(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】落雷保護可能な透過性材料及び樹脂注入処理におけるその使用
(51)【国際特許分類】
B32B 5/24 20060101AFI20240708BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20240708BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240708BHJP
【FI】
B32B5/24 101
B29B11/16
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2021557923
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 US2020025153
(87)【国際公開番号】W WO2020205488
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-27
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レミー, ベレニス
(72)【発明者】
【氏名】サン, チュンチエ ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, サミュエル ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】レストゥッシア, カルメロ ルカ
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-526403(JP,A)
【文献】国際公開第2017/108488(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0291386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
B29B 11/16
B29B 15/08 - 15/14
B29C 41/00 - 41/36
B29C 41/46 - 41/52
B29C 70/00 - 70/88
C08J 5/04 - 5/10
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ランダムに配置された繊維を含む第1の不織布ベールと;
b.その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層と;
c.前記第1の不織布ベールが多孔質のままであり且つ前記導電層の前記開口のほとんど又は全てが樹脂材料によって塞がれないような形で、前記第1の不織布ベール全体及び前記第1の不織布ベールと前記導電層との間に不連続に分布した樹脂材料と;
を含む、多孔質且つ流体透過性の透過性材料であって、
前記多孔質導電層が2つの対向する表面を含み、第1の不織布ベールが対向する表面のうちの1つに接着され、
前記樹脂材料が1種以上の熱硬化性樹脂と硬化剤とを含む、
透過性材料。
【請求項2】
d.ランダムに配置された繊維を含む第2の不織布ベール、
をさらに含み、前記第2の不織布ベールが、前記多孔質導電層の他方の対向する表面に接着され、前記樹脂材料が、前記第2の不織布ベールが多孔質のままであるように、不連続に前記第2の不織布ベール全体に分配される、
請求項1に記載の透過性材料。
【請求項3】
一方向繊維の層に結合され
た第2の不織布ベールを含む強化テキスタイルをさらに含み
、第2の不織布ベール又は一方向繊維の層のいずれかが、前記多孔質導電層の他方の対向する表面に接着され、前記強化テキスタイルが多孔質且つ流体透過性である、請求項1に記載の透過性材料。
【請求項4】
一方向繊維の層に結合された第3の不織布ベールを含む強化テキスタイルをさらに含み、前記第3の不織布ベール又は前記一方向繊維の層のいずれかが、前記第2の不織布ベールに接着され、前記強化テキスタイルが多孔質且つ流体透過性である、請求項2に記載の透過性材料。
【請求項5】
前記樹脂材料が20gsm~75gsm、又は25gsm~50gsmの範囲の量で存在する、請求項1に記載の透過性材料。
【請求項6】
前記樹脂材料が40gsm~150gsm、又は50gsm~100gsmの範囲の量で存在する、請求項2に記載の透過性材料。
【請求項7】
前記樹脂材料が、1種以上の多官能性エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミン化合物と、任意選択的に、熱可塑性ポリマー、エラストマー、コア-シェルゴム粒子(CSR)、エポキシ樹脂とビスフェノールとエラストマーポリマーとの反応生成物である予備反応付加物、並びにそれらの組み合わせから選択される強化剤と、を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項8】
a.ランダムに配置された繊維を含む第1の不織布ベールと;
b.その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層と;
c.前記第1の不織布ベールが多孔質のままであり且つ前記導電層の前記開口のほとんど又は全てがバインダーによって塞がれないような形で、前記第1の不織布ベール全体及び前記第1の不織布ベールと前記導電層との間に不連続に分布したバインダーと;
d.一方向繊維の層に結合された第2の不織布ベールを含む強化テキスタイルと;
を含む、多孔質且つ流体透過性の透過性材料であって、
前記導電層が、前記第1の不織布ベールと前記強化テキスタイルとの間に挟まれており、
前記バインダーがエポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとのブレンドを含むが、65℃より高い温度で活性を有するいかなる触媒又は架橋剤を含まない、
透過性材料。
【請求項9】
a.それぞれがランダムに配置された繊維を含む第1の不織布ベール及び第2の不織布ベールと;
b.その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層と;
c.前記第1及び第2の不織布ベールが多孔質のままであり且つ前記導電層の前記開口のほとんど又は全てがバインダーによって塞がれないような形で、前記第1及び第2の不織布ベール全体及び各不織布ベールと前記導電層との間に不連続に分布したバインダーと;
d.一方向繊維の層に結合された第3の不織布ベールを含む強化テキスタイルと;
を含む、多孔質且つ流体透過性の透過性材料であって、
前記導電層が、前記第1及び第2の不織布ベールの間に挟まれており、前記強化テキスタイルが前記第2の不織布ベールに接着されており、
前記バインダーがエポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとのブレンドを含むが、65℃より高い温度で活性を有するいかなる触媒又は架橋剤を含まず、
前記強化テキスタイルが多孔質且つ流体に対して透過性である、
透過性材料。
【請求項10】
前記バインダーが、エポキシ樹脂と、ポリアリールスルホンポリマーと
のブレンドを含む、請求項8又は9に記載の透過性材料。
【請求項11】
前記バインダーが合計で5gsm~20gsmの量で存在する、請求項8~10のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項12】
前記第1の不織布ベールが3~50gsmの範囲の目付を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項13】
前記第2の不織布ベールが3~50gsmの範囲の目付を有する、請求項2、4、6、及び9のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項14】
前記第1の不織布ベールが、ガラス、炭素、又はポリマーから形成された繊維を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項15】
前記多孔質導電層が、金属メッシュ又は金属スクリーン、又は穴があいた金属箔である、請求項1~14のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項16】
前記多孔質導電層が50gsm~850gsmの範囲の目付を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項17】
多孔質導電層が、銅、アルミニウム、青銅、チタン、合金、及びそれらの組み合わせから選択される金属を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項18】
前記強化テキスタイル中の前記不織布ベールが、炭素繊維若しくは熱可塑性繊維、又は炭素繊維と熱可塑性繊維との混合物を含み、前記強化テキスタイル中の前記一方向繊維が炭素繊維である、請求項3、4、8、及び9のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項19】
前記透過性材料が
、0.125インチ
~12インチ(又
は3.17mm
~305mm)の範囲の幅とその幅の少なくとも10
倍である長さとを有する細長い又は連続したテープの形態である、請求項1~18のいずれか一項に記載の透過性材料。
【請求項20】
樹脂注入により液体樹脂を受け入れるように構成されたプリフォームであって、
強化繊維の複数の層を含み、強化繊維の各層が多孔質であり、流体に対して透過性であり;
請求項1~19のいずれか一項に記載の透過性材料が前記プリフォームの外表面と接触している;
プリフォーム。
【請求項21】
請求項20に記載のプリフォームに液体樹脂を注入すること;及び
前記樹脂が注入されたプリフォームを硬化させること;
を含む、複合材料部品の形成方法。
【請求項22】
(i)不織布ベールと、その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層と、樹脂フィルムとを組み合わせて、前記樹脂フィルム又は前記導電層がアセンブリの中央になるようにアセンブリを形成すること;
(ii)前記樹脂フィルムが流動性樹脂になるように前記アセンブリに熱及び圧力を加えることであって、前記樹脂が前記不織布ベール全体に広がるが、連続樹脂フィルムを形成しない、又は前記多孔質導電層の前記開口を塞がないこと;
を含む、透過性材料の形成方法。
【請求項23】
(i)2枚の不織布ベールと、2枚の樹脂フィルムと、その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層とを組み合わせて、前記導電層が前記2枚の不織布ベールの間にあり、且つ前記2枚の樹脂フィルムが最外層になるようにアセンブリを形成すること;
(ii)前記樹脂フィルムが流動性樹脂になるように前記アセンブリに熱及び圧力を加えることであって、前記樹脂が前記不織布ベール全体に広がるが、連続樹脂フィルムを形成しない、又は多孔質導電層の開口を塞がないこと;
を含む、透過性材料の形成方法。
【請求項24】
(i)樹脂フィルムを不織布ベールと接触させて配置すること;
(ii)前記樹脂フィルムに熱を加えて前記樹脂の粘度を下げ、流動性樹脂を得ること;
(iii)真空引きして前記不織布ベールを通して前記流動性樹脂を引っ張り、それによって前記不織布ベール上に連続樹脂表面を形成せずに前記樹脂を前記不織布ベール全体に広げることであって、加熱及び真空引き後に得られる樹脂含有不織布ベールが多孔質のままであること;及び
(iv)前記樹脂含有不織布ベールを、その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層に積層することであって、前記導電層が積層後に多孔質のままであること;
を含む多孔質材料の形成方法。
【請求項25】
(i)樹脂溶液を第1の不織布ベール上に噴霧し、別途多孔質導電層上に噴霧して、多孔質の第1の樹脂被覆ベール及び多孔質の樹脂被覆導電層を形成すること;
(ii)前記第1の樹脂被覆不織布ベール及び前記樹脂被覆導電層を乾燥すること;
(iii)前記第1の樹脂被覆不織布ベールを前記樹脂被覆導電層の片面に積層すること;
を含む透過性材料の形成方法であって、
前記樹脂溶液が、1種以上の熱硬化性樹脂と、硬化剤と、任意選択的な強化剤としての熱可塑性ポリマーと、10%~30%の固形分の固体含有率を有する溶液を生成するのに十分な量の溶媒とを含み、
前記第1の不織布ベール及び前記導電層が、前記樹脂溶液の噴霧後に多孔質のままである、方法。
【請求項26】
前記樹脂溶液を第2の不織布ベールに噴霧し、第2の樹脂被覆不織布ベールを形成すること;前記第2の樹脂被覆不織布ベールを乾燥させること;及び前記第2の樹脂被覆不織布ベールを、前記樹脂被覆導電層の反対側に積層すること;を更に含み、
前記第2の不織布ベールが、前記樹脂溶液の噴霧後に多孔質のままである、
請求項25記載の方法。
【請求項27】
(i)樹脂溶液を第1の不織布ベールに噴霧し、樹脂被覆ベールを形成すること;
(ii)前記樹脂被覆ベールを乾燥させること;及び
(iii)前記樹脂被覆ベールを、その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層に積層すること;
を含む多孔質材料の形成方法であって、
前記樹脂溶液が、1種以上の熱硬化性樹脂と、硬化剤と、任意選択的な強化剤としての熱可塑性ポリマーと、10%~30%の固形分の固体含有率を有する溶液を生成するのに十分な量の溶媒とを含み、
前記第1の不織布ベールが、前記樹脂溶液の噴霧後に多孔質のままである、方法。
【請求項28】
前記樹脂溶液が、1種以上エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミン化合物と、合計でのエポキシ樹脂の(重量)100部あたり10~40部の量の熱可塑性ポリマーとを含む、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、複合材料部品に落雷保護(LSP)を付与するための材料に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】一実施形態による、樹脂注入プロセスに組み込むことができる透過性LSP材料を示す。
【
図2】別の実施形態による透過性LSP材料を示す。
【
図3】さらに別の実施形態による透過性LSP材料を示す。
【
図4】さらに別の実施形態による透過性LSP材料を示す。
【
図4】さらに別の実施形態による透過性LSP材料を示す。
【
図8】一実施例に従って製造された透過性LSP構造の上面図である。
【
図9】一実施例に従って製造された、LSP材料が埋め込まれた硬化複合材料パネルの断面図を表す。
【
図10】別の実施例に従って製造された、LSP材料が埋め込まれた硬化複合材料パネルの断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0003】
繊維強化ポリマーマトリックス複合材料(PMC)は、ポリマーマトリックスに含浸された強化繊維で構成されている高性能構造材料である。PMC材料は、激しい環境への耐性、高い強度、及び/又は軽量を必要とする用途で一般的に使用されている。そのような用途の例としては、航空機の構成要素、例えば、尾翼、翼、胴体、及びプロペラ、自動車、船の船体、及び自転車のフレームが挙げられる。
【0004】
胴体や翼などの航空宇宙用構成要素部品の製造において使用される材料は、一般的な環境事象によって引き起こされる損傷又は危険から部品を保護する特定の特性を有さなければならない。雷は、そのような部品が十分に導電性でなく、且つ航空機を介して接地されていない場合に、構成要素部品に深刻な損傷及び/又はパンチスルーを引き起こす可能性がある一般的な環境事象の例である。飛行中に航空機の翼の構成要素に落雷した場合、その事象は、構成要素自体に深刻な物理的損傷を引き起こすことに加えて、危険なサージ電流を引き起こす可能性がある。サージ電流は、最終的に燃料タンクに接触して爆発を引き起こす可能性があるため、特に懸念される。
【0005】
PMC材料から製造された複合材料部品に落雷保護(LSP)を提供するために、複合材料部品の導電性を高める様々な方法が使用されてきた。航空宇宙産業における構成要素部品にLSPを付与するための従来の方法は、金属メッシュ、スクリーン、エキスパンドメタル箔、又は織金網を複合材料部品に組み込むことである。
【0006】
そのようなLSP材料は、複合材料部品の製造中に組み込むことができる。複合材料部品は、様々な方法を使用して製造することができ、その1つがプリプレグ処理である。プリプレグは、典型的には、例えばエポキシベースの樹脂などのマトリックス樹脂を含浸させた強化繊維のシートである。複合材料部品を形成するためには、プリプレグは規定サイズにカットされ、モールド上にレイアップされる。金属LSP材料は、プリプレグレイアップと外側表面フィルムとの間に単一の導電層として組み込むことができ、或いは導電層を表面フィルムに埋め込むことによって組み込むことができる。航空宇宙用途では、多くの場合、その表面品質を改善するためにそのような表面フィルムが複合材料部品に組み込まれる。表面フィルムは、典型的にはエポキシベースのフィルムであり、複合材料部品の製造中にプリプレグレイアップと同時硬化することができる。所定の位置に配置された後、プリプレグレイアップは導電層及び表面フィルムと共に真空バッグに封入され、加圧下で熱硬化されて、最終的な複合材料部品が製造される。複合材料部品へと成形されるプリプレグは、使い易さ及び高い信頼性という利点を有している。しかしながら、これらは、限られたドレープ性(すなわちドレープする能力)しか有さないという欠点も有している。
【0007】
より複雑な形状を有する複合材料部品を製造するために、樹脂トランスファー成形(RTM)及び真空支援樹脂トランスファー成形(VARTM)などの樹脂注入プロセスが使用されてきた。RTMプロセスの間、ドライプリフォームが密閉されたモールドキャビティ内に配置され、液体樹脂が加圧下でキャビティ内に注入される。ドライプリフォームは、乾燥強化繊維及び/又は生地のプライの層を含む成形構造であり、これらは少量のバインダーと一緒に保持することができる。中にプリフォームを含むモールドは、真空下に置かれることが多いため、真空によってプリフォーム内に取り込まれた空気が全て除去され、RTMプロセスが速められる。液体樹脂がモールドキャビティを満たすと、樹脂が硬化し、結果として硬化した複合材料部品が形成される。VARTMは、片面ツールが通常使用されることを除いてはRTMと同様である。通常、VARTMプロセスには、ツール表面のプリフォームを、柔軟且つ流体不透過性のカバーである真空バッグに封入すること;ツールとバッグとの間を真空引きし、それによってバッグをプリフォームに対して圧縮させること;及び1つ以上の樹脂供給ライン又は導管を介して、真空バッグに液体樹脂を導入すること;を含む。そのような樹脂注入プロセスは、従来のプリプレグ技術を使用して製造することが困難な複雑な形状の構造を製造する場合に特に有用である。
【0008】
従来、液体樹脂注入によって複合材料部品を形成するためのドライプリフォームは、手作業のレイアップ操作によって作製され、乾燥繊維材料の重ねられた層は、複合材料部品の形状を実質的に規定するツール上にレイアップされる。繊維材料の層は、不織布又は織布、例えば、非クリンプ布(NCF)の形態であってもよく、それは樹脂で予備含浸されていない。層をツール上にレイアップする間、皺又はブリッジを引き起こさずにそれらにツールの形状をとらせるように作業者は注意する必要がある。さらに、樹脂注入プロセスにより一体化されたLSP導電性材料を組み込むために、典型的にはエキスパンドメタル箔などの単一の導電層がツール表面に配置されてからドライプリフォームがレイアップされ、その後アセンブリ全体に樹脂が注入される。樹脂が注入されたプリフォームは金属箔と一緒に硬化されることで、LSP金属層が中に組み込まれた硬化複合材料部品が形成される。エキスパンドメタル箔は非常にデリケートな材料であるため、このような手作業は面倒で時間がかかり、歪み及び皺ができ易く、最終的な表面品質が変化する可能性がある。
【0009】
自動テープ積層(ATL)や自動繊維積層(AFP)などの自動積層プロセスによってドライプリフォームのレイアップを形成し、製造速度、効率、及び品質を高めるためにそのような自動プロセスにLSP材料を組み込み、それによって製造コストを削減することが望ましいであろう。
【0010】
本明細書では、樹脂注入プロセス、特にVARTMに組み込むことができる透過性LSP材料が開示される。この透過性LSP材料は、ATLやAFPなどの自動積層プロセスで使用可能な細長いテープ又は連続テープの形をとることができる。いくつかの実施形態では、LSP材料は、最終的な複合材料構造体の表面品質を改善するだけでなく、落雷、静電気放電(ESD)、及び電磁干渉(EMI)に対する保護を提供するように構成される。
【0011】
図1に示される一実施形態によれば、LSP材料10は、少なくとも以下の構成要素:(a)ランダムに配置された繊維の不織布ベール11と;(b)その厚さを通り抜ける開口を有する多孔質導電層12と;(c)不織布ベール11全体及び不織布ベール11と導電層12との間に不連続に分布した樹脂材料13と;から構成される透過性材料である。多孔質導電層12は、それらの間の樹脂材料13の存在に起因して、不織布ベール11の片面に接着される。多孔質導電層12は、複合材料部品の製造中に樹脂が注入されるプリフォームに面しているか、接触している。
【0012】
樹脂材料に関し、「不連続に」は、流体、液体、又は空気が、ベールの厚さ又は導電層の厚さを通り抜けて流れることを防止するような形で樹脂材料が不織布ベールの主表面又は導電層の主表面を覆う連続樹脂フィルムを形成しないことを意味する。樹脂材料は、樹脂含有不織布ベールが多孔質のままであり、導電層の開口のほとんど(すなわち半分以上)又は全てが完全に塞がれないように分配される。そのため、液体、特にRTM及びVARTMで使用される液体樹脂は、樹脂注入中にLSP材料の厚さを通り抜けて流れ、完全に埋め込まれたLSP溶液を形成する可能性がある。また、最初のドライプリフォームに最初に閉じ込められた空気は、ガス放出プロセス(ドライプリフォームが加熱されてプリフォームに閉じ込められた揮発性物質や水分を除去するプロセス)中に排出することができる。
【0013】
図2に示される別の実施形態では、多孔質導電層12(
図1を参照して説明される)は、2つの不織布ベール11及び14の間に挟まれ、樹脂材料13は、不織布ベール11、14、及び導電層12全体に不連続に分布する。樹脂材料の不連続な存在は、
図1を参照して説明した通りである。樹脂材料の一部は、導電層12の開口(又は穴)を貫通することができるが、樹脂材料は全ての開口を完全には満たさない。そのため、
図2に示される積層構造は、多孔質且つ流体透過性の構造のままであり、液体樹脂が容易に通り抜けて流れることができる。この実施形態では、樹脂含有ベール(11、14)のいずれかが、複合材料部品の製造中に樹脂が注入されるプリフォームと接触する。
【0014】
図1及び
図2に示される実施形態では、樹脂材料を含まない各不織布ベール(11、14)は、3~50gsm又は4~15gsmの範囲の目付を有する薄くて軽い構造である。「gsm」はg/m
2を意味する。各不織布ベールは、ガラス、炭素、又は熱可塑性ポリマーなどのポリマーから製造された連続繊維又はチョップドファイバーから構成されていてもよい。不織布ベールは、異なるタイプの繊維、すなわち異なる材料の繊維から構成されていてもよい。ポリアミド(脂肪族ポリアミド(PA)、脂環式ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリフタルアミド(PPA)、エーテル又はエステルブロックポリアミド(PEBAX、PEBA))、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリアミドアミド(PAI)、ポリアリールスルホンなどのポリスルホン(ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルスルホン-エーテルエーテルスルホン(PES:PEES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)など)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)(ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)、熱可塑性ポリウレタンなどのポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルニトリル、ポリベンズイミダゾール、液晶ポリマー(LCP)、それらの組み合わせ及びコポリマーから製造される繊維などの熱可塑性繊維が適している。
【0015】
図1及び
図2に示される実施形態では、多孔質導電層12(樹脂材料なし)は、好ましくは、約50gsm~850gsm、又は60gsm~350gsm、又は60gsm~195gsmの範囲内の目付を有するエキスパンドメタル箔又は金属スクリーン又は金属メッシュであってよい。導電層は、その厚さを通り抜ける穴及び3μm~300μmの範囲の厚さを有する穴のあいた金属箔(シート形態)であってよい。穴は、円形又は楕円形などの任意の適切な断面形状を有し得る。適切な金属は、銅、アルミニウム、青銅、チタン、合金、及びそれらの組み合わせから選択することができる。一実施形態では、多孔質導電層は、10μm~75μmの範囲の厚さ、又は60gsm~350gsmの範囲の目付を有する穴のあいた銅箔である。
【0016】
図1に示される実施形態では、樹脂材料13は、20gsm~75gsm、又は25gsm~50gsmの範囲の量で存在する。
図2に示す実施形態では、LSP材料中の樹脂材料の合計量は、40gsm~150gsm、又は50gsm~100gsmである。樹脂材料は、1種以上の熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂である。樹脂材料の組成については以降で詳しく説明する。
【0017】
図3によって示される別の実施形態では、
図1を参照して説明したLSP材料は強化テキスタイル15に接着されている。強化テキスタイル15は、不織布ベール15bに取り付けられた一方向(UD)強化繊維15aの層から構成される。
図3に示されているUD強化繊維15aは、穴のあいた導電層12に接着されている。代わりに、強化テキスタイル15のベール面15bが、穴のあいた導電層12に接着されていてもよい。強化テキスタイル15は、補強材料として機能し、幅の広いLSP材料を幅の狭いテープにスリットする際の、又はLSPテープを自動積層する際の「アコーディオン」効果を防止する。「アコーディオン」効果とは、テープが皺になったり束になったりすることを指す。強化テキスタイル15は、プリフォームを形成するための自動積層プロセス中の最初の強化層としても機能する。そのため、LSP材料と最初又は最後の強化プライの敷設は、2つの別々のステップではなく、1つのステップで実行されるため、全体的な処理時間が短縮される。
【0018】
図4によって示されるさらに別の実施形態では、
図2を参照して説明されているLSP材料は、強化テキスタイル15に接着されている。強化テキスタイル15は、
図3について説明した通りである。この場合も、UD繊維15a又はベール15bのいずれかが、樹脂含有ベール13と接触していてもよい。
【0019】
図3及び4に示される実施形態では、強化テキスタイル15は、複合材料部品の製造中に樹脂が注入されるプリフォームと接触することになる。
【0020】
図3及び
図4の構成では、樹脂材料13は、50℃までの温度で固体であり、且つ示差走査熱量測定(DSC)によって測定される65℃~125℃の範囲の温度の軟化点を有するバインダーで置き換えることができる。この固体バインダーには、エポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとのブレンドが含まれているものの、65℃より高い温度で活性を有する触媒又は架橋剤は含まれていない。このような固体バインダーが使用される場合、
図3又は
図4に示されているLSP多層構造中のバインダーの量は、合計5gsm~20gsmの範囲とすることができる。
【0021】
図1~4を参照して説明された多層LSP材料は、軽量且つATLやAFPなどの自動積層プロセス用に構成された可撓性テープの形態であってもよい。その可撓性及び軽量性のため、そのようなLSPテープは、従来の樹脂含浸プリプレグテープと比較してかなり速い速度で敷設することができる。LSPテープは、約0.125インチ~約12インチ(又は約3.17mm~約305mm)の幅を有してもよい。いくつかの実施形態では、LSPテープは、約0.125インチから約1.5インチ(又は約3.17mm~約38.1mm)、又は約0.25インチ~約0.50インチ(又は約6.35mm~約12.77mm)の幅を有する。別の実施形態において、LSPテープは、約6インチ~約12インチ(又は約152mm~約305mm)の幅を有する。テープの長さは連続しており、又はその幅に対して非常に長く、例えば、その幅の少なくとも10倍、場合によってはその幅の100~100,000倍である。連続した形態において、表面テープは、自動化方法においてその適用前に貯蔵のためにロールに巻き上げられ得る。
【0022】
ATL及びAFPは、コンピュータ誘導ロボット工学を使用して連続したテープを成形面(例えばマンドレル)上に敷設して複合構造物又は繊維プリフォームを形成する方法である。ATL/AFP法は、1つ又は複数のテープをツール表面上に並列に分配して所望の幅及び長さの層を形成し、次に追加の層をその前の層の上に積み重ねて、所望の厚さを有するレイアップを得ることを含む。後続テープは、先行テープに対して異なった角度に配向されてもよい。ATL/AFPシステムは、典型的には、テープを直接ツール表面上に分配して圧縮するためのロボット制御されたヘッドを備えている。
【0023】
樹脂材料
本開示のLSP材料中の樹脂材料は、室温(20℃~25℃)で粘着性であり、それによりLSP材料の片面又は両面に粘着性の表面を付与する。樹脂材料に関して使用される「粘着性」という用語は、触れるとそれが粘着性であり別の表面に容易に付着することを意味する。樹脂材料の粘着性のため、LSP材料は、ツール表面に配置したり、乾燥した繊維プリフォームなどの別の基材上にラミネートした場合に、熱をかけなくても所定の位置に確実にとどまる。そのような粘着性は、ATLやAFPなどの自動積層プロセスで有利である。
【0024】
本明細書の様々な実施形態に、特に
図1及び
図2を参照して記載されている粘着性樹脂材料は、1種以上の熱硬化性樹脂を含む硬化性樹脂組成物から形成される。適した熱硬化樹脂の例には、限定されないが、エポキシ、フェノール樹脂、シアネートエステル、ビスマレイミド、ベンゾオキサジン(ポリベンゾオキサジンなど)、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0025】
好ましい実施形態では、硬化性樹脂組成物は、1種以上のエポキシ樹脂と少なくとも1種の硬化剤とを含む。エポキシ樹脂には、一官能性及び多機能性のエポキシが含まれる。多官能性エポキシ樹脂(又はポリエポキシド)は、1分子中に2つ以上のエポキシ官能基を含む。
【0026】
適した多官能性エポキシ樹脂の例には、アルカリの存在下でエピクロロヒドリン又はエピブロモヒドリンとポリフェノールとの反応によって調製されるポリグリシジルエーテルが含まれる。適したポリフェノールは、例えば、レソルシノール、ピロカテコール、ピロカテキン、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2-プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-イソブタン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1-エタン、及び1,5-ヒドロキシナフタレンである。
【0027】
同じくポリアルコールのポリグリシジルエーテルもまた含まれる。このようなポリアルコールには、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンが含まれる。さらに別のエポキシ樹脂には、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えば、グリシドール又はエピクロロヒドリンと脂肪族又は芳香族ポリカルボン酸、例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸又は二量体脂肪酸との反応生成物が含まれる。
【0028】
他のエポキシドには、オレフィン性不飽和脂環式化合物のエポキシ化生成物に由来する又は天然油脂に由来するエポキシドが含まれ得る。
【0029】
また、ビスフェノールA又はビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応生成物である液体エポキシ樹脂もまた含まれる。これらのエポキシ樹脂は、室温において液体であり、一般的に、ASTM D-1652によって測定される時に約150~約480のエポキシ当量(g/eq)を有する。
【0030】
以下の化学構造を有するフェノール-ホルムアルデヒドノボラック又はクレゾール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体であるエポキシノボラック樹脂が特に適している:
(式中、n=0~5、且つR=H又はCH
3である)。R=Hであるとき、樹脂はフェノールノボラック樹脂である。R=CH
3であるとき、樹脂はクレゾールノボラック樹脂である。前者は、Dow Chemical Co製のDEN(商標)428、DEN(商標)431、DEN(商標)438、DEN(商標)439、及びDEN(商標)485として商業的に入手可能である。後者は、Ciba-Geigy Corp製のECN1235、ECN1273、及びECN1299として商業的に入手可能である。使用され得る他の適したノボラックには、Celanese Polymer Specialty Co製のSU-8が含まれる。好ましい実施形態において、エポキシノボラック樹脂は、25℃における4000~10,000mPa・sの粘度及びASTM D-1652によって測定される約190g/eq~約235g/eqのエポキシド当量(EEW)を有する。
【0031】
特に適した多官能性エポキシ樹脂は、1分子中4つのエポキシ官能基と、少なくとも1つのグリシジルアミン基とを有する四官能性芳香族エポキシ樹脂である。例は、以下の化学構造:
を有するメチレンジアニリンのテトラグリシジルエーテルである。構造中のアミン基は、芳香環構造のパラ-又は4,4’位置に示されるが、しかしながら、2,1’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’などの他の異性体が可能な代替形であることは理解されるはずである。商業的に入手可能な四官能性エポキシ樹脂の例は、Huntsman Advanced Materialsによって供給されるAraldite(登録商標)MY9663、MY9634、MY9655、MY-721、MY-720、MY-725である。
【0032】
別の特に適した多官能性エポキシ樹脂は、三官能エポキシ樹脂、例えば、アミノフェノールのトリグリシジルエーテルである。商業的に入手可能な三官能エポキシ樹脂の具体的な例は、Huntsman Advanced Materialsによって供給されるAraldite(登録商標)MY0510、MY0500、MY0600、MY0610である。
【0033】
別の適切な三官能性エポキシ樹脂は、トリス-(ヒドロキシルフェニル)-メタンベースのエポキシ、例えばHuntsman Advanced Materialsから供給される以下の化学構造:
を有するTACTIX(登録商標)742樹脂である。
【0034】
硬化性樹脂組成物は、高いTg及び高い架橋密度を生じるように調合されてもよい。いくつかの実施形態において、エポキシノボラック樹脂と非ノボラック多官能性エポキシ樹脂(特に、三官能性及び/又は四官能性エポキシ)との組み合わせが使用される。エポキシノボラック樹脂と非ノボラック多官能性エポキシ樹脂との相対量は変化させられてもよいが、エポキシノボラック樹脂の量は、非ノボラック多官能性エポキシ樹脂100部当たり約80~約100部の範囲内であることが好ましい。明記した比率においてのエポキシノボラック樹脂と多官能性エポキシ樹脂との組み合わせは、所望の高いTg及び硬化した時の架橋密度に寄与する。
【0035】
多官能性エポキシド樹脂は様々なアミン系潜硬化剤によって硬化されてもよく、それらは高温(例えば150°F(65℃)を超える温度)で活性化される。適切な硬化剤の例には、ジシアンジアミド(DICY)、ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS又は3,3’-DDS)、4,4’-メチレン-ビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)、グアナミン、グアニジン、アミノグアニジン、及びそれらの誘導体が含まれる。イミダゾール及びアミン錯体のクラスの化合物もまた、使用されてもよい。一実施形態では、硬化剤はジシアンジアミドである。別の実施形態では、硬化剤は4,4’-メチレン-ビス(3-クロロ-2,6)-ジエチルアニリン)(MCDEA)である。アミン系硬化剤は、樹脂組成物の全重量に基づいて約1重量%~約5重量%の範囲内の量において存在する。
【0036】
硬化促進剤をアミン系硬化剤と共に使用して、エポキシ樹脂とアミン系硬化剤との間の硬化反応を促進してもよい。適した硬化促進剤には、アルキル及びアリールで置き換えられた尿素(芳香族又は脂環式ジメチル尿素など)、及びトルエンジアミン又はメチレンジアニリンをベースとしたビス尿素が含まれてもよい。ビス尿素の一例は、ジシアンジアミドのための適した促進剤である、CVC Chemicals製のOmicure(登録商標)U-52又はCA152として商業的に入手可能な4,4’-メチレンビス(フェニルジメチル尿素)である。別の例は、CVC Chemicals製のOmicure(登録商標)U-24又はCA150として商業的に入手可能な2,4-トルエンビス(ジメチル尿素)である。硬化促進剤は、樹脂組成物の全重量に基づいて約0.5重量%~約3重量%の範囲内の量で存在し得る。
【0037】
本明細書中で用いられる用語「硬化する(cure)」及び「硬化(curing)」は、高温での加熱、紫外線及び放射への暴露、又は化学添加剤によって引き起こされるプレポリマー物質又は樹脂又はモノマーの不可逆的な固化を意味する。用語「硬化性(curable)」は、固化した材料へと硬化され得ることを意味する。
【0038】
硬化性樹脂組成物は、1種以上の強化剤をさらに含有してもよい。強化剤は、熱可塑性ポリマー、エラストマー、コア-シェルゴム粒子、エポキシ樹脂とビスフェノールとエラストマーポリマーとの反応生成物である予備反応付加物、並びにそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態において、この群からの2つの異なった強化剤の組み合わせが使用される。強化剤の量は、合計で、樹脂組成物の全重量に基づいて約1重量%~約30重量%、いくつかの場合、約10重量%~約20重量%であってもよい。
【0039】
予備反応付加物に関して、適したエポキシ樹脂には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAの水素化ジグリシジルエーテル、又はビスフェノールFの水素化ジグリシジルエーテルが含まれる。脂環式エポキシもまた適しており、それらには、1分子中に少なくとも1つの脂環式基及び少なくとも2つのオキシラン環を含有する化合物が含まれる。特定の例には、脂環式アルコールのジエポキシド、以下の構造:
によって表される水素化ビスフェノールAが含まれる。このような脂環式エポキシ化合物樹脂の例は、CVC Thermoset Specialtiesから入手可能なEPALLOY(登録商標)5000(ビスフェノールAジグリシジルエーテルを水素化することによって調製された脂環式エポキシ化合物)である。予備反応付加物において使用するために適した他の脂環式エポキシドには、Momentive Specialty Chemicalsによって供給されるEPONEX(商標)脂環式エポキシ樹脂、例えばEPONEX(商標)樹脂1510が含まれ得る。
【0040】
予備反応付加物中のビスフェノールは、直鎖又は脂環式エポキシ化合物のための鎖延長剤として機能する。適したビスフェノールには、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビスフェノールZ、及びテトラメチルビスフェノールA(TMBP-A)が含まれる。
【0041】
予備反応付加物を形成するための適したエラストマーには、限定されないが、例えばアミン末端ブタジエンアクリロニトリル(ATBN)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、及びカルボキシル末端ブタジエン(CTB)などの液体エラストマーが含まれる。フルオロカーボンエラストマー、シリコーンエラストマー、スチレン-ブタジエンポリマーもまた可能である。実施形態において、予備反応付加物において使用されるエラストマーは、ATNB、CTBN又はCTBである。
【0042】
適した熱可塑性強靭化剤には、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)などのポリアリールスルホンポリマーが含まれる。いくつかの実施形態において、強靭化剤はPESとPEESとのコポリマーであり、それは米国特許第7084213号明細書に記載されている。
【0043】
強化成分は、300nm以下の粒度を有するコア-シェルゴム(CSR)粒子であってもよい。CSR粒子は、軟質コアが硬質シェルによって囲まれるコア-シェル粒子のいずれかであってもよい。好ましいCSR粒子は、ポリブタジエンゴムコア又はブタジエンアクリロニトリルゴムコアとポリアクリレートシェルとを有する粒子である。CSR粒子の商業的供給源としては、Kane Ace(商標)MX 411(MY 721エポキシ樹脂中の25重量%のCSR粒子の懸濁液)、及びKane Ace(商標)MX 120(D.E.R(商標)331樹脂中に分散した25%~37重量%のCSR粒子を含有)が含まれる)、及びDow Chemical Co.のParaloid(商標)EXL-2691(平均粒子サイズが約200nmのメタクリレート-ブタジエン-スチレンCSR粒子)が挙げられる。
【0044】
セラミック微小球が硬化性樹脂組成物に添加されてもよい。それらは中空又は固体セラミック微小球であってもよい。一実施形態において、不活性シリカ-アルミナセラミック材料から製造された中空セラミック微小球が使用される。約0.1μm~約20μm、好ましくは約1μm~約15μmの範囲の直径を有する微小球は、特に適していることがわかった。本樹脂フィルム組成物において使用するために特に適している商業的に入手可能なセラミック微小球の例は、商品名Zeeospheres(登録商標)の、例えば、G-200、G210及びW-200としてZeelan Industries,Inc.によって販売されている。これらは、厚壁を有し、無臭、及び明るい灰色の中空シリカ-アルミナ球である。いくつかの実施形態において、セラミック微小球の量は、樹脂組成物の全重量に基づいて約20重量%~約40重量%、又は約25重量%~約35重量%の範囲内であってもよい。他の実施形態において、セラミック微小球の量は、約3重量%~約15重量%、又は約5重量%~約10重量%の範囲内であってもよい。
【0045】
樹脂組成物の流れを制御し、そこでの凝集を防ぐために、粒状形態(例えば粉末)の無機充填剤がレオロジー改質成分として樹脂組成物に添加される。樹脂フィルム組成物において使用されてもよい適した無機充填剤には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、アルミナ、及びヒュームドシリカが含まれる。一実施形態において、疎水性ヒュームドシリカ(例えばCab-O-Sil(登録商標)TS-720)が無機充填剤として使用される。無機充填剤の量は、樹脂組成物の全重量に基づいて約1重量%~約5重量%の範囲内であってもよい。
【0046】
硬化性樹脂組成物は、硬化又は未硬化の樹脂材料の機械的、電気的、光学的、及び熱的特性の1つ以上に影響を与える1種以上の任意選択の添加剤をさらに含有してもよい。このような添加剤には、限定されないが、紫外線(UV)安定剤、着色顔料、及び染料が含まれる。このような添加剤が使用されるとき、それらの合計量は、樹脂組成物の全重量に基づいて約5重量%未満である。
【0047】
本明細書の目的のための不連続な樹脂分布は、例えばフィルム積層によって影響を受ける可能性がある。
図1の実施形態については、樹脂材料は、(i)多孔質導電層のアセンブリ(例えば最上層としての金属メッシュ、中間層としての不織布ベール、及び最下層としての薄い樹脂フィルム)を準備すること;(ii)樹脂フィルムが流動性になり、ベール全体に、及びベールと導電層との間の界面を含む導電層上に広がるように、例えば加熱されたローラーによってアセンブリに熱及び圧力を加えること;によって適用することができる。或いは、樹脂フィルムは、ステップ(i)におけるアセンブリの中間層であってよい。使用される樹脂の量が少ないため、そのような積層は、得られる積層体上に連続的な樹脂表面を生成せず、得られる積層体は多孔質であり、液体及び揮発性物質などの流体に対して透過性である。
図2の実施形態については、積層プロセスは同じであるが、アセンブリは、2枚の不織布ベールと2枚の外側樹脂フィルムとの間に多孔質導電層を含んでおり、各樹脂フィルムは、各ベールの外表面上にある。
【0048】
或いは、不織布ベールは、樹脂フィルムと接触して配置され、その後熱がかけられて樹脂の粘度が低下し、真空にされてベールを通して樹脂が引っ張られる。樹脂はベール全体に広がるが、ベール上に連続的な表面又は連続的なフィルムを形成しないため、得られる樹脂注入されたベールは多孔質のままである。多孔質の樹脂が注入されたベールは、多孔質の導電層に積層されて、
図1に示される構成を生成する。
図2の構成については、同じ方法で作製された第2の樹脂注入ベールが、多孔質導電層の反対側の面に積層される。
【0049】
別の例として、樹脂材料は、スプレーコーティングによって分配することができる。不織布ベールと多孔質導電層が別々に樹脂溶液でスプレーコーティングされた後、溶媒を除去するために乾燥される。続いて、樹脂被覆ベールと樹脂被覆導電層とが一緒に積層されて
図1の構成が生成する。
図2の構成については、同じ方法で作製された第2の樹脂被覆ベールが、樹脂被覆導電層の反対側に積層されている。スプレーコーティングは、ベール又は導電層上に連続的な樹脂表面を生成しない。そのため、樹脂被覆ベール及び樹脂被覆導電層は多孔質のままであり、液体に対して透過性である。或いは、ベールが多孔質導電層に積層される前に、不織布ベールのみが樹脂溶液でコーティングされる。
【0050】
スプレーコーティングについては、樹脂溶液は、10%~30%固形分の固体含有率を有し得る。樹脂溶液の組成物は、分散固体形態の1種以上の熱硬化性樹脂と、少なくとも1種の硬化剤と、溶媒とを含み得る。熱硬化性樹脂及び硬化剤は、樹脂材料について上述した通りである。溶媒は、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンなどの有機溶媒から選択することができる。任意選択的には、熱可塑性ポリマーが、合計100部の熱硬化性樹脂(全ての熱硬化性樹脂を合わせたもの)あたり最大10~40部の量で強化剤として樹脂溶液に添加されてもよい。部は重量で測定される。
【0051】
固体バインダー
図3及び
図4に示される構成については、上に開示した硬化性樹脂材料の代わりに固体バインダーが使用されてもよい。この固体バインダーは、粒子形態で、例えば粉末として、ベール及び/又は多孔質導電層上に分配され、続いて積層され得る。この文脈における「粒子形態」という用語は、分離した粒子の形態を意味する。粒子は、フレークや他の非球形などの任意の形状を有することができる。得られるラミネートは、その後、それ自体が少量のバインダーを含む強化テキスタイルに結合される。
【0052】
上に開示したように、バインダーは、50℃までの温度で固体であり、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される65℃~125℃の範囲の温度で軟化点を有し、エポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとのブレンドを含むが、65℃より高い温度で活性を有する触媒又は架橋剤を含まない。エポキシ樹脂は、硬化性樹脂組成物について開示されているものから選択することができる。エポキシ-熱可塑性ブレンド中の熱可塑性ポリマーは、エポキシ樹脂に可溶性のポリアリールスルホンポリマーであってよい。そのようなポリアリールスルホンポリマーは、エーテルに連結した繰り返し単位及び任意選択的なチオエーテルに連結した繰り返し単位を含み、これらの単位は:
-(Ph-A-Ph)n-
及び任意選択的には
-(Ph)a-
[式中、AがCO又はSO2であり、Phがフェニレンであり、n=1~2であり分数でもよく、a=1~4であり分数でもよく、但し、aが1を超えるとき、フェニレンは単一の化学結合又は-CO-若しくは-SO2-以外の二価の基によって直線的に連結されるか、又は直接に若しくは酸アルキル基、(ヘテロ)芳香族、環状ケトン、環状アミド、イミド、環状イミン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される環状部分によって一緒に縮合する]から選択される。
【0053】
ポリアリールスルホンは、-(PhSO2Ph)-の繰り返し単位を含むことができ、この-(PhSO2Ph)-単位は、存在する各ポリマー鎖の中に平均して前記単位-(PhSO2Ph)-のうちの少なくとも2つが連続するような割合でポリアリールスルホン中に存在する。
【0054】
好ましくは、ポリアリールスルホンは、以下の単位を含むコポリマーである:
X-Ph-SO2-Ph-X-PhSO2Ph(「PES」)(I)及び
X-(Ph)a-X-PhSO2Ph(「PEES」)(II)
(式中、XはO又はSであり、単位ごとに異なっていてもよく、aは1~4である)。
【0055】
この固体バインダー材料の製造方法は、Cytec Technology Corp.に譲渡された米国特許第8,927,662号明細書の中で見ることができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
強化テキスタイル
図3及び
図4の実施形態では、強化テキスタイル15は、一方向(UD)繊維の層の少なくとも片面に結合された不織布ベールと、UD繊維をベールに結合するのに十分な少量のバインダーとを含む、乾燥した流体透過性材料である。強化テキスタイル中のバインダーの総量は、強化テキスタイルの総重量を基準として約15重量%以下、例えば0.1重量%~15重量%である。UD繊維と不織布ベールは、強化テキスタイルの総重量を基準として80重量%超を占める。強化テキスタイル中のバインダーは、不織布ベール上又はUD繊維全体に連続膜を形成しない。そのため、強化テキスタイルは多孔質であり、樹脂注入に使用される液体樹脂に対して透過性である。
【0057】
UD繊維は、隣接する繊維間に隙間を空けて、同じ方向に平行に整列している。適切なUD繊維には、ガラス繊維、炭素(グラファイトを含む)繊維、及びアラミド繊維(例えばケブラー)が含まれる。
【0058】
不織布ベールはランダムに配置された繊維から構成され、これは、熱可塑性繊維若しくは炭素繊維、又は炭素繊維と熱可塑性繊維との組み合わせを含み得る。繊維の長さは、1/8インチ(0.32cm)から2インチ(5.08cm)まで様々であってもよい。この実施形態における不織布ベールの目付は、好ましくは10gsm以下、例えば2~10gsmである。
【0059】
熱可塑性繊維から構成される不織布ベールについては、繊維は、ポリアミド(脂肪族ポリアミド、脂環式ポリアミド、及び芳香族ポリアミドなど);ポリフタルアミド;ポリアミドイミド;ポリイミド;ポリエーテルイミド、ポリエステル;ポリフェニレンオキシド;ポリウレタン;ポリアセタール;ポリオレフィン;ポリアリールスルホン(ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホンなど);ポリアリールエーテルケトン(PAEK)(ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)及びポリエーテルケトンケトン(PEKK)など);ポリ(フェニレンサルファイド);液晶ポリマー(LCP);フェノキシ;アクリル;アクリレート;それらの混合物及びコポリマーから選択される熱可塑性材料から製造することができる。さらに、不織布ベールは、2つの異なるタイプの繊維、すなわち異なる熱可塑性組成物を有する繊維から構成することができる。
【0060】
強化テキスタイルに適したバインダーとしては、非架橋であるか、部分的若しくは完全に架橋されたポリウレタン、又は変性ポリウレタンポリマー;ポリヒドロキシエーテルとポリウレタンとの部分的若しくは完全に架橋されたコポリマー;非架橋であるか、部分的若しくは完全に架橋された、又は変性エポキシであるエポキシ;非架橋であるか、部分的若しくは完全に架橋されたポリ(ヒドロキシエーテル)樹脂が挙げられる。
【0061】
強化テキスタイルで使用するためのバインダーは、
図3及び4の構成を参照して上に開示されたように、エポキシ樹脂と熱可塑性ポリマーとから構成される同じ固体バインダーであってもよい。
【0062】
一実施形態では、バインダーは、(i)ポリヒドロキシエーテルとポリウレタンとのコポリマー、(ii)架橋剤、及び任意選択的な(iii)触媒、を含有する水性分散液である。架橋剤は、アミノプラスト架橋剤、例えばメトキシアルキルメラミンの分類のアミノプラスト架橋剤であってもよい。触媒としては、限定するものではないが、プロトン供与酸(カルボン酸、リン酸、酸性アルキルリン酸エステル、スルホン酸、ジスルホン酸など)及び/又はルイス酸(塩化アルミニウム、臭化物、又はハロゲン化物、ハロゲン化第二鉄、三ハロゲン化ホウ素など)、並びに当業者に周知の両方のカテゴリーのその他の多くのものが挙げられる。
【0063】
バインダーを適用するための例示的な方法は、粒子形態又は液体形態のバインダーを、広げられたUD繊維及び/又は不織布ベールの層に塗布すること;不織布ベールを繊維層の少なくとも片面に結合させることを含む。別の例示的な方法では、バインダーは、不織布ベールの製造中に添加される。その後、バインダーを含む得られたベールがUD繊維層に結合される。
【0064】
一実施形態によれば、強化テキスタイルを製造するための方法は、粉末形態の第1のバインダーを、広げられたUD繊維(例えば炭素繊維)の乾燥繊維ウェブ及び/又は不織布ベール(例えば炭素繊維及び/又は熱可塑性繊維から構成される)に塗布すること;不織布ベールを繊維ウェブの少なくとも片面に結合させて積層体を形成すること;液体組成物の形態の第2のバインダーを例えばディップコーティングにより積層体に塗布すること;並びにバインダー処理した積層体をオーブン中で乾燥させることを含む。
【0065】
樹脂注入プロセスにおける利用
本明細書に開示のLSP材料は、RTMやVARTMなどの樹脂注入プロセスで使用するために構成される。通常、LSP材料は、複合材料部品の形状の繊維プリフォームの外表面に塗布され、組み合わされたアセンブリに樹脂が注入される。樹脂が注入されたプリフォームが硬化して硬化した複合材料構造体が形成された後、LSP材料は硬化した構造体の一体化された部分になる。
【0066】
図1に示されるLSP材料については、LSP材料は、樹脂を注入する前に樹脂含有ベール11が最外層となるように、樹脂が注入されるプリフォームの上に配置される。
図2に示されるLSP材料については、樹脂含有ベール(11又は14)のいずれか1つが、樹脂が注入されるプリフォームと接触することができる。
図3及び
図4に示されるLSP材料については、強化テキスタイル15は、樹脂が注入されるプリフォームと接触する。
【0067】
本明細書に開示のプリフォームは、乾燥した強化繊維の複数の層のアセンブリ又はレイアップからなる。プリフォーム内の強化繊維の層は、複合材料を製造するための従来技術で公知の任意のタイプのテキスタイルであってよい。適切な生地のタイプ又は構成の例としては、限定するものではないが、平織り、綾織り、サテン織り、スパイラル織り、及び一方向織りを含む全ての織り生地;全ての多軸生地(その例には、縦編み生地、及び非圧着生地(NCF)が含まれる);編み生地;編み込み生地;全ての不織生地(その例には、チョップドファイバー及び/又は連続繊維のフィラメントから構成される不織布マット、及びフェルトが含まれる);並びに前述した生地のタイプの組み合わせが挙げられる。特定の用途では、プリフォームは、繊維層の2つのスタックの間に多孔質フォームコア又はハニカムコアを含んでいてもよい。
【0068】
プリフォーム用の強化繊維は、限定するものではないが、ガラス(電気ガラス又はEガラスを含む)、炭素(グラファイトを含む)、アラミド、ポリアミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾオキサゾール(PBO)、ホウ素、石英、玄武岩、セラミック、及びこれらの組み合わせから選択される材料から製造することができる。
【0069】
プリフォームは、ATL又はAFPなどの自動積層プロセスによって製造することができ、このプロセスでは、複数の繊維テープが並べて敷設されて、望まれる寸法の繊維層が形成され、その後望まれる厚さのレイアップを構成するために同じ方法で敷設される。本開示のLSP材料は、繊維層が敷設される前にツール表面上に第1の層を形成するためにそのような自動積層プロセスに組み込むことができ、或いはプリフォームレイアップが形成された後の最後の層として組み込むことができる。
【0070】
図5は、乾燥した繊維プリフォーム50(繊維層のレイアップ)とLSP材料51とのアセンブリが成形ツールの密閉されたモールドキャビティ52内に配置され、次いで樹脂が加圧下でキャビティに注入される、例示的な密閉モールドRTM法を示している。モールドキャビティ52は、2つ以上のダイ部品、例えば
図5に示されている上部ダイ部品52aと下部ダイ部品52bとによって規定される。ダイ部品の少なくとも1つには、成形ツールの温度を調整するための温度制御機構が含まれる。モールドキャビティ52は、樹脂注入ライン(図示せず)と流体連通しており、真空ライン(図示せず)を介して真空源に接続されている。樹脂注入ライン及び真空ラインは、樹脂がLSP材料51及びプリフォーム50の厚さを通って流れるように配置される。LSP材料51は、
図1~
図4に示される実施形態のいずれか1つによるものである。作動中、成形ツールはクランプで閉じられ、加熱され、排気され、その後加圧条件で液体樹脂が樹脂ラインを介してモールドキャビティ52に注入される。プリフォームの樹脂注入が完了した後、モールドキャビティは高圧を維持しながら加熱され、樹脂注入されたプリフォームが硬化され、それによってLSP材料が一体化された硬化して固化した複合材料構造体が形成される。硬化後、成形ツールが開けられ、硬化した複合材料構造体が成形ツールから取り出される。
【0071】
図6は、繊維プリフォーム60とLSP材料61とのアセンブリが、片面成形ツール62と、可撓性のガス不透過性シート又は「真空バッグ」63との間に封入される例示的なVARTM方法を示している。真空バッグ63は、シール要素64によってツール62に密閉される。封入された真空バッグは、一連の導管を含み得る樹脂供給ライン(図示せず)及び真空ライン(図示せず)と連通している。樹脂分配メッシュ65は、プリフォーム60とツール62との間に配置され、樹脂供給ラインと接触して、プリフォームへの樹脂の分配を強化する。代替の実施形態では、プリフォーム60の代わりにLSP材料61が樹脂分配メッシュ65と接触する。
【0072】
VARTM作動中、ツール62と真空バッグ63との間に相対的な真空が引かれ、それによってバッグがLSP材料/プリフォームアセンブリに対して圧縮される。液体樹脂は、樹脂供給ラインを介して真空バッグに導入される。プリフォーム全体への液体樹脂による完全な濡れ又は注入を促進するために、多数の別個の樹脂供給ラインが使用されてもよい。真空ライン及び樹脂供給ラインは、LSP材料/プリフォームアセンブリの厚さを通って樹脂が注入されてアセンブリ全体を飽和させることができるように、互いに対して戦略的に配置される。これに関し、真空源は、アセンブリの片側に設けることができ、樹脂は、
図6に示されているように反対側に導入される。
【0073】
図7は、プリフォーム70とLSP材料71とのアセンブリが成形ツール72と可撓性のガス透過性膜73との間に封入される別の例示的なVARTM方法を示している。ガス透過性膜73は、全体に小さな細孔を含んでおり、ガスを透過するが、液体樹脂を透過させない。ガス透過性膜73は、外側のガス不透過性カバー又は真空バッグ74によって囲まれている。シール要素76は、ガス透過性膜73及び真空バッグ74のそれぞれをツール72にシールするために設けられる。樹脂分配メッシュ75は、プリフォーム70とツール72との間に配置され、プリフォーム70への樹脂の分配を強化するために樹脂供給ラインと接触する。代替の実施形態では、LSP材料71は、プリフォーム70の代わりに樹脂分配メッシュ75と接触する。真空源は、ガス透過性膜73と真空バッグ74との間の空間に接続される。
【0074】
作動中、真空バッグ74とツール72との間の空間から真空引きされ、それにより、バッグがLSP材料/プリフォームアセンブリに対して圧縮される。液体樹脂は、樹脂供給ラインを介して、及び樹脂分配メッシュ75の助けにより、LSP材料/プリフォームアセンブリに導入される。真空圧のため、樹脂はLSP材料/プリフォームアセンブリの厚さを通して引っ張られるが、ガス透過性膜73は、樹脂がガス透過性膜73と真空バッグ74との間の空間に流入することを防止する。
【0075】
図5~7は、本開示のLSP材料が樹脂注入プロセスにおいてどのように使用され得るかを例示しているにすぎないことが理解されるべきである。本明細書に開示のLSP材料の使用は、RTM又はVARTMのいずれかの特定の構成に限定されない。
【実施例】
【0076】
実施例1
図8は、1段階目で真空及び加熱下で10gsmの不織布ガラスベール及び26gsmのエポキシベースの樹脂フィルムを積層し、次いで真空及び加熱下で73gsmのエキスパンド銅箔(又は銅メッシュ)に樹脂注入ベールを積層することによって形成された透過性LSP構造体を示す上面画像(倍率×50)である。
【0077】
実施例2
195gsmのエキスパンド銅箔(ECF)と、2枚のガラスベール(各10gsm)と、SM905Cの2枚のエポキシベースのフィルム(各50gsm)とを、ECFが2枚のガラスベールの間に挟まれ且つエポキシベースのフィルムが最外層であるように組み合わせ、続いて真空及び加熱下でアセンブリの積層を行うことにより、透過性LSP材料を形成した。ドライプリフォームは、疑似等方性の対称なレイアップに配置された16プライのNCF生地のプライ(各プライ268gsm)をレイアップすることにより形成した。LSP材料をドライプリフォーム上に配置し、VaRTMセットアップでアセンブリ全体にエポキシベースの樹脂組成物を90℃で注入した。プリフォームは3分で完全に注入され、約136gの樹脂が使用された。樹脂を注入したプリフォームを180℃で120分間硬化し、硬化した複合材料パネルを形成した。
【0078】
図9は、LSP材料が埋め込まれた硬化複合材料パネルの断面を示している。
【0079】
実施例3
73gsmのECFを使用したことを除いて、実施例2に記載の透過性LSP材料を形成した。16プライのNCF(各プライ268gsm)から構成されたドライプリフォーム上にLSP材料を配置し、アセンブリ全体に、VaRTMセットアップで90℃でエポキシベースの樹脂組成物を注入した。プリフォームは3分で完全に注入され、約134gの樹脂が使用された。樹脂を注入したプリフォームを180℃で120分間硬化し、硬化した複合材料パネルを形成した。
【0080】
図10は、LSP材料が埋め込まれた硬化複合材料パネルの断面を示している。