(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】調節可能スクロールポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20240708BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
F04C18/02 311M
F04C29/00 B
(21)【出願番号】P 2021562880
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 GB2020051018
(87)【国際公開番号】W WO2020217065
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-19
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507261364
【氏名又は名称】エドワーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ホルブルック アラン アーネスト キナード
(72)【発明者】
【氏名】ショフィールド ナイジェル ポール
(72)【発明者】
【氏名】ベッドウェル デイヴィッド
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-210279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクロールポンプであって、
軌道スクロールと、
固定スクロールと、
前記軌道スクロールを駆動する駆動シャフトと、
前記駆動シャフトに結合された第1の軸受と、
前記第1の軸受が結合されたハウジング要素と、を備え、
前記軌道スクロールの軌道軸線
を前記固定スクロールに対し半径方向に位置決めするために、前記ハウジング要素は、前記駆動シャフトが回転し前記駆動シャフトを前記駆動シャフトの回転軸線に実質的に直交する方向に動かしている間、前記固定スクロールに対して移動可能であり、
前記第1の軸受が、前記固定スクロールが前記第1の軸受と軌道スクロールとの間に位置決めされるように、前記駆動シャフトに結合されている、
ことを特徴とするスクロールポンプ。
【請求項2】
前記移動可能ハウジング要素は、選択的に固定された前記固定スクロールに対するその位置を有することができる、
請求項
1に記載のスクロールポンプ。
【請求項3】
前記駆動シャフトにかつ軸線方向に可撓性である軸受キャリアに結合された第2の軸受を更に備えている、
請求項
1または2に記載のスクロールポンプ。
【請求項4】
前記第1の軸受は、
前記駆動シャフトの実質的に遠位端で前記固定スクロールに実質的に隣接するまで位置決めされている、
請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のスクロールポンプ。
【請求項5】
スクロールポンプの軌道スクロール及び固定スクロールを中心化する方法であって、
前記スクロールポンプは、ポンピング中に半径方向分離を維持する軌道スクロール及び固定スクロールを含み、
前記軌道スクロールは、偏心部材を通じて駆動シャフトに結合され、
前記駆動シャフトは、回転軸線を有し、
方法が、
a.軌道アクションを前記軌道スクロールに付与するために前記駆動シャフトの前記回転軸線の周りで前記偏心部材を回転させる段階、
b.前記軌道スクロールが周回している間に前記軌道スクロールが前記固定スクロールに係合するまで該軌道スクロールの前記軌道軸線又は該固定スクロールの長手軸線を他方に対して前記駆動シャフトの前記回転軸線と実質的に垂直な第1の方向に移動する段階であって、該係合時に、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものが第1の係合位置にある前記移動する段階、
c.前記軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線のいずれかが移動したものを他方に対して該軌道スクロールが再度該固定スクロールに係合するまで前記第1の方向と反対の第2の方向に移動する段階であって、該係合時に、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものが第2の係合位置にある前記移動する段階、及び
d.前記軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線のいずれかが移動したものを前記第1の係合位置と前記第2の係合位置の間の実質的に中間の第1の中心化位置に、かつ該第1の係合位置と、第2の係合位置と、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものの該第1の中心化位置とを含有する実質的に第1の平面に位置決めする段階、を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
e.軌道アクションを前記軌道スクロールに付与するために前記駆動シャフトの前記回転軸線の周りで前記偏心部材を回転させるその後の段階、
f.前記軌道スクロールが周回している間に該軌道スクロールが前記固定スクロールに係合するまで該軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線を他方に対してクランクの回転軸線と実質的に垂直かつ前記第1の方向と実質的に垂直な第3の方向に移動するその後の段階であって、該係合時に、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものが第3の係合位置にある前記移動するその後の段階、
g.前記軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線のいずれかが移動したものを他方に対して該軌道スクロールが該固定スクロールに係合するまで前記第3の方向と実質的に反対の第4の方向に移動するその後の段階であって、該係合時に、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものが第4の係合位置にある前記移動するその後の段階、及び
h.前記軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線のいずれかが移動したものを前記第3の係合位置と前記第4の係合位置の間で実質的に中間の第2の中心化位置に該第3の係合位置と、第4の係合位置と、該軌道スクロールの該軌道軸線又は該固定スクロールの該長手軸線のいずれかが移動したものの該第2の中心化位置とを含有する実質的に第2の平面内で位置決めするその後の段階、を更に含む、
請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
第2の中心化位置が、これに加えて、前記第1の係合位置と、第2の係合位置と、前記軌道スクロールの前記軌道軸線又は前記固定スクロールの前記長手軸線のいずれかが移動したものの該第2の中心化位置とを含有する実質的に第3の平面内で該第1の係合位置と該第2の係合位置の間の実質的に中間である、
請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記軌道スクロールは、前記固定スクロールに対して移動される、
請求項
5乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記固定スクロールと前記軌道スクロールの間の前記係合は、前記駆動シャフトが回転を停止することをモニタすることによって検出される、
請求項
5乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動シャフトは、低速で、好ましくは約5Hz未満で、好ましくは約0.01Hzから約4Hzで回転される、
請求項
5乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記駆動シャフトは、前記スクロールポンプを通して気流を誘導することによって回転され、好ましくは
前記気流は、前記スクロールポンプの排気ダクトを通じて導入される、
請求項
5乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記駆動シャフトは、そのポンピング方向とは反対の方向に回転される、
請求項
5乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記軌道スクロールは、前記駆動シャフトをピボット回転又は平行移動させることによって前記固定スクロールに対して移動される、
請求項
5乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロールポンプ、特に真空スクロールポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
公知のスクロール圧縮機又はポンプは、固定スクロール、軌道スクロール、及び軌道スクロールのための駆動機構を含む。駆動機構は、軌道スクロールを固定スクロールに対して周回させ、ポンプ入口とポンプ出口の間で流体のポンピングを引き起こすように構成される。固定及び軌道スクロールの各々は、ほぼ円形の底板から延びる直立スクロール壁を含む。各スクロール壁は、それぞれの底板から遠隔に配置されてそれにほぼ垂直に延びる端部、又は先端、面を有する。軌道スクロール壁は、スクロールの相対軌道運動が、ガスの連続容積をスクロール壁の間に定められたポケットに封入させて入口から出口までポンピングさせるように、軌道スクロールの周回中に固定スクロール壁と噛み合うように構成される。
【0003】
それらの用途を広げるために、スクロールポンプの小型化に対する必要性が引き続き存在する。しかし、スクロールポンプの容量が低下すると内部漏出が益々問題になることが本発明者よって見出された。この漏出は、ポンプによって達成可能な最終圧力に悪影響を与える。実際に、ある一定のポンプ容量よりも低いと、機械が止まることにならないスクロール間の最小クリアランスを有すること、及び同じく満足な性能を送出する平均又は最大の半径方向クリアランスを有することは不可能であると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、公知のスクロールポンプに関するこれら及び他の問題に少なくともある程度まで対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、第1の態様では、本発明は、軌道スクロールと固定スクロールとを含むスクロールポンプを提供する。軌道スクロールは、軌道軸線を有する。軌道スクロールの軌道軸線は、軌道スクロールがその軌道軸線の周りを周回する間に固定スクロールに対して半径方向に移動可能とすることができる。これに加えて又はこれに代えて、固定スクロールは、軌道スクロールがその軌道軸線の周りを周回する間に半径方向の軌道スクロールに対して移動可能とすることができる。好ましくは、軌道スクロールは、軌道スクロールがその軌道軸線の周りを周回する間に駆動シャフトをピボット回転又は平行移動させることによって固定スクロールに対して移動する。
【0006】
この調節可能スクロールポンプは、軌道スクロールをその最適半径方向場所に置くことを可能にする。これは、全てのクランク方位でほぼ一定であるスクロール間の半径方向クリアランスを可能にする。軌道スクロールの最適位置決めは、より小さい半径方向クリアランスを使用することを可能にし、これは、最終的な圧力及び電力を含む性能の改善をもたらす。
【0007】
好ましくは、スクロールポンプは、軌道スクロールを駆動するために駆動シャフトに結合された第1の軸受を更に含む。好ましくは、第1の軸受は、駆動シャフトの回転軸線に実質的に垂直な方向に駆動シャフトと共に移動可能である。
【0008】
典型的には、第1の軸受は、スクロールポンプのハウジング要素に結合され、ハウジング要素は、駆動シャフトが回転している間に固定スクロールに対して移動可能である。好ましくは、ハウジング要素は、スクロールポンプ駆動シャフトの回転軸線に対して横断方向の平面で移動可能である。好ましくは、移動可能なハウジング要素は、固定された固定スクロールに対してその位置を有することができる。ハウジング要素が固定される位置は、ユーザが選択することができる。
【0009】
これに加えて又はこれに代えて、スクロールポンプは、駆動シャフトに及び軸線方向に可撓性である軸受キャリアに結合された第2の軸受を含む。好ましくは、使用中に、可撓性軸受キャリアは、半径方向の回転子シャフトトの移動を実質的に排除する。
【0010】
典型的には、第1の軸受は、固定スクロールが第1の軸受と軌道スクロールの間に位置決めされるように駆動シャフトに結合される。典型的には、第1の軸受は、駆動シャフトに又は実質的にその端部に位置決めされる。
【0011】
更に別の態様では、本発明は、5m3/h未満の容量を有するスクロールポンプのためのスクロールチャンバを提供し、スクロールチャンバは、軸線方向に延びるスクロール壁を各々が含む軌道スクロール及び固定スクロールを閉じ込め、軌道スクロールが周回している間の軌道スクロールの軸線方向に延びるスクロール壁と固定スクロールの軸線方向に延びるスクロール壁との間の最小半径方向クリアランスは、約0.060mm未満である。
【0012】
そのようなクリアランスは、上述の容量の公知のスクロールポンプでは達成可能ではなかった。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、スクロールポンプの軌道スクロール及び固定スクロールを提供し、軌道スクロールは軌道軸線を有し、固定スクロールは長手軸線を有し、この軌道軸線及び長手軸線は、約±0.030mm未満、好ましくは約±0.010mm未満の変動で同軸的に位置合わせされる。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、スクロールポンプの軌道スクロール及び固定スクロールを中心化する方法を提供し、スクロールポンプは、ポンピング中に半径方向分離を維持する軌道スクロール及び固定スクロールを含み、軌道スクロールは、偏心部材を通じて駆動シャフトに結合され、駆動シャフトは、回転軸線を有する。
【0015】
本方法は、第1の段階では、軌道アクションを軌道スクロールに付与するように駆動シャフトの回転軸線の周りで偏心部材を回転させる段階を含む。次に、軌道スクロールが周回している間に、軌道スクロールが固定スクロールに係合するまで駆動シャフトの回転軸線に実質的に垂直な第1の方向に軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線を他方に対して移動する段階がある。上述の係合時に、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかの移動したものは、第1の係合位置にある。
【0016】
本方法は、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線が他方に対して移動したものを軌道スクロールが再度固定スクロールに係合するまで第1の方向と実質的に反対の第2の方向に移動する段階を更に含む。上述の係合時に、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものは、第2の係合位置にある。
【0017】
本方法は、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものを第1の係合位置と第2の係合位置の間で実質的に中間の第1の中心化位置に、かつ第1の係合位置と、第2の係合位置と、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものの第1の中心化位置とを含有する実質的に第1の平面に位置決めする段階を更に含む。
【0018】
本方法は、軌道アクションを軌道スクロールに付与するように駆動シャフトの回転軸線の周りで偏心部材を回転させるその後の段階を更に含むことができる。次に、軌道スクロールが周回している間に軌道スクロールが固定スクロールに係合するまでクランクの回転軸線に実質的に垂直なかつ第1及び第2の方向とは異なる好ましくは実質的にそれと垂直な第3の方向に軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線を他方に対して移動する段階がある。上述の係合時に、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものは、第3の係合位置にあると考えることができる。
【0019】
本方法は、軌道スクロールが固定スクロールに係合するまで軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものを他方に対して第3の方向と実質的に反対の第4の方向に移動する段階を更に含むことができる。上述の係合時に、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものは、第4の係合位置にあると考えることができる。
【0020】
本方法は、次に、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものを第3の係合位置と第4の係合位置の間で実質的に中間の第2の中心化位置に、かつ第3の係合位置と、第4の係合位置と、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものの第2の中心化位置とを含有する実質的に第2の平面に位置決めする段階を含むことができる。
【0021】
好ましくは、第2の中心化位置は、これに加えて、第1の係合位置と、第2の係合位置と、軌道スクロールの軌道軸線又は固定スクロールの長手軸線のいずれかが移動したものの第2の中心化位置とを含有する実質的に第3の平面での第1の係合位置と第2の係合位置の間の実質的に中間である。
【0022】
固定スクロールの長手軸線が軌道スクロールの軌道軸線に対して移動される事例では、係合位置及び中心化位置は、固定スクロール上の固定点を使用して決定することができる。一方で、軌道スクロールの軌道軸線が固定スクロールの長手軸線に対して移動される事例では、係合位置及び中心化位置は、駆動シャフト上の固定点を使用して測定することができる。平面(第1、第2、及び第3)は、駆動シャフトの回転軸線に対して横断方向とすることができる。
【0023】
好ましくは、軌道スクロールは、固定スクロールに対して移動される。好ましくは、軌道スクロールは、駆動シャフトをピボット回転又は平行移動させることによって固定スクロールに対して移動される。
【0024】
これに加えて又はこれに代えて、固定スクロールと軌道スクロールの間の係合は、駆動シャフトが回転を停止することをモニタすることによって検出される。
【0025】
好ましくは、駆動シャフトは、低速で好ましくは約5Hz未満で回転される。好ましくは、駆動シャフトは、そのポンピング方向と反対の方向に回転される。
【0026】
典型的には、駆動シャフトは、スクロールポンプを通して気流を誘導することによって回転され、好ましくは、気流は、スクロールポンプの排気ダクトを通じて導入される。
【0027】
単に例として与える以下の開示では、図面を参照することになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】従来技術のスクロールポンプの概略図である。
【
図2】本発明によるスクロールポンプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、スクロールポンプ、好ましくは真空スクロールポンプ、並びにスクロールポンプの軌道スクロール及び固定スクロールを中心化する方法を提供する。
【0030】
図1は、典型的な小容量スクロールポンプ(1)を示している。軌道スクロール(2)は、回転クランク又は駆動シャフト(3)上に装着される。クランクオフセットは、スリーブ(4)によって与えられる。中心及び後部クランク軸受(5、6)は、固定位置に保持される。図示の例では、後部軸受(6)は、スクロールポンプハウジング(16)と一体的に形成された固定軸受ハウジング(15)によって保持される。図示の例では、2つのスクロール(2、17)の間の半径方向クリアランスは、9つの構成要素によって決定される。本発明者は、これらの部品の製造公差の組合せが約±0.2mmの全体変動を生じる場合があることを見出した。
【0031】
真空ポンプの容量が低下すると、内部漏出は、ポンプ性能に対して益々増加する問題になる。この漏出は、最終圧力に悪影響を与える。例示的な構成では、機械が止まることにならない最小のクリアランスを有すること、及び同じく小容量ポンプで満足な性能を送出する平均又は最大半径方向クリアランスを有することは不可能である場合がある。例えば、5m3/hよりも低い容量を有するポンプである。
【0032】
図2は、本発明によるスクロールポンプ(7)を示している。例示的なスクロールポンプ(7)は、軌道スクロール(9)の半径方向位置を変更することができるように移動可能な後部シャフト軸受(8)を有する。この調節は、軌道スクロール(9)を実質的に最適な半径方向場所に置き、全てのクランク(11)方位にほぼ一定のスクロール(9、10)間の半径方向クリアランスを送出することを可能にする。軌道スクロール(9)の最適位置決めは、他に達成可能なものよりも小さい半径方向クリアランスを実現することを可能にし、これは、次に、より低い最終圧力及び電力を含む性能の改善をもたらす。本発明は、それにより、より小容量のスクロールポンプの提供を容易にする。しかし、当業者は、本方法及びポンプ構成を全てのサイズのポンプで成功裏に使用することができることを認めるであろう。
【0033】
例示的なスクロールポンプ(7)では、軸受ハウジング(8)は、スクロールポンプ(7)ハウジング(18)の一部を形成する摺動可能キャリア(12)に装着される。キャリア(12)は、モータ本体(18)上に装着され、かつ「X」及び「Y」方向に軸受ハウジング(8)を移動するための駆動スクリュー(図示せず)を有する。ポンプ(7)は、ポンプの排気に350ミリバールの空気を印加することによって逆に低速で稼働する(図示せず)。ポンプの回転は、スクロール(9、10)が接触点に押される時に停止する。このようにして、ポンプ(7)が稼働することになる極限位置を見出し、次に、後部軸受(8)を実質的に中心化位置に設定することができる。これは、「X」及び「Y」方向の両方で行うことができる。次に、後部軸受の位置は、例えば、軸受キャリア(12)上のスクリュー(13、14)を締め付けることによってロックされる。排気に印加される比較的低い空気圧は、回転を停止するのに軽い接触のみを必要とすることを保証し、スクロール(9、10)への損傷を回避する。全体の軸受(8、20)は玉軸受である。
【0034】
代替配置では、ポンプモータは、低速(例えば、約5Hz未満)で前方又は逆方向に稼働させることができ、接触は、トルクメータを使用して決定することができ、ポンプモータは、トルクメータがスクロール接触に起因するトルクの増加を決定する時に切断される。
【0035】
図2に示す実施形態では、中心軸受(20)は、可撓性軸受キャリア(19)に保持される。可撓性軸受キャリア(19)は、軸線方向に撓むことができるが、使用中に、駆動シャフト(11)の半径方向移動を実質的に排除する。調節可能後部軸受(8)と組み合わせた可撓性軸受キャリア(19)は、固定スクロール(10)に対する軌道スクロール(9)の位置に対する高度の制御を送出することができる。典型的には、可撓性軸受キャリアは金属性であり、典型的には、可撓性軸受キャリアは、アルミニウム合金又は鋼から作られる。典型的には、使用中に、可撓性軸受キャリアは、軸受が軸線方向に約-0.5から約+0.5mm移動することを可能にする。
【0036】
他に定めない限り、本発明の目的に対して、軸線方向及び長手方向は、ポンプの駆動シャフト(11)の回転軸線(A)と実質的に平行な方向に関するものである。半径方向は、長手方向に対して横断方向の駆動シャフト(11)の回転軸線(A)から外に延びる方向を指す。
【0037】
代替配置では、後部軸受の位置は固定することができ、中間(又は中心)軸受は移動可能とすることができる。両方の配置は、固定スクロールに対する軌道スクロールの軌道軸線の移動を可能にする。更に別の代替配置では、固定スクロールは、軌道スクロールの軌道軸線に対して移動可能とすることができる。軌道スクロールは当業技術の用語であり、スクロールの使用中に周回するスクロールを指す。軌道スクロールは、ポンプが使用中でない時にそれ自体静止している場合があることは認められるであろう。
【0038】
特許法の下で解釈される時の添付の特許請求の範囲が定義するような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な修正を示した実施形態に対して加えることができることを認めなければならない。
【0039】
1.スクロールポンプ(従来技術)
2.軌道スクロール(従来技術)
3.回転クランク又は駆動シャフト(従来技術)
4.スリーブ(従来技術)
5 後部クランク軸受(従来技術)
6.中心クランク軸受(従来技術)
7.スクロールポンプ
8.後部軸受
9.軌道スクロール
10.固定スクロール
11.クランク/駆動シャフト
12.摺動可能キャリア
13.スクリュー
14.スクリュー
15.固定軸受ハウジング(従来技術)
16.スクロールポンプハウジング(従来技術)
17.固定スクロール(従来技術)
18.ハウジング
19.可撓性軸受キャリア
20.中心軸受
21.スリーブ