン)から得たバフィーコートからLymphoPrep(Technoclone社)を用いて単離した。30mLのバフィー濃縮物をPBSで1:2に希釈し、50mLのファルコンチューブに15mLのLymphoPrepで穏やかに下層にし、21℃、1800rpm、25分間遠心分離した。中間層を慎重に新しいファルコンチューブに移し、氷冷PBSで50mLにまで満たした。もう一度の遠心分離工程(4℃、1200rpm、10分)後、細胞ペレットをPBSで3回洗浄し、20%FCSおよび10%DMSOを含むRPMI培地に懸濁し、液体窒素中で凍結した。単球を、製造元の説明書に従ってautoMACS-Sorter(Miltenyi社)上でCD14ビーズキット(Miltenyi社)を用いてポジティブ選択を用いて、凍結アリコートから単球を調製した。
【0322】
培養とマクロファージへの分化用に、単球を6ウェルプレート(Nunc社)に3-5×10単球/ウェルで播種し、1ウェルあたり5mLの総容量、10%FCS、2mMグルタミンおよび100u/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンを含むRPMI中で20ng/mL M-CSF(R&D Systems社)とともにインキュベーションした。2日後、上清2mLを除去し、20ng/mL M-CSFを含む新鮮な培地2.5mL/ウェルで置き換えた。3日目の顕微鏡観察で、接着性でしばしば伸長した細胞へ分化したことが分かった。
【0323】
マクロファージを回収し、96ウェルプレートまたは384ウェルプレート上それぞれに、200μLまたは50μL血清なし培地中にもう一度播種し、様々に希釈されたフィルター滅菌済みWE存在下または非存在下で、テスト化合物の段階的濃度と細胞を混合した。
【0324】
100ng/mL LPS(Sigma社)および50ng/mL IFN-γ(PeproTech)の組み合わせを、サイトカイン分泌の誘導用ポジティブコントロールとして用いた。ネガティブコントロールサンプル用に、特定の刺激の代わりに培地を添加した。
【0325】
24時間後、上清を新しいプレートに移し、将来のサイトカイン(IL-1α、IL-1β、TNF-α)分析用に―20℃で凍結した。WE誘導サイトカイン刺激を計算するために、上清レベルから投入WEのサイトカイン濃度を差し引いた。
【0326】
実施例1.5:ヒト皮膚におけるマクロファージ挙動を反映するインビトロモデルとしてのヒト単球-皮膚繊維芽細胞共培養:(a)マクロファージが繊維芽細胞と共培養され、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとともにインキュベーションしたマクロファージの上清中の一または複数のM1マーカーおよび一または複数のM2マーカーの量を測定、(b)マクロファージが繊維芽細胞と共培養され、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとともにインキュベーションしたマクロファージ上の一または複数のM1細胞表面マーカーおよび一または複数のM2細胞表面マーカーの量および/または細胞数頻度分布を測定、(c)マクロファージが繊維芽細胞と共培養され、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとともにインキュベーションしたマクロファージ中の一または複数のM1マーカーmRNAおよび一または複数のM2マーカーmRNAの発現量を測定、(d)マクロファージが繊維芽細胞と共培養され、皮膚創傷から得られた創傷浸出液サンプルとともにインキュベーションしたマクロファージの上清中のIL-1α、IL-1βおよびTNF-αから選ばれる一または複数のサイトカインマーカーの量を測定
【0327】
磁気ビーズ分離によって健常ドナーのPBMCから単離したCD14単球を、単独または初代ヒト線維芽細胞(CellINTec社)または繊維芽細胞由来マトリックス(FDM)存在下でインキュベーションした。FDMは、初代ヒト線維芽細胞を成長サプリメントであるビタミンCまたはインスリンおよびEGF(ビタミンC:2-ホスホ-L-アスコルビン酸三ナトリウム塩、100μg/mL;ヒトEGF、5ng/mL;インスリン、5μg/mL)とともに3週間インキュベーションすることによって、生成された。代わりとして、単層の線維芽細胞培養も同様に使用することができる。4日から1週間、M-CSF(25ng/mL)の存在下または非存在下でマクロファージを分化させた後、さまざまに希釈されたフィルター滅菌済みWEの存在下または非存在下で、段階的濃度のテスト化合物とともに一晩培養を刺激した。IFN-γ(50ng/mL)、LPS(100ng/mL)およびIL-4(25ng/mL)またはこれらの組み合わせをM1およびM2マクロファージ誘導のコントロールとして用いた。ネガティブコントロールサンプル用に、培地を特異的刺激の代わりに添加した。化合物を伴うWEまたは伴わないWEを、希釈範囲1:25から1:100で、一晩刺激の培養液に添加した。
【0328】
上清を、ELISAによるサイトカイン測定用に回収し、凍結した。細胞を回収し、FACS解析に用い、単球集団をゲーティングした。Geometric mean(各時間間隔で通過した細胞の値の積を細胞数でルート算出した値)または平均蛍光強度(MFI)を表面マーカー発現の定量に用いた。
【0329】
評価には、a)FACS解析の最も一般的に使われるリードアウトである、集団内における所定のマーカーにポジティブである細胞のパーセンテージ、または、b)平均蛍光強度によって測定される、細胞表面発現の量(個々の細胞当たりの細胞表面上のラベルされた分子の数の代替えとしたもの)、の二つを用いることが可能である。
【0330】
特異的mRNAレベルをハウスキーピング遺伝子と比較した値として特定した。得られた値は、「ハウスキーピング遺伝子に相対的な発現」である。
【0331】
次のリードアウトが用いられた:
【0332】
FACS: M1マクロファージ用にCD38、CD64、およびCD197、M2マクロファージ用にCD200レセプター(CD200R)、CD206およびCD209、マクロファージ分化のマーカーとしてCD163。M1/M2細胞表面マーカー発現の比率を計算した。
【0333】
ELISA: M1マクロファージ用にCXCL10およびIL-23p19、M2マクロファージ用にCCL22およびCCL18、一つのM1M1表現型を示す炎症促進マーカーとしてIL-1α、IL-1β、およびTNF-α。
【0334】
mRNA: M1マクロファージ用にCD38、CD64、およびCD197、M2マクロファージ用にCD200レセプター(CD200R)、CD206およびCD209、マクロファージ分化のマーカーとしてCD163。
【0335】
実施例1.6: CCL18の測定
【0336】
WEとマクロファージ上清中のCCL18を、F96 Maxisorp Nunc Immuno plates (Nunc社, #439454)中でR&D Systems社 (#DY394)からのhCCL18/PARC DuoSet ELISA Kitを用いて、製造社の説明書に従って測定した。酵素反応と測定をIL-1αで述べたように行った。
【0337】
実施例1.7:フローサイトメトリーによるマクドファージ表面マーカーの解析
【0338】
細胞を回収し、FACSバッファー(2%FCS含有PBS)に再懸濁した。非特異的抗体結合を、氷上で10分間、ヒトTrustain FCR ブロッキング溶液(Biolegend、#422302)とともにインキュベーションすることにより防いだ。eBioscience社(現在はThermoFisher Scientific社)の以下の蛍光色素結合抗体(CD38-PerCPeFluor710(#46-0388-42)、CD197-APC(#17-1979-42)、CD206-AF488(#53-2069-42)、CD209-PerCP Cy5.5(#45-2099-42))を使用して、氷上で30分間染色することにより、特異的表面マーカーを検出した。共培養から解析する際に、CD45 eFluor(#506 69-0459-42)での共染色を、マクロファージと初代ヒト繊維芽細胞とを区別するために用いた。細胞をFACSバッファーで洗浄後、1%パラホルムアルデヒド含有PBSで固定し、その後、データをBeckman Coulter社のGlliosフローサイトメーター上で取得し、Kaluza解析ソフトウェア1.3で解析するまで、暗所にて4℃で保管した。
【0339】
実施例1.8:繊維芽細胞培養におけるmRNA発現の解析
【0340】
細胞を24ウェルプレートに播種し、創傷浸出液の存在下、または非存在下にて、72時間化合物とともにインキュベーションした。トータルRNAをRNeasy Mini Kit(QIAGEN #74106)を用いて製造社のプロトコールに則って単離した。各サンプルのRNA純度と濃度を、Qubit Fluorometerで確認および測定した。そして、各RNAサンプルをヌクレアーゼ非含有2回蒸留水に2ng/μLになるように希釈した。
【0341】
20ngのトータルRNAをcDNAに逆転写し、ROX(Invitrogen社 #11745)とともにSuperScript III RT/Platinum One-Step Quantitative RT-PCR Systemを用いたPCR増幅に、直ちにかけた。qRT-PCRを9μL 2×Reaction Mix with ROX、0.4μL SuperScript III RT/Platinum Taq Mixおよび1μL プライマー(最終900nM、Taqman Gene Expression Assay Applied Biosystems)を含む20μL反応で実施した。
【0342】
プログラムは、48℃30分間の逆転写、95℃5分間の初期変性、95℃15秒間の変性40サイクル、60℃60秒のアニーリングを含む。反応は96ウェルフォーマットPCRプレート(Peqlab社 #732-2879)にセットし、MX3005P Real-Time PCR DEtection System(Strategen社)にて行った。
【0343】
確証されている遺伝子に特異的な、あらかじめ最適化されたプローブとプライマーのセットを含む、Taqman Gene Expression Assays(Applied Biosystems社)を用いた。配列およびID番号は下記のとおりである。
(EF1a:伸長因子1a、Collagen 1a:I型コラーゲン、Collagen 3a:III型コラーゲン)
【表7】
【0344】
ハウスキーピング遺伝子である伸長因子1a(EF1a)を参照遺伝子として用いた。ノーマライズした発現を、比較Ct(またはΔCt)法を用いて計算し、fold change(倍率変化)を各遺伝子の2-ΔΔCtから得た。対応する測定した遺伝子のCt値からEF1aCt値を差し引くことにより計算した相対Ct値を用いてグラフを作成した。
【0345】
実施例1.9:豚モデルにおける創傷治癒遅延
【0346】
動物実験は、政府当局によって承認された。2匹の若い農場のブタ(10から12kg)に麻酔をかけ、6mm生検パンチを用いて全層切除創傷を発症させた。創傷後最初の5日間、創傷は、a)0.05% R848(レシキモド)および50μlヒト創傷浸出液、b)0.05% R848およびヒト血清、または c)ヒト血清のみ、で刺激した。R848を午前中に投与し、2%HPMCを加えることによってゲル化した50μlの溶液中の浸出液および血清を、6時間後、投与した。6から10日目に、創傷をマプラコラットまたは溶媒(50%PG/47,5%HO/0.5%Tween 80/ 2%HPMC)で一日一度処理した。創傷を臨床的に毎日採点した。総創傷スコア(最大スコア=21)は、創傷の外観(乾性対湿性)、大きさ、創傷内容、膿、痂皮、紅斑の強度、紅斑の広さ、腫れおよび壊死からなる。報告した値は2匹のブタそれぞれの個々の値である。
【0347】
実施例1.10:初代ヒト繊維芽細胞におけるグルココルチコイド受容体の細胞質から核内への移行
【0348】
初代ヒト繊維芽細胞を、実施例1.1で述べたように、384ウェルプレートに播き、総量50μL、2500細胞/ウェルで用いた。24時間の接着後、細胞を血清飢餓に一晩おき、そして、37℃で45分間、段階的濃度のSEGRMまたはポジティブコントロールとしてコルチコステロイドとともにインキュベーションした。その後細胞を4%パラホルムアルデヒドで、室温で10分間固定し、続いて室温で10分間、0.5%Ttiton X100、1%BSA含有PBSで透過処理した。処理した細胞をマウス抗グルココルチコイド受容体モノクローナル抗体(CellSignaling社 #47411)またはマウスIgG1-κアイソタイプコントロール(e-Bioscience社 #14-4714)で染色し、Alexa Fluor ドンキー抗マウスIgG(Molecular Probes社 #A21202)で現像した。細胞をOlympus CKX53蛍光顕微鏡で調べ、グルココルチコイド受容体の局在に基づいて評価した:主として核(N),核+細胞質(N/C)、または主として細胞質(C)。
【0349】
結果を下記表2に示す。
【表2】
【0350】
表は、活性の測定として、繊維芽細胞の細胞質(C)から核(N)へのグルココルチコイド受容体の移行を示している。細胞を段階的濃度の化合物とともにインキュベーションし、細胞内グルココルチコイド受容体の局在を、レセプターに結合する抗体を用いて、間接的免疫蛍光によって測定した。0.1から100nMの範囲の化合物の濃度においてグルココルチコイド受容体の局在を、N(核)、N/C(核>細胞質)、C/N(細胞質>核)およびC(細胞質)によって表した。
【0351】
実施例1.11:初代ヒト単球サイトカイン分泌アッセイ
【0352】
初代ヒト単球を、末梢血単球細胞(PBMC)から調製した。PBMCをウィーンの赤十字から得たバフィーコートからLymphoPrep(Technoclone社)を用いて単離した。30mLのバフィー濃縮をPBSで1:2に希釈し、50mlのファルコンチューブに15mLのLymphoPrepで穏やかに下層にし、21℃、1800rpm、25分間遠心分離した。中間層を慎重に新しいファルコンチューブに移し、氷冷PBSで50mLにまで満たした。もう一度の遠心分離工程(4℃、1200rpm、10分)後、細胞ペレットをPBSで3回洗浄し、20%FCSおよび10%DMSOを含むRPMI培地に懸濁し、液体窒素中で凍結した。単球を、製造元の説明書に従ってautoMACS-Sorter(Miltenyi社)上でCD14ビーズキット(Miltenyi社)を用いてポジティブ選択を使用して凍結アリコートから調製した。
【0353】
細胞を384ウェルプレートの50μL/ウェル中に8×10/mLで播き、段階的濃度のテスト化合物と結合させた。16時間後、上清を新しいプレートに移し、市販のELISAキットを用いたIL-8解析のために-20℃で凍結した。
【0354】
実施例1.12:U937細胞刺激アッセイ
【0355】
ヒト単球U937細胞株(ATCC CRL 1593)を10%FCSおよび2mMグルタミンおよび100U/mLペニシリン/100μg/mLストレプトマイシンで補充したRPMI1640中で日常的に培養した。細胞を384ウェルプレートの50μL/ウェル中に4×10/mLで播き、段階的濃度のテスト化合物と100ng/mL LPSと細胞を混合した。16時間後、上清を新しいプレートに移し、市販のELISAキットを用いたIL-8解析のために-20℃で凍結した。
【0356】
創傷浸出液
静脈潰瘍、動脈潰瘍、褥瘡、糖尿病性潰瘍および外科的創傷からの創傷浸出液を、陰圧閉鎖療法またはナイロンが集まった綿棒のような綿棒(Copan #502CS01)によってふいたあと、ゲルのない容器に回収した。患者の説明を受け納得した上での同意(インフォームドコンセント)をヘルシンキ宣誓に従って得た。
【0357】
テスト化合物
低分子化合物(表3のリスト参照)を、細胞アッセイ用に、DMSO(細胞培養用バイオ試薬、Sigma社)で、10mMまたは100mMで、培地中1:1000になるように希釈した(最終DMSO濃度0.1%以下)。化合物は、典型的には、10μMから開始濃度、または100μMをもっとも高濃度として対数(1:10)または半対数(1:3.33)希釈シリーズでテストされた。
増殖アッセイにおいて細胞を72時間、化合物とインキュベーションし、FDMアッセイにように8日までインキュベーションした。WE刺激への化合物の効果のために化合物をテストしたとき、化合物と細胞とのインキュベーションはWEインキュベーションと同時に開始し終了した。
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14
図15
図16
【配列表】
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