(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】電池用途向けのカソード電極組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240708BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240708BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20240708BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240708BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240708BHJP
H01G 11/46 20130101ALI20240708BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01G11/36
H01G11/86
H01G11/38
H01G11/46
(21)【出願番号】P 2021557071
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 US2020019199
(87)【国際公開番号】W WO2020197673
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-10
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010758
【氏名又は名称】キャボット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】デュパスキエ オーレリアン エル
(72)【発明者】
【氏名】クツォフスキー ヤコフ イー
(72)【発明者】
【氏名】キルリディス アガサジェロス
(72)【発明者】
【氏名】ラニガン ディアナ
(72)【発明者】
【氏名】マッシュタリアー オルハ
(72)【発明者】
【氏名】オリャチャ ミオドラグ
(72)【発明者】
【氏名】シャー トゥーシャー
(72)【発明者】
【氏名】ザパスニック ジョセフ
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-522803(JP,A)
【文献】特開2005-050669(JP,A)
【文献】特開2016-025077(JP,A)
【文献】特表2018-530113(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
H01G 11/36
H01G 11/86
H01G 11/38
H01G 11/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気活性材料ならびに
カーボンナノ構造体
を含む電極組成物であって、
電気活性材料がリチウム遷移金属化合物であり、
カーボンナノ構造体が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている複数の多層カーボンナノチューブを含み、
ここにおいて、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有し、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
多層カーボンナノチューブが分岐している場合において、SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、いかなる触媒粒子も分岐点もしくはその近傍に存在しない、電極組成物。
【請求項2】
多層
カーボンナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、請求項1に記載の電極組成物。
【請求項3】
多層カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、請求項1~2のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノ構造体が、分散体または遊離微粒子材料の形態で提供されるカーボンナノ構造体を含む、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
PVPベースの分散剤、スチレン無水マレイン酸ベースの分散剤、セルロースベースの分散剤、共分散剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される分散剤をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
電極組成物が、乾燥した場合、カーボンナノ構造体を、質量基準で約1%以下の量で含有する、請求項1~5のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項7】
カーボンナノ構造体がコーティングされており、前記コーティングしたカーボンナノ構造体が、ポリウレタン-コーティングしたナノ構造体またはポリエチレングリコール-コーティングしたカーボンナノ構造体である、請求項
1~6のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項8】
コーティングしたカーボンナノ構造体の質量に対する、コーティングの質量が、約0.1%~約10%の範囲内である、請求項7に記載の電極組成物。
【請求項9】
電極組成物が、乾燥した場合、コーティングしたカーボンナノ構造体を質量基準で約1%以下の量で含有する、請求項7に記載の電極組成物。
【請求項10】
カーボンブラックをさらに含む、請求項1~
9のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項11】
カーボンブラックをさらに含み、カーボンブラックが、200m
2/g以下のBET面積および少なくとも130mL/100gのOANを有する、請求項1~
10のいずれかに記載の電極組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の組成物を含む、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35USC119(e)の下、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2019年3月22日出願の、米国仮特許出願第62/822,097号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電子デバイスから電気自動車に及ぶ多数の用途向けの一般的に使用されている電気エネルギー源である。リチウム-イオン電池(LIB)は、通常、充電中および放電中にリチウムイオンおよび電子が電極を出入りすることが可能となる配置にある負極および正極を含む。電極に摂食する電解質溶液は、イオンが移動可能な導電性媒体を供給する。両電極間の直接的な反応を防止するため、イオン透過性セパレータを使用して、両電極を物理的かつ電気的に隔離する。稼働中に、電気的接触が両電極に行われて、電子がデバイスを流れて電力を供給し、リチウムイオンは一方の電極から他方の電極に向かって電解質を移動することが可能となる。
多くの場合、負極はグラファイトから構築される。正極は、通常、少なくとも電気活性材料、結合材、および導電性添加物を有する混合物(例えば、ペーストとして施用される)を支持する導電性基材を含む。電気活性材料、例えば、リチウム遷移金属酸化物は、リチウムイオンを受容および放出することが可能である。結合材であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、例えば、電極への機械的完全性および安定性を実現するために使用される。電気活性材料および結合材は、多くの場合、弱い電気導電性または絶縁性の特性を示すため、グラファイトおよびカーボンブラックなどの材料が、多くの場合、電極の導電率を増強するために加えられる。
【発明の概要】
【0003】
リチウムイオン電池、例えば、LFP、NCMおよびNCAに使用されているいくつかのカソード材料は、例えば、1センチメートル当たり10-9シーメンス(S/cm)から10-4S/cmまでの低い電気導電率を示すことができる。電池不具合を回避するため、この性能は、導電性ネットワークを有するカソードを構築することにより増強することができる。性能を増強し、電池不具合を回避する可能性を有するいくつかの材料には、例えば房状の幾何形状を有する導電性カーボンブラック(CB)、およびカーボンナノチューブ(CNT)が挙げられる。
一般に、導電性添加物および結合材は、電気エネルギーを発生する電気化学反応に関与しないので、正極に対して利用可能な体積に含まれ得る電気活性材料の量をこれらの材料が効果的に低下させると、これらの材料は、電池のある性能特徴(例えば、容量およびエネルギー密度)に負に影響を及ぼし得る。
【0004】
導電性カソードネットワークを構築するために必要とされるCBの量は比較的高く、通常2質量パーセント(質量%)を上回る。さらに、カソードの体積増大および収縮は、CB粒子間の接触の損失をもたらし、電池不具合につながる可能性がある。
CNTは、カソード組成物に組み込まれる添加物の量を、CB量と比べて減少させる可能性を有する魅力的な材料として考えられ得る。CNTを用いて操作する場合に遭遇するいくつかの問題として、一部の媒体中での分散の制限および不適切な純度が挙げられる。これらの問題の少なくとも一部は、個々のカーボンナノチューブ同士の間に起こる強力なファンデルワールス力によって引き起こされ、束状または絡んだ凝集を引き起こすと考えられる。このような兆候は、期待未満の特性増強および/または一貫性の欠く性能をもたらす恐れがある。一部の場合、カーボンナノチューブの束を個々の、十分に分離された部材に解くために利用可能な技術は、元の状態のカーボンナノチューブを使用した場合に予期される強化に比べて、望ましい特性強化に悪影響を及ぼす可能性がある。
多くの場合、CNTの低い分散性は、過剰量(すなわち、理論的量より多い量)のCNTを使用することによって対処される。しかし、この手法は、生産コストを増加させ、不純物(例えば、CNTを調製するために使用されている鉄およびコバルト触媒)を導入し、電気活性材料に対して利用可能な電池体積を減少させることにより電池容量を減少させる可能性がある。
【0005】
さらなる困難として、これらのサイズが小さいため、個々のカーボンナノチューブの環境衛生および安全性プロファイルに関する懸念が高まっている。また、一部の商業用途の場合、個々のカーボンナノチューブを生産するコストは極めて高くなり得る。
したがって、これらの問題の少なくとも一部に対処することができる導電性添加物に対する必要性が存在する。例えば、高エネルギー密度により特徴付けられる電池に有用な添加物に対する必要性が存在する。1質量%以下のレベルで加えた場合でも良好な導電率を維持することができる材料が特に所望される。
その態様のいくつかでは、本発明は、カーボンナノ構造体(CNS)から調製した組成物に関する。次に、この組成物を使用して、電極組成物、例えば、リチウムイオン電池向けカソード組成物を調製することができる。
【0006】
本明細書で使用される場合、用語「カーボンナノ構造体」または「CNS」とは、多くの場合、相互にかみ合っている、分岐している、架橋している、および/または互いに共通の壁を共有することによってポリマー構造として存在し得る、複数のカーボンナノチューブ(CNT)、多層(多層(又は多壁)(multi-walled)としても公知)カーボンナノチューブ(MWCNT)を指す。したがって、CNSは、例えば、そのポリマー構造の基本モノマー単位としてMWCNTなどのCNTを有すると考えることができる。通常、CNSは、CNS成長条件下で、基材(例えば、繊維材料)表面で成長させる。このような場合、CNSにおけるCNTの少なくとも一部は、従来のカーボンナノチューブの森に見られる平行なCNT配列にかなり似た、互いに実質的に平行に並び得る。
CNSは、遊離粒子(例えば、ペレット、フレーク、顆粒などの形態で)として提供されてもよいし、または適切な分散剤中に分散されていてもよい。
一部の実施形態では、本発明は、電気活性材料、ならびにカーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片、および破砕したカーボンナノチューブ、例えば、破砕したMWCNTからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含む電極組成物に関する。多くの場合、電気活性材料はリチウム遷移金属化合物である。
電極組成物を調製するための方法は、カーボンナノ構造体を含有する分散体を、電気活性材料、例えば、リチウム遷移金属化合物と一緒にすることを含む。電極組成物を調製するための別の方法は、電気活性材料、例えば、リチウム遷移金属化合物を含有するスラリーにカーボンナノ構造体を組み込むことを含む。
【0007】
さらなる実施形態は、CNS、CNS断片(CNSから誘導され得る)および/または破砕したCNT、例えば、MWCNT(これは、CNSから誘導され、カーボンナノチューブの分岐および壁の共有という構造的特徴を保持している)を含む電極および/または電池に関する。
1つの実装形態では、リチウム電池は、リチウム遷移金属化合物および第1の炭素導電性添加物を含むカソード、ならびにグラファイト、ケイ素またはチタン酸リチウムからなる群から選択される活性のあるアノード材料および第2の炭素導電性添加物を含むアノードを含む。第1の、および任意で第2の炭素導電性添加物は、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片、および破砕したカーボンナノチューブ、例えば、破砕したMWCNTからなる群から選択される。
一部の場合、CNS、CNS断片および/または破砕したCNTのうちの1種または複数を含む導電性添加物は、添加物が、比較的少ない量で、例えば、1質量%(wt%)以下で組み込まれている場合でさえも、所望の電気特性を付与する。この効果は、少なくとも一部は、分岐を維持する断片の形成のためであり、これにより、断片間の優れた接続および強化された導電性接続の生成が可能になると考えられる。他の状況では、本明細書に記載されているような添加物は、例えばCBなどの従来の添加物を使用すると、一層高いロード量のみで通常実現され得るカソード容量および内部抵抗性をもたらす。比較電極組成物(例えば、導電性添加物としてCB、CNT、またはグラフェンを含有する)に比べると、本明細書に記載されている原理による電極添加物は、同じまたは実質的に同じ電気特性を実現するほど多い量の使用を通常必要としない。多くの場合、CNSベースの添加物の必要なレベルは、慣用的な炭素添加物の場合に必要なレベルよりも少ない。
【0008】
言い換えると、CNS出発材料から調製した組成物の使用は、CB、CNT、グラフェンなどの従来の炭素添加物を同レベルのロード量で用いて配合した比較電極組成物と比べて、少なくとも同じ、および多くの場合改善された電気特性を示す電極を生成する。
よって、本発明の態様の実施は、ある種の性能を実現するために必要な添加物の量を低減することにより、所与の電極体積中に一層多い量の活性電極材料(および一層少ない量の導電性添加物)を含有する電極の生成が可能となる。一部の実施形態では、利用されるCNSは、断片(部分的に断片化されたCNSを含む)および/または破砕したCNTを生成する。これらの構造は、互いの間の結合性の改善をもたらし、これによって電極における導電率を増強することができる。
CNSは、取扱いが容易な形態で提供することができ、一部の実施形態では、所望の溶媒中で安定した分散体を形成することができる。本明細書に記載されている組成物および技術はまた、個々のCNTおよび/またはCBの使用において遭遇する他の問題にも対処する。
【0009】
CNSを使用して調製したカソード電極は、元の状態のMWCNTで作製されたカソードと比較した場合、改善された低温性能を示すことが判明している。低温性能の利点はまた、分散体を介してCNSを提供することに関連し得る。
構成および部分の組合せの様々な詳細、および他の利点を含めた、本発明の上記の特徴および他の特徴を、これより、添付の図面を参照しながらより具体的に記載され、特許請求の範囲において指摘される。本発明を具現化する特定の方法およびデバイスが、本発明の限定としてではなく、例示として示されていることが理解されよう。本発明の原理および特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々かつ多数の実施形態において使用され得る。
添付の図では、参照文字は、異なる図形全体にわたり同じ部分を指す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。代わりに、本発明の原理を例示する際に強調がなされている。図は以下の通りである:
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A-1B】非カーボンナノ構造、または非カーボンナノ構造由来のY形状のMWCNT(
図2A)と、カーボンナノ構造の分岐MWCNT(
図2B)との間の差異を例示する図である。
【
図2A-2B】カーボンナノ構造に見出される多層カーボンナノチューブを特徴付ける特徴を示すTEM画像である。
【
図2C-2D】多数の分岐の存在を示すカーボンナノ構造のSEM画像である。
【
図2E】CNSにおける多層カーボンナノチューブの絡んだおよび分岐の性質を示す高倍率のSEM画像である。
【
図3A】成長基材からのカーボンナノ構造の単離後のカーボンナノ構造フレーク材料の例示的描写である。
【
図3B】フレーク材料として得た例示的カーボンナノ構造のSEM画像である。
【
図4】2質量%および4質量%のCBロード量で調製したカソードの抵抗性と比較した、1.5質量%以下のCNSロード量で調製したカソードの抵抗性を示す一連のプロットである。
【
図5】0.25質量%のCNS、2%のCBおよび4%のCBで調製した電極の放電容量を比較する一連のプロットである。
【
図6】0.25質量%のCNSおよび比較の2質量%および4質量%の炭素添加物で構成されるカソードで作製されたコインセル上に、異なる充電率(SOC)で得た直流内部抵抗値(DCIR)を示す一連のプロットである。
【
図7】0.5%のCNS、0.5%のCNTまたは1%のカーボンブラック(CB)を含有するNCM622カソードの面内抵抗性および面貫通導電率を示すグラフである。
【
図8】選択されたCCAタイプを用いて調製され、アルミ箔上にコーティングされた、アルミ箔上のカソードシートから得た電極の面貫通抵抗性を、0.1質量%~1.0質量%の範囲のCCA質量パーセントの関数として示すプロットである。
【
図9】0.5質量%の本明細書中に開示されている導電性添加物を含有する、アルミ箔上にコーティングした、選択されたNCM電極の面貫通抵抗性を示すプロットである。
【
図10】本明細書で開示されている導電性添加物を使用した、NCM622カソードを有するハーフコインセルの、0.5Cおよび2Cの放電容量ならびに50%充電率(SOC)におけるHPPC DC-IRを示すプロットである。
【
図11】本明細書で開示されている導電性添加物を使用したNCM622カソードを有するハーフコインセルの、+25℃での1C放電容量に対する、-10℃での1C放電容量保持を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、これより、本発明の例示的な実施形態が示されている添付の図面を参照しながら、本発明のこれ以降に一層完全に説明される。しかし、本発明は、多数の異なる形態で具現化されることができ、本明細書において説明されている実施形態への限定と解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が、網羅的かつ完全になるよう、および当業者に本発明の範囲を十分に伝えるよう提供される。
【0012】
一般的に、本発明は、電池向けの電極を生成するために使用することができる組成物、組成物を作製する方法、ならびに電極(例えば、カソード)および電池における組成物の用途に関する。その態様の多くでは、本発明は、リチウムイオン電池に好適な組成物に関する。1つの例では、目的の電池は再充填可能なリチウムイオン電池である。
様々なタイプのリチウムイオン電池の例(カソードを形成するために使用される電気活性材料、多くの場合、インターカレーション化合物の頭字語に準拠する)としては、LCO(コバルト酸リチウム)、LMO(酸化マンガンリチウム)、NCM(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)、NCA(リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物)、LCP(リン酸コバルトリチウム)、LFP(リン酸鉄リチウム)、LFSF(フルオロ硫酸リチウム鉄)、LTS(リチウムチタン硫化物)、および当分野で公知であるかまたは今後開発される他のものが挙げられる。これらなどの材料は、本明細書において、「リチウム遷移金属化合物」、例えば、「リチウム遷移金属酸化物」と一般に称される。
【0013】
いくつかの実施形態は、導電性添加物からなる、導電性添加物から実質的になる、または導電性添加物を含む組成物に関する。組成物は、結合材と共にまたは結合材なしで、活性電極材料(例えば、NCMまたはNCA)と組み合わせて、スラリーの形態、通常ペーストの形態の電極組成物を形成することができ、この電極組成物を集電体に施用して、電極を形成することができる。電極は、電池を生成するために使用することができる。
その態様の多数において、本発明は、本明細書において、分岐状であることによるポリマー構造で、例えばデンドリマー形状で架橋されている、互いに入り込む、絡んでいる、および/または互いに共通の壁を共有する複数のカーボンナノチューブ(CNT)を指す用語である、カーボンナノ構造体(CNS、単一のCNS)を使用して調製された組成物に関する。本明細書に記載されている組成物、電極および/または電池を調製するために行われる操作により、CNS断片および/または破砕したCNTが生成し得る。CNSの断片はCNSから誘導され、より大きなCNSと同様に、分岐状をしている、互いに入り込む、絡んでいる、および/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造で架橋されている複数のCNTを含む。破砕したCNTは、CNSに由来し、分岐しており、互いに共通の壁を共有している。
【0014】
高度に絡んだCNSは、肉眼で見えるサイズであり、そのポリマー構造の基本モノマー単位として、カーボンナノチューブ(CNT)を有すると考えることができる。CNS構造体における多数のCNTの場合、CNT側壁の少なくとも一部は、別のCNTと共有されている。CNSにおける各カーボンナノチューブは、必ずしも、分岐している、架橋されている、または他のCNTと共通の壁を共有する必要はないことが一般に理解されるが、カーボンナノ構造体中のCNTの少なくとも一部は、相互に、かつ/またはカーボンナノ構造体の残部において分岐状の、架橋しているもしくは共通の壁のカーボンナノチューブと互いに入り込むことができる。
【0015】
当分野で公知の通り、カーボンナノチューブ(CNT(単数または複数))は、互いに結合したsp2混成炭素原子からなる少なくとも1つのシートを含んで、円筒形構造または管状構造を形成するハニカム格子を形成する炭素系材料である。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)または多層カーボンナノチューブ(MWCNT)とすることができる。SWCNTは、フラーレンに類似した、sp2混成炭素の同素体と考えることができる。この構造は、6員の炭素環を含む、円筒形の管である。一方、類似のMWCNTは、同心円筒のいくつかの管を有する。これらの同心壁の数は、様々となり得、例えば、2~25またはそれ超となり得る。通常、MWNTの直径は、典型的なSWNTの場合に0.7~2.0nmであることに比べると、10nm以上とすることができる。
【0016】
本発明において使用されるCNSの多くでは、CNTは、例えば、少なくとも2つの共軸カーボンナノチューブを有するMWCNTである。特定の場合において、壁の数を分析するために十分な倍率で、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により決定される場合、在する壁の数は、2~30など、例えば:4~30;6~30;8~30;10~30;12~30;14~30;16~30;18~30;20~30;22~30;24~30;26~30;28~30;または2~28;4~28;6~28;8~28;10~28;12~28;14~28;16~28;18~28;20~28;22~28;24~28;26~28;または2~26;4~26;6~26;8~26;10~26;12~26;14~26;16~26;18~26;20~26;22~26;24~26;または2~24;4~24;6~24;8~24;10~24;12~24;14~24;16~24;18~24;20~24;22~24;または2~22;4~22;6~22;8~22;10~22;12~22;14~22;16~22;18~22;20~22;または2~20;4~20;6~20;8~20;10~20;12~20;14~20;16~20;18~20;または2~18;4~18;6~18;8~18;10~18;12~18;14~18;16~18;または2~16;4~16;6~16;8~16;10~16;12~16;14~16;または2~14;4~14;6~14;8~14;10~14;12~14;または2~12;4~12;6~12;8~12;10~12;または2~10;4~10;6~10;8~10;または2~8;4~8;6~8;または2~6;4-6;または2~4の範囲内にあることができる。
CNSはポリマーであり、CNTの高度に分岐された架橋したネットワークであるので、個別化されたCNTの場合に観察される化学の少なくとも一部はまた、CNSに対して行われてもよい。さらに、CNTを使用することに多くの場合に伴う魅力的な特性の一部はまた、CNSを組み込んでいる材料において示される。これらには、いくつかの例を挙げると、例えば、導電性、熱可塑性または熱硬化性化合物などのコンポジットに一体化されると良好な引張強度、熱的安定性(時として、ダイヤモンド結晶または面内グラファイトシートの熱的安定性と比べる)および/または化学的安定性を含めた物理特性が含まれる。
【0017】
しかし、本明細書で使用する場合、用語「CNS」は、「モノマー状」フラーレンなどの個別化された互いに絡んでいない構造に対する同義語ではない(用語「フラーレン」は、中空球体、楕円体、管、例えばカーボンナノチューブおよび他の形状の形態にある炭素の同素体を幅広く指す)。実際に、本発明の多くの実施形態は、そのCNTビルディングブロックの使用とは対照的に、CNSの使用の場合に観察される、または予期される差異および利点を強調している。特定の解釈に拘束されることを望むものではないが、CNSにおけるカーボンナノチューブ間での分岐、架橋および壁の共有を組み合わせると、個々のカーボンナノチューブを同様に使用した場合に問題となることが多いファンデルワールス力が低下または最小化すると考えられる。
性能属性に加えて、またはその代替として、CNSの一部である、またはCNSから誘導されるCNTは、いくつかの特徴によって特徴付けることができ、その特徴の少なくとも一部は、上記のCNTを、例えば、普通のCNT(すなわち、CNSから誘導されないCNT、および個別の元の状態のまたは新しいCNTとして供給され得るCNT)などの他のナノ材料と区別することに依存し得る。
多くの場合、CNSに存在するまたはこれから誘導されるCNTは、例えば、約5~約100ナノメートル(nm)の範囲内、例えば、約10~約75nm、約10~約50nm、約10~約30nm、約10~約20nmの範囲内などの、100nm以下という典型的な直径を有する。
【0018】
特定の実施形態では、CNTの少なくとも1つは、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有する。例えば、CNTの少なくとも1つは、2~2.25μm;2~2.5μm;2~2.75μm;2~3.0μm;2~3.5μm;2~4.0μm;または2.25~2.5μm;2.25~2.75μm;2.25~3μm;2.25~3.5μm;2.25~4μm;または2.5~2.75μm;2.5~3μm;2.5~3.5μm;2.5~4μm;または3~3.5μm;3~4μm;3.5~4μm、またはそれより高い範囲内の長さを有する。一部の実施形態では、SEMにより決定される場合、CNTの1つ超、例えば、少なくとも約0.1%、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40、少なくとも約45%、少なくとも約50%の、または半分を超えることさえある割合などの一部は、2μm超、例えば、上で指定した範囲内の長さを有することができる。
【0019】
CNS中、CNSの断片中、またはCNSに由来する破砕したCNT中に存在するCNTの幾何形状は、高いアスペクト比によって多くの場合、特徴付けられ、長さは、通常、直径の100超であり、ある種の場合、かなり一層高い。例えば、CNS(またはCNS断片)において、CNTの長さ対直径であるアスペクト比は、例えば、200~300;200~400;200~500;200~600;200~700;200~800;200~900;または300~400;300~500;300~600;300~700;300~800;300~900;300~1000;または400~500;400~600;400~700;400~800;400~900;400~1000;または500~600;500~700;500~800;500~900;500~1000;または600~700;600~800;600~900;600~1000;700~800;700~900;700~1000;または800~900;800~1000;または900~1000などの約200~約1000の範囲内にあり得る。
CNS、およびCNSから誘導される構造(例えば、CNSの断片または破砕したCNTS)において、CNTの少なくとも1つは、ある「分岐密度」によって特徴付けられることが見出された。本明細書で使用する場合、用語「分岐」とは、単一カーボンナノチューブが、多層(2層以上)の連結した多層カーボンナノチューブへと分岐している特徴を指す。一実施形態は、SEMにより決定される場合、2マイクロメートルの長さのカーボンナノ構造体に沿って、少なくとも2つの分岐が存在することによる分岐密度を有する。3つ以上の分岐も起こり得る。
【0020】
さらなる特徴(例えば、TEMまたはSEMを使用して検出される)は、CNSから誘導されないY形状CNTなどの構造に比べて、CNSに見出される分岐タイプを特徴付けるために使用することができる。例えば、Y形状のCNTは、分岐の領域(点)において、またはその近傍に触媒粒子を有する一方、このような触媒粒子は、CNS、CNSの断片または破砕したCNTにおいて起こる分岐の領域またはその近傍には存在しない。
さらにまたは代替として、CNS、CNSの断片または破砕したCNTにおける分岐の領域(点)において観察される壁の数は、分岐の1つの側(例えば、分岐点の前)からこの領域の他の側(例えば、分岐点の後またはこれを過ぎる)で異なる。本明細書において、壁の数の「非対称性」とも称される、壁の数のこのような変化は、普通のY形状CNTの場合(この場合、分岐点の前の領域と分岐点を過ぎた領域の両方において、同じ数の壁が観察される)には観察されない。
【0021】
これらの特徴を例示する略図は、
図1Aおよび1Bに提示されている。
図1Aには、CNSから誘導されない、例示的なY形状CNT11が示されている。Y形状CNT11は、分岐点15またはその近傍に触媒粒子13を含む。領域17および19は、それぞれ、分岐点15の前およびその後に位置している。Y形状のCNT11などのY形状CNTの場合、領域17と19の両方が、図面中、同じ数の壁によって、すなわち2つの壁によって特徴付けられる。
対照的に、CNSでは、分岐点115において分岐しているCNTビルディングブロック111は、触媒のない領域113において観察される通り、この点またはこの近傍において触媒粒子を含まない。さらに、分岐点115の前、すなわちその先に位置する(または分岐点115の第1の側にある)領域117に存在する壁の数は、領域119(これは、分岐点115に比べて、他の側を過ぎて、この後またはその表面に位置する)における壁の数とは異なる。さらに詳細には、領域117に見出される3つの壁のある特徴は、領域119(
図1Bの略図では、これは、2つの壁しか有していない)まで持ち越されず、上記の非対称が生じる。
これらの特徴は、
図2Aおよび2BのTEM画像、および
図2C~2DのSEM画像に強調されている。
【0022】
一層詳細には、
図2AのTEM領域40におけるCNSの分岐は、いかなる触媒粒子も存在しないことを示している。
図2BのTEMにおいて、第1のチャネル50および第2のチャネル52は、分岐したCNSに特徴付けられる壁の数が非対称であることを指している一方、矢印54は、壁の共有を示す領域を指す。
図2Cおよび2DのSEM領域60および62にそれぞれ、複数の分岐が見られる。
これらの属性の1つ、複数またはすべてが、本明細書に記載されている組成物(例えば、分散体、スラリー、ペースト、固体または乾燥組成物など)、電極および/または電池に遭遇され得る。
一部の実施形態では、CNSは、互いに絡んだおよび/または連結したCNSのネットワークの部分として存在する。このような連結されたネットワークは、CNS間に架橋を含むことができる。
CNSを調製するための好適な技法は、例えば、2014年4月3日に公開された、米国特許出願公開第2014/0093728号、米国特許第8,784,937号B2;同第9,005,755号B2;同第9,107,292号B2;および同第9,447,259号B2に記載されている。これらの書類の内容の全体がこの参照により本明細書に組み込まれている。
これらの書類に記載されている通り、CNSは、好適な基材表面に、例えば触媒処理された繊維材料表面で成長させることができる。生成物は、繊維含有CNS材料とすることができる。一部の場合、CNSは、基材から分離してフレークを形成する。
【0023】
US2014/0093728A1に見られるように、フレーク材料(すなわち、有限寸法を有する離散性粒子)として得たカーボンナノ構造体は、その高度に配列したカーボンナノチューブの絡み合いおよび架橋により、三次元マイクロ構造体として存在する。配列した幾何形状は、迅速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば、約2μm/秒~約10μm/秒などの数μm/秒)下で、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの形成に反映し、これにより、成長用基材から実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長が誘導される。いかなる理論または機構によって拘泥されないが、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの成長速度が速いことが、少なくとも一部、カーボンナノ構造体の複雑な構造上の幾何形状となる一因となり得ると考えられる。さらに、CNSのバルク密度は、例えば、カーボンナノチューブ成長を開始するための成長用基材に配設されている、遷移金属ナノ粒子の触媒粒子の濃度を変えることを含めた、カーボンナノ構造体の成長条件を調節することによって、ある程度モジュレートされ得る。
フレークは、例えば、裁断するまたは綿状にする(機械式ボールミル粉砕、磨砕、ブレンドなどを含むことができる操作)化学プロセスまたはそれらの任意の組合せによってさらに加工され得る。
【0024】
一部の実施形態では、使用されるCNSは、「サイジングされた」または「カプセル封入された」CNSとも本明細書において称される、「コーティングされている」。典型的なサイジングプロセスでは、コーティング剤は、CNSを形成するCNT表面に施用される。このサイジングプロセスは、CNTに非共有結合により結合している部分コーティングまたは完全コーティングを形成することができ、一部の場合、結合材として作用することができる。さらにまたは代替として、サイズは、コーティングプロセスの後において、既に形成されたCNSに適用され得る。例えば、結合特性を有するサイズを用いることにより、CNSから、より大きな構造体、顆粒またはペレットが形成され得る。他の実施形態では、サイジングに応じた顆粒またはペレットが独立して形成される。
コーティング剤の量は様々となり得る。例えば、コーティング剤は、コーティングされたCNS材料の総質量に対して、約0.1質量%~約10質量%(例えば、質量基準で、約0.1%~約0.5%;約0.5%~約1%;約1%~約1.5%;約1.5%~約2%;約2%~約2.5%;約2.5%~約3%;約3%~約3.5%;約3.5%~約4%;約4%~約4.5%;約4.5%~約5%;約5%~約5.5%;約5.5%~約6%;約6%~約6.5%;約6.5%~約7%;約7%~約7.5%;約7.5%~約8%;約8%~約8.5%;約8.5%~約9%;約9%~約9.5%;または約9.5%~約10%)の範囲内となり得る。
【0025】
多くの場合、コーティング剤の量(またはサイズ)の制御は、CNS材料自体の特性に及ぼす望ましくない影響を低減または最小限にする。例えば、低いコーティングレベルは、カソード組成物中のCNSまたはCNSにより誘導される(例えば、破砕したCNTのCNS断片)の組み込みにより引き起こされる電気特性を保存する可能性が一層高い。
様々なタイプのコーティング剤が選択され得る。多くの場合、炭素繊維またはガラス繊維をコーティングする際に一般に使用されるサイジング用溶液もまた、CNSをコーティングするために利用することができる。コーティング材料の具体例には、以下に限定されないが、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)などのフッ素化ポリマー、ポリイミド、およびポリ(エチレン)オキシド、ポリビニル-アルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)などの水溶性結合材、ならびにそれらのコポリマーおよび混合物が含まれる。多くの実装形態では、使用されるCNSは、ポリウレタン(PU)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)またはポリエチレングリコール(PEG)により処理される。
【0026】
例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド、ビスマレイミド、アクリロニトリル-ブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エラストマー、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニルポリマー、シリコーンポリマー、およびフルオロシリコーンポリマー、それらの組合せ物、または他のポリマーもしくはポリマーブレンドなどのポリマーもまた、一部の場合、使用され得る。例えば、導電性を増強するために、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリチオフェンなどの導電性ポリマーを使用することもできる。
いくつかの実装形態は、溶媒中のCNS分散体の安定化を支援することができるコーティング材料を利用する。一例において、コーティング剤は、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、好適なアルコール、水またはそれらの任意の組合せを含む、これらから実質的になる、またはこれらからなる媒体中で、CNSの分散を促進および/または安定化するように選択される。
【0027】
本明細書に記載されている多くの実施形態は、97%以上のCNT純度を有するCNS材料を使用する。通常、陰イオン性、陽イオン性または金属不純物は、例えば、百万分率(ppm)と非常に低い。多くの場合、本明細書で使用されているCNSは、ファンデルワールス力と反作用させるためのさらなる添加物を必要としない。
CNSは、緩い粒子材料(例えば、CNSフレーク、顆粒、ペレットなど)の形態で、または液状媒体、例えば分散体、スラリー、ペーストも含む組成物中に、または他の形態で供給され得る。多くの実装形態では、利用するCNSは任意の成長用基材を含まない。
一部の実施形態では、CNSは、カーボンナノ構造体が最初に形成される成長用基材から除去した後で、フレーク材料の形態で提供される。本明細書で使用する場合、用語「フレーク材料」とは、有限寸法を有する離散性粒子を指す。
図1Aには、例えば、成長用基材からCNSを単離した後の、CNSフレーク材料の例示図が示されている。フレーク構造体100は、約1nm~約35μmの厚さ、特に、約1nm~約500nm(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にある第1の寸法110を有することができる。フレーク構造100は、約1μm~約750μmの高さ(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にある第2の寸法120を有することができる。フレーク構造体100は、約1μm~約750μm(間の任意の値、およびそれらの任意の分数を含む)の範囲にあり得る第3の寸法130を有することができる。寸法110、120および130のうちの2つまたはすべてが、同じとすることができるか、または異なることができる。
【0028】
例えば、一部の実施形態では、第2の寸法120および第3の寸法130は、独立して、約1μm~約10μm、または約10μm~約100μm、または約100μm~約250μm、約250~約500μm、または約500μm~約750μmの程度とすることができる。
CNS内部のCNTは、例えば、約10ナノメートル~約750μmの間の長さで様々となり得る。例示的な実装形態では、CNTは、約10ナノメートル~約100ナノメートル、約100ナノメートル~約500ナノメートル、約500ナノメートル~約1μm、約1μm~約10μm、約10μm~約100μm、約100μm~約250μm、約250~約500μmまたは約500μm~約750μmである。
【0029】
図1Bには、フレーク材料として得られた例示的なカーボンナノ構造体のSEM画像が示されている。
図1Bに示されているカーボンナノ構造体は、その高度に配列したカーボンナノチューブの絡み合いおよび架橋により、三次元マイクロ構造体として存在する。配列した幾何形状は、迅速なカーボンナノチューブ成長条件(例えば、約2μm/秒~約10μm/秒などの数μm/秒)下で、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの形成に反映し、これにより、成長用基材から実質的に垂直なカーボンナノチューブの成長が誘導される。いかなる理論または機構によって拘泥されないが、成長用基材表面でのカーボンナノチューブの成長速度が速いことが、少なくとも一部、カーボンナノ構造体の複雑な構造上の幾何形状となる一因となり得ると考えられる。さらに、カーボンナノ構造体のバルク密度は、例えば、カーボンナノチューブ成長を開始するための成長用基材に配設されている、遷移金属ナノ粒子の触媒粒子の濃度を変えることを含めた、カーボンナノ構造体の成長条件を調節することによって、ある程度モジュレートされ得る。
【0030】
フレーク構造体は、約15,000g/mol~約150,000g/mol(間のすべての値およびその任意の分数を含む)の範囲の分子量を有する、カーボンナノチューブポリマー(すなわち、「カーボンナノポリマー」)の形態のカーボンナノチューブのクモの巣状のネットワークを含むことができる。一部の場合、約200,000g/mol、約500,000g/molまたは約1,000,000g/molを含めて、分子量範囲の上端はさらに一層高くなり得る。より高い分子量は、寸法が長いカーボンナノ構造体に関連し得る。分子量はまた、カーボンナノチューブの主要な直径、およびカーボンナノ構造体内に存在するカーボンナノチューブの壁の数の関数となり得る。カーボンナノ構造体の架橋密度は、約2mol/cm3~約80mol/cm3の間の範囲となり得る。通常、架橋密度は、成長用基材の表面のカーボンナノ構造体の成長密度、カーボンナノ構造体の成長条件などの関数である。開放したクモの巣のような配置で保持されている、多くのCNTを含有する典型的なCNS構造体は、ファンデルワールス力を解除するか、またはその作用を低減することに留意すべきである。この構造体は、一層容易に剥離されることができ、これにより、CNTを分離する、またはCNTを元のCNTとは異なる固有の分岐構造体に分割するという多数の追加の工程が必要となる。
【0031】
カーボンナノ構造体は、クモの巣のような幾何形状である場合、比較的低いバルク密度を有することができる。生成したままのカーボンナノ構造体は、約0.003g/cm3~約0.015g/cm3の範囲の初期バルク密度を有することができる。カーボンナノ構造体のフレーク材料または同様の幾何形状物を生成するためのさらなる強化および/またはコーティングは、バルク密度を約0.1g/cm3~約0.15g/cm3の間の範囲まで押し上げることができる。一部の実施形態では、カーボンナノ構造体の任意選択のさらなる修飾を行い、バルク密度、および/またはカーボンナノ構造体の別の特性をさらに改変することができる。一部の実施形態では、カーボンナノ構造体のバルク密度は、カーボンナノ構造体のカーボンナノチューブ表面にコーティングを形成することによって、および/または様々な材料を含むカーボンナノ構造体の内部に浸透することによってさらに修飾され得る。カーボンナノチューブのコーティングおよび/またはカーボンナノ構造体の内部への浸透は、様々な用途において使用するための、カーボンナノ構造体の特性をさらに調節することができる。さらに、カーボンナノチューブ表面にコーティングを形成すると、望ましくは、カーボンナノ構造体の取扱いが容易になり得る。さらなる圧縮により、バルク密度を約1g/cm3である上限値まで高めることができ、カーボンナノ構造体への化学修飾により、バルク密度は約1.2g/cm3という上限値まで高まる。
CNS材料は、上記のフレークに加えて、顆粒、ペレットとして、または約1mm~約1cm、例えば、約0.5mm~約1mm、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、約4mm~約5mm、約5mm~約6mm、約6mm~約7mm、約7mm~約8mm、約8mm~約9mmまたは約9mm~約10mmの範囲内の典型的な粒子サイズを有する、緩い粒子材料の他の形態で供給され得る。
【0032】
使用することができるCNS材料を特徴付けるバルク密度は、約0.005g/cm
3~約0.1g/cm
3、例えば、約0.01g/cm
3~約0.05g/cm
3の範囲内とすることができる。
商業的に、使用することができるCNS材料の例は、Applied Nanostructured Solutions,LLC(ANS)(Massachusetts、米国)によって開発されたものである。
本明細書において使用されるCNSは、様々な技法によって特定および/または特徴付けることができる。例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡法(SEM)などの技法を含む、電子顕微鏡法は、例えば、に関する情報を提供することができる。本明細書において使用されるCNSは、様々な技法によって特定および/または特徴付けることができる。透過型電子顕微鏡(TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)などの技法を含む電子顕微鏡法は、例えば、存在する壁の指定数の度数、分岐、触媒粒子の存在などの特徴に関する情報を提供することができる。例えば、
図2A~2Dを参照されたい。
【0033】
ラマン分光法は、不純物に関連するバンドに注意を向けることができる。例えば、Dバンド(約1350cm-1)は、アモルファス炭素に関連する。Gバンド(約1580cm-1)は、結晶性グラファイトまたはCNTに関連する。G’バンド(約2700cm-1)は、Dバンドの周波数の約2Xで起こることが予期される。一部の場合、熱質量分析(TGA)によってCNSとCNTと間の構造を区別することが可能となり得る。
一部の実施形態では、CNSは、利用される別のCCA、例えば、CBおよび/または個別化された元の状態のCNT、すなわち、例えば、処理操作の間の、CNSから生成されないまたは誘導されないCNTなどである。
【0034】
多くの場合、使用されるCB粒子は、約200、180、160、140、120、100、80、60または50m2/g以下のブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積を有する。具体例では、CB粒子は、約200~約180m2/g;約200~約160m2/g;200~約140m2/g;約200~約120m2/g;約200~約100m2/g、約200~約80m2/g;約200~約60m2/g;約200~約50m2/g;または約180~約160m2/g;約180~約140m2/g;約180~約120m2/g;約180~約100m2/g、180~約80m2/g;約180~約60m2/g;180~約50m2/g;または約160~約140m2/g;約160~約120m2/g;約160~約100m2/g、160~約80m2/g;約160~約60m2/g;160~約50m2/g;または約140~約120m2/g;または約140~約100m2/g、140~約80m2/g;約140~約60m2/g;140~約50m2/g;または約120~約100m2/g、120~約80m2/g;約120~約60m2/g;120~約50m2/g;または約100~約80m2/g;約100~約60m2/g;100~約50m2/g;または約80~約60m2/g;80~約50m2/g;または約60~約50m2/gの範囲内にあるBETを有する。本明細書において開示されているBET表面積の値はすべて、「BET窒素表面積」を指し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、ASTM D6556-10によって決定される。
【0035】
好適なCBは、少なくとも130mL/100g、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240または250mL/100gの油吸着数(OAN)を有することができる。例示的なCBは、約130~約150mL/100g;約130~約170mL/100g;約130~約190mL/100g;約130~約210mL/100g;約130~約230mL/100g;130~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約150~約170、約150~約190;約150~約210;約150~約230mL/100g;約150~約250mL/100gもしくはそれより高い;または170~約190mL/100g;約170~約210;約170~約230mL/100g;約170~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約190~約210mL/100g;約190~約230mL/100g;約190~約250mL/100gもしくはそれより高い、または約210~約230mL/100g;約210~約250mL/100gもしくはそれより高い;または約230~約250mL/100gもしくはそれより高い範囲内のOANを有する。本明細書において引用されているOAN値はすべて、参照により本明細書に組み込まれている、ASTM D2414-16に記載されている方法によって決定される。
カーボンブラック粒子はまた、ASTM D6556-10によって決定することができる特性である、その統計学的厚さ比表面積(STSA)によって特徴付けることができる。所与のカーボンブラックに関すると、一部の場合、そのSTSAとそのBET表面積との比(STSA:BET比)を指定することも興味深いものとなり得る。この用途の目的に関すると、カーボンブラック粒子のSTSA:BET比は、約0.3~約1の範囲内にあり得る。
【0036】
結晶性ドメインは、ラマン分光法によって決定される、La晶子サイズによって特徴付けることができる。Laは、43.5×(Gバンドの領域/Dバンドの領域)と定義される。晶子サイズは、黒鉛化の程度の指標をもたらすことができ、この場合、高いLa値ほど、黒鉛化の程度が高いことに相関する。Laのラマン測定は、Gruber et al., "Raman studies of heat-treated carbon blacks," Carbon Vol. 32 (7), pp. 1377-1382, 1994に基づいた。炭素のラマンスペクトルは、それぞれ、「D」バンドおよび「G」バンドとして表される、約1340cm-1および1580cm-1に2つの主要な「共鳴」バンドを含む。Dバンドは、無秩序なsp2炭素に起因し、Gバンドは、グラファイト炭素または「秩序のある」sp2炭素に起因すると一般に考えられている。経験的手法を使用して、G/DバンドとX線回折(XRD)により測定されるLaの比は高度に相関し、回帰分析により、経験的関係がもたらされる:
La=43.5×(Gバンドの領域/Dバンドの領域)
(式中、Laは、オングストロームで計算される)。したがって、より高いLa値ほど、一層秩序のある結晶性構造であることに相当する。
【0037】
一部の実施形態では、カーボンブラックは、35Å以下、例えば、25Å~35ÅのLa晶子サイズを有する。La晶子サイズは、例えば、以下の範囲:25~33Å、または25~31Å、または25~29Å、または25~27Å、または27~35Å、または27~33Å、または27~31Å、または27~29Å、または29~35Å、または29~33Å、または29~31Å、または31~35Å、または31~33Å、または33~35Åの1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。ある種の実施形態では、La晶子サイズは、33Å以下、または31Å以下、または29Å以下、または27Å以下とすることができる。
結晶性ドメインは、Lc晶子サイズによって特徴付けることができる。Lc晶子サイズは、銅管を用いるX線回折計(PANalytical X’Pert Pro、PANalytical B.V.)、45kVの管電圧、および40mAの管電流を使用する、X線回折により決定した。カーボンブラック粒子の試料は、試料ホルダー(回折計の付属品)に詰め、測定は、0.14°/分の速度で、10°~80°の角度(2θ)範囲にわたり行った。ピーク位置および半値全幅の値は、回折計のソフトウェアによって計算した。測定角度の較正のため、六ホウ化ランタン(LaB6)をX線標準品として使用した。得られた測定値から、Lc晶子サイズはシェラーの式を使用して決定した:Lc(Å)=K*λ/(β*cosθ)(式中、Kは、形状因子定数(0.9)であり、λは、Cu Kα1の特徴的なX線の波長(1.54056Å)であり、βは、ラジアンでのピーク半値幅であり、θは、測定角度のピーク位置(2θ)の半分を採用することにより決定される)。
【0038】
一部の実施形態では、カーボンブラックは、27Å以下、例えば、15Å~27ÅのLc晶子サイズを有する。Lc晶子サイズは、例えば、以下の範囲:15~25Å、または15~23Å、または15~21Å、または15~19Å、または15~17Å、または17~27Å、または17~25Å、または17~23Å、または17~21Å、または17~19Å、または19~27Å、または19~25Å、または19~23Å、または19~21Å、または21~27Å、または21~25Å、または21~23Å、または23~27Å、または23~25Å、または25~27Åの1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。ある種の実施形態では、Lc晶子サイズは、25Å以下、または23Å以下、または21Å以下、または19Å以下、または17Å以下とすることができる。
【0039】
カーボンブラック粒子は、高い%結晶化度によって示される通り、高い黒鉛化度を有することができ、結晶化度は、ラマン測定からGバンドの領域とGおよびDバンドの領域との比(IG/IG+D)として得られる。ある種の実施形態では、カーボンブラック粒子は、ラマン分光法により決定される場合、約25%~約45%の範囲の結晶化度(IG/IG+D)を有する。%結晶化度(IG/IG+D)は、例えば、以下の範囲:25%~43%、25%~41%、25%~37%、25%~39%、25%~35%、25%~30%、25%~28%;または30%~45%、30%~43%、30%~39%、30%~35%;または35%~45%、35%~41%、35%~39%;または37%~45%、37%~43%、37%~41%;または39%~45%、39%~43%;または41%~45%または41%~43%の1つを有することができるか、またはこれを含むことができる。
これらの公知の特性および/または他の特性によって特徴付けられる、ならびに当業者によって認識されるいくつかのCBの規格が、表1中の規格A~Fとして示されている。
【0040】
【0041】
利用することができる好適なCB粒子は、市販の粒子とすることができる。例には、Cabot Corporationから入手可能なLITX(登録商標)50、LITX(登録商標)66、LITX(登録商標)200、LITX(登録商標)300、LITX(登録商標)HPおよびVulcan(登録商標)500カーボンブラック粒子;Imerys製のC-NERGY(商標)C45、C-NERGY(商標)C65およびSUPER P(登録商標)製品;Denka製のLi-400、Li-250、Li-100およびLi-435製品;ならびにKetjen製のEC300製品が含まれる。
CNSと連携して使用され得る他の材料は、例示的なCNTを記載している規格L~N(以下の表2)によって例示されている。
【表2】
表2に提示されている値は、通常、CBに関して上で記載した技法を使用して決定される。
【0042】
多くの状況で、CNS材料(例えば、フレーク、ペレット、顆粒の形態で)は、液体媒体と組み合わせてまたは液体媒体の存在下で提供される。一般に、液体媒体は、任意の液体、例えば、本明細書に記載されている組成物の構成物質を用いて使用するのに好適であり、かつ所期の電極を製造するために利用することが可能な溶媒とすることができる。溶媒は、無水、極性および/または非プロトン性とすることができる。一部の実施形態では、溶媒は、高い揮発性を有し、したがって、製造の間、溶媒を容易に除去することができ(例えば、溶媒蒸発させる)、これにより、乾燥時間および製造費用を低減することができる。好適な例には、以下に限定されないが、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、好適なアルコール、水またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0043】
一部の場合、組成物は、1種もしくは複数の分散剤(例えば、セルロース系分散剤)、および/または1種もしくは複数の添加物、通常、例えば無水マレイン酸ポリマーなどの電気的に非導電性添加物をさらに含む。
分散剤は一般的に、例えば、電池向け電極の製造のための組成物の実用的プロセシングを可能にするほど十分に低い組成物粘度を保ちつつ、溶媒中のCNSの分散を促進することが可能な材料(例えば、立体障害機構および/または充電機構を介して)を含む。一部の実施形態では、CNSを含む組成物に対して、分散剤、ポリマーおよび溶媒は、レオメーターにより決定される場合、せん断速度450s-1において200センチポアズ(cP)以下、例えば、せん断速度450s-1において少なくとも30cP、またはせん断速度450s-1において50cP~140cPの粘度を有する。様々な実施形態では、組成物は、スラリー、例えば、製造中に効率的に施用するには粘度が高すぎる、または粘性がありすぎる泥状物質と対比した場合、導電性基材に容易に施用またはコーティングして、電極を形成することができるペーストと表現することができる。CNS材料を分散させるその能力に加えて、分散剤は、熱的に安定し、電気化学的に不活性であり、および/またはCNS材料の導電性への妨害が最小限であることが好ましい。熱的に安定したまたは非揮発性分散剤は、電極製造中に、分散剤の除去および/または分解を生じることなく、溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、水など)を除去し、再循環させることを可能にする。「電気化学的不活性」とは、電池の正常な使用中に分散剤が安定している(例えば、電池の作動電圧以下の電圧において、分解しないまたは酸化しない)ことを意味する。これは、このような分解が電池の性能に負の影響を与え得るからである。さらに、分散剤は、粒子を分散させるために少なくともCNSフレーク、顆粒、ペレットなどの一部にコーティングされるので、分散剤は、粒子が利用できる導電性接触表面を妨げるまたは低減させる可能性がある。したがって、CNS粒子の導電性への妨害が最小限である分散剤を選択することが好ましい。組成物が1種または複数の電気活性材料をさらに含む実施形態では、分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン)は、電気活性材料の相分離および/または沈殿を減少させることが可能である。
【0044】
好適な分散剤の例には、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルピロリドン-co-酢酸ビニル)、ポリ(ビニルブチラール)(またはPVB)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(プロピレンカーボネート)、セルロース系分散剤、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース;ポリ(カルボン酸)、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリレート、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、アミドワックス、スチレン無水マレイン酸樹脂、オクチルフェノールエトキシレート、多官能性共分散剤、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールを含有するAMP(商標)分散剤、様々な誘導体、および当技術分野で公知の他のものが含まれる。組成物は、1種もしくはそれよりも多くの分散剤または1種もしくはそれよりも多くの分散剤配合物を含むことができる。
【0045】
1つの例示では、分散剤は、スチレン無水マレイン酸樹脂および/またはその誘導体を含むクラスに属し、後者は、スチレン無水マレイン酸樹脂または予め加水分解したスチレン無水マレイン酸樹脂と、少なくとも1種の反応性の末端基、例えば、アミンまたはエポキシド基を有する小有機分子または大有機分子との化学反応を介して作製されるポリマーである。一般的に、このクラスのポリマー性分散剤(本明細書ではスチレン無水マレイン酸ベースの分散剤とも呼ばれる)は、様々なポリマーブラシおよび/または小分子で修飾されたスチレン無水マレイン酸コポリマー骨格を有する。
別の例示では、分散剤は、PVP(様々な分子量で)またはその誘導体を含み、後者は、例えば、化学反応を介して小分子または大分子で修飾されたPVP骨格を有する分散剤について一般的に言及している。PVPベースの分散剤の例として、Ashland PVP K-12、K-15、K-30、K-60、K-90およびK-120製品、ポリビニルピロリドンコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン-co-酢酸ビニル、ブチル化ポリビニルピロリドン、例えば、Ganex(商標)P-904LCポリマーが挙げられる。
【0046】
さらなる例示では、分散剤は、例えば、セルロースまたはセルロース誘導体を含むセルロースベースの分散剤であり、後者は、少なくとも1種の反応性末端基を有する小有機分子または大有機分子で修飾されていてもよいセルロース骨格を有する。一具体例では、セルロースベースの分散剤は、CMC(例えば、様々な粘度で)であり、セルロースとクロロ酢酸との反応により通常調製される化合物である。別の例では、分散剤はヒドロキシエチルセルロースである。
他の可能な候補として、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ナトリウム、ドデシルベンジルスルホネート、ポリアクリル酸の誘導体などが挙げられる。
一部の場合、使用されている分散剤は、BYKからDISPERBYK(登録商標)またはBYK(登録商標)の商標名で入手可能な分散剤であってよい。
【0047】
分散剤、例えば、PVPベースの分散剤は、追加の分散剤、例えば、AMP(商標)および/またはPVBと組み合わせることができる。
組成物中の分散剤の濃度は、使用される分散剤または分散剤配合物、CNS、ポリマー、および溶媒の特定のタイプならびに濃度に応じて様々になり得る。一部の実施形態では、分散剤の濃度は、質量基準で、分散剤とCNS材料の比として、最も良く表される。この質量比は、3:100~50:100の範囲とすることができ、例えば、以下の範囲:3:100~40:100、または3:100~30:100、または3:100~20:100、または3:100~10:100、または10:100~50:100、または10:100~40:100、または10:100~30:100、または10:100~20:100、または20:100~50:100、または20:100~40:100、または20:100~30:100、または30:100~50:100、または30:100~40:100、または40:100~50:100の1つを有することができるか、またはそれを含むことができる。
【0048】
一部の場合、組成物中の無水マレイン酸由来のポリマーの濃度は、使用されているポリマーの組成、ならびにCNS材料、分散剤、および溶媒の特定のタイプおよび濃度に応じて変動する。一部の実施形態では、組成物は0.1質量%~1.0質量%のポリマーを含む。組成物中のポリマーの濃度は、例えば、以下の範囲:0.1質量%~0.8質量%、または0.1質量%~0.6質量%、または0.1質量%~0.4質量%、または0.3質量%~1.0質量%、または0.3質量%~0.8質量%、または0.3質量%~0.6質量%、または0.5質量%~1.0質量%、または0.5質量%~0.8質量%、または0.7質量%~1.0質量%の1つとすることができる。様々な実施形態では、ポリマーの濃度は、質量基準で、分散剤とCNS材料との比として表される。ポリマーのCNSに対する質量比は、0.1:100~2:100の範囲とすることができ、例えば、以下の範囲:0.1:100~1.5:100、または0.1:100~1:100、または0.1:100~0.5:100、または0.5:100~2:100、または0.5:100~1.5:100、または0.5:100~1:100、または1:100~2:100、または1:100~1.5:100、または1.5:100~2:100の1つを有することができ、または含むことができる。
【0049】
1つの例示は、1.6質量%のCNS/0.32質量%のPVPベース分散剤を使用する。別の例示は、1.5質量%のCNS/0.5質量%のBYK(登録商標)2155を使用する。さらなる例示は、1.5質量%のCNS/0.32質量%のAMP/PVB/BYK(登録商標)2155を使用する。また別の例示は、1質量%のCNS/0.2質量%のAMP/PVB/BYK(登録商標)2155を含有する。
CNSを含有する分散体は、事前に作製することができ、一部の場合、例えば、Cabot Corporationから市販されていてもよい。
CNS材料は、任意で分散剤の存在下で、例えば、従来の混合装置を使用した好適な混合技術により、液体と組み合わせることができる。特定の実施形態では、構成物質はブレンドして、例えば、組成物、溶液または分散体を形成する。組成物は、例えば、溶媒中約0.25~約2.5質量%のCNSの濃度により特徴付けることができる。例証的な例では、質量%での濃度は、約0.25~約0.5、約0.5~約0.75、約0.75~約1.0、約1.0~約1.25、約1.25~約1.50、約1.50~約1.75、約1.75~約2.0、約2.0~約2.25、または約2.25~約2.5の範囲である。溶媒中のCNSの他の濃度を使用することもできる。
普通の、個別化されたCNTを、例えば、元の状態で使用する普通の溶液または分散体とは異なり、CNSは、特に顆粒またはペレットの形態でポストコーティングしたCNSとして提供される場合、安定した分散体を生成することができる。一部の実施形態では、安定した分散体は、安定化させる界面活性剤の不在下で、溶媒として水を用いても実現することができる。他の実施形態は、湿式プロセシング中、水と組み合わせて溶媒を使用する。使用することができる溶媒の例として、これらに限定されないが、イソプロパノール(IPA)、エタノール、メタノール、および水が挙げられる。
【0050】
一部の場合、分散体を調製するために使用される技術は、個別化された形態で分散体全体にわたり(例えば、均一に)分配されるCNS由来の種、例えば「CNS断片」および/または「破砕したCNT」を生成する。これらのサイズがより小さいことを除いて、CNS断片(用語は部分的に断片化されたCNSも含む)は、無処理のCNSの特性を一般的に共有し、上に記載されているように、電子顕微鏡法および他の技術で同定することができる。破砕したCNTは、CNS内でのCNT間の架橋が、例えばせん断の施用下で破壊された場合に形成され得る。CNS由来(CNSから生成または調製される)の、破砕したCNTは、分岐であり、共通の壁を互いに共有している。
CNS材料からなるまたは実質的になる組成物、またはCNSから調製した組成物、例えば、上で記載した分散体は、他の成分と組み合わせる。この組成物は、例えば、任意の数のエネルギー蓄積デバイス、例えば、リチウムイオン電池の生成に使用することができる。1つの例として、この組成物は、リチウムイオン電池向けの電極(例えば、カソード)組成物を生成するために使用される。多くの実施形態では、組成物は、特定のタイプの電極に特異的な電気活性材料(構成成分)と組み合わせる。
【0051】
リチウムイオン電池に使用されている多くのカソード材料は通常、インターカレーション化学反応に基づき、単一の電子を移動させる化学反応を通常含む。他のタイプのカソード材料(例えば、リチウムイオンがFeF3に挿入されたもの)は、変換反応と呼ばれるより複雑な反応機序を介して多数の電子を移動させることができる。
好適な電気活性材料の例として、これらに限定されないが、当技術分野で公知のまたは将来開発される、LCO、LMO、NCM、NCA、LCP、LFP、LFSF、LTSおよびその他が挙げられる。一部の実施形態では、上記に記載されているCNS含有組成物は、NCMまたはNCA電極組成物と共に使用される。結合剤、例えば、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)が、例えば、多くの場合含まれる。
NCM(「NMC」とも呼ばれる)およびNCAは電池の当技術分野の当業者には一般的に公知である。
【0052】
より詳細には、NCMは、式Li1+x(NiyCo1-y-zMnz)1-xO2(式中、xは0~1の範囲であり、yは0~1(例えば、0.3~0.8)の範囲であり、zは0~1(例えば、0.1~0.3)の範囲である)で表すことができる。NCMの例として、Li1+x(Ni0.33Co0.33Mn0.33)1-xO2、Li1+x(Ni0.4Co0.3Mn0.3)1-xO2、Li1+x(Ni0.4Co0.2Mn0.4)1-xO2、Li1+x(Ni0.4Co0.1Mn0.5)1-xO2、Li1+x(Ni0.5Co0.1Mn0.4)1-xO2、Li1+x(Ni0.5Co0.3Mn0.2)1-xO2、Li1+x(Ni0.5Co0.2Mn0.3)1-xO2、Li1+x(Ni0.6Co0.2Mn0.2)1-xO2、およびLi1+x(Ni0.8Co0.1Mn0.1)1-xO2が挙げられる。
NCAは、式Li1+x(NiyCo1-y-zAlz)1-xO2(式中、xは0~1の範囲であり、yは0~1の範囲であり、zは0~1の範囲である)で表すことができる。NCAの例はLi1+x(Ni0.8Co0.15Al0.05)1-xO2である。
電極組成物中のNCMまたはNCAの濃度は、エネルギー蓄積デバイスの特定のタイプに応じて変動することができる。一部の場合、NCMまたはNCAは、電極組成物中に、電極組成物の総質量に対して、少なくとも90質量%の量で、例えば、95質量%より大きい量で、例えば、電極組成物の総質量に対して、90質量%~99質量%の範囲の量で存在する。
【0053】
一部の実施形態では、電極組成物は、例えば、形成された電極の機械的特性を増強するために使用される1種または複数の結合剤を含有する。例示的な結合剤材料として、これらに限定されないが、フッ化ポリマー、例えば、ポリ(ビニルジフルオロエチレン)(PVDF)、ポリ(ビニルジフルオロエチレン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリイミド、および水溶性結合剤、例えば、ポリ(エチレン)オキシド、ポリビニル-アルコール(PVA)、セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。他の可能な結合剤として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)およびフルオロゴム、ならびにこれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。
結合剤は、カソード組成物中に1~10質量%、例えば、1~2、2~3、3~4、4~5、5~6、6~7、7~8、8~9または9~10質量%の量で存在することができる。
【0054】
いくつかの実装形態では、例えば、リチウム電池向けのNCM電極に使用されているようなドライ電極組成物に対して、CNSロード量は、例えば、2質量%未満、例えば、1.9、1.8、1.7または1.6質量%未満である。他の実施形態では、リチウム電池向けのNCM電極に使用されているようなドライ電極組成物中のCNSロード量は、例えば、1.5質量%以下、例えば、少なくとも1.4、1.3、1.2、1.2、1.0、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60.0.55、0.50.0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15または0.10質量%である。1つの例では,カソード組成物を調製するために使用されるCNS量を、生成したドライカソード組成物が導電性となる最も低い濃度(すなわち、パーコレーション閾値)と比較する。
電極組成物は、上で記載した構成物質と組み合わせることにより(例えば、均一に混合することにより)調製することができ、これらの構成物質は、混合物、特に均質な混合物を得るように設計された任意の順序で加えることができる。好適な混合技法として、機械的扇動、振盪、撹拌などが挙げられる。
【0055】
1つの例では、電極(例えば、カソード)組成物は、CNSからなるもしくはCNSから実質的になる、もしくはCNSを含む組成物、またはCNS出発材料を使用して調製した組成物を、NCMまたはNCA構成成分と均一に散在させることにより(例えば、均一に混合することにより)作製される。別の例では、結合剤は、例えば、CNS含有組成物およびNCMまたはNCAと共に均一に散在している。
いくつかの形態では、例えば、顆粒、ペレット、またはフレーク形態で提供される場合、CNSは、活性のある電極材料(例えば、NCMまたはNCA)を含有するスラリーに直接組み込むことができる。
他の実施形態では、ペレット、顆粒、フレークまたは他の形態のCNSを最初に液体媒体、例えば、NMP中に分散して、CNS断片(部分的に断片化されたCNSを含む)および/または破砕したCNTを生成する。分散体は、出発材料、例えば、コーティングされてない、PUコーティングまたはPEGコーティングされたCNS、または任意の他のポリマー性結合剤コーティングを有するCNSから調製することができる。
特定の実装形態は、例えば、CNSから調製した分散体およびPVPベースの分散剤を特徴とする。別の例示は、任意でAMP(商標)および/またはPVBの存在下で、BYK(登録商標)2155から調製した分散体を使用する。いくつかの例では、カソード組成物は、98.25質量%のNCM622+0.25質量%のCNS+1.5質量%のPVDF(例えば、KF7200、Kureha Corp.により製造);または98質量%のNCM622+0.5質量%のCNS+1.5質量%のPVDFから調製される。
【0056】
1つの実装形態では、電気活性材料、例えば、NCMは、NMPなどの溶媒の存在下で、CNS顆粒、ペレット、フレークなどの混合物、液体媒体、例えば、NMP、および結合剤(例えば、PVDF)に加える。分散体中に存在する例示的CNS断片サイズは、約0.5~約20μm、例えば、約0.5~約1μm;約1~約5μm;約5~約10μm;約10~約15μm;または約15~約20μmの範囲内にあることができる。一部の場合、断片サイズを過多に、例えば、0.5μm未満まで減少させることは、利用するCNSに関連する電気特性を落とす可能性がある。
生成した電極組成物は、スラリー(例えば、ペースト)の形態を取ることができ、これを、微粒子NCMまたはNCA、CNSベースの導電性添加物、分散剤(存在する場合)、非導電性添加物(存在する場合)、溶媒、および結合剤(存在する場合)と合わせる。他の実施形態では、電極組成物は、スラリーから溶媒を除去することによる固体形態である。使用することができる乾燥技法として、風乾、加熱(例えば、好適なオーブン内で)などが挙げられる。
【0057】
電池電極は、例えば、上で記載されている電極組成物を、例えば、ペーストの形態で、電気導電性基材(例えば、アルミニウム集電体)に施用し、これに続いて溶媒を除去することにより形成することができる。ペーストは、例えば、ドクターブレードコーティング、リバースコンマバーコーティングまたは押出しなどの技法により施用することができる。
いくつかの実装形態では、ペーストは、粘性の低いペースト(例えば、より低い固体ロード量を有する)を生成し得る特有の欠陥(例えば、クラッキング)の形成を最小限に抑えながら、基材上への堆積を可能にするのに十分高い固体ロード量(すなわち、高濃度の固体)を有する。さらに、一層高い固体ロード量は、必要とされる溶媒の量およびその除去を低減させる。
溶媒は、ペーストを、周辺温度または低加熱条件下、例えば、20℃~100℃の範囲の温度で乾燥させることにより除去する。堆積した電極/集電体は、所望の寸法に切断し、任意でこれに続いてカレンダー加工することができる。
電極の形成をもたらすプロセスは、使用される最初のCNSの少なくとも一部の完全性を保存することができ、これは無処理のまま残る。しかし、一部のプロセスの作業および/または条件は、利用される最初のCNSの少なくとも一部を変化させる可能性がある。上に記載されているように、このような作業および/または条件を含む1つの例は、例えば、CNS出発材料から乳剤を調製する際に遭遇するようなせん断力の施用である。
【0058】
一部の状況では、最初のCNSは、より小さなCNS単位または断片へと破壊される。これらのサイズの減少を除いて、これらの断片は無処理のCNSの特性を一般的に共有し、上に記載されているような電子顕微鏡法および他の技法により同定することができる。
CNSの最初のナノ構造形態が変化する可能性もある。例えば、施用されたせん断は、CNS内のCNT間の架橋を破壊して、電極組成物中に個々のCNTとして通常分散しているCNTを形成することができる。分岐および壁の共有という構造的特徴は、架橋が除去された後でもこれらのCNTの多くに対して保持されることが判明している。CNSから誘導され(調製した)、CNTの分岐および壁の共有という構造的特徴を保持するCNTは、本明細書で「破砕した」CNTと呼ばれる。これらの種は、改善された相互接続性(CNT単位間の)を付与することが可能であり、より低い濃度でより良い導電率をもたらす。
よって、普通の、個別化されたCNTを利用する、例えば、元の状態の電極または電極組成物と比較して、本明細書に記載されている電極および電極組成物は、多くの場合、破砕したCNTを含む。これらの破砕したCNTは、例えば、標準的カーボンナノチューブ分析技術、例えば、SEMを介して普通のカーボンナノチューブから容易に分化することができる。遭遇するすべてのCNTが、分岐し、共通の壁を共有する必要があるわけではなく、むしろこれらの特徴を全体として保有するのは複数の破砕したCNTであることがさらに指摘される。
【0059】
形成された電極は、当技術分野で公知の方法、例えば、“Lithium Ion Batteries Fundamentals and Applications”, by Yuping Wu, CRC press, (2015)に記載されているような方法に従いリチウムイオン電池に組み込むことができる。一部の実施形態では、電池は、コインタイプ、例えば、2032コインセル、18650円柱状セル、パウチセル、およびその他である。例えば、上に記載されているようなCNSを含有するカソードに加えて、電池は、他の構成成分、例えば、アノード、および好適な電解質、例えば、エチレンカーボネート-ジメチルカーボネート-エチルメチルカーボネート(EC-DMC-EMC)、ビニレンカーボネート(VC)、LiPF6;炭酸エチレン-ジエチルカーボネート(diethlycarbonate)(EC-DEC、LiPF6;または(EC-DMC)、LiPF6を含む。好適なガラス繊維ミクロフィルター(例えば、WhatmanGF/A)またはポリプロピレン/ポリエチレン膜(例えば、Celgard 2300)は、Liイオンの拡散を許容しながら、電解質を吸収し、電極間の電気的接触を阻止する分離体として使用される。
本明細書に記載されているLi電池の一部において、アノードは、活性のあるアノード材料および結合剤(例えば、PVDF、SBRを有するCMCなど)、ならびに一部の場合、導電性添加物を含有する。
【0060】
多くの実装形態では、活性のあるアノード材料はグラファイト、例えば、天然グラファイト、人工グラファイトまたは両方のブレンドである。使用することができる市販のタイプのグラファイトとして、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチベースの炭素繊維(MCF)、蒸気成長炭素繊維(VGCF)、大規模な人工グラファイト(MAG)、天然グラファイトおよびその他が挙げられる。他の実装形態では、使用される活性のあるアノード化合物は、ケイ素を含む、ケイ素から実質的になる、またはケイ素からなる。1つの例では、活性のあるアノード材料は、ケイ素グラファイト複合体、ナノケイ素(Si)を含有するグラファイトまたはSiOx粒子である。
他の活性のあるアノード材料の例として、これらに限定されないが:(a)インターカレーション/デインターカレーション材料(例えば、炭素ベースの材料、多孔質炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、TiO2、Li4Ti5O12など);(b)合金/脱合金材料(例えば、Si、SiOx、ドープしたSi、Ge、Sn、Al、Bi、SnO2など);ならびに(c)変換材料(例えば、遷移金属酸化物(MnxOy、NiO、FexOy、CuO、Cu2O、MoO2など)、金属硫化物、金属リン化物および式MxXy(式中、X=S、P、N)で表される金属窒化物)が挙げられる。
【0061】
活性のあるアノード材料、例えば、グラファイト、ケイ素、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などの濃度は、エネルギー蓄積デバイスの特定のタイプに応じて変動し得る。例示的な例では、活性成分は、電極組成物中に、(ドライ)電極組成物の総質量に対して、少なくとも80質量%、例えば、少なくとも85、90または95質量%の量で、例えば、80質量%~99質量%の範囲の量で、例えば、電極組成物の総質量に対して、約80~約85質量%、約85~約88質量%、約88~約90質量%、約90~約92質量%、約92~約95質量%、約95~約97質量%、または約97~約99質量%の範囲内の量で存在する。
一部の実施形態では、アノード組成物はまた、導電性添加物、例えば、導電性炭素添加物(CCA)を含有する。例として、CB、CNTなどが挙げられる。特定の実装形態では、アノード組成物は、CNS、CNS断片および/または破砕したCNTを含む。このようなアノード組成物およびこれらの調製物および使用は、2019年3月22日に出願した、米国仮特許出願第62/822,101号、表題Anode Electrode Compositions for Battery Applicationsおよび本出願と同時に代理人案件番号2018613で出願した、米国非仮出願、表題Anode Electrode Compositions for Battery Applicationsに記載されており、両方ともこれら全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。多くの場合、アノード組成物を調製するために利用されるCNSはコーティングされており、例えば、PUコーティングまたはPEGコーティングされている。乾燥した場合、例示的アノード組成物は、カーボンナノ構造、カーボンナノ構造断片、および/または破砕したナノチューブを約1質量%以下、多くの場合、0.5質量%以下の量で含有する。
【0062】
よって、本発明の特定の実施形態では、カソードとアノードの両方は、CNS、CNSの断片および/または破砕したCNTを含有する。
一部の実装形態では、例えば、LIB向けグラファイト負極に使用されているようなドライ電極組成物に関して、例えば、CNSロード量は、約5質量%以下、および多くの場合、約2質量%以下、例えば、1.9、1.8、1.7または1.6質量%未満である。他の実施形態では、例えば、LIB向けグラファイトアノードに使用されているようなドライ電極組成物に対して、CNSロード量は、例えば、1.5質量%以下、例えば、少なくとも1.4、1.3、1.2、1.2、1.0、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70、0.65、0.60.0.55、0.50.0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15または0.10質量%である。多くの実装形態では、例えば、リチウム電池向けグラファイトアノードに使用されているドライ電極組成物に対して、CNSロード量は、0.5質量%以下、例えば、約0.5質量%~0.1質量%の範囲内、例えば、約0.1~約0.2、約02~約0.3、約0.3~約0.4、または約0.4~約0.5質量%の範囲内である。他の実施形態は、約2~約5質量%の範囲内のロード量、例えば、少なくとも約2.25、2.5、2.75、3.0、3.25、3.5、3.75、4.0、4.25、4.5または4.75のロード量を利用する。
【0063】
本明細書に記載されている組成物は、他のエネルギー蓄積デバイス、例えば、1次アルカリ電池、1次リチウム電池、ニッケル金属水素化物電池、ナトリウム電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、およびスーパーコンデンサーの電極に使用することができる(例えば、組み込まれる)。このようなデバイスを作製する方法は当技術分野で公知であり、例えば、“Battery Reference Book”, by TR Crompton, Newness (2000)に記載されている。
【0064】
本明細書に記載されている電極、電池または電極組成物を特徴付けるため、および/またはCNSの存在を同定するため、様々な技法が使用され得る。例として、これらに限定されないが、電子顕微鏡法、例えば、TEM、SEM、ラマン分光分析、または他の好適な定性的または定量的分析法が挙げられる。
電極性能および/または特性は、当技術分野で公知の手順、または適応もしくは開発された技法により評価することができる。好適な技法として、例えば、面内および面を介した電極導電率、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)、定電流充放電、ハイブリッドパルスパワー能力(HPPC)が挙げられる。一部の例は以下に記載されている。
本明細書に記載されているような出願では、CNSベースの導電性添加物は、CB、個別化されたCNTまたはグラフェン(高い導電率および熱伝導性を有し、機械的に強力な炭素原子の薄いシートとして存在する材料)と同じくらい良い、および多くの場合これらよりも良い成果を上げる。多くのLIBに対して、CNSロード量は、例えば、他のCCA、CBで必要とされる量より低い。1つの実装形態では、0.25質量%まで低いCNSロード量が良好なカソード性能をもたらし、このような低いロード量は、パーコレーション閾値(すなわち、絶縁性材料が導電材料へと変換される最も低い濃度)よりも高いことが判明している。
【0065】
一部の実施形態では、CNSを含有する電極は、より高いロード量でCBを含有する比較電極(同じ活性のある電極材料、例えば、NCM、溶媒および使用される場合、他の成分、例えば、分散剤を用いて作製されたもの)と同じくらいよい成果を上げる。例えば、CNSは、1.5質量%以下のロード量で、2質量%以上のCBを含有する電極と少なくとも同じくらい良好な性能(例えば、電極を用いて作製された電池のカソード抵抗性または容量として表現される)をもたらす。他の実施形態では、ある特定のCNSロード量、例えば、1.5質量%以下を含有する電極は、同じ量のCBを含有する比較電極に対してより良い性能(例えば、電極を用いて作製された電池のカソード抵抗性または容量として表現される)を示す。
【0066】
CCAとして電極に通常使用され、比較カソード配合物を調製するために使用することができるCB粒子は、多くの場合、50m
2/gより大きいブルナウアー-エメット-テラー(BET)表面積、および150mL/100gより大きい油吸着数(OAN)を有する。CNT、および特に、MWCNTもまた使用することができる。数種の例示的CBおよびCNT規格が以下の表3に示されており、これらの一部は、以下の非限定的実施例において参照されており、これら実施例は、本発明の態様をさらに記載するために提示されている。
【表3】
【0067】
(実施例1)
NMP中CNS分散体
水溶性ポリウレタンサイジングでコーティングした3質量%のCNS材料(PUコーティングしたCNS)を使用して、0.375%CNS分散体をN-メチルピロリドン(NMP)中に調製した。適量のNMP(99.625%の配合物)をジャケット付きビーカーに集め、二次封じ込め施設のナノエンクロージャーに移した。適量のPUコーティングしたCNSペレット(0.375%)をNMPに加え、溶媒に組み込んだ。ペレット上のPUポリマーコーティングは、全配合物の極めて小さなパーセンテージ、すなわち0.02質量%であったため、計算では無視した。この混合物に蓋をして、二次封じ込め施設内の実験室に戻した。ジャケット付き容器を冷水に接続し、プロセシング中に過剰な熱が蓄積されるのを阻止した。超音波処理プローブを使用して、0.5kJ/gのエネルギーを混合物に送達しながら、混合物を標準的オーバーヘッドミキサーで撹拌した。超音波処理期間は200gバッチサイズに対して10分間であった。次いで、容器を分散体が瓶詰めされるフードに移した。
【0068】
(実施例2)
電極の調製
1.5%のPVDF結合剤(Arkema Kynar HSV900)を用いて、配合物を0.25%、0.5%、1.0%および1.5%のCNSで作製した。活性物質は、BASF TODA Battery Materials LLCにより供給され、質量中央径(D
50)7μmを有するNCM111、Li
1+x(Ni
0.33Co
0.33Mn
0.33)
1-xO
2(7μD
50)であった。適量のCNS分散体、PVDF結合剤溶液(NMP中10質量%で事前に溶解)、NCM111粉末およびNMPを秤量することによりスラリーを調製した。コーティングに対して十分なスラリー粘度をもたらすために達成される最終全固体ロード量が表4に列挙されている。SPEX800ミルおよび2つのジルコニア媒体を30分間使用して、電極スラリーを1ステップで混合した。
【表4】
【0069】
自動化ドクターブレード塗工機(Model MSK-AFA-III、MTI Corp.製)を使用して、電極スラリーをアルミ箔上にコーティングした。80℃に設定した対流式オーブン内でNMPを20分間蒸発させた。電極ペーストを、10mg/cm2のドライ電極ロード量でコーティングし、マニュアルロールプレスを用いて、2.8g/ccの密度にカレンダー加工した。
【0070】
(実施例3)
電極抵抗性
Keithley 2410Cソースメーターの裏側に接続されたLucas Lab 302 4プローブスタンドおよびSP4プローブヘッドを用いて、コーティングした電極のシート抵抗を測定した。4ワイヤ測定は、基材導電率が強力に寄与することが判明したため、測定は2ワイヤ構成モードで実施した。報告された値は、電流0.1ミリアンペア(mA)で、2.8g/ccの密度でカレンダー加工したカソードでの、装置からの直接のohm読み取り値である。ここで試験したすべてのカソードは同じ厚さのものであった。
図4は、0.25質量%~1.5質量%のロード量を有するCNSを用いて作製された、プラスチックシート、例えば、マイラー(商標)ブランド、またはアルミ箔上のカソード(活性物質:リチオ化ニッケルコバルトマンガンNCM111;結合剤:Arkema Kynar HSV-900)シートから得た抵抗性を表す。表3の規格IIIの特性を有する2質量%および4質量%のカーボンブラック粒子を用いて作製されたカソードシートの抵抗性もまた示されている。Alホイルとマイラー(商標)シートの両方の上の0.5質量%のCNSは、2%のCB添加物よりずっと低い抵抗性を示すことが判明した。1.5%CNSを有する電極に対して測定した抵抗性は、4%炭素添加物で観察されたものと同じくらい良好である。
【0071】
(実施例4)
電極容量
実施例2のカソードを2032コインセルハーフ-セルにおいて試験した。15ミリメートル直径のディスクをコインセル調製のために穿孔し、真空下、110℃で最低4時間乾燥させた。マニュアルロールプレスを用いて、ディスクを2.8g/ccの密度にカレンダー加工し、リチウムホイルに対する試験のため、アルゴンを充填したグローブボックス(M-Braun)内で合わせて2032コインセルを組み立てた。ガラス繊維ミクロフィルター(Whatman GF/A)を分離体として使用した。電解質は、100マイクロリットルのエチレンカーボネート-ジメチルカーボネート-エチルメチルカーボネート(EC-DMC-EMC)、ビニレンカーボネート(VC)1%、LiPF6 1M(BASF)であった。試験した各配合物に対して4種のコインセルを組み立てた。報告された能力は、活性のあるカソードの質量1グラム当たりのミリアンペア時間(mAh/g)で正規化した、4種のコインセルの平均である。
【0072】
上記カソード電極を使用して、0.25%のCNS、2%のCBおよび4%のCB添加物を比較したハーフコインセルの容量が
図5に示されている。全体的に0.25%のCNSは、10Cのc率まで最も良い放電容量を示した。これは、電極における導電性添加物を減少させる利点に起因することができる(より高いロード量)。
図6は、0.25質量%のCNS、2質量%のCBおよび4質量%のCB添加物でそれぞれ構成されるカソードを用いて作製されたコインセルの異なる充電率(SOC)において得られた直流内部抵抗値(DCIR)を示した。20、50および80%のSOC、0.25%のCNSは、2%および4質量%のCB添加物と比較して最も低いコインセル抵抗性をもたらしたことが判明した。
【0073】
(実施例5)
CNS粉末を用いた電極の調製
活性のあるカソード粉末(Sanshan NCM622)、NMP、10%固体結合剤NMP溶液(Kureha KF7200)を一緒に、70%の固体ロード量で、Thinky ARE310 遊星型ミキサーを用いて、12分間(3×4分間の活発な混合、3×3分間の断続的冷却期間)混合した。PUコーティングしたCNS顆粒(CNS_PU3%)を0.5質量%の固体で加え、混合をもう12分間(3×4分間の活発な混合、3×3分間の断続的冷却期間)続けた。
CNS添加後、NMPを徐々に加えて、スラリー中60%の最終固体を達成した。コーティング可能なスラリー粘度を維持する。
自動化ドクターブレード塗工機(モデルMSK-AFA-III、MTI Corp.製)を使用してアルミ箔上に電極スラリーをコーティングした。80℃に設定した対流式オーブン内でNMPを20分間蒸発させた。電極ペーストをドライ電極ロード量25mg/cm2でコーティングし、マニュアルロールプレスを用いて密度3.5g/cm3(g/cc)にカレンダー加工した。電極固形分は98%のNCM622、0.5%のCNSおよび1.5%のKF7200 PVDF結合剤であった。
【0074】
(実施例6)
CNS乾燥粉末添加物での電極抵抗性
CNS粉末添加物を使用して調製した電極を、1%カーボンブラック(表3の規格IIIの特性を有する)または表3の規格Vの特性を有する0.5%カーボンナノチューブ(CNT)を含有する他の対照電極と比較して、面内電極抵抗性を実施例3に記載されているように測定した。ここで試験したすべての電極は同じ厚さであった。Keithley 2410Cソースメーターの前方に接続されている直径7.14mmの平坦なゲージコンタクトヘッドを有するマニュアルドロップゲージを使用して、面貫通電極抵抗性を測定した。測定は、2ワイヤ構成モードで実施され、0.1ミリアンペア(mA)の電流で、3.5g/ccの密度でカレンダー加工したカソードで、装置からの直接のohm読み取り値で報告され、これを本明細書で報告されているような面貫通電極導電率(単位:S/m)へとさらに変換した。電極の特徴が表5に列挙されている。
図7に示されている結果は、0.5%のCNS電極が、0.5%のCNTのものと類似の面内抵抗性を有し、1%のCBを有する電極より半分まで低いことを示している。面貫通導電率は、0.5%のCNTおよび1%のCBで観察されたものよりも統計的に高い。
【表5】
【0075】
(実施例7)
NMP中のCNS分散体の調製-方法2
Netzsch Minicer Agitator Bead Millに媒体を最初に充填することによりCNS分散体を作製した。これらの試料に対して、100mlの0.4~0.6mmイットリア安定化ジルコニアビーズをチャンバーに加えた。この量は、ミル粉砕チャンバーを70%満たすのと同等である。次いでこの装置に公知の量のNMPを詰めた。加えた量に基づき、標的ロード量を達成するのに必要とされるPEGコーティングしたCNS(Cabot Corporation)の量を計算する。次いで、この量を約0.2%質量の投与量へと細分化した。装置を好ましい作動条件4200rpmおよびポンプ速度約80ml/分に設定し、第1の投与量のカーボンナノ構造体を加えた。装置を作動し、装置内の圧力が安定化し、分散体が平滑化したようにみえるまでモニターした。第2の投与量を加え、所望のロード量が達成されるまでこのプロセスを繰り返した。各投与後に理想的状況に到達するのに必要とされるエネルギーは、プロセスが進行するほど長くなった。最後に、材料が充填され、十分にミル粉砕された後、分散剤を分散体に加え、装置にそれが完全に組み込まれるように追加の30分間循環させた。次いで、試料を容器にポンプで送り込み、Minicerミルをフラッシュして、残留する材料を除去した。
【0076】
2種のCNS分散体を、このプロトコールに従い調製した。組成およびPSDをMicrotrac装置で測定し、詳細は表6に要約されている。
【表6】
【0077】
(実施例8)
CNS分散体を用いた電極の調製-方法2
電極の調製に対して使用した導電性炭素材料は、表6に列挙されたCabot Corporation製の予め分散したCNS粒子、および表3に列挙された規格VI~IXの特性を有する市販のMWCNTを含んだ。すべてのCCAはNMPベースの分散体形態で使用した。ShanShan(中国)製のNCM622活性物質およびKureha製のKF7200PVDF結合剤を用いてカソードを調製した。
Thinky遊星型遠心ミキサー(モデルARE-310)を用いて、2ステップ混合プロトコールに従い、NCM電極スラリーを作製した。第1のステップは、2000rpmでの、CNS分散体とPVDF結合剤との12分間の活発な混合を含んだ。第2のステップは、必要に応じて粘度を調節するための活性のあるNCM622材料およびNMPの添加、ならびに2000rpmでのさらに12分間の活発な混合を含んだ。第1ステップの間に、ミルベースを直径2 1/4インチのタングステンカーバイド媒体と混合した。第2のステップでは、媒体なしでスラリーを混合した。
【0078】
生成した電極スラリーを、自動化ドクターブレード塗工機(モデルMSK-AFA-III、MTI Corp.製)を使用して、16μmの厚さのアルミ箔上に手作業でコーティングした。標的ロード量は片側25mg/cm2であった。110℃に設定した対流式オーブン内でNMPを1時間蒸発させ、最後に真空オーブン内で、約100℃で乾燥させた。マニュアルロールプレスを用いて、電極を3.5g/ccの密度にカレンダー加工した。
【0079】
電極抵抗性測定および最初のセル性能試験のために、14種の電極配合物(詳細については表7を参照されたい)を調製した。CCAが表3の規格VIIIおよびIXの特性を有するCNTである{0.5%のCCA:98%のNCM622:1.5%のPVDF}配合物のさらに2種の電極を、電極抵抗性試験のための比較例として調製した。
【表7】
【0080】
(実施例9)
電極の抵抗性
図8は、異なるタイプのCCA(詳細は表7を参照されたい)を用いて作製された、アルミ箔上のカソードシートから得た電極面貫通抵抗性を、0.1質量%~1.0質量%の範囲の電極中のCCA含有量の質量パーセントの関数として表している。報告された値は、Keithley 2410-Cソースメーターの前方に接続された直径7.14mmの平坦なゲージコンタクトヘッドを有するマニュアルドロップゲージを使用して測定した直接のohm読み取り値(電極抵抗性)から得たものである。測定は、0.1ミリアンペア(mA)の電流で、3.5g/ccの密度でカレンダー加工したカソードで、2ワイヤ構成モードで実施した。
電極抵抗性は、CCAのタイプに応じて数桁まで変動し、より高いCCA含有量で改善することが判明している.予め分散したCNS-AおよびCNS-Bを、0.25%および0.5%のロード量で有する電極は、同じロード量で試験した両方の多層CNT材料と比較して、最も低い抵抗性を示す。パーコレーション閾値に到達した際の0.75%および1%まで高いロード量のみで、CNT含有電極が0.25%のCNS試料の抵抗性と一致する。データは、CNSが、十分な接続ポイントを生成し、電極内に導電パーコレーションネットワークを形成するために、多層CNTよりも質量基準で約3分の1の材料しか必要としないことを示している。
図9は、0.5%のCCAを有する選択された電極配合物の電極抵抗性を表している。これは、0.5%で試験した場合、CNS-Bを有する電極は、CNS-Aを有する電極よりもわずかに抵抗性が高く、CNS材料は全体的に、同じロード量で試験したすべての多層CNTと比較して最も低い電極抵抗性を示すことを確定するもので、CNSの性能と匹敵させるためにはより多量のCNT材料が必要とされることを意味している。
【0081】
(実施例10)
初期のセル性能
表7で列挙されたカソード配合物を2032ハーフコイン-セルにおいて試験した。コインセル調製のため、直径15ミリメートルのディスクを穿孔し、真空下、100℃で最低4時間乾燥させた。マニュアルロールプレスを用いて、ディスクを3.5g/ccの密度にカレンダー加工し、リチウムホイルに対して試験するため、アルゴンを充填したグローブボックス(M-Braun)内で2032コインセルを組み立てた。ガラス繊維ミクロフィルター(Whatman GF/A)を分離体として使用した。電解質は、175マイクロリットルのエチレンカーボネート-ジメチルカーボネート-エチルメチルカーボネート(EC-DMC-EMC)、ビニレンカーボネート(VC)1%、LiPF6 1M(BASF)であった。報告された容量を活性のあるカソード質量1グラム当たりのミリアンペア時間(mAh/g)に正規化する。
【0082】
2つのC/5-D/5充放電サイクルを使用してこれらを最初に形成し、次いでこれらをC/2率で充電し、C/5、C/2、1C、2C、3C、4Cおよび5Cの放電率でこれらを放電することにより、ハーフコインセルの室温(25℃)性能を測定した。次いで、完全に充電した状態から完全に放電した状態まで、10%の充電状態ごとに10秒の1.5C充電パルスおよび2C放電パルスを使用して、これらのハイブリッドパルスパワー能力(HPPC)を試験した。
図10は、表7に列挙されているように、0.1質量%~1.0質量%の範囲のCCA含有量を有する配合物に対する、C率の能力および50%のSOCでのDC-IR内部抵抗性を表している。0.5%CNS-Aは、2C容量(30分間でのフル放電)および50%SOCでのDC-IRの両方の点から多層CNTよりも良い初期のセル性能をもたらすことをこの結果は示している。CCAタイプ(2時間でのフル放電)の影響を明らかにするためには速度があまりにも遅すぎるため、0.5C容量において分化は観察されていない。CNSは、多層CNTよりも低いロード量においてパーコレーション閾値に到達するため、分化は0.25%において明らかとなる。両方のCNS試料(CNS-AおよびCNS-B)は同じ0.25%ロード量で試験したCNT(ここではCNT-VIおよびCNT-VII)よりも優れた性能を示し、0.75%および1.0%ではこれらと同等である。
【0083】
(実施例11)
低温の性能
NCM電極配合物において、多層CNTを超えるCNSの別の利点は、以下に示されているような低温性能の改善である。25mg/cm2の面積ロード量および3.5g/ccの密度を有するNCM622カソードを用いて、カソード配合物をハーフコインセルにおいて試験した。実施例は、以下の表8で詳述されたように、それぞれ0.25、0.5および1%のCCAロード量で試験した、実施例7に記載されたような、予め分散したCNS-AおよびCNS-B試料、CNSペレット、およびCNT(表3の規格IXの特性を有する)を含む。1時間の速度で、25℃(CC-CV1C、4.3V~0.05C)で完全に充電し、次いでこれらを25、0、-10、-20℃で、1Dから2.8V(1時間速度)に完全に放電することにより、ハーフコインセルの低温容量を測定した。
【0084】
【0085】
図11は、表8のカソード配合物を有するセルに対する、電極の-10℃の容量維持率(25℃の容量の%として)を示している。0.25%および0.5%の予め分散したCNS-Aを用いて調製したカソードは、1%のMWCNTと比較して、約48%改善された-10℃の容量維持率を示すことが判明した。0.5%のCNS-Bを有するカソードは1%のMWCNTを有するカソードよりも、約13%優れている。予め分散したCNS試料とは異なり、CNSペレットは、1%のCNTの容量維持率と同じ容量維持率を、ただし2分の1まで低いロード量で維持する(0.5%のCNSペレットの容量維持率≒1%のCNTの容量維持率)。これらの結果は、CNS材料が、CNT単独でのセル性能と比べて、たとえより高いロード量でも、より良いセル性能を低温でもたらすことを示唆している。低温性能の利点はまた、分散体を介してCNSを提供することにも関連し得る。
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1種または複数の任意のおよびすべての組合せを含む。さらに、単数形および冠詞「a」、「an」および「the」は、他に明示的に述べられていない限り、複数の形態も含むことを意図する。含む(include)、含む(comprise)、含んでいる(including)および/または含んでいる(comprising)という用語は、この明細書で使用される場合、述べられているその特徴、整数、ステップ、作業、要素、および/または構成成分の存在を特定するが、1種または複数の他の特徴、整数、ステップ、作業、要素、構成成分、および/または群の存在または添加を妨げないことをさらに理解されたい。さらに、構成成分またはサブシステムを含む要素が、別の要素と連結もしくはカップリングされたと言及および/または示されている場合、他の要素と直接連結もしくはカップリングされていてもよいし、または介入する要素が存在してもよいことを理解されたい。
【0086】
例えば「第1」および「第2」などの用語は、様々な要素について記載するために本明細書で使用されるが、これらの要素はこれらの用語に限定されてはならないことを理解されたい。これらの用語は1つの要素を別の要素から区別するために使用されているにすぎない。よって、以後に論じられる要素を第2の要素と呼ぶことができるが、同様に、第2の要素は、本発明の教示から逸脱することなく、第1の要素と呼ばれてもよい。
他に定義されない限り、本明細書で使用されているすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。用語、例えば、一般的に使用される辞書に定義されたものなどは、関連する技術との関連でこれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想的なまたはあまりにも正式な意味で解釈されないことをさらに理解されたい。
本発明はその好ましい実施形態を参照して特に示され、記載されているが、添付の特許請求の範囲に包含されている本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変化がその中に生じ得ることは当業者により理解されている。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕電気活性材料ならびに
カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料
を含む電極組成物であって、
電気活性材料がリチウム遷移金属化合物であり、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、電極組成物。
〔2〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有し、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点もしくはその近傍に存在しない、前記〔1〕に記載の電極組成物。
〔3〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔1〕または〔2〕に記載の電極組成物。
〔4〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔5〕結合剤をさらに含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔6〕結合剤がポリビニリデンジフルオリドである、前記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕少なくとも1種の材料が、分散体または遊離微粒子材料の形態で提供されるカーボンナノ構造体を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕PVPベースの分散剤、スチレン無水マレイン酸ベースの分散剤、セルロースベースの分散剤、共分散剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される分散剤をさらに含む、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕ペースト、スラリーまたは固体である、前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔10〕溶媒をさらに含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔11〕溶媒がN-メチルピロリドンである、前記〔10〕に記載の電極組成物。
〔12〕電極組成物が、乾燥した場合、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体断片および/または破砕したナノチューブを、質量基準で約1%以下の量で含有する、前記〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔13〕カーボンナノ構造体がコーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔14〕コーティングしたカーボンナノ構造体が、ポリウレタン-コーティングしたナノ構造体またはポリエチレングリコール-コーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔13〕に記載の電極組成物。
〔15〕コーティングしたカーボンナノ構造体の質量に対する、コーティングの質量が、約0.1%~約10%の範囲内である、前記〔13〕に記載の電極組成物。
〔16〕電極組成物が、乾燥した場合、コーティングしたカーボンナノ構造体を質量基準で約1%以下の量で含有する、前記〔13〕に記載の電極組成物。
〔17〕カーボンブラック、個別化された元の状態のカーボンナノチューブおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔18〕カーボンブラックをさらに含み、カーボンブラックが、200m
2
/g以下のBET面積および少なくとも130mL/100gのOANを有する、前記〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔19〕電気活性材料が、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物からなる群から選択されるリチウム遷移金属酸化物である、前記〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔20〕90~99質量%の電気活性材料を含む、前記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載の電極組成物。
〔21〕前記〔1〕~〔20〕のいずれかに記載の組成物および電極組成物に接触する集電体を含む、電極。
〔22〕前記〔1〕~〔21〕のいずれかに記載の組成物または電極を含む、電池。
〔23〕前記〔1〕~〔22〕のいずれかに記載の組成物または電極を含む、再充填可能なリチウムイオン電池。
〔25〕カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕した多層カーボンナノチューブからなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有する分散体と、電気活性材料とを一緒にして、混合物を形成するステップ
を含む、電極組成物を調製する方法であって、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有しており、
電気活性材料がリチウム遷移金属化合物である、方法。
〔26〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点もしくはその近傍に存在しない、前記〔25〕に記載の方法。
〔27〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔25〕または〔26〕に記載の方法。
〔28〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔25〕~〔28〕のいずれかに記載の方法。
〔29〕分散体が、カーボンナノ構造体と、PVPベースの分散剤、スチレン無水マレイン酸ベースの分散剤、セルロースベースの分散剤、共分散剤およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される分散剤とを一緒にすることにより調製される、前記〔25〕~〔29〕のいずれかに記載の方法。
〔30〕カーボンナノ構造体が遊離微粒子材料の形態で提供される、前記〔29〕に記載の方法。
〔31〕電気活性材料が、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物からなる群から選択されるリチウム遷移金属酸化物である、前記〔25〕~〔30〕のいずれかに記載の方法。
〔32〕混合物が結合剤をさらに含む、前記〔25〕~〔31〕のいずれかに記載の方法。
〔33〕結合剤がポリビニリデンジフルオリドである、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕混合物が、カーボンブラック、個別化された元の状態のカーボンナノチューブおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔25〕~〔33〕のいずれかに記載の方法。
〔35〕カーボンブラックをさらに含み、カーボンブラックが、200m
2
/g以下のBET面積および少なくとも130mL/100gのOANを有する、前記〔25〕~〔34〕のいずれかに記載の方法。
〔36〕混合物を乾燥させるステップをさらに含む、前記〔25〕~〔35〕のいずれかに記載の方法。
〔37〕乾燥した場合、混合物が、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および/または破砕したカーボンナノチューブを、約1質量%以下の量で含む、前記〔25〕~〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕電気活性材料が、乾燥した場合、混合物の質量に対して、90~99質量%の量で提供される、前記〔25〕~〔37〕のいずれかに記載の方法。
〔39〕混合物を集電体に施用するステップをさらに含む、前記〔25〕~〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕カーボンナノ構造体がコーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔25〕~〔39〕のいずれかに記載の方法。
〔41〕カーボンナノ構造体が、ポリウレタン-コーティングしたナノ構造体またはポリエチレングリコール-コーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔40〕に記載の方法。
〔42〕コーティングの質量が、コーティングしたカーボンナノ構造体の質量に対して、約0.1~約10%の範囲内である、前記〔40〕に記載の方法。
〔43〕乾燥した場合、混合物が、コーティングしたカーボンナノ構造体を約1質量%以下の量で含有する、前記〔40〕に記載の方法。
〔44〕カーボンナノ構造体を、電気活性材料を含むスラリーに組み込むステップを含む、電極組成物を調製する方法であって、
電気活性材料がリチウム遷移金属化合物であり、
カーボンナノ構造体が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含む、方法。
〔45〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点もしくはその近傍に存在しない、前記〔44〕に記載の方法。
〔46〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔44〕または〔45〕に記載の方法。
〔47〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点より後の領域に観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔44〕~〔46〕のいずれかに記載の方法。
〔48〕カーボンナノ構造体がフレーク、ペレットまたは顆粒として提供される、前記〔44〕~〔47〕のいずれかに記載の方法。
〔49〕電気活性材料が、90~99質量%の量で提供される、前記〔44〕~〔48〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕スラリーを集電体に施用するステップをさらに含む、前記〔44〕~〔49〕のいずれかに記載の方法。
〔51〕スラリーを乾燥させるステップをさらに含む、前記〔44〕~〔50〕のいずれかに記載の方法。
〔52〕スラリーが、乾燥した場合、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および/または破砕したカーボンナノチューブを、約1質量%以下の量で含む、前記〔44〕~のいずれかに記載の方法。
〔53〕スラリーが、カーボンブラック、個別化された元の状態のカーボンナノチューブおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される炭素導電性添加物をさらに含む、前記〔44〕~〔52〕のいずれかに記載の方法。
〔54〕スラリーがカーボンブラックをさらに含み、カーボンブラックが、200m
2
/g以下のBET面積および少なくとも130mL/100gのOANを有する、前記〔44〕~〔52〕のいずれかに記載の方法。
〔55〕カーボンナノ構造体がコーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔44〕~〔54〕のいずれかに記載の方法。
〔56〕コーティングしたカーボンナノ構造体が、ポリウレタンコーティングしたナノ構造体またはポリエチレングリコールコーティングしたカーボンナノ構造体である、前記〔55〕に記載の方法。
〔57〕コーティングの質量が、コーティングしたカーボンナノ構造体の質量に対して、約0.1~約10%の範囲内である、前記〔55〕に記載の方法。
〔58〕組成物の質量に対して、乾燥した場合、コーティングしたカーボンナノ構造体が、約1質量%以下の量で提供される、前記〔55〕に記載の方法。
〔59〕リチウム遷移金属酸化物が、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物およびリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物からなる群から選択される、前記〔44〕~〔58〕のいずれかに記載の方法。
〔60〕スラリーが結合剤をさらに含む、前記〔44〕~〔59〕のいずれかに記載の方法。
〔61〕結合剤がポリビニリデンジフルオリドである、前記〔60〕に記載の方法。
〔62〕スラリーが液体をさらに含む、前記〔44〕~〔61〕のいずれかに記載の方法。
〔63〕液体が、N-メチルピロリドン、アセトン、アルコール、水、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、前記〔62〕に記載の方法。
〔64〕カーボンナノ構造体の断片および/または破砕した多層カーボンナノチューブを生成し、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている、複数の多層カーボンナノチューブを含み、
破砕した多層カーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、前記〔44〕~〔63〕のいずれかに記載の方法。
〔65〕リチウム遷移金属化合物および第1の炭素導電性添加物を含むカソード、ならびに
グラファイト、ケイ素またはチタン酸リチウムからなる群から選択される活性のあるアノード材料および第2の炭素導電性添加物を含むアノードを含むリチウム電池であって、
第1および第2の炭素導電性添加物が、カーボンナノ構造体、カーボンナノ構造体の断片および破砕したカーボンナノチューブからなる群から選択され、
カーボンナノ構造体またはカーボンナノ構造体の断片が、分岐している、相互にかみ合っている、絡んでいるおよび/または共通の壁を共有することによって、ポリマー構造中で架橋されている、複数のカーボンナノチューブを含み、
破砕したカーボンナノチューブが、カーボンナノ構造体から誘導され、分岐しており、互いに共通の壁を共有している、リチウム電池。
〔66〕多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、
多層カーボンナノチューブの少なくとも1つが、200~1000の範囲内の長さ対直径のアスペクト比を有しており、
SEMにより決定される場合、多層カーボンナノチューブの少なくとも1つの2マイクロメートルの長さに沿って、少なくとも2つの分岐が存在し、
少なくとも1つの多層カーボンナノチューブが、分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示し、かつ/または
TEMにより決定される場合、触媒粒子が分岐点もしくはその近傍に存在しない、前記〔65〕に記載のリチウム電池。
〔67〕多層ナノチューブが、壁の数を計数するのに十分な倍率においてTEMにより決定される場合、2~30個の共軸ナノチューブを含む、前記〔65〕または〔66〕のいずれかに記載のリチウム電池。
〔68〕カーボンナノチューブの少なくとも1%が、SEMにより決定される場合、2μm以上の長さを有しており、長さ対直径のアスペクト比が、200~1000の範囲内にある、かつ/または分岐点の前の領域に比べて、分岐点の後の領域において観察される壁の数が非対称であることを示す、前記〔65〕~〔67〕のいずれかに記載のリチウム電池。