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特許7516466磁気共鳴イメージング検出を備えた冷凍アブレーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング検出を備えた冷凍アブレーションシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20240708BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240708BHJP
【FI】
A61B18/02
A61B34/20
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107881
(22)【出願日】2022-07-04
(62)【分割の表示】P 2020526280の分割
【原出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2022163008
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】62/585,262
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】303039785
【氏名又は名称】バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】デイビス、ティム
(72)【発明者】
【氏名】ラマディアニ、サティシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ルアン
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-060867(JP,A)
【文献】特表2012-529977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0065511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/02
A61B 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍アブレーションシステムにおいて、
凍結プローブであって、
患者組織に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトと、
前記プローブシャフト内における低温流体供給部であって、前記低温流体供給部は、低温流体を受容し、かつ、前記患者組織に対して冷却及び凍結のうちの少なくとも一方を行うために前記低温流体を前記遠位区域に向けて供給する前記低温流体供給部と、
前記低温流体を冷やす極低温冷凍機と、を備え、
前記低温流体は、第1圧力で前記低温流体供給部から供給されると前記極低温冷凍機によって極低温になる、前記凍結プローブと、
前記第1圧力未満である第2圧力にて冷却流体を前記低温流体供給部を介して前記遠位区域に向けて供給する低圧冷却流体供給源と、を備え、
前記低圧冷却流体供給源は、
(i)前記凍結プローブの前記遠位区域の一部もしくは前記凍結プローブの構成要素の温度が所定の閾値を超えるとき、前記凍結プローブの前記遠位区域を冷却するために前記冷却流体を供給するようにさらに構成される、又は
(ii)磁気共鳴イメージング(MRI)システムが磁気共鳴(MR)信号を発信する作動状態であることの検出に続いて、前記凍結プローブの前記遠位区域を冷却するために前記冷却流体を前記凍結プローブの前記遠位区域へ供給し、前記低圧冷却流体供給源から前記凍結プローブの前記遠位区域へ供給された前記冷却流体が前記凍結プローブの一部における前記MRIシステムに関連する無線周波数加熱を打ち消すようにさらに構成される、冷凍アブレーションシステム。
【請求項2】
冷凍アブレーションシステムにおいて、
凍結プローブであって、
患者組織に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトと、
前記プローブシャフト内における低温流体供給部であって、前記低温流体供給部は、低温流体を受容し、かつ、前記患者組織に対して冷却及び凍結のうちの少なくとも一方を行うために前記低温流体を前記遠位区域に向けて供給する前記低温流体供給部と、
前記遠位区域に設けられた膨張室と、
前記膨張室に設けられたジュール=トムソンオリフィスと、を備え、
前記低温流体は、第1圧力で前記低温流体供給部から前記ジュール=トムソンオリフィスを通って退出し、前記膨張室で膨張することで極低温になる、前記凍結プローブと、
前記第1圧力未満である第2圧力にて冷却流体を前記低温流体供給部を介して前記遠位区域に向けて供給する低圧冷却流体供給源と、を備え、
前記低圧冷却流体供給源は、
(i)前記凍結プローブの前記遠位区域の一部もしくは前記凍結プローブの構成要素の温度が所定の閾値を超えるとき、前記凍結プローブの前記遠位区域を冷却するために前記冷却流体を供給するようにさらに構成される、又は
(ii)磁気共鳴イメージング(MRI)システムが磁気共鳴(MR)信号を発信する作動状態であることの検出に続いて、前記凍結プローブの前記遠位区域を冷却するために前記冷却流体を前記凍結プローブの前記遠位区域へ供給し、前記低圧冷却流体供給源から前記凍結プローブの前記遠位区域へ供給された前記冷却流体が前記凍結プローブの一部における前記MRIシステムに関連する無線周波数加熱を打ち消すようにさらに構成される、冷凍アブレーションシステム。
【請求項3】
前記MRIシステムに近接して配置され、かつ前記MR信号を検出する1つ以上の検出器と、
前記1つ以上の検出器に動作可能に接続された制御システムと、をさらに備え、前記制御システムは、前記MR信号の検出に応答して、前記凍結プローブの前記遠位区域への前記冷却流体の供給を制御する、請求項1または2に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項4】
前記凍結プローブの前記遠位区域の温度を測定するための温度センサーをさらに備え、前記温度センサーは前記制御システムに動作可能に結合されており、前記制御システムは、前記温度が前記所定の閾値を超える場合に、前記温度センサーによって測定された前記温度の受信に応答して、前記冷却流体を供給するようにさらに構成されている、請求項3に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項5】
前記制御システムは前記低圧冷却流体供給源に動作可能に結合されており、前記制御システムは、
前記遠位区域の温度測定を開始するように前記温度センサーと通信し、
前記温度センサーから測定した温度を受信し、
その温度が前記所定の閾値を超えているか否かを判断し、
前記冷却流体の供給を開始するように前記低圧冷却流体供給源と通信する、請求項4に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項6】
前記温度センサーはさらに、前記冷却流体が前記低圧冷却流体供給源によって供給される場合に、前記遠位区域の前記温度を測定する、請求項4または5に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項7】
前記MRIシステムは磁気共鳴(MR)室内に配置されており、前記MR信号は前記MRIシステムに関連しており、前記冷凍アブレーションシステムは前記MR室内に配置可能であり、かつ前記MRIシステムとともに作動している、請求項3~6のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項8】
前記制御システムは前記低圧冷却流体供給源からの前記冷却流体が供給されるべき継続時間を判定し、前記継続時間は、前記遠位区域の前記温度が前記所定の閾値を超える時間間隔、及び、前記MRIシステムが磁気共鳴信号を生じる時間間隔のうちの少なくとも一方に対応する、請求項3~7のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項9】
前記制御システムは、前記患者組織への前記凍結プローブの挿入中に前記冷却流体の供給を開始するように構成されている、請求項3~8のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項10】
前記制御システムは前記プローブシャフトの前記遠位区域から除去されるべき第1熱量を判定し、第1熱量は前記所定の閾値を超える測定された温度上昇に対応し、前記制御システムは、前記遠位区域から第1熱量を除去するために必要とされる前記冷却流体の第1流量を判定する、請求項3~9のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項11】
前記制御システムは、前記凍結プローブが患者内に挿入されているとき、及び磁気共鳴信号が検出されたときのうちの少なくとも一方に、前記所定の閾値を超える温度の上昇を予測し、かつ前記プローブシャフトの前記遠位区域から除去されるべき第2熱量を判定し、第2熱量は前記所定の閾値を超える予測された温度の上昇に対応し、前記制御システムは、前記遠位区域から第2熱量を除去するために必要とされる前記冷却流体の第2流量を判定する、請求項3~10のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項12】
前記冷却流体はアルゴンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項13】
第2圧力は約500psi(3447kPa)未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項14】
前記冷却流体は、約2℃~約8℃の前記遠位区域の温度降下を生じるように一定の継続時間にわたって供給される、請求項1~13のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【請求項15】
前記低温流体は前記冷却流体と同一の流体である、請求項1~14のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気共鳴イメージング検出を備えた冷凍アブレーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結手術システムは、1つ以上の低温流体供給源に接続された1つ以上の凍結プローブを備えている。そのようなシステムは本発明の譲受人に譲渡された特許文献1及び特許文献2に記載されており、これらの特許文献の開示は参照により余すところなく本願に援用される。そのような凍結手術システムでは、低温流体が低温流体供給源から1つ以上の凍結プローブに送給され得る。凍結プローブは、低温流体の膨張の結果として冷却されることによって、凍結プローブの先端部付近の組織を凍結することができる。いくつかのそのようなシステムは、凍結後に組織を解凍して凍結プローブの除去を容易にするために、各凍結プローブのプローブシャフト内に配置された電気ヒータ(高抵抗ワイヤの形態にある)を備える。
【0003】
いくつかのそのような凍結手術システムは、例えば、凍結プローブを挿入中に案内するため、及び/又は解剖学的特徴(例えば組織、腫瘍など)の画像を得るために、患者の撮像に磁気共鳴イメージングシステムを用いることがある。そのようなシステムの一例は特許文献3に見られ、この特許文献の開示は参照により本願に援用される。そのようなシステムは、他のイメージングシステム(コンピュータ断層撮影など)が適当ではない可能性がある状況(例えば放射線への曝露が望ましくない場合)において望ましいことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,066,697号明細書
【文献】米国出願公開第2010/0256620A1号明細書
【文献】米国特許第7,850,682号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
手術システムのいくつかの構成要素をMRI磁気室の外部に配置した結果として、MRシステムが必ずしも様々な種類の手術システムの構成要素によって読み取れる標準化されたアウトプットを提供するわけではないため、手術システムはMRIシステムが作動しているか否かを判断できないことがある。さらに、いくつかのそのようなシステムでは、金属構成要素及び/又は電気的構成要素(例えば、プローブシャフト又はヒータワイヤーなど)を有する手術システムをMRIシステムに隣接して配置することによって、無線周波数電磁場(無線周波数加熱)、又はMRI磁石の存在によって生じるそれらの構成要素に流れる誘導電流により、発熱が生じる。故障検出回路構成は、構成要素の不具合に対して必要な軽減策である。故障検出回路は、多くの場合、MRスキャナによって用いられる高振幅勾配及びRF電磁場に供されたときに、それらの回路を破損し易くする高い入力インピーダンスを有する。これらの回路はプローブと直接相互作用するので、回路を高振幅電磁場から遮蔽する方法が存在しない。MRスキャナが動作している間だけ、これらの回路を選択的に切断して無効にする能力は、破損の可能性のためにこれらのインタフェースを用いることができないシステムに対して有意な優越性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示は、MR室内に配置され、磁場及び無線周波数信号のようなMR信号を生成するように構成された磁気共鳴(MR)システムとともに動作可能な磁気共鳴イメージング(MRI)誘導凍結手術システムを提供する。磁場及び無線周波数場は、患者組織の一領域の撮像を可能にする。凍結手術システムは、MRシステムから物理的に分離され得る要素を含み、それらの要素の少なくとも一部はMR室内に配置可能である。凍結手術システムは、少なくとも一部が手術中に患者内部に配置可能である1つ以上の外科用器具を含むことができる。外科用器具のうちの少なくとも1つは、MRシステムによって生じたMR信号に曝露されたときに、反応作用(例えばRF加熱又は望ましくない誘導電流)を示す1つ以上の構成要素を有し得る。システムは、手術システムに動作可能に接続された制御システムを含み、制御システムは、MRシステムが(例えば使用により)作動中か否かを判断し、制御システムがMRシステムは作動中であると判断した場合には、外科用器具の構成要素におけるMR信号の反応作用を軽減するように構成されており、その軽減策は手術システムの構成要素において誘発される反応作用の低減を含む。
【0007】
別の態様において、本開示は、本願に開示する実施形態のうちのいずれかによる磁気共鳴(MR)システムとともに動作可能な磁気共鳴イメージング(MRI)誘導冷凍アブレーションシステムを提供する。MRシステムはMR室内に配置され得る。システムはMR室内に配置可能な冷凍アブレーションシステムを含むことができる。冷凍アブレーションシステムは、少なくともその一部が患者組織内部に配置可能な凍結プローブを含むことができる。凍結プローブは、患者組織に挿入可能な遠位区域を有したプローブシャフトを有し得る。凍結プローブは、特にその遠位部分において、a)金属材料を含有するプローブシャフト、及びb)電気ヒータの少なくとも一方を備えることができ、電気ヒータは電流を受容し、それにより患者組織及び電気回路を加熱及び/又は解凍するためにプローブシャフトを加熱するように構成されていてもよい。システムは、MRシステムの近位に配置され、かつMR信号(RF場及び磁場など)を検出するように構成された1つ以上の検出器を含むことができる。システムは、冷凍アブレーションシステムに動作可能に接続された制御システムを含むことができる。制御システムは、1つ以上の検出器から指標を受信し、1つ以上の検出器から受信した指標に少なくとも基づいて、MRシステムが作動しているか否かを判断することができる。制御システムがMRシステムは作動していると判断すると、制御システムは、凍結プローブが金属材料を含有するプローブシャフトを有する場合には、次にプローブシャフトの冷却動作を開始することができ、その冷却動作は冷却を供給することを含み、凍結プローブが電気ヒータを備える場合には、MR信号への曝露に応答して、ヒータを電気的に切断し、かつ/又は電気ヒータによって生じた電気信号の少なくとも一部を無視することができ、凍結プローブが電気回路(例えば、さらに本願に記載するような電子チップ、故障検出及びプローブ識別回路構成)を備える場合には、次に電気回路からの電気信号を切断及び/又は無視することができる。凍結プローブが1つ以上の温度センサーを備える場合には、次に、制御システムはまた温度センサーの1つ以上からの電気信号を切断及び/又は無視するように構成されていてもよい。
【0008】
さらなる態様において、本開示は本願に開示する実施形態のうちのいずれかによる冷凍アブレーションシステムを提供する。冷凍アブレーションシステムは、患者組織に挿入可能な遠位区域を備えたプローブシャフトと、プローブシャフト内に配置された低温流体供給部と有する凍結プローブを含むことができる。低温流体供給部は低温流体を受容し、組織を冷却及び/又は凍結するために、低温流体をプローブシャフトの遠位区域に向けて供給することができる。低温流体は、第1圧力で供給されると極低温になり得る。冷凍アブレーションシステムは、冷却流体を第2圧力で低温流体供給部を介して遠位区域に向けて供給するように構成された低圧冷却流体供給源を含むことができる。第2圧力は第1圧力未満であり得る。低圧冷却流体供給源は、凍結プローブの遠位区域の一部もしくは構成要素の温度が所定の閾値を超えるとき、又は例えば磁気共鳴(MR)信号の検出などによる作動中であるMRIシステムの検出に続いて、凍結プローブの遠位区域を冷却するように冷却流体を供給し、それにより冷却流体によって提供された冷却がMRIシステムに関連する無線周波数加熱を打ち消すように構成されている。
【0009】
さらなる態様において、この開示は、患者組織に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトを有した凍結プローブを備えた冷凍アブレーションシステムを提供する。凍結プローブはプローブシャフト内に低温流体供給部を有してもよく、低温流体供給部は低温流体供給源から低温流体を受容し、凍結プローブを冷却するために低温流体を凍結プローブの遠位区域に向けて供給するように構成されている。システムは加えて、低温流体供給部に低温流体を送給するように構成された少なくとも1つの低温流体供給源を備えてもよい。システムは加えて、MR信号を検出するため、又は凍結プローブもしくは凍結プローブ構成要素のうちの1つ以上の温度を測定するための1つ以上のセンサーを備える。これらのセンサーは、典型的には、RFセンサー、磁場検出器、及び1つ以上の温度センサーのうちから選択され、温度センサーは、典型的には、凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇を検出するように構成されている。冷凍アブレーションシステムはまた、RF信号もしくは磁場の存在、又は所定の閾値を超える凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇を検出するなどのために、1つ以上のセンサーに動作可能に結合された制御システムを備える。制御システムは、加えて、作動中のMRIシステムに特有なRF信号もしくは磁場のようなMR信号、又は所定の閾値を超える凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇の検出時に、低温流体供給部への低温流体の供給を制御し、かつ、例えば凍結プローブ又は凍結プローブの一部もしくは構成要素を冷却するために、低温流体を低温流体供給部に送給するように構成され得る。
【0010】
さらなる態様において、この開示は、患者に挿入可能な遠位区域を有したプローブシャフトと、プローブシャフト内における低温流体供給部とを備えた凍結プローブを有する冷凍アブレーションシステムを提供する。低温流体供給部は低温流体供給源から低温流体を受容し、凍結プローブを冷却するために低温流体を凍結プローブの遠位区域に向けて供給するように構成されている。凍結プローブは加えて1つ以上の電気的構成要素を備えてもよい。システムは、低温流体供給部に低温流体を送給するように構成された少なくとも1つの低温流体供給源と、MR信号を検出するのに適した1つ以上のセンサーとを有する。これらのセンサーは、典型的には、RFセンサー及び磁場検出器のうちから選択される。システムは加えて、例えば作動中のMRIシステムに特有な無線周波数信号又は磁場を検出することによって作動するMRIシステムの存在を検出するなどのために、MR信号センサーを検出するのに適した1つ以上のセンサーに動作可能に結合された制御システムを備える。制御システムは加えて、作動中のMRIシステムに特有なRF信号又は磁場の検出時に、1つ以上の電気的構成要素への給電を制御し、かつ電気的構成要素のうちの1つ以上を電気的に切断又は隔離するように構成され得る。加えて、又はこれに代わって、制御システムは、作動中のMRIシステムに特有なRF信号又は磁場の検出時に、電気的構成要素のうちの1つ以上からの信号もしくは読み取り値を無視するか、又はRF場もしくは磁場による影響を受けない信号のみを受け入れるか、もしくは処理するように構成されていてもよい。
【0011】
本開示の特定の態様は以下の番号を付けた実施形態を含む。
1. MR室内に配置された磁気共鳴(MR)システムとともに動作可能な磁気共鳴イメージング(MRI)誘導手術システムであって、MRシステムはMR信号を生成するように構成されており、MRI誘導手術システムは、
手術システムと、手術システムの少なくとも一部はMR室内に配置可能であり、手術システムは少なくとも一部が手術中に患者内部に配置可能である1つ以上の外科用器具を備えることと、
少なくとも1つの外科用器具は、MRシステムによって生じたMR信号に曝露されたときに反応作用を示す1つ以上の構成要素を有することと、
手術システムに動作可能に接続された制御システムとを含み、制御システムは、
MRシステムが作動中か否かを判断し、
制御システムがMRシステムは作動中であると判断した場合には、外科用器具の構成要素におけるMRシステムによって生じたMR信号の反応作用を軽減するように構成されており、その軽減策は手術システムの構成要素において誘発される反応作用の低減を含む、MRI誘導手術システム。
【0012】
2. 外科用器具のうちの少なくとも1つは電気的構成要素を備える、実施形態1に記載のMRI誘導手術システム。
3. 制御システムは、制御システムがMRシステムはMR信号を生じていると判断した場合には、電気的構成要素を電気的に切断するように構成されている、実施形態1又は2に記載のMRI誘導手術システム。
【0013】
4. 制御システムは、制御システムがMRシステムはMR信号を生じていると判断した場合には、MR信号に曝露されたときの電気的構成要素に関連する反応電気信号を無視するように構成されている、実施形態1乃至3のいずれか1項に記載のMRI誘導手術システム。
【0014】
5. 外科用器具のうちの少なくとも1つは金属構成要素を含む、実施形態1乃至4のいずれか1項に記載のMRI誘導手術システム。
6. 制御システムは、生じたMR信号によって手術システムの金属構成要素が加熱されているか否かを判断するように構成されており、制御システムは、制御システムが金属構成要素はMR信号によって加熱されていると判断した場合には、手術システムの金属構成要素を冷却するために冷却動作を開始するようにさらに構成されている、実施形態1乃至5のいずれか1項に記載のMRI誘導手術システム。
【0015】
7. 無線周波数(RF)センサー及び/又は少なくとも1つの磁場検出器のうちの少なくとも一方をさらに含み、少なくとも1つの無線周波数センサー及び少なくとも1つの磁場検出器は、MRIシステムが作動しているときに、無線周波数場又は磁場をそれぞれ検出するように配置可能である、実施形態1乃至6のいずれかに記載の磁気共鳴イメージング(MRI)誘導手術システム。
【0016】
8. 制御システムは、少なくとも1つのRFセンサー及び/又は磁場検出器に動作可能に結合されており、RFセンサーによって感知された無線周波数信号及び/又は磁場検出器によって検出された磁場に基づいて、MRシステムがMR信号を生じているか否かを判断する、実施形態1乃至7のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング(MRI)誘導手術システム。
【0017】
9. 手術システムは、MRシステムから物理的に分離されている、実施形態1乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング(MRI)誘導手術システム。
10. 冷凍アブレーションシステムであって、冷凍アブレーションシステムは、
凍結プローブと、凍結プローブは、
患者に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトと、
プローブシャフト内における低温流体供給部とを備え、低温流体供給部は、低温流体を受容し、かつ患者組織を冷却及び/又は凍結するために低温流体を遠位区域に向けて供給するように構成されており、
低温流体は、第1圧力で低温流体供給部に供給されると極低温になることと、
冷却流体を第2圧力で低温流体供給部を介して遠位区域に向けて供給するように構成された低圧冷却流体供給源と、第2圧力は第1圧力未満であることとを含み、
低圧冷却流体供給源は、凍結プローブの遠位区域の一部もしくは構成要素の温度が所定の閾値を超えるとき、又は作動中である磁気共鳴イメージング(MRI)システムの検出に続いて、凍結プローブの遠位区域を冷却するために冷却流体を供給し、それにより冷却流体によって提供された冷却がMRIシステムに関連する無線周波数加熱を打ち消すように構成されている、冷凍アブレーションシステム。
【0018】
11. MRシステムの近位に配置され、かつMR信号を検出するように構成された1つ以上の検出器と、
1つ以上の検出器に動作可能に接続された制御システムとをさらに含み、制御システムは、MR信号の検出に応答して、凍結プローブの遠位区域への低圧冷却流体の供給を制御するように構成されている、実施形態1乃至10のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0019】
12. 凍結プローブの遠位区域の温度を測定するための温度センサーをさらに含み、温度センサーは制御システムに動作可能に結合されており、制御システムは、温度センサーによって測定された温度の受信に応答して低圧冷却流体を供給するように構成されている、実施形態1乃至11のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0020】
13. 制御システムは低圧冷却流体供給源に動作可能に結合されており、制御システムは、
遠位区域の温度測定を開始するように温度センサーと通信し、
温度センサーから測定した温度を受信し、
その温度が所定の閾値を超えているか否かを判断し、
冷却流体の供給を開始するように低圧冷却流体供給源と通信するように構成されている、実施形態1乃至12のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0021】
14. 温度センサーは、冷却流体が低圧冷却流体供給源によって供給される場合に、遠位区域の温度を測定するようにさらに構成されている、実施形態1乃至13のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0022】
15. 磁気共鳴(MR)イメージングシステムはMR室内に配置されており、MR信号はMRIシステムに関連しており、冷凍アブレーションシステムはMR室内に配置可能であり、かつMRIシステムとともに作動している、実施形態1乃至14のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0023】
16. 制御システムは低圧冷却流体供給源からの冷却流体が供給されるべき継続時間を決定するように構成されており、その継続時間は、遠位区域の温度が所定の閾値を超える時間間隔及び/又はMRIシステムがMR信号を生じる時間間隔に対応する、実施形態1乃至15のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0024】
17. 制御システムは患者組織への凍結プローブの挿入中に冷却流体の供給を開始するように構成されている、実施形態1乃至16のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0025】
18. 制御システムはプローブシャフトの遠位区域から除去されるべき第1熱量を決定するように構成されており、第1熱量は所定の閾値を超える測定された温度上昇に対応し、制御システムは、遠位区域から第1熱量を除去するために必要とされる冷却流体の第1流量を決定するようにさらに構成されている、実施形態1乃至17のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0026】
19. 制御システムは、凍結プローブが患者内に挿入されているとき、及び/又はMR信号が検出されたときに、所定の閾値を超える温度の上昇を予測するように構成されており、かつプローブシャフトの遠位区域から除去されるべき第2熱量を決定するように構成されており、第2熱量は所定の閾値を超える予測された温度の上昇に対応し、制御システムは、遠位区域から第2熱量を除去するために必要とされる冷却流体の第2流量を決定するようにさらに構成されている、実施形態1乃至18のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0027】
20. 冷却流体はアルゴンである、実施形態1乃至19のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
21. 第2圧力は約500psi(3447kPa)未満である、実施形態1乃至20のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0028】
22. 冷却流体は、約2℃~約8℃の遠位区域の温度降下を生じるように一定の継続時間にわたって供給される、実施形態1乃至21のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0029】
23. 低温流体は冷却流体と同一の流体である、実施形態1乃至22のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
24. MR室内に配置可能な磁気共鳴(MR)システムとともに動作可能な磁気共鳴イメージング(MRI)誘導冷凍アブレーションシステムであって、MRシステムはMR信号を生成するように構成されており、MRI誘導手術システムは、
MR室内に配置可能な冷凍アブレーションシステムを含み、冷凍アブレーションシステムは、
少なくともその一部が患者組織内部に配置可能な凍結プローブと、凍結プローブは、
患者組織の領域内に配置可能な遠位区域を有するプローブシャフトを備え、
凍結プローブは下記の
a.金属材料を含有するプローブシャフト、
b.電流を受容し、それにより患者組織を加熱及び/又は解凍するためにプローブシャフトを加熱するように構成された電気ヒータ、及び
c.電気回路のうちの少なくとも1つを備えることと、
MRシステムの近位に配置され、かつMR信号を検出するように構成された1つ以上の検出器と、
冷凍アブレーションシステムに動作可能に接続された制御システムとを含み、制御システムは、
1つ以上の検出器から指標を受信し、
1つ以上の検出器から受信した指標に少なくとも基づいて、MRシステムが作動しているか否かを判断し、
制御システムがMRシステムは作動していると判断すると、
凍結プローブが金属材料を含有するプローブシャフトを有する場合には、次にプローブシャフトの冷却動作を開始し、その冷却動作は冷却流体を供給することを含み、
凍結プローブが電気ヒータを備える場合には、MR信号への曝露に応答して、ヒータを電気的に切断し、かつ/又は電気ヒータによって生じた電気信号の少なくとも一部を無視し、
凍結プローブが電気回路を備える場合には、次に電気回路からの電気信号を切断及び/又は無視するように構成されている、磁気共鳴イメージング(MRI)誘導冷凍アブレーションシステム。
【0030】
25. 電気回路は電子チップを含む、実施形態1乃至24のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
26. 冷凍アブレーションシステムであって、冷凍アブレーションシステムは、
凍結プローブと、凍結プローブは、
患者に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトと、
プローブシャフト内における低温流体供給部とを備え、低温流体供給部は、低温流体供給源から低温流体を受容し、凍結プローブを冷却するために低温流体を凍結プローブの遠位区域に向けて供給するように構成されていることと、
低温流体供給部に低温流体を送給するように構成された少なくとも1つの低温流体供給源と、
RFセンサー、磁場検出器、及び温度センサーのうちから選択された1つ以上のセンサーと、温度センサーは、凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇を検出するように構成されていることと、
RF信号もしくは磁場の存在、又は所定の閾値を超える凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇を検出するなどのために、1つ以上のセンサーに動作可能に結合された制御システムとを含み、
制御システムは加えて、
作動中のMRIシステムに特有なRF信号もしくは磁場、又は
所定の閾値を超える凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇のいずれかの検出時に、低温流体供給部への低温流体の供給を制御し、かつ凍結プローブ又は凍結プローブの一部もしくは構成要素を冷却するなどのために、低温流体を低温流体供給部に送給するように構成されている、冷凍アブレーションシステム。
【0031】
27. 低温流体によって提供される冷却はMRIシステムに関連する無線周波数加熱を打ち消す、実施形態1乃至26のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
28. 制御システムは、低温流体を低温流体供給部に対して、患者組織を冷却及び/又は凍結するためには極低温で送給し、かつ作動中のMRIシステムに特有なRF信号もしくは磁場の検出時、又は所定の閾値を超えた凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇の検出時に、凍結プローブ又は凍結プローブの一部もしくは構成要素を冷却するためには非極低温で送給するように構成されている、実施形態1乃至27のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0032】
29. 凍結プローブは、電気ヒータ、温度センサー及び電子チップのうちの1つ以上を備え、制御システムは、作動中のMRIシステムに特有なRF信号又は磁場の検出時に、電気ヒータ、温度センサー、又は電子チップを電気的に切断又は隔離するように構成されている、実施形態1乃至28のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0033】
30. 冷凍アブレーションシステムであって、冷凍アブレーションシステムは、
凍結プローブと、凍結プローブは、
患者に挿入可能な遠位区域を有するプローブシャフトと、
プローブシャフト内における低温流体供給部とを備え、低温流体供給部は低温流体供給源から低温流体を受容し、凍結プローブを冷却するために低温流体を凍結プローブの遠位区域に向けて供給するように構成されており、凍結プローブは1つ以上の電気的構成要素をさらに備えることと、
低温流体供給部に低温流体を送給するように構成された少なくとも1つの低温流体供給源と、
RFセンサー及び磁場検出器のうちから選択された1つ以上のセンサーと、
RF信号又は磁場の存在を検出するなどのために1つ以上のセンサーに動作可能に結合された制御システムとを含み、
制御システムは加えて、作動中のMRIシステムに特有なRF信号又は磁場の検出時に、1つ以上の電気的構成要素への給電を制御し、電気的構成要素のうちの1つ以上を電気的に切断又は隔離するように構成されており、かつ/又は
制御システムは加えて、作動中のMRIシステムに特有なRF信号又は磁場の検出時に、電気的構成要素のうちの1つ以上からの信号又は読み取り値を無視するか、又はRF場もしくは磁場による影響を受けない信号のみを受け入れるか、もしくは処理するように構成されている、冷凍アブレーションシステム。
【0034】
31. 1つ以上の電気的構成要素は、電気ヒータ、温度センサー及び電子チップのうちから選択される、実施形態1乃至30のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0035】
32. 制御装置は、電気ヒータ、温度センサー及び電子チップのうちの1つ以上を電気的に切断又は隔離するように構成されている、実施形態1乃至31のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0036】
33. 制御装置は、電気ヒータの故障に対応する信号又は読み取り値を無視するように構成されている、実施形態1乃至32のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0037】
34. 制御装置は、電気ヒータからの信号又は読み取り値を、前記ヒータの電気抵抗に対応するもの以外は無視するように構成されている、実施形態31又は実施形態1乃至33のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0038】
35. 制御装置は、温度センサーからの信号又は読み取り値を、温度センサーの電気抵抗に対応するもの以外は無視するように構成されている、実施形態32又は実施形態1乃至34のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0039】
36. 電気ヒータの温度はその電気抵抗から決定される、実施形態34又は実施形態1乃至35のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
37. 凍結プローブ又はその構成要素のうちの1つの温度は、1つ以上の温度センサーの電気抵抗によって決定される、実施形態1乃至36のいずれか1項に記載の冷凍アブレーションシステム。
【0040】
1つ以上の実施例の詳細について添付の図面及び以下の記載において説明する。他の特徴、目的及び利点は、それらの記載、図面、及び特許請求の範囲から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】限定されない例示的実施形態による磁気共鳴イメージング(以下、「MRI」と記載)誘導凍結手術システムの概略図。
図2】限定されない例示的実施形態による図2の制御システムに接続可能な凍結プローブの正面図。
図3図2の凍結プローブの正面断面図。
図4】限定されない例示的実施形態によるMRIシステムとともに手術システムを作動させる方法を示す概略図。
図5】限定されない例示的実施形態によるMRIシステムとともに手術システムを作動させる別の方法を示す概略図。
図6】限定されない例示的実施形態による軽減手順を示す概略図。
図7】限定されない例示的実施形態による別の軽減手順を示す概略図。
図8】限定されない例示的実施形態による別の軽減手順を示す概略図。
図9】限定されない例示的実施形態による外科用器具の一部を電気的に切断するための電気回路図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
凍結手術システムは標的組織(例えば腫瘍)を冷凍焼灼するために用いることができる。典型的には、そのようなシステムは、1つ以上の凍結プローブ、1つ以上の低温流体供給源、及び制御システムを備える。低温流体供給源は、アルゴン、窒素、空気、クリプトン、CO、CF、キセノン、及び約1000psi(6895kPa)を超える圧力から膨張したときに極低温(例えば190K未満の温度)に達することができる様々な他のガスのようなガスを供給することができる。本願において、「低温流体」とは、約1000psi(例えば典型的には約3500psi(24132kPa)を超える圧力から膨張したときに低温(例えば190ケルビン未満)に達する任意の流体を指すことができる。凍結手術システムはまた、1つ以上のセンサー、流量計、タイマー、アナログ/デジタル変換器、有線又は無線通信モジュールなどを有する制御システムも含むことができる。加えて、制御システムは、凍結プローブに供給される低温流体の流量、温度及び圧力を調節することもできる。
【0043】
凍結手術の間に、例えば、外科医は、患者の解剖学的構造の標的領域又はその付近に凍結プローブを配置することによって、患者の解剖学的構造の標的領域を冷凍焼灼するために1つ以上の凍結プローブを留置し得る。一例において、凍結プローブは、ジュール=トムソン効果を利用して冷却又は加熱をもたらす。そのような場合、低温流体は、凍結プローブ内において高圧から低圧に膨張する。低温流体の膨張は、凍結プローブの先端部付近の組織を冷凍焼灼するために必要な温度又はそれより低い温度を生じる。膨張した低温流体と凍結プローブの外壁との間の熱伝達は、アイスボールを形成するため、従って組織を冷凍焼灼するために利用され得る。
【0044】
図1は、限定されない例示的な実施形態による磁気共鳴イメージング(以下「MRI」と記載)誘導凍結手術システム10の概略図である。図1のシステムは、磁気室12の内部に配置されたMRIシステムの構成要素を含むことができる。MRIシステムは、患者20を収容するためのボアを有したMRI磁石16を有するMRIスキャナ14を備える。MRI磁石16は開放型又は閉鎖型のものとすることができ、外科医が患者20にアクセスすることを可能にするアクセスポートを備えることができる。MRI磁石16はまた、以下でさらに説明するような様々な電気システム、制御システム、及び/又は冷凍アブレーションシステムに接続するための、図1の電気接続ライン(実線によって図示)及び/又は機械的接続ラインもしくは流体接続ライン(破線によって図示)を有することができる。システムはまた、磁気室12から電気的に隔離された制御室22、及び機器室24を含むことができる。MRIシステムは、外科用器具32,34,36の挿入の前に患者を撮像して、腫瘍又は患者の腔のような患者の関心領域を可視化し得る。さらに、外科用器具を患者内部の意図した位置へ誘導するために挿入中に撮像が実施されてもよい。加えて、撮像は、挿入後及び手術中、並びに手術後に実施されてもよい。
【0045】
引き続き図1について、限定されない例示的実施形態において、接続ラインは、患者20の内部に挿入可能な凍結プローブのような1つ以上の外科用器具32,34,36において終了し得る。従って、いくつかのそのような例において、システムは、1つ以上の外科用器具32,34,36を磁気室12の外部に(例えば、制御室22内又は機器室24内に)配置され得る冷凍アブレーションシステムの他の構成要素に接続できるようにするために、磁気室12の内部に配置されたコネクタインタフェース30を備え得る。例えば、システムは、制御システム40を外科用器具32,34,36に対して動作可能に接続するように、制御室22から磁気室12へ延びる電気接続ライン54及び流体接続ライン62を備え得る。コネクタインタフェース30は、いくつかの有利な実施形態では、複数の外科用器具32,34,36が磁気室12の外部に(例えば制御室22内に)配置された制御システム40に直接的又は間接的に(例えば、電気的に、かつ/又は流体が流れるように)接続されることを可能にするために、磁石の近位に配置された可動カート50上に設けられ得る。制御システム40は、いくつかの有益な実施形態では、(例えば、以下で詳述するように、ソフトウェアプログラムの形態にあり、1つ以上の動作を実行する)コンピュータ可読命令を読み取ることができるプログラム可能なマイクロプロセッサとすることができる。
【0046】
制御システム40と外科用器具32,34,36との間の電気的接続及び流体接続について、例示的実施形態に従って説明する。制御システム40は、電気接続ラインの第1組54によって、磁気室12の外部に位置する接続箱52に電気的に接続され得る。さらに、接続箱52は、磁気室12の外部(例えば機器室24内)に位置する電気機器及び/又はイメージング機器57(イメージングルーター及び電気的フィルタなど)に接続するための電気接続ラインの第2組56を含むことができる。電気接続ラインの第3組58は、電気機器及び/又はイメージング機器57を磁気室12の内部に位置するコネクタインタフェース30及び/又は可動カート50に接続し得る。接続箱52は、磁気室12内の構成要素と、電気室内及び/又は制御室内の構成要素との間の取り外し可能な電気的接続を可能にすることができる。
【0047】
図1を再度参照すると、いくつかの例において、システムは様々な種類の外科的処置を実施するために用いられてもよく、本願に開示するシステム及び方法は、凍結手術処置のようないずれか一種類の外科的処置に限定するものと解釈されるべきではない。
【0048】
特定の例において、手術システムは、冷凍アブレーションシステムのような凍結手術システムであり得る。従って、いくつかの例において、システムは1つ以上の低温流体供給源60を備えてもよい。低温流体供給源は液体又は気体容器とすることができる。
【0049】
低温流体は、極低温及び極低温に関連する圧力で外科用器具32,34,36(例えば凍結プローブ)に送給され得る。低温流体供給源は、アルゴン、窒素、空気、クリプトン、CF、キセノン又はNOのような冷却気体であり得る。
【0050】
制御システムは、低温流体を低温流体供給部に対して、患者組織を冷却及び/又は凍結するためには極低温で送給し、かつ例えば作動中のMRIシステムに特有なRF信号もしくは磁場の検出時、又は所定の閾値を超えた凍結プローブもしくは凍結プローブの一部もしくは構成要素の温度の上昇の検出時に、凍結プローブ又は凍結プローブの一部もしくは構成要素を冷却するためには非極低温で送給するように構成されていてもよい。いくつかの凍結プローブにおいて、低温流体は、本願に別記するような低温流体供給部に送給され得る。
【0051】
図1に例示するように、いくつかのアプローチでは、低温流体供給源は、磁気室12の外部に配置されており、かつ流体接続ラインの第1組62によって制御システム40に流体が流れるように接続(「流体接続」と記載)することができる。制御システム40は、次いで、流体接続ラインの第2組64及び流体接続ラインの第3組66によってコネクタインタフェース30及び/又は可動カート50に流体接続され得る。流体接続ラインの第4組68は、外科用器具32,34,36(例えば、凍結プローブ)をコネクタインタフェース30及び/又は可動カート50に流体接続することができる。流体ラインは、可撓性かつ/又は取り外し可能であり得、かつ通過する流体の圧力を調節するための他の流体構成要素を備えていてもよい。低温流体供給源からの流体は、このように流体接続ラインの組62,64,66,68によって外科用器具32,34,36に運ばれ得る。任意で、システムは、磁気室12内に存在する構成要素と制御室22内に存在する構成要素との間の流体接続を可能にするように、磁気室12から電気的に隔離された流体接続パネル70を備えることができる。同様に、電気接続パネル72は、磁気室12内に存在する構成要素と制御室22及び/又は電気室内に存在する構成要素との間の電気的接続を容易にすることができる。
【0052】
図1に戻って参照すると、システムはまた、手術の間に外科医に案内を提供するように患者20の解剖学的特徴を表す画像を表示するために、MRIスキャナ14に動作可能に結合され、かつ磁気室12内に配置されたMRI表示装置86も備えてもよい。MRI表示装置86は、機器室24内の電気的構成要素及び/又はイメージング構成要素、並びに制御室22内に位置する制御システム40に動作可能に結合され得る。そのような構成は、システム全体の動作条件に関連する情報を表示してもよい。そのような場合、有利には、MRI表示装置86は、外科医が、例えば手術工程の進行を監視するための所望の画像、MRIの案内に関連する画像、及び/又は1つ以上の外科用器具32,34,36に関連する現在の情報を選択できるようにしてもよい。任意で、外科的処置の様々な態様を同時に可視化できるようにするために、磁気室12内に2台以上の表示装置を備えてもよい。
【0053】
以前に記載したように、外科用器具は、限定されない例示的実施形態において凍結プローブ100とすることができる。図2は、1つのそのような凍結プローブ100の正面図であり、また図3は、図2の凍結プローブ100の正面断面図である。図2及び図3を参照すると、凍結プローブ100は長尺状本体を備えることができる。凍結プローブ100の構成要素はプローブシャフト102内に位置し得る。凍結プローブは、いくつかの場合において、クライオニードル(凍結針)とすることができる。プローブシャフト102は、留置中に患者20の組織を貫通するために凍結プローブ100の遠位区域106に配置された遠位作用先端部104において終了し得る。凍結プローブがクライオニードルとして構成されている実施形態では、遠位作用先端部104は患者の皮膚を貫通することができる。代替実施形態において、凍結プローブは、可撓性プローブとすることができ、カテーテルによって挿入されてもよい。近位結合器108は、コネクタインタフェース30、制御システム40及び/又は低温流体供給源に対する凍結プローブ100の接続を容易にすることができる。
【0054】
プローブシャフト102は、患者20の組織内における留置を可能にするために実質的に細い横断面のものとすることができる。一例において、凍結プローブは、約2.1ミリメートルのプローブシャフト102の外径を有するクライオニードルであり得る。プローブシャフト102の他の寸法も企図される。例えば、プローブシャフト102は、約1.5ミリメートル~約2.4ミリメートルの外径を有することができる。加えて、凍結プローブがクライオニードルである実施形態では、遠位作用先端部104は、軟組織を貫通するために、(例えば凍結プローブ100の近位部分と比べて)可撓性となるように、しなやかな材料から製造され得る。これに代わって、凍結プローブの相当部分は、全体的に可撓性であることができ、患者の皮膚を穿通しなくてもよく、その中心軸について所望の角度だけ可撓(屈曲可能)であってもよい。
【0055】
図3に見られるように、凍結プローブ100は、遠位作用先端部104に高圧低温流体を提供するために、ほぼその長さに沿って延びる低温流体供給部112を備える。低温流体供給部112は、プローブシャフト102内に同軸上に/同心状に配置され得る。低温流体供給部112は、遠位区域106上においてプローブシャフト102の外面上にアイスボールを形成するために低温流体を供給するように構成され得る。一部の場合には、低温流体供給部112は、毛細管とすることができる。
【0056】
引き続き図3を参照すると、いくつかの例において、凍結プローブ100は極低温冷凍機(cryocooler)を備える。例えば、例示した例では、低温流体供給部112はジュール=トムソンオリフィス114において終了し得る。ジュール=トムソンオリフィス114から退出する低温流体が膨張室内へ膨張できるようにするために、ジュール=トムソンオリフィス114は遠位作用先端部104の近くに配置され得る。従って、低温流体供給部112を通じて供給された高圧低温流体は、ジュール=トムソンオリフィス114を通って退出し、膨張室内で膨張する。低温流体が膨張室内で膨張すると、低温流体は急速に冷えて、遠位作用先端部104の外面上に異なる形状及び/又は大きさのアイスボールを形成する。低温流体の膨張は、膨張時に低温流体が入来する低温流体より低温になるようにすることができる。ジュール=トムソンオリフィス114のような例示的な極低温冷凍機が示されているが、低温デュワー瓶(cryogenic dewars)、スターリング型冷凍機(Stirling-type cooler)、パルス管冷凍機(pulse-tube refrigerator:PTR)、ギフォード=マクマホン(GM)冷凍機(Gifford-McMahon cooler)などのような他の種類の極低温冷凍機が本開示の範囲内において企図されることが理解されるはずである。さらに、上記で簡単に述べたように、冷却に用いられ得る低温流体としては、アルゴン、液体窒素、空気、クリプトン、CF、キセノン、又はNOが挙げられる。
【0057】
説明のために図3を再度参照すると、いくつかの例において、ヒータ116は、組織の解凍及び/又は焼灼(cauterizing)を容易にするために、任意でプローブシャフト102内に備えられ得る。いくつかのそのような例において、ヒータ116は、凍結した組織を解凍して組織からの凍結プローブ100の解放を容易にするように、冷却及びアイスボールの形成後に作動され得る。この例示的実施形態において示されるように、電気ヒータ116は、凍結プローブ100の遠位区域106の加熱を容易にするように、低温流体供給部112及びプローブシャフト102と同軸上に備えられ得る。これに代わって、電気ヒータ116は、凍結プローブ100の遠位区域106を加熱するように、凍結プローブ100の他の箇所に配置されることが可能である。電気ヒータ116は、抵抗ヒータ116とすることができ、通過する電流の流れ及び電気ヒータ116の電気抵抗に比例する熱を発生し得るらせん状に巻回した電線を含むことができる。そのような場合、以前に言及したように、制御システム40(図2に図示)は、凍結プローブ100内の電気ヒータ116への電流の流れを供給及び/又は調節することができる。
【0058】
いくつかのシステムでは、制御システムは、外科用器具又はその構成要素の温度を測定するように構成された1つ以上の温度センサーを備える。例えば、制御システムは、凍結プローブ100の遠位区域106の温度、又は凍結プローブシャフトの温度、又は電子チップの温度、又は電気ヒータの温度を測定するための温度センサーを備えることができる。温度測定は、プローブの温度又はその構成要素のうちのいずれかの温度を監視するために、患者の内部への配置の前、最中、又は後に実施されてもよく、例えば、測定は、配置中及び/又は外科的処置(例えば解凍又は焼灼処置)中、又は処置の前、システムがセットアップ中又は使用準備中である間に、行われてもよい。一例において、温度センサーは、その温度が変化すると、その電気抵抗が変化し得る抵抗材料(例えば正温度係数材料)を含むことができる。抵抗の変化は制御システム40によって測定され、その結果として、制御システム40によって、特定の種類の材料に対する電気抵抗と温度との間の既知の相関性に基づいて温度変化が判定され得る。同様に、電気ヒータの温度もこのように判定されてもよい。
【0059】
上記に記載したように、凍結プローブ100は電気ヒータ116を備える。従って、特定の有益な実施形態において、電気ヒータ116の材料(ヒータ116ワイヤなど)は、電流が流れるとプローブシャフト102を抵抗加熱し、かつプローブ加熱中に制御システム40に温度フィードバックを提供するといった2つの機能を実施することができる。電気ヒータには、ニードル加熱要素故障検出回路構成も備えられていてもよい。そのような回路構成は、故障検出のために制御システムに動作可能に接続され得る。制御システムは、本願にさらに記載するように、作動するMRIシステムが存在する場合に、この故障検出回路構成からの信号を「無効にする(blank)」か、又は無視するように構成され得る。
【0060】
いくつかの有益な例において、図1に戻って参照すると、外科用器具32,34,36は、コネクタインタフェース30及び/又は可動カート50に接続されたときに、それらの外科用器具の識別を可能にする電子的構成要素を含んでいてもよい。一例において、外科用器具は図2及び図3に示すような凍結プローブ100である。外科用器具100は電子チップ120を含んでいてもよい。チップは、有利には、近位部分(例えば近位コネクタの近く)に配置される。他の例では、外科用器具は電子チップ120をその本体に沿った任意の場所に備えることができる。電子チップ120は、機械可読であり得る非一時的なデータ記憶媒体を含むことができる。コネクタインタフェース30及び/又は可動カート50と制御システム40との間の電気的接続により、制御システム40が電子チップ120の読み取り/書き込みアクセスを有することが可能となり得る。
【0061】
電子チップ120は、複数の外科用器具32,34,36が可動カート50に接続されている場合に、外科用器具の識別を可能にすることができる。例えば、各電子チップ120は、一意的な外科用器具識別子をそのメモリに記憶することができ、それによりコネクタインタフェース30上の特定のコネクタポートに接続された外科用器具の識別を可能にし得る。加えて、電子チップ120は、特定の外科的処置が実施された継続時間、外科用器具が用いられた合計時間などのような、他の情報を記憶してもよい。さらに、そのような情報は(例えば電気的接続を通じて)制御システム40に送信されてもよい。
【0062】
図1に関連して以前に記載したように、手術システムの特定の構成要素は、MRIシステムに近接して、又はMR室内に、配置可能であり、これは、術前、術中、又は術後における撮像及び案内を可能にする。このように配置した場合、システムの構成要素は、MRシステムが作動しているとき、患者の組織の領域を撮像するのに必要な磁場、及び無線周波放出などのMR信号に晒される。例えば、外科用器具32,34,36は、可動カート50からの電気接続ラインの第4組59に接続され、次にコネクタインタフェース30に接続され得る。図1において、外科用器具のうちの1つは、接続ライン59によって可動カート50に接続されるように示されているが、(例えば図9に示すように)ほぼすべての外科用器具が個々の接続ライン59によって可動カート50に接続可能であってもよい。図1に戻ると、外科用器具32,34,36は、MRIシステムによって生じた磁気共鳴(MR)信号に曝露されたときに反応作用を示すように構成された構成要素を含み得る。例えば、プローブシャフト102の金属材料は、無線周波数場に曝露されると加熱されることがある。加えて、外科用器具32,34,36は、誘導電流が流れるのを可能にし得る電気的構成要素(例えばヒータ116ワイヤ、温度プローブ、又は電子チップ120)を含むことがある。従って、本開示の特定の実施形態は、MR信号202に曝露されたときに手術システムの構成要素に導入される反応作用を軽減するためのシステム及び方法を提供する。そのような有益な実施形態は、以下に記載するように、MRIシステムと組み合わせた、金属構成要素又は電気的構成要素を有する外科用器具32,34,36の使用を可能にし得る。
【0063】
本開示の特定の態様において、MRIシステムは、凍結手術処置中の様々な時点において同時に、又は定期的に用いられてもよい。図4は、患者内における外科用器具の配置と組み合わせたMRIの作動の1つのそのような限定されない例示的方法400を示している。そのような場合、MRIスキャナ14は、ステップ402で画像を生成し、ステップ404で患者内部の標的領域(例えば腫瘍)に対する外科用器具(例えば凍結プローブ100)の位置を判定するように作動され得る。外科医及び/又は制御システム40がステップ406で外科用器具が意図した標的部位に配置されていないと判断した場合には、ステップ408において、外科用器具は意図した標的部位に向かって前進させられ得る。ステップ410では、標的部位に対する外科用器具の新たな位置を可視化するために、事後確認(follow-up)のMRIスキャンが実施され得る。このプロセスは外科用器具が標的部位に配置されるまで繰り返され得る。明らかに、図4のステップは実行の順序を構成するものではなく、MRIスキャナ14の作動及び外科用器具の前進は同時であってもよい。
【0064】
図5は、手術システムと関連したMRIシステムの作動の別の限定されない例示的方法500を示している。この作動において、外科的処置は、腫瘍をアブレートするための冷凍アブレーション術とすることができる。従って、ステップ502において、制御システム40は「凍結」サイクルを開始し、それにより低温流体が外科用器具(例えば凍結プローブ100)に供給されて、アイスボールを形成し、組織をアブレートする。ステップ504では、MRIスキャナ14は、アイスボールの寸法及び/又は他の関心のある特徴(例えば腫瘍に対する外科用器具の位置など)を可視化するように作動され得る。ステップ506では、MRIスキャナ14の作動は停止されてもよく、ステップ508では、外科用器具(例えば凍結プローブ100)の先端部を解凍して外科用器具を患者組織から取り外し易くするために、「解凍」サイクルが実施され得る。ステップ510において、MRIスキャナ14は、アブレートされた腫瘍を可視化するように作動され、外科医及び/又は制御システム40がステップ512で後続の「凍結」サイクルが必要であるか否かを判断できるようにし得る。このプロセスは、所望の臨床結果が得られるまで繰り返され得る。任意で、MRIスキャナ14は、ステップ514まで処置の間じゅう(例えば、「凍結」並びに「解凍」サイクルの間)作動し続けてもよく、ステップ514によってMRIの作動は停止される。これに代わって、MRIスキャナ14は外科的処置に関する関連情報を得るために間欠的に作動されてもよい。
【0065】
上記の例から分かるように、制御システム40が、MRIの作動のために何らかの軽減策が実施されるべきか否かを判断するために、MRIスキャナ14の作動の継続時間及び開始/停止時間を知ることは有益である場合がある。従って、いくつかのそのような例示的実施形態では、制御システム40は、MRIスキャナ14が作動しているか否かを判断し、作動している場合には、MRIスキャナ14が作動している継続時間及び他の必要なパラメーターを判定するために、MRスキャナ検出器(例えばMR機器の通常の使用中に発せられる低周波勾配電磁場及び/又は高周波RF電磁場を受信するように調整されたアンテナ)200に動作可能に接続され得る。そのようなシステムは、以下に記載するように、有利にはスマート/インテリジェント手術システムであってもよい。
【0066】
図1に戻って参照すると、いくつかの例において、例えば、システムは、少なくとも1つの検出器、例えば、MRIシステムが作動しているときに無線周波数場又は磁場をそれぞれ検出するように配置可能な1つ以上の無線周波数(RF)センサー及び/又は少なくとも1つの磁場検出器200を備え得る。これらの検出器は、有利には、MRに近接して配置され、かつMR信号を検出するように構成されている。制御システムは、有利には、検出器に動作可能に結合され、RFセンサーによって感知された無線周波数信号及び/又は磁場検出器によって検出された磁場に基づいて、MRシステムが作動している(例えばMR信号を生じている)か否かを判断し、かつ手術システム及び凍結プローブ又はその構成要素におけるMR信号の作用を軽減するための対策をとるように構成されている。有利には、RFセンサー及び/又は磁場検出器200は、MRIシステムが患者の一部を撮像しているときに無線周波数場又は磁場202をそれぞれ検出するように、MRIシステムのボアから望ましい距離で磁気室12の内部に配置され得る。RFセンサーはRFアンテナ及び/又は磁場センサーとすることができる。一例において、RFセンサー及び/又は磁場センサーは、MRスキャナに関連したMR信号の周波数に調整された(又は他の場合には応答する)既製のアンテナとすることできる。RFセンサー及び磁場検出器200は、それらが磁気室12内の任意の場所に位置することができ、かつ依然としてMRIスキャナ14に関連したRF信号及び/又は低周波磁場202を検出することができるようにするのに十分なダイナミックレンジを有することができる。明らかなように、MRIスキャナの作動中、MRシステムの構成要素(電磁コイル、無線周波数トランスデューサーなど)によって無線周波数信号及び磁場202の双方が生じ得る。従って、RFセンサー又は電磁場検出器のいずれかを備えれば十分である。有利には、本開示の特定の限定されない例示的実施形態は、MR信号202の検出において(例えば、RFセンサー又は電磁場検出器のうちの一方がスキャナの作動を検出しなかった場合に)冗長性を提供するために、RFセンサー及び磁場検出器200の双方を備える。有利には、RFセンサー及び電磁場検出器は信号を送信又は再放射しなくてよく、単にMRIスキャナ14から信号を受信するように構成されているだけでよい。従って、そのような実施形態は、MRIシステムによって生成された画像にノイズ又はアーチファクトを導入しないであろう。
【0067】
RFセンサー及び/又は電磁場検出器は、制御システム40に動作可能に結合され得る。例えば、RFセンサー及び/又は電磁場検出器は、可動カート50と制御システム40との間の既存の電気的接続を利用してもよい。1つのそのような例では、示したように、RFセンサー及び/又は電磁場検出器は、磁気室12内に配置された可動カート50に電気的に結合され得る。前述したように、可動カート50は、次に制御システム40に電気的に結合され、それによりRFセンサー及び/又は電磁場検出器を制御システム40と電気的に連絡させ得る。任意で、RFセンサー及び/又は電磁場検出器は、効率的にパッケージ化されたシステムを提供するように、可動カート50内に物理的に搭載されてもよい。
【0068】
RFセンサー及び/又は電磁場検出器は、MRIスキャナ14が作動されているときにMR信号202(例えばRF又は磁気)を検出し、出力信号を生成し得る。いくつかの例において、出力信号はアナログ信号であってもよく、システムはアナログ信号をデジタル信号に変換するためにA/Dコンバーターを含んでいてもよい。これに代わって、出力信号はデジタル信号であってもよい。RFセンサー及び/又は磁場検出器200からの出力信号は制御システム40に送信され得る。そのような場合、制御システム40は、RFセンサーによって感知されたRF信号及び/又は磁場検出器200によって検出された磁場202に基づいて、MRシステムの構成要素(MRIスキャナ14など)がMR信号202を生じているか否かを判断する。
【0069】
前述したように、手術システムの構成要素は、MRシステムによって生じたMR信号202に曝露されたときに反応作用を示すことがある。例えば、外科用器具32,34,36(例えば凍結プローブ)は金属構成要素を有することがあり(例えば、プローブシャフトが金属を含有したり、又は電気ヒータもしくは温度プローブが金属ワイヤを含んだりすることがある)、RF信号に曝露されたときに無線周波数加熱を受ける場合がある。RF信号の強度に応じて、外科用器具32,34,36、それらの一部、又はそれらの構成要素の温度は、許容できないレベルに上昇し得る。これは、例えば、患者内部における外科用器具の配置中に、患者不快感及び/又は健全な組織の壊死を引き起こすことがある。従って、制御システム40は、手術システムの一部又は構成要素がMR信号202に曝露されたときに示される反応作用を軽減するように構成され得る。
【0070】
そのようなシステム及び構成要素の温度は、制御システムによって、例えばシステムに動作可能に結合され、温度を報告するように構成された温度プローブを備えることにより、監視することができる。これに代わって、電気的構成要素の温度は、その電気抵抗が温度に応じて変化する電線の電気抵抗を監視することによって判定されてもよい。
【0071】
図6図7、及び図8は、制御システム40によって実施することができる様々な可能な軽減手順600,700,800を示している。軽減手順600,700,800は任意の順序で実施することができる。さらに、軽減手順600,700,800は互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
限定されない例示的実施形態において、制御システム40は、MR信号202が、例えば患者内部における外科用器具の配置中に、外科用器具の一部又は構成要素において無線周波数加熱などの加熱を誘発するか否かを判断し、例えば、温度が所定の閾値温度を超える場合、又は磁気共鳴(MR)信号の検出時に、上記の一部又は構成要素を冷却するために冷却動作を(例えば、低温流体を用いて)開始することができる。図6は、そのような軽減手順600の例を示している。この例では、軽減策は、外科用器具、外科用器具の一部、又は外科用器具の構成要素の温度の低減を含む。図1及び図6を参照すると、ステップ602において、制御システム40は、凍結プローブなどの外科用器具32,34,36、又はその一部、例えば遠位部分、又はプローブシャフトなどの外科用器具の構成要素の温度上昇を判定し得る。制御システム40は、ステップ604において、温度上昇が所定の閾値を超えている(従って構成要素は過昇温している)か否かを判断し、制御システムが金属構成要素はMR信号によって加熱されていると判断した場合には、金属構成要素を冷却するために冷却動作を開始する。限定されない例において、外科用器具が患者内部に挿入されている場合、外科用器具の許容可能な温度は約0℃~約40℃であり得る。別の限定されない例では、外科用器具の許容可能な温度の上昇は、約2℃~約5℃とすることができる。他の許容可能な温度範囲が制御システム40にプログラムされていてもよい。
【0073】
ステップ606において、制御システム40は、MRIシステム14が作動しているか否かを判断し得る。例えば、制御システム40は、作動中のMRIに特有である出力信号をRFセンサー及び/又は磁場検出器200から受信してもよく、それらの出力信号により制御システム40はMRIスキャナ14が作動していると判断し得る。ステップ608において、制御システム40が、外科用器具32,34,36の少なくとも一部(遠位区域106など)又は外科用器具32,34,36の構成要素の温度が所定の閾値を超えていると判断した場合、又は制御システム40がMRIスキャナ14は作動していると判断した場合には、制御システム40は冷却動作を開始し得る。
【0074】
限定されない例において、制御システム40は、冷却又は低温流体供給源に動作可能に結合されていてもよく、外科用器具又は遠位部分などの外科用器具の一部への冷却流体の供給を開始することにより、冷却動作を開始し得る。制御システムは、MR信号の検出に応答して、又は外科用器具の一部もしくは構成要素の温度が所定の閾値を上回ることに応答して、又はそれらの双方において、冷却流体を供給するように構成され得る。
【0075】
システムは、例えば、凍結プローブの遠位区域の温度を測定するための少なくとも1つの温度センサーを備えてもよく、温度センサーは制御システムに動作可能に結合されている。制御システムは、温度センサーによって測定された温度の受信に応答して、低圧冷却流体を供給するように構成されている。制御システムは、遠位区域などの外科用器具の一部の温度測定を開始するように温度センサーと通信し、温度センサーから測定した温度を受信し、その温度が所定の閾値を超えているか否かを判断し、冷却流体の供給を開始するように低圧冷却流体供給源と通信するように構成され得る。温度センサーは、冷却流体が低圧冷却流体供給源によって供給される場合に、遠位区域の温度を測定するように有益にさらに構成されていてもよい。
【0076】
例示のために図1を参照すると、冷却流体は、低温流体と同一の流体とすることができ、同一の流体供給源60に貯蔵されていてもよいが、凍結プローブ又はその構成要素を冷却するためには非極低温及び/又は非極低温に関連する圧力で送給され、患者組織を凍結するためには極低温/極低温に関連する圧力で送給され得る。そのような場合、冷却流体は低圧ライン210を用いて供給され、かつ流体接続ラインの組62,64,66,68によって外科用器具に運ばれ得る。制御システム40は、低温流体供給源60を流体接続ライン62,64,66,68に流体接続するように開閉することができる流体制御器212(例えば、弁、ソレノイドなど)と通信し得る。そのような例では、外科用器具は、冷凍アブレーションを実施するように構成された凍結プローブ100であってもよく、(図2に関して記載したように)その遠位作用先端部104に配置された極低温冷凍機を有していてもよい。このように冷却流体を低温流体と同一の流体ラインを用いて供給することができる。従って、冷却流体は、流体ライン62,64,66,68の組、低温流体供給部112を通って、極低温冷凍機(例えばジュール トムソン オリフィス)から出てもよく、それにより凍結プローブ100の遠位作用先端部104を冷却する。これに代わって、冷却流体は、低温流体と同一であるか、又は異なる流体とすることができ、既存の及び/又は異なる流体経路を用いて外科用器具に流体接続されてもよい。
【0077】
限定されない例において、制御システム40は、患者内部における外科用器具の配置中にのみ、例えば、作動中のMRIシステムに特有なRF信号もしくは磁場を検出することによりMRIスキャナ14が作動しているか否か、又は温度が所定の閾値を超えたか否かを判断してもよい。これに代わって、制御システム40は、手順の前に、又は任意の所望の時に間欠的に、そのような判断を行って、冷却手順を開始してもよい。しかしながら、別の限定されない例では、制御システム40は、供給される冷却流体の量を節約するために、(例えば、外科用器具に関連する認識可能な温度上昇がない時、又はMRIシステムが作動していない場合には)冷却流体を連続的に供給しなくてもよい。
【0078】
特定の実施形態において、低温流体及び冷却流体は、意図しないアイスボールの形成を引き起こさないように、異なる流体とすることができる。これに代わって、低温流体及び冷却流体は同一の流体であってもよいが、冷却流体はアイスボールの形成又は冷凍アブレーションを生じないように有意に低い圧力で供給され得る。そのような例において、標的部位へのプローブの配置中に冷却手順が行われる場合には、冷却流体は、組織(特に健全な組織)にいかなる損傷ももたらすことなく、望ましい程度の冷却(例えば5℃まで)のみを生じ得る。限定されない例において、低温流体は第1圧力ライン214を通じて第1圧力で供給されてもよく、冷却流体は第2圧力ライン210を通じて第2圧力で供給されてもよく、第1圧力は第2圧力よりも大きい。例えば、第1圧力は、約1000psi(6895kPa)~約4000psi(27579kPa)とすることができ、例えば約3500psi(24132kPa)とすることができ、一方、第2圧力は約500psi(3447kPa)未満とすることができるが、凍結プローブの先端部への低温流体の流れを保証するのに十分でなければならない。さらに、そのような例において、冷却流体はアルゴンとすることができ、低温流体は高圧のアルゴン、又は異なる低温流体のいずれかとすることができる。冷却流体及び低温流体の双方がアルゴンである例では、低温流体は第1圧力ライン214を通じて約3500psiの圧力で供給されてもよい。低温流体を約3500psiの圧力で送給するために、任意で、第1圧力ライン214に圧力調整器を設けてもよい。低温流体は、約3500psiの圧力から膨張すると、極低温になり得る。しかしながら、冷却流体もまたアルゴンであり得るが、冷却流体を約500psiの圧力で提供するように流量調節器212(圧力調整器に流体が流れるように結合された弁又はソレノイドであってもよい)を介して第2圧力ライン210を通じて供給され得る。従って、冷却流体は低温流体より有意に高い温度であり、極低温冷凍機(例えばJ-Tオリフィス)を通って退出するときに必ずしも極低温膨張を受けなくてもよい。他の例では、第1圧力は冷却流体が実質的なジュール=トムソン冷却を有する圧力に対応することができ、一方、第2圧力は、ジュール=トムソン冷却がわずかに観察できるか、又はまったく観察できない圧力に対応し得る。第2圧力は、無線周波数加熱を打ち消すためにプローブの遠位区域に冷却流体を供給するのに十分な圧力に対応し得る。
【0079】
特定の例において、制御システム40は、冷却流体の量、並びに/又は冷却流体が供給されるべき継続時間及び頻度(frequency)を知的に決定し得る。いくつかのそのような実施形態において、温度センサーは、冷却流体が供給される場合に、外科用器具の一部(例えば図2及び図3に見られる凍結プローブ100の遠位区域106)の温度を測定し続けることができ、温度測定値を制御システム40に通信してもよい。制御システム40は、温度センサーによって測定された温度に基づいて、外科用器具の一部の所望の温度降下が達成されたか否かを判断し得る。そのような場合、所望の温度降下は約2℃~約8℃であってもよい。これに代わって、制御システム40は、冷却流体が供給されるべき継続時間を、外科用器具の一部の温度が所定の閾値を超える時間間隔及び/又はMRIスキャナ14が(RFセンサー及び/又は磁場検出器200によって検出されるような)MR信号202を生じる時間間隔に対応するように、決定することができる。
【0080】
別の限定されない例において、制御システム40は、外科用器具の一部から除去されるべき第1熱量、及び第1熱量を除去するために必要とされる冷却流体の第1流量を決定することができる。そのような場合、第1熱量は、所定の閾値を超える(例えば温度センサーによって測定されるような)温度上昇に対応し得る。さらに有利な態様において、制御システム40は、外科用器具が患者に挿入されているとき、及び/又はMR信号202が検出されたときに、所定の閾値を超える温度の上昇を予測することができる。従って、制御システム40は所定の閾値を超える予測された温度の上昇に対応する第2熱量、及び遠位区域106から第2熱量を除去するために必要とされる冷却流体の第2流量を決定することができる。
【0081】
前述したように、外科用器具32,34,36の加熱に加えて、MRIスキャナ14からのMR信号202は、手術システムの特定の構成要素において他の反応作用を導入することがある。外科用器具は、温度センサー及び/又は電気ヒータ116の他の構成要素によって実施される電気抵抗及び/又は温度測定に影響を与えることがある電流の流れを誘導し得る大きな振幅(large magnitudes)のMR信号202に曝露される可能性がある。加えて、MR信号202からの大きな誘導電流は、存在する識別回路構成又は任意の電子チップに影響を与えることがある。例えば、そのような電流は、電子チップ120のデータ記憶媒体を結局上書きしたり、かつ/又は恒久的に消去したりする可能性がある。そのような作用は、反応電気信号(reactive electrical signals)と称される。従って、手術システムの構成要素を保護するために、制御システム40は付加的な軽減ステップを実施してもよい。
【0082】
図7は、例えば図1に示したような制御システム40によって実施することができるそのような1つの軽減手順700の例である。一例において、外科的処置は、凍結プローブを用いた冷凍アブレーション及び/又は焼灼であってもよい。図1及び図7を参照すると、軽減手順700は、間欠的に又は連続的に実施することができる。さらに、軽減手順は、制御システム40が凍結プローブ100の遠位区域106の温度を測定するように温度センサーと通信する時の前又は直後に実施することができる。そのような測定は、凍結プローブが患者内に挿入されている間又はその前に行なわれてもよい。これに代わって、軽減手順700は、任意の望ましい時に実施することができ、例えば温度測定がない場合に行われてもよい。ステップ702において、RFセンサー及び/又は磁場検出器200は、作動中のMRIスキャナ14に関連するMR信号202(例えば無線周波数電磁場又は磁場202)を検出し、出力信号が制御システム40に送信される。ステップ704において、制御システム40は、RFセンサー及び/又は磁場検出器200から何らかの出力信号が受信されたか否かを確認し、出力信号が受信されていた場合にはMRIスキャナ14は作動していると判断する。ステップ706において、制御システムがMRシステムはMR信号を生じていると判断した場合、又はその信号もしくは読み取り値が電気的構成要素におけるMR信号の作用によるものと判断された場合には、制御システム40は次に凍結プローブなどの外科用器具の電気的構成要素に関連した反応電気信号のような信号もしくは読み取り値を無視するか、又は特定の信号もしくは読み取り値のみを無視し得る。これに代わって、制御システムは、MR効果による影響を受けないであろう信号又は読み取り値のみを受け入れるか、又は処理してもよい。制御システムは、例えば、電気ヒータ116から受信される特定の信号又は読み取り値を無視する。例えば、制御システム40は、電気ヒータ116の故障に対応する信号又は読み取り値を無視するが、任意で、ヒータ116の電気抵抗に対応する信号は受信され続けてもよく、一方で電気ヒータ116に関連する他の信号は無視されてもよい。このように、ヒータの電気抵抗から決定される温度測定値はMR信号による影響を受けないままである。同様のアプローチは、凍結プローブ又はその構成要素のいずれかの温度を測定するように構成された温度センサーに適用されてもよい。ステップ708において、制御システム40は、外科用器具の電気的構成要素に関連した任意の他の電気信号(例えば外科用器具の電子チップ120に関連した電気信号)を無視する。有利には、軽減手順は、凍結プローブ100に関連した任意の誤った電気信号を無視することにより、温度測定の精度を改善し得る。
【0083】
図8は、凍結プローブなどの外科用器具に対して制御システム40によって実施され得る別の例示的な軽減手順800である。軽減手順800は、例えば外科用器具からの電気信号を無視するだけでは十分ではない可能性がある状況に適当であり得る。例えば、RF場又は磁場202などのMR信号からの大きな誘導電流は、電子チップ120のデータ記憶媒体を上書きしたり、かつ/もしくは恒久的に消去したり、又は他の場合には外科用器具の電気的構成要素を破壊したりすることがある。従って、制御装置は、電気ヒータ、温度センサー又はチップなどの外科用器具の特定部分を電気的に切断及び/又は隔離して、それらを通る誘導電流の流れを排除することができる。
【0084】
図7に示した軽減手順700の場合と同様に、図8の軽減手順800は、制御システム40(図1に図示)が凍結プローブ100(図2及び図3に図示)の遠位区域106の温度を測定するように温度センサーと通信する時の前又は直後に間欠的に実施することができる。そのような測定は、凍結プローブが患者内に挿入されている間又はその前に行なわれてもよい。これに代わって、図8に示した軽減手順800は、任意の望ましい時に実施することができる。図1及び図8を参照すると、ステップ802において、RFセンサー及び/又は磁場検出器200は、MRIスキャナ14に関連するMR信号202と総称される無線周波数場又は磁場202を検出し、出力信号が制御システム40に送信される。ステップ804において、制御システム40は、RFセンサー及び/又は磁場検出器200から何らかの出力信号が受信されたか否かを確認し、出力信号が受信されていた場合にはMRIシステム14は作動していると判断する。ステップ806では、制御システム40がMRIスキャナ14は作動していると判断した場合には、制御システム40は、MR信号202によって導入される誘導電流などの反応作用を軽減するために、外科用器具の少なくとも一部を電気的に切断する。
【0085】
図9は、外科用器具の一部の電気的切断を実施するための回路構成を示す限定されない例示的電気回路図である。図9に見られるように、制御システム40は、1つ以上の外科用器具32,34,36と(例えば電気連絡ライン59によって)電気的に連絡するように配置されたスイッチ900(例えばマルチプレクサ)に電気的に接続され得る。制御システム40はまた、外科用器具32,34,36と連絡した電気ライン59のインピーダンスよりも低いインピーダンスを有する低インピーダンス電気ライン902にも接続され得る。一例によれば、制御システム40が(例えば、検出されたMR信号202に基づいて)MRIシステムは作動していると判断した場合、制御システム40は、外科用器具と制御システム40との間の電気的接続を電気的に切断するようにスイッチ900と通信し得る。図9の例において、これは、外科用器具と関連する電気回路を「開放する(open circuiting)」こと、及び/又は制御システム40の電気的接続を低インピーダンス電気ラインと「短絡させる(short circuiting)」ことによって行うことができる。MR信号202に曝露されたとき、外科用器具は開回路内に存在するので、外科用器具を通って誘導電流が流れないことにより、外科用器具の電気的構成要素(例えば、図2及び図3に示した電子チップ120、及び任意で電気ヒータ116)を保護し得る。図9に戻って、さらにスイッチ900が制御システム40を短絡させた場合には、誘導電流は、外科用器具のより高インピーダンスの電気ラインではなく、低インピーダンスのラインを通って流れるように促されるであろう。
【0086】
本開示の実施形態は1つ以上の利点を提供する。本願に開示したシステム及び方法は、MRIシステムの作動を知的に検出し、軽減ステップが実施されるべきか否かを知的に判断することができる。そのような場合、本願に記載したシステム及び方法は、MR信号に曝露されたときに外科用器具の加熱を低減するために軽減ステップを実施することができる。本願に記載したシステム及び方法はまた、外科用器具の特定の電気的構成要素を保護するように、外科用器具の少なくとも一部を電気的に切断することができる。加えて、本願に記載したシステム及び方法はまた、誤ったデータ(例えば温度測定値)を受信しないように、外科用器具から受信した電気信号を無視することができる。従って、本願に開示したシステム及び方法は、電気的構成要素及び金属構成要素を有する外科用器具をMRIシステムとともに使用することを可能にする。
【0087】
様々な実施例について説明してきた。これら及び他の実施例は以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9