(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-05
(45)【発行日】2024-07-16
(54)【発明の名称】擬似切替えを低減した磁場センサおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240708BHJP
【FI】
G01D5/245 B
(21)【出願番号】P 2022503548
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 US2020038025
(87)【国際公開番号】W WO2021021333
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-12-19
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】デビッド,ポール・エイ
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ウィリアム・ピー
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-045256(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041006(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0162784(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0096723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 ~ 5/252
G01R 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事前決定された動きで動くように動作可能であり、動きを停止するように動作可能な磁石に反応する磁場センサであって、
基板と、
前記基板上に形成された第1の磁場検知素子であって、前記第1の磁場検知素子が第1の磁気抵抗素子を備え、前記第1の磁場検知素子が前記磁石に反応する、第1の磁場検知素子と、
前記基板上に形成された第2の磁場検知素子であって、前記第2の磁場検知素子が第2の磁気抵抗素子を備え、前記第2の磁場検知素子が前記磁石に反応し、前記磁石が動きを停止している間に前記第1および第2の磁場検知素子に対する前記磁石の1つまたは複数の位置において、前記第1の磁場検知素子または前記第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つが、前記磁石に反応して飽和状態に入る、第2の磁場検知素子と、
前記基板上に形成され、前記第1および第2の磁場検知素子に最も近い第3の磁場検知素子であって、前記第3の磁場検知素子が、前記磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成するように動作可能であり、前記磁石が動きを停止している間に前記1つまたは複数の位置において、前記第3の磁場検知素子が前記磁石に反応して飽和状態に入らないか、または前記磁石に反応して前記第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する、第3の磁場検知素子と、
前記第3の磁場検知素子に結合されたウィンドウ比較回路であって、前記ウィンドウ比較回路が上限しきい値および下限しきい値に反応し、前記ウィンドウ比較回路が、前記第3の磁場検知素子信号が前記上限しきい値と前記下限しきい値との間のウィンドウの外部にあることを示す第1の状態、および前記第3の磁場検知素子信号が前記ウィンドウの内部にあることを示す第2の状態を有する信号を生成するように動作可能であり、前記第1の状態においては、高い状態の禁止
フラグが生成され、前記第2の状態においては、低い状態の禁止
フラグが生成される、
ウィンドウ比較回路と、
を備える、磁場センサ。
【請求項2】
前記第1および第2の磁場検知素子に結合された差分回路であって、前記差分回路が、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するように動作可能であり、前記差分回路がアナログ回路またはデジタル回路を備える、差分回路をさらに備える、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項3】
前記第1および第2の磁場検知素子がブリッジ回路内で結合され、前記ブリッジ回路が、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差動信号を生成するように動作可能であり、前記第1の磁場検知素子および前記第2の磁場検知素子が、共通の磁場に反応して前記差動信号に影響を及ぼす、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項4】
前記第3の磁場検知素子が、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つを備える、請求項3に記載の磁場センサ。
【請求項5】
前記第1および第2の磁場検知素子に結合された差分回路であって、前記差分回路が、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するように動作可能であり、前記差分回路がアナログ回路またはデジタル回路を備える、差分回路と、
前記差分回路に結合され、前記差分信号を1つまたは複数の検出器しきい値と比較するように動作可能であり、前記比較に応答して2状態検出器信号を生成するように動作可能な検出器回路であって、前記2状態検出器信号が、前記差分信号が前記1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および前記差分信号が前記1つまたは
複数の検出器しきい値を下回るときの前記第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有し、前記2状態検出器信号に関係する信号が、前記ウィンドウ比較回路によって生成された前記第1の状態によって禁止される、検出器回路と
をさらに備える、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項6】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約50ガウスの磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-50ガウスの磁場を表す、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項7】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項8】
前記第3の磁場検知素子が平面ホール素子を備える、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項9】
前記第3の磁場検知素子が垂直ホール素子を備える、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項10】
前記第3の磁場検知素子がAMR素子を備える、請求項1に記載の磁場センサ。
【請求項11】
事前決定された動きで動くように動作可能であり、動きを停止するように動作可能な磁石に反応する磁場センサの使用方法であって、前記磁場センサが、
基板と、
前記基板上に形成された第1の磁場検知素子であって、前記第1の磁場検知素子が第1の磁気抵抗素子を備え、前記第1の磁場検知素子が前記磁石に反応する、第1の磁場検知素子と、
前記基板上に形成された第2の磁場検知素子であって、前記第2の磁場検知素子が第2の磁気抵抗素子を備え、前記第2の磁場検知素子が前記磁石に反応し、前記磁石が動きを停止している間に前記第1および第2の磁場検知素子に対する前記磁石の1つまたは複数の位置において、前記第1の磁場検知素子または前記第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つが、前記磁石に反応して飽和状態に入る、第2の磁場検知素子と、
前記基板上に形成され、前記第1および第2の磁場検知素子に最も近い第3の磁場検知素子を備え、
前記方法が、
前記第3の磁場検知素子で前記磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成するステップであって、前記磁石が動きを停止している間に前記1つまたは複数の位置において、前記第3の磁場検知素子が前記磁石に反応して飽和状態に入らないか、または前記磁石に反応して前記第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する、ステップと
前記第3の磁場検知素子が上限しきい値と下限しきい値との間のウィンドウの外部にあることを示す第1の状態、および前記第3の磁場検知素子が前記ウィンドウの内部にあることを示す第2の状態を有する信号を生成するステップであって、前記第1の状態においては、高い状態の禁止
フラグが生成され、前記第2の状態においては、低い状態の禁止
フラグが生成される、ステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記第1および第2の磁場検知素子に差分回路が結合されており、前記差分回路がアナログ回路またはデジタル回路であり、
前記差分回路で、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2の磁場検知素子がブリッジ回路内で結合されており、前記方法が、
前記ブリッジ回路で、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差動信号を生成するステップであって、前記第1の磁場検知素子および前記第2の磁場検知素子が、共通の磁場に反応して前記差動信号に影響を及ぼす、ステップ
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第3の磁場検知素子が、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2の磁場検知素子に差分回路が結合されており、前記差分回路がアナログ回路またはデジタル回路であり、
前記差分回路で、前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するステップと、
前記差分信号を1つまたは複数の検出器しきい値と比較するステップと、
前記比較に応答して、2状態検出器信号を生成するステップであって、前記2状態検出器信号が、前記差分信号が前記1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および前記差分信号が前記1つまたは複数の検出器しきい値を下回るときの前記第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有し、前記2状態検出器信号に関係する信号が、前記第1の状態によって禁止される、ステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の磁場検知素子が平面ホール素子を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第3の磁場検知素子が垂直ホール素子を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の磁場検知素子がAMR素子を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
動くように動作可能な磁石に反応する磁場センサであって、
第1の磁場検知素子で前記磁石に反応して第1の磁場検知素子信号を生成するための手段であって、前記第1の磁場検知素子が第1の磁気抵抗素子を備える、手段と、
第2の磁場検知素子で前記磁石に反応して第2の磁場検知素子信号を生成するための手段であって、前記第2の磁場検知素子が第2の磁気抵抗素子を備え、前記磁石が動きを停止している間に前記第1および第2の磁場検知素子に対する前記磁石の1つまたは複数の位置において、前記第1の磁場検知素子または前記第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つが、前記磁石に反応して飽和状態に入る、手段と、
第3の磁場検知素子で前記磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成するための手段であって、前記1つまたは複数の位置において、前記第3の磁場検知素子が前記磁石に反応して飽和状態に入らないか、または前記磁石に反応して前記第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する、手段と、
前記第3の磁場検知素子が上限しきい値と下限しきい値との間のウィンドウの外部にあることを示す第1の状態、および前記第3の磁場検知素子が前記ウィンドウの内部にあることを示す第2の状態を有する信号を生成するための手段であって、前記第1の状態においては、高い状態の禁止
フラグが生成され、前記第2の状態においては、低い状態の禁止
フラグが生成される、手段と
を備える、磁場センサ。
【請求項22】
前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差分信号を生成するための手
段
をさらに備える、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項23】
前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するための手段であって、前記第1の磁場検知素子および前記第2の磁場検知素子が、共通の磁場に反応して前記差分信号に影響を及ぼす、手段
をさらに備える、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第3の磁場検知素子が、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つを備える、請求項23に記載の磁場センサ。
【請求項25】
前記第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差分信号を生成するための手段と、
前記差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および前記差分信号が前記1つまたは複数の検出器しきい値を下回るときの前記第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有する2状態検出器信号を生成するための手段であって、前記2状態検出器信号に関係する信号が前記第1の状態によって禁止される、手段と
をさらに備える、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項26】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項27】
前記上限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表し、前記下限しきい値が、前記第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項28】
前記第3の磁場検知素子が平面ホール素子を備える、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項29】
前記第3の磁場検知素子が垂直ホール素子を備える、請求項21に記載の磁場センサ。
【請求項30】
前記第3の磁場検知素子がAMR素子を備える、請求項21に記載の磁場センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、磁場センサに関し、より詳細には、切替え信号を生成し、切替え信号の擬似切替えを低減または除去するように動作可能な磁場センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ホール効果素子および磁気抵抗素子を含む、様々なタイプの磁場センサ素子が知られている。磁場センサは、一般に、磁場検知素子および他の電子部品を含む。いくつかの磁場センサは、以下でより十分に記載される、いわゆる「バックバイアス」装置内の永久磁石(強磁性体)も含む。他の磁場センサは、磁石、たとえば、交互のN極とS極を有するリング磁石の動きを検知する。
【0003】
磁場センサは、検知された磁場を表す電気信号を供給する。磁石(バックバイアス装置)を有するいくつかの実施形態では、検知された磁場は磁石によって生成された磁場であり、その場合、動いている強磁性体の存在下で、磁石によって生成され、磁場センサによって検知された磁場は、動いている強磁性体の形状または外形に従って変化する。
【0004】
対照的に、動いている磁石(たとえば、交互のN極とS極を有するリング磁石)を検知する磁場センサは、磁石の動きに起因する磁場の大きさおよび方向の変動を直接検知する。
【0005】
いくつかの装置では、リング磁石(たとえば、強磁性リング磁石)は、対象物、たとえば、エンジン内のカムシャフト上に設置することができる。したがって、動いているリング磁石の検出によって検知されるのは、対象物(たとえば、カムシャフト)の回転である。
【0006】
リング磁石の動きを検知する磁場センサは、たとえば、自動車用途において、点火タイミング制御、燃料管理、アンチロックブレーキシステム、車輪速度センサ、および他の動作のためのエンジン制御プロセッサに情報を提供するために使用される。
【0007】
リング磁石の動きを検知する磁場センサによってエンジン制御プロセッサに提供される情報は、限定はしないが、対象物(たとえば、カムシャフト)が回転するときの絶対回転角度、回転速度、および回転方向を含むことができる。
【0008】
いくつかのタイプの磁気抵抗素子、たとえば、GMR素子は、かなり低いレベルの、たとえば約50ガウスを超える磁場で飽和する転移特性を有することが知られている。対照的に、ホール素子は、かなり高い磁場で飽和する。AMR素子もGMR素子より高い磁場で飽和する。
【0009】
多くの磁場センサは、差動装置で結合されたより多くの磁場検知素子のうちの2つを使用することも知られている。差動装置は、一般に、外部(望まない、たとえば、ノイズ)の磁場が存在するときの磁場センサに対する有益な効果を提供する。本質的に、ノイズ信号は、差動装置の両方の信号によっておおよそ等しく受信され、信号の差分が加えられると、ノイズ信号は取り消される傾向がある。
【0010】
しかしながら、差動装置の一方の側が飽和すると、上記の取消が実現されず、ノイズ信号が差動装置の下流の回路に伝搬することが可能になる。
差動装置の一方の側が飽和し、他方の側が飽和しない状況の特定の例は、2つ(以上)の磁気抵抗素子によってリング磁石が検知され、磁気抵抗素子のうちの1つが飽和し、もう1つが飽和しない位置でリング磁石が回転を停止するときに発生する。そのような状態は、それに対する反応が望ましくない外部信号またはノイズ信号を磁場検知素子内の回路が処理する結果になる場合がある。
【0011】
いくつかの磁場センサは、2状態(すなわち、切替え)信号を生成する。差動装置の場合、2つの状態のうちの第1の状態は、2つ(以上)の磁気抵抗素子のうちの第1の磁気抵抗素子がリング磁石の第1の極(たとえば、N極)に最も近く、2つ(以上)の磁気抵抗素子のうちの第2の磁気抵抗素子がリング磁石の第2の極(たとえば、S極)に最も近いときに実現され得る。2つの状態のうちの第2の状態は、逆の状況が発生したとき、たとえば、磁気抵抗素子のうちの第2の磁気抵抗素子がリング磁石の第1の極(たとえば、N極)に最も近く、磁気抵抗素子のうちの第1の磁気抵抗素子がリング磁石の第2の極(たとえば、S極)に最も近いときに実現され得る。したがって、差動装置は、2つの磁場検知素子がリング磁石のN極とS極との間のエッジを囲むときに遷移が発生する、いわゆる「エッジ検出器」をもたらすことは明らかなはずである。
【0012】
2状態信号の遷移率は、リング磁石の回転速度を示すことができる。
差動装置の一方の側が飽和し、他方の側が飽和しない状況の上述された例の場合、たとえば、リング磁石の特定の停止位置の場合、上述された2状態信号は、リング磁石が動いていないが、外部またはノイズの磁場によって乱されたときでも、2つの状態の間を交互に切り替わることができることを諒解されたい。そのような切替えは、本明細書では「擬似切替え」と呼ばれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特にリング磁石が停止したときに、リング磁石に反応するが、擬似切替えを低減した、または擬似切替えをもたない、差動装置内の磁気抵抗素子を使用する磁場センサを提供することが望ましいはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特にリング磁石が停止したときに、リング磁石に反応するが、擬似切替えを低減した、または擬似切替えをもたない、差動装置内の磁気抵抗素子を使用する磁場センサを提供する。
【0015】
本発明の態様を理解するのに役立つ一例によれば、事前決定された動きで動くように動作可能であり、動きを停止するように動作可能な磁石に反応する磁場センサは、基板、および基板上に形成された第1の磁場検知素子を含み、第1の磁場検知素子は第1の磁気抵抗素子を備える。第1の磁場検知素子は磁石に反応する。磁場センサは、基板上に形成された第2の磁場検知素子も含み、第2の磁場検知素子は第2の磁気抵抗素子を備える。第2の磁場検知素子も磁石に反応する。第1および第2の磁場検知素子に対する磁石の1つまたは複数の位置において、第1の磁場検知素子または第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つは、磁石に反応して飽和状態に入る。磁場センサは、基板上に形成され、第1および第2の磁場検知素子に最も近い第3の磁場検知素子も含み、第3の磁場検知素子は、磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成するように動作可能であり、磁石が動きを停止している間に1つまたは複数の位置において、第3の磁場検知素子は磁石に反応して飽和状態に入らないか、または磁石に反応して第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する。
【0016】
特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。磁場センサは、第1および第2の磁場検知素子に結合された差分回路を含んでもよく、差分回路は、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するように動作可能であり、差分回路は、アナログ回路またはデジタル回路を含んでもよい。第1および第2の磁場検知素子は、ブリッジ回路内で結合されてもよく、ブリッジ回路は、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差動信号を生成するように動作可能であり、第1の磁場検知素子および第2の磁場検知素子は、共通の磁場に反応して反対方向の差動信号に影響を及ぼす。第3の磁場検知素子は、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つを含んでもよい。磁場センサは、第3の磁場検知素子に結合されたウィンドウ比較回路をさらに含んでもよく、ウィンドウ比較回路は上限しきい値および下限しきい値に反応し、ウィンドウ比較回路は、第3の磁場検知素子信号が上限しきい値と下限しきい値との間のウィンドウの内部にあることを示す第1の禁止状態、および第3の磁場検知素子信号がウィンドウの外部にあることを示す第2の禁止状態を有する禁止信号を生成するように動作可能である。磁場センサは、第1および第2の磁場検知素子に結合された差分回路をさらに含んでもよく、差分回路は、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するように動作可能であり、差分回路が、アナログ回路またはデジタル回路、および差分回路に結合され、差分信号を1つまたは複数の検出器しきい値と比較するように動作可能であり、比較に応答して2状態検出器信号を生成するように動作可能な検出器回路であって、2状態検出器信号が、差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を下回るときの第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有し、2状態検出器信号に関係する信号が、ウィンドウ比較回路によって生成された第1の禁止状態によって禁止される、検出器回路を含んでもよい。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約50ガウスの磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-50ガウスの磁場を表す場合がある。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す場合がある。第3の磁場検知素子は平面ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子は垂直ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子はAMR素子であってもよい。
【0017】
本発明の別の態様を理解するのに役立つ別の例によれば、事前決定された動きで動くように動作可能であり、動きを停止するように動作可能な磁石に反応する磁場センサにおいて使用される方法は、基板上に第1の磁場検知素子を形成することを含み、第1の磁場検知素子は第1の磁気抵抗素子を備える。第1の磁場検知素子は磁石に反応する。方法は、基板上に第2の磁場検知素子を形成することも含み、第2の磁場検知素子は第2の磁気抵抗素子を備える。第2の磁場検知素子も磁石に反応する。磁石が動きを停止している間に第1および第2の磁場検知素子に対する磁石の1つまたは複数の位置において、第1の磁場検知素子または第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つは、磁石に反応して飽和状態に入る。方法は、基板上に、かつ第1および第2の磁場検知素子に最も近く第3の磁場検知素子を形成することも含む。方法は、第3の磁場検知素子で磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成することも含み、磁石が動きを停止している間に1つまたは複数の位置において、第3の磁場検知素子は磁石に反応して飽和状態に入らないか、または磁石に反応して第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する。
【0018】
特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。方法は、第1および第2の磁場検知素子に差分回路を結合することと、差分回路で、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成することとをさらに含んでもよく、差分回路はアナログ回路またはデジタル回路である。第1および第2の磁場検知素子は、ブリッジ回路内で結合されてもよく、方法は、ブリッジ回路で、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差動信号を生成することをさらに含んでもよく、第1の磁場検知素子および第2の磁場検知素子は、共通の磁場に反応して反対方向の差動信号に影響を及ぼす。第3の磁場検知素子は、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つを含んでもよい。方法は、ウィンドウ比較回路で、第3の磁場検知素子が上限しきい値と下限しきい値との間のウィンドウの内部にあることを示す第1の禁止状態、および第3の磁場検知素子がウィンドウの外部にあることを示す第2の禁止状態を有する禁止信号を生成することをさらに含んでもよい。方法は、第1および第2の磁場検知素子に差分回路を結合することと、差分回路で、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成することをさらに含んでもよく、差分回路はアナログ回路またはデジタル回路であり、方法は、差分信号を1つまたは複数の検出器しきい値と比較することと、比較に応答して、差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を下回るときの第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有する2状態検出器信号を生成することをさらに含むことができ、2状態検出器信号に関係する信号は、ウィンドウ比較回路によって生成された第1の禁止状態によって禁止される。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す場合がある。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す場合がある。第3の磁場検知素子は平面ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子は垂直ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子はAMR素子であってもよい。
【0019】
本発明の別の態様を理解するのに役立つ別の例によれば、動くように動作可能な磁石に反応する磁場センサは、第1の磁場検知素子で磁石に反応して第1の磁場検知素子信号を生成するための手段を含み、第1の磁場検知素子は第1の磁気抵抗素子を備える。磁場センサは、第2の磁場検知素子で磁石に反応して第2の磁場検知素子信号を生成するための手段も含み、第2の磁場検知素子は第2の磁気抵抗素子を備える。磁石が動きを停止している間に第1および第2の磁場検知素子に対する磁石の1つまたは複数の位置において、第1の磁場検知素子または第2の磁場検知素子のうちの少なくとも1つは、磁石に反応して飽和状態に入る。方法は、第3の磁場検知素子で磁石に反応して第3の磁場検知素子信号を生成するための手段も含み、1つまたは複数の位置において、第3の磁場検知素子は磁石に反応して飽和状態に入らないか、または磁石に反応して第1および第2の磁場検知素子よりも高い磁場で飽和する。
【0020】
特徴は、単独で、または他の特徴と組み合わせて、以下のうちの1つまたは複数を含んでもよい。磁場センサは、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差分信号を生成するための手段をさらに含んでもよい。磁場センサは、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応の差分に関係する差分信号を生成するための手段をさらに含んでもよく、第1の磁場検知素子および第2の磁場検知素子は、共通の磁場に反応して反対方向の差分信号に影響を及ぼす。第3の磁場検知素子は、平面ホール素子、垂直ホール素子、またはAMR素子のうちの選択された1つであってもよい。磁場センサは、第3の磁場検知素子が上限しきい値と下限しきい値との間のウィンドウの内部にあることを示す第1の禁止状態、および第3の磁場検知素子がウィンドウの外部にあることを示す第2の禁止状態を有する禁止信号を生成するための手段をさらに含んでもよい。磁場センサは、第1および第2の磁場検知素子の磁気反応に関係する差分信号を生成するための手段と、差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を上回るときの第1の検出器状態、および差分信号が1つまたは複数の検出器しきい値を下回るときの第1の検出器状態とは異なる第2の検出器状態を有する2状態検出器信号を生成するために手段であって、2状態検出器信号に関係する信号が第1の禁止状態によって禁止される、手段とをさらに含んでもよい。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す場合がある。上限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約25ガウスと約100ガウスとの間の磁場を表す場合があり、下限しきい値は、第3の磁場検知素子が遭遇する約-25ガウスと約-100ガウスとの間の磁場を表す場合がある。第3の磁場検知素子は平面ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子は垂直ホール素子であってもよい。第3の磁場検知素子はAMR素子であってもよい。
【0021】
本発明の前述の特徴ならびに本発明自体は、以下の図面の詳細説明からより十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】リング磁石に最も近い磁場センサを示すブロック図である。
【
図2】垂直ホール素子を有し、差動装置内に配置された4つの磁気抵抗素子を有し、リング磁石に最も近く配置された磁場センサを示すブロック図である。
【
図3】水平または平面のホール素子を有し、差動装置内に配置された4つの磁気抵抗素子を有し、リング磁石に最も近く配置された磁場センサを示すブロック図である。
【
図4】差動装置内に配置された4つの磁気抵抗素子を示す概略図である。
【
図5】垂直ホール素子、4つの磁気抵抗素子、ピークまたはしきい値検出器、および出力信号を供給する回路を有する磁場センサを示すブロック図である。
【
図6】それらのうちの1つが
図5のピークまたはしきい値検出器として使用され得るピーク検出器およびしきい値検出器を示すブロック図である。
【
図7】磁場センサ内で生成され得る信号を示し、擬似切替えを示すグラフである。
【
図8】磁場センサに最も近いリング磁石が停止したときの
図5の磁場センサ内で生成され得る信号を示し、フラグ信号の動作を示すブロック図である。
【
図9】磁場センサに最も近いリング磁石が回転したときの
図5の磁場センサ内で生成され得る信号を示し、フラグ信号の動作を示すブロック図である。
【
図10】磁場センサに最も近いリング磁石が停止したときの、垂直ホール素子の代わりに平面ホール素子を有する、
図5の磁場センサ内で生成され得る信号を示し、フラグ信号の動作を示すブロック図である。
【
図11】磁場センサに最も近いリング磁石が回転したときの、垂直ホール素子の代わりに平面ホール素子を有する、
図5の磁場センサ内で生成され得る信号を示し、フラグ信号の動作を示すブロック図である。
【
図12】2つの信号チャネルを実現する4つの磁気抵抗素子の交互結合を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を記載する前に、特定の形状(たとえば、リング磁石)、磁場パターン、または磁化パターンを有する磁石を検知するための磁場センサに対して、本明細書において参照が時々行われることに留意されたい。しかしながら、当業者は、本明細書に記載される技法が、様々なサイズおよび形状の検知された磁石、磁場パターン、または磁化パターンに適用可能であることを諒解されよう。
【0024】
本発明を記載する前に、いくつかの前置きの概念および用語が説明される。
本明細書で使用される「磁場検知素子」という用語は、磁場を検知することができる様々な電子素子を記述するために使用される。磁場検知素子は、限定はしないが、ホール効果素子、磁気抵抗素子、または磁気トランジスタであり得る。知られているように、異なるタイプのホール効果素子、たとえば、平面ホール素子、垂直ホール素子、および円形垂直ホール(CVH)素子が存在する。同じく知られているように、異なるタイプの磁気抵抗素子、たとえば、アンチモン化インジウム(InSb)などの半導体磁気抵抗素子、巨大磁気抵抗(GMR)素子、たとえば、スピンバルブ、異方性磁気抵抗素子(AMR)、トンネル型磁気抵抗(TMR)素子、および磁気トンネル接合(MTJ)が存在する。磁場検知素子は単一の素子であってもよく、または代替として、様々な構成、たとえば、ハーフブリッジもしくはフル(ホイートストン)ブリッジで配置された2つ以上の磁場検知素子を含んでもよい。デバイスタイプおよび他の適用要件に応じて、磁場検知素子は、シリコン(Si)もしくはゲルマニウム(Ge)などのタイプIVの半導体素材、またはガリウムヒ素(GaAs)のようなタイプIII~Vの半導体素材、またはインジウム化合物、たとえばアンチモン化インジウム(InSb)から作られたデバイスであってもよい。
【0025】
知られているように、上述された磁場検知素子のうちのいくつかは、磁場検知素子を支持する基板に平行な最大感度の軸を有する傾向があり、上述された磁場検知素子のうちの他は、磁場検知素子を支持する基板に垂直な最大感度の軸を有する傾向がある。詳細には、平面ホール素子は基板に垂直な感度の軸を有する傾向があり、金属ベースまたは金属の磁気抵抗素子(たとえば、GMR、TMR、AMR)および垂直ホール素子は、基板に平行な感度の軸を有する傾向がある。
【0026】
本明細書で使用される「磁場センサ」という用語は、概して他の回路と組み合わせて磁場検知素子を使用する回路を記述するために使用される。磁場センサは、限定はしないが、磁場の方向の角度を検知する角度センサ、通電導体によって運ばれる電流によって生成された磁場を検知する電流センサ、強磁性体の近接度を検知する磁気スイッチ、バックバイアスされた磁石または他の磁石と組み合わせて磁場センサが使用されるところの、通過する強磁性物、たとえば、リング磁石または強磁性体(たとえば、ギヤの歯)の磁区を検知する回転検出器、および磁場の磁界密度を検知する磁場センサを含む様々な用途に使用される。
【0027】
「平行」または「垂直」という用語は、本明細書の様々なコンテキストで使用される。平行および垂直という用語は、正確な直角度または正確な平行度を必要とせず、代わりに、通常の製造公差が適用されることが意図され、その公差は用語が使用されるコンテキストに依存することを理解されたい。いくつかの例では、「実質的に」という用語は、「平行」または「垂直」という用語を修飾するために使用される。一般に、「実質的に」という用語の使用は、たとえば、+/-10度以内の製造公差を超える角度を反映する。
【0028】
本明細書で使用される「ホール素子」という用語は、平面ホール素子または垂直ホール素子のいずれかを記述するために使用される。
本明細書で使用される「プロセッサ」という用語は、機能、動作、または動作のシーケンスを実行する電子回路を記述するために使用される。機能、動作、または動作のシーケンスは、電子回路の中にハードコーディングされるか、またはメモリデバイス内に保持された命令によってソフトコーディングされ得る。「プロセッサ」は、デジタル値を使用して、またはアナログ信号を使用して、機能、動作、または動作のシーケンスを実行することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、「プロセッサ」は、特定用途向け集積回路(ASIC)内で具現化され得、ASICはアナログASICまたはデジタルASICであり得る。いくつかの実施形態では、「プロセッサ」は、関連付けられたプログラムメモリを有するマイクロプロセッサ内で具現化され得る。いくつかの実施形態では、「プロセッサ」は、アナログまたはデジタルであり得る個別電子回路内で具現化され得る。
【0030】
本明細書で使用される「モジュール」という用語は、「プロセッサ」を記述するために使用される。
プロセッサは、プロセッサの機能、動作、または動作のシーケンスの部分を実行する内部プロセッサまたは内部モジュールを含むことができる。同様に、モジュールは、モジュールの機能、動作、または動作のシーケンスの部分を実行する内部プロセッサまたは内部モジュールを含むことができる。
【0031】
本明細書の図に示された電子回路は、アナログブロックまたはデジタルブロックの形態で示される場合があるが、アナログブロックは同じかまたは同様の機能を実行するデジタルブロックによって置き換えられ得、デジタルブロックは同じかまたは同様の機能を実行するアナログブロックによって置き換えられ得ることが理解されよう。アナログデジタル変換またはデジタルアナログ変換は、図に明確に示されていない場合があるが、理解されるべきである。
【0032】
詳細には、いわゆる比較器は、入力信号がしきい値レベルを上回るかもしくは下回ることを示す(または1つの入力信号が別の入力信号を上回るかもしくは下回ることを示す)2状態出力信号を有するアナログ比較器から構成され得る。しかしながら、比較器は、それぞれ、入力信号がしきい値レベルを上回るかもしくは下回ることを示す(または1つの入力信号が別の入力信号を上回るかもしくは下回ることを示す)少なくとも2つの状態、あるいはデジタルしきい値を上回るかもしくは下回るデジタル値(または別のデジタル値)を有する出力信号を有するデジタル回路からも構成され得る。
【0033】
本明細書で使用される「事前決定された」という用語は、値または信号を指すとき、製造時に工場内で、またはその後、外部手段、たとえばプログラミングによって設定または固定された値または信号を指すために使用される。本明細書で使用される「決定された」という用語は、値または信号を指すとき、製造後、動作中に回路によって識別された値または信号を指すために使用される。
【0034】
本明細書で使用される「線」および「線形」という用語は、直線または曲線のいずれかを記述するために使用される。線は、無限よりも小さい任意の次数を有する関数によって記述され得る。
【0035】
図1を参照すると、磁場センサ100は、リング磁石112に最も近く配置されている。磁場センサ100は、第1の主面102aを有する基板102を含む。第1の主面102aは、ページまで延在し、ページから延在する。磁場検知素子104は、基板102の第1の面102aの上または下に配置され得る。電子回路106も、基板102の第1の面102の上または下に配置され得る。電子回路は、磁場検知素子104に結合され得る。
【0036】
リング磁石112は、交互のN極およびS極、たとえば112aを有することができる。
リング磁石は、デカルト座標110のx-z平面内で回転軸118のまわりを方向114に回転するように動作可能であり得る。第1の面102aは、x-z平面内に配置され得る。
【0037】
磁場センサ100は、磁場センサ100の異なる方位の範囲にわたって動作可能であり得る。たとえば、磁場センサ100は、おおよそ±45度の角度を介して線120のまわりのx-y平面内で回転することができる。磁場センサは、おおよそ±45度の角度を介して線122によって表されたx-y平面内で傾斜することもできる。
【0038】
いくつかの実施形態では、磁場検知素子104は、以下により十分に記載される、磁気抵抗素子と、ホール素子、垂直ホール素子、または平面ホール素子の組合せを含むことができる。
【0039】
図2を参照すると、磁場センサ200は、
図1の磁場センサ100と同じかまたは同様であり得る。磁場センサ200は、第1の主面202aを有する基板202を含むことができる。4つの磁気抵抗素子204、206、210、212は、第1の面202aの上または中に配置され得る。いくつかの実施形態では、4つの磁気抵抗素子磁気抵抗素子204、206、210、212はGMR素子であり得、GMR素子は、高い感度を有するが、かなり低い飽和磁場、たとえば、+/-50ガウスを有する。
【0040】
垂直ホール素子214は、磁気抵抗素子204、206のペアと磁気抵抗素子210、212のペアとの間に配置され得る。垂直ホール素子は、GMR素子の飽和レベルよりもかなり高い磁場で飽和することが知られている。上述されたように、磁気抵抗素子204、206、210、212は、基板202の第1の主面202aに平行であり、リング磁石220への接線に平行な直線216と位置合わせされた最大反応軸を有する。同じく上述されたように、垂直ホール素子214は、基板202の第1の主面202aに平行であり、同じく直線216と位置合わせされた最大反応軸を有する。
【0041】
リング磁石220は、
図1のリング磁石112と同じかまたは同様であり得る。リング磁石220は、明確にするために、ここでは二点鎖線で示されているが、表面202aの上に配置され得る。リング磁石220の1つの極は幅222を有することができる。磁気抵抗素子204、206のペアの中心と磁気抵抗素子210、212のペアの中心との間の距離は、リング磁石220の極の幅222とおおよそ同じであり得る。
【0042】
磁場センサ200も、磁気抵抗素子204、206、210、212に結合され、垂直ホール素子214にも結合され得る電子回路218を含むことができる。
磁気抵抗素子204、206、210、212はまた、それぞれ、文字A、B、C、Dで指定される。垂直ホール素子214はまた、文字Eで指定される。それらの文字は、下記の他の図で使用される。
【0043】
次に、その中で同様の参照名称を有する
図2の同様の要素が示された
図3を参照すると、磁場センサ300は、第1の主面302aを有する基板302を含むことができる。
図2の磁場センサ200とは異なり、磁場センサ300は、
図2の磁場センサ200の垂直ホール素子214の代わりに、同様に文字Fで指定された平面ホール素子306を含むことができる。上述されたように、平面ホール素子214は、基板202の第1の主面202aに垂直であり、直線216と交差する最大反応軸を有する。平面ホール素子は、GMR素子の飽和レベルよりもかなり高い磁場で飽和することが知られている。
【0044】
磁場センサ300も、磁気抵抗素子204、206、210、212に結合され、平面ホール素子306にも結合され得る電子回路304を含むことができる。
垂直ホール素子214および平面ホール素子306が
図2および
図3に示されているが、他のタイプの磁場検知素子が中心位置に配置され得る。中心位置に配置されるどのタイプの磁場検知素子も、磁気抵抗素子204、206、210、212ができるよりも高いレベルの磁場にある磁場を正確に検知するように動作可能であり得る。言い換えれば、中心位置に配置された磁場検知素子は、外側の磁気抵抗素子よりも実質的に高い磁場で飽和することができる。AMRは、中心位置に配置され得る別のタイプの磁場検知素子の一例である。
【0045】
次に
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、4つの磁気抵抗素子404、406、408、410は、電圧源402と基準電圧、たとえばアースとの間のホイートストンブリッジ配置400内で結合され得る。4つの磁気抵抗素子404、406、408、410も、
図2および
図3の、それぞれ、4つの磁気抵抗素子204、206、210、212に対する同様の文字指定によれば、文字A、B、C、Dによって識別される。したがって、文字指定は、4つの磁気抵抗素子404、406、408、410の物理配置を示すことができる。
【0046】
ホイートストンブリッジ配置400は、V1、V2とも表される、差動電圧412、414を生成することができる。差動装置の利点が上述されている。磁気抵抗素子の飽和も上述されており、差動装置の利点を覆すことができる。
【0047】
4つの磁気抵抗素子404、406、408、410が示されているが、他の実施形態では、2つの磁気抵抗素子406、408のみが使用され、磁気抵抗素子404、410は、ここで、また下記の
図5において固定値の抵抗器と置き換えられる。さらに他の実施形態では、2つの磁気抵抗素子404、410のみが使用され、磁気抵抗素子406、408は、ここで、また下記の
図5において固定値の抵抗器と置き換えられる。
【0048】
次に
図5を参照すると、磁場センサ500は、
図2の磁場センサ200と同じかまたは同様であり得る。
ここで、文字A、C、B、Dで指定された4つの磁気抵抗素子は、同じ文字指定を有する
図2の4つの磁気抵抗素子204、206、210、212と同じかまたは同様であり得る。4つの磁気抵抗素子A、C、B、Dは、ホイートストンブリッジ配置内に配置され、ホイートストンブリッジ配置は、
図4のホイートストンブリッジ配置400と同じかまたは同様であり得る。4つの磁気抵抗素子A、C、B、Dは、差動電圧504a、504bを生成することができ、それらは、
図4の差動電圧412、414と同じかまたは同様であり得る。
【0049】
差分回路508は、差動電圧504a、504bを受け取ることができ、差分信号508aを生成することができる。差分信号508aは、ここではDIFF信号とも呼ばれる。差分回路508は、1より大きいか、1より小さいか、または1の利得を有することができる。他の実施形態では、差分回路508は、アナログデジタル変換器(図示せず)が前に付くデジタル回路である。
【0050】
ピークまたはしきい値検出器モジュール510は、差分信号508aを受信することができ、比較信号510aを生成することができる。ピークまたはしきい値検出器モジュール510は、
図6と連携して以下により十分に記載される。ここでは、しきい値検出器モジュール510のピークは、差分信号508aのピーク間範囲内の1つまたは複数のしきい値を識別するように動作可能であり得、1つまたは複数のしきい値を差分信号508aと比較して、差分信号508aが1つまたは複数のしきい値を横断するときに状態を変化させる2状態信号として比較信号510aを生成することができる、と言うに留めておく。比較信号510aの状態の変化率は、磁場センサ500に最も近いリング磁石(たとえば、
図1の112)の回転速度を示すことが明らかである。
【0051】
比較信号510aはフォーマットモジュール512によって受信され得、フォーマットモジュール512はフォーマット化された出力信号512aを生成するように動作可能であり得る。いくつかの実施形態では、フォーマット化された出力信号512aは、パルス、たとえば、45マイクロ秒のパルスを含むことができ、各パルスは比較信号510aの遷移ごとに生成される。他の実施形態では、フォーマット化された出力信号512aは、異なるフォーマット、たとえば、SENTフォーマット、PWMフォーマット、またはI2Cフォーマットを有する。
【0052】
ピークまたはしきい値検出器モジュール510はまた、差分信号508aのピーク間値を示すピーク間信号510bを生成するように動作可能であり得る。ピークまたはしきい値検出器モジュール510はまた、差分信号508aのオフセット値を示すオフセット信号510cを生成するように動作可能であり得る。
【0053】
自動利得制御モジュール516は、ピーク間信号510bを受信するために結合され得、差分回路508の利得を制御するために利得制御信号516aを生成するように動作可能であり得る。自動オフセット調整モジュール514は、オフセット信号510cを受信するために結合され得、差分回路508のオフセット電圧を制御するためにオフセット制御信号514aを生成するように動作可能であり得る。
【0054】
磁場センサ500は、文字Eで識別された垂直ホール素子に結合されたウィンドウ比較器518を含むことができる。ウィンドウ比較器518は、出力禁止信号518aを生成することができる。出力禁止信号518aは、ピークまたはしきい値検出器モジュール510もしくはフォーマットモジュール512のうちの1つまたは両方に結合され得る。
【0055】
動作中、ウィンドウ比較器518と一緒に垂直ホール素子Eは、磁気抵抗素子A、CまたはB、Dのペアのうちの1つまたは両方を飽和状態に入れるのに十分大きい磁場を垂直ホール素子Eが検知したときを識別することができ、飽和状態によりホイートストンブリッジ配置の差動装置が差動回路として不正確に機能するようになる。したがって、上述されたように、外部磁場または浮遊磁場は、差動装置によって取り消されない場合があり、比較信号510aは、磁場センサ500に最も近いリング磁石が動いていないときでも、状態変化を有する場合がある。しかしながら、出力禁止信号518aの動作は、垂直ホール素子Eによって検知された磁場が磁気抵抗素子A、CまたはB、Dのペアのうちの1つまたは両方を飽和させるのに十分大きいときに、比較信号510aおよび/または出力信号512aの状態遷移を無効にするか、またはさもなければ禁止する。
【0056】
ウィンドウ比較器518のしきい値は、垂直ホール素子Eが遭遇する、+/-30ガウス、+/-40ガウス、+/-50ガウス、+/-60ガウス、+/-70ガウス、または+/-100ガウスに対応することができ、それらを超えると、出力禁止信号518aは第1の状態を想定し、それら以内では、出力禁止信号518aは第2の異なる状態を想定する。
【0057】
図示されていないが、いくつかの実施形態では、垂直ホール素子Eとウィンドウ比較器518との間に増幅器が結合され得る。
いくつかの実施形態では、磁場センサ500は、1つまたは複数のウィンドウ比較器のしきい値を保持するために、メモリ、たとえば、不揮発性メモリ、たとえば、EEPROMを含むことができる。いくつかの実施形態では、信号522は、たとえば、上記に列挙された磁場の範囲のうちの1つまたは複数に従って、磁場センサ500の外部からメモリ520に1つまたは複数のウィンドウ比較器のしきい値を供給することができる。選択されたしきい値520aは、磁場センサ500が使用される用途に応じて、ウィンドウ比較器518によって使用され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、磁場センサ500は、ピークまたはしきい値検出器510からの、検知された磁場を示す信号510dを受信するために結合されたしきい値プロセッサ524を含むことができる。しきい値プロセッサ524は、信号510dを使用して、検知された磁場に従って1つまたは複数のウィンドウ比較器のしきい値のうちの適切な1つを選択するように動作可能であり得る。メモリ520は、しきい値プロセッサによって生成された信号524aに従ってウィンドウ比較器のしきい値520aを供給することができる。
【0059】
磁気抵抗素子A、CまたはB、Dのペアのうちの1つまたは両方の飽和は、磁場センサ500に最も近いリング磁石の磁極に反応して発生する可能性がある。下記の
図7から、リング磁石が回転していないときの飽和が特に問題であることが明らかになる。
【0060】
いくつかの他の実施形態では、垂直ホール素子Eは、平面ホール素子、たとえば、
図3の平面ホール素子306、Fと置き換えられ得る。他の実施形態では、AMR素子が使用され得る。磁気抵抗素子A、B、C、Dよりも実質的に高い磁場で飽和する任意の磁場検知素子は、垂直ホール素子Eの代わりに使用され得る。
【0061】
次に
図6を参照すると、ピークおよびしきい値検出器モジュール600は、ピーク検出器モジュールとしきい値検出器モジュールの両方を含む。しかしながら、
図5のピークまたはしきい値検出器モジュール510は、モジュールのうちの1つしか必要としない。
【0062】
DIFF信号とも呼ばれる入力信号604は、
図5の差分信号508aと同じかまたは同様であり得る。
入力信号604は、ピーク比較器642の入力およびしきい値比較器638の入力に結合される。ピーク比較器642はしきい値電圧639も受け取り、しきい値比較器638はしきい値電圧636を受け取る。ピーク比較器642は、2状態信号であり得るピークアウト信号644を生成するように動作可能であり得る。しきい値比較器638は、同じく2状態信号であり得るスレッシュアウト(threshout)信号640を生成するように動作可能であり得る。
【0063】
しきい値電圧636、639は、正のピーク信号626aおよび負のピーク信号628aを受信するために結合された抵抗器分割器632によって生成され得、正のピーク信号626aおよび負のピーク信号628aは、それぞれ、入力信号604の保持された正のピークおよび負のピークを表す。抵抗器分割器632のタップは、ピークアウト信号644、スレッシュアウト信号640、および反転された信号バージョンのピークアウトNおよびスレッシュアウトNによって制御される送信ゲートによって受け取られ得る。したがって、送信ゲートは、高いしきい値電圧との低いしきい値電圧との間を交互に切り替わり、ピーク比較器642およびしきい値比較器638にヒステリシス効果がもたらされる。
【0064】
しきい値電圧639は2つの値の間を切り替え、2つの値のうちの第1の値は、抵抗器分割器632上のタップによって決定された、信号136の正のピークを下回る第1の事前決定された割合であり、2つの値のうちの第2の値は、入力信号604の負のピークを上回る第2の事前決定された割合である。1つの特定の実施形態では、第1および第2の事前決定された割合は、入力信号604のピーク間振幅の約90パーセントおよび約10パーセントである。したがって、しきい値電圧639は、入力信号604の正のピークに比較的近くそれを下回ることができるか、または入力信号604の負のピークに比較的近くそれを上回ることができる。したがって、ピーク比較器642は、入力信号604の正のピークおよび負のピークに密接に関連付けられたエッジを有するピークアウト信号644を生成する。
【0065】
しきい値電圧636も2つの値の間を切り替え、2つの値のうちの第1の値は、入力信号604のピーク間振幅の第1の事前決定された割合であり、2つの値のうちの第2の値は、入力信号604のピーク間振幅の第2の事前決定された割合である。1つの特定の実施形態では、第1の事前決定された割合は、入力信号604のピーク間振幅の約60パーセントであり、第2の事前決定された割合は、入力信号604のピーク間振幅の約40パーセントである。したがって、しきい値比較器638は、入力信号604の正のピークと負のピークとの間の中間点または50%ポイントと比較的密接に関連付けられたエッジを有するスレッシュアウト信号640を生成する。
【0066】
しきい値電圧636のいくつかの実施形態では、50%しきい値のみが使用される。
正のピーク信号626aおよび負のピーク信号628aは、カウンタ624、625、論理回路623、627、正のデジタルアナログ変換器(PDAC)626、負のデジタルアナログ変換器(NDAC)628、および比較器622、630aによって生成される。比較器622は、PDAC626から入力信号604および正のピーク信号626aを受信し、論理回路623およびカウンタ624によって提供されたフィードバックにより、正のピーク信号626a(すなわち、PDAC電圧)に入力信号604の正のピークを追跡および保持させる。同様に、比較器630は、NDAC628から入力信号604および負のピーク信号628aを受信し、論理回路627およびカウンタ625によって提供されたフィードバックにより、負のピーク信号626a(すなわち、NDAC電圧)に入力信号604の負のピークを追跡および保持させる。したがって、正のピーク信号626aと負のピーク信号628aとの間の差動電圧は、入力信号604のピーク間振幅を表す。
【0067】
上記の説明から、しきい値信号639の2つの状態は入力信号604の正のピークおよび負のピークと密接に関連付けられ、しきい値信号636の2つの状態は入力信号604の中間点と密接に関連付けられることを認識されたい。
【0068】
ピークおよびしきい値検出器モジュール600は、正のピーク信号626aおよび負のピーク信号628aを受信するために結合されたピーク間検出器モジュール646も含むことができる。ピーク間検出器モジュール646は、入力信号604のピーク間値を表すピーク間出力信号648を生成するように動作可能であり得る。ピークおよびしきい値検出器モジュール600は、正のピーク信号626aおよび負のピーク信号628aを受信するために結合されたオフセット検出器モジュール650も含むことができる。オフセット検出器モジュール650は、入力信号604のオフセット値を表すオフセット出力信号652を生成するように動作可能であり得る。
【0069】
ピーク間信号出力648は、
図5のピーク間信号510bと同じかまたは同様であり得る。オフセット出力信号652は、
図5のオフセット信号510cと同じかまたは同様であり得る。ピークアウト信号644またはスレッシュアウト信号640は、
図5の比較信号510aと同じかまたは同様であり得る。
【0070】
次に
図7、
図8、
図9、および
図10を参照すると、グラフ700、800、900、1000は、ガウスの磁場単位のスケールを有する垂直軸を有する。グラフ700、800、900、1000は、任意の単位の時間単位のスケールを有する水平軸を有する。しかしながら、水平スケールは、他の単位、たとえば、対象物の回転度であり得る。
【0071】
次に
図7を参照すると、信号702は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジのブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つのペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子204、206、AおよびCによって生成された出力信号を表す。信号702から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206は、約-75ガウスの磁場によって飽和することを認識されたい。
【0072】
信号704は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つの他のペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子210、212、BおよびDによって生成された出力信号を表す。信号704から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212は、約0ガウスの磁場によって飽和しないことを認識されたい。
【0073】
浮遊磁場712、すなわち、AC浮遊磁場(または図示されていないDC浮遊磁場)であり得る磁場は、磁気抵抗素子の2つのペア204、206および210、212が遭遇する。磁気抵抗素子のペアのうちの1つのみ、たとえば、210、212は、浮遊磁場712に対する反応704を示し、したがって、ブリッジ配置内で結合された4つの磁気抵抗素子204、206、210、212は、正確な差動信号、たとえば、
図5の504a、506a、または正確な差分信号、たとえば、
図5の508aを生成しない。
【0074】
差分信号706は、2つの信号702、704の差分を表す。磁気抵抗素子の2つのペアA、CおよびB、Dが同じ信号を生成した場合、差分信号706はAC含量をもたないはずであることを理解されたい。しかしながら、差分信号706はAC含量を有する。
【0075】
差分信号706は、
図5の差分信号508a、または
図6の入力信号もしくは差分信号604と同じかまたは同様であり得る。
差分信号706は浮遊AC磁場712に反応してAC含量を有するので、
図5のピークまたはしきい値検出器510ならびに
図6のピークおよびしきい値検出器600は、しきい値信号708、ここでは、差分信号706のピーク間範囲の50パーセント値にある1つのしきい値信号を生成する。しきい値信号708は
図6のしきい値信号636に匹敵し、それは、差分信号706のピーク間値の50パーセントに近い2つのしきい値の間を切り替えることができるが、ここでは、約50パーセントにある1つのしきい値信号708として示されている。
【0076】
図5の出力禁止信号514aの恩恵を受けずに、切替え信号710(擬似切替え信号)は、磁場センサ500に最も近いリング磁石が回転していないときでも、
図5の比較信号510aおよび
図6のスレッシュアウト信号640として生成される。しかしながら、上記の説明から理解されるように、比較信号510aおよび
図6のスレッシュアウト信号640の遷移は、リング磁石が回転するときの通常動作中に発生し、遷移率は、フォーマットモジュール512によって動作するときの磁場センサ500に最も近いリング磁石の回転速度を示す。したがって、磁場センサ500に最も近いリング磁石が停止したときの切替え信号710(
図5の比較信号510a)の遷移および/または
図5のフォーマットモジュール512の動作は、かなり望ましくない。上述された回路はこの望ましくない挙動を軽減することができる。
【0077】
下記に記載される
図8および
図9は、中心素子E(
図2)を垂直ホール素子として記載する。下記に記載される
図10および
図11は、中心素子F(
図3)を平面ホール素子として記載する。垂直ホール素子も平面ホール素子も、回転しているかまたは停止したリング磁石に反応して飽和しないことが下記に記載される。しかしながら、垂直ホール素子Eもしくは平面ホール素子F、または異なるタイプの中心素子、たとえば、AMR素子は、垂直ホール素子、平面ホール素子、または異なるタイプの中心素子が、
図2および
図3の周囲の磁気抵抗素子A、C、B、Dよりも実質的に高い(たとえば、150パーセントまたは200パーセントの)磁場で飽和する限り、磁石に反応して、かつ/または浮遊磁場に反応して飽和することができることを諒解されたい。
【0078】
次に
図8を参照すると、信号802は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジのブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つのペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子204、206、AおよびCによって生成された出力信号を表す。信号802から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206は、約-60ガウスの磁場によってほとんど飽和し、比較的小さいAC信号のみが信号802内で見られることを認識されたい。停止したリング磁石の他の位置の場合、信号802は少ないAC含量しかもたないか、またはAC含量を全くもたない場合がある。
【0079】
信号804は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の別のペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子210、212、BおよびDによって生成された出力信号を表す。信号804から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212は、約0ガウスの磁場によって飽和せず、より大きいAC信号が見られることを認識されたい。
【0080】
浮遊磁場812、すなわち、(図示されていないDC浮遊磁場でもあり得るが)AC浮遊磁場であり得る磁場は、磁気抵抗素子の2つのペア204、206および210、212が遭遇する。磁気抵抗素子のペアのうちの1つ、たとえば、210、212のみが浮遊磁場812に対する完全反応804を示す。したがって、浮遊磁場812は、磁場検知素子のペア、たとえば、210、212が遭遇した信号804と同じである。
【0081】
差分信号806は、2つの信号802、804の差分を表す。磁気抵抗素子の2つのペアA、CおよびB、Dが同じ信号を生成した場合、差分信号806はAC含量をもたないはずであることを理解されたい。しかしながら、差分信号806はAC含量を有する。
【0082】
差分信号806は、
図5の差分信号508a、または
図6の入力信号もしくは差分信号604と同じかまたは同様であり得る。
差分信号806は浮遊AC磁場812に反応してAC含量を有するので、
図5のピークまたはしきい値検出器510ならびに
図6のピークおよびしきい値検出器600は、たとえば、差分信号806のピーク間値の90パーセントおよび10パーセントにおいて2つのしきい値信号808a、808bを生成する。しきい値信号808a、808bは、
図6のしきい値信号639に匹敵することができ、それは、たとえば、差分信号806のピーク間値の10パーセントおよび00パーセントにおいて2つのピーク参照しきい値の間を切り替える。
【0083】
垂直ホール信号814、DC信号は、
図2および
図5の垂直ホール素子Eによって生成される。垂直ホール素子Eは、浮遊磁場812に反応して飽和しない。垂直ホール素子は、常にウィンドウしきい値の外側、たとえば、+/-50ガウス(
図5のウィンドウ比較器514を参照)の外側にある磁場を表す信号を生成していると見られる。したがって、
図5の出力禁止信号514aと同じかまたは同様であり得る、出力禁止信号(すなわち、フラグ)816は、ピークまたはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512が、磁場センサ500に最も近いリング磁石のこの停止状態のための出力禁止信号816の動作によって禁止されるようにする状態、たとえば、高い状態を実現することができる。ピークまたはしきい値検出器モジュール510が禁止された場合、ピークまたはしきい値検出器モジュール510によって生成されたはずの切替え信号810は切り替わらず、その場合、信号810は説明目的のみで図示される。
【0084】
図5のピークまたはしきい値検出器モジュール510を禁止しないが、代わりにフォーマットモジュール512のみを禁止するいくつかの実施形態では、磁場センサ500に最も近いリング磁石が回転していないときでも、切替え信号810は、
図5の比較信号510aとして、かつ
図6のピークアウト信号644として依然生成され得る。上記の説明から理解されるように、切替え信号810、たとえば、比較信号510aおよびピークアウト信号644の遷移は通常動作中に発生し、遷移率は、磁場センサ500に最も近いリング磁石の回転速度を示す。上述されたように、磁場センサ500に最も近いリング磁石が停止したとき、切替え信号810(
図5の510a、
図6の644)を禁止すること、および/または
図5のフォーマットモジュール512を禁止することのいずれかが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、切替え信号810は出力禁止信号816の動作によって禁止され、フォーマットモジュール512が禁止される他の実施形態では、切替え信号810は禁止されなくてもよいが、代わりに、フォーマットモジュール512は切替え信号810を伝搬しない。
【0085】
次に
図9を参照すると、信号902は、回転しているリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つのペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子204、206、AおよびCによって生成された出力信号を表す。信号902から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206が、時々約+/-75ガウスの磁場によって飽和し、あるときは、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206、すなわち信号902が飽和しないことを認識されたい。
【0086】
信号904は、回転しているリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つの他のペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子210、212、BおよびDによって生成された出力信号を表す。信号904から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212が、時々約+/-75ガウスの磁場によって飽和し、あるときは、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212、すなわち信号904が飽和しないことを認識されたい。
【0087】
磁気抵抗素子のペアの位置において回転しているリング磁石から生じるAC磁場が浮遊磁場よりもかなり高いと想定して、浮遊磁場は図示されていない。
差分信号906は、2つの信号902、904の差分を表す。磁気抵抗素子の2つのペアA、CおよびB、Dが同じ信号を生成した場合、差分信号906はAC含量をもたないはずであることを理解されたい。しかしながら、差分信号906はAC含量を有する。
【0088】
差分信号906は、
図5の差分信号508a、または
図6の入力信号もしくは差分信号604と同じかまたは同様であり得る。
差分信号906は回転しているリング磁石に反応してAC含量を有するので、
図5のピークまたはしきい値検出器510ならびに
図6のピークおよびしきい値検出器600は、たとえば、差分信号906のピーク間値の90パーセントおよび10パーセントにおいて2つのしきい値信号(図示せず)を生成する。しきい値信号は、
図6のしきい値信号639に匹敵することができ、それは、たとえば、差分信号906のピーク間値の10パーセントおよび90パーセントにおいて2つのピーク参照しきい値の間を切り替える。
【0089】
垂直ホール信号914、AC信号は、リング磁石が回転するときに
図2および
図5の垂直ホール素子Eによって生成される。垂直ホール素子Eは、リング磁石が回転するときに磁場に反応して飽和しない場合がある。しかしながら、他の実施形態では、垂直ホール素子Fは、リング磁石に応答して、かつ/または浮遊磁場に反応して、しかし、磁気抵抗素子によって生成された信号902、904のうちのいずれか1つを飽和させる磁場よりも高い磁場において飽和することができる。垂直ホール素子Eは、時々ウィンドウしきい値以内、たとえば、+/-50ガウス(
図5のウィンドウ比較器514を参照)以内、かつ時々しきい値ウィンドウの外側の磁場を表す垂直ホール信号914を生成することができる。したがって、
図5の出力禁止信号514aと同じかまたは同様であり得る出力禁止信号(すなわち、フラグ)916は、交互の状態、たとえば、高い状態および低い状態を実現することができ、(垂直ホール信号914がウィンドウの外側にあるときの)高い状態は、リング磁石が回転するときにピークもしくはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512が出力禁止信号916(
図5の514a)の動作によって禁止されるようにすることができ、(平面ホール素子914がウィンドウの内側にあるときの)出力禁止信号916の低い状態の間、ピークもしくはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512は、正常に動作して切替え信号910を生成することができる。
【0090】
差分信号906の10パーセントおよび90パーセントのしきい値を想定して、切替え信号910は、リング磁石が回転する間、
図5の比較信号510aとして、かつ(スレッシュアウト信号640と対になる)
図6のピークアウト信号644として生成され得る。切替え信号は、出力禁止信号916が低い状態にある間に切り替えることができることに留意されたい。出力禁止信号916は、信号902、904の両方が飽和状態から出ている間、すなわち、浮遊磁場からの影響が低減された差動信号として差分信号が正確に生成されているとき、低い状態にあることにも留意されたい。
【0091】
上記の説明から理解されるように、切替え信号910、たとえば、比較信号510aおよびピークアウト信号644の遷移は通常動作中に発生し、遷移率は、磁場センサ500に最も近いリング磁石の回転速度を示す。
【0092】
図8および
図9の実施形態と同様の他の実施形態では、たとえば、それぞれ、差分信号806、906のピーク間値の10パーセントおよび90パーセントにおけるピーク参照しきい値の代わりに、他のしきい値、たとえば、40パーセントおよび60パーセントまたは50パーセントのみが使用され得る。
【0093】
次に
図10を参照すると、信号1002は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジのブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つのペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子204、206、AおよびCによって生成された出力信号を表す。信号1002から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206は、約+75ガウスの磁場によって飽和し、DC成分のみが信号1002内で見られることを認識されたい。
【0094】
信号1004は、特定の回転角度で停止したリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の別のペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子210、212、BおよびDによって生成された出力信号を表す。信号1004から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212は、約0ガウスの磁場によって飽和せず、AC成分が見られることを認識されたい。
【0095】
浮遊磁場1012、すなわち、(図示されていないDC浮遊磁場でもあり得るが)AC浮遊磁場であり得る磁場は、磁気抵抗素子の2つのペア204、206および210、212が遭遇する。磁気抵抗素子のペアのうちの1つ、たとえば、210、212のみが浮遊磁場1012に対する完全反応1004を示す。したがって、浮遊磁場1012は、磁場検知素子のペア、たとえば、210、212が遭遇した信号1004と同じである。
【0096】
差分信号1006は、2つの信号1002、1004の差分を表す。磁気抵抗素子の2つのペアA、CおよびB、Dが同じ信号を生成した場合、差分信号1006はAC含量をもたないはずであることを理解されたい。しかしながら、差分信号1006はAC含量を有する。
【0097】
差分信号1006は、
図5の差分信号508a、または
図6の入力信号もしくは差分信号604と同じかまたは同様であり得る。
差分信号1006は浮遊AC磁場1012に反応してAC含量を有するので、
図5のピークまたはしきい値検出器510ならびに
図6のピークおよびしきい値検出器600は、たとえば、差分信号1006のピーク間値の50パーセントにおいて1つまたは複数のしきい値1008を生成する。しきい値信号1008は、
図6のしきい値信号636に匹敵することができ、それは、ゼロに近い2つのしきい値、たとえば、差分信号1006のピーク間値の約50パーセントにおける両方のしきい値の間を切り替える。
【0098】
平面ホール信号1014、DC信号は、
図3の平面ホール素子Fによって生成される。平面ホール素子Fは、浮遊磁場1012に反応して飽和しない。平面ホール素子Fは、常にウィンドウしきい値の外側、たとえば、+/-50ガウス(
図5のウィンドウ比較器514を参照)の外側にある磁場を表す信号を生成していると見られる。したがって、
図5の出力禁止信号514aと同じかまたは同様であり得る、出力禁止信号(すなわち、フラグ)1016は、ピークもしくはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512が、磁場センサ500に最も近いリング磁石のこの停止状態のための出力禁止信号1016の動作によって禁止されるようにする状態、たとえば、高い状態を実現することができる。ピークまたはしきい値検出器モジュール510が禁止された場合、ピークまたはしきい値検出器モジュール510によって生成されたはずの切替え信号1010は切り替わらず、その場合、信号1010は説明目的のみで図示される。
【0099】
図5のピークまたはしきい値検出器モジュール510を禁止しないが、代わりにフォーマットモジュール512のみを禁止するいくつかの実施形態では、磁場センサ500に最も近いリング磁石が回転していないときでも、切替え信号1010は、
図5の比較信号510aとして、かつ
図6のピークアウト信号644として依然生成され得る。上記の説明から理解されるように、切替え信号1010、たとえば、比較信号510aおよびピークアウト信号644の遷移は通常動作中に発生し、遷移率は、磁場センサ500に最も近いリング磁石の回転速度を示す。上述されたように、磁場センサ500に最も近いリング磁石が停止したとき、切替え信号1010(
図5の510a)を禁止すること、および/または
図5のフォーマットモジュール512を禁止することのいずれかが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、切替え信号1010は出力禁止信号1016の動作によって禁止され、フォーマットモジュール512が禁止される他の実施形態では、切替え信号1010は禁止されなくてもよいが、代わりに、フォーマットモジュール512は切替え信号1010を伝搬しない。
【0100】
次に
図11を参照すると、信号1102は、回転しているリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つのペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子204、206、AおよびCによって生成された出力信号を表す。信号1102から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206、すなわち、信号1102が、時々約+/-75ガウスの磁場によって飽和し、あるときは、磁気抵抗素子のペア、たとえば、204、206、すなわち信号1102が飽和しないことを認識されたい。
【0101】
信号1104は、回転しているリング磁石に最も近いときのホイートストンブリッジ配置内の磁気抵抗素子の1つの他のペア、たとえば、
図2および
図5の磁気抵抗素子210、212、BおよびDによって生成された出力信号を表す。信号1104から、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212、すなわち、信号1104が、時々約+/-75ガウスの磁場によって飽和し(飽和は約+/-50ガウスを超えると始まる)、あるときは、磁気抵抗素子のペア、たとえば、210、212、すなわち信号1104が飽和しないことを認識されたい。
【0102】
磁気抵抗素子のペアの位置において回転しているリング磁石から生じるAC磁場が浮遊磁場よりもかなり高いと想定して、浮遊磁場は図示されていない。
差分信号1106は、2つの信号1102、1104の差分を表す。磁気抵抗素子の2つのペアA、CおよびB、Dが同じ信号を生成した場合、差分信号1106はAC含量をもたないはずであることを理解されたい。しかしながら、差分信号1106はAC含量を有する。
【0103】
差分信号1106は、
図5の差分信号508a、または
図6の入力信号もしくは差分信号604と同じかまたは同様であり得る。
差分信号1106は回転しているリング磁石に反応してAC含量を有するので、
図5のピークまたはしきい値検出器510ならびに
図6のピークおよびしきい値検出器600は、たとえば、差分信号1106のピーク間値の50パーセントにおいて少なくとも1つのしきい値信号(図示せず)を生成する。しきい値信号は、
図6のしきい値信号636に匹敵することができ、それは、たとえば、差分信号1106のピーク間値の40パーセントおよび60パーセントにおいて2つのピーク参照しきい値の間を切り替えるが、ここでは50パーセントにある1つのしきい値として示される。
【0104】
平面ホール信号1114、AC信号は、リング磁石が回転するときに
図3の平面ホール素子Fによって生成される。平面ホール素子Fは、最も近い回転しているリング磁石に反応して飽和しない場合がある。しかしながら、他の実施形態では、平面ホール素子Fは、リング磁石に応答して、かつ/または浮遊磁場に反応して、しかし、磁気抵抗素子によって生成された信号1102、1104のうちのいずれか1つを飽和する磁場よりも高い磁場において飽和することができる。平面ホール素子Fは、時々しきい値ウィンドウ以内、たとえば、+/-50ガウス(
図5のウィンドウ比較器514を参照)以内、かつ時々しきい値ウィンドウの外側の磁場を表す信号1114を生成することができる。したがって、
図5の出力禁止信号514aと同じかまたは同様であり得る出力禁止信号(すなわち、フラグ)1116は、交互の状態、たとえば、高い状態および低い状態を実現することができ、(平面ホール信号1114がウィンドウの外側にあるときの)高い状態は、リング磁石が回転するときにピークもしくはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512が出力禁止信号1116(
図5の514a)の動作によって禁止されるようにすることができ、(平面ホール素子1114がウィンドウの内側にあるときの)出力禁止信号1116の低い状態の間、ピークもしくはしきい値検出器モジュール510および/またはフォーマットモジュール512は、正常に動作することができる。
【0105】
差分信号1106のピーク間値の50パーセントにある上述されたしきい値を想定して、切替え信号1110は、リング磁石が回転する間、
図5の比較信号510aとして、かつ
図6の(ピークアウト信号644と反対になる)スレッシュアウト信号640として生成され得る。切替え信号1110は、出力禁止信号1116が低い状態にある間に切り替えることができることに留意されたい。出力禁止信号1116は、信号1102、1104の両方が飽和状態から出ている間、すなわち、浮遊磁場による影響が低減された差動信号として差分信号1104が正確に生成されているとき、低い状態にあることにも留意されたい。
【0106】
上記の説明から理解されるように、切替え信号1110、たとえば、比較信号510aおよびスレッシュアウト信号640の遷移は通常動作中に発生し、遷移率は、磁場センサ500に最も近いリング磁石の回転速度を示す。
【0107】
図10および
図11の実施形態と同様の他の実施形態では、たとえば、それぞれ、差分信号806、1106のピーク間値の40パーセントおよび60パーセント(またはちょうど50パーセント)におけるゼロ参照しきい値の代わりに、他のしきい値、たとえば、10パーセントおよび90パーセントが使用され得る。
【0108】
上記の図、たとえば、
図5と連携して、1つの差分信号、たとえば、差分信号508aが生成されることが記載される。しかしながら、下記に記載される他の実施形態では、2つの別々の回路チャネル内の2つの差分信号は、
図2および
図3の同じ4つの磁気抵抗素子204、206、210、212を使用して生成され得る。
【0109】
次に
図12を参照すると、その中で、
図2、
図3、および
図4の同様の要素が同様の参照名称をもって示され、2つの磁気抵抗素子404、408、AおよびCは、第1の差動信号1208、1210、V1およびV2を生成するために、ホイートストンブリッジ配置内で2つの固定抵抗器1204、1206と結合され得る。同様に、2つの磁気抵抗素子410、406、DおよびBは、第2の差動信号1218、1220、V3およびV4を生成するために、別のホイートストンブリッジ配置内で2つの固定抵抗器1214、1216と結合され得る。
【0110】
他の実施形態では、2つのハーフブリッジまたは2つの単体磁気抵抗素子が、2つのフルブリッジの代わりに使用され得る。
2つのホイートストンブリッジ配置は、各々、
図5の差分回路508と同じかまたは同様の差分回路に結合され得、2つの別々の回路チャネルは、各々、
図5の他の構成部品を有することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、フォーマットモジュール502のようなただ1つのフォーマットモジュールが存在するが、それは2つのピークまたはしきい値検出器モジュールから信号を受信する。
【0111】
2つの回路チャネルを使用する利点は、結果として得られた磁場センサが、リング磁石の回転速度だけでなく、リング磁石の回転方向も表す出力信号を生成することができることである。磁気抵抗素子A、Cおよび磁気抵抗素子B、Dは物理的に分離され、リング磁石が回転するときに磁場の異なる位相に遭遇するので、方向情報は、2つの差分信号の相対位相の符号(プラスまたはマイナス)に基づいて決定され得る。
【0112】
本明細書で引用されたすべての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本特許の主題である様々な概念、構造、および技法を示すように働く好ましい実施形態を記載して、これらの概念、構造、および技法を組み込む他の実施形態が使用されてもよいことが今や明らかになる。したがって、本特許の範囲は、記載された実施形態に限定されるべきではなく、むしろ以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲によってのみ限定されるべきであることが提起される。
【0113】
本明細書に記載された実施形態の要素は、上記で具体的に明記されていない他の実施形態を形成するために組み合わされてもよい。単一の実施形態の文脈において記載された様々な要素はまた、個別に、または任意の適切な部分的組合せで提供されてもよい。本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。