(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】流体バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240708BHJP
H01F 7/14 20060101ALI20240708BHJP
【FI】
F16K31/06 305J
H01F7/14 D
H01F7/14 E
H01F7/14 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205173
(22)【出願日】2022-12-22
【審査請求日】2023-04-17
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522166851
【氏名又は名称】アーファウエス インジェニエーア ヨット ツェー レーマー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ライナー フィッシュ
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044708(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014005498(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013220557(DE,A1)
【文献】特表2009-535008(JP,A)
【文献】実開平03-020405(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
H01F 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ閉鎖体(8)のための磁気駆動ユニット(2)を備える流体バルブであって、
前記駆動ユニット(2)は、コア(3)と、前記コア(3)を部分的に取り囲むコイル(4)と、前記コイル(4)の通電及び結果としての磁気力によって移動可能なアーマチュア(5)とを備え、
前記アーマチュア(5)には軸受領域(5.3)を備える軸受部(5.2)が設けられ、前記軸受部(5.2)によって、前記アーマチュア(5)は、前記駆動ユニット(2)の本体(6)に枢動可能に取り付けられ
、
前記アーマチュア(5)は、前記軸受部(5.2)の反対側に前記バルブ閉鎖体(8)のための連結部(5.4)を有し、
前記連結部(5.4)は、前記アーマチュア(5)の後側(5b)に設けられた突出部に形成され、前記後側(5b)は、前記アーマチュア(5)の前側(5a)に対向しており、前記前側(5a)は、前記コア(3)の磁極面(3.1,3.1’)に向かい合っており、
前記連結部(5.4)は、前記バルブ閉鎖体(8)の自由端の支持体を形成し、前記バルブ閉鎖体(8)の前記自由端は、前記連結部(5.4)に枢動可能に保持される、流体バルブ。
【請求項2】
前記軸受領域(5.3)は、前記アーマチュア(5)の自由端側の外面に設けられ、前記本体(6)の滑り軸受嵌合面(6.1.1)と相互作用する滑り軸受領域である、請求項1に記載の流体バルブ。
【請求項3】
前記軸受領域(5.3)は、断面が円弧形状の摺動面を有する、請求項2に記載の流体バルブ。
【請求項4】
前記コア(3)は、U字形であり一対の磁極面(3.1、3.1’)を有し、前記アーマチュア(5)は、前記一対の磁極面(3.1、3.1’)をまたぐように設計されている、請求項1又は2に記載の流体バルブ。
【請求項5】
前記アーマチュア(5)は、前記コア(3)の前記磁極面(3.1、3.1’)が配置される平面と平行な枢動軸(SA)の周りで枢動可能である、請求項4に記載の流体バルブ。
【請求項6】
前記アーマチュア(5)は、通電状態において、前記磁極面(3.1’)に向かう第1の枢動位置に枢動すると共に、非通電状態において、前記アーマチュア(5)
の長手方向軸(LA)が前記磁極面(3.1、3.1’)の平面から斜めに突出する第2の枢動位置に位置決めされるように、前記コア(3)の前記磁極面(3.1、3.1’)が配置される平面に対して枢動することができる、請求項4に記載の流体バルブ。
【請求項7】
前記軸受部(5.2)は
、ばね(7)の一部を挿入することができるスロット状凹部(5.2.1)を
、前記アーマチュア(5)の長手方向軸(LA)に垂直な方向における前記軸受部(5.2)の両端部に有し、これにより、非通電状態で前記アーマチュア(5)の復帰が行われる、請求項1又は2に記載の流体バルブ。
【請求項8】
前記スロット状凹部(5.
2.1)は、前記アーマチュア(5)の前記長手方向軸(LA)に対して斜めに延在する、請求項7に記載の流体バルブ。
【請求項9】
前記アーマチュア(5)は、アーマチュアキャリア(5.1)によって部分的に取り囲まれ、互いに相対的に固定された、順に重ねて層状にされた複数のアーマチュアシート(5.5)を備える、請求項1又は2に記載の流体バルブ。
【請求項10】
前記バルブ閉鎖体(8)のための前記連結部(5.4)及び前記軸受部(5.2)は、前記アーマチュアキャリア(5.1)に形成されている、請求項
9に記載の流体バルブ。
【請求項11】
前記アーマチュアキャリア(5.1)は、射出成形部品として形成されている、請求項
9に記載の流体バルブ。
【請求項12】
前記アーマチュア(5)の枢動可能性は、前記磁気駆動ユニット(2)の通電状態及び非通電状態の両方において、
少なくとも1つの流路が設けられたバルブハウジング(9)内
における前記バルブ閉鎖体(8)の枢動範囲によって制限される、請求項1又は2に記載の流体バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ閉鎖体を動かすことができる磁気駆動ユニットを有する流体バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動ユニットを有する流体バルブはすでに知られている。詳細には、アーマチュアが磁界の印加によって直線的に移動する、すなわち変位する流体バルブは知られている。この直線運動は、バルブ閉鎖体の枢動運動に変換される。バルブ閉鎖体の枢動運動に応じて、流体バルブの流路が解放又は閉鎖される。
【0003】
公知の流体バルブの主たる欠点は、バルブの構造に起因して、コイルの磁場によってアーマチュアに導入される力が小さいので、流体バルブを切り替えることができるようにするために、コイルを通る比較的大きな電流が必要である点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、より低い切り替え電流で改善された切り替え動作を可能にする流体バルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項1の特徴を備える流体バルブによって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0006】
1つの態様では、バルブ閉鎖体のための磁気駆動ユニットを備える流体バルブが開示される。駆動ユニットは、コアと、コアを部分的に取り囲むコイルと、コイルの通電及び結果としての磁気力によって移動可能なアーマチュアとを備える。アーマチュアには軸受部が設けられている。軸受部は軸受領域を備え、これによってアーマチュアは駆動ユニットの本体に枢動可能に取り付けられる。ここでは、枢動可能性は、好ましくは、アーマチュアが、コイルの通電時にコアに向かって枢動し、コイルの非通電時にコアから離れた休止位置へと枢動するように実現される。好ましくは、アーマチュアは、ばね付勢され、ばね力の作用によって休止位置を取り、通電状態において、アーマチュアは、ばね力に抗してコアに向かって枢動するようになっている。
【0007】
この流体バルブの技術的な利点は、アーマチュアの枢動可能な取り付けにより、アーマチュアの直線変位と比較して低い切り替え電流が要求されるので、流体バルブの切り替え動作が改善されることである。
【0008】
1つの例示的な実施形態では、軸受領域は、アーマチュアの自由端側の外面に設けられ、本体の滑り軸受嵌合面(滑り軸受面とも表される)と相互作用する滑り軸受領域である。従って、本体のアーマチュア支持部への単なる挿入によって滑り軸受が得られるので、駆動ユニットの非常に簡単な構造が実現される。
【0009】
1つの例示的な実施形態では、軸受領域は、断面が円弧形状の摺動面を有する。この表面は、本体のアーマチュア支持部に設けられた逆形状の滑り軸受嵌合面と相互作用する。その結果、本体とアーマチュアとの間に滑り軸受が形成され、これにより、アーマチュアを枢動させること、一方で同時に流体バルブを低コストで製造することができる。
【0010】
1つの例示的な実施形態では、コアは、U字形であり、一対の磁極面を有する。アーマチュアは、一対の磁極面をまたぐように設計されている。好ましくは、コイルが通電されてアーマチュアが揺動すると、磁気回路が閉じる。アーマチュアが磁極面に広がると、アーマチュアに高い力が加わり、この力は、バルブ閉鎖体を動かすために、詳細には枢動させるために使用される。
【0011】
1つの例示的な実施形態では、アーマチュアは、コアの磁極面が配置される平面と平行に延在する枢動軸の周りで枢動可能である。好ましくは、枢動軸は、アーマチュアの長手方向で見て、一方が他方の上に配置される一対の磁極面の下に位置する。これにより、アーマチュアは、磁極面の平面に対して枢動し、それによって、コイルの通電時に磁気回路を閉じることができる。
【0012】
1つの例示的な実施形態によれば、アーマチュアは、通電状態において、磁極面に向かう第1の枢動位置に枢動すると共に、非通電状態において、アーマチュアの長手方向軸が磁極面の平面から斜めに突出する第2の枢動位置に位置決めされるように、コアの磁極面が配置される平面に対して枢動することができる。平面から外への枢動は、好ましくは、コイルの通電時に変形するばねのばね力によって行われる。第1の枢動位置において、アーマチュアは、好ましくは、磁極面から小さな距離、例えば1mm未満、詳細には0.5mm未満だけ離れている、すなわち磁極面に対して直接的な当接は存在しない。第1の枢動位置では、磁気回路は閉じられる。第2の枢動位置では、磁極面からの(詳細には最も遠い磁極面からの)アーマチュアの距離は、最大で5mm、詳細には4mm、3mm、又は2mm、より好ましくは1mm以下、例えば0.8mm又は実質的に0.8mmである。揺動運動の小さなストロークに起因して、アーマチュアへの高い力の導入、従って高い作動力が発生する。
【0013】
1つの例示的な実施形態では、軸受部は、いずれの場合にも、ばねの一部を導入することができるスロット状凹部を反対側の端部領域に少なくとも1つの有し、これによって、非駆動状態でアーマチュアが戻される。ばねは、例えば、本体のアーマチュア支持部での、軸受部から離間するその自由端と当接する板ばねによって形成することができる。このようにして、技術的に簡単な方法で、アーマチュアのばね付勢を実現することができる。
【0014】
1つの例示的な実施形態では、スロット状凹部は、アーマチュアの長手方向軸線に対して斜めに延在する。この傾斜位置は、アーマチュアが磁極面に向かって枢動される場合に、ばねがそのばね力に抗して変形することを保証し、それによってアーマチュアを戻すために必要なばね力が作り出される。
【0015】
1つの例示的な実施形態では、アーマチュアは、軸受部の反対側にバルブ閉鎖体のための連結部を備える。連結部は、バルブ閉鎖体がアーマチュアと作動的に結合するように構成され、従って、アーマチュアの枢動は、バルブ閉鎖体の枢動を引き起こすが、バルブ閉鎖体自体もアーマチュアに対して枢動することができる。連結部は、例えば、断面がフック形であり、バルブ閉鎖体の自由端と枢動継手を形成することができる。
【0016】
1つの例示的な実施形態では、連結部は、アーマチュアの後側に設けられたアーマチュアの突出部に形成され、後側は、コアの磁極面に向かい合うアーマチュアの前側とは反対側である。その結果、連結部は、アーマチュアからバルブハウジングの方向に突出し、バルブ閉鎖体の少なくとも一部は、バルブハウジングの中に突出する。従って、バルブ閉鎖体に対するアーマチュアの場所を取らない結合を実現することが可能である。
【0017】
1つの例示的な実施形態では、連結部は、バルブ閉鎖体の自由端の支持体を形成し、バルブ閉鎖体の自由端は、連結部に枢動可能に保持される。従って、アーマチュアからバルブ閉鎖体への力の伝達は、バルブ閉鎖体に対するアーマチュアの同時枢動可能性でもって達成することができる。
【0018】
1つの例示的な実施形態では、アーマチュアは、アーマチュアキャリアによって部分的に取り囲まれ、互いに相対的に固定された、順に重ねて層状にされた複数のアーマチュアシートを備える。その結果、アーマチュアは、一体的な金属部品の代わりに、複数の打ち抜き部品、詳細には打ち抜きによって製作された金属シートを有するので、安価に製造することができる。
【0019】
1つの例示的な実施形態では、バルブ閉鎖体のための連結部及び軸受部は、アーマチュアキャリアに形成される。このように、アーマチュアシートを互いに相対的に固定するアーマチュアキャリアが、アーマチュアをアーマチュア支持体に取り付けるために及びアーマチュアをバルブ閉鎖体に結合するために同時に使用されるので、アーマチュアのコスト効率の高い製造を実現することができる。
【0020】
あるいは、アーマチュアは、アーマチュアシートの代わりに、一体的に形成された金属製アーマチュアコアを備えることができる。このアーマチュアコアは、アーマチュアキャリアによって取り囲むこともでき、アーマチュアキャリア上には、バルブ閉鎖体のための連結部及び軸受部が設けられる。
【0021】
1つの例示的な実施形態では、アーマチュアキャリアは射出成型部品である。その結果、アーマチュアシートのそれぞれの固定、軸受部及び連結部の形成は、射出成形プロセスによって得ることができるので、アーマチュアの製造コストを削減することができる。
【0022】
1つの例示的な実施形態では、アーマチュアの枢動可能性は、磁気駆動ユニットの通電状態及び非通電状態の両方において、バルブハウジング内のバルブ閉鎖体の枢動範囲により制限される。換言すれば、アーマチュアの枢動運動は、アーマチュアが流体バルブの周囲の構成要素に対して当接することによって制限されないが、アーマチュアは、バルブ閉鎖体によってその枢動可能性が間接的に制限される。その結果、アーマチュアの揺動移動量を調整する必要がなく、流体バルブの製造コストを削減することができる。
【0023】
本発明の意味において、「約(approximately)」、「実質的に(substantially)」又は「おおよそ(about)」という表現は、それぞれの正確な値から±10%、好ましくは±5%の偏差及び/又は機能にとって重要ではない変化の形態での偏差を意味する。
【0024】
本発明のさらなる進展、利点、及び可能性のある用途は、例示的な実施形態の以下の説明及び図面に由来する。これに関連して、説明及び/又は図示された全ての特徴は、原則として、特許請求の範囲の概要又はそれらの後方参照に関係なく、個別に又は何らかの組み合わせで本発明の主題である。さらに、特許請求の範囲の内容は、本明細書の一部とされる。
【0025】
本発明は、例示的な実施形態によって複数の図面を参照して詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、例示的かつ概略的に流体バルブ1の中心を通る縦断面図を示す。
【0028】
流体バルブ1は、バルブ閉鎖体8のための駆動ユニット2と、少なくとも1つの流路が設けられたバルブハウジング9とを備える。バルブ閉鎖体8は、バルブハウジング9の中に延び、駆動ユニット2に結合されており、バルブ閉鎖体8は、駆動ユニット2によって動かすことができるように、詳細には枢動させることができるようになっている。詳細には、バルブ閉鎖体8は、枢動位置に応じてバルブ開口を解放又は閉鎖するために、第1及び第2の枢動位置を取ることができる。図示の例示的な実施形態では、バルブハウジング9は、3つのポートを備え、ポートのペアは、バルブ閉鎖体8の枢動位置に応じて、その都度、互いに流体接続される。しかしながら、これとは異なり、流体バルブ1は、2つのポートのみを有することもでき、ポートの間の流体接続は、バルブ閉鎖体8の枢動位置に応じて、解放されるか又は解放されない。
【0029】
流体バルブ1は、以下の機能を有する。すなわち、駆動ユニット2は、アーマチュア5の枢動位置に影響を与えるように構成されている。駆動ユニット2は、電磁駆動ユニットである、すなわち、駆動ユニット2のコイル4が通電されると、磁気力が発生し、これによってアーマチュア5が第2の枢動位置から第1の枢動位置へ移動する。この第1の枢動位置は、
図1に示されている。この第1の枢動位置は、コイル4が通電さている限り保持される。好ましくは、アーマチュア5は、コイル4を通る電流の流れが終了した後に第2の枢動位置に戻されるように、ばね7によって付勢される。
【0030】
図1に示すように、バルブ閉鎖体8は、バルブ閉鎖体8がアーマチュア5によって動かされる、詳細には枢動されるような方法でアーマチュア5と結合される。詳細には、バルブ閉鎖体8は、アーマチュア5の枢動位置に応じてバルブハウジング9内で第1又は第2の位置を取り、結果として、バルブ位置を規定する、又は流路の解放又は閉鎖を規定する。
【0031】
アーマチュア5の構造及び流体バルブ1の駆動ユニット2の他の機能要素との相互作用は、以下により詳細に説明される。
【0032】
駆動ユニット2は、本体6を備える。本体6は、駆動ユニット2の支持基本構造を形成する。好ましくは、これは、射出成形部品として、詳細にはプラスチック射出成形部品として設計される。本体6は、コイル4のための管状又は実質的に管状の支持部を有する。支持部内には第1の挿入口が形成されており、その中には、U字形コア3の脚部を挿入することができる。
【0033】
本体6は、アーマチュア支持部6.1をさらに備える。このアーマチュア支持部6.1は、コイル4の支持部に直接隣接し、アーマチュア5を枢動可能に取り付けるように設計されている。アーマチュア支持部6.1は、箱状、詳細には矩形の箱状構造であり、下部領域と複数の壁領域とを有している。壁領域は、下部領域に結合され、下部領域を周方向に取り囲み、下部領域から、コイル4から外方に面する側に突出する。
【0034】
下部領域には第2の挿入口が設けられており、この挿入口にはU字形コア3の第2の脚部を挿入することができる。従って、U字形コア3はヨーク形状であり、コアの脚部はコイル4によって取り囲まれており、コイル4が通電されると、コア3と、コア3の磁極面3.1、3.1’にまたがるアーマチュア5とによって閉磁気回路が形成されるようになっている。
【0035】
コア3は、例えば、複数の層状の平板材ピース(flat material piece)から形成することができる。平板材ピースは、具体的には、金属平板材、詳細には金属シートから作られている打ち抜き部品である。コア3を形成するために、平板材ピースは、その平坦面が他方の上部に合同様式で位置付けられ、複数の平板材ピースを有するスタックが作り出されるようになっており、この構成でコア3(いわゆる層状コア)が形成される。個々の平板材ピースは、ここでは互いに直接、導電的に当接するので、層状コアは、一体に形成されたコアと同じ又は実質的に同じ電気特性を有する。その結果、コア3の製造のためのコストを大幅に削減することができる。
【0036】
図2から4は、それぞれアーマチュア5を単独位置で示す。アーマチュア5には、軸受部5.2が設けられている。軸受部5.2は軸受領域5.3を有し、これによって、アーマチュア5は、駆動ユニット2の本体6内に枢動可能に載置されている。アーマチュア5の枢動可能な取り付けにより、アーマチュア5は、上述した枢動位置、すなわち、詳細には、アーマチュア5が磁極面3.1、3.1’に平行に延びる平面から外に枢動する第2の枢動位置と、アーマチュア5の長手方向軸がコア3の磁極面3.1、3.1’が位置する平面と平行に延びる第1の枢動位置とを取ることができる。
【0037】
軸受部5.2は、アーマチュア5の第1の自由端に設けられている。軸受部5.2に設けられた軸受領域5.3は、好ましくは、軸受部5.2の外部に形成された滑り軸受領域を形成する。軸受領域5.3は、本体6に設けられた滑り軸嵌合面6.1.1と相互作用する。軸受部5.2は、軸受部5.2とアーマチュア支持部6.1との間に平面軸受が形成されるように、すなわち軸受領域5.3が滑り軸受嵌合面6.1.1に当接するように、本体6のアーマチュア支持部の中に挿入され、その結果としてアーマチュア5の枢動軸方向の取り付けが達成される。
【0038】
軸受部5.2の軸受領域5.3は、外周の断面が円弧形状である、すなわち湾曲した摺動面を形成する。軸受領域5.3は、軸受領域5.3と逆の形状を有するアーマチュア支持部6.1の凹状の滑り軸受嵌合面6.1.1に相互連結する。その結果、アーマチュア5は、コア3の磁極面3.1,3.1’が配置される平面と平行に延在する、又はアーマチュア5の長手方向軸LAと垂直に延在する枢動軸SAの周りに回動することができる。これにより、アーマチュア5は、
図1に示す上部磁極面3.1に向かって、又はそこから離れて揺動することができる。
【0039】
アーマチュア5の軸受部5.2の反対側には、連結部(linking portion)5.4が設けられている。アーマチュア5は、この連結部5.4を介してバルブ閉鎖体8に結合されている。連結部5.4は、例えば、バルブ閉鎖体8の一部、詳細には自由端側面部が係合する凹部を有する。原理的には逆の設計も考えられる、すなわち、バルブ閉鎖体8が、連結部5.4の突出部が係合する凹部を有する設計である。連結部5.4を用いたアーマチュア5とバルブ閉鎖体8との間の結合は、詳細には、連結部5.4がバルブ閉鎖体8をアーマチュア5に対して枢動させることができるように設計されている。図示の例示的な実施形態では、これは、アーマチュア5とバルブ閉鎖体8との間の枢動継手のような結合によって達成される。
【0040】
連結部5.4は、例えば、アーマチュア5のフック形の突出部に設けられ、この突出部は、アーマチュア5の後側5bから突出している。後側5bは、コア3の磁極面3.1、3.1’に向かい合うアーマチュア5の前側5aの反対側に位置する。従って、バルブ閉鎖体8に対するアーマチュア5の場所を取らない結合を実現することができる。
【0041】
好ましくは、バルブ閉鎖体8は、角度付き構造であり、第1及び第2の脚部8.1、8.2を有する。脚部8.1、8.2の長手方向軸は、例えば、互いに80°と100°との間の角度を囲む。詳細には、脚部8.1、8.2の長手方向軸の間の角度は、90°又は実質的に90°である。この場合、第1の脚部8.1はバルブハウジングの中に延び、第2の脚部8.2はアーマチュア5の長手方向軸LAと実質的に平行に延在する。第2の脚部8.2の自由端は、アーマチュア5とバルブ閉鎖体8との間の機械的結合を構築するために、連結部分5.4を介してアーマチュア5に結合される。好ましくは、バルブ閉鎖体8は、第2の脚部8.2を用いてアーマチュア5に直接、すなわち追加の中間要素なしで結合される。
【0042】
詳細には、アーマチュア5は、アーマチュアキャリア5.1を備える。このアーマチュアキャリア5.1は、磁極面の間の磁気結合のために機能する、アーマチュア5の金属部品を収容する。詳細には、アーマチュアキャリア5.1の一部は、軸受部5.2及び連結部5.4を形成する。
【0043】
例えば、
図1に示すように、アーマチュア5は、以下アーマチュアシート5.5と呼ぶ、層状に配置された複数の平板材ピースを有する。アーマチュアシート5.5は、具体的には、金属平板材、詳細には金属シートで作られている打ち抜き部品である。アーマチュア5を形成するために、シートは、その平坦面が他方の上部に合同様式で位置付けられ、複数のアーマチュアシート5.5を有するスタック(いわゆる層状アーマチュア)が作り出されるようになっている。個々のアーマチュアシート5.5は、ここでは、互いに直接、導電的に当接するので、層状アーマチュア5は、一体に形成されたアーマチュアコアと同じ又は実質的に同じ電気特性を有する。その結果、アーマチュア5の製造のためのコストを大幅に削減することができる。
【0044】
アーマチュアシート5.5は、アーマチュアキャリア5.1によって部分的に取り囲まれ、その結果、互いに相対的に固定される。換言すれば、アーマチュアキャリア5.1は、結果としてアーマチュアシート5.5の支持体として使用される。好ましくは、アーマチュアキャリア5.1は、プラスチック射出成形部品として設計される。例えば、アーマチュアシート5.5は、射出成形金型に挿入され、その後、射出成形法によりプラスチック材料で部分的にオーバーモールドされる。このようにして、アーマチュア5のコスト効率の高い製造を実現することができる。
【0045】
図2から4で分かるように、アーマチュアキャリア5.1は、コア3の磁極面3.1、3.1’に向かい合うアーマチュア5の前側上にアーマチュアシート5.5のための少なくとも1つの保持部5.1.1を有する。この保持部5.1.1は、アーマチュアシート5.5に沿ってアーマチュア5の長手方向軸LAに対して横方向に延び、それによってこれらを固定する。好ましくは、保持部5.1.1は、ストリップ形の設計であり、アーマチュア5の中央領域に設けられるので、保持部5.1.1は、磁極面5.1、5.1’の間に置かれるようになる。好ましくは、駆動ユニット2の本体6には、少なくとも1つの保持部5.1.1と相互作用する凹部が設けられ、その凹部の中には、磁気駆動ユニット2が通電された場合に保持部5.1.1を挿入することができる。
【0046】
例えば、軸受部5.2には、スロット状の凹部5.2.1が設けられる。詳細には、軸受部5.2の反対側の2つの側面(枢動軸SAに沿って見た場合)の各々に1つの凹部5.2.1が設けられる。これらの凹部5.2.1の各々は、アーマチュア5を非通電状態でアーマチュア5が取る第1の枢動位置に戻すために用いられる、ばね7の自由端を受け入れるように設計されている。
【0047】
図2及び3に示すように、ばね7は板ばねとして設計されている。これは、自由端が凹部5.2.1に固定され、軸受部5.2から上向きに突出する。詳細には、ばね7は、アーマチュア5と等しいか又は実質的に等しい長さを有する。好ましくは、軸受部5.2の2つの反対側(枢動軸SAに沿って見て)に配置される一対のばね7が設けられている。このようにして、アーマチュア5への力の均一な導入が達成される。
【0048】
特に
図4から分かるように、各側面には一対の凹部5.2.1が設けられている。ここでの凹部5.2.1は、スロット状の構造であり、板ばねを一対の凹部5.2.1の中に挿入できるように、互いに180度反対である。ここでは、凹部5.2.1は、アーマチュア5の長手方向軸LAに対して斜めに延びるように配置されており、ばね7の長手方向軸は、同様にアーマチュア5の長手方向軸LAに対して斜めに延び、アーマチュア5の前側5aに広がる平面の方向に傾斜するようになっている。ばね7のこの傾斜配置に起因して、コイル4の通電及びそれに関連するアーマチュア5のコア3の磁極面3.1、3.1’への枢動の間に、ばね7は、そのばね力に逆らって変形する。この変形に起因するばね力により、コイル4への通電が終了した後、アーマチュア5は、その第1の枢動位置、すなわち磁極面3.1から離れる位置まで反対に枢動する。
【0049】
上述したように、射出成形プロセスにおいて、アーマチュアキャリア5.1、従って軸受部5.2は、凹部5.2.1と共に製造される。好ましくは、射出成形金型は、調整装置を有し、その調整装置によって射出成形金型内の突出部の傾斜位置を変えることができ、これにより凹部5.2.1が製作される。凹部5.2.1の傾斜位置に応じて、同じばね7を使用してもアーマチュア5の復元力を変更することができるので、駆動ユニット2は、同一寸法のばね7が使用されるとしても異なる復元力を必要とする流体バルブ1の場合に使用できる。
【0050】
好ましくは、アーマチュア5は、アーマチュア支持体6.1に停止部なしで保持される、すなわち、アーマチュア5の枢動運動は、第1の枢動位置又は第2の枢動位置のいずれにおいても、アーマチュア5を取り囲む構成要素に対して当接するアーマチュア部分によって制限されない。アーマチュア5の枢動運動の制限は、むしろバルブ閉鎖体8によって引き起こされ、バルブ閉鎖体8は、アーマチュア5の枢動位置に応じて、バルブハウジング9の接触面に対して当接するようになる。この接触面は、詳細には、バルブハウジング9に形成されたバルブシートとすることができる。コイル4を通って電流が流れる場合に想定されるアーマチュア5の第2の枢動位置においても、アーマチュア5、詳細にはアーマチュアシート5.5は、磁極面3.1、3.1’から相隔たることに留意されたい。この距離は、アーマチュア5への可能な限り高い力の導入を達成するために、好ましくは1mm未満、詳細には0.5mm未満である。
【0051】
本発明は、例示的な実施形態を用いて上述されている。多くの修正例及び変形例は、特許請求の範囲によって定義される保護範囲から逸脱することなく可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0052】
1 流体バルブ
2 駆動ユニット
3 コア
3.1、3.1’ 磁極面
4 コイル
5 アーマチュア
5a アーマチュアの前側
5b アーマチュアの後側
5.1 アーマチュアキャリア
5.1.1 保持部
5.2 軸受部
5.2.1 凹部
5.3 軸受領域
5.4 連結部
5.5 アーマチュアシート
6 本体
6.1 アーマチュア支持部
6.1.1 滑り軸受嵌合面
6.2 凹部
7 ばね
8 バルブ閉鎖体
8.1 第1の脚
8.2 第2の脚
9 バルブハウジング
LA アーマチュアの長手方向軸
SA アーマチュアの枢動軸