(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】練歯磨組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240708BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240708BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240708BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/46
A61K8/44
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2022024603
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2023-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由布子
(72)【発明者】
【氏名】横山 将史
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117206(JP,A)
【文献】特開2004-248665(JP,A)
【文献】特開2015-117205(JP,A)
【文献】特開2021-195360(JP,A)
【文献】国際公開第2006/003989(WO,A1)
【文献】特開2007-291021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D):
(A)κ-カラギーナン 0.02質量%以上2.5質量%以下
(B)アニオン界面活性剤
(C)プロピレングリコール
(D)グリセリン 3質量%以上19質量%以下
を含有し、
マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属の含有量が、金属原子換算量で0.01質量%未満であるか、或いはマグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属を含有せず、
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.02以上13以下であり、かつ成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))が1以上180以下である、練歯磨組成物。
【請求項2】
成分(B)の含有量が、0.03質量%以上
2.5質量%以下である、請求項1に記載の練歯磨組成物。
【請求項3】
成分(C)の含有量が、2質量%以上8質量%以下である、請求項1又は2に記載の練歯磨組成物。
【請求項4】
成分(B)が、アルキル硫酸、N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の練歯磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
練歯磨組成物には、通常、容器からの良好な吐出性のほか、歯ブラシへの載置のしやすさや歯表面への付着のしやすさ等の使用感を確保し得る適度な粘性を付与するために、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の粘結剤が用いられている。こうした練歯磨組成物について、さらに所望の効果を発揮させるべく種々の技術が開発されており、特にカラギーナンを用いることに着目した技術も知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、特定の水溶性モノフルオロリン酸化高分子化合物と、カラギーナン等の粘結剤とを特定の質量比で含有する歯磨剤組成物が開示されており、口腔内へのフッ化物の滞留性の向上を図っている。また、特許文献2には、特定の糖アルコールやカルボキシメチルセルロースナトリウム等と、ι-カラギーナンを含むカラギーナンを特定量かつ特定比で含有する練歯磨組成物が開示されており、高い冷涼感を得ることを試みている。さらに特許文献3には、特定の重質炭酸カルシウムや水不溶性無機顆粒等と、κ-カラギーナン等の水溶性高分子物質を特定量で配合した歯磨組成物が開示されており、適性な研磨力を有し、かつ優れた使用感を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-102282号公報
【文献】特開2016-222617号公報
【文献】国際公開第2006/003989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記いずれの特許文献においても、歯磨剤組成物使用後の歯面の感触については、何ら検討がなされていない。
【0006】
本発明は、κ-カラギーナンを用いながら、歯面においてつるつるとした感触をもたらすとともに、幅広い温度域において高い保存安定性を確保することのできる練歯磨組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、κ-カラギーナンを特定量で含有するとともに、アニオン界面活性剤、プロピレングリコール、及び特定量のグリセリンを各々特定の質量比で含有することにより、歯面においてつるつるとした感触を充分に高めながら、低温域から高温域にわたり高い保存安定性を確保することのできる練歯磨組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(D):
(A)κ-カラギーナン 0.02質量%以上2.5質量%以下
(B)アニオン界面活性剤
(C)プロピレングリコール
(D)グリセリン 3質量%以上19質量%以下
を含有し、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))が0.02以上13以下であり、かつ成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))が1以上180以下である、練歯磨組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の練歯磨組成物によれば、歯面においてつるつるとした感触を良好に持続させることができるとともに、低温域から高温域にわたって優れた保存安定性を保持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、歯面における「つるつるとした感触」とは、歯面を舌でふれたときに、引っかかり感なく舌をすべらせることができることから、歯面がなめらかであると感じられ、高い清掃実効感を実感できることを意味する。
【0011】
本発明の練歯磨組成物は、成分(A)として、κ-カラギーナンを0.02質量%以上2.5質量%以下含有する。練歯磨組成物において粘結剤としての使用で知られるカラギーナンには、硫酸基の位置や数が異なるκ-カラギーナン、ι-カラギーナン、及びλ-カラギーナンなる3種類が存在するなか、本発明者は、特定量のκ-カラギーナンであれば、後述するように成分(B)のアニオン界面活性剤とともに特定の質量比((A)/(B))にて含有することにより、全く予想外にも、歯面においてつるつるとした感触を付与することができ、かつその持続性にも優れることが判明したため、本発明を見出すに至ったものである。
【0012】
成分(A)の含有量は、歯面におけるつるつるとした感触を有効かつ持続的に付与する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、0.02質量%以上であって、好ましくは0.04質量%以上であり、より好ましくは0.06質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、さらに好ましくは0.12質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、2.5質量%以下であって、好ましくは2.3質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.3質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、0.02質量%以上2.5質量%以下であって、好ましくは0.04~2.3質量%であり、より好ましくは0.06~1.8質量%であり、さらに好ましくは0.08~1.3質量%であり、さらに好ましくは0.12~1.3質量%である。
【0013】
本発明の練歯磨組成物は、成分(B)として、アニオン界面活性剤を含有する。かかる成分(B)を上記成分(A)とともに、後述するように特定の質量比((A)/(B))にて含有することにより、歯面においてつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらすことができる。
【0014】
成分(B)としては、具体的には、例えば、オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸又はその塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩;N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、歯面においてつるつるとした感触を高めつつ、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保する観点から、アルキル硫酸、N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、アルキル硫酸、N-アシルアミノ酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0015】
アルキル硫酸又はその塩が有するアルキル基としては、炭素数6~30の直鎖又は分岐のアルキル基であるのが好ましく、炭素数8~24の直鎖又は分岐のアルキル基であるのがより好ましく、炭素数8~18の直鎖又は分岐のアルキル基であるのが好ましい。より具体的には、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オクチル基、デシル基から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、成分(A)とともに、歯面におけるつるつるとした感触の付与を有効に発現させる観点から、ラウリル基、及びミリスチル基から選ばれる1種以上が好ましい。
【0016】
N-アシルアミノ酸及びN-アシルタウリンのアシル基としては、具体的には、成分(A)ととともに、歯面におけるつるつるとした感触の付与を有効に発現させる観点から、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸又はそれらの混合脂肪酸を由来としたものであって、直鎖脂肪酸又は直鎖脂肪酸の混合脂肪酸を由来としたものが好ましく、炭素数6~22のアシル基であるのが好ましく、炭素数10~20のアシル基であるのがより好ましく、炭素数12~18のアシル基であるのがさらに好ましい。
かかるアシル基としては、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、及びココイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウロイル基、及びミリストイル基から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0017】
N-アシルアミノ酸を構成するアミノ酸部分としては、成分(A)ととともに、歯面におけるつるつるとした感触の付与を有効に発現させる観点から、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、スレオニン、メチルアラニン、サルコシン、リジン及びアルギニンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、これらはD体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよい。なかでも、グルタミン酸、サルコシン、アスパラギン酸がより好ましく、グルタミン酸がさらに好ましい。
かかるN-アシルアミノ酸としては、具体的には、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸、N-ココイルグルタミン酸、N-ラウロイルサルコシン、N-ココイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、N-ラウロイルアスパラギン酸、N-ミリストイルアスパラギン酸、及びN-ココイルアスパラギン酸から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N-ラウロイルグルタミン酸、N-ミリストイルグルタミン酸がより好ましい。
【0018】
N-アシルタウリンとしては、ココイル脂肪酸タウリン、ココイルメチルタウリン、N-カプロイルメチルタウリン、N-ラウロイルタウリン、N-ラウロイルメチルタウリン、N-ミリストイルメチルタウリン、N-パルミトイルメチルタウリン、N-ステアロイルメチルタウリン、及びN-オレオイルメチルタウリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、N-ラウロイルタウリン、及びN-ミリストイルタウリンから選ばれる1種又は2種がより好ましく、N-ラウロイルタウリンが好ましい。
【0019】
これらの塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン塩、リジン塩、ヒスチジン塩、オルニチン塩等の塩基性アミノ酸塩等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0020】
成分(B)の含有量は、歯面におけるつるつるとした感触を有効かつ持続的に付与する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.04質量%以上であり、さらに好ましくは0.07質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1.7質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.03質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.04~2質量%であり、さらに好ましくは0.07~1.7質量%である。
【0021】
本発明の練歯磨組成物において、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、歯面におけるつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらすとともに、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保する観点から、0.02以上であって、好ましくは0.03以上であり、より好ましくは0.04以上であり、さらに好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.07以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、13以下であって、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8以下であり、さらに好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.3以下であり、さらに好ましくは1.3以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((A)/(B))は、0.02以上13以下であって、好ましくは0.03~12であり、より好ましくは0.04~10であり、さらに好ましくは0.05~8であり、さらに好ましくは0.07~2.5であり、さらに好ましくは0.07~2.3であり、さらに好ましくは0.1~1.3である。
【0022】
本発明の練歯磨組成物は、成分(C)として、プロピレングリコールを含有する。かかる成分(C)を上記成分(A)とともに、後述するように特定の質量比((C)/(A))にて含有することにより、歯面におけるつるつるとした感触の付与を確保しつつ、特に低温域における不要な粘度上昇を抑制して、低温域から高温域にわたり保存安定性を効果的に高めることができる。
【0023】
成分(C)の含有量は、低温域における不要な粘度上昇を有効に抑制して、温度変化に左右されない優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは2.5質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、高温域における不要な粘度上昇を回避して、温度変化に左右されない優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは12質量%以下であり、さらに好ましくは9質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.05質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは2~12質量%であり、より好ましくは2.5~9質量%であり、さらに好ましくは4~9質量%である。
【0024】
本発明の練歯磨組成物において、成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、歯面におけるつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらしながら、不要な粘度上昇を有効に抑制して、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保する観点から、1以上であって、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上であり、180以下であって、好ましくは170以下であり、より好ましくは150以下であり、さらに好ましくは90以下であり、さらに好ましくは60以下である。そして、成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、1以上180以下であって、好ましくは2~170であり、より好ましくは3~150であり、さらに好ましくは4~90であり、さらに好ましくは4~60である。
【0025】
本発明の練歯磨組成物は、成分(D)として、グリセリンを3質量%以上19質量%以下含有する。これにより、特に高温域において成分(C)により引き起こされがちな不要な粘度上昇を効果的に抑制し、歯面におけるつるつるとした感触を有効かつ持続的に付与しつつも、温度変化に左右されない優れた保存安定性を確保することができる。
【0026】
成分(D)の含有量は、高温域における不要な粘度上昇を有効に抑制して、温度変化に左右されない優れた保存安定性を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、3質量%以上であって、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは12質量%以上である。また、成分(D)の含有量は、歯面におけるつるつるとした感触の付与を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、19質量%以下であって、好ましくは18.5質量%以下であり、より好ましくは18質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、3質量%以上19質量%以下であって、好ましくは5~18.5質量%であり、より好ましくは7~18質量%であり、さらに好ましくは12~18質量%である。
【0027】
本発明の練歯磨組成物は、歯面においてつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらす観点から、さらに糖アルコールを含有することができる。かかる糖アルコールとしては、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元パラチノース及びマンニトールから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、水への溶解性が高く、組成物をなめらかな感触にする観点から、ソルビトール、及びキシリトールから選ばれる1種又は2種がより好ましい。
かかる糖アルコールを含有する場合、その含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは44質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下であり、さらに好ましくは53質量%以下である。
【0028】
本発明の練歯磨組成物において、温度変化に左右されない優れた保存安定性を確保する観点から、粘結剤の含有を制限するのが好ましい。かかる粘結剤としては、具体的には、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリントガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、又はκ-カラギーナン以外のカラギーナン等が挙げられる。
【0029】
粘結剤の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下未満であり、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0030】
本発明の練歯磨組成物においては、適度な保形性を保持しつつ、歯面においてつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらす観点から、さらに無水ケイ酸を含有することができる。無水ケイ酸としては、好ましくは、吸油量が200~400mL/100gである増粘性シリカ、及び吸油量が50~150mL/100gである研磨性シリカから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。これらは2種以上含有させるのが好ましく、増粘性シリカと研磨性シリカとを含有させるのがより好ましい。
なお、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJIS K5101-13-2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定される値を意味する。
【0031】
かかる無水ケイ酸を含有する場合、その含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは21質量%以下であり、より好ましくは19質量%以下であり、さらに好ましくは16質量%以下である。
【0032】
本発明の練歯磨組成物においては、歯面においてつるつるとした感触を有効かつ持続的にもたらす観点から、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛、及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属の含有を制限するのが好ましい。
【0033】
これらマグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、金属原子換算量で、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%未満であり、さらに好ましくは0.01質量%未満であり、或いは本発明の練歯磨組成物は、これらマグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属を含有しないのが好ましい。
【0034】
本発明の練歯磨組成物は、水を含有する。かかる水とは、練歯磨組成物に配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、練歯磨組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる水を含有することにより、含有する上記各成分を良好に溶解又は分散させて、所望の効果を充分に発揮させることができる。
【0035】
水の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは13質量%以上であり、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下であり、よりさらに好ましくは17質量%以下である。また、水の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは13~30質量%であり、さらに好ましくは13~20質量%であり、より好ましくは13~17質量%である。
なお、この場合、水の含有量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業社製)を用いることができる。この装置では、練歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0036】
本発明の練歯磨組成物は、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、成分(B)以外の界面活性剤;フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム等のフッ素イオン供給化合物;エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の、成分(C)及び成分(D)以外の湿潤剤;甘味剤;pH調整剤;香料;薬効成分やその他の有効成分;色素等を含有することができる。
【0037】
本発明の練歯磨組成物の25℃における粘度は、歯面においてつるつるとした感触をもたらしつつ、低温域から高温域にわたり優れた保存安定性を確保して、容器からの良好な吐出性等を保持する観点から、好ましくは800dPa・s以上であり、より好ましくは1000dPa・s以上であり、さらに好ましくは1100dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1200dPa・s以上であり、よりさらに好ましくは1700dPa・s以上であり、好ましくは20000dPa・s以下であり、好ましくは15000dPa・s以下であり、より好ましくは10000dPa・s以下であり、より好ましくは8000dPa・s以下である。
なお、粘度は、ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)を用いて測定される値を意味し、具体的には、製造後少なくとも24時間室温(25℃)で静置した練歯磨組成物を、ロータT-C、回転数2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。
【0038】
本発明の練歯磨組成物の口腔内への適用方法は、塗布、又は歯ブラシによるブラッシングのいずれであってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0040】
[実施例1~23、比較例1~11]
表1~6に示す処方にしたがって、各練歯磨組成物を調製した。得られた練歯磨組成物を用い、下記方法にしたがって、各測定及び評価を行った。なお、いずれの練歯磨組成物も、マグネシウム、アルミニウム、鉄、亜鉛及び錫から選ばれる1種又は2種以上の多価金属の含有量は0.01質量%未満であった。
結果を表1~6に示す。
【0041】
《25℃における粘度》
ヘリパス型粘度計(VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)を用い、製造24時間室温(25℃)で静置した各練歯磨組成物の粘土を測定した。
【0042】
《使用直後及び一晩経過後の歯面における感触の評価》
得られた各練歯磨組成物1gを歯ブラシにとって2分間歯をブラッシングした後、口腔内を水で数回すすぎ、その直後(使用直後)と一晩経過した後(使用から10時間後)との双方について、歯面を舌で触ったときの感触を下記基準にしたがって評価し、専門パネラー3名による平均値を求めた。
なお、つるつるとする感触とは、上記のとおり、歯面を舌でふれたときに、引っかかり感なく舌をすべらせることができることから、歯面がなめらかであると感じられ、高い清掃実効感を実感できる感触をいう。
【0043】
4:非常につるつるとする感触がある
3:ややつるつるとする感触がある
2:歯面に摩擦を少し感じ、引っかかり感がある
1:歯の表面に摩擦を感じ、強い引っかかり感がある
【0044】
《50℃での保存安定性(歯面における感触)の評価》
各練歯磨組成物をチューブ容器に収容し、50℃で1カ月間保存した後、上記評価と同様にして、歯面を舌で触ったときの感触を下記基準にしたがって評価し、専門パネラー3名による平均値を求めた。50℃で1カ月間保存した後においても歯面におけるつるつるとした感触が得られれば、高温域における保存安定性に優れることを示すものとした。
【0045】
《-5℃での保存安定性(容器からの吐出性)の評価》
各練歯磨組成物をチューブ容器に収容し、-5℃で1日保存した後、-5℃において練歯磨組成物を1cm押出した際の押出しやすさ(吐出性)を以下の基準により評価し、低温域における保存安定性の評価の指標とした。
なお、チューブ容器として、φ32の100g用銀チューブ(共同印刷社製)を用いた。
A:押し出しやすい
B:やや押し出しにくい
C:固くて押し出しにくい
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】