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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】フッ素含有熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20240708BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240708BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240708BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
C08L27/18
C08L27/12
C08J5/18 CEW
C08J3/24 Z CEW
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021552930
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055607
(87)【国際公開番号】W WO2020178303
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】19161280.3
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サングイネーティ, アルド
(72)【発明者】
【氏名】バッシ, マッティア
(72)【発明者】
【氏名】イエバ, エリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ミレンダ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ファントーニ, マッテオ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/046355(WO,A1)
【文献】特開平05-140401(JP,A)
【文献】特開昭61-057641(JP,A)
【文献】国際公開第2018/059001(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/153203(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散フルオロエラストマー相を含む熱可塑性エラストマー組成物[組成物(C)]であって、前記組成物が、
a.- 少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、前記ポリマー(F)が、
- 60モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 1モル%~5モル%の、式(I):
CF=CF-O-Rf (I)
(式中、Rfは、C~Cアルキル基又はC~C(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、
ここで、前記繰り返し単位の前記モル量が、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対してである
ポリマー(F)と;
b.- 少なくとも1種の(ペル)フルオロエラストマー[エラストマー(A)]と
を含む組成物(C)。
【請求項2】
式(I)の前記ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)は、式CF=CF-O-CFのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、式CF=CF-O-CF-CFのペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)及び式CF=CF-O-CF-CF-CFのペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
エラストマー(A)は、10重量%超の、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(ここでは以下、(ペル)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位及び、任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(ここでは以下、含水素モノマー)に由来する繰り返し単位を含み、ここで、前記(ペル)フッ素化モノマーは、
~Cフルオロ-及び/又はペルフルオロオレフィン;
~C含水素モノフルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~C(ペル)フルオロアルキル又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従う(ペル)フルオロアルキルエチレン;
ロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ若しくはペルフルオロアルキルである)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ若しくはペルフルオロアルキルである)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、C~C12オキシアルキル、又は1つ以上のエーテル基を有するC~C12(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-若しくはペルフルオロアルキル、又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル、又はC~C12オキシアルキル若しくはC~C12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、前記Y基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩形態で含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C~Cフルオロ-若しくはペル(ハロ)フルオロアルキル)
の、フルオロジオキソール
からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の組成物(C)。
【請求項4】
エラストマー(A)は、
(1)VDFが、以下のクラス:
(a1)C ~Cペルフルオロオレフィン;
(b1)水素含有C~Cオレフィン;
(c1)C ~Cクロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(d1)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル基である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;
(e1)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((ペル)フルオロ)-オキシアルキルである)の(ペル)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f1)式:
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、独立して、フッ素原子及び、1個又は2個以上の酸素原子を任意選択的に含むC ~C(ペル)フルオロアルキル基の中から選択される)
を有する(ペル)フルオロジオキソール;
(g1)式:
CFX=CXOCFOR”
(式中、R”は、線状若しくは分岐の、C~C(ペル)フルオロアルキル;C~C環状(ペル)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、線状若しくは分岐の、C~C(ペル)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hであ
を有する(ペル)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(ここでは以下、MOVE);
(h1)C~C非フッ素化オレフィン(Ol
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマー(但し、そのようなコモノマーはVDFとは異なることを条件とする)と共重合させられている、VDF系コポリマー;並びに
(2)TFEが、クラス(a1)、(c1)、(d1)、(e1)、(g1)、(h1)、及び以下のクラス(i2):
(i2)シアニド基を含有するペルフルオロビニルエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマー(但し、そのようなコモノマーはTFEとは異なることを条件とする)と共重合させられている、TFE系コポリマー
の中から選択される、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
エラストマー(A)は、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーである、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項6】
エラストマー(A)は、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンコポリマーである、請求項2~4のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項7】
エキステンダー油、合成加工油、安定剤、少なくとも1種の加工助剤、充填材、顔料、接着剤、粘着付与剤、及びワックスからなる群から選択される少なくとも1つの追加の構成成分をさらに含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、少なくとも1種のポリマー(F)と少なくとも1種のエラストマー(A)とを溶融混合する工程を含む方法。
【請求項9】
連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散加硫フルオロエラストマー相を含む、熱可塑性エラストマー加硫物組成物[加硫物(V)]であって、前記組成物が、
a.- 少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、前記ポリマー(F)が、
- 60モル%~80モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 1モル%~モル%の、式(I):
CF=CF-O-R (I)
(式中、Rは、C~Cアルキル基又はC~C(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、
ここで、前記繰り返し単位の前記モル量が、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対してである
ポリマー(F)と;
b.- 少なくとも1種の(ペル)フルオロエラストマー[エラストマー(A)]と
を含む加硫物(V)。
【請求項10】
請求項9に記載の加硫物(V)の製造方法であって、前記方法が、少なくとも1種のポリマー(F)と、少なくとも1種のエラストマー(A)とを、前記エラストマー(A)のための少なくとも1種の硬化系(CS)の存在下で溶融混合する及び動的硬化させる工程を含む方法。
【請求項11】
フィルムの形態での請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物(C)又は請求項9に記載の加硫物(V)。
【請求項12】
自動車用途での又は石油及びガス用途での請求項11に記載のフィルムの使用。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの組成物(C)又は請求項9に記載の加硫物(V)を含む物品。
【請求項14】
パイプである請求項13に記載の物品。
【請求項15】
自動車用途での又は石油及びガス用途での請求項14に記載のパイプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月7日出願の欧州特許出願第19161280.3号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、連続熱可塑性フルオロカーボンポリマー相及び分散フッ素含有エラストマー相を含むフッ素含有熱可塑性エラストマー組成物であって、例えば、自動車燃料ラインにおいて有用であるエラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
高温で低い透過性を示しながら、高い機械抵抗及び高い耐化学薬品性の両方を有するフルオロポリマーでできたパイプは、当技術分野において公知である。
【0004】
例えば、米国特許第8997797号明細書(ダイキン工業株式会社)2015年7月4日は、ライザーパイプの製造に好適である170℃において高い結晶性及び高い貯蔵弾性率を有するフルオロポリマーであって、前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、並びにテトラフルオロエチレン及びフッ化ビニリデン以外のエチレン性不飽和モノマーに由来する共重合単位からなるフルオロポリマーを開示している。これらのターポリマーの中に、特に、(j)(ペル)フルオロアルキルエチレンモノマー(例えばCH=CH-C;CH=CH-C13)に由来する0.1~5.0モル%の繰り返し単位を有するTFE及びVDFのターポリマー、並びに(jj)R がC1~3アルキル基又はC1~3フルオロアルキル基である、式CF=CF-OR の(ペル)(フルオロ)アルキルビニルエーテルに由来する0.1~0.8モル%の繰り返し単位を有するTFE及びVDFのターポリマーが言及されている。
【0005】
それにもかかわらず、高温での高い値の貯蔵弾性率及び/又は高い値の引張弾性率を有するフルオロポリマーは、不利なことに、非常に低い破断点伸びと共に、不十分な熱応力亀裂抵抗を有し、且つ、むしろ硬質である。
【0006】
分散相エラストマーが、融解状態に保たれた連続熱可塑性材料中で剪断下に混合される間にエラストマーを動的に加硫することによって製造される、連続相熱可塑性材料及び分散相エラストマーを含む2相組成物は、当技術分野において周知であり、熱可塑性加硫物(TPV)と言われることが多い。
【0007】
これらの材料は、それらが分散相からそれらのゴム様特性を引き出し、その結果、それらが、スクラップ、はみ出し部又は欠陥部品をリフォームするという可能性を含めて、熱可塑性樹脂として加工可能であると同時に、とりわけ、全てのゴム典型的な使用分野(シール及びガスケットなどの、シーリング物品、パイプ、ホース、フラットシート等)で使用することができるという点で特に有利である。
【0008】
フッ素含有材料の有利な特性のため、熱可塑性フッ素化ポリマー連続相及びフッ素含有エラストマー分散相の両方を含むTPVは、熱可塑性加工性の利点と共に高レベルの耐化学薬品性を提供することで非常に大きな注目を集めている。
【0009】
例えば、特許文献欧州特許出願公開第168020 A号明細書(DUPONT DE NEMOURS)1986年1月15日は、融解状態で構成要素をブレンドし、次いで、例えば押出機中で硬化剤の添加により、それを動的に硬化(イオン硬化又は過酸化物硬化)させることによって得られる、2相、すなわち結晶性の熱可塑性相及び分散フッ素化非晶質エラストマー相を含有するフッ素化熱可塑性エラストマーを開示している。熱可塑性ポリマーは、とりわけ、ポリフッ化ビニリデンであることができ;実施例8は、イオン硬化による70重量%のフッ化ビニリデン(VDF)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)コポリマー及び30重量%のポリフッ化ビニリデンを含むTPVのBrabenderでの調製に関する。
【0010】
さらに、特許文献米国特許第5006594号明細書(DUPONT DE NEMOURS)1991年4月9日は、溶融処理可能な樹脂の連続相及び非晶質架橋フルオロエラストマーの分散相を含む2相組成物を含有するフッ素化熱可塑性エラストマーの新規のブレンドを開示している。フッ化ビニリデンのホモポリマー及びフッ化ビニリデンが非常に優勢な重合モノマーであるフッ化ビニリデンのコポリマーは、可能な熱可塑性フルオロ樹脂として述べられている。
【0011】
自動車工業において、自動車要素に対する、特に燃料系におけるラインに対する多数の異なる要件がある。
【0012】
蒸発性燃料標準への増加する関心は、改善されたバリア性を有する燃料系構成要素の必要性をもたらした。これは、吸油口、燃料ホース、燃料供給ライン、燃料タンク、及び自動車燃料系の他の要素などの自動車要素を通っての、燃料蒸気の透過を低減するのに役立つ。フッ化層を含有する多層管及び他の物品が、耐化学薬品性の透過バリアを提供するためにそのような自動車要素に使用されてきた。
【0013】
加えて、長い寿命にわたって維持されるべきである熱的及び機械的要件がある。機械的要件に、製造及び安全性の両方のための十分な可撓性及び衝撃強度が含まれる。加えて、液体ラインは、また、燃料ラインを形成するのに使用される材料が、燃料噴射装置の閉塞などの問題をもたらし得る、燃料を汚染することが本質的に全くないという要件を満たす。このように、ラインは、ラインによって運ばれる液体に化学的に耐性でなければならない。
【0014】
したがって、迅速に及び容易に設置することができる並びに長い可使時間にわたって望ましい特性を示すことができる燃料ラインを形成するために、優れたバリア性並びに、良好な耐衝撃性及び良好な可撓性などの、良好な機械的特性を示す自動車燃料ラインを形成するために使用することができる熱可塑性組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
本出願人は、ここで、フッ素含有熱可塑性樹脂及びエラストマーの特定の組成物が、改善された可撓性及び燃料流体に対する非常に低い透過性を確保するのに特に有効であることを見出した。
【0016】
したがって、本明細書によって、連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散フルオロエラストマー相を含む熱可塑性エラストマー組成物[組成物(C)]であって、前記組成物が、
a.- 少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、前記ポリマー(F)が、
- 60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 1モル%~5モル%、好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I):
CF=CF-O-R (I)
(式中、Rは、C~Cアルキル基又はC~C(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、
ここで、前記繰り返し単位のモル量が、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対してである
ポリマー(F)と;
b.- 少なくとも1種の(ペル)フルオロエラストマー[エラストマー(A)]と
を含む組成物(C)が提供される。
【0017】
本出願人は、上で詳述されたようなポリマー(F)が、式(I)の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する定義された量の繰り返し単位を含む場合に、組成物(C)は、有利にも、燃料流体に対する低い透過性と可撓性との間の良好な折衷を有することを見出した。
【0018】
別の態様において、本発明は、上で詳述されたような組成物(C)の調製方法であって、前記方法が、組成物(C)の構成要素を溶融混合する工程を含む方法を提供する。
【0019】
本出願人は、また、組成物(C)中の分散フルオロエラストマー相が加硫される場合に、そのような組成物と燃料流れとの接触によって引き起こされる浸出作用のリスクが低下することを見出した。
【0020】
別の態様において、本発明は、したがって、連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散加硫フルオロエラストマー相を含む、熱可塑性エラストマー加硫物組成物[加硫物(V)]であって、前記組成物が、
a.- 少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、前記ポリマー(F)が、
- 60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 1モル%~5モル%、好ましくは1.5モル%~3.5モル%の、式(I):
CF=CF-O-R (I)
(式中、Rは、C~Cアルキル基又はC~C(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、
ここで、前記繰り返し単位のモル量が、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対してである
ポリマー(F)と;
b.- 少なくとも1種の(ペル)フルオロエラストマー[エラストマー(A)]と
を含む組成物を提供する。
【0021】
本発明は、さらに、エラストマー(A)のための少なくとも1種の硬化系(CS)の存在下で少なくとも1種のポリマー(F)と少なくとも1種のエラストマー(A)とを溶融混合する及び動的硬化させる工程を含む、上で詳述されたような、加硫物(V)の製造方法に関する。
【0022】
本発明は、さらに、本発明の組成物(C)又は加硫物(V)を含む物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
式(I)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)は、典型的には、式CF=CF-O-CFのペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、式CF=CF-O-CF-CFのペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、及び式CF=CF-O-CF-CF-CFのペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)からなる群から選択される。
【0024】
上で述べられたように、ポリマー(F)は、熱可塑性ポリマー、すなわち、加熱すると軟化し、室温で冷却すると硬化し、室温にて、非晶質の場合はそのガラス転移温度より下で、又は半結晶性の場合はその融点より下で存在するポリマーである。
【0025】
それにもかかわらず、ポリマー(F)が半結晶性であること、すなわち明瞭な融点を有することが、概して好ましく;好ましいポリマー(F)は、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/g、より好ましくは少なくとも20J/gの融解熱を有するものである。
【0026】
融解熱は、一般に、ASTM D3418標準に従ってDSCによって測定される。
【0027】
本発明のポリマー(F)は、有利には、溶融加工性である。用語「溶融加工性」は、本明細書では、従来の溶融加工技術によって加工することができるフルオロポリマーを意味することを意図する。
【0028】
本発明のポリマー(F)は、典型的には、170℃~300℃、好ましくは200℃~280℃に含まれる融点(T)を有する。
【0029】
ポリマー(F)は、典型的には、水性重合媒体中での、懸濁重合によってか又は乳化重合によってかのいずれかで実施される方法で典型的には得られる。
【0030】
本発明のポリマー(F)は、好ましくは、例えば、国際公開第2018/189090号パンフレットに、国際公開第2018/189091号パンフレット及び国際公開第2018/189092号パンフレットに記載される手順に従って、水性重合媒体中での乳化重合によって得られる。
【0031】
本発明のポリマー(F)は、典型的には、上で詳述されたような水性重合媒体中での乳化重合によって得られる水性ラテックスから回収される、粉末の形態にある。
【0032】
本発明の目的のためには、用語「(ペル)フルオロエラストマー」[エラストマー(A)]は、真のエラストマーを得るためのベース構成物質としての機能を果たすフルオロポリマー樹脂を示すことを意図し、前記フルオロポリマー樹脂は、10重量%超、好ましくは30重量%超の、少なくとも1個のフッ素原子を含む少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、(ペル)フッ素化モノマー)に由来する繰り返し単位と、任意選択的に、フッ素原子を含まない少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(本明細書では以下、含水素モノマー)に由来する繰り返し単位とを含む。
【0033】
真のエラストマーは、ASTM、Special Technical Bulletin、No.184標準によって、室温で、それらの固有長の2倍まで伸張させることができ、且つ、それらを5分間張力下に保持した後にそれらが解放されたらすぐに、同時にそれらの初期長さの10%以内に復帰する材料として定義されている。
【0034】
好適な(ペル)フッ素化モノマーの非限定的な例は、とりわけ:
- テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、及びヘキサフルオロイソブチレンなどの、C~Cフルオロ-及び/又はペルフルオロオレフィン;
- フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)及びトリフルオロエチレン(TrFE)などの、C~C含水素モノフルオロオレフィン;
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~C(ペル)フルオロアルキル又は1つ以上のエーテル基を有するC~C(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従う(ペル)フルオロアルキルエチレン;
- クロロトリフルオロエチレン(CTFE)のような、クロロ-及び/又はブロモ-及び/又はヨード-C~Cフルオロオレフィン;
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-若しくはペルフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-Cである)に従うフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CH=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-若しくはペルフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、-Cである)に従うヒドロフルオロアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOX(式中、Xは、C~C12オキシアルキル、又はペルフルオロ-2-プロポキシ-プロピルのような、1つ以上のエーテル基を有するC~C12(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロ-オキシアルキルビニルエーテル;
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cフルオロ-若しくはペルフルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、又は-C-O-CFのような、1つ以上のエーテル基を有するC~C(ペル)フルオロオキシアルキルである)に従うフルオロアルキル-メトキシ-ビニルエーテル;
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル、又はC~C12オキシアルキル若しくはC~C12(ペル)フルオロオキシアルキルであり、前記Y基は、カルボン酸基又はスルホン酸基を、その酸、酸ハライド若しくは塩形態で含む)に従う官能性フルオロ-アルキルビニルエーテル;
- 式:
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6のそれぞれは、独立して、フッ素原子、1個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C~Cフルオロ-若しくはペル(ハロ)フルオロアルキル、例えば-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFである)
の、フルオロジオキソール
である。
【0035】
含水素モノマーの例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの、含水素アルファ-オレフィン、ジエンモノマー、スチレンモノマーであり、アルファ-オレフィンが典型的には使用される。
【0036】
(ペル)フルオロエラストマー(A)は、一般に、非晶質生成物であるか、又は低い程度の結晶性(20体積%未満の結晶相)及び室温未満のガラス転移温度(T)を有する生成物である。ほとんどの場合に、(ペル)フルオロエラストマーは、有利には、10℃未満、好ましくは5℃未満、より好ましくは0℃のTを有する。
【0037】
(ペル)フルオロエラストマー(A)は、好ましくは:
(1)VDF系コポリマーであって、VDFが、以下のクラス:
(a1)テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレンなどの、C~Cペルフルオロオレフィン;
(b1)C~C非フッ素化オレフィン(Ol);C~C部分フッ素化オレフィン、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、式CH=CH-R(式中、Rは、C~Cペルフルオロアルキル基である)のペルフルオロアルキルエチレンなどの、水素含有C~Cオレフィン;
(c1)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)などのC~Cクロロ及び/又はブロモ及び/又はヨード-フルオロオレフィン;
(d1)式CF=CFOR(式中、Rは、C~C(ペル)フルオロアルキル基である)の(ペル)フルオロアルキルビニルエーテル;好ましくは上記の式(式中、Rは、C~Cペルフルオロアルキル基、例えはCF、C、Cである)のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE);
(e1)式CF=CFOX(式中、Xは、カテナリー酸素原子を含むC~C12((ペル)フルオロ)-オキシアルキル、例えばペルフルオロ-2-プロポキシプロピル基である)の(ペル)フルオロ-オキシ-アルキルビニルエーテル;
(f1)式:
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、Rf3、Rf4、Rf5、Rf6は、独立して、フッ素原子及び、とりわけ-CF、-C、-C、-OCF、-OCFCFOCFなどの、1個又は2個以上の酸素原子を任意選択的に含む、C~C(ペル)フルオロアルキル基から選択される)
を有する、(ペル)フルオロジオキソール;好ましくは、ペルフルオロジオキソール;
(g1)(ペル)フルオロ-メトキシ-ビニルエーテル(本明細書では以下、MOVE)であって、式:
CFX=CXOCFOR”
(式中、R”は、線状若しくは分岐の、C~C(ペル)フルオロアルキル;C~C環状(ペル)フルオロアルキル;及び1~3個のカテナリー酸素原子を含む、線状若しくは分岐の、C~C(ペル)フルオロオキシアルキルの中から選択され、X=F、Hであり;好ましくはXは、Fであり、R”は、-CFCF(MOVE1);-CFCFOCF(MOVE2);又は-CF(MOVE3)である)
を有するMOVE;
(h1)C~C非フッ素化オレフィン(Ol)、例えばエチレン及びプロピレン
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマー(但し、そのようなコモノマーがVDFと異なることを条件とする)と共重合させられている、VDF系コポリマーと;
(2)TFE系コポリマーであって、TFEが、クラス(a1)、(c1)、(d1)、(e1)、(g1)、(h1)、及び下記のクラス(i2):
(i2)とりわけ、米国特許第4,281,092号明細書、米国特許第5,447,993号明細書及び米国特許第5,789,489号明細書に記載されているものなどの、シアニド基を含有するペルフルオロビニルエーテル
からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマー(但し、そのようなコモノマーは、TFEとは異なることを条件とする)と共重合させられているTFE系コポリマーと
の中から選択される。
【0038】
最も好ましい(ペル)フルオロエラストマー(A)は、以下の組成(モル%単位):
(i)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)10~45%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~30%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~15%;
(ii)フッ化ビニリデン(VDF)50~80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)5~50%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~20%;
(iii)フッ化ビニリデン(VDF)20~30%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)10~30%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び/又はペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)18~27%、テトラフルオロエチレン(TFE)10~30%;
(iv)テトラフルオロエチレン(TFE)50~80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~50%;
(v)テトラフルオロエチレン(TFE)45~65%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)20~55%、フッ化ビニリデン0~30%;
(vi)テトラフルオロエチレン(TFE)32~60%モル%、C~C非フッ素化オレフィン(Ol)10~40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)20~40%、フルオロビニルエーテル(MOVE)0~30%;
(vii)テトラフルオロエチレン(TFE)33~75%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)15~45%、フッ化ビニリデン(VDF)5~30%、ヘキサフルオロプロペンHFP0~30%;
(viii)フッ化ビニリデン(VDF)35~85%、フルオロビニルエーテル(MOVE)5~40%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~30%、テトラフルオロエチレン(TFE)0~40%、ヘキサフルオロプロペン(HFP)0~30%;
(ix)テトラフルオロエチレン(TFE)20~70%、フルオロビニルエーテル(MOVE)30~80%、ペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)0~50%
を有するものである。
【0039】
任意選択的に、本発明の(ペル)フルオロエラストマー(A)は、また、一般式:
(式中、互いに等しいか若しくは異なる、R、R、R、R、R及びRは、H、ハロゲン、基RAlk又はORAlkであり、ここで、RAlkは、部分的に、実質的に又は完全にフッ素化又は塩素化することができる分岐鎖若しくは直鎖のアルキル基であり;Zは、酸素原子を任意選択的に含有し、好ましくは少なくとも部分的にフッ素化された、線状若しくは分岐のC~C18アルキレン若しくはシクロアルキレン基、又は、例えば欧州特許出願公開第661304A号明細書(AUSIMONT SPA)1995年7月5日に記載されるような、(ペル)フルオロポリオキシアルキレン基である)
を有するビス-オレフィン[ビス-オレフィン(OF)]に由来する繰り返し単位を含む。
【0040】
ビス-オレフィン(OF)は、好ましくは、式(OF-1)、(OF-2)及び(OF-3):
(式中、jは、2~10、好ましくは4~8の整数であり、互いに等しいか若しくは異なる、R1、R2、R3、R4は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル基である);
(式中、互いに及び出現ごとに等しいか若しくは異なる、Aのそれぞれは、独立して、F、Cl、及びHから選択され;互いに及び出現ごとに等しいか若しくは異なる、Bのそれぞれは、独立して、F、Cl、H及びORから選択され、ここで、Rは、部分的に、実質的に、又は完全にフッ化又は塩素化されることができる分岐鎖若しくは直鎖のアルキル基であり;Eは、エーテル結合が挿入され得る、任意選択的にフッ素化された、2~10個の炭素原子を有する二価基であり;好ましくは、Eは、mが3~5の整数である、-(CF-基であり;(OF-2)タイプの好ましいビス-オレフィンは、FC=CF-O-(CF-O-CF=CFである);
(式中、E、A、及びBは上で定義されたものと同じ意味を有し;互いに等しいか若しくは異なる、R5、R6、R7は、H、F又はC1~5アルキル若しくは(ペル)フルオロアルキル基である)
に従うものからなる群から選択される。
【0041】
組成物(C)中のポリマー(F)とエラストマー(A)との重量比は、組成物(C)中の連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散フルオロエラストマー相を届けるために所定の実験によって選択されるという条件で、特に決定的に重要であるわけではない。
【0042】
一般に、重量比ポリマー(F)/エラストマー(A)は、10/90重量/重量~70/30重量/重量、好ましくは20/80~50/50重量/重量に含まれるであろう。当業者は、組成物(C)のターゲット最終特性を考慮して最も適切な重量比を選択するであろう。
【0043】
さらに、組成物(C)は、エキステンダー油、合成加工油、安定剤、少なくとも1種の加工助剤、充填材、顔料、接着剤、粘着付与剤、及びワックスなどの、追加の任意選択の構成成分を含み得る。そのような追加の構成成分は、溶融混合中に組成物(C)の構成要素とブレンドされてもよいか、又は後で溶融混合の終了後に組成物(C)中へ配合することができる。
【0044】
特に好適な加工助剤は、ポリオレフィンプロセス潤滑剤である。
【0045】
ポリオレフィンプロセス潤滑剤は、とりわけ、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンからなる群から選択することができる。好ましくは、ポリオレフィンプロセス潤滑剤は、ポリエチレンである。
【0046】
ポリオレフィンプロセス潤滑剤は、本発明の組成物(C)中に、ポリマー(F)の重量を基準として、最大でも10重量%の、好ましくは最大でも5重量%の、より好ましくは最大でも2重量%の、さらにより好ましくは最大でも1重量%の量で存在することができる。
【0047】
さらなる目的において、本発明は、上で定義されたような組成物(C)の調製方法であって、前記方法が前記組成物の構成要素を溶融混合する工程を含む方法を提供する。
【0048】
溶融混合は、組成物中の有機構成要素が全て融解形態にある温度、したがって、前記有機構成要素のガラス転移温度超の温度又は溶融温度超の温度で実施される。
【0049】
「有機構成要素」とは、元素状炭素以外の炭素を含む化合物を意味する。組成物(C)中の有機構成要素としては、とりわけ、ポリマー(F)、エラストマー(A)及び組成物(C)中に場合により含まれる有機の任意選択の構成成分が挙げられる。
【0050】
溶融混合手順において、ポリマー(F)及びエラストマー(A)は、別々にそれらのそれぞれの溶融温度にし、次いで互いに混合するか、又はその後に第1の溶融ポリマーに添加して、一緒に溶融させることができる。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態において、溶融混合手順は、エラストマー(A)を融解形態のポリマー(F)に添加することによって実施される。
【0052】
このようにして形成されたブレンドは、数分間撹拌され、室温まで冷却されて本発明の組成物(C)を提供する。
【0053】
本発明は、さらに、連続熱可塑性フルオロポリマー相及び分散加硫フルオロエラストマー相を含む、熱可塑性エラストマー加硫物組成物[加硫物(V)]であって、前記組成物が、
a.- 少なくとも1種の熱可塑性フルオロポリマー[ポリマー(F)]であって、前記ポリマー(F)が、
- 60モル%~80モル%、好ましくは65モル%~78モル%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位、
- 15モル%~35モル%、好ましくは20モル%~30モル%の、フッ化ビニリデン(VDF)に由来する繰り返し単位、及び
- 1モル%~5モル%、好ましくは1.5モル%~3.5モル%の式(I):
CF=CF-O-R (I)
(式中、Rは、C~Cアルキル基又はC~C(ペル)フルオロアルキル基である)
の少なくとも1種のペルフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)に由来する繰り返し単位
を含み、
ここで、前記繰り返し単位のモル量が、前記ポリマー(F)中の繰り返し単位の総モルに対してである
ポリマー(F)と;
b.- 少なくとも1種の(ペル)フルオロエラストマー[エラストマー(A)]と
を含む組成物に関する。
【0054】
組成物(C)のポリマー(F)、エラストマー(A)について、及び任意選択の構成成分について上に記載された特徴は全て、加硫物(V)の好ましい実施形態としてもここで適用できる。
【0055】
本発明の加硫物(V)は、好適には、少なくとも1種のポリマー(F)と少なくとも1種のエラストマー(A)とを、エラストマー(A)のための少なくとも1種の硬化系(CS)の存在下で、動的硬化が溶融混合中に起こるように、溶融混合する工程を含む方法によって調製される。
【0056】
したがって、加硫物(V)は、したがってこれが上で詳述された記載から逸脱することなく、前記硬化系に由来する残基又は分解生成物をさらに含み得ることが理解される。
【0057】
硬化系(CS)は、エラストマー(A)の、ポリヒドロキシル化合物若しくはポリアミン化合物の両方に基づく、イオン硬化、過酸化物硬化及び/又は混合硬化に有効であることができる。
【0058】
硬化系(CS)の量は、加硫物(V)内でエラストマー(A)の架橋を確実にするために有効な量で存在するという条件で、特に限定されない。
【0059】
過酸化物硬化のための硬化系は、エラストマー(A)の100部当たり一般に0.1~10重量部、好ましくは0.5~5重量部の量で、熱分解によってラジカルを発生させることができる少なくとも1種の過酸化物(一般に、有機過酸化物)を一般に含む。最も一般的に使用される試剤の中に、ジアルキルペルオキシド、例えばジ-tert-ブチルペルオキシド及び2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジベンゾイルペルオキシド;ジ-tert-ブチルペルベンゾエート;ビス[1,3-ジメチル-3-(tert-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネートを挙げることができる。
【0060】
さらに、加えて、過酸化物硬化のための硬化系は、
(a)エラストマー(A)の100部当たり一般に0.5~10重量部、好ましくは1~7重量部の量での一般に量での、少なくとも1種の硬化助剤;これら助剤の中で、以下のもの:トリアリルシアヌレート;トリアリルイソシアヌレート(TAIC);トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン;トリアリルホスファイト;N,N-ジアリルアクリルアミド;N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド;トリビニルイソシアヌレート;2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン;上で詳述されたような、ビス-オレフィン(OF);とりわけ欧州特許出願公開第860436 A号明細書(AUSIMONT SPA)1998年8月26日及び国際公開第97/05122号パンフレット(DUPONT DE NEMOURS)1997年2月13日に記載されるものなどの、トリアジンが一般的に使用され;上述の硬化助剤の中で、上で詳述されたような、ビス-オレフィン(OF)、より具体的には上で詳述されたような、式(OF-1)のものが特に良好な結果を提供することが分かった;
(b)任意選択的に、エラストマー(A)の100部当たり有利には1~15重量部、好ましくは2~10重量部の量の、二価金属、例えばMg、Zn、Ca又はPbの酸化物及び水酸化物からなる群から選択される、金属化合物であって、任意選択的に弱酸の塩、例えばBa、Na、K、Pb、Caステアリン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩又は亜リン酸塩と組み合わせられた、金属化合物;
(c)任意選択的に、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、オクタデシルアミン等などの、金属非酸化物タイプの酸受容体
を含む。
【0061】
加硫物(V)が過酸化物硬化によって得られる場合、エラストマー(A)は、巨大分子の鎖中に及び/又は末端にヨウ素及び/又は臭素原子を好ましくは含有する。これらのヨウ素及び/又は臭素原子の導入は、
- エラストマー(A)製造中に、2~10個の炭素原子を含有するブロモ及び/若しくはヨードオレフィン、又はヨード及び/若しくはブロモフルオロアルキルビニルエーテルなどの、臭素化及び/若しくはヨウ素化硬化部位コモノマーを、エラストマー(A)中の硬化部位コモノマーの含有量が他のベースモノマー単位の100モル当たり一般に0.05~2モルであるような量で、重合媒体へ添加することによって;又は
- エラストマー(A)製造中に、ヨウ素化及び/若しくは臭素化連鎖移動剤、例えば、式R(I)(Br)(式中、Rは、1~8個の炭素原子を含有する(ペル)フルオロアルキル若しくは(ペル)フルオロクロロアルキルであり、一方、x及びyは、1≦x+y≦2で、0~2の整数である)の化合物、又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属ヨウ化物及び/若しくは臭化物を重合媒体に添加することによって
得られ得る。
【0062】
イオン硬化のための硬化系は、一般に、当技術分野において周知であるように、少なくとも1種の硬化剤及び少なくとも1種の硬化促進剤を含む。
【0063】
硬化促進剤の量は、一般に、エラストマー(A)の100部当たり0.05~5重量部(phr)に含まれ、硬化剤の量は、典型的には、0.5~15phr、好ましくは1~6phrに含まれる。
【0064】
芳香族若しくは脂肪族ポリヒドロキシル化化合物、又はそれらの誘導体が、硬化剤として使用され得る。これらの中に、特にジヒドロキシ、トリヒドロキシ及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン又はアントラセン;脂肪族、脂環式若しくは芳香族二価基を介して、又は或いはまた酸素原子若しくは硫黄原子、或いはカルボニル基を介して2つの芳香環が一緒に結合している、ビスフェノール類が挙げられるであろう。芳香環は、1つ以上の塩素、フッ素若しくは臭素原子で、又はカルボニル、アルキル若しくはアシル基で置換され得る。ビスフェノールAFが特に好ましい。
【0065】
使用され得る硬化促進剤の例としては:第四級アンモニウム又はホスホニウム塩;アミノホスホニウム塩;ホスホラン;イミン化合物等が挙げられる。第四級ホスホニウム塩及びアミノホスホニウム塩が好ましい。
【0066】
硬化促進剤及び硬化剤を別々に使用する代わりに、イオン硬化のための硬化系が1:2~1:5、好ましくは1:3~1:5のモル比での硬化促進剤と硬化剤との間の付加物を含むことも可能であり、硬化促進剤は、上で定義されたような、正電荷を有する有機オニウム化合物の1つであり、硬化剤は、上で示された化合物、特にジヒドロキシ若しくはポリヒドロキシ化合物又はジチオール若しくはポリチオール化合物から選択され;付加物は、表示されたモル比での硬化促進剤と硬化剤との間の反応の生成物を融解させることによって、又は表示された量での硬化剤で補われた1:1付加物の混合物を融解させることによって得られる。任意選択的に、付加物中に含有される硬化促進剤に対して、過剰の硬化促進剤がまた存在し得る。
【0067】
以下のもの:1,1-ジフェニル-1-ベンジル-N-ジエチルホスホランアミン及びテトラブチルホスホニウムが、付加物の調製のためのカチオンとして特に好ましく;特に好ましいアニオンは、2つの芳香環が3~7個の炭素原子のペルフルオロアルキル基から選択される二価基を介して結合しており、及びOH基がパラ位にある、ビスフェノール化合物である。
【0068】
イオン硬化のための硬化系に任意選択的に含まれる他の構成成分は:
i)1種以上の鉱酸受容体であって、一般にエラストマーのイオン硬化において公知のものから選択され、好ましくは二価金属の酸化物、好ましくはMg、Zn、Ca又はPbの酸化物からなる群から選択され、典型的には、エラストマー(A)の1~40phrの量で含まれる鉱酸受容体;
ii)1種以上の塩基性化合物であって、エラストマーのイオン硬化において公知のものから選択され、一般的に、二価金属の水酸化物(好ましくは:Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH))、弱酸の金属塩、例えばCa、Sr、Ba、Na及びK炭酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、及び亜リン酸塩、並びに上で言及された水酸化物と上で言及された金属塩との混合物からなる群から選択され、典型的には、エラストマー(A)の0.5~10phrの量で添加される塩基性化合物
である。
【0069】
本発明の一実施形態において、加硫物(V)の調製方法は、エラストマー(A)、少なくとも1種の硬化系(CS)及びポリマー(F)を、ミキサーにおいて、有機構成要素が全て融解形態にある温度、したがって有機構成要素の全てのガラス転移温度超又は溶融温度超の温度で混合する工程を含む。エラストマー(A)は、溶融混合中に加硫物(V)を得るために動的硬化され、加硫物は、次いで冷却され、ミキサーから取り出され、顆粒形態へ好適に造形される。
【0070】
本発明の別の実施形態において、加硫物(V)の調製方法は、(i)硬化系(CS)が溶融ミキサーにおいてエラストマー(A)と、エラストマー(A)が融解形態にある温度で混合されてマスターバッチを提供する第1段階であって、マスターバッチが次いで冷却されピースにカットされる段階と;(ii)段階(i)において得られたマスターバッチがポリマー(F)と、構成要素が全て融解形態にある温度で、したがって構成要素の全てのガラス転移温度超又は溶融温度超の温度で、エラストマー(A)が加硫物(V)を得るために動的に硬化する条件で溶融混合される第2段階であって;このようにして得られた加硫物(V)は、次いで冷却され、ミキサーから取り出され、顆粒形態へ好適に造形される段階とを含む2段階プロセスである。
【0071】
融解状態での混合は、標準的な混合デバイスを用いて達成することができ;それは、一般に、押出機デバイスを用いて達成され、二軸スクリュー押出機が好ましい。これ故に、それは、ペレットの形態の組成物(C)又は加硫物(V)を製造する一般的な実施である。
【0072】
純粋な又は他の追加の任意選択の構成成分、例えばエキステンダー油、合成加工油、安定剤、加工助剤、充填材、顔料、接着剤、粘着付与剤、及びワックスと配合された、組成物(C)又は加硫物(V)は、フィルム、チューブ、ストリップ又はフィラメントを製造するために使用することができ、並びに組成物(C)又は加硫物(V)は、異なる物品へ適切に造形することができる。
【0073】
特に、本発明は、フィルムの形態の組成物(C)又は加硫物(V)に関する。フィルムは、独立品目として、又は多層構造物の一部として、例えばフラットフィルムとして、又はチューブ状物品の周りに巻き付けて使用することができる。
【0074】
特に、本発明は、本発明の少なくとも1つの組成物(C)又は加硫物(V)を含むパイプに関する。
【0075】
用語「パイプ」とは、本明細書では、上で定義されたような少なくとも1つの組成物(C)又は加硫物(V)からなる、又はそれを少なくとも含む連続チューブ状パイプ、或いはその内表面又は外表面が、上で定義されたような少なくとも1つの組成物(C)又は加硫物(V)からなる、又はそれを少なくとも含むチューブ状層でコートされている連続チューブ状パイプを意味することを意図する。
【0076】
本発明のパイプは、単層パイプ又は多層パイプであり得る。
【0077】
用語「単層パイプ」とは、本明細書では、少なくとも1つの組成物(C)又は加硫物(V)からなる、又はそれを少なくとも含む1つのチューブ状層からなるパイプを意味することを意図する。
【0078】
用語「多層パイプ」とは、本明細書では、少なくとも2つの互いに隣接した同心層を含むパイプであって、少なくとも内層が、少なくとも1つ組成物(C)又は加硫物(V)を含む、又は好ましくはそれからなる、パイプを意味することを意図する。
【0079】
本発明の組成物(C)又は加硫物(V)は、有利には、押出又は射出成形などの溶融加工技術によって、パイプ又はそれの部品などの物品へ加工され得る。
【0080】
本発明の組成物(C)又は加硫物(V)は、有利には、少なくとも200℃の、好ましくは少なくとも250℃の温度で溶融加工技術によって加工され得る。
【0081】
別の目的では、本発明は、石油及びガス用途、並びに自動車用途などの様々な用途での組成物(C)又は加硫物(V)を含むフィルムの又は物品の使用に関する。
【0082】
本発明の実施形態によれば、本発明のパイプは、自動車要素のための燃料系におけるラインであり得る。
【0083】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0084】
本発明は、これから、以下の実施例に関連して記載され、その目的は、単に例証的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0085】
原材料
フルオロエラストマー1は、68.5%フッ素含有量を有する100重量部のフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレンターポリマー、2.5重量部のビスフェノールAF(CAS番号1478-61-1)、0.5部のベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウムクロリド(CAS番号82857-68-9)、及び0.4重量部のベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(CAS番号1100-88-5)を含有する(本明細書では以下、FKM1))。
【0086】
フルオロエラストマー2は、66%フッ素含有量を有する100重量部のフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、2重量部のビスフェノールAF(CAS番号1478-61-1)、及び0.4重量部のベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウムクロリド(CAS番号82857-68-9)を含有する(本明細書では以下、FKM2))。
【0087】
66%フッ素含有量を有するフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーでできた、フルオロエラストマー3(本明細書では以下、FKM3)。
【0088】
ポリマー(F-1):国際公開第2018/189091号パンフレットに記載される手順に従って調製された、融点T=225℃及びMFI=22g/10分を有するを有するTFE(67モル%)-VDF(31モル%)-PPVE(2モル%)ターポリマー。
【0089】
ポリマー(F-2):国際公開第2018/189091号パンフレットに記載される手順に従って調製された、融点T=225℃及びMFI=6g/10分を有するを有するTFE(66モル%)-VDF(32モル%)-PPVE(2モル%)ターポリマー。
【0090】
ポリマー(F-3-C):国際公開第2018/189091号パンフレットに記載される手順に従って調製された、融点T=230℃及びMFI=5g/10分を有するを有するTFE(63モル%)-VDF(37モル%)コポリマー。
【0091】
SOLEF(登録商標)1008は、Solvay Specialty Polymersから商業的に入手可能な、低-中粘度及びTm=172℃のVDFの標準的ホモポリマーである(本明細書では以下、ポリマー(F-4-C))。
【0092】
Rhein ChemieからRhenofit(登録商標)-CFとして商業的に入手可能な、Ca(OH)
【0093】
HallstarからMaglite-DE(登録商標)として商業的に入手可能な、MgO。
【0094】
ポリマー組成の測定
ポリマー(F-1 F-2及びF-3-C)中のモノマーのモル量は、376.62MHzで動作するAgilent DirectDrive2 400 MHz NB分光計を用いる、固体状態19F Magic Angle Spinning(MAS)NMRにより得られたNMRスペクトルのデコンボリューションによって測定した。
【0095】
第2溶融温度の測定
融点は、ASTM D 3418標準方法に従って示差走査熱量測定法(DSC)によって測定した。第2加熱期間中に観察される吸熱ピークとして定義される、第2溶融温度を記録し、本明細書では、ポリマーの融点(T)と言う。
【0096】
メルトフローインデックス(MFI)の測定
メルトフローインデックスは、300℃において5Kgの重量を適用することによりASTM D 1238標準方法に従って測定した。
【0097】
引張測定(弾性率)
引張測定は、280℃でのポリマーの圧縮成形によって得られた1.5mm厚さのフィルムに関してASTM D638検体タイプVに従って23℃で実施した。
【0098】
透過率測定
燃料CM15(42.5%トルエン、42.5%イソオクタン、15 5メタノール)に対する透過率は、280℃でのポリマーの圧縮成形によって得られた0.3mm厚さのフィルムに関してASTM E96(秤量-カップ法)に従って60℃で測定した。
【0099】
透過係数は、定常状態レジームにおける重量損失対時間の勾配によって計算した。
【0100】
実施例1及び3
70グラムの熱可塑性加硫物を、ユニバーサル(W)ブレードを備えたBrabender内部ミキサーEHT50を用いて2段階で調製した。
【0101】
第1段階は、100gのFKM1に3phrの水酸化カルシウム及び3phrの酸化マグネシウムを添加することによるエラストマーマスターバッチ(MB1)の調製を含む。MB1は、常に70℃未満の温度に保つようにミキサーを冷却して、エラストマーブレードを用いて調製した。混合時間は20分であった。MB1をミキサーから取り出し、その後の使用のために10~15mmの小さいピースにカットした。
【0102】
第2段階において、内部ミキサー温度を280℃に設定した。所要量のポリマー(F-1)をミキサーに注ぎ入れ、30rpmで5分間溶融させた。温度を260℃に下げた。5分後に、所要量の第1段階において調製されたMB1を添加した。混合を30rpmでさらに10分間継続し、トルク及び温度を記録した。
【0103】
最後に、このようにして得られた加硫物を手作業でミキサーから取り出し、液体窒素中で粉砕した。
【0104】
70グラムの各加硫物をこの手順によって調製した。
【0105】
実施例1及び3において得られた加硫物の組成、弾性率及び透過率を表2に報告する。
【0106】
実施例2及び4
第1段階において、ポリマー(F-2)並びに各3phrの水酸化カルシウム及び酸化マグネシウムでできた粉末ミックスを、ローラーミキサーにおいて一晩で調製した。
【0107】
次いで、70グラムの熱可塑性加硫物を、ユニバーサル(W)ブレードを備えた、Brabender内部ミキサーEHT50を用いて調製した。内部ミキサー温度を280℃に設定した。所要量の粉末ミックスをミキサーに注ぎ入れ、30rpmで5分間溶融させた。次いで温度を260℃に下げた。5分後に、10~15mmの小さいピースにカットされた、所要量のFKM1又はFKM2を添加し、15分間30rpmで混合し、トルク及び温度を記録した。最後に、加硫物をミキサーから手作業で取り去り、液体窒素中で粉砕した。
【0108】
70グラムの各加硫物をこの手順を用いることによって調製した。
【0109】
実施例2及び4において得られた加硫物の組成、弾性率及び透過率を表2に報告する。
【0110】
実施例5
70グラムの組成物を、ユニバーサル(W)ブレードを備えたBrabender内部ミキサーEHT50を用いて2段階で調製した。
【0111】
第1段階は、100gのFKM3に3phrの酸化マグネシウムを添加することによるエラストマーマスターバッチ(MB2)の調製を含む。MB2は、常に70℃未満の温度に保つようにミキサーを冷却して、エラストマーブレードを用いて調製した。混合時間は20分であった。MB2をミキサーから取り出し、その後の使用のために10~15mmの小さいピースにカットした。
【0112】
第2段階において、内部ミキサー温度を280℃に設定した。所要量のポリマー(F-1)をミキサーに注ぎ入れ、30rpmで5分間溶融させた。温度を260℃に下げた。5分後に、所要量の第1段階において調製されたMB2を添加した。混合を30rpmでさらに10分間継続し、トルク及び温度を記録した。
【0113】
最後に、このようにして得られた化合物を手作業でミキサーから取り出し、液体窒素中で粉砕した。
【0114】
実施例5において得られた化合物の組成、弾性率及び透過率を表2に報告する。
【0115】
比較例1、2及び3
熱可塑性加硫物を、ユニバーサル(W)ブレードを備えたBrabender内部ミキサーEHT50を用いて2段階で調製した。
【0116】
第1段階は、100gのFKM1に6phrの水酸化カルシウム及び3phrの酸化マグネシウムを添加することによるエラストマーマスターバッチ(MB3)の調製を含む。MB3は、常に70℃未満の温度に保つようにミキサーを冷却して、エラストマーブレードを用いて調製した。混合時間は20分であった。MB3をミキサーから取り出し、その後の使用のために10~15mmの小さいピースにカットした。
【0117】
第2段階において、内部ミキサー温度を230℃に設定した。所要量のポリマー(F-4-C)をミキサーに注ぎ入れ、30rpmで5分間溶融させた。5分後に、所要量の第1段階において調製されたMB3を添加した。混合を30rpmでさらに10分間継続し、トルク及び温度を記録した。
【0118】
最後に、このようにして得られた加硫物を手作業でミキサーから取り出し、液体窒素中で粉砕した。
【0119】
比較例1、2及び3において得られた加硫物の組成、弾性率及び透過率を表2に報告する。
【0120】
比較例4
熱可塑性加硫物を、ユニバーサル(W)ブレードを備えたBrabender内部ミキサーEHT50を用いて2段階で調製した。
【0121】
第1段階は、100gのFKM1に6phrの水酸化カルシウム及び3phrの酸化マグネシウムを添加することによるエラストマーマスターバッチ(MB3)の調製を含む。MB3は、常に70℃未満の温度に保つようにミキサーを冷却して、エラストマーブレードを用いて調製した。混合時間は20分であった。MB3をミキサーから取り出し、その後の使用のために10~15mmの小さいピースにカットした。
【0122】
第2段階において、内部ミキサー温度を280℃に設定した。所要量のポリマー(F-3-C)をミキサーに注ぎ入れ、30rpmで5分間溶融させた。温度を260℃に下げた。5分後に、所要量の第1段階において調製されたMB3を添加した。混合を30rpmでさらに10分間継続し、トルク及び温度を記録した。
【0123】
最後に、このようにして得られた加硫物を手作業でミキサーから取り出し、液体窒素中で粉砕した。
【0124】
比較例4において得られた加硫物の組成及び弾性率を表2に報告する。
【0125】
【0126】
上記を考慮して、本発明の組成物は、実施例1~5の化合物によってとりわけ表されるように、熱可塑性相としてPVDFホモポリマー又はTFE/VDFコポリマーを含む先行技術の組成物に匹敵する、燃料に対する低い透過率を示しながら、意外にも、より低い弾性率を示すことが分かった。本発明の組成物は、したがって、石油及びガス用途における、及び自動車燃料ラインにおけるなどの、低い透過性及び高い可撓性が要求される用途向けに特に好適である。